説明

磁気記憶媒体、情報記憶装置及び制御装置

【課題】磁気ヘッドのオフトラックに対する位置決め制御を精度よく行なうことができる磁気記録媒体、情報記憶装置および制御装置を提供する。
【解決手段】磁性ドット18が互いに千鳥格子状に形成されるとともに、トラック中心17を対称軸として、反転するように形成された2個のプリアンブル32とプリアンブル33によるオフトラック時の位相差により検出した磁気ヘッド13の変位量に基づいて、磁気ヘッド13の位置制御を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁気記憶媒体、情報記憶装置及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、HDD(Hard Disc Drive)等の情報記憶装置には、高転送レートや情報記憶装置に用いられる磁気記憶媒体の大容量化に伴い高記録密度化が要求されている。
【0003】
そこで、磁気記憶媒体の高記録密度化を図る記録方式として、隣接するトラック間に、非磁性体領域を形成し、磁性体によって形成されるトラック部にのみ記録するディスクリートトラック記録方式が提案されている。また、磁性粒子を孤立させて、単一のビットパターンを作製し、記録分解能を向上させたパターンドメディア記録方式(ビットパターンドメディア、BPM(Bit Patterned Media)とも言う)が提案されている。
【0004】
パターンドメディアとは、磁気記録媒体上において、互いに孤立した記録再生のための磁化領域が非磁化領域によって隔離されて配置されている高記録密度媒体である。パターンドメディアには、複数の磁性ドットを配置することが可能であり、多くの磁性ドットを配置するほど、記録密度を向上することが可能となる。
【0005】
ここで、通常の情報記憶装置では、媒体上のサーボパターンでの位置決め信号を読み取り、この信号に従って磁気ヘッドの位置決めを行っている。ところが、磁気記録媒体のトラックは、電子線描画ならびにナノインプリント等の加工プロセスにより形成されているが、加工プロセスによって発生するトラック揺らぎがある。これにより、サーボパターンでの情報だけでは正確に磁気ヘッドの位置決めを行なえないという問題がある。
【0006】
このため従来では、記録するトラックに対して基準信号を書き込み、再生信号の振幅変動からトラックの揺らぎを検出し、これに従ってフィードフォワード制御を行うなどの方法により位置決め精度の向上を図っている。ところが、この場合、事前にトラック揺らぎを精査する工程が必要であるとともに、温度変化等の外乱が発生した場合などでは、その都度確認が必要になるため、装置性能を低下させるなどの問題が発生する。
【0007】
この対策として、トラック当たりのサーボ領域の配置数を増やし、サンプリングするサーボ情報を増加させることで、サーボ制御帯域を向上させるなどが考えられる。ところが、この場合、サーボ領域を増やすことは逆にデータ領域を減少させることになり、単位面積あたりの記録密度を低下させる恐れがあるなどの別の位置決め制御に関する問題がある。
【0008】
この種の位置決め制御方法として、磁性ドット配列から取得される各種信号パターンを記憶しておき、実際に中心トラックからオフセットした場合のトラックずれ信号と比較する。そして、一致した信号パターンとトラックずれ信号とに基づいて位置決め誤差量を推定する記録読み出し方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0009】
また、磁気ヘッドによる書き込み動作を行う際には、磁気ヘッドの直下に記録すべき磁性ドットが存在する必要がある。すなわち、磁気記録媒体上の磁性ドットの位置を予測しつつ、磁性体の配置パターンに同期したクロック信号を作成することが重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−157631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来の特許文献1の技術の場合には、磁気ヘッドのずれ方向は取得することができるが、実際の磁気ヘッドのずれ量を連続的に取得することができないため、磁気ヘッドをトラック中心まで制御する位置決め精度が低下するという問題がある。
【0012】
そこで、この発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、磁気ヘッドのオフトラックに対する高精度な位置決め制御を精度よく行なうことができる磁気記憶媒体、情報記憶装置及び制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
開示の発明は、互いに千鳥格子状に形成されるとともに、トラック中心を対称軸として反転するように形成された複数の磁性ドットを設けられた2つのプリアンブルを有する磁気記録媒体を備え、2つのプリアンブルによる信号からリシンクマークを起点とした位相を検出し、双方のプリアンブルによる位相差により磁気ヘッドの位置決め制御を行なうことを要件とする。
【発明の効果】
【0014】
開示の発明によれば、磁気記録媒体に設けた2つのプリアンブルによる信号から検出したプリアンブルによる位相差により、磁気ヘッドのオフトラックに対する位置決め制御を精度よく行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本実施例1に係る情報記憶装置の構成を示す外観図である。
【図2】図2は、本実施例1に係る情報記憶装置が備えた磁気記録媒体の構成について説明する図である。
【図3】図3は、データ領域の構成の一例を示す図である。
【図4】図4は、データ領域の構成の一例を示す図である。
【図5】図5は、本実施例1に係る磁気ヘッドのオフトラックを説明する図である。
【図6−1】図6−1は、本実施例1に係るトラック横断位置でのプリアンブルによる再生信号を示す波形図である。
【図6−2】図6−2は、本実施例1に係るトラック横断位置でのプリアンブルによる再生信号を示す波形図である。
【図6−3】図6−3は、本実施例1に係るトラック横断位置でのプリアンブルによる再生信号を示す波形図である。
【図7】図7は、プリアンブルによる位置決め位相差信号を説明する図である。
【図8】図8は、情報記憶装置の機能構成を示すブロック図である。
【図9】図9は、磁気記録媒体の製造処理手順を説明するフローチャートである。
【図10】図10は、磁気記録媒体のフォーマット処理を説明するフローチャートである。
【図11】図11は、磁気記録媒体の読み書き処理手順を説明するフローチャートである。
【図12】図12は、クロック信号の演算補正を説明する図である。
【図13】図13は、本実施例2に係る磁気記録媒体の構成について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して、本願の開示する磁気記憶媒体、情報記憶装置及び制御装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0017】
以下に、本願に開示する磁気記憶媒体、情報記憶装置及び制御装置の実施例1を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例1により本願に開示する磁気記憶媒体、情報記憶装置及び制御装置が限定されるものではない。
【実施例1】
【0018】
先ず、実施例1に係る情報記憶装置1の概要について説明する。図1は、実施例1に係る情報記憶装置の構成を示す外観図である。図1に示すように、情報記憶装置1は、磁気記録媒体10と、磁気ヘッド13を先端部に設けたアーム11とを有する。
【0019】
磁気記録媒体10は、各種の磁気情報を高記録密度に記録する磁気記憶媒体であり、スピンドルモータ(以下、「SPM」という)12により所定の方向に回転駆動される。この磁気記録媒体10は、各種の情報を記録するパターンドメディアである。
【0020】
後述するが、磁気記録媒体10は、サーボ情報等を記憶するサーボ領域20(図2)と、タイミング同期領域30(図2)であるプリアンブル32、33と、ユーザデータを記憶するデータ領域40(図2)とを有する。アーム11の先端部には、磁気記録媒体10の読み書きを行なうための磁気ヘッド13が設けられている。
【0021】
また、アーム11の一方の端に設けられたヘッド駆動機構であるボイスコイルモータ(以下、「VCM」という)14の駆動により、アーム11が軸15を中心とする円弧上を回動する。そして、磁気記録媒体10のトラック幅方向に磁気ヘッド13を移動させることで読み書き対象となるトラックを変更する。
【0022】
磁気ヘッド13は、磁気記録媒体10の回転によって生じる揚力によって、磁気記録媒体10の表面からわずかに浮いた状態を維持しつつ、読み書き対象となるトラックまで移動し、リード処理及びライト処理(データの読み書き処理)を行う。
【0023】
[磁気記録媒体10の構成]
次に、図2を用いて、情報記憶装置1に設けられる磁気記録媒体10の構成について説明する。図2は、実施例1に係る情報記憶装置1が備えた磁気記録媒体10の構成を示す図である。なお、図2では、横方向が磁気記録媒体10の円周方向(「トラック方向」とも呼ばれる)を示し、縦方向が磁気記録媒体10の半径方向(内周、外周)を示す。図2に示すように、本実施例1に係る磁気記録媒体10の媒体フォーマット構成は、サーボ領域20と、タイミング同期領域30と、データ領域40とを順に有する。
【0024】
すなわち、本実施例1に示す磁気記録媒体10は、サーボ領域20に続くデータ領域40の先頭部にタイミング同期領域30を設けている。具体的には、磁気記録媒体10の一つのセクタ内には、サーボ領域20を先頭に、タイミング同期領域30と、データ領域40とが繰り返し形成されている。
【0025】
サーボ領域20は、磁気ヘッド13の位置決め制御に利用されるデータであるサーボ情報等を記憶する領域である。このサーボ領域20は、磁気記録媒体10におけるトラック番号およびセクタ番号を示す再生信号が読み出されるアドレス部や、磁気ヘッド13をトラック16のトラック中心17に位置決め制御するための再生信号を読み出すためのバースト部などを有している。
【0026】
タイミング同期領域30は、一定の周波数の再生信号が読み出されるように、複数個の磁性ドット18が所定のパターンによって配置されている領域であり、本実施例1では、図2に示すように、リシンクマーク31及び2個のプリアンブル32、33とを有している。
【0027】
すなわち、タイミング同期領域30は、このタイミング同期領域30の先頭に位置するリシンクマーク31とプリアンブル(Preamble)32と、同じくリシンクマーク31とプリアンブル(Preamble)33とを順に有する。このタイミング同期領域30は、プリアンブル33以降も、リシンクマーク31とプリアンブル32とを順に有する。
【0028】
そして、これらプリアンブル32、33には、複数個の磁性ドット18が千鳥状に配列されるとともに、当該配列がトラック中心17を対称軸として反転するように形成されている。具体的に説明すると、同図に示すように、プリアンブル32には、磁性ドット18が右側に傾くような位置に、プリアンブル33には、磁性ドット18が左側に傾くようにそれぞれ配置されている。
【0029】
また、これらプリアンブル32、33の磁性ドット18の磁極は、正負の磁性ドットパターンとなるように形成されている。磁性ドット18の配列が2個集まって一つのトラック16を構成している。
【0030】
ここで、図2では、黒丸印によって示した磁性ドット18(磁性体)が正極に磁化していることを、白丸印によって磁性ドット18(磁性体)が負極に磁化していることを表している。すなわち、2個のプリアンブル32、33には、正極に磁化している磁性ドット18と、負極に磁化している磁性ドット18とが千鳥格子状に交互に配置されている。
【0031】
リシンクマーク31は、プリアンブル32、33の開始を示す再生信号が読み出されるように配置された目印(マーク)である。このリシンクマーク31はデータビット長に相当するパターン長をもち、トラック16の半径方向に連続するように配置されている。
【0032】
すなわち、リシンクマーク31は、2つのプリアンブル32、33による位相差を検知する基準信号として設けられており、これらリシンクマーク31によるリシンク信号から2個のプリアンブル31、32における双方の位相差を正確に検知することが可能となる。具体的に説明すると、本実施例1では、単一周波数を有する信号の位相差(プリアンブル32プリアンブル33との位相差)を検出することで、トラックオフセット信号を取得するができ、この取得した位相差に基づいて、磁気ヘッド13の移動制御を行なうこととしている。
【0033】
本実施例1の磁気記録媒体10を構成するタイミング同期領域30は、2個のプリアンブル32、33を有するとともに、正負の磁性ドット18による千鳥格子の配置を、トラック中心17を対称として反転した配列とすることで、磁気ヘッド13が半径方向にシフトした通過位置によって位相差が異なる再生信号が発生する。これにより、磁気ヘッド13がトラック横断方向にオフトラックした場合の位相差に基づく変位量を検出することができる。
【0034】
具体的には、リシンクマーク31を起点として2個のプリアンブル32、33による位相差を比較する。そして、この比較により、正極の磁性ドット18と負極の磁性ドット18とによる再生信号に基づいて、オフトラック時にトラック横断方向に変位する磁気ヘッド13の変位量を検出することができる。
【0035】
すなわち、磁気ヘッド13が半径方向にオフトラックした場合、2個のプリアンブル32、33で検出される再生信号に位相差が生じ、その位相差を位置決め信号として演算することで高精度な位置決め制御を行なうことができる。
【0036】
[データ領域40の磁性ドット配列構成]
次に、図3、4を用いてデータ領域40の構成について説明する。図3、4は、データ領域40の磁性ドット配列の一例をそれぞれ示す図である。図3に示すように、磁気記録媒体10のデータ領域40に設けられる複数個の磁性ドット18によるドット配列は、千鳥格子状の配列として形成することができる。
【0037】
また、図4に示すように、同じく、磁気記録媒体10のデータ領域40に設けられる複数個の磁性ドット18によるドット配列は、正方格子状の配列として形成することができる。同図に示すように、正方格子状に形成された磁性ドット18は、トラック16のトラック中心17上に位置する。
【0038】
[タイミング同期領域での再生信号]
ここで、以下、図5及び図6−1〜図6−3を用いて、本実施例1によるタイミング同期領域30に形成した2個のプリアンブル32、33から出力される再生信号による位相差について説明する。
【0039】
図5は、磁気記録媒体10のトラック16を横断する磁気ヘッド13による再生信号波形を説明する図である。また、図6−1〜図6−3は、トラック横断位置でのプリアンブルによる再生信号の波形の一例を示す図である。具体的には、磁気ヘッド13の幅を1/2トラックとした場合に、磁気ヘッド13で検知される再生信号強度を推定(シミュレーンション)した波形を示している。
【0040】
ここで、前述したように、本実施例1に示す磁気記録媒体10では、プリアンブル32、33には、正極と負極とに磁化する磁性ドット18が千鳥格子状に交互に配置されるとともに、当該配列がトラック中心17を対称軸として反転するように形成されている。このため、トラック16に対する磁気ヘッド13の横断位置によって、プリアンブル32、33の再生信号による波形は位相差が異なる波形となる。
【0041】
すなわち、図5に示すように、例えば、図5のA部に磁気ヘッド13が位置している場合(オントラック状態)には、トラック16のトラック中心17上に磁気ヘッド13が対向する位置であるため、タイミング同期領域30のプリアンブル32による再生信号とプリアンブル33による再生信号とはほぼ一致する。これによって、図6−1に示すように、プリアンブル32、33の再生信号による波形aの場合、位相差は発生しない。
【0042】
また、図5のB部に磁気ヘッド13が位置している場合には、磁気ヘッド13の位置がトラック16の外周側にトラックピッチの1/4(1/4T)だけオフセットしているため、図6−2に示すように、プリアンブル32の再生信号による波形bの位相が進む。また、プリアンブル33の再生信号による波形cの位相が遅れるものとなる。
【0043】
一方、図5のC部に磁気ヘッド13が位置している場合には、磁気ヘッド13の位置がトラック16の内周側に1/4Tだけオフセットしているため、図6−3に示すように、タイミング同期領域30のプリアンブル32の再生信号による波形bの位相が遅れる。また、プリアンブル33の再生信号による波形cの位相が進むものとなる。
【0044】
すなわち、本実施例1では、プリアンブル32、33には、複数個の磁性ドット18が千鳥状に配列されるとともに、当該配列がトラック中心17を対称軸として反転するように形成されている。このため、トラック16に対する磁気ヘッド13の横断位置によって、プリアンブル32、33により再生される波形は、磁気ヘッド13の横断位置に基づいて、異なる再生信号となる(両方の波形に位相差が生じる)。
【0045】
以上説明したように、本実施例1では、プリアンブル32、33には、正負の磁性ドット18が千鳥状に配列されるとともに、当該配列がトラック中心17を対称軸として反転するように形成されている。このため、トラック16に対する磁気ヘッド13の横断位置によって、プリアンブル32、33の再生信号による波形は位相差が異なる波形となることから、この位相差を比較・演算することで、磁気ヘッド13の変位量とする位置決め信号を取得することができる。
【0046】
具体的には、2個のプリアンブル32、33により取得した位相差を比較し演算することで、この演算により表された位相差に基づく変位量関数(位置決め位相差信号)を用いて磁気ヘッド13の位置決め制御を行なうこととしている。ここで、このような位置決め位相差信号は、図7に示す位相差変位量関数値として表すことができる。
【0047】
[プリアンブルによる位置決め位相差信号を説明する図]
以下、上述したプリアンブルによる位置決め位相差信号について説明する。図7は、プリアンブルによる位置決め位相差信号を説明する図である。この図7では、縦軸がプリアンブル32、33による位相差(radian)を、横軸が磁気ヘッドの変位量(T比)をそれぞれ表している。図7では、横軸における「0」の位置が、位相差が発生しない位置であり、磁気ヘッド13がオントラック状態であることを示している。
【0048】
ここで、図7に示す位相差・磁気ヘッド変位量図は、磁気記録媒体10の媒体フォーマット時に、磁気ヘッド13により磁気記録媒体10のサーボ情報を読み込むことで取得することができる。そして、この図7に示す位相差変位量関数値を用いることにより位相差に対応する磁気ヘッド13の変位量を取得し、位置決め制御を行なうことができる。
【0049】
すなわち、この位相差・変位量関数値は、磁気ヘッド13のオフトラック時のプリアンブル32、33の再生信号による位相差に対応した、磁気ヘッド13の正確な変位量としてグラフ化したものである。実際には、この位相差・磁気ヘッド変位量により取得されたヘッド変位量はメモリ60(図8)内に設けた位相差変位量テーブル61(図8)として格納される。
【0050】
具体的に説明すると、プリアンブル31とプリアンブル32との位相差が「0」となるように、磁気ヘッド13の移動を制御することとなるため、例えば、プリアンブル31とプリアンブル32との位相差が「02」である場合には、磁気ヘッド13をトラック16の内外周側に「0.05」移動する制御を行なう。また、例えば、プリアンブル31とプリアンブル32との位相差が「−0.8」である場合には、磁気ヘッド13をトラック16の外周側に「0.2」移動する制御を行なう。
【0051】
[情報記憶装置1の機能構成]
次に、情報記憶装置1の機能構成について説明する。図8は、情報記憶装置1の機能構成を示す図である。
【0052】
図8に示すように、情報記憶装置1は、磁気記録媒体10と、磁気ヘッド13と、VCM50と、プリアンプ51と、リードチャネル52と、ハードディスク(以下、「HD」と略記する)コントローラ53と、パワーアンプ54と、MPU(Micro Processing Unit)55とを有する。
【0053】
なお、MPU55は、MCU(Micro Controller Unit)やCPU(Central Processing Unit)であってもよい。また、このMPU55は、ホストIF制御部70を介してホストコンピュータ80に接続される。VCM50は、磁気ヘッド13の位置決めを行なう。プリアンプ51は、磁気ヘッド13によって読み出された微弱な再生信号を増幅してリードチャネル52へ出力する。
【0054】
プリアンプ51は、磁気ヘッド13からの再生信号を増幅しリードチャネル52に送る。リードチャネル52は、各種のフィルターを介してサーボ信号、記録再生信号として取り出る。
【0055】
リードチャネル52は、記録再生信号をコントロールするもので、プリアンプ51から入力された再生信号を増幅して、再生信号の振幅を一定に維持したり、再生信号をAD変換したり復調したりする。
【0056】
この再生信号には、データ領域40(図2)から読み出された信号である記録再生信号と、サーボ領域20(図2)から読み出された信号であるサーボ信号とが含まれる。また、このリードチャネル52は、HDコントローラ53からデータ(ユーザデータ)の入力を受け付けた場合に、データのコード変調を行い、プリアンプ51へ出力する。
【0057】
また、リードチャネル52内で復調処理されたサーボ信号は、HDコントローラ53により位置決め用の信号となり、MPU55からVCM50を制御するためのVCM制御信号としてパワーアンプ54へ送られる。
【0058】
また、書き込む信号の基本となるライトクロックは外部の水晶発信器より供給され、リードチャネル52内のPLL回路(図示せず)を介して各トラック16において、記録密度に適した周波数に変換される。
【0059】
HDコントローラ53は、ホストコンピュータ80からの命令をホストIF制御部70を介して受け付けて、情報記憶装置1の動作を制御したり、ホストコンピュータ80と情報記憶装置1との間で転送されるデータのエラーチェックを行なう。また、HDコントローラ53は、リードチャネル52から再生信号の入力を受け付け、必要に応じてエラー訂正を行い、MPU55またはホストコンピュータ80へ出力する。
【0060】
パワーアンプ54は、MPU55から受け付けたVCM制御信号に基づいて、VCM50を駆動させるためのVCM駆動電流を生成し、生成したVCM駆動電流をVCM50へ出力する。具体的には、HDCからのサーボ信号に従い、VCM50を駆動し、磁気ヘッド13の駆動を行なう。
【0061】
MPU55は、所定の制御プログラム(ファームウェアプログラム)により情報記憶装置1の主制御や、磁気ヘッド13の位置決め制御を行う制御部である。このMPU55は、サーボ制御部56と、位相検出部57と、変位量算出部58と、位置決め部59とを有する。
【0062】
位相差検出部57は、磁気ヘッド13によって取得した2つのプリアンブル32、33による出力に基づいて、これらプリアンブル32、33による再生信号から位相差を検出する。
【0063】
変位量算出部58は、位相差検出部57から検出された2つのプリアンブル32、33の再生信号による位相差に基づいて、トラック中心17と磁気ヘッド13との変位量を算出する。
【0064】
位置決め部59は、変位量算出部58により算出されたトラック中心17に対する磁気ヘッド13の変位量に基づいて、トラック中心17に磁気ヘッド13が位置するように、この磁気ヘッド13の位置を制御する。
【0065】
サーボ制御部56は、位置決め部59により算出された磁気ヘッド13の変位量に基づいて、磁気ヘッド13の移動位置を制御する処理部である。
【0066】
VCM制御信号を受け付けたパワーアンプ54は、VCM駆動電流をVCM50へ出力してVCM50を駆動させる。この場合、VCM50で駆動される磁気ヘッド13の移動位置は、位置決め部59により算出された磁気ヘッド13の変位量に基づいた位置であるため、正確な移動位置となる。
【0067】
[磁気記録媒体10の製造方法]
次に、本実施例1による磁気記録媒体10の製造方法を図9を用いて説明する。図9は、実施例1に係る磁気記録媒体10の製造工程を示すフローチャートである。なお、以下の説明において、本実施例1の磁気記録媒体10の製造方法は、磁気記録媒体10を所定の手順で製造する製造システムにより行なうこととして説明する。
【0068】
図9のフローチャートに示すように、磁気記録媒体10の製造システムでは、裏打ち層形成工程と、中間層形成工程と、記録層形成工程と、千鳥格子形成工程と、磁化工程とを順に行なう。
【0069】
すなわち、先ず、磁気記録媒体の製造システムでは、予め用意した基板の上面に裏打ち層を形成する裏打ち層形成工程を行なう(ステップS11)。裏打ち層が積層される基板は、外観視で略円盤状の部材であり、例えば、ガラス及びアルミニウム合金等の非磁性材料を使用する。また、この基板としては、表面の平坦性が高く、機械的強度の高いものが望ましい。
【0070】
裏打ち層としては、例えば、COZrNb等の軟磁性材料が用いられる。この裏打ち層は、磁気ヘッド13(図1)から発生する磁束を、記録層を介して磁気ヘッド13に還流させる磁気経路を形成する。
【0071】
次に、裏打ち層の上面に中間層を形成する中間層形成工程を行う(ステップS12)。中間層は、この中間層の上面に形成される記録層の結晶配向性や結晶粒径等を制御する制御層として形成される。中間層の材料としては、例えば、Ta等が用いられる。
【0072】
次に、裏打ち層上に積層させた中間層の上面に記録層を形成する記録層形成工程を行う(ステップS13)。具体的には、データを記録する複数のトラック16(図2)を有する記録層を、中間層の上面に形成する。
【0073】
次に、記録層の上面に、この記録層(磁気記録媒体10)の表面が千鳥格子となる磁性ドットパターンを形成する(ステップS14)。具体的には、磁性ドットを千鳥状に交互に配列させるとともに、当該配列がトラック中心17(図2)を対称軸として反転するように複数個の磁性体を形成する。
【0074】
なお、この磁気記録媒体10(記録層)に設けられる磁性体は、エッチング等によるパターニング・プロセスにより形成する。この場合、記録層に形成される千鳥格子状の各ビット幅は、磁気記録媒体10の円周方向(トラック方向)及び半径方向ともに数十nmとなり、高さは、数nmとなる。
【0075】
磁気ヘッド13(図1)の浮上特性を安定にするために、この記録層のビット間(隙間)には非磁性材料を充填する。また、記録層の表面はCMP研磨によって平滑化処理する。ここで、非磁性材料は記録層の材料とは異なる透磁率を有する、例えば、二酸化シリコン(SiO2)などの材料を使用する。
【0076】
最後に、記録層の上面に形成された複数個の磁性体に対して一様に所定の磁場(例えば、正極)を与える磁化工程を行なう(ステップS15)。具体的には、磁気記録媒体10を形成する複数個の磁性体を、全て同一の極性(例えば、正極とする)に磁化させる。以上説明した手順により、磁気記録媒体10は製造され、その後、磁気記録媒体10は、情報記憶装置1に搭載される。
【0077】
[磁気記録媒体10による磁気記録媒体フォーマット方法]
次に、図10を用いて本実施例1に係る磁気記録媒体10のフォーマット時の処理工程を説明する。ここで、図10は、実施例に係る磁気記録媒体10の媒体フォーマット処理工程を示すフローチャートである。なお、以下の説明において、磁気記録媒体10のフォーマット方法は、情報記憶装置1が磁気記録媒体10を所定の手順でフォーマットする手順として説明する。
【0078】
先ず、図10のフローチャートに示すように、磁気記録媒体10の磁性ドットを正負のデータとして書き込む正負磁化処理を行う(ステップS21)。具体的には、情報記憶装置1が、磁気記録媒体10のトラック16にサーボ領域20、リシンクマーク31、プリアンブル32、33を形成するとともに、一方向に磁化された磁性ドット18に対して、プリアンブル32、33に設けられる複数個の磁気ドット18に対する正負の書き込みを行なう。すなわち、プリアンブル32、33を構成する複数個の磁性ドット18が正極と負極とに交互に磁化するように、複数個の磁性ドット18に磁場を与える。
【0079】
次に、プリアンブル32とプリアンブル33との位相差による変位量取得処理を行なう(ステップS22)。具体的に説明すると、磁気ヘッド13によりプリアンブル32とプリアンブル33とのサーボ情報を読み込むことにより、プリアンブル32とプリアンブル33との位相差に対応する磁気ヘッド13の変位量を演算し関数値として取得する。
【0080】
次に、ステップS22により取得されたプリアンブル32とプリアンブル33との位相差に対応する磁気ヘッド13の変位量を関数値(図7)として演算し、演算結果を位相差変位量テーブル61(図8)に格納する(ステップS23)。
【0081】
実際には、プリアンブル32とプリアンブル33との位相差に対応する磁気ヘッド13の変位量を関数値として位相差変位量テーブル61を作成し、この位相差変位量テーブル61を用いて、磁気ヘッド13の位置決め制御を行なうこととなる。
【0082】
[データの読み書き時の処理工程]
次に、図11を用いて、本実施例1によるデータの読み書き時の処理工程を説明する。ここで、図11は、実施例1に係る情報記憶装置1による読み書き時の処理手順を示すフローチャートである。なお、以下の説明において、本実施例1の読み書き時の処理手順は、情報記憶装置1のMCU55(図8)で行なわれる処理として説明する。
【0083】
図11のフローチャートに示すように、先ず、ホストコンピュータ80(図8)から読み書き信号(アクセス命令)を取得したか判定する(ステップS31)。具体的には、ホストコンピュータ80からアクセス命令が送信されたかを判定し、この読み書き信号の取得がある場合には(ステップS31肯定)、次に、アクセス命令から読み書き信号(アクセス信号)を取得したかを判定する(ステップS32)。
【0084】
そして、ステップS32の判定により、アクセス信号を取得した場合には(ステップS32肯定)、磁気記録媒体10のどの位置に対するアクセスであるかのアクセス位置を決める(ステップS33)。具体的には、ホストコンピュータ80から送信されたアクセス信号に基づいて、磁気ヘッド13による読み書き対象となる磁気記録媒体10のトラック及びセクタ位置を決める。
【0085】
次に、アクセス命令に基づいて、磁気ヘッド13の移動信号を通知し(ステップS34)、以下、磁気ヘッド13により磁気記録媒体10のサーボ領域20からサーボ情報を取得し(ステップS35)、さらにタイミング同期領域30から2個のプリアンブル32、33からプリアンブル信号を取得する(ステップS36)。ここで、前述したように、2個のプリアンブル32、33から取得されるプリアンブル信号による波形は位相差がある波形(図6−2、図6−3)となる。
【0086】
次に、2つのプリアンブル信号を取得したかを判定し(ステップS37)、2つのプリアンブル信号を取得したと判定された場合には(ステップS37肯定)、2つのプリアンブル信号から位相差を算出する(ステップS38)。
【0087】
次に、ステップS38で取得した2つのプリアンブル32、33による位相差から変位量(ずれ量)を算出する(ステップS39)。具体的には、図8の位相差変位量テーブル61を用いて、2つのプリアンブル32、33の再生信号による位相差に対応する磁気ヘッド13の変位量であるトラック中心17からのずれ量を取得する。
【0088】
次に、クロック信号を算出する算出(ステップS40)。具体的には、2個のプリアンブル32、33による双方の信号波形の中点を抽出することで、クロック信号の補正を行なう。なお、このクロック信号補正の詳細については、後述の図12を用いて説明する。
【0089】
次に、位置決め補正処理を行なう(ステップS41)。具体的には、位相差変位量テーブル61(図8)により取得された磁気ヘッド13の変位量を基に、磁気ヘッド13の位置決め補正を行なう。
【0090】
最後に、ステップS40で算出したクロック信号に基づいて、磁気記録媒体10に対する読み書き処理を行なう(ステップS42)。以上説明した手順により、磁気記録媒体10に対する読み書き処理を行なう。この場合、磁気ヘッド13の位置決めを正確に行なうことができるため、データの読み書きも正確且つ迅速に行なうことができる。
【0091】
[クロック信号の補正方法]
次に、図12を用いて、クロック信号の演算補正方法について説明する。図12は、クロック信号の演算補正方法を説明する図を示している。ここで、図12の上段は、磁気ヘッド13のオントラック時の波形aを、図12の下段は、磁気ヘッド13のオフトラック時のプリアンブル32の波形bとプリアンブル33の波形cをそれぞれ示している。
【0092】
同図に示すように、磁気ヘッド13のオントラック時は、プリアンブル32、33による再生信号は位相差が一致する波形aとなる。一方、磁気ヘッド13のオフトラック時は、プリアンブル32、33による再生信号は異なるため位相差が生じる波形b、波形cとなる。
【0093】
すなわち、本実施例1で示す正負の千鳥格子配列を有する磁性ドットパターンの場合、磁気ヘッド13がトラック中心17に対して半径方向にシフトすると、再生信号による位相がずれることとなり、これにより、読み書きタイミングを行なうクロック信号にとっても位相差や振幅の低下といった誤差要因となる。
【0094】
具体的に説明すると、磁気ヘッド13は、クロック信号に応じてデータの読み書きタイミングを設定しているが、情報記憶装置1の振動や外乱等の要因で、磁気ヘッド13にオフトラックが発生した場合、2個のプリアンブル32、33による再生信号に位相差が生じる。このため、このずれた位相差をもとにクロック信号が生成されることになる。
【0095】
また、例えば、何れか一方のプリアンブル32、33の再生信号に基づいたクロック信号を用いた場合には、間違ったタイミングで磁気ヘッド13による読み書き処理を行ってしまうという問題が生じる。
【0096】
このため、本実施例1では、2個のプリアンブル32、33で取得した位相差を演算(平均化処理)し、新たなクロック信号を作成することでオントラック時での再生信号と同等のタイミングとなるクロック信号とする補正を行なう。具体的には、図12に示すように、2個のプリアンブル32、33による双方の信号波形の中点を抽出するクロック補正処理を行なう。
【0097】
以上説明したように、本実施例1では、2個のプリアンブル32、33の再生信号により検出された位相差の中点に基づいて、クロック信号の補正を行い、これにより、磁気ヘッド13のオフトラック時でも磁性ドット配列に一致した正確なクロック信号を取得することができる。この結果、情報記憶装置1の磁気ヘッド13による記録再生精度を向上させることが可能となる。
【0098】
また、位相及び周波数が共に最適なクロック信号を算出でき、これにより、読み書き対象となる磁性ドット位置に磁気ヘッド13を正確に位置させ、磁気ヘッド13による読み書き処理を迅速に行なうことができる。
【実施例2】
【0099】
次に、本実施例2に係る磁気記録媒体10´の磁性ドット配列構成について説明する。図13は、本実施例2に係る磁気記録媒体10´に形成された磁性ドットを説明する図である。
【0100】
ここで、上述した実施例1において、磁気記録媒体10のタイミング同期領域30に形成したプリアンブル32、33は、互いに千鳥状に形成した正負の磁極を有する磁性ドットパターンとしているが、本実施例2では、正負の磁性ドットパターンではなく、図13に示すように、片側磁化パターンとする2個のプリアンブル32、33を有することとしている。
【0101】
すなわち、図13に示すように、本実施例2のタイミング同期領域30に形成したプリアンブル32、33は、互いに千鳥格子状に形成されるとともに、トラック中心17を対称軸として反転するように形成された、正極のみの複数個の磁性ドット19を形成している。
【0102】
また、前述した実施例1では、1つのトラック16ごとに斜め配置とした磁性ドット18が並ぶ構成としたが、本実施例2では、図13に示すように、数トラックに亘って連続した斜めドットパターンが並ぶ配置としている。
【0103】
本実施例2による片側磁化パターンの磁性ドット19は、サーボ領域(図2)と同様に外部から磁界を印加し、DC着磁を行ない磁性ドット19を磁化させることで形成することができる。
【0104】
図13に示すように、磁気ヘッド13の横断時にプリアンブル32とプリアンブル33から検出される波形a´、b´、c´は、片側磁化パターン(正極)であるため正極側の波形パターンのみが検出される。この場合、プリアンブル32、33による再生信号は、負極性に相当する部分に磁性ドットが配置されていなため0レベルの信号となる。
【0105】
すなわち、図13に示すように、トラック16上で磁気ヘッド13が対応する位置(A部、B部、C部)は、それぞれ3つの波形a´、b´、c´を頂点と対応する位置となり波形a′は、磁気ヘッド13がトラック中心17に位置しているため基準波形(位相差が発生しない波形)となる。そして、プリアンブル32の波形b′とプリアンブル33の波形c′とは位相が内周側或いは外周側に遅延する位相差を有する波形となる。
【0106】
すなわち、本実施例2の場合も実施例1と同様に、2個のプリアンブル32、33により取得された位相差を比較し演算する。そして、図7に示す位相差変位量関数値(位相差変位量テーブル61)から磁気ヘッド13の正確な変位量を算出し、この算出した変位量に基づいて、位置決め制御を行なう。
【0107】
ここで、実施例2における片側磁化パターンの場合、2個のプリアンブル32、33による信号振幅は半減するため再生信号レベルのゲイン調整は、2倍程度に見積もる調整を行うか、2個のプリアンブル32、33に続く、正極の磁極パターンの先頭に書き込まれるリシンクマーク31で行うものとする。
【0108】
本実施例2の片側磁化パターンとして形成された磁気記録媒体10′の場合では、磁性ドット19間の隙間が増えることによって隣接するトラック16からの干渉を低減させることができるため、位置ずれがなく正確な再生信号を取得することができる。また、正極または負極何れか一方の書き込み動作が不要となるため、磁極作成工程が容易となるうえ、クロック信号によるタイミング取得の動作を簡素化とすることが可能となる。
【0109】
また、本実施例2では、実施例1と異なり、数トラックに亘って連続した斜めドットパターンが並ぶ配置としているため、1Tシフトすることで、位相がπだけ変化することとになり、トラック間で大きな位置ズレや外乱変動があった場合でも、位相の変化の連続性を保つことができる。
【0110】
さて、これまで本発明の実施例1、2について説明したが、本発明は上述した実施例1、2以外にも、上記特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施例にて実施されてもよいものである。
【0111】
すなわち、上記実施例1、2による磁気ヘッドの位置決め制御、クロック信号の補正は、磁気記録媒体をパターンドメディアとするパターンドメディア記録方式に適用するものとして説明したが、パターンドメディア記録方式以外にディスクリートトラック記録方式にも適用することができる。
【0112】
また、上記実施例1、2では、2個のプリアンブル32、33の先頭にタイミング同期をとるリシンクマークを形成することとしているが、リシンクマークの機能を、サーボ情報を取得するサーボ領域で代用させることで、このリシンクマークを不要とすることとしてもよい。
【0113】
また、上記実施例1、2において、タイミング同期領域30に設けられる2個のプリアンブル32、33はそれぞれ隣接する順序となる位置に形成しているが、これらプリアンブル32、33は、隣接した位置ではなく、離隔した位置に形成するようにしてもよい。
【0114】
また、上記実施例1、2において、磁気記録媒体10は、互いに千鳥格子状であり、トラック中心17を対称軸として反転する正負の磁性ドットを形成するものとしているが、プリアンブル32とプリアンブル33との再生信号により位相差が検出できる磁性ドットパターンであれば、磁性ドット配列が正負反転する配列以外の配列構成であってもよい。
【0115】
以上の実施例1、2を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0116】
(付記1)所定のサーボ情報を有するサーボ領域と、
所定のユーザ情報を有するユーザデータ領域と、
磁性粒子からなる複数の磁性体が、互いに千鳥状に配列されるとともに、当該配列がトラック中心を対称軸として反転するように形成された2つのプリアンブル領域と、
前記プリアンブル領域の先頭に位置し、当該プリアンブル部の開始を示すリシンクマーク領域と
が形成された磁気記録層を備えたことを特徴とする磁気記憶媒体。
【0117】
(付記2)配列が異なる複数の磁性体が形成された2つのプリアンブル領域および前記プリアンブル領域の先頭に位置し、当該プリアンブル領域の開始を示すリシンクマーク領域が形成された磁気記録層を有する磁気記録媒体と、
前記磁気記憶媒体に対してデータの読み書き処理を行なう磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドによって前記2つのプリアンブル領域の出力を取得し、当該2つのプリアンブル領域による出力から位相差を検出する位相差検出手段と、
前記位相差検出手段から検出された前記2つのプリアンブル領域による位相差に基づいて、トラック中心と前記磁気ヘッドとの変位量を算出する変位量算出手段と、
前記変位量算出手段により算出されたトラック中心に対する前記磁気ヘッドの変位量に基づいて、トラック中心に前記磁気ヘッドが位置するように当該磁気ヘッドの位置を制御する位置決め手段と
を備えることを特徴とする情報記憶装置。
【0118】
(付記3)前記2つのプリアンブル領域から取得される前記リシンクマークを起点とした位相差に対応付けて前記磁気ヘッドの変位量が予め記憶された位相変位量記憶手段をさらに備え、
前記変位量算出手段は、前記位相変位量記憶手段に記憶された変位量に基づいて、変位量を算出することを特徴とする付記2に記載の情報記憶装置。
【0119】
(付記4)前記2つのプリアンブル領域には、互いに千鳥状に配列されるとともに、当該配列がトラック中心を対称軸として反転する磁性粒子からなる複数の磁性体が形成されたことを特徴とする付記2または3に記載の情報記憶装置。
【0120】
(付記5)前記位相差検出手段により検出された前記2つのプリアンブル領域による位相差を比較し、当該位相差の中間点をデータの読み込みまたは、書き込みタイミングであるクロック信号として算出するクロック信号算出手段さらに備えることを特徴とする付記2、3または4に記載の情報記憶装置。
【0121】
(付記6)配列が異なる複数の磁性体が形成された2つのプリアンブル領域および当該プリアンブル領域の先頭に位置し、当該プリアンブル領域の開始を示すリシンクマーク領域が形成された磁気記録層を有する磁気記録媒体から磁気ヘッドによって取得した出力を受け入れ、前記磁気ヘッドによって取得した前記2つのプリアンブル領域による出力から位相差を検出する位相差検出手段と、
前記位相差検出手段から検出された前記2つのプリアンブル領域による位相差に基づいて、トラック中心と前記磁気ヘッドとの変位量を算出する変位量算出手段と、
前記変位量算出手段により算出されたトラック中心に対する前記磁気ヘッドの変位量に基づいて、トラック中心に前記磁気ヘッドが位置するように当該磁気ヘッドの位置を制御する位置決め手段と
を備えることを特徴とする制御装置。
【符号の説明】
【0122】
1 情報記憶装置
10 磁気記録媒体
12 SPM
13 磁気ヘッド
14 VCM
16 トラック
17 トラック中心
18、19 磁性ドット
30 タイミング同期領域
31 リシンクマーク
32、33 プリアンブル
40 データ領域
50 VCM
51 プリアンプ
52 リードチャネル
53 HDコントローラ
54 パワーアンプ
55 MPU
57 位相検出部
58 変位量算出部
59 位置決め部
60 メモリ
61 位相差変位量テーブル
70 ホストIF制御部
80 ホストコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のサーボ情報を有するサーボ領域と、
所定のユーザ情報を有するユーザデータ領域と、
磁性粒子からなる複数の磁性体が、互いに千鳥状に配列されるとともに、当該配列がトラック中心を対称軸として反転するように形成された2つのプリアンブル領域と、
前記プリアンブル領域の先頭に位置し、当該プリアンブル部の開始を示すリシンクマーク領域と
が形成された磁気記録層を備えたことを特徴とする磁気記憶媒体。
【請求項2】
配列が異なる複数の磁性体が形成された2つのプリアンブル領域および前記プリアンブル領域の先頭に位置し、当該プリアンブル領域の開始を示すリシンクマーク領域が形成された磁気記録層を有する磁気記録媒体と、
前記磁気記憶媒体に対してデータの読み書き処理を行なう磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドによって前記2つのプリアンブル領域の出力を取得し、当該2つのプリアンブル領域による出力から位相差を検出する位相差検出手段と、
前記位相差検出手段から検出された前記2つのプリアンブル領域による位相差に基づいて、トラック中心と前記磁気ヘッドとの変位量を算出する変位量算出手段と、
前記変位量算出手段により算出されたトラック中心に対する前記磁気ヘッドの変位量に基づいて、トラック中心に前記磁気ヘッドが位置するように当該磁気ヘッドの位置を制御する位置決め手段と
を備えることを特徴とする情報記憶装置。
【請求項3】
前記2つのプリアンブル領域から取得される前記リシンクマークを起点とした位相差に対応付けて前記磁気ヘッドの変位量が予め記憶された位相変位量記憶手段をさらに備え、
前記変位量算出手段は、前記位相変位量記憶手段に記憶された変位量に基づいて、変位量を算出することを特徴とする請求項2に記載の情報記憶装置。
【請求項4】
前記2つのプリアンブル領域には、互いに千鳥状に配列されるとともに、当該配列がトラック中心を対称軸として反転する磁性粒子からなる複数の磁性体が形成されたことを特徴とする請求項2または3に記載の情報記憶装置。
【請求項5】
前記位相差検出手段により検出された前記2つのプリアンブル領域による位相差を比較し、当該位相差の中間点をデータの読み込みまたは、書き込みタイミングであるクロック信号として算出するクロック信号算出手段さらに備えることを特徴とする請求項2、3または4に記載の情報記憶装置。
【請求項6】
配列が異なる複数の磁性体が形成された2つのプリアンブル領域および当該プリアンブル領域の先頭に位置し、当該プリアンブル領域の開始を示すリシンクマーク領域が形成された磁気記録層を有する磁気記録媒体から磁気ヘッドによって取得した出力を受け入れ、前記磁気ヘッドによって取得した前記2つのプリアンブル領域による出力から位相差を検出する位相差検出手段と、
前記位相差検出手段から検出された前記2つのプリアンブル領域による位相差に基づいて、トラック中心と前記磁気ヘッドとの変位量を算出する変位量算出手段と、
前記変位量算出手段により算出されたトラック中心に対する前記磁気ヘッドの変位量に基づいて、トラック中心に前記磁気ヘッドが位置するように当該磁気ヘッドの位置を制御する位置決め手段と
を備えることを特徴とする制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−205330(P2010−205330A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48556(P2009−48556)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)
【Fターム(参考)】