磁気記憶媒体に対するトランスデューサ位置を決定する方法、磁気記憶媒体に対してトランスデューサを移動させる方法、および磁気記憶装置
【課題】ビットパターン化された磁気媒体からトランスデューサ位置情報を抽出する方法を提供する。
【解決手段】ビットパターン化された磁気媒体からトランスデューサ位置情報を抽出するステップは、複数の離散的かつ別個の記録ビットを備えた少なくとも1つのデータアレイを有する磁気記憶媒体を設けるステップと、データアレイに近接してトランスデューサを設けるステップとを含む。複数の記録ビットに応じたリードバック信号がトランスデューサで生成される。トランスデューサ位置情報を決定するステップはさらに、リードバック信号から少なくとも第1の位置信号および第2の位置信号を生成するステップを含む。
【解決手段】ビットパターン化された磁気媒体からトランスデューサ位置情報を抽出するステップは、複数の離散的かつ別個の記録ビットを備えた少なくとも1つのデータアレイを有する磁気記憶媒体を設けるステップと、データアレイに近接してトランスデューサを設けるステップとを含む。複数の記録ビットに応じたリードバック信号がトランスデューサで生成される。トランスデューサ位置情報を決定するステップはさらに、リードバック信号から少なくとも第1の位置信号および第2の位置信号を生成するステップを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
磁気記憶装置は、概して、磁気記憶媒体に対する磁気データの書込および読取を行なうトランスデューサを用いることにより磁気記憶媒体にデータを記憶する。たとえば、ディスク記憶装置は、高速回転用のスピンドルモータ上に同軸に搭載された1つ以上の磁気記録ディスクを含み得る。ディスクが回転すると、1つ以上のトランスデューサ、すなわち読取および/または書込ヘッドが、アクチュエータアセンブリによりディスクの表面を移動して、磁気記録ディスクに対するデジタル情報の書込および読取を行なう。
【0002】
磁気記憶装置における磁気記憶媒体は、1つ以上のデータアレイに編成することができる。磁気記憶システムにおける磁気記録ディスクの表面は、たとえば、概して当該ディスクの半径に対して垂直である複数の同心円状に間隔をあけて配置されたデータトラックに分割され得る。ディスク上のデータトラックはさらに、複数のデータセクタに編成され得る。データは、大抵の場合、ヘッドによって記録または誘導された一連の磁気転移の形でデータトラックに沿ってセクタ内に記憶される。
【0003】
磁気記憶装置は、大抵の場合、正確かつ確実にデータを記録しかつ読取るための制御システムを含む。たとえば、ディスク記憶装置は、通常、磁気記録ディスクの表面にわたるヘッドの動きを制御するための閉じループサーボ制御システムを含む。磁気記録ディスクにおける所望のデータトラックに対するデータの書込および読取を確実に行なうために、ヘッドは、トラックが当該ヘッドの下で回転する際にデータトラックの中心上に位置決めされる。1回の動作中にヘッドを位置決めするために、サーボ制御システムは、まず、ヘッドをその現在の位置から特定のデータトラックに移動させるシーク機能を実行する。移動先のデータトラックに到達すると、サーボ制御システムは、ヘッドがデータトラックの中心に確実に追従するように当該ヘッドの位置を監視および調整する追跡機能を実行する。
【0004】
サーボ制御システムは、概して、ヘッドがディスク上の1つ以上のサーボセクタを通過すると、ヘッドの位置を示すサーボ情報信号を当該ヘッドから受信する。次いで、サーボ制御システムは、必要に応じてヘッドの位置を調整するためにヘッドの現在の位置とその動きとを決定するようサーボ情報信号を処理する。ディスク記憶装置は、概して、別個のディスクがサーボ情報の記憶専用にされている専用のサーボシステム、または、サーボセクタが単一のディスク上のデータセクタ間に位置決めされている埋込み型のサーボシステムを採用している。サーボセクタは、データトラックの中心上のヘッド位置を維持するのに用いられるサーボバーストパターンならびにセクタおよびトラック識別コードを含み得る。
【0005】
さらに大量のデジタル情報を記憶したいという一般的な要望があるために、磁気記憶装置の設計者および製造業者は、磁気記憶媒体のビット密度を増すよう絶えず試みている。磁気記録ディスクの場合、これは、面積密度の増大、すなわち、ディスク上のトラックの数および所与のトラックに沿ったビットの数の増大を意味する。新しい材料および新しい記録方法により面積密度の増大が容易になった。たとえば、複数の別個のデータビットが磁気記憶媒体においてパターン化されているビットパターン化された媒体は、概して、連続した磁気媒体におけるよりもデータビット同士をより近接して位置決めすることを可能にする。しかしながら、サーボ制御システムに位置決め情報を与えるために、サーボ情報は依然としてディスク上に含まれなければならない。サーボパターン化プロセスの複雑さ
と、ビットパターン化された媒体の製造に伴う処理コストとに加えて、サーボセクタが存在するために、データを記録するのに利用できる面積がさらに小さくなってしまう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
磁気記憶媒体に対するトランスデューサの位置を決定するステップは、当該トランスデューサによって生成されるリードバック信号から少なくとも第1の位置信号および第2の位置信号を生成するステップを含む。磁気記憶媒体は、複数の離散的かつ別個の記録ビットを備えた少なくとも1つのデータアレイを有する。トランスデューサは、少なくとも1つのデータアレイに近接して設けられており、トランスデューサによって生成されるリードバック信号は、少なくとも1つのデータアレイの複数の記録ビットに依存している。これらおよび他のさまざまな特徴および利点が、以下の詳細な説明を読むことにより明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】この発明の実施例に従った磁気記憶装置を示す上面図である。
【図2】この発明の実施例に従ったデータビットパターンおよびトランスデューサヘッドを示す上面図である。
【図3】この発明の実施例に従ったサーボ制御システムを示すブロック図である。
【図4】この発明の実施例に従ったデータビットパターンを示す磁気記憶媒体を示す上面図である。
【図5】この発明の実施例に従ったサーボ位置検出器を示すブロック図である。
【図6】この発明の実施例に従ったチャージポンプ回路を示すブロック図である。
【図7】この発明の実施例に従った、信号条件付けユニット通過後のシミュレートされたリードバック信号を示す図である。
【図8】この発明の実施例に従ったサンプル、ホールドおよび蓄積回路に渡される図7のリードバック信号をウインドウで示す図である。
【図9】この発明の実施例に従った図8の信号に基づいた位置信号を示す図である。
【図10】この発明の実施例に従った図9の位置信号に基づいた位置誤差信号を示す図である。
【図11】この発明の実施例に従ったアレイ計数回路を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
好ましい実施例の詳細な説明
以下の詳細な説明は添付の図面に関連して読まれるべきである。添付の図面においては、別個の図面中の同様の要素には同様の番号が付されている。添付の図面に示される実施例は、特に規定のない限り、必ずしも縮尺どおりではない。図面に示され、この明細書中に記載される実施例は単に例示を目的としたものであり、この発明をいずれかの実施例に限定することを意図したものではないことが理解されるだろう。逆に、添付の特許請求の範囲によって規定されるとおり、この発明の範囲内に含まれ得るよう代替例、変形例および同等例を包含することが意図される。
【0009】
図1は磁気記憶装置10の上面図を示しており、当該磁気記憶装置10は、図示される実施例においては、ユーザデータを磁気的に記憶および検索するためのホストコンピュータとインターフェイスを取るのに用いられるタイプのディスクドライブの形を取る。ディスクドライブは、基部12に搭載されたさまざまな構成要素を含む。(部分的に切断した状態で示される)上部カバー14は基部12と協働して、ディスクドライブのための内部の封止された環境を形成する。
【0010】
磁気記憶装置10は、データを記録するための磁気記憶媒体を含む。図1に示される実施例においては、当該媒体は、ある速度で回転方向22に回転させるための(慨して20で示される)スピンドルモータに搭載された複数の軸方向に整列した磁気記録ディスク16の形を取る。ディスク16の近傍に位置決めされた軸受シャフトアセンブリ24を中心に回転するアクチュエータ23は、ディスク16上のトラック(図示せず)に対するデータの書込および読取を行なうのに用いられる。
【0011】
アクチュエータ23は、複数の剛性のアクチュエータアーム26を含む。可撓性のあるサスペンションアセンブリ28はアクチュエータアーム26の遠端に取付けられて、トランスデューサ30の対応するアレイ(たとえば、読取および/または書込ヘッド)を支持する。各ディスク表面の近傍にはトランスデューサが1つ備えられている。各々のトランスデューサ30は、関連するディスク16の対応する表面にごく近接して浮動するよう設計されたスライダアセンブリ(別個には明示せず)を含む。ディスクドライブ10を停止させると、トランスデューサ30が外側のストップ32上で停止し、磁気ラッチ34がアクチュエータ23を固定する。
【0012】
音声コイルモータ(VCM)36は、アクチュエータ23を動かすのに用いられ、アクチュエータコイル38および永久磁石40を含む。コイル38に電流を印加すると、アクチュエータ23がピボットアセンブリ24を中心に回転する。フレックス回路アセンブリ42は、アクチュエータ23と、基部12の下側に搭載されたディスクドライブ印刷回路基板アセンブリ(PCBA)との間に電気通信経路を設けている。フレックス回路アセンブリ42は、トランスデューサ30に電流を印加してデータの読取および書込を行なうプリアンプ/ドライバ回路44を含む。
【0013】
図2は、この発明のいくつかの実施例に従った磁気記憶ディスク16の上面図であり、拡大された区域はデータビットパターン50を示している。磁気記憶ディスク16はビットパターン化された媒体として示されており、データビットパターンは、互い違いに配置されたビットパターンで編成された複数の別個の離散的なデータビット52を含む。ビットパターン化された媒体は、概して、いくつかの実施例に従った基板と磁気層との間の1つ以上の中間層とともに、垂直な異方性を備えた磁気記録層が上に重なっている非磁性基板を含む。磁気層は、たとえば、リソグラフィパターニングまたは自己組織化ナノ粒子アレイにより離散的かつ別個のデータビット52を形成するようパターン化される。いくつかの実施例においては、磁気記憶ディスク16は、DC消去されてから磁気記憶装置内に搭載される。
【0014】
データビット52はディスク16の周りに延在し、複数のデータアレイ54に分割される。複数のデータアレイ54は、図示される実施例においては、ディスクの半径に対して概して垂直であり(図2において破線56で示される)同心円状に間隔をあけて配置されたデータトラックの形を取る。データアレイ54はこの実施例においては磁気記憶媒体において同心のデータトラックを含むが、当該データアレイが代替的な構成および幾何学的形態を有し得ることが理解されるべきである。一例として、いくつかの応用例においては、データアレイ54は、データビットの1つ以上の実質的に真直ぐな列として形成され得る。図2を参照すると、この実施例における各々のデータアレイ54は、ディスクの周りに延在する複数の互い違いに配置されたデータビット52を含む。データアレイ54は、互い違いに配置された2ビット幅のビットパターンを含み、各データアレイは少なくともデータビットの第1のグループ58およびデータビットの第2のグループ59を有する。たとえば、図2を参照すると、第1のグループ58は外径(OD)データビットのグループを含み、第2のグループ59は内径(ID)データビットのグループを含む。
【0015】
データアレイ54はさらに、データを記録するためにトランスデューサ30によって磁
化された複数の記録ビットを有する1つ以上のデータセクタに編成される。「記録ビット」という語は、この明細書においては、トランスデューサ、たとえば読取/書込ヘッドが、たとえばコンピュータ動作システムから記憶装置に経路指定されるデータ(この明細書においては時に「ユーザデータ」と称される)などのデータを繰返し記録および/または上書きすることができるようなビットを説明するのに用いられる。対照的に、位置情報は、最初に「サーボ」セクタまたはサーボビットに記録されてもよいが、通常、データが記録ビットに記録されるのと同じやり方でサーボビットに繰返し記録および/または上書きされるものではない。図2のデータアレイ54は2ビット幅として示されているが、いくつかの実施例に従うと、アレイは2ビットよりも幅広であってもよいことが企図される。
【0016】
図3は、読取および/または書込ヘッド61などのトランスデューサに位置制御を与えるサーボ制御システム60の機能ブロック図を示す。サーボ制御システム60は、ホストシステム(たとえば、パーソナルコンピュータ)からコマンド信号を受信し、サーボ位置検出器64から1つ以上の位置信号63を受信するコントローラ62(たとえば、デジタル信号プロセッサ)を含む。位置検出器64はヘッド61からリードバック信号65を受信し、そこから、この発明のいくつかの実施例に従って1つ以上の位置信号63を抽出または生成する。コントローラ62は、ホストシステムからの1つ以上の位置信号63および任意のコマンド信号を処理し、対応する制御信号66をVCM36に送信してアクチュエータ23およびヘッド61を移動させる。
【0017】
図4は、図2に示される磁気記憶ディスク16上のユーザデータセクタにおける1つのデータアレイ54(たとえば、データトラック)に近接して位置決めされたヘッド61の上面図を示す。ヘッド61は、磁気記憶ディスク16およびデータアレイ54が回転してヘッド61を通り過ぎると、ダウントラック方向70に向かってデータアレイ54に対するユーザデータの読取および/または書込を行なう。図4に図示のとおり、ヘッド61は、この実施例においては2つの記録ビット72の幅であるデータアレイ54の幅にわたって記録ビット72に対するユーザデータの読取および/または書込を行なうのに十分な幅Wを有する。ヘッド61はまた、ディスク16の内径と外径との間においてクロストラック経路74に沿ったデータアレイ54にわたり、アクチュエータ23を介して移動する。
【0018】
ヘッド61は、記録ビット72から生じる磁界を有効に検知するために、および/または、アレイにおける特定の記録ビット72に磁界を十分に誘導するために、アレイにまで浮動すると、データアレイ54の中心線の上に位置決めされる必要がある。しかしながら、ヘッドがアレイの上方を自由に浮動するので、ヘッド61の位置は、アレイの中心線から容易にずれる傾向がある。この実施例においては、データアレイがデータトラックを含む場合、このずれは、パターン化されたトラックにおけるトラック配置エラーまたは外部もしくは内部の障害によって引起こされる可能性がある。ヘッド61のずれが大きくなりすぎると、ヘッド61は、データアレイにおける記録ビット72のうちのいくつかによって生成された磁界を検知することができなくなるか、または、適切な記録ビット72に所望の磁界を誘導することができなくなるだろう。
【0019】
上述のとおり、多くの磁気記録媒体は、ヘッドの位置を維持するためのフィードバックを与えるために、専用のサーボバーストパターンでパターン化される。この発明の実施例に従うと、データアレイに記憶されたユーザデータを示すヘッドからのリードバック信号はまた、ヘッドのトラック外れ位置を示すよう処理され得る。したがって、この発明の実施例では、磁気記憶媒体上の専用のサーボバーストパターンが不要になる。こうして、媒体のパターン化に付随する費用が低減され、データ記憶のために利用可能となる総面積が大きくなる。というのも、ユーザデータをアレイから読取る際にヘッドの位置を決定することができるからである。
【0020】
図4を参照すると、ヘッド61は、データアレイ54の上を浮動すると、ヘッドが通り過ぎた記録ビット72に記憶されたデータパターンに応じてリードバック信号を生成する。リードバック信号は、ヘッド61のトラック外れ位置、すなわち、データアレイ54の中心線75に対するヘッドの位置を直接的に示す。たとえば、図4を参照すると、リードバック信号は、ヘッド61が中心線75からずれた経路76に沿って移動する際のヘッドのトラック外れ位置を示す。図4は、静止したデータアレイ54と相対的に移動するヘッド61を簡潔に示しているが、ディスクの製造プロセス中にもたらされるトラックの偏心もしくは振れおよび/または動作環境において生じる障害のせいで、ディスクドライブ構成を含むこの実施例におけるヘッド61とデータアレイ54との間に相対的移動が実際に起こる可能性があることが認識されるだろう。
【0021】
図3および図4に示される実施例に従うと、リードバック信号65は、記録ビットの第1のグループ58によってヘッド61においてもたらされる応答の第1のグループと、記録ビットの第2のグループ59によってヘッド61においてもたらされる応答の第2のグループとを含む。ヘッド61がデータアレイ54の中心線75から離れて第1のグループ58に向かって移動すると、第1のグループ58によるリードバック信号65における応答が大きくなり、第2のグループ59からの応答が小さくなる。ヘッド61が第1のグループ58から離れて第2のグループ59に向かって移動すると、類似しているが逆の影響が生じる。
【0022】
こうして、記録ビットの第1および第2のグループからのリードバック信号65における応答は、サーボ制御ループ60のための1つ以上の位置信号63を生成するために位置検出器64が用いるヘッド位置情報を含む。一実施例においては、抽出された位置信号に基づいて位置誤差信号(PES)が生成される。有利には、位置情報は、図2および図4の実施例における互い違いに配置されたドットアレイとして示される記録ビット72の本来のビットパターン50から抽出される。こうして、サーボバーストパターンを含む専用のサーボデータセクタについての必要性が、いくつかの実施例において最小限にされるかまたはなくされる。
【0023】
位置情報は、本来のビットパターン50から直接得られるので、たとえば専用のPESバーストパターンの特性を多少とも上回るデータアレイ54の長さに関して監視され得る。たとえば、位置情報は、データアレイ54に沿ったユーザデータセクタ全体の長さに沿って抽出され得る。次いで、位置情報をサブサンプリングして、サーボ制御のための十分な情報とサンプルレートとを維持しつつ、制御信号に高い信号対雑音比(SNR)を有利に与えることができる。
【0024】
図5は、リードバック信号65から位置情報を抽出するためのサーボ位置検出器64の一実施例を示す。図示された位置検出器64は、ヘッド61からリードバック信号65を受信し、位置情報を抽出してコントローラ62に渡すと、当該コントローラ62が、これに応じてヘッド61を再度位置決めするようアクチュエータ23を作動させる。
【0025】
専用のサーボ位置検出器64は、たとえば、リードバック信号65を受取り、条件付けされたリードバック信号83を出力する連続時間フィルタおよび自動利得制御を含むアナログ信号調整回路82(ASC)を含む。一実施例においては、ASC82はまた、リードバック信号65をクロック回復回路84に送信する前に整流するための整流器と、位置情報を抽出するための回路とを含む。
【0026】
図7は、ヘッドが一実施例に従って図4のデータアレイ54の上方を進む際の、ヘッド61からの条件付けされたリードバック信号83のシミュレーションを示す。この実施例において、当該シミュレーションでは、データアレイ54、たとえばデータトラックが0
.2トラックの偏心または振れを有すると想定されている。個々の応答80の大きさは、互い違いに配置されたビットパターン50における個々の記録ビット72に対応する。図7は、同じ極性を有する記録ビット72から生成された条件付けされたリードバック信号83を示す。しかしながら、いくつかの実施例においては、個々の応答80のうちのいくつかは(反対方向に分極された記録ビット72からの)逆の極性を有し、そのASC全波が、クロック回復および位置情報抽出のための整流を行なう。
【0027】
一実施例においては、クロック回復回路84は、リードバック信号65の位相および周波数を捕らえて自動追尾してクロック信号86を与える位相ロックループ(PLL)を含む。図5を参照すると、クロック信号86は、条件付けされたリードバック信号83から位置情報を抽出するよう回路を駆動する。図示される実施例においては、クロック信号86は、第1および第2のサンプル、ホールドおよび蓄積(SHA(sample, hold, and accumulate))回路90、91と、第1および第2のアナログ・デジタルコンバータ(ADC)92、93とを駆動し、これらが、条件付けされたリードバック信号83を処理し、第1の位置信号(PS1)94および第2の位置信号(PS2)95を出力する。
【0028】
第1および第2のSHA回路90、91は、リードバック信号65を選択的にサンプリングして、互い違いに配置された記録ビットの第1および第2のグループ58、59からの応答を抽出して、PS1 94およびPS2 95をそれぞれ生成するようにする。図8は、第1および第2のSHA回路90、91によるサンプリングの準備ができた条件付けされたリードバック信号83を示す。
【0029】
図5および図8を参照すると、インバータ96は、第1のSHA回路90を駆動するクロック信号86を反転させる。一実施例に従うと、第1のSHA回路90は、条件付けされたリードバック信号83をサンプリングして、交流応答98の第1のグループを抽出および蓄積する。たとえば、第1のSHA回路90は、反転されたクロック信号の立上がりエッジ上の条件付けされたリードバック信号83のサンプリングを始め、立下がりエッジ上のサンプリングされた応答をホールドし、予め定められた蓄積ウインドウの間にわたって、サンプリングされた応答98を蓄積する。
【0030】
各々の蓄積ウインドウの端部において、第1のSHA回路90が、蓄積された値を第1のADC92に提示し、次の蓄積ウインドウの間にわたって当該サンプリングされた応答を蓄積するようリセットする。第1のADC92は、蓄積されたアナログ値をデジタル値に変換することによってPS1 94を生成する。図9は、一実施例に従って生成されたPS1 94を示す。
【0031】
第2のSHA回路91は、同様の態様で、条件付けされたリードバック信号83を選択的にサンプリングする。非反転クロック信号によって駆動されると、第2のSHA回路91は、条件付けされたリードバック信号83をサンプリングし、蓄積ウインドウの間にわたって、記録ビットの第2のグループ59から交流応答99のグループを抽出および蓄積する。蓄積された値は、第2のADC93によってデジタル値に変換されて、PS2 95を生成する。図9は、一実施例に従って生成されたPS2 95を示す。
【0032】
第1および/または第2のSHA回路90、91は、サンプル、ホールドおよび蓄積の機能を実行するためのデジタルおよび/またはアナログ回路を含み得る。たとえば、一実施例においては、複数のAtmel TS83102G0B ADCは、十分に高いサンプルレートをもたらすようインターレース可能であり、サンプルおよびホールド装置として使用可能である。当該装置の出力は、プログラムされた蓄積ウインドウのための蓄積を実行するASIC装置に対し多重化される。
【0033】
図6を参照すると、アナログ領域における1つの代替的な実施例においては、第1および/または第2のSHA回路90、91はチャージポンプ回路100を含み得る。図示のとおり、チャージポンプ回路100は、アナログスイッチを通じて可能化および/または不能化され、放電され得る。たとえば、複数の無線周波数(RF)スイッチ、たとえばアナログ装置のADG902のスイッチなどを用いて、チャージポンプ102の充放電を制御することができる。図6に示される構成においては、回復されたクロック信号106によって駆動される第1のスイッチ104は、リードバック信号65をサンプリングし、チャージポンプ102を充電することができる。コントローラ62からの蓄積ゲート信号110によって駆動される第2のスイッチ108は、蓄積ウインドウの期間にわたってサンプリングを可能化し得る。第3のスイッチ112は、コントローラから放電制御パルス114を受信すると、蓄積ウインドウの端部においてチャージポンプ102を放電し得る。放電前に、チャージポンプ102に蓄えられた蓄積された応答が、ADC92、93のうちの1つに送信され得る。
【0034】
蓄積ウインドウは、この発明の一実施例においては、磁気記憶ディスク16上の同期マークによって決定される。同期マークはさまざまな使用可能な形を取り得る。一例として、欠落しているデータビットのうちの1つ以上のラジアルラインが、一定の間隔をおいて蓄積ウインドウを再同期させるためにビットパターンに含まれてもよい。別の実施例においては、同期マークは、一定の間隔をおいてデータアレイにおいて符号化されるグレイコードを含む。
【0035】
図8および図9に図示のとおり、蓄積ウインドウは、本質的に、各々の連続した記録ビットのための応答をサンプリングして、記録ビットの第1および第2のグループ58、59に個々に蓄積するよう設定される。他の実施例においては、蓄積ウインドウが長ければ長いほど、位置検出器64が一度にいくつもの記録ビットからの応答を蓄積することが可能となる。たとえば、蓄積期間は、いくつかの磁気記録ディスクにおいて用いられるサーボセクタと同様の長さを持つ均一なディスクセグメントに対応し得る。いくつかの実施例に従うと、蓄積ウインドウは、500ビット以上までであってもよい。蓄積ウインドウが長ければ長いほど、有利には、位置検出器64に一層のノイズ低減がもたらされ、さらに、ダウントラック方向における蓄積ウインドウのジッタ、クロックジッタ、スキューおよびビット配置エラーの影響をより受けにくくなる。
【0036】
図5を参照すると、位置検出器64は、一実施例に従ったクロック分周器116を含む。分周されたクロック信号が第1および第2のADC92、93を駆動して、PS1およびPS2をそれぞれ生成するのに用いられるサンプリングレートを制御する。図9を参照すると、1に設定されたクロック分周器で生成されるPS1 94およびPS2 95が示される。こうして、PS1 94およびPS2 95は、交互の記録ビット72の各々についてのデータ点を含む。代替的な実施例においては、分周器は、1よりも大きな値に設定されて、蓄積された値を第1および第2のADC92、93がサブサンプリングすることを可能にする。一例として、ディスクドライブ構成におけるサンプルレートの要件およびトラック位置決め不良の予算要件に応じて、このサブサンプリングは、100倍ほどの数値によるものであってもよいが、他の値も可能である。
【0037】
図10は、0.2トラックのトラック偏心率でデータアレイ、たとえばデータトラック上を移動する際のアレイ中心線75からのヘッドのずれを表わす位置誤差信号(PES)120を示す。この実施例においては、コントローラは、PES=(PS1−PS2)/(PS1+PS2)という関係に従ってPES120を生成するようプログラムされる。しかしながら、コントローラは、さまざまな実施例に従って、PESについての他の計算を用いるようプログラムされてもよい。この実施例の1つの付加的な利点は、典型的にはデータトラックがサーボトラックの半分ほどの幅である場合にディスクドライブ線形化方
式に比べて線形化プロセスがより単純になるようなサーボトラック幅を本質的にデータトラック(すなわちデータアレイ)の幅が有することである。
【0038】
PES120は、アレイ中心線75からのヘッド61のずれの大きさおよび方向を示す。認識されるように、この実施例においては、振幅が大きければ大きいほど、アレイ中心線75からのずれが大きくなる。正の振幅は、記録ビット72の第1のグループ58に向かうヘッド61の動きを表わし(たとえば、アレイの外径)、負の振幅は、記録ビットの第2のグループ59に向かうヘッド61の動きを表わす(たとえば、アレイの内径)。一実施例においては、PESの方向性は、反転クロック信号および非反転クロック信号でサンプリングされた応答がそれぞれ記録ビットの第1のグループ58および第2のグループ59と合致するように記録ビット72をパターン化することによって確実にされる。たとえば、蓄積ウインドウの始端における第1の記録ビット72、および、その後の奇数の記録ビットのすべては、記録ビットの第2のグループ59に属し得る。同様に、第2の記録ビット、および、偶数の記録ビットのすべては、記録ビットの第1のグループ58に属し得る。
【0039】
こうして、位置検出器64は、所望のデータアレイの中心線に対するヘッドの微細な位置を検出するようヘッド61からのリードバック信号65を処理する。図5に示される位置検出器は実現可能な一実施例に過ぎず、サーボ位置検出器の構成を限定するよう意図されるものではない。位置情報を抽出し、PS1 94、PS2 95および/またはPES120などの対応する位置信号を生成するのに複数の方式が利用可能であることが認識されるだろう。
【0040】
ヘッドをデータアレイ上で中心に配置することに加えて、サーボ制御システムはまた、読取および/または書込ヘッドが所望のデータアレイの近傍にくることを確実にするために粗い位置情報を提供する。たとえば、一実施例においては、各々のデータアレイはグレイコードなどのアレイ識別子を含み、サーボコントローラは、アレイ識別子から受取った応答を解釈するようプログラムされ得る。こうして、ヘッドは、シーク動作中に粗い位置情報を用いて所望のデータアレイに近接して位置決め可能となり、後続のトラックまたはアレイ追従動作中に位置信号からの微細な位置情報が使用可能となる。
【0041】
しかしながら、いくつかの実施例においては、磁気記憶媒体のデータ密度を高めるのに専用のグレイコードを使用することを避けることが望ましいかもしれない。図11は、この発明の実施例に従ったアレイ計数回路130のブロック図を示す。アレイ計数回路130は、位置検出器64と並行して作動して、ヘッド61の粗い位置および微細な位置をそれぞれ決定し得る。
【0042】
図11に図示のとおり、ヘッドの微細な位置を決定するのに用いられるリードバック信号65はヘッド61からASC132に経路指定される。このASC132は、位置検出器64におけるASC82と同じであっても同じでなくてもよい。リードバック信号65が条件付けされ、コンパレータ回路134に供給されると、当該コンパレータ回路134が、リードバック信号の大きさを予め定められた交差しきい値(crossing threshold)と比較する。リードバック信号の大きさがこのしきい値に達すると、コンパレータがカウンタ136をトリガする。たとえば、図4に関して、ディスクの外径に向かってクロストラック経路74に沿って次の隣接するデータアレイへと移動すると、小さくされた信号を検出することによってこのことが登録される。これは、記録ビット(IDビット)の第2のグループ59からの信号寄与が低減していることによるものである。
【0043】
したがって、磁気記憶ディスク16のデータアレイ54に対してヘッド61(すなわち、トランスデューサ)位置を移動させる方法は、データアレイにわたってトランスデュー
サを移動させ、ヘッド61が当該データアレイを横断する際にカウンタ136をトリガするステップを含む。所望のデータアレイを示すカウンタ136についての予め定められた限度に達した後、コントローラが所望のデータアレイの近傍でヘッド61を停止させる。次いで、サーボ制御システムが、上述のとおり、データアレイの中心線に対するヘッドの微細な位置を監視するトラックまたはアレイ追従モードに入り得る。
【0044】
アレイ計数回路130は、一実施例においては、図1に示される外側のストップ32などの予め定められた区域にヘッド61を移動させることによって初期設定される。位置識別子、たとえばグレイコードまたは同期マークにより、その初期位置が回路に提供される。アレイ計数回路130は、次いで、アレイ間の移動時にそのカウンタ136を増分および/または減分させ得る。
【0045】
こうして、この発明の実施例が開示される。この発明をいくつかの開示された実施例に関連付けて詳細に説明してきたが、開示される実施例は限定ではなく例示を目的として提示されるものである。上述の実現例および他の実現例は添付の特許請求の範囲内にある。
【符号の説明】
【0046】
10 磁気記憶装置、12 基部、14 上部カバー、16 磁気記録ディスク、23アクチュエータ、24 軸受シャフトアセンブリ、30 トランスデューサ。
【技術分野】
【0001】
背景
磁気記憶装置は、概して、磁気記憶媒体に対する磁気データの書込および読取を行なうトランスデューサを用いることにより磁気記憶媒体にデータを記憶する。たとえば、ディスク記憶装置は、高速回転用のスピンドルモータ上に同軸に搭載された1つ以上の磁気記録ディスクを含み得る。ディスクが回転すると、1つ以上のトランスデューサ、すなわち読取および/または書込ヘッドが、アクチュエータアセンブリによりディスクの表面を移動して、磁気記録ディスクに対するデジタル情報の書込および読取を行なう。
【0002】
磁気記憶装置における磁気記憶媒体は、1つ以上のデータアレイに編成することができる。磁気記憶システムにおける磁気記録ディスクの表面は、たとえば、概して当該ディスクの半径に対して垂直である複数の同心円状に間隔をあけて配置されたデータトラックに分割され得る。ディスク上のデータトラックはさらに、複数のデータセクタに編成され得る。データは、大抵の場合、ヘッドによって記録または誘導された一連の磁気転移の形でデータトラックに沿ってセクタ内に記憶される。
【0003】
磁気記憶装置は、大抵の場合、正確かつ確実にデータを記録しかつ読取るための制御システムを含む。たとえば、ディスク記憶装置は、通常、磁気記録ディスクの表面にわたるヘッドの動きを制御するための閉じループサーボ制御システムを含む。磁気記録ディスクにおける所望のデータトラックに対するデータの書込および読取を確実に行なうために、ヘッドは、トラックが当該ヘッドの下で回転する際にデータトラックの中心上に位置決めされる。1回の動作中にヘッドを位置決めするために、サーボ制御システムは、まず、ヘッドをその現在の位置から特定のデータトラックに移動させるシーク機能を実行する。移動先のデータトラックに到達すると、サーボ制御システムは、ヘッドがデータトラックの中心に確実に追従するように当該ヘッドの位置を監視および調整する追跡機能を実行する。
【0004】
サーボ制御システムは、概して、ヘッドがディスク上の1つ以上のサーボセクタを通過すると、ヘッドの位置を示すサーボ情報信号を当該ヘッドから受信する。次いで、サーボ制御システムは、必要に応じてヘッドの位置を調整するためにヘッドの現在の位置とその動きとを決定するようサーボ情報信号を処理する。ディスク記憶装置は、概して、別個のディスクがサーボ情報の記憶専用にされている専用のサーボシステム、または、サーボセクタが単一のディスク上のデータセクタ間に位置決めされている埋込み型のサーボシステムを採用している。サーボセクタは、データトラックの中心上のヘッド位置を維持するのに用いられるサーボバーストパターンならびにセクタおよびトラック識別コードを含み得る。
【0005】
さらに大量のデジタル情報を記憶したいという一般的な要望があるために、磁気記憶装置の設計者および製造業者は、磁気記憶媒体のビット密度を増すよう絶えず試みている。磁気記録ディスクの場合、これは、面積密度の増大、すなわち、ディスク上のトラックの数および所与のトラックに沿ったビットの数の増大を意味する。新しい材料および新しい記録方法により面積密度の増大が容易になった。たとえば、複数の別個のデータビットが磁気記憶媒体においてパターン化されているビットパターン化された媒体は、概して、連続した磁気媒体におけるよりもデータビット同士をより近接して位置決めすることを可能にする。しかしながら、サーボ制御システムに位置決め情報を与えるために、サーボ情報は依然としてディスク上に含まれなければならない。サーボパターン化プロセスの複雑さ
と、ビットパターン化された媒体の製造に伴う処理コストとに加えて、サーボセクタが存在するために、データを記録するのに利用できる面積がさらに小さくなってしまう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
磁気記憶媒体に対するトランスデューサの位置を決定するステップは、当該トランスデューサによって生成されるリードバック信号から少なくとも第1の位置信号および第2の位置信号を生成するステップを含む。磁気記憶媒体は、複数の離散的かつ別個の記録ビットを備えた少なくとも1つのデータアレイを有する。トランスデューサは、少なくとも1つのデータアレイに近接して設けられており、トランスデューサによって生成されるリードバック信号は、少なくとも1つのデータアレイの複数の記録ビットに依存している。これらおよび他のさまざまな特徴および利点が、以下の詳細な説明を読むことにより明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】この発明の実施例に従った磁気記憶装置を示す上面図である。
【図2】この発明の実施例に従ったデータビットパターンおよびトランスデューサヘッドを示す上面図である。
【図3】この発明の実施例に従ったサーボ制御システムを示すブロック図である。
【図4】この発明の実施例に従ったデータビットパターンを示す磁気記憶媒体を示す上面図である。
【図5】この発明の実施例に従ったサーボ位置検出器を示すブロック図である。
【図6】この発明の実施例に従ったチャージポンプ回路を示すブロック図である。
【図7】この発明の実施例に従った、信号条件付けユニット通過後のシミュレートされたリードバック信号を示す図である。
【図8】この発明の実施例に従ったサンプル、ホールドおよび蓄積回路に渡される図7のリードバック信号をウインドウで示す図である。
【図9】この発明の実施例に従った図8の信号に基づいた位置信号を示す図である。
【図10】この発明の実施例に従った図9の位置信号に基づいた位置誤差信号を示す図である。
【図11】この発明の実施例に従ったアレイ計数回路を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
好ましい実施例の詳細な説明
以下の詳細な説明は添付の図面に関連して読まれるべきである。添付の図面においては、別個の図面中の同様の要素には同様の番号が付されている。添付の図面に示される実施例は、特に規定のない限り、必ずしも縮尺どおりではない。図面に示され、この明細書中に記載される実施例は単に例示を目的としたものであり、この発明をいずれかの実施例に限定することを意図したものではないことが理解されるだろう。逆に、添付の特許請求の範囲によって規定されるとおり、この発明の範囲内に含まれ得るよう代替例、変形例および同等例を包含することが意図される。
【0009】
図1は磁気記憶装置10の上面図を示しており、当該磁気記憶装置10は、図示される実施例においては、ユーザデータを磁気的に記憶および検索するためのホストコンピュータとインターフェイスを取るのに用いられるタイプのディスクドライブの形を取る。ディスクドライブは、基部12に搭載されたさまざまな構成要素を含む。(部分的に切断した状態で示される)上部カバー14は基部12と協働して、ディスクドライブのための内部の封止された環境を形成する。
【0010】
磁気記憶装置10は、データを記録するための磁気記憶媒体を含む。図1に示される実施例においては、当該媒体は、ある速度で回転方向22に回転させるための(慨して20で示される)スピンドルモータに搭載された複数の軸方向に整列した磁気記録ディスク16の形を取る。ディスク16の近傍に位置決めされた軸受シャフトアセンブリ24を中心に回転するアクチュエータ23は、ディスク16上のトラック(図示せず)に対するデータの書込および読取を行なうのに用いられる。
【0011】
アクチュエータ23は、複数の剛性のアクチュエータアーム26を含む。可撓性のあるサスペンションアセンブリ28はアクチュエータアーム26の遠端に取付けられて、トランスデューサ30の対応するアレイ(たとえば、読取および/または書込ヘッド)を支持する。各ディスク表面の近傍にはトランスデューサが1つ備えられている。各々のトランスデューサ30は、関連するディスク16の対応する表面にごく近接して浮動するよう設計されたスライダアセンブリ(別個には明示せず)を含む。ディスクドライブ10を停止させると、トランスデューサ30が外側のストップ32上で停止し、磁気ラッチ34がアクチュエータ23を固定する。
【0012】
音声コイルモータ(VCM)36は、アクチュエータ23を動かすのに用いられ、アクチュエータコイル38および永久磁石40を含む。コイル38に電流を印加すると、アクチュエータ23がピボットアセンブリ24を中心に回転する。フレックス回路アセンブリ42は、アクチュエータ23と、基部12の下側に搭載されたディスクドライブ印刷回路基板アセンブリ(PCBA)との間に電気通信経路を設けている。フレックス回路アセンブリ42は、トランスデューサ30に電流を印加してデータの読取および書込を行なうプリアンプ/ドライバ回路44を含む。
【0013】
図2は、この発明のいくつかの実施例に従った磁気記憶ディスク16の上面図であり、拡大された区域はデータビットパターン50を示している。磁気記憶ディスク16はビットパターン化された媒体として示されており、データビットパターンは、互い違いに配置されたビットパターンで編成された複数の別個の離散的なデータビット52を含む。ビットパターン化された媒体は、概して、いくつかの実施例に従った基板と磁気層との間の1つ以上の中間層とともに、垂直な異方性を備えた磁気記録層が上に重なっている非磁性基板を含む。磁気層は、たとえば、リソグラフィパターニングまたは自己組織化ナノ粒子アレイにより離散的かつ別個のデータビット52を形成するようパターン化される。いくつかの実施例においては、磁気記憶ディスク16は、DC消去されてから磁気記憶装置内に搭載される。
【0014】
データビット52はディスク16の周りに延在し、複数のデータアレイ54に分割される。複数のデータアレイ54は、図示される実施例においては、ディスクの半径に対して概して垂直であり(図2において破線56で示される)同心円状に間隔をあけて配置されたデータトラックの形を取る。データアレイ54はこの実施例においては磁気記憶媒体において同心のデータトラックを含むが、当該データアレイが代替的な構成および幾何学的形態を有し得ることが理解されるべきである。一例として、いくつかの応用例においては、データアレイ54は、データビットの1つ以上の実質的に真直ぐな列として形成され得る。図2を参照すると、この実施例における各々のデータアレイ54は、ディスクの周りに延在する複数の互い違いに配置されたデータビット52を含む。データアレイ54は、互い違いに配置された2ビット幅のビットパターンを含み、各データアレイは少なくともデータビットの第1のグループ58およびデータビットの第2のグループ59を有する。たとえば、図2を参照すると、第1のグループ58は外径(OD)データビットのグループを含み、第2のグループ59は内径(ID)データビットのグループを含む。
【0015】
データアレイ54はさらに、データを記録するためにトランスデューサ30によって磁
化された複数の記録ビットを有する1つ以上のデータセクタに編成される。「記録ビット」という語は、この明細書においては、トランスデューサ、たとえば読取/書込ヘッドが、たとえばコンピュータ動作システムから記憶装置に経路指定されるデータ(この明細書においては時に「ユーザデータ」と称される)などのデータを繰返し記録および/または上書きすることができるようなビットを説明するのに用いられる。対照的に、位置情報は、最初に「サーボ」セクタまたはサーボビットに記録されてもよいが、通常、データが記録ビットに記録されるのと同じやり方でサーボビットに繰返し記録および/または上書きされるものではない。図2のデータアレイ54は2ビット幅として示されているが、いくつかの実施例に従うと、アレイは2ビットよりも幅広であってもよいことが企図される。
【0016】
図3は、読取および/または書込ヘッド61などのトランスデューサに位置制御を与えるサーボ制御システム60の機能ブロック図を示す。サーボ制御システム60は、ホストシステム(たとえば、パーソナルコンピュータ)からコマンド信号を受信し、サーボ位置検出器64から1つ以上の位置信号63を受信するコントローラ62(たとえば、デジタル信号プロセッサ)を含む。位置検出器64はヘッド61からリードバック信号65を受信し、そこから、この発明のいくつかの実施例に従って1つ以上の位置信号63を抽出または生成する。コントローラ62は、ホストシステムからの1つ以上の位置信号63および任意のコマンド信号を処理し、対応する制御信号66をVCM36に送信してアクチュエータ23およびヘッド61を移動させる。
【0017】
図4は、図2に示される磁気記憶ディスク16上のユーザデータセクタにおける1つのデータアレイ54(たとえば、データトラック)に近接して位置決めされたヘッド61の上面図を示す。ヘッド61は、磁気記憶ディスク16およびデータアレイ54が回転してヘッド61を通り過ぎると、ダウントラック方向70に向かってデータアレイ54に対するユーザデータの読取および/または書込を行なう。図4に図示のとおり、ヘッド61は、この実施例においては2つの記録ビット72の幅であるデータアレイ54の幅にわたって記録ビット72に対するユーザデータの読取および/または書込を行なうのに十分な幅Wを有する。ヘッド61はまた、ディスク16の内径と外径との間においてクロストラック経路74に沿ったデータアレイ54にわたり、アクチュエータ23を介して移動する。
【0018】
ヘッド61は、記録ビット72から生じる磁界を有効に検知するために、および/または、アレイにおける特定の記録ビット72に磁界を十分に誘導するために、アレイにまで浮動すると、データアレイ54の中心線の上に位置決めされる必要がある。しかしながら、ヘッドがアレイの上方を自由に浮動するので、ヘッド61の位置は、アレイの中心線から容易にずれる傾向がある。この実施例においては、データアレイがデータトラックを含む場合、このずれは、パターン化されたトラックにおけるトラック配置エラーまたは外部もしくは内部の障害によって引起こされる可能性がある。ヘッド61のずれが大きくなりすぎると、ヘッド61は、データアレイにおける記録ビット72のうちのいくつかによって生成された磁界を検知することができなくなるか、または、適切な記録ビット72に所望の磁界を誘導することができなくなるだろう。
【0019】
上述のとおり、多くの磁気記録媒体は、ヘッドの位置を維持するためのフィードバックを与えるために、専用のサーボバーストパターンでパターン化される。この発明の実施例に従うと、データアレイに記憶されたユーザデータを示すヘッドからのリードバック信号はまた、ヘッドのトラック外れ位置を示すよう処理され得る。したがって、この発明の実施例では、磁気記憶媒体上の専用のサーボバーストパターンが不要になる。こうして、媒体のパターン化に付随する費用が低減され、データ記憶のために利用可能となる総面積が大きくなる。というのも、ユーザデータをアレイから読取る際にヘッドの位置を決定することができるからである。
【0020】
図4を参照すると、ヘッド61は、データアレイ54の上を浮動すると、ヘッドが通り過ぎた記録ビット72に記憶されたデータパターンに応じてリードバック信号を生成する。リードバック信号は、ヘッド61のトラック外れ位置、すなわち、データアレイ54の中心線75に対するヘッドの位置を直接的に示す。たとえば、図4を参照すると、リードバック信号は、ヘッド61が中心線75からずれた経路76に沿って移動する際のヘッドのトラック外れ位置を示す。図4は、静止したデータアレイ54と相対的に移動するヘッド61を簡潔に示しているが、ディスクの製造プロセス中にもたらされるトラックの偏心もしくは振れおよび/または動作環境において生じる障害のせいで、ディスクドライブ構成を含むこの実施例におけるヘッド61とデータアレイ54との間に相対的移動が実際に起こる可能性があることが認識されるだろう。
【0021】
図3および図4に示される実施例に従うと、リードバック信号65は、記録ビットの第1のグループ58によってヘッド61においてもたらされる応答の第1のグループと、記録ビットの第2のグループ59によってヘッド61においてもたらされる応答の第2のグループとを含む。ヘッド61がデータアレイ54の中心線75から離れて第1のグループ58に向かって移動すると、第1のグループ58によるリードバック信号65における応答が大きくなり、第2のグループ59からの応答が小さくなる。ヘッド61が第1のグループ58から離れて第2のグループ59に向かって移動すると、類似しているが逆の影響が生じる。
【0022】
こうして、記録ビットの第1および第2のグループからのリードバック信号65における応答は、サーボ制御ループ60のための1つ以上の位置信号63を生成するために位置検出器64が用いるヘッド位置情報を含む。一実施例においては、抽出された位置信号に基づいて位置誤差信号(PES)が生成される。有利には、位置情報は、図2および図4の実施例における互い違いに配置されたドットアレイとして示される記録ビット72の本来のビットパターン50から抽出される。こうして、サーボバーストパターンを含む専用のサーボデータセクタについての必要性が、いくつかの実施例において最小限にされるかまたはなくされる。
【0023】
位置情報は、本来のビットパターン50から直接得られるので、たとえば専用のPESバーストパターンの特性を多少とも上回るデータアレイ54の長さに関して監視され得る。たとえば、位置情報は、データアレイ54に沿ったユーザデータセクタ全体の長さに沿って抽出され得る。次いで、位置情報をサブサンプリングして、サーボ制御のための十分な情報とサンプルレートとを維持しつつ、制御信号に高い信号対雑音比(SNR)を有利に与えることができる。
【0024】
図5は、リードバック信号65から位置情報を抽出するためのサーボ位置検出器64の一実施例を示す。図示された位置検出器64は、ヘッド61からリードバック信号65を受信し、位置情報を抽出してコントローラ62に渡すと、当該コントローラ62が、これに応じてヘッド61を再度位置決めするようアクチュエータ23を作動させる。
【0025】
専用のサーボ位置検出器64は、たとえば、リードバック信号65を受取り、条件付けされたリードバック信号83を出力する連続時間フィルタおよび自動利得制御を含むアナログ信号調整回路82(ASC)を含む。一実施例においては、ASC82はまた、リードバック信号65をクロック回復回路84に送信する前に整流するための整流器と、位置情報を抽出するための回路とを含む。
【0026】
図7は、ヘッドが一実施例に従って図4のデータアレイ54の上方を進む際の、ヘッド61からの条件付けされたリードバック信号83のシミュレーションを示す。この実施例において、当該シミュレーションでは、データアレイ54、たとえばデータトラックが0
.2トラックの偏心または振れを有すると想定されている。個々の応答80の大きさは、互い違いに配置されたビットパターン50における個々の記録ビット72に対応する。図7は、同じ極性を有する記録ビット72から生成された条件付けされたリードバック信号83を示す。しかしながら、いくつかの実施例においては、個々の応答80のうちのいくつかは(反対方向に分極された記録ビット72からの)逆の極性を有し、そのASC全波が、クロック回復および位置情報抽出のための整流を行なう。
【0027】
一実施例においては、クロック回復回路84は、リードバック信号65の位相および周波数を捕らえて自動追尾してクロック信号86を与える位相ロックループ(PLL)を含む。図5を参照すると、クロック信号86は、条件付けされたリードバック信号83から位置情報を抽出するよう回路を駆動する。図示される実施例においては、クロック信号86は、第1および第2のサンプル、ホールドおよび蓄積(SHA(sample, hold, and accumulate))回路90、91と、第1および第2のアナログ・デジタルコンバータ(ADC)92、93とを駆動し、これらが、条件付けされたリードバック信号83を処理し、第1の位置信号(PS1)94および第2の位置信号(PS2)95を出力する。
【0028】
第1および第2のSHA回路90、91は、リードバック信号65を選択的にサンプリングして、互い違いに配置された記録ビットの第1および第2のグループ58、59からの応答を抽出して、PS1 94およびPS2 95をそれぞれ生成するようにする。図8は、第1および第2のSHA回路90、91によるサンプリングの準備ができた条件付けされたリードバック信号83を示す。
【0029】
図5および図8を参照すると、インバータ96は、第1のSHA回路90を駆動するクロック信号86を反転させる。一実施例に従うと、第1のSHA回路90は、条件付けされたリードバック信号83をサンプリングして、交流応答98の第1のグループを抽出および蓄積する。たとえば、第1のSHA回路90は、反転されたクロック信号の立上がりエッジ上の条件付けされたリードバック信号83のサンプリングを始め、立下がりエッジ上のサンプリングされた応答をホールドし、予め定められた蓄積ウインドウの間にわたって、サンプリングされた応答98を蓄積する。
【0030】
各々の蓄積ウインドウの端部において、第1のSHA回路90が、蓄積された値を第1のADC92に提示し、次の蓄積ウインドウの間にわたって当該サンプリングされた応答を蓄積するようリセットする。第1のADC92は、蓄積されたアナログ値をデジタル値に変換することによってPS1 94を生成する。図9は、一実施例に従って生成されたPS1 94を示す。
【0031】
第2のSHA回路91は、同様の態様で、条件付けされたリードバック信号83を選択的にサンプリングする。非反転クロック信号によって駆動されると、第2のSHA回路91は、条件付けされたリードバック信号83をサンプリングし、蓄積ウインドウの間にわたって、記録ビットの第2のグループ59から交流応答99のグループを抽出および蓄積する。蓄積された値は、第2のADC93によってデジタル値に変換されて、PS2 95を生成する。図9は、一実施例に従って生成されたPS2 95を示す。
【0032】
第1および/または第2のSHA回路90、91は、サンプル、ホールドおよび蓄積の機能を実行するためのデジタルおよび/またはアナログ回路を含み得る。たとえば、一実施例においては、複数のAtmel TS83102G0B ADCは、十分に高いサンプルレートをもたらすようインターレース可能であり、サンプルおよびホールド装置として使用可能である。当該装置の出力は、プログラムされた蓄積ウインドウのための蓄積を実行するASIC装置に対し多重化される。
【0033】
図6を参照すると、アナログ領域における1つの代替的な実施例においては、第1および/または第2のSHA回路90、91はチャージポンプ回路100を含み得る。図示のとおり、チャージポンプ回路100は、アナログスイッチを通じて可能化および/または不能化され、放電され得る。たとえば、複数の無線周波数(RF)スイッチ、たとえばアナログ装置のADG902のスイッチなどを用いて、チャージポンプ102の充放電を制御することができる。図6に示される構成においては、回復されたクロック信号106によって駆動される第1のスイッチ104は、リードバック信号65をサンプリングし、チャージポンプ102を充電することができる。コントローラ62からの蓄積ゲート信号110によって駆動される第2のスイッチ108は、蓄積ウインドウの期間にわたってサンプリングを可能化し得る。第3のスイッチ112は、コントローラから放電制御パルス114を受信すると、蓄積ウインドウの端部においてチャージポンプ102を放電し得る。放電前に、チャージポンプ102に蓄えられた蓄積された応答が、ADC92、93のうちの1つに送信され得る。
【0034】
蓄積ウインドウは、この発明の一実施例においては、磁気記憶ディスク16上の同期マークによって決定される。同期マークはさまざまな使用可能な形を取り得る。一例として、欠落しているデータビットのうちの1つ以上のラジアルラインが、一定の間隔をおいて蓄積ウインドウを再同期させるためにビットパターンに含まれてもよい。別の実施例においては、同期マークは、一定の間隔をおいてデータアレイにおいて符号化されるグレイコードを含む。
【0035】
図8および図9に図示のとおり、蓄積ウインドウは、本質的に、各々の連続した記録ビットのための応答をサンプリングして、記録ビットの第1および第2のグループ58、59に個々に蓄積するよう設定される。他の実施例においては、蓄積ウインドウが長ければ長いほど、位置検出器64が一度にいくつもの記録ビットからの応答を蓄積することが可能となる。たとえば、蓄積期間は、いくつかの磁気記録ディスクにおいて用いられるサーボセクタと同様の長さを持つ均一なディスクセグメントに対応し得る。いくつかの実施例に従うと、蓄積ウインドウは、500ビット以上までであってもよい。蓄積ウインドウが長ければ長いほど、有利には、位置検出器64に一層のノイズ低減がもたらされ、さらに、ダウントラック方向における蓄積ウインドウのジッタ、クロックジッタ、スキューおよびビット配置エラーの影響をより受けにくくなる。
【0036】
図5を参照すると、位置検出器64は、一実施例に従ったクロック分周器116を含む。分周されたクロック信号が第1および第2のADC92、93を駆動して、PS1およびPS2をそれぞれ生成するのに用いられるサンプリングレートを制御する。図9を参照すると、1に設定されたクロック分周器で生成されるPS1 94およびPS2 95が示される。こうして、PS1 94およびPS2 95は、交互の記録ビット72の各々についてのデータ点を含む。代替的な実施例においては、分周器は、1よりも大きな値に設定されて、蓄積された値を第1および第2のADC92、93がサブサンプリングすることを可能にする。一例として、ディスクドライブ構成におけるサンプルレートの要件およびトラック位置決め不良の予算要件に応じて、このサブサンプリングは、100倍ほどの数値によるものであってもよいが、他の値も可能である。
【0037】
図10は、0.2トラックのトラック偏心率でデータアレイ、たとえばデータトラック上を移動する際のアレイ中心線75からのヘッドのずれを表わす位置誤差信号(PES)120を示す。この実施例においては、コントローラは、PES=(PS1−PS2)/(PS1+PS2)という関係に従ってPES120を生成するようプログラムされる。しかしながら、コントローラは、さまざまな実施例に従って、PESについての他の計算を用いるようプログラムされてもよい。この実施例の1つの付加的な利点は、典型的にはデータトラックがサーボトラックの半分ほどの幅である場合にディスクドライブ線形化方
式に比べて線形化プロセスがより単純になるようなサーボトラック幅を本質的にデータトラック(すなわちデータアレイ)の幅が有することである。
【0038】
PES120は、アレイ中心線75からのヘッド61のずれの大きさおよび方向を示す。認識されるように、この実施例においては、振幅が大きければ大きいほど、アレイ中心線75からのずれが大きくなる。正の振幅は、記録ビット72の第1のグループ58に向かうヘッド61の動きを表わし(たとえば、アレイの外径)、負の振幅は、記録ビットの第2のグループ59に向かうヘッド61の動きを表わす(たとえば、アレイの内径)。一実施例においては、PESの方向性は、反転クロック信号および非反転クロック信号でサンプリングされた応答がそれぞれ記録ビットの第1のグループ58および第2のグループ59と合致するように記録ビット72をパターン化することによって確実にされる。たとえば、蓄積ウインドウの始端における第1の記録ビット72、および、その後の奇数の記録ビットのすべては、記録ビットの第2のグループ59に属し得る。同様に、第2の記録ビット、および、偶数の記録ビットのすべては、記録ビットの第1のグループ58に属し得る。
【0039】
こうして、位置検出器64は、所望のデータアレイの中心線に対するヘッドの微細な位置を検出するようヘッド61からのリードバック信号65を処理する。図5に示される位置検出器は実現可能な一実施例に過ぎず、サーボ位置検出器の構成を限定するよう意図されるものではない。位置情報を抽出し、PS1 94、PS2 95および/またはPES120などの対応する位置信号を生成するのに複数の方式が利用可能であることが認識されるだろう。
【0040】
ヘッドをデータアレイ上で中心に配置することに加えて、サーボ制御システムはまた、読取および/または書込ヘッドが所望のデータアレイの近傍にくることを確実にするために粗い位置情報を提供する。たとえば、一実施例においては、各々のデータアレイはグレイコードなどのアレイ識別子を含み、サーボコントローラは、アレイ識別子から受取った応答を解釈するようプログラムされ得る。こうして、ヘッドは、シーク動作中に粗い位置情報を用いて所望のデータアレイに近接して位置決め可能となり、後続のトラックまたはアレイ追従動作中に位置信号からの微細な位置情報が使用可能となる。
【0041】
しかしながら、いくつかの実施例においては、磁気記憶媒体のデータ密度を高めるのに専用のグレイコードを使用することを避けることが望ましいかもしれない。図11は、この発明の実施例に従ったアレイ計数回路130のブロック図を示す。アレイ計数回路130は、位置検出器64と並行して作動して、ヘッド61の粗い位置および微細な位置をそれぞれ決定し得る。
【0042】
図11に図示のとおり、ヘッドの微細な位置を決定するのに用いられるリードバック信号65はヘッド61からASC132に経路指定される。このASC132は、位置検出器64におけるASC82と同じであっても同じでなくてもよい。リードバック信号65が条件付けされ、コンパレータ回路134に供給されると、当該コンパレータ回路134が、リードバック信号の大きさを予め定められた交差しきい値(crossing threshold)と比較する。リードバック信号の大きさがこのしきい値に達すると、コンパレータがカウンタ136をトリガする。たとえば、図4に関して、ディスクの外径に向かってクロストラック経路74に沿って次の隣接するデータアレイへと移動すると、小さくされた信号を検出することによってこのことが登録される。これは、記録ビット(IDビット)の第2のグループ59からの信号寄与が低減していることによるものである。
【0043】
したがって、磁気記憶ディスク16のデータアレイ54に対してヘッド61(すなわち、トランスデューサ)位置を移動させる方法は、データアレイにわたってトランスデュー
サを移動させ、ヘッド61が当該データアレイを横断する際にカウンタ136をトリガするステップを含む。所望のデータアレイを示すカウンタ136についての予め定められた限度に達した後、コントローラが所望のデータアレイの近傍でヘッド61を停止させる。次いで、サーボ制御システムが、上述のとおり、データアレイの中心線に対するヘッドの微細な位置を監視するトラックまたはアレイ追従モードに入り得る。
【0044】
アレイ計数回路130は、一実施例においては、図1に示される外側のストップ32などの予め定められた区域にヘッド61を移動させることによって初期設定される。位置識別子、たとえばグレイコードまたは同期マークにより、その初期位置が回路に提供される。アレイ計数回路130は、次いで、アレイ間の移動時にそのカウンタ136を増分および/または減分させ得る。
【0045】
こうして、この発明の実施例が開示される。この発明をいくつかの開示された実施例に関連付けて詳細に説明してきたが、開示される実施例は限定ではなく例示を目的として提示されるものである。上述の実現例および他の実現例は添付の特許請求の範囲内にある。
【符号の説明】
【0046】
10 磁気記憶装置、12 基部、14 上部カバー、16 磁気記録ディスク、23アクチュエータ、24 軸受シャフトアセンブリ、30 トランスデューサ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記憶媒体に対するトランスデューサ位置を決定する方法であって、
複数の記録ビットを含む少なくとも1つのデータアレイを含む磁気記憶媒体を設けるステップを含み、前記記録ビットは離散的かつ別個であり、前記方法はさらに、
前記少なくとも1つのデータアレイに近接してトランスデューサを設けるステップと、
前記少なくとも1つのデータアレイの前記複数の記録ビットに応じて、前記トランスデューサでリードバック信号を生成するステップと、
前記リードバック信号から少なくとも第1および第2の位置信号を生成するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記複数の記録ビットは、前記リードバック信号において応答の第1および第2のグループをそれぞれもたらす記録ビットの第1および第2のグループを含み、前記少なくとも第1の位置信号を生成するための前記応答の第1のグループと、前記少なくとも第2の位置信号を生成するための前記応答の第2のグループとを前記リードバック信号から抽出するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記磁気記憶媒体はディスクを含み、前記記録ビットの第1のグループは外径記録ビットを含み、前記記録ビットの第2のグループは内径記録ビットを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
蓄積ウインドウの間にわたり、結果として第1の蓄積された値をもたらす前記応答の第1のグループと、結果として第2の蓄積された値をもたらす前記応答の第2のグループとを蓄積するステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記蓄積ウインドウは、前記少なくとも1つのデータアレイに沿ったユーザデータセクタの長さを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記磁気記憶媒体がディスクを含み、前記トランスデューサに対して前記ディスクを回転させるステップをさらに含み、前記蓄積ウインドウは前記ディスクの少なくとも1回の回転を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
複数の蓄積ウインドウの間にわたって前記応答の第1および第2のグループを蓄積するステップをさらに含み、前記少なくとも第1および第2の位置信号を生成するステップは、それぞれ、第1および第2のアナログ・デジタルコンバータで前記第1および第2の蓄積された値をデジタル化するステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記第1および第2のアナログ・デジタルコンバータで前記第1および第2の蓄積された値をサブサンプリングするステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも第1および第2の位置信号に基づいて位置誤差信号を生成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
磁気記憶媒体に対してトランスデューサを移動させる方法であって、
複数のデータアレイを含む磁気記憶媒体を設けるステップを含み、各々は複数の記録ビットを含み、前記記録ビットは離散的かつ別個であり、前記方法はさらに、
前記磁気記憶媒体に近接してトランスデューサを設けるステップと、
前記複数のデータアレイにわたって前記トランスデューサを移動させるステップと、
前記トランスデューサを所望のデータアレイの近傍で停止させるステップと、
前記所望のデータアレイの前記複数の記録ビットに応じて、前記トランスデューサでリ
ードバック信号を生成するステップと、
前記所望のデータアレイに対する前記トランスデューサの位置に応じて、前記リードバック信号から少なくとも第1および第2の位置信号を生成するステップとを含む、方法。
【請求項11】
各々のデータアレイはアレイ識別子を含み、前記トランスデューサが前記複数のデータアレイにわたって移動すると前記複数のデータアレイの各々から前記アレイ識別子を読取るステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記トランスデューサが前記複数のデータアレイにわたって移動するとカウンタをトリガするステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
各々のデータアレイにおける前記複数の記録ビットは、前記リードバック信号において応答の第1および第2のグループをそれぞれもたらす内側の記録ビットおよび外側の記録ビットを含み、予め定められたしきい値を満たす前記応答の第1および第2のグループのうちの1つに応答して前記カウンタをトリガするステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
磁気記憶装置であって、
基部と、
前記基部に回転可能に搭載された磁気記憶媒体とを含み、前記磁気記憶媒体は、複数の記録ビットを含む少なくとも1つのデータアレイを含み、前記記録ビットは離散的かつ別個であり、前記磁気記憶装置はさらに、
前記少なくとも1つのデータアレイに近接して位置決めされ、前記少なくとも1つのデータアレイの前記複数の記録ビットに応じてリードバック信号を生成するためのトランスデューサと、
前記トランスデューサに連結され、前記少なくとも1つのデータアレイに対して前記トランスデューサを移動させるためのアクチュエータと、
前記トランスデューサと前記アクチュエータとの間に連結されたサーボ制御システムとを含み、前記サーボ制御システムは、前記リードバック信号に基づいて少なくとも第1および第2の位置信号を生成する位置検出器を含み、前記少なくとも第1および第2の位置信号に基づいて前記アクチュエータの移動を制御するコントローラをさらに含む、磁気記憶装置。
【請求項15】
前記複数の記録ビットは、前記リードバック信号において応答の第1および第2のグループをそれぞれもたらす記録ビットの第1および第2のグループを含み、前記少なくとも第1および第2の位置信号はそれぞれ前記応答の第1および第2のグループに基づいている、請求項14に記載の磁気記憶装置。
【請求項16】
前記複数の記録ビットは、2ビット幅の交互に配置されたビットパターンを含み、前記記録ビットの第1のグループは外径記録ビットを含み、前記記録ビットの第2のグループは内径記録ビットを含む、請求項15に記載の磁気記憶装置。
【請求項17】
前記複数の記録ビットは、2ビット幅よりも大きな交互に配置されたビットパターンを含む、請求項16に記載の磁気記憶装置。
【請求項18】
前記位置検出器は、前記少なくとも第1および第2の位置信号をそれぞれ生成するための第1および第2のサンプル、ホールドおよび蓄積回路を含む、請求項14に記載の磁気記憶装置。
【請求項19】
前記位置検出器はさらに、前記第1および第2のサンプル、ホールドおよび蓄積回路の
出力をそれぞれデジタル化するための少なくとも第1および第2のアナログ・デジタルコンバータをさらに含む、請求項18に記載の磁気記憶装置。
【請求項20】
前記コントローラは、前記少なくとも第1および第2の位置信号に基づいて位置誤差信号を生成する、請求項14に記載の磁気記憶装置。
【請求項1】
磁気記憶媒体に対するトランスデューサ位置を決定する方法であって、
複数の記録ビットを含む少なくとも1つのデータアレイを含む磁気記憶媒体を設けるステップを含み、前記記録ビットは離散的かつ別個であり、前記方法はさらに、
前記少なくとも1つのデータアレイに近接してトランスデューサを設けるステップと、
前記少なくとも1つのデータアレイの前記複数の記録ビットに応じて、前記トランスデューサでリードバック信号を生成するステップと、
前記リードバック信号から少なくとも第1および第2の位置信号を生成するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記複数の記録ビットは、前記リードバック信号において応答の第1および第2のグループをそれぞれもたらす記録ビットの第1および第2のグループを含み、前記少なくとも第1の位置信号を生成するための前記応答の第1のグループと、前記少なくとも第2の位置信号を生成するための前記応答の第2のグループとを前記リードバック信号から抽出するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記磁気記憶媒体はディスクを含み、前記記録ビットの第1のグループは外径記録ビットを含み、前記記録ビットの第2のグループは内径記録ビットを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
蓄積ウインドウの間にわたり、結果として第1の蓄積された値をもたらす前記応答の第1のグループと、結果として第2の蓄積された値をもたらす前記応答の第2のグループとを蓄積するステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記蓄積ウインドウは、前記少なくとも1つのデータアレイに沿ったユーザデータセクタの長さを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記磁気記憶媒体がディスクを含み、前記トランスデューサに対して前記ディスクを回転させるステップをさらに含み、前記蓄積ウインドウは前記ディスクの少なくとも1回の回転を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
複数の蓄積ウインドウの間にわたって前記応答の第1および第2のグループを蓄積するステップをさらに含み、前記少なくとも第1および第2の位置信号を生成するステップは、それぞれ、第1および第2のアナログ・デジタルコンバータで前記第1および第2の蓄積された値をデジタル化するステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記第1および第2のアナログ・デジタルコンバータで前記第1および第2の蓄積された値をサブサンプリングするステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも第1および第2の位置信号に基づいて位置誤差信号を生成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
磁気記憶媒体に対してトランスデューサを移動させる方法であって、
複数のデータアレイを含む磁気記憶媒体を設けるステップを含み、各々は複数の記録ビットを含み、前記記録ビットは離散的かつ別個であり、前記方法はさらに、
前記磁気記憶媒体に近接してトランスデューサを設けるステップと、
前記複数のデータアレイにわたって前記トランスデューサを移動させるステップと、
前記トランスデューサを所望のデータアレイの近傍で停止させるステップと、
前記所望のデータアレイの前記複数の記録ビットに応じて、前記トランスデューサでリ
ードバック信号を生成するステップと、
前記所望のデータアレイに対する前記トランスデューサの位置に応じて、前記リードバック信号から少なくとも第1および第2の位置信号を生成するステップとを含む、方法。
【請求項11】
各々のデータアレイはアレイ識別子を含み、前記トランスデューサが前記複数のデータアレイにわたって移動すると前記複数のデータアレイの各々から前記アレイ識別子を読取るステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記トランスデューサが前記複数のデータアレイにわたって移動するとカウンタをトリガするステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
各々のデータアレイにおける前記複数の記録ビットは、前記リードバック信号において応答の第1および第2のグループをそれぞれもたらす内側の記録ビットおよび外側の記録ビットを含み、予め定められたしきい値を満たす前記応答の第1および第2のグループのうちの1つに応答して前記カウンタをトリガするステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
磁気記憶装置であって、
基部と、
前記基部に回転可能に搭載された磁気記憶媒体とを含み、前記磁気記憶媒体は、複数の記録ビットを含む少なくとも1つのデータアレイを含み、前記記録ビットは離散的かつ別個であり、前記磁気記憶装置はさらに、
前記少なくとも1つのデータアレイに近接して位置決めされ、前記少なくとも1つのデータアレイの前記複数の記録ビットに応じてリードバック信号を生成するためのトランスデューサと、
前記トランスデューサに連結され、前記少なくとも1つのデータアレイに対して前記トランスデューサを移動させるためのアクチュエータと、
前記トランスデューサと前記アクチュエータとの間に連結されたサーボ制御システムとを含み、前記サーボ制御システムは、前記リードバック信号に基づいて少なくとも第1および第2の位置信号を生成する位置検出器を含み、前記少なくとも第1および第2の位置信号に基づいて前記アクチュエータの移動を制御するコントローラをさらに含む、磁気記憶装置。
【請求項15】
前記複数の記録ビットは、前記リードバック信号において応答の第1および第2のグループをそれぞれもたらす記録ビットの第1および第2のグループを含み、前記少なくとも第1および第2の位置信号はそれぞれ前記応答の第1および第2のグループに基づいている、請求項14に記載の磁気記憶装置。
【請求項16】
前記複数の記録ビットは、2ビット幅の交互に配置されたビットパターンを含み、前記記録ビットの第1のグループは外径記録ビットを含み、前記記録ビットの第2のグループは内径記録ビットを含む、請求項15に記載の磁気記憶装置。
【請求項17】
前記複数の記録ビットは、2ビット幅よりも大きな交互に配置されたビットパターンを含む、請求項16に記載の磁気記憶装置。
【請求項18】
前記位置検出器は、前記少なくとも第1および第2の位置信号をそれぞれ生成するための第1および第2のサンプル、ホールドおよび蓄積回路を含む、請求項14に記載の磁気記憶装置。
【請求項19】
前記位置検出器はさらに、前記第1および第2のサンプル、ホールドおよび蓄積回路の
出力をそれぞれデジタル化するための少なくとも第1および第2のアナログ・デジタルコンバータをさらに含む、請求項18に記載の磁気記憶装置。
【請求項20】
前記コントローラは、前記少なくとも第1および第2の位置信号に基づいて位置誤差信号を生成する、請求項14に記載の磁気記憶装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図8】
【公開番号】特開2009−187649(P2009−187649A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1034(P2009−1034)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(500373758)シーゲイト テクノロジー エルエルシー (278)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(500373758)シーゲイト テクノロジー エルエルシー (278)
【Fターム(参考)】
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