磁気記憶媒体及び情報記憶装置
【課題】オフトラック許容量を増大し、データの記録精度を向上する。
【解決手段】記録媒体の半径方向に所定間隔で区画された複数のトラックそれぞれが、円周方向に配列された複数の記録ビット46を含む記録ビット列(サブトラック)を複数有するようにし、各記録ビット46の、トラック中心に近い側の部分(第1領域)の体積を、遠い側の部分(第2領域)の体積よりも大きく設定する。これにより、主磁極2がオフトラックした場合に、はみだし磁界の影響を受けやすい部分の体積を小さくできるので、はみだし磁界によるデータの上書き又は消去を抑制することができる。
【解決手段】記録媒体の半径方向に所定間隔で区画された複数のトラックそれぞれが、円周方向に配列された複数の記録ビット46を含む記録ビット列(サブトラック)を複数有するようにし、各記録ビット46の、トラック中心に近い側の部分(第1領域)の体積を、遠い側の部分(第2領域)の体積よりも大きく設定する。これにより、主磁極2がオフトラックした場合に、はみだし磁界の影響を受けやすい部分の体積を小さくできるので、はみだし磁界によるデータの上書き又は消去を抑制することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記憶媒体及び情報記憶装置に関し、特にハードディスクなどの磁気記憶媒体、及び当該磁気記憶媒体を備える情報記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報化社会の進展に伴い、コンピュータシステムで扱う情報量は増大の一途を辿っている。この情報量の増大に対応するためには、情報記憶装置(例えば、ハードディスク装置(HDD:Hard Disk Drive))において、記録媒体(ハードディスク)に対する情報記録を飛躍的に高い記録密度で行うことが必要となる。
【0003】
最近では、HDDにおける高密度化を図るために磁性体から成る記録ビットが多数形成された、いわゆるビットパターンド媒体(BPM:Bit Patterned Media)に関する研究が盛んに行われている。このビットパターンド媒体は、現在用いられている連続膜媒体のような信号のにじみが発生しにくく、また、ビット間に隙間が形成されているため、隣接するビットへの書き込み磁界による影響を受けにくいという利点がある。各ビットは、媒体に対して垂直方向の異方性を有し、磁化方向を媒体に対して上向きにしたり、下向きにしたりすることでデータを記憶する。
【0004】
最近では、記録ヘッドのオフトラック許容量の増大を図るため、特許文献1に記載のように、ある特定トラックに隣接するトラックのビット(記録ビット)の設置位置を、特定トラックの磁性ドットと磁性ドットの間の位置とする技術も出現している。このような配列は、千鳥格子状配列とも呼ばれている。
【0005】
また、特許文献2、3のように、隣り合うサブトラック間で磁性ドットの配列をずらし(千鳥格子状配列)、隣り合う2つのサブトラックからなる記録トラックに記録ヘッドを用いてデータを記録する技術も出現してきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−109712号公報
【特許文献2】特開2003−151103号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0258161号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1〜3のような千鳥格子状配列を用いたとしても、記録ヘッドのオフトラック許容量を増大させるには限界がある。したがって、記録ヘッドのオフトラック許容量を更に増大するためには、別の観点からのアプローチが必要になると考えられる。
【0008】
そこで本件は上記の課題に鑑みてなされたものであり、記録ヘッドのオフトラック許容量を増大し、高精度な情報記録を可能とする磁気記憶媒体を提供することを目的とする。また、本発明は、高精度な情報記録が可能な情報記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に記載の磁気記憶媒体は、円盤形状を有し、その半径方向に所定間隔で区画された複数のトラックを有する磁気記憶媒体において、前記複数のトラック毎に設けられ、円周方向に配列された複数のドットを含むドット列を2列有するドット列対、を備え、前記各ドットは、前記半径方向に関する中央位置を基準として、そのドットが属するトラックのトラック中心に近い側の第1領域の体積が、遠い側の第2領域の体積よりも大きく設定されている。
【0010】
本明細書に記載の磁気記憶媒体は、円盤形状を有し、その半径方向に所定間隔で区画された複数のトラックを有する磁気記憶媒体において、前記複数のトラック毎に設けられ、円周方向に配列された複数のドットを含むドット列を3列以上有するドット列群、を備え、前記ドット列群のうち前記半径方向端部に位置するドット列に含まれるドットは、前記半径方向に関する中央位置を基準として、そのドットが属するトラックのトラック中心に近い側の第1領域の体積が、遠い側の第2領域の体積よりも大きく設定されている。
【0011】
本明細書に記載の情報記憶装置は、本明細書に記載の磁気記憶媒体と、前記磁気記憶媒体のドットに対する記録及び再生の少なくとも一方を行う記録再生素子と、を備える情報記憶装置である。
【発明の効果】
【0012】
本明細書に記載の磁気記憶媒体は、記録ヘッドのオフトラック許容量を増大し、高精度な情報記録ができるという効果を奏する。また、本明細書に記載の情報記憶装置は、高精度な情報記録ができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態に係るHDDの構成を概略的に示す平面図である。
【図2】記録再生ヘッドの縦断面図である
【図3】磁気ディスクの断面図である。
【図4】磁気ディスクの平面図である。
【図5】図5(a)は、位相φ1の場合のライト電流波形を示す図であり、図5(b)は、位相φ2の場合のライト電流波形を示す図であり、図5(c)は、オフトラック状態を示す図である。
【図6】磁気記録ヘッドから発生する磁界強度と位置との関係を示すグラフである。
【図7】比較例としての磁気ディスクを示す図である。
【図8】比較例に係る磁気ディスクにおける、はみだし磁界の影響に関する計算機シミュレーション結果を示す表である。
【図9】一実施形態における図7に対応する図である。
【図10】一実施形態に係る磁気ディスクにおける、はみだし磁界の影響に関する計算機シミュレーション結果を示す表である。
【図11】一実施形態に係る磁気ディスクの製造方法を説明するための図である。
【図12】図11の原盤の製造方法を示す図である。
【図13】図13(a)、図13(b)、図13(c)は、記録ビットの形状に関する変形例(その1)を示す図である。
【図14】3つのサブトラックで1つのトラックを形成した場合の記録ビットの例を示す図である。
【図15】図15(a)、図15(b)は、記録ビットの形状に関する変形例(その2)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、磁気記憶媒体及び情報記憶装置の一実施形態について、図1〜図11に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1は、一実施形態に係る磁気記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)100の内部構成を示している。この図1に示すように、HDD100は、箱型の筺体12と、筺体12内部の空間(収容空間)に収容された磁気記憶媒体としての磁気ディスク10、スピンドルモータ14、ヘッド・スタック・アッセンブリ(HSA)40等と、を備える。なお、筺体12は、実際には、ベースと上蓋(トップ・カバー)とにより構成されているが、図1では、図示の便宜上、ベースのみを図示している。
【0016】
磁気ディスク10は、円盤形状を有し、表面が記録面となっている。この磁気ディスク10は、スピンドルモータ14によって、その回転軸回りに例えば4200〜15000rpmなどの高速度で回転駆動される。
【0017】
HSA40は、円筒形状のハウジング部30と、ハウジング部30に固定されたフォーク部32と、フォーク部32に保持されたコイル34と、ハウジング部30に固定されたキャリッジアーム36と、キャリッジアーム36に保持されたヘッドスライダ16と、を備えている。
【0018】
キャリッジアーム36は、例えばステンレス板を打ち抜き加工したり、アルミニウム材料を押し出し加工することにより成型される。ヘッドスライダ16は、記録再生ヘッド71(図2参照)を有している。
【0019】
HSA40は、ハウジング部30の中心部分に設けられた軸受部材18を介して、筺体12に回転自在(Z軸回りの回転が自在)に連結されている。また、HSA40が有するコイル34と、筺体12のベースに固定された永久磁石を有する磁極ユニット24とを含むボイスコイルモータ50により、HSA40の軸受部材18を中心とした揺動が行われる。なお、図1では、揺動の軌道が、一点鎖線にて示されている。
【0020】
上記のように構成されるHDD100では、磁気ディスク10に対するデータ(情報)の読み書きは、キャリッジアーム36の先端に設けられた記録再生ヘッド71によって行われる。この場合、記録再生ヘッド71を保持するヘッドスライダ16は、磁気ディスク10の回転によって生じる揚力によって、磁気ディスク10の表面から浮上し、記録再生ヘッド71は、磁気ディスク10との間に微小間隔を維持した状態でデータの読み書きを実行する。また、キャリッジアーム36が上述した揺動を行うことにより、記録再生ヘッド71が磁気ディスク10のトラック横断方向にシーク移動し、読み書きする対象のトラックを変更する。
【0021】
次に、本実施形態の記録再生ヘッド71の構成について図2に基づいて説明する。図2は、記録再生ヘッド71の縦断面図である。
【0022】
本実施形態では、記録再生ヘッド71として、垂直磁気記録方式の磁気記録再生ヘッドを採用する。この記録再生ヘッド71は、図2に示すように、下部磁気シールド64と、上部磁気シールド51と、再生用磁気センサヘッド(MR素子)56と、主磁極2と、補助磁極70と、を有する。再生用磁気センサヘッド(再生ヘッド)56は、下部磁気シールド64と上部磁気シールド51の間に設けられている。また、主磁極2と補助磁極70との間には、情報書きこみ用のコイル68が形成されている。これら主磁極2、補助磁極70及びコイル68は、磁気記録ヘッド72の構成要素である。
【0023】
図3には、磁気ディスク10の断面図が示されている。この図3に示すように、磁気ディスク10は、基板42と、基板42上に形成された下地層44と、下地層44の上面に形成されたドットとしての記録ビット46と、記録ビット46を覆うように設けられた保護層48と、を有する。
【0024】
このうち、下地層44は軟磁性層等を含んでおり、記録ビット46はCo合金(CoCr、CoPt,CoCrPt,CoCrTaなど)等を材料とする。
【0025】
次に、記録ビット46の配列、形状等について、図4に基づいて説明する。図4には、磁気ディスク10の平面図が示されている。この図4に示すように、磁気ディスク10上には、ディスク回転方向に所定間隔で配列された複数の記録ビット46を有するサブトラック(ドット列)が半径方向に複数設けられている。これらのうちの隣り合う2つのサブトラック(ドット列対)が、1つのトラックになる。また、1つのトラックに含まれる一方のサブトラックと、それに隣接する他方のサブトラックとでは、記録ビット46の配列がディスク回転方向にずれた状態となっている。より詳細には、一のサブトラックの記録ビット46と記録ビット46との間に、隣接するサブトラックの記録ビット46が配置された状態となっている。なお、このような配列を、以下においては千鳥格子状配列と呼ぶものとする。
【0026】
各記録ビット46は、図4に示すように、平面視(上方から見て)略L字状の形状を有している。すなわち、図4に示すように、各記録ビット46のトラック内側の辺(Li)が、トラック外側の辺(Lo)よりも長く設定されている。これにより、各記録ビット46では、ディスクの半径方向に関する中心を基準とするトラック内側に位置する部分(第1領域)の体積が、トラック外側に位置する部分(第2領域)の体積よりも大きく設定されていることになる。
【0027】
なお、本実施形態では、主磁極2のディスク回転方向の大きさA(図4参照)が、例えば60nmであり、サブトラック間の距離B(図4参照)が、例えば36nmであるものとする。
【0028】
このように構成される磁気ディスク10においては、図4に示すようにトラック上に位置する主磁極2により、トラック内(2つのサブトラック内)の記録ビット46に、データ記録がなされる。
【0029】
このデータの記録の際には、磁気記録ヘッド72のコイル68に、記録するデータに応じたライト電流が供給される。図5(a)には、「010101…」というデータを記録する場合の、ライト電流の一例が示されている。このライト電流波形は、サイン波形であり、時間に応じて変化する。一方、磁気ディスク10が回転することで、磁気記録ヘッド72と記録ビット46との位置関係も時間に応じて変化する。したがって、ライト電流は、磁気記録ヘッド72と記録ビット46の位置関係に応じて変化する、ということができる。
【0030】
ここで、図5(a)に示すように、電流波形の最大値が記録ビット46の中心(重心)位置と一致しているときの位相(φ1)が適切であるとすると、図5(b)に示すように電流波形の最大値が記録ビット46の中心(重心)位置と異なっている場合は、位相(φ2)がずれていることになる。この場合、位相(φ1)のときには、記録ビット46の中心位置に主磁極2の磁界分布の最大値(電流波形のピーク)が位置することになり、位相(φ2)のときには、記録ビット46の中心位置からずれた位置に磁界分布の最大値が位置することになる。
【0031】
一方、HDD100においては、図5(c)に示すトラック中心に磁気記録ヘッド72(主磁極2)を位置決めしてデータを記録すべきところ、制御誤差等により、磁気記録ヘッド72(主磁極2)がトラック中心からずれてしまう(オフトラックする)こともある。このような磁気記録ヘッド72の位置ずれ(オフトラック)と、上記電流波形の位相のずれとが同時に発生すると、データ記録の際にエラーが発生する可能性がある。
【0032】
具体的には、磁気記録ヘッド72の発生する磁界は、図6に示すように、ディスク半径方向に関して、主磁極2の中心ほど強度が大きくなり、主磁極2の中心から離れるほど強度が小さくなる分布を有している。このため、磁気記録ヘッド72がオフトラックすると、トラック幅方向に広がる磁界(はみだし磁界)によって、隣接するトラックの記録ビット46が意図しない磁化反転を起こし、記録エラーが発生するおそれがある。
【0033】
ここで、図7に示す比較例に係る磁気ディスク10’を参照しつつ、記録エラーの発生原理について説明する。この図7の比較例では、記録ビット46’のトラック内側の辺と、トラック外側の辺とが同一(Li)に設定されている。すなわち、各記録ビット46’では、トラック内側に位置する部分(第1領域)の体積と、トラック外側に位置する部分(第2領域)の体積とが同一に設定されている。
【0034】
この図7の磁気ディスク10’において、主磁極2がディスク半径方向にオフトラックした場合、主磁極2に近接する二点鎖線で囲んだ領域内に、はみだし磁界の影響が生じる可能性がある。ここで、二点鎖線で囲んだ領域内に、はみだし磁界の影響が生じると、図7においてクロスハッチングを付した記録ビット46’において、データが書き換えられたり、データがイレーズ(消去)されたりする可能性がある。
【0035】
図8には、比較例に係る磁気ディスク10’における、はみだし磁界の影響に関する計算機シミュレーションの結果が示されている。この図8の結果は、位相とオフトラック量とを異ならせつつ、各記録ビット46にデータを記録した場合に、正確にデータを記録できるか否かをシミュレーションした結果である。図8の「○」印は、その位相、オフトラック量で正確な記録ができたことを意味し、「×」印は、その位相、オフトラック量では正確な記録ができなかったことを意味している。
【0036】
これに対し、本実施形態の磁気ディスク10では、図9に示すように、比較例の場合と同様、二点鎖線で囲んだ領域がはみだし磁界の影響を受けることになる。しかるに、クロスハッチングを付した記録ビット46のうち、二点鎖線で囲んだ領域に含まれる体積は、それ以外の体積よりも小さいので、はみだし磁界の影響は受けにくい。図10には、本実施形態に係る磁気ディスク10における、はみだし磁界の影響に関する計算機シミュレーションの結果が示されている。この図10に示すように、ハッチングを付した「○」印部分は、比較例と比べて改善された部分である。すなわち、本実施形態では、比較例よりも記録時の位相マージン(ライト位相マージン)を拡大することができたことになる。
【0037】
次に、本実施形態における、磁気ディスク10の製造方法について、図11(a)〜図11(g)に基づいて説明する。
【0038】
まず、図11(a)に示すように、円盤形状の基板42の上側に下地層44及び記録層46を積層する。次いで、図11(b)に示すように、記録層46上にレジスト52を塗布した後、図11(c)に示すように、原盤90を用いて、ナノインプリント(UVインプリント)により、レジストのパターン(「レジストパターン52」と表記する)を形成する。この場合、ナノインプリントに用いる原盤90(グラッシーカーボンなどから成る)には、磁気ディスク10上に記録ビットを作製するためのパターンが存在する。このパターンは、原盤90に対して電子ビーム露光装置(EB露光装置)を用いた露光処理を施すことにより、形成される。具体的には、図12に示すように、EB露光装置における電子ビームの出射位置92を固定した状態で、原盤90を回転させ、パターンを形成したい部分(記録ビットが位置する部分)が出射位置92を通過するタイミングで、電子ビームを照射する(図12のハッチング部分参照)。そして、原盤90が1回転した後は、電子ビームの出射位置92をディスク半径方向に移動させ、同様の処理を実行する。このようにして、原盤90の全面にパターンを形成する。
【0039】
次いで、図11(d)に示すように原盤90を取り外し、図11(e)に示すように、レジストパターン52を用いて、イオンミリング法により、記録層46をエッチングする。このエッチング後の記録層46が、記録ビット46となる。そして、図11(f)に示すように、レジストパターン52を剥離(除去)する。
【0040】
その後、図11(g)に示すように、記録層(記録ビット)46及び下地層44の上面に保護層48を成膜するなどの工程を経て、磁気ディスク10の製造が完了する。
【0041】
なお、上記製造方法は一例である。したがって、磁気ディスク10は、その他の製造方法により製造することとしても良い。
【0042】
以上、詳細に説明したように、本実施形態の磁気ディスク10によると、半径方向に所定間隔で区画された複数のトラック毎に、円周方向に配列された複数の記録ビット46を含む記録ビット列(サブトラック)を2列有しており、各記録ビット46は、半径方向に関する中央位置を基準として、その記録ビット46が属するトラックのトラック中心に近い側の部分(第1領域)の体積が、遠い側の部分(第2領域)の体積よりも大きく設定されている。これにより、主磁極2がオフトラックした場合に、はみだし磁界の影響を受けやすい部分の体積を小さくできるので、はみだし磁界によるデータの上書き又は消去を抑制することができる。すなわち、オフトラック許容量を増大することができる。これにより、データの記録精度を向上することが可能である。
【0043】
また、本実施形態のHDD100によると、上記磁気ディスク10を具備しているので、データの記録性能を向上することが可能である。
【0044】
また、本実施形態では、記録ビット46のうち、トラック中心に近い部分(第1領域)と、遠い側の部分(第2領域)の、上方から見た場合の面積を異ならせることにより、第1、第2領域の体積を異ならせることとしているので、シンプルな方法で、第1、第2領域の体積を異ならせることができる。
【0045】
なお、上記実施形態では、記録ビット46が、平面視(上方から見て)略L字状の形状を有する場合について説明したが、これに限られるものではない。すなわち、トラック中心に近い部分(第1領域)の面積が、遠い側の部分(第2領域)の面積よりも大きければ、記録ビット46は、他の形状を有していても良い。例えば、図13(a)に示すような、略T字状の形状を有していても良い。また、図13(b)に示すような三角形形状や、図13(c)に示すような台形形状を有していても良い。また、磁気ディスク10上に、L字状、T字状、三角形状、台形状などの形状のうち少なくとも2種類の記録ビットを設けることとしても良い。
【0046】
なお、上記実施形態では、2つのサブトラック(ドット列)で、1つのトラックを形成する場合について説明したが、これに限らず、例えば、3つのサブトラックで、1つのトラックを形成することとしても良い。この場合、図14に示すように、3つのサブトラックのうち、真ん中に位置するサブトラック(サブトラック(中))は、図7の比較例と同様の記録ビットとし、外側に位置するサブトラック(サブトラック(外))を、上記実施形態や変形例と同様、トラック中心に近い部分(第1領域)の面積(体積)と、遠い側の部分(第2領域)の面積(体積)とを異ならせるようにすれば良い。また、4つ以上のサブトラックの場合にも、同様であり、トラックの外側に位置する記録ビットのみを、上記実施形態や変形例と同様の記録ビットとすれば良い。
【0047】
また、上記実施形態では、記録ビットのトラック中心に近い部分(第1領域)の体積と、遠い側の部分(第2領域)の体積とを異ならせるために、各領域の上方から見たときの面積を変更する場合について説明したが、これに限らず、図15(a)に示すように、各領域において、高さ方向の寸法を異ならせることにより、第1領域と第2領域の体積を異ならせても良い。また、図15(b)に示すように、高さ方向の寸法を異ならせるとともに、上から見たときの面積も変更することで、第1領域と第2領域の体積を異ならせることとしても良い。
【0048】
なお、上記実施形態では、磁気ディスク10において、表裏面の片側にのみ記録面が存在するかのように図示、説明を行っているが、これに限らず、表側及び裏側の両面に記録面を設けても良い。また、磁気ディスク10は、回転軸に沿って複数枚設けられていても良い。前者の場合には、キャリッジアーム及びヘッドスライダを、磁気ディスク10を挟んで上下対称に一対設ければ良い。また、後者の場合には、各磁気ディスクの各記録面に対応して、キャリッジアームとヘッドスライダを設ければ良い。
【0049】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 磁気ディスク(磁気記憶媒体)
46 記録ビット(ドット)
71 記録再生ヘッド(磁気記録ヘッド)
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記憶媒体及び情報記憶装置に関し、特にハードディスクなどの磁気記憶媒体、及び当該磁気記憶媒体を備える情報記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報化社会の進展に伴い、コンピュータシステムで扱う情報量は増大の一途を辿っている。この情報量の増大に対応するためには、情報記憶装置(例えば、ハードディスク装置(HDD:Hard Disk Drive))において、記録媒体(ハードディスク)に対する情報記録を飛躍的に高い記録密度で行うことが必要となる。
【0003】
最近では、HDDにおける高密度化を図るために磁性体から成る記録ビットが多数形成された、いわゆるビットパターンド媒体(BPM:Bit Patterned Media)に関する研究が盛んに行われている。このビットパターンド媒体は、現在用いられている連続膜媒体のような信号のにじみが発生しにくく、また、ビット間に隙間が形成されているため、隣接するビットへの書き込み磁界による影響を受けにくいという利点がある。各ビットは、媒体に対して垂直方向の異方性を有し、磁化方向を媒体に対して上向きにしたり、下向きにしたりすることでデータを記憶する。
【0004】
最近では、記録ヘッドのオフトラック許容量の増大を図るため、特許文献1に記載のように、ある特定トラックに隣接するトラックのビット(記録ビット)の設置位置を、特定トラックの磁性ドットと磁性ドットの間の位置とする技術も出現している。このような配列は、千鳥格子状配列とも呼ばれている。
【0005】
また、特許文献2、3のように、隣り合うサブトラック間で磁性ドットの配列をずらし(千鳥格子状配列)、隣り合う2つのサブトラックからなる記録トラックに記録ヘッドを用いてデータを記録する技術も出現してきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−109712号公報
【特許文献2】特開2003−151103号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0258161号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1〜3のような千鳥格子状配列を用いたとしても、記録ヘッドのオフトラック許容量を増大させるには限界がある。したがって、記録ヘッドのオフトラック許容量を更に増大するためには、別の観点からのアプローチが必要になると考えられる。
【0008】
そこで本件は上記の課題に鑑みてなされたものであり、記録ヘッドのオフトラック許容量を増大し、高精度な情報記録を可能とする磁気記憶媒体を提供することを目的とする。また、本発明は、高精度な情報記録が可能な情報記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に記載の磁気記憶媒体は、円盤形状を有し、その半径方向に所定間隔で区画された複数のトラックを有する磁気記憶媒体において、前記複数のトラック毎に設けられ、円周方向に配列された複数のドットを含むドット列を2列有するドット列対、を備え、前記各ドットは、前記半径方向に関する中央位置を基準として、そのドットが属するトラックのトラック中心に近い側の第1領域の体積が、遠い側の第2領域の体積よりも大きく設定されている。
【0010】
本明細書に記載の磁気記憶媒体は、円盤形状を有し、その半径方向に所定間隔で区画された複数のトラックを有する磁気記憶媒体において、前記複数のトラック毎に設けられ、円周方向に配列された複数のドットを含むドット列を3列以上有するドット列群、を備え、前記ドット列群のうち前記半径方向端部に位置するドット列に含まれるドットは、前記半径方向に関する中央位置を基準として、そのドットが属するトラックのトラック中心に近い側の第1領域の体積が、遠い側の第2領域の体積よりも大きく設定されている。
【0011】
本明細書に記載の情報記憶装置は、本明細書に記載の磁気記憶媒体と、前記磁気記憶媒体のドットに対する記録及び再生の少なくとも一方を行う記録再生素子と、を備える情報記憶装置である。
【発明の効果】
【0012】
本明細書に記載の磁気記憶媒体は、記録ヘッドのオフトラック許容量を増大し、高精度な情報記録ができるという効果を奏する。また、本明細書に記載の情報記憶装置は、高精度な情報記録ができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態に係るHDDの構成を概略的に示す平面図である。
【図2】記録再生ヘッドの縦断面図である
【図3】磁気ディスクの断面図である。
【図4】磁気ディスクの平面図である。
【図5】図5(a)は、位相φ1の場合のライト電流波形を示す図であり、図5(b)は、位相φ2の場合のライト電流波形を示す図であり、図5(c)は、オフトラック状態を示す図である。
【図6】磁気記録ヘッドから発生する磁界強度と位置との関係を示すグラフである。
【図7】比較例としての磁気ディスクを示す図である。
【図8】比較例に係る磁気ディスクにおける、はみだし磁界の影響に関する計算機シミュレーション結果を示す表である。
【図9】一実施形態における図7に対応する図である。
【図10】一実施形態に係る磁気ディスクにおける、はみだし磁界の影響に関する計算機シミュレーション結果を示す表である。
【図11】一実施形態に係る磁気ディスクの製造方法を説明するための図である。
【図12】図11の原盤の製造方法を示す図である。
【図13】図13(a)、図13(b)、図13(c)は、記録ビットの形状に関する変形例(その1)を示す図である。
【図14】3つのサブトラックで1つのトラックを形成した場合の記録ビットの例を示す図である。
【図15】図15(a)、図15(b)は、記録ビットの形状に関する変形例(その2)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、磁気記憶媒体及び情報記憶装置の一実施形態について、図1〜図11に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1は、一実施形態に係る磁気記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)100の内部構成を示している。この図1に示すように、HDD100は、箱型の筺体12と、筺体12内部の空間(収容空間)に収容された磁気記憶媒体としての磁気ディスク10、スピンドルモータ14、ヘッド・スタック・アッセンブリ(HSA)40等と、を備える。なお、筺体12は、実際には、ベースと上蓋(トップ・カバー)とにより構成されているが、図1では、図示の便宜上、ベースのみを図示している。
【0016】
磁気ディスク10は、円盤形状を有し、表面が記録面となっている。この磁気ディスク10は、スピンドルモータ14によって、その回転軸回りに例えば4200〜15000rpmなどの高速度で回転駆動される。
【0017】
HSA40は、円筒形状のハウジング部30と、ハウジング部30に固定されたフォーク部32と、フォーク部32に保持されたコイル34と、ハウジング部30に固定されたキャリッジアーム36と、キャリッジアーム36に保持されたヘッドスライダ16と、を備えている。
【0018】
キャリッジアーム36は、例えばステンレス板を打ち抜き加工したり、アルミニウム材料を押し出し加工することにより成型される。ヘッドスライダ16は、記録再生ヘッド71(図2参照)を有している。
【0019】
HSA40は、ハウジング部30の中心部分に設けられた軸受部材18を介して、筺体12に回転自在(Z軸回りの回転が自在)に連結されている。また、HSA40が有するコイル34と、筺体12のベースに固定された永久磁石を有する磁極ユニット24とを含むボイスコイルモータ50により、HSA40の軸受部材18を中心とした揺動が行われる。なお、図1では、揺動の軌道が、一点鎖線にて示されている。
【0020】
上記のように構成されるHDD100では、磁気ディスク10に対するデータ(情報)の読み書きは、キャリッジアーム36の先端に設けられた記録再生ヘッド71によって行われる。この場合、記録再生ヘッド71を保持するヘッドスライダ16は、磁気ディスク10の回転によって生じる揚力によって、磁気ディスク10の表面から浮上し、記録再生ヘッド71は、磁気ディスク10との間に微小間隔を維持した状態でデータの読み書きを実行する。また、キャリッジアーム36が上述した揺動を行うことにより、記録再生ヘッド71が磁気ディスク10のトラック横断方向にシーク移動し、読み書きする対象のトラックを変更する。
【0021】
次に、本実施形態の記録再生ヘッド71の構成について図2に基づいて説明する。図2は、記録再生ヘッド71の縦断面図である。
【0022】
本実施形態では、記録再生ヘッド71として、垂直磁気記録方式の磁気記録再生ヘッドを採用する。この記録再生ヘッド71は、図2に示すように、下部磁気シールド64と、上部磁気シールド51と、再生用磁気センサヘッド(MR素子)56と、主磁極2と、補助磁極70と、を有する。再生用磁気センサヘッド(再生ヘッド)56は、下部磁気シールド64と上部磁気シールド51の間に設けられている。また、主磁極2と補助磁極70との間には、情報書きこみ用のコイル68が形成されている。これら主磁極2、補助磁極70及びコイル68は、磁気記録ヘッド72の構成要素である。
【0023】
図3には、磁気ディスク10の断面図が示されている。この図3に示すように、磁気ディスク10は、基板42と、基板42上に形成された下地層44と、下地層44の上面に形成されたドットとしての記録ビット46と、記録ビット46を覆うように設けられた保護層48と、を有する。
【0024】
このうち、下地層44は軟磁性層等を含んでおり、記録ビット46はCo合金(CoCr、CoPt,CoCrPt,CoCrTaなど)等を材料とする。
【0025】
次に、記録ビット46の配列、形状等について、図4に基づいて説明する。図4には、磁気ディスク10の平面図が示されている。この図4に示すように、磁気ディスク10上には、ディスク回転方向に所定間隔で配列された複数の記録ビット46を有するサブトラック(ドット列)が半径方向に複数設けられている。これらのうちの隣り合う2つのサブトラック(ドット列対)が、1つのトラックになる。また、1つのトラックに含まれる一方のサブトラックと、それに隣接する他方のサブトラックとでは、記録ビット46の配列がディスク回転方向にずれた状態となっている。より詳細には、一のサブトラックの記録ビット46と記録ビット46との間に、隣接するサブトラックの記録ビット46が配置された状態となっている。なお、このような配列を、以下においては千鳥格子状配列と呼ぶものとする。
【0026】
各記録ビット46は、図4に示すように、平面視(上方から見て)略L字状の形状を有している。すなわち、図4に示すように、各記録ビット46のトラック内側の辺(Li)が、トラック外側の辺(Lo)よりも長く設定されている。これにより、各記録ビット46では、ディスクの半径方向に関する中心を基準とするトラック内側に位置する部分(第1領域)の体積が、トラック外側に位置する部分(第2領域)の体積よりも大きく設定されていることになる。
【0027】
なお、本実施形態では、主磁極2のディスク回転方向の大きさA(図4参照)が、例えば60nmであり、サブトラック間の距離B(図4参照)が、例えば36nmであるものとする。
【0028】
このように構成される磁気ディスク10においては、図4に示すようにトラック上に位置する主磁極2により、トラック内(2つのサブトラック内)の記録ビット46に、データ記録がなされる。
【0029】
このデータの記録の際には、磁気記録ヘッド72のコイル68に、記録するデータに応じたライト電流が供給される。図5(a)には、「010101…」というデータを記録する場合の、ライト電流の一例が示されている。このライト電流波形は、サイン波形であり、時間に応じて変化する。一方、磁気ディスク10が回転することで、磁気記録ヘッド72と記録ビット46との位置関係も時間に応じて変化する。したがって、ライト電流は、磁気記録ヘッド72と記録ビット46の位置関係に応じて変化する、ということができる。
【0030】
ここで、図5(a)に示すように、電流波形の最大値が記録ビット46の中心(重心)位置と一致しているときの位相(φ1)が適切であるとすると、図5(b)に示すように電流波形の最大値が記録ビット46の中心(重心)位置と異なっている場合は、位相(φ2)がずれていることになる。この場合、位相(φ1)のときには、記録ビット46の中心位置に主磁極2の磁界分布の最大値(電流波形のピーク)が位置することになり、位相(φ2)のときには、記録ビット46の中心位置からずれた位置に磁界分布の最大値が位置することになる。
【0031】
一方、HDD100においては、図5(c)に示すトラック中心に磁気記録ヘッド72(主磁極2)を位置決めしてデータを記録すべきところ、制御誤差等により、磁気記録ヘッド72(主磁極2)がトラック中心からずれてしまう(オフトラックする)こともある。このような磁気記録ヘッド72の位置ずれ(オフトラック)と、上記電流波形の位相のずれとが同時に発生すると、データ記録の際にエラーが発生する可能性がある。
【0032】
具体的には、磁気記録ヘッド72の発生する磁界は、図6に示すように、ディスク半径方向に関して、主磁極2の中心ほど強度が大きくなり、主磁極2の中心から離れるほど強度が小さくなる分布を有している。このため、磁気記録ヘッド72がオフトラックすると、トラック幅方向に広がる磁界(はみだし磁界)によって、隣接するトラックの記録ビット46が意図しない磁化反転を起こし、記録エラーが発生するおそれがある。
【0033】
ここで、図7に示す比較例に係る磁気ディスク10’を参照しつつ、記録エラーの発生原理について説明する。この図7の比較例では、記録ビット46’のトラック内側の辺と、トラック外側の辺とが同一(Li)に設定されている。すなわち、各記録ビット46’では、トラック内側に位置する部分(第1領域)の体積と、トラック外側に位置する部分(第2領域)の体積とが同一に設定されている。
【0034】
この図7の磁気ディスク10’において、主磁極2がディスク半径方向にオフトラックした場合、主磁極2に近接する二点鎖線で囲んだ領域内に、はみだし磁界の影響が生じる可能性がある。ここで、二点鎖線で囲んだ領域内に、はみだし磁界の影響が生じると、図7においてクロスハッチングを付した記録ビット46’において、データが書き換えられたり、データがイレーズ(消去)されたりする可能性がある。
【0035】
図8には、比較例に係る磁気ディスク10’における、はみだし磁界の影響に関する計算機シミュレーションの結果が示されている。この図8の結果は、位相とオフトラック量とを異ならせつつ、各記録ビット46にデータを記録した場合に、正確にデータを記録できるか否かをシミュレーションした結果である。図8の「○」印は、その位相、オフトラック量で正確な記録ができたことを意味し、「×」印は、その位相、オフトラック量では正確な記録ができなかったことを意味している。
【0036】
これに対し、本実施形態の磁気ディスク10では、図9に示すように、比較例の場合と同様、二点鎖線で囲んだ領域がはみだし磁界の影響を受けることになる。しかるに、クロスハッチングを付した記録ビット46のうち、二点鎖線で囲んだ領域に含まれる体積は、それ以外の体積よりも小さいので、はみだし磁界の影響は受けにくい。図10には、本実施形態に係る磁気ディスク10における、はみだし磁界の影響に関する計算機シミュレーションの結果が示されている。この図10に示すように、ハッチングを付した「○」印部分は、比較例と比べて改善された部分である。すなわち、本実施形態では、比較例よりも記録時の位相マージン(ライト位相マージン)を拡大することができたことになる。
【0037】
次に、本実施形態における、磁気ディスク10の製造方法について、図11(a)〜図11(g)に基づいて説明する。
【0038】
まず、図11(a)に示すように、円盤形状の基板42の上側に下地層44及び記録層46を積層する。次いで、図11(b)に示すように、記録層46上にレジスト52を塗布した後、図11(c)に示すように、原盤90を用いて、ナノインプリント(UVインプリント)により、レジストのパターン(「レジストパターン52」と表記する)を形成する。この場合、ナノインプリントに用いる原盤90(グラッシーカーボンなどから成る)には、磁気ディスク10上に記録ビットを作製するためのパターンが存在する。このパターンは、原盤90に対して電子ビーム露光装置(EB露光装置)を用いた露光処理を施すことにより、形成される。具体的には、図12に示すように、EB露光装置における電子ビームの出射位置92を固定した状態で、原盤90を回転させ、パターンを形成したい部分(記録ビットが位置する部分)が出射位置92を通過するタイミングで、電子ビームを照射する(図12のハッチング部分参照)。そして、原盤90が1回転した後は、電子ビームの出射位置92をディスク半径方向に移動させ、同様の処理を実行する。このようにして、原盤90の全面にパターンを形成する。
【0039】
次いで、図11(d)に示すように原盤90を取り外し、図11(e)に示すように、レジストパターン52を用いて、イオンミリング法により、記録層46をエッチングする。このエッチング後の記録層46が、記録ビット46となる。そして、図11(f)に示すように、レジストパターン52を剥離(除去)する。
【0040】
その後、図11(g)に示すように、記録層(記録ビット)46及び下地層44の上面に保護層48を成膜するなどの工程を経て、磁気ディスク10の製造が完了する。
【0041】
なお、上記製造方法は一例である。したがって、磁気ディスク10は、その他の製造方法により製造することとしても良い。
【0042】
以上、詳細に説明したように、本実施形態の磁気ディスク10によると、半径方向に所定間隔で区画された複数のトラック毎に、円周方向に配列された複数の記録ビット46を含む記録ビット列(サブトラック)を2列有しており、各記録ビット46は、半径方向に関する中央位置を基準として、その記録ビット46が属するトラックのトラック中心に近い側の部分(第1領域)の体積が、遠い側の部分(第2領域)の体積よりも大きく設定されている。これにより、主磁極2がオフトラックした場合に、はみだし磁界の影響を受けやすい部分の体積を小さくできるので、はみだし磁界によるデータの上書き又は消去を抑制することができる。すなわち、オフトラック許容量を増大することができる。これにより、データの記録精度を向上することが可能である。
【0043】
また、本実施形態のHDD100によると、上記磁気ディスク10を具備しているので、データの記録性能を向上することが可能である。
【0044】
また、本実施形態では、記録ビット46のうち、トラック中心に近い部分(第1領域)と、遠い側の部分(第2領域)の、上方から見た場合の面積を異ならせることにより、第1、第2領域の体積を異ならせることとしているので、シンプルな方法で、第1、第2領域の体積を異ならせることができる。
【0045】
なお、上記実施形態では、記録ビット46が、平面視(上方から見て)略L字状の形状を有する場合について説明したが、これに限られるものではない。すなわち、トラック中心に近い部分(第1領域)の面積が、遠い側の部分(第2領域)の面積よりも大きければ、記録ビット46は、他の形状を有していても良い。例えば、図13(a)に示すような、略T字状の形状を有していても良い。また、図13(b)に示すような三角形形状や、図13(c)に示すような台形形状を有していても良い。また、磁気ディスク10上に、L字状、T字状、三角形状、台形状などの形状のうち少なくとも2種類の記録ビットを設けることとしても良い。
【0046】
なお、上記実施形態では、2つのサブトラック(ドット列)で、1つのトラックを形成する場合について説明したが、これに限らず、例えば、3つのサブトラックで、1つのトラックを形成することとしても良い。この場合、図14に示すように、3つのサブトラックのうち、真ん中に位置するサブトラック(サブトラック(中))は、図7の比較例と同様の記録ビットとし、外側に位置するサブトラック(サブトラック(外))を、上記実施形態や変形例と同様、トラック中心に近い部分(第1領域)の面積(体積)と、遠い側の部分(第2領域)の面積(体積)とを異ならせるようにすれば良い。また、4つ以上のサブトラックの場合にも、同様であり、トラックの外側に位置する記録ビットのみを、上記実施形態や変形例と同様の記録ビットとすれば良い。
【0047】
また、上記実施形態では、記録ビットのトラック中心に近い部分(第1領域)の体積と、遠い側の部分(第2領域)の体積とを異ならせるために、各領域の上方から見たときの面積を変更する場合について説明したが、これに限らず、図15(a)に示すように、各領域において、高さ方向の寸法を異ならせることにより、第1領域と第2領域の体積を異ならせても良い。また、図15(b)に示すように、高さ方向の寸法を異ならせるとともに、上から見たときの面積も変更することで、第1領域と第2領域の体積を異ならせることとしても良い。
【0048】
なお、上記実施形態では、磁気ディスク10において、表裏面の片側にのみ記録面が存在するかのように図示、説明を行っているが、これに限らず、表側及び裏側の両面に記録面を設けても良い。また、磁気ディスク10は、回転軸に沿って複数枚設けられていても良い。前者の場合には、キャリッジアーム及びヘッドスライダを、磁気ディスク10を挟んで上下対称に一対設ければ良い。また、後者の場合には、各磁気ディスクの各記録面に対応して、キャリッジアームとヘッドスライダを設ければ良い。
【0049】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 磁気ディスク(磁気記憶媒体)
46 記録ビット(ドット)
71 記録再生ヘッド(磁気記録ヘッド)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤形状を有し、その半径方向に所定間隔で区画された複数のトラックを有する磁気記憶媒体において、
前記複数のトラック毎に設けられ、円周方向に配列された複数のドットを含むドット列を2列有するドット列対、を備え、
前記各ドットは、前記半径方向に関する中央位置を基準として、そのドットが属するトラックのトラック中心に近い側の第1領域の体積が、遠い側の第2領域の体積よりも大きいことを特徴とする磁気記憶媒体。
【請求項2】
円盤形状を有し、その半径方向に所定間隔で区画された複数のトラックを有する磁気記憶媒体において、
前記複数のトラック毎に設けられ、円周方向に配列された複数のドットを含むドット列を3列以上有するドット列群、を備え、
前記ドット列群のうち前記半径方向端部に位置するドット列に含まれるドットは、前記半径方向に関する中央位置を基準として、そのドットが属するトラックのトラック中心に近い側の第1領域の体積が、遠い側の第2領域の体積よりも大きいことを特徴とする磁気記憶媒体。
【請求項3】
前記第1領域と前記第2領域とは、前記半径方向及び円周方向を含む平面内における面積が異なることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気記憶媒体。
【請求項4】
前記第1領域と前記第2領域とは、前記半径方向及び円周方向を含む平面に直交する方向の寸法が異なることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の磁気記憶媒体。
【請求項5】
前記ドット列のうちの一のドット列に含まれる各ドットの位置と、当該一のドット列に隣接するドット列の各ドットの位置とは、前記円周方向に関してずれていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の磁気記憶媒体。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の磁気記憶媒体と、
前記磁気記憶媒体のドットに対する記録及び再生の少なくとも一方を行う記録再生素子と、を備える情報記憶装置。
【請求項1】
円盤形状を有し、その半径方向に所定間隔で区画された複数のトラックを有する磁気記憶媒体において、
前記複数のトラック毎に設けられ、円周方向に配列された複数のドットを含むドット列を2列有するドット列対、を備え、
前記各ドットは、前記半径方向に関する中央位置を基準として、そのドットが属するトラックのトラック中心に近い側の第1領域の体積が、遠い側の第2領域の体積よりも大きいことを特徴とする磁気記憶媒体。
【請求項2】
円盤形状を有し、その半径方向に所定間隔で区画された複数のトラックを有する磁気記憶媒体において、
前記複数のトラック毎に設けられ、円周方向に配列された複数のドットを含むドット列を3列以上有するドット列群、を備え、
前記ドット列群のうち前記半径方向端部に位置するドット列に含まれるドットは、前記半径方向に関する中央位置を基準として、そのドットが属するトラックのトラック中心に近い側の第1領域の体積が、遠い側の第2領域の体積よりも大きいことを特徴とする磁気記憶媒体。
【請求項3】
前記第1領域と前記第2領域とは、前記半径方向及び円周方向を含む平面内における面積が異なることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気記憶媒体。
【請求項4】
前記第1領域と前記第2領域とは、前記半径方向及び円周方向を含む平面に直交する方向の寸法が異なることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の磁気記憶媒体。
【請求項5】
前記ドット列のうちの一のドット列に含まれる各ドットの位置と、当該一のドット列に隣接するドット列の各ドットの位置とは、前記円周方向に関してずれていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の磁気記憶媒体。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の磁気記憶媒体と、
前記磁気記憶媒体のドットに対する記録及び再生の少なくとも一方を行う記録再生素子と、を備える情報記憶装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−231830(P2010−231830A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76211(P2009−76211)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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