説明

磁気記録再生信号処理回路

【課題】低周波媒体雑音や低周波波形歪の影響を低減し、高信頼度でのデータ復
調を実現するためのPRML信号処理方式を提供する。
【解決手段】媒体雑音や信号歪が集中する低周波領域の信号を効果的に抑圧し、
かつ、同様の信号領域にある再生信号の検出信号成分を有効利用するため、これ
らを両立する規定の量に直流近傍の低周波信号成分を抑圧するよう垂直記録再生
信号に対するパーシャルレスポンス波形等化処理の目標を設定し、これを介して
最尤復号処理を行う。
【効果】データ復調の信頼性がより高まり信号品質が向上する。その結果、記録
媒体からの雑音をより軽減でき、高密度磁気記録再生装置が構成可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直磁気記録用の磁気記録再生信号処理回路に関する。
【背景技術】
【0002】
高記録密度に適した磁気記録方式として垂直磁気記録の研究が展開中である。
垂直磁気記録方式においては、記録ヘッドから発生する記録磁界の強力さ、急峻さという理由から、単磁極ヘッドと軟磁性裏打ち層・記録磁性層からなる二層膜構造媒体を組み合わせた記録方式が多く用いられる。
【0003】
磁化記録された垂直磁気記録媒体から、再生ヘッドにより磁化情報を再生するとき、ヘッドからの再生信号は、媒体上の記録磁化分布に対応した矩形波状の信号波形となる。
【0004】
垂直磁気記録方式の再生信号をデータ復調するに好適な信号処理方式は、従来、あまり検討されていなかったが、垂直磁気記録方式の再生信号は矩形波形状であり直流信号成分が多く含まれていることから、光記録再生装置などに使用されるパーシャルレスポンスクラスI、及びこの拡張方式(特開平11−66755)や積分信号検出に類する技術がいくつか提案されている。
【0005】
パーシャルレスポンス(Partial−Response)による信号等化処理は、面内磁気記録方式で広く一般的に用いられている信号処理方式であり、最尤(Maximum−Liklihood)復号方式と組み合わせて信号処理を行うことにより、再生信号のSN品質を改善し、信頼性の高いデータ再生を行うことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の通り、垂直磁気記録方式における再生信号波形には直流および低周波成分が多く含まれている。現実的な再生信号処理回路系においては、その最前段に再生アンプや自動利得制御回路(AGC)が設けられているが、再生アンプやAGCは、回路特性上、直流近傍の低周波信号を遮断する特性を有する。したがって、再生信号波形には直流振幅成分の歪や信号ベースラインの変動が発生する。
【0007】
一方で、再生信号の直流および直流近傍の低域周波数には、媒体雑音と呼ばれる再生信号上の雑音、歪が多く含まれている。この雑音歪みのパワースペクトルは、直流および低周波近傍に集中したエネルギー分布を持っている。したがって、再生信号に対して単純に低域補償を行っても、雑音成分も増幅されるため信号品質は低下する。前記パーシャルレスポンスクラスIやその拡張方式(特開平11−66755)や積分信号検出方式は、直流成分をそのまま残す信号処理方式であるため、直流成分に含まれる雑音については、全く考慮されていない。
【0008】
係る垂直磁気記録方式における再生信号波形に対して、より好適な信号処理方式を提供するのが、本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のように、垂直磁気記録方式における再生信号には、直流信号成分を多く含まれているが、一方で、この周波数成分近傍には、記録媒体からの種々の雑音や、再生系増幅アンプ回路など信号伝送系の低周波周波数損失による歪など多くの外乱要因が局在する。
【0010】
この影響を低減するため、再生信号の直流信号成分近傍の低域信号成分を最適量だけ透過させた周波数特性を与える波形等化処理を行う。このような波形等化処理を実施することで、低周波近傍の媒体雑音や波形歪の影響を適度に抑制され、直流近傍の低周波数領域により多く含まれる垂直磁気記録再生信号の検出信号成分が最適に維持される。同時に、装置、ヘッドや回路素子から発生する再生信号上の白色雑音の高域雑音成分が強調されることを抑制するため、等化処理波形にパーシャルレスポンス波形等化を施し、最尤復号器へ入力される雑音を白色化して、後段での最尤データ復調を行う。このように再生信号の波形等化処理を行うことで、復調データの誤り率特性が改善される。
【0011】
上記のような効用を併せ持つパーシャルレスポンス波形等化のための伝達特性は、具体的には、多項式
【0012】
【数1】

【0013】

のように1ビット信号遅延演算子Dを用いて記述される。第1項は、等化処理のインパルス応答として、p1、p2、・・pnの実数値の符号間干渉応答をn連続ビット信号値として与えることを意味し、記録再生系のインパルス応答波形に対して適切に符号間干渉応答を与えることで、高域雑音成分強調を押さえた雑音白色化波形等化が実現できる。
【0014】
また、(1−αD)(αは0≦α≦1なる実数値)なる第2項は低域抑制処理に相当し、この処理は、処理される信号とこの信号の1ビット時刻前のα倍信号値の差分をとることを意味する。ここで、αを1にとれば、デジタル微分処理に相当して直流信号を完全に遮断する周波数特性を与える。
【0015】
本発明では、パラメータαを適切な値にとることによって、低域信号成分を意図的に抑制し、この抑制の比率をパラメータαの選択により任意に調整する。本発明では、このような二つの機能を併せもつパーシャルレスポンス波形等化処理を実施し、低周波領域に局在する雑音・歪の影響と高域等化雑音の増加を同時に抑制する波形等化方式とこれに従う最尤データ復調処理を実施することによって、垂直磁気記録方式の再生信号に対して良好なデータ復調を実現する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、二層膜媒体と高感度MR再生ヘッドによる垂直磁気記録方式の再生信号に対し、従来技術を用いた場合に比べ、最尤復号におけるデータ復調の信頼性をより高め、より低SN信号品質を許容することができ、より高密度な情報記憶が実現できる磁気記録再生装置、および、これを用いた磁気記録再生信号処理回路が提供できる。
【0017】
本発明では、記録媒体からの雑音の影響をより効果的に軽減できる他、再生波形が、再生系増幅アンプ回路などの前段信号処理伝送系の伝達特性による低周波周波数劣化歪を受けることを前提とし、これを抑制する波形等化処理が行えるため、特殊な補償回路などの増加を要せず、この影響を低減して、該前段信号処理伝送系の特性劣化を許容した記録再生信号処理回路を提供することができる。また、再生信号からの直流再生検出を排除する処理系を備え、これを選択して用いることで、記録媒体とMR再生素子の接触(サーマル・アスペリティ)、ヘッド特性の変動により発生する再生波形の直流オフセットや変動などの、最尤復号データ復調への影響を排除して、記録再生系の信頼度を向上させる手段が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(実施例1)
図1は、本発明が提供する磁気記録再生装置の基本的実施構成を示している。本実施例において、記録信号処理回路9aに入力された情報符号データ1{ak}(k;ビット時刻を示す整数)は、符号器2により所定の符号変換処理が施されて、記録符号データ{bk}に変換される。記録符号データ{bk}は、記録電流変換処理回路3a、及び記録アンプ3bを経て、アナログの記録電流信号{ck}に変換された後、記録垂直磁気記録ヘッド媒体系4に供給され、情報記録がなされる。
【0019】
垂直磁気記録ヘッド媒体系4においては、記録媒体6として、記録磁性層6aと軟磁性裏打ち層6bを基板6c上に有する二層膜垂直磁気記録媒体を用い、記録ヘッド5には、単磁極ヘッドを使用する。記録ヘッドの記録磁界は主磁極5aに巻かれたコイル5bを通る記録電流によって誘起される。記録磁界により媒体厚さ方向に記録媒体を磁化する。このように記録された垂直磁気記録媒体から磁気抵抗(MR:Magneto Resistive)効果素子7aを有する再生ヘッド7を用いて磁化情報を再生するとき、ヘッドからの再生信号8は、図2の如く、媒体上の記録磁化分布に対応して、記録磁化方向の遷移位置でステップ状に電圧が変化する立ち上がりの鈍った矩形波形状となる。符号{dk}は再生信号系列を示す。
【0020】
再生信号の波形立ち上がりまたは立ち下がりの幅は、垂直磁気記録ヘッド媒体系4の構造や特性、記録再生条件などにより決定され、信号の出力電圧ともに高記録密度化を妨げる要因となる。また、波形上には、種々の原因による雑音が重畳する他、ヘッド媒体系、その他電子部品が有する周波数伝達特性に依存した波形歪が重畳する。再生信号処理回路9bでは、この再生信号8を再生アンプ10にて増幅し、自動利得制御アンプ10aでその再生信号振幅を所定のレベルに調整、低域フィルタ11によって高周波の不要な雑音や信号成分を除いた後、アナログ/デジタル(A/D)変換器12によって、記録符号データ{bk}のビットタイミングで、デジタル値にサンプリングした離散再生信号列{ek}に変換する。本発明では、この離散再生信号列{ek}から、最も効率よく高信頼度なデータ符号の復調を行うため、後段の等化器13により再生信号8に適したパーシャルレスポンス波形等化を施すとともに、この等化器13からの出力信号を最尤復号器14によって、最も誤り率の低いと思われる復調データ符号列{gk}へと変換する。パーシャルレスポンス波形等化においては、出力信号波形上の有限ビット長にわたり、既知の波形干渉値を付加することによって、波形処理における高周波信号成分の強調による高域雑音の増加を可能な限り低減するとともに、再生信号8が有する直流(DC)成分を含めた低域周波数領域での信号歪や雑音の影響を避けるための波形処理を施す。
【0021】
最尤復号器14では、ビタビ・アルゴリズムを用いてデータ復調処理を行う。最尤復号器14で復調された復調データ符号列{gk}は、復号器15を介して、逆変換処理され、もとの情報符号データ1{ak}に対応する再生符号データ16{ak‘}として再生出力される。
【0022】
図3は、図1の実施例において、等化器13におけるパーシャルレスポンス波形処理の詳細を説明したものである。図3において、再生波形19は、記録媒体6上のダイビット記録磁化パターン18(最短ビット間隔で記録された2つの隣接記録磁化反転の対18a)を再生したときの再生ヘッド7からの出力波形である。前述のように、2つの磁化遷移のタイミングで、ヘッド媒体系の周波数特性に依存して立ち上がりの鈍ったステップ応答信号19aが重なりあうことで、孤立したパルス状波形が出力される。上記のヘッド媒体系を有する一般的な垂直磁気記録再生系において、各々のステップ応答信号19aは、tanh型の関数で近似できることが知られており、上記のダイビット再生波形19は、信号振幅Vppと立ち上がり幅を決めるパラメータKにより、
【0023】
【数2】

【0024】

なる式で近似される。ここで、Kは、記録媒体6上の孤立記録磁化反転を再生したときに得られるステップ応答信号波形立ち上り、または立ち下がりにおいて、最大振幅の25%から75%までの変化に要する時間幅をビット時間間隔Tbで規格化した値である。これは、該ヘッド媒体系に対するインパルス応答出力波形、すなわち記録符号データ{bk}上の孤立ビット“1”に対する信号応答であり、記録符号データの個々のビットbkに対する検出応答と見なすことができ、このダイビット再生波形19の周波数領域でのパワースペクトル20(点線曲線)は、図4に示すように、直流成分を中心に、より低域にビット検出のための信号エネルギーが集中したものとなる。
【0025】
しかしながら、再生ヘッド7からの再生信号8は、再生アンプ10などの電子部品・信号伝送路特性を経てデータ再生されるので、これら周波数特性の劣化による波形歪の影響を受ける。特に再生アンプ10では、高密度・高周波記録再生に対する広帯域増幅回路の実現上、直流成分を含む低域遮断特性を許容せざるを得ず、その結果、出力信号上において、この低周波信号成分の損失による波形歪が、顕著なものとなる。即ち、上述のダイビット再生波形19のパワースペクトル20は、再生アンプを通過することにより、20bに示されるように直流近傍の周波数成分が欠落した周波数特性を持つように歪んでデータ復調されることになる。この低周波波形歪の補償を波形処理の上で行うためには過大な補償回路が必要であり、重畳する雑音成分の過度の強調を招き弊害を生む。
【0026】
更に、記録媒体6から再生ヘッド7によりセンスされる媒体雑音のスペクトルは、図4の20aに示されるように、直流成分を中心とした低周波領域に局在した周波数組成を有する。このように、検出されるべきダイビット再生波形19のパワースペクトル20と媒体雑音のスペクトル20aとは、直流成分近傍にピークをもつ同様の周波数組成を有するため、これと再生信号の低域成分とを分離し検出することが極めて困難である。
この信号組成に対して、本発明では、等化器13により、上記のダイビット再生波形19を、図4における等化波形パワースペクトラム21形状を有するような等化波形22へと波形処理する。
【0027】
再生アンプを通過してきた再生波形(図4の20bのパワースペクトルを時間領域で見た波形)に対して、直流成分が適度な大きさを持つように低域補償を行う。等化処理での適度な低域抑圧を加えることにより、20aの如く低域に集中した媒体雑音成分を適度に抑圧・遮断し、また、実際に観測される再生信号波形のパワースペクトル21に見られる低域の信号成分を有効にデータ復調に利用して、より好適な信号対雑音比率でのデータ復調を実現できる最適な信号状態を設定することができる。
【0028】
ナイキスト周波数近傍での高周波領域においては、従来のパーシャルレスポンス等化と同様、再生波形19の本来持つパワースペクトル20のスペクトル強度と等化波形のスペクトル強度とが整合(理想的には一致)するように波形等化処理を行うことで等化処理での高域雑音強調を抑える。低域を適度に抑圧し残留させる等化処理では、直流を完全に遮断する等化処理に比べ、ナイキスト周波数近傍で再生波形19が本来持つパワースペクトル20のスペクトル強度と等化波形21のパワースペクトラムのスペクトル強度をより近づけることができるので、等化処理での高域雑音強調がより抑制できる。更に、後段でのデータ復号処理の劣化を防ぐために、再生信号波形に含まれる雑音成分を白色化する。以上のように、図4の21のような周波数特性を有する信号を等化目標として、再生信号の等化処理を行うことにより、より雑音や歪の少ない状況でのデータ復調が可能となる。
【0029】
従来のパーシャルレスポンス等化処理では、波形干渉量(a1、a2、a3、・・・an)(各干渉値akは実数値、kは、ビット時刻を示す整数、a1、anは、非ゼロ)を、再生波形19、すなわちパワースペクトラム20の周波数組成(直流信号成分をピークとする周波数組成)に忠実に整合するよう適切に選ぶことにより高域等化雑音の強調を低減している。この場合、すべての干渉値は同符号の値であることが条件である。本発明では、再生波形19に対し直流信号成分を適度に補償するため、a1から始まる先頭からの同極性(同符号)干渉量と、anで終わる末尾の同極性(同符号)干渉量が異なる極性となるように等化目標の波形干渉量を計算する。この時のダイビット再生波形19に対する等化波形22の形状は、非対称な逆極性振幅をもつダイパルス信号波形として観測され、図3にしめされる如く、主信号応答(図4の22では、a1、a2、a3の部分)に対し、その後尾部分に逆極性のアンダーシュート波形(図4の22では、a4、a5の部分)を付加したような波形形状となる。
一方、このような等化目標の干渉量に対して直流成分を完全に遮断する場合には、(a1、a2、a3、・・・an)に対し式(2)のような拘束条件を設定する。
【0030】
【数3】

【0031】

式(2)の拘束条件は、等化波形22の周波数表現H(f)(fは周波数)
【0032】
【数4】

【0033】

が、f=0で0となる条件より容易に導かれる。
また、
【0034】
【数5】

【0035】

のとき、|H(0)|=|a1+a2+a3+・・・an|≠0であるから、絶対値|a1+a2+a3+・・・an|の大小を拘束することで、等化波形パワースペクトラム21の直流成分を所望の値に規定することができる。
拘束条件(4)のもとで、再生波形19に対して、等化器13からの出力雑音エネルギーが最小化されるような雑音白色化フィルタ特性を決定する方法は、多くの古典的フィルタ理論によって与えられており、線形予測フィルタの学習アルゴリズムなど、開示される多くのアルゴリズムを用いることにより、現実の再生波形に対して容易に実施することができる。
【0036】
このような直流成分を意図的に抑制するパーシャルレスポンス等化波形(干渉量)目標値は、
【0037】
【数6】

【0038】

なる伝達多項式F(D)で一般的に規定することができる。ここで、p1、p2、・・・、pk、・・・pnは、付加干渉量比率を示す実数であり、伝達多項式(4)を、前述のようなパーシャルレスポンス干渉量として表記すると
【0039】
【数7】

【0040】

となる。すなわち
【0041】
【数8】

【0042】

である。
【0043】
伝達多項式F(D)の第一項(p1+p2D+p32+・・・pnn-1)は、再生波形19のパワースペクトル20に等化波形パワースペクトラム21を整合させるための波形干渉であり、雑音白色化整合フィルタの設計に基づいて決定することができる。一般に、パワースペクトル20のような直流成分をピークとする周波数組成の信号に整合する付加干渉量比率は、全て同符号をとる。
【0044】
F(D)の第一項(1−αD)は、本発明の特徴である低周波抑圧の特性を付加するための符号間干渉量の付加操作を意味し、再生信号の時系列の各信号値に対して、これを1ビット時刻遅延してα倍した信号値を減算する処理を意味する。
【0045】
このパラメータαは、目標等化波形の低周波領域を抑圧し直流信号成分を調整するためのパラメータである。特にα=0に設定されるときは直流成分遮断しないことを示し、α=1に設定されるとき、直流成分を完全に遮断することを示す。
再生波形に対して、F(D)の第一項の干渉量を決定した後、このパラメータαを適切に調整する。また、αを先に決定しておいて、式(4)の拘束条件のもとで、上述の雑音白色化整合フィルタの設計基準に基づき、F(D)第一項の干渉量を決定しても良い。
【0046】
図5〜図7は、様々なパラメータKを有する式(1)の再生波形19に対して、各パラメータαに対して、本発明において設定されるべき最適な波形干渉量の振幅比率を示したものである。
【0047】
また、図8は、パラメータKが1.5である再生信号に対して、選択された低域抑圧パラメータαとデータビットの誤り率(データ復調の信頼度)との関係を示すものである。この図に示されるように、αは0.1≦α≦1の範囲で、α=0つまり、直流成分を完全に遮断する方式の波形等化方式に比べてデータビット誤り率の低い等化方式を実現できることが分かる。実際の垂直磁気記録再生系の再生信号に対しては、再生信号の特性や媒体雑音によって最適αの値が設定される。
以上、本発明のパーシャルレスポンス等化方式においては、再生信号に対して直流成分をどの程度補償するかという第1の条件および雑音成分を白色化し雑音強度をなるべく小さくするという第2の条件から、等化目標、すなわち波形干渉量が決定される。
【0048】
上記のように決定された最適な波形干渉量(a1、a2、a3、・・・an)に対し、入力される再生波形19との関係から等化器13の回路パラメータを設定することは、公知のフィルタ設計理論により、極めて容易である。多くの場合、等化器13は、図9に示されるように、1ビットの信号値を記憶する記憶遅延素子23を直列に接続したシフトレジスタと、所定のタップ係数(h1,h2,h3・・・hL)(Lは、タップ長)をそれぞれの記憶内容に乗じて積和演算を行うための乗算器24、加算器25aなどから構成されるトランスバーサル型フィルタにより構成される。26は適応学習回路であって、等化器から出力される信号を観測し、波形干渉量(a1、a2、a3、・・・an)で決まる目標信号との誤差を評価しながら最適タップ係数を計算する。
【0049】
図10は、本発明におけるパーシャルレスポンス等化を、実際の再生信号に対し有効に実現するための一般的な等化器の実施例を示している。実際の記録再生系では、様々な特性を有する垂直記録ヘッド媒体系に対応し、より最適なαを選択して用いるため、2つの遅延加算演算処理回路部で等化器13を実現する。前述のパーシャルレスポンス伝達特性
【0050】
【数9】

【0051】

に従って構成される。前段のフィルタ27は雑音白色整合フィルタであり、図9のトランスバーサルフィルタと同様の構成により、第一項(p1+p2D+p32・・・+pnn-1)で記述される符号間干渉付加を行うパーシャルレスポンス波形等化を行う。次段の低域抑圧フィルタ28は、可変パラメータαを用いて第二項(1−αD)を実現するため、1ビットの信号を記憶する記憶遅延素子23と、記憶遅延素子23からの出力に対し抑圧パラメータαを乗算する乗算器24、減算器25bから構成される。この後段の低域抑圧フィルタ28による(1−αD)処理は、雑音白色整合フィルタ27に前置しても良い。また、雑音白色整合フィルタ27や本等化器13の出力信号値を参照して、適応学習回路26により、トランスバーサルフィルタのフィルタタップ係数hfを再生信号に対して最適に計算することも、公知の技術を用いて容易に実施することができる。
【0052】
上記実施例のような等化器13から出力された信号は、最尤復号器14により、公知のビタビ・アルゴリズムなどを用いてデータ復調される。図11は、このビタビ復号の状態遷移トレリス線図の一例(n=4)を示しており、各矢印には、ビット時刻kで仮定される記録符号データ3{bk}とこれに対応する等化器13からの出力信号値{fk}の値が記されている。このトレリス線図の時間的推移が示す全ての状態遷移において、最も確からしい遷移が示す符号系列が復号データとして選択され、信号再生が行われる。
(実施例2)
本発明の等化器13においては、抑圧パラメータαを変えることにより、再生信号がもつ直流成分を含めた低周波信号成分を柔軟に調整することができる。これは、実再生信号上にしばしば起こる直流成分のオフセットや低周波変動・歪の影響を排除することに役立つ。とりわけ、高密度記録再生系では、再生ヘッド7の特性変動、再生ヘッド7と記録媒体6間の距離の狭小化に伴い、磁気抵抗効果素子7aと記録媒体6の接触による温度上昇で磁気抵抗特性が大きく変化することによるTA(サーマルアスペリティ:Thermal Asperity)現象が顕著である。このとき、再生信号には、正規最大振幅を超えるような大きな直流オフセット変動が発生する。図12は、このようなTA現象を模式的に説明した図である。
【0053】
通常、正規信号波形30は、自動利得制御アンプ10aによって、正規最大信号レベル29aの間の信号レベルに収められており、所定のオフセット調整によって安定した正常オフセットレベル29bを有する。この正規信号波形30上に上記のTA現象が発生した場合、典型的には、TA再生波形32のような波形現象が観測され、TA発生時刻32aから正規最大信号レベル29aを超えるような急激な信号オフセット変動32bが発生する。このオフセット変動は、TA現象が緩和されるまでの期間比較的長期にわたって継続する。信号オフセット変動32bは、正規最大信号レベルをはるかに超えることもしばしばであり、持続時間も典型的には数10〜数100ビットに及ぶ。図から分かるように、TA現象による信号オフセット変動32bは、長期間のオフセット信号変動が、正規再生波形30上に重畳したものとなり、直流成分が残留するような方式のパーシャルレスポンス波形等化と最尤復号によるデータ復調ではデータ復調が困難になる。この影響は、等化器の直流遮断特性を強めることにより排除できる。
【0054】
図13は、このための再生信号処理回路9bの実施例を示している。再生アンプ10の後段には、図12に示したようなTA再生波形32の発生を検知するTA検出回路33が設けられる。TA検出の方法は様々であり、信号の自動利得制御アンプ10aにおいて、検出された入力再生信号レベルの急激な変動を検知する、あるいは、再生信波形32のレベルが、予め設定されたTA検出しきい値31a,31bを所定の時間Tta以上連続して超えた場合に信号異常としてこれをとらえるなど様々な方法がある。本実施例では、通常は、正規再生信号波形30に対して最適な信号条件を与えるパラメータα、あるいは適度に低域を補償するパーシャルレスポンス等化処理を用いてデータ復調を行い、TA再生波形32が検知されたとき、等化器13での低域抑圧パラメータαを1とすることで直流遮断を強めて、その影響を排除する。抑圧パラメータαは、レジスタ回路34などに複数個(α1、α2、・・・)を収納しておき、TAなどの信号異常を知らせる異常検知信号(制御信号)33aに応じて、その一つを選択回路35により選択して、これを等化器13に与える構成としている。
【0055】
このように、TA波形28やオフセット変動など信号の異常を検知した場合と、検知されない正常な場合で、複数のパラメータαの値を変えて、等化器13を動作させる、言い換えるならば、異なる直流成分通過特性を有するパーシャルレスポンス等化処理を選択的に用いることで、再生信号の状態により適した再生信号処理条件で、データ復調の信頼度をより高めることができる。また、パラメータαではなく、直流成分通過特性を有するパーシャルレスポンス等化のための等化器特性を実現するための等化器13のタップ係数(h1,h2,h3・・・hL)、あるいは、他の特性を規定する等化器パラメータを複数用意して、これを選択して設定してもよい。なお、信号遅延回路36は、上記信号異常の検出処理による遅延やパラメータの切り替え処理に伴う遅延を補完するため、信号異常部分に遅延を施す処理を行う回路であるが、本発明の本質には関わらないので説明は省略する。
(実施例3)
再生信号に応じて等化特性を使い分けるという回路を実施する具体的構成としては、図13のように等化器パラメータを可変にして1つの再生系信号処理回路で実現するという構成方法の他に、異なる直流低周波成分通過特性を有する等化器13と最尤復号器16の組を複数系統用意した図14のような構成の実施例をとることもできる。前述のTA検出回路29などによる信号異常の検出に基づいて、これら複数系統への再生信号の入力を選択的に行うことでより信頼度の高いデータ復調結果が得られる。あるいは、信号異常の検出時には、直流遮断特性の強い、より適切な信号系統からのデータ復調結果を選択器35を通じて選択するようにしても良い。
(実施例4)
多くのパーシャルレスポンス波形等化回路に対しては、その前段に置かれる自動制御利得回路10aの調整利得を制御する自動利得制御回路39aや、アナログ・デジタル変換器12での再生信号のサンプリングタイミングを制御するタイミング抽出回路39bが置かれる。この場合、制御のための制御信号情報38は、等化器13の出力やあるいはそれ以後の部位から、帰還して参照される。また、等化器13のタップ情報を調整する適応学習回路26の制御情報も同様にその後段からとられる。この場合、上述のTA変動など直流オフセットあるいは低周波の波形変動は、これら制御系に大きな悪影響を与え、この帰還制御系内に長期にその影響が滞留して、再生信号処理系の正常な動作を妨げる。
【0056】
本実施例では、図14の実施例で複数用意されたパーシャルレスポンス信号処理系のうち、直流成分を遮断する特性を有する系統、あるいは、α=1なるパラメータを有する再生系系統の等化器13後段から参照信号を得る。本実施例の回路構成を図15に示す。この場合、上記のような制御情報信号38を得る目的のみに、直流成分を遮断する特性を有する系統、あるいは、α=1なるパラメータを有する再生系系統の等化器13のみを備え、これより後段の最尤復号器14などの信号処理系を省略するものであってもよい。これにより、制御系に動作に悪影響を及ぼす直流・低周波変動の入力を排除して、他系統による最適直流遮断特性、最適パラメータαでの高信頼度なデータ復調とともに本発明磁気記録再生装置の高い再生信頼度を維持することが可能となる。
(実施例5)
本発明が提供する磁気記録再生装置では、直流近傍の低周波領域の信号成分を許容したパーシャルレスポンス波形処理と最尤復号によるデータ復調を用いるため、図4に示したような低域に集中する媒体雑音の量がデータ復調の信頼度を決定する大きな要因である。本発明により、その影響は、再生信号が有する低周波信号成分の効率的利用の観点から最適に低減されるが、この媒体雑音の絶対量を低減することが、本磁気記録再生装置のデータ復調を高める上で優位であることは言うまでもない。このため、図16に示されるように、低周波の揺らぎを持った媒体雑音の影響が局在すること押さえるため、媒体上に最短ビット長さで記録される磁化反転の最大連続数mを一定以下に制限するよう、符号器2において、記録データに対する符号変換処理を施した後に、これを記録媒体6上に記録する。
【0057】
例えば、m=3なる制約を設けたとき、記録媒体6に記録されるビット情報は、記録情報の6〜9%以下の程度の冗長度を設けることで実現できる。m=4なる制約では、3〜5%以下の冗長度のみで実現することが可能であり、これは、記録再生の効率を損なわず、媒体雑音を低減して、データ復調信頼度を向上させることにつながる。本発明のパーシャルレスポンス波形処理とともに、このような符号変換処理を用いることで媒体雑音の影響を低減できる。
【0058】
以上の実施例における磁気記録再生装置の信号処理回路系、記録信号処理回路9aおよび、再生信号処理回路9bは、既存の回路技術により、高速・高集積・小型な半導体集積回路として容易に実現することができる。この半導体集積回路を、垂直磁気記録ヘッド媒体系4を有する磁気記録再生装置に搭載することにより、そのデータ復調信頼度を向上させ、より高密度での情報の記録再生を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の基本的実施例を示す図。
【図2】垂直磁気記録方式の記録再生過程を示す図。
【図3】本発明パーシャルレスポンス波形等化処理を説明する図(時間波形)。
【図4】本発明パーシャルレスポンス波形等化処理を説明する図(周波数スペクトラム)。
【図5】本発明で設定されるパーシャルレスポンス波形干渉量の一例を示す表。
【図6】本発明で設定されるパーシャルレスポンス波形干渉量の一例を示す表。
【図7】本発明で設定されるパーシャルレスポンス波形干渉量の一例を示す表。
【図8】本発明における低域抑圧パラメータαとデータビット誤り率の関係を示す図。
【図9】トランスバーサルフィルタによるパーシャルレスポンス等化器構成を説明する図。
【図10】本発明パーシャルレスポンス等化器の実施例を説明する図。
【図11】本発明におけるビタビ復号の状態遷移トレリス線図の一例を示す図(n=4)。
【図12】サーマルアスペリティ現象を説明する図。
【図13】本発明の再生信号処理回路の第2の実施例。
【図14】本発明の再生信号処理回路の第3の実施例。
【図15】本発明の再生信号処理回路の第4の実施例。
【図16】本発明における記録符号変換処理を説明する図(m=4の例)。
【符号の説明】
【0060】
1:情報符号データ、2:符号器、3a:記録電流変換処理回路、3b:記録アンプ、4:垂直磁気記録ヘッド媒体系、5:記録ヘッド、5a:主磁極、5b:コイル、5c:補助磁極、6:記録媒体、6a:記録磁性層、6b:軟磁性裏打ち層、6c:基板、7:再生ヘッド、7a:磁気抵抗(MR)効果素子、7b:シールド膜、8:再生信号、9a:記録信号処理回路、9b:再生信号処理回路、10:再生アンプ、10a:自動利得制御アンプ、11:低域フィルタ、12:アナログ/デジタル(A/D)変換器、13:等化器、14:最尤復号器、15:復号器、16:再生符号データ、17:記録磁化パターン、18:ダイビット記録磁化パターン、18a:隣接記録磁化反転の対、19:ダイビット再生波形、19a:ステップ応答信号、20:ダイビット再生波形のスペクトル、20a:媒体雑音のスペクトル、20b:低周波歪を有するダイビット再生波形のスペクトル、21:等化波形のスペクトル、22:等化波形、23:1ビット記憶遅延素子、24:乗算器、25a、加算器、25b:減算器、26:適応学習回路、27:雑音白色整合フィルタ、28:低域抑圧フィルタ、29a:正規最大信号レベル、29b:正常オフセットレベル、30:正常信号波形、31a、31b:TA検出しきい値レベル、32:TA再生波形、32a:TA発生時刻、32b:TAによる信号オフセット変動、33:TA検出回路、33a:異常検知信号(制御信号)、34:レジスタ回路、35:選択回路、36:信号遅延回路、38:制御信号情報、39a:自動利得制御回路、39b:タイミング抽出回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された符号列に対して1ビット遅延信号をα倍して減算する処理と、前記1ビット遅延符号のα倍が減算された符号列に含まれる雑音を白色化する処理とを行う信号等化器を備え、前記パラメータαは0.1以上1以下の実数であることを特徴とする信号等化器。
【請求項2】
雑音白色化整合フィルタと、該雑音白色化整合フィルタの出力符号に対して1ビット遅延符号のα倍を減算する処理を行う回路とを備え、かつ前記パラメータαは0.1以上1以下の実数であることを特徴とする信号等化器。
【請求項3】
定められた最大信号レベルを越えるオフセット変動の有無を入力信号に対して検知するサーマルアスペリティ検出回路と、該サーマルアスペリティ検出回路の後段に配置された信号経路の選択回路と、該選択回路の後段に配置された請求項1または2に記載の等化器と、該等化器に対して供給するパラメータαを複数有するレジスタとを有し、サーマルアスペリティが検出された際には、パラメータαとして1が前記レジスタから前記等化器へ供給されることを特徴とする半導体集積回路。
【請求項4】
定められた最大信号レベルを越えるオフセット変動の有無を入力信号に対して検知するサーマルアスペリティ検出回路と、該サーマルアスペリティ検出回路の出力に対して並列に複数個接続された請求項1または請求項2に記載の信号等化器と、該複数の信号等化器の後段の出力のいずれかを選択する選択回路とを有し、前記複数の信号等化器のうち少なくとも一つはパラメータαとして1を有し、サーマルアスペリティが検出された際には、前記選択回路はパラメータαとして1を有する信号等化器からの出力に接続されることを特徴とする半導体集積回路。
【請求項5】
定められた最大信号レベルを越えるオフセット変動の有無を入力信号に対して検知するサーマルアスペリティ検出回路と、該サーマルアスペリティ検出回路の後段に配置されたA/D変換器と、該A/D変換器の出力に対して並列に複数個接続された請求項1または請求項2に記載の信号等化器と、前記A/D変換器のサンプリングタイミングを制御するタイミング抽出回路と、前記複数の信号等化器の後段の出力のいずれかを選択する選択回路とを有し、前記複数の信号等化器のうち少なくとも一つはパラメータαとして1を有し、かつ前記タイミング抽出回路はパラメータαとして1を有する信号等化器の出力をA/D変換器のサンプリングタイミング制御用の参照信号として用いることを特徴とする半導体集積回路。
【請求項6】
垂直磁気記録媒体と、該磁気記録媒体に対して記録動作および再生動作を行う記録再生ヘッドと、該再生ヘッドからの再生信号を処理する再生信号処理回路とを備えた垂直磁気記録装置において、前記再生信号処理回路は、入力信号に対して1ビット遅延信号をα倍して減算する処理と、前記1ビット遅延信号のα倍が減算された入力信号に含まれる雑音を白色化する処理とを行う信号等化器を備え、前記パラメータαは0.1以上1以下の実数であることを特徴とする垂直磁気記録装置。
【請求項7】
垂直磁気記録媒体と、該磁気記録媒体に対して記録動作および再生動作を行う記録再生ヘッドと、該再生ヘッドからの再生信号を処理する再生信号処理回路とを備えた垂直磁気記録装置において、前記再生信号処理回路は、雑音白色化整合フィルタと、該雑音白色化整合フィルタの出力信号に対して1ビット遅延信号のα倍を減算する処理を行う回路とを有する信号等化器を備え、かつ前記パラメータαは0.1以上1以下の実数であることを特徴とする垂直磁気記録装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の垂直磁気記録装置において、前記再生信号処理回路は、定められた最大信号レベルを越えるオフセット変動の有無を入力信号に対して検知するサーマルアスペリティ検出回路と、該サーマルアスペリティ検出回路の後段に配置された信号経路の選択回路と、該選択回路の後段に配置された信号等化器と、該フィルタ回路に対して供給するパラメータαを複数有するレジスタとを有し、前記信号等化器は、雑音白色化整合フィルタと、入力信号に対して1ビット遅延信号のα倍を減算する処理を行うフィルタ回路とを備え、サーマルアスペリティが検出された際にはパラメータαとして1が前記レジスタから前記フィルタ回路へ供給されることを特徴とする垂直磁気記録装置。
【請求項9】
請求項6または7に記載の垂直磁気記録装置において、前記再生信号処理回路は、定められた最大信号レベルを越えるオフセット変動の有無を入力信号に対して検知するサーマルアスペリティ検出回路と、該サーマルアスペリティ検出回路の出力に対して並列に複数個接続された信号等価器と、該複数の信号等化器の後段の出力のいずれかを選択する選択回路とを有し、前記信号等化器は雑音白色化整合フィルタと入力信号に対して1ビット遅延信号のα倍を減算する処理を行うフィルタ回路とを備え、前記複数の信号等化器のうち少なくとも一つはパラメータαとして1を有し、サーマルアスペリティが検出された際には、前記選択回路はパラメータαとして1を有する信号等化器からの出力に接続されることを特徴とする垂直磁気記録装置。
【請求項10】
請求項6または7に記載の垂直磁気記録装置において、前記再生信号処理回路は、定められた最大信号レベルを越えるオフセット変動の有無を入力信号に対して検知するサーマルアスペリティ検出回路と、該サーマルアスペリティ検出回路の後段に配置されたA/D変換器と、該A/D変換器の出力に対して並列に複数個接続された信号等化器と、前記A/D変換器のサンプリングタイミングを制御するタイミング抽出回路と、前記複数の信号等化器の後段の出力のいずれかを選択する選択回路とを有し、前記信号等化器は雑音白色化整合フィルタと入力信号に対して1ビット遅延信号のα倍を減算する処理を行うフィルタ回路とを備え、前記複数の信号等化器のうち少なくとも一つはパラメータαとして1を有し、かつ前記タイミング抽出回路はパラメータαとして1を有する信号等化器の出力をA/D変換器のサンプリングタイミング制御用の参照信号として用いることを特徴とする垂直磁気記録装置。
【請求項11】
垂直記録媒体と、記録ヘッドと、該記録ヘッドへ送り出す記録信号を処理する記録信号処理回路系とを備えた磁気記録再生装置において、該記録信号処理回路系は、入力される情報データ符号系列に対して、媒体上に最短ビット長間隔で記録される記録磁化反転の最大連続数が有限個の値に制限されるように符号変換処理を行う符号器を有することを特徴とする垂直磁気記録再生装置。
【請求項12】
請求項11に記載の磁気記録再生装置において、該磁気記録再生装置は、再生ヘッドと、該再生ヘッドからの再生信号を処理する再生信号処理回路系とを有し、該再生信号処理回路系は、前記符号器で行った符号変換処理の逆変換符号処理を行う復号回路を有することを特徴とする磁気記録再生装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟磁性裏打ち層を有する垂直磁気記録二層膜媒体と、シールド膜を有する磁気抵抗効果型ヘッドを再生ヘッドに用いた垂直磁気記録再生装置に搭載する信号処理回路であって、
該再生ヘッドから出力される再生信号を、直流成分を含む低周波信号成分を通過かつ抑制する周波数特性を有するパーシャルレスポンス波形等化回路を介して処理し、これを最尤復号器に入力してデータ再生することを特徴とする磁気記録再生信号処理回路。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気記録再生信号処理回路において、該記録媒体上、最短ビット長間隔で記録される2つの隣接記録磁化反転の対に対する再生信号波形は、該パーシャルレスポンス波形等化回路を介して、(a1, a2, a3,…,a,…, an)(kは、ビット時刻を示す整数、a1, anは、異符号の非ゼロ実数:a1+a2+a3…+a+…+an≠0,n≧2)なる振幅比の波形干渉を各ビット時刻において有する信号波形として出力されること、あるいは、奇対称な逆極性振幅をもつダイパルス信号波形として出力されること、かつ、この出力された信号は、該最尤復号器に入力されてデータ再生されること。上記特徴を有する磁気記録再生信号処理回路。
【請求項3】
請求項2に記載の磁気記録再生信号処理回路において、該記録媒体上、最短ビット長間隔で記録される2つの隣接記録磁化反転の対に対する再生信号波形は、該パーシャルレスポンス波形等化回路を介して、(p1, p2-αp1,…,pk-αpk-1,…,pn-αpn-1,-αpn)(αは0<α<1なる実数値、kはビット時刻を示す整数、p1,p2,…,pk…,pnは同符号実数、p1, pnは非ゼロ実数:n≧2)なる振幅比の波形干渉を各ビット時刻において有する信号波形として出力され、該最尤復号器に入力されてデータ再生されることを特徴とする磁気記録再生信号処理回路。
【請求項4】
請求項3に記載の磁気記録再生信号処理回路において、該パーシャルレスポンス波形等化回路は、入力された各信号値から、これを所定ビット時刻遅延しα倍した信号値を減算する演算回路と所定の波形処理回路により構成されることを特徴とする磁気記録再生信号処理回路。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の磁気記録再生信号処理回路において、α≧0.1なるパラメータを用いることを特徴とする磁気記録再生信号処理回路。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の磁気記録再生信号処理回路を含み、異なる直流周波数成分通過特性を有する複数のパーシャルレスポンス波形等化回路、あるいは、異なるパラメータαにより規定される複数のパーシャルレスポンス波形等化回路を有して、同一の該再生ヘッドからの再生信号をこれらに入力し波形等化処理することを特徴とする磁気記録再生信号処理回路。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載の磁気記録再生信号処理回路を含み、該パーシャルレスポンス波形等化回路に対して、異なる直流周波数成分通過特性、あるいは、複数の異なるパラメータαから一つを選択して設定し、該再生ヘッドからの再生信号をこれに入力し波形等化処理することを特徴とする磁気記録
再生信号処理回路。
【請求項8】
請求項6または7に記載の磁気記録再生信号処理回路において、異なる直流周波数成分通過特性のうち少なくとも一つは直流周波数成分を遮断するものであること、あるいは、異なるパラメータαのうち少なくとも一つは、α=1なる条件を有するものであることを特徴とする磁気記録再生信号処理回路。
【請求項9】
請求項8に記載の磁気記録再生信号処理回路において、該パーシャルレスポンス波形等化回路に前置される回路を調整・制御するための信号は、直流周波数成分を遮断する特性を有する該パーシャルレスポンス波形等化回路、あるいは、α=1なるパラメータを有する該パーシャルレスポンス波形等化回路の後段から参照されることを特徴とする磁気記録再生信号処理回路。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の磁気記録再生信号処理回路において、該記録媒体に記録する情報データ符号系列に対して、媒体上に最短ビット長間隔で記録される記録磁化反転の最大連続数mが有限個の値に制限されるように符号変換処理を施す符号処理回路(符号変調回路)を有すること、あるいは、該記録媒体から再生された記録データ符号系列に対して、上記符号変換処理の逆変換符号処理を施す符号処理回路(符号復調回路)を有することを特徴とする磁気記録再生信号処理回路。
【請求項11】
請求項10に記載の磁気記録再生信号処理回路において、記録磁化反転の最大連続数mは、4以下に制限されることを特徴とする磁気記録再生信号処理回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−331641(P2006−331641A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−210460(P2006−210460)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【分割の表示】特願2000−328404(P2000−328404)の分割
【原出願日】平成12年10月23日(2000.10.23)
【出願人】(503136004)株式会社日立グローバルストレージテクノロジーズ (22)
【Fターム(参考)】