説明

磁気記録媒体、及び、その製造方法

【課題】平滑性が高く、電磁変換特性に優れ、走行耐久試験後のエッジダメージが少なく、高温高湿保存後の耐久性に優れた磁気記録媒体及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】非磁性支持体上に、シルセスキオキサン構造を有する硬化層、及び、強磁性粉末を結合剤中に分散した少なくとも一層の磁性層を有することを特徴とする磁気記録媒体、並びに、放射線硬化性基を有するシルセスキオキサン化合物含有層を塗設する工程、前記放射線硬化性基を有するシルセスキオキサン化合物含有層を放射線照射により硬化してシルセスキオキサン構造を有する硬化層を形成する工程、及び、強磁性粉末を結合剤中に分散した磁性液を塗布する工程を含む前記磁気記録媒体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シルセスキオキサン構造単位を含む高密度記録用の磁気記録媒体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録技術は、媒体の繰り返し使用が可能であること、信号の電子化が容易であり周辺機器との組み合わせによるシステムの構築が可能であること、信号の修正も簡単にできること等の他の記録方式にはない優れた特長を有することから、ビデオ、オーディオ、コンピューター用途等を始めとして様々な分野で幅広く利用されてきた。
近年の記録の大容量化、高記録密度化要求に応える磁気記録媒体は、その高度な電磁変換特性を達成するため極めて平滑な表面を有する。この平滑な表面を記録ヘッドが高速で摺動すると従来の技術では耐久性を確保することが極めて難しくなる。
磁気記録媒体における耐久性や走行性の改善のため、例えば、ポリメトキシシロキサンを使用した磁気記録媒体が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−30961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した特許文献1に記載された発明では、支持体との密着力が低くなり、高温高湿保存後に十分な走行耐久性が得られないという問題があった。
上記を考慮してなされた本発明の目的は、平滑性が高く、電磁変換特性に優れ、走行耐久試験後のエッジダメージが少なく、高温高湿保存後の耐久性に優れた磁気記録媒体及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下に示す<1>及び<7>の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<6>、<8>及び<9>と共に以下に示す。
<1> 非磁性支持体上に、シルセスキオキサン構造を有する硬化層、及び、強磁性粉末を結合剤中に分散した少なくとも一層の磁性層を有することを特徴とする磁気記録媒体、
<2> シルセスキオキサン構造を有する硬化層と磁性層との間に、非磁性粉末を結合剤に分散した非磁性層を有する上記<1>に記載の磁気記録媒体、
<3> 前記シルセスキオキサン構造が、オキセタニル基、エポキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基よりなる群から選ばれた基を有するシルセスキオキサン化合物より得られた構造である上記<1>又は<2>に記載の磁気記録媒体、
<4> 前記シルセスキオキサン構造が、オキセタニル基及び/又はエポキシ基を有するシルセスキオキサン化合物より得られた構造である上記<1>〜<3>のいずれか1つに記載の磁気記録媒体、
<5> 前記シルセスキオキサン構造が、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有するシルセスキオキサン化合物より得られた構造である上記<1>〜<3>のいずれか1つに記載の磁気記録媒体、
<6> 前記硬化層の平均厚みが0.1μm〜1.5μmである上記<1>〜<5>のいずれか1つに記載の磁気記録媒体、
<7> 非磁性支持体上に、放射線硬化性基を有するシルセスキオキサン化合物含有層を塗設する工程、前記放射線硬化性基を有するシルセスキオキサン化合物含有層を放射線照射により硬化してシルセスキオキサン構造を有する硬化層を形成する工程、及び、強磁性粉末を結合剤中に分散した磁性液を塗布する工程を含む上記<1>に記載の磁気記録媒体の製造方法、
<8> 前記放射線硬化性基が、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基である上記<7>に記載の磁気記録媒体の製造方法、
<9> 前記放射線硬化性基が、オキセタニル基及び/又はエポキシ基である上記<7>に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、平滑性が高く、電磁変換特性に優れ、走行耐久試験後のエッジダメージが少なく、高温高湿保存後の耐久性に優れた磁気記録媒体及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体上に、シルセスキオキサン構造を有する硬化層、及び、強磁性粉末を結合剤中に分散した少なくとも一層の磁性層を有することを特徴とする。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
I.シルセスキオキサン構造を有する硬化層
本発明の磁気記録媒体は、シルセスキオキサン構造を有する硬化層を有する。
「シルセスキオキサン構造」とは、その構造の大部分が構造式[RSiO1.5](Rはそれぞれ独立に任意の有機基を表し、2つ以上のRが互いに連結していてもよい。)で表されるポリシロキサン構造の総称であり、下記に一例を示すようなラダー状シルセスキオキサン構造及びカゴ状シルセスキオキサン構造や、不定形のシルセスキオキサン構造などの構造が例示できる。
【0009】
【化1】

【0010】
【化2】

【0011】
シルセスキオキサン構造[RSiO1.5]におけるRとしては、それぞれ独立に、一価以上の有機基であればよいが、炭素原子、水素原子及び酸素原子よりなる群から選ばれた原子のみからなる一価以上の基であることが好ましく、一価以上の炭化水素基、又は、一価以上の炭化水素基、カルボニル基、エーテル結合及びエステル結合よりなる群から選ばれた2以上の基を組み合わせた基であることがより好ましい。
シルセスキオキサン構造は、構造式[RSiO1.5]以外に、[R2SiO]や[SiO2]で表される構造を含んでいてもよいが、その構造におけるケイ素原子の85%以上が構造式[RSiO1.5]で表されることが好ましく、ケイ素原子の90%以上が構造式[RSiO1.5]で表されることがより好ましい。
また、シルセスキオキサン構造としては、カゴ状シルセスキオキサン構造であることがさらに好ましく、[RSiO1.5nとして表す場合、nが8、10、又は、12であるカゴ状シルセスキオキサン構造が特に好ましい。
【0012】
シルセスキオキサン構造を有する硬化層は、内部にシルセスキオキサン構造を含む硬化層であれば、シルセスキオキサン構造以外の部分の構造や含有物については特に制限はない。また、シルセスキオキサン構造を有する硬化層中におけるシルセスキオキサン構造は、シルセスキオキサン化合物として含んでいても、シルセスキオキサン樹脂として含んでいてもよい。
また、シルセスキオキサン構造を有する硬化層におけるシルセスキオキサン構造を有する化合物又は重合体の割合は、50重量%以上(主成分)であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましい。
シルセスキオキサン構造を有する硬化層としては、重合性基を有するシルセスキオキサン化合物を含む層を重合した層、又は、シルセスキオキサン化合物及び/又はシルセスキオキサン樹脂を塗布して硬化した層が例示できるが、重合性基を有するシルセスキオキサン化合物を含む層を重合した層であることが好ましく、平滑な層を得る観点から、前記重合性基は放射線硬化性基であり、かつ前記重合は放射線照射により行うこと、すなわち、放射線硬化性基を有するシルセスキオキサン化合物を含む層を放射線照射により硬化させた硬化層であることがより好ましい。
放射線硬化性基としては、エポキシ基、オキセタニル基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシル基等が例示でき、エポキシ基、オキセタニル基、又は、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。なお、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及びメタクリロイルの両方を意味する。
【0013】
本発明の磁気記録媒体におけるシルセスキオキサン構造を有する硬化層は、下記に示す単位構造(1)〜(3)のいずれか1つを少なくとも有する重合体を含有していることが好ましい。また、前記重合体は、1つ以上のシルセスキオキサン構造と連結している重合体であることがより好ましい。
【0014】
【化3】

【0015】
式(1)におけるR1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、又は、有機基を表し、また、R1とR2とが連結して環構造を形成していてもよい。R1及びR2の少なくとも1つは、シルセスキオキサン構造を含む有機基であることが好ましい。
式(2)におけるR3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、又は、有機基を表し、また、R3とR4とが連結して環構造を形成していてもよい。R3及びR4の少なくとも1つは、シルセスキオキサン構造を含む有機基であることが好ましい。
式(3)におけるR5は、水素原子、又は、メチル基を表し、R6は、有機基を表す。R6は、シルセスキオキサン構造を含む有機基であることが好ましい。
式(1)〜(3)における波線部分は、他の構造との結合部、又は、水素原子等の重合体の末端部を表す。
また、前記単位構造(1)〜(3)のいずれか1つを少なくとも有する重合体は、後述するシルセスキオキサン化合物及び/又は他の重合性単量体より形成されたものであることが好ましい。
【0016】
(1)シルセスキオキサン化合物
本発明に用いることができるシルセスキオキサン化合物は、シルセスキオキサン構造を有していれば特に制限はなく、ラダー状シルセスキオキサン構造又はカゴ状シルセスキオキサン構造を有する化合物であることが好ましく、カゴ状シルセスキオキサン構造を有する化合物であることがより好ましい。
【0017】
また、本発明に用いることができるシルセスキオキサン化合物は、平滑な層を形成する点から、電子線や紫外線(UV)などの放射線によって硬化する化合物であることが好ましい。この様な電子線や紫外線によって硬化するシルセスキオキサン化合物としては、放射線硬化性基を有するものであることがより好ましい。
【0018】
シルセスキオキサン構造を有する硬化層として、例えば、放射線硬化性基を有するシルセスキオキサン化合物に加え、他の重合性単量体を併用し、共に重合を行ってもよい。他の重合性単量体としては、他のカチオン重合性単量体、及び、他のラジカル重合性単量体が好ましく例示できる。
他の重合性単量体を使用する場合、放射線硬化性基を有するシルセスキオキサン化合物の比率は、特に限定されないが、シルセスキオキサン構造を有する硬化層を形成する単量体の全量に対し、好ましくは1〜100質量%、より好ましくは20〜99質量%、さらに好ましくは40〜90質量%である。上記範囲であると、走行耐久性、及び、高温高湿保存後の耐久性に優れる。
また、シルセスキオキサン構造を有する硬化層は、放射線硬化性基を有するシルセスキオキサン化合物、及び、他の重合性単量体のみを硬化した硬化層であることが好ましい。
【0019】
(2)オキセタニル基を有するシルセスキオキサン化合物
本発明に用いることができるオキセタニル基を有するシルセスキオキサン化合物としては、オキセタニル基とシルセスキオキサン構造を有する化合物であれば、特に制限はない。
オキセタニル基を有するシルセスキオキサン化合物の合成方法としては、特に制限はなく、公知の方法により合成すればよいが、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基及びアリーロキシ基よりなる群から選ばれた基をケイ素原子上に3つとオキセタニル基とを有するシラン化合物を用いて合成することが好ましい。なお、本発明において、「アルコキシ基」におけるアルキル基は、直鎖状又は分岐状アルキル基であってもよく、炭化水素環や芳香環等の環構造を有するアルキル基であってもよい。
ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基及びアリーロキシ基よりなる群から選ばれた基をケイ素原子上に3つとオキセタニル基とを有するシラン化合物としては、下記式(A)で表される化合物であることが好ましい。
【0020】
【化4】

(式(A)中、Raは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rbは炭素数2〜6のアルキレン基を表し、Rcはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基又はアリーロキシ基を表す。)
【0021】
式(A)におけるRaは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、エチル基が好ましい。
式(A)におけるRbは炭素数2〜6のアルキレン基を表し、プロピレン基であることが好ましい。
式(A)におけるRcはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基又はアリーロキシ基を表し、アルコキシ基又はアリールオキシ基であることが好ましく、炭素数1〜3のアルコキシ基であることがより好ましく、エトキシ基であることがさらに好ましい。
【0022】
オキセタニル基を有するシルセスキオキサン化合物としては、商業的に東亞合成(株)から「アロンオキセタンOX−SQ」、「アロンオキセタンOX−SQ−H」、「アロンオキセタンOX−SQ SI−20」、「アロンオキセタンOX−SQ−F」として入手可能である。
本発明に用いることができるオキセタニル基を有するシルセスキオキサン化合物は、単独又は2種以上を併用してよい。
【0023】
(3)エポキシ基を有するシルセスキオキサン化合物
本発明に用いることができるエポキシ基を有するシルセスキオキサン化合物としては、エポキシ基とシルセスキオキサン構造を有する化合物であれば、特に制限はないが、前記オキセタニル基を有するシルセスキオキサン化合物のオキセタニル基をエポキシ基に変更した以外は同様なものが好ましく使用可能である。
この様なエポキシ基を有するシルセスキオキサン化合物としては、商業的にチッソ(株)から「サイラマックス エポキシ変性PSQ」として入手可能である。
【0024】
(4)(メタ)アクリロイル基を有するシルセスキオキサン化合物
本発明に用いることができる(メタ)アクリロイル基を有するシルセスキオキサン化合物としては、(メタ)アクリロイル基とシルセスキオキサン構造を有する化合物であれば、特に制限はない。(メタ)アクリロイル基を有するシルセスキオキサン化合物の合成方法としては、特に制限はなく、公知の方法により合成すればよいが、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基及びアリーロキシ基よりなる群から選ばれた基をケイ素原子上に3つと(メタ)アクリロイル基とを有するシラン化合物を用いて合成することが好ましい。
【0025】
【化5】

【0026】
式(B)におけるRdはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基又はアリーロキシ基を表し、アルコキシ基又はアリールオキシ基であることが好ましく、炭素数1〜3のアルコキシ基であることがより好ましく、エトキシ基であることがさらに好ましい。
式(B)におけるRfは炭素数2〜6のアルキレン基を表し、プロピレン基であることが好ましい。
式(B)におけるReは水素原子又はメチル基を表す。
(メタ)アクリロイル基を有するシルセスキオキサン化合物の具体例としては、東亞合成(株)製「アロンオキセタンAC−SQ−F」や「アロンオキセタンMAC−SQ−F」が好ましく例示できる。
【0027】
(5)他のカチオン重合性単量体
他のカチオン重合性単量体としては、特に限定されないが、環状エーテル基及びビニルエーテル基の中から選択される少なくとも1つのカチオン重合性基を有するものが好ましい。カチオン重合性単量体は、カチオン重合性基を1つの分子内に2つ以上有していることが好ましい。
このようなカチオン重合性単量体のうち、環状エーテル基を有する化合物としては、例えば、エポキシ基やオキセタニル基を有する化合物が挙げられる。
エポキシ基を有する化合物として、具体的には、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラック型エポキシ樹脂類、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
また、エポキシ基を有する化合物としては、脂環式エポキシ基を有する化合物であることが好ましく、具体的には、2,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサノン−メタ−ジオキサン、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、EHPE−3150(ダイセル化学工業(株)製、脂環式エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0028】
オキセタニル基を有する化合物として、具体的には3,3−ジメチルオキセタン、3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン、3−n−プロピル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−イソプロピル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−n−ブチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−イソブチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−sec−ブチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−tert−ブチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシル)オキセタン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]−2,2−ジメチルプロパン、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン等が挙げられる。
【0029】
ビニルエーテル基を有する化合物として、具体的には、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメチロールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、ポリエステルジビニルエーテル、ポリウレタンポリビニルエーテル等が挙げられる。
カチオン重合性単量体を用いる場合には、公知の光カチオン開始剤又は熱重合カチオン硬化剤を含んでいてもよい。
【0030】
(6)他のラジカル重合性単量体
他のラジカル重合性単量体として、1分子中に2個以上のラジカル重合性基を含有するのが好ましく、以下に示す(メタ)アクリレートの1種あるいは2種以上適宜選んで用いることができる。なお、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの両方を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルの両方を意味する。
架橋性のある多官能アクリル酸エステルの例としては、3官能以上としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート及びこれらのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド変性物等が挙げられる。
2官能のものとしては、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジメタアクリレート、シクロペンタジエニルアルコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記多官能エステル以外の(メタ)アクリレートとしては、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタンポリ(メタ)アクリレート、ポリシロキサンポリ(メタ)アクリレート、ポリアミドポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、放射線による硬化性に優れることから、メタクリレート系単量体よりもアクリレート系単量体が好ましい。
【0031】
さらに上記以外の用いることのできるラジカル重合性単量体としては、5−エチル−2−(2−ヒドロキシ−1,1’−ジメチルエチル)−5−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキサンジアクリレート、テトラヒドロフランジメタノールジアクリレート、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンジアクリレート等の環状構造を有するものやジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等の4官能以上のアクリロイル基を有するものが例示できる。
また、粘度調節、支持体との密着性向上等の理由で必要に応じて単官能アクリレートを劣位量添加してもよい。かかる単官能アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレートや2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
これら単官能アクリレートの使用量としては、放射線硬化性基を有するシルセスキオキサン化合物に対し、0〜40質量%であることが好ましく、耐擦傷性等を考慮すると0〜30質量%であることがより好ましい。
【0032】
(7)重合開始剤
本発明に用いることができる重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の重合開始剤を用いることができ、光重合開始剤であっても、熱重合開始剤であってもよい。また、使用する単量体に応じ、カチオン重合開始剤及び/又はラジカル重合開始剤を適宜使用することができる。
光カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等のオニウム塩を用いることができ、特に、芳香族オニウム塩を用いることが好ましい。その他、フェロセン誘導体等の鉄−アレーン錯体や、アリールシラノール−アルミニウム錯体等も好ましく用いることができ、これらの中から適宜選択できる。
光カチオン重合開始剤の使用量は、例えば、シルセスキオキサン構造を有する硬化層を形成する単量体又は単量体混合物中(固形分として)に0.5〜5質量%であることが好ましい。
詳細は例えば、「新高分子実験学第2巻 第6章 光・放射線重合」(共立出版、1995年発行、高分子学会編)記載されているものを使用できる。
ラジカル重合開始剤として具体例には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルメチルケタール、ベンジルエチルケタール、ベンゾインイソブチルケトン、ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジエトキシアセトフェノンなどが例示できる。
ラジカル重合開始剤の使用量は、単量体100質量部に対し、好ましくは0.5〜20質量部、より好ましくは2〜15質量部、さらに好ましくは3〜10質量部である。
【0033】
放射線硬化層には、必要に応じて連鎖移動剤を併用することが可能である。
使用可能な連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン、メルカプト酢酸エステル、多官能チオールなどの各種チオール化合物や、アルキルジスルフィドなどの各種ジスルフィド化合物が好ましい。
具体的な化合物としては、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ブタンジオールジチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、1,6−へキサンジチオール、トリ(3−メルカプトプロピオン酸)トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(3−メルカプトプロピオネート)、又は、3−メルカプトプロピオン酸4−メトキシブチルであることがより好ましく例示でき、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ブタンジオールジチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、1,6−へキサンジチオール、トリ(3−メルカプトプロピオン酸)トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、又は、ジペンタエリスリトールヘキサ(3−メルカプトプロピオネート)等がさらに好ましく例示できる。
【0034】
(8)シルセスキオキサン構造を有する硬化層の厚み
本発明の磁気記録媒体におけるシルセスキオキサン構造を有する硬化層の厚みは、0.1μm〜1.5μmが好ましく、0.2μm〜1.0μmがより好ましい。
上記範囲であると、平滑性に優れ、また、支持体との密着性に優れる。
【0035】
(9)シルセスキオキサン構造を有する硬化層の平均粗さ
シルセスキオキサン構造を有する硬化層におけるカットオフ値0.25mmにおける放射線硬化層の平均粗さ(Ra)は、1〜3nmが好ましい。上記の範囲内であると、塗布工程でパスロールに張り付き故障が無く、十分な平滑性が得られる。
【0036】
(10)放射線照射に関して
本発明において使用される放射線は、電子線や紫外線を用いることができる。紫外線を使用する場合には前記の化合物に光重合開始剤を添加することが必要となる。電子線硬化の場合は透過深さが深いので好ましい。また、電子線硬化において、カチオン重合を行いシルセスキオキサン構造を有する硬化層を形成する場合、重合開始剤を用いることが好ましく、電子線硬化においてラジカル重合を行いシルセスキオキサン構造を有する硬化層を形成する場合、重合開始剤を用いないことが好ましい。
電子線加速器としてはスキャニング方式、ダブルスキャニング方式あるいはカーテンビーム方式が採用できるが、好ましいのは比較的安価で大出力が得られるカーテンビーム方式である。電子線特性としては、加速電圧が30kV〜1000kV、好ましくは50kV〜300kVであり、吸収線量として5kGy(グレイ)〜200kGy、好ましくは10kGy〜100kGyである。加速電圧が30kV以下の場合はエネルギーの透過量が不足し、300kVを超えると重合に使われるエネルギーの効率が低下し経済的でない。
電子線を照射する雰囲気は、一般的には表面近傍での硬化反応が阻害されるのを忌避するために窒素パージにより酸素濃度を200ppm以下にすることが好ましいとされるが、本発明では高い酸素濃度であっても硬化が可能となることから、その酸素濃度には特に制限されない。しかし、設備や経済的に可能であれば、低い酸素濃度であった方がシルセスキオキサン構造を有する硬化層の硬化性がより優れるためにより好ましいことは言うまでもない。好ましくは酸素濃度10%以下、より好ましくは5%以下である。
紫外線光源としては、水銀灯が用いられる。水銀灯は20W/cm〜240W/cmのランプを用い、速度0.3m/分〜20m/分で使用される。基体と水銀灯との距離は一般に1cm〜30cmであることが好ましい。
放射線硬化装置、条件などについては「UV・EB硬化技術」((株)総合技術センター発行)や「低エネルギー電子線照射の応用技術」(2000年、(株)シーエムシー発行)などに記載されている公知のものを用いることができる。
この様にして得られたシルセスキオキサン構造を有する硬化層は、赤外吸収スペクトル測定や元素分析法を用いることによって、シルセスキオキサン構造を特定することができる。
【0037】
II.磁性層
本発明の磁気記録媒体は、強磁性粉末を結合剤中に分散させた磁性層を有する。
1.強磁性粉末
本発明の磁気記録媒体には、強磁性粉末として、針状強磁性体、平板状磁性体又は球状若しくは楕円状磁性体を使用することが好ましい。以下、それぞれについて説明する。
【0038】
(1)針状強磁性体
本発明の磁気記録媒体に使用される強磁性粉末として、針状強磁性体を使用することができる。針状強磁性体としては、針状であるコバルト含有強磁性酸化鉄又は強磁性合金粉末等の強磁性金属粉末が例示でき、BET比表面積(SBET)は40〜80m2/gが好ましく、50〜70m2/gがより好ましい。結晶子サイズは12〜25nmが好ましく、13〜22nmがより好ましく、14〜20nmがさらに好ましい。長軸長は20〜50nmでことが好ましく、20〜45nmがより好ましい。
【0039】
強磁性粉末としては、イットリウムを含むFe、Fe−Co、Fe−Ni、Co−Ni−Feが挙げられ、強磁性粉末中のイットリウム含有量は、鉄原子に対してイットリウム原子の比、Y/Feは0.5〜20原子%が好ましく、5〜10原子%がより好ましい。
上記の数値の範囲内では、強磁性粉末を高σS化できるため、優れた磁気特性、電磁変換特性が得られる。さらに、鉄100原子%に対して20原子%以下の範囲内で、アルミニウム、ケイ素、硫黄、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、銅、亜鉛、モリブデン、ロジウム、パラジウム、錫、アンチモン、ホウ素、バリウム、タンタル、タングステン、レニウム、金、鉛、リン、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、テルル、ビスマス等を含むことができる。また、強磁性金属粉末が少量の水、水酸化物又は酸化物を含むものなどであってもよい。
【0040】
本発明に使用する、コバルト、イットリウムを導入した強磁性粉末の製造方法の一例を示す。第一鉄塩とアルカリを混合した水性懸濁液に、酸化性気体を吹き込むことによって得られるオキシ水酸化鉄を出発原料とする例を挙げることができる。このオキシ水酸化鉄の種類としては、α−FeOOHが好ましい。その製法としては、第一鉄塩を水酸化アルカリで中和してFe(OH)2の水性懸濁液とし、この懸濁液に酸化性ガスを吹き込んで針状のα−FeOOHとする第一の製法がある。一方、第一鉄塩を炭酸アルカリで中和してFeCO3の水性懸濁液とし、この懸濁液に酸化性気体を吹き込んで紡錘状のα−FeOOHとする第二の製法がある。このようなオキシ水酸化鉄は第一鉄塩水溶液とアルカリ水溶液とを反応させて水酸化第一鉄を含有する水溶液を得て、これを空気酸化等により酸化して得られたものであることが好ましい。この際、第一鉄塩水溶液にNi塩や、Ca塩、Ba塩、Sr塩等のアルカリ土類元素の塩、Cr塩、Zn塩などを共存させても良く、このような塩を適宜選択して用いることによって粒子形状(軸比)などを調製することができる。
【0041】
第一鉄塩としては、塩化第一鉄、硫酸第一鉄等が好ましい。またアルカリとしては水酸化ナトリウム、アンモニア水、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等が好ましい。また、共存させることができる塩としては、塩化ニッケル、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化ストロンチウム、塩化クロム、塩化亜鉛等の塩化物が好ましい。
【0042】
次いで、鉄にコバルトを導入する場合は、イットリウムを導入する前に、硫酸コバルト、塩化コバルト等のコバルト化合物の水溶液を前記のオキシ水酸化鉄のスラリーに撹拌混合する。コバルトを含有するオキシ水酸化鉄のスラリーを調製した後、このスラリーにイットリウムの化合物を含有する水溶液を添加し、撹拌混合することによって導入することができる。
【0043】
本発明の強磁性粉末には、イットリウム以外にもネオジム、サマリウム、プラセオジウム、ランタン、ガドリニウム等を導入することができる。これらは、塩化イットリウム、塩化ネオジム、塩化サマリウム、塩化プラセオジウム、塩化ランタン等の塩化物、硝酸ネオジム、硝酸ガドリニウム等の硝酸塩などを用いて導入することができ、これらは、二種以上を併用しても良い。
【0044】
強磁性金属粉末の抗磁力(Hc)は、好ましくは159.2〜238.8kA/m(2,000〜3,000Oe)であり、さらに好ましくは167.2〜230.8kA/m(2,100〜2,900Oe)である。また、飽和磁束密度は、好ましくは150〜300mT(1,500〜3,000G)であり、さらに好ましくは160〜290mT(1,600〜2,900G)である。また飽和磁化(σs)は、好ましくは100〜170A・m2/kg(100〜170emu/g)であり、さらに好ましくは110〜160A・m2/kg(110〜160emu/g)である。磁性体自体のSFD(switching field distribution)は小さい方が好ましく、0.8以下であることが好ましい。SFDが0.8以下であると、電磁変換特性が良好で、出力が高く、また磁化反転がシャープでピークシフトが小さくなり、高密度デジタル磁気記録に好適である。Hc分布を小さくするためには、強磁性金属粉末においてはゲータイトの粒度分布を良くする、単分散α−Fe23を使用する、粒子間の焼結を防止するなどの方法がある。
【0045】
(2)平板状磁性体
本発明で用いることのできる平板状磁性体としては六方晶フェライト粉末が好ましい。六方晶フェライトとしてバリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライトの各置換体、Co置換体等がある。具体的にはマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト、スピネルで粒子表面を被覆したマグネトプランバイト型フェライト、更に一部スピネル相を含有したマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト等が挙げられ、その他所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nb、Zrなどの原子を含んでもかまわない。一般にはCo−Zn、Co−Ti、Co−Ti−Zr、Co−Ti−Zn、Ni−Ti−Zn、Nb−Zn−Co、Sb−Zn−Co、Nb−Zn等の元素を添加した物を使用することができる。原料・製法によっては特有の不純物を含有するものもある。
【0046】
粒子サイズは六角板径で10〜50nmであることが好ましい。磁気抵抗ヘッドで再生する場合は、低ノイズにする必要があり、板径は45nm以下が好ましい。板径が上記の範囲内であると、熱揺らぎがなく安定な磁化が望める。また、ノイズも低くなるため高密度磁気記録に適する。
【0047】
板状比(板径/板厚)は1〜15が好ましく、2〜7がより好ましい。上記の範囲内であると配向性が十分であり、粒子間のスタッキングが起こりにくくノイズが小さくなる。この粒子サイズ範囲のBET法による比表面積は10〜200m2/gを示す。比表面積は概ね粒子板径と板厚からの算術計算値と符合する。結晶子サイズは50〜450Åであることが好ましく、100〜350Åがより好ましい。粒子板径・板厚の分布は通常狭いほど好ましい。数値化は困難であるが粒子TEM写真より500粒子を無作為に測定する事で比較できる。分布は正規分布ではない場合が多いが、計算して平均サイズに対する標準偏差で表すと好ましくはσ/平均サイズ=0.1〜2.0である。粒子サイズ分布をシャープにするには粒子生成反応系をできるだけ均一にすると共に、生成した粒子に分布改良処理を施すことも行われている。たとえば酸溶液中で超微細粒子を選別的に溶解する方法等も知られている。
【0048】
磁性体で測定される抗磁力Hcは39.8〜398kA/m(500〜5,000Oe)程度まで作製できる。Hcは高い方が高密度記録に有利であるが、記録ヘッドの能力で制限される。63.7〜318.4kA/m(800〜4,000Oe)であることが好ましく、119.4〜278.6kA/m(3,500Oe)がより好ましい。ヘッドの飽和磁化が1.4テスラを越える場合は、159.2kA/m(2,000Oe)以上にすることが好ましい。
【0049】
Hcは粒子サイズ(板径・板厚)、含有元素の種類と量、元素の置換サイト、粒子生成反応条件等により制御できる。飽和磁化σsは40〜80A・m2/kg(40〜80emu/gであることが好ましい。σsは高い方が好ましいが微粒子になるほど小さくなる傾向がある。σs改良のためマグネトプランバイトフェライトにスピネルフェライトを複合すること、含有元素の種類と添加量の選択等が良く知られている。またW型六方晶フェライトを用いることも可能である。
【0050】
磁性体(磁性粉末)を分散する際に磁性体粒子表面を分散媒、ポリマーに合った物質で処理することも行われている。表面処理材は無機化合物、有機化合物が使用される。主な化合物としてはSi、Al、P等の酸化物又は水酸化物、各種シランカップリング剤、各種チタンカップリング剤が代表例である。量は磁性体に対して0.1〜10%である。磁性体のpHも分散に重要である。好ましくは4〜12程度で分散媒、ポリマーにより最適値があるが、媒体の化学的安定性、保存性から6〜10程度が好ましく選択される。磁性体に含まれる水分も分散に影響する。分散媒、ポリマーにより最適値があるが磁性体に対して0.01〜2.0%が好適に選ばれる。
【0051】
六方晶フェライトの製法としては、(1)酸化バリウム・酸化鉄・鉄を置換する金属酸化物とガラス形成物質として酸化ホウ素等を所望のフェライト組成になるように混合した後溶融し、急冷して非晶質体とし、次いで再加熱処理した後、洗浄・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得るガラス結晶化法。(2)バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後100℃以上で液相加熱した後洗浄・乾燥・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る水熱反応法。(3)バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後乾燥し1,100℃以下で処理し、粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る共沈法等があるが、本発明は製法を選ばない。
【0052】
(3)球状又は回転楕円状磁性体
球状又は回転楕円状磁性体としては、Fe162を主相とする窒化鉄系の強磁性粉末が好ましい。Fe、N原子以外にAl、Si、S、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nb、Zrなどの原子を含んでもかまわない。Feに対するNの含有量は1.0〜20.0原子%が好ましい。
【0053】
窒化鉄は、球状又は回転楕円状が好ましく、球状磁性体の長軸径/短軸径の軸比は1〜2が好ましく、回転楕円状磁性体の長軸径/短軸径の軸比は2〜4が好ましい。BET比表面積(SBET)が30〜100m2/gであることが好ましく、50〜70m2/gがより好ましい。結晶子サイズは12〜25nmであることが好ましく、13〜22nmがより好ましい。飽和磁化σsは50〜200A・m2/kg(emu/g)が好ましく、より好ましくは70〜150A・m2/kg(emu/g)である。
【0054】
2.結合剤
磁性層に用いる結合剤としてはポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートなどを共重合したアクリル系樹脂、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアルキラール系樹脂などから単独あるいは複数の樹脂を混合して用いることができる。これらの中で好ましいのはポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル系樹脂である。
【0055】
結合剤には強磁性粉末、非磁性粉体の分散性を向上させるためこれらの粉体表面に吸着する官能基(極性基)を持つことが好ましい。好ましい官能基としては−SO3M、−SO4M、−PO(OM)2、−OPO(OM)2、−COOM、>NSO3M、>NRSO3M、−NR12、−N+123-などがある。ここでMは水素又はNa、K等のアルカリ金属、Rはアルキレン基、R1、R2、R3はアルキル基又はヒドロキシアルキル基又は水素、XはCl、Br等のハロゲンである。結合剤中の官能基の量は10〜200μeq/gが好ましく、30〜120μeq/gがより好ましい。この範囲内にあると、良好な分散性が得られる。
【0056】
結合剤には吸着官能基のほかにイソシアネート硬化剤と反応して架橋構造を形成し塗膜強度を向上させるために−OH基などの活性水素を持つ官能基を付与することが好ましい。好ましい量は0.1〜2meq/gである。
【0057】
結合剤の分子量は重量平均分子量で10,000〜200,000が好ましく、20,000〜100,000がより好ましい。この範囲内にあると、塗膜強度が十分であり、耐久性が良好であり、また分散性が向上するので好ましい。
【0058】
好ましい結合剤であるポリウレタン樹脂は例えば「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(岩田敬治 編、1986年 日刊工業新聞社)に詳しく記載されているが、通常、長鎖ジオール、短鎖ジオール(鎖延長剤と呼ばれることもある)とジイソシアネート化合物の付加重合によって得られる。長鎖ジオールは分子量500〜5,000のポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリエーテルエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリオレフィンジオールなどが用いられる。この長鎖ポリオールの種類によりポリエステルウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリエーテルエステルウレタン、ポリカーボネートウレタンなどと呼ばれる。
【0059】
ポリエステルジオールとしてはアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、などの脂肪族二塩基酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族二塩基酸とグリコールとの縮重合によって得られる。グリコール成分としてはエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールAなどがある。また、ポリエステルジオールにはこのほかに、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトンを開環重合したポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオールなども用いることができる。
【0060】
ポリエステルジオールは耐加水分解性の観点で分岐側鎖をもつもの、芳香族、脂環族の原料から得られるものが好ましい。ポリエーテルジオールとしてはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、やビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールP、水素化ビスフェノールAなどの芳香族グリコールや脂環族ジオールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加重合したものなどがある。これらの長鎖ジオールは複数の種類を併用、混合して用いることもできる。
【0061】
短鎖ジオールとしては上記ポリエステルジオールのグリコール成分に例示したものと同じ化合物群の中から選ぶことができる。また3官能以上の多価アルコール例えばトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどを少量併用すると分岐構造のポリウレタン樹脂が得られ溶液粘度を低下させたり、ポリウレタンの末端のOH基を増やすことでイソシアネート系硬化剤との硬化性を高めることができる。
【0062】
ジイソシアネート化合物としてはMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、2,4−TDI(トリレンジイソシアネート)、2,6−TDI、1,5−NDI(ナフタレンジイソシアネート)、TODI(トリジンジイソシアネート)、p−フェニレンジイソシアネート、XDI(キシリレンジイソシアネート)などの芳香族ジイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)、H6XDI(水素添加キシリレンジイソシアネート)、H12MDI(水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート)などの脂肪族、脂環族ジイソシアネートなどが用いられる。
【0063】
ポリウレタン樹脂中の長鎖ジオール/短鎖ジオール/ジイソシアネートの好ましい組成は(80〜15重量%)/(5〜40重量%)/(15〜50重量%)である。
【0064】
ポリウレタン樹脂のウレタン基濃度は1〜5meq/gが好ましく、1.5〜4.5がより好ましい。この範囲では、十分な力学強度が得られ、溶液粘度が適度であり、分散性が適度である。
【0065】
ポリウレタン樹脂のガラス転移温度は0〜200℃が好ましく、40〜160℃がより好ましい。この範囲では、十分な耐久性、成形性が得られ、優れた電磁変換特性が得られる。
【0066】
ポリウレタン樹脂に前述した吸着官能基(極性基)を導入する方法としては官能基を長鎖ジオールのモノマーの一部に用いる方法、短鎖ジオールの一部に用いる方法やポリウレタンを重合した後、高分子反応で極性基を導入する方法などがある。
【0067】
塩化ビニル系樹脂としては塩化ビニルモノマーに種々のモノマーと共重合したものが用いられる。
【0068】
共重合モノマーとしては酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエステル類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート類、アリルメチルエーテル、アリルエチルエーテル、アリルプロピルエーテル、アリルブチルエーテルなどのアルキルアリルエーテル類、その他スチレン、α−メチルスチレン、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、エチレン、ブタジエン、アクリルアミド、更に官能基をもつ共重合モノマーとしてビニルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、2−ヒドロキシプロピルアリルエーテル、3−ヒドロキシプロピルアリルエーテル、p−ビニルフェノール、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、ホスホエチル(メタ)アクリレート、スルホエチル(メタ)アクリレート、p−スチレンスルホン酸、及びこれらのNa塩、K塩などが用いられる。
【0069】
塩化ビニル系樹脂中の塩化ビニルモノマーの組成は60〜95重量%が好ましい。上記の範囲内であると、良好な力学強度が得られると共に、溶剤溶解性が良好で、好適な溶液粘度のために良好な分散性が得られるので好ましい。
【0070】
吸着官能基(極性基)、ポリイソシアネート系硬化剤との硬化性を高めるための官能基の好ましい量は前述したとおりである。これらの官能基の導入方法は上記の官能基含有モノマーを共重合しても良いし、塩化ビニル系樹脂を共重合した後、高分子反応で官能基を導入しても良い。
【0071】
好ましい重合度は200〜600、さらに好ましくは240〜450である。この範囲内にあると、良好な力学強度が得られると共に、好適な溶液粘度のために良好な分散性が得られるので好ましい。
【0072】
本発明に使用する結合剤を架橋、硬化させ塗膜の力学強度や耐熱性高めるために硬化剤を用いることができる。好ましい硬化剤としてポリイソシアネート化合物がある。ポリイソシアネート化合物は3官能以上のポリイソシアネートが好ましい。
【0073】
具体的にはトリメチロールプロパン(TMP)にTDI(トリレンジイソシアネート)を3モル付加した化合物、TMPにHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)を3モル付加した化合物、TMPにIPDI(イソホロンジイソシアネート)を3モル付加した化合物、TMPにXDI(キシリレンジイソシアネート)を3モル付加した化合物、などアダクト型ポリイソシアネート化合物。TDIの縮合イソシアヌレート型3量体、TDIの縮合イソシアヌレート5量体、TDIの縮合イソシアヌレート7量体、及びこれらの混合物。HDIのイソシアヌレート型縮合物、IPDIのイソシアヌレート型縮合物。さらにクルードMDIなどがある。これらの中で好ましいのはTMPにTDIを3モル付加した化合物、TDIのイソシアヌレート型3量体などである。
【0074】
イソシアネート系硬化剤以外に電子線あるいは紫外線などの放射線硬化性の硬化剤を用いても良い。この場合放射線硬化性官能基として(メタ)アクリロイル基を分子内に2個以上、好ましくは3個以上有する硬化剤を用いることができる。例えばTMP(トリメチロールプロパン)のトリアクリレート、ペンタエリスリトールのテトラアクリレート、ウレタンアクリレートオリゴマーなどがある。この場合、硬化剤のほかに結合剤にも(メタ)アクリロイル基を導入するのが好ましい。紫外線硬化の場合はこのほかに光増感剤が併用される。
【0075】
硬化剤は結合剤100質量部に対して0〜80質量部添加するのが好ましい。上記の範囲内であると分散性が良好であるので好ましい。
【0076】
結合剤の添加量は磁性層の場合は強磁性粉末100質量部に対して、5〜30質量部が好ましく、10〜20質量部が更に好ましい。
【0077】
3.添加剤
本発明における磁性層には、必要に応じて添加剤を加えることができる。添加剤としては、研磨剤、潤滑剤、分散剤・分散助剤、防黴剤、帯電防止剤、酸化防止剤、溶剤、カーボンブラックなどを挙げることができる。
【0078】
これら添加剤としては、例えば、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、グラファイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコーンオイル、極性基を持つシリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、ポリオレフィン、ポリグリコール、ポリフェニルエーテル、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸基、フェネチルホスホン酸、α−メチルベンジルホスホン酸、1−メチル−1−フェネチルホスホン酸、ジフェニルメチルホスホン酸、ビフェニルホスホン酸、ベンジルフェニルホスホン酸、α−クミルホスホン酸、トルイルホスホン酸、キシリルホスホン酸、エチルフェニルホスホン酸、クメニルホスホン酸、プロピルフェニルホスホン酸、ブチルフェニルホスホン酸、ヘプチルフェニルホスホン酸、オクチルフェニルホスホン酸、ノニルフェニルホスホン酸等の芳香族環含有有機ホスホン酸及びそのアルカリ金属塩、オクチルホスホン酸、2−エチルヘキシルホスホン酸、イソオクチルホスホン酸、イソノニルホスホン酸、イソデシルホスホン酸、イソウンデシルホスホン酸、イソドデシルホスホン酸、イソヘキサデシルホスホン酸、イソオクタデシルホスホン酸、イソエイコシルホスホン酸等のアルキルホスホン酸及びそのアルカリ金属塩、リン酸フェニル、リン酸ベンジル、リン酸フェネチル、リン酸α−メチルベンジル、リン酸1−メチル−1−フェネチル、リン酸ジフェニルメチル、リン酸ビフェニル、リン酸ベンジルフェニル、リン酸α−クミル、リン酸トルイル、リン酸キシリル、リン酸エチルフェニル、リン酸クメニル、リン酸プロピルフェニル、リン酸ブチルフェニル、リン酸ヘプチルフェニル、リン酸オクチルフェニル、リン酸ノニルフェニル等の芳香族リン酸エステル及びそのアルカリ金属塩、リン酸オクチル、リン酸2−エチルヘキシル、リン酸イソオクチル、リン酸イソノニル、リン酸イソデシル、リン酸イソウンデシル、リン酸イソドデシル、リン酸イソヘキサデシル、リン酸イソオクタデシル、リン酸イソエイコシル等のリン酸アルキルエステル及びそのアルカリ金属塩、アルキルスルホン酸エステル及びそのアルカリ金属塩、フッ素含有アルキル硫酸エステル及びそのアルカリ金属塩、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、エルカ酸等の炭素数10〜24の不飽和結合を含んでも分岐していてもよい一塩基性脂肪酸及びこれらの金属塩、又はステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸イソオクチル、ミリスチン酸オクチル、ラウリル酸ブチル、ステアリン酸ブトキシエチル、アンヒドロソルビタンモノステアレート、アンヒドロソルビタンジステアレート、アンヒドロソルビタントリステアレート等の炭素数10〜24の不飽和結合を含んでも分岐していてもよい一塩基性脂肪酸と炭素数2〜22の不飽和結合を含んでも分岐していてもよい1〜6価アルコール、炭素数12〜22の不飽和結合を含んでも分岐していてもよいアルコキシアルコール又はアルキレンオキサイド重合物のモノアルキルエーテルのいずれか一つとからなるモノ脂肪酸エステル、ジ脂肪酸エステル又は多価脂肪酸エステル、炭素数2〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミンなどが使用できる。また、上記炭化水素基以外にもニトロ基及びF、Cl、Br、CF3、CCl3、CBr3等の含ハロゲン炭化水素等炭化水素基以外の基が置換したアルキル基、アリール基、アラルキル基を持つものでもよい。
【0079】
また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加体等のノニオン界面活性剤、環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウム又はスルホニウム類等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルホン酸、硫酸エステル基等の酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸又はリン酸エステル類、アルキルベタイン型等の両性界面活性剤等も使用できる。これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。
【0080】
上記分散剤、潤滑剤等は必ずしも純粋ではなく主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物等の不純分が含まれても構わない。これらの不純分は30重量%以下が好ましく、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0081】
これらの添加物の具体例としては、例えば、日本油脂社製:NAA−102、ヒマシ油硬化脂肪酸、NAA−42、カチオンSA、ナイミーンL−201、ノニオンE−208、アノンBF、アノンLG、竹本油脂社製:FAL−205、FAL−123、新日本理化社製:エヌジエルブOL、信越化学社製:TA−3、ライオンアーマー社製:アーマイドP、ライオン社製:デュオミンTDO、日清製油社製:BA−41G、三洋化成社製:プロファン2012E、ニューポールPE61、イオネットMS−400等が挙げられる。
【0082】
4.有機溶剤
本発明において、磁性層で用いられる有機溶剤は、公知のものが使用できる。有機溶剤は、任意の比率で、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノールなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサンなどのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾールなどの芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン、テトラヒドロフラン等を使用することができる。
【0083】
これら有機溶媒は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物、水分等の不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。本発明で用いる有機溶媒は磁性層と非磁性層でその種類は同じであることが好ましい。その添加量は変えてもかまわない。非磁性層に表面張力の高い溶媒(シクロヘキサノン、ジオキサンなど)を用い塗布の安定性を上げる、具体的には上層溶剤組成の算術平均値が非磁性層溶剤組成の算術平均値を下回らないことが肝要である。分散性を向上させるためにはある程度極性が強い方が好ましく、溶剤組成の内、誘電率が15以上の溶剤が50%以上含まれることが好ましい。また、溶解パラメータは8〜11であることが好ましい。
【0084】
本発明において磁性層で用いられるこれらの分散剤、潤滑剤、界面活性剤は磁性層及び後述する非磁性層でその種類、量を必要に応じ使い分けることができる。例えば、無論ここに示した例のみに限られるものではないが、分散剤は極性基で吸着もしくは結合する性質を有しており、磁性層においては主に強磁性粉末の表面に、また後述する非磁性層においては主に非磁性粉末の表面に前記の極性基で吸着もしくは結合し、一度吸着した有機リン化合物は金属あるいは金属化合物等の表面から脱着しがたいと推察される。したがって、本発明の強磁性粉末表面あるいは後述する非磁性粉末表面は、アルキル基、芳香族基等で被覆されたような状態になるので、強磁性粉末あるいは非磁性粉末の結合剤樹脂成分に対する親和性が向上し、さらに強磁性粉末あるいは非磁性粉末の分散安定性も改善される。また、潤滑剤としては遊離の状態で存在するため非磁性層、磁性層で融点の異なる脂肪酸を用い表面へのにじみ出しを制御する、沸点や極性の異なるエステル類を用い表面へのにじみ出しを制御する、界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を向上させる、潤滑剤の添加量を非磁性層で多くして潤滑効果を向上させるなどが考えられる。また本発明で用いられる添加剤のすべて又はその一部は、磁性層あるいは非磁性層用塗料の製造時のいずれの工程で添加してもよい。例えば、混練工程前に強磁性粉末と混合する場合、強磁性粉末と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。
【0085】
5.カーボンブラック
本発明における磁性層には、必要に応じてカーボンブラックを添加することができる。カーボンブラックを添加すると公知の効果である表面電気抵抗Rsを下げることができ、光透過率を小さくすることができるとともに、所望のマイクロビッカース硬度を得る事ができる。カーボンブラックの種類はゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。
【0086】
カーボンブラックは単独又は組み合わせで使用することができる。カーボンブラックを使用する場合、強磁性粉末の重量に対して0.1〜30重量%で用いることが好ましい。カーボンブラックは磁性層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカーボンブラックにより異なる。したがって本発明で使用されるこれらのカーボンブラックは、磁性層でその種類、量、組み合わせを変え、粒子サイズ、吸油量、電導度、pHなどの先に示した諸特性を基に目的に応じて使い分けることはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべきものである。
【0087】
カーボンブラックの比表面積は100〜500m2/gであることが好ましく、150〜400m2/gであることがより好ましい。ジブチルフタレート(DBP)吸油量は20〜400ml/100gであることが好ましく、30〜200ml/100gであることがより好ましい。カーボンブラックの粒子径は5〜80nmであることが好ましく、10〜50nmであることがより好ましく、10〜40nmがさらに好ましい。カーボンブラックのpHは2〜10であることが好ましく、含水率は0.1〜10%であることが好ましく、タップ密度は0.1〜1g/mlであることが好ましい。
【0088】
本発明に用いられるカーボンブラックの具体的な例としてはキャボット社製BLACKPEARLS 2000,1300,1000,900,800,880,700、VULCAN XC−72、三菱化成工業社製#3050B,#3150B,#3250B,#3750B,#3950B,#950,#650B,#970B,#850B,MA−600,MA−230,#4000,#4010、コロンビアカーボン社製CONDUCTEX SC、RAVEN 8800,8000,7000,5750,5250,3500,2100,2000,1800,1500,1255,1250、アクゾー社製ケッチェンブラックEC、ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製ケッチェンブラックECなどが挙げられる。
また、本発明に用いることができるカーボンブラックは、例えば「カーボンブラック便覧」(カーボンブラック協会編)を参考にすることができる。
【0089】
III.非磁性層
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体上に結合剤及び非磁性粉末を含む非磁性層を有していてもよい。非磁性層に使用できる非磁性粉末は、無機物質でも有機物質でもよい。また、非磁性層には非磁性粉末と共に、必要に応じてカーボンブラックを混合してもよい。
【0090】
1.非磁性粉末
次に非磁性層に関する詳細な内容について説明する。本発明の磁気記録媒体は、平滑化層である放射線硬化層を設けた非磁性支持体上に結合剤及び非磁性粉末を含む非磁性層を有していてもよい。非磁性層には、実質的に非磁性である範囲で磁性粉末を使用してもよいが、非磁性粉末を用いることが好ましい。非磁性層に使用できる非磁性粉末は、無機物質でも有機物質でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機物質としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物などが挙げられる。具体的には二酸化チタン等のチタン酸化物、酸化セリウム、酸化スズ、酸化タングステン、ZnO、ZrO2、SiO2、Cr23、α化率90〜100%のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、α−酸化鉄、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、2硫化モリブデン、酸化銅、MgCO3、CaCO3、BaCO3、SrCO3、BaSO4、炭化珪素、炭化チタンなどが単独又は2種類以上を組み合わせて使用される。好ましいのは、α−酸化鉄、酸化チタンである。
【0091】
非磁性粉末の形状は、針状、球状、多面体状、板状のいずれでもあってもよい。非磁性粉末の結晶子サイズは、4nm〜1μmが好ましく、40〜100nmがさらに好ましい。結晶子サイズが上記の範囲内であれば、分散性が良く、適度な表面粗さを有する。これら非磁性粉末の平均粒径は、5nm〜2μmが好ましいが、必要に応じて平均粒径の異なる非磁性粉末を組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くしたりして同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ましい非磁性粉末の平均粒径は、10〜200nmである。5nm〜2μmの範囲内であれば、分散性も良好で、かつ好適な表面粗さを有する。
【0092】
非磁性粉末の比表面積は、1〜100m2/gが好ましく、5〜70m2/gがより好ましく、10〜65m2/gがさらに好ましい。比表面積が上記の範囲内であると、好適な表面粗さを有し、かつ、所望の結合剤量で分散できる。
【0093】
DBPを用いた吸油量は、5〜100ml/100gが好ましく、10〜80ml/100gがより好ましく、20〜60ml/100gがさらに好ましい。
【0094】
比重は好ましくは1〜12、より好ましくは3〜6である。タップ密度は好ましくは0.05〜2g/ml、より好ましくは0.2〜1.5g/mlである。タップ密度が上記の範囲内であると、飛散する粒子が少なく操作が容易であり、また装置にも固着しにくくなる傾向がある。
【0095】
非磁性粉末のpHは2〜11であることが好ましいが、pHは6〜9の間が特に好ましい。pHが2〜11の上記の範囲内であると、高温、高湿下又は脂肪酸の遊離により摩擦係数が大きくなることはない。非磁性粉末の含水率は、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.2〜3重量%、さらに好ましくは0.3〜1.5重量%である。含水量が上記の範囲内であると、分散性も良好で、塗料粘度も安定する。強熱減量は、20重量%以下であることが好ましく、強熱減量が小さいものが好ましい。
【0096】
また、非磁性粉末が無機粉末である場合には、モース硬度は4〜10のものが好ましい。モース硬度が4〜10の範囲であれば耐久性を確保することができる。非磁性粉末のステアリン酸吸着量は1〜20μmol/m2が好ましく、2〜15μmol/m2が更に好ましい。非磁性粉末の25℃での水への湿潤熱は、20〜60μJ/cm2(200〜600erg/cm2)の範囲にあることが好ましい。また、この湿潤熱の範囲にある溶媒を使用することができる。100〜400℃での表面の水分子の量は1〜10個/100Åが適当である。水中での等電点のpHは、3〜9の間にあることが好ましい。
【0097】
これらの非磁性粉末の表面にはAl23、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb23、ZnOで表面処理することが好ましい。特に分散性に好ましいのはAl23、SiO2、TiO2、ZrO2であるが、さらに好ましいのはAl23、SiO2、ZrO2である。これらは組み合わせて使用してもよいし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いてもよいし、先ずアルミナで処理した後にその表層をシリカで処理する方法、又はその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。
【0098】
本発明において非磁性層に用いられる非磁性粉末の具体的な例としては、例えば、昭和電工製ナノタイト、住友化学製HIT−100、ZA−G1、戸田工業社製DPN−250、DPN−250BX、DPN−245、DPN−270BX、DPB−550BX、DPN−550RX、石原産業製酸化チタンTTO−51B、TTO−55A、TTO−55B、TTO−55C、TTO−55S、TTO−55D、SN−100、MJ−7、α−酸化鉄E270、E271、E300、チタン工業製STT−4D、STT−30D、STT−30、STT−65C、テイカ製MT−100S、MT−100T、MT−150W、MT−500B、T−600B、T−100F、T−500HDなどが挙げられる。堺化学製FINEX−25、BF−1、BF−10、BF−20、ST−M、同和鉱業製DEFIC−Y、DEFIC−R、日本アエロジル製AS2BM、TiO2P25、宇部興産製100A、500A、チタン工業製Y−LOP及びそれを焼成したものが挙げられる。特に好ましい非磁性粉末は二酸化チタンとα−酸化鉄である。
【0099】
非磁性層には非磁性粉末と共に、カーボンブラックを混合し表面電気抵抗を下げ、光透過率を小さくすると共に、所望のμビッカース硬度を得ることができる。非磁性層のμビッカース硬度は、好ましくは25〜60kg/mm2、より好ましくはヘッド当りを調整するために、30〜50kg/mm2である。μビッカーズ硬度は薄膜硬度計(日本電気製HMA−400)を用いて、稜角80度、先端半径0.1μmのダイヤモンド製三角錐針を圧子先端に用いて測定することができる。光透過率は一般に波長900nm程度の赤外線の吸収が3%以下、たとえばVHS用磁気テープでは0.8%以下であることが規格化されている。このためにはゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。
【0100】
本発明において非磁性層に用いられるカーボンブラックの比表面積は好ましくは100〜500m2/g、より好ましくは150〜400m2/g、DBP吸油量は好ましくは20〜400ml/100g、より好ましくは30〜200ml/100gである。カーボンブラックの粒子径は好ましくは5〜80nm、より好ましく10〜50nm、さらに好ましくは10〜40nmである。カーボンブラックのpHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/mlが好ましい。
【0101】
本発明において非磁性層に用いることができるカーボンブラックの具体的な例としては、キャボット社製BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800、880、700、VULCAN XC−72、三菱化成工業社製#3050B、#3150B、#3250B、#3750B、#3950B、#950、#650B、#970B、#850B、MA−600、コロンビアカーボン社製CONDUCTEX SC、RAVEN8800、8000、7000、5750、5250、3500、2100、2000、1800、1500、1255、1250、アクゾー社製ケッチェンブラックEC、ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製ケッチェンブラックECなどが挙げられる。
【0102】
また、カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。また、カーボンブラックを塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは上記無機質粉末に対して50重量%を越えない範囲、非磁性層総重量の40%を越えない範囲で使用することが好ましい。これらのカーボンブラックは単独、又は組み合わせで使用することができる。本発明の非磁性層で使用できるカーボンブラックは例えば「カーボンブラック便覧」(カーボンブラック協会編)を参考にすることができる。
【0103】
また非磁性層には目的に応じて有機粉末を添加することもできる。このような有機粉末としては、例えば、アクリルスチレン系樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、フタロシアニン系顔料が挙げられるが、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂も使用することができる。その製法は、特開昭62−18564号公報、特開昭60−255827号公報に記されているようなものが使用できる。
【0104】
IV.非磁性支持体
本発明に用いることのできる非磁性支持体としては、二軸延伸を行ったポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド等の公知のものが挙げられる。これらの中でもポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミドが好ましい。
【0105】
これらの支持体はあらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理などを行ってもよい。また、本発明に用いることのできる非磁性支持体の表面粗さはカットオフ値0.25mmにおいて中心平均粗さRaが3〜10nmであることが好ましい。
【0106】
V.バックコート層
一般に、コンピュータデータ記録用の磁気テープは、ビデオテープ、オーディオテープに比較して繰り返し走行性が強く要求される。このような高い保存安定性を維持させるために、非磁性支持体の非磁性層及び磁性層が設けられた面とは反対の面にバックコート層を設けることもできる。バックコート層用塗料は、研磨剤、帯電防止剤などの粒子成分と結合剤とを有機溶媒に分散させたものを用いる。粒状成分として各種の無機顔料やカーボンブラックを使用することができる。また、結合剤としては、例えば、ニトロセルロース、フェノキシ樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン等の樹脂を単独又はこれらを混合して使用することができる。
【0107】
VI.層構成
非磁性支持体の好ましい厚みは、3〜80μmである。また、非磁性支持体の非磁性層及び磁性層が設けられた面とは反対側の面に設けられたバックコート層の厚みは、好ましくは0.1〜1.0μm、より好ましくは0.2〜0.8μmである。
【0108】
磁性層の厚みは、用いる磁気ヘッドの飽和磁化量やヘッドギャップ長、記録信号の帯域により最適化されるものであるが、好ましくは0.01〜0.12μmであり、更に好ましくは0.02〜0.10μmである。また、磁性層の厚み変動率は±50%以内が好ましく、さらに好ましくは±40%以内である。磁性層は少なくとも一層あればよく、磁性層を異なる磁気特性を有する2層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。
【0109】
本発明においては非磁性層を有するか否かは任意である。非磁性層を有する構成の場合、非磁性層の厚みは、0.2〜3.0μmであることが好ましく、0.3〜2.5μmであることがより好ましく、0.4〜2.0μmであることがさらに好ましい。なお、本発明の磁気記録媒体の非磁性層は、実質的に非磁性であればその効果を発揮するものであり、例えば不純物として、あるいは意図的に少量の磁性体を含んでいても、本発明の効果を示すものであり、本発明の磁気記録媒体と実質的に同一の構成とみなすことができる。なお、実質的に同一とは、非磁性層の残留磁束密度が10mT(100G)以下又は抗磁力が7.96kA/m(100 Oe)以下であることを示し、好ましくは残留磁束密度と抗磁力を持たないことを意味する。
【0110】
VII.製造方法
本発明の磁気記録媒体の製造方法は、非磁性支持体上に、放射線硬化性基を有するシルセスキオキサン化合物含有層を塗設する工程、前記放射線硬化性基を有するシルセスキオキサン化合物含有層を放射線照射により硬化してシルセスキオキサン構造を有する硬化層を形成する工程、及び、強磁性粉末を結合剤中に分散した磁性液を塗布する工程を含むことが好ましい。
【0111】
放射線硬化性基を有するシルセスキオキサン化合物含有層を放射線照射により硬化する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、放射線硬化性基を有するシルセスキオキサン化合物や、必要に応じ他の重合性単量体を有機溶剤や水等の溶媒に溶解した混合液を非磁性支持体上に塗布した後に乾燥させ、その後に放射線照射して硬化させる方法が好ましく挙げられる。
【0112】
本発明で用いられる磁気記録媒体の非磁性層や磁性層用塗料を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、及びこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上に分かれていてもかまわない。本発明で用いられる強磁性粉末又は強磁性金属粉末、非磁性粉末、結合剤、カーボンブラック、研磨材、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初又は途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。
【0113】
本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。ニーダを用いる場合は磁性粉末又は非磁性粉末と結合剤のすべて又はその一部(但し、全結合剤の30%以上が好ましい)及び強磁性粉末100質量部に対し15〜500質量部の範囲で混練処理される。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開平1−79274号公報に記載されている。また、磁性層用塗料及び非磁性層用塗料を分散させるには、ガラスビーズを用いることができる。このようなガラスビーズは、高比重の分散メディアであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズが好適である。これら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いられる。分散機は公知のものを使用することができる。
【0114】
本発明の磁気記録媒体の製造方法は、例えば、走行下にある非磁性支持体の表面に所定の膜厚となるようにシルセスキオキサン構造を有する硬化層を設け、更にその上に非磁性層用塗料又は磁性層用塗料を所定の膜厚となるように塗布する。ここで複数の磁性層用塗料を逐次あるいは同時に重層塗布してもよく、シルセスキオキサン構造を有する硬化層から一層目に磁性層用塗料を、二層目に磁性層用塗料を逐次あるいは同時に重層塗布してもよい。また、シルセスキオキサン構造を有する硬化層から一層目に非磁性層用塗料を、二層目には磁性層用塗料を逐次あるいは同時に重層塗布してもよい。上記磁性層用塗料もしくは非磁性層用塗料を塗布する塗布機としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビヤコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート、スピンコート等が利用できる。これらについては例えば(株)総合技術センター発行の「最新コーティング技術」(昭和58年5月31日)を参考にできる。
【0115】
磁性層塗料の塗布層は、磁気テープの場合、磁性層塗料の塗布層中に含まれる強磁性粉末にコバルト磁石やソレノイドを用いて長手方向に磁場配向処理を施す。ディスクの場合、配向装置を用いず無配向でも十分に等方的な配向性が得られることもあるが、コバルト磁石を斜めに交互に配置すること、ソレノイドで交流磁場を印加するなど公知のランダム配向装置を用いることが好ましい。等方的な配向とは強磁性金属粉末の場合、一般的には面内2次元ランダムが好ましいが、垂直成分をもたせて3次元ランダムとすることもできる。六方晶フェライトの場合は一般的に面内及び垂直方向の3次元ランダムになりやすいが、面内2次元ランダムとすることも可能である。また異極対向磁石など公知の方法を用い、垂直配向とすることで円周方向に等方的な磁気特性を付与することもできる。特に高密度記録を行う場合は垂直配向が好ましい。また、スピンコートを用いて円周配向としてもよい。
【0116】
乾燥風の温度、風量、塗布速度を制御することで塗膜の乾燥位置を制御できるようにすることが好ましく、塗布速度は20〜1,000m/分、乾燥風の温度は60℃以上が好ましい。また磁石ゾーンに入る前に適度の予備乾燥を行うこともできる。
【0117】
乾燥された後、塗布層に表面平滑化処理を施す。表面平滑化処理には、例えばスーパーカレンダーロールなどが利用される。表面平滑化処理を行うことにより、乾燥時の溶剤の除去によって生じた空孔が消滅し磁性層中の強磁性粉末の充填率が向上するので、電磁変換特性の高い磁気記録媒体を得ることができる。
【0118】
カレンダ処理ロールとしてはエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の耐熱性プラスチックロールを使用する。また金属ロールで処理することもできる。本発明の磁気記録媒体は、極めて優れた平滑性を有する表面であることが好ましい。例えば上述したように特定の強磁性粉末と結合剤を選んで形成した磁性層を上記カレンダ処理を施すことにより平滑化処理が行われる。カレンダ処理条件としては、カレンダーロールの温度は好ましくは60〜100℃の範囲、より好ましくは70〜100℃の範囲、特に好ましくは80〜100℃の範囲であり、圧力は好ましくは100〜500kg/cm、より好ましくは200〜450kg/cmの範囲、特に好ましくは300〜400kg/cmの範囲の条件で作動させることによって行われることが好ましい。
【0119】
熱収縮率低減手段として、低テンションでハンドリングしながらウエッブ状で熱処理する方法と、バルク又はカセットに組み込んだ状態などテープが積層した形態で熱処理する方法(サーモ処理)があり、両者が利用できる。前者は、バックコート層表面の突起写りの影響が少ないが、熱収縮率を大きく下げることができない。一方、後者のサーモ処理は、熱収縮率を大幅に改善できるが、バックコート層表面の突起写りの影響を強く受けると、磁性層が面荒れし、出力低下及びノイズ増加を引き起こす。特に、サーモ処理を伴う磁気記録媒体で、高出力、低ノイズの磁気記録媒体を供給することができる。得られた磁気記録媒体は、裁断機、打抜機などを使用して所望の大きさに裁断して使用することができる。
【0120】
VIII.物理特性等
<磁性層・非磁性層>
(1)残留のび、熱収縮率
磁性層、非磁性層の残留のびは、好ましくは0.5%以下である。100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.1%以下である。
【0121】
(2)ガラス転移温度、損失弾性率、損失正接
磁性層のガラス転移温度(110Hzで測定した動的粘弾性測定の損失弾性率の極大点)は50〜180℃が好ましく、非磁性層のそれは0〜180℃が好ましい。損失弾性率は1×107〜8×108Pa(1×108〜8×109dyne/cm2)の範囲にあることが好ましく、損失正接は0.2以下であることが好ましい。損失正接が0.2以下であると粘着故障が発生し難いので好ましい。これらの熱特性や機械特性は媒体の面内各方向において10%以内でほぼ等しいことが好ましい。
【0122】
(3)弾性率、破断強度
磁性層の0.5%伸びでの弾性率は、面内各方向で好ましくは0.98〜19.6GPa(100〜2,000kg/mm2)である。破断強度は、好ましくは98〜686MPa(10〜70kg/mm2)である。
【0123】
(4)磁性層の表面形状
磁性層のデジタルオプティカルプロフィメーターTOPO−3D(WAKO製)で測定した中心面表面粗さRaは、好ましくは4.0nm以下であり、より好ましくは3.0nm以下であり、さらに好ましくは2.0nm以下である。磁性層の最大高さSRmaxは、0.5μm以下、十点平均粗さSRzは0.3μm以下、中心面山高さSRpは0.3μm以下、中心面谷深さSRvは0.3μm以下、中心面面積率SSrは20〜80%、平均波長Sλaは5〜300μmが好ましい。磁性層の表面突起は0.01〜1μmの大きさのものを100μm2当たり0〜2,000個の範囲で任意に設定することが可能であり、これにより電磁変換特性、摩擦係数を最適化することが好ましい。これらは支持体のフィラーによる表面性のコントロールや磁性層に添加する粉末の粒径と量、カレンダ処理のロール表面形状などで容易にコントロールすることができる。カールは±3mm以内とすることが好ましい。
【0124】
(5)飽和磁束密度
本発明に用いられる磁気記録媒体の磁性層の飽和磁束密度は、100〜300mT(1,000〜3,000G)であることが好ましい。
【0125】
(6)抗磁力
磁性層の抗磁力(Hr)は、143.3〜318.4kA/m(1,800〜4,000 Oe)であることが好ましく、159.2〜278.6kA/m(2,000〜3,500 Oe)がより好ましい。抗磁力の分布は狭い方が好ましく、SFD及びSFDrは好ましくは0.6以下、さらに好ましくは0.2以下である。
【0126】
(7)帯電位
磁性層の帯電位は−500〜+500V以内が好ましい。
【0127】
(8)残留溶媒、空隙率
磁性層中に含まれる残留溶媒は好ましくは100mg/m2以下、さらに好ましくは10mg/m2以下である。塗布層が有する空隙率は非磁性層、磁性層とも好ましくは30容量%以下、さらに好ましくは20容量%以下である。空隙率は高出力を果たすためには小さい方が好ましいが、目的によってはある値を確保した方が良い場合がある。例えば、繰り返し用途が重視されるディスク媒体では空隙率が大きい方が保存安定性は好ましいことが多い。
【0128】
本発明の磁気記録媒体における非磁性層と磁性層と間では、目的に応じ非磁性層と磁性層でこれらの物理特性を変えることができるのは容易に推定されることである。例えば、磁性層の弾性率を高くし保存安定性を向上させると同時に非磁性層の弾性率を磁性層より低くして磁気記録媒体のヘッドへの当りをよくするなどである。
【0129】
<磁気記録媒体>
(1)摩擦係数
23℃、50%RH環境にて、磁性層面をSUS420部材に接触させて荷重50gをかけ、14mm/secで繰り返し10パス摺動させ、10パス目の摩擦係数を測定値とする。好ましい摩擦係数の値は0.32以下、より好ましくは0.3以下である。上記の数値範囲内であると、走行耐久性に優れる。
【0130】
(2)飽和磁化量
本発明の磁気記録媒体は、磁気記録媒体に磁気記録された信号を再生するヘッドについては特に制限はないが、MRヘッドのために用いることが好ましい。本発明の磁気記録媒体の再生にMRヘッドを用いる場合、MRヘッドには特に制限はなく、例えばGMRヘッドやTMRヘッドを用いることもできる。また、磁気記録に用いるヘッドは特に制限されないが、飽和磁化量が1.0T以上であることが好ましく、1.5T以上であることがより好ましい。
【0131】
(3)弾性率
磁気記録媒体の弾性率は、面内各方向で好ましくは0.98〜14.7GPa(100〜1,500kg/mm2)である。
【実施例】
【0132】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。実施例中の「部」の表示は「質量部」を示す。
【0133】
[実施例1]
3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学(株)製、「セロキサイド 2021A」、(M−1))30部、シルセスキオキサン構造を有するオキセタン化合物として東亞合成(株)製「アロンオキセタンOX−SQ SI−20」(A−1)70部、開始剤として(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウム ヘキサフルオロフォスフェート(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製「イルガキュアー250」)3部、そしてメチルエチルケトン400部を混合し、20分間撹拌したものをの平均孔径1μmのフィルターで濾過し、シルセスキオキサン構造を有する硬化層用の混合液を調製した。
【0134】
[上層(磁性層)用磁性液の調整]
強磁性合金粉末A(組成:Fe 100原子%に対して,Co 20%、Al 9%、Y 6%、 Hc 175 kA/m、結晶子サイズ11nm,BET比表面積 70m2/g、長軸長45nm、σs111emu/g) 100部 をオープンニーダで10分間粉砕し、
塩化ビニル系共重合体(日本ゼオン(株)製MR110)のシクロヘキサノン30%溶液 30部
ポリウレタン樹脂(東洋紡績(株)製UR8200)のメチルエチルケトン(MEK)/トルエン=1/1 30%溶液 30部
を添加して60分間混練し、次いで、
αアルミナ(住友化学(株)製HIT55) 10部
カーボンブラック(旭カーボン(株)製 #50) 3部
MEK/トルエン=1/1 200部
を加えてサンドミルで120分間分散した。これに、
ポリイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製 コロネート3041)のMEK/トルエン=1/1 30%溶液 15部
ステアリン酸 1部
ミリスチン酸 1部
イソヘキサデシルステアレート 3部
MEK 100部
を加え、さらに20分間撹拌混合したあと、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、磁性塗料を調製した。
【0135】
[下層(非磁性層)用非磁性液の調整]
針状α酸化鉄(長軸長100nm、表面処理層;アルミナ、SBET 52m2/g、pH 9.4)85部、及び、カーボンブラック(ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製 ケッチェンブラックEC)15部をオープンニーダで10分間粉砕し、次いで、
塩化ビニル系共重合体(日本ゼオン(株)製MR110)のシクロヘキサノン30%溶液 30部
ポリウレタン樹脂(東洋紡績(株)製UR8200) MEK/トルエン=1/1 30%溶液 30部
シクロヘキサノン 20部
を添加して60分間混練し、次いで、
MEK/シクロヘキサノン=6/4 200部
を加えてサンドミルで120分間分散した。これに、
ポリイソシアネート(日本ポリウレタン製コロネート3041) MEK/トルエン=1/1の30%溶液 15部
ステアリン酸 1部
ミリスチン酸 1部
イソオクチルステアレート 3部
MEK 50部
を加え、さらに20分間撹拌混合した後、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、非磁性塗料を調製した。
【0136】
シルセスキオキサン構造を有する硬化層用の混合液を乾燥後の厚さが0.5μmになる様にコイルバーを用いてポリエチレンナフタレート支持体(厚さ7μm、中心平均表面粗さRa6.2nmの)の表面に塗布した後、100℃で90秒乾燥させ、酸素濃度4%の雰囲気下、加速電圧100kVの電子線を吸収線量が20kGy(グレイ)になるように照射し硬化した。
一方、引き続きシルセスキオキサン構造を有する硬化層の上に上記非磁性液を、さらにその上に上記磁性液を、乾燥後の厚みがそれぞれ1.0μm、0.1μmになる様にリバースロールを用いて同時重層塗布した。磁性液が未乾燥の状態で5,000ガウスのCo磁石と4,000ガウスのソレノイド磁石で磁場配向を行ない、溶剤を乾燥したものを金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロールの組み合わせによるカレンダー処理を(速度100m/min、線圧300kg/cm、温度90℃)で行い、更に50℃で7日間熱処理し、3.8mm幅にスリットした。
【0137】
[実施例2]
実施例1に記載の例において、シルセスキオキサン構造を有する化合物を東亞合成(株)製「アロンオキセタンOX−SQ」(A−2)70部に変更した以外は同様にして行った。
【0138】
[実施例3]
実施例1に記載の例において、シルセスキオキサン構造を有する化合物を東亞合成(株)製「アロンオキセタンOX−SQ−H」(A−3)70部に変更した以外は同様にして行った。
【0139】
[実施例4]
実施例1に記載の例において、シルセスキオキサン構造を有する化合物を東亞合成(株)製「アロンオキセタンOX−SQ−F」(A−4)70部に変更した以外は同様にして行った。
【0140】
[実施例5]
実施例1に記載の例において、シルセスキオキサン構造を有する化合物をチッソ(株)製「サイラマックス エポキシ変性PSQ」(A−5)70部に変更した以外は同様にして行った。
【0141】
[実施例6〜実施例12]
実施例1記載の例において、表1に示す条件にて実施した。
(M−2);ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(東亞合成(株)製「アロンオキセタン OXT−221」)
(M−3);1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ}ベンゼン(東亞合成(株)製「アロンオキセタン OXT−121」)
(M−4);1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製「デナコール EX−212L」)
(M−5);1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製「デナコール EX−216L」)
【0142】
[実施例13]
1,4−ブタンジオールジアクリレート(M−6)30部、アクリロイル基を有するシルセスキオキサン化合物として東亞合成(株)製「アロンオキセタンAC−SQ−F」(A−6)70部、そしてメチルエチルケトン400部を混合し、20分間撹拌したものをの平均孔径1μmのフィルターで濾過し、シルセスキオキサン構造を有する硬化層用の混合液を調製した。なお、この実施例では開始剤は使用しなかった。
【0143】
[実施例14]
実施例13記載の例において、用いるシルセスキオキサン化合物を、メタクリロイル基を有するシルセスキオキサン化合物として東亞合成(株)製「アロンオキセタンMAC−SQ−F」(A−7)に変更した以外は同様にして行った。
【0144】
[比較例1]
実施例1に記載の例において、シルセスキオキサン構造を有する硬化層を適用せず、非磁性層の厚みを1.0μmから1.5μmに変更した以外は同様にして行った。
【0145】
[比較例2]
実施例1に記載の例において、シルセスキオキサン構造を有する硬化層を構成する成分にシルセスキオキサン構造を有する化合物を適用せずに用いる単量体を全量3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(M−1)とした以外は同様にして行った。
【0146】
[比較例3]
特開平8−30961号公報の実施例11記載と同様に行った。
ポリエチレンナフタレート支持体(厚さ7μm、中心平均表面粗さRa6.2nm)の表面にポリメトキシシロキサン100質量部に対し、メタノール5質量部及び酢酸1質量部からなる混合液を塗布した後、120℃で90秒乾燥させ、厚さ0.1μmのシリコーンの被膜を形成した。
そしてこのシリコーンの被膜上に、実施例1と同様に引き続き上記非磁性液以下の処理を行い磁気記録媒体を得た。
【0147】
<測定方法>
(1)磁性層表面粗さRa
デジタルオプティカルプロフィメーター(WYKO製)を用い光干渉法によりカットオフ0.25mmの条件で中心線平均粗さRaを測定した。
(2)電磁変換特性
DDS3ドライブにて4.7MHzの単一周波数信号を最適記録電流で記録し、その再生出力を測定した。比較例1の再生出力を0dBとした相対値で示した。
(3)エラー回数
上記の磁気記録再生システムを用いて1トラック90m長で再生を行い、出力落ちが35%以上かつ4ビット以上の長さの信号欠陥をエラーとして発生回数を測定した。
(4)走行耐久試験後のエッジダメージ
テープを40℃・30%RH環境下で前記(2)のDDS3ドライブで1分長を繰り返し1,000回走行させた後のテープエッジ部を観察し、クラック発生が見られたものを△、クラック発生部から磁性層が脱落しているものを×、クラックも脱落も起きなかったものを○とした。
(5)高温・高湿保存後の耐久性
テープをリールに巻きつけた状態で70℃・90%RH環境に30日間保存させ、磁性層表面を以下の条件で摺動させ、摺動後の磁性層表面ダメージを観察し、以下のランクで評価した。
[摺動条件]
40℃・80%RH環境にて磁性層面をSUS420部材に接触させて荷重50gをかけ、2m/secで繰り返し50,000パス摺動させた。
[摺動後の磁性層表面ダメージ]
摺動後の磁性層表面を微分干渉顕微鏡(倍率50)で目視観察した。
[評価ランク]
摺動後の磁性層表面にダメージがなく摺動前と同等・・・○
摺動後の磁性層表面に削れ見られるが50,000パス摺動できたもの・・・△
50,000パス未満でSUS部材にはりつき停止したもの・・・×
【0148】
【表1】

【0149】
比較例1のシスセスキオキサン構造を有する硬化層を有しない磁気記録媒体は、表面粗さRaが高く(表面が粗く)、その結果、得られた磁気記録媒体のエラー回数が多く、電磁変換特性が悪く、また、高温高湿保存後の耐久性が劣った。
比較例2のシルセスキオキサン構造を有しない硬化層を有する磁気記録媒体は、表面粗さRa値が小さく平滑であるが、走行耐久試験後のエッジダメージと高温・高湿保存後の耐久性が共に劣った。
比較例3の、特開平8−30961号公報で提案されているメトキシシリコーンからなる層を有する磁気記録媒体は、表面粗さRaが非常に高く(表面が非常に粗く)、その結果、電磁変換特性が悪く、エラー回数も多い。走行耐久試験後のエッジダメージ及び高温・高湿保存後の耐久性は良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性支持体上に、
シルセスキオキサン構造を有する硬化層、及び、
強磁性粉末を結合剤中に分散した少なくとも一層の磁性層を有することを特徴とする
磁気記録媒体。
【請求項2】
シルセスキオキサン構造を有する硬化層と磁性層との間に、非磁性粉末を結合剤に分散した非磁性層を有する請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
前記シルセスキオキサン構造が、オキセタニル基、エポキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基よりなる群から選ばれた基を有するシルセスキオキサン化合物より得られた構造である請求項1又は2に記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
前記シルセスキオキサン構造が、オキセタニル基及び/又はエポキシ基を有するシルセスキオキサン化合物より得られた構造である請求項1〜3のいずれか1つに記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
前記シルセスキオキサン構造が、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有するシルセスキオキサン化合物より得られた構造である請求項1〜3のいずれか1つに記載の磁気記録媒体。
【請求項6】
前記シルセスキオキサン構造を有する層の平均厚みが、0.1μm〜1.5μmである請求項1〜5のいずれか1つに記載の磁気記録媒体。
【請求項7】
非磁性支持体上に、放射線硬化性基を有するシルセスキオキサン化合物含有層を塗設する工程、前記放射線硬化性基を有するシルセスキオキサン化合物含有層を放射線照射により硬化してシルセスキオキサン構造を有する硬化層を形成する工程、及び、強磁性粉末を結合剤中に分散した磁性液を塗布する工程を含む請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項8】
前記放射線硬化性基が、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基である請求項7に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項9】
前記放射線硬化性基が、オキセタニル基及び/又はエポキシ基である請求項7に記載の磁気記録媒体の製造方法。

【公開番号】特開2008−243319(P2008−243319A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84682(P2007−84682)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】