説明

磁気記録媒体、及び磁気記録再生装置

【課題】 良好な磁気記録特性を有する磁気記録媒体を得る。
【解決手段】 非磁性基板上に形成された非磁性中間層、2nm以上30nm以下の厚さを有する反強磁性層、0.2nm以上5nm以下の厚さを有する第1の非磁性下地層、第1のビットパターン状強磁性層、第1のビットパターン状非磁性層、第2のビットパターン状強磁性層を有する垂直磁気記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気記録技術を用いたハードディスク装置等に用いられる垂直磁気記録媒体及び磁気記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録再生装置の高記録密度化および大容量化を実現する技術として期待されているビットパターンドメディア(BPM:Bit Patterned Media)は、物理的もしくは磁気的に分離した1つの磁性ドットが1ビットの情報を記録するという原理的な事情に起因して、情報の書き込みの際に同期記録が必要とされる。
同期記録には記録マージンが大きいことが求められるが、ヘッドの磁界勾配、ドットの位置ばらつき、ドット毎の磁気特性ばらつきなどの要因によって、そのマージンは制限されてしまう。
【0003】
近年提案されているCapped layer BPMは、記録マージンを制限してしまう要因の1つであるドット毎の磁気特性ばらつきを、記録ドットの一部を隣接ドットと磁気的に結合させることで低減させる手法であり、これまで複数の構造形態が提案されている。
【0004】
しかしながら、これまで開示されている構造形態は、ドットの磁化が隣接ドットの磁化の向きと同一方向の場合に溝部に垂直方向の磁化成分が発生する。この溝部に生じる垂直方向の磁化成分はノイズ成分となってしまうため、SNが悪くなるということが懸念される。また、ドット磁性部とCap層が反強磁性的に結合しているCapped layer BPMの場合には、ドット磁性部の磁化とCap層の磁化が互いに打ち消しあい、信号強度が著しく低下しSNが悪くなるということも懸念される。また、Cap層がドット部の垂直磁性膜と同一材料である場合には、溝部にはやはり垂直磁化成分が生じてしまう。
【0005】
以上のように、Capped layer構造のBPMはこれまで複数の構造が提案されているが、いずれも隣接ドットと磁化の向きが同じときにCap層溝部で垂直方向の磁化成分が発生する問題がある。これは結果的に信号のSN劣化を招くことが予想されるため重大な問題である。
【0006】
したがって、隣接ドットと磁化の向きが同じときのCap層溝部での垂直方向の磁化成分発生を抑制しつつ、個々のドットが示す固有の磁化反転磁界のばらつきに起因するintrinsic SFD(Switching Field Distribution)の低減効果及び、隣接ドットからのダイポール磁界に起因するextrinsic SFDの低減効果を両立する磁気記録媒体が求められている。このとき、信号強度を低下させないことも必要である。Intrinsic SFD値及びextrinsic SFD値は、それぞれ5〜6%以下に抑えることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許4508183号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】IEEE Transaction on Magnetics47,18(2011)
【非特許文献2】Applied Physics Letters Vol 98,012513(2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の実施形態は、良好な磁気記録特性を有する磁気記録媒体を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態によれば、非磁性基板、該非磁性基板上に形成された非磁性中間層、該非磁性中間層上に形成された2nm以上30nm以下の厚さを有する反強磁性層、該反強磁性層上に形成された0.2nm以上5nm以下の厚さを有する第1の非磁性下地層、
該第1の非磁性下地層上に形成された第1のビットパターン状強磁性層、
該第1のビットパターン状強磁性層上に形成された第1のビットパターン状非磁性層、
該第1のビットパターン状非磁性層上に形成された第2のビットパターン状強磁性層を具備する垂直磁気記録媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態に係る垂直磁気記録媒体の一例を表す断面図
【図2】第2の実施形態に係る垂直磁気記録媒体の一例を表す断面図
【図3】第3の実施形態に係る垂直磁気記録媒体の一例を表す断面図
【図4】第4の実施形態に係る磁気記録再生装置の一例を表す概略図
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の実施形態に係る垂直磁気記録媒体は、非磁性基板、非磁性基板上に形成された非磁性中間層、非磁性中間層上に形成された2nm以上30nm以下の厚さを有する反強磁性層、反強磁性層上に形成された0.2nm以上5nm以下の厚さを有する第1の非磁性下地層、第1の非磁性下地層上に形成された少なくとも3層のビットパターン状に加工された層を含む。ビットパターン状に加工された層は、第1のビットパターン状強磁性層、第1のビットパターン状非磁性層、及び第2のビットパターン状強磁性層の積層を含む。
【0013】
第2の実施形態に係る垂直磁気記録媒体は、上記第1の実施形態に係る垂直磁気記録媒体の他の例であって、反強磁性層が、0.2nm以上3nm以下の厚さを有する強磁性層、及び0.2nm以上3nm以下の厚さを有する非磁性層を交互に各々2回以上積層した多層体であるか、または0.2nm以上3nm以下の厚さを有する強磁性層、0.2nm以上3nm以下の厚さを有する非磁性層、及び0.2nm以上3nm以下の厚さを有する酸化物層を、順に各々2回以上積層した多層体であること以外は、第1の実施形態と同様の構成を有する。
【0014】
第3の実施形態に係る垂直磁気記録媒体は、反強磁性層の代わりに、1nm以上5nm以下の厚さを有し、鉄,コバルト,及びニッケルから選択される少なくとも1種の金属、及び該金属と非磁性金属元素を含む強磁性合金からなり、強磁性合金を構成している元素間の合金系において、キュリー温度が400K以下となるFe,Co,Niのいずれかの元素Aの最大組成比をXとすると、前記強磁性合金における元素Aの組成比Yが、
X−20≦Y≦X(原子%)である強磁性層を設けること以外は、第1の実施形態にかかる垂直磁気記録媒体と同様の構成を有する。
【0015】
第4の実施形態に係る磁気記録再生装置は、上記第1、第2、第3の実施形態にかかる垂直磁気記録媒体のいずれかと、記録再生ヘッドとを有する。
【0016】
実施形態によれば、ビットパターンのドット毎の磁気特性ばらつき(intrinsic SFD、extrinsic SFD)を低減しながらも、隣接ドットと磁化の向きが同じときにCap層溝部に垂直方向の磁化成分の発生を抑制することが可能である。また、ドット磁性部の磁化とCap層磁化の打ち消しあいも無いため、信号強度の低下も抑制することが可能である。このように、実施形態によれば、良好な磁気特性が得られる。
【0017】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
<第1の実施形態>
第1の実施形態に係る垂直磁気記録媒体は、図1に示すように、非磁性基板1上に非磁性中間層2が形成され、前記非磁性中間層2上に膜厚が2nm以上30nm以下の反強磁性層3が形成され、前記反強磁性層3上に、膜厚が0.2nm以上5nm以下の非磁性層4が形成され、前記非磁性層4上に強磁性層5が形成され、強磁性層5上に非磁性層6が形成され、非磁性層6上に強磁性層7が形成され、このうち少なくとも強磁性層5、非磁性層6、強磁性層7が、所定のパターンで配列された複数の凸部からなるビットパターン状にパターン加工されている垂直磁気記録パターンド媒体である。
【0019】
反強磁性層3の膜厚は2nm以上30nm以下である。2nm以上30nm以下の範囲であれば、ダイポール磁界強度と同程度の交換等価磁界強度を得ることが可能である。膜厚が2nm以下の場合は室温以上に反強磁性体ネール温度を確保することが困難になる。膜厚が30nm以上の場合は交換等価磁界強度がダイポール磁界強度と比較して大きくなりすぎてドットの磁化反転時にクラスターが形成される。クラスターが形成されると1bit−1dot性を確保できない。
【0020】
反強磁性層3としては、CrMn,CrRu,CrRh,CrAl,CrCu,FeMn,MnCo,MnPd,MnPt,MnNi,MnIr,NiOを使用することができるが、これらの合金の組成比については特に限定されない。
【0021】
ここで、合金等の二以上の元素の組み合わせにおいて、組成比が特に明記されていない場合は、その合金について組成比が特に限定されていないことを意味するものとする。例えばCrMnはCr組成比50原子%を意味しているわけではなく、CrとMnの合金ということを意味している。また、これらの材料であれば室温以上でダイポール磁界を相殺できる程度の交換等価磁界強度を得ることが可能である。なお、これらの材料の反強磁性層材料は規則合金、不規則合金どちらでも良く、特に限定されない。反強磁性層の磁化容易軸は垂直方向、面内方向どちらでも構わない。
【0022】
反強磁性層は正味の磁化量がゼロであるため、隣接ドットがいかなる状態であっても溝部Cap層に垂直成分の磁化成分を持たない。
【0023】
非磁性層4の膜厚は0.2nm以上5nm以下が良い。0.2nm以上5nm以下の範囲であれば、強磁性層5の結晶配向性を維持した上で、反強磁性層へのエッチングダメージや、下地層例えば非磁性中間層及び反強磁性層等からのコロージョンを防止できる。膜厚が0.2nm以下の場合は、大よそ単原子層以下の膜厚であり層形成が困難であるため、反強磁性層へのエッチングダメージ防止効果、及び下地層からのコロージョン防止効果が低下するため好ましくない。膜厚が5nm以上の場合は、強磁性層5の結晶配向性が低下する。この場合、intrinsic SFD値の低減効果が得られない。
【0024】
非磁性層4の材料としては、Pd,Pt,Ru,Cu,Tiもしくはこれらのいずれかを含む合金などがあげられる。これらの材料は下地の反強磁性層と比較して酸化しにくいため、反強磁性層へのエッチングダメージ防止や、反強磁性層を含む下地層からのコロージョン防止効果が得られる。なお、反強磁性層へのエッチングダメージや下地層からのコロージョンなどが無視できる程度に小さい場合は、非磁性層4を省略することも可能である。
【0025】
強磁性層5の膜厚は、1nm以上10nm以下にすることができる。1nm以上10nm以下の範囲であれば、ドットの熱安定性を十分に確保することが可能である。強磁性層5の材料としては大きな結晶磁気異方性が得られる磁性材料を用いることができる。例えばPt組成比が10〜30原子%程度で不規則相のCoPt,CoCrPt,CoRuPt、もしくはCo/Pd,Co/Pd人工格子膜やFe系、Co系の規則相合金(例えば、L10FePt,L10FePd,L10 or L11CoPt,L10 or L11CoPd,CoPt,CoPt)などがあげられる。
【0026】
非磁性中間層2の材料については、反強磁性層3、非磁性層4、強磁性層5、非磁性層6、強磁性層7、特に反強磁性層3の結晶配向性に合わせて適宜選択される。例えば、反強磁性層3がMnPtの場合には、Pd/Ruを非磁性中間層2として用いることができる。なお、Pd/Ruのように非磁性中間層2は単層とは限らず複数層の積層構造であっても構わない。非磁性中間層2の膜厚は1nm以上200nm以下にすることができる。この膜厚範囲であれば、反強磁性層3、非磁性層4、強磁性層5、非磁性層6、強磁性層7、特に反強磁性層3の良好な結晶配向性(5deg以下の結晶配向性分散)と反強磁性層3界面での低い表面ラフネス(Ra0.3nm以下)を維持できる。良好な結晶配向性(5deg以下の結晶配向性分散)と反強磁性層3界面での低い表面ラフネス(Ra0.3nm以下)を維持できない場合、ドット毎の磁気特性ばらつき、特にintrinsic SFDを低減できない。また、反強磁性層3としての特性が弱くなり、隣接ドットと磁化の向きが同じ時に溝部Cap層に磁化の垂直成分を生じてしまう。
【0027】
非磁性層6及び強磁性層7の膜厚はそれぞれ0.5nm以上5nm以下が好ましい。また、非磁性層6の材料は、Pd,Pt,Ru,Cu,Tiもしくはこれらのいずれかを含む合金などが好ましい。強磁性層7の材料は、Co,CoCr,CoPt,CoPd,Fe,FeCo,FePt,FePdや、[Co/Pt]、[Co/Pd]人工格子膜、積層膜などが好ましい。これらの条件であればドット毎の磁気特性ばらつき、特にintrinsic SFDを低減することができる。
【0028】
パターン化については、少なくとも強磁性層5、非磁性層6、強磁性層7がパターン化されている。さらには、強磁性層5、非磁性層6、強磁性層7のみ、もしくは強磁性層7、非磁性層6、強磁性層5と、非磁性層4の一部とがパターン化され得る。このようにすることで、ドット毎の磁気特性ばらつきを低減しながらも、隣接ドットと磁化の向きが同じときのCap層溝部での垂直方向の磁化成分発生を抑制することが可能となる。
【0029】
非磁性層4の一部とは具体的には膜厚方向の0.2nm以上4.8nm以下を意味するが、エッチングされていない残りの非磁性層4の膜厚は0.2nm以上であることが必要である。つまり、非磁性層4の膜厚が0.2nmよりも小さい場合は、非磁性層4のエッチングは行わず、強磁性層7、非磁性層6、強磁性層5のみパターン化することができる。
【0030】
また、パターン化は物理的凹凸形状を有することのみを意味するものではなく、磁気的なパターンという意味も含有する。つまり、例えばイオン注入などにより、設計などにより決定された特定領域の磁性を失活すること で、磁気的パターンを形成しパターンド媒体を形成した際もこれに該当する。この場合、例えば「非磁性層4の一部がパターン化」とは非磁性層4の膜厚方向の一部の磁性が失活されているということを意味する。
【0031】
物理凹凸によるパターン化の場合は、凹凸高さは15nm以下であることが好ましい。さらには1nm以上15nm以下の範囲であることが好ましい。この範囲内であれば、実施形態に係る磁気記録媒体をハードディスクドライブに搭載した際に、ヘッドの浮上安定性を確保することが可能である。
【0032】
以上のように、第1の実施形態に係る垂直磁気記録媒体はCap層に正味の磁化量がゼロである反強磁性層を用いているため、隣接ドットと磁化の向きが同じ時に溝部Cap層に磁化の垂直成分を持たないことが特徴である。なお、ドットからの信号強度や隣接ドットと磁化の向きが同じ時の溝部Cap層の磁化の垂直成分の有無は、HDDもしくはスピンスタンドでの磁気ヘッドによる波形取得、もしくは磁気力顕微鏡(MFM)(Magnetic Force Microscopy)測定などから判断することが可能である。
【0033】
<第2の実施形態>
第2の実施形態にかかる垂直磁気記録媒体は、図2に示すように、非磁性基板1上に非磁性中間層2が形成されている。非磁性中間層2上に、それぞれの膜厚が0.2nm以上3nm以下の強磁性層と非磁性層を交互に各々2回以上積層した積層構造、もしくはそれぞれの膜厚が0.2nm以上3nm以下の強磁性層と非磁性層と酸化物層の組合せを順に各々2回以上積層した構造からなる反強磁性層3’が形成されている。図2では例として、強磁性層と非磁性層を交互に2回積層して、強磁性層8−1、非磁性層9−1、強磁性層8−2、及び非磁性層9−2からなる反強磁性層3’が形成されている。反強磁性層3’上に、膜厚が0.2nm以上5nm以下の非磁性層4が形成されている。非磁性層4上には強磁性層5が形成され、強磁性層5上に非磁性層6が形成され、非磁性層6上に強磁性層7が形成され、少なくとも強磁性層5、非磁性層6、強磁性層7がビットパターン状に加工されている垂直磁気記録パターンド媒体である。
【0034】
反強磁性層3’として、強磁性層、非磁性層、及び酸化物層を積層する場合、各膜厚は0.2nm以上3nm以下にすることができる。この膜厚の範囲内であれば、室温以上でも反強磁性特性を示す。強磁性層の膜厚が0.2nm以下だと大よそ単原子層以下の膜厚であるため層形成が困難であり、反強磁性特性を得ることができない。この場合、extrinsic SFD値の低減効果が得られない。強磁性層の膜厚が3nmよりも大きいと強磁性層単体としての特性の影響が大きくなり、積層構造全体としての反強磁性特性が弱くなり、この場合もextrinsic SFD値の低減効果が得られない。
【0035】
また、反強磁性層3’中の非磁性層の膜厚については、この膜厚範囲の中で非磁性層を挟む上下の強磁性層の磁化が反強磁性結合する膜厚であることが良い。ただし、非磁性層の膜厚が0.2nm以下だと、大よそ単原子層以下の膜厚であるため層形成が困難であり、反強磁性特性を得ることができない。この場合、extrinsic SFD値の低減効果が得られない。非磁性層の膜厚が3nm以上だと、非磁性層単体としての特性の影響が大きくなり、積層構造全体としての反強磁性特性が弱くなる。この場合もextrinsic SFD値の低減効果が得られない。
【0036】
酸化物層の膜厚が0.2nm以下であると、おおよそ単原子層以下の膜厚であるため層形成が困難であり、反強磁性特性を得ることができない。この場合、extrinsic SFD値の低減効果が得られない。酸化物層の膜厚が3nm以上であると、酸化物層単体としての特性の影響が大きくなり、積層構造全体としての反強磁性特性が弱くなり、この場合もextrinsic SFD値の低減効果が得られない。
【0037】
反強磁性層3’中の強磁性層と非磁性層の積層、及び強磁性層と非磁性層と酸化物層の積層の開始層、積層終了層、積層順序及びその積層回数については、その積層構造全体で反強磁性となっていれば特に限定されない。なお、反強磁性層3’の磁化容易軸は垂直方向、面内方向どちらでも構わない。
【0038】
これらの積層構造による反強磁性層3’は、全体として正味の磁化量がゼロであるため、隣接ドットがいかなる状態であっても溝部Cap層に垂直成分の磁化成分を持たない。
【0039】
反強磁性層3’中の強磁性層の材料としては、Fe、Co、Ni、FeCo、CoCr、CoRuが好ましい。非磁性層の材料としては、Cr,Ru,Cu,Au,Agが好ましい。また、酸化物層の材料としては、強磁性層の酸化物、SiOが好ましい。これらの材料の組み合わせの各々2回以上の複数回積層構造からなる反強磁性層であれば、ドット毎の磁気特性ばらつきを低減しながらも、隣接ドットと磁化の向きが同じときのCap層溝部での垂直方向の磁化成分発生を抑制することが可能となる。
【0040】
反強磁性層3’上に設けられる非磁性層4の膜厚は0.2nm以上5nm以下が良い。0.2nm以上5nm以下の範囲であれば、強磁性層5の結晶配向性を維持した上で、反強磁性層3’へのエッチングダメージや、下地層からのコロージョンを防止できる。膜厚が0.2nm以下の場合は、大よそ単原子層以下の膜厚であるため層形成が困難であるため、反強磁性層3’へのエッチングダメージ防止効果、下地層からのコロージョン防止効果が低下するため好ましくない。膜厚が5nm以上の場合は、強磁性層5の結晶配向性が低下するため好ましくない。
【0041】
非磁性層4の材料としては、Pd,Pt,Ru,Cu,Tiもしくはこれらのいずれかを含む合金などが好ましい。これらの材料は下地の反強磁性層3’と比較して酸化しにくいため、反強磁性層3’のエッチングダメージ防止や、反強磁性層3’を含む下地層からのコロージョン防止効果が得られる。なお、反強磁性層3’へのエッチングダメージや下地層からのコロージョンなどが無視できる程度に小さい場合は、非磁性層4を省略することも可能である。
【0042】
強磁性層5の膜厚は、1nm以上10nm以下にすることができる。1nm以上10nm以下の範囲であれば、ドットの熱安定性を十分に確保することが可能である。強磁性層5の材料としては大きな結晶磁気異方性が得られる磁性材料が使用できる。例えばPt組成比が10〜30原子%程度で不規則相のCoPt,CoCrPt,CoRuPt、もしくはCo/Pd,Co/Pd人工格子膜やFe系、Co系の規則相合金(例えば、L10FePt,L10FePd,L10 or L11CoPt,L10 or L11CoPd,CoPt,CoPt)などがあげられる。
【0043】
非磁性中間層2の材料については、反強磁性層3’、非磁性層4、強磁性層5、非磁性6、強磁性層7、特に反強磁性層3’の結晶配向性に合わせて適宜選択される。例えば、反強磁性層3’が[Co/Cr]多層膜の場合には、Pd/Ruを非磁性中間層2として用いる。なお、Pd/Ruのように非磁性中間層2は単層とは限らず複数層の積層構造であっても構わない。非磁性中間層2の膜厚は1nm以上200nm以下が好ましい。この膜厚範囲であれば、反強磁性層3’、非磁性層4、強磁性層5、非磁性層6、強磁性層7、特に反強磁性層3’の良好な結晶配向性(5deg以下の結晶配向性分散)と反強磁性層3’界面での低い表面ラフネス(Ra0.3nm以下)を維持できる。良好な結晶配向性(5deg以下の結晶配向性分散)と反強磁性層3’界面での低い表面ラフネス(Ra0.3nm以下)を維持できない場合、ドット毎の磁気特性ばらつき、特にintrinsic SFDを低減できない。また、反強磁性層としての特性が弱くなり、隣接ドットと磁化の向きが同じ時に溝部Cap層に磁化の垂直成分を生じてしまう。
【0044】
非磁性層6及び強磁性層7の膜厚はそれぞれ0.5nm以上5nm以下が好ましい。また、非磁性層6の材料としては、Pd,Pt,Ru,Cu,Tiもしくはこれらのいずれかを含む合金を用いることができる。強磁性層7の材料としては、Co,CoCr,CoPt,CoPd,Fe,FeCo,FePt,FePdや、[Co/Pt]、[Co/Pd]人工格子膜、積層膜などを用いることができる。これらの条件であればドット毎の磁気特性ばらつき、特にintrinsic SFDを低減することができる。
【0045】
パターン化については、少なくとも強磁性層7、非磁性層6、強磁性層5がパターン化されている。さらには、強磁性層7、非磁性層6、強磁性層5のみ、もしくは強磁性層7、非磁性層6、及び強磁性層5と、非磁性層4の一部とがパターン化されている。このようにすることで、ビットパターンのドット毎の磁気特性ばらつきを低減しながらも、隣接ドットと磁化の向きが同じときのCap層溝部での垂直方向の磁化成分発生を抑制することが可能となる。
【0046】
非磁性層4の一部とは具体的には膜厚方向の0.2nm以上4.8nm以下を意味するが、エッチングされていない残りの非磁性層4の膜厚は0.2nm以上であることが必要である。つまり、非磁性層4の膜厚が0.2nmよりも小さい場合は、非磁性層4のエッチングは行わず、強磁性層7、非磁性層6、強磁性層5のみパターン化することができる。
【0047】
また、パターン化は物理的凹凸形状を有することのみを意味するものではなく、磁気的なパターンという意味も含有する。つまり、例えばイオン注入などにより、設計などにより決定された特定領域の磁性を失活することで、磁気的パターンを形成しパターンド媒体を形成した際もこれに該当する。この場合、例えば「非磁性層4の一部がパターン化」とは非磁性層4の膜厚方向の一部の磁性が失活されているということを意味する。
【0048】
物理凹凸によるパターン化の場合は、凹凸高さは15nm以下であることが好ましい。さらには1nm以上15nm以下の範囲であることが好ましい。この範囲内であれば、実施形態に係る磁気記録媒体をハードディスクドライブに搭載した際に、ヘッドの浮上安定性を確保することが可能である。
【0049】
以上のように、第2の実施形態ではCap層に正味の磁化量がゼロである反強磁性層を用いているため、隣接ドットと磁化の向きが同じ時に溝部Cap層に磁化の垂直成分を持たないことが特徴である。なお、ドットからの信号強度や隣接ドットと磁化の向きが同じ時の溝部Cap層の磁化の垂直成分の有無は、HDDもしくはスピンスタンドでの磁気ヘッドによる波形取得、もしくはMFM測定などから判断することが可能である。
【0050】
<第3の実施形態>
第3の実施形態は、図3に示すように、非磁性基板1上に非磁性中間層2が形成されている。また、非磁性中間層2上に膜厚が1nm以上5nm以下で、Fe,Co,Niのいずれか、もしくはそれらのいずれかの組み合わせと非磁性元素を含む強磁性合金であって、強磁性合金を構成している元素間の合金系において、キュリー温度が400K以下となるFe,Co,Niのいずれかの元素Aの最大組成比をXとすると、強磁性合金における元素Aの組成比Yが、X−20≦Y≦X(原子%)である強磁性層11が形成されている。さらに、強磁性層11上に膜厚が0.2nm以上5nm以下の非磁性層4が形成され、非磁性層4上に強磁性層5が形成され、強磁性層5上に非磁性層6が形成され、非磁性層6上に強磁性層7が形成され、少なくとも強磁性層5、非磁性層6、強磁性層7がパターン化されている垂直磁気記録パターンド媒体である。
【0051】
強磁性層11は、強磁性ではあるが、膜の交換結合強度が非常に弱いものが選択され得る。膜の交換結合が非常に弱いと、膜面垂直方向の結晶磁気異方性も非常に小さくなり、隣接ドットと磁化の向きが同じときにCap層溝部での垂直方向磁化成分の発生を防止することができる。
【0052】
このような、交換結合が非常に弱い強磁性体を室温付近(250−350K)で実現するためには、具体的にはFe,Co,Niのいずれか、もしくはそれらの組み合わせと非磁性元素からなる合金系において、その合金に含まれるFe,Co,Niのいずれかの組成比を減少させて、その合金系のキュリー温度を低減させることで実現可能である。Fe,Co,Niのいずれかの元素の組成比をパラメータとした場合に、キュリー温度が400K以下となるFe,Co,Niのいずれかの元素Aの最大組成比をXとすると、本発明の効果を実現できる磁性層のその元素Aの組成比Yは、X−20≦Y≦X (原子%)の範囲で得ることができる。
【0053】
したがって、強磁性層11としては、Fe,Co,Niのいずれか、もしくはそれらのいずれかの組み合わせと非磁性元素を含む強磁性合金であって、強磁性合金を構成している元素間の合金系において、キュリー温度が400K以下となるFe,Co,Niのいずれかの元素Aの最大組成比をXとすると、強磁性合金における元素Aの組成比Yが、X−20≦Y≦X (原子%)である。
【0054】
注目しているCap磁性層が本発明のCap層磁性膜としての条件を満足するかどうかは、例えば局所EDX(Energy Dispersive X-ray spectrometry)分析とその元素間からなる合金系のキュリー温度特性を確認することで判断することが可能である。
【0055】
具体的には、局所EDX分析を行うことで、注目しているCap磁性層を構成する元素構成、合金系、組成比を断定することができる。断定された合金系におけるFe,Co,Niのいずれかの組成比に対するキュリー温度の依存性は、別途その合金系を作製し実験によって求めることができる。したがって、その合金系においてキュリー温度が400K以下となるFe,Co,Niのいずれかの元素の最大組成比Xを求めることができる。その結果として、注目しているCap磁性層が実施形態であるかを判断することができる。
【0056】
強磁性層11の材料としては、磁性膜の交換結合強度に影響する磁性層に含有されるFe,Co,Niの組成比に関する前記の条件を満足していれば特に限定されないが、CoCr,CoCrPt,CoPt,CoPd,CoRu,CoCu,FeCr,FeCrPt,FePt,FePd,FeRu,FeCu,NiCr,NiCrPt,NiPt,NiPd,NiRu,NiCuであれば強磁性層5の結晶配向性の観点から好ましく、(60原子%以上80原子%以下)Co−Cr,(60原子%以上80原子%以下)Co−(10原子%以上30原子%以下)Cr−Pt,(10原子%以上30原子%以下)Co−Pt,(10原子%以上30原子%以下)Co−Pd,(15原子%以上35原子%以下)Co−Ru,(30原子%以上50原子%以下)Co−Cu,(60原子%以上80原子%以下)Fe−Cr,(60原子%以上80原子%以下)Fe−(10原子%以上30原子%以下)Cr−Pt,(10原子%以上30原子%以下)Fe−Pt,(10原子%以上30原子%以下)Fe−Pd,(15原子%以上35原子%以下)Fe−Ru,(30原子%以上50原子%以下)Fe−Cu,(30原子%以上50原子%以下)Ni−Cr,(30原子%以上50原子%以下)Ni−(50原子%以上70原子%以下)Cr−Pt,(40原子%以上60原子%以下)Ni−Pt,(40原子%以上60原子%以下)Ni−Pd,(40原子%以上60原子%以下)Ni−Ru,(30原子%以上50原子%以下)Ni−Cuであれば特に好ましい。
【0057】
強磁性層11の膜厚としては、1nm以上5nm以下が良い。1nm以上5nm以下の膜厚範囲であれば、膜の平坦性を確保しつつ、交換結合強度に対応する交換等価磁界強度を調整することができる。この膜厚範囲外では膜の平坦性を確保できず、特に強磁性層5の良好な結晶配向性を確保することができない。結果としてintrinsic SFDの低減効果を得ることができない。
【0058】
非磁性中間層2の材料については、強磁性層11、非磁性層4,強磁性層5、非磁性層6、強磁性層7、特に強磁性層11の結晶配向性に合わせて適宜選択される。例えば、強磁性層11がCo−80原子%Ruの場合には、Pd/Ruを非磁性中間層2として用いる。なお、Pd/Ruのように非磁性中間層2は単層とは限らず複数層の積層構造であっても構わない。非磁性中間層2の膜厚は1nm以上200nm以下が好ましい。この膜厚範囲であれば、強磁性層11、非磁性層4、強磁性層5、非磁性層6、強磁性層7、特に強磁性層11の良好な結晶配向性(5deg以下の結晶配向性分散)と強磁性層11界面での低い表面ラフネス(Ra0.3nm以下)を維持できる。良好な結晶配向性(5deg以下の結晶配向性分散)と強磁性層11界面での低い表面ラフネス(Ra0.3nm以下)を維持できない場合、ドット毎の磁気特性ばらつき、特にintrinsic SFDを低減できない。また、強磁性層11としての特性が弱くなり、隣接ドットと磁化の向きが同じ時に溝部Cap層に磁化の垂直成分を生じてしまう。
【0059】
非磁性層6及び強磁性層7の膜厚はそれぞれ0.5nm以上5nm以下が好ましい。また、非磁性層6の材料は、Pd,Pt,Ru,Cu,Tiもしくはこれらのいずれかを含む合金などが好ましい。強磁性層7の材料は、Co,CoCr,CoPt,CoPd,Fe,FeCo,FePt,FePdや、[Co/Pt]、[Co/Pd]人工格子膜、積層膜などが好ましい。これらの条件であればドット毎の磁気特性ばらつき、特にintrinsic SFDを低減することができる。
【0060】
パターン化については、少なくとも強磁性層7、非磁性層6、強磁性層5がパターン化されていることが好ましい。さらには、強磁性層7、非磁性層6、強磁性層5のみ、もしくは強磁性層7、非磁性層6、強磁性層5、非磁性層4の一部がパターン化されていれば良い。このようにすることで、ドット毎の磁気特性ばらつきを低減しながらも、隣接ドットと磁化の向きが同じときのCap層溝部での垂直方向の磁化成分発生を抑制することが可能となる。
【0061】
非磁性層4の一部とは具体的には膜厚方向の0.2nm以上4.8nm以下を意味するが、エッチングされていない残りの非磁性層4の膜厚は0.2nm以上であることが必要である。つまり、非磁性層4の膜厚が0.2nmよりも小さい場合は、非磁性層4のエッチングは行わず、強磁性層7、非磁性層6、強磁性層5のみパターン化することを意味する。
【0062】
また、パターン化は物理的凹凸形状を有することのみを意味するものではなく、磁気的なパターンという意味も含有する。つまり、例えばイオン注入などにより、設計などにより決定された特定領域の磁性を失活することで、磁気的パターンを形成しパターンド媒体を形成した際もこれに該当する。この場合、例えば「非磁性層4の一部がパターン化」とは非磁性層4の膜厚方向の一部の磁性が失活されているということを意味する。物理凹凸によるパターン化の場合は、凹凸高さは10nm以下であることが好ましい。さらには1nm以上10nm以下の範囲であることが好ましい。この範囲内であれば、本発明に係る磁気記録媒体をハードディスクドライブに搭載した際に、ヘッドの浮上安定性を確保することが可能である。
【0063】
<第4の実施形態>
図4に、実施形態にかかる磁気記録再生装置の一例を一部分解した斜視図を示す。
【0064】
実施形態にかかる磁気記録再生装置は、上述のパターンド媒体と記録再生ヘッドとを具備する。
【0065】
実施形態にかかる磁気記録再生装置60において、実施形態にかかる情報を記録するための剛構成の磁気ディスク62はスピンドル63に装着されており、図示しないスピンドルモータによって一定回転数で回転駆動される。磁気ディスク62にアクセスして情報の記録を行う記録ヘッド及び情報の再生を行うためのMRヘッドを搭載したスライダー64は、薄板状の板ばねからなるサスペンション65の先端に取付けられている。サスペンション65は図示しない駆動コイルを保持するボビン部等を有するアーム66の一端側に接続されている。
【0066】
アーム66の他端側には、リニアモータの一種であるボイスコイルモータ67が設けられている。ボイスコイルモータ67は、アーム66のボビン部に巻き上げられた図示しない駆動コイルと、それを挟み込むように対向して配置された永久磁石および対向ヨークにより構成される磁気回路とから構成されている。
【0067】
アーム66は、固定軸の上下2カ所に設けられた図示しないボールベアリングによって保持され、ボイスコイルモータ67によって回転揺動駆動される。すなわち、磁気ディスク62上におけるスライダー64の位置は、ボイスコイルモータ67によって制御される。なお、図4中、61は筐体を示している。
【実施例】
【0068】
実施例1
第1の実施形態に係るビットパターンド媒体を以下のように作製した。
【0069】
膜の成膜については、アネルバ社製のC3010でArガスをスパッタガスとして、スパッタ圧力0.7Paで行った。膜構成はガラス基板側から、軟磁性下地層(CoZrTa 10nm)、非磁性中間層(Pd 4nm/Ru 10nm)、反強磁性層(MnPt 5nm)、非磁性層(Pd 1.5nm)、強磁性層(CoPt 7nm)、非磁性層(Pd 1.0nm)、強磁性層(Co 3nm)とした。これらの膜の上にBPM加工用のマスク材としてC 20nmを成膜した。
【0070】
BPMパターン加工は、35nmピッチのポリスチレン-ポリジメチルシロキサン(PS−PDMS)(Polystyrene-Polydimethylsiloxane)からなる自己組織化材料でドット形状マスクを形成し、RIE装置を使用してそのパターンをCマスクに転写し、Arミリングによる磁性膜エッチングを行った。
【0071】
磁性膜エッチングのエッチング深さは二次イオン質量分析法(SIMS)(Secondary ion mass spectrometry)によるエンドポイントモニターを用いて、強磁性層(CoPt 7nm)までのエッチングが終了したところをストップポイントとした。磁性膜エッチング後は、O RIEでマスクを剥離した後、C保護膜を10nm程度成膜し、ビットパターンド媒体を形成した。
【0072】
得られたビットパターンド媒体は、非磁性基板1と非磁性中間層2との間に図示しない軟磁性下地層が設けられていること、及び非磁性層4,その上に設けられ、パターン加工された、強磁性層5,非磁性層6,及び強磁性層7上に、図示しない保護層が設けられていること以外は、図1と同様の構成を有する。
【0073】
得られたビットパターンド媒体について、以下のように、磁気特性測定を行った。
【0074】
磁気特性測定は、まず光磁気Kerr効果を用いたヒステリシス特性の測定からSFD解析を行い、intrinsic SFD(σHc/Hc)として5%、extrinsic SFD(ダイポール磁界によるSFDへの寄与分)として1%が得られた。
【0075】
なお、この時のintrinsic SFDはΔHc法、extrinsic SFDはヒステリシス曲線のHc近傍での微分曲線とintrinsic SFD値を併用することで算出した。また、媒体を外部磁界によりDC着磁して残留磁化状態をMFM測定したところ、ドット溝部に磁化の垂直成分の存在を示唆する信号は得られなかった。すなわち、Cap層溝部に磁化の垂直成分は存在しないことがわかった。なお、ドットからの磁化量に比例しているMFM信号出力の大きさは、大きな磁化量を反映して5mVであった。
【0076】
また、反強磁性層材料として、CrMn,CrRu,CrRh,CrAl,CrCu,FeMn,MnPt,MnCo,MnPd,MnNi,MnIr,NiOとしたビットパターンド媒体も同時に作製し、SFD解析、MFM解析を行ったが反強磁性層がMnPt 5nmのものと同様の結果が得られた。
【0077】
下記表1にこれらの結果を示す。
【0078】
なお、以下、表中のMFM結果において、○は良好、×は不適を示すものとする。
【表1】

【0079】
実施例2
第2の実施形態に係るビットパターンド媒体を、反強磁性層の構成を変更する以外は、実施例1と同様にして作製した。
【0080】
得られたビットパターンド媒体は、非磁性基板1と非磁性中間層2との間に図示しない軟磁性下地層を設けること以外は、図2と同様の構成を有する。
【0081】
実施例2では、反強磁性層3’として、強磁性層Co(0.4nm)と非磁性層Cr(0.8nm)を交互に4回積層した反強磁性層を成膜した。このようにして得られた反強磁性層の積層をここでは[Co(0.4nm)/Cr(0.8nm)]4と示す。なお、BPMパターン加工は反強磁性層3’の構成に対応してエッチング時間等を調整した。
【0082】
実施例1と同様にSFD解析、MFM測定を行ったところ、intrinsic SFDとして5.2%、extrinsic SFDとして1.7%が得られた。また、DC着磁後のMFM測定は実施例1と同様であり、Cap層溝部に磁化の垂直成分の存在を示唆する信号は得られなかった。また、このときのMFM信号出力は5.3mVであった。
【0083】
なお、強磁性層をFe、Co、Ni、FeCo、CoCr、CoRu、非磁性層をCr,Ru,Cu,Au,Ag、酸化物層をSiOもしくは強磁性層の酸化物として、それらの組み合わせである、[Fe/Cr]4,[Fe/Cu]4,[Fe/Ru]4,[Fe/Au]4,[Fe/Ag]4,[Co/Cr]4,[Co/Cu]4,[Co/Ru]4,[Co/Au]4,[Co/Ag]4,[Fe/Cr/Fe/Fe酸化物 or SiO2]4,[Fe/Cu/Fe/Fe酸化物 or SiO]4,[Fe/Ru/Fe/Fe酸化物 or SiO]4,[Fe/Au/Fe/Fe酸化物 or SiO]4,[Fe/Ag/Fe/Fe酸化物 or SiO or SiO]4,[Co/Cr/Co/Co酸化物 or SiO]4,[Co/Cu/Co/Co酸化物 or SiO]4,[Co/Ru/Co/Co酸化物 or SiO]4,[Co/Au/Co/Co酸化物 or SiO]4,[Co/Ag/Co/Co酸化物 or SiO]4を反強磁性層3’としたビットパターンド媒体も同時に作製し、SFD解析、MFM解析を行ったところ、反強磁性層3’が強磁性層をCo(0.4nm)、非磁性層をCr(0.8nm)として4回積層した反強磁性層である[Co(0.4nm)/Cr(0.8nm)]4のものと同様の結果が得られた。
【0084】
表2にこれらの結果の一部を示す。
【表2】

【0085】
実施例3
第3の実施形態に係るビットパターンド媒体を、反磁性層の代わりに所定の強磁性層を形成すること以外は、実施例1と同様にして作製した。
【0086】
得られたビットパターンド媒体は、非磁性基板1と非磁性中間層2との間に図示しない軟磁性下地層を設けること以外は、図3と同様の構成を有する。
【0087】
媒体作製の際、実施例1に示される反強磁性層3の代わりにCo−80原子%Ru(3nm)を強磁性層11として成膜した。それ以外は実施例1と同様である。
【0088】
実施例1と同様にSFD解析とMFM測定を行ったところ、intrinsic SFDとして5.1%、extrinsic SFDとして1.3%が得られた。また、DC着磁後のMFM測定は実施例1とやはり同様であり、Cap層溝部に磁化の垂直成分の存在を示唆する信号は得られなかった。また、このときのMFM信号出力は5.6mVであった。
【0089】
なお、強磁性層11を、Co−30原子%Cr(3nm)、60Co−20原子%Cr−Pt(3nm)、Co−80原子%Pt(3nm)、Co−80原子%Pd(3nm)、Fe−80原子%Pt(3nm)、Ni−60原子%Pd(3nm)などのFe,Co,Niのいずれかを含む合金としたビットパターンド媒体も同時に作製し、SFD解析、MFM解析を行ったが、強磁性層11がCo−80原子%Ru(3nm)のものと同様の結果が得られた。
【0090】
下記表3にこれらの結果を示す。
【表3】

【0091】
比較例1
比較例として、実施例1における反強磁性層をソフト層材料としてCo(2nm)、反強磁性層上に形成された非磁性層を、Ru(0.7nm)として、非磁性層上に形成されるビットパターン形状の強磁性層の磁化とCap層であるソフト層Coの磁化が反強磁性結合するCapped layer構造のBPMを作製した。媒体加工プロセスは実施例1と同様である。
【0092】
作製した媒体を実施例1と同様にSFD解析、MFM測定したところ、intrinsic SFDとして5.3%、extrinsic SFDとして1.4%が得られた。これらのSFD値は実施例1、実施例2、実施例3でそれぞれ得られた値と同等であった。しかし、DC着磁後のMFM測定ではドット溝部でも磁化信号が得られたほか、MFMの信号出力も2.1mVとなり、実施例1、実施例2、実施例3の場合の信号出力と比較すると半分程度で、信号のSN比がかなり悪かった。その結果として、MFM磁気像におけるドット輪郭部分が、実施例1、実施例2、実施例3と比較してもかなり不明瞭であった。
【0093】
比較例1の媒体構造では、intrinsic SFD、extrinsic SFDの低減効果は得られるが、強磁性層5、強磁性層7の磁化とCap層磁化が反強磁性結合しているために、ドットからの信号強度が大きく減少してしまうことがわかった。また、隣接ドットと磁化の向きが同じ時にCap層溝部に磁化の垂直成分が生じてしまうことがわかった。
【0094】
比較例2
比較例として、実施例1における反強磁性層、その上に形成された非磁性層、パターン加工された強磁性層、パターン加工された非磁性層を省略し、磁気記録層として強磁性層のCoPt(7nm)単層としたBPM媒体を作製した。BPM加工方法は実施例1と概ね同様であるが、磁性膜エッチング深さとしては磁気記録層CoPt7nmすべてをエッチングした。
【0095】
加工後の磁気特性は実施例1と同様の方法で、SFD解析、MFM測定を行った。その結果、intrinsic SFDとしては10%、extrinsic SFDとしては15%が得られた。
【0096】
これらのSFD値は実施例1、実施例2、実施例3と比較すると非常に大きく、比較例2の媒体構造ではSFD値を低減できないことがわかった。なお、DC着磁後のMFM測定では、Cap層溝部への磁化の垂直方向成分に起因する信号出力は見られなかった。
【0097】
以上、実施例1、実施例2、実施例3と比較例1、比較例2の結果から、本発明に掛かる実施の形態であれば、隣接ドットと磁化の向きが同じときのCap層溝部での垂直方向の磁化成分発生を抑制しつつ、intrinsicなSFDの低減効果及び、隣接ドットからのダイポール磁界に起因するextrinsicなSFDの低減効果を両立できることがわかった。また、ドットからの信号強度低下も抑制できることができることがわかった。
【0098】
実施例4
実施例1において、反強磁性層の膜厚を1nm,2nm,10nm,20nm,30nm,40nmとしたビットパターンド媒体を作製した。BPMパターン加工については、反強磁性層の膜厚に対応して、エッチング時間の調整を行った。それ以外は実施例1と同様の方法で行った。
【0099】
実施例1と同様に磁気特性測定によるSFD解析を行ったところ、反強磁性層の膜厚が2nm,10nm,20nm,30nmの媒体については、intrinsic SFD(σHc/Hc)として5%程度、extrinsic SFD(ダイポール磁界によるSFDへの寄与分)として1%程度が得られた。また、媒体を外部磁界によりDC着磁して残留磁化状態をMFM測定したところ、Cap層溝部に磁化の垂直成分の存在を示唆する信号は得られなかった。すなわち、Cap層溝部に磁化の垂直成分は存在しないことが得られた。なお、ドットからの磁化量に比例しているMFM信号出力の大きさは、大きな磁化量を反映して5mVであった。
【0100】
しかし、反強磁性層の膜厚が1nmの媒体は、DC着磁後の残留磁化状態のMFM測定ではCap層溝部に磁化の垂直成分の存在を示唆する信号は得られなかった。またMFM信号出力の大きさも4.5mVと大きな出力であったが、intrinsic SFD(σHc/Hc)として7%、extrinsic SFD(ダイポール磁界によるSFDへの寄与分)として11%が得られ、どちらのSFD成分も非常に大きな値であった。
【0101】
また、反強磁性層の膜厚が40nmの媒体は、intrinsic SFD(σHc/Hc)としては2%、extrinsic SFD(ダイポール磁界によるSFDへの寄与分)としては0%が得られ、両SFD成分とも非常に小さな値であった。しかし、外部磁界を用いたAC消磁後の残留磁化状態のMFM測定を行ったところ、1つの磁区領域が複数個のドットが磁気的につながって形成されていることがわかった。つまり、ドットの磁化反転時にクラスターが形成され、1bit−1dot性を確保できていないことが明らかとなった。すなわち、BPM媒体として不適合な媒体であることがわかった。
【0102】
これらの結果を表4に示す。
【表4】

【0103】
以上の結果から、第1の実施形態に係るビットパターンド媒体において、反強磁性層の膜厚が2nm以上30nm以下であれば、
隣接ドットと磁化の向きが同じときのCap層溝部での垂直方向の磁化成分発生を抑制しつつ、intrinsic SFDの低減及び、extrinsic SFDの低減を両立する。また、信号強度を低下させないという効果を得ることが可能であることが明らかとなった。
【0104】
実施例5
実施例1において、反強磁性層上に形成された非磁性層の膜厚を0.1nm,0.2nm,1nm,2nm,5nm,7nmとしたビットパターンド媒体を作製した。
【0105】
BPMパターン加工については、反強磁性層上に形成された非磁性層の膜厚に対応して、エッチング時間の調整を行った。それ以外は実施例1と同様の方法で行った。
【0106】
実施例1と同様に磁気特性測定によるSFD解析を行ったところ、反強磁性層上に形成された非磁性層4の膜厚が0.2nm,1nm,2nm,5nmの媒体については、intrinsic SFD(σHc/Hc)として5%程度、extrinsic SFD(ダイポール磁界によるSFDへの寄与分)として1%程度が得られた。また、媒体を外部磁界によりDC着磁して残留磁化状態をMFM測定したところ、Cap層溝部に磁化の垂直成分の存在を示唆する信号は得られなかった。すなわち、Cap層溝部に磁化の垂直成分は存在しないことが得られた。なお、ドットからの磁化量に比例しているMFM信号出力の大きさは、大きな磁化量を反映して5mVであった。
【0107】
しかし、反強磁性層上に形成された非磁性層の膜厚が0.1nmの媒体は、DC着磁後の残留磁化状態のMFM測定ではCap層溝部に磁化の垂直成分の存在を示唆する信号は得られなかった。またMFM信号出力の大きさも4.5mVと大きな出力であったが、intrinsic SFD(σHc/Hc)として9%、extrinsic SFD(ダイポール磁界によるSFDへの寄与分)として12%が得られ、どちらのSFD成分も非常に大きな値であった。媒体表面を射光検査器を用いて調査したところ、多数のダストが確認され反強磁性層及び下地層からコロージョンが発生していることがわかった。
【0108】
また、反強磁性層上に形成された非磁性層の膜厚が7nmの媒体は、intrinsic SFD(σHc/Hc)としては10%、extrinsic SFD(ダイポール磁界によるSFDへの寄与分)としては2%が得られ、intrinsic SFD値の低減効果が小さかった。
【0109】
これらの結果を下記表5に示す。
【表5】

【0110】
以上の結果から、第1の実施形態に係るビットパターンド媒体において、非磁性層4の膜厚が0.2nm以上5nm以下であれば、隣接ドットと磁化の向きが同じときのCap層溝部での垂直方向の磁化成分発生を抑制しつつ、intrinsic SFDの低減及び、extrinsic SFDの低減を両立する。また、信号強度を低下させない効果を得ることが可能であることが明らかとなった。
【0111】
実施例6
実施例2において、反強磁性層中の強磁性層の膜厚を0.1nm,0.2nm,0.5nm,1nm,3nm,4nmとしたビットパターンド媒体を作製した。BPMパターン加工については、反強磁性層中の強磁性層の膜厚に対応して、エッチング時間の調整を行った。それ以外は実施例2と同様の方法で行った。
【0112】
実施例1と同様にSFD解析、MFM測定を行ったところ、反強磁性層中の強磁性層の膜厚が0.2nm,0.5nm,1nm,3nmの媒体については、intrinsic SFDとして5.1%、extrinsic SFDとして1.3%が得られた。また、DC着磁後のMFM測定は実施例1とやはり同様であり、Cap層溝部に磁化の垂直成分の存在を示唆する信号は得られなかった。また、このときのMFM信号出力は5.6mVであった。
【0113】
しかし、反強磁性層中の強磁性層の膜厚が0.1nmの媒体は、DC着磁後の残留磁化状態のMFM測定ではCap層溝部に磁化の垂直成分の存在を示唆する信号は得られなかった。またMFM信号出力の大きさも4.5mVと大きな出力であったが、intrinsic SFD(σHc/Hc)として11%、extrinsic SFD(ダイポール磁界によるSFDへの寄与分)として1.3%が得られ、intrinsic SFD成分が非常に大きかった。また、反強磁性層中の強磁性層の膜厚が4nmの媒体は、intrinsic SFD(σHc/Hc)としては10%、extrinsic SFD(ダイポール磁界によるSFDへの寄与分)としては2%が得られ、やはりintrinsic SFD成分が非常に大きかった。
【0114】
これらの結果を表6に示す。
【表6】

【0115】
以上の結果から、第2の実施形態に係るビットパターンド媒体において、反強磁性層中の強磁性層の膜厚が0.2nm以上3nm以下であれば、
隣接ドットと磁化の向きが同じときのCap層溝部での垂直方向の磁化成分発生を抑制しつつ、intrinsic SFDの低減及び、extrinsic SFDの低減を両立する。また、信号強度を低下させない。
【0116】
という本発明の効果を得ることが可能であることが明らかとなった。
【0117】
実施例7
実施例2において、反強磁性層中の非磁性層の膜厚を0.1nm,0.2nm,0.5nm,1nm,3nm,4nmとしたビットパターンド媒体を作製した。BPMパターン加工については、反強磁性層中の非磁性層の膜厚に対応して、エッチング時間の調整を行った。それ以外は実施例2と同様にして、磁気記録媒体を得た。
【0118】
実施例1と同様にSFD解析、MFM測定を行ったところ、反強磁性層中の非磁性層の膜厚が0.2nm,0.5nm,3nmの媒体については、intrinsic SFDとして5%程度、extrinsic SFDとして1%程度が得られた。また、DC着磁後のMFM測定は実施例1とやはり同様であり、Cap層溝部に磁化の垂直成分の存在を示唆する信号は得られなかった。また、このときのMFM信号出力は5.6mVであった。
【0119】
しかし、反強磁性層中の非磁性層の膜厚が0.1nmの媒体は、DC着磁後の残留磁化状態のMFM測定ではCap層溝部に磁化の垂直成分の存在を示唆する信号は得られなかった。またMFM信号出力の大きさも7.0mVと大きな出力であった。intrinsic SFD(σHc/Hc)として11%、extrinsic SFD(ダイポール磁界によるSFDへの寄与分)として6.0%が得られ、両SFD成分とも非常に大きかった。
【0120】
また、反強磁性層中の非磁性層の膜厚が4nmの媒体は、intrinsic SFD(σHc/Hc)としては10%、extrinsic SFD(ダイポール磁界によるSFDへの寄与分)としては2%が得られ、intrinsic SFD値の低減効果が小さかった。
【0121】
これらの結果を表7に示す。
【表7】

【0122】
以上の結果から、第2の実施形態に係るビットパターンド媒体において、反強磁性層中の非磁性層の膜厚が0.2nm以上3nm以下であれば、隣接ドットと磁化の向きが同じときのCap層溝部での垂直方向の磁化成分発生を抑制しつつ、intrinsic SFDの低減及び、extrinsic SFDの低減を両立する。また、信号強度を低下させない。
【0123】
という本発明の効果を得ることが可能であることが明らかとなった。
【0124】
実施例8
第2の実施形態に係るビットパターンド媒体において、反強磁性層中の強磁性層をCo(0.4nm)、反強磁性層中の非磁性層をCr(0.8nm)、反強磁性層中の酸化物層をCoO、その膜厚を0.1nm,0.2nm,0.5nm,1nm,3nm,4nm として4回積層した反強磁性層である[Co(0.4nm)/Cr(0.8nm)/Co(0.4nm)/CoO(x=0.1,0.2,0.5,1,3,4nm)]4を成膜した。なお、BPMパターン加工は反強磁性層の構成に対応してエッチング時間等を調整した。
【0125】
実施例1と同様にSFD解析、MFM測定を行ったところ、反強磁性層中の酸化物層の膜厚が0.2nm,0.5nm,3nmの媒体については、intrinsic SFDとして4.5%程度、extrinsic SFDとして1.5%程度が得られた。また、DC着磁後のMFM測定は実施例1とやはり同様であり、Cap層溝部に磁化の垂直成分の存在を示唆する信号は得られなかった。また、このときのMFM信号出力は5.4mVであった。
【0126】
しかし、反強磁性層中の酸化物層の膜厚が0.1nmの媒体は、DC着磁後の残留磁化状態のMFM測定ではCap層溝部に磁化の垂直成分の存在を示唆する信号は得られなかった。またMFM信号出力の大きさも5.0mVと大きな出力であった。intrinsic SFD(σHc/Hc)として5.0%、extrinsic SFD(ダイポール磁界によるSFDへの寄与分)として13%が得られ、extrinsic SFD値の低減効果は得られなかった。
【0127】
また、反強磁性層中の非磁性層の膜厚が4nmの媒体は、intrinsic SFD(σHc/Hc)としては6%、extrinsic SFD(ダイポール磁界によるSFDへの寄与分)としては12%が得られ、やはりextrinsic SFD値の低減効果が小さかった。
【0128】
これらの結果を表8に示す。
【表8】

【0129】
以上の結果から、第2の実施形態に係るビットパターンド媒体において、反強磁性層中の酸化物層の膜厚が0.2nm以上3nm以下であれば、隣接ドットと磁化の向きが同じときのCap層溝部での垂直方向の磁化成分発生を抑制しつつ、intrinsic SFDの低減及び、extrinsic SFDの低減を両立する。また、信号強度を低下させないという効果を得ることが可能であることが明らかとなった。
【0130】
実施例9
実施例2において、反強磁性層上に形成される非磁性層の膜厚を0.1nm,0.2nm,1nm,2nm,5nm,7nmとしたビットパターンド媒体を作製した。
【0131】
BPMパターン加工については、反強磁性層上に形成される非磁性層の膜厚に対応して、エッチング時間の調整を行った。それ以外は実施例2と同様の方法で垂直磁気記録媒体を得た。
【0132】
実施例1と同様に磁気特性測定によるSFD解析を行ったところ、反強磁性層上に形成される非磁性層の膜厚が0.2nm,1nm,2nm,5nmの媒体については、intrinsic SFD(σHc/Hc)として5%程度、extrinsic SFD(ダイポール磁界によるSFDへの寄与分)として1%程度が得られた。また、DC着磁後の残留磁化状態のMFM測定では、Cap層溝部に磁化の垂直成分の存在を示唆する信号は得られなかった。すなわち、Cap層溝部に磁化の垂直成分は存在しないことが得られた。なお、ドットからの磁化量に比例しているMFM信号出力の大きさは、大きな磁化量を反映して5mVであった。
【0133】
しかし、反強磁性層上に形成される非磁性層の膜厚が0.1nmの媒体は、DC着磁後の残留磁化状態のMFM測定ではCap層溝部に磁化の垂直成分の存在を示唆する信号は得られなかった。またMFM信号出力の大きさも4.5mVと大きな出力であったが、intrinsic SFD(σHc/Hc)として9%、extrinsic SFD(ダイポール磁界によるSFDへの寄与分)として12%が得られ、どちらのSFD成分も非常に大きな値であった。媒体表面を射光検査器を用いて調査したところ、多数のダストが確認され反強磁性層及び下地層からコロージョンが発生していることがわかった。
【0134】
また、反強磁性層上に形成される非磁性層の膜厚が7nmの媒体は、intrinsic SFD(σHc/Hc)としては10%、extrinsic SFD(ダイポール磁界によるSFDへの寄与分)としては2%が得られ、intrinsic SFD値の低減効果が小さかった。
【0135】
これらの結果を表9に示す。
【表9】

【0136】
以上の結果から、第2の実施形態に係るビットパターンド媒体において、反強磁性層上に形成される非磁性層の膜厚が0.2nm以上5nm以下であれば、
隣接ドットと磁化の向きが同じときのCap層溝部での垂直方向の磁化成分発生を抑制しつつ、intrinsic SFDの低減及び、extrinsic SFDの低減を両立する。また、信号強度を低下させないという効果を得ることが可能であることが明らかとなった。
【0137】
実施例10
実施例2において、反強磁性層である[Co(0.4nm)/Cr(0.8nm)]の積層回数nをn=1,2、5,10としたビットパターンド媒体を作製した。BPMパターン加工については、反強磁性層の積層回数に対応して、エッチング時間の調整を行った。それ以外は実施例2と同様の方法で行った。
【0138】
実施例1と同様に磁気特性測定によるSFD解析を行ったところ、反強磁性層の積層回数n=2,5,10の媒体で、intrinsic SFD(σHc/Hc)として5%程度、extrinsic SFD(ダイポール磁界によるSFDへの寄与分)として1%程度が得られた。また、DC着磁後の残留磁化状態のMFM測定では、Cap層溝部に磁化の垂直成分の存在を示唆する信号は得られなかった。すなわち、Cap層溝部に磁化の垂直成分は存在しないことが得られた。なお、ドットからの磁化量に比例しているMFM信号出力の大きさは、大きな磁化量を反映して5mVであった。しかし、反強磁性層の積層回数n=1の媒体は、intrinsic SFD(σHc/Hc)として5.1%、extrinsic SFD(ダイポール磁界によるSFDへの寄与分)として1.3%が得られ、両SFD成分とも非常に小さな値であった。しかし、DC着磁後の残留磁化状態のMFM測定で、Cap層溝部に磁化の垂直成分の存在を示唆する信号が得られた。つまり、Cap層溝部に磁化の垂直成分が存在することがわかった。すなわち、BPM媒体として不適合な媒体であることがわかった。
【0139】
これらの結果を表10に示す。
【表10】

【0140】
以上の結果から、第2の実施形態に係るビットパターンド媒体において、反強磁性層の積層回数が各々2回以上の積層であれば、隣接ドットと磁化の向きが同じときのCap層溝部での垂直方向の磁化成分発生を抑制しつつ、intrinsic SFDの低減及び、extrinsic SFDの低減を両立する。また、信号強度を低下させない。
【0141】
という本発明の効果を得ることが可能であることが明らかとなった。
【0142】
実施例11
実施例3において、非磁性中間層上に形成される強磁性層の膜厚を0.5nm,1nm,2nm,5nm,7nmとしたビットパターンド媒体を作製した。それ以外は実施例3と同様の方法で行った。
【0143】
実施例3と同様に磁気特性測定によるSFD解析を行ったところ、非磁性中間層上に形成される強磁性層の膜厚が1nm,2nm,5nmの媒体については、intrinsic SFD(σHc/Hc)として5%程度、extrinsic SFD(ダイポール磁界によるSFDへの寄与分)として1%程度が得られた。また、DC着磁後の残留磁化状態のMFM測定では、Cap層溝部に磁化の垂直成分の存在を示唆する信号は得られなかった。すなわち、Cap層溝部に磁化の垂直成分は存在しないことが得られた。なお、ドットからの磁化量に比例しているMFM信号出力の大きさは、大きな磁化量を反映して5.4mVであった。
【0144】
しかし、非磁性中間層上に形成される強磁性層の膜厚が0.5nmの媒体は、DC着磁後の残留磁化状態のMFM測定ではCap層溝部に磁化の垂直成分の存在を示唆する信号は得られなかった。またMFM信号出力の大きさも4.8mVと大きな出力であったが、intrinsic SFD(σHc/Hc)として12%、extrinsic SFD(ダイポール磁界によるSFDへの寄与分)として9%が得られ、どちらのSFD成分も非常に大きな値であった。
【0145】
また、非磁性中間層上に形成される強磁性層の膜厚が7nmの媒体は、intrinsic SFD(σHc/Hc)としては11%、extrinsic SFD(ダイポール磁界によるSFDへの寄与分)としては2.0%が得られ、intrinsic SFD値の低減効果が小さかった。
【0146】
これらの結果を表11に示す。
【表11】

【0147】
以上の結果から、第3の実施形態に係るビットパターンド媒体において、非磁性中間層上に形成される強磁性層の膜厚が1nm以上5nm以下であれば、
隣接ドットと磁化の向きが同じときのCap層溝部での垂直方向の磁化成分発生を抑制しつつ、intrinsic SFDの低減及び、extrinsic SFDの低減を両立する。また、信号強度を低下させない。
【0148】
という本発明の効果を得ることが可能であることが明らかとなった。
【0149】
実施例12
Co−Ru合金のCo添加量を10〜90原子%の範囲で変化させた磁性膜(10〜90)Co−Ru(3nm)を成膜した。成膜方法については、実施例1と同様でアネルバ社製C3010装置だが、組成比調整はCoターゲットとRuターゲットの同時スパッタの成膜レート比を合わせることで行った。成膜後のEDX分析による組成比分析で、成膜レート比と組成比の校正は行っている。これらの膜について、VSM装置を用いて試料温度を上げながら飽和磁化の温度依存性を求めることで各膜のキュリー温度を測定した。キュリー温度はCo元素添加量の増加に伴って増加する特性となったが、キュリー温度が400K以下となる最大のCo元素添加量は35原子%であった。
【0150】
一方、上記のCo組成比(10原子%〜90原子%)を持つ磁性膜(10〜90)Co−Ru(3nm)を、実施例3における非磁性中間層上に形成される強磁性層11としたビットパターンド媒体を作製した。それ以外は実施例3と同様の方法で行った。
【0151】
実施例3と同様に磁気特性測定によるSFD解析を行ったところ、非磁性中間層上に形成される強磁性層11のCo組成比が15原子%以上35原子%以下、つまり、キュリー温度が400K以下となるCoの最大組成比X(35原子%)に対して、X−20 ≦ Y ≦ X (原子%)となるCo組成比Y(15原子%以上35原子%以下)でintrinsic SFD(σHc/Hc)として5%程度、extrinsic SFD(ダイポール磁界によるSFDへの寄与分)として1%程度が得られた。また、DC着磁後の残留磁化状態のMFM測定では、Cap層溝部に磁化の垂直成分の存在を示唆する信号は得られなかった。すなわち、Cap層溝部に磁化の垂直成分は存在しないことが得られた。なお、ドットからの磁化量に比例しているMFM信号出力の大きさは、大きな磁化量を反映して5.9mVであった。
【0152】
しかし、非磁性中間層上に形成される強磁性層11のCo組成比が15原子%よりも小さい場合は、DC着磁後の残留磁化状態のMFM測定ではCap層溝部に磁化の垂直成分の存在を示唆する信号は得られなかった。またMFM信号出力の大きさも4.8mVと大きな出力であったが、intrinsic SFD(σHc/Hc)として10%程度、extrinsic SFD(ダイポール磁界によるSFDへの寄与分)として13%程度が得られ、どちらのSFD成分も非常に大きな値であった。
【0153】
非磁性中間層上に形成される強磁性層11のCo組成比が35原子%よりも大きい場合は、intrinsic SFD(σHc/Hc)として2.0%程度、extrinsic SFD(ダイポール磁界によるSFDへの寄与分)として1.0%程度が得られSFD低減効果は大きかったが、DC着磁後の残留磁化状態のMFM測定でCap層溝部に磁化の垂直成分の存在を示唆する信号が得られた。また、外部磁界を用いたAC消磁後の残留磁化状態のMFM測定を行ったところ、1つの磁区領域が複数個のドットが磁気的につながって形成されていることがわかった。つまり、ドットの磁化反転時にクラスターが形成され、1bit−1dot性を確保できていないことが明らかとなった。すなわち、BPM媒体として不適合な媒体であることがわかった。
【0154】
非磁性中間層上に形成される強磁性層11として、(10〜90)Fe−Cu(3nm), (10〜90)Ni−Cr(3nm)として同様の実験を行ったが、(10〜90)Co−Ru(3nm)と同様の結果が得られ、いずれの場合もキュリー温度が400K以下となるFe((10〜90)Fe−Cu(3nm)の場合)およびNi((10〜90)Ni−Cr(3nm)の場合)の最大組成比Xに対して、X−20 ≦ Y ≦ X (原子%)となるFe((10〜90)Fe−Cu(3nm)の場合)およびNi((10〜90)Ni−Cr(3nm)の場合)の組成比の範囲で、隣接ドットと磁化の向きが同じときのCap層溝部での垂直方向の磁化成分発生を抑制しつつ、intrinsicなSFDの低減効果及び、隣接ドットからのダイポール磁界に起因するextrinsicなSFDの低減効果が得られることがわかった。下記表12は、(10〜90)Co−Ru(3nm)の結果を示したものである。
【表12】

【0155】
以上の結果から、第3の実施形態に係るビットパターンド媒体において、非磁性中間層上に形成される強磁性層11がFe,Co,Niのいずれか、もしくはそれらのいずれかの組み合わせと非磁性元素を含む強磁性合金であって、前記強磁性合金を構成している元素間の合金系において、キュリー温度が400K以下となるFe,Co,Niのいずれかの元素Aの最大組成比をXとすると、前記強磁性合金における元素Aの組成比Yが、
X−20 ≦ Y ≦ X (原子%)であれば、隣接ドットと磁化の向きが同じときのCap層溝部での垂直方向の磁化成分発生を抑制しつつ、intrinsic SFDの低減及び、extrinsic SFDの低減を両立する。また、信号強度を低下させないという効果を得ることが可能であることが明らかとなった。
【0156】
実施例13
実施例3において、強磁性層11上に設けられる非磁性層4の膜厚を0.1nm,0.2nm,1nm,2nm,5nm,7nmとしたビットパターンド媒体を作製した。BPMパターン加工については、強磁性層11上に設けられる非磁性層4の膜厚に対応して、エッチング時間の調整を行った。それ以外は実施例3と同様の方法で行った。
【0157】
実施例3と同様に磁気特性測定によるSFD解析を行ったところ、強磁性層11上に設けられる非磁性層4の膜厚が0.2nm,1nm,2nm,5nmの媒体については、intrinsic SFD(σHc/Hc)として5.5%程度、extrinsic SFD(ダイポール磁界によるSFDへの寄与分)として1.5%程度が得られた。また、媒体のDC着磁後の残留磁化状態のMFM測定では、Cap層溝部に磁化の垂直成分の存在を示唆する信号は得られなかった。すなわち、Cap層溝部に磁化の垂直成分は存在しないことが得られた。なお、ドットからの磁化量に比例しているMFM信号出力の大きさは、大きな磁化量を反映して5.4mVであった。
【0158】
しかし、強磁性層11上に設けられる非磁性層4の膜厚が0.1nmの媒体は、DC着磁後の残留磁化状態のMFM測定ではCap層溝部に磁化の垂直成分の存在を示唆する信号は得られなかった。またMFM信号出力の大きさも4.8mVと大きな出力であったが、intrinsic SFD(σHc/Hc)として10%、extrinsic SFD(ダイポール磁界によるSFDへの寄与分)として13%が得られ、どちらのSFD成分も非常に大きな値であった。媒体表面を射光検査器を用いて調査したところ、多数のダストが確認され非磁性中間層上に形成される強磁性層及び下地層から、コロージョンが発生していることがわかった。
【0159】
また、強磁性層11上に設けられる非磁性層4の膜厚が7nmの媒体は、intrinsic SFD(σHc/Hc)としては11%、extrinsic SFD(ダイポール磁界によるSFDへの寄与分)としては1.9%が得られ、intrinsic SFD値の低減効果が小さかった。
【0160】
これらの結果を表13に示す。
【表13】

【0161】
以上の結果から、第3の実施形態に係るビットパターンド媒体において、強磁性層11上に設けられる非磁性層4の膜厚が0.2nm以上5nm以下であれば、隣接ドットと磁化の向きが同じときのCap層溝部での垂直方向の磁化成分発生を抑制しつつ、intrinsic SFDの低減及び、extrinsic SFDの低減を両立する。また、信号強度を低下させないという効果を得ることが可能であることが明らかとなった。
【0162】
以下、BPMパターン加工の一例を示す。
【0163】
35nmピッチのPS−PDMSジブロックポリマーをアニソール溶媒で溶かしたものをスピンコートでCマスク20nmを
有する媒体上に塗布する。
【0164】
雰囲気中で200℃ 13hアニールする。この工程に起因する相分離により、PS海中にPDMSからなるドットが形成される。
【0165】
CF RIEでジブロック表面のPDMS層をエッチングする。エッチング条件は、例えばエッチング圧力:1.0Pa、アンテナ電力:100W、バイアス電力:100W、エッチング時間:10secで行う。
【0166】
RIEでPS領域とPS領域下層のCマスク層をエッチングし、PDMS+Cマスクからなるドットマスクを形成する。
【0167】
エッチング条件は、例えばエッチング圧力:0.1Pa、アンテナ電力:100W、バイアス電力:50W、エッチング時間30秒で行う。
【0168】
Arミリングで磁性膜エッチングを行う。磁性膜エッチングのエッチング深さはSIMSによるエンドポイントモニターを用いて調整する。エッチング条件は、例えばエッチング圧力:0.01Pa、加速電圧:400V、エッチング時間:65secで行う。
【0169】
RIEでCマスク層を剥離する。エッチング条件は、例えばエッチング圧力:1.5Pa、アンテナ電力:300W、バイアス電力:0W、エッチング時間:40secで行う。
【0170】
マスク剥離後に膜厚10nm以下の範囲でDLCからなるC保護膜を成膜する。
【0171】
これらの実施形態又は実施例によれば、Capped layer構造のBPMにおいて、ドット毎の磁気特性ばらつきを低減しながらも、隣接ドットと磁化の向きが同じときのCap層溝部での垂直方向の磁化成分発生を抑制することが可能なビットパターンドメディアが得られる。
【符号の説明】
【0172】
1…非磁性基板、2…非磁性中間層、3…反強磁性層、4…第1の非磁性下地層、5…第1のビットパターン状強磁性層、6…第1のビットパターン状非磁性層、7…第2のビットパターン状強磁性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性基板、
該非磁性基板上に形成された非磁性中間層、
該非磁性中間層上に形成された2nm以上30nm以下の厚さを有する反強磁性層、
該反強磁性層上に形成された0.2nm以上5nm以下の厚さを有する第1の非磁性下地層、
該第1の非磁性下地層上に形成された第1のビットパターン状強磁性層、
該第1のビットパターン状強磁性層上に形成された第1のビットパターン状非磁性層、及び
該第1のビットパターン状非磁性層に形成された第2のビットパターン状強磁性層を具備する垂直磁気記録媒体。
【請求項2】
前記反強磁性層が、CrMn,CrRu,CrRh,CrAl,CrCu,FeMn,MnCo,MnPd,MnPt,MnNi,MnIr,及びNiOからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の垂直磁気記録パターンド媒体。
【請求項3】
前記反強磁性層は、0.2nm以上3nm以下の厚さを有する強磁性層、及び0.2nm以上3nm以下の厚さを有する非磁性層を交互に各々2回以上積層した多層体を含む請求項1に記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項4】
前記反強磁性層を構成する強磁性層/非磁性層の組み合わせは、Fe/Cr,Fe/Cu,Fe/Ru,Fe/Au,Fe/Ag,Co/Cr,Co/Cu,Co/Ru,Co/Au,及びCo/Agからなる群から選択される請求項3に記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項5】
前記反強磁性層は、0.2nm以上3nm以下の厚さを有する強磁性層、0.2nm以上3nm以下の厚さを有する非磁性層、及び0.2nm以上3nm以下の厚さを有する酸化物層を、順に各々2回以上積層した多層体を含む請求項1に記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項6】
前記反強磁性層を構成する強磁性層/非磁性層/酸化物層の組み合わせは、 Fe/Cr/Fe/Fe酸化物、Fe/Cr/Fe/SiO,Fe/Cu/Fe/Fe酸化物、Fe/Cu/Fe/SiO2,Fe/Ru/Fe/Fe酸化物、Fe/Ru/Fe/SiO,Fe/Au/Fe/Fe酸化物、Fe/Au/Fe/SiO,Fe/Ag/Fe/Fe酸化物、Fe/Ag/Fe/SiO,Co/Cr/Co/Co酸化物、Co/Cr/Co/SiO,Co/Cu/Co/Co酸化物、Co/Cu/Co/SiO,Co/Ru/Co/Co酸化物、Co/Ru/Co/SiO,Co/Au/Co/Co酸化物、Co/Au/Co/SiO,Co/Ag/Co/Co酸化物、Co/Ag/Co/SiOからなる群から選択される請求項5に記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項7】
非磁性基板
該非磁性基板上に形成された非磁性中間層
該非磁性中間層上形成され、1nm以上5nm以下の厚さを有し、
鉄,コバルト,及びニッケルから選択される少なくとも1種の金属、及び該金属と非磁性金属元素を含む強磁性合金からなり、該強磁性合金を構成している元素間の合金系において、キュリー温度が400K以下となる鉄,コバルト,及びニッケルのいずれかの元素Aの最大組成比をXとすると、前記強磁性合金における元素Aの組成比Yが、X−20≦Y≦X(原子%)である強磁性層、
該強磁性層上に形成された0.2nm以上5nm以下の厚さを有する第1の非磁性下地層、
該第1の非磁性下地層上に形成された第1のビットパターン状強磁性層、
該第1のビットパターン状強磁性層上に形成された第1のビットパターン状非磁性層、
該第1のビットパターン状非磁性層に形成された第2のビットパターン状強磁性層を具備する垂直磁気記録媒体。
【請求項8】
前記強磁性層は、CoCr,CoCrPt,CoPt,CoPd,CoRu,CoCu,FeCr,FeCrPt,FePt,FePd,FeRu,FeCu,NiCr,NiCrPt,NiPt,NiPd,NiRu,及びNiCuからなる群から選択される請求項7に記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項9】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の垂直磁気記録媒体と、記録再生ヘッドとを具備することを特徴とする磁気記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−234596(P2012−234596A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102121(P2011−102121)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【特許番号】特許第5066273号(P5066273)
【特許公報発行日】平成24年11月7日(2012.11.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】