磁気記録媒体、磁気記録装置、および磁気記録媒体製造方法
【課題】記録層のサーボ領域およびユーザデータ領域の各々にて複数の磁性部が離隔して設けられている磁気記録媒体において、ユーザデータ領域の磁性部について高い書換え性を実現しつつ、サーボ領域の磁性部の磁化反転を抑制する。
【解決手段】本発明の磁気記録媒体X1は、第1面2aおよび第2面2bを有し且つサーボ領域S1およびユーザデータ領域S2を含む記録層2を備える。サーボ領域S1は、複数の磁性部21および磁性部21間に介在する非磁性部22を含む。ユーザデータ領域S2は、複数の磁性部23および磁性部23間に介在する非磁性部24を含む。非磁性部24は、記録層2の第1面2aの側において、磁性部23よりも退避し且つ非磁性部22よりも退避している。
【解決手段】本発明の磁気記録媒体X1は、第1面2aおよび第2面2bを有し且つサーボ領域S1およびユーザデータ領域S2を含む記録層2を備える。サーボ領域S1は、複数の磁性部21および磁性部21間に介在する非磁性部22を含む。ユーザデータ領域S2は、複数の磁性部23および磁性部23間に介在する非磁性部24を含む。非磁性部24は、記録層2の第1面2aの側において、磁性部23よりも退避し且つ非磁性部22よりも退避している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターニングされた磁性部を記録層に有する磁気記録媒体、そのような磁気記録媒体を備えた磁気記録装置、および、そのような磁気記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクなどの記憶装置を構成するための記録媒体として、磁気ディスク(磁気記録媒体)が知られている。磁気ディスクは、ディスク基板と所定の磁性構造を有する記録層とを含む積層構造を有する。コンピュータシステム等における情報処理量の増大に伴い、磁気ディスクについては高記録密度化の要求が高まっている。
【0003】
磁気ディスクの技術分野においては、高記録密度化を図るのに適した磁気ディスクとして、いわゆるビットパターンドメディア(BPM)が知られている。BPMたる磁気ディスクについては、例えば下記の特許文献1〜3に記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−100499号公報
【特許文献2】特開2008−123638号公報
【特許文献3】特開2008−234774号公報
【0005】
図25および図26は、BPMたる従来の磁気ディスク80を表す。図25は、磁気ディスク80の部分拡大平面図である。図26は、図25の線XXVI−XXVIに沿った断面図である。
【0006】
磁気ディスク80は、ディスク基板81、記録層82、および保護膜83(図25では図示略)からなる積層構造を有する。記録層82は、磁気ディスク80の周方向D1に隣り合って交互に配されたサーボ領域S1およびユーザデータ領域S2を含み、相互に離隔する複数の磁性部82Aと、相互に離隔する複数の磁性部82Bと、これらの間に介在する非磁性部82Cとからなる。磁性部82Aは、垂直磁気異方性を有し、サーボ領域S1に含まれる。サーボ領域S1において周方向D1に連なる磁性部82Aにおいてサーボ情報が保持される。図25に示すように、磁性部82Aは磁気ディスク80の径方向D2に延びる形状を有する。径方向D2において、磁性部82Aは、トラック幅に相当する長さや、複数のトラックにわたる長さを有する。一方、磁性部82Bは、垂直磁気異方性を有し、ユーザデータ領域S2に含まれる。ユーザデータ領域S2における複数の磁性部82Bの各々は図25に示すようにドット状の単一の記録セルをなすように設けられ、各磁性部82Bが所定方向に磁化されて、周方向D1に連なる磁性部82Bにおいて所定のユーザデータが記録されている。BPMたる磁気ディスク80では、記録セルをなすための磁性部82Bよりも、サーボ情報をなすための上述の磁性部82Aは、磁気ディスク80の径方向D2において長い。
【0007】
図27から図29は、従来の磁気ディスク80の製造方法を表す。磁気ディスク80の製造においては、まず、図27(a)に示すように、垂直磁気異方性を有する磁性膜82’がディスク基板81上に形成される。次に、図27(b)に示すように、スピンコーティング法により、磁性膜82’上に所定のレジスト膜84が形成される。次に、図27(c)および図28(a)に示すように、スタンパ85を使用したインプリント工程が行われる。スタンパ85は複数の凹部85aを有する。凹部85aは、上述の記録層82における磁性部82A,82Bに対応するパターン形状を有する。本工程では、このようなスタンパ85がレジスト膜84に押し付けられる。これにより、スタンパ85の凹凸情報がレジスト膜84に転写されて、磁性膜82’上にレジストパターン84Aが形成される。レジストパターン84Aは、上述の記録層82における磁性部82A,82Bに対応するパターン形状を有する。インプリント工程の後、レジストパターン84Aからスタンパ85が取り外される。
【0008】
本方法では、次に、図28(b)に示すように、レジストパターン84Aがマスクとして利用されて磁性膜82’に対してドライエッチングが施され、磁性膜82’がパターニングされる。これにより、上述の磁性部82A,82Bがパターン形成されることとなる。次に、図29(a)に示すように、レジストパターン84Aが除去される。次に、図29(b)に示すように、磁性部82A,82B間に非磁性部82Cが形成される。次に、図29(c)に示すように、保護膜83が形成される。以上のような方法により、パターニングされた磁性部82A,82Bを有する従来の磁気ディスク80は製造される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
磁気ディスク80において、サーボ領域S1に含まれる磁性部82Aと、ユーザデータ領域S2に含まれる磁性部82Bとは、上述のように同じ磁性膜82’に由来して形成され、同じ組成の磁性材料よりなる。しかしながら、磁性部82Aの保磁力と磁性部82Bの保磁力とは有意に異なる。磁性部82A,82Bは同じ組成の磁性材料よりなるけれども、磁性部82Aの保磁力と磁性部82Bの保磁力とは有意に異なるのである。
【0010】
膜状であって垂直磁気異方性を有する磁性部の保磁力は、当該磁性部のパターン形状によって異なり得るところ、当該磁性部の磁気的な孤立度が高いほど、当該磁性部の保磁力は高い傾向にあることが知られている。すなわち、膜状であって垂直磁気異方性を有する磁性部の広がり面積が大きいほど、当該磁性部の保磁力は小さい傾向にあることが知られている。そして、膜状であって垂直磁気異方性を有する磁性部の保磁力は、当該磁性部における磁化反転の生じやすさに影響を与える。保磁力が小さいほど、磁性部は磁化反転しやすい。
【0011】
従来の磁気ディスク80においては、サーボ領域S1に含まれる磁性部82Aは、上述のように径方向D2に延びる形状を有し、ユーザデータ領域S2に含まれるドット状の磁性部82Bよりも、広がり面積が大きい。そのため、磁性部82Aの保磁力は、磁性部82Bの保磁力よりも有意に小さい。
【0012】
サーボ領域S1の磁性部82Aについて、磁気記録装置における記録用の磁気ヘッドからの漏れ磁界などの磁気的外乱の作用によって磁化反転が生じない程度に保磁力を大きく設定する場合、磁性部82Aよりも磁性部82Bは更に保磁力が大きい。このような高保磁力の磁性部82Bに対しては、記録用磁気ヘッドによって磁気記録しにくい(即ち、この場合の磁性部82Bは書換え性が低い)。高保磁力の磁性部82Bを磁化反転させて書換えるためには、比較的大きな記録磁界を印加する必要があるからである。
【0013】
一方、ユーザデータ領域S2の磁性部82Bについて、記録用磁気ヘッドによって比較的小さな記録磁界で磁化方向を反転可能な程度に保磁力を小さく設定する場合、磁性部82Bよりも磁性部82Aは更に保磁力が小さい。この場合、磁性部82Aは、例えば、記録用磁気ヘッドによる磁気ディスク80への書き込み処理に際し、当該ヘッドからの漏れ磁界などの磁気的外乱の作用によって磁化反転してしまうことがある。サーボ領域S1にてサーボ情報を保持する複数の磁性部82Aにおいて、磁化方向が本来的な方向から反転している磁性部82Aが存在すると、再生装置における再生用磁気ヘッドが当該サーボ領域S1において適切なサーボ情報を読み取ることができない。すなわち、再生装置においてサーボ情報検出エラーが多発して好ましくない。
【0014】
本発明は、以上のような事情の下で考え出されたものである。本発明の目的は、記録層のサーボ領域およびユーザデータ領域の各々において複数の磁性部が離隔して設けられた磁気記録媒体において、ユーザデータ領域の磁性部について高い書換え性を実現しつつ、サーボ領域の磁性部の磁化反転を抑制することである。本発明の他の目的は、そのような磁気記録媒体を備える磁気記録装置、および、そのような磁気記録媒体を製造するための方法を、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の側面によると磁気記録媒体が提供される。この磁気記録媒体は、第1面および当該第1面とは反対の第2面を有し且つサーボ領域およびユーザデータ領域を含む記録層を備える。サーボ領域は、複数の第1磁性部および当該第1磁性部間に介在する第1非磁性部を含む。ユーザデータ領域は、複数の第2磁性部および当該第2磁性部間に介在する第2非磁性部を含む。第2非磁性部は、記録層の第1面の側において、第2磁性部よりも退避し且つ第1非磁性部よりも退避している。本磁気記録媒体において、サーボ領域に含まれる第1磁性部にはサーボ情報を保持させることが可能である。本磁気記録媒体において、ユーザデータ領域に含まれる第2磁性部にはユーザデータを記録することが可能である。
【0016】
本磁気記録媒体の記録層のユーザデータ領域(UR)において、第2非磁性部は、記録層の第1面側にて第2磁性部よりも退避している。そのため、記録層のユーザデータ領域における第1面側の表面(UR表面)は、凹凸形状(第2磁性部の頂面が凸部頂面をなし且つ第2非磁性部の頂面が凹部底面をなす)を有する。これに対し、サーボ領域(SR)の第1非磁性部については、記録層の第1面側にて第1磁性部よりも退避するように設けるか、或は第1面側にて第1磁性部と面一に設けることが可能であるところ、当該第1非磁性部よりも上述の第2非磁性部は第1面側にて退避している。そのため、記録層のサーボ領域における第1面側の表面(SR表面)がたとえ凹凸形状を有する場合であっても、SR表面の当該凹凸形状の凹部よりも、UR表面の上記凹凸形状の凹部は、深い。
【0017】
このような本磁気記録媒体に対する書込みを行うに際しては、本媒体の記録層の第1面(記録面)側に、記録用の磁気ヘッド(記録ヘッド)を伴うスライダを対向させつつ、記録面に対して当該スライダないし記録ヘッドを相対移動させる。相対移動するスライダと記録面との間には空気流が生じ、記録ヘッドを伴うスライダは記録面から浮上する。相対移動速度が例えば一定である場合、スライダと記録面との間に形成される空間体積が一定に維持される距離、記録ヘッドを伴うスライダは記録面から浮上する傾向にある。そのため、例えば一定速度でスライダと記録面とが相対移動する場合、サーボ領域での記録ヘッドの浮上量(記録面の頂面レベルからの距離)より、ユーザデータ領域での記録ヘッドの浮上量は、小さい。ユーザデータ領域にスライダが対向するときには、UR表面における上述の深い凹部が、UR表面とスライダの間の空間体積の一部をなすからである。ユーザデータ領域にスライダが対向するときには、前記の深い凹部がUR表面―スライダ間の空間体積の一部をなすため、ユーザデータ領域対向時の記録ヘッドと記録面の最短距離は、サーボ領域対向時の記録ヘッドと記録面の最短距離より、短いのである。或は、サーボ領域におけるよりも、ユーザデータ領域における方が、記録面の頂面レベルから平均レベルが退避しているので、記録面の頂面レベルと記録ヘッドの距離は小さくなる、と捉えることもできる。記録面の平均レベルとは、記録層の厚さ方向における、記録面の少なくとも一領域の平均位置である。
【0018】
URにおける記録ヘッドの浮上量が小さいほど、URにおける第2磁性部に対し、当該記録ヘッドの発する記録磁界によって磁気記録しやすい。すなわち、URにおける記録ヘッドの浮上量が小さいほど、第2磁性部の書換え性は高い。また、SRにおける記録ヘッドの浮上量が大きいほど、SRにおける第1磁性部は、当該記録ヘッドからの漏れ磁界(記録磁界等)によっては磁化反転しにくい。すなわち、SRにおける記録ヘッドの浮上量が大きいほど、第1磁性部の磁化反転は抑制される。
【0019】
以上のように、記録用磁気ヘッドの浮上量がサーボ領域よりもユーザデータ領域で小さい本磁気記録媒体は、ユーザデータ領域の磁性部(第2磁性部)について高い書換え性を実現しつつ、サーボ領域の磁性部(第1磁性部)の磁化反転を抑制するのに適する。
【0020】
本発明の第2の側面によると磁気記録装置が提供される。この磁気記録装置は、本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体を備える。本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体を備える本磁気記録装置では、その具備する磁気記録媒体において、第1の側面に関して上述した効果が奏される。
【0021】
本発明の第3の側面によると磁気記録媒体製造方法が提供される。この方法は、磁性材層形成工程と、磁性材層パターニング工程と、非磁性材層形成工程と、非磁性材層エッチング工程とを含む。磁性材層形成工程では、第1領域および第2領域を有する基材の上に磁性材料を成膜することによって磁性材層を形成する。磁性材層パターニング工程では、磁性材層をパターニングすることによって、複数の第1磁性部を第1領域上に形成し、且つ、複数の第2磁性部を第2領域上に形成する。非磁性材層形成工程では、非磁性材料を第1磁性部間および第2磁性部間に堆積するように基材上に成膜することによって非磁性材層を形成する。非磁性材層エッチング工程では、非磁性材層に対して基材とは反対の側から異方性エッチング処理を施すことによって、第1領域上に第1非磁性部を形成し、且つ、当該第1非磁性部および第2磁性部よりも基材側に表面が退避した第2非磁性部を第2領域上に形成する。このような方法によると、本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体を適切に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1から図3は、本発明の第1の実施形態に係る磁気ディスクX1を表す。図1は、磁気ディスクX1の平面図である。図2は、磁気ディスクX1の部分拡大平面図である。図3は、図2の線III−IIIに沿った断面図である。
【0023】
磁気ディスクX1は、ディスク基板1、記録層2、軟磁性層3、および保護膜4(図1および図2では省略)を含む積層構造を有する、情報記録と情報再生とを実行可能なビットパターンドメディア(BPM)である。
【0024】
ディスク基板1は、主に、磁気ディスクX1の剛性を確保するための部位であり、例えば、アルミニウム合金、ガラス、シリコン、またはポリカーボネート樹脂よりなる。
【0025】
記録層2は、図3に示すように、保護膜4側の第1面2aおよびディスク基板1側の第2面2bを有し、図1に示すように、磁気ディスクX1の周方向D1において交互に配されたサーボ領域S1およびユーザデータ領域S2を含む。サーボ領域S1には、図2および図3に示すように、相互に離隔する複数の磁性部21、および、磁性部21間に介在する非磁性部22が含まれる。ユーザデータ領域S2には、相互に離隔する複数の磁性部23、および、磁性部23間に介在する非磁性部24が含まれる。このような記録層2には、サーボ領域S1およびユーザデータ領域S2にわたって延び且つ磁気ディスクX1の回転中心Aを共通中心として同心円状に配された複数のトラックが設けられている。各トラックは、磁気ディスクX1の周方向D1に延びる。
【0026】
サーボ領域S1における複数の磁性部21の各々は、垂直磁気異方性を有し、図2に示すように、磁気ディスクX1の径方向D2に延びる形状を有する。径方向D2において、磁性部21は、トラック幅に相当する長さや、複数のトラックにわたる長さを有する。このような磁性部21は、例えば硬磁性材料よりなる。磁性部21のための硬磁性材料としては、例えば、CoPt、CoPtCr、またはSmCoを採用することができる。また、磁性部21の厚さ(図3に示す矢印H方向の長さ)は例えば30〜50nmである。サーボ領域S1においては、磁気ディスクX1の周方向D1に連なる磁性部21においてサーボ情報が保持される。
【0027】
非磁性部22は、例えばSiN、C、SiO2などの非磁性材料よりなる。非磁性部22の存在により、例えば磁性部21間の磁気的相互作用が充分に抑制されて、各磁性部21について充分に高い磁気的孤立度が確保されている。本実施形態では、非磁性部22は、記録層2の第1面2a側において、磁性部21よりも退避している。非磁性部22の厚さ(図3の矢印H方向の長さ)は、本実施形態では磁性部21の厚さより小さく、例えば25〜45nmである。
【0028】
ユーザデータ領域S2における複数の磁性部23の各々は、垂直磁気異方性を有し、図2に示すように、ドット状の単一の記録セルをなすように設けられている。図2に表れている磁性部23の直径は、例えば10〜30nmである。このような磁性部23は、例えば硬磁性材料よりなる。磁性部23のための硬磁性材料としては、例えば、CoPt、CoPtCr、またはSmCoを採用することができる。磁性部23のための磁性材料は、磁性部21のための磁性材料と、同じであってもよいし、異なってもよい。また、磁性部23の厚さ(図3の矢印H方向の長さ)は、例えば30〜50nmである。ユーザデータ領域S2においては、各磁性部23が所定方向に磁化されて、磁気ディスクX1の周方向D1に連なる磁性部23において所定のユーザデータが書き換え可能に記録されている。
【0029】
非磁性部24は、例えばSiN、C、SiO2などの非磁性材料よりなる。非磁性部24の存在により、例えば磁性部23間の磁気的相互作用が充分に抑制されて、各磁性部23について充分に高い磁気的孤立度が確保されている。本実施形態では、非磁性部24は、記録層2の第1面2a側において、磁性部21,23よりも退避しており且つ非磁性部22よりも退避している。非磁性部24の厚さ(図3の矢印H方向の長さ)は、本実施形態では磁性部21,23の厚さ及び非磁性部22の厚さより小さく、例えば20〜40nmである。
【0030】
軟磁性層3は、磁気ディスクX1への書込み時等に保護膜4に対向する記録用の磁気ヘッドからの磁束を再び当該ヘッドに環流させる磁路を効率よく形成するためのものである。このような軟磁性層3は、高透磁率を有して大きな飽和磁化を有するとともに小さな保磁力を有する軟磁性材料よりなる。書込み時には、記録用磁気ヘッドによる記録磁界の印加によって、ユーザデータ領域S2の各磁性部23が所定方向に磁化されるところ、軟磁性層3が存在することにより、磁性部23を磁化反転させるのに必要な実効的な記録磁界を低減させることが可能となる。軟磁性層3のための軟磁性材料としては、例えば、FeC、FeNi、FeCoB、FeCoSiC、またはFeCo−AlOを採用することができる。
【0031】
保護膜4は、記録層2や軟磁性層3を外界から物理的および化学的に保護するための部位であり、例えば、SiN、SiO2、またはダイアモンドライクカーボン(DLC)よりなる。保護膜4の厚さは、例えば1〜5nmである。
【0032】
保護膜4の露出面は、磁気ディスクX1の記録面5をなす。記録面5は、記録層2の第1面2aに追従した凹凸形状を有する。具体的には、記録面5は、サーボ領域S1にて頂面5aを含み且つ凹部5bをなし、ユーザデータ領域S2にて頂面5cを含み且つ凹部5dをなす。記録層2においては、サーボ領域S1の非磁性部22は、上述のように、記録層2の第1面2a側にてサーボ領域S1の磁性部21よりも退避している。そして、ユーザデータ領域S2の非磁性部24は、記録層2の第1面2a側にて、ユーザデータ領域S2の磁性部23よりも退避し、且つ、サーボ領域S1の非磁性部22よりも退避している。そのため、ユーザデータ領域S2における記録面5の凹部5dは、サーボ領域S1における記録面5の凹部5bよりも、深い。すなわち、凹部5dの底面は、凹部5bの底面よりも、記録面5の頂面レベル(記録層2の厚さ方向における頂面5a,5bの位置)から退避している。
【0033】
以上のようなディスク基板1、記録層2、軟磁性層3、および保護膜4を含む磁気ディスクX1の積層構造中には、必要に応じて他の層が含まれてもよい。また、磁気ディスクX1は、記録層2、軟磁性層3、および保護膜4を含む積層構造をディスク基板1の片面または両面に有する。
【0034】
磁気ディスクX1に対する書込みを行うに際しては、図4や図5に示すように記録用の磁気ヘッドたる記録ヘッド6を伴うスライダ7を記録面5に対向させつつ、磁気ディスクX1をその回転中心A(図1に示す)まわりに所定速度で回転させる。図4は、記録ヘッド6を伴うスライダ7が、記録層2のサーボ領域S1に対向している状態を表す。図4(b)は図4(a)の部分拡大図である。図5は、記録ヘッド6を伴うスライダ7が、記録層2のユーザデータ領域S2に対向している状態を表す。図5(b)は図5(a)の部分拡大図である。
【0035】
回転する磁気ディスクX1の記録面5とスライダ7の間には、空気流が生じ、記録ヘッド6を伴うスライダ7は記録面5から浮上する。スライダ7にて記録面5に対向する側の面は、回転する磁気ディスクX1の記録面5とスライダ7の間に、スライダ7を記録面5から離そうとする正圧とスライダ7を記録面5に引き付けようとする負圧とを生ずるための凹凸(図4,5にて省略)を有する。図6は、スライダ7の一平面図であり、スライダ7において記録面5に対向する側の面(ABS;Air Bearing Surface)の一例を表す。図6では、ABSにおける凸部について、斜線ハッチングを付して表す。
【0036】
回転する磁気ディスクX1の記録面5とスライダ7の間に生ずる正圧および負圧のバランスに基づき、記録ヘッド6のヘッド浮上量が定まる。そして、磁気ディスクX1の回転速度が例えば一定である場合、スライダ7と記録面5との間に形成される空間体積が一定に維持される距離、記録ヘッド6を伴うスライダ7は記録面5から浮上する傾向にある。そのため、磁気ディスクX1の回転速度が例えば一定である場合、サーボ領域S1での記録ヘッド6の図4(b)に示す浮上量d1(記録面5の頂面レベルからの距離)より、ユーザデータ領域S2での記録ヘッド6の図5(b)に示す浮上量d2は、小さい。ユーザデータ領域S2にスライダ7が対向するときには、記録面5における深い凹部5dが、記録面5とスライダ7の間の空間体積の一部をなすからである。ユーザデータ領域S2にスライダ7が対向するときに深い凹部5dが記録面―スライダ間の空間体積の一部をなすため、ユーザデータ領域対向時の記録ヘッド6と記録面5の最短距離は、サーボ領域対向時の記録ヘッド6と記録面5の最短距離より短いのである。或は、サーボ領域S1におけるよりも、ユーザデータ領域S2における方が、記録面5の頂面レベルから記録面5の平均レベルが退避しているので、記録面5の頂面レベルと記録ヘッド6の距離は小さくなる、と捉えることもできる。記録面5の平均レベルとは、記録層2の厚さ方向における、記録面5の少なくとも一領域の平均位置である。図4(b)には、サーボ領域S1における記録面5の平均レベル5’を破線で示す。図5(b)には、ユーザデータ領域S2における記録面5の平均レベル5”を破線で示す。
【0037】
ユーザデータ領域S2における記録ヘッド6の浮上量d2が小さいほど、ユーザデータ領域S2における磁性部23に対し、記録ヘッド6の発する記録磁界によって磁気記録しやすい。すなわち、ユーザデータ領域S2における記録ヘッド6の浮上量d2が小さいほど、磁性部23の書換え性は高い。また、サーボ領域S1における記録ヘッド6の浮上量d1が大きいほど、サーボ領域S1における磁性部21は、記録ヘッド6からの漏れ磁界(記録磁界等)によっては磁化反転しにくい。すなわち、サーボ領域S1における記録ヘッド6の浮上量d1が大きいほど、磁性部21の磁化反転は抑制される。
【0038】
以上のように、スライダ7に伴う記録ヘッド6の浮上量がサーボ領域S1よりもユーザデータ領域S2で小さい磁気ディスクX1は、ユーザデータ領域S2の磁性部23について高い書換え性を実現しつつ、サーボ領域S1の磁性部21の磁化反転を抑制するのに適する。
【0039】
磁気ディスクX1において、記録面5は、上述のように、サーボ領域S1にて凹部5bをなす(凹部5bは、ユーザデータ領域S2における凹部5dより浅い)。この凹部5bの深さを調節することにより、サーボ領域対向時の記録ヘッド6の上述の浮上量d1を調整することが可能であり、ユーザデータ領域対向時の記録ヘッド6の上述の浮上量d2と当該浮上量d1との差を調整することが可能である。
【0040】
図7から図11は、磁気ディスクX1の製造方法を表す。本方法においては、まず、図7(a)に示すように、ディスク基板1上に、軟磁性層3、磁性膜2’、およびレジスト膜8を順次形成する。軟磁性層3の形成においては、例えばスパッタリング法により、軟磁性層3に関して上述した軟磁性材料をディスク基板1上に成膜する。磁性膜2’の形成においては、例えばスパッタリング法により、磁性部21,23に関して上述した磁性材料を軟磁性層3上に成膜する。レジスト膜8の形成においては、熱硬化型レジスト材料または紫外線硬化型レジスト材料をスピンコーティング法によって磁性膜2’上に成膜する。
【0041】
次に、図7(b)および図8(a)に示すように、スタンパ9を使用してインプリント工程を行う。スタンパ9は、製造すべき磁気ディスクX1におけるサーボ領域S1に対応する領域S3とユーザデータ領域S2に対応する領域S4とを含む。また、スタンパ9は、転写面9Aを有し、転写面9A側に複数の凹部9aを有する(即ち、転写面9Aは凹凸形状を伴う)。領域S3における複数の凹部9aの開口形状は、磁気ディスクX1における記録層2のサーボ領域S1に含まれる複数の磁性部21に対応したパターンを有する。領域S4における複数の凹部9aの開口形状は、磁気ディスクX1における記録層2のユーザデータ領域S2に含まれる複数の磁性部23に対応したパターンを有する。レジスト膜8として紫外線硬化型レジスト材料よりなるものを採用する場合、スタンパ9としては、紫外線が透過可能なものを使用する。スタンパ9は、例えば石英基板に対して凹部9aを形成することによって作製することができる。
【0042】
本インプリント工程では、このようなスタンパ9の転写面9Aをレジスト膜8に押し付ける。レジスト膜8が熱硬化型レジスト材料よりなる場合、スタンパ9をレジスト膜8に押し付けた状態で加熱してレジスト膜8を硬化させる。レジスト膜8が紫外線硬化型レジスト材料よりなる場合、スタンパ9をレジスト膜8に押し付けた状態でレジスト膜8に対して紫外線を照射してレジスト膜8を硬化させる。このようなインプリント工程によって、転写面9Aの凹凸形状がレジスト膜8に転写されて、レジストマスク8Aが形成される。レジストマスク8Aは、スタンパ9の凹部9aに対応した凸部8aを有する。
【0043】
また、本インプリント工程では、図8(a)に示すように、スタンパ9は磁性膜2’に至らず、磁性膜2’とスタンパ9との間にはレジスト材料が残存するのが好ましい。スタンパ9が磁性膜2’に至ると、形成されるレジストマスク8Aと磁性膜2’との接触面積が低下するなどしてレジストマスク8Aが磁性膜2’から剥離しやすくなってしまう。そのような剥離が生じないように、スタンパ9と磁性膜2’との間にレジスト材料が残されるのが好ましいのである。
【0044】
磁気ディスクX1の製造においては、スタンパ9を使用して行う上述のインプリント工程の後、図8(b)に示すように、スタンパ9をレジストマスク8Aから取り外す。
【0045】
次に、図9(a)に示すように、凸部8aを有するレジストマスク8Aをマスクとして利用して、レジストマスク8Aの側から磁性膜2’に対して異方性ドライエッチングを施すことにより、上述の磁性部21,23をパターン形成する。磁性部21は、ディスク基板1上ないし軟磁性層3上において、記録層2のサーボ領域S1に対応した第1領域に形成される。磁性部23は、ディスク基板1上ないし軟磁性層3上において、記録層2のユーザデータ領域S2に対応した第2領域に形成される。異方性ドライエッチングとしては、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)を採用することができる。DRIEでは、SF6ガスを用いて行うエッチングとC4F8ガスを用いて行う側壁保護とを交互に繰り返すBoschプロセスにおいて、良好な異方性エッチング加工を行うことができる。後出のDRIEについても、このようなBoschプロセスを採用することができる。この後、例えば所定の剥離液を作用させることによって、レジストマスク8Aを除去する。
【0046】
次に、図9(b)に示すように非磁性膜2”を形成する。具体的には、磁性部21,23間の隙間を充填しつつ磁性部21,23を覆うように、非磁性部22,24に関して上述した非磁性材料を堆積させる。
【0047】
次に、図9(c)に示すように、非磁性膜2”上にレジスト膜10を形成する。レジスト膜10の形成においては、熱硬化型レジスト材料または紫外線硬化型レジスト材料をスピンコーティング法によって非磁性膜2”上に成膜する。
【0048】
次に、図10(a)および図10(b)に示すように、スタンパ11を使用してインプリント工程を行う。スタンパ11は、製造すべき磁気ディスクX1におけるサーボ領域S1に対応する領域S5とユーザデータ領域S2に対応する領域S6とを含む。また、スタンパ11は、転写面11Aを有し、この転写面11A側において、領域S5の表面は領域S6の表面よりも退避している。レジスト膜10として紫外線硬化型レジスト材料よりなるものを採用する場合、スタンパ11としては、紫外線が透過可能なものを使用する。スタンパ11は、例えば石英基板に対して領域S5の退避形状を形成することによって作製することができる。
【0049】
本インプリント工程では、このようなスタンパ11の転写面11Aをレジスト膜10に押し付ける。レジスト膜10が熱硬化型レジスト材料よりなる場合、スタンパ11をレジスト膜10に押し付けた状態で加熱してレジスト膜10を硬化させる。レジスト膜10が紫外線硬化型レジスト材料よりなる場合、スタンパ11をレジスト膜10に押し付けた状態でレジスト膜10に対して紫外線を照射してレジスト膜10を硬化させる。このようなインプリント工程によって、転写面11Aの凹凸形状がレジスト膜10に転写されて、レジストマスク10Aが形成される。レジストマスク10Aは、部分10aおよび部分10bを有する。部分10aは、磁気ディスクX1の記録層2のサーボ領域S1に対応するパターン形状を有する。部分10bは、記録層2のユーザデータ領域S2に対応するパターン形状を有し、部分10aより薄い。
【0050】
磁気ディスクX1の製造においては、スタンパ11を使用して行う上述のインプリント工程の後、スタンパ11をレジストマスク10Aから取り外す。その後、図10(c)に示すように、部分10bを除去する。例えば、プラズマエッチングによって部分10bを除去することができる。
【0051】
次に、図11(a)に示すように、レジストマスク10Aの部分10aをマスクとして利用して、レジストマスク10Aの側から非磁性膜2”に対して異方性ドライエッチングを施す。異方性ドライエッチングとしては、DRIEを採用することができる。
【0052】
次に、図11(b)に示すように、レジストマスク10Aないし部分10aを除去する。例えば所定の剥離液を作用させることによって、レジストマスク10Aを除去することができる。
【0053】
次に、図11(c)に示すように、非磁性膜2”に対して異方性ドライエッチングを施して、上述の非磁性部22,24を形成する。本工程にて、記録層2が形成されることとなる。異方性ドライエッチングとしては、DRIEを採用することができる。
【0054】
次に、図11(d)に示すように保護膜4を形成する。保護膜4の形成においては、例えばスパッタリング法により、保護膜4に関して上述した材料を記録層2上に成膜する。以上のようにして、上述の磁気ディスクX1を適切に製造することができる。
【0055】
本方法においては、磁性部21,23をパターニングする際に必要なマスク(所定の凸部8aを有するレジストマスク8A)の形成にあたり、スタンパ9を使用して行うインプリント法を採用するため、電子ビーム描画装置を使用する必要はない。すなわち、磁気ディスクX1ごとの製造過程において、長時間にわたる電子ビーム描画装置による露光処理を行う必要はない。したがって、本方法は、磁気ディスクX1を効率よく製造するのに適し、磁気ディスクX1の量産化を図りやすい。
【0056】
図12は、本発明の第2の実施形態に係る磁気ディスクX2を表す。図12は、磁気ディスクX2の部分拡大平面図であり、第1の実施形態に係る上述の磁気ディスクX1にとっての図3に相当する。
【0057】
磁気ディスクX2は、ディスク基板1、記録層2、軟磁性層3、および保護膜4’を含む積層構造を有する、情報記録と情報再生とを実行可能なBPMである。磁気ディスクX2は、保護膜4に代えて保護膜4’を備える点において、磁気ディスクX1と異なる。
【0058】
保護膜4’は、記録層2や軟磁性層3を外界から物理的および化学的に保護するための部位であり、部分4aおよび部分4bを含む。部分4aは、記録層2のサーボ領域S1を覆い、部分4bより厚い。部分4aの厚さは、部分4bより厚い限りにおいて、例えば2〜10nmである。部分4bは、記録層2のユーザデータ領域S2を覆う。部分4bの厚さは、例えば1〜5nmである。このような保護膜4’は、例えば、SiN、SiO2、またはダイアモンドライクカーボン(DLC)よりなる。
【0059】
保護膜4’の露出面は、磁気ディスクX2の記録面5をなす。磁気ディスクX2の記録面5は、磁気ディスクX1の記録面5と同様に、サーボ領域S1にて頂面5aを含み且つ凹部5bをなし、ユーザデータ領域S2にて頂面5cを含み且つ凹部5dをなす。磁気ディスクX2の記録面5の凹部5dは、磁気ディスクX1の記録面5の凹部5dと同様に、サーボ領域S1における記録面5の凹部5bよりも、深い。
【0060】
保護膜4’以外の磁気ディスクX2の構成は、保護膜4以外の磁気ディスクX1の構成と同じである。ディスク基板1、記録層2、軟磁性層3、および保護膜4’を含む磁気ディスクX2の積層構造中には、必要に応じて他の層が含まれてもよい。また、磁気ディスクX2は、記録層2、軟磁性層3、および保護膜4’を含む積層構造をディスク基板1の片面または両面に有する。
【0061】
磁気ディスクX2に対する書込み時には、磁気ディスクX1に対する書込みについて図4および図5を参照して上述したのと同様に、記録ヘッドを伴うスライダ(図示略)を記録面5に対向させつつ、磁気ディスクX2をその回転中心まわりに所定速度で回転させる。磁気ディスクX2は、磁気ディスクX1と同様に、ユーザデータ領域S2における記録面5に深い凹部5dを有する。そのため、磁気ディスクX1に対する書込み関して上述したのと同様の理由で、磁気ディスクX2の回転速度が例えば一定である場合には、サーボ領域S1での記録ヘッドの浮上量より、ユーザデータ領域S2での記録ヘッドの浮上量は小さい。したがって、磁気ディスクX2は、磁気ディスクX1に関して上述したのと同様の理由で、ユーザデータ領域S2の磁性部23について高い書換え性を実現しつつ、サーボ領域S1の磁性部21の磁化反転を抑制するのに適する。
【0062】
磁気ディスクX2においては、保護膜4’の部分4bが薄いほど、記録時に記録ヘッドによって印加される記録磁界の、記録層2のユーザデータ領域S2における実効的な強度は、大きい傾向にある。また、磁気ディスクX2においては、保護膜4’の部分4aが厚いほど、記録ヘッドからの漏れ磁界(記録磁界等)の、記録層2のサーボ領域S1における実効的な強度は、小さい傾向にある。保護膜4’において記録層2のサーボ領域S1を覆う部分4aがユーザデータ領域S2を覆う部分4bよりも厚いという構成は、ユーザデータ領域S2の磁性部23について高い書換え性を実現しつつサーボ領域S1の磁性部21の磁化反転を抑制するのに資する。
【0063】
図13から図14は、磁気ディスクX2の製造方法を表す。本方法においては、まず、図7から図11を参照して上述した過程を経て磁気ディスクX1を製造した後、図13(a)に示すように、磁気ディスクX1の保護膜4上にレジスト膜12を形成する。レジスト膜12は例えばスピンオンガラス(SOG)よりなる。レジスト膜12の形成においては、例えば、所定のガラス材料をスピンコーティング法によって磁気ディスクX1の保護膜4上に成膜する。
【0064】
次に、図13(b)および図13(c)に示すように、スタンパ13を使用してインプリント工程を行う。スタンパ13は、製造すべき磁気ディスクX2におけるサーボ領域S1に対応する領域S7とユーザデータ領域S2に対応する領域S8とを含む。また、スタンパ13は、転写面13Aを有し、この転写面13A側において、領域S7の表面は領域S8の表面よりも退避している。
【0065】
本インプリント工程では、このようなスタンパ13の転写面13Aをレジスト膜12に押し付ける。レジスト膜12のための材料としてSOGを採用する場合、スタンパ13をレジスト膜12に押し付けた状態で加熱してレジスト膜12を硬化させる。このようなインプリント工程によって、転写面13Aの凹凸形状がレジスト膜12に転写されて、レジストマスク12Aが形成される。レジストマスク12Aは、部分12aおよび部分12bを有する。部分12aは、磁気ディスクX2の記録層2のサーボ領域S1に対応するパターン形状を有する。部分12bは、記録層2のユーザデータ領域S2に対応するパターン形状を有し、部分12aより薄い。
【0066】
磁気ディスクX2の製造においては、スタンパ13を使用して行う上述のインプリント工程の後、スタンパ13をレジストマスク12Aから取り外す。その後、図14(a)に示すように、部分12bを除去する。例えば、レジストマスク12Aに対してDRIEを施すことによって、部分12aを残存させつつ薄い部分12bを除去することができる。
【0067】
次に、図14(b)に示すように、レジストマスク12Aないし部分12aをマスクとして利用して、保護膜4に対してエッチング処理を施す。エッチング手法としては、例えばプラズマエッチングを採用することができる。これにより、記録層2のユーザデータ領域S2上にある保護膜4を除去する。
【0068】
次に、図14(c)に示すように、レジストマスク12Aないし部分12aを除去する。除去手法としては、例えばDRIEを採用することができる。
【0069】
次に、図14(d)に示すように保護膜4’を形成する。例えば、記録層2上および残存する保護膜4上にわたり、保護膜4’に関して上述した材料をスパッタリング法によって成膜することにより、保護膜4’を形成することができる。以上のようにして、上述の磁気ディスクX2を適切に製造することができる。
【0070】
図15から図17は、本発明の第3の実施形態に係る磁気ディスクX3を表す。図15は、磁気ディスクX3の平面図である。図16は、磁気ディスクX3の部分拡大平面図である。図17は、図16の線XVII−XVIIに沿った断面図である。
【0071】
磁気ディスクX3は、ディスク基板1、記録層2A、軟磁性層3、および保護膜4A(図15および図16では省略)を含む積層構造を有する、情報記録と情報再生とを実行可能なBPMである。磁気ディスクX3は、記録層2に代えて記録層2Aを備える点、および、保護膜4に代えて保護膜4Aを備える点において、磁気ディスクX1と異なる。
【0072】
記録層2Aは、図17に示すように、保護膜4A側の第1面2aおよびディスク基板1側の第2面2bを有し、図15に示すように、磁気ディスクX3の周方向D1において交互に配されたサーボ領域S1およびユーザデータ領域S2を含む。記録層2Aのサーボ領域S1には、図16および図17に示すように、相互に離隔する複数の磁性部21、および、磁性部21間に介在する非磁性部22が含まれる。記録層2Aのユーザデータ領域S2には、相互に離隔する複数の磁性部23、および、磁性部23間に介在する非磁性部24が含まれる。このような記録層2Aには、サーボ領域S1およびユーザデータ領域S2にわたって延び且つ磁気ディスクX3の回転中心Aを共通中心として同心円状に配された複数のトラックが設けられている。各トラックは、磁気ディスクX3の周方向D1に延びる。
【0073】
サーボ領域S1における複数の磁性部21の各々は、垂直磁気異方性を有し、図16に示すように、磁気ディスクX3の径方向D2に延びる形状を有する。径方向D2において、磁性部21は、トラック幅に相当する長さや、複数のトラックにわたる長さを有する。このような磁性部21は、例えば硬磁性材料よりなる。磁性部21のための硬磁性材料としては、例えば、CoPt、CoPtCr、またはSmCoを採用することができる。また、磁性部21の厚さ(図17に示す矢印H方向の長さ)は例えば30〜50nmである。サーボ領域S1においては、磁気ディスクX3の周方向D1に連なる磁性部21においてサーボ情報が保持される。
【0074】
非磁性部22は、例えばSiN、C、SiO2などの非磁性材料よりなる。非磁性部22の存在により、例えば磁性部21間の磁気的相互作用が充分に抑制されて、各磁性部21について充分に高い磁気的孤立度が確保されている。本実施形態では、非磁性部22は、記録層2Aの第1面2a側において、磁性部21と面一である。
【0075】
ユーザデータ領域S2における複数の磁性部23の各々は、垂直磁気異方性を有し、図16に示すように、ドット状の単一の記録セルをなすように設けられている。図16に表れている磁性部23の直径は、例えば10〜30nmである。このような磁性部23は、例えば硬磁性材料よりなる。磁性部23のための硬磁性材料としては、例えば、CoPt、CoPtCr、またはSmCoを採用することができる。磁性部23のための磁性材料は、磁性部21のための磁性材料と、同じであってもよいし、異なってもよい。また、磁性部23の厚さ(図17の矢印H方向の長さ)は、例えば30〜50nmである。ユーザデータ領域S2においては、各磁性部23が所定方向に磁化されて、磁気ディスクX3の周方向D1に連なる磁性部23において所定のユーザデータが書き換え可能に記録されている。
【0076】
非磁性部24は、例えばSiN、C、SiO2などの非磁性材料よりなる。非磁性部24の存在により、例えば磁性部23間の磁気的相互作用が充分に抑制されて、各磁性部23について充分に高い磁気的孤立度が確保されている。本実施形態では、非磁性部24は、記録層2Aの第1面2a側において、磁性部21,23および非磁性部22よりも退避している。非磁性部24の厚さ(図17の矢印H方向の長さ)は、本実施形態では磁性部21,23の厚さ及び非磁性部22の厚さより小さく、例えば20〜40nmである。
【0077】
保護膜4Aは、記録層2Aや軟磁性層3を外界から物理的および化学的に保護するための部位であり、例えば、SiN、SiO2、またはダイアモンドライクカーボン(DLC)よりなる。保護膜4Aの厚さは、例えば1〜5nmである。
【0078】
保護膜4Aの露出面は、磁気ディスクX3の記録面5をなす。記録面5は、記録層2Aの第1面2aに追従した凹凸形状を有する。具体的には、記録面5は、ユーザデータ領域S2にて頂面5cを含み且つ凹部5dをなす。記録層2Aにおいては、サーボ領域S1の非磁性部22は、上述のように、記録層2Aの第1面2a側にてサーボ領域S1の磁性部21と面一である。そして、ユーザデータ領域S2の非磁性部24は、記録層2Aの第1面2a側にて、ユーザデータ領域S2の磁性部23よりも退避し、且つ、サーボ領域S1の非磁性部22よりも退避している。そのため、記録面5は、サーボ領域S1にて平らであり、且つ、ユーザデータ領域S2にて凹部5dをなす。
【0079】
ディスク基板1および軟磁性層3の構成は、磁気ディスクX1に関して上述したのと同様である。
【0080】
以上のようなディスク基板1、記録層2A、軟磁性層3、および保護膜4Aを含む磁気ディスクX3の積層構造中には、必要に応じて他の層が含まれてもよい。また、磁気ディスクX3は、記録層2A、軟磁性層3、および保護膜4Aを含む積層構造をディスク基板1の片面または両面に有する。
【0081】
磁気ディスクX3に対する書込みを行うに際しては、図18や図19に示すように記録用の磁気ヘッドたる記録ヘッド6を伴うスライダ7を記録面5に対向させつつ、磁気ディスクX3をその回転中心A(図15に示す)まわりに所定速度で回転させる。図18は、記録ヘッド6を伴うスライダ7が、記録層2Aのサーボ領域S1に対向している状態を表す。図18(b)は図18(a)の部分拡大図である。図19は、記録ヘッド6を伴うスライダ7が、記録層2Aのユーザデータ領域S2に対向している状態を表す。図19(b)は図19(a)の部分拡大図である。
【0082】
回転する磁気ディスクX3の記録面5とスライダ7の間には、空気流が生じ、記録ヘッド6を伴うスライダ7は記録面5から浮上する。スライダ7にて記録面5に対向する側の面は、回転する磁気ディスクX3の記録面5とスライダ7の間に、スライダ7を記録面5から離そうとする正圧とスライダ7を記録面5に引き付けようとする負圧とを生ずるための凹凸(図18,19にて省略)を有する。スライダ7において記録面5に対向する側の面(ABS)の凹凸構造は、図6を参照して上述したとおりである。
【0083】
回転する磁気ディスクX3の記録面5とスライダ7の間に生ずる正圧および負圧のバランスに基づき、記録ヘッド6のヘッド浮上量が定まる。そして、磁気ディスクX3の回転速度が例えば一定である場合、スライダ7と記録面5との間に形成される空間体積が一定に維持される距離、記録ヘッド6を伴うスライダ7は記録面5から浮上する傾向にある。そのため、磁気ディスクX3の回転速度が例えば一定である場合、サーボ領域S1での記録ヘッド6の図18(b)に示す浮上量d1(記録面5の頂面レベルからの距離)より、ユーザデータ領域S2での記録ヘッド6の図19(b)に示す浮上量d2は、小さい。ユーザデータ領域S2にスライダ7が対向するときには、記録面5における凹部5dが、記録面5とスライダ7の間の空間体積の一部をなすからである。ユーザデータ領域S2にスライダ7が対向するときに凹部5dが記録面5―スライダ7間の空間体積の一部をなすため、ユーザデータ領域対向時の記録ヘッド6と記録面5の最短距離は、サーボ領域対向時の記録ヘッド6と記録面5の最短距離より短いのである。或は、サーボ領域S1におけるよりも、ユーザデータ領域S2における方が、記録面5の頂面レベルから記録面5の平均レベルが退避しているので、記録面5の頂面レベルと記録ヘッド6の距離は小さくなる、と捉えることもできる。サーボ領域S1では、記録面5と、記録面5の頂面レベルと、記録面5の平均レベルとは、一致する。図19(b)には、ユーザデータ領域S2における記録面5の平均レベル5”を破線で示す。
【0084】
ユーザデータ領域S2における記録ヘッド6の浮上量d2が小さいほど、ユーザデータ領域S2における磁性部23に対し、記録ヘッド6の発する記録磁界によって磁気記録しやすい。すなわち、ユーザデータ領域S2における記録ヘッド6の浮上量d2が小さいほど、磁性部23の書換え性は高い。また、サーボ領域S1における記録ヘッド6の浮上量d1が大きいほど、サーボ領域S1における磁性部21は、記録ヘッド6からの漏れ磁界(記録磁界等)によっては磁化反転しにくい。すなわち、サーボ領域S1における記録ヘッド6の浮上量d1が大きいほど、磁性部21の磁化反転は抑制される。
【0085】
以上のように、スライダ7に伴う記録ヘッド6の浮上量がサーボ領域S1よりもユーザデータ領域S2で小さい磁気ディスクX3は、ユーザデータ領域S2の磁性部23について高い書換え性を実現しつつ、サーボ領域S1の磁性部21の磁化反転を抑制するのに適する。
【0086】
図20は、磁気ディスクX3の製造方法の一部の工程を表す。本方法においては、まず、第1の実施形態に関して図7(a)から図11(b)までを参照して上述した過程を経て、図20(a)に示す構造体を得る。図20(a)に示す構造体では、ディスク基板1上に軟磁性層3が設けられ、軟磁性層3上に磁性部21,23および非磁性膜2”が設けられている。
【0087】
次に、図20(b)に示すように、非磁性膜2”に対して異方性ドライエッチングを施して、上述の非磁性部22,24を形成する。本工程では、磁性部21と面一の非磁性部22が形成された時点でエッチング処理を停止する。本工程にて、記録層2Aが形成されることとなる。異方性ドライエッチングとしては、DRIEを採用することができる。
【0088】
次に、図20(c)に示すように保護膜4Aを形成する。保護膜4Aの形成においては、例えばスパッタリング法により、保護膜4Aに関して上述した材料を記録層2A上に成膜する。以上のようにして、上述の磁気ディスクX3を適切に製造することができる。
【0089】
本方法においては、磁性部21,23をパターニングする際に必要なマスク(所定の凸部8aを有する図8(a)に示すレジストマスク8A)の形成にあたり、スタンパ9を使用して行うインプリント法を採用するため、電子ビーム描画装置を使用する必要はない。すなわち、磁気ディスクX3ごとの製造過程において、長時間にわたる電子ビーム描画装置による露光処理を行う必要はない。したがって、本方法は、磁気ディスクX3を効率よく製造するのに適し、磁気ディスクX3の量産化を図りやすい。
【0090】
図21は、本発明の第4の実施形態に係る磁気ディスクX4を表す。図21は、磁気ディスクX4の部分拡大平面図であり、第3の実施形態に係る上述の磁気ディスクX3にとっての図17に相当する。
【0091】
磁気ディスクX4は、ディスク基板1、記録層2A、軟磁性層3、および保護膜4A’を含む積層構造を有する、情報記録と情報再生とを実行可能なBPMである。磁気ディスクX4は、保護膜4Aに代えて保護膜4A’を備える点において、磁気ディスクX3と異なる。
【0092】
保護膜4A’は、記録層2Aや軟磁性層3を外界から物理的および化学的に保護するための部位であり、部分4aおよび部分4bを含む。部分4aは、記録層2Aのサーボ領域S1を覆い、部分4bより厚い。部分4aの厚さは、部分4bより厚い限りにおいて、例えば2〜10nmである。部分4bは、記録層2Aのユーザデータ領域S2を覆う。部分4bの厚さは、例えば1〜5nmである。このような保護膜4A’は、例えば、SiN、SiO2、またはダイアモンドライクカーボン(DLC)よりなる。
【0093】
保護膜4A’の露出面は、磁気ディスクX4の記録面5をなす。磁気ディスクX4の記録面5は、磁気ディスクX3の記録面5と同様に、サーボ領域S1にて平らであり、ユーザデータ領域S2にて頂面5cを含み且つ凹部5dをなす。
【0094】
保護膜4A’以外の磁気ディスクX4の構成は、保護膜4A以外の磁気ディスクX3の構成と同じである。ディスク基板1、記録層2A、軟磁性層3、および保護膜4A’を含む磁気ディスクX4の積層構造中には、必要に応じて他の層が含まれてもよい。また、磁気ディスクX4は、記録層2A、軟磁性層3、および保護膜4A’を含む積層構造をディスク基板1の片面または両面に有する。
【0095】
磁気ディスクX4に対する書込み時には、磁気ディスクX3に対する書込みについて図18および図19を参照して上述したのと同様に、記録ヘッドを伴うスライダ(図示略)を記録面5に対向させつつ、磁気ディスクX4をその回転中心まわりに所定速度で回転させる。磁気ディスクX4は、磁気ディスクX3と同様に、ユーザデータ領域S2における記録面5に凹部5dを有する。そのため、磁気ディスクX3に対する書込み関して上述したのと同様の理由で、磁気ディスクX4の回転速度が例えば一定である場合には、サーボ領域S1での記録ヘッドの浮上量より、ユーザデータ領域S2での記録ヘッドの浮上量は小さい。したがって、磁気ディスクX4は、磁気ディスクX3に関して上述したのと同様の理由で、ユーザデータ領域S2の磁性部23について高い書換え性を実現しつつ、サーボ領域S1の磁性部21の磁化反転を抑制するのに適する。
【0096】
磁気ディスクX4においては、保護膜4A’の部分4bが薄いほど、記録時に記録ヘッド(図示略)によって印加される記録磁界の、記録層2Aのユーザデータ領域S2における実効的な強度は、大きい傾向にある。また、磁気ディスクX4においては、保護膜4A’の部分4aが厚いほど、記録ヘッドからの漏れ磁界(記録磁界等)の、記録層2Aのサーボ領域S1における実効的な強度は、小さい傾向にある。保護膜4A’において記録層2Aのサーボ領域S1を覆う部分4aがユーザデータ領域S2を覆う部分4bよりも厚いという構成は、ユーザデータ領域S2の磁性部23について高い書換え性を実現しつつサーボ領域S1の磁性部21の磁化反転を抑制するのに資する。
【0097】
図22から図23は、磁気ディスクX4の製造方法を表す。本方法においては、まず、上述したように磁気ディスクX3を製造した後、図22(a)に示すように、磁気ディスクX3の保護膜4A上にレジスト膜12を形成する。レジスト膜12は例えばスピンオンガラス(SOG)よりなる。レジスト膜12の形成においては、例えば、所定のガラス材料をスピンコーティング法によって磁気ディスクX3の保護膜4A上に成膜する。
【0098】
次に、図22(b)および図22(c)に示すように、スタンパ13を使用してインプリント工程を行う。スタンパ13は、製造すべき磁気ディスクX4におけるサーボ領域S1に対応する領域S7とユーザデータ領域S2に対応する領域S8とを含む。また、スタンパ13は、転写面13Aを有し、この転写面13A側において、領域S7の表面は領域S8の表面よりも退避している。
【0099】
本インプリント工程では、このようなスタンパ13の転写面13Aをレジスト膜12に押し付ける。レジスト膜12のための材料としてSOGを採用する場合、スタンパ13をレジスト膜12に押し付けた状態で加熱してレジスト膜12を硬化させる。このようなインプリント工程によって、転写面13Aの凹凸形状がレジスト膜12に転写されて、レジストマスク12Aが形成される。レジストマスク12Aは、部分12aおよび部分12bを有する。部分12aは、磁気ディスクX4の記録層2Aのサーボ領域S1に対応するパターン形状を有する。部分12bは、記録層2Aのユーザデータ領域S2に対応するパターン形状を有し、部分12aより薄い。
【0100】
磁気ディスクX4の製造においては、スタンパ13を使用して行う上述のインプリント工程の後、スタンパ13をレジストマスク12Aから取り外す。その後、図23(a)に示すように、部分12bを除去する。例えば、レジストマスク12Aに対してDRIEを施すことによって、部分12aを残存させつつ薄い部分12bを除去することができる。
【0101】
次に、図23(b)に示すように、レジストマスク12Aないし部分12aをマスクとして利用して、保護膜4Aに対してエッチング処理を施す。エッチング手法としては、例えばプラズマエッチングを採用することができる。これにより、記録層2Aのユーザデータ領域S2上にある保護膜4Aを除去する。
【0102】
次に、図23(c)に示すように、レジストマスク12Aないし部分12aを除去する。除去手法としては、例えばDRIEを採用することができる。
【0103】
次に、図23(d)に示すように保護膜4A’を形成する。例えば、記録層2A上および残存する保護膜4A上にわたり、保護膜4A’に関して上述した材料をスパッタリング法によって成膜することにより、保護膜4A’を形成することができる。以上のようにして、上述の磁気ディスクX4を適切に製造することができる。
【0104】
図24は、本発明の第5の実施形態に係る磁気記録装置Yを表す。磁気記録装置Yは、複数の磁気ディスク100と、磁気ヘッド101と、スピンドルモータ102と、スイングアーム103と、アクチュエータ104と、ディスクコントローラ105とを備える。
【0105】
複数の磁気ディスク100は、所定の間隔を空けて配されている。各磁気ディスク100は、上述の磁気ディスクX1〜X4のいずれかであり、表裏両面に記録層を有する。磁気ヘッド101は、磁気ディスク100に対してデータを読み書きするためのものであり、磁気ディスク100の記録面と対向するように各スイングアーム103の先端に設けられている。このような磁気ヘッド101には、書き込み用ないし記録用のヘッド部(図示略)と読み取り用ないし再生用のヘッド部(図示略)とが磁気ディスク100の周方向に離隔して設けられている。スピンドルモータ102は、磁気ディスク100を高速回転させる回転駆動手段である。スイングアーム103は、磁気ディスク100の径方向において磁気ヘッド101を移動させるためのものであり、アクチュエータ104によって動作させられる。アクチュエータ104は、ボイスコイルモータなどからなる。ディスクコントローラ105は、磁気ヘッド101、スピンドルモータ102、およびアクチュエータ104を駆動制御するためのものである。このようなディスクコントローラ105は、例えば、CPUやメモリなどを備えたマイクロコンピュータよりなる。
【0106】
このような磁気記録装置Yにおける情報記録時には、磁気記録装置Yの各部が協働して、磁気ヘッド101の書き込み用ヘッド部によって磁気ディスク100の記録層のユーザデータ領域にデータが書き込まれる。また、磁気記録装置Yにおける情報再生時には、磁気記録装置Yの各部が協働して、磁気ヘッド101の読み取り用ヘッド部によって磁気ディスク100の記録層のユーザデータ領域からデータが読み取られる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る磁気ディスクの平面図である。
【図2】図1に示す磁気ディスクの部分拡大平面図である。
【図3】図2の線III−IIIに沿った断面図である。
【図4】第1の実施形態において、記録層のサーボ領域にスライダ(記録ヘッドを伴う)が対向している状態を表す。(b)は(a)の部分拡大図である。
【図5】第1の実施形態において、記録層のユーザデータ領域にスライダ(記録ヘッドを伴う)が対向している状態を表す。(b)は(a)の部分拡大図である。
【図6】スライダのABS(Air Bearing Surface)を表す平面図である。
【図7】第1の実施形態に係る磁気ディスクの製造方法における一部の工程を表す。
【図8】図7の後に続く工程を表す。
【図9】図8の後に続く工程を表す。
【図10】図9の後に続く工程を表す。
【図11】図10の後に続く工程を表す。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る磁気ディスクの部分拡大断面図である。第1の実施形態に係る磁気ディスクにとっての図3に相当する。
【図13】図12に示す磁気ディスクの製造方法における一部の工程を表す。
【図14】図13の後に続く工程を表す。
【図15】本発明の第3の実施形態に係る磁気ディスクの平面図である。
【図16】図15に示す磁気ディスクの部分拡大平面図である。
【図17】図16の線XVII−XVIIに沿った断面図である。
【図18】第3の実施形態において、記録層のサーボ領域にスライダ(記録ヘッドを伴う)が対向している状態を表す。(b)は(a)の部分拡大図である。
【図19】第3の実施形態において、記録層のユーザデータ領域にスライダ(記録ヘッドを伴う)が対向している状態を表す。(b)は(a)の部分拡大図である。
【図20】第3の実施形態に係る磁気ディスクの製造方法における一部の工程を表す。
【図21】本発明の第4の実施形態に係る磁気ディスクの部分拡大断面図である。第3の実施形態に係る磁気ディスクにとっての図17に相当する。
【図22】図21に示す磁気ディスクの製造方法における一部の工程を表す。
【図23】図22の後に続く工程を表す。
【図24】本発明の第5の実施形態に係る磁気記録装置を表す。
【図25】従来のビットパターンドメディアたる磁気ディスクの部分拡大平面図である。
【図26】図25の線XXVI−XXVIに沿った断面図である。
【図27】図25に示す磁気ディスクの製造方法における一部の工程を表す。
【図28】図27の後に続く工程を表す。
【図29】図28の後に続く工程を表す。
【符号の説明】
【0108】
X1,X2,X3,X4,80 磁気ディスク
S1 サーボ領域
S2 ユーザデータ領域
1,81 ディスク基板
2,2A,82 記録層
2a 第1面
2b 第2面
21,23,82A,82B 磁性部
22,24,82C 非磁性部
3 軟磁性層
4,4’,4A,4A’,83 保護膜
4a,4b 部分
2’ 磁性膜
2” 非磁性膜
8,10,12 レジスト膜
9,11,13 スタンパ
Y 磁気記録装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターニングされた磁性部を記録層に有する磁気記録媒体、そのような磁気記録媒体を備えた磁気記録装置、および、そのような磁気記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクなどの記憶装置を構成するための記録媒体として、磁気ディスク(磁気記録媒体)が知られている。磁気ディスクは、ディスク基板と所定の磁性構造を有する記録層とを含む積層構造を有する。コンピュータシステム等における情報処理量の増大に伴い、磁気ディスクについては高記録密度化の要求が高まっている。
【0003】
磁気ディスクの技術分野においては、高記録密度化を図るのに適した磁気ディスクとして、いわゆるビットパターンドメディア(BPM)が知られている。BPMたる磁気ディスクについては、例えば下記の特許文献1〜3に記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−100499号公報
【特許文献2】特開2008−123638号公報
【特許文献3】特開2008−234774号公報
【0005】
図25および図26は、BPMたる従来の磁気ディスク80を表す。図25は、磁気ディスク80の部分拡大平面図である。図26は、図25の線XXVI−XXVIに沿った断面図である。
【0006】
磁気ディスク80は、ディスク基板81、記録層82、および保護膜83(図25では図示略)からなる積層構造を有する。記録層82は、磁気ディスク80の周方向D1に隣り合って交互に配されたサーボ領域S1およびユーザデータ領域S2を含み、相互に離隔する複数の磁性部82Aと、相互に離隔する複数の磁性部82Bと、これらの間に介在する非磁性部82Cとからなる。磁性部82Aは、垂直磁気異方性を有し、サーボ領域S1に含まれる。サーボ領域S1において周方向D1に連なる磁性部82Aにおいてサーボ情報が保持される。図25に示すように、磁性部82Aは磁気ディスク80の径方向D2に延びる形状を有する。径方向D2において、磁性部82Aは、トラック幅に相当する長さや、複数のトラックにわたる長さを有する。一方、磁性部82Bは、垂直磁気異方性を有し、ユーザデータ領域S2に含まれる。ユーザデータ領域S2における複数の磁性部82Bの各々は図25に示すようにドット状の単一の記録セルをなすように設けられ、各磁性部82Bが所定方向に磁化されて、周方向D1に連なる磁性部82Bにおいて所定のユーザデータが記録されている。BPMたる磁気ディスク80では、記録セルをなすための磁性部82Bよりも、サーボ情報をなすための上述の磁性部82Aは、磁気ディスク80の径方向D2において長い。
【0007】
図27から図29は、従来の磁気ディスク80の製造方法を表す。磁気ディスク80の製造においては、まず、図27(a)に示すように、垂直磁気異方性を有する磁性膜82’がディスク基板81上に形成される。次に、図27(b)に示すように、スピンコーティング法により、磁性膜82’上に所定のレジスト膜84が形成される。次に、図27(c)および図28(a)に示すように、スタンパ85を使用したインプリント工程が行われる。スタンパ85は複数の凹部85aを有する。凹部85aは、上述の記録層82における磁性部82A,82Bに対応するパターン形状を有する。本工程では、このようなスタンパ85がレジスト膜84に押し付けられる。これにより、スタンパ85の凹凸情報がレジスト膜84に転写されて、磁性膜82’上にレジストパターン84Aが形成される。レジストパターン84Aは、上述の記録層82における磁性部82A,82Bに対応するパターン形状を有する。インプリント工程の後、レジストパターン84Aからスタンパ85が取り外される。
【0008】
本方法では、次に、図28(b)に示すように、レジストパターン84Aがマスクとして利用されて磁性膜82’に対してドライエッチングが施され、磁性膜82’がパターニングされる。これにより、上述の磁性部82A,82Bがパターン形成されることとなる。次に、図29(a)に示すように、レジストパターン84Aが除去される。次に、図29(b)に示すように、磁性部82A,82B間に非磁性部82Cが形成される。次に、図29(c)に示すように、保護膜83が形成される。以上のような方法により、パターニングされた磁性部82A,82Bを有する従来の磁気ディスク80は製造される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
磁気ディスク80において、サーボ領域S1に含まれる磁性部82Aと、ユーザデータ領域S2に含まれる磁性部82Bとは、上述のように同じ磁性膜82’に由来して形成され、同じ組成の磁性材料よりなる。しかしながら、磁性部82Aの保磁力と磁性部82Bの保磁力とは有意に異なる。磁性部82A,82Bは同じ組成の磁性材料よりなるけれども、磁性部82Aの保磁力と磁性部82Bの保磁力とは有意に異なるのである。
【0010】
膜状であって垂直磁気異方性を有する磁性部の保磁力は、当該磁性部のパターン形状によって異なり得るところ、当該磁性部の磁気的な孤立度が高いほど、当該磁性部の保磁力は高い傾向にあることが知られている。すなわち、膜状であって垂直磁気異方性を有する磁性部の広がり面積が大きいほど、当該磁性部の保磁力は小さい傾向にあることが知られている。そして、膜状であって垂直磁気異方性を有する磁性部の保磁力は、当該磁性部における磁化反転の生じやすさに影響を与える。保磁力が小さいほど、磁性部は磁化反転しやすい。
【0011】
従来の磁気ディスク80においては、サーボ領域S1に含まれる磁性部82Aは、上述のように径方向D2に延びる形状を有し、ユーザデータ領域S2に含まれるドット状の磁性部82Bよりも、広がり面積が大きい。そのため、磁性部82Aの保磁力は、磁性部82Bの保磁力よりも有意に小さい。
【0012】
サーボ領域S1の磁性部82Aについて、磁気記録装置における記録用の磁気ヘッドからの漏れ磁界などの磁気的外乱の作用によって磁化反転が生じない程度に保磁力を大きく設定する場合、磁性部82Aよりも磁性部82Bは更に保磁力が大きい。このような高保磁力の磁性部82Bに対しては、記録用磁気ヘッドによって磁気記録しにくい(即ち、この場合の磁性部82Bは書換え性が低い)。高保磁力の磁性部82Bを磁化反転させて書換えるためには、比較的大きな記録磁界を印加する必要があるからである。
【0013】
一方、ユーザデータ領域S2の磁性部82Bについて、記録用磁気ヘッドによって比較的小さな記録磁界で磁化方向を反転可能な程度に保磁力を小さく設定する場合、磁性部82Bよりも磁性部82Aは更に保磁力が小さい。この場合、磁性部82Aは、例えば、記録用磁気ヘッドによる磁気ディスク80への書き込み処理に際し、当該ヘッドからの漏れ磁界などの磁気的外乱の作用によって磁化反転してしまうことがある。サーボ領域S1にてサーボ情報を保持する複数の磁性部82Aにおいて、磁化方向が本来的な方向から反転している磁性部82Aが存在すると、再生装置における再生用磁気ヘッドが当該サーボ領域S1において適切なサーボ情報を読み取ることができない。すなわち、再生装置においてサーボ情報検出エラーが多発して好ましくない。
【0014】
本発明は、以上のような事情の下で考え出されたものである。本発明の目的は、記録層のサーボ領域およびユーザデータ領域の各々において複数の磁性部が離隔して設けられた磁気記録媒体において、ユーザデータ領域の磁性部について高い書換え性を実現しつつ、サーボ領域の磁性部の磁化反転を抑制することである。本発明の他の目的は、そのような磁気記録媒体を備える磁気記録装置、および、そのような磁気記録媒体を製造するための方法を、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の側面によると磁気記録媒体が提供される。この磁気記録媒体は、第1面および当該第1面とは反対の第2面を有し且つサーボ領域およびユーザデータ領域を含む記録層を備える。サーボ領域は、複数の第1磁性部および当該第1磁性部間に介在する第1非磁性部を含む。ユーザデータ領域は、複数の第2磁性部および当該第2磁性部間に介在する第2非磁性部を含む。第2非磁性部は、記録層の第1面の側において、第2磁性部よりも退避し且つ第1非磁性部よりも退避している。本磁気記録媒体において、サーボ領域に含まれる第1磁性部にはサーボ情報を保持させることが可能である。本磁気記録媒体において、ユーザデータ領域に含まれる第2磁性部にはユーザデータを記録することが可能である。
【0016】
本磁気記録媒体の記録層のユーザデータ領域(UR)において、第2非磁性部は、記録層の第1面側にて第2磁性部よりも退避している。そのため、記録層のユーザデータ領域における第1面側の表面(UR表面)は、凹凸形状(第2磁性部の頂面が凸部頂面をなし且つ第2非磁性部の頂面が凹部底面をなす)を有する。これに対し、サーボ領域(SR)の第1非磁性部については、記録層の第1面側にて第1磁性部よりも退避するように設けるか、或は第1面側にて第1磁性部と面一に設けることが可能であるところ、当該第1非磁性部よりも上述の第2非磁性部は第1面側にて退避している。そのため、記録層のサーボ領域における第1面側の表面(SR表面)がたとえ凹凸形状を有する場合であっても、SR表面の当該凹凸形状の凹部よりも、UR表面の上記凹凸形状の凹部は、深い。
【0017】
このような本磁気記録媒体に対する書込みを行うに際しては、本媒体の記録層の第1面(記録面)側に、記録用の磁気ヘッド(記録ヘッド)を伴うスライダを対向させつつ、記録面に対して当該スライダないし記録ヘッドを相対移動させる。相対移動するスライダと記録面との間には空気流が生じ、記録ヘッドを伴うスライダは記録面から浮上する。相対移動速度が例えば一定である場合、スライダと記録面との間に形成される空間体積が一定に維持される距離、記録ヘッドを伴うスライダは記録面から浮上する傾向にある。そのため、例えば一定速度でスライダと記録面とが相対移動する場合、サーボ領域での記録ヘッドの浮上量(記録面の頂面レベルからの距離)より、ユーザデータ領域での記録ヘッドの浮上量は、小さい。ユーザデータ領域にスライダが対向するときには、UR表面における上述の深い凹部が、UR表面とスライダの間の空間体積の一部をなすからである。ユーザデータ領域にスライダが対向するときには、前記の深い凹部がUR表面―スライダ間の空間体積の一部をなすため、ユーザデータ領域対向時の記録ヘッドと記録面の最短距離は、サーボ領域対向時の記録ヘッドと記録面の最短距離より、短いのである。或は、サーボ領域におけるよりも、ユーザデータ領域における方が、記録面の頂面レベルから平均レベルが退避しているので、記録面の頂面レベルと記録ヘッドの距離は小さくなる、と捉えることもできる。記録面の平均レベルとは、記録層の厚さ方向における、記録面の少なくとも一領域の平均位置である。
【0018】
URにおける記録ヘッドの浮上量が小さいほど、URにおける第2磁性部に対し、当該記録ヘッドの発する記録磁界によって磁気記録しやすい。すなわち、URにおける記録ヘッドの浮上量が小さいほど、第2磁性部の書換え性は高い。また、SRにおける記録ヘッドの浮上量が大きいほど、SRにおける第1磁性部は、当該記録ヘッドからの漏れ磁界(記録磁界等)によっては磁化反転しにくい。すなわち、SRにおける記録ヘッドの浮上量が大きいほど、第1磁性部の磁化反転は抑制される。
【0019】
以上のように、記録用磁気ヘッドの浮上量がサーボ領域よりもユーザデータ領域で小さい本磁気記録媒体は、ユーザデータ領域の磁性部(第2磁性部)について高い書換え性を実現しつつ、サーボ領域の磁性部(第1磁性部)の磁化反転を抑制するのに適する。
【0020】
本発明の第2の側面によると磁気記録装置が提供される。この磁気記録装置は、本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体を備える。本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体を備える本磁気記録装置では、その具備する磁気記録媒体において、第1の側面に関して上述した効果が奏される。
【0021】
本発明の第3の側面によると磁気記録媒体製造方法が提供される。この方法は、磁性材層形成工程と、磁性材層パターニング工程と、非磁性材層形成工程と、非磁性材層エッチング工程とを含む。磁性材層形成工程では、第1領域および第2領域を有する基材の上に磁性材料を成膜することによって磁性材層を形成する。磁性材層パターニング工程では、磁性材層をパターニングすることによって、複数の第1磁性部を第1領域上に形成し、且つ、複数の第2磁性部を第2領域上に形成する。非磁性材層形成工程では、非磁性材料を第1磁性部間および第2磁性部間に堆積するように基材上に成膜することによって非磁性材層を形成する。非磁性材層エッチング工程では、非磁性材層に対して基材とは反対の側から異方性エッチング処理を施すことによって、第1領域上に第1非磁性部を形成し、且つ、当該第1非磁性部および第2磁性部よりも基材側に表面が退避した第2非磁性部を第2領域上に形成する。このような方法によると、本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体を適切に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1から図3は、本発明の第1の実施形態に係る磁気ディスクX1を表す。図1は、磁気ディスクX1の平面図である。図2は、磁気ディスクX1の部分拡大平面図である。図3は、図2の線III−IIIに沿った断面図である。
【0023】
磁気ディスクX1は、ディスク基板1、記録層2、軟磁性層3、および保護膜4(図1および図2では省略)を含む積層構造を有する、情報記録と情報再生とを実行可能なビットパターンドメディア(BPM)である。
【0024】
ディスク基板1は、主に、磁気ディスクX1の剛性を確保するための部位であり、例えば、アルミニウム合金、ガラス、シリコン、またはポリカーボネート樹脂よりなる。
【0025】
記録層2は、図3に示すように、保護膜4側の第1面2aおよびディスク基板1側の第2面2bを有し、図1に示すように、磁気ディスクX1の周方向D1において交互に配されたサーボ領域S1およびユーザデータ領域S2を含む。サーボ領域S1には、図2および図3に示すように、相互に離隔する複数の磁性部21、および、磁性部21間に介在する非磁性部22が含まれる。ユーザデータ領域S2には、相互に離隔する複数の磁性部23、および、磁性部23間に介在する非磁性部24が含まれる。このような記録層2には、サーボ領域S1およびユーザデータ領域S2にわたって延び且つ磁気ディスクX1の回転中心Aを共通中心として同心円状に配された複数のトラックが設けられている。各トラックは、磁気ディスクX1の周方向D1に延びる。
【0026】
サーボ領域S1における複数の磁性部21の各々は、垂直磁気異方性を有し、図2に示すように、磁気ディスクX1の径方向D2に延びる形状を有する。径方向D2において、磁性部21は、トラック幅に相当する長さや、複数のトラックにわたる長さを有する。このような磁性部21は、例えば硬磁性材料よりなる。磁性部21のための硬磁性材料としては、例えば、CoPt、CoPtCr、またはSmCoを採用することができる。また、磁性部21の厚さ(図3に示す矢印H方向の長さ)は例えば30〜50nmである。サーボ領域S1においては、磁気ディスクX1の周方向D1に連なる磁性部21においてサーボ情報が保持される。
【0027】
非磁性部22は、例えばSiN、C、SiO2などの非磁性材料よりなる。非磁性部22の存在により、例えば磁性部21間の磁気的相互作用が充分に抑制されて、各磁性部21について充分に高い磁気的孤立度が確保されている。本実施形態では、非磁性部22は、記録層2の第1面2a側において、磁性部21よりも退避している。非磁性部22の厚さ(図3の矢印H方向の長さ)は、本実施形態では磁性部21の厚さより小さく、例えば25〜45nmである。
【0028】
ユーザデータ領域S2における複数の磁性部23の各々は、垂直磁気異方性を有し、図2に示すように、ドット状の単一の記録セルをなすように設けられている。図2に表れている磁性部23の直径は、例えば10〜30nmである。このような磁性部23は、例えば硬磁性材料よりなる。磁性部23のための硬磁性材料としては、例えば、CoPt、CoPtCr、またはSmCoを採用することができる。磁性部23のための磁性材料は、磁性部21のための磁性材料と、同じであってもよいし、異なってもよい。また、磁性部23の厚さ(図3の矢印H方向の長さ)は、例えば30〜50nmである。ユーザデータ領域S2においては、各磁性部23が所定方向に磁化されて、磁気ディスクX1の周方向D1に連なる磁性部23において所定のユーザデータが書き換え可能に記録されている。
【0029】
非磁性部24は、例えばSiN、C、SiO2などの非磁性材料よりなる。非磁性部24の存在により、例えば磁性部23間の磁気的相互作用が充分に抑制されて、各磁性部23について充分に高い磁気的孤立度が確保されている。本実施形態では、非磁性部24は、記録層2の第1面2a側において、磁性部21,23よりも退避しており且つ非磁性部22よりも退避している。非磁性部24の厚さ(図3の矢印H方向の長さ)は、本実施形態では磁性部21,23の厚さ及び非磁性部22の厚さより小さく、例えば20〜40nmである。
【0030】
軟磁性層3は、磁気ディスクX1への書込み時等に保護膜4に対向する記録用の磁気ヘッドからの磁束を再び当該ヘッドに環流させる磁路を効率よく形成するためのものである。このような軟磁性層3は、高透磁率を有して大きな飽和磁化を有するとともに小さな保磁力を有する軟磁性材料よりなる。書込み時には、記録用磁気ヘッドによる記録磁界の印加によって、ユーザデータ領域S2の各磁性部23が所定方向に磁化されるところ、軟磁性層3が存在することにより、磁性部23を磁化反転させるのに必要な実効的な記録磁界を低減させることが可能となる。軟磁性層3のための軟磁性材料としては、例えば、FeC、FeNi、FeCoB、FeCoSiC、またはFeCo−AlOを採用することができる。
【0031】
保護膜4は、記録層2や軟磁性層3を外界から物理的および化学的に保護するための部位であり、例えば、SiN、SiO2、またはダイアモンドライクカーボン(DLC)よりなる。保護膜4の厚さは、例えば1〜5nmである。
【0032】
保護膜4の露出面は、磁気ディスクX1の記録面5をなす。記録面5は、記録層2の第1面2aに追従した凹凸形状を有する。具体的には、記録面5は、サーボ領域S1にて頂面5aを含み且つ凹部5bをなし、ユーザデータ領域S2にて頂面5cを含み且つ凹部5dをなす。記録層2においては、サーボ領域S1の非磁性部22は、上述のように、記録層2の第1面2a側にてサーボ領域S1の磁性部21よりも退避している。そして、ユーザデータ領域S2の非磁性部24は、記録層2の第1面2a側にて、ユーザデータ領域S2の磁性部23よりも退避し、且つ、サーボ領域S1の非磁性部22よりも退避している。そのため、ユーザデータ領域S2における記録面5の凹部5dは、サーボ領域S1における記録面5の凹部5bよりも、深い。すなわち、凹部5dの底面は、凹部5bの底面よりも、記録面5の頂面レベル(記録層2の厚さ方向における頂面5a,5bの位置)から退避している。
【0033】
以上のようなディスク基板1、記録層2、軟磁性層3、および保護膜4を含む磁気ディスクX1の積層構造中には、必要に応じて他の層が含まれてもよい。また、磁気ディスクX1は、記録層2、軟磁性層3、および保護膜4を含む積層構造をディスク基板1の片面または両面に有する。
【0034】
磁気ディスクX1に対する書込みを行うに際しては、図4や図5に示すように記録用の磁気ヘッドたる記録ヘッド6を伴うスライダ7を記録面5に対向させつつ、磁気ディスクX1をその回転中心A(図1に示す)まわりに所定速度で回転させる。図4は、記録ヘッド6を伴うスライダ7が、記録層2のサーボ領域S1に対向している状態を表す。図4(b)は図4(a)の部分拡大図である。図5は、記録ヘッド6を伴うスライダ7が、記録層2のユーザデータ領域S2に対向している状態を表す。図5(b)は図5(a)の部分拡大図である。
【0035】
回転する磁気ディスクX1の記録面5とスライダ7の間には、空気流が生じ、記録ヘッド6を伴うスライダ7は記録面5から浮上する。スライダ7にて記録面5に対向する側の面は、回転する磁気ディスクX1の記録面5とスライダ7の間に、スライダ7を記録面5から離そうとする正圧とスライダ7を記録面5に引き付けようとする負圧とを生ずるための凹凸(図4,5にて省略)を有する。図6は、スライダ7の一平面図であり、スライダ7において記録面5に対向する側の面(ABS;Air Bearing Surface)の一例を表す。図6では、ABSにおける凸部について、斜線ハッチングを付して表す。
【0036】
回転する磁気ディスクX1の記録面5とスライダ7の間に生ずる正圧および負圧のバランスに基づき、記録ヘッド6のヘッド浮上量が定まる。そして、磁気ディスクX1の回転速度が例えば一定である場合、スライダ7と記録面5との間に形成される空間体積が一定に維持される距離、記録ヘッド6を伴うスライダ7は記録面5から浮上する傾向にある。そのため、磁気ディスクX1の回転速度が例えば一定である場合、サーボ領域S1での記録ヘッド6の図4(b)に示す浮上量d1(記録面5の頂面レベルからの距離)より、ユーザデータ領域S2での記録ヘッド6の図5(b)に示す浮上量d2は、小さい。ユーザデータ領域S2にスライダ7が対向するときには、記録面5における深い凹部5dが、記録面5とスライダ7の間の空間体積の一部をなすからである。ユーザデータ領域S2にスライダ7が対向するときに深い凹部5dが記録面―スライダ間の空間体積の一部をなすため、ユーザデータ領域対向時の記録ヘッド6と記録面5の最短距離は、サーボ領域対向時の記録ヘッド6と記録面5の最短距離より短いのである。或は、サーボ領域S1におけるよりも、ユーザデータ領域S2における方が、記録面5の頂面レベルから記録面5の平均レベルが退避しているので、記録面5の頂面レベルと記録ヘッド6の距離は小さくなる、と捉えることもできる。記録面5の平均レベルとは、記録層2の厚さ方向における、記録面5の少なくとも一領域の平均位置である。図4(b)には、サーボ領域S1における記録面5の平均レベル5’を破線で示す。図5(b)には、ユーザデータ領域S2における記録面5の平均レベル5”を破線で示す。
【0037】
ユーザデータ領域S2における記録ヘッド6の浮上量d2が小さいほど、ユーザデータ領域S2における磁性部23に対し、記録ヘッド6の発する記録磁界によって磁気記録しやすい。すなわち、ユーザデータ領域S2における記録ヘッド6の浮上量d2が小さいほど、磁性部23の書換え性は高い。また、サーボ領域S1における記録ヘッド6の浮上量d1が大きいほど、サーボ領域S1における磁性部21は、記録ヘッド6からの漏れ磁界(記録磁界等)によっては磁化反転しにくい。すなわち、サーボ領域S1における記録ヘッド6の浮上量d1が大きいほど、磁性部21の磁化反転は抑制される。
【0038】
以上のように、スライダ7に伴う記録ヘッド6の浮上量がサーボ領域S1よりもユーザデータ領域S2で小さい磁気ディスクX1は、ユーザデータ領域S2の磁性部23について高い書換え性を実現しつつ、サーボ領域S1の磁性部21の磁化反転を抑制するのに適する。
【0039】
磁気ディスクX1において、記録面5は、上述のように、サーボ領域S1にて凹部5bをなす(凹部5bは、ユーザデータ領域S2における凹部5dより浅い)。この凹部5bの深さを調節することにより、サーボ領域対向時の記録ヘッド6の上述の浮上量d1を調整することが可能であり、ユーザデータ領域対向時の記録ヘッド6の上述の浮上量d2と当該浮上量d1との差を調整することが可能である。
【0040】
図7から図11は、磁気ディスクX1の製造方法を表す。本方法においては、まず、図7(a)に示すように、ディスク基板1上に、軟磁性層3、磁性膜2’、およびレジスト膜8を順次形成する。軟磁性層3の形成においては、例えばスパッタリング法により、軟磁性層3に関して上述した軟磁性材料をディスク基板1上に成膜する。磁性膜2’の形成においては、例えばスパッタリング法により、磁性部21,23に関して上述した磁性材料を軟磁性層3上に成膜する。レジスト膜8の形成においては、熱硬化型レジスト材料または紫外線硬化型レジスト材料をスピンコーティング法によって磁性膜2’上に成膜する。
【0041】
次に、図7(b)および図8(a)に示すように、スタンパ9を使用してインプリント工程を行う。スタンパ9は、製造すべき磁気ディスクX1におけるサーボ領域S1に対応する領域S3とユーザデータ領域S2に対応する領域S4とを含む。また、スタンパ9は、転写面9Aを有し、転写面9A側に複数の凹部9aを有する(即ち、転写面9Aは凹凸形状を伴う)。領域S3における複数の凹部9aの開口形状は、磁気ディスクX1における記録層2のサーボ領域S1に含まれる複数の磁性部21に対応したパターンを有する。領域S4における複数の凹部9aの開口形状は、磁気ディスクX1における記録層2のユーザデータ領域S2に含まれる複数の磁性部23に対応したパターンを有する。レジスト膜8として紫外線硬化型レジスト材料よりなるものを採用する場合、スタンパ9としては、紫外線が透過可能なものを使用する。スタンパ9は、例えば石英基板に対して凹部9aを形成することによって作製することができる。
【0042】
本インプリント工程では、このようなスタンパ9の転写面9Aをレジスト膜8に押し付ける。レジスト膜8が熱硬化型レジスト材料よりなる場合、スタンパ9をレジスト膜8に押し付けた状態で加熱してレジスト膜8を硬化させる。レジスト膜8が紫外線硬化型レジスト材料よりなる場合、スタンパ9をレジスト膜8に押し付けた状態でレジスト膜8に対して紫外線を照射してレジスト膜8を硬化させる。このようなインプリント工程によって、転写面9Aの凹凸形状がレジスト膜8に転写されて、レジストマスク8Aが形成される。レジストマスク8Aは、スタンパ9の凹部9aに対応した凸部8aを有する。
【0043】
また、本インプリント工程では、図8(a)に示すように、スタンパ9は磁性膜2’に至らず、磁性膜2’とスタンパ9との間にはレジスト材料が残存するのが好ましい。スタンパ9が磁性膜2’に至ると、形成されるレジストマスク8Aと磁性膜2’との接触面積が低下するなどしてレジストマスク8Aが磁性膜2’から剥離しやすくなってしまう。そのような剥離が生じないように、スタンパ9と磁性膜2’との間にレジスト材料が残されるのが好ましいのである。
【0044】
磁気ディスクX1の製造においては、スタンパ9を使用して行う上述のインプリント工程の後、図8(b)に示すように、スタンパ9をレジストマスク8Aから取り外す。
【0045】
次に、図9(a)に示すように、凸部8aを有するレジストマスク8Aをマスクとして利用して、レジストマスク8Aの側から磁性膜2’に対して異方性ドライエッチングを施すことにより、上述の磁性部21,23をパターン形成する。磁性部21は、ディスク基板1上ないし軟磁性層3上において、記録層2のサーボ領域S1に対応した第1領域に形成される。磁性部23は、ディスク基板1上ないし軟磁性層3上において、記録層2のユーザデータ領域S2に対応した第2領域に形成される。異方性ドライエッチングとしては、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)を採用することができる。DRIEでは、SF6ガスを用いて行うエッチングとC4F8ガスを用いて行う側壁保護とを交互に繰り返すBoschプロセスにおいて、良好な異方性エッチング加工を行うことができる。後出のDRIEについても、このようなBoschプロセスを採用することができる。この後、例えば所定の剥離液を作用させることによって、レジストマスク8Aを除去する。
【0046】
次に、図9(b)に示すように非磁性膜2”を形成する。具体的には、磁性部21,23間の隙間を充填しつつ磁性部21,23を覆うように、非磁性部22,24に関して上述した非磁性材料を堆積させる。
【0047】
次に、図9(c)に示すように、非磁性膜2”上にレジスト膜10を形成する。レジスト膜10の形成においては、熱硬化型レジスト材料または紫外線硬化型レジスト材料をスピンコーティング法によって非磁性膜2”上に成膜する。
【0048】
次に、図10(a)および図10(b)に示すように、スタンパ11を使用してインプリント工程を行う。スタンパ11は、製造すべき磁気ディスクX1におけるサーボ領域S1に対応する領域S5とユーザデータ領域S2に対応する領域S6とを含む。また、スタンパ11は、転写面11Aを有し、この転写面11A側において、領域S5の表面は領域S6の表面よりも退避している。レジスト膜10として紫外線硬化型レジスト材料よりなるものを採用する場合、スタンパ11としては、紫外線が透過可能なものを使用する。スタンパ11は、例えば石英基板に対して領域S5の退避形状を形成することによって作製することができる。
【0049】
本インプリント工程では、このようなスタンパ11の転写面11Aをレジスト膜10に押し付ける。レジスト膜10が熱硬化型レジスト材料よりなる場合、スタンパ11をレジスト膜10に押し付けた状態で加熱してレジスト膜10を硬化させる。レジスト膜10が紫外線硬化型レジスト材料よりなる場合、スタンパ11をレジスト膜10に押し付けた状態でレジスト膜10に対して紫外線を照射してレジスト膜10を硬化させる。このようなインプリント工程によって、転写面11Aの凹凸形状がレジスト膜10に転写されて、レジストマスク10Aが形成される。レジストマスク10Aは、部分10aおよび部分10bを有する。部分10aは、磁気ディスクX1の記録層2のサーボ領域S1に対応するパターン形状を有する。部分10bは、記録層2のユーザデータ領域S2に対応するパターン形状を有し、部分10aより薄い。
【0050】
磁気ディスクX1の製造においては、スタンパ11を使用して行う上述のインプリント工程の後、スタンパ11をレジストマスク10Aから取り外す。その後、図10(c)に示すように、部分10bを除去する。例えば、プラズマエッチングによって部分10bを除去することができる。
【0051】
次に、図11(a)に示すように、レジストマスク10Aの部分10aをマスクとして利用して、レジストマスク10Aの側から非磁性膜2”に対して異方性ドライエッチングを施す。異方性ドライエッチングとしては、DRIEを採用することができる。
【0052】
次に、図11(b)に示すように、レジストマスク10Aないし部分10aを除去する。例えば所定の剥離液を作用させることによって、レジストマスク10Aを除去することができる。
【0053】
次に、図11(c)に示すように、非磁性膜2”に対して異方性ドライエッチングを施して、上述の非磁性部22,24を形成する。本工程にて、記録層2が形成されることとなる。異方性ドライエッチングとしては、DRIEを採用することができる。
【0054】
次に、図11(d)に示すように保護膜4を形成する。保護膜4の形成においては、例えばスパッタリング法により、保護膜4に関して上述した材料を記録層2上に成膜する。以上のようにして、上述の磁気ディスクX1を適切に製造することができる。
【0055】
本方法においては、磁性部21,23をパターニングする際に必要なマスク(所定の凸部8aを有するレジストマスク8A)の形成にあたり、スタンパ9を使用して行うインプリント法を採用するため、電子ビーム描画装置を使用する必要はない。すなわち、磁気ディスクX1ごとの製造過程において、長時間にわたる電子ビーム描画装置による露光処理を行う必要はない。したがって、本方法は、磁気ディスクX1を効率よく製造するのに適し、磁気ディスクX1の量産化を図りやすい。
【0056】
図12は、本発明の第2の実施形態に係る磁気ディスクX2を表す。図12は、磁気ディスクX2の部分拡大平面図であり、第1の実施形態に係る上述の磁気ディスクX1にとっての図3に相当する。
【0057】
磁気ディスクX2は、ディスク基板1、記録層2、軟磁性層3、および保護膜4’を含む積層構造を有する、情報記録と情報再生とを実行可能なBPMである。磁気ディスクX2は、保護膜4に代えて保護膜4’を備える点において、磁気ディスクX1と異なる。
【0058】
保護膜4’は、記録層2や軟磁性層3を外界から物理的および化学的に保護するための部位であり、部分4aおよび部分4bを含む。部分4aは、記録層2のサーボ領域S1を覆い、部分4bより厚い。部分4aの厚さは、部分4bより厚い限りにおいて、例えば2〜10nmである。部分4bは、記録層2のユーザデータ領域S2を覆う。部分4bの厚さは、例えば1〜5nmである。このような保護膜4’は、例えば、SiN、SiO2、またはダイアモンドライクカーボン(DLC)よりなる。
【0059】
保護膜4’の露出面は、磁気ディスクX2の記録面5をなす。磁気ディスクX2の記録面5は、磁気ディスクX1の記録面5と同様に、サーボ領域S1にて頂面5aを含み且つ凹部5bをなし、ユーザデータ領域S2にて頂面5cを含み且つ凹部5dをなす。磁気ディスクX2の記録面5の凹部5dは、磁気ディスクX1の記録面5の凹部5dと同様に、サーボ領域S1における記録面5の凹部5bよりも、深い。
【0060】
保護膜4’以外の磁気ディスクX2の構成は、保護膜4以外の磁気ディスクX1の構成と同じである。ディスク基板1、記録層2、軟磁性層3、および保護膜4’を含む磁気ディスクX2の積層構造中には、必要に応じて他の層が含まれてもよい。また、磁気ディスクX2は、記録層2、軟磁性層3、および保護膜4’を含む積層構造をディスク基板1の片面または両面に有する。
【0061】
磁気ディスクX2に対する書込み時には、磁気ディスクX1に対する書込みについて図4および図5を参照して上述したのと同様に、記録ヘッドを伴うスライダ(図示略)を記録面5に対向させつつ、磁気ディスクX2をその回転中心まわりに所定速度で回転させる。磁気ディスクX2は、磁気ディスクX1と同様に、ユーザデータ領域S2における記録面5に深い凹部5dを有する。そのため、磁気ディスクX1に対する書込み関して上述したのと同様の理由で、磁気ディスクX2の回転速度が例えば一定である場合には、サーボ領域S1での記録ヘッドの浮上量より、ユーザデータ領域S2での記録ヘッドの浮上量は小さい。したがって、磁気ディスクX2は、磁気ディスクX1に関して上述したのと同様の理由で、ユーザデータ領域S2の磁性部23について高い書換え性を実現しつつ、サーボ領域S1の磁性部21の磁化反転を抑制するのに適する。
【0062】
磁気ディスクX2においては、保護膜4’の部分4bが薄いほど、記録時に記録ヘッドによって印加される記録磁界の、記録層2のユーザデータ領域S2における実効的な強度は、大きい傾向にある。また、磁気ディスクX2においては、保護膜4’の部分4aが厚いほど、記録ヘッドからの漏れ磁界(記録磁界等)の、記録層2のサーボ領域S1における実効的な強度は、小さい傾向にある。保護膜4’において記録層2のサーボ領域S1を覆う部分4aがユーザデータ領域S2を覆う部分4bよりも厚いという構成は、ユーザデータ領域S2の磁性部23について高い書換え性を実現しつつサーボ領域S1の磁性部21の磁化反転を抑制するのに資する。
【0063】
図13から図14は、磁気ディスクX2の製造方法を表す。本方法においては、まず、図7から図11を参照して上述した過程を経て磁気ディスクX1を製造した後、図13(a)に示すように、磁気ディスクX1の保護膜4上にレジスト膜12を形成する。レジスト膜12は例えばスピンオンガラス(SOG)よりなる。レジスト膜12の形成においては、例えば、所定のガラス材料をスピンコーティング法によって磁気ディスクX1の保護膜4上に成膜する。
【0064】
次に、図13(b)および図13(c)に示すように、スタンパ13を使用してインプリント工程を行う。スタンパ13は、製造すべき磁気ディスクX2におけるサーボ領域S1に対応する領域S7とユーザデータ領域S2に対応する領域S8とを含む。また、スタンパ13は、転写面13Aを有し、この転写面13A側において、領域S7の表面は領域S8の表面よりも退避している。
【0065】
本インプリント工程では、このようなスタンパ13の転写面13Aをレジスト膜12に押し付ける。レジスト膜12のための材料としてSOGを採用する場合、スタンパ13をレジスト膜12に押し付けた状態で加熱してレジスト膜12を硬化させる。このようなインプリント工程によって、転写面13Aの凹凸形状がレジスト膜12に転写されて、レジストマスク12Aが形成される。レジストマスク12Aは、部分12aおよび部分12bを有する。部分12aは、磁気ディスクX2の記録層2のサーボ領域S1に対応するパターン形状を有する。部分12bは、記録層2のユーザデータ領域S2に対応するパターン形状を有し、部分12aより薄い。
【0066】
磁気ディスクX2の製造においては、スタンパ13を使用して行う上述のインプリント工程の後、スタンパ13をレジストマスク12Aから取り外す。その後、図14(a)に示すように、部分12bを除去する。例えば、レジストマスク12Aに対してDRIEを施すことによって、部分12aを残存させつつ薄い部分12bを除去することができる。
【0067】
次に、図14(b)に示すように、レジストマスク12Aないし部分12aをマスクとして利用して、保護膜4に対してエッチング処理を施す。エッチング手法としては、例えばプラズマエッチングを採用することができる。これにより、記録層2のユーザデータ領域S2上にある保護膜4を除去する。
【0068】
次に、図14(c)に示すように、レジストマスク12Aないし部分12aを除去する。除去手法としては、例えばDRIEを採用することができる。
【0069】
次に、図14(d)に示すように保護膜4’を形成する。例えば、記録層2上および残存する保護膜4上にわたり、保護膜4’に関して上述した材料をスパッタリング法によって成膜することにより、保護膜4’を形成することができる。以上のようにして、上述の磁気ディスクX2を適切に製造することができる。
【0070】
図15から図17は、本発明の第3の実施形態に係る磁気ディスクX3を表す。図15は、磁気ディスクX3の平面図である。図16は、磁気ディスクX3の部分拡大平面図である。図17は、図16の線XVII−XVIIに沿った断面図である。
【0071】
磁気ディスクX3は、ディスク基板1、記録層2A、軟磁性層3、および保護膜4A(図15および図16では省略)を含む積層構造を有する、情報記録と情報再生とを実行可能なBPMである。磁気ディスクX3は、記録層2に代えて記録層2Aを備える点、および、保護膜4に代えて保護膜4Aを備える点において、磁気ディスクX1と異なる。
【0072】
記録層2Aは、図17に示すように、保護膜4A側の第1面2aおよびディスク基板1側の第2面2bを有し、図15に示すように、磁気ディスクX3の周方向D1において交互に配されたサーボ領域S1およびユーザデータ領域S2を含む。記録層2Aのサーボ領域S1には、図16および図17に示すように、相互に離隔する複数の磁性部21、および、磁性部21間に介在する非磁性部22が含まれる。記録層2Aのユーザデータ領域S2には、相互に離隔する複数の磁性部23、および、磁性部23間に介在する非磁性部24が含まれる。このような記録層2Aには、サーボ領域S1およびユーザデータ領域S2にわたって延び且つ磁気ディスクX3の回転中心Aを共通中心として同心円状に配された複数のトラックが設けられている。各トラックは、磁気ディスクX3の周方向D1に延びる。
【0073】
サーボ領域S1における複数の磁性部21の各々は、垂直磁気異方性を有し、図16に示すように、磁気ディスクX3の径方向D2に延びる形状を有する。径方向D2において、磁性部21は、トラック幅に相当する長さや、複数のトラックにわたる長さを有する。このような磁性部21は、例えば硬磁性材料よりなる。磁性部21のための硬磁性材料としては、例えば、CoPt、CoPtCr、またはSmCoを採用することができる。また、磁性部21の厚さ(図17に示す矢印H方向の長さ)は例えば30〜50nmである。サーボ領域S1においては、磁気ディスクX3の周方向D1に連なる磁性部21においてサーボ情報が保持される。
【0074】
非磁性部22は、例えばSiN、C、SiO2などの非磁性材料よりなる。非磁性部22の存在により、例えば磁性部21間の磁気的相互作用が充分に抑制されて、各磁性部21について充分に高い磁気的孤立度が確保されている。本実施形態では、非磁性部22は、記録層2Aの第1面2a側において、磁性部21と面一である。
【0075】
ユーザデータ領域S2における複数の磁性部23の各々は、垂直磁気異方性を有し、図16に示すように、ドット状の単一の記録セルをなすように設けられている。図16に表れている磁性部23の直径は、例えば10〜30nmである。このような磁性部23は、例えば硬磁性材料よりなる。磁性部23のための硬磁性材料としては、例えば、CoPt、CoPtCr、またはSmCoを採用することができる。磁性部23のための磁性材料は、磁性部21のための磁性材料と、同じであってもよいし、異なってもよい。また、磁性部23の厚さ(図17の矢印H方向の長さ)は、例えば30〜50nmである。ユーザデータ領域S2においては、各磁性部23が所定方向に磁化されて、磁気ディスクX3の周方向D1に連なる磁性部23において所定のユーザデータが書き換え可能に記録されている。
【0076】
非磁性部24は、例えばSiN、C、SiO2などの非磁性材料よりなる。非磁性部24の存在により、例えば磁性部23間の磁気的相互作用が充分に抑制されて、各磁性部23について充分に高い磁気的孤立度が確保されている。本実施形態では、非磁性部24は、記録層2Aの第1面2a側において、磁性部21,23および非磁性部22よりも退避している。非磁性部24の厚さ(図17の矢印H方向の長さ)は、本実施形態では磁性部21,23の厚さ及び非磁性部22の厚さより小さく、例えば20〜40nmである。
【0077】
保護膜4Aは、記録層2Aや軟磁性層3を外界から物理的および化学的に保護するための部位であり、例えば、SiN、SiO2、またはダイアモンドライクカーボン(DLC)よりなる。保護膜4Aの厚さは、例えば1〜5nmである。
【0078】
保護膜4Aの露出面は、磁気ディスクX3の記録面5をなす。記録面5は、記録層2Aの第1面2aに追従した凹凸形状を有する。具体的には、記録面5は、ユーザデータ領域S2にて頂面5cを含み且つ凹部5dをなす。記録層2Aにおいては、サーボ領域S1の非磁性部22は、上述のように、記録層2Aの第1面2a側にてサーボ領域S1の磁性部21と面一である。そして、ユーザデータ領域S2の非磁性部24は、記録層2Aの第1面2a側にて、ユーザデータ領域S2の磁性部23よりも退避し、且つ、サーボ領域S1の非磁性部22よりも退避している。そのため、記録面5は、サーボ領域S1にて平らであり、且つ、ユーザデータ領域S2にて凹部5dをなす。
【0079】
ディスク基板1および軟磁性層3の構成は、磁気ディスクX1に関して上述したのと同様である。
【0080】
以上のようなディスク基板1、記録層2A、軟磁性層3、および保護膜4Aを含む磁気ディスクX3の積層構造中には、必要に応じて他の層が含まれてもよい。また、磁気ディスクX3は、記録層2A、軟磁性層3、および保護膜4Aを含む積層構造をディスク基板1の片面または両面に有する。
【0081】
磁気ディスクX3に対する書込みを行うに際しては、図18や図19に示すように記録用の磁気ヘッドたる記録ヘッド6を伴うスライダ7を記録面5に対向させつつ、磁気ディスクX3をその回転中心A(図15に示す)まわりに所定速度で回転させる。図18は、記録ヘッド6を伴うスライダ7が、記録層2Aのサーボ領域S1に対向している状態を表す。図18(b)は図18(a)の部分拡大図である。図19は、記録ヘッド6を伴うスライダ7が、記録層2Aのユーザデータ領域S2に対向している状態を表す。図19(b)は図19(a)の部分拡大図である。
【0082】
回転する磁気ディスクX3の記録面5とスライダ7の間には、空気流が生じ、記録ヘッド6を伴うスライダ7は記録面5から浮上する。スライダ7にて記録面5に対向する側の面は、回転する磁気ディスクX3の記録面5とスライダ7の間に、スライダ7を記録面5から離そうとする正圧とスライダ7を記録面5に引き付けようとする負圧とを生ずるための凹凸(図18,19にて省略)を有する。スライダ7において記録面5に対向する側の面(ABS)の凹凸構造は、図6を参照して上述したとおりである。
【0083】
回転する磁気ディスクX3の記録面5とスライダ7の間に生ずる正圧および負圧のバランスに基づき、記録ヘッド6のヘッド浮上量が定まる。そして、磁気ディスクX3の回転速度が例えば一定である場合、スライダ7と記録面5との間に形成される空間体積が一定に維持される距離、記録ヘッド6を伴うスライダ7は記録面5から浮上する傾向にある。そのため、磁気ディスクX3の回転速度が例えば一定である場合、サーボ領域S1での記録ヘッド6の図18(b)に示す浮上量d1(記録面5の頂面レベルからの距離)より、ユーザデータ領域S2での記録ヘッド6の図19(b)に示す浮上量d2は、小さい。ユーザデータ領域S2にスライダ7が対向するときには、記録面5における凹部5dが、記録面5とスライダ7の間の空間体積の一部をなすからである。ユーザデータ領域S2にスライダ7が対向するときに凹部5dが記録面5―スライダ7間の空間体積の一部をなすため、ユーザデータ領域対向時の記録ヘッド6と記録面5の最短距離は、サーボ領域対向時の記録ヘッド6と記録面5の最短距離より短いのである。或は、サーボ領域S1におけるよりも、ユーザデータ領域S2における方が、記録面5の頂面レベルから記録面5の平均レベルが退避しているので、記録面5の頂面レベルと記録ヘッド6の距離は小さくなる、と捉えることもできる。サーボ領域S1では、記録面5と、記録面5の頂面レベルと、記録面5の平均レベルとは、一致する。図19(b)には、ユーザデータ領域S2における記録面5の平均レベル5”を破線で示す。
【0084】
ユーザデータ領域S2における記録ヘッド6の浮上量d2が小さいほど、ユーザデータ領域S2における磁性部23に対し、記録ヘッド6の発する記録磁界によって磁気記録しやすい。すなわち、ユーザデータ領域S2における記録ヘッド6の浮上量d2が小さいほど、磁性部23の書換え性は高い。また、サーボ領域S1における記録ヘッド6の浮上量d1が大きいほど、サーボ領域S1における磁性部21は、記録ヘッド6からの漏れ磁界(記録磁界等)によっては磁化反転しにくい。すなわち、サーボ領域S1における記録ヘッド6の浮上量d1が大きいほど、磁性部21の磁化反転は抑制される。
【0085】
以上のように、スライダ7に伴う記録ヘッド6の浮上量がサーボ領域S1よりもユーザデータ領域S2で小さい磁気ディスクX3は、ユーザデータ領域S2の磁性部23について高い書換え性を実現しつつ、サーボ領域S1の磁性部21の磁化反転を抑制するのに適する。
【0086】
図20は、磁気ディスクX3の製造方法の一部の工程を表す。本方法においては、まず、第1の実施形態に関して図7(a)から図11(b)までを参照して上述した過程を経て、図20(a)に示す構造体を得る。図20(a)に示す構造体では、ディスク基板1上に軟磁性層3が設けられ、軟磁性層3上に磁性部21,23および非磁性膜2”が設けられている。
【0087】
次に、図20(b)に示すように、非磁性膜2”に対して異方性ドライエッチングを施して、上述の非磁性部22,24を形成する。本工程では、磁性部21と面一の非磁性部22が形成された時点でエッチング処理を停止する。本工程にて、記録層2Aが形成されることとなる。異方性ドライエッチングとしては、DRIEを採用することができる。
【0088】
次に、図20(c)に示すように保護膜4Aを形成する。保護膜4Aの形成においては、例えばスパッタリング法により、保護膜4Aに関して上述した材料を記録層2A上に成膜する。以上のようにして、上述の磁気ディスクX3を適切に製造することができる。
【0089】
本方法においては、磁性部21,23をパターニングする際に必要なマスク(所定の凸部8aを有する図8(a)に示すレジストマスク8A)の形成にあたり、スタンパ9を使用して行うインプリント法を採用するため、電子ビーム描画装置を使用する必要はない。すなわち、磁気ディスクX3ごとの製造過程において、長時間にわたる電子ビーム描画装置による露光処理を行う必要はない。したがって、本方法は、磁気ディスクX3を効率よく製造するのに適し、磁気ディスクX3の量産化を図りやすい。
【0090】
図21は、本発明の第4の実施形態に係る磁気ディスクX4を表す。図21は、磁気ディスクX4の部分拡大平面図であり、第3の実施形態に係る上述の磁気ディスクX3にとっての図17に相当する。
【0091】
磁気ディスクX4は、ディスク基板1、記録層2A、軟磁性層3、および保護膜4A’を含む積層構造を有する、情報記録と情報再生とを実行可能なBPMである。磁気ディスクX4は、保護膜4Aに代えて保護膜4A’を備える点において、磁気ディスクX3と異なる。
【0092】
保護膜4A’は、記録層2Aや軟磁性層3を外界から物理的および化学的に保護するための部位であり、部分4aおよび部分4bを含む。部分4aは、記録層2Aのサーボ領域S1を覆い、部分4bより厚い。部分4aの厚さは、部分4bより厚い限りにおいて、例えば2〜10nmである。部分4bは、記録層2Aのユーザデータ領域S2を覆う。部分4bの厚さは、例えば1〜5nmである。このような保護膜4A’は、例えば、SiN、SiO2、またはダイアモンドライクカーボン(DLC)よりなる。
【0093】
保護膜4A’の露出面は、磁気ディスクX4の記録面5をなす。磁気ディスクX4の記録面5は、磁気ディスクX3の記録面5と同様に、サーボ領域S1にて平らであり、ユーザデータ領域S2にて頂面5cを含み且つ凹部5dをなす。
【0094】
保護膜4A’以外の磁気ディスクX4の構成は、保護膜4A以外の磁気ディスクX3の構成と同じである。ディスク基板1、記録層2A、軟磁性層3、および保護膜4A’を含む磁気ディスクX4の積層構造中には、必要に応じて他の層が含まれてもよい。また、磁気ディスクX4は、記録層2A、軟磁性層3、および保護膜4A’を含む積層構造をディスク基板1の片面または両面に有する。
【0095】
磁気ディスクX4に対する書込み時には、磁気ディスクX3に対する書込みについて図18および図19を参照して上述したのと同様に、記録ヘッドを伴うスライダ(図示略)を記録面5に対向させつつ、磁気ディスクX4をその回転中心まわりに所定速度で回転させる。磁気ディスクX4は、磁気ディスクX3と同様に、ユーザデータ領域S2における記録面5に凹部5dを有する。そのため、磁気ディスクX3に対する書込み関して上述したのと同様の理由で、磁気ディスクX4の回転速度が例えば一定である場合には、サーボ領域S1での記録ヘッドの浮上量より、ユーザデータ領域S2での記録ヘッドの浮上量は小さい。したがって、磁気ディスクX4は、磁気ディスクX3に関して上述したのと同様の理由で、ユーザデータ領域S2の磁性部23について高い書換え性を実現しつつ、サーボ領域S1の磁性部21の磁化反転を抑制するのに適する。
【0096】
磁気ディスクX4においては、保護膜4A’の部分4bが薄いほど、記録時に記録ヘッド(図示略)によって印加される記録磁界の、記録層2Aのユーザデータ領域S2における実効的な強度は、大きい傾向にある。また、磁気ディスクX4においては、保護膜4A’の部分4aが厚いほど、記録ヘッドからの漏れ磁界(記録磁界等)の、記録層2Aのサーボ領域S1における実効的な強度は、小さい傾向にある。保護膜4A’において記録層2Aのサーボ領域S1を覆う部分4aがユーザデータ領域S2を覆う部分4bよりも厚いという構成は、ユーザデータ領域S2の磁性部23について高い書換え性を実現しつつサーボ領域S1の磁性部21の磁化反転を抑制するのに資する。
【0097】
図22から図23は、磁気ディスクX4の製造方法を表す。本方法においては、まず、上述したように磁気ディスクX3を製造した後、図22(a)に示すように、磁気ディスクX3の保護膜4A上にレジスト膜12を形成する。レジスト膜12は例えばスピンオンガラス(SOG)よりなる。レジスト膜12の形成においては、例えば、所定のガラス材料をスピンコーティング法によって磁気ディスクX3の保護膜4A上に成膜する。
【0098】
次に、図22(b)および図22(c)に示すように、スタンパ13を使用してインプリント工程を行う。スタンパ13は、製造すべき磁気ディスクX4におけるサーボ領域S1に対応する領域S7とユーザデータ領域S2に対応する領域S8とを含む。また、スタンパ13は、転写面13Aを有し、この転写面13A側において、領域S7の表面は領域S8の表面よりも退避している。
【0099】
本インプリント工程では、このようなスタンパ13の転写面13Aをレジスト膜12に押し付ける。レジスト膜12のための材料としてSOGを採用する場合、スタンパ13をレジスト膜12に押し付けた状態で加熱してレジスト膜12を硬化させる。このようなインプリント工程によって、転写面13Aの凹凸形状がレジスト膜12に転写されて、レジストマスク12Aが形成される。レジストマスク12Aは、部分12aおよび部分12bを有する。部分12aは、磁気ディスクX4の記録層2Aのサーボ領域S1に対応するパターン形状を有する。部分12bは、記録層2Aのユーザデータ領域S2に対応するパターン形状を有し、部分12aより薄い。
【0100】
磁気ディスクX4の製造においては、スタンパ13を使用して行う上述のインプリント工程の後、スタンパ13をレジストマスク12Aから取り外す。その後、図23(a)に示すように、部分12bを除去する。例えば、レジストマスク12Aに対してDRIEを施すことによって、部分12aを残存させつつ薄い部分12bを除去することができる。
【0101】
次に、図23(b)に示すように、レジストマスク12Aないし部分12aをマスクとして利用して、保護膜4Aに対してエッチング処理を施す。エッチング手法としては、例えばプラズマエッチングを採用することができる。これにより、記録層2Aのユーザデータ領域S2上にある保護膜4Aを除去する。
【0102】
次に、図23(c)に示すように、レジストマスク12Aないし部分12aを除去する。除去手法としては、例えばDRIEを採用することができる。
【0103】
次に、図23(d)に示すように保護膜4A’を形成する。例えば、記録層2A上および残存する保護膜4A上にわたり、保護膜4A’に関して上述した材料をスパッタリング法によって成膜することにより、保護膜4A’を形成することができる。以上のようにして、上述の磁気ディスクX4を適切に製造することができる。
【0104】
図24は、本発明の第5の実施形態に係る磁気記録装置Yを表す。磁気記録装置Yは、複数の磁気ディスク100と、磁気ヘッド101と、スピンドルモータ102と、スイングアーム103と、アクチュエータ104と、ディスクコントローラ105とを備える。
【0105】
複数の磁気ディスク100は、所定の間隔を空けて配されている。各磁気ディスク100は、上述の磁気ディスクX1〜X4のいずれかであり、表裏両面に記録層を有する。磁気ヘッド101は、磁気ディスク100に対してデータを読み書きするためのものであり、磁気ディスク100の記録面と対向するように各スイングアーム103の先端に設けられている。このような磁気ヘッド101には、書き込み用ないし記録用のヘッド部(図示略)と読み取り用ないし再生用のヘッド部(図示略)とが磁気ディスク100の周方向に離隔して設けられている。スピンドルモータ102は、磁気ディスク100を高速回転させる回転駆動手段である。スイングアーム103は、磁気ディスク100の径方向において磁気ヘッド101を移動させるためのものであり、アクチュエータ104によって動作させられる。アクチュエータ104は、ボイスコイルモータなどからなる。ディスクコントローラ105は、磁気ヘッド101、スピンドルモータ102、およびアクチュエータ104を駆動制御するためのものである。このようなディスクコントローラ105は、例えば、CPUやメモリなどを備えたマイクロコンピュータよりなる。
【0106】
このような磁気記録装置Yにおける情報記録時には、磁気記録装置Yの各部が協働して、磁気ヘッド101の書き込み用ヘッド部によって磁気ディスク100の記録層のユーザデータ領域にデータが書き込まれる。また、磁気記録装置Yにおける情報再生時には、磁気記録装置Yの各部が協働して、磁気ヘッド101の読み取り用ヘッド部によって磁気ディスク100の記録層のユーザデータ領域からデータが読み取られる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る磁気ディスクの平面図である。
【図2】図1に示す磁気ディスクの部分拡大平面図である。
【図3】図2の線III−IIIに沿った断面図である。
【図4】第1の実施形態において、記録層のサーボ領域にスライダ(記録ヘッドを伴う)が対向している状態を表す。(b)は(a)の部分拡大図である。
【図5】第1の実施形態において、記録層のユーザデータ領域にスライダ(記録ヘッドを伴う)が対向している状態を表す。(b)は(a)の部分拡大図である。
【図6】スライダのABS(Air Bearing Surface)を表す平面図である。
【図7】第1の実施形態に係る磁気ディスクの製造方法における一部の工程を表す。
【図8】図7の後に続く工程を表す。
【図9】図8の後に続く工程を表す。
【図10】図9の後に続く工程を表す。
【図11】図10の後に続く工程を表す。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る磁気ディスクの部分拡大断面図である。第1の実施形態に係る磁気ディスクにとっての図3に相当する。
【図13】図12に示す磁気ディスクの製造方法における一部の工程を表す。
【図14】図13の後に続く工程を表す。
【図15】本発明の第3の実施形態に係る磁気ディスクの平面図である。
【図16】図15に示す磁気ディスクの部分拡大平面図である。
【図17】図16の線XVII−XVIIに沿った断面図である。
【図18】第3の実施形態において、記録層のサーボ領域にスライダ(記録ヘッドを伴う)が対向している状態を表す。(b)は(a)の部分拡大図である。
【図19】第3の実施形態において、記録層のユーザデータ領域にスライダ(記録ヘッドを伴う)が対向している状態を表す。(b)は(a)の部分拡大図である。
【図20】第3の実施形態に係る磁気ディスクの製造方法における一部の工程を表す。
【図21】本発明の第4の実施形態に係る磁気ディスクの部分拡大断面図である。第3の実施形態に係る磁気ディスクにとっての図17に相当する。
【図22】図21に示す磁気ディスクの製造方法における一部の工程を表す。
【図23】図22の後に続く工程を表す。
【図24】本発明の第5の実施形態に係る磁気記録装置を表す。
【図25】従来のビットパターンドメディアたる磁気ディスクの部分拡大平面図である。
【図26】図25の線XXVI−XXVIに沿った断面図である。
【図27】図25に示す磁気ディスクの製造方法における一部の工程を表す。
【図28】図27の後に続く工程を表す。
【図29】図28の後に続く工程を表す。
【符号の説明】
【0108】
X1,X2,X3,X4,80 磁気ディスク
S1 サーボ領域
S2 ユーザデータ領域
1,81 ディスク基板
2,2A,82 記録層
2a 第1面
2b 第2面
21,23,82A,82B 磁性部
22,24,82C 非磁性部
3 軟磁性層
4,4’,4A,4A’,83 保護膜
4a,4b 部分
2’ 磁性膜
2” 非磁性膜
8,10,12 レジスト膜
9,11,13 スタンパ
Y 磁気記録装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面および当該第1面とは反対の第2面を有し且つサーボ領域およびユーザデータ領域を含む記録層を備え、
前記サーボ領域は、複数の第1磁性部および当該第1磁性部間に介在する第1非磁性部を含み、
前記ユーザデータ領域は、複数の第2磁性部および当該第2磁性部間に介在する第2非磁性部を含み、
前記第2非磁性部は、前記記録層の前記第1面の側において、前記第2磁性部よりも退避し且つ前記第1非磁性部よりも退避している、磁気記録媒体。
【請求項2】
前記第1非磁性部は、前記記録層の前記第1面の側において、前記第1磁性部よりも退避している、請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
前記第1面の側にて前記記録層を覆う保護膜を更に備え、当該保護膜において、前記記録層の前記サーボ領域を覆う領域は、前記ユーザデータ領域を覆う領域よりも厚い、請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
前記記録層の前記第2面の側に位置する軟磁性層を更に備える、請求項1から3のいずれか一つに記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の磁気記録媒体を備える、磁気記録装置。
【請求項6】
第1領域および第2領域を有する基材の上に磁性材料を成膜することによって磁性材層を形成する工程と、
前記磁性材層をパターニングすることによって複数の第1磁性部を前記第1領域上に形成し且つ複数の第2磁性部を前記第2領域上に形成する工程と、
非磁性材料を前記第1磁性部間および前記第2磁性部間に堆積するように前記基材上に成膜することによって非磁性材層を形成する工程と、
前記非磁性材層に対して前記基材とは反対の側から異方性エッチング処理を施すことによって前記第1領域上に第1非磁性部を形成し且つ当該第1非磁性部および前記第2磁性部よりも前記基材側に表面が退避した第2非磁性部を前記第2領域上に形成する工程と、を含む磁気記録媒体製造方法。
【請求項7】
前記基材とは反対の側にて前記第1磁性部および前記第1非磁性部を覆う第1部分と、前記基材とは反対の側にて前記第2磁性部および前記第2非磁性部を覆い且つ前記第1部分よりも薄い第2部分とを有する、保護膜を形成する工程を更に含む、請求項6に記載の磁気記録媒体製造方法。
【請求項1】
第1面および当該第1面とは反対の第2面を有し且つサーボ領域およびユーザデータ領域を含む記録層を備え、
前記サーボ領域は、複数の第1磁性部および当該第1磁性部間に介在する第1非磁性部を含み、
前記ユーザデータ領域は、複数の第2磁性部および当該第2磁性部間に介在する第2非磁性部を含み、
前記第2非磁性部は、前記記録層の前記第1面の側において、前記第2磁性部よりも退避し且つ前記第1非磁性部よりも退避している、磁気記録媒体。
【請求項2】
前記第1非磁性部は、前記記録層の前記第1面の側において、前記第1磁性部よりも退避している、請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
前記第1面の側にて前記記録層を覆う保護膜を更に備え、当該保護膜において、前記記録層の前記サーボ領域を覆う領域は、前記ユーザデータ領域を覆う領域よりも厚い、請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
前記記録層の前記第2面の側に位置する軟磁性層を更に備える、請求項1から3のいずれか一つに記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の磁気記録媒体を備える、磁気記録装置。
【請求項6】
第1領域および第2領域を有する基材の上に磁性材料を成膜することによって磁性材層を形成する工程と、
前記磁性材層をパターニングすることによって複数の第1磁性部を前記第1領域上に形成し且つ複数の第2磁性部を前記第2領域上に形成する工程と、
非磁性材料を前記第1磁性部間および前記第2磁性部間に堆積するように前記基材上に成膜することによって非磁性材層を形成する工程と、
前記非磁性材層に対して前記基材とは反対の側から異方性エッチング処理を施すことによって前記第1領域上に第1非磁性部を形成し且つ当該第1非磁性部および前記第2磁性部よりも前記基材側に表面が退避した第2非磁性部を前記第2領域上に形成する工程と、を含む磁気記録媒体製造方法。
【請求項7】
前記基材とは反対の側にて前記第1磁性部および前記第1非磁性部を覆う第1部分と、前記基材とは反対の側にて前記第2磁性部および前記第2非磁性部を覆い且つ前記第1部分よりも薄い第2部分とを有する、保護膜を形成する工程を更に含む、請求項6に記載の磁気記録媒体製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2010−157281(P2010−157281A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334184(P2008−334184)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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