説明

磁気記録媒体、記録再生装置および磁気記録媒体製造用スタンパー

【課題】製造コストの高騰を招くことなく、記録データを高速に記録再生する。
【解決手段】基材の第1面10aおよび第2面10bのサーボパターン領域Asに凸部21(記録領域)と凹部22(非記録領域)とを有する凹凸パターン20によってサーボパターン20sが形成され、両サーボパターン領域Asには、プリアンブルパターン領域Ap、サーボアドレスマーク領域Am、アドレスパターン領域Aaおよびバーストパターン領域Abが回転方向(矢印R)において順に規定され、第1面10aのプリアンブルパターン領域Ap、サーボアドレスマーク領域Amおよびアドレスパターン領域Aaに形成された凹凸パターン20は、第2面10bにおける凸部21の形成位置に対応する第1面10aの形成位置に凹部22が形成されると共に第2面10bにおける凹部22の形成位置に対応する第1面10aの形成位置に凸部21が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録領域と非記録領域とを有するパターンによって円板状の基材における一方の面および他方の面のサーボパターン領域にサーボパターンがそれぞれ形成された回転型の磁気記録媒体、その磁気記録媒体を備えて構成された記録再生装置、およびその磁気記録媒体を製造可能に構成された磁気記録媒体製造用スタンパーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の磁気記録媒体を備えた記録再生装置として、両面垂直磁気記録型のパターンドディスク媒体(以下、「磁気ディスク」ともいう)を備えた磁気ディスクドライブ(以下、「ディスクドライブ」ともいう)が特開2006−31856号公報に開示されている。このディスクドライブに搭載された磁気ディスクでは、ガラス基板の上面(一方の面)および下面(他方の面)にサーボ領域およびデータ領域(以下、「サーボパターン領域」および「データ記録領域」ともいう)がミラー対称に配置されている。また、磁気ディスクのデータ記録領域には、円環状の磁性トラック(ディスクリートトラック)が半径方向において所定のトラックピッチで形成されている。この場合、この磁気ディスクでは、ガラス基板上に形成された下地層の上に記録層(磁性層)が凸状に形成されることによって磁性トラックが形成されると共に、半径方向において隣接する磁性トラックの間には、非磁性ガード(この例では、空気)が設けられている。
【0003】
さらに、この磁気ディスクにおけるサーボパターン領域には、プリアンブル部、アドレス部およびバースト部(以下、「プリアンブルパターン領域」、「アドレスパターン領域」および「バーストパターン領域」ともいう)が設けられている。また、この磁気ディスクでは、サーボパターン領域内の各領域(以下、サーボパターン領域内の各領域を区別しないときには、「機能領域」ともいう)において、データ記録領域内の磁性トラックと同様にして、ガラス基板上に形成された下地層の上に凸状の磁性層(以下、「凸状磁性部」ともいう)が形成されると共に隣接する凸状磁性部の間に非磁性部(この例では、空気)が設けられることによってサーボパターンがプリビット形成されている。この場合、この磁気ディスクでは、ガラス基板の一方の面および他方の面において凸状磁性部および非磁性部の形成位置関係が一致するように(ミラー対称となるように)各機能領域内にサーボパターンが形成されている。
【0004】
なお、本明細書における「形成位置関係が一致している」との状態は、一方の面(または他方の面)における記録領域(凸状磁性部)の形成位置に対応する他方の面(または一方の面)の形成位置に記録領域(凸状磁性部)が形成され、かつ、一方の面(または他方の面)における非記録領域(非磁性部)の形成位置に対応する他方の面(または一方の面)の形成位置に非記録領域(非磁性部)が形成されている状態を意味する。
【0005】
また、この磁気ディスクでは、その製造時において、磁気ディスクを厚み方向で貫通する向きの磁界を印加されることにより、磁気ディスクの一方の面および他方の面の全域において、各凸状磁性部が同一方向(この例では、磁気ディスクの厚み方向であって、一方の面から他方の面に向かう向き)にDC着磁(直流磁化)されている。このため、この磁気ディスクでは、一方の面における凸状磁性部が例えば磁気ディスクの表面から厚み方向における内側に向かう向きで直流磁化されると共に、他方の面における凸状磁性部が磁気ディスクの厚み方向における内側から表面に向かう向きで直流磁化されている。したがって、この磁気ディスクを搭載したディスクドライブでは、CPUが磁気ヘッドを介して一方の面および他方の面の各サーボパターン領域(各機能領域)からサーボパターンを磁気的に読み出してサーボデータを抽出することが可能となっている。これにより、抽出したサーボデータに基づくトラッキングサーボ制御が実行される。
【特許文献1】特開2006−31856号公報(第5−16頁、第1−8図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従来のディスクドライブには、以下の問題点がある。すなわち、従来のディスクドライブでは、前述したように、磁気ディスクに対してその厚み方向で貫通する向きの磁界が印加されることにより、磁気ディスクの一方の面および他方の面において各凸状磁性部が同一方向に直流磁化されている。このため、この磁気ディスクでは、一方の面のディスク表面側から見た一方の面の各凸状磁性部の磁化方向と、他方の面のディスク表面側から見た他方の面の各凸状磁性部の磁化方向とが反転している。したがって、従来のディスクドライブでは、磁気ディスクの一方の面および他方の面において、磁気ディスクの一方の面に対する一方の面用の磁気ヘッドの位置を基準とした一方の面における各凸状磁性部の磁化方向と、磁気ディスクの他方の面に対する他方の面用の磁気ヘッドの位置を基準とした他方の面における各凸状磁性部の磁化方向とが反転している。このため、従来のディスクドライブでは、磁気ディスクの一方の面および他方の面のいずれか一方からの磁気的信号の読み出しに際して、CPUが再生信号に対する極性反転処理を実行してサーボデータを抽出する構成が採用されている。
【0007】
この場合、今日の記録再生装置(ハードディスクドライブ等)においては、単位時間当りに記録再生する記録データの大容量化に伴い、磁気ディスクの回転数(回転速度)が非常に高く(速く)なっている。また、高密度記録化に伴い、サーボパターン領域やデータ記録領域等の単位面積当りに記録されているサーボデータのデータ量も非常に多くなっている。このため、今日の記録再生装置では、単位時間当りに磁気ヘッドの下方を通過する凸状磁性部の数や非磁性部の数が多数となることに起因して、再生信号からのサーボデータの抽出および抽出したサーボデータに基づくトラッキングサーボ制御を高速に実行する必要が生じている。
【0008】
しかしながら、従来のディスクドライブでは、磁気ディスクの一方の面および他方の面のいずれか一方からの磁気的信号の読み出しに際して再生信号に対する極性反転処理を実行する必要があるため、この極性反転処理に要する時間だけ、高速なサーボデータの抽出が困難となっている。したがって、従来のハードディスクドライブには、高速なトラッキングサーボ制御が困難であることに起因して、記録データの高速な記録再生が困難であるという問題点が存在する。
【0009】
この場合、磁気ディスクの一方の面用のサーボ制御用データおよび他方の面用のサーボ制御用データを別個に用意する、または、一方の面用のサーボ制御用回路および他方の面用のサーボ制御用回路を別個に用意することで、再生信号に対する極性反転処理を実行することなく、一方の面および他方の面の双方からサーボデータをそれぞれ抽出することが可能となる。しかし、このように、相反する2つのサーボ制御用データ、またはサーボ制御用回路を別個に用意した場合、サーボ制御用データ(制御プログラム)のプログラミングに要するコストや、2つのサーボ制御用回路を実装するのに要するコストが高騰することに起因して、ディスクドライブの製造コストが高騰するという問題が発生する。
【0010】
また、磁気ディスクの製造時において、例えば、磁気ヘッドを用いて一方の面および他方の面を個別的に直流磁化処理して、一方の面における凸状磁性部に対する磁化方向と、他方の面における凸状磁性部に対する磁化方向とを相違させる(例えば、一方の面および他方の面の両面において、それぞれ磁気ディスクの厚み方向における内側に向かう向きで凸状磁性部を直流磁化する)ことで、再生信号に対する極性反転処理を実行することなく、単一のサーボ制御用データおよび単一のサーボ制御用回路によって再生信号からサーボデータを抽出することが可能となる。しかし、このような製造方法を採用した場合、磁化処理に要する時間が長くなることに起因して、磁気ディスクの製造コストが高騰するという問題が発生する。
【0011】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、製造コストの高騰を招くことなく、記録データの高速な記録再生を実行し得る磁気記録媒体、その磁気記録媒体を備えた記録再生装置、およびその磁気記録媒体を製造可能に構成された磁気記録媒体製造用スタンパーを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成すべく本発明に係る磁気記録媒体は、円板状の基材における一方の面のサーボパターン領域および他方の面のサーボパターン領域に記録領域と非記録領域とを有するパターンによってサーボパターンが形成された回転型の磁気記録媒体であって、前記両サーボパターン領域には、複数の機能領域が当該磁気記録媒体の回転方向において順に規定され、前記一方の面における前記複数の機能領域のうちの少なくとも1つの領域に形成された前記パターンは、前記他方の面における前記記録領域の形成位置に対応する当該一方の面における形成位置に前記非記録領域が形成されると共に当該他方の面における前記非記録領域の形成位置に対応する当該一方の面における形成位置に前記記録領域が形成されている。
【0013】
この場合、本明細書における「記録領域」とは、「記録された磁気的信号を読み出し可能に保持するように構成された領域(つまり磁気的信号を読み出し可能に保持する能力を有するように構成された領域)」を意味する。また、本明細書における「非記録領域」とは、「磁気的信号を読み出し可能に保持する上記の能力が記録領域の能力よりも低くなるように構成された領域、または、その能力を実質的に有しないように構成された領域」を意味する。具体的には、本明細書における「非記録領域」とは、「磁気的信号を記録した状態において、その領域から発生する磁界が上記の記録領域よりも小さい領域、または、その領域から発生する磁界が実質的には存在しない領域」を意味する。
【0014】
また、「他方の面における記録領域(または非記録領域)の形成位置に対応する一方の面における形成位置」とは、「他方の面における記録領域(または非記録領域)」に対して機能的に対応する一方の面における記録領域または非記録領域が形成されるべき位置を意味し、対応する各面の記録領域(または非記録領域)が基材の一方の面および他方の面において基材の厚み方向で対向している位置だけではなく、対向していない状態の位置も含まれる。したがって、例えば、インプリント法やリソグラフィ法によって各面に凹凸パターンを形成することで記録領域および非記録領域を形成する場合、各面に押し当てる各スタンパーにおける円周方向(磁気記録媒体における回転方向)や径方向に対する位置ずれ、および、パターンの描画位置の円周方向や径方向に対する位置ずれがない状態では、一方の面における記録領域または非記録領域が形成されるべき位置が、対応する他方の面の記録領域(または非記録領域)の形成位置と基材の厚み方向で対向し、位置ずれがある状態では、一方の面における記録領域または非記録領域が形成されるべき位置が、対応する他方の面の記録領域(または非記録領域)の形成位置と厚み方向で対向しないこととなる。
【0015】
また、本発明に係る磁気記録媒体は、符号化されたサーボデータに対応して前記パターンが形成されている前記機能領域を前記少なくとも1つの領域とし、前記一方の面における当該機能領域に形成された前記パターンは、前記他方の面における前記サーボデータを構成する前記記録領域の形成位置に対応する当該一方の面における形成位置に前記非記録領域が形成されると共に当該他方の面における当該サーボデータを構成する前記非記録領域の形成位置に対応する当該一方の面における形成位置に前記記録領域が形成されている。
【0016】
なお、基材の一方の面および他方の面において、上記のサーボデータを構成する記録領域の数およびサーボデータを構成する非記録領域の数が同数ではないときには、少なくとも、いずれか少ない数の領域において、記録領域および非記録領域の形成位置関係が反転していればよい。また、本明細書における「形成位置関係が反転している」との状態は、一方の面(または他方の面)における記録領域の形成位置に対応する他方の面(または一方の面)の形成位置に非記録領域が形成され、かつ、一方の面(または他方の面)における非記録領域の形成位置に対応する他方の面(または一方の面)の形成位置に記録領域が形成されている状態を意味する。
【0017】
さらに、本発明に係る磁気記録媒体は、前記一方の面における前記複数の機能領域のうちのバーストパターン領域に形成された前記パターンが、前記他方の面における前記記録領域の形成位置に対応する当該一方の面における形成位置に前記記録領域が形成されると共に当該他方の面における前記非記録領域の形成位置に対応する当該一方の面における形成位置に前記非記録領域が形成されている。
【0018】
また、本発明に係る記録再生装置は、上記のいずれかの磁気記録媒体と、当該磁気記録媒体からの磁気的信号の読み出しおよび当該磁気記録媒体に対する磁気的信号の書き込みを実行する磁気ヘッドと、当該磁気記録媒体の前記サーボパターン領域から読み出された前記磁気的信号に基づいてサーボデータを抽出して当該抽出したサーボデータに基づいて前記磁気ヘッドをトラッキングサーボ制御する制御部とを備えている。
【0019】
さらに、本発明に係る記録再生装置は、前記制御部は、符号化されたサーボデータに対応して前記パターンが形成されている前記機能領域からの磁気的信号の読み取りに伴って前記磁気ヘッドから出力された出力信号を差分処理または微分処理して当該サーボデータを抽出する。
【0020】
また、本発明に係る磁気記録媒体製造用スタンパーは、上記のいずれかの磁気記録媒体における前記一方の面の前記パターンの前記記録領域に対応して形成された凹部と当該一方の面の前記パターンの前記非記録領域に対応して形成された凸部とを有する凹凸パターンが形成された第1スタンパー、および前記他方の面の前記パターンの前記記録領域に対応して形成された凹部と当該他方の面の前記パターンの前記非記録領域に対応して形成された凸部とを有する凹凸パターンが形成された第2スタンパーとからなる一対のスタンパーで構成されている。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る磁気記録媒体では、一方の面におけるサーボパターン領域内の複数の機能領域のうちの少なくとも1つの領域に形成されたパターンが、他方の面における記録領域の形成位置に対応する一方の面における形成位置に非記録領域が形成されると共に他方の面における非記録領域の形成位置に対応する一方の面における形成位置に記録領域が形成されている。また、本発明に係る記録再生装置では、上記の磁気記録媒体と、磁気的信号の読み出しおよび書き込みを実行する磁気ヘッドと、読み出された磁気的信号に基づいてサーボデータを抽出して抽出したサーボデータに基づいて磁気ヘッドをトラッキングサーボ制御する制御部とを備えている。
【0022】
したがって、本発明に係る磁気記録媒体および記録再生装置によれば、磁気ディスクの一方の面および他方の面において凸状磁性部(記録領域)および非磁性部(非記録領域)の形成位置関係が一致していて、かつ磁気ディスクの全域(両面)を一括して直流磁化されていることによって、サーボパターン領域からのサーボパターンの読み出し時に再生信号に対する極性反転処理を必要とする従来のディスクドライブとは異なり、磁気記録媒体の全域を一括して直流磁化した状態においても、再生信号に対する極性反転処理を実行することなく、一方の面および他方の面の双方からサーボデータをそれぞれ抽出することができる。したがって、磁気記録媒体の一方の面および他方の面の双方において、高速な記録再生を実行することができる。
【0023】
さらに、本発明に係る磁気記録媒体では、符号化されたサーボデータに対応してパターンが形成されている機能領域を上記の少なくとも1つの領域とし、一方の面における機能領域に形成されたパターンは、他方の面におけるサーボデータを構成する記録領域の形成位置に対応する一方の面における形成位置に非記録領域が形成されると共に他方の面におけるサーボデータを構成する非記録領域の形成位置に対応する一方の面における形成位置に記録領域が形成されている。また、本発明に係る記録再生装置では、制御部が、符号化されたサーボデータに対応してパターンが形成されている機能領域からの磁気的信号の読み取りに伴って磁気ヘッドから出力された出力信号を差分処理または微分処理してサーボデータを抽出する。
【0024】
したがって、本発明に係る磁気記録媒体および記録再生装置によれば、サーボ制御用データ(制御プログラム)やサーボ制御用回路を磁気ディスクの一方の面および他方の面毎に別個に用意したり、磁気ディスクの一方の面および他方の面に対して別個に磁化処理を実行したりすることなく、単一のサーボ制御用データ、単一のサーボ制御用回路によって磁気ディスクの一方の面および他方の面からサーボデータをそれぞれ抽出することができる。これにより、記録再生装置の製造コストを十分に低減することができる。
【0025】
さらに、本発明に係る磁気記録媒体では、一方の面における複数の機能領域のうちのバーストパターン領域に形成されたパターンが、他方の面における記録領域の形成位置に対応する一方の面における形成位置に記録領域が形成されると共に他方の面における非記録領域の形成位置に対応する一方の面における形成位置に非記録領域が形成されている。したがって、本発明に係る磁気記録媒体によれば、記録領域の面積と非記録領域の面積との比が大きく相違するバーストパターン領域について、その面積比を磁気記録媒体の両面において等しい比とすることができるため、製造時における加工条件を磁気記録媒体の両面において同様の条件とすることができる。具体的には、例えば、インプリント法による磁気記録媒体製造用スタンパーを用いた樹脂マスクの形成処理時においてマスク形成対象体の一方の面および他方の面の双方に対して同一のインプリント条件に従ってインプリント処理することができるため、凹部の深さ(凸部の高さ)が一方の面および他方の面の双方において互いに等しい樹脂マスクを形成することができる。また、エッチング処理によって磁性層にパターンを形成する際に、エッチング条件を磁気記録媒体の両面において同様の条件とすることができるため、例えば両面を同時にエッチングすることが容易となる。
【0026】
また、本発明に係る磁気記録媒体製造用スタンパーでは、上記のいずれかの磁気記録媒体における一方の面のパターンの記録領域に対応して形成された凹部と一方の面のパターンの非記録領域に対応して形成された凸部とを有する凹凸パターンが形成された第1スタンパー、および他方の面のパターンの記録領域に対応して形成された凹部と他方の面のパターンの非記録領域に対応して形成された凸部とを有する凹凸パターンが形成された第2スタンパーとからなる一対のスタンパーで構成されている。したがって、本発明に係る磁気記録媒体製造用スタンパーによれば、磁気記録媒体の全域を一括して直流磁化した状態においても、再生信号に対する極性反転処理を実行することなく、一方の面および他方の面の双方からサーボデータをそれぞれ抽出可能な磁気記録媒体をインプリント法等によって容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る磁気記録媒体、記録再生装置および磁気記録媒体製造用スタンパーの最良の形態について説明する。
【0028】
最初に、本発明に係る記録再生装置の構成について、図面を参照して説明する。
【0029】
図1に示すハードディスクドライブ1は、本発明に係る記録再生装置の一例であって、モータ2、コントローラ2a、一組の磁気ヘッド3,3、検出部4a、電源部4b、ドライバ5、制御部6、記憶部7および磁気ディスク10を備えて、各種データの記録再生が可能に構成されている。なお、ハードディスクドライブ1は、実際には、複数枚の磁気ディスク10を備えると共に、各磁気ディスク10毎に一組の磁気ヘッド3,3が配設されて構成されているが、本発明についての理解を容易とするために、1枚の磁気ディスク10と、この磁気ディスク10に対する記録データの記録再生を実行するための一組の磁気ヘッド3,3を備えているものとして、以下に説明する。この場合、磁気ディスク10は、本発明に係る磁気記録媒体の一例である両面記録型のディスクリートトラック媒体(パターンド媒体の一例)であって、図2,3に示すように、全体として円板状に形成されて、モータ2の回転軸に取り付けられている。一方、モータ2は、制御部6の制御に従って磁気ディスク10を一例として4200rpmの回転数で定速回転させる。また、コントローラ2aは、制御部6から出力された制御信号S4に従ってモータ2を回転させる。
【0030】
磁気ヘッド3,3は、一方の磁気ヘッド3が磁気ディスク10の第1面10aに対向配置されてスイングアーム3aを介してアクチュエータ3bに取り付けられると共に、他方の磁気ヘッド3が磁気ディスク10の第2面10bに対向配置されてスイングアーム3aを介してアクチュエータ3bに取り付けられている。この場合、両磁気ヘッド3,3は、磁気ディスク10に対する記録データの記録再生時においてアクチュエータ3bによってスイングアーム3a,3aが回動させられることで磁気ディスク10上を移動させられる。また、磁気ヘッド3は、磁気ディスク10のサーボパターン領域As(図2,3,5参照)からのサーボ信号の読み出しと、データ記録領域At(図2,3,5参照)に対する記録データの磁気的な書き込みと、データ記録領域Atに磁気的に書き込まれている記録データの読み出しとを実行する。なお、磁気ヘッド3は、実際には磁気ディスク10に対して磁気ヘッド3を浮上させるためのスライダの底面(エアベアリング面)に記録素子と再生素子とが形成されて構成されているが、スライダ、記録素子および再生素子等についての説明および図示を省略する。アクチュエータ3bは、制御部6の制御下でドライバ5から供給される駆動電流によってスイングアーム3aをスイングさせることにより、磁気ヘッド3を磁気ディスク10上の任意の記録再生位置に移動させる。
【0031】
検出部4aは、制御部6と相俟って本発明における制御部を構成し、磁気ヘッド3によって出力された出力信号S0(アナログ信号:サーボ信号)を差分処理してサーボデータを抽出して検出信号S1を生成し、生成した検出信号S1を制御部6に出力する。電源部4bは、磁気ディスク10に対する記録データの記録時において、制御部6から出力された制御信号S2に従い、所定の周期で電位を反転させた交流電圧を磁気ヘッド3に供給する。ドライバ5は、制御部6から出力された制御信号S3に従ってアクチュエータ3bを制御することで磁気ヘッド3を所望のデータ記録トラックにオントラックさせる。制御部6は、ハードディスクドライブ1を総括的に制御する。また、制御部6は、検出部4aから出力された検出信号(サーボデータ)S1と、記憶部7に記憶されているサーボ制御用データDとに基づいて、コントローラ2a、電源部4bおよびドライバ5を制御する(トラッキングサーボ制御処理および記録データの記録再生処理の実行)。記憶部7は、上記のサーボ制御用データDなどを記憶する。
【0032】
磁気ディスク10は、モータ2や磁気ヘッド3などと共にハードディスクドライブ1の筐体内に配設されている。この磁気ディスク10は、図4に示すように、軟磁性層12、中間層13および磁性層14がガラス基板11の第1面10a(本発明における「一方の面」)および第2面10b(本発明における「他方の面」)にこの順で形成されて、一例として、垂直記録方式による記録データの記録が可能に構成されている。この場合、図2,3に示すように、この磁気ディスク10では、第1面10aの中央部に1つの判別用マークMが形成されると共に、第2面10bの中央部に2つの判別用マークM,Mが形成されて、判別用マークMの数によって第1面10aおよび第2面10bの判別が可能に構成されている。また、図4に示すように、磁性層14は、一例として、突端部側(同図における上端部側)が磁性材料で形成された複数の凸部21と、隣り合う凸部21の間の凹部22とが形成されて、第1面10aにおいて凹凸パターン20aを構成し、第2面10bにおいて凹凸パターン20bを構成する。また、凹凸パターン20a,20bの各凹部22内には、SiO、C(炭素)および樹脂材料等の非磁性材料15が埋め込まれ、これにより、磁気ディスク10の表面が平坦化されている。
【0033】
この場合、この磁気ディスク10では、凸部21の形成領域が本発明における記録領域に相当し、凹部22の形成領域が本発明における非記録領域に相当する。さらに、この磁気ディスク10では、各凹部22内に埋め込まれた(隣り合う凸部21,21の間に埋め込まれた)非磁性材料15、および磁性層14(凸部21)の表面を覆うようにして、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)等によって厚みが4nm程度の保護層16(DLC膜)が形成されている。また、保護層16の表面には、磁気ヘッド3および磁気ディスク10の双方の傷付きを回避するための潤滑剤(一例として、フォンブリン系の潤滑剤)が塗布されている。
【0034】
ガラス基板11は、本発明における基材に相当し、ガラス板を表面研磨して厚みが0.6mm程度の円板状に形成されている。なお、本発明における基材は、ガラス基板に限定されず、アルミニウムやセラミックなどの各種非磁性材料で円板状に形成した基材を使用することができる。軟磁性層12は、CoZrNb合金などの軟磁性材料をスパッタリングすることによって厚みが50nm〜200nm程度の薄膜状に形成されている。中間層13は、磁性層14を形成するための下地層として機能する層であって、Ru、CrおよびCoCr非磁性合金などの中間層形成用材料をスパッタリングすることによって厚みが40nm程度の薄膜状に形成されている。磁性層14は、前述したように、凹凸パターン20a,20b(図5に示すデータトラックパターン20tおよびサーボパターン20s)を構成する層であって、例えばCoCrPt合金をスパッタリングした層に対してエッチング処理することによって各凹部22が形成されている。
【0035】
この場合、図2,3に示すように、この磁気ディスク10では、第1面10aおよび第2面10bの双方において、各データ記録領域Atの間にサーボパターン領域Asが規定されてデータ記録領域Atおよびサーボパターン領域Asが磁気ディスク10の回転方向(矢印Rの向き)において交互に並ぶように規定されている。なお、本明細書では、回転方向において並ぶ2つのデータ記録領域Atによって挟まれた領域(1つのデータ記録領域Atにおける回転方向に対して下流側の端部から、他の1つのデータ記録領域Atにおける回転方向に対して上流側の端部までの間の領域)をサーボパターン領域Asとする。また、データ記録領域Atにおける回転方向側の端部は、そのデータ記録領域に形成された複数のデータ記録トラック(各凸部21)における回転方向側の各端部を連結した仮想線分(磁気ディスク10の半径方向に沿った直線状または円弧状の線分)と一致しているものとする。
【0036】
また、この磁気ディスク10を搭載したハードディスクドライブ1では、前述したようにモータ2が制御部6の制御に従って磁気ディスク10を角速度一定で回転させるように構成されている。したがって、図2,3に示すように、この磁気ディスク10では、単位時間当たりに磁気ヘッド3の下方を通過させられる磁気ディスク10上の長さに比例して、磁気ディスク10の回転方向に沿ったデータ記録領域Atの長さ、および回転方向に沿ったサーボパターン領域Asの長さがデータトラックパターン20tの中心Oから離間するほど長くなるように(データ記録領域Atおよびサーボパターン領域Asがその内周側領域よりも外周側領域ほど幅広となるように)規定されている。この結果、データ記録領域At内に形成されたデータ記録トラック(凸部21)における突端面の回転方向に沿った長さや、サーボパターン領域As内に形成されたサーボパターン20s用の各凸部21における突端面の回転方向に沿った基準の長さ、およびサーボパターン20s用の各凹部22の回転方向に沿った基準の開口長(隣り合う2つの凸部21における両突端面において対向する端部の間の長さ:例えば、単位信号長に対応する長さ)は、磁気ディスク10の内周側領域よりも外周側領域ほど長くなっている。
【0037】
また、図5に示すように、データ記録領域Atには、データトラックパターン20tが形成されている。なお、同図および後に参照する図6〜8,12〜17では、凹凸パターン20a,20bにおける凸部21の形成部位(本発明における記録領域)を斜線で塗り潰して図示している。この場合、データ記録領域At内のデータトラックパターン20tは、中心O(図2,3参照)を中心として所定の配列ピッチで互いに分割された同心円状(または、螺旋状)の数多くのデータ記録用トラックを構成する複数の凸部21(磁気ディスク10の回転方向に沿って連続的に形成されて回転方向に長い帯状の凸部21)と、ガードバンド部を構成する複数の凹部22(各凸部21の間の凹部22:トラック間凹部)とを備えて構成されている。また、データ記録領域At内の各凸部21および各凹部22は、一例として、第1面10aおよび第2面10bの双方において、その半径方向の長さが互いにほぼ等しくなるように規定されると共に、凸部21の形成ピッチ(すなわち、データ記録トラックのトラックピッチ)や、磁気ディスク10における半径方向の長さ(すなわち、データ記録トラックやガードバンド部の半径方向の長さ)が第1面10aおよび第2面10bの双方において磁気ディスク10の内周部から外周部までの全域において互いにほぼ等しくなるように形成されている。
【0038】
この場合、この磁気ディスク10では、第1面10aのデータ記録領域Atに形成されたデータトラックパターン20t(凹凸パターン20a)が、第2面10bにおけるデータ記録領域At内のデータトラックパターン20t(凹凸パターン20b)における凸部21の形成位置に対応する第1面10aの形成位置に凸部21が形成されると共に、第2面10bにおけるデータ記録領域At内のデータトラックパターン20t(凹凸パターン20b)における凹部22の形成位置に対応する第1面10aの形成位置に凹部22が形成されている。すなわち、この磁気ディスク10では、第1面10aおよび第2面10bにおいてデータ記録領域At内の凸部21および凹部22の形成位置関係が一致している。なお、磁気ディスク10の回転中心とデータトラックパターン20tの中心Oとが第1面10aおよび第2面10bの双方において一致しているのが好ましいが、磁気ディスク10の回転中心とデータトラックパターン20tの中心Oとの間には、第1面10aおよび第2面10b毎に製造誤差に起因する30〜50μm程度の極く小さなずれが生じることがある。しかし、この程度のずれ量であれば磁気ヘッド3に対するトラッキングサーボ制御が十分に可能であるため、回転中心と中心Oとは、実質的には同様であるといえる。
【0039】
一方、サーボパターン領域Asには、本発明における機能領域に相当する複数の領域が回転方向において並んで規定されて、各機能領域内にトラッキングサーボ制御用の各種サーボパターンを構成する複数の凸部21および複数の凹部22を有する凹凸パターン20a,20b(サーボパターン20s)が形成されている。具体的には、図5に示すように、サーボパターン領域As内には、サーボパターン20sによってプリアンブルパターンが形成されたプリアンブルパターン領域Apと、サーボパターン20sによってサーボアドレスマーク(サーボアドレスマークパターン)が形成されたサーボアドレスマーク領域Amと、サーボパターン20sによってアドレスパターンが形成されたアドレスパターン領域Aaと、サーボパターン20sによってバーストパターンが形成されたバーストパターン領域Abとが回転方向において順に規定されている(本発明における「機能領域」の一例)。また、バーストパターン領域Ab内には、バーストパターンにおける各信号領域に対応する4つのバースト領域が規定されている。なお、実際には、ターミナルパターン領域やパリティパターン領域等の各種機の領域が規定されて凹凸パターン20a,20b(サーボパターン20s)が形成されているが、本発明についての理解を容易とするために、これらの領域についての図示および説明を省略する。
【0040】
プリアンブルパターン領域Apは、本発明における「符号化されたサーボデータに対応してパターンが形成された領域」の一例であって、磁気ディスク10の半径方向(図5における上下方向)に長い帯状の複数の凸部21が磁気ディスク10の回転方向(矢印Rの向き)に沿って凹部22を挟んで形成されている。具体的には、プリアンブルパターン領域Apに形成されたプリアンブルパターンは、アドレスパターン領域Aaやバーストパターン領域Ab等から各種制御信号を読み取るための基準クロックを磁気ディスク10の回転状態(回転速度)に応じて補正するためのサーボパターンであって、一例として、凸部21および凹部22の回転方向に沿った長さが、サーボデータにおける「1」または「0」に対応する長さ(1ビットに対応する長さ)に規定されている。
【0041】
この場合、プリアンブルパターン領域Apに形成された各凸部21における回転方向に沿った長さ、および各凹部22の回転方向に沿った長さは、中心Oからの距離が等しい同一半径位置において互いに等しい長さで、かつ磁気ディスク10の内周側領域よりも磁気ディスク10の外周側領域側の方が長くなるように規定されている。また、この磁気ディスク10において、第1面10aのプリアンブルパターン領域Apに形成されたサーボパターン20s(凹凸パターン20a)では、第2面10bのプリアンブルパターン領域Ap内のサーボパターン20s(凹凸パターン20b)における凸部21の形成位置に対応する第1面10aの形成位置に凹部22が形成されると共に第2面10bにおけるプリアンブルパターン領域Ap内のサーボパターン20s(凹凸パターン20b)の凹部22の形成位置に対応する第1面10aの形成位置に凸部21が形成されている。すなわち、この磁気ディスク10では、第1面10aおよび第2面10bにおいてプリアンブルパターン領域Ap内の凸部21および凹部22の形成位置関係が反転している。
【0042】
なお、図6に示すように、プリアンブルパターン領域Ap内には、凸部21および凹部22が回転方向においてそれぞれ30本程度並ぶようにサーボパターン20sが形成されている。この場合、後述するようにして、第1面10aおよび第2面10bにおいて同一のサーボ制御用データDに基づくトラッキングサーボ制御を実行するためには、磁気ディスク10の回転方向におけるサーボアドレスマーク領域Am側の少なくとも5本の凸部21および少なくとも5本の凹部22において、形成位置関係が反転していればよい。なお、同図では、第1面10aのプリアンブルパターン領域Apにおける凸部21の数と、第2面10bのプリアンブルパターン領域Apにおける凹部22の数とが等しく、かつ、第1面10aのプリアンブルパターン領域Apにおける凹部22の数と、第2面10bのプリアンブルパターン領域Apにおける凸部21の数とが等しい例を図示している。したがって、この例では、第1面10aのプリアンブルパターン領域Apの回転方向(矢印Rの向き)に沿った長さと、第2面10bのプリアンブルパターン領域Apの回転方向(矢印Rの向き)に沿った長さとが互いに等しくなっている。
【0043】
一方、本発明における磁気記録媒体には、基材の一方の面および他方の面において、サーボデータを構成する記録領域の数、およびサーボデータを構成する非記録領域の数が同数ではないものがこれに含まれる。具体的には、図7に示す凹凸パターン20a,20bでは、例えば、第1面10aのプリアンブルパターン領域Ap内には、凸部21および凹部22が回転方向においてそれぞれ30本程度並ぶようにサーボパターン20sが形成され、第2面10bのプリアンブルパターン領域Ap内には、凸部21および凹部22が回転方向においてそれぞれ例えば5本並ぶようにサーボパターン20sが形成されている。この状態においても、第2面10bのプリアンブルパターン領域Apにおける凹部22の形成位置に対応する第1面の形成位置に凸部21が形成され、かつ、第2面10bのプリアンブルパターン領域Apにおける凸部21の形成位置に対応する第1面の形成位置に凹部22が形成されていれば(プリアンブルパターンを構成する少なくとも5本の凸部21および少なくとも5本の凹部22において形成位置関係が反転していれば)、図6に示す構成と同様にして、第1面10aおよび第2面10bの双方からプリアンブルパターンを読み出す(抽出する)ことができる。なお、同図では、第2面10bの回転方向上流側(同図における左側)にデータトラックパターン20tが形成された状態を図示しているが、この部位にデータトラックパターン20tおよびサーボパターン20sが形成されていない(1つの大きな凹部22または凸部21が形成されている)状態においても同様である。
【0044】
また、図8に示す凹凸パターン20a,20bでは、例えば、第1面10aのプリアンブルパターン領域Ap内には、凸部21および凹部22が回転方向においてそれぞれ30本程度並ぶようにサーボパターン20sが形成され、第2面10bのプリアンブルパターン領域Ap内には、プリアンブルパターンとして寄与する凸部21および凹部22が回転方向においてそれぞれ例えば5本並ぶようにサーボパターン20sが形成されると共にプリアンブルパターンとして寄与しない凸部21および凹部22が回転方向においてそれぞれ例えば25本並ぶようにサーボパターン20sが形成されている。この状態においても、第2面10bのプリアンブルパターン領域Apにおける凹部22の形成位置に対応する第1面の形成位置に凸部21が形成され、かつ、第2面10bのプリアンブルパターン領域Apにおける凸部21の形成位置に対応する第1面の形成位置に凹部22が形成されていれば(プリアンブルパターンを構成する少なくとも5本の凸部21および少なくとも5本の凹部22において形成位置関係が反転していれば)、図6,7に示す構成と同様にして、第1面10aおよび第2面10bの双方からプリアンブルパターンを読み出す(抽出する)ことができる。なお、図8に示すように、本明細書では、サーボパターン(この例では、プリアンブルパターン)と同様の形状の凸部21および凹部22であっても、サーボパターンとして寄与しない凸部21および凹部22の形成領域については、本発明における機能領域(この例では、プリアンブルパターン領域Ap)ではないものとする。
【0045】
サーボアドレスマーク領域Amに形成されたサーボアドレスマークは、本発明における「符号化されたサーボデータに対応してパターンが形成された領域」の他の一例であって、磁気ディスク10の半径方向(図5における上下方向)に長い帯状の複数の凸部21および半径方向に長い帯状の複数の凹部22が磁気ディスク10の回転方向(矢印Rの向き)に沿って並んで形成されている。具体的には、サーボアドレスマークは、アドレスパターンの読み取り開始位置を特定するためのサーボパターンであって、サーボアドレスマーク領域Amに形成された各凸部21における回転方向に沿った長さ、および各凹部22の回転方向に沿った長さは、中心Oからの距離が等しい同一半径位置において、一例として、第1面10aにおいては、凸部21の長さに対する凹部22の長さが2倍で、かつ磁気ディスク10の内周側領域よりも磁気ディスク10の外周側領域側の方が長くなるように規定され、第2面10bにおいては、凹部22の長さに対する凸部21の長さが2倍で、かつ磁気ディスク10の内周側領域よりも磁気ディスク10の外周側領域側の方が長くなるように規定されている。
【0046】
また、この磁気ディスク10において、第1面10aのサーボアドレスマーク領域Amに形成されたサーボパターン20s(凹凸パターン20a)では、第2面10bのサーボアドレスマーク領域Am内のサーボパターン20s(凹凸パターン20b)における凸部21の形成位置に対応する第1面10aの形成位置に凹部22が形成されると共に第2面10bにおけるサーボアドレスマーク領域Am内のサーボパターン20s(凹凸パターン20b)の凹部22の形成位置に対応する第1面10aの形成位置に凸部21が形成されている。すなわち、この磁気ディスク10では、第1面10aおよび第2面10bにおいてサーボアドレスマーク領域Am内の凸部21および凹部22の形成位置関係が反転している。
【0047】
アドレスパターン領域Aaは、本発明における「符号化されたサーボデータに対応してパターンが形成された領域」のさらに他の一例であって、このアドレスパターン領域Aaに形成されたアドレスパターンは、磁気ヘッド3がオントラックしているトラックのトラック番号や、磁気ヘッド3が位置しているセクタのセクタ番号等を示すアドレスデータに対応して、各凸部21の回転方向に沿った各長さと、各凹部22の回転方向に沿った各長さとが第1面10aおよび第2面10b毎にそれぞれ規定されている。この場合、この磁気ディスク10において、第1面10aのアドレスパターン領域Aaに形成されたサーボパターン20s(凹凸パターン20a)では、第2面10bのアドレスパターン領域Aa内のサーボパターン20s(凹凸パターン20b)における凸部21の形成位置に対応する第1面10aの形成位置に凹部22が形成されると共に第2面10bにおけるアドレスパターン領域Aa内のサーボパターン20s(凹凸パターン20b)の凹部22の形成位置に対応する第1面10aの形成位置に凸部21が形成されている。すなわち、この磁気ディスク10では、第1面10aおよび第2面10bにおいてアドレスパターン領域Aa内の凸部21および凹部22の形成位置関係が反転している。
【0048】
バーストパターン領域Abは、本発明における「符号化されたサーボデータに対応してパターンが形成された領域」とは相違する領域の一例であって、このバーストパターン領域Ab内には、磁気ディスク10上における磁気ヘッド3の位置を補正するためのバースト信号を得るためのバーストパターン(位置検出用のサーボパターン)が形成されている。この場合、この磁気ディスク10では、各バースト領域内に平面視四角形状の複数の凹部22が形成されて構成されている。
【0049】
この磁気ディスク10において、第1面10aのバーストパターン領域Abに形成されたサーボパターン20s(凹凸パターン20a)では、第2面10bのバーストパターン領域Ab内のサーボパターン20s(凹凸パターン20b)における凸部21の形成位置に対応する第1面10aの形成位置に凸部21が形成されると共に第2面10bのバーストパターン領域Ab内のサーボパターン20s(凹凸パターン20b)における凹部22の形成位置に対応する第1面10aの形成位置に凹部22が形成されている。すなわち、この磁気ディスク10では、第1面10aおよび第2面10bにおいてバーストパターン領域Ab内の凸部21および凹部22の形成位置関係が一致している。なお、上記のサーボパターン20sでは、実際には、磁気ディスク10の内周側領域や外周側領域において各凸部21や各凹部22にスキュー角が付与されているが、本発明についての理解を容易とするために、このスキュー角についての説明および図示を省略する。
【0050】
この場合、この磁気ディスク10では、後述するように、その製造時において、例えば、磁気ディスク10に対して厚み方向で貫通する向きの磁界を印加することにより、図4に矢印で示すように、磁気ディスク10の第1面10aおよび第2面10bの全域において、各凸部21が同一方向(この例では、磁気ディスク10の厚み方向であって、第1面10aから第2面10bに向かう向き)に直流磁化されている。したがって、この磁気ディスク10では、第1面10aおよび第2面10bにおいて、第1面10aに対する第1面10a用の磁気ヘッド3の位置を基準とした第1面10aにおける各凸部21の磁化方向と、第2面10bに対する第2面10b用の磁気ヘッド3の位置を基準とした第2面10bにおける各凸部21の磁化方向とが反転している。
【0051】
次に、磁気ディスク10の製造方法について説明する。
【0052】
上記の磁気ディスク10の製造に際しては、図9,10に示すスタンパー40a,40bと、図11に示す中間体60とを使用する。この場合、中間体60は、ガラス基板11、軟磁性層12、中間層13および磁性層14がガラス基板11の第1面10aおよび第2面10bにこの順で積層されると共に、第1面10aおよび第2面10bの両面において、磁性層14が金属マスク層61で覆われている。また、磁気ディスク10の製造に際しては、スタンパー40a,40bの凹凸パターン50a,50b(図9,10参照)を転写するための厚み80nm程度の樹脂マスク層(レジスト層:図示せず)によって中間体60の両金属マスク層61が覆われた状態(金属マスク層61上に樹脂マスク層が形成された状態)となる。
【0053】
一方、スタンパー40a,40bは、本発明に係る一対の磁気記録媒体製造用スタンパーに相当し、インプリント法による磁気ディスク10の製造が可能に構成されている。スタンパー40aは、本発明における第1スタンパーの一例であって、中間体60の第1面10a側に凹凸パターン20a(第1面10aにおけるデータトラックパターン20tおよびサーボパターン20s)を形成するためのマスクパターンを形成可能に凹凸パターン50aが形成されている。具体的には、図9に示すように、スタンパー40aの凹凸パターン50aは、磁気ディスク10の第1面10aに形成すべき凹凸パターン20aに対応して、凹凸パターン20aの各凹部22に対応して各凸部51が形成されると共に、凹凸パターン20aの各凸部21に対応して各凹部52が形成されている。
【0054】
また、スタンパー40bは、本発明における第2スタンパーの一例であって、中間体60の第2面10b側に凹凸パターン20b(第2面10bにおけるデータトラックパターン20tおよびサーボパターン20s)を形成するためのマスクパターンを形成可能に凹凸パターン50bが形成されている。具体的には、図10に示すように、スタンパー40bの凹凸パターン50bは、磁気ディスク10の第2面10bに形成すべき凹凸パターン20bに対応して、凹凸パターン20bの各凹部22に対応して各凸部51が形成されると共に、凹凸パターン20bの各凸部21に対応して各凹部52が形成されている。
【0055】
したがって、スタンパー40aにおけるサーボパターン領域Asに対応する領域においては、プリアンブルパターン領域Ap、サーボアドレスマーク領域Amおよびアドレスパターン領域Aaに対応する領域内の凸部51がスタンパー40bにおけるプリアンブルパターン領域Ap、サーボアドレスマーク領域Amおよびアドレスパターン領域Aaに対応する領域内の凹部52の形成位置に対応して形成されている。また、スタンパー40aにおけるサーボパターン領域Asに対応する領域においては、プリアンブルパターン領域Ap、サーボアドレスマーク領域Amおよびアドレスパターン領域Aaに対応する領域内の凹部52がスタンパー40bにおけるプリアンブルパターン領域Ap、サーボアドレスマーク領域Amおよびアドレスパターン領域Aaに対応する領域内の凸部51の形成位置に対応して形成されている。
【0056】
また、スタンパー40aにおけるサーボパターン領域Asに対応する領域においては、バーストパターン領域Abに対応する領域内の凸部51がスタンパー40bにおけるバーストパターン領域Abに対応する領域内の凸部51の形成位置に対応するスタンパー40aの形成位置に形成され、バーストパターン領域Abに対応する領域内の凹部52がスタンパー40bにおけるバーストパターン領域Abに対応する領域内の凹部52の形成位置に対応するスタンパー40aの形成位置に形成されている。なお、このスタンパー40a,40bの製造方法は特に限定されず、公知の各種のスタンパー製造方法に従って製造することができる。
【0057】
このスタンパー40a,40bを用いた磁気ディスク10の製造に際しては、まず、両面インプリント法によって中間体60の両樹脂マスク層にスタンパー40a,40bの凹凸パターン50a,50bを転写する。具体的には、スタンパー40aにおける凹凸パターン50aの形成面を中間体60における第1面10a側の樹脂マスク層に押し付けると共に、スタンパー40bにおける凹凸パターン50bの形成面を中間体60における第2面10b側の樹脂マスク層に押し付けることにより、凹凸パターン50a,50bの各凸部51を中間体60の両樹脂マスク層に押し込む。この際には、各凸部51が押し込まれた部位のレジスト(樹脂マスク層)が凹凸パターン50a,50bにおける各凹部52内に向けて移動する。
【0058】
この場合、前述したように、スタンパー40a,40bでは、バーストパターン領域Abに対応する領域内における凸部51および凹部52の形成位置関係が一致している。したがって、スタンパー40a,40bの双方において、バーストパターン領域Abに対応する領域内の凸部51の面積と凹部52の面積との比が等しくなっている。一方、スタンパー40a,40bにおけるプリアンブルパターン領域Apに対応する領域では、凸部51および凹部52の形成位置関係が反転している。しかしながら、磁気ディスク10のプリアンブルパターン領域Apにおいては、プリアンブルパターンを構成する凸部21の回転方向における長さと凹部22の回転方向における長さとが同一半径位置において互いに等しく、かつ、第1面10aおよび第2面10b間において凸部21および凹部22の形成位置が反転しているものの、凸部21の本数と凹部22の本数とは第1面10aおよび第2面10bの双方において等しい数となっている。したがって、スタンパー40a,40bでは、プリアンブルパターン領域Apに対応する領域内の凸部51の面積と凹部52の面積との比が等しくなっている。
【0059】
また、スタンパー40a,40bにおけるサーボアドレスマーク領域Amに対応する領域では、凸部51および凹部52の形成位置関係が反転している。しかしながら、磁気ディスク10のサーボアドレスマーク領域Amにおいては、サーボアドレスマークを構成する凸部21の回転方向における長さと凹部22の回転方向における長さとが第1面10aにおいて1:2で、第2面10bにおいて2:1となっている。このため、磁気ディスク10では、第1面10aおよび第2面10b間において凸部21および凹部22の面積の比が大きく相違していないため、スタンパー40a,40bでは、サーボアドレスマーク領域Amに対応する領域内の凸部51の面積と凹部52の面積との比が大きく相違する事態が回避されている。さらに磁気ディスク10のアドレスパターン領域Aaにおいては、アドレスパターンを構成する凸部21の面積と凹部22の面積との比が第1面10aおよび第2面10b間においてほぼ等しい比となっている。したがって、スタンパー40a,40bの双方において、アドレスパターン領域Aaに対応する領域内の凸部51の面積と凹部52の面積との比がほぼ等しくなっている。
【0060】
さらに、上記の磁気ディスク10では、第1面10aのデータ記録領域Atおよび第2面10bのデータ記録領域Atにおいて、凸部21(データ記録トラック)および凹部22(ガードバンド部)の形成位置関係が一致している。したがって、スタンパー40a,40bにおけるデータ記録領域Atに対応する領域においては、凸部51の面積と凹部52の面積との比が等しくなっている。このため、上記のスタンパー40a,40bでは、凸部51の面積と凹部52の面積との比がサーボパターン領域Asに対応する領域およびデータ記録領域Atに対応する領域の双方(すなわち、全域)において互いにほぼ等しくなっている。したがって、スタンパー40a,40bに対して互いに等しい押圧力を加えることにより、スタンパー40aにおける各凸部51と、スタンパー40bにおける各凸部51とを各樹脂マスク層に対して同程度の深さまで十分に押し込むことが可能となっている(「両面に対する加工条件が同様である」との状態の一例)。
【0061】
この後、中間体60からスタンパー40a,40bをそれぞれ剥離し、さらに、底面に残存する樹脂(残渣:図示せず)を第1面10aおよび第2面10bの双方において酸素プラズマ処理によって除去することにより、中間体60における両金属マスク層61の上に樹脂マスク層からなる凹凸パターン(樹脂マスクパターン:図示せず)がそれぞれ形成される。この際に、スタンパー40a,40bの各凸部51が両樹脂マスク層に対して同程度まで押し込まれることで、第1面10aに生じた残差の厚みと、第2面10bに生じた残差の厚みとが、互いにほぼ等しい厚みとなっている。したがって、磁気ディスク10の第1面10aおよび第2面10bの双方に対して同じ処理条件下で酸素プラズマ処理を実行することによって、両金属マスク層61上の残渣を等しい処理時間で除去することが可能となっている。これにより、処理時間の相違に起因して樹脂マスクにおける凹部(各凸部51を押し込んだ部位)の長さ(広さ)が第1面10aおよび第2面10bにおいて相違する状態となる事態が回避される。
【0062】
次いで、上記の両樹脂マスクパターンをマスクとして用いて、一例として、中間体60の第1面10aおよび第2面10bの双方に対して同時にエッチング処理を実行することにより、両金属マスク層61をエッチングして、両磁性層14の上に金属マスク層61からなる凹凸パターン(金属マスクパターン:図示せず)をそれぞれ形成する。続いて、両金属マスクパターンをマスクとして用いて中間体60に対するエッチング処理を実行することにより、第1面10aおよび第2面10bの双方において磁性層14をそれぞれエッチングして、複数の凸部21および複数の凹部22を有する凹凸パターン20a,20bを中間体60の磁性層14に形成する。
【0063】
この際に、前述したスタンパー40a,40bでは、凸部51の面積と凹部52の面積との比が互いにほぼ等しくなっている。このため、このスタンパー40a,40bを用いて中間体60の第1面10aおよび第2面10bに形成した両樹脂マスク層では、その凹凸パターンにおける凹部の面積と凸部の面積との比が互いにほぼ等しくなっている。したがって、中間体60の第1面10aおよび第2面10bの双方に対して同様の条件に従ってエッチング処理を行うことで、第1面10aおよび第2面10bの双方において凹部22の深さ(凸部21の高さ)が同様の凹凸パターン20a,20bが磁性層14に形成される(「両面に対する加工条件が同様である」との状態の他の一例)。これにより、データトラックパターン20tおよびサーボパターン20s(凹凸パターン20a,20b)が中間層13の上にそれぞれ形成される。
【0064】
次いで、各凸部21の上に残存している金属マスク層を第1面10aおよび第2面10bの双方においてエッチング処理によって選択的に除去して各凸部21の突端面を露出させる。続いて、非磁性材料15としてのSiOを第1面10aおよび第2面10bの双方にスパッタリングすることで、凹凸パターン20a,20bの形成面を非磁性材料15でそれぞれ覆う。続いて、磁性層14の上(各凸部21の上および各凹部22の上)の非磁性材料15の層に対してイオンビームエッチング処理を実行する。この際には、一例として、各凸部21における突端面が非磁性材料15から露出するまでイオンビームエッチング処理を継続する。これにより、中間体60の第1面10aおよび第2面10bの双方が平坦化される。次いで、中間体60の第1面10a側の表面および第2面10b側の表面の双方をそれぞれ覆うようにしてCVD法によってダイヤモンドライクカーボン(DLC)の薄膜を成膜する。これにより、第1面10aおよび第2面10bの双方において保護層16が形成される。続いて、両保護層16の表面にフォンブリン系の潤滑剤を平均厚さが例えば2nm程度となるように塗布する。
【0065】
次いで、潤滑剤の塗布が完了した磁気ディスク10を直流磁化する磁化処理を実行する。具体的には、図示しない磁化装置を用いて、磁気ディスク10に対して厚み方向で貫通する向きの磁界を印加することにより、磁気ディスク10の第1面10aおよび第2面10bの全域において、各凸部21を同一方向(この例では、磁気ディスク10の厚み方向であって、第1面10aから第2面10bに向かう向き)に一括して直流磁化する。これにより、サーボパターン領域Asからサーボパターンを磁気的に読み出すことが可能な状態となり、図4に示すように、磁気ディスク10が完成する。この後、完成した磁気ディスク10を磁気ヘッド3などと共に筐体内に配設することにより、ハードディスクドライブ1が完成する。
【0066】
次いで、ハードディスクドライブ1の動作原理について、図面を参照して説明する。
【0067】
このハードディスクドライブ1では、制御部6が、磁気ディスク10の第1面10aに対する記録データの記録再生処理時と、第2面10bに対する記録データの再生処理時とにおいて、記憶部7内の単一のサーボ制御用データDを用いたトラッキングサーボ制御を実行する。この場合、このハードディスクドライブ1に搭載されている磁気ディスク10では、前述したように、プリアンブルパターン領域Ap、サーボアドレスマーク領域Amおよびアドレスパターン領域Aaにおいて、第1面10aと第2面10bとで凸部21および凹部22の形成位置関係が反転している。具体的には、図12,13に示すように、第1面10aのプリアンブルパターン領域Apにおいては、第2面10bのプリアンブルパターン領域Apにおいて凹部22が形成されている位置P1bに対応する位置P1aに凸部21が形成されると共に、第2面10bのプリアンブルパターン領域Apにおいて凸部21が形成されている位置P2bに対応する位置P2aに凹部22が形成されている。
【0068】
この結果、この磁気ディスク10では、第1面10aのプリアンブルパターン領域Apにおける磁化パターン30a(一例として、MFM(磁気力顕微鏡)で観察したパターン)では、位置P1aが磁化領域31として認識され、位置P2aが非磁化領域32として認識されるのに対し、第2面10bのプリアンブルパターン領域Apにおける磁化パターン30bでは、位置P1bが非磁化領域32として認識され、位置P2bが磁化領域31として認識される。なお、本明細書における「磁化領域」とは、「磁化パターンにおいて所定レベル以上の磁界が存在すると認識される領域」を意味する。また、本明細書における「非磁化領域」とは、「磁界の強度が上記の磁化領域よりも低いと認識される領域、または、実質的に磁界が存在しないと認識される領域」を意味する。
【0069】
この場合、この磁気ディスク10では、前述したように、第1面10aおよび第2面10bのすべての凸部21が磁化装置によって同一方向(この例では、磁気ディスク10の厚み方向であって、第1面10aから第2面10bに向かう方向)に直流磁化されている。したがって、図12に示すように、第1面10aにおける一点鎖線の部位を磁気ヘッド3が通過したとき(磁気ディスク10の回転に伴って磁気ヘッド3の下方を第1面10aにおける一点鎖線で示す部位が矢印Rの向きで通過したとき)に、磁気ヘッド3からの出力信号S0の信号レベルが位置P1aにおいてレベル「1」となり、位置P2aにおいてレベル「0」となる場合においては、図13に示すように、第2面10bにおける一点鎖線の部位を磁気ヘッド3が通過したとき(磁気ディスク10の回転に伴って磁気ヘッド3の下方を第2面10bにおける一点鎖線で示す部位が矢印Rの向きで通過したとき)に、磁気ヘッド3からの出力信号S0の信号レベルが位置P1bにおいてレベル「0」となり、位置P2bにおいてレベル「−1」となる。
【0070】
この際に、検出部4aは、第1面10aおよび第2面10bの双方において磁気ヘッド3からの出力信号S0を差分処理することで「信号レベル1のデータ有り」または「信号レベル0のデータ有り」との検出信号S1を出力する。この場合、検出部4aは、第1面10aにおいては、信号レベルがレベル「1」のときに「信号レベル1のデータ有り」と判別し、信号レベルがレベル「0」のときに「信号レベル0のデータ有り」と判別して検出信号S1を出力する。具体的には、検出部4aは、第1面10a側の磁気ヘッド3から出力された出力信号S0(図12参照)については、一例として、信号レベル「1」の出力信号S0が出力されているとき(位置P1a上において磁気ヘッド3が出力信号S0を出力しているとき)には、信号レベル「1」から信号レベル「0」を差し引いて、信号レベルが「1(絶対値)」であるとの検出信号S1を出力し、信号レベル「0」の出力信号S0が出力されているとき(位置P2a上において磁気ヘッド3が出力信号S0を出力しているとき)には、信号レベル「0」から信号レベル「0」を差し引いて、信号レベルが「0(絶対値)」であるとの検出信号S1を出力する。したがって、制御部6は、図12に示すように、検出部4aから出力された検出信号S1に基づき、位置P1aにサーボデータの符号「1」が記録され、位置P2aにサーボデータの符号「0」が記録されていると判別する。
【0071】
また、検出部4aは、第2面10bにおいては、信号レベルがレベル「0」のときに「信号レベル1のデータ有り」と判別し、信号レベルがレベル「−1」のときに「信号レベル0のデータ有り」と判別して検出信号S1を出力する。具体的には、検出部4aは、第2面10a側の磁気ヘッド3から出力された出力信号S0(図13参照)については、一例として、信号レベル「0」の出力信号S0が出力されているとき(位置P1b上において磁気ヘッド3が出力信号S0を出力しているとき)には、信号レベル「0」から信号レベル「−1」を差し引いて、信号レベルが「1(絶対値)」であるとの検出信号S1を出力し、信号レベル「−1」の出力信号S0が出力されているとき(位置P2b上において磁気ヘッド3が出力信号S0を出力しているとき)には、信号レベル「−1」から信号レベル「−1」を差し引いて、信号レベルが「0(絶対値)」であるとの検出信号S1を出力する。したがって、制御部6は、図13に示すように、検出部4aから出力された検出信号S1に基づき、位置P1bにサーボデータの符号「1」が記録され、位置P2bにサーボデータの符号「0」が記録されていると判別する。
【0072】
このため、磁気ディスク10における第1面10aおよび第2面10bにおいてプリアンブルパターン領域Ap内の凸部21と凹部22との形成位置関係が反転しているにも拘わらず、単一のサーボ制御用データDに基づき、第1面10aおよび第2面10bにおいて同一の形成位置関係にある位置P1a,P1bには符号「1」が記録され、第1面10aおよび第2面10bにおいて同一の形成位置関係にある位置P2a,P2bには符号「0」が記録されていると判別される。これにより、第1面10aおよび第2面10bの双方において、プリアンブルパターン領域Apから磁気ディスク10の回転数に応じた基準クロックがそれぞれ取得される。なお、サーボアドレスマーク領域Amにおけるサーボデータの抽出原理については、上記のプリアンブルパターン領域Apについての説明と同様であるため、その説明を省略する。
【0073】
また、図14,15に示すように、この磁気ディスク10では、第1面10aのアドレスパターン領域Aaにおいては、第2面10bのアドレスパターン領域Aaにおいて凸部21が形成されている位置P3bに対応する位置P3aに凹部22が形成されると共に、第2面10bのアドレスパターン領域Aaにおいて凹部22が形成されている位置P4bに対応する位置P4aに凸部21が形成されている。この結果、この磁気ディスク10では、第1面10aのアドレスパターン領域Aaにおける磁化パターン30aでは、位置P3aが非磁化領域32として認識され、位置P4aが磁化領域31として認識されるのに対し、第2面10bのアドレスパターン領域Aaにおける磁化パターン30bでは、位置P3bが磁化領域31として認識され、位置P4bが非磁化領域32として認識される。
【0074】
したがって、図14に示すように、第1面10aにおける一点鎖線の部位を磁気ヘッド3が通過したとき(磁気ディスク10の回転に伴って磁気ヘッド3の下方を第1面10aにおける一点鎖線で示す部位が矢印Rの向きで通過したとき)に、磁気ヘッド3からの出力信号S0の信号レベルが位置P3aにおいてレベル「0」となり、位置P4aにおいてレベル「1」となる場合においては、図15に示すように、第2面10bにおける一点鎖線の部位を磁気ヘッド3が通過したとき(磁気ディスク10の回転に伴って磁気ヘッド3の下方を第2面10bにおける一点鎖線で示す部位が矢印Rの向きで通過したとき)に、磁気ヘッド3からの出力信号S0の信号レベルが位置P3bにおいてレベル「−1」となり、位置P4bにおいてレベル「0」となる。
【0075】
この際に、検出部4aは、前述したように、磁気ヘッド3からの出力信号S0を差分処理して「信号レベル1のデータ有り」または「信号レベル0のデータ有り」と判別して検出信号S1を出力する。したがって、制御部6は、図14に示すように、検出部4aから出力された検出信号S1に基づき、位置P3aにサーボデータの符号「0」が記録され、位置P4aにサーボデータの符号「1」が記録されていると判別する。また、制御部6は、図15に示すように、検出部4aから出力された検出信号S1に基づき、位置P3bにサーボデータの符号「0」が記録され、位置P4bにサーボデータの符号「1」が記録されていると判別する。したがって、磁気ディスク10における第1面10aおよび第2面10bにおいてアドレスパターン領域Aa内の凸部21と凹部22との形成位置関係が反転しているにも拘わらず、単一のサーボ制御用データDに基づき、第1面10aおよび第2面10bにおいて同一の形成位置関係にある位置P3a,P3bには符号「0」が記録され、第1面10aおよび第2面10bにおいて同一の形成位置関係にある位置P4a,P4bには符号「1」が記録されていると判別される。これにより、第1面10aおよび第2面10bの双方において、アドレスパターン領域Aaから同様のアドレスデータがそれぞれ抽出される。
【0076】
さらに、このハードディスクドライブ1に搭載されている磁気ディスク10では、前述したように、バーストパターン領域Abにおいて、第1面10aと第2面10bとで凸部21および凹部22の形成位置関係が一致している。具体的には、図16,17に示すように、この磁気ディスク10では、第1面10aのバーストパターン領域Abにおいては、第2面10bのバーストパターン領域Abにおいて凸部21が形成されている位置P5bに対応する位置P5aに凸部21が形成されると共に、第2面10bのバーストパターン領域Abにおいて凹部22が形成されている位置P6bに対応する位置P6aに凹部22が形成されている。この結果、この磁気ディスク10では、第1面10aのバーストパターン領域Abにおける磁化パターン30aでは、位置P5aが磁化領域31として認識され、位置P6aが非磁化領域32として認識されるのと同様にして、第2面10bのバーストパターン領域Abにおける磁化パターン30bでは、位置P5bが磁化領域31として認識され、位置P6bが非磁化領域32として認識される。
【0077】
したがって、図16に示すように、第1面10aにおける一点鎖線の部位を磁気ヘッド3が通過したとき(磁気ディスク10の回転に伴って磁気ヘッド3の下方を第1面10aにおける一点鎖線で示す部位が矢印Rの向きで通過したとき)に、磁気ヘッド3からの出力信号S0の信号レベルが位置P5aにおいてレベル「1」となり、位置P6aにおいて例えばレベル「0.25」となる場合においては、図17に示すように、第2面10bにおける一点鎖線の部位を磁気ヘッド3が通過したとき(磁気ディスク10の回転に伴って磁気ヘッド3の下方を第2面10bにおける一点鎖線で示す部位が矢印Rの向きで通過したとき)に、磁気ヘッド3からの出力信号S0の信号レベルが位置P5bにおいてレベル「−1」となり、位置P6bにおいてレベル「−0.25」となる。
【0078】
この場合、バーストパターン領域Abに形成されているバーストパターンは、前述したアドレスパターン領域Aaに形成されたアドレスパターン等の「符号化されたサーボデータに対応するパターン」のように出力信号S0をその信号レベルに基づいて「1」または「0」の符号に符号化するパターンとは異なり、磁気ヘッド3がバーストパターン領域Ab上を通過している際(磁気ヘッド3の下方をバーストパターン領域Abが通過している際)の出力信号S0の振幅の大きさ(絶対値)に基づいて、磁気ディスク10上における磁気ヘッド3の位置が検出されるように構成されている。したがって、検出部4aは、第1面10aにおけるバーストパターン領域Abを通過しているときには、磁気ヘッド3からの出力信号S0の振幅H1aおよび振幅H2a(図16参照)の絶対値(この例では、レベル「0.75」およびレベル「0.25」)を検出信号S1として出力し、第2面10bにおけるバーストパターン領域Abを通過しているときには、磁気ヘッド3からの出力信号S0の振幅H1bおよび振幅H2b(図17参照)の絶対値(この例では、レベル「0.75」およびレベル「0.25」)を検出信号S1として出力する。
【0079】
一方、制御部6は、検出部4aから出力された検出信号S1に基づき、磁気ディスク10上における磁気ヘッド3の位置(オフトラック量)を演算する。具体的には、磁気ヘッド3が第1面10aにおけるバーストパターン領域Abを通過しているときには、検出部4aから出力された検出信号S1(この例では、レベル「0.75」およびレベル「0.25」)に基づき、「(0.75−0.25)/(0.75+0.25)」=「0.5/1」との演算を実行し、この「0.5/1」との値とサーボ制御用データDとに基づいて、第1面10aにおける磁気ヘッド3のヘッド位置を特定する。また、磁気ヘッド3が第2面10bにおけるバーストパターン領域Abを通過しているときには、検出部4aから出力された検出信号S1(この例では、上記の同じレベル「0.75」およびレベル「0.25」)に基づき、「(0.75−0.25)/(0.75+0.25)」=「0.5/1」との演算を実行し、この「0.5/1」との値とサーボ制御用データDとに基づいて、第2面10bにおける磁気ヘッド3のヘッド位置を特定する。
【0080】
この結果、このハードディスクドライブ1では、磁気ディスク10における第1面10aおよび第2面10bにおいてバーストパターン領域Ab内の凸部21と凹部22との形成位置関係が一致していることによって磁化パターン30a,30bにおける磁化領域31および非磁化領域32の位置関係が一致し、結果として、磁気ヘッド3の下方を凸部21上が通過したときの出力信号S0の信号レベルが磁気ディスク10における第1面10aおよび第2面10bにおいてレベル「0」を基準として反転しているにも拘わらず、第1面10aおよび第2面10bにおいて、所望のトラック中心からの位置ずれ量が同一の場合においては、制御部6によって単一のサーボ制御用データDに基づいて、同一の位置ずれ量だけヘッド位置が位置ずれしていると判別される。これにより、制御部6は、磁気ディスク10の第1面10aおよび第2面10bの双方において、抽出したアドレスデータや磁気ヘッド3の位置ずれ量に関する情報に基づいて、磁気ヘッド3を所望のデータ記録トラック(データ記録領域At内の凸部21)にオントラックさせ、そのデータ記録トラックに対する記録データの記録再生処理を実行する。
【0081】
このように、この磁気ディスク10では、第1面10a(一方の面)におけるサーボパターン領域As内の複数の機能領域のうちの少なくとも1つの領域(この例では、プリアンブルパターン領域Ap、サーボアドレスマーク領域Amおよびアドレスパターン領域Aa等)に形成されたサーボパターン20s(凹凸パターン20a)が、第2面10b(他方の面)におけるサーボパターン20s(凹凸パターン20b)の凸部21(記録領域)の形成位置に対応する第1面10aにおける形成位置に凹部22(非記録領域)が形成されると共に第2面10bにおけるサーボパターン20s(凹凸パターン20b)の凹部22の形成位置に対応する第1面10aにおける形成位置に凸部21が形成されている。また、このハードディスクドライブ1では、上記の磁気ディスク10と、磁気的信号の読み出しおよび書き込みを実行する磁気ヘッド3と、読み出された磁気的信号に基づいてサーボデータを抽出する検出部4a、および抽出されたサーボデータに基づいて磁気ヘッドをトラッキングサーボ制御する制御部6(検出部4aおよび制御部6によって本発明における制御部が構成されている例)とを備えている。
【0082】
したがって、この磁気ディスク10およびハードディスクドライブ1によれば、磁気ディスクの一方の面および他方の面において凸状磁性部(記録領域)および非磁性部(非記録領域)の形成位置関係が一致していて、かつ磁気ディスクの全域(両面)を一括して直流磁化されていることによって、サーボパターン領域からのサーボパターンの読み出し時に再生信号に対する極性反転処理を必要とする従来のディスクドライブとは異なり、磁気ディスク10の全域を一括して直流磁化した状態においても、再生信号に対する極性反転処理を実行することなく、第1面10aおよび第2面10bの双方からサーボデータをそれぞれ抽出することができる。したがって、磁気ディスク10の第1面10aおよび第2面10bの双方において、高速な記録再生を実行することができる。
【0083】
さらに、この磁気ディスク10では、符号化されたサーボデータに対応してパターンが形成されている機能領域(この例では、プリアンブルパターン領域Ap、サーボアドレスマーク領域Amおよびアドレスパターン領域Aa等)を本発明における「少なくとも1つの領域」とし、第1面10aにおける上記の機能領域に形成されたサーボパターン20sは、第2面10bにおけるサーボデータを構成する凸部21の形成位置に対応する第1面10aにおける形成位置に凹部22が形成されると共に第2面10bにおけるサーボデータを構成する凹部22の形成位置に対応する第1面10aにおける形成位置に凸部21が形成されている。また、このハードディスクドライブ1では、符号化されたサーボデータに対応してサーボパターン20s(凹凸パターン20a)が形成されている機能領域(この例では、プリアンブルパターン領域Ap、サーボアドレスマーク領域Amおよびアドレスパターン領域Aa等)からの磁気的信号の読み取りに伴って磁気ヘッド3から出力された出力信号S0を検出部4aが差分処理または微分処理してサーボデータを抽出する。
【0084】
したがって、この磁気ディスク10およびハードディスクドライブ1によれば、サーボ制御用データ(制御プログラム)やサーボ制御用回路を磁気ディスク10の第1面10aおよび第2面10b毎に別個に用意したり、磁気ディスク10の第1面10aおよび第2面10bに対して別個に磁化処理を実行したりすることなく、単一のサーボ制御用データD(単一のサーボ制御用回路)によって磁気ディスク10の第1面10aおよび第2面10bからサーボデータをそれぞれ抽出することができる。これにより、ハードディスクドライブ1の製造コストを十分に低減することができる。
【0085】
さらに、この磁気ディスク10では、第1面10aにおける複数の機能領域のうちのバーストパターン領域Abに形成されたサーボパターン20s(凹凸パターン20a)が、第2面10bにおけるサーボパターン20s(凹凸パターン20b)の凸部21の形成位置に対応する第1面10aにおける形成位置に凸部21が形成されると共に第2面10bにおけるサーボパターン20s(凹凸パターン20b)の凹部22の形成位置に対応する第1面10aにおける形成位置に凹部22が形成されている。したがって、この磁気ディスク10によれば、凸部21の面積と凹部22の面積との比が大きく相違するバーストパターン領域Abについて、その面積比を磁気記録媒体の両面において等しい比とすることができるため、製造時における加工条件を磁気ディスクの第1面10aおよび第2面10bにおいて同様の条件とすることができる。
【0086】
具体的には、例えば、磁気ディスク10製造用のスタンパー40a,40bを用いた樹脂マスクの形成処理時において、中間体60の第1面10aおよび第2面10bの双方に対して同一のインプリント条件に従ってインプリント処理することができるため、凹部の深さ(凸部の高さ)が第1面10aおよび第2面10bの双方において互いに等しい樹脂マスクを形成することができる。したがって、残渣の取り除きに要する処理時間を中間体60の第1面10aおよび第2面10bにおいて等しく規定することができるため、取り除き時間の相違に起因する凹部の変形の度合いを第1面10aおよび第2面10bの双方において互いに等しくすることができる結果、磁気ディスク10の第1面10aおよび第2面10bにおけるバーストパターン領域Ab内のサーボパターン20sを互いに等しい精度で形成することができる。また、樹脂マスクを用いたエッチング処理によって磁性層14に凹凸パターン20を形成する際に、エッチング条件を中間体60の第1面10aおよび第2面10bにおいて同様の条件とすることができるため、例えば第1面10aおよび第2面10bを同時にエッチングすることが容易となる。
【0087】
また、上記のスタンパー40aでは、上記の磁気ディスク10における第1面10aの凹凸パターン20aの凸部21に対応して形成された凹部52と第1面10aの凹凸パターン20aの凹部22に対応して形成された凸部51とを有する凹凸パターン50aが形成されたスタンパー40a(第1スタンパー)、および第2面10bの凹凸パターン20bの凸部21に対応して形成された凹部52と第2面10bの凹凸パターン20bの凹部22に対応して形成された凸部51とを有する凹凸パターン50bが形成されたスタンパー40b(第2スタンパー)とからなる一対のスタンパーで構成されている。したがって、このスタンパー40a,40bによれば、磁気ディスク10の全域を一括して直流磁化した状態においても、再生信号に対する極性反転処理を実行することなく、第1面10aおよび第2面10bの双方からサーボデータをそれぞれ抽出可能な磁気ディスク10をインプリント法等によって容易に製造することができる。
【0088】
なお、本発明は、上記の構成および方法に限定されない。例えば、第1面10aおよび第2面10bにおいて、プリアンブルパターン領域Ap、サーボアドレスマーク領域Amおよびアドレスパターン領域Aa内の凸部21および凹部22の形成位置関係が反転すると共に、バーストパターン領域Ab内の凸部21および凹部22の形成位置関係が一致している磁気ディスク10を例に挙げて説明したが、例えば、出力信号S0の振幅の大きさ(絶対値)に基づいて磁気ディスク10上における磁気ヘッド3の位置が検出されるように構成されているバーストパターンについては、凸部21および凹部22の形成位置関係が一致していなくても磁気ヘッド3の位置の検出が可能であるため、バーストパターン領域Abにおいてもプリアンブルパターン領域Ap等と同様にして第1面10aおよび第2面10bにおける凸部21および凹部22の形成位置関係が反転するように凹凸パターン20a,20bを形成することもできる。
【0089】
また、「符号化されたサーボデータに対応してパターンが形成された領域」は、前述した磁気ディスク10におけるプリアンブルパターン領域Ap、サーボアドレスマーク領域Amおよびアドレスパターン領域Aaに限定されず、ターミナルパターン領域やパリティパターン領域等の各種機能領域がこれに含まれる。したがって、磁気ディスク上にこれらの領域が存在する場合、磁気ディスク10における第1面10aおよび第2面10bの両プリアンブルパターン領域Ap、サーボアドレスマーク領域Amおよび両アドレスパターン領域Aaと同様にして、第1面10aおよび第2面10bにおいて凸部21および凹部22の形成位置関係を反転させるのが好ましい。
【0090】
また、上記のハードディスクドライブ1では、検出部4aが磁気ヘッド3からの出力信号S0を差分処理して検出信号S1を出力する構成が採用されているが、本発明における制御部の構成はこれに限定されない。例えば、検出部4aが出力信号S0を微分処理してその処理結果に対応する検出信号を出力すると共に、制御部6がこの検出信号(微分処理した信号)に基づいてサーボデータを抽出する構成を採用することができる。
【0091】
この構成を採用した場合において、検出部4aは、図18に示すように、第1面10a側の磁気ヘッド3から出力された出力信号S0については、その出力信号S0を微分処理することにより、一定の信号レベル「1」の出力信号S0が出力されているとき(位置P1a上において磁気ヘッド3が出力信号S0を出力しているとき)には、信号レベルが「0」であるとの検出信号S1を出力し、出力信号S0の信号レベルが信号レベル「1」から「0」に変化したときには、信号レベルが「マイナスの所定レベル(同図における「−X」)」であるとの検出信号S1を出力する。また、検出部4aは、一定の信号レベル「0」の出力信号S0が出力されているとき(位置P2a上において磁気ヘッド3が出力信号S0を出力しているとき)には、信号レベルが「0」であるとの検出信号S1を出力し、出力信号S0の信号レベルが信号レベル「0」から「1」に変化したときには、信号レベルが「プラスの所定レベル(同図における「+X」)」であるとの検出信号S1を出力する。
【0092】
一方、検出部4aは、図19に示すように、第2面10a側の磁気ヘッド3から出力された出力信号S0については、その出力信号S0を微分処理することにより、一定の信号レベル「0」の出力信号S0が出力されているとき(位置P1b上において磁気ヘッド3が出力信号S0を出力しているとき)には、信号レベルが「0」であるとの検出信号S1を出力し、出力信号S0の信号レベルが信号レベル「0」から「−1」に変化したときには、信号レベルが「マイナスの所定レベル(同図における「−X」)」であるとの検出信号S1を出力する。また、検出部4aは、一定の信号レベル「−1」の出力信号S0が出力されているとき(位置P2b上において磁気ヘッド3が出力信号S0を出力しているとき)には、信号レベルが「0」であるとの検出信号S1を出力し、出力信号S0の信号レベルが信号レベル「−1」から「0」に変化したときには、信号レベルが「プラスの所定レベル(同図における「+X」であるとの検出信号S1を出力する。
【0093】
この場合、制御部6は、「プラスの所定レベル」の検出信号S1が検出部4aから出力された時点から「マイナスの所定レベル」の検出信号S1が検出部4aから出力された時点までの間に磁気ヘッド3が位置していた部位にサーボデータの符号「1」が記録されていると判別する。また、制御部6は、「マイナスの所定レベル」の検出信号S1が検出部4aから出力された時点から「プラスの所定レベル」の検出信号S1が検出部4aから出力された時点までの間に磁気ヘッド3が位置していた部位にサーボデータの符号「0」が記録されていると判別する。したがって、制御部6は、検出部4aから出力された検出信号S1に基づき、位置P1aにサーボデータの符号「1」が記録され、位置P2aにサーボデータの符号「0」が記録され、位置P1bにサーボデータの符号「1」が記録され、位置P2bにサーボデータの符号「0」が記録されていると判別する。このように、微分処理によってサーボデータを抽出する構成においても、前述したハードディスクドライブ1と同様にして、単一のサーボ制御用データDに基づいて磁気ディスク10の第1面10aおよび第2面10bの双方からサーボデータを抽出することができる。
【0094】
さらに、凹凸パターン20a,20b(データトラックパターン20tおよびサーボパターン20s)における各凸部21の突端部側から基端部までの全体を磁性層14(磁性材料)で形成した磁気ディスク10を例に挙げて説明したが、本発明に係る磁気記録媒体の構成はこれに限定されない。具体的には、例えば、突端部側が磁性層14で構成されると共に基端部側が中間層13や軟磁性層12で構成された凸部21と、その底面が中間層13や軟磁性層12の厚み内に形成された凹部22とを有する凹凸パターン20a,20bでデータトラックパターン20tおよびサーボパターン20sを構成することもできる。
【0095】
また、例えば、図20に示す磁気ディスク70Aのように、ガラス基板11に形成した凹凸パターン(凹凸パターン20a,20bと凸部および凹部の形成位置関係が一致している凹凸パターン)を覆うようにして磁性層14を形成することにより、その表面が磁性材料で形成された複数の凸部21と底面が磁性材料で形成された複数の凹部22とによって凹凸パターン20a,20b(データトラックパターン20tおよびサーボパターン20s)を構成することができる。さらに、図21に示す磁気ディスク70Bのように、各凸部21のみならず、各凹部22の底部を含めて磁性層14で形成して凹凸パターン20a,20bを構成することもできる。
【0096】
また、図22に示す磁気ディスク70Cのように、その突端部のみが磁性層14で形成されて基端部側が非磁性材料または軟磁性材料(この例では、ガラス基板11)で形成された複数の凸部21を備えて凹凸パターン20a,20bを構成することもできる。この場合、同図に示す磁気ディスク70Cでは、凸部21の突端部のみが磁性層14で形成されているが、隣り合う凸部21,21の間の凹部22の底面にも磁性層14を形成した構成(前述した磁気ディスク70Aにおける凸部21の側面部位に磁性層14が存在しない構成:図示せず)を採用することもできる。
【0097】
さらに、非磁性材料の層に形成した凹部内に上記の磁性層14を構成する磁性材料を埋め込むことで非磁性材料の層における凸部の部位を非記録領域(磁気ディスク10等における凹部22に対応する領域)とし、凹部内に埋め込まれた磁性材料の部位を記録領域(磁気ディスク10等における凸部21に対応する領域)として磁気ディスクを構成することもできる(図示せず)。また、磁性材料の層における所望の領域を選択的に変質させることで磁気的信号を読み出し可能に保持する能力が周囲よりも低い領域、または、その能力を実質的に有しない領域を形成し、磁気的信号を読み出し可能に保持する能力が高い領域を記録領域(磁気ディスク10等における凸部21に対応する領域)とし、磁気的信号を読み出し可能に保持する能力が低い領域を非記録領域(磁気ディスク10等における凹部22に対応する領域)として磁気ディスクを構成することもできる(図示せず)。
【0098】
加えて、データトラックパターン20tおよびサーボパターン20sの双方を凸部21および凹部22を有する凹凸パターン20a,20bで構成した例について説明したが、本発明における磁気記録媒体はこれに限定されず、サーボパターン領域As内に凹凸パターン20a,20bでサーボパターン20sを形成すると共に、データ記録領域At内に連続磁性膜(凹凸が存在しない平坦な磁性層14)を形成して記録データの記録再生を可能に構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】ハードディスクドライブ1の構成を示す構成図である。
【図2】第1面10a側から見た磁気ディスク10,70A〜70Cの平面図である。
【図3】第2面10b側から見た磁気ディスク10,70A〜70Cの平面図である。
【図4】磁気ディスク10の断面図である。
【図5】磁気ディスク10,70A〜70Cにおけるデータ記録領域Atおよびサーボパターン領域Asの平面図である。
【図6】サーボパターン領域Asにおけるプリアンブルパターン領域Ap内のサーボパターン20sの一例を示す平面図である。
【図7】サーボパターン領域Asにおけるプリアンブルパターン領域Ap内のサーボパターン20sの他の一例を示す平面図である。
【図8】サーボパターン領域Asにおけるプリアンブルパターン領域Ap内のサーボパターン20sのさらに他の一例を示す平面図である。
【図9】スタンパー40aの断面図である。
【図10】スタンパー40bの断面図である。
【図11】中間体60の断面図である。
【図12】磁気ディスク10の第1面10aにおけるプリアンブルパターン領域Apのサーボパターン20s(凹凸パターン20a)および磁化パターン30aと、出力信号S0の信号レベルおよび認識される符号との関係を説明するための説明図である。
【図13】磁気ディスク10の第1面10bにおけるプリアンブルパターン領域Apのサーボパターン20s(凹凸パターン20b)および磁化パターン30bと、出力信号S0の信号レベルおよび認識される符号との関係を説明するための説明図である。
【図14】磁気ディスク10の第1面10aにおけるアドレスパターン領域Aaのサーボパターン20s(凹凸パターン20a)および磁化パターン30aと、出力信号S0の信号レベルおよび認識される符号との関係を説明するための説明図である。
【図15】磁気ディスク10の第1面10bにおけるアドレスパターン領域Aaのサーボパターン20s(凹凸パターン20b)および磁化パターン30bと、出力信号S0の信号レベルおよび認識される符号との関係を説明するための説明図である。
【図16】磁気ディスク10の第1面10aにおけるバーストパターン領域Abのサーボパターン20s(凹凸パターン20a)および磁化パターン30aと、出力信号S0の信号レベルおよび認識される振幅(絶対値)との関係を説明するための説明図である。
【図17】磁気ディスク10の第1面10bにおけるバーストパターン領域Abのサーボパターン20s(凹凸パターン20b)および磁化パターン30bと、出力信号S0の信号レベルおよび認識される振幅(絶対値)との関係を説明するための説明図である。
【図18】磁気ディスク10の第1面10aにおけるプリアンブルパターン領域Apのサーボパターン20s(凹凸パターン20a)および磁化パターン30aと、出力信号S0の信号レベル、微分処理した信号の信号レベルおよび認識される符号との関係を説明するための説明図である。
【図19】磁気ディスク10の第1面10bにおけるプリアンブルパターン領域Apのサーボパターン20s(凹凸パターン20b)および磁化パターン30bと、出力信号S0の信号レベル、微分処理した信号の信号レベルおよび認識される符号との関係を説明するための説明図である。
【図20】他の実施の形態に係る磁気ディスク70Aの断面図である。
【図21】他の実施の形態に係る磁気ディスク70Bの断面図である。
【図22】他の実施の形態に係る磁気ディスク70Cの断面図である。
【符号の説明】
【0100】
1 ハードディスクドライブ
3 磁気ヘッド
4a 検出部
6 制御部
7 記憶部
10,70A〜70C 磁気ディスク
10a 第1面
10b 第2面
11 ガラス基板
20a,20b,50a,50b 凹凸パターン
20s サーボパターン
20t データトラックパターン
21,51 凸部
22,52 凹部
30a,30b 磁化パターン
31 磁化領域
32 非磁化領域
40a,40b スタンパー
60 中間体
Aa アドレスパターン領域
Ab バーストパターン領域
Am サーボアドレスマーク領域
Ap プリアンブルパターン領域
As サーボパターン領域
At データ記録領域
D サーボ制御用データ
P1a〜P6a,P1b〜P6b 位置
S0 出力信号
S1 検出信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状の基材における一方の面のサーボパターン領域および他方の面のサーボパターン領域に記録領域と非記録領域とを有するパターンによってサーボパターンが形成された回転型の磁気記録媒体であって、
前記両サーボパターン領域には、複数の機能領域が当該磁気記録媒体の回転方向において順に規定され、
前記一方の面における前記複数の機能領域のうちの少なくとも1つの領域に形成された前記パターンは、前記他方の面における前記記録領域の形成位置に対応する当該一方の面における形成位置に前記非記録領域が形成されると共に当該他方の面における前記非記録領域の形成位置に対応する当該一方の面における形成位置に前記記録領域が形成されている磁気記録媒体。
【請求項2】
符号化されたサーボデータに対応して前記パターンが形成されている前記機能領域を前記少なくとも1つの領域とし、前記一方の面における当該機能領域に形成された前記パターンは、前記他方の面における前記サーボデータを構成する前記記録領域の形成位置に対応する当該一方の面における形成位置に前記非記録領域が形成されると共に当該他方の面における当該サーボデータを構成する前記非記録領域の形成位置に対応する当該一方の面における形成位置に前記記録領域が形成されている請求項1記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
前記一方の面における前記複数の機能領域のうちのバーストパターン領域に形成された前記パターンは、前記他方の面における前記記録領域の形成位置に対応する当該一方の面における形成位置に前記記録領域が形成されると共に当該他方の面における前記非記録領域の形成位置に対応する当該一方の面における形成位置に前記非記録領域が形成されている請求項1または2記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の磁気記録媒体と、当該磁気記録媒体からの磁気的信号の読み出しおよび当該磁気記録媒体に対する磁気的信号の書き込みを実行する磁気ヘッドと、当該磁気記録媒体の前記サーボパターン領域から読み出された前記磁気的信号に基づいてサーボデータを抽出して当該抽出したサーボデータに基づいて前記磁気ヘッドをトラッキングサーボ制御する制御部とを備えている記録再生装置。
【請求項5】
前記制御部は、符号化されたサーボデータに対応して前記パターンが形成されている前記機能領域からの磁気的信号の読み取りに伴って前記磁気ヘッドから出力された出力信号を差分処理または微分処理して当該サーボデータを抽出する請求項4記載の記録再生装置。
【請求項6】
請求項1から3のいずれかに記載の磁気記録媒体における前記一方の面の前記パターンの前記記録領域に対応して形成された凹部と当該一方の面の前記パターンの前記非記録領域に対応して形成された凸部とを有する凹凸パターンが形成された第1スタンパー、および前記他方の面の前記パターンの前記記録領域に対応して形成された凹部と当該他方の面の前記パターンの前記非記録領域に対応して形成された凸部とを有する凹凸パターンが形成された第2スタンパーとからなる一対の磁気記録媒体製造用スタンパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2008−171513(P2008−171513A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−5252(P2007−5252)
【出願日】平成19年1月13日(2007.1.13)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】