説明

磁気記録媒体の製造方法、及び磁気記録媒体

【課題】独立し、配列された複数の凸部の頂面上に磁性層を形成することにより、記録密度を向上させることができる磁気記録媒体の製造方法、及び磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】基板上に、独立し、配列された複数の凸部を有する凸構造を形成する凸構造形成工程と、凸部の頂面に、熱処理によって強磁性体になる複数の磁性微粒子を付着させる付着工程と、凸部の頂面に付着させた磁性微粒子を熱処理する熱処理工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁気ディスク記録装置に用いられる磁気記録媒体の製造方法、及び磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブ装置(HDD)などの磁気記録装置の記録容量は大容量化される傾向にある。従来においては、多結晶の連続体の磁性膜を基板に成膜することで磁気記録媒体を作製している。結晶粒子を小さくすることで記録密度を向上させてきたが、連続膜によって記録密度を向上させることには限界がある。例えば、結晶粒径を小さくすることには限界があるため、記録密度を向上させることが困難になる。また、磁性体の結晶粒径が極めて小さくなると、保持できる磁気エネルギーが小さくなり、記録した磁化が周囲からの熱エネルギーによって消失しやすくなる現象が起こる。この熱揺らぎ(熱磁気緩和現象)によっても、記録密度を向上させることが困難になる。
【0003】
そこで、磁性体を分離したパターンドメディアが提案されている。パターンドメディアによると、単一磁区の微粒子をアレイ状に配置し、個々の磁性体が他の磁性体から物理的に分離しているため、粒子を小さくしても隣の磁性体が他の磁性体から物理的に分離しているため、粒子を小さくしても隣の磁性体の影響を受けにくくなる。これにより、記録密度の向上を図ることができる。
【0004】
磁性微粒子は、その合成後においては非磁性又は軟磁性の性質を有している。例えば、FePtは、その合成後においてはランダムなFcc構造を有する軟磁性体である。このFePtを数百度で熱処理すると、FeとPtとが規則的に配列したFct構造になり、強磁性体になる。すなわち、熱処理によってFcc構造からfct構造に構造転移することで、FePtは、強磁性体になる。なお、強磁性体を得るためには、300℃以上の温度で熱処理を行う必要である。しかしながら、強磁性にするための熱処理に伴って、磁性微粒子同士が凝集する問題がある。そして、凝集した複数の磁性微粒子が溶融し、粒径が大きい粒子となる(粒子の肥大化)。このように、粒子の粒径が大きくなると、磁性微粒子によって、記録密度を向上させることが困難になる。
【0005】
磁性微粒子を平坦な基板上に均一に自己配列させることは困難であるが、仮に、磁性微粒子を平坦な基板上に均一に自己配列させ、磁性微粒子を熱処理すると、隣接する磁性微粒子同士が溶融して一体化し、粒子が肥大化するため、均一かつ独立した磁性層を基板上に形成することができず、記録密度を向上させることができない。
【0006】
従来、平坦な基板上に均一かつ独立した磁性層を形成する方法としては、基板の表面全体に磁性層を形成する。製作されたスタンパを用いて、磁性層上のレジスト樹脂にパターンを転写する。転写された樹脂パターンをマスク材として、ドライエッジングを使って、樹脂層の表面に溝を加工形成することにより、基板上に均一かつ独立した磁性層を形成する第1の技術が存在する。
【0007】
また、基板上にアルミニウム膜を形成し、アルミニウム膜の表面に鋳型を押しつける。鋳型の表面には突起が所定間隔で成形される。突起は、例えば、電子線描画によるパターン形成で形成される。突起の押しつけにより、アルミニウム膜の表面に微細な窪みが形成される。アルミニウム膜を所定の条件により酸化させ、窪みからナノホールを成長させることにより、得られたナノホール内に電鋳により磁性体を形成する第2の技術が存在する。
【0008】
さらに、同様の方法で得られたナノホール内に、磁性粒子を埋め込む技術が存在する(例えば、特許文献1)。
【0009】
【特許文献1】国際公開WO2004/074170公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の技術では、次の問題点があった。第1の技術では、ドライエッジングを使ったパターニングによる磁性体への損失が避けられないという問題点があった。
【0011】
また、上記従来の第2の技術では、ナノホールに磁性体を埋め込む作業に手間がかかる上、磁性体が基板の表面から盛り上がる場合がある。その場合、盛り上がった部分を除去する研磨工程等が必要になる。また、ナノホールの下部に磁性体が埋め込まれずに、ナノホールの下部に空隙が生じる場合があるという問題点があった。
【0012】
さらに、上記特許文献に記載された技術では、微小ホールを高密度で形成した場合、微小ホールに所定数の磁性微粒子が入らず、磁性層を形成できない場合が発生する。また、焼結した場合、粒子の高さ位置がばらつくため、記録及び読み出しが困難となるという問題点があった。
【0013】
この発明は、上記の問題を解決するものであり、独立し、配列された複数の凸部の頂面上に磁性層を形成することにより、記録密度を向上させることができる磁気記録媒体の製造方法、及び磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、この発明は、熱処理することにより、溶融して一体化する複数の磁性微粒子と、他の複数の磁性微粒子とを分離させておけば、均一かつ独立した磁性層を形成可能であることに着目した。
具体的に、この発明の第1の形態は、基板上に、独立し、配列された複数の凸部を有する凸構造を形成する凸構造形成工程と、前記凸部の頂面に、熱処理によって強磁性体になる複数の磁性微粒子を付着させる付着工程と、前記凸部の頂面に付着させた前記磁性微粒子を熱処理する熱処理工程と、を有することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法である。
また、この発明の第2の形態は、第1の形態に係る磁気記録媒体の製造方法であって、前記凸構造形成工程は、独立し、配列された複数のピラーを基板に形成する基板形成工程と、前記基板の表面に沿わせて軟磁性層を形成する軟磁性層形成工程ことを特徴とする。
さらに、この発明の第3の形態は、第1の形態に係る磁気記録媒体の製造方法であって、前記凸構造形成工程は、基板上に軟磁性層を形成する軟磁性層形成工程と、前記軟磁性層上に中間層を形成し、前記凸構造のパターンが形成された転写用型を前記中間層に押し付けることにより、前記凸構造を形成する中間層形成工程と、を有することを特徴とする。
さらに、この発明の第4の形態は、第1の形態から第3の形態のいずれかに係る磁気記録媒体の製造方法であって、前記付着工程は、前記磁性微粒子を平坦なプレート上に並べる配列工程と、前記プレート上に並べられた磁性微粒子に前記凸構造の凸部を押し当てる押圧工程と、を有することを特徴とする。
さらに、この発明の第5の形態は、基板上に形成され、独立し、配列された複数の凸部を有する凸構造と、前記凸部の頂面上に形成され、焼結された磁性層と、を有することを特徴とする磁気記録媒体である。
さらに、この発明の第6の形態は、独立し、配列された複数のピラーが形成された基板と、前記基板の表面に沿うように形成された軟磁性層と、前記軟磁性層上に形成され、独立し、配列された複数の凸部を有する凸構造が形成された中間層と、前記凸部の頂面上に形成され、焼結された磁性層と、を有することを特徴とする磁気記録媒体である。
さらに、この発明の第7の形態は、基板と、前記基板上に形成された軟磁性層と、前記軟磁性層上に、独立し、配列された複数の凸部を有する凸構造に形成された中間層と、前記凸部の頂面上に形成され、焼結された磁性層と、を有することを特徴とする磁気記録媒体である。
【発明の効果】
【0015】
この発明の第1の形態および第5の形態によると、凸部を高密度で規則正しく並べて形成することができ、その凸部の頂面に磁性層を形成したので、磁気記録媒体の記録密度を向上させることができる。
【0016】
また、この発明の第2の形態および第6の形態によると、ピラーが形成された基板の表面に軟磁性層を沿わせて形成したので、予め軟磁性層を形成しなくとも垂直磁気記録を可能にすることができる。
【0017】
さらに、この発明の第3の形態および第7の形態によると、中間層に転写用型を押し付けることにより、凸構造を容易に形成することができる。
【0018】
さらに、この発明の第4の形態によると、簡単な方法を用いて、凸部の頂面に複数の磁性微粒子を確実に付着させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[第1の実施の形態]
この発明の第1実施形態に係る磁気記録媒体の製造方法について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、磁気記録媒体の製造方法において各工程を示す断面図である。図2は、磁気記録媒体の製造方法において各工程を示す斜視図である。
【0020】
第1実施形態に係る磁気記録媒体の製造方法は、基板上に、独立し、配列された複数の凸部を有する凸構造を形成する凸構造形成工程と、凸部の頂面に複数の磁性微粒子を付着させる付着工程と、凸部の頂面上に付着させた磁性微粒子を熱処理する熱処理工程を有する。
【0021】
(凸構造形成工程)
次に、凸構造形成工程について、図1(a)〜(c)並びに図2(a)及び(b)を参照にして説明する。凸構造形成工程は、独立し、配列された複数のピラー11を基板10に形成する基板形成工程と、基板10の表面に沿わせて軟磁性層20を形成する軟磁性層形成工程と、軟磁性層20上に中間層30を形成する中間層形成工程とを有する。
【0022】
基板10には、ガラス基板、金属製の基板、又は樹脂製の基板が用いられる。ガラス基板としては、例えば、アモルファスガラス基板、結晶化ガラス基板、又は化学強化ガラス基板を用いることができる。なお、ガラス基板上に加工が容易な材料を皮膜しても良い。金属製の基板としては、例えばアルミニウム基板を用いることができる。また、樹脂製の基板には、例えば、耐熱性樹脂を材料として用いることができる。
【0023】
基板成形工程を図1(a)及び図2(a)に示す。基板10の表面をエッチング加工することにより、基板10上に、独立し、配列された複数のピラー11が形成される。
【0024】
軟磁性層成形工程を図1(b)及び図2(b)に示す。軟磁性層(SUL層)20は、スパッタリングにより基板10の表面全体に形成され、全体としてつながった形となる。すなわち、軟磁性層20は、ピラー11の頂面及び周面に形成され、ピラー11の形成されていない基板10の表面にも形成される。
【0025】
中間層成形工程を図1(c)に示す。中間層30は、軟磁性層20の表面にSOG(Spin On Glass)をスピンコートで塗布することにより、形成される。なお、中間層30としては、SOGに限らず、例えば、非磁性体であって、磁性微粒子40が付着する性質を有する材料であれば良い。
【0026】
以上に説明した基板形成工程、軟磁性層形成工程及び中間層形成工程により、凸構造が形成される。また、第1実施形態に係る磁気記録媒体の製造方法は、凸部31の頂面33に、熱処理によって強磁性体になる複数の磁性微粒子40を付着させる付着工程を有する。さらに、第1実施形態に係る磁気記録媒体の製造方法は、凸部31の頂面33に付着した複数の磁性微粒子40を熱処理する熱処理工程を有する。
【0027】
(付着工程)
次に、付着工程について説明する。付着工程は、磁性微粒子40を平坦なプレートP上に並べる配列工程と、プレートP上に並べられた磁性微粒子40に凸構造の凸部31を押し当てる押圧工程とを有する。
【0028】
磁性微粒子40は、磁性材料であれば特に限定はされず、例えば、Co、Fe、Ni、Mn、Sm、Nd、Pr、又はPtのうちいずれかを含む単体、二元合金、又は三元合金を用いることができる。例えば、FePt(鉄白金)、FePd(鉄パラジウム合金)、CoPt(コバルト白金)、又はFePtCu(鉄白金銅合金)を用いることが好ましい。また、磁性微粒子40は、略球体の形状を有している。磁性微粒子40の径は、1〜25nmであり、好ましくは、2〜6nmである。
【0029】
配列工程は、磁性微粒子40を含む溶液をディップコートやスピンコートによって平坦なプレートPの表面に塗布し、溶媒を揮発させることで、プレートPの表面に磁性微粒子40を配置することができる。配置された磁性微粒子40は1個から数個の層状を成している。プレートP上に磁性微粒子40が3個の層状を成した状態、及び凸部31をプレートPに押し当てる前の状態を図1(d)に示す。
【0030】
押圧工程は、頂面33を下にして凸構造の凸部31をプレートPに押し当てる。押圧時の圧力により、凸部31の頂面33に形成された中間層30のSOGが磁性微粒子40の隙間に半ば入り込むことで、凸部31の頂面33にのみ磁性微粒子40を付着させることができる。凸構造の凹部32に磁性微粒子40を付着せず、凸部31の頂面33に複数の磁性微粒子40を付着し、他の複数の磁性微粒子40から独立している状態を図1(e)及び図2(c)に示す。凸部31の頂面33に付着する磁性微粒子40の数は、頂面33の広さ及び磁性微粒子40の径の大きさによるが、好ましくは、数個から9個程度である。
【0031】
(熱処理工程)
次に、熱処理工程を説明する。磁性微粒子40にFePt微粒子を用いた場合、600℃程度で熱処理を施すことで、FePt微粒子の構造は、fcc構造からfct構造に構造転移し、強磁性の特性を有する磁性層41となる。また、熱処理を施すことで、凸部31の頂面33に付着させた複数のFePt微粒子が、凸部31の頂面33毎に溶融し一体化(焼結)する。それにより、凸部31の頂面33上に焼結された磁性層41が形成される。また、熱処理を施すことで、中間層30であるSOGに含有された水酸基やアルキル基が除去される。凸部31の頂面33上に形成され、焼結された磁性層41を図1(f)及び図2(d)に示す。
【0032】
なお、磁気記録媒体が垂直磁気記録方式である場合は、第1実施形態に係る凸構造形成工程は軟磁性層形成工程を有する必要があるが、磁気記録媒体が垂直磁気記録方式でない場合は、凸構造形成工程は、軟磁性層形成工程を有する必要がない。
【0033】
また、第1実施形態では、凸構造形成工程が中間層形成工程を有するものを示したが、これに限らない。例えば、軟磁性層20に磁性微粒子40を付着させることが可能であれば、凸構造形成工程は中間層形成工程を有しなくても良い。
【0034】
さらに、第1実施形態では、凸部31の頂面33に形成した磁性層41につき1ビットの記録が可能なパターンメディアの製造方法を説明したが、この発明は、ディスクリートトラックメディアの製造方法にも適用することができる。この場合、凸部31をデータトラックとして形成する。
【0035】
{第1実施例}
次に、磁気記録媒体の製造方法の第1実施例を説明する。
【0036】
(基板の作製)
先ず、基板の作製について説明する。ガラス基板にUV硬化樹脂(東洋合成株式会社製のPAK01)をスピンコートで塗布する。次に、金型を押し当ててガラス基板側からUV照射する。次に、金型を離型することで、UV硬化樹脂の凹凸パターンを得る。次に、得られた凹凸パターンをマスクにドライエッチング加工をする。最後に、UV硬化樹脂を酸素アッシングにて除去する。それにより、基板にピラーが形成される。ピラーは、高さ100nm、外径13〜14nmの円柱形状に形成される。マトリックス状に配されたピラーの間隔は25nmである。25nmの間隔は、記録密度1T(テラ)bit/inに相当している。
【0037】
(軟磁性層の形成)
次に、軟磁性層の形成について説明する。軟磁性層は、膜厚200nm程度のFeTaC膜から構成されている。FeTaC膜に限らず、例えば、NiFe膜等の他の軟磁性体膜であっても良い。
【0038】
(SOGの塗布)
次に、SOGの塗布について説明する。東京応化工業社製のSOG(型番OCDT12)を使用した。SOGは、HSQ(ハイドロシルセスキオキサン)が、メチルイソブチルケトンやトルエンなどの溶剤に溶解しているものであり、スピンコート後、乾燥や低温加熱することにより、薄膜状のSOG層を得ることができる。
【0039】
第1実施例では、SOGを溶剤によって濃度調整し、回転数7000rpmで、軟磁性層20上にスピンコートする。それにより、SOGを軟磁性層20の表面に40nm塗布した。
【0040】
以上に説明した基板の作製、軟磁性層の形成、及びSOGの塗布により、凸構造を形成した。
【0041】
(磁性微粒子の合成)
第1実施例において、磁性微粒子は、FePt磁性微粒子である。以下、FePt磁性微粒子の合成について説明する。
【0042】
Fe(acac)、Pt(acac)、(acac=アセチルアセトナート:C)及びアミン化合物、溶剤としてエチレングリコールを用いて、ポリオール還元法によりFePt微粒子(磁性微粒子40)を合成した。合成条件は、それぞれの濃度が10mM(mmol/L)で、140℃以上に加熱して調整したFe含有溶液とPt含有溶液とを混合して、200℃にて還流させた。反応は全て不活性ガス中で実施した。この方法により、粒径が約5nmのFePt粒子を得た。この段階においては、FePt微粒子は、Fcc構造を有し、軟磁性の性質を有している。
【0043】
(磁性微粒子の配列)
次に、プレート上への磁性微粒子の配列について説明する。上記合成されたFePt磁性微粒子をガラス製転写用のプレート上に塗布し、溶媒を揮発させることで、プレート上に磁性微粒子を層状に並べた。プレート上に並べた磁性微粒子の層は、磁性微粒子1個から数個分の層となった。
【0044】
(磁性微粒子の転写)
磁性微粒子を並べたプレートに凸構造を15Mpaで押し付ける。その後、プレートから凸構造を離間させる。それにより、凸構造の凸部の頂面に複数の磁性微粒子を付着させた。
【0045】
(熱処理)
凸部の頂面に磁性微粒子を付着させた後、凸構造を、5%H2/95%Arの還元雰囲気中、600°C、1時間熱処理した。この条件で強磁性を示すfct結晶構造のFePtを得た。以上の工程で磁性微粒子を溶融させて一体化させた。それにより、均一かつ独立した磁性層を形成することができた。
【0046】
{第2実施例}
次に、磁気記録媒体の製造方法の第2実施例を説明する。なお、第2実施例においても、第1実施例と同様に、基板の作製、軟磁性層の形成、及び中間層の塗布により、凸構造を形成し、磁性微粒子の合成、磁性微粒子の配列、磁性微粒子の転写、及び、磁性微粒子の熱処理をした。ただし、第2実施例に係る中間層の形成は、第1実施例と異なる。
【0047】
第1実施例では、SOGを軟磁性層20の表面に塗布することにより中間層30を形成した。これに対し、第2実施例では、UV硬化樹脂を軟磁性層20の表面に塗布することにより中間層30を形成する。
【0048】
第2実施例においても、第1実施形態と同様に、磁性微粒子の転写が行われる。ただし、第2実施例に係る磁性微粒子の転写は、第1実施例異なる。第1実施例では、中間層30としてSOGを使用したため、プレートは、どのような材質のものであっても良かった。これに対し、第2実施例では、中間層として紫外線硬化樹脂を使用したため、プレートは、紫外線透過性を有している必要がある。このプレートに凸構造を0.25MPaで押し当る。
【0049】
次に、紫外線をプレートに対し凸構造とは反対側(図1(d)において下方)から照射する。その後、凸構造をプレートから離型し、紫外線オゾン洗浄で、樹脂のみを除去する。紫外線オゾン洗浄は、紫外線による有機化合物の分解とオゾンの生成及び分解の過程における強力な酸化作用により樹脂を除去する。
【0050】
{第3実施例}
次に、磁気記録媒体の製造方法の第3実施例を説明する。なお、第3実施例においても、第1実施例と同様に、基板の作製、軟磁性層の形成、及び中間層の塗布により、凸構造を形成し、磁性微粒子の合成、磁性微粒子の配列、磁性微粒子の転写、及び磁性微粒子の熱処理をした。ただし、第3実施例に係る中間層の形成は、第1実施例と異なる。
【0051】
第3実施例では、フォトレジストや電子線レジストを軟磁性層20の表面に塗布することにより中間層30を形成する。プレート側、基板側のいずれか一方もしくは両方を加熱し、プレートに基板の凸構造を数MPaで押し当る。
【0052】
次に、冷却後、凸構造をプレートから離型し、紫外線オゾン洗浄で、樹脂のみを除去する。
【0053】
[第2の実施の形態]
次に、この発明の第2実施形態に係る磁気記録媒体の製造方法について、図3を参照して説明する。図3は、磁気記録媒体の製造方法において各工程を示す断面図である。
【0054】
第2実施形態に係る磁気記録媒体の製造方法が、第1実施形態に係る磁気記録媒体の製造方法と異なる点は凸構造形成工程にある。図3(d)及び(e)に示す付着工程、並びに図3(f)に示す熱処理工程は第1実施形態と同じであり、その説明を省略する。
【0055】
以下、凸構造形成工程について説明する。凸構造形成工程は、基板10上に軟磁性層20を形成する軟磁性層形成工程と、軟磁性層20上に中間層30を塗布し、凸構造のパターンが形成された転写用型50を中間層30に押し付ける中間層形成工程とを有する。
【0056】
第1実施形態では、基板10にピラー11を形成したが、第2実施形態では、基板10にピラー11を形成しない。基板10としては、第1実施形態と同様に、耐熱性を有する樹脂製基板、アルミ製基板であっても良い。平坦な表面の基板10を図3(a)に示す。軟磁性層形成工程では、軟磁性層20は、基板10の平坦な表面上に形成される。
【0057】
中間層形成工程では、軟磁性層20上にスピンコートにより中間層30を塗布する。塗布された中間層30を形成するために転写用型50を使用する。
【0058】
転写用型50の製法を以下に示す。先ず、型材表面に電子線レジストを形成した後、電子線描画及び現像によりレジストにパターンを形成する。得られたレジストパターンをマスクとしてドライエッチングを行い、レジストを除去する。
【0059】
転写用型50を中間層30に押し付ける。それにより、独立し、配列された複数の凸部31を有する凸構造が形成される。転写用型50を中間層30に押し付けた後の状態を図3(b)に示す。また、凸構造が形成された状態を図3(c)に示す。第2実施形態においても、凸構造は、基板10、軟磁性層20及び中間層30により構成される。なお、凸部31の高さは、軟磁性層20との距離を広くとれないという理由により、第1実施形態に係る凸部31の高さより低くなっている。
【0060】
{実施例}
次に、第2実施形態に係る磁気記録媒体の製造方法の実施例について説明する。なお、磁性微粒子の合成、磁性微粒子の配列、磁性微粒子の転写、及び磁性微粒子の熱処理については、第1実施例と同様であり、その説明を省略する。
【0061】
(基板の作製、軟磁性層の形成)
平坦なガラス基板上に軟磁性層を塗布する。軟磁性層は、膜厚200nm程度のFeTaC膜から構成されている。
【0062】
(SOGの塗布)
第2実施形態においては、第1実施形態と同様に、SOGを溶剤によって濃度調整し、回転数7000rpmで、軟磁性層20上にスピンコートする。それにより、SOGを軟磁性層20の表面に30nm塗布し、その後自然乾燥する。
【0063】
次に、転写用型50をSOGに押し当てる。それにより、独立し、配列された複数の凸部31を得た。凸部31の厚さは50nm、凹部32の厚さは10nmである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】この発明の第1実施形態に係る磁気記録媒体の製造方法において、各工程を示す断面図である。
【図2】この発明の第1実施形態に係る磁気記録媒体の製造方法において、各工程を示す斜視図である。
【図3】この発明の第2実施形態に係る磁気記録媒体の製造方法において、各工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0065】
P プレート 10 基板 11 ピラー 20 軟磁性層 30 中間層
31 凸部 32 凹部 33 頂面 40 磁性微粒子 50 転写用型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、独立し、配列された複数の凸部を有する凸構造を形成する凸構造形成工程と、
前記凸部の頂面に、熱処理によって強磁性体になる複数の磁性微粒子を付着させる付着工程と、
前記凸部の頂面に付着させた前記磁性微粒子を熱処理する熱処理工程と、
を有することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項2】
前記凸構造形成工程は、
独立し、配列された複数のピラーを基板に形成する基板形成工程と、
前記基板の表面に沿わせて軟磁性層を形成する軟磁性層形成工程と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項3】
前記凸構造形成工程は、
基板上に軟磁性層を形成する軟磁性層形成工程と、
前記軟磁性層上に中間層を形成し、前記凸構造のパターンが形成された転写用型を前記中間層に押し付けることにより、前記凸構造を形成する中間層形成工程と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項4】
前記付着工程は、
前記磁性微粒子を平坦なプレート上に並べる配列工程と、
前記プレート上に並べられた磁性微粒子に前記凸構造の凸部を押し当てる押圧工程と、
を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項5】
基板上に形成され、独立し、配列された複数の凸部を有する凸構造と、
前記凸部の頂面上に形成され、焼結された磁性層と、
を有することを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項6】
独立し、配列された複数のピラーが形成された基板と、
前記基板の表面に沿うように形成された軟磁性層と、
前記軟磁性層上に形成され、独立し、配列された複数の凸部を有する凸構造が形成された中間層と、
前記凸部の頂面上に形成され、焼結された磁性層と、
を有することを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項7】
基板と、
前記基板上に形成された軟磁性層と、
前記軟磁性層上に、独立し、配列された複数の凸部を有する凸構造に形成された中間層と、
前記凸部の頂面上に形成され、焼結された磁性層と、
を有することを特徴とする磁気記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−252324(P2009−252324A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−101647(P2008−101647)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】