説明

磁気記録媒体の製造方法、磁気記録媒体の製造装置、及び、磁気記録媒体

【課題】磁性層表面の平滑性を安定して向上させることができる磁気記録媒体の製造方法、磁気記録媒体の製造装置、及び、磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】帯状の支持体と、支持体に形成された非磁性層と、該非磁性層上に形成された磁性層とを含む磁気記録媒体の製造方法であって、搬送される支持体に放射線硬化性樹脂を含む非磁性塗布液を塗布し、非磁性塗布層を形成する塗布工程と、非磁性塗布層に放射線を照射し、硬化させる放射線照射工程と、を含み、放射線照射工程は、支持体表面における酸素濃度が4000ppm以下の雰囲気で、放射線を放射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体の製造方法、磁気記録媒体の製造装置、及び、磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、磁気記録媒体の磁気記録の高密度化に伴って磁性層の薄膜化が進んでいる。磁性層が薄くなると、磁性層表面に支持体の表面の凹凸が反映されやすくなることにより、磁性層表面の平滑性が損なわれやすい。磁性層表面の平滑性が損なわれると、電磁変換特性が劣化するので、支持体上に非磁性層を形成し、この非磁性層上に磁性層を形成することで、磁性層表面の平滑性を確保する製造方法が提案されている。しかし、支持体上に非磁性層を形成するだけでは、磁性層表面の平滑性を確保するために十分とはいえず、各種改良が提案されている。
【0003】
下記特許文献1には、支持体に電子線硬化性樹脂を含む非磁性塗布液を塗布し、乾燥し、未硬化の非磁性層を形成し、酸素濃度500ppm以下の雰囲気で、未硬化の非磁性層に電子線照射を行い、非磁性層を硬化させる磁気記録媒体の製造方法が記載されている。こうすることで、非磁性層の硬化反応が良好になり、平滑な表面の非磁性層を形成することを図っている。
【0004】
下記特許文献2には、支持体上に放射線硬化性樹脂を含む非磁性層を形成する工程と、非磁性層上に磁性層を形成する工程と、前記磁性層にロールを当接させた状態で、非磁性層に放射線を照射して非磁性層を硬化させる工程とを有する製造方法が記載されている。こうすることで、磁性層表面の平滑性をより向上させることを図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−202417号公報
【特許文献2】特開2008−135143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、酸素濃度500ppm以下の雰囲気で、未硬化の非磁性層に電子線照射を行っているが、搬送される支持体表面には、同伴するエアが存在し、実際には支持体表面では酸素濃度が高くなってしまう現象が生じていることがわかった。このため、非磁性層の硬化反応が妨げられ、磁性層表面の平滑性を十分に向上させることができない点で改善の余地があった。
【0007】
特許文献2には、支持体表面では酸素濃度が高くなることに起因して非磁性層の硬化反応が妨げられる問題を解決することについて記載がない。
【0008】
本発明は、磁性層表面の平滑性を安定して向上させることができる磁気記録媒体の製造方法、磁気記録媒体の製造装置、及び、磁気記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
帯状の支持体と、前記支持体に形成された非磁性層と、該非磁性層上に形成された磁性層とを含む磁気記録媒体の製造方法であって、
搬送される前記支持体に放射線硬化性樹脂を含む非磁性塗布液を塗布し、非磁性塗布層を形成する塗布工程と、
前記非磁性塗布層に放射線を照射し、硬化させる放射線照射工程と、を含み、
前記放射線照射工程は、前記支持体表面における酸素濃度が4000ppm以下の雰囲気で、前記放射線を放射する磁気記録媒体の製造方法。
【0010】
帯状の支持体と、前記支持体に形成された非磁性層と、前記非磁性層上に形成された磁性層とを含む磁気記録媒体の製造装置であって、
搬送される前記支持体に放射線硬化性樹脂を含む非磁性塗布液を塗布し、非磁性塗布層を形成する非磁性塗布液塗布部と、
前記非磁性塗布層に放射線を照射し、硬化させる放射線照射部と、を有し、
前記放射線照射部は、前記支持体表面の酸素濃度が4000ppm以下の雰囲気で、前記放射線を照射する磁気記録媒体の製造装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、磁性層表面の平滑性を安定して向上させることができる磁気記録媒体の製造方法、磁気記録媒体の製造装置、及び、磁気記録媒体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】製造される磁気テープを示す断面模式図である。
【図2】磁気テープの製造装置を示す図である。
【図3】放射線照射部の概略的な構成を示す図である。
【図4】支持体表面からの距離と酸素濃度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、磁気記録媒体の一例として磁気テープの製造手順とそれに用いる製造装置の構成を説明する。
【0014】
図1は、製造される磁気テープの断面を概略的に示す図である。
製造される磁気テープMTは、支持体B上に、非磁性層1と、磁性層2とが積層されている。
【0015】
図2は、磁気テープの製造装置を示す図である。
製造装置10は、長尺帯状の支持体Bが巻回された送り出しロール11と、非磁性層と磁性層とが順に形成された支持体Bを巻き取る、巻き取りロール19を有している。この製造装置10は、送り出しロール11から送り出された支持体Bを搬送経路に沿って搬送しながら、磁気テープを製造するものである。
【0016】
製造装置10は、搬送される支持体Bの搬送方向の上流側から順に、非磁性塗布液塗布部12と、非磁性塗布液乾燥部13と、放射線照射部20と、磁性塗布液塗布部14と、磁性塗布液乾燥部16とを備えている。また、支持体Bの搬送経路には、搬送される支持体Bの記録面(磁性層及び非磁性層が設けられている側の面)の反対側を支持するガイドローラが適宜設けられている。
【0017】
非磁性塗布液塗布部12は、非磁性粒子と、放射線硬化性材料とを含む非磁性塗布液を支持体Bの上面に塗布し、非磁性塗布層を形成する。
【0018】
非磁性塗布液乾燥部13は、非磁性塗布液塗布部12で形成された非磁性塗布層を乾燥させる。非磁性塗布層は、非磁性塗布液乾燥部13で希釈溶剤を乾燥後、支持体を下流側の放射線照射部20へ搬送される。
【0019】
放射線照射部20は、非磁性塗布層に放射線を照射し、硬化させる。非磁性塗布層は放射線照射によって固化し、非磁性層になる。
【0020】
磁性塗布液塗布部14は、非磁性層上に、磁性粒子を含む磁性塗布液を塗布し、磁性塗布層を形成する。磁性塗布層は、湿潤状態のまま下流側へ搬送される。
【0021】
磁性塗布液乾燥部16は、湿潤状態の磁性塗布層を乾燥させる。磁性塗布液乾燥部16には、湿潤状態の磁性塗布層に含まれる磁性粒子を配向する配向部が設けられていてもよく、又は、配向部が下流側に別途設けられていてもよい。磁性塗布層は、乾燥して固化することで磁性層となる。
【0022】
磁性層及び非磁性層が形成された支持体Bは、巻き取りロール19に巻き取られて、図示しないカレンダ工程等の次工程に送られた後、所望のテープ幅に裁断され、磁気テープが完成する。
【0023】
図3は、放射線照射部の概略的な構成を示す図である。なお、この放射線照射部では、放射線として電子線を用いている。
放射線照射部20は、支持体Bが連続的に搬送される搬送路21を備えている。搬送路21には、上流側から下流側へ向かって順に、第1の室31、第2の室32、第3の室33、第4の室34、第5の室35が設けられている。第1の室31には、支持体Bを搬送路21に搬入するための搬入口21aが設けられている。第5の室35には、支持体Bを搬送路21から搬出するための搬出口21bが設けられている。第1の室31と第2の室32との間、第2の室32と第3の室33との間、第3の室33と第4の室34との間、第4の室34と第5の室35との間は、搬送される支持体Bの通過を許容しつつ、仕切り壁によって仕切られている。また、搬送路21内には、搬送される支持体Bの記録面の反対側を支持する搬送ローラ28が複数配置されている。
【0024】
第1の室31には、下流側の第2の室32との仕切り壁に該第1の室31内に不活性ガス(ここでは窒素ガスを用いる。)を噴射するノズル26が設けられている。第1の室31の搬入口21aから、第1の室31内の不活性ガスが搬送路21の外部へ排気される。
【0025】
第2の室32には、下流側の第3の室33との仕切り壁に該第2の室32内に不活性ガスを噴射するノズル26が設けられている。第2の室32は、支持体Bの表面にノズル26から不活性ガスを噴射することで、搬送される支持体Bに同伴する空気を除去する、前パージ室として機能する。
【0026】
第3の室33には、電子線の照射源であるフィラメント22が設けられている。第3の室は、搬送される支持体B表面の非磁性塗布層に電子線を照射する照射室として機能する。また、第3の室33には上流側と下流側とのそれぞれに、支持体Bの表面に不活性ガスを噴射するノズル24が設けられている。更に、第3の室33には酸素濃度を測定する酸素濃度検出部25が設けられている。第3の室33では、支持体B表面における酸素濃度が4000ppm以下の雰囲気で、放射線が放射される。
【0027】
第4の室34には、不活性ガスを噴出するノズル等は、特に何も設けられていない。
【0028】
第5の室35には、不活性ガスを噴出するノズル等は、特に何も設けられていない。搬出口21bが設けられ、搬送路21内に充満した不活性ガスが排気される。
【0029】
支持体B表面における酸素濃度が4000ppm以下の雰囲気で電子線を放射することによって、支持体B表面近傍も安定して低い酸素濃度であり、非磁性塗布層の硬化反応が妨げられることが抑えられる。よって、表面が平滑な非磁性層及び磁性層を形成することができる。
【0030】
また、放射線照射部20は、第2の室32において支持体Bに不活性ガスを供給することで、支持体Bに同伴するエアを除去しているため、第3の室33において支持体B表面の酸素濃度を十分に低減することができる。更に、第2の室32において事前に窒素をパージすることで、第3の室33で供給する窒素の量を低減させることができる。
【0031】
搬送路21の第1〜第5室31〜35それぞれの搬送方向に対する長さは、同じとしてもよく、又は、各室で異なるようにしてもよい。第2の室32を第3の室33に比べて長くし、事前パージの時間を長くしてもよい。
【0032】
次に、ここでの支持体表面の酸素濃度の算出方法について説明する。
支持体B表面における酸素濃度をC、支持体B表面から照射室の電子線を照射する側の壁面までの距離をx、第1の室31から第2の室32へ支持体Bが搬送された時点からの時間をtとすると、下記式1となる。式1より第3の室33における支持体表面の酸素濃度を算出した。
【0033】
【数1】

・・・(式1)
【0034】
なお、同伴されるエアの厚みをδ、搬送速度をV、第1の室の搬入口21aの間隔をL、供給される不活性ガスの流量をQとする、厚みδは下記式2で導き出すことができる。
【0035】
【数2】

・・・(式2)
【0036】
次に、放射線照射による硬化の工程及びその手段について説明する。
非磁性塗布層に放射線を照射して硬化する工程に使用される放射線としては、例えば電子線や紫外線が例示できる。紫外線を使用する場合には光重合開始剤を併用する。電子線硬化の場合は重合開始剤が不要であり、透過深さも深い。
【0037】
電子線加速器としてはスキャニング方式、ダブルスキャニング方式あるいはカーテンビーム方式が採用できるが、好ましいのは比較的安価で大出力が得られるカーテンビーム方式である。電子線特性としては、加速電圧が30〜1,000kV、好ましくは50〜300kVであり、吸収線量として0.5〜20Mrad、好ましくは2〜10Mradである。加速電圧が30kV以下の場合はエネルギーの透過量が不足し、300kVを超えると重合に使われるエネルギーの効率が低下し経済的でない。電子線を照射する雰囲気は窒素パージにより酸素濃度を200ppm以下にすることが好ましい。酸素濃度が高いと表面近傍の架橋、硬化反応が阻害される。
【0038】
紫外線光源としては、水銀灯が用いられる。水銀灯は20〜240W/cmのランプを用い、速度0.3m/分〜20m/分で使用される。基体と水銀灯との距離は一般に1〜30cmであることが好ましい。
【0039】
紫外線硬化に用いる光重合開始剤として光ラジカル重合開始剤が用いられる。詳細は例えば「新高分子実験学第2巻第6章 光・放射線重合」(共立出版1995発行、高分子学会編)に記載されているものを使用できる。具体例としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルメチルケタール、ベンジルエチルケタール、ベンゾインイソブチルケトン、ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジエトキシアセトフェノンなどがある。芳香族ケトンの混合比率は、放射線硬化化合物100重量部に対し0.5〜20重量部、好ましくは2〜15重量部、更に好ましくは3〜10重量部であることが適当である。
【0040】
放射線照射は非磁性層を塗布、乾燥した後に行うのが好ましい。放射線硬化装置、条件などについては「UV・EB硬化技術」(1982年、(株)総合技術センター発行)や「低エネルギー電子線照射の応用技術」(2000年、(株)シーエムシー発行)などに記載されている公知のものを用いることができる。
【0041】
次に、放射線硬化性材料について説明する。
非磁性塗布層に含まれる放射線硬化性材料は、放射線硬化性官能基を有する化合物である。放射線硬化性化合物は、例えば電子線や紫外線などの放射線によってエネルギーが与えられると、重合又は架橋して高分子化する性質を有する。非磁性塗布層中の放射線硬化性化合物が重合又は架橋して硬化することにより、非磁性塗布層全体も硬化して高い塗膜強度を得ることができる。
【0042】
また、放射線硬化性化合物を含む非磁性塗布液は、高い塗膜平滑性を得ることができる。これは、放射線硬化性化合物が比較的低粘度であり、このような放射線硬化性化合物を含む非磁性塗布層は、塗布後のレベリング効果により支持体表面のピンホールや突起を遮蔽する効果が高いためである。従って、本実施形態に係る非磁性塗布層の上に磁性層を塗設すると平滑性に優れた磁性層が得られるため、優れた電磁変換特性を有する磁気記録媒体を作製することができる。この効果は、磁性層の厚みが0.01μm〜1.0μmといった比較的薄い膜厚において特に顕著であり、そのような膜厚を有する磁性層の表面では支持体の表面性に起因した突起が低減され、高記録密度化に伴い使用されているMRヘッドを用いた磁気記録におけるノイズを効果的に減らすことができる。
【0043】
放射線硬化性化合物としては、アクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリル酸エステル類、メタクリル酸アミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等を挙げることができる。中でもアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類が好ましい。特に、放射線硬化性官能基(アクリロイル基)を2個以上有するアクリル酸エステル類が好ましい。架橋又は重合による体積収縮を低減する観点からは、アクリロイル基を2個有するアクリル酸エステル類が好ましい。
【0044】
アクリロイル基を2個有する放射線硬化性化合物の具体例としては以下のようなものが挙げられる。すなわち、シクロプロパンジアクリレート、シクロペンタンジアクリレート、シクロヘキサンジアクリレート、シクロブタンジアクリレート、ジメチロールシクロプロパンジアクリレート、ジメチロールシクロペンタンジアクリレート、ジメチロールシクロヘキサンジアクリレート、ジメチロ−ルシクロブタンジアクリレート、シクロプロパンジメタクリレート、シクロペンタンジメタクリレート、シクロヘキサンジメタクリレート、シクロブタンジメタクリレート、ジメチロールシクロプロパンジメタクリレート、ジメチロールシクロペンタンジメタクリレート、ジメチロールシクロヘキサンジメタクリレート、ジメチロ−ルシクロブタンジメタクリレート、ビシクロブタンジアクリレート、ビシクロオクタンジアクリレート、ビシクロノナンジアクリレート、ビシクロウンデカンジアクリレート、ジメチロ−ルビシクロブタンジアクリレート、ジメチロールビシクロオクタンジアクリレート、ジメチロールビシクロノナンジアクリレート、ビシクロブタンジメタクリレート、ビシクロオクタンジメタクリレート、ビシクロノナンジメタクリレート、ビシクロウンデカンジメタクリレート、ジメチロ−ルビシクロブタンジメタクリレート、ジメチロールビシクロオクタンジメタクリレート、ジメチロールビシクロノナンジメタクリレート、ジメチロールビシクロウンデカンジメタクリレート、トリシクロヘプタンジアクリレート、トリシクロデカンジアクリレート、トリシクロドデカンジアクリレート、トリシクロウンデカンジアクリレート、トリシクロテトラデカンジアクリレート、トリシクロデカントリデカンジアクリレート、ジメチロールトリシクロヘプタンジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ジメチロールトリシクロドデカンジアクリレート、ジメチロールトリシクロウンデカンジアクリレート、ジメチロールトリシクロテトラデカンジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカントリデカンジアクリレート、トリシクロヘプタンジジメタクリレート、トリシクロデカンジメタクリレート、トリシクロドデカンジメタクリレート、トリシクロウンデカンジメタクリレート、トリシクロテトラデカンジメタクリレート、トリシクロデカントリデカンジメタクリレート、ジメチロールトリシクロヘプタンジメタクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート、ジメチロールトリシクロドデカンジメタクリレート、ジメチロールトリシクロウンデカンジメタクリレート、ジメチロールトリシクロテトラデカンジメタクリレート、ジメチロールトリシクロデカントリデカンジメタクリレート、スピロオクタンジアクリレート、スピロヘプタンジアクリレート、スピロデカンジアクリレート、シクロペンタンスピロシクロブタンジアクリレート、シクロヘキサンスピロシクロペンタンジアクリレート、スピロビシクロヘキサンジアクリレート、ジスピロヘプタデカンジアクリレート、ジメチロールスピロオクタンジアクリレート、ジメチロールスピロヘプタンジアクリレート、ジメチロールスピロデカンジアクリレート、ジメチロールシクロペンタンスピロシクロブタンジアクリレート、ジメチロールシクロヘキサンスピロシクロペンタンジアクリレート、ジメチロールスピロビシクロヘキサンジアクリレート、ジメチロールジスピロヘプタデカンジアクリレート、スピロオクタンジメタクリレート、スピロヘプタンジメタクリレート、スピロデカンジメタクリレート、シクロペンタンスピロシクロブタンジメタクリレート、シクロヘキサンスピロシクロペンタンジメタクリレート、スピロビシクロヘキサンジメタクリレート、ジスピロヘプタデカンジメタクリレート、ジメチロールスピロオクタンジメタクリレート、ジメチロールスピロヘプタンジメタクリレート、ジメチロールスピロデカンジメタクリレート、ジメチロールシクロペンタンスピロシクロブタンジメタクリレート、ジメチロールシクロヘキサンスピロシクロペンタンジメタクリレート、ジメチロールスピロビシクロヘキサンジメタクリレート、ジメチロールジスピロヘプタデカンジメタクリレート等が挙げられる。
【0045】
放射線硬化性化合物として、脂環式環状構造をもつ放射線硬化性化合物を用いることも好ましい。脂環式環状構造は、例えばシクロ骨格、ビシクロ骨格、トリシクロ骨格、スピロ骨格、ジスピロ骨格等の骨格を有する。中でも原子を共有する複数の環からなる構造を有する放射線硬化性化合物、例えばビシクロ骨格、トリシクロ骨格、スピロ骨格、ジスピロ骨格等の骨格を有する放射線硬化性化合物が好まし
い。このような放射線硬化性化合物は、脂肪族系の化合物に比べてガラス転移温度が高いので、非磁性塗布層の塗設後の工程において粘着故障が発生しにくい。また、シクロヘキサン環やビシクロ、トリシクロ、スピロなどの脂環式系の骨格を有する化合物は、硬化による収縮が少なく、支持体との高い密着力を実現することができ、優れた走行耐久性を得ることができる。
【0046】
脂環式環状構造をもつ放射線硬化性化合物の中でも、1分子中に2個以上の放射線硬化性官能基を有する化合物が好ましい。中でもジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ジメチロールビシクロオクタンジアクリレート、ジメチロールスピロオクタンジアクリレートが好ましく、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレートが特に好ましい。市販されている具体的な化合物として、KAYARAD R−684(日本化薬株式会社製)、ライトアクリレートDCP−A(共栄社化学株式会社製)、LUMICURE DCA−200(大日本インキ化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0047】
放射線硬化性化合物の分子量は、200〜1000が好ましく、200〜500が更に好ましい。また、放射線硬化性化合物の25℃での粘度は、5〜200mPa・sが好ましく、5〜100mPa・sが更に好ましい。
【0048】
なお、 本実施形態の非磁性塗布層には、複数種類の放射線硬化性化合物を組み合わせて用いることも可能である。
【0049】
放射線硬化性化合物は溶媒に溶解して用いられることが好ましい。非磁性塗布層塗布液の粘度は、5〜200mPa・sが好ましい。非磁性塗布層塗布液の溶媒としては、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、トルエン等が好ましい。
【0050】
次に、支持体、非磁性塗布層の非磁性塗布液、磁性塗布層の磁性塗布液のそれぞれについて説明する。
【0051】
非磁性塗布層の非磁性塗布液に含まれる非磁性材料の構成は制限されないが、通常、少なくとも樹脂からなり、好ましくは、粉体、例えば、無機粉末又は有機粉末が樹脂中に分散されたものが挙げられる。無機粉末は、通常、好ましくは非磁性粉末であるが、この層が実質的に非磁性である範囲で磁性粉末を使用してもよい。
【0052】
非磁性粉末としては、例えば、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の無機化合物から選択することができる。無機化合物としては、例えばα化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、ヘマタイト、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデンなどが単独又は組合せで使用される。
【0053】
非磁性粉末の表面には表面処理が施され、Al、SiO、TiO、ZrO、SnO、Sb、ZnO、Yが存在することが好ましい。特に分散性に好ましいのはAl、SiO、TiO、ZrOであるが、更に好ましくはAl、SiO、ZrOである。これらは組み合わせてしようしてもよいし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いてもよいし、先ずアルミナを存在させた後にその表層をシリカで処理する方法、又はその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般的には好ましい。
【0054】
非磁性粉末は結合剤に対して重量比率で20〜0.1、体積比率で10〜0.2の範囲で用いられる。又、特開昭59−142741号、同61−214127号、同63−140420号には非磁性塗布層にSnOを含むことを規定している。これらは磁性塗布層に酸化鉄、若しくはBaFeを用いており、SnOより比重は小さいものであるが、いずれも磁性塗布層の下塗処方であり、その厚みは磁性塗布層に比べてはるかに薄いものであり、本発明とは別の発明である。
【0055】
磁性層に使用する磁性粒子としては、特に制限されるべきものではないが、α−Feを主成分とする強磁性金属粉末、γ−FeOx(x=1.33〜1.5)、Co変性γ−FeOx(x=1.33〜1.5)、Fe又はNi又はCoを主成分(75%以上)とする強磁性合金微粉末、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、窒化鉄など公知の強磁性粉末が使用できる。これらの強磁性粉末には所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、Bなどの原子を含んでもかまわない。これらの強磁性微粉末にはあとで述べる分散剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤などで分散前にあらかじめ処理を行ってもかまわない。具体的には、特公昭44−14090号、同45−18372号、同47−22062号、同47−22513号、同46−28466号、同46−38755号、同47−4286号、同47−12422号、同47−17284号、同47−18509号、同47−18573号、同39−10307号、同48−39639号、米国特許第3026215号、同3031341号、同3100194号、同3242005号、同3389014号などに記載されている。
【0056】
上記強磁性粉末の中で強磁性合金微粉末については少量の水酸化物、又は酸化物を含んでもよい。強磁性合金微粉末の公知の製造方法により得られたものを用いることができ、下記の方法をあげることができる。複合有機酸塩(主としてシュウ酸塩)と水素などの還元性気体で還元する方法、酸化鉄を水素などの還元性気体で還元してFeあるいはFe−Co粒子などを得る方法、金属カルボニル化合物を熱分解する方法、強磁性金属の水溶液に水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸塩あるいはヒドラジンなどの還元剤を添加して還元する方法、金属を低圧の不活性気体中で蒸発させて微粉末を得る方法などである。このようにして得られた強磁性合金粉末は公知の徐酸化処理、すなわち有機溶剤に浸漬したのち乾燥させる方法、有機溶剤に浸漬したのち酸素含有ガスを送り込んで表面に酸化膜を形成したのち乾燥させる方法、有機溶剤を用いず酸素ガスと不活性ガスの分圧を調整して表面に酸化皮膜を形成する方法のいずれを施したものでも用いることができる。
【0057】
磁性塗布層の強磁性粉末をBET法による比表面積で表せば25〜80m/gであり、好ましくは35〜60m/gである。25以下ではノイズが高くなり、80以上では表面性が得にくく好ましくない。強磁性粉末の結晶子サイズは450〜100オングストロームであり、好ましくは350〜150オングストロームである。酸化鉄磁性粉末のσ Sは50emu/g以上、好ましくは70emu/g以上であり、強磁性金属微粉末の場合は100emu/g以上が好ましい。
【0058】
強磁性粉末のr1500は1.5以下であることが好ましい。更に好ましくはr1500は1.0以下である。r1500とは磁気記録媒体を飽和磁化したのち反対の向きに1500Oeの磁場をかけたとき反転せずに残っている磁化量の%を示すものである。強磁性粉末の含水率は0.01〜2%とするのが好ましい。結合剤の種類によって強磁性粉末の含水率は最適化するのが好ましい。γ酸化鉄のタップ密度は0.5g/cc以上が好ましく、0.8g/cc以上が更に好ましい。
【0059】
γ酸化鉄を用いる場合、2価の鉄の3価の鉄に対する比は好ましくは0〜20%であり、更に好ましくは5〜10%である。鉄原子に対するコバルト原子の量は0〜15%、好ましくは2〜8%である。強磁性粉末のpHは用いる結合剤との組合せにより最適化することが好ましい。強磁性粉末のpHの範囲は4〜12であるが、好ましくは6〜10である。強磁性粉末は必要に応じ、Al、Si、P又はこれらの酸化物などで表面処理を施してもかまわない。その量は強磁性粉末に対し0.1〜10%であり表面処理を施すと脂肪酸などの潤滑剤の吸着が100mg/m以下になり好ましい。強磁性粉末には可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Srなどの無機イオンを含む場合があるが、500ppm以下であれば特に特性に影響を与えない。
【0060】
また、強磁性粉末は空孔が少ないほうが好ましくその値は20容量%以下、更に好ましくは5容量%以下である。強磁性粉末の形状は、先に示した粒子サイズについての特性を満足すれば針状、粒状、米粒状、板状いずれでもかまわない。強磁性粉末のSFD0.6以下を達成するためには、強磁性粉末の抗磁力(保持力)Hcの分布を小さくする必要がある。そのためには、ゲータイトの粒度分布をよくする、γ−ヘマタイトの焼結を防止する、コバルト変性の酸化鉄についてはコバルトの被着速度を遅くするなどの方法がある。
【0061】
磁性粒子としては、板状六方晶フェライトとしてバリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、六方晶Co粉末が使用できる。バリウムフェライトを用いる場合、その粒子サイズは0.001〜1μmの直径で厚みが直径の1/2〜1/20である。比重は4〜6g/ccで、比表面積は1〜60m/gである。
【0062】
非磁性塗布層及び磁性塗布層に使用される結合剤としては、従来公知の熱可塑系樹脂、熱硬化系樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物が使用される。熱可塑系樹脂としては、ガラス転移温度が−100〜150℃、数平均分子量が1000〜200000、好ましくは10000〜100000、重合度が約50〜1000程度のものである。このような例としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテルなどを構成単位として含む重合体又は共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂がある。また、熱硬化性樹脂又は反応型樹脂としてはフエノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物等があげられる。
【0063】
これらの樹脂については朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。また、公知の電子線硬化型樹脂を非磁性塗布層、又は磁性塗布層に使用することも可能である。これらの例とその製造方法については特開昭62−256219号に詳細に記載されている。以上の樹脂は単独又は組合せて使用できるが、好ましいものとして塩化ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニルビニルアルコール樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル無水マレイン酸共重合体の群から選ばれる少なくとも1種とポリウレタン樹脂の組合せ、又はこれらにポリイソシアネートを組合せたものがあげられる。
【0064】
ポリウレタン樹脂の構造はポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン、ポリカプロラクトンポリウレタンなど公知のものが使用できる。ここに示したすべての結合剤について、より優れた分散性と耐久性を得るためには必要に応じ、COOM、SOM、OSOM、P=O(OM)、O−P=O(OM)、(以上につきMは水素原子、又はアルカリ金属塩基)、OH、NR、N、Rは炭化水素基)、エポキシ基、SH、CN、などから選ばれる少なくとも一つ以上の極性基を共重合又は付加反応で導入したものを用いることが好ましい。このような極性基の量は10−1〜10−8モル/gであり、好ましくは10−2〜10−6モル/gである。
【0065】
結合剤の具体的な例としては、ユニオンカーバイト社製:VAGH、VYHH、VMCH、VAGF、VAGD、VROH、VYES、VYNC、VMCC、XYHL、XYSG、PKHH、PKHJ、PKHC、PKFE、日信化学工業社製:MPR−TA、MPR−TA5、MPR−TAL、MPR−TSN、MPR−TMF、MPR−TS、MPR−TM、電気化学社製:1000W、DX80、DX81、DX82、DX83、日本ゼオン社製:MR110、MR100、400X110A、日本ポリウレタン社製:ニッポランN2301、N2302、N2304、大日本インキ社製:パンデックスT−5105、T−R3080、T−5201、バーノックD−400、D−210−80、クリスボン6109、7209、東洋紡社製:バイロンUR8200、UR8300、RV530、RV280、大日精化社製:ダイフエラミン4020、5020、5100、5300、9020、9022、7020、三菱化成社製:MX5004、三洋化成社製:サンプレンSP−150、旭化成社製:サランF310、F210などがあげられる。
【0066】
結合剤は強磁性粉末に対し、5〜50重量%の範囲、好ましくは10〜30重量%の範囲で用いられる。塩化ビニル系樹脂を用いる場合は、5〜30重量%、ポリウレタン樹脂合を用いる場合は2〜20重量%、ポリイソシアネートは2〜20重量%の範囲でこれらを組合せて用いるのが好ましい。
【0067】
ポリウレタン樹脂を用いる場合はガラス転移温度が−50〜100℃、破断伸びが100〜2000%、破断応力は0.05〜10Kg/cm、降伏点は0.05〜10Kg/cmが好ましい。磁気記録媒体は二層からなる。従って、結合剤量、結合剤中に占める塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート、あるいはそれ以外の樹脂の量、磁性塗布層を形成する各樹脂の分子量、極性基量、あるいは先に述べた樹脂の物理特性などを必要に応じ非磁性塗布層と磁性塗布層とで変えることはもちろん可能である。
【0068】
ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4−4’−ジフエニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフエニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート類、また、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネート等を使用することができる。これらのイソシアネート類の市販されている商品名としては、日本ポリウレタン社製:コロネートL、コロネートHL、コロネート2030、コロネート2031、ミリオネートMR、ミリオネートMTL、武田薬品社製:タケネートD−102、タケネートD−110N、タケネートD−200、タケネートD−202、住友バイエル社製:デスモジュールL、デスモジュールIL、デスモジュールN、デスモジュールHL等があり、これらを単独又は硬化反応性の差を利用して二つ若しくはそれ以上の組合せで非磁性塗布層、磁性塗布層ともに用いることができる。
【0069】
磁性塗布層に使用されるカーボンブラックはゴム用フアーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。比表面積は5〜500m/g、DBP吸油量は10〜400ml/100g、粒子径は5mμm〜300mμm、pHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/ccが好ましい。カーボンブラックの具体的な例としてはキャボット社製:BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800、700、VULCAN XC−72、旭カーボン社製:♯80、♯60、♯55、♯50、♯35、三菱化成工業社製:♯2400B、♯2300、♯900、♯1000、♯30、♯40、♯10B、コンロンビアカーボン社製:CONDUCTEX SC、RAVEN 150、50,40,15などがあげられる。カーボンブラックを分散剤などで表面処理してもよく、又は、樹脂でグラフト化して使用してもよく、又は、表面の一部をグラフアイト化したものを使用してもよい。また、カーボンブラックを磁性塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは単独、又は組合せで使用することができる。カーボンブラックを使用する場合は強磁性粉末に対する量の0.1〜30%で用いることが好ましい。カーボンブラックは磁性塗布層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカーボンブラックにより異なる。従って、カーボンブラックは非磁性塗布層、磁性塗布層でその種類、量、組合せを変え、粒子サイズ、吸油量、電導度、pHなどの先に示した諸特性をもとに目的に応じて使い分けることは当然可能である。例えば、非磁性層に導電性の高いカーボンブラックを用いることにより帯電を防止し、磁性塗布層に粒子径の大きいカーボンブラックを用い摩擦係数を下げるなどがあげられる。磁性塗布層で使用できるカーボンブラックは例えば「カーボンブラック便覧」(カーボンブラック協会編)を参考にすることができる。
【0070】
磁性塗布層に用いられる研磨剤としては、α化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、人造ダイアモンド、窒化珪素、炭化珪素チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素など主としてモース硬度6以上の公知の材料が単独又は組合せで使用される。また、これらの研磨剤どうしの複合体(研磨剤を他の研磨剤で表面処理したもの)を使用してもよい。これらの研磨剤には主成分以外の化合物又は元素が含まれる場合もあるが主成分が90%以上であれば効果にかわりはない。これら研磨剤の粒子サイズは0.01〜2μmが好ましいが、必要に応じて粒子サイズの異なる研磨剤を組合せてもよいし、単独の研磨剤で粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。タップ密度は0.3〜2g/cc、含水率は0.1〜5%、pHは2〜11、比表面積は1〜30m/g、が好ましい。研磨剤の形状は針状、球状、又はサイコロ状のいずれでも良いが、形状の一部に角を有するものは研磨性が高く、好ましい。
【0071】
研磨剤の具体的な例としては、住友化学社製:AKP−20,AKP−30,AKP−50,HIT−50、日本化学工業社製:G5,G7,S−1、戸田工業社製:100ED,140EDなどがあげられる。研磨剤は非磁性塗布層、磁性塗布層で種類、量及び組合せを変え、目的に応じて使い分けることはもちろん可能である。これらの研磨剤はあらかじめ結合剤で分散処理したのち磁性塗料中に添加してもかまわない。磁気記録媒体の磁性塗布層の表面及びその端面に存在する研磨剤は5個/100μm以上が好ましい。
【0072】
添加剤としては潤滑効果、帯電防止効果、分散効果、可塑効果、などを有するものが使用される。二硫化モリブデン、二硫化タングステングラフアイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコーンオイル、極性基をもつシリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、ポリオレフイン、ポリグリコール、アルキル燐酸エステル及びそのアルカリ金属塩、アルキル硫酸エステル及びそのアルカリ金属塩、ポリフエニルエーテル、フッ素含有アルキル硫酸エステル及びそのアルカリ金属塩、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、及び、これらの金属塩(Li,Na,K,Cuなど)又は、炭素数12〜22の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコール(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、炭素数12〜22のアルコキシアルコール、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)と炭素数2〜12の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコールのいずれか一つ(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)とからなるモノ脂肪酸エステル又はジ脂肪酸エステル又はトリ脂肪酸エステル、アルキレンオキシド重合物のモノアルキルエーテルの脂肪酸エステル、炭素数8〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミンなどが使用できる。これらの具体例としてはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ステアリン酸ブチル、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸イソオクチル、ミリスチン酸オクチル、ステアリン酸ブトキシエチル、アンヒドロソルビタンモノステアレート、アンヒドロソルビタンジステアレート、アンヒドロソルビタントリステアレート、オレイルアルコール、ラウリルアルコール、があげられる。
【0073】
また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系、アルキルフエノールエチレンオキサイド付加体等のノニオン界面活性剤、環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウム又はスルホニウム類、等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルフォン酸、燐酸、硫酸エステル基、燐酸エステル基などの酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸又は燐酸エステル類、アルキルベダイン型等の両性界面活性剤等も使用できる。これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。これらの潤滑剤、帯電防止剤等は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物等の不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は30%以下が好ましく、更に好ましくは10%以下である。
【0074】
潤滑剤、界面活性剤は非磁性塗布層、磁性塗布層でその種類、量を必要に応じ使い分けることができる。例えば、非磁性塗布層、磁性塗布層で融点の異なる脂肪酸を用い表面へのにじみ出しを制御する、沸点や極性の異なるエステル類を用い表面へのにじみ出しを制御する、界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を向上させる、潤滑剤の添加量を非磁性層で多くして潤滑効果を向上させるなどが考えられ、ここに示した例のみに限られるものではない。
【0075】
添加剤のすべて又はその一部は、磁性塗料製造のどの工程で添加してもかまわない、例えば、混練工程前に強磁性粉末と混合する場合、強磁性粉末と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。潤滑剤の商品例としては、日本油脂社製:NAA−102,NAA−415,NAA−312,NAA−160,NAA−180,NAA−174,NAA−175,NAA−222,NAA−34,NAA−35,NAA−171,NAA−122,NAA−142,NAA−160,NAA−173K,ヒマシ硬化脂肪酸,NAA−42,NAA−44,カチオンSA,カチオンMA,カチオンAB,カチオンBB,ナイミーンL−201,ナイミーンL−202,ナイミーンS−202,ノニオンE−208,ノニオンP−208,ノニオンS−207,ノニオンK−204,ノニオンNS−202,ノニオンNS−210,ノニオンHS−206,ノニオンL−2,ノニオンS−2,ノニオンS−4,ノニオンO−2,ノニオンLP−20R,ノニオンPP−40R,ノニオンSP−60R,ノニオンOP−80R,ノニオンOP−85R,ノニオンLT−221,ノニオンST−221,ノニオンOT−221,モノグリMB,ノニオンDS−60,アノンBF,アノンLG,ブチルステアレート,ブチルラウレート,エルカ酸、関東化学社製:オレイン酸、竹本油脂社製:FAL−205,FAL−123、新日本理化社製:エヌジエルブLO,エヌジョルブIPM,サンソサイザーE4030、信越化学社製:TA−3,KF−96,KF−96L,KF−96H,KF410,KF420,KF965,KF54,KF50,KF56,KF−907,KF−851,X−22−819,X−22−822,KF−905,KF−700,KF−393,KF−857,KF−860,KF−865,X−22−980,KF−101,KF−102,KF−103,X−22−3710,X−22−3715,KF−910,KF−3935、ライオンアーマー社製:アーマイドP,アーマイドC,アーモスリップCP、ライオン油脂社製:デュオミンTDO、日清製油社製:BA−41G、三洋化成社製:プロフアン2012E,ニューポールPE61,イオネットMS−400,イオネットMO−200,イオネットDL−200,イオネットDS−300,イオネットDS−1000,イオネットDO−200などがあげられる。
【0076】
有機溶媒は、任意の比率でアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン、等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノールなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサン、などのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン、などの芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等のものが使用できる。これら有機溶媒は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物、水分等の不純分がふくまれてもかまわない。これらの不純分は30%以下が好ましく、更に好ましくは10%以下である。有機溶媒は必要ならば磁性塗布層と非磁性塗布層でその種類、量を変えてもかまわない。非磁性塗布層に揮発性の高い溶媒を用い表面性を向上させる、磁性塗布層に表面張力の高い溶媒(シクロヘキサノン、ジオキサンなど)を用い塗布の安定性をあげる、磁性塗布層の溶解性パラメータの高い溶媒を用い充填度を上げるなどがその例としてあげられるが、これらの例に限られない。
【0077】
磁気記録媒体の厚み構成は支持体が1〜100μm、好ましくは5〜20μm、非磁性層の厚みが0.5〜10μm、好ましくは1〜5μm、磁性層の厚みは0.05μm以上1.0μm以下、好ましくは0.05μm以上0.6μm以下、更に好ましくは0.05μm以上、0.3μm以下である。磁性層と非磁性層を合わせた厚みは支持体の厚みの1/100〜2倍の範囲で用いられる。
【0078】
また、支持体と非磁性層との間に密着性向上のための非磁性塗布層を設けてもかまわない。非磁性塗布層の厚みは0.01〜2μm、好ましくは0.05〜0.5μmである。
【0079】
支持体の磁性層が形成される側とは反対側にバックコート層を設けてもかまわない。バックコート層の厚みは0.1〜2μm、好ましくは0.3〜1.0μmである。これらの非磁性塗布層、バックコート層は公知のものが使用できる。
【0080】
支持体は、ポリエチレンテレフタレート、2軸延伸を行ったポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、等のポリエステル類、ポリオレフイン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフオン、アラミド、芳香族ポリアミドなどの公知のフイルムが使用できる。これらの支持体にはあらかじめコロナ放電処理、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、除塵処理などをおこなってもよい。支持体は、中心線平均表面粗さが0.03μm以下、好ましくは0.02μm以下、更に好ましくは0.01μm以下のものを使用する必要がある。また、これらの支持体は単に中心線平均表面粗さが小さいだけではなく、1μm以上の粗大突起がないことが好ましい。また表面の粗さ形状は必要に応じて支持体に添加されるフィラーの大きさと量により自由にコントロールされるものである。これらのフィラーとしては一例としてはCa,Si,Tiなどの酸化物や炭酸塩の他、アクリル系などの有機微粉末があげられる。支持体のテープ走行方向のF−5値は好ましくは5〜50Kg/mm、テープ幅方向のF−5値は好ましくは3〜30Kg/mmであり、テープ長手方向のF−5値がテープ幅方向のF−5値より高いのが一般的であるが、特に幅方向の強度を高くする必要があるときはその限りでない。
【0081】
支持体の熱収縮率は、テープ走行方向及び幅方向に100℃30分で、好ましくは3%以下、更に好ましくは1.5%以下、80℃30分での熱収縮率は好ましくは1%以下、更に好ましくは0.5%以下である。破断強度は両方向とも5〜100Kg/mm、弾性率は100〜2000Kg/mmが好ましい。
【0082】
磁気記録媒体の磁性塗料(磁性材料を含む塗布液)を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、及びこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上にわかれていてもかまわない。強磁性粉末、結合剤、カーボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初又は途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。
【0083】
従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができるが、混練工程では連続ニーダや加圧ニーダなど強い混練力をもつものを使用することにより、磁気記録媒体の高い残留磁化密度(Br)を得ることができる。連続ニーダ又は加圧ニーダを用いる場合は強磁性粉末と結合剤のすべて又はその一部(ただし全結合剤の30%以上が好ましい)及び強磁性粉末100部に対し15〜500部の範囲で混練処理される。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号、特開平1−79274号に記載されている。
【0084】
逐次重層構成の磁気記録媒体の製造装置に用いる塗布装置には、従来の公知の製造技術を用いることができる。例えば、磁性塗料の塗布で一般的に用いられる、グラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布装置等が挙げられる。
【0085】
なお、強磁性粉末の凝集による磁気記録媒体の電磁変換特性等の低下を防止するため、特開昭62−95174号や特開平1−236968号に開示されているような方法により塗布ヘッド内部の塗布液に剪断を付与することが望ましい。更に、磁性塗料の粘度については、特開平3−8471号に開示されている数値範囲を満足することが好ましい。
【0086】
配向の磁界を発生させる磁石としては、1000G以上のソレノイドと2000G以上のコバルト磁石を併用することが好ましく、更には乾燥後の配向性が最も高くなるように配向前に予め適度の乾燥工程を設けることが好ましい。
【0087】
磁気記録媒体の表面平滑化処理を行うカレンダ処理ロールとしては、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性のあるプラスチックロールを使用する。また、金属ロール同志で処理することもできる。処理温度は、好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上である。線圧力は好ましくは200kg/cm、更に好ましくは300kg/cm以上であり、その速度は20m/分以上700m/分以下の範囲である。
【0088】
製造された磁気記録媒体の磁性層及びその反対面のSUS420Jに対する摩擦係数は好ましくは0.5以下、更に0.3以下、表面固有抵抗は好ましくは10−5〜10−12オーム/sq、磁性層の0.5%伸びでの弾性率は走行方向、幅方向とも好ましくは100〜2000Kg/mm、破断強度は好ましくは1〜30Kg/cm、磁気記録媒体の弾性率は走行方向、長手方向とも好ましくは100〜1500Kg/mm、残留のびは好ましくは0.5%以下、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は好ましくは1%以下、更に好ましくは0.5%以下、最も好ましくは0.1%以下である。
【0089】
製造された磁気記録媒体の磁性層に含まれる残留溶媒は、好ましくは100mg/m以下、更に好ましくは10mg/m以下であり、磁性層に含まれる残留溶媒が非磁性層に含まれる残留溶媒より少ないほうが好ましい。磁性層及び非磁性層が有する空隙率は、ともに好ましくは30容量%以下、更に好ましくは10容量%以下である。磁性層の空隙率が非磁性層の空隙率より大きいほうが好ましいが、逆の場合でも非磁性層の空隙率が20%以下であれば支障はない。
【0090】
なお、前パージ室は、例えば、塗布面に臨むように開口が設けられた空間で、その空間内に不活性ガスを充満させることが可能な種々の形状の室であってもよい。
【0091】
(実施例)
本発明者は、放射線照射時の支持体表面の酸素濃度と、磁性層の表面性との関係を調べるため、次のような測定を行った。
【0092】
本測定では、図2に示す製造装置10において、図3に示す放射線放射部20を使用し、支持体の搬送速度と、不活性ガスである窒素の供給量と、窒素のパージ時間と、を変えた場合において、電子線照射時の支持体表面の酸素濃度と、磁性層の表面性を測定した。
【0093】
300mm幅、6μmの厚みのPEN支持体の片面に非磁性塗布液を非磁性塗布液塗布部12で、塗布ヘッドを支持体に押し付けるタイプのエクスとルージョン型の塗布装置によって塗布し、非磁性塗布液乾燥部13で乾燥した。そして、乾燥した後、放射線照射室20で電子線照射を行った。電子線照射を行う第3の室33における雰囲気の酸素濃度は100〜200ppmとした。第3の室33における雰囲気の酸素濃度は、窒素ガスの供給量によって設定した。
【0094】
支持体表面の酸素濃度は、上記式により算出した。また、第3の室33における雰囲気の酸素濃度は、第3の室33の酸素濃度検出部25によって測定した実測値とした。酸素濃度検出部25は、搬送される支持体表面から10mmの位置に設けた。
【0095】
磁性層の表面性の評価では、表面が平滑であるものを「○」とし、一部平滑でない領域が含まれるものを「△」とし、凹凸が目立ったものを「×」とした。また、磁性層の表面性は、微分干渉顕微鏡を用いて、×100、及び、×200で測定した。
【0096】
磁気記録媒体は、実施例及び比較例ともに、下記のようにして作成したものを用いた。なお、実施例中の「部」は、断らない限り「重量部」である。
【0097】
[放射線硬化性化合物の合成]
リジンジイソシアネートメチルエステルを還流式冷却器、撹拌機を具備した容器にメチルエチルケトン70%溶液に窒素気流下60℃で溶解した。次いでジブチルスズジラウレートをリジンジイソシアネートメチルエステルに対して60ppm、メトキシハイドロキノン200ppmを加え、更に5分間溶解した。更に2−ヒドロキシエチルアクリレートをリジンジイソシアネートメチルエステル1モルに対して2モル加えて80℃にて6時間加熱反応し、放射線硬化性化合物溶液を得た。得られた放射線硬化性化合物溶液はFTIRで分析し、アクリロイル基の消失がないことを確認した。
【0098】
[磁性層塗布液の調製]
針状強磁性合金粉末(Hc 175kA/m(2,200Oe)、BET比表面積(SBET)70m/g、長軸長45nm、針状比4、σS125A・m/kg(emu/g))100部をオープンニーダーで10分間粉砕し、次いでSO3Na含有ポリウレタン溶液(固形分30%、SONa含量70μeq/g、重量平均分子量8万)を10部(固形分)加え、更にシクロヘキサノン30部を加えて60分間混練した。
次いで、
研磨剤(Al、粒子サイズ0.3μm)2部
カーボンブラック(粒子サイズ40μm) 2部
メチルエチルケトン/トルエン=1/1 200部
を加えてサンドミルで120分間分散した。これに
ブチルステアレート 2部
ステアリン酸 1部
メチルエチルケトン(MEK) 50部
を加え、更に20分間撹拌混合したあと、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、磁性塗料を調製した。
【0099】
[非磁性塗布液Aの調製]
α―Fe(平均粒径0.15μ、Sbet52m/g) 100部
放射線硬化性化合物
(2−イソシアネート エチルアクリレート) 20部
シクロヘキサン 30部
を加えてオープンニーダで60分混錬した。
次いでメチルエチルケトン/シクロヘキサン=6/4 200部
を加えてサンドミルで120分間分散した。これに、
ブチルステアレート 2部
ステアリン酸 1部
メチルエチルケトン 50部
を加え、更に20分間撹ハン混合したあと、1μmのフィルターを用いろ過し、下層非磁性塗布液Aを調液した。
【0100】
[バック層処方]
混練物(1)
カーボンブラックA 粒径 40nm 100部
ニトロセルロース RS1/2 50部
ポリウレタン樹脂 40部
(ガラス転移温度: 50℃)
分散剤
オレイン酸銅 5部
銅フタロシアニン 5部
沈降性硫酸バリウム 5部
メチルエチルケトン 500部
トルエン 500部
上記をロールミルで予備混練した後、
混練物(2)
カーボンブラックB SSA 8.5m/g 100部
平均粒径 270nm;DBP吸油量36ml/100g pH10
ニトロセルロース RS1/2 40部
ポリウレタン樹脂 10部
メチルエチルケトン 300部
トルエン 300部
上記(1)と(2)とをサンドグラインダーで分散し、完成後、以下を添加した。
ポリエステル樹脂 5部
ポリイソシアネート 5部
以上を加えて、バック層用分散液を作成した。
【0101】
実施例1では、支持体の搬送速度を100m/minとし、窒素供給量を40(Nm/h)とし、第2の室32での窒素のパージ時間を0.3secとし、第3の室33における支持体表面の酸素濃度を1650ppmとし、形成された磁性層の表面性を測定した。
【0102】
実施例2では、支持体の搬送速度を150m/minとし、窒素供給量を50(Nm/h)とし、第2の室32での窒素のパージ時間を0.2secとし、第3の室33における支持体表面の酸素濃度を2500ppmとし、形成された磁性層の表面性を測定した。
【0103】
実施例3では、支持体の搬送速度を300m/minとし、窒素供給量を60(Nm/h)とし、第2の室32での窒素のパージ時間を0.2secとし、第3の室33における支持体表面の酸素濃度を4000ppmとし、形成された磁性層の表面性を測定した。
【0104】
比較例1では、支持体の搬送速度を300m/minとし、窒素供給量を60(Nm/h)とし、第2の室32での窒素のパージ時間を0.1secとし、第3の室33における支持体表面の酸素濃度を5700ppmとし、形成された磁性層の表面性を測定した。
【0105】
比較例2では、支持体の搬送速度を300m/minとし、窒素供給量を60(Nm/h)とし、第2の室32での窒素のパージ時間を0.05secとし、第3の室33における支持体表面の酸素濃度を8000ppmと、形成された磁性層の表面性を測定した。
【0106】
図4は、実施例1から3及び比較例1及び2について、支持体表面からの距離と支持体表面の酸素濃度との関係を示すグラフである。図4では、実施例1から3及び比較例1及び2のそれぞれについて、酸素濃度検出部25(支持体表面からの距離=10mm)から支持体表面(支持体表面からの距離=0mm)の間における酸素濃度の算出値をプロットしたものである。
【0107】
実施例1から3及び比較例1及び2の表面酸素濃度と、表面性の測定結果を表1に示す。
【0108】
【表1】

【0109】
実施例1から3では、支持体表面の酸素濃度を4000ppm以下とすることで比較例1及び2に比べて、磁性層の表面が平滑で良好であることがわかった。
【0110】
本明細書は、以下の内容を開示するものである。
(1)帯状の支持体と、前記支持体に形成された非磁性層と、該非磁性層上に形成された磁性層とを含む磁気記録媒体の製造方法であって、
搬送される前記支持体に放射線硬化性樹脂を含む非磁性塗布液を塗布し、非磁性塗布層を形成する塗布工程と、
前記非磁性塗布層に放射線を照射し、硬化させる放射線照射工程と、を含み、
前記放射線照射工程は、前記支持体表面における酸素濃度が4000ppm以下の雰囲気で、前記放射線を放射する磁気記録媒体の製造方法。
(2)(1)に記載の磁気記録媒体の製造方法であって、
更に、前記放射線照射工程に先立って、前記非磁性塗布層が形成された前記支持体を、不活性ガスによってパージする前パージ工程を有する磁気記録媒体の製造方法。
(3)(1)又は(2)に記載の磁気記録媒体の製造方法であって、
前記放射線が電子線である磁気記録媒体の製造方法。
(4)(1)から(3)のいずれか1つに記載の磁気記録媒体の製造方法であって、
更に、前記非磁性層に磁性塗布液を塗布して磁性塗布層を形成する工程と、
前記磁性塗布層を乾燥させて硬化させ、前記磁性層を形成する工程と、を有する磁気記録媒体の製造方法。
(5)帯状の支持体と、前記支持体に形成された非磁性層と、前記非磁性層上に形成された磁性層とを含む磁気記録媒体の製造装置であって、
搬送される前記支持体に放射線硬化性樹脂を含む非磁性塗布液を塗布し、非磁性塗布層を形成する非磁性塗布液塗布部と、
前記非磁性塗布層に放射線を照射し、硬化させる放射線照射部と、を有し、
前記放射線照射部は、前記支持体表面の酸素濃度が4000ppm以下の雰囲気で、前記放射線を照射する磁気記録媒体の製造装置。
(6)(5)に記載の磁気記録媒体の製造装置であって、
前記放射線照射部は、前記支持体が搬送される、前記放射線を照射する照射室と、不活性ガスが供給される前パージ室とを有し、
前記前パージ室は、前記照射室に対して、前記支持体の搬送方向上流側に隣接して配置される磁気記録媒体の製造装置。
(7)(5)又は(6)に記載の磁気記録媒体の製造装置であって、
前記放射線が電子線である磁気記録媒体の製造装置。
(8)(5)から(7)のいずれか1つに記載の磁気記録媒体の製造装置であって、
更に、前記非磁性層上に磁性塗布液を塗布して磁性塗布層を形成する磁性塗布液塗布部と、
前記磁性塗布層を乾燥させて硬化させる磁性層硬化部と、を有する磁気記録媒体の製造装置。
(9)(1)から(4)のいずれか1つに記載の製造方法によって得られた磁気記録媒体。
【符号の説明】
【0111】
10 製造装置
12 非磁性塗布液塗布部
14 磁性塗布液塗布部
20 放射線照射部
21 搬送路
B 支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の支持体と、前記支持体に形成された非磁性層と、該非磁性層上に形成された磁性層とを含む磁気記録媒体の製造方法であって、
搬送される前記支持体に放射線硬化性樹脂を含む非磁性塗布液を塗布し、非磁性塗布層を形成する塗布工程と、
前記非磁性塗布層に放射線を照射し、硬化させる放射線照射工程と、を含み、
前記放射線照射工程は、前記支持体表面における酸素濃度が4000ppm以下の雰囲気で、前記放射線を放射する磁気記録媒体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法であって、
更に、前記放射線照射工程に先立って、前記非磁性塗布層が形成された前記支持体を、不活性ガスによってパージする前パージ工程を有する磁気記録媒体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の磁気記録媒体の製造方法であって、
前記放射線が電子線である磁気記録媒体の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の磁気記録媒体の製造方法であって、
更に、前記非磁性層に磁性塗布液を塗布して磁性塗布層を形成する工程と、
前記磁性塗布層を乾燥させて硬化させ、前記磁性層を形成する工程と、を有する磁気記録媒体の製造方法。
【請求項5】
帯状の支持体と、前記支持体に形成された非磁性層と、前記非磁性層上に形成された磁性層とを含む磁気記録媒体の製造装置であって、
搬送される前記支持体に放射線硬化性樹脂を含む非磁性塗布液を塗布し、非磁性塗布層を形成する非磁性塗布液塗布部と、
前記非磁性塗布層に放射線を照射し、硬化させる放射線照射部と、を有し、
前記放射線照射部は、前記支持体表面の酸素濃度が4000ppm以下の雰囲気で、前記放射線を照射する磁気記録媒体の製造装置。
【請求項6】
請求項5に記載の磁気記録媒体の製造装置であって、
前記放射線照射部は、前記支持体が搬送される、前記放射線を照射する照射室と、不活性ガスが供給される前パージ室とを有し、
前記前パージ室は、前記照射室に対して、前記支持体の搬送方向上流側に隣接して配置される磁気記録媒体の製造装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の磁気記録媒体の製造装置であって、
前記放射線が電子線である磁気記録媒体の製造装置。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1つに記載の磁気記録媒体の製造装置であって、
更に、前記非磁性層上に磁性塗布液を塗布して磁性塗布層を形成する磁性塗布液塗布部と、
前記磁性塗布層を乾燥させて硬化させる磁性層硬化部と、を有する磁気記録媒体の製造装置。
【請求項9】
請求項1から4のいずれか1つに記載の製造方法によって得られた磁気記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−210290(P2011−210290A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73864(P2010−73864)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】