説明

磁気記録媒体の評価方法、その評価装置、および磁気記録媒体の製造方法

【課題】簡便に行え、測定精度の良好な記録磁界強度分布の測定方法、その測定装置、および磁気ヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】磁気記録媒体に信号が記録された磁気トラックを再生素子により再生して再生用レーザ光照射前の再生出力を得る(S112)。次いで、再生用レーザ光照射をONにして(S114)、磁気トラックに再生用レーザ光を照射しつつ、磁気トラックを再生して再生用レーザ光照射中の再生出力を得る(S116)。次いで、再生用レーザ光照射をOFFにして(S118)、再生用レーザ光照射後の再生出力を得る(S120)。このようにして得られたレーザ光照射前、中、および後の再生出力により、レーザ光照射中およびレーザ光照射後の出力減衰率を算出し(S126)、出力減衰率と再生用レーザパワーとの関係に基づいて磁気記録媒体の特性を得る(S128)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体の評価方法、その評価装置、および磁気記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記憶装置の高記録密度化が進むにつれて、記録層に記録したビットの磁化が経時的に減少する、いわゆる残留磁化の熱安定性の問題が生じている。残留磁化の熱安定性を高めるために、異方性磁界強度を高めた強磁性材料が記録層に用いられるようになっている。そのため、記録層の磁化の方向を反転させるための記録磁界が増加するが、磁気ヘッドが発生可能な最大記録磁界の伸びが追いつかず、記録のために必要な記録磁界の不足が生じている。
【0003】
この解決策として、熱アシスト磁気記録方式が提案されている(例えば特許文献1参照。)。熱アシスト磁気記録方式では、記録時に磁気記録媒体にレーザ光を照射して加熱して、反転磁界強度を低下させることで記録を容易にする。熱アシスト磁気記録方式では、レーザ光を照射した状態で記録層の磁化をナノ秒オーダーで高速反転させており、その状態や磁化挙動に合わせた最良の媒体設計を行う必要がある。
【0004】
しかしながら、熱アシスト磁気記録方式では、極短時間で100℃〜数百℃に昇温しており、その磁気特性を評価することは非常に難しい。さらに、一辺が100nm程度以下の磁気記録媒体の領域の観察が必要となる。
【0005】
レーザ光照射時の磁化状態を計測する試みは、いわゆるレーザSQUID顕微鏡を用いて行われている。(例えば、非特許文献1参照。)
また、高速磁化反転の計測方法としては、例えば磁界中に配置した試料に極短時間幅のレーザ光を照射して計測する方法(非特許文献2参照)や、極短時間幅の磁界を試料に印加してカー効果によって磁化反転を計測する方法(非特許文献3参照)や、電子線を用いた方法がある。
【特許文献1】特開2005−222669号公報
【非特許文献1】大坊真洋、"レーザーSQUID顕微鏡による半導体検査"、日本応用磁気学会誌、2005年、Vol.29、No.1、p.14〜p.19
【非特許文献2】M.vanKampen et al.、"All−Optical Probe of Coherent Spin Waves"、Physical Review Letters、2002年6月3日、Vol.88、No.22、pp.227201−1〜227201−4
【非特許文献3】C.H.Back et al.、"Magnetization Reversal in Ultrashort Magnetic Field Pulses"、Physical Review Letters、1998年10月12日、Vol.81、No.15、pp.3251〜3254
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1では、レーザSQUID顕微鏡の分解能が数um程度と大きいため、微細な磁化挙動を検知することは困難であり、また、冷却裝置等が大がかりとなるため、多数の磁気記録媒体を測定するためには多大な設備コストを要するという問題点がある。
【0007】
また、上記特許文献2や3、あるは電子線を用いる計測方法では、磁化の高速反転の観察に主眼があり、いずれも高価で大がかりな裝置を必要とするので、手軽に多数の磁気記録媒体を測定することは困難であるという問題点がある。さらには、磁気記録媒体の製造工程に検査用装置として導入するのはコスト面から困難である。
【0008】
そこで、本発明の目的は、新規で有用な磁気記録媒体の評価方法、その測定装置、および磁気記録媒体の製造方法を提供することである。本発明の具体的な目的は、熱による磁化挙動の評価を簡便に行える磁気記録媒体の評価方法、その評価装置、および磁気記録媒体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によれば、再生素子を有する磁気ヘッドを用いた磁気記録媒体の評価方法であって、前記磁気記録媒体の所定領域に信号を記録する第1のステップと、前記磁気記録媒体の所定領域を再生して第1の再生出力を得る第2のステップと、次いで、前記所定領域に所定のパワーのエネルギー線を照射し、該照射中あるいは照射後に、再生素子により該所定領域を再生して第2の再生出力を得る第3のステップと、前記第1および第2の再生出力に基づいて、エネルギー線照射前に対するエネルギー線の照射による再生出力の変化量を算出する第4のステップと、を備えることを特徴とする磁気記録媒体の評価方法が提供される。
【0010】
本発明によれば、磁気記録媒体の信号が記録された記録層の所定領域にエネルギー線を照射する。再生素子により、エネルギー線の照射前と、エネルギー線の照射中あるいは照射後の所定領域からの再生出力を得て、照射前に対する照射中あるいは照射後の再生出力の変化量を得ることにより、エネルギー線の照射により加熱された記録層の熱による磁化挙動の評価を簡便に行うことができる。なお、ここでエネルギー線は、レーザ光や電磁波等である。
【0011】
本発明の他の観点によれば、再生素子を有する磁気ヘッドを用いた磁気記録媒体の評価方法であって、前記磁気記録媒体の所定領域に信号を記録する第1のステップと、前記磁気記録媒体の所定領域を再生して第1の再生出力を得る第2のステップと、次いで、前記所定領域に所定のパワーのエネルギー線を照射しつつ再生素子により該所定領域を再生して第2の再生出力を得る第3のステップと、前記第1および第2の再生出力に基づいて、エネルギー線照射前に対するエネルギー線照射中の出力減衰率を算出する第4のステップと、前記エネルギー線照射中の出力減衰率に基づいて磁気記録媒体の特性を得る第5のステップと、を備えることを特徴とする磁気記録媒体の評価方法が提供される。
【0012】
本発明によれば、磁気記録媒体の信号が記録された記録層の所定領域にエネルギー線を照射する。再生素子により、エネルギー線の照射前と、エネルギー線の照射中の所定領域からの再生出力を得て、照射前に対する照射中の再生出力の出力減衰率に基づいて磁気記録媒体の特性を得ることにより、エネルギー線の照射により加熱された記録層の熱による磁化挙動の評価を簡便に行うことができる。
【0013】
本発明のその他の観点によれば、再生素子を有する磁気ヘッドを用いた磁気記録媒体の評価方法であって、前記磁気記録媒体の所定領域に信号を記録する第1のステップと、前記磁気記録媒体の所定領域を再生して第1の再生出力を得る第2のステップと、次いで、前記所定領域に所定のパワーのエネルギー線を照射し、該エネルギー線を照射した後に、該所定領域を再生して第3の再生出力を得る第3のステップと、前記第1および第3の再生出力に基づいて、エネルギー線照射前に対するエネルギー線照射後の出力減衰率を算出する第4のステップと、前記エネルギー線照射後の出力減衰率に基づいて磁気記録媒体の特性を得る第5のステップと、を備えることを特徴とする磁気記録媒体の評価方法が提供される。
【0014】
本発明によれば、磁気記録媒体の信号が記録された記録層の所定領域にエネルギー線を照射する。再生素子により、エネルギー線の照射前と、エネルギー線の照射後の所定領域からの再生出力を得て、照射前に対する照射後の再生出力の出力減衰率に基づいて磁気記録媒体の特性を得ることにより、エネルギー線の照射により加熱された記録層の熱による磁化挙動の評価を簡便に行うことができる。
【0015】
本発明のその他の観点によれば、再生素子を有する磁気ヘッドを用いた磁気記録媒体の評価方法であって、前記磁気記録媒体の所定領域に信号を記録する第1のステップと、前記再生素子の感磁部に対向する磁気記録媒体の記録層の感磁部位置に対して所定の照射位置にエネルギー線照射位置を設定して所定のパワーのエネルギー線を照射し、該照射中に再生素子により該信号が記録された記録層の所定領域を再生して再生出力を得る第2のステップと、前記照射位置を異ならせて第1および第2のステップを繰り返す第3のステップと、前記再生出力と前記照射位置との関係に基づいて磁気記録媒体の特性を得る第4のステップと、を備えることを特徴とする磁気記録媒体の評価方法が提供される。
【0016】
本発明によれば、エネルギー線照射位置を再生素子の感磁部に対向する感磁部位置に対して変位させた位置に設定してエネルギー線照射中の再生出力を測定し、エネルギー線照射前に対するエネルギー線照射中の再生出力の出力減衰率を得ているので、エネルギー線により記録層を比較的長時間加熱された状態ではなく、加熱開始直後、つまり上述した10n秒のオーダーの極めて短時間経過後の残留磁化の挙動を検出できる。この評価手法では、エネルギー線のスポットサイズにかかわらず評価でき、評価方法も単純であるため、簡便な方法で加熱開始直後の残留磁化の挙動を検出できる。
【0017】
本発明のその他の観点によれば、記録層を有する磁気記録媒体の評価装置であって、感磁部により信号磁界を検出する再生素子を有する磁気ヘッドと、磁気ヘッドの位置決め手段と、前記エネルギー線を照射して信号が記録された前記記録層を加熱すると共に、加熱位置を位置決め可能な加熱手段と、前記感磁部により信号が記録された記録層からの信号磁界を検出して再生信号を得る再生手段と、前記加熱手段により前記感磁部と対向する記録層を所定の温度に加熱した状態で、前記感磁部により信号が記録された記録層からの信号磁界を検出して再生信号から再生出力を得る再生手段と、前記再生信号に基づいて磁気記録媒体の特性を得る演算手段と、を備え、前記加熱手段により前記感磁部と対向する記録層を所定の温度に加熱した状態あるいは加熱した後で、再生手段により再生出力を得て、前記演算手段により再生出力の変化量に基づいて磁気記録媒体の特性を得ることを特徴とする磁気記録媒体の評価装置が提供される。
【0018】
本発明によれば、上記の磁気記録媒体の評価方法が行える評価装置を提供できる。
【0019】
本発明のその他の観点によれば、磁気記録媒体の製造方法であって、前記磁気記録媒体の検査工程を含み、前記磁気記録媒体の検査工程は、上記いずれかの評価方法により磁気記録媒体の特性を得て、該特性に基づいて良否を判定することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法が提供される。
【0020】
本発明によれば、熱による磁化挙動の観点から品質の良否を判定可能となる。特に、磁気記録媒体の残留磁化の熱安定性の良否や、熱アシスト磁気記録用の磁気記録媒体の品質判定が可能となる。よって、残留磁化の熱安定性の良好な磁気記録媒体や、熱アシスト磁気記録用の所定の品質を有する磁気記録媒体を製造可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、熱による磁化挙動の評価を簡便に行える磁気記録媒体の評価方法、その評価装置、および磁気記録媒体の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下図面を参照しつつ実施の形態を説明する。
【0023】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る磁気記録媒体の評価装置の概略構成図である。
【0024】
図1を参照するに磁気記録媒体の評価装置10は、評価の対象となる磁気記録媒体50磁気ヘッド11、磁気ヘッド11の位置決め機構14およびその制御を行う位置決め制御部13、磁気記録媒体50にレーザ光を照射するレーザ光照射部16およびその制御を行う照射制御部15、磁気ヘッド11の記録再生動作の制御を行う記録制御部19、再生信号から再生出力の算出を行う再生出力測定部21、磁気記録媒体50を回転駆動させる回転駆動部18、測定装置10の全体を制御する制御演算部22およびその入力部23、メモリ24、および表示部25等から構成される。
【0025】
測定装置10は、メモリ24に記憶されたプログラムや入力部23から入力された命令に従って動作し、磁気記録媒体50の評価を行う。プログラムは後の図4や、図9(第3の実施の形態)、図15(第4の実施の形態)に示すフローチャートの各ステップを測定装置10に実行させるものである。
【0026】
図2は、磁気ヘッドの斜視図である。図2を図1と共に参照するに、磁気ヘッド11は、大略、板状の金属材料からなるサスペンション31と、サスペンション31の先端部に係止されたジンバル32と、ジンバル32に固定され、記録素子および再生素子(微小なため図示されず。図3に示す。)からなる素子部33を有するヘッドスライダ34から構成される。また、サスペンション31には、記録素子および再生素子を記録再生制御部19に電気的に接続し、記録および再生信号が伝送される信号配線35が設けられている。
【0027】
サスペンション31はその基部が、測定装置10の位置決め機構14に固定される。ヘッドスライダ34は、磁気記録媒体50の回転により、ヘッドスライダ34の媒体対向面と磁気記録媒体50の表面との間に生じる空気ベアリングにより磁気記録媒体50上を所定の浮上量で浮上する。磁気ヘッド11については後ほどさらに説明する。
【0028】
また、磁気ヘッド11は必ずしも磁気記録媒体50上に浮上させる必要はなく、磁気記録媒体50上に記録可能な距離を離隔して固定等して配置してもよい。これにより、磁気ヘッド11は、加熱された記録層からの熱伝導が回避され、記録素子や再生素子の記録再生特性が安定する。あるいは、磁気ヘッド11と磁気記録媒体50との間に、素子部33の温度が室温よりも30度以上上昇することを回避可能な熱伝導率が低い層(不図示)を設けてもよい。
【0029】
図1に戻り、位置決め機構14は磁気ヘッド11を支持する共に、位置決め制御部13からの指示に基づいて、径方向位置を制御する。
【0030】
なお、磁気記録媒体50に予めトラックサーボ情報を記録し、磁気ヘッド11の位置制御を行ってもよい。磁気ヘッド11によって再生されたトラックサーボ情報が記録再生制御部19を介して制御演算部22に供給される。そして、制御演算部22は、トラックサーボ情報に基づいてそれぞれのヘッド11の位置ずれ補正信号を位置決め制御部13に送出する。この位置ずれ補正信号に基づいて位置決め制御部13が磁気ヘッド11の位置制御を行う。これにより、磁気ヘッド11の位置を高精度に制御でき、高い位置精度でトラック位置決めが可能となる。これにより、より精確な磁気トラックの再生出力が得られるので、精確な評価が可能になる。
【0031】
レーザ光照射部16は、図示を省略するが、例えば、半導体レーザ等の光源、集光レンズ、照射位置の位置決め機構、フォーカスサーボ機構等からなる。レーザ光照射部16は、照射制御部15により供給される、レーザ光照射位置およびレーザパワーの制御信号に基づいて磁気記録媒体50にスポット状のレーザ光を照射する。
【0032】
照射制御部15は、照射位置制御部15aおよびレーザパワー制御部15bからなる。照射位置制御部15aは、レーザ光照射位置、すなわち、磁気記録媒体50(図3に示す下地層52(記録層53))に形成するレーザスポットの照射位置を設定する。また、レーザパワー制御部15bは、レーザパワーを例えば0.1mW〜数十mWの範囲で制御する。
【0033】
また、レーザ光照射部16は、図1に示すように磁気ヘッド11に対して磁気記録媒体50の反対側(裏面側)に配置され、レーザ光を磁気記録媒体50の裏面側から照射する。これにより、後述するように、磁気ヘッド11の媒体対向面の各部分に対向する磁気記録媒体50の記録層(図3に示す記録層53)の位置に照射可能となる。
【0034】
記録再生制御部19は、制御演算部22の命令に基づいて、所定の記録周波数の記録信号を記録電流に変換し磁気ヘッド11の記録コイル(図3に示す記録コイル43)に送出し、磁気ヘッド11により磁気記録媒体50への記録動作を行う。また、記録再生制御部19は、磁気ヘッド11により得られた再生信号を再生出力測定部21に送出する。
【0035】
再生出力測定部21は、再生信号の波高値を算出してA/D変換を行い、デジタルデータ(再生出力データ)として制御演算部22に送出する。
【0036】
制御演算部22は、例えばパーソナルコンピュータである。制御演算部22は、再生出力データとこれに対応するレーザ光照射位置の情報をメモリ24に記録する。また、制御演算部22は、後ほど説明する出力減衰率の演算を行う。さらに、制御演算部22は、演算結果を、RAM、ハードディスク装置、光ディスク装置等のメモリ24に記録したり、表示部25に表示したりする。
【0037】
図3は、第1の実施の形態に係る磁気記録媒体の評価方法を説明するための図であり、図1に示す磁気ヘッド11、磁気記録媒体50、およびレーザ光照射部16の模式的に拡大した図である。
【0038】
図3を図1と共に参照するに、磁気ヘッド11の素子部33は、記録素子36および再生素子38からなる。記録素子36は、軟磁性材料、例えば、FeCo合金やNiFe合金等からなる上部磁極36aおよび下部磁極36bと、上部磁極36aと下部磁極36bとに挟まれたアルミナ膜41からなる記録ギャップ部37等からなる。上部磁極36aと下部磁極36bとは媒体対向面から奥行き方向に配置された軟磁性材料からなるヨークを介して磁気的に接続されている。さらに、ヨークを巻回するように記録コイル43が設けられている。記録コイル43に記録電流が供給されることで、上部磁極36aおよび下部磁極36bから記録磁界が漏れ出しあるいは吸い込まれ、記録ギャップ部37の表面付近に記録磁界が生じる。
【0039】
再生素子38は、軟磁性材料からなるシールド層40aおよび40bと、シールド層40aと40bとに挟まれた感磁部である磁気抵抗効果膜39からなる。磁気抵抗効果膜39は、磁気記録媒体からの信号磁界を検出し電気信号に変換する。磁気抵抗効果膜39は、その構造は特に限定されないが、例えば、CIP(Current−In−Plane)型やCPP(Current−Perpendicular−to−Plane)型のスピンバルブ膜や、TMR(強磁性トンネル効果)膜から選択される。なお、再生素子はホール素子でもよい。アルミナ膜41は、シールド層40aと上部磁極36aとの間や、図示を省略しているが上部磁極36aおよび下部磁極36bを覆うように形成されている。
【0040】
磁気記録媒体50は、本発明の評価対象としてその構成は特に限定されないが、例えば基板51、その上に下地層52、記録層53、および、保護膜54が順次積層されて構成される。磁気記録媒体50は、例えば、記録層53の磁化容易軸が基板面に略平行な、いわゆる面内磁気記録媒体や、記録層53の磁化容易軸が基板面に略垂直な、いわゆる垂直磁気記録媒体や、記録層53の磁化容易軸が基板面に対して斜め方向の、いわゆる斜め記録媒体でもよい。さらに、磁気記録媒体50は、多数の記録セルを有する、いわゆるパターンドメディアでもよく、記録層53が微小な強磁性粒子からなる、いわゆるナノパーティクル媒体でもよく、また、記録層53が非磁性材料に形成された多数の微小な縦孔に強磁性材料を充填した、いわゆるナノホール媒体でもよく、同心円状や螺旋状に形成されたグルーブおよびランドが形成された、いわゆるディスクリート媒体でもよい。さらに、磁気記録媒体50は光磁気記録方式の磁気記録媒体でもよい。
【0041】
さらに、本発明の評価方法は熱アシスト磁気記録用の磁気記録媒体の評価を主な目的とするが、熱アシスト磁気記録を用いない、つまり加熱しないで記録する磁気記録媒体の評価をも目的としている。したがって、磁気記録媒体50は、熱アシスト磁気記録用の磁気記録媒体と加熱しない記録方式の磁気記録媒体である。以下、磁気記録媒体50は面内磁気記録媒体を例に説明する。
【0042】
基板51は、レーザ光を透過する基板であれば特に限定されないが、例えばガラス基板や樹脂基板のような透明基板であることが好ましい。
【0043】
また、基板51の表面、あるいは基板51の表面にさらにNiP膜等の配向制御膜(不図示)を設け、基板51の表面あるいは配向制御膜の表面のいずかに記録方向に沿って、線状の凹凸、いわゆるテクスチャを形成してもよい。これにより、記録層53の磁化容易軸が記録方向に配向し、一軸異方性を有する記録層53が形成される。なお、配向制御膜を設けた場合は、レーザ光は配向制御膜に照射され、熱伝導により下地層52を介して記録層53が加熱される。
【0044】
下地層52は、例えば、Cr、Cr合金(例えば、CrMo、CrV等。)からなる。これにより、下地層52はCo基合金からなる記録層53の磁化容易軸を基板面に平行に配向させられる。
【0045】
また、記録層53は、Co基合金等の公知の強磁性材料を用いることができるが、磁気異方性の大きなCoPt、CoCrPt、CoCrPt−M(MがB、Mo、Nb、Ta、W、およびCuからなる群のうち少なくとも1種である。)等のCoおよびPtを含む強磁性材料からなることが好ましい。これにより、記録層53の強磁性材料にPtを添加することで保磁力を増加できる。
【0046】
また、記録層53は、各々強磁性材料からなる2層の磁性層とそれらの間に例えば厚さ0.7nmのRuからなる非磁性結合層を有し、2層の磁性層が互いに反強磁性的に結合した構造を有してもよい。このような記録層53は、残留磁化の熱安定性がいっそう良好であるのでさらに好ましい。
【0047】
なお、記録層53には、強磁性材料からなる多数の結晶粒子と、個々結晶粒子を取り囲む非磁性材料(例えばSiO2)からなる、いわゆるグラニュラー構造の記録層を用いてもよい。この場合も強磁性材料は、磁気異方性の大きく熱安定性が良好な点で、上記のCoおよびPtを含む強磁性材料からなることが好ましい。なお、この場合は、下地層52と記録層53との間にRuまたはRuを主成分とするRu合金からなる中間層をさらに形成することが好ましい。高記録密度でのジグザグノイズを低減できるので、より微小な領域の再生出力が測定可能となり、再生出力の位置分解能が高まる。
【0048】
保護膜54は、カーボン膜や水素化カーボン等の公知の材料を用いることができ、さらに、図示を省略するが保護膜54上に潤滑層が形成されてもよい。
【0049】
次に第1の実施の形態に係る磁気記録媒体の評価方法を説明する。
【0050】
図3を参照するに、磁気記録媒体に信号記録する時は、磁気記録媒体50を回転させ、磁気ヘッドを磁気記録媒体50の表面上に浮上させる。そして、記録素子の記録コイルに所定の周波数および大きさの記録電流を流し、磁気ヘッド11の記録ギャップ部37付近の記録層53に記録磁界が印加される。この際、磁気記録媒体が熱アシスト磁気記録用である場合は、レーザ光照射部により照射位置を記録ギャップ部37に対向する位置の記録層に記録用レーザ光を照射する。レーザパワーは磁気記録媒体にあわせて適宜選択されるが、記録層が十分に磁化され、好ましくは飽和記録されることが好ましい。
【0051】
また、再生出力を測定する際には、レーザ光照射位置を磁気抵抗効果膜39に対向する記録層53の位置MRに設定し、レーザスポットによって加熱される領域(以下、"加熱領域HA"と称する。)が、磁気抵抗効果膜39が記録層からの信号磁界を検出可能な領域よりも広い領域になるようにレーザスポット径を選択する。第1の実施の形態に係る評価方法ではレーザ光照射位置はレーザスポットの中心が磁気抵抗効果膜39に対向する記録層53の位置MRに一致するように設定することが好ましい。そして、記録層53から漏洩する信号磁界を磁気抵抗効果膜39により検知して再生信号を得る。なお、加熱しない状態での再生出力を測定する場合はレーザ光照射を"OFF"の状態で上記と同様にして再生信号を得る。
【0052】
以下、説明の便宜のため記録の際のレーザ光照射を記録用レーザ光照射、再生の際のレーザ光照射を再生用レーザ光照射と称する。
【0053】
図4は、第1の実施の形態に係る磁気記録媒体の評価方法のフローチャートである。図5は、第1の実施の形態に係る磁気記録媒体の評価方法のタイムチャートである。
【0054】
図4および図5を図1および図3と共に参照しつつ、磁気記録媒体の評価方法を説明する。
【0055】
最初に、初期設定を行う(S102)。初期設定では、測定装置10に磁気記録媒体50の取付けを行い、磁気記録媒体50を所定の回転数で回転させ、磁気ヘッド11を磁気記録媒体50上に浮上させると共に磁気ヘッド11の位置決めを行う。なお、磁気記録媒体50は消磁済みであることが好ましい。記録済みの場合は、磁気ヘッド11の記録素子36により消磁することが好ましい。
【0056】
また、S102では、磁気ヘッド11に供給する所定の記録電流を設定する。記録電流は、所望の記録電流値および記録周波数が選択される。さらに、レーザ光照射部16を、基準位置、例えば磁気ギャップ部37の位置にレーザ光が照射されるように位置決めする。
【0057】
なお、磁気ヘッド11のスキュー角は例えば0度に設定する。スキュー角は、磁気ヘッド11の記録素子36の記録素子長手方向が磁気記録媒体50の移動方向(記録方向)となす角度であり、磁気記録媒体50の基板面に平行な仮想面の面内における角度である。
【0058】
次いで、照射位置制御部15aによってレーザ光照射部16のレーザ光照射位置を記録素子36の記録ギャップ部37に対向する記録層53に設定する(S104)。
【0059】
次いで、磁気ヘッド11の記録素子に、予め設定された記録電流を供給して信号記録を行う(S106)。これにより、レーザ光照射位置に磁気ヘッド11からの記録磁界が印加され記録層53が磁化される。これにより記録層53に磁気トラック53aが形成され、図5(E)に示す信号磁界が記録トラック53aから発生する。磁気トラック53aの形成位置は、図5(A)に示すインデックス信号を基準として、図5(B)に示すライトゲート信号が"High"の区間である。ライトゲート信号が"High"の区間は記録再生制御部19のライトゲートが開いた状態であり、その区間は、記録磁界が記録層53に印加される。なお、インデックス信号は回転駆動部18から1回転に1度、所定の回転位置で生成される。また、ライトゲート信号はインデックス信号に応じて制御演算部22で生成され記録再生制御部19に送出される。なお、信号記録(S106)の際に記録用レーザ光照射を行わなくても記録層を十分に磁化可能な場合は記録用レーザ光照射を行わなくてもよい。
【0060】
次いで、照射位置制御部15aによってレーザ光照射部16のレーザ光照射位置を再生素子38の磁気抵抗効果膜39に対向する記録層53の位置MRに設定する(S108)。これにより、再生用レーザ光の照射のタイミングと再生素子38による再生信号の読み出しのタイミング合わせが容易となる。これと共に、再生用レーザ光の照射に対して時間遅れのない再生信号の読み出しが可能となる。
【0061】
次いで、再生用レーザパワーを初期値Q1に設定する(S110)。なお、初期値Q1には本評価方法において使用する再生用レーザパワーQ1〜Qkの最小値を設定し、Q1からQkへと次第に再生用レーザパワーが増加するように設定される。
【0062】
次いで、再生素子38により磁気トラック53aを再生して再生用レーザ光照射前の再生出力を得る(S112)。具体的には、再生素子38により磁気トラック53aからの図5(E)に示す信号磁界を再生する。再生のタイミングは、図5(C)に示すように、リードゲート信号の"High"の区間であり、その区間はインデックス信号を基準として設定され、さらに、図5(B)に示すライトゲート信号が"High"であった区間内に設定される。これにより、磁気トラック53aが再生される。リードゲート信号の"High"の区間は、記録再生制御部19のリードゲートが開いた状態であり、その間は再生信号が記録再生制御部19を介して再生出力測定部21に送出される。再生出力測定部21では、供給された再生信号の振幅の平均値(再生出力)を求める。得られた再生出力は制御演算部22を介してメモリ24に送出されて再生用レーザ光照射前の再生出力として記憶される。なお、S108〜S112の順序はこの通りに行う必要はなく任意に順序を設定できる。
【0063】
次いで、再生用レーザ光照射をONにして(S114)、磁気トラック53aに再生用レーザ光を照射しつつ、再生素子38により磁気トラック53aを再生して再生用レーザ光照射中の再生出力を得る(S116)。この際、再生用レーザ光照射の"ON"および"OFF"のタイミングは、図5(A)のインデックス信号を基準とする。再生用レーザ光照射の"ON"区間は、図5(B)に示すライトゲート信号が"High"となっていた区間と同じ区間あるいはその区間内に設定される。再生用レーザ光照射の"ON"のタイミングは、例えば、図5(D)に示すように、ライトゲート信号の立上がりよりも遅くし、"OFF"のタイミングは、ライトゲート信号の立下がりよりも早くする。
【0064】
再生用レーザ光は磁気抵抗効果膜39に対向する記録層53の位置MRを中心にして照射されるので、再生用レーザ光によって記録層53が加熱され、図5(F)の破線及び実線で示すように再生用レーザ光が"ON"の区間は磁気トラック53aからの信号磁界の強度が減少する(この現象については後ほど説明する。)。再生のタイミングは、図5(C)に示すリードゲート信号の"High"の区間であるので、図5(F)の信号磁界が減少した区間(実線の部分)の再生信号の再生出力が得られ、再生用レーザ光照射中の再生出力は、S112と同様にして、リードゲート信号の"High"の区間の再生信号の振幅の平均値が求められ、メモリ24に記憶される。
【0065】
なお、図5(C)に示すリードゲート信号の"High"の区間は、再生用レーザ光が"ON"の区間と同等あるいはその区間内に設定されることが好ましい。これにより、再生用レーザ光の照射による信号磁界の変化が精確に得られる。
【0066】
次いで、再生用レーザ光照射をOFFにして(S118)、所定の温度、例えば温度が室温に戻った状態で再生素子38により磁気トラック53aを再生して再生用レーザ光照射後の再生出力を得る(S120)。再生のタイミングは、図5(C)に示すリードゲート信号で制御され、再生用レーザ光照射後の再生出力は、S112と同様にして再生信号の振幅の平均値が求められ、メモリ24に記憶される。なお、再生用レーザ光照射後の再生出力は、後ほど説明するが、所定のレーザパワーよりも大きなレーザパワーの再生用レーザ光が照射された場合、再生用レーザ光照射前の再生出力が復元せずに低くなるときがある。これは後ほど説明する。
【0067】
次いで、再生用レーザパワーQiが所定の最も大きな再生用レーザパワーQkに達しない場合(S122の"NO"の場合)は、再生用レーザパワーQiに所定量を加えた再生用レーザパワーに設定して(S124)、S104〜S120を繰り返す。ここで、再生用レーザパワーを増加する(S124)毎に信号記録(S108)を行っているのは、再生用レーザ光照射による熱履歴を受けていない磁気トラック53aを使用することで、再生用レーザパワー毎の測定条件を揃えて測定ばらつきを抑制できるからである。また、再生用照射前の再生出力の測定を行う。これにより再生素子の出力変動を抑制しこの点でも測定ばらつきを抑制できるからである。
【0068】
なお、再生用レーザパワーQiの設定数(k個)分の位置の異なる磁気トラックをS106で予め形成しておき、それぞれの再生用レーザパワーQiにおいて未使用の磁気トラックを使用するようにしてもよい。この場合は、再生用レーザパワーを増加させる(S124)毎の信号記録(S106)を省略できる。ここで、上記の位置の異なる磁気トラックは、互いに異なる半径位置に形成してもよく、同一の半径位置の異なる角度範囲に形成してもよく、あるいは、互いに異なる半径位置と同一の半径位置の異なる角度範囲とを組み合わせてもよい。
【0069】
再生用レーザパワーQiが再生用レーザパワーQkの場合(S122の"YES")は、レーザ光照射中およびレーザ光照射後の出力減衰率を算出し、出力減衰率と再生用レーザパワーとの関係を得る(S126)。出力減衰率は、メモリ24に記憶された再生用レーザ光照射前、中、および後のそれぞれの再生出力から制御演算部により下式(1)および(2)により算出される。
【0070】
レーザ光照射中の出力減衰率(%)=(1−再生用レーザ光照射中の再生出力÷再生用レーザ光照射前の再生出力)×100 … (1)
レーザ光照射後の出力減衰率(%)=(1−再生用レーザ光照射後の再生出力÷再生用レーザ光照射前の再生出力)×100 … (2)
上式(1)のレーザ光照射中の出力減衰率は、再生用レーザ光照射前の再生出力に対する再生用レーザ光照射中の再生出力の出力減衰率を示している。また、上式(2)のレーザ光照射後の出力減衰率は、再生用レーザ光照射前の再生出力に対する再生用レーザ光照射後の再生出力の出力減衰率を示している。
【0071】
以下に、実験により得られた出力減衰率と再生用レーザパワーとの関係を示す。
【0072】
図6は、磁気記録媒体の出力減衰率と再生用レーザパワーとの関係図、図7は、他の磁気記録媒体の出力減衰率と再生用レーザパワーとの関係図である。図6および図7の縦軸は出力減衰率を示し、紙面下にいくほど出力減衰率が増加し、つまり、レーザ光照射中あるいは後の再生出力がレーザ光照射前よりも減少したことを示す。また、図6および図7の横軸は再生用レーザパワーを示している。なお、図6および図7では熱アシスト記録に適した高保磁力の磁気記録媒体(記録層がCoCrPt系の合金を含む。)を用いた。図7の磁気記録媒体は、図6の磁気記録媒体に比べて、記録層が薄く、かつPt含有量が多い強磁性材料を使用しているためにより高い動的保磁力を有する。また、レーザ光照射部16は、波長655nm、スポット径0.9μmのレーザヘッドを用いた。
【0073】
図6を参照するに、レーザ光照射中の出力減衰率は、再生用レーザパワーが増加するにつれて次第に増加している。これに対して、レーザ光照射後の出力減衰率は再生用レーザパワーが0〜8mWまでは略0で変化なく、8mWを超えると急激に増加する。そして、13mWではレーザ光照射中および後のいずれもが出力減衰率が100%に達する。これらのことにより以下のことが分かる。
【0074】
(i)再生用レーザパワーが0〜8mWではレーザ光照射中の再生出力はレーザ光照射前の再生出力よりも減少するが、レーザ光照射後にはレーザ光照射前の再生出力に戻る。すなわち、記録層の磁化の可逆変化が生じている。図7では、可逆変化が生じる再生用レーザパワーは0〜3mWである。
【0075】
(ii)再生用レーザパワーが8mWを超えると、レーザ光照射後の再生出力はレーザ光照射前の再生出力よりも減少し、記録層の磁化に非可逆変化が生じている。
【0076】
次いで、磁気記録媒体の出力減衰率と再生用レーザパワーとの関係に基づいて磁気記録媒体の特性を得る(S128)。これにより磁気記録媒体に関する様々な特性が得られる。具体的には、以下に説明するように、レーザ光照射中および/またはレーザ光照射後の出力減衰率と再生用レーザパワーとの関係から、磁気記録媒体の特性、例えば熱アシスト磁気記録用の磁気記録媒体に適する記録パワーや、熱アシスト磁気記録用の磁気記録媒体の設計や製造における検査工程での判定に使用可能なレーザパワーが得られる。
【0077】
I.レーザ光照射後の出力減衰率が所定の出力減衰率と同等かそれよりも小さくなる再生用レーザパワーあるいはそれよりも低い再生用レーザパワーを磁気記録媒体の熱アシスト磁気記録における記録パワーとする。例えば所定の出力減衰率を0%とすると図6では8mW以下(図7では3mW以下)を記録パワーとして選択する。このように記録パワーを設定することで、熱アシスト磁気記録において記録時のレーザ光照射によって、記録を意図しない領域の記録層の磁化の磁化量が減少したり消失する問題を回避できる。非可逆的な再生出力の低下を回避するために上記所定の出力減衰率は0に設定することが好ましい。
【0078】
II.レーザ光照射後の出力減衰率が所定の出力減衰率となる再生用レーザパワーを得る。この再生用レーザパワーが所定のレーザパワーと同等かそれよりも大きい場合に磁気記録媒体を良品と判定する。例えば、図6においてレーザ光照射後の出力減衰率が5%となる再生用レーザパワーが6mW以上である場合に良品と判定する。このような判定をすることで、記録パワーの仕様が互いに異なる、複数の熱アシスト磁気記録の磁気記憶装置に適合する磁気記録媒体を得ることができる。例えば、一方の磁気記憶装置が記録パワー3mWで他方が6mWを使用する場合、これらの磁気記憶装置のいずれにも適合する磁気記録媒体を選別可能となる。特に、所定の出力減衰率を0%とすることが好ましい。これにより、熱アシスト磁気記録の磁気記憶装置において記録時のレーザ光照射によって、記録を意図しない領域の記録層の磁化の磁化量が減少したり消失する問題を回避できる。
【0079】
III.所定の再生用レーザパワーにおけるレーザ光照射後の出力減衰率を得る。この出力減衰率が所定の出力減衰率と同等かそれよりも小さい場合に良品と判定する。例えば、図6においてレーザパワーが6mWにおいてレーザ光照射後の出力減衰率が5%以下である場合に良品と判定する。この判定手法は、記録パワーが決定されている熱アシスト磁気記録の磁気記憶装置があり、それに適合する磁気記録媒体を設計する場合や、磁気記録媒体の製造工程における検査工程での磁気記録媒体の選別のために用いることができる。
【0080】
IV.所定の再生用レーザパワーにおけるレーザ光照射中の出力減衰率を得る。この出力減衰率が所定の出力減衰率と同等かそれよりも小さい場合にその磁気記録媒体を良品と判定する。例えば、図6において再生用レーザパワーが8mWにおいてレーザ光照射中の出力減衰率が60%以下である場合に良品と判定する。
【0081】
上記のIVは以下のような作用から導いた判定手法である。記録層の磁化には、様々なエネルギーが働いている。そのエネルギーとしては、結晶磁気異方性エネルギーや、磁化と磁化との間に作用する交換結合エネルギーや、反磁界等が挙げられる。これらのエネルギーの大小によって磁化の熱安定性が決まってくる。レーザ光照射中の再生出力の減少は、レーザ光照射によってこれらのエネルギーのバランスが変化して、磁化の向きにずれが生じることによると推察される。このように考えると、レーザ光照射中でも出力減衰率が小さい方が、熱安定性がより良好であることが容易に分かる。したがって、レーザ光照射中の出力減衰率を所定値以下とすることで、熱安定性が良好な磁気記録媒体を選別可能である。
【0082】
V.所定の再生用レーザパワーにおけるレーザ光照射中の出力減衰率を得る。この出力減衰率が所定の出力減衰率と同等かそれよりも大きい場合にその磁気記録媒体を良品と判定する。例えば、図6において再生用レーザパワーが3mWで出力減衰率が10%以上である場合にその磁気記録媒体を良品と判定する。また、例えば、図7において再生用レーザパワーが1mWで出力減衰率が5%以上である場合にその磁気記録媒体を良品とする。レーザ光照射中の出力減衰率の増加は、レーザ光照射による加熱により記録層の磁化が、加熱しない場合の磁化方向から適度に傾くことを意味する。このことから、例えば磁化が媒体面に垂直に配向した垂直記録媒体に媒体面に垂直に磁界を印加する場合などには、レーザ光照射によって記録のための印加磁界に対して磁化の角度が0度よりも大きくなり、反転磁界を低減できる事が導ける。したがって、所定の再生用レーザパワーにおけるレーザ光照射中の出力減衰率を所定値と同等かそれよりも大きいという判定により、熱アシスト記録における良好な記録特性を示す磁気記録媒体を選別可能である。
【0083】
VI.レーザ光照射中の出力減衰率とレーザ光照射後の出力減衰率の2つの曲線が閉じる再生用レーザパワー(図6では12mW)、もしくはこれらの2つの曲線のいずれかが100%減衰(=残留出力ゼロ)となる再生用レーザパワーを得る。このレーザパワーは磁気記録媒体の温度特性を明確に示す特性点である。この特性点は、磁化測定装置、例えば振動試料型磁力計(VSM)や超電導磁束量子干渉計(SQUID)等で温度変化によって残留磁化が零になる温度に対応する。磁気記録媒体の検査工程において、この特性点(再生用レーザパワー)の製造変動幅を所定のパワーから例えば±5%以内に管理することで、磁気記録媒体の熱安定性や熱アシスト記録用の磁気記録媒体の品質管理が可能になる。
【0084】
VII.上記の判定手法の(I)〜(III)のいずれかと(IV)〜(VI)のいずれかを組み合わせる。これにより、熱アシスト磁気記録用に好適な磁気記録媒体で、かつ熱安定性が良好な磁気記録媒体を選別可能である。
【0085】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る評価方法によれば、再生用レーザ光を照射しながらあるいは照射した後の再生出力を得ることにより熱による磁化挙動の評価を簡便に行える磁気記録媒体の評価方法が実現できる。特に、再生用レーザ光照射中および/またはレーザ光照射後の出力減衰率と再生用レーザパワーとの関係に基づいて磁気記録媒体の熱による磁化挙動の評価を行える。
【0086】
また、図1に示した評価装置10は、レーザ光照射部16を磁気ヘッド11とは磁気記録媒体50の反対側に配置しているので、レーザ光照射部を一体化した磁気ヘッドを必要としない。したがって、磁気ヘッド11の選択の範囲が広がるという利点がある。
【0087】
なお、レーザ光照射部16を磁気記録媒体50に対して磁気ヘッド11と同じ側に配置してもよい。レーザ光照射部16を配置するスペースの制約の点や、レーザ光照射位置の位置合わせの容易さが低下する点で図1の場合よりも不利であるが、基板の両面に記録層を有する磁気記録媒体の評価が可能となる。
【0088】
なお、上記の評価方法ではインデックス信号の代わりに磁気記録媒体に予め位置の基準となる信号を記録し、その信号を回転位置の基準としてもよい。
【0089】
また、磁気記録媒体が熱アシスト磁気記録用でない場合は、S104のレーザ光照射位置合わせおよびS106の記録用レーザ光照射を行わずに図4のフローチャートを実行してもよい。
【0090】
また、上記の判定手法のうち、一つの所定の再生用レーザパワーにより磁気記録媒体を評価可能な場合は、図4に示すフローチャートにおいてその再生用レーザパワーをS110で設定し、S122およびS124を省略する。
【0091】
また、上記の判定手法では、上式(1)および(2)で出力減衰率を求めたがその代わりに出力減衰量を求め、出力減衰量に基づいて磁気記録媒体の特性を得たり、記録パワーを決めてよい。
【0092】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態は、評価装置のレーザ光照射部を磁気ヘッドに設けた例であり、それ以外は第1の実施の形態と同様である。
【0093】
図8は、本発明の第2の実施の形態に係る磁気記録媒体の評価方法を説明するための図である。
【0094】
図8を参照するに、第2の実施の形態の磁気ヘッド60は、図2に示す磁気ヘッドと略同様であるが、ヘッドスライダにレーザ光照射部61を備えている。レーザ光照射部61は、例えば光素子であり、レーザ光照射位置を再生素子の磁気抵抗効果膜39に対向する記録層53の位置MRに設定可能となっている。さらに、レーザ光照射部61は、図1に示す第1の実施の形態の照射制御部15に接続され、レーザ光照射部16と同様の機能を有し、同様の動作が可能である。そのため、第1の実施の形態と同様の動作が可能である。
【0095】
第2の実施の形態に係る評価方法は、図4に示す第1の実施の形態に係る評価方法のフローチャートと同様に行う。したがって、第2の実施の形態に係る評価方法は、第1の実施の形態に係る評価方法と同様の効果を有する。
【0096】
さらに、第2の実施の形態に係る評価方法では、磁気ヘッドと同じ側から再生用レーザ光を照射する。これにより、基板の両面に記録層が形成された磁気記録媒体が評価可能である。
【0097】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係る評価方法は、再生用レーザの照射開始から信号磁界の検出までの時間を異ならせて再生出力を測定することで、レーザ光を照射による磁化の時間的な挙動を検出するものである。なお、第3の実施の形態に係る評価方法において使用する評価装置は先の図1〜図3に示したものと同様の構成を有するので、再度の説明を省略する。
【0098】
図9は、本発明の第3の実施の形態に係る磁気記録媒体の評価方法のフローチャートである。
【0099】
図9を図1および図3と共に参照しつつ、磁気記録媒体の評価方法を説明する。
【0100】
最初に、初期設定を行う(S142)。初期設定は図4の初期設定(S102)と同様に行う。
【0101】
次いで、照射位置制御部15aによってレーザ光照射部16のレーザ光照射位置を記録素子36の記録ギャップ部37に対向する記録層53の位置に設定する(S144)。
【0102】
次いで、磁気ヘッド11の記録素子に、予め設定された記録電流を供給して信号記録を行う(S146)。これにより、レーザ光照射位置の記録層53に磁気トラック53aが形成される。信号記録のタイミングは先の図5(B)と同様である。
【0103】
次いで、照射位置制御部15aによってレーザ光照射部16のレーザ光照射位置を再生素子の磁気抵抗効果膜39に対向する記録層53付近の所定の位置L1に設定し(S148)する。本評価方法でのレーザ光照射位置L1,L2,…,Lj,…,Lmは、以下のように設定される。
【0104】
図10(A)〜(C)は、再生用レーザ光照射位置と磁気抵抗効果素子の位置との関係を説明するための図であり、図3の一部の概略拡大図である。図10(A)〜(C)では、磁気ヘッドの再生素子38の一部と、磁気記録媒体の記録層53と、レーザ光照射部16のみを示し、他の図示は省略している。また、図10(A)〜(C)では記録層53(つまり磁気記録媒体)は矢印RDの方向に移動するとする。
【0105】
レーザ光照射位置Ljは、図10(A)に示すように、レーザ光の照射によって記録層が加熱される領域HAの後端部TEが磁気抵抗効果膜39に対向する位置MRにわずかにかかるように設定する。この場合、レーザ光が照射されたばかりの後端部TEの記録層53が磁気抵抗効果膜39に対向する位置に短時間で移動するため、レーザ光照射開始直後の記録層53の磁化の挙動が検知可能である。
【0106】
図10(A)において、レーザ光照射位置Ljの位置を、例えば、磁気抵抗効果膜39に対向する位置MRと領域HAの後端部TEとの距離を0.1μmになるように設定し、磁気記録媒体の移動速度を7.7m/sとすると、後端部TEが加熱開始から磁気抵抗効果膜39によって信号磁界が検知されるまでの時間は0.1μ秒÷7.7=13n秒となる。このように、加熱開始直後の記録層の磁化の挙動が検知可能である。
【0107】
また、レーザ光照射位置Ljは、図10(B)に示すように、レーザ光の照射によって記録層が加熱される領域HAの中央部が位置MRと一致するようにも設定される。この場合、レーザ光照射開始(加熱開始)から適度に時間が経過した後の記録層53の磁化の挙動が検知可能である。
【0108】
さらに、レーザ光照射位置Ljは、図10(C)に示すように、レーザ光の照射によって記録層53が加熱される領域HAの前端部LEが位置MRにわずかにかかるようにも設定される。レーザ光照射から十分に時間が経過した後の記録層の磁化の挙動が検知可能である。例えば、レーザ光照射位置Ljの位置を、磁気抵抗効果膜39に対向する位置MRと領域HA(直径0.8μm)の前端部LEとの距離を0.1μmになるように設定して、磁気記録媒体の移動速度を7.7m/sとすると、加熱開始から磁気抵抗効果膜39によって信号磁界が検知されるまでの時間は、(0.8−0.1)μ秒÷7.7=91n秒となりレーザ光照射開始(加熱開始)から十分に時間が経過した後の記録層53の磁化の挙動が検知可能である。
【0109】
このように、レーザ光照射位置Ljは、図10(A)〜(C)の場合が網羅されるように設定することが好ましい。ただし、評価の目的に応じて、図10(A)〜(C)の場合の一部を省略してもよい。もちろん、図10(A)に示すレーザ光照射位置Ljよりもさらに紙面右側にシフトさせ、加熱される領域HAから磁気抵抗効果膜39に対向する位置MRが外れるように設定してもよい。
【0110】
図9に戻り、次いで、再生用レーザパワーを初期値Q1に設定する(S150)。なお、初期値Q1には本評価方法において使用する再生用レーザパワーQ1〜Qkの最小値を設定し、Q1からQkへと次第に増加するように設定される。
【0111】
次いで、再生素子38により磁気トラック53aを再生して再生用レーザ光照射前の再生出力を得る(S151)。
【0112】
次いで、再生用レーザ光照射をONにして(S152)、磁気トラック53aにレーザ光を照射しつつ、再生素子38により磁気トラック53aを再生して再生用レーザ光照射中の再生出力を測定する(S154)。この際、再生用レーザ光照射の"ON"および"OFF"のタイミングは、図5(A)のインデックス信号を基準とする。再生用レーザ光照射の"ON"区間は、ライトゲート信号が"High"となっていた区間と同等あるいは区間内に設定される。再生用レーザ光照射の"ON"のタイミングは、例えば、図5(D)に示すように、ライトゲート信号の立上がりよりも遅くし、"OFF"のタイミングは、ライトゲート信号の立下がりよりも早くする。
【0113】
さらに、リードゲート信号の立上がりのタイミングは、再生用レーザ光照射の"ON"のタイミングと同時とする。これにより、再生出力を的確に測定でき、特に、図10(A)に示すレーザ光照射位置の場合の再生出力を忠実に測定できる。なお、再生出力は先の図4においてS112等と同様にして再生信号の振幅の平均値が求められメモリ24に記憶される。
【0114】
次いで、再生用レーザ光照射をOFFにする(S155)。
【0115】
次いで、再生用レーザパワーQiが最も大きな再生用レーザパワーQkでない場合(S156の"NO")は、再生用レーザパワーQiに所定量を加えた再生用レーザパワーに設定して(S158)、S146〜S155を繰り返す。ここで、再生用レーザパワーを増加する(S124)毎に信号記録(S146)を行う理由は、先の図4に示す第1の実施の形態と同様である。
【0116】
再生用レーザパワーQiが再生用レーザパワーQkの場合(S156の"YES")は、再生用レーザ光照射位置LjがLmか否かを判定し、Lmでない場合(S160の"NO")は、再生用レーザ光照射位置Ljを所定の位置にオフセットさせる(S162)。
【0117】
次いで、既に記録されている磁気トラックを消去する(S164)。磁気トラック53aの消去は、磁気ヘッド11によりAC消去またはDC消去により行う。この際、レーザ光を磁気トラック53a(記録層53)に照射して、記録層53の温度を上昇させて磁気ヘッドによって、より低い磁界で消去するようにしてもよい。
【0118】
次いで、S144〜S158を繰り返し、再生用レーザ光照射位置LjがLmの場合(S160の"YES")は、再生出力と再生用レーザ光照射位置と再生用レーザパワーとの関係を得る(S172)。この関係を示す曲線、すなわち、再生出力と再生用レーザ光照射位置との関係(所定値の再生用レーザパワー)を示す曲線を、以下、加熱レスポンス曲線と称する。
【0119】
図11は、磁気記録媒体の再生用レーザ光照射中の再生出力と再生用レーザ光照射位置とレーザパワーとの関係図、図12は、他の磁気記録媒体の再生用レーザ光照射中の平均再生出力と再生用レーザ光照射位置とレーザパワーとの関係図である。縦軸は再生出力を示し、横軸は磁気抵抗効果膜39に対向する位置MRと加熱領域HAの中心との距離(再生用レーザ光照射位置Lj)であり、その距離の表示を、磁気抵抗効果膜に対して加熱領域HAの中心が磁気記録媒体の進行方向(矢印RDの方向)の下流側にある場合(例えば、図10(A)の配置)を"+"、上流側にある場合(例えば、図10(C)の配置)を"−"とした。また、図10(A)〜(C)の配置に対応するレーザ光照射位置をそれぞれ位置A〜Cとして図11および12に示した。また、図11および12の磁気記録媒体は、それぞれ先の図6および7と同一の磁気記録媒体であり、レーザ光照射部16には、図6および図7と同様のレーザヘッドを用いた。
【0120】
図11および図12を参照するに、加熱レスポンス曲線は、再生レーザ光照射位置が0.5μmから0μmに向かって(位置Aから位置Bに向かって)減少し、0μmから−0.6μmに向かって(位置Bから位置Cに向かって)再生出力がやや増加する傾向にある。
【0121】
ここで、"+"側の位置(例えば位置A)の場合、上述したように再生用レーザ光照射開始直後の磁化の挙動が観察可能である。図11に示す磁気記録媒体(以下図13の説明まで"媒体1"と称する。)では、再生用レーザ光のパワーが8mW以上で、再生レーザ光照射位置が0.5μmから0にかけて再生出力が減少し、特に13mWでは再生レーザ光照射位置が0.5μmにおいて12mWの場合よりも急激に減少しており、加熱開始直後に磁化が照射前の磁化方向から揺らいでいることが分かる。
【0122】
一方、図12に示す他の磁気記録媒体(以下図13の説明まで"媒体2"と称する。)では、加熱レスポンス曲線の再生レーザ光照射位置に対する傾向は図11と略同様である。ただし、媒体2では、再生用レーザ光のパワーが4mW以上で再生レーザ光照射位置が0.5μm、すなわち、加熱開始直後に磁化が、照射前の磁化方向から揺らいでいることが分かる。
【0123】
図9に戻り、次いで磁気記録媒体の特性を取得する(S172)。なお、ここでは、磁気記録媒体の品質を判定することをも含む。
【0124】
図13は、再生用レーザ光照射開始直後の出力減衰率と再生用レーザパワーとの関係図であり、図11および図12において再生レーザ光照射位置が0.5μmにおける再生出力と再生レーザ光照射前の再生出力を用いて、上式(1)により求めたものである。
【0125】
なお、図13のデータ点のうち、図11および図12では表示されていない再生用レーザパワーの加熱レスポンス曲線があるが、これは図11および図12において煩雑となるため、適宜加熱レスポンス曲線の表示を省略しているためである。
【0126】
図13を参照するに、媒体1では、再生用レーザ光のパワーに対して漸減後、12mW〜13mWで急激に減少しており、媒体2では4mWから急激に減少し始めている。これにより、媒体2の方が媒体1よりも加熱による熱揺らぎが大きいことが容易に推察される。図13に示す関係は、比較的長時間加熱された熱履歴を受けた状態ではなく、加熱開始直後の残留磁化の挙動を示しているため、媒体1および媒体2が加熱された場合の残留磁化の挙動を正確に検出できる。
【0127】
以上説明したように、第3の実施の形態に係る磁気記録媒体の評価方法では、再生用レーザ光照射のレーザ光照射位置L1,L2,…,Lj,…,Lmを再生素子の感磁部に対向する位置に対して変位させた位置に設定して再生用レーザ光照射中の再生出力を測定し、再生用レーザ光照射前に対する再生用レーザ光照射中の再生出力の出力減衰率を得ているので、記録層を比較的長時間加熱された状態ではなく、加熱開始直後、つまり上述した10n秒のオーダーの極めて短時間経過後の残留磁化の挙動を検出できる。この評価手法では、レーザスポットサイズにかかわらず評価できるので、レーザ光照射部に現在入手可能なレーザヘッドを用いることができ、評価方法も単純であるため、簡便な方法で評価できる。さらに、再生用レーザ光照射開始直後の出力減衰率と再生用レーザパワーとの関係を求めることにより、磁気記録媒体の信号が記録された記録層が加熱された場合の残留磁化に与える熱的影響を詳細に評価できる。
【0128】
なお、第3の実施の形態に係る磁気記録媒体の評価方法では、所定の再生用レーザパワーを予め1つに決めて図9に示すフローチャートを行ってもよい。この場合、図9のS156およびS158を省略する。
【0129】
なお、第3の実施の形態に係る磁気記録媒体の評価方法では、再生用レーザ光照射の"ON"のタイミングとリードゲート信号の立ち上がりのタイミングを同時としたが、以下のようにリードゲート信号の立ち上がりを再生用レーザ光照射の"ON"のタイミングよりも先行させてもよい。
【0130】
次に、図14は本発明の第3の実施の形態に係る変形例の磁気記録媒体の評価方法のタイムチャートである。
【0131】
図14を参照するに、図14(C)のリードゲート信号は、再生用レーザ光照射を"ON"にする前に立上げる。これにより、図14(E)の信号磁界に示されるように、信号磁界がレーザ光の照射の"ON"および"OFF"に応じて減少および増加する。この信号磁界の経時変化は再生出力の経時変化として検知できる。この変化量や増減の傾きは、磁気記録媒体の残留磁化の熱安定性と関連していると推察されるため、この評価により残留磁化の熱安定性を評価できるであろう。
【0132】
(第4の実施の形態)
第1〜第3の実施の形態に係る評価方法では、磁気記録媒体と磁気ヘッドとを相対的に移動させて信号磁界を検出したが、本発明の第4の実施の形態に係る評価方法では、磁気記録媒体と磁気ヘッドとを静止させて評価を行う。
【0133】
第4の実施の形態に係る評価方法に使用する評価装置は、図1に示す評価装置と略同様である。図1に示す評価装置では、磁気記録媒体を高速で回転させるが、ここでは、記録素子により回転させながらあるいは停止して信号記録し、再生の際には磁気記録媒体を停止させて行う。また、信号記録によって記録層に形成された記録トラックは再生素子により再生可能なように記録素子および再生素子が配置される。
【0134】
図15は、本発明の第4の実施の形態に係る磁気記録媒体の評価方法のフローチャートである。
【0135】
第4の実施の形態に係る評価方法は、再生出力を測定の際以外は第1の実施の形態に係る評価方法と略同様であるので、図15に加え図1および図3を参照しつつ説明する。
【0136】
最初に、初期設定(S182)、照射位置制御部15aによってレーザ光照射部16のレーザ光照射位置を記録素子36の記録ギャップ部37に対向する記録層53の位置に設定し(S184)、信号記録を行う(S186)。この各々のステップは、第1の実施の形態の図4のS102〜S106と同様にして行う。
【0137】
次いで、照射位置制御部15aによってレーザ光照射部16のレーザ光照射位置を再生素子の磁気抵抗効果膜39に対向する記録層53の位置に設定する(S188)。
【0138】
次いで、磁気記録媒体は回転を停止させ、磁気トラックと再生素子の感磁部との位置合わせを行う(S190)
次いで、再生用レーザパワーを初期値Q1に設定する(S192)。なお、初期値Q1には本評価方法において使用する再生用レーザパワーQ1〜Qkの最小値を設定し、Q1からQkへと次第に増加するように設定される。
【0139】
次いで、再生素子38により磁気トラック53aを再生して再生用レーザ光照射前の再生出力を得る(S112)。
【0140】
次いで、再生出力の測定を開始する(S194)。具体的には、リードゲート信号を"High"の状態にする。引き続き再生用レーザ光照射を"ON"にする(S196)。次いで、所定の時間後に再生用レーザ光照射を"OFF"にし、測定終了する(S196)。これにより、先の図14(E)に示した信号磁界と同様の変化が生じ、再生出力の時間変化がメモリ24に記憶される。
【0141】
次いで、再生用レーザパワーQiが所定の最も大きな再生用レーザパワーQkでない場合(S200の"NO")は、再生用レーザパワーQiに所定量を加えた再生用レーザパワーに設定して(S202)、S184〜S198を繰り返す。ここで、再生用レーザパワーを増加する(S202)毎に信号記録(S186)を行う理由は、先の図4に示す第1の実施の形態と同様である。
【0142】
再生用レーザパワーQiが再生用レーザパワーQkの場合(S200の"YES")は、メモリ24に記憶された再生出力の評価を行う(S204)。再生出力は時間的に変化しおり、先の第3実施の形態の変形例と同様に、再生出力の変化量や再生出力の増減の傾きを評価する。
【0143】
以上説明したように、第4の実施の形態に係る評価方法は、レーザ光の照射による再生出力の変化を測定することで、残留磁化の熱安定性を評価できるであろう。また、第4の実施の形態に係る評価方法では、再生出力を磁気記録媒体と再生素子とを相対的に静止させて測定しているので、再生出力の変化を容易に検出できる。
(第5の実施の形態)
本発明の第5の実施の形態に係る磁気記録媒体の製造方法は、上述した第1〜第4の実施の形態に係る磁気記録媒体の評価方法を磁気記録媒体の検査工程に適用したものである。
【0144】
磁気記録媒体の製造工程は、基板の表面を清浄化する洗浄工程と、基板上に第1の実施の形態で説明した下地層、記録層、および保護膜等を成膜する薄膜形成工程と、必要に応じて保護膜上に潤滑剤を塗布する潤滑層形成工程と、磁気記録媒体の表面の突起や欠陥を検査する表面検査工程と、磁気記録媒体の記録再生特性の検査や第1〜第4の実施の形態に係る磁気記録媒体の評価を行う検査工程等からなる。上記の洗浄工程、薄膜形成工程、潤滑層形成工程、および表面検査工程は特に限定されず公知の工程を適用可能であるので、それらの説明を省略する。
【0145】
検査工程では、第1の実施の形態の評価方法により磁気記録媒体の選別を行う。この選別には、具体的には第1の実施の形態において説明した(ア)〜(オ)のいずれかの評価手法を用いる。もちろん、第2〜第4の実施の形態に係る評価方法のいずれかをもちいてもよい。ただし、通常、磁気記録媒体は基板の両面に記録層を有するので、レーザ光照射部は磁気記録媒体に対して再生素子と同じ側に配置すべきである。
【0146】
第5の実施の形態に係る磁気記録媒体の製造方法によれば、熱による磁化挙動の観点から品質の良否を判定可能となる。特に、磁気記録媒体の残留磁化の熱安定性の良否や、熱アシスト磁気記録用の磁気記録媒体の品質判定が可能となる。よって、残留磁化の熱安定性の良好な磁気記録媒体や、熱アシスト磁気記録用の所定の品質を有する磁気記録媒体を製造可能となる。
【0147】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0148】
例えば、なお、上記の説明では磁気記録媒体の加熱手段としてレーザ光を用いたが、レーザ光以外の光や電磁波等のエネルギー線を用いてもよい。但し、かかるエネルギー線は、レーザ光と同等の高エネルギー密度および高速応答性が必要である。また、エネルギー線を基板の裏面から基板を透過させて記録層に照射する場合は、再生素子に悪影響を与えない波長や強度が選択する必要がある。さらに、基板にもかかるエネルギー線を透過させる材料を採用する。
【0149】
また、第1〜第5の実施の形態では磁気記録媒体を回転させて信号記録や再生信号を得たが、磁気記録媒体を直線的に動作するステージに載置して直線的に移動させて信号記録や再生信号を得てもよい。
【0150】
なお、以上の説明に関してさらに以下の付記を開示する。
(付記1)
再生素子を有する磁気ヘッドを用いた磁気記録媒体の評価方法であって、
前記磁気記録媒体の所定領域に信号を記録する第1のステップと、
前記磁気記録媒体の所定領域を再生して第1の再生出力を得る第2のステップと、
次いで、前記所定領域に所定のパワーのエネルギー線を照射し、該照射中あるいは照射後に、再生素子により該所定領域を再生して第2の再生出力を得る第3のステップと、
前記第1および第2の再生出力に基づいて、エネルギー線照射前に対するエネルギー線の照射による再生出力の変化量を算出する第4のステップと、を備えることを特徴とする磁気記録媒体の評価方法。
(付記2)
前記第4のステップの前に、
複数の互いに異なるパワーに設定して第1、第2および第3のステップを繰り返して、該パワーに応じた第2の再生出力を得て、
前記第4のステップは、前記パワー毎に第1および第2の再生出力に基づいて前記エネルギー線の照射による再生出力の変化量を算出し、再生出力の変化量とパワーとの関係を得ることを特徴とする付記1記載の磁気記録媒体の評価方法。
(付記3)
前記複数の互いに異なるパワーは、小さい方から大きい方へ次第に増加するように設定されることを特徴とする付記1または2記載の磁気記録媒体の評価方法。
(付記4)
前記第1のステップは、前記所定領域に他のエネルギー線を照射して記録素子により前記信号を記録することを特徴とする付記1〜3のうち、いずれか一項記載の磁気記録媒体の評価方法。
(付記5)
再生素子を有する磁気ヘッドを用いた磁気記録媒体の評価方法であって、
前記磁気記録媒体の所定領域に信号を記録する第1のステップと、
前記磁気記録媒体の所定領域を再生して第1の再生出力を得る第2のステップと、
次いで、前記所定領域に所定のパワーのエネルギー線を照射しつつ再生素子により該所定領域を再生して第2の再生出力を得る第3のステップと、
前記第1および第2の再生出力に基づいて、エネルギー線照射前に対するエネルギー線照射中の出力減衰率を算出する第4のステップと、
前記エネルギー線照射中の出力減衰率に基づいて磁気記録媒体の特性を得る第5のステップと、を備えることを特徴とする磁気記録媒体の評価方法。
(付記6)
前記第5のステップは、得られた所定のパワーにおけるエネルギー線照射中の出力減衰率が所定の出力減衰率と同等かそれよりも小さい場合に磁気記録媒体を熱安定性が良好な磁気記録媒体として良品と判定することを特徴とする付記5記載の磁気記録媒体の評価方法。
(付記7)
前記第5のステップは、得られた所定のパワーにおけるエネルギー線照射中の出力減衰率が所定の出力減衰率と同等かそれよりも大きい場合に磁気記録媒体を熱アシスト記録用の磁気記録媒体として良品と判定することを特徴とする付記5記載の磁気記録媒体の評価方法。
(付記8)
前記第3のステップと第4のステップとの間に、エネルギー線を照射した後に、前記再生素子により所定領域を再生して第3の再生出力を得る第6のステップをさらに備え、
前記第4のステップは、エネルギー線照射中およびエネルギー線照射後の出力減衰率に基づいて磁気記録媒体の特性を得ることを特徴とする付記5〜7のうち、いずれか一項記載の磁気記録媒体の評価方法。
(付記9)
前記第4のステップの前に、
複数の互いに異なるパワーに設定して第1、第2および第3のステップを繰り返し、該パワーに応じた第2の再生出力を得て、
前記第4のステップは、前記パワー毎に第1および第2の再生出力に基づいて前記エネルギー線照射中の出力減衰率を算出し、エネルギー線照射中の出力減衰率とパワーとの関係を得て、
前記第5のステップは、前記エネルギー線照射中の出力減衰率とパワーとの関係に基づいて磁気記録媒体の特性を得ることを特徴とする付記5〜8のうち、いずれか一項記載の磁気記録媒体の評価方法。
(付記10)
前記第3のステップと第4のステップとの間に、エネルギー線を照射した後に、前記再生素子により所定領域を再生して第3の再生出力を得る第7のステップをさらに備え、
前記第4のステップの前に、複数の互いに異なるパワーに設定して第1、第2、第3および第7のステップを繰り返し、該パワーに応じた第2および第3の再生出力を得て、
前記第5のステップは、エネルギー線照射中およびエネルギー線照射後の出力減衰率とパワーとのそれぞれの関係に基づいて磁気記録媒体の特性を得ることを特徴とする付記5〜8のうち、いずれか一項記載の磁気記録媒体の評価方法。
(付記11)
前記第4のステップのエネルギー線照射中の出力減衰率は、下記式(1)によって規定されることを特徴とする付記5記載の磁気記録媒体の評価方法。
【0151】
エネルギー線照射中の出力減衰率(%)=(1−第2の再生出力÷第1の再生出力)×100 … (1)
(付記12)
前記第4のステップのエネルギー線照射後の出力減衰率は、下記式(2)によって規定されることを特徴とする付記10記載の磁気記録媒体の評価方法。
【0152】
エネルギー線照射後の出力減衰率(%)=(1−第3の再生出力÷第1の再生出力)×100 … (2)
(付記13)
前記第5のステップは、エネルギー線照射中の出力減衰率とエネルギー線照射後の出力減衰率とが、0%よりも大きな出力減衰率で一致するパワーを得ることを特徴とする付記10記載の磁気記録媒体の評価方法。
(付記14) 前記第5のステップは、エネルギー線照射中の出力減衰率あるいはエネルギー線照射後の出力減衰率が100%となるパワーを得ることを特徴とする付記10記載の磁気記録媒体の評価方法。
(付記15)
前記複数の互いに異なるパワーは、小さい方から大きい方へ次第に増加するように設定されることを特徴とする付記10記載の磁気記録媒体の評価方法。
(付記16)
前記第1のステップは、前記所定領域に他のエネルギー線を照射して記録素子により前記信号を記録することを特徴とする付記5記載の磁気記録媒体の評価方法。
(付記17)
再生素子を有する磁気ヘッドを用いた磁気記録媒体の評価方法であって、
前記磁気記録媒体の所定領域に信号を記録する第1のステップと、
前記磁気記録媒体の所定領域を再生して第1の再生出力を得る第2のステップと、
次いで、前記所定領域に所定のパワーのエネルギー線を照射し、該エネルギー線を照射した後に、該所定領域を再生して第3の再生出力を得る第3のステップと、
前記第1および第3の再生出力に基づいて、エネルギー線照射前に対するエネルギー線照射後の出力減衰率を算出する第4のステップと、
前記エネルギー線照射後の出力減衰率に基づいて磁気記録媒体の特性を得る第5のステップと、を備えることを特徴とする磁気記録媒体の評価方法。
(付記18)
前記第5のステップは、所定のパワーにおけるエネルギー線照射後の出力減衰率が所定の出力減衰率と同等かそれよりも小さい場合に磁気記録媒体を熱安定性が良好な磁気記録媒体として良品と判定することを特徴とする付記17記載の磁気記録媒体の評価方法。
(付記19)
前記第4のステップの前に、
複数の互いに異なるパワーに設定して第1、第2および第3のステップを繰り返し、該パワーに応じた第3の再生出力を得て、
前記第4のステップは、前記パワー毎に第1および第3の再生出力に基づいて前記エネルギー線照射後の出力減衰率を算出し、エネルギー線照射後の出力減衰率とパワーとの関係を得て、
前記第5のステップは、前記エネルギー線照射後の出力減衰率とパワーとの関係に基づいて磁気記録媒体の特性を得ることを特徴とする付記17記載の磁気記録媒体の評価方法。
(付記20)
前記第4のステップのエネルギー線照射後の出力減衰率は、下記式(2)によって規定されることを特徴とする付記5記載の磁気記録媒体の評価方法。
【0153】
エネルギー線照射後の出力減衰率(%)=(1−第3の再生出力÷第1の再生出力)×100 … (2)
(付記21)
前記第5のステップは、エネルギー線照射後の出力減衰率が所定の出力減衰率と同等かそれよりも小さくなるパワーを磁気記録媒体の熱アシスト磁気記録の記録パワーとすることを特徴とする付記19記載の磁気記録媒体の評価方法。
(付記22)
前記第5のステップは、エネルギー線照射後の出力減衰率が所定の出力減衰率と同等かそれよりも小さくなるパワーが所定のパワーと同等かそれよりも大きい場合に磁気記録媒体を熱安定性が良好な磁気記録媒体として良品と判定することを特徴とすることを特徴とする付記19記載の磁気記録媒体の評価方法。
(付記23)
前記第5のステップは、エネルギー線照射後の出力減衰率が所定の出力減衰率と同等かそれよりも小さくなるパワーを磁気記録媒体の熱アシスト磁気記録の記録パワーとすることを特徴とする付記19記載の磁気記録媒体の評価方法。
(付記24)
前記複数の互いに異なるパワーは、小さい方から大きい方へ次第に増加するように設定されることを特徴とする付記19記載の磁気記録媒体の評価方法。
(付記25)
前記第1のステップは、前記所定領域に他のエネルギー線を照射して記録素子により前記信号を記録することを特徴とする付記17記載の磁気記録媒体の評価方法。
(付記26)
再生素子を有する磁気ヘッドを用いた磁気記録媒体の評価方法であって、
前記磁気記録媒体の所定領域に信号を記録する第1のステップと、
前記再生素子の感磁部に対向する磁気記録媒体の記録層の感磁部位置に対して所定の照射位置にエネルギー線照射位置を設定して所定のパワーのエネルギー線を照射し、該照射中に再生素子により該信号が記録された記録層の所定領域を再生して再生出力を得る第2のステップと、
前記照射位置を異ならせて第1および第2のステップを繰り返す第3のステップと、
前記再生出力と前記照射位置との関係に基づいて磁気記録媒体の特性を得る第4のステップと、を備えることを特徴とする磁気記録媒体の評価方法。
(付記27)
前記第4のステップの前に、
複数の互いに異なるパワーに設定して第1、第2および第3のステップを繰り返し、該パワーに応じた再生出力を得て、
前記第4のステップは、前記再生出力と前記照射位置とパワーとの関係に基づいて磁気記録媒体の特性を得ることを特徴とする付記26記載の磁気記録媒体の評価方法。
(付記28)
前記第2のステップは再生出力の経時変化を得て、
前記第4のステップは前記再生出力の経時変化と前記照射位置との関係に基づいて磁気記録媒体の特性を得ることを特徴とする付記26記載の磁気記録媒体の評価方法。
(付記29)
前記感磁部位置に対して所定のエネルギー線照射位置を相対的に変位させて設定することを特徴とする付記26記載の磁気記録媒体の評価方法。
(付記30)
前記エネルギー線はレーザ光であることを特徴とする付記1、5、17、および26のうち、いずれか一項記載の磁気記録媒体の評価方法。
(付記31)
記録層を有する磁気記録媒体の評価装置であって、
感磁部により信号磁界を検出する再生素子を有する磁気ヘッドと
磁気ヘッドの位置決め手段と、
前記エネルギー線を照射して信号が記録された前記記録層を加熱すると共に、加熱位置を位置決め可能な加熱手段と、
前記感磁部により信号が記録された記録層からの信号磁界を検出して再生信号を得る再生手段と、
前記加熱手段により前記感磁部と対向する記録層を所定の温度に加熱した状態で、前記感磁部により信号が記録された記録層からの信号磁界を検出して再生信号から再生出力を得る再生手段と、
前記再生信号に基づいて磁気記録媒体の特性を得る演算手段と、を備え、
前記加熱手段により前記感磁部と対向する記録層を所定の温度に加熱した状態あるいは加熱した後で、再生手段により再生出力を得て、前記演算手段により再生出力の変化量に基づいて磁気記録媒体の特性を得ることを特徴とする磁気記録媒体の評価装置。
(付記32)
磁気記録媒体の製造方法であって、
前記磁気記録媒体の検査工程を含み、
前記磁気記録媒体の検査工程は、
付記1〜30のうち、いずれか一項記載の評価方法により磁気記録媒体の特性を得て、該特性に基づいて良否を判定することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る磁気記録媒体の評価装置の概略構成図である。
【図2】磁気ヘッドの斜視図である。
【図3】第1の実施の形態に係る磁気記録媒体の評価方法を説明するための図である。
【図4】第1の実施の形態に係る磁気記録媒体の評価方法のフローチャートである。
【図5】第1の実施の形態に係る磁気記録媒体の評価方法のタイムチャートである。
【図6】磁気記録媒体の出力減衰率と再生用レーザパワーとの関係図である。
【図7】他の磁気記録媒体の出力減衰率と再生用レーザパワーとの関係図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る磁気記録媒体の評価方法を説明するための図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る磁気記録媒体の評価方法のフローチャートである。
【図10】再生用レーザ光照射位置と磁気抵抗効果素子の位置との関係を説明するための図である。
【図11】磁気記録媒体の再生用レーザ光照射中の再生出力と再生用レーザ光照射位置とレーザパワーとの関係図である。
【図12】他の磁気記録媒体の再生用レーザ光照射中の平均再生出力と再生用レーザ光照射位置とレーザパワーとの関係図である。
【図13】再生用レーザ光照射開始直後の出力減衰率と再生用レーザパワーとの関係図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態に係る変形例の磁気記録媒体の評価方法のタイムチャートである。
【図15】本発明の第4の実施の形態に係る磁気記録媒体の評価方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0155】
10 測定装置
11,60 磁気ヘッド
13 位置決め制御部
14 位置決め機構
15 照射制御部
15a 照射位置制御部
15b レーザパワー制御部
16,61 レーザ光照射部
18 回転駆動部
19 記録再生制御部
21 再生出力測定部
22 制御演算部
23 入力部
24 メモリ
25 表示部
31 サスペンション
32 ジンバル
33 素子部
34 ヘッドスライダ
35 信号配線
36 記録素子
36a 上部磁極
36b 下部磁極
37 記録ギャップ部
38 再生素子
39 感磁部(磁気抵抗効果膜)
40a,40b シールド層
41 アルミナ膜
43 記録コイル
50 磁気記録媒体
51 基板
52 下地層
53 記録層
53a 磁気トラック
54 保護膜
HA 加熱領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生素子を有する磁気ヘッドを用いた磁気記録媒体の評価方法であって、
前記磁気記録媒体の所定領域に信号を記録する第1のステップと、
前記磁気記録媒体の所定領域を再生して第1の再生出力を得る第2のステップと、
次いで、前記所定領域に所定のパワーのエネルギー線を照射し、該照射中あるいは照射後に、再生素子により該所定領域を再生して第2の再生出力を得る第3のステップと、
前記第1および第2の再生出力に基づいて、エネルギー線照射前に対するエネルギー線の照射による再生出力の変化量を算出する第4のステップと、を備えることを特徴とする磁気記録媒体の評価方法。
【請求項2】
再生素子を有する磁気ヘッドを用いた磁気記録媒体の評価方法であって、
前記磁気記録媒体の所定領域に信号を記録する第1のステップと、
前記磁気記録媒体の所定領域を再生して第1の再生出力を得る第2のステップと、
次いで、前記所定領域に所定のパワーのエネルギー線を照射しつつ再生素子により該所定領域を再生して第2の再生出力を得る第3のステップと、
前記第1および第2の再生出力に基づいて、エネルギー線照射前に対するエネルギー線照射中の出力減衰率を算出する第4のステップと、
前記エネルギー線照射中の出力減衰率に基づいて磁気記録媒体の特性を得る第5のステップと、を備えることを特徴とする磁気記録媒体の評価方法。
【請求項3】
前記第5のステップは、得られた所定のパワーにおけるエネルギー線照射中の出力減衰率が所定の出力減衰率と同等かそれよりも大きい場合に磁気記録媒体を熱アシスト記録用の磁気記録媒体として良品と判定することを特徴とする請求項2記載の磁気記録媒体の評価方法。
【請求項4】
前記第3のステップと第4のステップとの間に、エネルギー線を照射した後に、前記再生素子により所定領域を再生して第3の再生出力を得る第6のステップをさらに備え、
前記第4のステップは、エネルギー線照射中およびエネルギー線照射後の出力減衰率に基づいて磁気記録媒体の特性を得ることを特徴とする請求項2または3記載の磁気記録媒体の評価方法。
【請求項5】
前記第4のステップの前に、
複数の互いに異なるパワーに設定して第1、第2および第3のステップを繰り返し、該パワーに応じた第2の再生出力を得て、
前記第4のステップは、前記パワー毎に第1および第2の再生出力に基づいて前記エネルギー線照射中の出力減衰率を算出し、エネルギー線照射中の出力減衰率とパワーとの関係を得て、
前記第5のステップは、前記エネルギー線照射中の出力減衰率とパワーとの関係に基づいて磁気記録媒体の特性を得ることを特徴とする請求項2〜4のうち、いずれか一項記載の磁気記録媒体の評価方法。
【請求項6】
前記第3のステップと第4のステップとの間に、エネルギー線を照射した後に、前記再生素子により所定領域を再生して第3の再生出力を得る第7のステップをさらに備え、
前記第4のステップの前に、複数の互いに異なるパワーに設定して第1、第2、第3および第7のステップを繰り返し、該パワーに応じた第2および第3の再生出力を得て、
前記第5のステップは、エネルギー線照射中およびエネルギー線照射後の出力減衰率とパワーとのそれぞれの関係に基づいて磁気記録媒体の特性を得ることを特徴とする請求項2〜5のうち、いずれか一項記載の磁気記録媒体の評価方法。
【請求項7】
再生素子を有する磁気ヘッドを用いた磁気記録媒体の評価方法であって、
前記磁気記録媒体の所定領域に信号を記録する第1のステップと、
前記磁気記録媒体の所定領域を再生して第1の再生出力を得る第2のステップと、
次いで、前記所定領域に所定のパワーのエネルギー線を照射し、該エネルギー線を照射した後に、該所定領域を再生して第3の再生出力を得る第3のステップと、
前記第1および第3の再生出力に基づいて、エネルギー線照射前に対するエネルギー線照射後の出力減衰率を算出する第4のステップと、
前記エネルギー線照射後の出力減衰率に基づいて磁気記録媒体の特性を得る第5のステップと、を備えることを特徴とする磁気記録媒体の評価方法。
【請求項8】
再生素子を有する磁気ヘッドを用いた磁気記録媒体の評価方法であって、
前記磁気記録媒体の所定領域に信号を記録する第1のステップと、
前記再生素子の感磁部に対向する磁気記録媒体の記録層の感磁部位置に対して所定の照射位置にエネルギー線照射位置を設定して所定のパワーのエネルギー線を照射し、該照射中に再生素子により該信号が記録された記録層の所定領域を再生して再生出力を得る第2のステップと、
前記照射位置を異ならせて第1および第2のステップを繰り返す第3のステップと、
前記再生出力と前記照射位置との関係に基づいて磁気記録媒体の特性を得る第4のステップと、を備えることを特徴とする磁気記録媒体の評価方法。
【請求項9】
記録層を有する磁気記録媒体の評価装置であって、
感磁部により信号磁界を検出する再生素子を有する磁気ヘッドと、
磁気ヘッドの位置決め手段と、
前記エネルギー線を照射して信号が記録された前記記録層を加熱すると共に、加熱位置を位置決め可能な加熱手段と、
前記感磁部により信号が記録された記録層からの信号磁界を検出して再生信号を得る再生手段と、
前記加熱手段により前記感磁部と対向する記録層を所定の温度に加熱した状態で、前記感磁部により信号が記録された記録層からの信号磁界を検出して再生信号から再生出力を得る再生手段と、
前記再生信号に基づいて磁気記録媒体の特性を得る演算手段と、を備え、
前記加熱手段により前記感磁部と対向する記録層を所定の温度に加熱した状態あるいは加熱した後で、再生手段により再生出力を得て、前記演算手段により再生出力の変化量に基づいて磁気記録媒体の特性を得ることを特徴とする磁気記録媒体の評価装置。
【請求項10】
磁気記録媒体の製造方法であって、
前記磁気記録媒体の検査工程を含み、
前記磁気記録媒体の検査工程は、
請求項1〜8のうち、いずれか一項記載の評価方法により磁気記録媒体の特性を得て、該特性に基づいて良否を判定することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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