磁気記録媒体及びその製造方法
【課題】陽極酸化アルミナナノホールの形成用起点として機能し得るパターンを高精細に転写可能で、生産性に優れた磁気記録媒体の製造方法、及び大容量で高密度記録が可能な磁気記録媒体の提供。
【解決手段】本発明の磁気記録媒体の製造方法は、凸凹パターンを表面に有するモールドの該凸凹パターン上に金属層を製膜する金属層製膜工程と、製膜した金属層における前記モールドとは反対側に位置する面に、基板を接着剤により接着する基板接着工程と、該基板接着工程の後、前記モールドを前記金属層から剥離するモールド剥離工程と、ナノホール形成処理を行うことにより、前記モールドにおける凸凹パターンが転写されて前記金属層に形成された凹凸パターンを起点として、前記基板面に対し略直交する方向にナノホールが複数形成された多孔質層を形成する多孔質層形成工程と、該ナノホールの内部に磁性材料を充填する磁性材料充填工程とを少なくとも含む。
【解決手段】本発明の磁気記録媒体の製造方法は、凸凹パターンを表面に有するモールドの該凸凹パターン上に金属層を製膜する金属層製膜工程と、製膜した金属層における前記モールドとは反対側に位置する面に、基板を接着剤により接着する基板接着工程と、該基板接着工程の後、前記モールドを前記金属層から剥離するモールド剥離工程と、ナノホール形成処理を行うことにより、前記モールドにおける凸凹パターンが転写されて前記金属層に形成された凹凸パターンを起点として、前記基板面に対し略直交する方向にナノホールが複数形成された多孔質層を形成する多孔質層形成工程と、該ナノホールの内部に磁性材料を充填する磁性材料充填工程とを少なくとも含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されているハードディスク装置などに好適であり、大容量で高密度記録が可能な磁気記録媒体及びその効率的で低コストな製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IT産業等における技術革新に伴い、磁気記録媒体の大容量化・高速化・低コスト化の研究開発が盛んに行われてきている。該磁気記録媒体の大容量化・高速化・低コスト化のためには、該磁気記録媒体における記録密度の向上が必須であり、該磁気記録媒体における磁性膜を、連続膜とせずにドット、バー、ピラー等のパターン状とし、そのサイズをナノメートルスケールにすることにより複雑磁区ではなく単磁区構造としたパターンドメディアが提案されている。
前記パターンドメディアにおいては、サブミクロンオーダーのパターンを、磁気ディスクの全面に高精度かつ低コストで形成する必要がある。例えば、陽極酸化アルミナのナノホール中に磁性金属を充填してなるパターンドメディアの場合、陽極酸化を行う前に、ナノホールの形成起点となる窪みパターンをアルミニウム層の表面に形成すると、ナノホールの秩序配列が得られることが知られている(特許文献1参照)。
また、本発明者等は、前記窪みパターンではなく、溝パターンを形成することにより、磁気ディスクの円周方向にナノホールを一次元配列させることを実現している(特許文献2参照)。
【0003】
前記パターンの形成方法としては、例えば、EB描画による方法、各種リソグラフィ手法等により、磁気ディスク毎にパターンを形成する直描法と、描画パターンからモールド(型、スタンパと称することもある)を作製し、該モールドに形成されたパターンを転写するインプリント法とがあるが、後者の方が生産性に優れている。
ナノホールを利用した前記パターンドメディアの場合、前記インプリント法としては、例えば、図14A及び図14Bに示す二つの方法が挙げられる。
【0004】
図14Aに示す方法は、ハードインプリント法と称され、サブミクロンパターンを有するモールド110を、ハードディスク基板120上に形成したアルミニウム層130の表面に押し付けてパターンを転写する方法である(特許文献3参照)。しかし、この方法では、例えば、63nmピッチの三角格子パターンをアルミニウム層の表面に転写するのに、4ton/cm2の圧力を必要とし、パターンの微細化に伴い、より高圧力が必要となるため、大面積にパターンを形成するのが困難になると同時に、モールド耐久性の確保も困難である。
このようなハードインプリント法による問題を解決する方法として期待されているのが、図14Bに示すソフトインプリント法と称される方法である。この方法では、ハードディスク基板120上に形成したアルミニウム層130の表面に樹脂層140を形成し、該樹脂層140に対してモールド110を押し付けることによりパターンを転写した後、エッチングによりアルミニウム層130にパターンを形成する。しかし、この方法においても、アルミニウム層の全面に均一にパターンを転写することが困難であり、また、樹脂層に形成したパターンを残した状態にてアルミニウム層をエッチングする必要があるが、樹脂層は一般的にエッチング耐性が低く、前記ナノホールの形成用起点として充分に機能可能な程度の深さの凹部を形成することができないという問題があった。
更に、前記ハードインプリント法及び前記ソフトインプリント法ともに、前記アルミニウム層を製膜した後パターンを転写するが、該アルミニウム層の製膜に際し、スパッタ法や蒸着法を使用すると、膜の成長と共に、結晶粒が大きくなり、被転写面であるアルミニウム層の表面に凹凸が生じて、ナノスケールのパターンを忠実に転写するのが困難になるという本質的な問題がある。
【0005】
更に、陽極酸化アルミナナノホールにおける前記パターン形成の第三の方法として、図14C及び図14Dに示す方法が提案されている(特許文献4及び非特許文献1参照)。
図14Cに示す方法では、基板210上に微粒子220の規則配列を形成した後(a)、蒸着、スパッタ等の物理的製膜手法によりアルミニウム(板)200を微粒子規則配列上に析出させ(b)、次に基板210からアルミニウム板200を剥離後(c)、微粒子の溶解などの手法を用いることにより、アルミニウム板200から微粒子配列を除去し、表面に規則的な窪み230の配列が形成されたアルミニウム板200(d)を得る。
また、図14Dに示す方法では、まず、規則的に配列した表面凹凸構造310Aを有するモールド310を準備する(a)。この表面凹凸構造310Aは、例えば、電子ビームリソグラフィー、フォトリソグラフィーなどの微細加工法により形成可能である。モールド310の表面凹凸構造310A上に、アルミニウム320を蒸着、スパッタ等の手法によって析出させ、表面凹凸構造310Aをアルミニウム320の表面に転写する(b)。転写後に、モールド310を除去すると、アルミニウム320の表面には、前記表面凹凸構造310Aに対応した表面凹凸構造320Aが形成される(c)。
これらの方法によれば、アルミニウムの初期製膜面にパターンが転写されるので、製膜中の粒成長に伴う問題を回避することができるものの、厚み数ミクロンのアルミニウム膜しか形成することができず、磁気ディスクに応用することができないという問題がある。
したがって、上述したインプリント法における問題を改善し、パターン転写精度が高く、陽極酸化アルミナナノホールの形成用起点として機能し得るパターンを高精細に転写可能で、生産性に優れ、大容量で高密度記録が可能な磁気記録媒体の製造方法及びこれに関連する技術は未だ提供されていないのが現状である。
【0006】
【特許文献1】特開平10−121292号公報
【特許文献2】特開2005−305634号公報
【特許文献3】特開平10−96808号公報
【特許文献4】特開2005−76117号公報
【非特許文献1】Y.Matsui,K.Nishio,and H.Masuda, Small 2006.2,No.4,522−525
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、陽極酸化アルミナナノホールの形成用起点として機能し得るパターンを高精細に転写可能で、生産性に優れ、低コストな磁気記録媒体の製造方法、及びコンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されているハードディスク装置などに好適であり、大容量で高密度記録が可能な磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては、後述する付記に列挙した通りである。即ち、
本発明の磁気記録媒体の製造方法は、凸凹パターンを表面に有するモールドの該凸凹パターン上に金属層を製膜する金属層製膜工程と、製膜した金属層における前記モールドとは反対側に位置する面に、基板を接着剤により接着する基板接着工程と、該基板接着工程の後、前記モールドを前記金属層から剥離するモールド剥離工程と、ナノホール形成処理を行うことにより、前記モールドにおける凸凹パターンが転写されて前記金属層に形成された凹凸パターンを起点として、前記基板面に対し略直交する方向にナノホールが複数形成された多孔質層を形成する多孔質層形成工程と、該ナノホールの内部に磁性材料を充填する磁性材料充填工程と、を少なくとも含むことを特徴とする。
該磁気記録媒体の製造方法においては、前記金属層製膜工程において、前記凸凹パターンを表面に有するモールドの該凸凹パターン上に前記金属層が製膜される。前記基板接着工程において、製膜した前記金属層における前記モールドとは反対側に位置する面に、前記基板が前記接着剤により接着される。該基板接着工程の後、前記モールド剥離工程において、前記モールドが前記金属層から剥離される。すると、前記モールドにおける凸凹パターンが精度よく転写されて、前記金属層の表面に高精細な凹凸パターンが形成される。次いで、前記多孔質層形成工程において、前記ナノホール形成処理を行うことにより、前記モールドにおける凸凹パターンが転写されて前記金属層に形成された凹凸パターンを起点として、前記基板面に対し略直交する方向に前記ナノホールが複数形成された多孔質層が形成される。前記磁性材料充填工程において、前記ナノホールの内部に前記磁性材料が充填される。その結果、大容量で高密度記録が可能な磁気記録媒体が効率的に低コストで製造される。
【0009】
本発明の磁気記録媒体は、基板上に、接着剤層を介して、該基板面に対し略直交する方向にナノホールが複数形成された多孔質層を有し、該ナノホールの内部に磁性材料が充填されてなることを特徴とする。
該磁気記録媒体においては、前記基板上に、前記接着剤層を介して、前記ナノホールが複数形成された前記多孔質層を有してなり、該ナノホールは、前記モールドにおける凸凹パターンが精度よく転写されて形成された凹凸パターンを起点として形成され、かつ前記磁性材料が充填されているので、大容量で高密度記録が可能であり、極めて高品質である。このため、該磁気記録媒体は、コンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されているハードディスク装置などに好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、陽極酸化アルミナナノホールの形成用起点として機能し得るパターンを高精細に転写可能で、生産性に優れ、低コストな磁気記録媒体の製造方法、及びコンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されているハードディスク装置などに好適であり、大容量で高密度記録が可能な磁気記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(磁気記録媒体の製造方法)
本発明の磁気記録媒体の製造方法は、金属層製膜工程と、基板接着工程と、モールド剥離工程と、多孔質層形成工程と、磁性材料充填工程とを少なくとも含み、好ましくは、軟磁性下地層形成工程、研磨工程などを含み、更に必要に応じて適宜選択した、電極層形成工程、保護層形成工程等のその他の工程を含む。
【0012】
<金属層製膜工程>
前記金属層製膜工程は、凸凹パターンを有するモールドの該凸凹パターン上に金属層を製膜する工程である。
【0013】
−モールド−
前記モールドとしては、表面に凸凹パターンを有する限り、特に制限はなく、その材料(材質)などについては、目的に応じて適宜選択することができるが、半導体分野で微細構造作製用材料として最も広範囲に使用されている点で、シリコン、シリコン酸化膜、これらの組合せ等が好適に挙げられ、連続使用耐久性に優れる点で、炭化珪素等が好適に挙げられ、また、光ディスク成形等に使用されているNi等が好適に挙げられる。前記モールドは、複数回使用することができる。
【0014】
前記モールドにおける凸凹パターンとしては、形成するナノホールの配列パターンに対応した凸凹パターン、即ち、ナノホールの形成用起点として機能し得る凹部及び凸部にそれぞれ対応したランド部(凸部)及びグルーブ部(凹部)を有するのが好ましい。
前記ランド部の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ライン状であるのが好ましく、前記モールドにおける凸凹パターンとしては、ランド部とブルーブ部とを交互に有してなるラインパターンであるのが好ましい。
前記モールドにおける凸凹パターンが前記金属層に転写されると、該金属層の表面に、凹状ライン(凹部)及び凸状ライン(凸部)が交互に配列してなる凹凸パターン(ナノホール形成用起点)が形成され、ナノホール形成処理(例えば、陽極酸化処理)を行うことにより、ナノホール形成用起点における凹部にのみ、ナノホールを一定間隔で形成することができ、該ナノホールがライン状に一次元配列した多孔質層が得られる。
【0015】
前記ランド部(凸状ライン)の長さ方向と直交方向の断面形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、四角形状、V形状、半円形状などが挙げられる。
更に、前記ランド部(凸状ライン)は、同心円状又は螺旋状に配列しているのが好ましく、特に、ハードディスク用途の場合には、アクセスの容易性の観点から、同心円状が好ましく、ビデオディスク用途の場合には、連続再生の容易性の観点から、螺旋状が好ましい。前記ランド部が同心円状又は螺旋状に配列している場合、形成するナノホールを、同心円状又は螺旋状に配列させることができる。
【0016】
前記凸凹パターンにおけるランド部の高さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、5nm以上が好ましく、10〜100nmがより好ましい。
前記ランド部の高さが、5nm未満であると、前記ナノホールの形成用起点の確定が不充分となり易く、得られるナノホールの配列に乱れが生じることがある。
【0017】
−金属層−
前記金属層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属単体、その酸化物、窒化物等、合金などのいずれであってもよく、例えば、アルミナ(酸化アルミニウム)、アルミニウムなどが挙げられるが、これらの中でも、アルミニウムが特に好ましい。
前記金属層の製膜は、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、スパッタ法(スパッタリング)、蒸着法などにより好適に行うことができる。
前記金属層の製膜条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
なお、前記スパッタ法の場合、前記金属層の材料により形成されたターゲットを用いてスパッタリングを行うことができる。この場合に用いる前記ターゲットは、高純度であるのが好ましく、前記金属層の材料がアルミニウムである場合には、99.990%以上であるのが好ましい。
【0018】
前記金属層製膜工程が、前記金属層の製膜前に、前記モールドにおける凸凹パターン上に剥離剤を塗布することを含むのが好ましい。この場合、後述するモールド剥離工程において、前記モールドを前記金属層から容易に剥離することができる。
前記剥離剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、各種表面処理剤を使用することができるが、例えば、フッ素系表面処理剤、シランカップリング剤などが好適に挙げられる。
前記フッ素系表面処理剤としては、例えば、3M社製の「ベック EGC−1720」が好適に挙げられ、前記シランカップリング剤としては、例えば、ダイキン工業株式会社製の「オプツールDSX」が好適に挙げられる。
【0019】
以上の工程により、凸凹パターンを有する前記モールドの該凸凹パターン上に前記金属層が製膜される。
【0020】
<軟磁性下地層形成工程>
前記軟磁性下地層形成工程は、製膜した前記金属層上に軟磁性下地層を形成する工程である。
前記軟磁性下地層の形成は、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、スパッタ法(スパッタリング)、蒸着法等の真空成膜法、電着(電着法)などで形成してもよいし、あるいは無電解メッキで形成してもよい。
前記軟磁性下地層形成工程により、前記金属層上に所望の厚みの前記軟磁性下地層が形成される。
なお、前記軟磁性下地層上には、必要に応じて、更に強度保持用金属層を形成してもよい。
【0021】
<電極層形成工程>
前記電極層形成工程は、前記金属層と前記軟磁性下地層との間に電極層を形成する工程である。
前記電極層の形成は、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、スパッタ法(スパッタリング)、蒸着法などにより好適に行うことができる。該電極層の形成条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記電極層形成工程により形成された前記電極層は、軟磁性層、非磁性層及び強磁性層の少なくともいずれかを電着により形成する際の電極として使用される。
【0022】
<基板接着工程>
前記基板接着工程は、製膜した前記金属層における前記モールドとは反対側に位置する面(前記軟磁性下地層、前記強度保持用金属層を形成する場合には、これらの層のうち、前記モールドとは反対側に位置する最表面)に、基板を接着剤により接着する工程である。
【0023】
−基板−
前記基板としては、その形状、構造、大きさ、材質等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記形状としては、前記磁気記録媒体がハードディスク等の磁気ディスクである場合には、円板状(ディスク状)であるのが好ましく、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記材質としては、ガラス、アルミニウム、シリコン、石英などが挙げられる。
前記基板の具体例としては、例えば、磁気ディスク基板としてのガラス基板、アルミ基板、シリコン基板などが好適に挙げられる。
前記基板は、適宜製造したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
【0024】
−接着剤−
前記接着剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、接着強度が大きい点で、エポキシ樹脂系接着剤が好ましく、硬化収縮率が小さい点で、低硬化収縮接着剤が好ましく、熱膨張率の異なるもの同士の接着に優れる点で、変成シリコーン樹脂接着剤が好ましく、短時間硬化が可能な点で、シアノアクリレート系接着剤が好ましい。これらの接着剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記エポキシ樹脂系接着剤としては、2液混合型が一般的であり、例えば、コニシ(株)社製の「ボンド ホーロー 補修用ホワイト」及び「ボンドEセット」、セメダイン社製の「EP007」、大日本インキ化学工業(株)社製の「EPICLON EXA−4850 シリーズ」などが好適に挙げられる。
前記低硬化収縮接着剤としては、柔軟性及び強靭性を有し、かつ硬化収縮率が0.6%と小さい点で、TETA(TriEhylene TetraAmine)を硬化剤に用いた、大日本インキ化学工業(株)社製の「EPICLON EXA−4850―150」などが好適に挙げられる。
前記変成シリコーン樹脂接着剤としては、例えば、コニシ(株)社製の「ボンドMOS7」、セメダイン社製の「PMシリーズ」が好適に挙げられる。
前記シアノアクリレート系接着剤としては、例えば、コニシ(株)社製の「ボンドアロンアルファ プロ用耐衝撃」が好適に挙げられる。
【0026】
以上の工程により、前記金属層における前記モールドとは反対側に位置する面に、前記基板が前記接着剤により接着される。その結果、前記モールドにおける凸凹パターン上に、前記金属層(前記軟磁性下地層及び前記強度保持用金属層が形成されている場合にはこれらの層を含む)及び前記基板が、この順に積層される。
【0027】
<モールド剥離工程>
前記モールド剥離工程は、前記基板接着工程の後、前記モールドを前記金属層から剥離する工程である。
【0028】
前記モールドと前記金属層との剥離の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記モールドと前記金属層との界面端に、ナイフのエッジで切れ目を入れて剥離する方法が挙げられる。しかし、前記モールドとしては、Niスタンパが一般的であり、サブミクロン構造を有するニッケルとアルミニウム(前記金属層)との界面の剥離は、実際には非常に困難である。即ち、ナイフのエッジによる剥離では、図1A及び図1Bに示すように、剥離時の不均一な応力により、アルミニウム層(前記金属層)の表面に皺が発生してしまうことがある。例えば、特開2005−76117号公報には、実施例として、粒子配列界面の剥離が開示されているが、粒子配列界面からの剥離は容易であるが、前記モールドと前記金属層との剥離は、極めて困難であると推認される。
【0029】
このため、前記モールド剥離工程は、中心に開口を有する前記基板の内周縁を、突上機構を用いて前記モールド側から突上げることにより行われるのが好ましい。この場合、図2A及び図2Bに示すように、剥離時に皺が発生することなく、容易に剥離される。
【0030】
−突上機構−
前記突上機構としては、中心に開口を有する前記基板(前記磁気ディスク基板)の内周縁を、前記モールド側から突上げることにより、前記金属層と前記モールドとを剥離する機能を有する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、図3Aに示すように、突上機構20は、開口を有する基板(磁気ディスク基板)15の内周縁15Aに当接して基板15を突き上げる突上ピン21と、バネ22と、突上ピン21を押し上げる加圧ピン23とを有してなり、バネ22により、突上ピン21が上昇可能に加圧ピン23に付勢されているのが好ましい。そして、図3Bに示すように、加圧ピン23が、手動又は自動的に加圧されると、バネ22により加圧ピン23に付勢された突上ピン21が押し上げられて上昇し、基板(磁気ディスク基板)15の内周縁15Aに当接して、モールド12側から基板15を押し上げるようになっている。その結果、金属層13がモールド12から剥離される。
なお、突き上げによる剥離の方法としては、光ディスクのフォトポリマー法による複製において、スタンパ(モールド)上にフォトポリマーで接着固化したガラス基板を剥離する方法が提案されているが(再公表特許WO2003/083854参照)、この方法は、フォトポリマーとスタンパとの界面での剥離が対象となっており、本発明の前記磁気記録媒体の製造方法における前記モールド剥離工程とは異なり、前記金属層と前記モールドとの界面(金属−金属界面)での剥離については何ら開示されていない。
【0031】
ここで、前記金属層製膜工程、前記基板接着工程及び前記モールド剥離工程により、前記基板と前記金属層(アルミニウム層)との接着物を作製する方法の一例を、図面を用いて説明する。
まず、図4(A)に示すように、例えば、SUS製の台座10上に、接着剤11を用いて、例えば、Ni製のモールド12を接着固定する。なお、モールド12は、その表面に、ランド部Lとグルーブ部Gとが交互に配列してなる、ライン状の凸凹パターンP1を有している。
次いで、モールド12における凸凹パターンP1上に、不図示の剥離剤を塗布した後、図4(B)に示すように、アルミニウムをターゲットとし、スパッタリングにより金属層(アルミニウム層)13を製膜する。更に、垂直ヘッドによる書込みを容易にするために、アルミニウム層13上に軟磁性下地層14(及び不図示の強度保持用金属層)を製膜する(前記金属層製膜工程)。この状態にて、図4(C)に示すように、更に接着剤11を塗布した後、基板(例えば、磁気ディスク基板)15を接着する(前記基板接着工程)。
次いで、図4(D)に示すように、モールド12をアルミニウム層13から剥離すると、基板15とアルミニウム層13と軟磁性下地層14(及び不図示の強度保持用金属層)との接着物16が得られる(前記モールド剥離工程)。また、アルミニウム層13の表面には、モールド12における凸凹パターンP1が精度よく転写されて、ナノホールの形成用起点として機能し得る、凹凸パターンP2が形成される。
【0032】
また、以上の工程により、表面に凹凸パターンが形成された前記金属層と前記基板との接着物を作製した後(後述する多孔質層形成工程の前であって、前記モールド剥離工程の後)、該基板における該金属層との接着面と反対側に位置する面に対し、予め前記金属層製膜工程により前記モールド上に製膜した金属層を更に接着し、該金属層から前記モールドを剥離してもよい。この場合、前記基板の両面使用が可能となり、両面記録が可能な磁気ディスクを作製することができる。
【0033】
ここで、前記基板を両面使用する場合の、前記金属層製膜工程、前記基板接着工程、及び前記モールド剥離工程の工程順序を、以下に図面を用いて説明する。
まず、図4(A)〜図4(D)に示すように、A面用モールド12を用いて、前記金属層製膜工程、前記基板接着工程、及び前記モールド剥離工程により、図5に示す、基板15とアルミニウム層13と軟磁性下地層14(及び不図示の強度保持用金属層)との接着物16を作製する。なお、基板15は、接着剤11により(接着剤層11を介して)、軟磁性下地層14上の不図示の強度保持用金属層上に固着されている。
【0034】
一方、B面用モールドを用いて、前記金属層製膜工程により該B面用モールド上に金属層を製膜したものを予め作製しておく。即ち、図6Aに示すように、SUS製の台座10上に、接着剤11を用いて、B面用モールド32を接着固定する。なお、B面用モールド32は、その表面に、ランド部Lとグルーブ部Gとが交互に配列してなる、ライン状の凸凹パターンP1を有している。次いで、B面用モールド32における凸凹パターンP1上に、不図示の剥離剤を塗布した後、図6Bに示すように、アルミニウムをターゲットとし、スパッタリングにより金属層(アルミニウム層)13を製膜する。更に垂直ヘッドによる書込みを容易にするために、アルミニウム層13上に軟磁性下地層14(及び不図示の強度保持用金属層)を製膜する(前記金属層製膜工程)。
【0035】
そして、図5に示す接着物16の基板15におけるアルミニウム層13との接着面と反対側に位置する面を、図6Bに示す、予めB面用モールド32上に製膜したアルミニウム層13上に製膜された軟磁性下地層14(及び不図示の強度保持用金属層)の最表面に更に接着する(前記基板接着工程、図7A参照)。
次いで、B面用モールド32上に製膜されたアルミニウム層13からB面用モールド32を剥離すると、アルミニウム層13の表面には、B面用モールド32における凸凹パターンP1が精度よく転写されて、ナノホールの形成用起点として機能し得る、凹凸パターンP2が形成される(前記モールド剥離工程、図7B参照)。
以上により、基板15の両面(表裏)に凹凸パターンP2を有するアルミニウム層13が形成される。その後、これを用いて、後述する多孔質層形成工程及び磁性材料充填工程等を行うと、両面使用が可能な磁気ディスクを作製することができる。
【0036】
更に、前記基板の片面使用及び両面使用のいずれの使用態様においても、前記金属層製膜工程、前記基板接着工程、及び前記モールド剥離工程は、複数の基板に対して一括して行われるのが好ましい。この場合、前記基板と前記金属層との接着物を、同時に複数個作製することができ、量産性が向上する。
ここで、前記基板を片面使用する場合の一括処理の工程を、以下に図面を用いて説明する。
まず、図8Aに示すように、台座40上に、例えば、ニッケル電鋳により複数製造した、パターン付モールド41を、複数枚接着固定した後、図8Bに示すように、パターン付モールド41に対し、一括してアルミニウム層43及び軟磁性下地層44を製膜する(前記金属層製膜工程)。次いで、図8Cに示すように、軟磁性下地層44上に接着剤11を用いて基板45をそれぞれ接着固定した後(前記基板接着工程)、図8Dに示すように、前記突上機構を用いて、アルミニウム層43からパターン付モールド41をそれぞれ一括して剥離する(前記モールド剥離工程)。その結果、図8Eに示すように、基板45とアルミニウム層43(及び軟磁性下地層44)との接着物が、同時に複数個得られ、スループットの向上が実現される。
【0037】
<多孔質層形成工程>
前記多孔質層形成工程は、ナノホール形成処理を行うことにより、前記モールドにおける凸凹パターンが転写されて前記金属層に形成された凹凸パターンを起点として、前記基板面に対し略直交する方向にナノホールが複数形成された多孔質層を形成する工程である。
【0038】
前記ナノホール形成処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、陽極酸化処理、エッチング処理などが好適に挙げられる。これらの中でも、前記金属層に前記基板面に略直交する方向に多数のナノホールを略等間隔にかつ均等に配列形成することができる等の点で、陽極酸化処理が特に好ましい。
【0039】
前記陽極酸化処理の場合、硫酸、リン酸あるいはシュウ酸の水溶液中で、前記金属層に接する電極を陽極として電気分解エッチングさせることにより行うことができる。該電極としては、前記軟磁性下地層、前記電極層などが挙げられる。
【0040】
また、前記陽極酸化処理における電圧としては、特に制限はないが、次式、ナノホールの間隔(ピッチ)(nm)÷A(nm/V) (ただし、A=1.0〜4.0)、で与えられる値の電圧を選択するのが好ましい。
前記電圧が、前記式で与えられる範囲から選択される値であると、前記モールドにおける凸凹パターンが転写されて形成された前記凹凸パターンにおける凹状ラインに前記ナノホールを配列させることができる等の点で有利である。
【0041】
前記ナノホール形成処理により形成されるナノホール(細孔)は、前記基板の形状がディスク状である場合には、該ディスク状の基板の一の露出面(板面)に対し、略直交する方向に形成される。
前記ナノホールとしては、前記ナノホール構造体を貫通して孔として形成されていてもよいし、前記多孔質層を貫通せず穴(窪み)として形成されていてもよいが、例えば、前記多孔質層を前記磁気記録媒体として使用する場合には、前記ナノホールが前記多孔質層を貫通する貫通孔として形成されているのが好ましい。
【0042】
前記ナノホールの配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ハードディスク、ビデオディスク等の前記磁気記録媒体においては、同心円状及び螺旋状の少なくともいずれかに配列しているのが好ましい。特に、ハードディスク用途の場合にはアクセスの容易性の観点から同心円状が好ましく、ビデオディスク用途の場合には連続再生の容易性の観点から螺旋状が好ましい。
また、隣接するナノホール列おけるナノホールは、半径方向に配列しているのが好ましい。この場合、前記磁気記録媒体は、磁気ヘッドの書込み電流を増やすことなく高密度記録・高速記録が可能で大容量であり、オーバーライト特性に優れ、均一な特性を有し、特にクロスリードやクロスライト等の問題がなく、極めて高品質である。
【0043】
前記ナノホールにおける開口径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、強磁性層を単磁区とすることができる大きさであるのが好ましく、具体的には、100nm以下が好ましく、高密度記録を実現可能な点で、30nm以下が好ましく、5〜20nmがより好ましい。
前記ナノホールにおける開口径が、100nmを超えると、前記多孔質層を適用した磁気記録媒体が単磁区構造にならないことがある。
【0044】
前記ナノホールにおける深さと開口径とのアスペクト比(深さ/開口径)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高アスペクト比であると、形状異方性が大きくなり、磁気記録媒体の保磁力を向上させることができる点で好ましく、例えば、前記多孔質層をハードディスク等の磁気記録媒体に適用する場合、2以上であるのが好ましく、3〜15であるのがより好ましい。
前記アスペクト比が、2未満であると、磁気記録媒体の保磁力を十分に向上させることができないことがある。
【0045】
前記多孔質層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、磁気記録媒体に適用する場合、500nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましく、20〜200nmが特に好ましい。
前記多孔質層の厚みが、500nmを超えると、前記磁気記録媒体に前記軟磁性下地層を設けたとしても高密度記録を行うことができないことがあり、該多孔質層の研磨が必要になり、この場合、時間を要し高コストであり、品質劣化の原因となることがある。
【0046】
なお、前記陽極酸化処理における電解液の種類、濃度、温度、時間等としては、特に制限はなく、形成するナノホールの数、大きさ、アスペクト比等に応じて適宜選択することができる。例えば、前記電解液の種類としては、隣接する前記ナノホール列の間隔(ピッチ)が、150〜500nmである場合は、希釈リン酸溶液が好適に挙げられ、80〜200nmである場合は、希釈蓚酸溶液が好適に挙げられ、10〜150nmである場合は、希釈硫酸溶液が好適に挙げられる。いずれの場合も、前記ナノホールのアスペクト比の調整は、陽極酸化処理後にリン酸溶液に浸漬させて前記ナノホール(アルミナポア)の直径を増加させることにより行うことができる。
【0047】
前記陽極酸化処理により前記多孔質層形成工程を行った場合、該金属層にナノホールを多数形成することができるが、該ナノホールの下部にバリア層が形成されてしまうことがあるが、該バリア層は、リン酸等の公知のエッチング液を用いて公知のエッチング処理を行うことにより、容易に除去することができる。以上により、前記金属層に、前記軟磁性下地層又は前記基板を露出させる前記ナノホールを前記基板面に略直交する方向に多数形成することができる。
前記多孔質層形成工程により、前記基板上又は前記軟磁性下地層上に前記多孔質層が形成される。
【0048】
<磁性材料充填工程>
前記磁性材料充填工程は、前記多孔質層に形成された前記ナノホールの内部に磁性材料を充填する工程である。
前記磁性材料充填工程は、強磁性材料を前記ナノホールに充填する強磁性層形成工程を少なくとも含んでいればよく、更に必要に応じて、軟磁性材料を前記ナノホールに充填する軟磁性層形成工程、強磁性層と軟磁性層との間に非磁性層(中間層)を形成する非磁性層形成工程などを含んでいてもよい。
【0049】
−強磁性層形成工程−
前記強磁性層形成工程は、前記ナノホールの内部(前記軟磁性層や前記非磁性層が形成されている場合には、前記ナノホール内のこれらの層上に)に強磁性層を形成する工程である。
前記強磁性層の形成は、Fe、Co、Ni、FeCo、FeNi、CoNi、CoNiP、FePt、CoPt、NiPt等の強磁性層の材料を、電着等により前記ナノホールの内部に堆積乃至充填させることにより行うことができる。
前記電着の方法、条件等としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記軟磁性下地層又は前記電極層(シード層)を電極として、前記強磁性層の材料を含む溶液を1種又は2種以上用い、電圧を印加させることにより、前記ナノホール内に析出乃至堆積させる方法、などが好適に挙げられる。
前記強磁性層形成工程により、前記多孔質層におけるナノホールの内部に前記強磁性層が形成される。
【0050】
−軟磁性層形成工程−
前記軟磁性層形成工程は、前記ナノホールの内部に軟磁性層を形成する工程である。
前記軟磁性層の形成は、NiFe、FeSiAl、FeC、FeCoB、FeCoNiB、CoZrNb等の軟磁性層の材料を、電着等により前記ナノホールの内部に堆積乃至充填させることにより行うことができる。
前記電着の方法、条件等としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記軟磁性下地層又は前記電極層を電極として、前記軟磁性層の材料を含む溶液を1種又は2種以上用い、電圧を印加させることにより、前記電極上に析出乃至堆積させる方法、などが好適に挙げられる。
前記軟磁性層形成工程により、前記多孔質層におけるナノホールの内部であって、前記基板上、前記軟磁性下地層上又は前記電極層上に前記軟磁性層が形成される。
【0051】
−非磁性層形成工程−
前記非磁性層形成工程は、前記軟磁性層上に非磁性層を形成する工程である。
前記非磁性層の形成は、非磁性層の材料を電着等により前記ナノホールの内部に形成した前記軟磁性層上に堆積乃至充填させることにより行うことができる。
前記非磁性層の材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、Cu、Al、Cr、Pt、W、Nb、Ru、Ta及びTiから選択される少なくとも1種、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記電着の方法、条件等としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記軟磁性下地層又は前記電極層を電極として、前記非磁性層の材料を含む溶液を1種又は2種以上用い、電圧を印加させることにより、ナノホール内に析出乃至堆積させる方法、などが好適に挙げられる。
前記非磁性層形成工程により、前記多孔質層におけるナノホールの内部であって、前記軟磁性層上等に前記非磁性層が形成される。
【0052】
<研磨工程>
前記研磨工程は、前記磁性材料充填工程の後、前記多孔質層の表面を研磨し、平坦化する工程である。
前記研磨工程における研磨の方法としては、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができ、例えば、CMP(化学機械研磨)処理などが挙げられる。
前記研磨工程により、前記磁気記録媒体の表面が平滑化されると、垂直磁気記録ヘッド等の磁気ヘッドの安定浮上が可能となり、低浮上化による高密度記録と信頼性確保の双方を達成することができる点で有利である。
【0053】
以下に、本発明の磁気記録媒体の製造方法の一例として、前記基板を両面使用する場合について、図面を用いて説明する。
上述の通り、図4(A)〜図4(D)に示すように、A面用モールド12を用いて、前記金属層製膜工程、前記基板接着工程、及び前記モールド剥離工程により、図5に示す、基板15とアルミニウム層13と軟磁性下地層14(及び不図示の強度保持用金属層)との接着物16を作製する。
一方、図6A〜図6Bに示すように、B面用モールド32を用いて、前記金属層製膜工程により該B面用モールド32上にアルミニウム層13、軟磁性下地層14(及び不図示の強度保持用金属層)をこの順に製膜したものを予め作製しておく。
そして、図5に示す接着物16の基板15におけるアルミニウム層13との接着面と反対側に位置する面を、図6Bに示す、予めB面用モールド32上に製膜したアルミニウム層13上に製膜された軟磁性下地層14(及び不図示の強度保持用金属層)の最表面に更に接着する(図7A参照)。
次いで、前記モールド剥離工程により、B面用モールド32上に製膜されたアルミニウム層13からB面用モールド32を剥離する(図7B参照)。
【0054】
以上により作製した、基板15の両面(表裏)に凹凸パターンP2を有するアルミニウム層13に対し、ナノホール形成処理(陽極酸化処理)を行うことにより、凹凸パターンP2を起点として、基板15面に対し略直交する方向にナノホール17Aを複数形成させて多孔質層17を形成する(多孔質層形成工程、図9A参照)。
次いで、磁性材料充填工程により、電気めっきを行い、ナノホール17Aの内部に磁性材料18を充填する(図9B参照)。
【0055】
その後、ナノホール17A内に磁性材料18が充填された多孔質層17の表面を、前記研磨工程により平滑化した後、保護膜19を形成し、潤滑剤を塗布すると、本発明の磁気記録媒体の一例としての両面記録用磁気ディスクが製造される(図9C参照)。
【0056】
本発明の磁気記録媒体の製造方法によれば、パターン転写精度が高く、陽極酸化アルミナナノホールの形成用起点として機能し得るパターンを高精細に転写可能で、生産性に優れ、低コストで、大容量で高密度記録が可能な磁気記録媒体を製造することができる。このため、本発明の磁気記録媒体の製造方法によれば、以下に説明する本発明の磁気記録媒体を効率よく低コストで製造することができる。
【0057】
(磁気記録媒体)
本発明の磁気記録媒体は、基板上に、接着剤層を介して、多孔質層を有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の層を有してなる。
【0058】
−基板−
前記基板としては、その形状、構造、大きさ、材質等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、その詳細については、上述した通りであり、例えば、ガラス基板、アルミ基板、シリコン基板などが好適に挙げられる。
【0059】
−接着剤層−
前記接着剤層は、前記基板と前記多孔質層とを接着する機能を有する。
前記接着剤層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、上述した接着剤が好適に挙げられ、具体的には、上記エポキシ樹脂系接着剤、上記低硬化収縮接着剤、上記変成シリコーン樹脂接着剤、上記シアノアクリレート系接着剤などが好ましい。
【0060】
−多孔質層−
前記多孔質層としては、前記基板面に対し略直交する方向にナノホールが複数形成されたものが挙げられ、その詳細は、上述した通りである。
前記多孔質層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、500nm以下が好ましく、5〜200nmがより好ましい。
前記多孔質層の厚みが、500nmを超えると、ナノホール内への磁性材料の充填が困難になることがある。
【0061】
前記多孔質層における前記ナノホールは、該多孔質層を貫通して貫通孔として形成されていてもよいし、貫通せず穴として形成されていてもよいが、該ナノホールに磁性材料を充填して磁性層を形成し、更にその下方にも磁性層を形成する場合等を考慮すると、該ナノホールが貫通孔として形成されているのが好ましい。
【0062】
前記多孔質層は、前記ナノホールが規則的に配列してなるナノホール列を一定間隔で有しているのが好ましい。
隣接する前記ナノホール列の間隔としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記磁気記録媒体がハードディスクに適当する場合、5〜500nmが好ましく、10〜200nmがより好ましい。
前記間隔が、5nm未満であると、ナノホールの形成が困難であり、500nmを超えると、ナノホールの規則的配列が困難となることがある。
【0063】
隣接するナノホール列の間隔と、ナノホール列の幅との比(間隔/幅)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、1.1〜1.9が好ましく、1.2〜1.8がより好ましい。
前記比(間隔/幅)が、1.1未満であると、隣接するナノホール同士が融合してしまい、独立したナノホールが得られないことがあり、1.9を超えると、陽極酸化処理の際にグルーブ部以外の部分にもナノホールが形成されてしまうことがある。
【0064】
前記ナノホール列の幅としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記磁気記録媒体がハードディスクに適当する場合、5〜450nmが好ましく、8〜200nmがより好ましい。
前記ナノホール列の幅が、5nm未満であると、ナノホールの形成が困難であり、450nmを超えると、ナノホールの規則的配列が困難となることがある。
【0065】
また、前記基板がディスク状である場合には、前記ナノホール列が、同心円状及び螺旋状の少なくともいずれかに位置しているのが好ましく、特に、ハードディスク用途の場合には、アクセスの容易性の観点から同心円状が好適であり、ビデオディスク用途の場合には、連続再生の容易性の観点から螺旋状が好適である。
更に、隣接するナノホール列におけるナノホールは、半径方向に配列しているのが好ましい。この場合、磁気記録媒体は、磁気ヘッドの書込み電流を増やすことなく、高密度記録・高速記録が可能で大容量であり、オーバーライト特性に優れ、均一な特性を有し、特にクロスリードやクロスライト等の問題がなく、極めて高品質である。
【0066】
前記ナノホールにおける開口径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記磁気記録媒体がハードディスクに適当する場合、その強磁性層を単磁区とすることができる大きさが好ましく、具体的には、200nm以下が好ましく、5〜100nmがより好ましい。
前記ナノホールにおける開口径が、200nmを超えると、ハードディスクが単磁区構造にならないことがある。
【0067】
前記ナノホールにおける深さと開口径とのアスペクト比(深さ/開口径)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高アスペクト比であると、形状異方性が大きくなり、磁気記録媒体の保磁力を向上させることができる点で好ましく、例えば、2以上が好ましく、3〜15がより好ましい。
前記アスペクト比が、2未満であると、磁気記録媒体の保磁力を充分に向上させることができないことがある。
【0068】
前記ナノホールの内部には、磁性材料が充填されて磁性層が形成されているのが好ましい。
前記磁性層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、強磁性層、軟磁性層、などが挙げられる。本発明においては、前記ナノホールの内部に、前記強磁性層が少なくとも形成されていればよく、更に必要に応じて、前記軟磁性層が、前記基板と前記強磁性層との間に形成されていてもよく、更に前記強磁性層及び前記軟磁性層の間に非磁性層(中間層)が形成されていてもよい。
【0069】
−−強磁性層−−
前記強磁性層は、前記磁気記録媒体において記録層として機能する。
前記強磁性層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、Fe、Co、Ni、FeCo、FeNi、CoNi、CoNiP、FePt、CoPt及びNiPtから選択される少なくとも1種、などが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記強磁性層は、前記材料により垂直磁化膜として形成されていれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、Ll0規則構造を有し、C軸が前記基板と垂直方向に配向しているもの、fcc構造あるいはbcc構造を有し、C軸が前記基板と垂直方向に配列しているもの、などが好適に挙げられる。
【0070】
前記強磁性層の厚みとしては、本発明の効果を害さない限り特に制限はなく、記録時に使用される線記録密度等に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)前記軟磁性層の厚み以下である態様、(2)記録時に使用される線記録密度で決まる最小ビット長の1/3倍〜3倍である態様、(3)前記軟磁性層及び前記軟磁性下地層の厚みの合計以下である態様、などが好ましく、例えば、通常5〜100nm程度が好ましく、5〜50nmがより好ましく、1Tb/in2をターゲットにした線記録密度1,500kBPIで磁気記録を行う場合には、50nm以下(20nm程度)であるのが好ましい。
なお、ここでの前記「強磁性層」の厚みは、該強磁性層が、積層構造、又は複数層に分割された構造(例えば、非磁性層等の中間層により分割され連続層になっていない構造)を有する場合には、各強磁性層の厚みの合計を意味する。また、前記「軟磁性層」の厚みは、該軟磁性層が、積層構造、又は複数層に分割された構造(例えば、非磁性層等の中間層により分割され連続層になっていない構造)を有する場合には、各軟磁性層の厚みの合計を意味する。また、前記「軟磁性層及び軟磁性下地層の厚みの合計」は、該軟磁性層及び該軟磁性下地層の少なくともいずれかが、積層構造、又は複数層に分割された構造(例えば、非磁性層等の中間層により分割され連続層になっていない構造)を有する場合には、各軟磁性層及び軟磁性下地層の厚みの合計を意味する。
【0071】
前記強磁性層及び前記軟磁性層を有する磁気記録媒体の場合、磁気記録の際に使用する単磁極ヘッドと前記軟磁性層との間の距離を、前記多孔質層の厚みよりも短く、該強磁性層の厚みと略等しくすることができ、前記多孔質層の厚みに拘らず該強磁性層の厚みだけで、前記単磁極ヘッドからの磁束の集中、使用される記録密度での最適な磁気記録再生特性などが制御可能となる。その結果、該磁気記録媒体においては、従来の磁気記録媒体に比し、書込み効率が大幅に向上し、書込み電流が小さくて済み、オーバーライト特性を著しく向上させることができる。
前記強磁性層の形成は、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、電着(電着法)等により行うことができる。
【0072】
−−軟磁性層−−
前記軟磁性層としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、NiFe、FeSiAl、FeC、FeCoB、FeCoNiB及びCoZrNbから選択される少なくとも1種、などが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
前記軟磁性層の厚みとしては、本発明の効果を害さない限り特に制限はなく、前記多孔質層における前記ナノホールの深さ、前記強磁性層の厚み等に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)前記強磁性層の厚み超である態様、(2)前記軟磁性下地層の厚みとの合計が前記強磁性層の厚み超である態様、などが挙げられる。
【0074】
前記軟磁性層は、磁気記録に使用する磁気ヘッドからの磁束を効果的に前記強磁性層に収束させることができ、該磁気ヘッドの磁界の垂直成分を大きくさせることができる点で有利である。また、前記軟磁性層は、軟磁性下地膜とともに前記磁気ヘッドと共に該磁気ヘッドから入力させる記録磁界の磁気回路を形成可能であるのが好ましい。
前記軟磁性層としては、前記基板面に略直交する方向に磁化容易軸を有しているのが好ましい。この場合、垂直磁気記録用ヘッドで記録を行うと、該垂直磁気記録用ヘッドからの磁束の集中、使用される記録密度での最適な磁気記録再生特性などが制御可能となり、磁束が前記強磁性層に集中する結果、従来の磁気記録装置に比し、書込み効率が大幅に向上し、書込み電流が小さくて済み、オーバーライト特性が著しく向上する。
前記軟磁性層の形成は、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、電着(電着法)等により行うことができる。
【0075】
−−非磁性層−−
前記多孔質層における前記ナノホール中には、前記強磁性層と前記軟磁性層との間に非磁性層(中間層)を有していてもよい。該非磁性層(中間層)が存在すると、前記強磁性層と前記軟磁性層との間の交換結合力の作用を弱める結果、予想とは異なる磁気記録の再生特性となってしまう場合に、それを所望の再生特性に制御することができる。
前記非磁性層の材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、Cu、Al、Cr、Pt、W、Nb、Ru、Ta及びTiから選択される少なくとも1種、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0076】
前記非磁性層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記非磁性層の形成は、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、電着(電着法)等により行うことができる。
【0077】
−軟磁性下地層−
前記磁気記録媒体においては、前記基板と前記多孔質層との間に、軟磁性下地層を有していてもよい。
前記軟磁性下地層の材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、前記軟磁性層の材料として上述したものが好適に挙げられる。これらの材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、また、前記軟磁性層の材料と互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0078】
前記軟磁性下地層は、前記基板面の面内方向に磁化容易軸を有しているのが好ましい。この場合、磁気記録に使用する磁気ヘッドからの磁束が効果的に閉じた磁気回路を形成し、該磁気ヘッドの磁界の垂直成分を大きくさせることができる。該軟磁性下地層は、ビットサイズ(前記ナノホールの開口径)が100nm以下の単磁区記録においても有効である。
前記軟磁性下地層の形成は、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、電着(電着法)や無電界メッキ等により行うことができる。
【0079】
−その他の層−
前記その他の層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、電極層、保護層、などが挙げられる。
【0080】
前記電極層は、磁性層(前記強磁性層及び前記軟磁性層)を電着等により形成する際の電極として機能する層であり、一般に、前記基板上であって前記強磁性層の下方に設けられる。なお、前記磁性層を電着により形成する場合、該電極層を電極として使用してもよいが、前記軟磁性下地層等を電極として使用してもよい。
前記電極層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Cr、Co、Pt、Cu、Ir、Rh、これらの合金、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、該電極層は、これらの材料以外に、W、Nb、Ti、Ta、Si、Oなどを更に含有していてもよい。
【0081】
前記電極層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。該電極層は、1層のみ設けられていてもよいし、2層以上設けられていてもよい。
前記電極層の形成は、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、スパッタ法、蒸着法等により行うことができる。
【0082】
前記保護層は、前記強磁性層を保護する機能を有する層であり、前記強磁性層の表面乃至上方に設けられる。該保護層は、1層のみ設けられていてもよいし、2層以上設けられていてもよく、また、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
前記保護層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、などが挙げられる。
【0083】
前記保護層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記保護層の形成は、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法に従って行うことができるが、例えば、スパッタ法、プラズマCVD法、塗布法、などにより行うことができる。
【0084】
本発明の磁気記録媒体は、磁気ヘッドを用いた各種の磁気記録に使用することができるが、単磁極ヘッドによる磁気記録に好適に使用することができる。
本発明の磁気記録媒体は、高密度記録・高速記録が可能で大容量であり、高品質である。このため、該磁気記録媒体は、各種の磁気記録媒体として設計し使用することができ、例えば、コンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されているハードディスク装置、などに設計し使用することができ、ハードディスク等の磁気ディスクに特に好適に設計し使用することができる。
【実施例】
【0085】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0086】
−モールドにおけるパターンのアルミニウム層への転写実験1−
<金属層製膜工程>
1インチHDD用ガラス基板と同じ形状を有し、その表面にランド部及びグルーブ部のピッチが90nmのランド/グルーブパターン(凸凹パターン)が同心円状に形成されたNiモールドN1と、ランド部及びグルーブ部のピッチが150nmのランド/グルーブパターン(凸凹パターン)が同心円状に形成されたNiモールドN2との2種類を用意した。なお、これらの凸凹パターンにおけるランド部の高さは約50nmである。
NiモールドN1(N2)をSUS製の台座に接着固定した後、ディップ法により、剥離剤(「ベックEGC−1720」;3M社製)にNiモールドN1(N2)を浸漬させ、3〜4mm/s程度の速度で引き上げることにより、NiモールドN1(N2)における凸凹パターン上に、剥離剤を塗布した。次いで、これを乾燥させた後、100℃にて30分間加熱し、室温に戻した。
【0087】
次に、NiモールドN1(N2)を、DCマグネトロンスパッタ装置にセットし、Alターゲットとしては、99.99%のものを使用し、Arガス圧0.3Pa、投入電力50Wにて、120分間スパッタすることにより、NiモールドN1及びN2における凸凹パターン上に、厚み5μmのアルミニウム層を製膜した。
【0088】
<基板接着工程>
得られたアルミニウム層におけるNiモールドN1(N2)とは反対側に位置する面、即ち、アルミニウム層のスパッタ面に、接着剤(「ボンド ホーロー補修用ホワイト」;コニシ(株)製)を塗布した後、1インチ用HDDガラス基板を接着した。そして、接着剤が硬化した後、ガラス基板からはみ出した接着剤を、ナイフを用いて除去した。
【0089】
<モールド剥離工程>
突上げ剥離により、アルミニウム層からモールドを剥離するため、図10に示す、突上機構を有する剥離治具を試作した。
図10に示す剥離治具は、図3Aに示す突上機構20と同様の構成を有する突上機構50からなり、突上機構50は、中心に開口を有するガラス基板(HDD用ガラス基板)15の内周縁15Aに当接してガラス基板15を突き上げる突上ピン51と、不図示のバネと、突上ピン51を押し上げる加圧ピン53とを有しており、該バネにより突上ピン51が加圧ピン53に付勢されている。なお、突上ピン51及び加圧ピン53は、SUS303製である。
試作した剥離治具における、加圧ピン53を押圧した。すると、図3Bに示す突上機構20と同様、不図示のバネにより加圧ピン53に付勢された突上ピン51の先端が、中心に開口を有するガラス基板(HDD用ガラス基板)15の内周縁15Aに当接して、モールド12側からガラス基板15が突き上げられ、アルミニウム層13からモールド12が剥離された。その結果、アルミニウム層13の表面には、Niモールドにおける凸凹パターンP1が転写されて、複数のグルーブ部(凹状ライン)とランド部(凸状ライン)とが交互に配列した凹凸パターンP2が形成された。なお、NiモールドN1により形成した凹凸パターンでは、グルーブ部及びランド部のピッチは90nmであり、NiモールドN2により形成した凹凸パターンでは、グルーブ部及びランド部のピッチは150nmであり、これらのグルーブ部の深さは約50nmである。
また、剥離後のアルミニウム層の表面には、図2A及び図2Bに示すように、皺が発生していなかった。
【0090】
<多孔質層形成工程>
凹凸パターンP2が形成されたアルミニウム層13に対し、陽極酸化法により、ナノホールを複数形成させて、図9Aに示す多孔質層を形成した。
陽極酸化処理は、陽極酸化液として、0.3MLのシュウ酸を用い、液温16℃、陽極酸化電圧40Vで行った。また、めっき法によりナノホール内に磁性材料(Co)を充填するため、電流回復処理も行った。
なお、ナノホールのピッチは、一般的に、下記式(1)で表される。
ナノホールピッチ(nm)=陽極酸化電圧(V)×2.5・・・式(1)
【0091】
陽極酸化処理により得られた細孔配列(多孔質層)におけるナノホールパターンについて、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したところ、図11A及び図11Bに示すようなナノホールの配列が得られた。
図11Aに示すように、グルーブ/ランドピッチが90nmの凹凸パターンをナノホール形成用起点として用いた場合、上記陽極酸化条件では、グルーブ部(凹状ライン)上に、ナノホールが1列に配列していることが判った。
図11Bに示すように、グルーブ/ランドピッチが150nmの凹凸パターンをナノホール形成用起点として用いた場合、特願2006−035876号に記載の通り、上記陽極酸化条件では、グルーブ部(凹状ライン)上に、ナノホールが2列に配列していることが判った。
以上より、Niモールドにおけるランド/グルーブパターン(凸凹パターン)が、アルミニウム層に忠実に転写されて得られた凹凸パターンをナノホール形成用起点として用いることにより、ナノホールが期待通りに形成されることが判った。
【0092】
−モールドにおけるパターンのアルミニウム層への転写実験2−
前記転写実験1において、前記金属層製膜工程で用いた剥離剤(「ベックEGC−1720」;3M社製)を、シランカップリング剤(「オプツールDSX」;ダイキン工業社製)に代え、該シランカップリング剤0.1wt%溶液に、Niモールドを浸漬させた後、約3時間風乾して塗布した以外は、前記転写実験1と同様にして、前記基板接着工程、前記モールド剥離工程及び前記多孔質層形成工程を行った。
その結果、前記モールド剥離工程では、突き上げ剥離により、皺が発生することなく、アルミニウム層からモールドが綺麗に剥離された。そして、Niモールドにおけるランド/グルーブパターン(凸凹パターン)が、アルミニウム層に忠実に転写されて凹凸パターンが形成された。また、前記多孔質層形成工程では、得られた凹凸パターンをナノホール形成用起点として用いることにより、ナノホールが期待通りに形成されることが判った。
【0093】
−モールドにおけるパターンのアルミニウム層への転写実験3−
まず、前記転写実験1と同様にして、前記金属層製膜工程及び前記基板接着工程を行った後、モールド剥離工程を下記方法により行って、アルミニウム層からモールドを剥離した。
【0094】
<モールド剥離工程>
HDD用ガラス基板とNiモールドとの間に、ナイフの刃を差し込み、ガラス基板をNiモールドから剥離した。4〜5回、同様に試したが、図1A及び図1Bに示すように、アルミニウム層の表面に皺が発生してしまい、前記転写実験1における突き上げ剥離に比して、皺なしでの剥離は困難であることが判った。
【0095】
(実施例1)
−磁気記録媒体の製造−
前記転写実験1と同様にして、Niモールドにおけるパターンをアルミニウム層に転写し、両面記録用磁気ディスクを製造した。
【0096】
<金属層製膜工程>
まず、前記転写実験1と同様、1インチHDD用ガラス基板と同じ形状を有し、その表面にランド部及びグルーブ部のピッチが90nmのランド/グルーブパターン(凸凹パターン)が同心円状に形成されたNiモールド(A面用)を用意した。なお、凸凹パターンにおけるランド部の高さは約50nmである。
NiモールドをSUS製の台座に接着固定した後、ディップ法により、剥離剤(「ベックEGC−1720」;3M社製)にNiモールドを浸漬させ、3〜4mm/s程度の速度で引き上げることにより、Niモールドにおける凸凹パターン上に、剥離剤を塗布した。次いで、これを乾燥させた後、100℃にて30分間加熱し、室温に戻した。
【0097】
次に、Niモールドを、DCマグネトロンスパッタ装置にセットし、前記転写実験1と同様の条件でスパッタすることにより、Niモールドにおける凸凹パターン上に、厚み300nmのアルミニウム層を製膜した。
【0098】
<軟磁性下地層形成工程>
得られたアルミニウム層上に、いわゆるAPS−SUL(反強磁性結合−軟磁性下地層)として、CoZrNb/Ru/CoZrNb膜を製膜した。
更に、強度保持用金属層として、Taを1μmの厚みとなるように製膜した。
【0099】
<基板接着工程及びモールド剥離工程>
前記転写実験1と同様にして、前記基板接着工程を行った後、前記モールド剥離工程により、突き上げ剥離にて、アルミニウム層からNiモールド(A面用)を剥離し、HDD用ガラス基板とアルミニウム層と軟磁性下地層(及び不図示の強度保持用金属層)との接着物16を作製した。
【0100】
一方、前記金属層製膜工程及び前記軟磁性下地層形成工程と同様にして、図6A及び図6Bに示すように、前記Niモールドと同一形状のNiモールド(B面用)32を用いて、該Niモールド32上に、アルミニウム層13、軟磁性下地層14(及び不図示の強度保持用金属層)をこの順に製膜したものを作製した。
【0101】
そして、図5に示す接着物16のガラス基板15におけるアルミニウム層(A面)との接着面と反対側に位置する面を、図6Bに示す、Niモールド(B面用)32上に製膜したアルミニウム層(B面)13上に製膜された軟磁性下地層14(及び不図示の強度保持用金属層)の最表面に更に接着した(図7A参照)。
次いで、前記モールド剥離工程により、突き上げ剥離にて、アルミニウム層(B面)13からNiモールド(B面用)32を剥離した(図7B参照)。
【0102】
<多孔質層形成工程>
凹凸パターンが形成された、A面及びB面のアルミニウム層13それぞれに対し、前記転写実験1と同様の条件で、陽極酸化処理を行い、図9Aに示すように、ナノホール17Aを複数形成させて、多孔質層17を形成した。
【0103】
<磁性材料充填工程>
硫酸コバルト七水和物50g/l及びホウ酸20g/lの電解液中にて、50Hz、10Vの条件で、10分間にわたって電解析出を行い、図9Bに示すように、前記ナノホール内に、磁性材料18としてのコバルト(Co)を充填させ、該ナノホール17A内に強磁性層を形成した。
【0104】
<研磨工程>
前記磁性材料充填工程の後、ナノホールから溢れ出たコバルト(Co)を、CMP法により平坦化処理し、多孔質層の表面研磨を行った(図9B参照)。この研磨工程後の多孔質層(アルミナ層)の厚みは、約250nmであり、前記コバルト(Co)が充填されたナノホール(アルミナポア)のアスペクト比は、約7であった。
【0105】
その後、図9Cに示すように、RFスパッタ法により、カーボンを5nmの厚みに製膜して保護膜19を形成し、更に、潤滑剤として、パーフルオロアルキルポリエーテル(「AM3001」;ソルベイソレクシス社製)を、ディップ法により塗布し、磁気記録媒体(特性評価用磁気ディスクサンプル)を製造した。なお、該磁気記録媒体においては、基板15上に、接着剤層11を介して多孔質層17が形成されている。
【0106】
−磁気記録媒体の特性評価−
得られた特性評価用磁気ディスクサンプルの特性を以下のようにして評価した。
まず、周速8m/sで60nm浮上するピエゾ付ヘッドを、特性評価用磁気ディスクサンプルに対して周速6m/sで浮上させたときのピエゾ出力波形を図12に示す。図12より、ヘッドが浮上していることが確認された。
【0107】
次いで、特性評価用磁気ディスクサンプルを回転させて磁気ヘッドを浮上させ、400nmの周期の磁気信号の記録を行った後、磁気信号の再生を行った。得られた再生波形を図13に示す。図13より、特性評価用磁気ディスクサンプルは、磁気ディスクとして機能していることが判った。
【0108】
本発明の好ましい態様を付記すると、以下の通りである。
(付記1) 凸凹パターンを表面に有するモールドの該凸凹パターン上に金属層を製膜する金属層製膜工程と、製膜した金属層における前記モールドとは反対側に位置する面に、基板を接着剤により接着する基板接着工程と、該基板接着工程の後、前記モールドを前記金属層から剥離するモールド剥離工程と、ナノホール形成処理を行うことにより、前記モールドにおける凸凹パターンが転写されて前記金属層に形成された凹凸パターンを起点として、前記基板面に対し略直交する方向にナノホールが複数形成された多孔質層を形成する多孔質層形成工程と、該ナノホールの内部に磁性材料を充填する磁性材料充填工程と、を少なくとも含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
(付記2) モールドにおける凸凹パターンが、ランド部とグルーブ部とを交互に有してなる付記1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記3) 金属層が、アルミニウムからなる付記1から2のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記4) 製膜した金属層上に軟磁性下地層を形成する軟磁性下地層形成工程を含む付記1から3のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記5) 基板が、ガラス基板、アルミ基板及びシリコン基板から選択される少なくとも1種である付記1から4のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記6) 金属層製膜工程が、金属層の製膜前に、モールドにおける凸凹パターン上に剥離剤を塗布することを含む付記1から5のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記7) 剥離剤が、フッ素系表面処理剤及びシランカップリング剤から選択される少なくとも1種である付記6に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記8) 接着剤が、エポキシ樹脂系接着剤、低硬化収縮接着剤、変成シリコーン樹脂接着剤、及びシアノアクリレート系接着剤から選択される少なくとも1種である付記1から7のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記9) モールド剥離工程が、(前記磁気ディスク基板)を、突上機構を用いてモールド側から突上げることにより行われる付記1から8のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記10) 多孔質層形成工程の前であって、モールド剥離工程の後、基板における金属層との接着面と反対側に位置する面に対し、予め金属層製膜工程によりモールド上に製膜された金属層を接着し、該金属層から前記モールドを剥離することを更に含む付記1から9のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記11) 金属層製膜工程、基板接着工程、及びモールド剥離工程が、複数の基板に対して一括して行われる付記1から10のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記12) 磁性材料充填工程の後に、多孔質層の表面を研磨する研磨工程を含む付記1から11のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記13) 基板上に、接着剤層を介して、該基板面に対し略直交する方向にナノホールが複数形成された多孔質層を有し、該ナノホールの内部に磁性材料を有してなることを特徴とする磁気記録媒体。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の磁気記録媒体は、コンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されているハードディスク装置などに好適に使用することができる。
本発明の磁気記録媒体の製造方法は、生産性に優れ、低コストに、大容量で高密度記録が可能な磁気記録媒体を製造することができ、本発明の磁気記録媒体の製造に特に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1A】図1Aは、ナイフエッジによりモールドと金属層とを剥離した後の金属層表面の状態を示す写真である。
【図1B】図1Bは、ナイフエッジによりモールドと金属層とを剥離した後の金属層表面の状態を示す概略説明図である。
【図2A】図2Aは、突上機構を用いてモールドと金属層とを剥離した後の金属層表面の状態を示す写真である。
【図2B】図2Bは、突上機構を用いてモールドと金属層とを剥離した後の金属層表面の状態を示す概略説明図である。
【図3A】図3Aは、本発明の磁気記録媒体におけるモールド剥離工程で用いる突上機構の一例を示す概略説明図である。
【図3B】図3Bは、図3Aに示す突上機構を用いたモールド剥離工程の一例を示す概略説明図である。
【図4】図4は、本発明の磁気記録媒体の製造方法の一例における、基板と金属層との接着物を作製する方法の一例を示す概略工程図である。
【図5】図5は、本発明の磁気記録媒体の製造方法により両面記録用磁気記録媒体を製造する際、金属層製膜工程、基板接着工程、及びモールド剥離工程により作製された、A面用金属層と基板との接着物の一例を示す概略説明図である。
【図6A】図6Aは、本発明の磁気記録媒体の製造方法により両面記録用磁気記録媒体を製造する際に用いるB面用モールドの一例を示す概略説明図である。
【図6B】図6Bは、図6Aに示すB面用モールドを用いて行う金属層製膜工程の一例を示す概略説明図である。
【図7A】図7Aは、本発明の磁気記録媒体の製造方法により両面記録用磁気記録媒体を製造する際の基板接着工程(B面用金属層と基板との接着)の一例を示す概略説明図である。
【図7B】図7Bは、本発明の磁気記録媒体の製造方法により両面記録用磁気記録媒体を製造する際のモールド剥離工程(B面用モールドと金属層との剥離)の一例を示す概略説明図である。
【図8A】図8Aは、金属層製膜工程、基板接着工程及びモールド剥離工程を、複数の基板に対して一括して行う場合の概略工程図(その1)である。
【図8B】図8Bは、金属層製膜工程、基板接着工程及びモールド剥離工程を、複数の基板に対して一括して行う場合の概略工程図(その2)である。
【図8C】図8Cは、金属層製膜工程、基板接着工程及びモールド剥離工程を、複数の基板に対して一括して行う場合の概略工程図(その3)である。
【図8D】図8Dは、金属層製膜工程、基板接着工程及びモールド剥離工程を、複数の基板に対して一括して行う場合の概略工程図(その4)である。
【図8E】図8Eは、金属層製膜工程、基板接着工程及びモールド剥離工程を、複数の基板に対して一括して行う場合に得られた、複数個の金属層と基板との接着物を示す概略説明図である。
【図9A】図9Aは、本発明の磁気記録媒体の製造方法における多孔質層形成工程の一例を示す概略説明図である。
【図9B】図9Bは、本発明の磁気記録媒体の製造方法における磁性材料充填工程の一例を示す概略説明図である。
【図9C】図9Cは、本発明の磁気記録媒体としての両面磁気記録用磁気ディスクの一例を示す概略説明図である。
【図10】図10は、モールドにおけるパターンのアルミニウム層への転写実験及び磁気記録媒体の製造で用いた試作剥離治具を示す概略説明図であ。
【図11A】図11Aは、グルーブ/ランドピッチが90nmの凹凸パターンをナノホール形成用起点として用いて陽極酸化処理を行った場合のナノホールの配列態様(1列配列)を示す写真である。
【図11B】図11Bは、グルーブ/ランドピッチが150nmの凹凸パターンをナノホール形成用起点として用いて陽極酸化処理を行った場合のナノホールの配列態様(2列配列)を示す写真である。
【図12】図12は、本発明の磁気記録媒体の製造方法により製造した特性評価用磁気ディスクサンプルに対してピエゾ付ヘッドを浮上させたときのピエゾ出力波形を示す写真である。
【図13】図13は、本発明の磁気記録媒体の製造方法により製造した特性評価用磁気ディスクサンプルを用いて磁気信号の記録及び再生を行ったときの磁気信号の再生波形を示すグラフである。
【図14A】図14Aは、従来のハードインプリント法を示す概略説明図である。
【図14B】図14Bは、従来のソフトインプリント法を示す概略説明図である。
【図14C】図14Cは、陽極酸化アルミナナノホールにおけるパターン形成方法の一例を示す概略説明図である。
【図14D】図14Dは、陽極酸化アルミナナノホールにおけるパターン形成方法の他の例を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0111】
10・・・台座
11・・・接着剤(接着剤層)
12・・・モールド
13・・・アルミニウム層
14・・・軟磁性下地層
15・・・基板(磁気ディスク基板)
15A・・磁気ディスク基板の内径
16・・・接着物
17・・・多孔質層
17A・・ナノホール
18・・・磁性材料
19・・・保護膜
20・・・突上機構
21・・・突上ピン
22・・・バネ
23・・・加圧ピン
32・・・B面用モールド
40・・・台座
41・・・パターン付モールド
43・・・アルミニウム層
44・・・軟磁性下地層
45・・・基板
50・・・突上機構
51・・・突上ピン
53・・・加圧ピン
P1・・・凸凹パターン
P2・・・凹凸パターン
L・・・ランド部
G・・・グルーブ部
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されているハードディスク装置などに好適であり、大容量で高密度記録が可能な磁気記録媒体及びその効率的で低コストな製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IT産業等における技術革新に伴い、磁気記録媒体の大容量化・高速化・低コスト化の研究開発が盛んに行われてきている。該磁気記録媒体の大容量化・高速化・低コスト化のためには、該磁気記録媒体における記録密度の向上が必須であり、該磁気記録媒体における磁性膜を、連続膜とせずにドット、バー、ピラー等のパターン状とし、そのサイズをナノメートルスケールにすることにより複雑磁区ではなく単磁区構造としたパターンドメディアが提案されている。
前記パターンドメディアにおいては、サブミクロンオーダーのパターンを、磁気ディスクの全面に高精度かつ低コストで形成する必要がある。例えば、陽極酸化アルミナのナノホール中に磁性金属を充填してなるパターンドメディアの場合、陽極酸化を行う前に、ナノホールの形成起点となる窪みパターンをアルミニウム層の表面に形成すると、ナノホールの秩序配列が得られることが知られている(特許文献1参照)。
また、本発明者等は、前記窪みパターンではなく、溝パターンを形成することにより、磁気ディスクの円周方向にナノホールを一次元配列させることを実現している(特許文献2参照)。
【0003】
前記パターンの形成方法としては、例えば、EB描画による方法、各種リソグラフィ手法等により、磁気ディスク毎にパターンを形成する直描法と、描画パターンからモールド(型、スタンパと称することもある)を作製し、該モールドに形成されたパターンを転写するインプリント法とがあるが、後者の方が生産性に優れている。
ナノホールを利用した前記パターンドメディアの場合、前記インプリント法としては、例えば、図14A及び図14Bに示す二つの方法が挙げられる。
【0004】
図14Aに示す方法は、ハードインプリント法と称され、サブミクロンパターンを有するモールド110を、ハードディスク基板120上に形成したアルミニウム層130の表面に押し付けてパターンを転写する方法である(特許文献3参照)。しかし、この方法では、例えば、63nmピッチの三角格子パターンをアルミニウム層の表面に転写するのに、4ton/cm2の圧力を必要とし、パターンの微細化に伴い、より高圧力が必要となるため、大面積にパターンを形成するのが困難になると同時に、モールド耐久性の確保も困難である。
このようなハードインプリント法による問題を解決する方法として期待されているのが、図14Bに示すソフトインプリント法と称される方法である。この方法では、ハードディスク基板120上に形成したアルミニウム層130の表面に樹脂層140を形成し、該樹脂層140に対してモールド110を押し付けることによりパターンを転写した後、エッチングによりアルミニウム層130にパターンを形成する。しかし、この方法においても、アルミニウム層の全面に均一にパターンを転写することが困難であり、また、樹脂層に形成したパターンを残した状態にてアルミニウム層をエッチングする必要があるが、樹脂層は一般的にエッチング耐性が低く、前記ナノホールの形成用起点として充分に機能可能な程度の深さの凹部を形成することができないという問題があった。
更に、前記ハードインプリント法及び前記ソフトインプリント法ともに、前記アルミニウム層を製膜した後パターンを転写するが、該アルミニウム層の製膜に際し、スパッタ法や蒸着法を使用すると、膜の成長と共に、結晶粒が大きくなり、被転写面であるアルミニウム層の表面に凹凸が生じて、ナノスケールのパターンを忠実に転写するのが困難になるという本質的な問題がある。
【0005】
更に、陽極酸化アルミナナノホールにおける前記パターン形成の第三の方法として、図14C及び図14Dに示す方法が提案されている(特許文献4及び非特許文献1参照)。
図14Cに示す方法では、基板210上に微粒子220の規則配列を形成した後(a)、蒸着、スパッタ等の物理的製膜手法によりアルミニウム(板)200を微粒子規則配列上に析出させ(b)、次に基板210からアルミニウム板200を剥離後(c)、微粒子の溶解などの手法を用いることにより、アルミニウム板200から微粒子配列を除去し、表面に規則的な窪み230の配列が形成されたアルミニウム板200(d)を得る。
また、図14Dに示す方法では、まず、規則的に配列した表面凹凸構造310Aを有するモールド310を準備する(a)。この表面凹凸構造310Aは、例えば、電子ビームリソグラフィー、フォトリソグラフィーなどの微細加工法により形成可能である。モールド310の表面凹凸構造310A上に、アルミニウム320を蒸着、スパッタ等の手法によって析出させ、表面凹凸構造310Aをアルミニウム320の表面に転写する(b)。転写後に、モールド310を除去すると、アルミニウム320の表面には、前記表面凹凸構造310Aに対応した表面凹凸構造320Aが形成される(c)。
これらの方法によれば、アルミニウムの初期製膜面にパターンが転写されるので、製膜中の粒成長に伴う問題を回避することができるものの、厚み数ミクロンのアルミニウム膜しか形成することができず、磁気ディスクに応用することができないという問題がある。
したがって、上述したインプリント法における問題を改善し、パターン転写精度が高く、陽極酸化アルミナナノホールの形成用起点として機能し得るパターンを高精細に転写可能で、生産性に優れ、大容量で高密度記録が可能な磁気記録媒体の製造方法及びこれに関連する技術は未だ提供されていないのが現状である。
【0006】
【特許文献1】特開平10−121292号公報
【特許文献2】特開2005−305634号公報
【特許文献3】特開平10−96808号公報
【特許文献4】特開2005−76117号公報
【非特許文献1】Y.Matsui,K.Nishio,and H.Masuda, Small 2006.2,No.4,522−525
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、陽極酸化アルミナナノホールの形成用起点として機能し得るパターンを高精細に転写可能で、生産性に優れ、低コストな磁気記録媒体の製造方法、及びコンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されているハードディスク装置などに好適であり、大容量で高密度記録が可能な磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては、後述する付記に列挙した通りである。即ち、
本発明の磁気記録媒体の製造方法は、凸凹パターンを表面に有するモールドの該凸凹パターン上に金属層を製膜する金属層製膜工程と、製膜した金属層における前記モールドとは反対側に位置する面に、基板を接着剤により接着する基板接着工程と、該基板接着工程の後、前記モールドを前記金属層から剥離するモールド剥離工程と、ナノホール形成処理を行うことにより、前記モールドにおける凸凹パターンが転写されて前記金属層に形成された凹凸パターンを起点として、前記基板面に対し略直交する方向にナノホールが複数形成された多孔質層を形成する多孔質層形成工程と、該ナノホールの内部に磁性材料を充填する磁性材料充填工程と、を少なくとも含むことを特徴とする。
該磁気記録媒体の製造方法においては、前記金属層製膜工程において、前記凸凹パターンを表面に有するモールドの該凸凹パターン上に前記金属層が製膜される。前記基板接着工程において、製膜した前記金属層における前記モールドとは反対側に位置する面に、前記基板が前記接着剤により接着される。該基板接着工程の後、前記モールド剥離工程において、前記モールドが前記金属層から剥離される。すると、前記モールドにおける凸凹パターンが精度よく転写されて、前記金属層の表面に高精細な凹凸パターンが形成される。次いで、前記多孔質層形成工程において、前記ナノホール形成処理を行うことにより、前記モールドにおける凸凹パターンが転写されて前記金属層に形成された凹凸パターンを起点として、前記基板面に対し略直交する方向に前記ナノホールが複数形成された多孔質層が形成される。前記磁性材料充填工程において、前記ナノホールの内部に前記磁性材料が充填される。その結果、大容量で高密度記録が可能な磁気記録媒体が効率的に低コストで製造される。
【0009】
本発明の磁気記録媒体は、基板上に、接着剤層を介して、該基板面に対し略直交する方向にナノホールが複数形成された多孔質層を有し、該ナノホールの内部に磁性材料が充填されてなることを特徴とする。
該磁気記録媒体においては、前記基板上に、前記接着剤層を介して、前記ナノホールが複数形成された前記多孔質層を有してなり、該ナノホールは、前記モールドにおける凸凹パターンが精度よく転写されて形成された凹凸パターンを起点として形成され、かつ前記磁性材料が充填されているので、大容量で高密度記録が可能であり、極めて高品質である。このため、該磁気記録媒体は、コンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されているハードディスク装置などに好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、陽極酸化アルミナナノホールの形成用起点として機能し得るパターンを高精細に転写可能で、生産性に優れ、低コストな磁気記録媒体の製造方法、及びコンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されているハードディスク装置などに好適であり、大容量で高密度記録が可能な磁気記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(磁気記録媒体の製造方法)
本発明の磁気記録媒体の製造方法は、金属層製膜工程と、基板接着工程と、モールド剥離工程と、多孔質層形成工程と、磁性材料充填工程とを少なくとも含み、好ましくは、軟磁性下地層形成工程、研磨工程などを含み、更に必要に応じて適宜選択した、電極層形成工程、保護層形成工程等のその他の工程を含む。
【0012】
<金属層製膜工程>
前記金属層製膜工程は、凸凹パターンを有するモールドの該凸凹パターン上に金属層を製膜する工程である。
【0013】
−モールド−
前記モールドとしては、表面に凸凹パターンを有する限り、特に制限はなく、その材料(材質)などについては、目的に応じて適宜選択することができるが、半導体分野で微細構造作製用材料として最も広範囲に使用されている点で、シリコン、シリコン酸化膜、これらの組合せ等が好適に挙げられ、連続使用耐久性に優れる点で、炭化珪素等が好適に挙げられ、また、光ディスク成形等に使用されているNi等が好適に挙げられる。前記モールドは、複数回使用することができる。
【0014】
前記モールドにおける凸凹パターンとしては、形成するナノホールの配列パターンに対応した凸凹パターン、即ち、ナノホールの形成用起点として機能し得る凹部及び凸部にそれぞれ対応したランド部(凸部)及びグルーブ部(凹部)を有するのが好ましい。
前記ランド部の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ライン状であるのが好ましく、前記モールドにおける凸凹パターンとしては、ランド部とブルーブ部とを交互に有してなるラインパターンであるのが好ましい。
前記モールドにおける凸凹パターンが前記金属層に転写されると、該金属層の表面に、凹状ライン(凹部)及び凸状ライン(凸部)が交互に配列してなる凹凸パターン(ナノホール形成用起点)が形成され、ナノホール形成処理(例えば、陽極酸化処理)を行うことにより、ナノホール形成用起点における凹部にのみ、ナノホールを一定間隔で形成することができ、該ナノホールがライン状に一次元配列した多孔質層が得られる。
【0015】
前記ランド部(凸状ライン)の長さ方向と直交方向の断面形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、四角形状、V形状、半円形状などが挙げられる。
更に、前記ランド部(凸状ライン)は、同心円状又は螺旋状に配列しているのが好ましく、特に、ハードディスク用途の場合には、アクセスの容易性の観点から、同心円状が好ましく、ビデオディスク用途の場合には、連続再生の容易性の観点から、螺旋状が好ましい。前記ランド部が同心円状又は螺旋状に配列している場合、形成するナノホールを、同心円状又は螺旋状に配列させることができる。
【0016】
前記凸凹パターンにおけるランド部の高さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、5nm以上が好ましく、10〜100nmがより好ましい。
前記ランド部の高さが、5nm未満であると、前記ナノホールの形成用起点の確定が不充分となり易く、得られるナノホールの配列に乱れが生じることがある。
【0017】
−金属層−
前記金属層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属単体、その酸化物、窒化物等、合金などのいずれであってもよく、例えば、アルミナ(酸化アルミニウム)、アルミニウムなどが挙げられるが、これらの中でも、アルミニウムが特に好ましい。
前記金属層の製膜は、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、スパッタ法(スパッタリング)、蒸着法などにより好適に行うことができる。
前記金属層の製膜条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
なお、前記スパッタ法の場合、前記金属層の材料により形成されたターゲットを用いてスパッタリングを行うことができる。この場合に用いる前記ターゲットは、高純度であるのが好ましく、前記金属層の材料がアルミニウムである場合には、99.990%以上であるのが好ましい。
【0018】
前記金属層製膜工程が、前記金属層の製膜前に、前記モールドにおける凸凹パターン上に剥離剤を塗布することを含むのが好ましい。この場合、後述するモールド剥離工程において、前記モールドを前記金属層から容易に剥離することができる。
前記剥離剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、各種表面処理剤を使用することができるが、例えば、フッ素系表面処理剤、シランカップリング剤などが好適に挙げられる。
前記フッ素系表面処理剤としては、例えば、3M社製の「ベック EGC−1720」が好適に挙げられ、前記シランカップリング剤としては、例えば、ダイキン工業株式会社製の「オプツールDSX」が好適に挙げられる。
【0019】
以上の工程により、凸凹パターンを有する前記モールドの該凸凹パターン上に前記金属層が製膜される。
【0020】
<軟磁性下地層形成工程>
前記軟磁性下地層形成工程は、製膜した前記金属層上に軟磁性下地層を形成する工程である。
前記軟磁性下地層の形成は、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、スパッタ法(スパッタリング)、蒸着法等の真空成膜法、電着(電着法)などで形成してもよいし、あるいは無電解メッキで形成してもよい。
前記軟磁性下地層形成工程により、前記金属層上に所望の厚みの前記軟磁性下地層が形成される。
なお、前記軟磁性下地層上には、必要に応じて、更に強度保持用金属層を形成してもよい。
【0021】
<電極層形成工程>
前記電極層形成工程は、前記金属層と前記軟磁性下地層との間に電極層を形成する工程である。
前記電極層の形成は、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、スパッタ法(スパッタリング)、蒸着法などにより好適に行うことができる。該電極層の形成条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記電極層形成工程により形成された前記電極層は、軟磁性層、非磁性層及び強磁性層の少なくともいずれかを電着により形成する際の電極として使用される。
【0022】
<基板接着工程>
前記基板接着工程は、製膜した前記金属層における前記モールドとは反対側に位置する面(前記軟磁性下地層、前記強度保持用金属層を形成する場合には、これらの層のうち、前記モールドとは反対側に位置する最表面)に、基板を接着剤により接着する工程である。
【0023】
−基板−
前記基板としては、その形状、構造、大きさ、材質等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記形状としては、前記磁気記録媒体がハードディスク等の磁気ディスクである場合には、円板状(ディスク状)であるのが好ましく、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記材質としては、ガラス、アルミニウム、シリコン、石英などが挙げられる。
前記基板の具体例としては、例えば、磁気ディスク基板としてのガラス基板、アルミ基板、シリコン基板などが好適に挙げられる。
前記基板は、適宜製造したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
【0024】
−接着剤−
前記接着剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、接着強度が大きい点で、エポキシ樹脂系接着剤が好ましく、硬化収縮率が小さい点で、低硬化収縮接着剤が好ましく、熱膨張率の異なるもの同士の接着に優れる点で、変成シリコーン樹脂接着剤が好ましく、短時間硬化が可能な点で、シアノアクリレート系接着剤が好ましい。これらの接着剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記エポキシ樹脂系接着剤としては、2液混合型が一般的であり、例えば、コニシ(株)社製の「ボンド ホーロー 補修用ホワイト」及び「ボンドEセット」、セメダイン社製の「EP007」、大日本インキ化学工業(株)社製の「EPICLON EXA−4850 シリーズ」などが好適に挙げられる。
前記低硬化収縮接着剤としては、柔軟性及び強靭性を有し、かつ硬化収縮率が0.6%と小さい点で、TETA(TriEhylene TetraAmine)を硬化剤に用いた、大日本インキ化学工業(株)社製の「EPICLON EXA−4850―150」などが好適に挙げられる。
前記変成シリコーン樹脂接着剤としては、例えば、コニシ(株)社製の「ボンドMOS7」、セメダイン社製の「PMシリーズ」が好適に挙げられる。
前記シアノアクリレート系接着剤としては、例えば、コニシ(株)社製の「ボンドアロンアルファ プロ用耐衝撃」が好適に挙げられる。
【0026】
以上の工程により、前記金属層における前記モールドとは反対側に位置する面に、前記基板が前記接着剤により接着される。その結果、前記モールドにおける凸凹パターン上に、前記金属層(前記軟磁性下地層及び前記強度保持用金属層が形成されている場合にはこれらの層を含む)及び前記基板が、この順に積層される。
【0027】
<モールド剥離工程>
前記モールド剥離工程は、前記基板接着工程の後、前記モールドを前記金属層から剥離する工程である。
【0028】
前記モールドと前記金属層との剥離の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記モールドと前記金属層との界面端に、ナイフのエッジで切れ目を入れて剥離する方法が挙げられる。しかし、前記モールドとしては、Niスタンパが一般的であり、サブミクロン構造を有するニッケルとアルミニウム(前記金属層)との界面の剥離は、実際には非常に困難である。即ち、ナイフのエッジによる剥離では、図1A及び図1Bに示すように、剥離時の不均一な応力により、アルミニウム層(前記金属層)の表面に皺が発生してしまうことがある。例えば、特開2005−76117号公報には、実施例として、粒子配列界面の剥離が開示されているが、粒子配列界面からの剥離は容易であるが、前記モールドと前記金属層との剥離は、極めて困難であると推認される。
【0029】
このため、前記モールド剥離工程は、中心に開口を有する前記基板の内周縁を、突上機構を用いて前記モールド側から突上げることにより行われるのが好ましい。この場合、図2A及び図2Bに示すように、剥離時に皺が発生することなく、容易に剥離される。
【0030】
−突上機構−
前記突上機構としては、中心に開口を有する前記基板(前記磁気ディスク基板)の内周縁を、前記モールド側から突上げることにより、前記金属層と前記モールドとを剥離する機能を有する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、図3Aに示すように、突上機構20は、開口を有する基板(磁気ディスク基板)15の内周縁15Aに当接して基板15を突き上げる突上ピン21と、バネ22と、突上ピン21を押し上げる加圧ピン23とを有してなり、バネ22により、突上ピン21が上昇可能に加圧ピン23に付勢されているのが好ましい。そして、図3Bに示すように、加圧ピン23が、手動又は自動的に加圧されると、バネ22により加圧ピン23に付勢された突上ピン21が押し上げられて上昇し、基板(磁気ディスク基板)15の内周縁15Aに当接して、モールド12側から基板15を押し上げるようになっている。その結果、金属層13がモールド12から剥離される。
なお、突き上げによる剥離の方法としては、光ディスクのフォトポリマー法による複製において、スタンパ(モールド)上にフォトポリマーで接着固化したガラス基板を剥離する方法が提案されているが(再公表特許WO2003/083854参照)、この方法は、フォトポリマーとスタンパとの界面での剥離が対象となっており、本発明の前記磁気記録媒体の製造方法における前記モールド剥離工程とは異なり、前記金属層と前記モールドとの界面(金属−金属界面)での剥離については何ら開示されていない。
【0031】
ここで、前記金属層製膜工程、前記基板接着工程及び前記モールド剥離工程により、前記基板と前記金属層(アルミニウム層)との接着物を作製する方法の一例を、図面を用いて説明する。
まず、図4(A)に示すように、例えば、SUS製の台座10上に、接着剤11を用いて、例えば、Ni製のモールド12を接着固定する。なお、モールド12は、その表面に、ランド部Lとグルーブ部Gとが交互に配列してなる、ライン状の凸凹パターンP1を有している。
次いで、モールド12における凸凹パターンP1上に、不図示の剥離剤を塗布した後、図4(B)に示すように、アルミニウムをターゲットとし、スパッタリングにより金属層(アルミニウム層)13を製膜する。更に、垂直ヘッドによる書込みを容易にするために、アルミニウム層13上に軟磁性下地層14(及び不図示の強度保持用金属層)を製膜する(前記金属層製膜工程)。この状態にて、図4(C)に示すように、更に接着剤11を塗布した後、基板(例えば、磁気ディスク基板)15を接着する(前記基板接着工程)。
次いで、図4(D)に示すように、モールド12をアルミニウム層13から剥離すると、基板15とアルミニウム層13と軟磁性下地層14(及び不図示の強度保持用金属層)との接着物16が得られる(前記モールド剥離工程)。また、アルミニウム層13の表面には、モールド12における凸凹パターンP1が精度よく転写されて、ナノホールの形成用起点として機能し得る、凹凸パターンP2が形成される。
【0032】
また、以上の工程により、表面に凹凸パターンが形成された前記金属層と前記基板との接着物を作製した後(後述する多孔質層形成工程の前であって、前記モールド剥離工程の後)、該基板における該金属層との接着面と反対側に位置する面に対し、予め前記金属層製膜工程により前記モールド上に製膜した金属層を更に接着し、該金属層から前記モールドを剥離してもよい。この場合、前記基板の両面使用が可能となり、両面記録が可能な磁気ディスクを作製することができる。
【0033】
ここで、前記基板を両面使用する場合の、前記金属層製膜工程、前記基板接着工程、及び前記モールド剥離工程の工程順序を、以下に図面を用いて説明する。
まず、図4(A)〜図4(D)に示すように、A面用モールド12を用いて、前記金属層製膜工程、前記基板接着工程、及び前記モールド剥離工程により、図5に示す、基板15とアルミニウム層13と軟磁性下地層14(及び不図示の強度保持用金属層)との接着物16を作製する。なお、基板15は、接着剤11により(接着剤層11を介して)、軟磁性下地層14上の不図示の強度保持用金属層上に固着されている。
【0034】
一方、B面用モールドを用いて、前記金属層製膜工程により該B面用モールド上に金属層を製膜したものを予め作製しておく。即ち、図6Aに示すように、SUS製の台座10上に、接着剤11を用いて、B面用モールド32を接着固定する。なお、B面用モールド32は、その表面に、ランド部Lとグルーブ部Gとが交互に配列してなる、ライン状の凸凹パターンP1を有している。次いで、B面用モールド32における凸凹パターンP1上に、不図示の剥離剤を塗布した後、図6Bに示すように、アルミニウムをターゲットとし、スパッタリングにより金属層(アルミニウム層)13を製膜する。更に垂直ヘッドによる書込みを容易にするために、アルミニウム層13上に軟磁性下地層14(及び不図示の強度保持用金属層)を製膜する(前記金属層製膜工程)。
【0035】
そして、図5に示す接着物16の基板15におけるアルミニウム層13との接着面と反対側に位置する面を、図6Bに示す、予めB面用モールド32上に製膜したアルミニウム層13上に製膜された軟磁性下地層14(及び不図示の強度保持用金属層)の最表面に更に接着する(前記基板接着工程、図7A参照)。
次いで、B面用モールド32上に製膜されたアルミニウム層13からB面用モールド32を剥離すると、アルミニウム層13の表面には、B面用モールド32における凸凹パターンP1が精度よく転写されて、ナノホールの形成用起点として機能し得る、凹凸パターンP2が形成される(前記モールド剥離工程、図7B参照)。
以上により、基板15の両面(表裏)に凹凸パターンP2を有するアルミニウム層13が形成される。その後、これを用いて、後述する多孔質層形成工程及び磁性材料充填工程等を行うと、両面使用が可能な磁気ディスクを作製することができる。
【0036】
更に、前記基板の片面使用及び両面使用のいずれの使用態様においても、前記金属層製膜工程、前記基板接着工程、及び前記モールド剥離工程は、複数の基板に対して一括して行われるのが好ましい。この場合、前記基板と前記金属層との接着物を、同時に複数個作製することができ、量産性が向上する。
ここで、前記基板を片面使用する場合の一括処理の工程を、以下に図面を用いて説明する。
まず、図8Aに示すように、台座40上に、例えば、ニッケル電鋳により複数製造した、パターン付モールド41を、複数枚接着固定した後、図8Bに示すように、パターン付モールド41に対し、一括してアルミニウム層43及び軟磁性下地層44を製膜する(前記金属層製膜工程)。次いで、図8Cに示すように、軟磁性下地層44上に接着剤11を用いて基板45をそれぞれ接着固定した後(前記基板接着工程)、図8Dに示すように、前記突上機構を用いて、アルミニウム層43からパターン付モールド41をそれぞれ一括して剥離する(前記モールド剥離工程)。その結果、図8Eに示すように、基板45とアルミニウム層43(及び軟磁性下地層44)との接着物が、同時に複数個得られ、スループットの向上が実現される。
【0037】
<多孔質層形成工程>
前記多孔質層形成工程は、ナノホール形成処理を行うことにより、前記モールドにおける凸凹パターンが転写されて前記金属層に形成された凹凸パターンを起点として、前記基板面に対し略直交する方向にナノホールが複数形成された多孔質層を形成する工程である。
【0038】
前記ナノホール形成処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、陽極酸化処理、エッチング処理などが好適に挙げられる。これらの中でも、前記金属層に前記基板面に略直交する方向に多数のナノホールを略等間隔にかつ均等に配列形成することができる等の点で、陽極酸化処理が特に好ましい。
【0039】
前記陽極酸化処理の場合、硫酸、リン酸あるいはシュウ酸の水溶液中で、前記金属層に接する電極を陽極として電気分解エッチングさせることにより行うことができる。該電極としては、前記軟磁性下地層、前記電極層などが挙げられる。
【0040】
また、前記陽極酸化処理における電圧としては、特に制限はないが、次式、ナノホールの間隔(ピッチ)(nm)÷A(nm/V) (ただし、A=1.0〜4.0)、で与えられる値の電圧を選択するのが好ましい。
前記電圧が、前記式で与えられる範囲から選択される値であると、前記モールドにおける凸凹パターンが転写されて形成された前記凹凸パターンにおける凹状ラインに前記ナノホールを配列させることができる等の点で有利である。
【0041】
前記ナノホール形成処理により形成されるナノホール(細孔)は、前記基板の形状がディスク状である場合には、該ディスク状の基板の一の露出面(板面)に対し、略直交する方向に形成される。
前記ナノホールとしては、前記ナノホール構造体を貫通して孔として形成されていてもよいし、前記多孔質層を貫通せず穴(窪み)として形成されていてもよいが、例えば、前記多孔質層を前記磁気記録媒体として使用する場合には、前記ナノホールが前記多孔質層を貫通する貫通孔として形成されているのが好ましい。
【0042】
前記ナノホールの配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ハードディスク、ビデオディスク等の前記磁気記録媒体においては、同心円状及び螺旋状の少なくともいずれかに配列しているのが好ましい。特に、ハードディスク用途の場合にはアクセスの容易性の観点から同心円状が好ましく、ビデオディスク用途の場合には連続再生の容易性の観点から螺旋状が好ましい。
また、隣接するナノホール列おけるナノホールは、半径方向に配列しているのが好ましい。この場合、前記磁気記録媒体は、磁気ヘッドの書込み電流を増やすことなく高密度記録・高速記録が可能で大容量であり、オーバーライト特性に優れ、均一な特性を有し、特にクロスリードやクロスライト等の問題がなく、極めて高品質である。
【0043】
前記ナノホールにおける開口径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、強磁性層を単磁区とすることができる大きさであるのが好ましく、具体的には、100nm以下が好ましく、高密度記録を実現可能な点で、30nm以下が好ましく、5〜20nmがより好ましい。
前記ナノホールにおける開口径が、100nmを超えると、前記多孔質層を適用した磁気記録媒体が単磁区構造にならないことがある。
【0044】
前記ナノホールにおける深さと開口径とのアスペクト比(深さ/開口径)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高アスペクト比であると、形状異方性が大きくなり、磁気記録媒体の保磁力を向上させることができる点で好ましく、例えば、前記多孔質層をハードディスク等の磁気記録媒体に適用する場合、2以上であるのが好ましく、3〜15であるのがより好ましい。
前記アスペクト比が、2未満であると、磁気記録媒体の保磁力を十分に向上させることができないことがある。
【0045】
前記多孔質層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、磁気記録媒体に適用する場合、500nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましく、20〜200nmが特に好ましい。
前記多孔質層の厚みが、500nmを超えると、前記磁気記録媒体に前記軟磁性下地層を設けたとしても高密度記録を行うことができないことがあり、該多孔質層の研磨が必要になり、この場合、時間を要し高コストであり、品質劣化の原因となることがある。
【0046】
なお、前記陽極酸化処理における電解液の種類、濃度、温度、時間等としては、特に制限はなく、形成するナノホールの数、大きさ、アスペクト比等に応じて適宜選択することができる。例えば、前記電解液の種類としては、隣接する前記ナノホール列の間隔(ピッチ)が、150〜500nmである場合は、希釈リン酸溶液が好適に挙げられ、80〜200nmである場合は、希釈蓚酸溶液が好適に挙げられ、10〜150nmである場合は、希釈硫酸溶液が好適に挙げられる。いずれの場合も、前記ナノホールのアスペクト比の調整は、陽極酸化処理後にリン酸溶液に浸漬させて前記ナノホール(アルミナポア)の直径を増加させることにより行うことができる。
【0047】
前記陽極酸化処理により前記多孔質層形成工程を行った場合、該金属層にナノホールを多数形成することができるが、該ナノホールの下部にバリア層が形成されてしまうことがあるが、該バリア層は、リン酸等の公知のエッチング液を用いて公知のエッチング処理を行うことにより、容易に除去することができる。以上により、前記金属層に、前記軟磁性下地層又は前記基板を露出させる前記ナノホールを前記基板面に略直交する方向に多数形成することができる。
前記多孔質層形成工程により、前記基板上又は前記軟磁性下地層上に前記多孔質層が形成される。
【0048】
<磁性材料充填工程>
前記磁性材料充填工程は、前記多孔質層に形成された前記ナノホールの内部に磁性材料を充填する工程である。
前記磁性材料充填工程は、強磁性材料を前記ナノホールに充填する強磁性層形成工程を少なくとも含んでいればよく、更に必要に応じて、軟磁性材料を前記ナノホールに充填する軟磁性層形成工程、強磁性層と軟磁性層との間に非磁性層(中間層)を形成する非磁性層形成工程などを含んでいてもよい。
【0049】
−強磁性層形成工程−
前記強磁性層形成工程は、前記ナノホールの内部(前記軟磁性層や前記非磁性層が形成されている場合には、前記ナノホール内のこれらの層上に)に強磁性層を形成する工程である。
前記強磁性層の形成は、Fe、Co、Ni、FeCo、FeNi、CoNi、CoNiP、FePt、CoPt、NiPt等の強磁性層の材料を、電着等により前記ナノホールの内部に堆積乃至充填させることにより行うことができる。
前記電着の方法、条件等としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記軟磁性下地層又は前記電極層(シード層)を電極として、前記強磁性層の材料を含む溶液を1種又は2種以上用い、電圧を印加させることにより、前記ナノホール内に析出乃至堆積させる方法、などが好適に挙げられる。
前記強磁性層形成工程により、前記多孔質層におけるナノホールの内部に前記強磁性層が形成される。
【0050】
−軟磁性層形成工程−
前記軟磁性層形成工程は、前記ナノホールの内部に軟磁性層を形成する工程である。
前記軟磁性層の形成は、NiFe、FeSiAl、FeC、FeCoB、FeCoNiB、CoZrNb等の軟磁性層の材料を、電着等により前記ナノホールの内部に堆積乃至充填させることにより行うことができる。
前記電着の方法、条件等としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記軟磁性下地層又は前記電極層を電極として、前記軟磁性層の材料を含む溶液を1種又は2種以上用い、電圧を印加させることにより、前記電極上に析出乃至堆積させる方法、などが好適に挙げられる。
前記軟磁性層形成工程により、前記多孔質層におけるナノホールの内部であって、前記基板上、前記軟磁性下地層上又は前記電極層上に前記軟磁性層が形成される。
【0051】
−非磁性層形成工程−
前記非磁性層形成工程は、前記軟磁性層上に非磁性層を形成する工程である。
前記非磁性層の形成は、非磁性層の材料を電着等により前記ナノホールの内部に形成した前記軟磁性層上に堆積乃至充填させることにより行うことができる。
前記非磁性層の材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、Cu、Al、Cr、Pt、W、Nb、Ru、Ta及びTiから選択される少なくとも1種、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記電着の方法、条件等としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記軟磁性下地層又は前記電極層を電極として、前記非磁性層の材料を含む溶液を1種又は2種以上用い、電圧を印加させることにより、ナノホール内に析出乃至堆積させる方法、などが好適に挙げられる。
前記非磁性層形成工程により、前記多孔質層におけるナノホールの内部であって、前記軟磁性層上等に前記非磁性層が形成される。
【0052】
<研磨工程>
前記研磨工程は、前記磁性材料充填工程の後、前記多孔質層の表面を研磨し、平坦化する工程である。
前記研磨工程における研磨の方法としては、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができ、例えば、CMP(化学機械研磨)処理などが挙げられる。
前記研磨工程により、前記磁気記録媒体の表面が平滑化されると、垂直磁気記録ヘッド等の磁気ヘッドの安定浮上が可能となり、低浮上化による高密度記録と信頼性確保の双方を達成することができる点で有利である。
【0053】
以下に、本発明の磁気記録媒体の製造方法の一例として、前記基板を両面使用する場合について、図面を用いて説明する。
上述の通り、図4(A)〜図4(D)に示すように、A面用モールド12を用いて、前記金属層製膜工程、前記基板接着工程、及び前記モールド剥離工程により、図5に示す、基板15とアルミニウム層13と軟磁性下地層14(及び不図示の強度保持用金属層)との接着物16を作製する。
一方、図6A〜図6Bに示すように、B面用モールド32を用いて、前記金属層製膜工程により該B面用モールド32上にアルミニウム層13、軟磁性下地層14(及び不図示の強度保持用金属層)をこの順に製膜したものを予め作製しておく。
そして、図5に示す接着物16の基板15におけるアルミニウム層13との接着面と反対側に位置する面を、図6Bに示す、予めB面用モールド32上に製膜したアルミニウム層13上に製膜された軟磁性下地層14(及び不図示の強度保持用金属層)の最表面に更に接着する(図7A参照)。
次いで、前記モールド剥離工程により、B面用モールド32上に製膜されたアルミニウム層13からB面用モールド32を剥離する(図7B参照)。
【0054】
以上により作製した、基板15の両面(表裏)に凹凸パターンP2を有するアルミニウム層13に対し、ナノホール形成処理(陽極酸化処理)を行うことにより、凹凸パターンP2を起点として、基板15面に対し略直交する方向にナノホール17Aを複数形成させて多孔質層17を形成する(多孔質層形成工程、図9A参照)。
次いで、磁性材料充填工程により、電気めっきを行い、ナノホール17Aの内部に磁性材料18を充填する(図9B参照)。
【0055】
その後、ナノホール17A内に磁性材料18が充填された多孔質層17の表面を、前記研磨工程により平滑化した後、保護膜19を形成し、潤滑剤を塗布すると、本発明の磁気記録媒体の一例としての両面記録用磁気ディスクが製造される(図9C参照)。
【0056】
本発明の磁気記録媒体の製造方法によれば、パターン転写精度が高く、陽極酸化アルミナナノホールの形成用起点として機能し得るパターンを高精細に転写可能で、生産性に優れ、低コストで、大容量で高密度記録が可能な磁気記録媒体を製造することができる。このため、本発明の磁気記録媒体の製造方法によれば、以下に説明する本発明の磁気記録媒体を効率よく低コストで製造することができる。
【0057】
(磁気記録媒体)
本発明の磁気記録媒体は、基板上に、接着剤層を介して、多孔質層を有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の層を有してなる。
【0058】
−基板−
前記基板としては、その形状、構造、大きさ、材質等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、その詳細については、上述した通りであり、例えば、ガラス基板、アルミ基板、シリコン基板などが好適に挙げられる。
【0059】
−接着剤層−
前記接着剤層は、前記基板と前記多孔質層とを接着する機能を有する。
前記接着剤層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、上述した接着剤が好適に挙げられ、具体的には、上記エポキシ樹脂系接着剤、上記低硬化収縮接着剤、上記変成シリコーン樹脂接着剤、上記シアノアクリレート系接着剤などが好ましい。
【0060】
−多孔質層−
前記多孔質層としては、前記基板面に対し略直交する方向にナノホールが複数形成されたものが挙げられ、その詳細は、上述した通りである。
前記多孔質層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、500nm以下が好ましく、5〜200nmがより好ましい。
前記多孔質層の厚みが、500nmを超えると、ナノホール内への磁性材料の充填が困難になることがある。
【0061】
前記多孔質層における前記ナノホールは、該多孔質層を貫通して貫通孔として形成されていてもよいし、貫通せず穴として形成されていてもよいが、該ナノホールに磁性材料を充填して磁性層を形成し、更にその下方にも磁性層を形成する場合等を考慮すると、該ナノホールが貫通孔として形成されているのが好ましい。
【0062】
前記多孔質層は、前記ナノホールが規則的に配列してなるナノホール列を一定間隔で有しているのが好ましい。
隣接する前記ナノホール列の間隔としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記磁気記録媒体がハードディスクに適当する場合、5〜500nmが好ましく、10〜200nmがより好ましい。
前記間隔が、5nm未満であると、ナノホールの形成が困難であり、500nmを超えると、ナノホールの規則的配列が困難となることがある。
【0063】
隣接するナノホール列の間隔と、ナノホール列の幅との比(間隔/幅)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、1.1〜1.9が好ましく、1.2〜1.8がより好ましい。
前記比(間隔/幅)が、1.1未満であると、隣接するナノホール同士が融合してしまい、独立したナノホールが得られないことがあり、1.9を超えると、陽極酸化処理の際にグルーブ部以外の部分にもナノホールが形成されてしまうことがある。
【0064】
前記ナノホール列の幅としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記磁気記録媒体がハードディスクに適当する場合、5〜450nmが好ましく、8〜200nmがより好ましい。
前記ナノホール列の幅が、5nm未満であると、ナノホールの形成が困難であり、450nmを超えると、ナノホールの規則的配列が困難となることがある。
【0065】
また、前記基板がディスク状である場合には、前記ナノホール列が、同心円状及び螺旋状の少なくともいずれかに位置しているのが好ましく、特に、ハードディスク用途の場合には、アクセスの容易性の観点から同心円状が好適であり、ビデオディスク用途の場合には、連続再生の容易性の観点から螺旋状が好適である。
更に、隣接するナノホール列におけるナノホールは、半径方向に配列しているのが好ましい。この場合、磁気記録媒体は、磁気ヘッドの書込み電流を増やすことなく、高密度記録・高速記録が可能で大容量であり、オーバーライト特性に優れ、均一な特性を有し、特にクロスリードやクロスライト等の問題がなく、極めて高品質である。
【0066】
前記ナノホールにおける開口径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記磁気記録媒体がハードディスクに適当する場合、その強磁性層を単磁区とすることができる大きさが好ましく、具体的には、200nm以下が好ましく、5〜100nmがより好ましい。
前記ナノホールにおける開口径が、200nmを超えると、ハードディスクが単磁区構造にならないことがある。
【0067】
前記ナノホールにおける深さと開口径とのアスペクト比(深さ/開口径)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高アスペクト比であると、形状異方性が大きくなり、磁気記録媒体の保磁力を向上させることができる点で好ましく、例えば、2以上が好ましく、3〜15がより好ましい。
前記アスペクト比が、2未満であると、磁気記録媒体の保磁力を充分に向上させることができないことがある。
【0068】
前記ナノホールの内部には、磁性材料が充填されて磁性層が形成されているのが好ましい。
前記磁性層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、強磁性層、軟磁性層、などが挙げられる。本発明においては、前記ナノホールの内部に、前記強磁性層が少なくとも形成されていればよく、更に必要に応じて、前記軟磁性層が、前記基板と前記強磁性層との間に形成されていてもよく、更に前記強磁性層及び前記軟磁性層の間に非磁性層(中間層)が形成されていてもよい。
【0069】
−−強磁性層−−
前記強磁性層は、前記磁気記録媒体において記録層として機能する。
前記強磁性層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、Fe、Co、Ni、FeCo、FeNi、CoNi、CoNiP、FePt、CoPt及びNiPtから選択される少なくとも1種、などが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記強磁性層は、前記材料により垂直磁化膜として形成されていれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、Ll0規則構造を有し、C軸が前記基板と垂直方向に配向しているもの、fcc構造あるいはbcc構造を有し、C軸が前記基板と垂直方向に配列しているもの、などが好適に挙げられる。
【0070】
前記強磁性層の厚みとしては、本発明の効果を害さない限り特に制限はなく、記録時に使用される線記録密度等に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)前記軟磁性層の厚み以下である態様、(2)記録時に使用される線記録密度で決まる最小ビット長の1/3倍〜3倍である態様、(3)前記軟磁性層及び前記軟磁性下地層の厚みの合計以下である態様、などが好ましく、例えば、通常5〜100nm程度が好ましく、5〜50nmがより好ましく、1Tb/in2をターゲットにした線記録密度1,500kBPIで磁気記録を行う場合には、50nm以下(20nm程度)であるのが好ましい。
なお、ここでの前記「強磁性層」の厚みは、該強磁性層が、積層構造、又は複数層に分割された構造(例えば、非磁性層等の中間層により分割され連続層になっていない構造)を有する場合には、各強磁性層の厚みの合計を意味する。また、前記「軟磁性層」の厚みは、該軟磁性層が、積層構造、又は複数層に分割された構造(例えば、非磁性層等の中間層により分割され連続層になっていない構造)を有する場合には、各軟磁性層の厚みの合計を意味する。また、前記「軟磁性層及び軟磁性下地層の厚みの合計」は、該軟磁性層及び該軟磁性下地層の少なくともいずれかが、積層構造、又は複数層に分割された構造(例えば、非磁性層等の中間層により分割され連続層になっていない構造)を有する場合には、各軟磁性層及び軟磁性下地層の厚みの合計を意味する。
【0071】
前記強磁性層及び前記軟磁性層を有する磁気記録媒体の場合、磁気記録の際に使用する単磁極ヘッドと前記軟磁性層との間の距離を、前記多孔質層の厚みよりも短く、該強磁性層の厚みと略等しくすることができ、前記多孔質層の厚みに拘らず該強磁性層の厚みだけで、前記単磁極ヘッドからの磁束の集中、使用される記録密度での最適な磁気記録再生特性などが制御可能となる。その結果、該磁気記録媒体においては、従来の磁気記録媒体に比し、書込み効率が大幅に向上し、書込み電流が小さくて済み、オーバーライト特性を著しく向上させることができる。
前記強磁性層の形成は、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、電着(電着法)等により行うことができる。
【0072】
−−軟磁性層−−
前記軟磁性層としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、NiFe、FeSiAl、FeC、FeCoB、FeCoNiB及びCoZrNbから選択される少なくとも1種、などが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
前記軟磁性層の厚みとしては、本発明の効果を害さない限り特に制限はなく、前記多孔質層における前記ナノホールの深さ、前記強磁性層の厚み等に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)前記強磁性層の厚み超である態様、(2)前記軟磁性下地層の厚みとの合計が前記強磁性層の厚み超である態様、などが挙げられる。
【0074】
前記軟磁性層は、磁気記録に使用する磁気ヘッドからの磁束を効果的に前記強磁性層に収束させることができ、該磁気ヘッドの磁界の垂直成分を大きくさせることができる点で有利である。また、前記軟磁性層は、軟磁性下地膜とともに前記磁気ヘッドと共に該磁気ヘッドから入力させる記録磁界の磁気回路を形成可能であるのが好ましい。
前記軟磁性層としては、前記基板面に略直交する方向に磁化容易軸を有しているのが好ましい。この場合、垂直磁気記録用ヘッドで記録を行うと、該垂直磁気記録用ヘッドからの磁束の集中、使用される記録密度での最適な磁気記録再生特性などが制御可能となり、磁束が前記強磁性層に集中する結果、従来の磁気記録装置に比し、書込み効率が大幅に向上し、書込み電流が小さくて済み、オーバーライト特性が著しく向上する。
前記軟磁性層の形成は、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、電着(電着法)等により行うことができる。
【0075】
−−非磁性層−−
前記多孔質層における前記ナノホール中には、前記強磁性層と前記軟磁性層との間に非磁性層(中間層)を有していてもよい。該非磁性層(中間層)が存在すると、前記強磁性層と前記軟磁性層との間の交換結合力の作用を弱める結果、予想とは異なる磁気記録の再生特性となってしまう場合に、それを所望の再生特性に制御することができる。
前記非磁性層の材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、Cu、Al、Cr、Pt、W、Nb、Ru、Ta及びTiから選択される少なくとも1種、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0076】
前記非磁性層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記非磁性層の形成は、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、電着(電着法)等により行うことができる。
【0077】
−軟磁性下地層−
前記磁気記録媒体においては、前記基板と前記多孔質層との間に、軟磁性下地層を有していてもよい。
前記軟磁性下地層の材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、前記軟磁性層の材料として上述したものが好適に挙げられる。これらの材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、また、前記軟磁性層の材料と互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0078】
前記軟磁性下地層は、前記基板面の面内方向に磁化容易軸を有しているのが好ましい。この場合、磁気記録に使用する磁気ヘッドからの磁束が効果的に閉じた磁気回路を形成し、該磁気ヘッドの磁界の垂直成分を大きくさせることができる。該軟磁性下地層は、ビットサイズ(前記ナノホールの開口径)が100nm以下の単磁区記録においても有効である。
前記軟磁性下地層の形成は、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、電着(電着法)や無電界メッキ等により行うことができる。
【0079】
−その他の層−
前記その他の層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、電極層、保護層、などが挙げられる。
【0080】
前記電極層は、磁性層(前記強磁性層及び前記軟磁性層)を電着等により形成する際の電極として機能する層であり、一般に、前記基板上であって前記強磁性層の下方に設けられる。なお、前記磁性層を電着により形成する場合、該電極層を電極として使用してもよいが、前記軟磁性下地層等を電極として使用してもよい。
前記電極層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Cr、Co、Pt、Cu、Ir、Rh、これらの合金、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、該電極層は、これらの材料以外に、W、Nb、Ti、Ta、Si、Oなどを更に含有していてもよい。
【0081】
前記電極層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。該電極層は、1層のみ設けられていてもよいし、2層以上設けられていてもよい。
前記電極層の形成は、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、スパッタ法、蒸着法等により行うことができる。
【0082】
前記保護層は、前記強磁性層を保護する機能を有する層であり、前記強磁性層の表面乃至上方に設けられる。該保護層は、1層のみ設けられていてもよいし、2層以上設けられていてもよく、また、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
前記保護層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、などが挙げられる。
【0083】
前記保護層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記保護層の形成は、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法に従って行うことができるが、例えば、スパッタ法、プラズマCVD法、塗布法、などにより行うことができる。
【0084】
本発明の磁気記録媒体は、磁気ヘッドを用いた各種の磁気記録に使用することができるが、単磁極ヘッドによる磁気記録に好適に使用することができる。
本発明の磁気記録媒体は、高密度記録・高速記録が可能で大容量であり、高品質である。このため、該磁気記録媒体は、各種の磁気記録媒体として設計し使用することができ、例えば、コンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されているハードディスク装置、などに設計し使用することができ、ハードディスク等の磁気ディスクに特に好適に設計し使用することができる。
【実施例】
【0085】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0086】
−モールドにおけるパターンのアルミニウム層への転写実験1−
<金属層製膜工程>
1インチHDD用ガラス基板と同じ形状を有し、その表面にランド部及びグルーブ部のピッチが90nmのランド/グルーブパターン(凸凹パターン)が同心円状に形成されたNiモールドN1と、ランド部及びグルーブ部のピッチが150nmのランド/グルーブパターン(凸凹パターン)が同心円状に形成されたNiモールドN2との2種類を用意した。なお、これらの凸凹パターンにおけるランド部の高さは約50nmである。
NiモールドN1(N2)をSUS製の台座に接着固定した後、ディップ法により、剥離剤(「ベックEGC−1720」;3M社製)にNiモールドN1(N2)を浸漬させ、3〜4mm/s程度の速度で引き上げることにより、NiモールドN1(N2)における凸凹パターン上に、剥離剤を塗布した。次いで、これを乾燥させた後、100℃にて30分間加熱し、室温に戻した。
【0087】
次に、NiモールドN1(N2)を、DCマグネトロンスパッタ装置にセットし、Alターゲットとしては、99.99%のものを使用し、Arガス圧0.3Pa、投入電力50Wにて、120分間スパッタすることにより、NiモールドN1及びN2における凸凹パターン上に、厚み5μmのアルミニウム層を製膜した。
【0088】
<基板接着工程>
得られたアルミニウム層におけるNiモールドN1(N2)とは反対側に位置する面、即ち、アルミニウム層のスパッタ面に、接着剤(「ボンド ホーロー補修用ホワイト」;コニシ(株)製)を塗布した後、1インチ用HDDガラス基板を接着した。そして、接着剤が硬化した後、ガラス基板からはみ出した接着剤を、ナイフを用いて除去した。
【0089】
<モールド剥離工程>
突上げ剥離により、アルミニウム層からモールドを剥離するため、図10に示す、突上機構を有する剥離治具を試作した。
図10に示す剥離治具は、図3Aに示す突上機構20と同様の構成を有する突上機構50からなり、突上機構50は、中心に開口を有するガラス基板(HDD用ガラス基板)15の内周縁15Aに当接してガラス基板15を突き上げる突上ピン51と、不図示のバネと、突上ピン51を押し上げる加圧ピン53とを有しており、該バネにより突上ピン51が加圧ピン53に付勢されている。なお、突上ピン51及び加圧ピン53は、SUS303製である。
試作した剥離治具における、加圧ピン53を押圧した。すると、図3Bに示す突上機構20と同様、不図示のバネにより加圧ピン53に付勢された突上ピン51の先端が、中心に開口を有するガラス基板(HDD用ガラス基板)15の内周縁15Aに当接して、モールド12側からガラス基板15が突き上げられ、アルミニウム層13からモールド12が剥離された。その結果、アルミニウム層13の表面には、Niモールドにおける凸凹パターンP1が転写されて、複数のグルーブ部(凹状ライン)とランド部(凸状ライン)とが交互に配列した凹凸パターンP2が形成された。なお、NiモールドN1により形成した凹凸パターンでは、グルーブ部及びランド部のピッチは90nmであり、NiモールドN2により形成した凹凸パターンでは、グルーブ部及びランド部のピッチは150nmであり、これらのグルーブ部の深さは約50nmである。
また、剥離後のアルミニウム層の表面には、図2A及び図2Bに示すように、皺が発生していなかった。
【0090】
<多孔質層形成工程>
凹凸パターンP2が形成されたアルミニウム層13に対し、陽極酸化法により、ナノホールを複数形成させて、図9Aに示す多孔質層を形成した。
陽極酸化処理は、陽極酸化液として、0.3MLのシュウ酸を用い、液温16℃、陽極酸化電圧40Vで行った。また、めっき法によりナノホール内に磁性材料(Co)を充填するため、電流回復処理も行った。
なお、ナノホールのピッチは、一般的に、下記式(1)で表される。
ナノホールピッチ(nm)=陽極酸化電圧(V)×2.5・・・式(1)
【0091】
陽極酸化処理により得られた細孔配列(多孔質層)におけるナノホールパターンについて、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したところ、図11A及び図11Bに示すようなナノホールの配列が得られた。
図11Aに示すように、グルーブ/ランドピッチが90nmの凹凸パターンをナノホール形成用起点として用いた場合、上記陽極酸化条件では、グルーブ部(凹状ライン)上に、ナノホールが1列に配列していることが判った。
図11Bに示すように、グルーブ/ランドピッチが150nmの凹凸パターンをナノホール形成用起点として用いた場合、特願2006−035876号に記載の通り、上記陽極酸化条件では、グルーブ部(凹状ライン)上に、ナノホールが2列に配列していることが判った。
以上より、Niモールドにおけるランド/グルーブパターン(凸凹パターン)が、アルミニウム層に忠実に転写されて得られた凹凸パターンをナノホール形成用起点として用いることにより、ナノホールが期待通りに形成されることが判った。
【0092】
−モールドにおけるパターンのアルミニウム層への転写実験2−
前記転写実験1において、前記金属層製膜工程で用いた剥離剤(「ベックEGC−1720」;3M社製)を、シランカップリング剤(「オプツールDSX」;ダイキン工業社製)に代え、該シランカップリング剤0.1wt%溶液に、Niモールドを浸漬させた後、約3時間風乾して塗布した以外は、前記転写実験1と同様にして、前記基板接着工程、前記モールド剥離工程及び前記多孔質層形成工程を行った。
その結果、前記モールド剥離工程では、突き上げ剥離により、皺が発生することなく、アルミニウム層からモールドが綺麗に剥離された。そして、Niモールドにおけるランド/グルーブパターン(凸凹パターン)が、アルミニウム層に忠実に転写されて凹凸パターンが形成された。また、前記多孔質層形成工程では、得られた凹凸パターンをナノホール形成用起点として用いることにより、ナノホールが期待通りに形成されることが判った。
【0093】
−モールドにおけるパターンのアルミニウム層への転写実験3−
まず、前記転写実験1と同様にして、前記金属層製膜工程及び前記基板接着工程を行った後、モールド剥離工程を下記方法により行って、アルミニウム層からモールドを剥離した。
【0094】
<モールド剥離工程>
HDD用ガラス基板とNiモールドとの間に、ナイフの刃を差し込み、ガラス基板をNiモールドから剥離した。4〜5回、同様に試したが、図1A及び図1Bに示すように、アルミニウム層の表面に皺が発生してしまい、前記転写実験1における突き上げ剥離に比して、皺なしでの剥離は困難であることが判った。
【0095】
(実施例1)
−磁気記録媒体の製造−
前記転写実験1と同様にして、Niモールドにおけるパターンをアルミニウム層に転写し、両面記録用磁気ディスクを製造した。
【0096】
<金属層製膜工程>
まず、前記転写実験1と同様、1インチHDD用ガラス基板と同じ形状を有し、その表面にランド部及びグルーブ部のピッチが90nmのランド/グルーブパターン(凸凹パターン)が同心円状に形成されたNiモールド(A面用)を用意した。なお、凸凹パターンにおけるランド部の高さは約50nmである。
NiモールドをSUS製の台座に接着固定した後、ディップ法により、剥離剤(「ベックEGC−1720」;3M社製)にNiモールドを浸漬させ、3〜4mm/s程度の速度で引き上げることにより、Niモールドにおける凸凹パターン上に、剥離剤を塗布した。次いで、これを乾燥させた後、100℃にて30分間加熱し、室温に戻した。
【0097】
次に、Niモールドを、DCマグネトロンスパッタ装置にセットし、前記転写実験1と同様の条件でスパッタすることにより、Niモールドにおける凸凹パターン上に、厚み300nmのアルミニウム層を製膜した。
【0098】
<軟磁性下地層形成工程>
得られたアルミニウム層上に、いわゆるAPS−SUL(反強磁性結合−軟磁性下地層)として、CoZrNb/Ru/CoZrNb膜を製膜した。
更に、強度保持用金属層として、Taを1μmの厚みとなるように製膜した。
【0099】
<基板接着工程及びモールド剥離工程>
前記転写実験1と同様にして、前記基板接着工程を行った後、前記モールド剥離工程により、突き上げ剥離にて、アルミニウム層からNiモールド(A面用)を剥離し、HDD用ガラス基板とアルミニウム層と軟磁性下地層(及び不図示の強度保持用金属層)との接着物16を作製した。
【0100】
一方、前記金属層製膜工程及び前記軟磁性下地層形成工程と同様にして、図6A及び図6Bに示すように、前記Niモールドと同一形状のNiモールド(B面用)32を用いて、該Niモールド32上に、アルミニウム層13、軟磁性下地層14(及び不図示の強度保持用金属層)をこの順に製膜したものを作製した。
【0101】
そして、図5に示す接着物16のガラス基板15におけるアルミニウム層(A面)との接着面と反対側に位置する面を、図6Bに示す、Niモールド(B面用)32上に製膜したアルミニウム層(B面)13上に製膜された軟磁性下地層14(及び不図示の強度保持用金属層)の最表面に更に接着した(図7A参照)。
次いで、前記モールド剥離工程により、突き上げ剥離にて、アルミニウム層(B面)13からNiモールド(B面用)32を剥離した(図7B参照)。
【0102】
<多孔質層形成工程>
凹凸パターンが形成された、A面及びB面のアルミニウム層13それぞれに対し、前記転写実験1と同様の条件で、陽極酸化処理を行い、図9Aに示すように、ナノホール17Aを複数形成させて、多孔質層17を形成した。
【0103】
<磁性材料充填工程>
硫酸コバルト七水和物50g/l及びホウ酸20g/lの電解液中にて、50Hz、10Vの条件で、10分間にわたって電解析出を行い、図9Bに示すように、前記ナノホール内に、磁性材料18としてのコバルト(Co)を充填させ、該ナノホール17A内に強磁性層を形成した。
【0104】
<研磨工程>
前記磁性材料充填工程の後、ナノホールから溢れ出たコバルト(Co)を、CMP法により平坦化処理し、多孔質層の表面研磨を行った(図9B参照)。この研磨工程後の多孔質層(アルミナ層)の厚みは、約250nmであり、前記コバルト(Co)が充填されたナノホール(アルミナポア)のアスペクト比は、約7であった。
【0105】
その後、図9Cに示すように、RFスパッタ法により、カーボンを5nmの厚みに製膜して保護膜19を形成し、更に、潤滑剤として、パーフルオロアルキルポリエーテル(「AM3001」;ソルベイソレクシス社製)を、ディップ法により塗布し、磁気記録媒体(特性評価用磁気ディスクサンプル)を製造した。なお、該磁気記録媒体においては、基板15上に、接着剤層11を介して多孔質層17が形成されている。
【0106】
−磁気記録媒体の特性評価−
得られた特性評価用磁気ディスクサンプルの特性を以下のようにして評価した。
まず、周速8m/sで60nm浮上するピエゾ付ヘッドを、特性評価用磁気ディスクサンプルに対して周速6m/sで浮上させたときのピエゾ出力波形を図12に示す。図12より、ヘッドが浮上していることが確認された。
【0107】
次いで、特性評価用磁気ディスクサンプルを回転させて磁気ヘッドを浮上させ、400nmの周期の磁気信号の記録を行った後、磁気信号の再生を行った。得られた再生波形を図13に示す。図13より、特性評価用磁気ディスクサンプルは、磁気ディスクとして機能していることが判った。
【0108】
本発明の好ましい態様を付記すると、以下の通りである。
(付記1) 凸凹パターンを表面に有するモールドの該凸凹パターン上に金属層を製膜する金属層製膜工程と、製膜した金属層における前記モールドとは反対側に位置する面に、基板を接着剤により接着する基板接着工程と、該基板接着工程の後、前記モールドを前記金属層から剥離するモールド剥離工程と、ナノホール形成処理を行うことにより、前記モールドにおける凸凹パターンが転写されて前記金属層に形成された凹凸パターンを起点として、前記基板面に対し略直交する方向にナノホールが複数形成された多孔質層を形成する多孔質層形成工程と、該ナノホールの内部に磁性材料を充填する磁性材料充填工程と、を少なくとも含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
(付記2) モールドにおける凸凹パターンが、ランド部とグルーブ部とを交互に有してなる付記1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記3) 金属層が、アルミニウムからなる付記1から2のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記4) 製膜した金属層上に軟磁性下地層を形成する軟磁性下地層形成工程を含む付記1から3のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記5) 基板が、ガラス基板、アルミ基板及びシリコン基板から選択される少なくとも1種である付記1から4のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記6) 金属層製膜工程が、金属層の製膜前に、モールドにおける凸凹パターン上に剥離剤を塗布することを含む付記1から5のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記7) 剥離剤が、フッ素系表面処理剤及びシランカップリング剤から選択される少なくとも1種である付記6に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記8) 接着剤が、エポキシ樹脂系接着剤、低硬化収縮接着剤、変成シリコーン樹脂接着剤、及びシアノアクリレート系接着剤から選択される少なくとも1種である付記1から7のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記9) モールド剥離工程が、(前記磁気ディスク基板)を、突上機構を用いてモールド側から突上げることにより行われる付記1から8のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記10) 多孔質層形成工程の前であって、モールド剥離工程の後、基板における金属層との接着面と反対側に位置する面に対し、予め金属層製膜工程によりモールド上に製膜された金属層を接着し、該金属層から前記モールドを剥離することを更に含む付記1から9のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記11) 金属層製膜工程、基板接着工程、及びモールド剥離工程が、複数の基板に対して一括して行われる付記1から10のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記12) 磁性材料充填工程の後に、多孔質層の表面を研磨する研磨工程を含む付記1から11のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記13) 基板上に、接着剤層を介して、該基板面に対し略直交する方向にナノホールが複数形成された多孔質層を有し、該ナノホールの内部に磁性材料を有してなることを特徴とする磁気記録媒体。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の磁気記録媒体は、コンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されているハードディスク装置などに好適に使用することができる。
本発明の磁気記録媒体の製造方法は、生産性に優れ、低コストに、大容量で高密度記録が可能な磁気記録媒体を製造することができ、本発明の磁気記録媒体の製造に特に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1A】図1Aは、ナイフエッジによりモールドと金属層とを剥離した後の金属層表面の状態を示す写真である。
【図1B】図1Bは、ナイフエッジによりモールドと金属層とを剥離した後の金属層表面の状態を示す概略説明図である。
【図2A】図2Aは、突上機構を用いてモールドと金属層とを剥離した後の金属層表面の状態を示す写真である。
【図2B】図2Bは、突上機構を用いてモールドと金属層とを剥離した後の金属層表面の状態を示す概略説明図である。
【図3A】図3Aは、本発明の磁気記録媒体におけるモールド剥離工程で用いる突上機構の一例を示す概略説明図である。
【図3B】図3Bは、図3Aに示す突上機構を用いたモールド剥離工程の一例を示す概略説明図である。
【図4】図4は、本発明の磁気記録媒体の製造方法の一例における、基板と金属層との接着物を作製する方法の一例を示す概略工程図である。
【図5】図5は、本発明の磁気記録媒体の製造方法により両面記録用磁気記録媒体を製造する際、金属層製膜工程、基板接着工程、及びモールド剥離工程により作製された、A面用金属層と基板との接着物の一例を示す概略説明図である。
【図6A】図6Aは、本発明の磁気記録媒体の製造方法により両面記録用磁気記録媒体を製造する際に用いるB面用モールドの一例を示す概略説明図である。
【図6B】図6Bは、図6Aに示すB面用モールドを用いて行う金属層製膜工程の一例を示す概略説明図である。
【図7A】図7Aは、本発明の磁気記録媒体の製造方法により両面記録用磁気記録媒体を製造する際の基板接着工程(B面用金属層と基板との接着)の一例を示す概略説明図である。
【図7B】図7Bは、本発明の磁気記録媒体の製造方法により両面記録用磁気記録媒体を製造する際のモールド剥離工程(B面用モールドと金属層との剥離)の一例を示す概略説明図である。
【図8A】図8Aは、金属層製膜工程、基板接着工程及びモールド剥離工程を、複数の基板に対して一括して行う場合の概略工程図(その1)である。
【図8B】図8Bは、金属層製膜工程、基板接着工程及びモールド剥離工程を、複数の基板に対して一括して行う場合の概略工程図(その2)である。
【図8C】図8Cは、金属層製膜工程、基板接着工程及びモールド剥離工程を、複数の基板に対して一括して行う場合の概略工程図(その3)である。
【図8D】図8Dは、金属層製膜工程、基板接着工程及びモールド剥離工程を、複数の基板に対して一括して行う場合の概略工程図(その4)である。
【図8E】図8Eは、金属層製膜工程、基板接着工程及びモールド剥離工程を、複数の基板に対して一括して行う場合に得られた、複数個の金属層と基板との接着物を示す概略説明図である。
【図9A】図9Aは、本発明の磁気記録媒体の製造方法における多孔質層形成工程の一例を示す概略説明図である。
【図9B】図9Bは、本発明の磁気記録媒体の製造方法における磁性材料充填工程の一例を示す概略説明図である。
【図9C】図9Cは、本発明の磁気記録媒体としての両面磁気記録用磁気ディスクの一例を示す概略説明図である。
【図10】図10は、モールドにおけるパターンのアルミニウム層への転写実験及び磁気記録媒体の製造で用いた試作剥離治具を示す概略説明図であ。
【図11A】図11Aは、グルーブ/ランドピッチが90nmの凹凸パターンをナノホール形成用起点として用いて陽極酸化処理を行った場合のナノホールの配列態様(1列配列)を示す写真である。
【図11B】図11Bは、グルーブ/ランドピッチが150nmの凹凸パターンをナノホール形成用起点として用いて陽極酸化処理を行った場合のナノホールの配列態様(2列配列)を示す写真である。
【図12】図12は、本発明の磁気記録媒体の製造方法により製造した特性評価用磁気ディスクサンプルに対してピエゾ付ヘッドを浮上させたときのピエゾ出力波形を示す写真である。
【図13】図13は、本発明の磁気記録媒体の製造方法により製造した特性評価用磁気ディスクサンプルを用いて磁気信号の記録及び再生を行ったときの磁気信号の再生波形を示すグラフである。
【図14A】図14Aは、従来のハードインプリント法を示す概略説明図である。
【図14B】図14Bは、従来のソフトインプリント法を示す概略説明図である。
【図14C】図14Cは、陽極酸化アルミナナノホールにおけるパターン形成方法の一例を示す概略説明図である。
【図14D】図14Dは、陽極酸化アルミナナノホールにおけるパターン形成方法の他の例を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0111】
10・・・台座
11・・・接着剤(接着剤層)
12・・・モールド
13・・・アルミニウム層
14・・・軟磁性下地層
15・・・基板(磁気ディスク基板)
15A・・磁気ディスク基板の内径
16・・・接着物
17・・・多孔質層
17A・・ナノホール
18・・・磁性材料
19・・・保護膜
20・・・突上機構
21・・・突上ピン
22・・・バネ
23・・・加圧ピン
32・・・B面用モールド
40・・・台座
41・・・パターン付モールド
43・・・アルミニウム層
44・・・軟磁性下地層
45・・・基板
50・・・突上機構
51・・・突上ピン
53・・・加圧ピン
P1・・・凸凹パターン
P2・・・凹凸パターン
L・・・ランド部
G・・・グルーブ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸凹パターンを表面に有するモールドの該凸凹パターン上に金属層を製膜する金属層製膜工程と、製膜した金属層における前記モールドとは反対側に位置する面に、基板を接着剤により接着する基板接着工程と、該基板接着工程の後、前記モールドを前記金属層から剥離するモールド剥離工程と、ナノホール形成処理を行うことにより、前記モールドにおける凸凹パターンが転写されて前記金属層に形成された凹凸パターンを起点として、前記基板面に対し略直交する方向にナノホールが複数形成された多孔質層を形成する多孔質層形成工程と、該ナノホールの内部に磁性材料を充填する磁性材料充填工程と、を少なくとも含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項2】
モールドにおける凸凹パターンが、ランド部とグルーブ部とを交互に有してなる請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項3】
金属層が、アルミニウムからなる請求項1から2のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項4】
基板が、ガラス基板、アルミ基板及びシリコン基板から選択される少なくとも1種である請求項1から3のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項5】
金属層製膜工程が、金属層の製膜前に、モールドにおける凸凹パターン上に剥離剤を塗布することを含む請求項1から4のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項6】
接着剤が、エポキシ樹脂系接着剤、低硬化収縮接着剤、変成シリコーン樹脂接着剤、及びシアノアクリレート系接着剤から選択される少なくとも1種である請求項1から5のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項7】
モールド剥離工程が、中心に開口を有する基板の内周縁を、突上機構を用いてモールド側から突上げることにより行われる請求項1から6のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項8】
多孔質層形成工程の前であって、モールド剥離工程の後、基板における金属層との接着面と反対側に位置する面に対し、予め金属層製膜工程によりモールド上に製膜された金属層を接着し、該金属層から前記モールドを剥離することを更に含む請求項1から7のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項9】
金属層製膜工程、基板接着工程、及びモールド剥離工程が、複数の基板に対して一括して行われる請求項1から8のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項10】
基板上に、接着剤層を介して、該基板面に対し略直交する方向にナノホールが複数形成された多孔質層を有し、該ナノホールの内部に磁性材料を有してなることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項1】
凸凹パターンを表面に有するモールドの該凸凹パターン上に金属層を製膜する金属層製膜工程と、製膜した金属層における前記モールドとは反対側に位置する面に、基板を接着剤により接着する基板接着工程と、該基板接着工程の後、前記モールドを前記金属層から剥離するモールド剥離工程と、ナノホール形成処理を行うことにより、前記モールドにおける凸凹パターンが転写されて前記金属層に形成された凹凸パターンを起点として、前記基板面に対し略直交する方向にナノホールが複数形成された多孔質層を形成する多孔質層形成工程と、該ナノホールの内部に磁性材料を充填する磁性材料充填工程と、を少なくとも含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項2】
モールドにおける凸凹パターンが、ランド部とグルーブ部とを交互に有してなる請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項3】
金属層が、アルミニウムからなる請求項1から2のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項4】
基板が、ガラス基板、アルミ基板及びシリコン基板から選択される少なくとも1種である請求項1から3のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項5】
金属層製膜工程が、金属層の製膜前に、モールドにおける凸凹パターン上に剥離剤を塗布することを含む請求項1から4のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項6】
接着剤が、エポキシ樹脂系接着剤、低硬化収縮接着剤、変成シリコーン樹脂接着剤、及びシアノアクリレート系接着剤から選択される少なくとも1種である請求項1から5のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項7】
モールド剥離工程が、中心に開口を有する基板の内周縁を、突上機構を用いてモールド側から突上げることにより行われる請求項1から6のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項8】
多孔質層形成工程の前であって、モールド剥離工程の後、基板における金属層との接着面と反対側に位置する面に対し、予め金属層製膜工程によりモールド上に製膜された金属層を接着し、該金属層から前記モールドを剥離することを更に含む請求項1から7のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項9】
金属層製膜工程、基板接着工程、及びモールド剥離工程が、複数の基板に対して一括して行われる請求項1から8のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項10】
基板上に、接着剤層を介して、該基板面に対し略直交する方向にナノホールが複数形成された多孔質層を有し、該ナノホールの内部に磁性材料を有してなることを特徴とする磁気記録媒体。
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14D】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14D】
【公開番号】特開2008−165947(P2008−165947A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−566(P2007−566)
【出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、独立行政法人科学技術振興機構、「ナノホール垂直パターンドメディアの開発に関する研究」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(591243103)財団法人神奈川科学技術アカデミー (271)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、独立行政法人科学技術振興機構、「ナノホール垂直パターンドメディアの開発に関する研究」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(591243103)財団法人神奈川科学技術アカデミー (271)
【Fターム(参考)】
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