説明

磁気記録媒体用ポリエステルフィルム

【目的】走行性、繰り返し使用による走行耐久性、パンケーキの巻き特性ならびにスリット特性に優れ、かつ高画質化の要求にも合致した磁気記録媒体用ベースフィルムとして有用なポリエステルフィルムを提供することにある。
【構成】ポリエステル中に体積平均粒径が0.1〜2.0μmであり、相対標準偏差が0.5を越える球状シリカ粒子を0.005〜5.0重量%含有し、かつ体積平均粒径が0.1〜2.0μmの炭酸カルシウム粒子を0.005〜5.0重量%含有することを特徴とする磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は磁気記録媒体用ポリエステルフィルムに関するものであり、特に走行耐久性、スリット性、フィルムの巻き特性に優れたビデオテープに好適なポリエステルフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】ポリエステルフィルムを用いた磁気記録媒体は、磁気媒体製造工程での磁性体塗布・カレンダー工程などで工程速度の増大にともない、接触するロ−ルなどによってポリエステルフィルム表面に傷がつくという欠点が最近問題となっている。さらに、ビデオテープにおいては、一般家庭での利用頻度の増大や録画済みの市販テープの普及により、ビデオレコーダー(VTR)内での繰り返し再生や録画を繰り返すことが多くなり、テープカセット内のガイドピンなどとの接触摩擦によりフィルム表面に傷が付いたり、あるいは接触摩擦に伴ってフィルムより発生した粉状物の脱落などにより映像を悪化させるなどの問題が発生している。また、磁気記録媒体、特にはビデオテープなどの磁気テープ製造工程の最終工程となるスリット時に、フィルムの切り口断面より切り粉が発生し磁気記録時のドロップアウト増大をもたらしている。これらの問題の解決のためには、フィルム表面に傷がつきにくくするとともに、フィルム表面を粗くして摩擦係数を小さくすることでフィルムの走行性を良くすることが必要であるが、一方で高画質化の要求からフィルム表面を平滑にして電磁変換特性を向上させることも必要である。さらには、上記スリット時の切れ味をフィルム特性に付与することも必要になっている。これらの相反するフィルム表面特性のジレンマに対して従来より多くの検討がなされており、たとえば、特開昭59−171623号公報や特開昭63−234038号公報では球状シリカ粒子を含有せしめることが、特開昭61−5431号公報には、コロイダルシリカ等の不活性無機粒子を含有せしめることなどが提案されている。
【0003】しかしながら、このような公知の方法をもってしても上記問題点のすべてを満足させることは難しいというのが実情である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる問題点を改善し、繰り返し使用による走行耐久性に優れ、かつ磁気記録媒体製造工程におけるスリット特性の改良さらには高画質化の要求にも合致した磁気記録媒体用ポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記本発明の目的は、ポリエステル中に体積平均粒径が0.1〜2.0μmであり、かつ下記(1)式で定義される相対標準偏差が0.5を越える球状シリカ粒子を0.005〜5.0重量%含有し、かつ体積平均粒径が0.1〜2.0μmの炭酸カルシウム粒子を0.005〜5.0重量%含有することを特徴とする磁気記録媒体用ポリエステルフィルムによって達成される。
【0006】
【数2】


本発明において適用されるポリエステルは芳香族ジカルボン酸あるいはそのアルキルエステル等の二官能性成分とグリコール成分として重縮合反応によって製造されるものである。特にこの中でポリエチレンテレフタレートを主成分とするものが好ましい。
【0007】また、本発明のポリエステルフィルムの基本特性を阻害しない程度の少量のコポリエステルが混合されていてもよい。該コポリエステルの共重合成分の例としては2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸等のジカルボン酸成分、P−オキシエトキシ安息香酸等のオキシカルボン酸成分、およびテトラメチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリオキシアルキレングリコール、P−キシリレングリコール、1、4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、5−ナトリウムスルホレゾルジン等のジオール成分が挙げられる。特にこのなかでポリエチレングリコール等のジオール成分を共重合したコポリエステルとするのがフィルムの磁気バインダーとの接着性を向上させたり、静電気等による帯電性を低く保つために好ましい。
【0008】また、本発明のポリエステルフィルムなどの生産段階で発生する非製品部分などを主体とする回収ポリエステルを含んでいても良い。さらに、これらのポリエステルは、固有粘度が0.5以上であることが好ましく、さらには0.55以上であることが好ましい。
【0009】本発明における球状シリカ粒子は、アルコキシド法、水ガラス法などで製造される合成シリカであり、例えば水ガラス(ケイ酸ナトリウム水溶液)を出発原料とするイオン交換法やアルコキシシリケートを出発原料とする加水分解法等によって合成することができる。特に本発明の課題の1つであるスリット性の改良のためには、水ガラスを出発原料とする合成シリカの方が好ましく、さらには、該球状シリカ粒子の20重量%エチレングリコールスラリーの25℃における屈折率が、1.430、好ましくは1.435以上であるとポリエステル中での粒子周りのボイドの発生が少なくなるだけでなく、スリット性の改良効果も顕著となるのでより望ましい。
【0010】また、本発明で言う球状とは、粒子の投影面における最大径と最小径の粒径比(最大径/最小径)が1.0〜1.3であるものが好ましく、さらには1.0〜1.1であるものが好ましい。ここで、該粒径比が1.0の場合は真球であることを示している。該粒径の範囲を外れると金属ガイド/フィルム間における摩擦が大きくなり、該ビデオテープをVTR中で繰り返し使用した場合に走行性が悪化し易くなり、テープ鳴きを起こしたり、VTR中で走行が止まったりすることがある。従って、特に、走行時の耐久性を要求されるようなビデオテープ用途、たとえば映画等の録画済み市販テープ用ベースフィルムとしては前記範囲の粒子であることが好ましい。
【0011】また、球状シリカ粒子の粒径分布の広がりの尺度となる相対標準偏差は、0.5を越えることが必要であり、好ましくは0.6を越えること、さらには0.7を越えることが好ましい。また、上限は特に定めないが、3以内であることが、フィルム表面のうねりを良好に保つ上で好ましい。
【0012】ここにいう相対標準偏差は、粒子の面積円相当径から個数単位で求めた標準偏差と数平均径の比で次式(1)で表わされる。
【0013】
【数3】


相対標準偏差が0.5を越える球状シリカ粒子を用いると、スリット性、特には連続スリット性が向上し、ビデオテープなどの磁気テープ製造工程の最終工程となるスリット時において長時間スリット刃を替えなくともフィルム切り口から発生する切り粉あるいは削れ粉がきわめて少なく、またフィルム切り口の端部断面の盛り上がりも少なくなる。本効果の発現は、該工程におけるスリット刃の摩耗が極めて少なくなることによってもたらされるものと考える。
【0014】本発明において、球状シリカ粒子の体積平均粒径は、0.1〜2.0μmであることが必要であり、好ましくは0.15〜1.0μmが望ましい。該粒子の体積平均粒径が0.1μmより小さいと摩擦が大きくなり、ビデオテープとした場合の走行特性が悪くなる。逆に、2.0μmよりも大きいとビデオテープに代表される磁気記録媒体の電磁変換特性が不良となる。また、上記球状シリカ粒子の含有量は、前記ポリエステルに対して0.005〜5.0重量%とすることが必要であり、好ましくは0.01〜2.0重量%、さらには0.05〜1.0重量%であることが好ましい。該粒子の含有量が0.005重量%より小さいと摩擦が大きくなり、ビデオテープとした場合の走行特性が悪くなる。逆に、5.0重量%よりも大きいとビデオテープに代表される磁気記録媒体の電磁変換特性が不良となる。
【0015】本発明における炭酸カルシウム粒子とは、天然品、合成品が挙げられ、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、コロイド状炭酸カルシウムがある。
【0016】また、炭酸カルシウムの結晶タイプとしては、カルサイト、アラゴナイト、バテライトなどが挙げられるがこれらいずれでも良い。また、これらの炭酸カルシウム粒子は表面処理していないものを用いても良い。さらに、分散助剤や凝集防止剤の使用の有無も特に限定するものではない。
【0017】炭酸カルシウム粒子の製造は公知の方法によって得られる。例えば、天然の炭酸カルシウムを用いる場合は、石灰石を解砕、粉砕、分級等の操作により、粗大粒子を減少し、粒度分布を先鋭化したもの。また、合成炭酸カルシウム粒子の製法としては、石灰乳の炭酸化反応によって合成されものが挙げられる。
【0018】本発明の炭酸カルシウム粒子の体積平均粒径は、0.1〜2.0μmであることが必要であり、好ましくは0.1〜2.0μm、さらには0.2〜1.5μmが好ましい。該粒子の体積平均粒径が0.1μmより小さいと摩擦が大きくなり、ビデオテープとした場合の走行特性が悪くなる。逆に、2.0μmよりも大きいとビデオテープに代表される磁気記録媒体の電磁変換特性が不良となる。また、上記炭酸カルシウム粒子の含有量は、前記ポリエステルに対して0.005〜5.0重量%とすることが必要であり、好ましくは0.01〜2.0重量%、さらには0.05〜0.8重量%であることが好ましい。該粒子の含有量が0.005重量%より小さいと摩擦が大きくなり、ビデオテープとした場合の走行特性が悪くなる。逆に、5.0重量%よりも大きいとビデオテープに代表される磁気記録媒体の電磁変換特性が不良となる。
【0019】また、本発明の炭酸カルシウム粒子の細孔容積が1.0cm3 /g以下、さらには、0.8cm3 /g以下であるとポリエステルとの親和性がさらに向上し、フィルムとした時の耐摩耗特性が良好となるのでより好ましい。
【0020】ここで、前記細孔容積(Vp)は、水銀−ヘリウム法によって求められるもので、具体的には、水銀ホロシメーターを用いて、1.1気圧の圧力下にて、比容積(Vm)を求め、次いで、気体吸着装置(ヘリウム使用)にて、定圧容積法の死容積測定で比容積(Vn)を求め、このVmからVnを引くことによって細孔容積(Vp)として算出される。
【0021】本発明において、前記球状シリカ粒子ならびに炭酸カルシウム粒子をポリエステルに含有せしめる方法は特に限定されないが、一般には、ポリエステル製造時に球状シリカ粒子ならびに炭酸カルシウム粒子のスラリーを添加するのが好ましい。添加方法、添加時期は、従来公知の方法、時期が用いられるが、添加方法においては、特に該ポリエステルの合成原料であるエチレングリコールのスラリーとして添加する方法が好ましい。この際のスラリー濃度としては0.5〜40重量%、さらには1〜20重量%の範囲とするのがポリエステル中での粒子分散性が良くなり好ましい。さらに添加時のスラリーのグリコール中の含有水分量は、1重量%以下、さらには0.5重量%以下とする方がポリエステル中での粒子分散性が向上するので好ましい。添加時期は任意でよく、モノマー仕込み時、エステル交換反応時あるいはその前後に添加してもよいが、特には、エステル交換反応前から重縮合反応の減圧開始までの間に添加するのが好ましい。また、該粒子のスラリーをポリマー製造後一軸または二軸のベント式押出し機などを用いて添加、分散させてもよい。
【0022】本発明においては、走行性、電磁変換特性、スリット性さらにはフィルム製造時のスリット巻き上げ工程におけるロール巻き姿をともに満足させるために本発明の球状シリカ粒子と炭酸カルシウム粒子とを併用することが必要である。球状シリカ粒子のみでは、走行性およびスリット巻き上げ工程におけるロール巻き姿が良好となるような粒子含有量においては電磁変換特性を満足することができず、さらにVTRテープとした時に繰り返し走行させることによりドロップアウトが増加する。 また、炭酸カルシウム粒子のみでは、走行性が悪く、かつ、VTRテープ製造時のカレンダー工程においての削れが多くなる。本発明において球状シリカ粒子と炭酸カルシウム粒子とを併用することによる上記効果の発現は、VTRテープ製造時のカレンダー工程前後においてフィルム表面の球状シリカ粒子による突起の高さと炭酸カルシウム粒子による突起の高さの変化度合いによるものと推定する。すなわち、球状シリカ粒子による突起は該カレンダー工程前後において突起の高さがほとんど変化しないのに対して、炭酸カルシウム粒子による突起は該カレンダー工程前後において突起の高さが10〜40%程度低くなる。すなわち、該カレンダー工程前では、球状シリカ粒子による突起と炭酸カルシウム粒子による突起の双方の効果によってスリット巻き上げ工程におけるロール巻き姿が良好となり、また前記フィルムを該カレンダー工程にて処理した後においては、炭酸カルシウム粒子による突起の高さが減少することによって、相対的にフィルム表面が平滑となり、これによって、VTRテープの最終製造工程で行われるエージング時の磁性層面への突起の裏写り現象が少なくなり電磁変換特性も良好となるものと推定する。
【0023】本発明においては、球状シリカ粒子と炭酸カルシウム粒子の重量比率(球状シリカ粒子の重量/炭酸カルシウム粒子の重量)が0.1〜20、さらには0.2〜7であることが上記の目的に対する効果を全て満足する上で特に好ましい。
【0024】また、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、他の不活性粒子たとえば二酸化チタン、一酸化チタン、窒化チタン、カオリン、タルクなどの無機粒子、架橋ポリスチレンなどの有機粒子や、内部析出粒子、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤などの添加剤が通常添加される程度に含有されていてもよい。
【0025】ここで、前記内部析出粒子は、たとえばポリエステル合成時に添加したカルシウム化合物、マグネシウム化合物、マンガン化合物、リチウム化合物の少なくとも一種の化合物とポリエステル構成成分とが結合して生成した粒子などが挙げられる。また、該内部析出粒子中に本発明の効果を阻害しない範囲内でリン元素および微量の他の金属成分、例えば、亜鉛、コバルト、アンチモン、ゲルマニウム、チタン等が含まれていてもよい。
【0026】本発明の磁気記録媒体用ポリエステルフィルムは、常法により二軸配向されたものであり、厚みは3〜50μmであることが好ましく、さらには5〜25μmの範囲であることが好ましい。
【0027】本発明における削れ指数Kとは、厚み10〜15μmのフィルムをシェアカッター方式のスリッターにて50m/分のスリット速度で1/2インチにスリットし、次いで1/2インチにスリット後のフィルム1mを50ccの純水を入れた容器中に片側の切断面のみが浸積するように設置、超音波処理を行なった後、該フィルムサンプルを取り除き浸積液をパーティクルカウンターで測定した時の3〜20μmの大きさの粒径を有する粒子の個数として定義される。本発明においては、上記の削れ指数Kが60以下、好ましくは40以下であることがビデオテープ再生時のオーディオ特性が特に良好となるので好ましい。
【0028】また、本発明のポリエステルフィルムにおいて面配向指数Fならびに厚み方向の屈折率nzが下記(2)および(3)式を同時に満足する範囲内にあるとスリット性が良好なり、かつカレンダー工程での削れ性が良好となるだけでなく、磁気記録媒体の磁性層バインダーとポリエステルフィルムとの接着性も向上するので好ましい。
nz ≦ 1.603−0.6407×F ‥‥‥‥(2)
nz ≧ 1.595−0.6407×F ‥‥‥‥(3)
[ここで、面配向指数Fとは、F=(NMD+NTD)/2−nzで定義され、NMDは、フィルム長手方向の屈折率、NTDは、フィルム巾方向の屈折率、nzは、フィルムの厚み方向の屈折率を示す。]さらに、本発明のポリエステルフィルムにおいて前記面配向指数FならびにΔNが下記(4)〜(6)式を同時に満足する範囲内にあると繰り返し走行時の摩耗特性が良好となるのみならず、前記スリット時にフィルム端面にヒゲ状物が発生しにくくなり、また、ビデオテープ加工時に行われるカレンダー工程においての摩耗粉が発生しにくくなるため好ましい。
ΔN ≦ 1413−8327×F ‥‥‥‥‥‥‥(4)
ΔN ≧ 1340−8627×F ‥‥‥‥‥‥‥(5)
−60≦ΔN≦−20 ‥‥‥‥‥‥‥(6)
[ここで、ΔNは、ΔN=(NMD−NTD)×1000で定義され、F=(NMD+NTD)/2−nz、NMDは、フィルム長手方向の屈折率、NTDは、フィルム巾方向の屈折率を示す。]ここで、前記ΔNは、NMDを下げることによって上昇させることができ、上げることによって下降させることができる。NMDは、長手方向の延伸倍率を上げることによって上げることができ、逆に下げることにより下げることができる。NTDは巾方向の延伸倍率を上げることによって上げることができ、逆に下げることにより下げることができる。また、NMDは、長手方向の延伸温度を下げることにより上げることができ、逆に上げることによって下げることができる。NTDは、巾方向の延伸温度を下げることにより上げることができ、逆に上げることによって下げることができる。
【0029】また、前記面配向度Fは、延伸時の面積倍率(長手方向の延伸倍率×巾方向の延伸倍率)を上げることによって上昇させることができ、逆に、下げることによって下降させることができる。また、前記面積倍率が同一の場合は、長手方向あるいは巾方向の延伸温度を下げることによって上げることができ、逆に、該温度を上げることによって下げることができる。
【0030】また、前記厚み方向の屈折率nzは、延伸時の面積倍率(長手方向の延伸倍率×巾方向の延伸倍率)を上げることによって大きくすることができ、逆に、下げることによって小さくすることができる。また、前記面積倍率が同一の場合は、長手方向あるいは巾方向の延伸温度を下げることによって大きくすることができ、逆に、該温度を上げることによって小さくすることができる。さらに、熱処理温度を高くすることによって大きくすることができ、また、逆に、低くすることによって小さくすることができる。
【0031】本発明のポリエステルフィルムの少なくとも片面が、中心線平均表面粗さ(Ra)が8〜30nm、かつ三次元平均表面粗さ(SRa)が13〜50nmであることが好ましく、さらにはRaが12〜25nmで、SRaは17〜40nmであるとが好ましい。表面粗さが上記範囲内にあると摩擦係数が小さく耐削れ性が良好で、かつ画質特性も良好がであるため好ましい。さらに高さが200〜400nmの突起の数が0.1mm2 あたり1200個以上、さらには1350個以上、特には1500個以上で、かつ高さが400nm〜800nmの突起の数が0.1mm2 あたり400個以下、さらには300個以下、特には200個以下であることが好ましい。高さが200〜400nmの突起の数ならびに高さが400nm〜800nmの突起の数が上記範囲内であると使用耐久性が特に良好でかつ画質特性が良好となる。
【0032】本発明のポリエステルフィルムは、単層、積層どちらのフィルムにも適用できるが、表面平坦性等の点からは、本発明のポリエステルフィルムを少なくとも一層配置してなる積層フィルムとすることが好ましい。積層ポリエステルフィルムとした際の具体的な構成としては次の組み合わせが望ましい。
・B/A/B・B/A/C・B/Aここで、A ;基層部ポリエステルフィルムB、C;積層部ポリエステルフィルムB/Aは基層部のポリエステルフィルムAの片面に、B/A/Bは、基層部のポリエステルフィルムAの両面にポリエステルBが積層されていることを示す。
【0033】また、A〜Cは、上記で述べたポリエステルおよび球状シリカ粒子を含んでいてもよいが、少なくともA層に前述の回収ポリエステルを利用することが可能であり、また該回収ポリエステルとしては、末端カルボニル基が30〜50当量/トン、さらには、30〜40当量/トンであることが好ましい。
【0034】ここで、基層部のポリエステルフィルムAは実質的に粒子を含まないポリエステルフィルムであってもよいし、粒子を含んでいても良い。粒子種としては特に制限されるものでなく、例えば、無機粒子として炭酸カルシウム、シリカ、カオリン、アルミナ、硫酸バリウム、酸化チタンなどポリエステルに不要な微細粒子でも良いし、また、架橋ポリスチレンなどの有機粒子が含まれていても良い。
【0035】また、積層部のポリエステルフィルムBおよびCは、表面を形成するものであり、本発明の効果を実現するためには、少なくとも片面の積層部ポリエステルフィルムについて本発明の粒子を含有したポリエステルフィルムを積層することが好ましい。両面について積層する場合には、反対面については、本発明の粒子を含有したポリエステルフィルムに限定されるものではなく、実質的に粒子を含まないものであっても良いし、本発明外の粒子を含有するものであっても良い。さらに、磁性剤との接着性の改良、帯電防止などのために、帯電防止剤などの塗布層を設けても良い。
【0036】また、基層部のポリエステルフィルムAに対する本発明の球状シリカ粒子を含有する積層部のポリエステルフィルムの厚さ比率は40%以下であることが望ましく、また、該球状シリカ粒子の体積平均径に対し0.2倍から5倍の積層厚みとする場合により効果的である。
【0037】次に本発明のポリエステルフィルムの製造方法について説明する。まず、本発明の球状シリカ粒子および炭酸カルシウム粒子を所定のポリエステルに含有せしめる方法としては、重合前、重合中、重合後のいずれに添加してもよいが、ポリエステルのジオール成分であるエチレングリコールに、スラリーとして混合、分散せしめて添加する方法が本発明における体積平均径、相対標準偏差を得るのに有効である。また、粒子の含有量を調節する方法としては、高濃度、好ましくは粒子含有量が1.0〜5.0重量%のマスターペレットを製膜時に稀釈する方法が本発明におけるの相対標準偏差、体積平均ならびに望ましい範囲の表面突起の高さ分布を得るのに有効である。
【0038】また、エチレングリコールのスラリーを140〜200℃、特に180〜200℃の温度で30分〜5時間、特に1〜3時間熱処理する方法は、本発明における相対標準偏差ならびに削れ指数Kの望ましい範囲を得るのに有効である。
【0039】なお、これ以外の方法、例えば、粉末状、もしくはスラリー状態で、溶融押出し機等を用いて溶融状態にあるポリエステル中に練り込んでもよい。
【0040】かくして、所定量の球状シリカ粒子、炭酸カルシウム粒子を含有するペレットを十分乾燥したのち、公知の溶融押出機に供給し、270〜330℃でスリット状のダイからシート状に押出し、キャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸フィルムを作る。この時、高精度2段瀘過フイルターをポリマ流路に設置することが、フィルムにしたときの粗大突起を減少させるうえで有効である。ここでいう高精度2段瀘過フイルターとは、1段目を95%カットオフ粒径が4〜10μm、2段目を95%カットオフ粒径が1.5〜5μmのフイルターを直列にならべたものであり、95%カットオフ粒径が1段目>2段目としたものである。
【0041】ここで、前記積層ポリエステルフィルムにおいては、上記基層部のポリエステルAの少なくとも片面に積層部のポリエステルB、Cの少なくとも一種を共押出により積層せしめて未延伸フィルムを作る。
【0042】本発明における積層フィルムとは、該ポリエステルA、BおよびCをそれぞれ異なる押出装置で押出し、口金から積層シートを吐出する前にこれらを共押し出しにて積層することにより得ることができる。この積層は、シート状に成形、吐出するための口金内(例えばマニホールド)で行っても良いが、前述のごとく積層厚みが薄いことから、口金に導入する前のポリマー配管内で行うことが好ましい。特に、ポリマ−管内の積層部を、矩形に形成しておくと、幅方向に均一に積層できるのでとくに好ましい。ポリマー管内矩形積層部で積層された溶融ポリマーは、口金内マニホルドでシート幅方向に所定幅まで拡幅され、口金からシート状の未延伸フィルムが得られる。
【0043】したがって、たとえ二軸配向後の積層ポリエステルフィルムが極薄であっても、ポリマ−管内矩形積層部では、積層部ポリマーをかなりの厚さで積層することになるので、容易にかつ精度良く積層できる。2または3台の溶融押出機、2または3または5層用の合流ブロックあるいは口金を用いることにより、B/A/B、B/A/C、B/A、B/A/B/A/B、B/A/C/A/Bの積層シ−トを得ることができる。合流ブロックを用いる場合は積層部分を前述のごとく矩形のものしておくことが本発明の積層ポリエステルフィルムを安定して、幅方向に斑なく工業的に生産するのに有効である。
【0044】また、上記ポリエステルB、Cの製造においては二軸式押出機を用いて粒子のスラリーと無粒子のポリエステルとを混練しながら溶融させ、該押出機に配したベント孔より真空下でスラリー中の溶媒を留去せしめながら分散させて本発明の粒子を含有するポリエステルを製造せしめてもよい。
【0045】次にこの未延伸フィルムを二軸延伸し、二軸配向せしめる。延伸方法としては、逐次二軸延伸法または同時二軸延伸法を用いることができる。ただし、最初に長手方向、次に幅方向の延伸を行なう逐次二軸延伸法を用い、長手方向の延伸を、2段階、特に3段階以上に分けて、(ポリマのガラス転移点+20℃)〜(ポリマのガラス転移点+60℃)の範囲で、3〜4.5倍に延伸後、幅方向に延伸温度100〜160℃、延伸倍率3〜5倍に延伸する。次にこの延伸フィルムを熱処理する。この場合の熱処理条件としては、150〜230℃、好ましくは180〜210℃の範囲で0.5〜60秒間が好適である。この熱処理工程において走行方向、幅方向ともに、弛緩、微延伸、定長下のいずれかの状態で行うことができる。
【0046】本発明における特性値は、次の測定方法、評価基準による。にまる(1)粒子含有量試料をメタノールで十分洗浄し、表面付着物を取り除き、水洗して乾燥した300gのサンプルにo−クロロフェノール2.7Kgを加えて撹拌しつつ100℃まで昇温させ、昇温後さらに1時間そのまま放置してポリエステル部分を溶解させる。ただし、高度に、結晶化している場合などでポリエステル部分が溶解しない場合は、一度溶解させて急冷した後に前記の溶解操作を行なう。ついで、ポリエステル中に含有されているゴミなどの粗大不溶物をG−1ガラスフィルターでろ別し、除去し、このロ上物の重量を試料重量から差し引く。
【0047】日立製作所分離用超遠心機40p型にローターRP30を装備し、セル1個当りに前記ガラスフィルターろ別後の溶液30ccを注入後、ローターを4500rpmにて回転させ、回転異常のないことを確認後、ローター中を真空にし、30000rpmに回転数を上げ、この回転数にて粒子の遠心分離を行なう。分離の完了はほぼ40分後であるが、この確認は必要あれば分離後の液の375mμにおける光線透過率が分離前のそれに比し、高い値の一定値になることで行なう。分離後、上澄液を傾斜法で除去し分離粒子を得る。
【0048】分離粒子には分離が不十分なことに起因するポリエステル分の混入があり得るので、採取した該粒子に常温のo−クロロフェノールを加え、ほぼ均一懸濁後、再び超遠心分離機処理を行なう。この操作は後述の粒子を乾燥後該粒子を走差型差動熱量分析を行なって、ポリマに相当する融解ピークが検出できなくなるまで繰返す必要がある。最後に、このようにして得た分離粒子Aを120℃、16時間真空乾燥して秤量する。
【0049】なお、前記操作で得られた分離粒子Aは球状シリカ粒子と炭酸カルシウム粒子の両者を含んでいる。このため球状シリカ粒子量と炭酸カルシウム粒子量を別個に求める必要があり、まず、前記分離粒子について金属分の定量分析を行ない、Siの含有量およびSi以外の金属含有量を求めておく。次いで、該分離粒子を1Nの硝酸液中で6時間以上撹拌すると炭酸カルシウム粒子だけが溶解する。残った粒子を遠心分離して得られた分離粒子Bを乾燥秤量し、球状シリカ粒子の含有量とする。 また、最初の分離粒子Aの重量から分離粒子Bの重量を引いて炭酸カルシウム粒子の含有量とする。この際、分離粒子の金属分を定量し上記の操作を繰り返すことによって精度を上げることができる。
【0050】(2)球状シリカ粒子の粒径比フィルムからポリエステルをプラズマ低温灰化処理法で除去し粒子を露出させる。処理条件はポリエステルは灰化されるが粒子はダメージを受けない条件を選択する。これを走査型電子顕微鏡(エリオニクス社製ESM3200)で観察し、粒子の画像をイメージアナライザー(カールツァイス社製IBAS2000)で処理する。
【0051】この測定において下式に示した個々の粒子の長・短径比を求め、これらの値から粒径比「長径/短径の平均値」を算出する。ただし、個々粒子の粒径比が1.3以下のみを球状シリカとしてカウントし数値処理した。
個々の粒子の長・短径比=D1 /D2ここでD1 は、長径(最大直径)、D2 は、短径(最短直径)を示す。
粒径比=Σ(D1i/D2i)/ND1i、D2iは個々の粒子それぞれの長径(最大直径)、短径(最短直径)、Nはカウントされた粒子数である。
【0052】(3)球状シリカ粒子の相対標準偏差上記(2)の測定においてカウントされた粒子についてそれぞれの面積円相当径を求め、観察箇所を変えて粒子数5,000 個以上で次の数値処理を

【0053】(4)球状シリカ粒子の体積平均径上記(3)の測定においてカウントされた粒子について下式より体積平均径Vを求める。
V=(ΣDi 3 /N)1/3ここで、Di は粒子の面積円相当径、Nはカウントした粒子数である。
【0054】(5)炭酸カルシウム粒子の体積平均径上記(1)にておいて分離粒子Aを水酸化ナトリウムの20%水溶液中で6時間以上還流加熱すると球状シリカ粒子だけが溶解する。残った粒子を遠心分離して得られた炭酸カルシウム粒子をメタノールに分散させ、遠心沈降式粒度分布測定機(堀場製作所製 CAPA500)で測定して求めたストークス径の累積分布曲線における中央累積値(50体積%)を体積平均径とした。
【0055】(6)削れ指数K厚み15μmのフィルムを西村製作所製シェアカッターにてにて50m/分のスリット速度で1/2インチにスリットし、次いで1/2インチにスリット後のフィルム試料1mを50ccの純水を入れた容器中にフィルム試料の片側の切断面のみが浸積するように設置、超音波処理を行なった後、該フィルム試料を取り除き浸積液をパーティクルカウンター(HIAC/ROYCO;CL−5)で測定した時の3〜20μmの大きさの粒子個数を削れ指数Kとした。
【0056】(7)厚さ方向の屈折率nzナトリウムD線(波長589nm)を光源としてアッベ屈折率計を用いて、二軸配向フィルムの厚さ方向の屈折率nzとする。マウント液にはヨウ化メチレンを用い、25℃、65%RHにて測定した。
【0057】(8)面配向指数FおよびΔNナトリウムD線(波長589nm)を光源としてアツベ屈折率計を用いて、二軸配向フィルムの厚さ方向の屈折率nzおよびフィルム長手方向の屈折率NMD、フィルム巾方向の屈折率NTDからΔN=(NMD−NTD)×1000、F=(NMD+NTD)/2−nzより求めた。マウント液にはヨウ化メチレンを用い、25℃、65%RHにて測定した。
【0058】(9)フィルム表面の突起数および三次元表面粗さ(SRa)
小坂研究所の非接触表面粗さ計HIPOSS(型式ET−30HK)および三次元粗さ解析装置(型式SPA−11)を用いて三次元粗さを測定した。条件は下記の通りであり、20回の測定の平均値をもって値とした。
・縦倍率 :2万倍・横倍率 :500倍・カットオフ :0.08mm・送りピッチ :0.5μm・測定長 :500μm・測定面積 :0.0194mm2・測定速度 :100μm/秒・HYST :±6.25nm・COUNT MODE:SIMPLE・Z基準 :UPPER突起高さは、切断面による切り口の面積率が70%になる切断面を基準とし高さを算出した。上記条件で測定した高さ200〜400nmおよび400nm以上の突起の数を、それぞれの個/0.1mm2 に換算した。SRaは三次元表面粗さ(中心面平均粗さ)である。
【0059】(10)中心線平均表面粗さ(Ra)
JIS−B−0601に従い小坂研究所製触針型表面粗さ計BE−3Eを用い、カットオフ0.25mm,測定長4mmで中心線平均表面粗さ(Ra)を測定した。
【0060】(11)画質、耐スクラッチ性、使用耐久性フィルムに下記組成の磁性塗料をグラビヤロールにより塗布し、磁気配向させ、乾燥させる。さらに、小型カレンダー装置(スチロール・ナイロンロール、5段)で温度70℃、線圧200kg/cmでカレンダー処理後、70℃で48時間キュアリングする。この原反を1/2インチにスリットし、パンケーキを作成した。このパンケーキをVTRカセットに組み込み、VTRカセットテープとした。
(磁性塗料の組成)
・Co含有酸化鉄(BET値50m2 /g) :100重量部・エスレックA(積水化学性塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体)
:10重量部・ノッポラン2304(日本ウレタン性ポリウレタンエラストマ)
:10重量部・コトネートL(日本ウレタン性ポリイソシアネート)
:5重量部・レシチン :1重量部・メチリエチルケトン :75重量部・メチルイソブチルケトン :75重量部・トルエン :75重量部・カーボンブラック :2重量部・ラウリン酸 :1.5重量部このテープを家庭用VTRを用いてシバソク製のテレビ試験波形発生器(TG7/U706)により100%クロマ信号を記録し、その再生信号からシバソク製カラーノイズ測定機(925D/1)でクロマS/Nを測定し画質を判定した。
【0061】さらに、このVTRカセットを家庭用VTRに組み込み、繰り返し走行(再生/高速巻き戻し)を100回繰り返し、同様にその再生信号からシバソク製カラーノイズ測定機(925D/1)でクロマS/Nを測定し画質を判定した。さらに繰り返し走行実施後のVTRカセットガイドピンへの白粉削れ、フィルム削れ量により耐スクラッチ性を判定した。これらの判定基準は下記の通りであり、ランク4以上であれば、実用上問題のないレベルである。
判定ランク S/N(画質) フィルム削れ(耐スクラッチ)
5 優良、画質極めて良好 ガイドピンの汚れほとんどなし 4 良好、ほとんど問題なし 僅かに白粉汚れがあり 3 画質の乱れがあり 削れ物汚れあり 2 画質の乱れが大きい 削れ物汚れ多い 1 画質不良 削れ物汚れ、白粉付着大
【0062】(12)スリット性の評価厚さ14.5μmのポリエステルフィルムの片面に下記組成の磁性塗布液を、乾燥後膜厚が3μmとなるようにコーティングする。


コーティング後、直流磁場中で配向処理し、乾燥した後、カレンダー加工を施す。このシートをシェアーカッターで1/2インチ幅にスリットしてビデオテープとする。このシェアーカッターによるスリット箇所を目視観察して、ヒゲや粉の発生具合の程度を次の5等級に分けて評価する。


(注)なお、現在市販されているビデオテープ用二軸配向ポリエステルフィルムのスリット性のレベルは、大部分、CまたはDである。
【0063】(13)スリット時のロール巻き姿1500mm幅、18000m長さの原反ロールフィルムを丸刃式スリッターにて500m/分のスリット速度で500mm幅にスリットし15000m巻きのロールを得た。このロールの端面を目視観察して、凹凸の度合いで次の3等級に分けて評価する。ここで、端面が鏡面に近い平滑なものが最も良くランクAとした。
判定ランク 端面の状態 A 鏡面に近く平滑 B やや凹凸が見られる C 凹凸の度合いが大きく、端面が乱れている。
【0064】
【実施例】本発明を実施例に基づいて説明する。
ポリエステルの調製参考例テレフタル酸100重量部とエチレングリコール43重量部を混練しスラリーを調整した。反応器に245℃で貯留したテレフタル酸50重量部とエチレングリコール21.5重量部の反応物中に該スラリーを一定速度で連続的に添加し、常圧下245℃でエステル交換反応を行い生成する水を精留塔から連続的に系外に留出させた。該スラリーの供給時間は3時間30分で終了しエステル交換反応は4時間で終了した。得られた反応物からテレフタル酸100重量部に相当するエステル化反応物を重合装置に移しリン酸0.045重量部、三酸化アンチモン0.023重量部、および体積平均粒径0.16μm、粒径比1.1、相対標準偏差0.71の水ガラス法で合成した球状シリカ粒子2.4重量部をエチレングリコールスラリーとして添加し、常法に従って重縮合反応した。この際、球状シリカ粒子を含有するエチレングリコールスラリーをエチレングリコールの沸点下で10分間加熱処理した。こうして得られたポリマーは固有粘度0.613を有し、球状シリカ粒子2重量部を含有していた。また、該球状シリカ粒子のエチレングリコールスラリー中での屈折率は、1.441であった。(ポリエステルA)
また、上記ポリエステルAと同様の方法で球状シリカ粒子の代わりに体積平均径0.8μmの炭酸カルシウム粒子を添加して炭酸カルシウム粒子含有のポリマーを得た。得られたポリマーの固有粘度は0.608であった。(ポリエステルB)
また、上記ポリエステルAと同様の方法で球状シリカ粒子を添加しないで無粒子のポリマーを得た。得られたポリマーの固有粘度は0.619であった。(ポリエステルC)
実施例1このようにして得られたポリエステルA、ポリエステルB、ポリエステルCを最終的なポリエステルフィルム中の球状シリカ粒子含有量が0.60重量%、炭酸カルシウム粒子含有量が0.08重量%となるように所定量混合したペレットDを180℃で3時間減圧乾燥(3Torr)し、積層部原料とした。さらに、別に基層部原料として固有粘度0.63のポリエチレンテレフタレート原料を準備し、積層部原料と同様に180℃で3時間減圧(3Torr)乾燥した。
【0065】基層部を押出機1に供給し310℃、さらに積層部原料を押出機2に供給し280℃で溶融した。これらのポリマーを矩形積層部を備えた合流ブロックで口金に入る前に合流積層し静電印加キャスト法を用いて表面温度45℃のキャスティング・ドラムに巻き付けて冷却固化し、基層部ポリエステルAの両面にポリエステルBを積層した3層構造の未延伸フィルムを作った。この時、それぞれの押出機の吐出量を調節し、総厚さおよび積層厚さを調節した。
【0066】この未延伸フィルムを図1のロール温度をロール1およびロール2を75℃、ロール3およびロール4を115℃、ロール5を126℃、ロール6を126℃、ロール7を118℃とし、ロール5/ロール6間で1.6倍、ロール6/ロール7間で1.3倍、ロール7/ロール8間で2.1倍となるように各ロールの周速差を調整しタテ方向に延伸した。
【0067】この一軸フィルムをステンタ内で120℃の熱風下にヨコ方向に4.6倍延伸し、さらに1.03倍の微延伸下で、205℃の熱風にて5秒間熱処理し、厚さ15μmの二軸配向フィルムを得た。この時の二軸配向フィルムの最終の走行速度は160m/分であった。
【0068】得られた二軸配向フィルムの特性の測定・評価結果を表1、表2に示した。表1、表2においてΔNは−42、面配向指数Fは0.1685、厚み方向の屈折率nzは1.49、1、TD方向(フィルムの走行方向に垂直な方向)のF−5値は14.1kg/mm2 であり、また本発明で規定した削れ指数Kは33、平均表面粗さRaは、22nmであり、いずれも本発明の範囲内にあった。また、表1、表2の結果から明らかなようにS/N比(画質)特性、フィルム削れ、スリット性、スリット時のロール巻き姿のいずれにも優れていることがわかる。
【0069】実施例2〜3球状シリカ粒子のポリエステルフィルム中の含有量を0.80重量%(実施例2)、1.2重量%(実施例3)とした以外は、実施例1と同様の方法にて二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向フィルムの特性の測定・評価結果を表1、表2に示した。表1、表2の結果から明らかなように実施例2〜3の各フィルムは、S/N比(画質)特性、フィルム削れ、スリット性、スリット時のロール巻き姿のいずれにも優れていることがわかる。
【0070】実施例4〜5炭酸カルシウム粒子のポリエステルフィルム中の含有量を0.15重量%(実施例4)、0.30重量%(実施例5)とした以外は、実施例1と同様の方法にて二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向フィルムの特性の測定・評価結果を表1、表2に示した。表1、表2の結果から明らかなように実施例4〜5の各フィルムは、S/N比(画質)特性、フィルム削れ、スリット性、スリット時のロール巻き姿のいずれにも優れていることがわかる。
【0071】実施例6体積平均粒径1.1μmの炭酸カルシウム粒子とした以外は、実施例1と同様の方法にて二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向フィルムの特性の測定・評価結果を表1、表2に示した。表1、表2の結果から明らかなように実施例6のフィルムは、S/N比(画質)特性、フィルム削れ、スリット性、スリット時のロール巻き姿のいずれにも優れていることがわかる。
【0072】実施例7体積平均粒径0.4μmの炭酸カルシウム粒子を使用しポリエステルフィルム中の含有量を0.60重量%とした以外は、実施例1と同様の方法にて二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向フィルムの特性の測定・評価結果を表1、表2に示した。表1、表2の結果から明らかなように実施例7のフィルムは、S/N比(画質)特性、フィルム削れ、スリット性、スリット時のロール巻き姿のいずれにも優れていることがわかる。
【0073】実施例8体積平均粒径0.55μm、粒径比1.1、相対標準偏差0.78の水ガラス法で合成した球状シリカ粒子を用い、ポリエステルフィルム中の含有量を0.40重量%とした以外は、実施例1と同様の方法にて二軸配向ポリエステルフィルムを得た。また、該球状シリカ粒子のエチレングリコールスラリー中での屈折率は、1.436であった。得られた二軸配向フィルムの特性の測定・評価結果を表1、表2に示した。表1、表2の結果から明らかなように実施例8のフィルムは、S/N比(画質)特性、フィルム削れ、スリット性、スリット時のロール巻き姿のいずれにも優れていることがわかる。
【0074】比較例1体積平均粒径0.16μm、粒径比1.1、相対標準偏差0.17のアルコキシド法で合成した球状シリカ粒子を用いる以外は、実施例1と同様の方法にて二軸配向ポリエステルフィルムを得た。また、該球状シリカ粒子のエチレングリコールスラリー中での屈折率は、1.422であった。得られた二軸配向フィルムの特性の測定・評価結果を表3、表4に示した。表3、表4の結果から明らかなように比較例1のフィルムは、本発明で規定したスリット性に劣っていることがわかる。
【0075】比較例2体積平均粒径0.55μm、粒径比1.1、相対標準偏差0.19のアルコキシド法で合成した球状シリカ粒子を用い、ポリエステルフィルム中の含有量を0.40重量%とした以外は、実施例1と同様の方法にて二軸配向ポリエステルフィルムを得た。また、該球状シリカ粒子のエチレングリコールスラリー中での屈折率は、1.422であった。得られた二軸配向フィルムの特性の測定・評価結果を表3、表4に示した。表3、表4の結果から明らかなように比較例2のフィルムは、本発明で規定したスリット性に劣っていることがわかる。
【0076】比較例3体積平均粒径2.2μm、粒径比1.05、相対標準偏差0.69の水ガラス法で合成した球状シリカ粒子を用いる以外は、実施例1と同様の方法にて二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向フィルムの特性の測定・評価結果を表3、表4に示した。表3、表4の結果から明らかなように比較例3のフィルムは、電磁変換特性(S/N比)、フィルム削れ(耐スクラッチ)、スリット性のいずれも劣っていることがわかる。
【0077】比較例4体積平均粒径0.09μm、粒径比1.1、相対標準偏差0.78の水ガラス法で合成した球状シリカ粒子を用い、ポリエステルフィルム中の含有量を0.80重量%とする以外は、実施例1と同様の方法にて二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0078】得られた二軸配向フィルムの特性の測定・評価結果を表3、表4に示した。表3、表4の結果から明らかなように比較例4のフィルムは、フィルム削れ(耐スクラッチ)、スリット時のロール巻き姿のいずれも劣っていることがわかる。
【0079】比較例5体積平均粒径0.55μm、粒径比1.1、相対標準偏差0.58の水ガラス法で合成した球状シリカ粒子を用い、ポリエステルフィルム中の含有量を5.2重量%とする以外は、実施例1と同様の方法にて二軸配向ポリエステルフィルムを得た。ただし、参考例においての、球状シリカ粒子添加量を6.0重量部とした。得られた二軸配向フィルムの特性の測定・評価結果を表3、表4に示した。表3、表4の結果から明らかなように比較例5のフィルムは、電磁変換特性(S/N比)、フィルム削れ(耐スクラッチ)、スリット性のいずれも劣っていることがわかる。
【0080】比較例6体積平均粒径0.55μm、粒径比1.1、相対標準偏差0.58の水ガラス法で合成した球状シリカ粒子を用い、ポリエステルフィルム中の含有量を0.004重量%とする以外は、実施例1と同様の方法にて二軸配向ポリエステルフィルムを得た。 得られた二軸配向フィルムの特性の測定・評価結果を表3、表4に示した。表3、表4の結果から明らかなように比較例6のフィルムは、フィルム削れ(耐スクラッチ)、スリット時のロール巻き姿のいずれも劣っていることがわかる。
【0081】比較例7球状シリカ粒子のポリエステルフィルム中の含有量を0.8重量%とし、炭酸カルシウム粒子を含まない以外は、実施例1と同様の方法にて二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向フィルムの特性の測定・評価結果を表3、表4に示した。表3、表4の結果から明らかなように比較例7のフィルムは、スリット時のロール巻き姿に劣っていることがわかる。
【0082】比較例8炭酸カルシウム粒子のポリエステルフィルム中の含有量を0.9重量%とし球状シリカ粒子を含まない以外は、実施例1と同様の方法にて二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向フィルムの特性の測定・評価結果を表3、表4に示した。表3、表4の結果から明らかなように比較例8のフィルムは、フィルム削れ(耐スクラッチ)に劣っていることがわかる。
【0083】比較例9炭酸カルシウムの代わりに体積平均粒径0.74μmの二酸化チタン用い、ポリエステルフィルム中の含有量を0.15重量%とする以外は、比較例1と同様の方法にて二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向フィルムの特性の測定・評価結果を表3、表4に示した。表3、表4の結果から明らかなように比較例5のフィルムは、電磁変換特性(S/N比)に劣っていることがわかる。
【0084】
【表1】


【表2】


【表3】


【表4】


【0085】
【発明の効果】本発明のポリエステルフィルムは、スクラッチ性、スリット性がともに優れたものであり、高速で走行してもフィルムに傷がつきにくいため、各用途でのフィルム加工速度の増大に対応できるものである。また、ビデオテープとした時、繰り返し使用してもS/N、すなわち、画質が低下しにくいフィルムが得られたものである。本発明の磁気記録媒体用ポリエステルフィルムの用途は特に限定されないが、加工工程でのフィルム表面の傷が製品性能上特に問題となるバックコートのないハイグレードタイプのビデオテープ用ベースフィルム、さらにビデオソフトの普及にともなうパンケーキ用ベースフィルムとして特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】タテ延伸装置の概略を示す断面図である。
【符号の説明】
1:硬質クロムメッキ金属ロール
2〜6:シリコーンゴム被覆の金属ロール
7:鏡面仕上げのセラミックロール
8および9:硬質クロムメッキ金属ロール
11および14:ゴムロール
12および13:シリコーンゴム被覆の金属ロール
10:フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】ポリエステル中に体積平均粒径が0.1〜2.0μmであり、かつ下記(1)式で定義される相対標準偏差が0.5を越える球状シリカ粒子を0.005〜5.0重量%含有し、かつ体積平均粒径が0.1〜2.0μmの炭酸カルシウム粒子を0.005〜5.0重量%含有することを特徴とする磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
【数1】


【請求項2】削れ指数Kが60以下であることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
【請求項3】請求項1または2のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムを少なくとも一層配置してなる磁気記録媒体用積層ポリエステルフィルム。

【図1】
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【公開番号】特開平7−113014
【公開日】平成7年(1995)5月2日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−260656
【出願日】平成5年(1993)10月19日
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)