説明

磁気記録媒体製造方法および磁気記録媒体

【課題】所定パターンの記録磁性部を記録層内に有し且つ記録面の平坦性の高い磁気記録媒体を製造するのに適した方法、および、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有し且つ高い記録面平坦性を実現するのに適した磁気記録媒体を、提供すること。
【解決手段】本発明に係る磁気記録媒体製造方法は、例えば、磁性膜12’上に、当該磁性膜12’を部分的に露出させるための開口部21aを有するマスク21を設ける工程(a)と、拡散金属源材料22を開口部21a内に供給する工程(b)と、加熱により、拡散金属源材料22から磁性膜12’に対して金属を拡散させて非磁性部12Bを形成する工程(c)とを含む。本発明に係る磁気記録媒体Xは、連続膜である記録層12を備え、当該記録層12は、記録磁性部12Aと、当該記録磁性部12Aに金属が拡散したのと同一の組成を有する非磁性部12Bとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有する磁気記録媒体を製造するための方法、および、そのような磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクなどの記憶装置を構成するための記録媒体として、磁気ディスク(磁気記録媒体)が知られている。磁気ディスクは、ディスク基板と所定の磁性構造を有する記録層とを含む積層構造を有する。コンピュータシステムにおける情報処理量の増大に伴い、磁気ディスクについては高記録密度化の要求が高まっている。
【0003】
磁気ディスクへの情報記録に際しては、磁気ディスクの記録面に対して記録用の磁気ヘッドが近接配置(浮上配置)され、当該磁気ヘッドにより、記録層に対し、その保磁力より強い記録磁界が印加される。磁気ディスクに対して磁気ヘッドを相対移動させつつ磁気ヘッドからの記録磁界の向きを順次反転させることにより、記録層の情報トラックにて、磁化方向が順次反転する複数の記録マーク(磁区)がディスク周方向に連なって形成される。このとき、記録磁界方向を反転させるタイミングが制御されることにより、各々に所定の長さで記録マークが形成される。このようにして、記録層において、磁化方向の変化として所定の信号ないし情報が記録される。
【0004】
また、磁気ディスクの技術分野においては、高記録密度化を図るのに好ましい媒体として、いわゆるディスクリートトラックメディア(DTM)やパターンドメディア(PM)など、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有する磁気ディスクが知られている。このような磁気ディスクについては、例えば下記の特許文献1〜3に記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−71467号公報
【特許文献2】特開2005−166115号公報
【特許文献3】特開2005−293730号公報
【0006】
図14および図15は、DTMである従来の磁気ディスク40を表す。図14は、磁気ディスク40の平面図であり、図15は、磁気ディスク40のディスク径方向に沿った部分拡大断面図である。
【0007】
磁気ディスク40は、ディスク基板41、記録層42、および保護層43(図14では図示略)からなる積層構造を有する。記録層42は、複数の記録磁性部42Aと複数の非磁性部42Bとからなる。記録磁性部42Aは、図14にて一部を模式的に太線で示すように磁気ディスク40の回転軸心A’を共通中心としてディスク基板41上にて同心円状に配置され、情報トラックを構成する。非磁性部42Bは、記録磁性部42A間に介在する。保護層43の露出面は磁気ディスク40の記録面44(磁気ディスク40において情報記録が実行される側の面)をなす。
【0008】
このような磁気ディスク40への情報記録時には、磁気ディスク40の記録面44に対して記録用の磁気ヘッドが浮上配置され、当該磁気ヘッドによる記録磁界の印加によって、記録層42の一の記録磁性部42Aにて、磁化方向が順次反転する複数の記録マーク(磁区)がディスク周方向に連なって形成される。
【0009】
図16および図17は、従来の磁気ディスク40の製造方法を表す。磁気ディスク40の製造においては、まず、図16(a)に示すように、ディスク基板41上に磁性膜42A’が形成される。次に、図16(b)に示すように、磁性膜42A’上にフォトレジスト膜51が形成される。次に、図16(c)に示すように、リソグラフィ法により、フォトレジスト膜51からレジストパターン52が形成される。レジストパターン52は、上述の非磁性部42Bのパターン形状に対応する開口部52aを有する。この後、図16(d)に示すように、レジストパターン52がマスクとして利用されて、磁性膜42A’に対して所定のエッチングが施され、上述の記録磁性部42Aがパターン形成される。
【0010】
磁気ディスク40の製造においては、次に、図17(a)に示すようにレジストパターン52が除去される。次に、図17(b)に示すように非磁性材料42B’が堆積される。具体的には、スパッタリング法により、記録磁性部42A間の隙間および記録磁性部42A上に非磁性材料42B’が堆積される。次に、図17(c)に示すように、堆積された非磁性材料42B’において記録磁性部42A間の隙間にない過剰部分を、例えば機械的研磨により除去する。本工程により、非磁性部42B’が形成され、記録層42が形成されることとなる。この後、図17(d)に示すように、記録層42上に保護層43が形成される。以上のようにして、所定パターンの記録磁性部42Aを記録層42内に有する磁気ディスク40が製造される。
【0011】
本方法によると、記録面44において充分な平坦性を得ることが困難である。本方法では、図16(d)を参照して上述したように、磁性膜42A’に対するエッチングにより記録磁性部42Aがパターン形成された後、図17(b)に示すように、記録磁性部42A間の隙間を充填すべく非磁性材料42B’が堆積され、そして、図17(c)に示すように、非磁性材料42B’における過剰部分が機械的加工手法により除去されて記録層42が形成される。このよう過程を経て形成される非連続膜である記録層42の図中上面については、充分な平坦性を得ることが困難であり、従って、記録層42の表面平坦性が反映される記録面44において充分な平坦性を得ることは困難なのである。
【0012】
一般に、磁気ディスクないしその記録層における面内記録密度が大きいほど、情報記録再生時に磁気ディスクに対して浮上配置される磁気ヘッドについては、より小さな浮上量(磁気ヘッドと記録面の間の距離)が要求される傾向にあるところ、小さな浮上量にて磁気ヘッドが適切に動作するためには、磁気ディスクの記録面は充分に平坦でなければならない。要求される浮上量が小さいほど(即ち、磁気ディスクの面内記録密度が大きいほど)、記録面に求められる平坦性は高くなる傾向にある。
【0013】
しかしながら、上述の従来の方法によると、記録層42ないし記録面44において充分な平坦性を得ることは困難である。このような方法により得られる磁気ディスク40は、磁気ヘッドの低浮上量化を図るうえで好ましくなく、従って、高記録密度化を図るうえで好ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、以上のような事情の下で考え出されたものであり、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有し且つ記録面の平坦性の高い磁気記録媒体を製造するのに適した方法、および、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有し且つ高い記録面平坦性を実現するのに適した磁気記録媒体を、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の側面によると磁気記録媒体製造方法が提供される。この方法は、磁性膜に対して金属を拡散させて非磁性部を形成することにより、当該磁性膜から記録磁性部および非磁性部を有する記録層を形成する工程を含む。
【0016】
本方法においては、磁性膜の所定箇所に対する金属拡散により非磁性部を形成することによって、実質的に記録磁性部をパターン形成することができ、当該記録磁性部を含む記録層を形成することができる。また、本方法においては、そのような記録層を構成することとなる磁性膜を、スパッタリング法などのいわゆる薄膜形成技術により連続膜として形成することができる。薄膜形成技術により形成される連続膜においては、上述の従来の磁気ディスク40における記録層42のような非連続膜におけるよりも、小さな表面凹凸すなわち高い表面平坦性を、達成しやすい。したがって、本方法は、記録層の表面平坦性が反映される記録面において、充分な平坦性を得るのに適する。このように、本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体製造方法は、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有し且つ記録面の平坦性の高い磁気記録媒体を製造するのに、適するのである。記録面の平坦性の高い磁気記録媒体は、磁気ヘッドの低浮上量化を図るうえで好ましく、従って、高記録密度化を図るうえで好ましい。
【0017】
本発明の第2の側面によると磁気記録媒体製造方法が提供される。この方法は、磁性膜上に、当該磁性膜を部分的に露出させるための開口部を有するマスクを設ける工程と、拡散金属源材料を開口部内に供給する工程と、加熱により、拡散金属源材料から磁性膜に対して金属を拡散させて非磁性部を形成する工程とを含む。拡散金属源材料とは、いわゆる拡散金属それ自体、拡散金属を構成要素として含む化学種、またはこれらを含む溶液である。
【0018】
本方法は、本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体製造方法を実質的に含む。したがって、本方法も、本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体製造方法と同様に、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有し且つ記録面の平坦性の高い磁気記録媒体を製造するのに適する。
【0019】
本発明の第2の側面において、好ましくは、マスクは磁性膜上にてパターン形成されたレジストパターンである。このようなレジストパターンは、いわゆるリソグラフィ法により形成することができ、マスクとしての形状精度に優れる。
【0020】
本発明の第2の側面において、好ましくは、マスクは、磁性膜上に載置されたものである。このようなマスクは、再使用することができ、磁気記録媒体の量産化を図るうえで好ましい。
【0021】
本発明の第3の側面によると磁気記録媒体製造方法が提供される。この方法は、拡散金属源材料からなる膜を磁性膜上に形成する工程と、凸部を有するスタンパにおける当該凸部を膜に当接させる工程と、スタンパの凸部を介して膜を加熱することにより、膜における当該加熱箇所から磁性膜に対して金属を拡散させて非磁性部を形成する工程とを含む。
【0022】
本方法は、本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体製造方法を実質的に含む。したがって、本方法も、本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体製造方法と同様に、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有し且つ記録面の平坦性の高い磁気記録媒体を製造するのに適する。
【0023】
本発明の第4の側面によると磁気記録媒体製造方法が提供される。この方法は、拡散金属源材料からなる膜を磁性膜上に形成する工程と、凸部を有するスタンパにおける当該凸部を膜に当接させる工程と、スタンパの凸部を介して膜に電圧を印加することにより、膜における当該電圧印加箇所から磁性膜に対して金属を拡散させて非磁性部を形成する工程とを含む。
【0024】
本方法は、本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体製造方法を実質的に含む。したがって、本方法も、本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体製造方法と同様に、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有し且つ記録面の平坦性の高い磁気記録媒体を製造するのに適する。
【0025】
本発明の第5の側面によると磁気記録媒体製造方法が提供される。この方法は、拡散金属源材料からなる膜を磁性膜上に形成する工程と、開口部を有するマスクを介して膜に対してレーザ光またはX線を照射することにより、膜における当該照射箇所から磁性膜に対して金属を拡散させて非磁性部を形成する工程とを含む。
【0026】
本方法は、本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体製造方法を実質的に含む。したがって、本方法も、本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体製造方法と同様に、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有し且つ記録面の平坦性の高い磁気記録媒体を製造するのに適する。
【0027】
本発明の第2から第5の側面において、好ましくは、拡散金属源材料は、金属の単体、金属を含む合金、または、金属を含む金属錯体の溶液もしくは金属を含む有機金属化合物の溶液である。このような拡散金属源材料からは、磁性膜に対して金属が拡散しやすい。
【0028】
また、好ましくは、拡散金属源材料に含まれて磁性膜に対して拡散される金属は、Cu、In、またはAgである。Cu、In、およびAgは、磁性膜に対して拡散しやすく、且つ、当該膜の磁性を消滅ないし充分に減弱させて当該膜を実質的に非磁性化させるうえで好適である。
【0029】
本発明の第6の側面によると磁気記録媒体が提供される。この磁気記録媒体は、連続膜である記録層を備え、記録層は、記録磁性部と、当該記録磁性部に金属が拡散したのと同一の組成を有する非磁性部とを有する。
【0030】
本磁気記録媒体は、本発明の第1から第5の側面に係るいずれの磁気記録媒体製造方法によっても製造することができる。本磁気記録媒体の製造過程においては、本発明の第1の側面に関して上述した技術的利益を享受することが可能であり、従って、所定パターンの記録磁性部を記録層内に有する本磁気記録媒体は、高い記録面平坦性を実現するのに適している。このような本磁気記録媒体において、好ましくは、非磁性部に含まれる金属は、Cu、In、およびAgから選択される単体金属、または、Cu、In、もしくはAgを含む合金である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1および図2は、本発明に係る磁気ディスクXを表す。図1は、磁気ディスクXの平面図であり、図2は、図1の磁気ディスクXのディスク径方向に沿った部分拡大断面図である。
【0032】
磁気ディスクXは、ディスク基板11、記録層12、軟磁性層13、および保護層14(図1では図示略)を含む積層構造を有し、ディスクリートトラックメディアとして構成されたものである。
【0033】
ディスク基板11は、主に、磁気ディスクXの剛性を確保するための部位であり、例えば、アルミニウム合金、ガラス、または樹脂よりなる。
【0034】
記録層12は、図2に示すように、複数の記録磁性部12Aおよび複数の非磁性部12Bを有する。記録磁性部12Aは、図1にて一部を模式的に太線で示すように磁気ディスクXの回転軸心Aを共通中心として同心円状に配置され、例えば垂直磁気異方性を有し、情報トラックを構成する。記録磁性部12Aは、所定の磁性材料よりなる。記録磁性部12Aの構成材料としては、例えば、CoCrPt−SiO2、FePt、CoPd、SmCo、TbFeCoなどの垂直磁気異方性を有する材料や、CoCrPt、CoCrPtBなどの面内磁気異方性を有する材料を採用することができる。
【0035】
非磁性部12Bは、記録磁性部12A間に介在して実質的に磁性を有しない部位である。また、非磁性部12Bは、記録磁性部12Aに所定の金属が拡散したのと同一の組成を有する。当該金属としては、Cu、In、およびAgから選択される単体金属、または、Cu、In、もしくはAgを含む合金を、採用することができる。例えば、記録磁性部12Aの構成材料としてCoCrPt−SiO2を採用する場合には、非磁性部12Bの組成は、CoCrPtCu−SiO2、CoCrPtIn−SiO2、CoCrPtAg−SiO2などである。
【0036】
このような記録磁性部12Aおよび非磁性部12Bからなる記録層12は、連続膜である。また、記録層12の厚さは例えば5〜35nmである。
【0037】
軟磁性層13は、記録時等に稼働する磁気ヘッドからの磁束を再び当該磁気ヘッドに還流させる磁路を磁気ディスクX内に効率よく形成するためのものであり、高透磁率を有して大きな飽和磁化を有するとともに小さな保磁力を有する軟磁性材料よりなる。軟磁性層13を構成するための軟磁性材料としては、例えば、FeC、FeNi、FeCoB、FeCoSiC、およびFeCo−AlOなどのFeを主成分とした材料や、CoZrNb、CoZrTaなどのCoを主成分とした材料が挙げられる。軟磁性層13の厚さは例えば25〜200nmである。
【0038】
保護層14は、記録層12や軟磁性層13などを外界から物理的および化学的に保護するための部位であり、例えば、SiN、SiO2、またはダイアモンドライクカーボンよりなる。保護層14の露出面は磁気ディスクXの記録面15(磁気ディスクXにおいて情報記録が実行される側の面)をなす。
【0039】
以上のようなディスク基板11、記録層12、軟磁性層13、および保護層14を含む磁気ディスクXの積層構造中には、必要に応じて他の層が含まれてもよい。例えば、垂直磁気異方性を有する記録磁性部12Aを採用する場合には、軟磁性層13と記録層12の間には、所定の非磁性材料よりなるいわゆる中間層を設ける必要がある。このような中間層は、記録層12内の垂直磁気異方性の記録磁性部12Aと、磁性を有する軟磁性層13とが、交換結合してしまうのを防止するために設けられる。また、垂直磁気異方性を有し且つ結晶系の構造(例えばグラニュラ構造)を有する記録磁性部12Aを採用する場合には、非磁性材料よりなる中間層は、当該結晶系構造の所定の結晶軸(例えばc軸)を制御して記録磁性部12Aの磁化容易軸を垂直方向に配向せしめる機能をも担うことができるのが好ましい。
【0040】
このような磁気ディスクXの情報記録時には、磁気ディスクXの記録面15に対して記録用の磁気ヘッド(図示略)が浮上配置され、当該磁気ヘッドによる記録磁界の印加によって、記録層12の一の記録磁性部12Aにて、磁化方向が順次反転する複数の記録マーク(磁区)がディスク周方向に連なって形成される。このとき、情報記録進行中であって磁界が順次印加される記録磁性部12Aと、これの隣りの記録磁性部12Aとが、非磁性部12Bにより分断されているため、当該隣りの記録磁性部12Aの記録マークが消失ないし劣化するというクロスライト現象が抑制される。クロスライト現象が抑制される磁気ディスクは、トラックの狭ピッチ化ないし高記録密度化を図るうえで、好ましい。
【0041】
図3は、磁気ディスクXを製造するための、本発明に係る第1の磁気ディスク製造方法を表す。本方法においては、まず、図3(a)に示すように、ディスク基板11上に軟磁性層13、磁性膜12’、およびレジストパターン21を順次形成する。軟磁性層13の形成においては、例えばスパッタリング法により、ディスク基板11上に上述の軟磁性材料を成膜する。磁性膜12’は、例えば、全体にわたって垂直磁気異方性を有する垂直磁化膜である。磁性膜12’の形成においては、例えばスパッタリング法により、記録磁性部12Aに関して上述した構成材料を軟磁性層13上に成膜する。レジストパターン21は、上述の非磁性部12Bのパターン形状に対応する開口部21aを有する。レジストパターン21の形成においては、例えばスピンコーティング法により、磁性膜12’上にフォトレジスト膜を形成し、当該フォトレジスト膜に所定パターン(潜像)を露光形成し、当該フォトレジスト膜に現像処理を施す。このようにして形成されるレジストパターン21は、次工程で機能するマスクとしての形状精度に優れる。
【0042】
本方法においては、次に、図3(b)に示すように、レジストパターン21の開口部21aに拡散金属源材料22を供給する。拡散金属源材料22は、例えば、Cu、In、Agなどの単体金属、当該金属を含む合金、または、当該金属を含む金属錯体の溶液もしくは当該金属を含む有機金属化合物の溶液である。単体金属または合金としての拡散金属源材料22は、例えばスパッタリング法などの薄膜形成技術により、レジストパターン21の開口部21aに供給することができる。一方、金属錯体の溶液または有機金属化合物の溶液としての拡散金属源材料22は、当該溶液の塗布や当該溶液への浸漬などにより、レジストパターン21の開口部21aに供給することができる。
【0043】
本方法においては、次に、図3(c)に示すように、加熱処理を施して、拡散金属源材料22から磁性膜12’に対して金属(例えばCu、In、Ag)を拡散させる。加熱温度は例えば150〜450℃である。本工程では、熱エネルギが駆動力となって、拡散金属源材料22から磁性膜12’に対する金属拡散が進行する。当該金属拡散により、磁性膜12’において当初は所定の磁性を有していた箇所の磁性が消滅または充分に減弱し、非磁性部12Bがパターン形成され、そして事実上同時に、記録磁性部12Aがパターン形成される。このようにして、磁性膜12’から、記録磁性部12Aおよび非磁性部12Bを含む連続膜としての記録層12が形成される。
【0044】
本方法においては、次に、図3(d)に示すように、レジストパターン21、および、存在する場合には余剰の拡散金属源材料22を、記録層12上から除去する。除去手法としては、例えば、酸素プラズマを利用して行うアッシングを採用することができる。
【0045】
この後、図3(e)に示すように、記録層12上に保護層14を形成する。保護層14の形成においては、例えばスパッタリング法により、保護層14に関して上述した構成材料を記録層12上に成膜する。以上のようにして、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有する磁気ディスクXを製造することができる。
【0046】
本方法においては、図3(c)を参照して上述したように、磁性膜12’の所定箇所に対する金属拡散により非磁性部12Bを形成することによって、実質的に記録磁性部12Aをパターン形成することができ、当該記録磁性部12Aを含む記録層12を形成することができる。また、本方法においては、そのような記録層12を構成することとなる磁性膜12’を、図3(a)を参照して上述したように、スパッタリング法などのいわゆる薄膜形成技術により連続膜として形成することができる。薄膜形成技術により形成される連続膜においては、上述の従来の磁気ディスク40における記録層42のような非連続膜におけるよりも、小さな表面凹凸すなわち高い表面平坦性を、達成しやすい。したがって、本方法は、記録層12の表面平坦性が反映される記録面15において、充分な平坦性を得るのに適する。このように、本方法は、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有し且つ記録面15の平坦性の高い磁気ディスクXを製造するのに適する。記録面の平坦性の高い磁気ディスクは、磁気ヘッドの低浮上量化を図るうえで好ましく、従って、高記録密度化を図るうえで好ましい。
【0047】
図4は、磁気ディスクXを製造するための、本発明に係る第2の磁気ディスク製造方法を表す。本方法においては、まず、図4(a)に示すように、ディスク基板11上に軟磁性層13および磁性膜12’を順次形成したうえで、磁性膜12’上にマスク23を設ける。軟磁性層13および磁性膜12’の形成手法については、第1の磁気ディスク製造方法に関して上述したのと同様である。マスク23は、上述の非磁性部12Bのパターン形状に対応する開口部23aを有し、例えば金属よりなる。このようなマスク23は、例えば、所定の金属板材料に対して電子ビームリソグラフィ技術を利用して開口部を形成することによって、作製することができる。このようなマスク23は、再使用することができ、磁気ディスクXの量産化を図るうえで好ましい。
【0048】
本方法においては、次に、図4(b)に示すように、マスク23の開口部23aに拡散金属源材料22を供給する。拡散金属源材料22の種類および供給手法については、第1の磁気ディスク製造方法に関して上述したのと同様である。
【0049】
次に、図4(c)に示すように、加熱処理を施して、拡散金属源材料22から磁性膜12’に対して金属を拡散させる。具体的には、第1の磁気ディスク製造方法に関して図3(c)を参照して上述したのと同様である。本工程にて、磁性膜12’から、記録磁性部12Aおよび非磁性部12Bを含む連続膜としての記録層12が形成される。
【0050】
次に、図4(d)に示すように、マスク23、および、存在する場合には余剰の拡散金属源材料22を、記録層12上から除去する。この後、図4(e)に示すように、記録層12上に保護層14を形成する。マスク23は、例えば所定のエッチングにより除去することができる。保護層14の形成手法については、第1の磁気ディスク製造方法に関して上述したのと同様である。以上のようにして、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有する磁気ディスクXを製造することができる。
【0051】
本方法においては、図4(c)を参照して上述した工程にて、磁性膜12’の所定箇所に対する金属拡散により非磁性部12Bを形成することによって、実質的に記録磁性部12Aをパターン形成することができ、当該記録磁性部12Aを含む記録層12を形成することができる。また、本方法においては、そのような記録層12を構成することとなる磁性膜12’を、図4(a)を参照して上述した工程にて、スパッタリング法などのいわゆる薄膜形成技術により連続膜として形成することができる。薄膜形成技術により形成される連続膜においては、上述の従来の磁気ディスク40における記録層42のような非連続膜におけるよりも、小さな表面凹凸すなわち高い表面平坦性を、達成しやすい。したがって、本方法は、記録層12の表面平坦性が反映される記録面15において、充分な平坦性を得るのに適する。このように、本方法は、上述の第1の磁気ディスク製造方法と同様に、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有し且つ記録面15の平坦性の高い磁気ディスクXを製造するのに適する。
【0052】
図5は、磁気ディスクXを製造するための、本発明に係る第3の磁気ディスク製造方法における一部の工程を表す。本方法においては、まず、図5(a)に示すように、ディスク基板11上に軟磁性層13、磁性膜12’、および拡散金属源材料膜24を順次形成する。軟磁性層13および磁性膜12’の形成手法については、第1の磁気ディスク製造方法に関して上述したのと同様である。拡散金属源材料膜24は、例えば、Cu、In、Agなどの単体金属、または、当該金属を含む合金よりなる。拡散金属源材料膜24の形成においては、例えばスパッタリング法により、当該金属材料を磁性膜12’上に成膜する。拡散金属源材料膜24の厚さは、例えば1〜20nmである。
【0053】
本方法においては、次に、図5(b)に示すように、スタンパ25を拡散金属源材料膜24に押し当てる。スタンパ25は、凸部25aを有し、例えばニッケルよりなる。また、スタンパ25は、図外の発熱機構と熱的に連結されている。本工程では、スタンパ25の凸部25aの先端を、位置合わせしつつ、拡散金属源材料膜24に対して当接させる。
【0054】
次に、図外の発熱機構を駆動して、スタンパ25の凸部25aを介して拡散金属源材料膜24を加熱し、これにより、図5(c)に示すように、拡散金属源材料膜24における当該加熱箇所から磁性膜12’に対して金属(例えばCu、In、Ag)を拡散させる。加熱温度は例えば150〜450℃である。本工程では、熱エネルギが駆動力となって、拡散金属源材料膜24から磁性膜12’に対する金属拡散が進行する。当該金属拡散により、磁性膜12’において当初は所定の磁性を有していた箇所の磁性が消滅または充分に減弱し、非磁性部12Bがパターン形成され、そして事実上同時に、記録磁性部12Aがパターン形成される。このようにして、磁性膜12’から、記録磁性部12Aおよび非磁性部12Bを含む連続膜としての記録層12が形成される。
【0055】
この後、拡散金属源材料膜24の残査を記録層12上から除去し、そして、記録層12上に保護層14を形成する。拡散金属源材料膜24の除去手法としては、例えば、酸素プラズマを利用して行うアッシングを採用することができる。保護層14の形成手法については、第1の磁気ディスク製造方法に関して上述したのと同様である。以上のようにして、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有する磁気ディスクXを製造することができる。
【0056】
本方法においては、図5(c)を参照して上述した工程にて、磁性膜12’の所定箇所に対する金属拡散により非磁性部12Bを形成することによって、実質的に記録磁性部12Aをパターン形成することができ、当該記録磁性部12Aを含む記録層12を形成することができる。また、本方法においては、そのような記録層12を構成することとなる磁性膜12’を、図5(a)を参照して上述した工程にて、スパッタリング法などのいわゆる薄膜形成技術により連続膜として形成することができる。薄膜形成技術により形成される連続膜においては、上述の従来の磁気ディスク40における記録層42のような非連続膜におけるよりも、小さな表面凹凸すなわち高い表面平坦性を、達成しやすい。したがって、本方法は、記録層12の表面平坦性が反映される記録面15において、充分な平坦性を得るのに適する。このように、本方法は、上述の第1および第2の磁気ディスク製造方法と同様に、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有し且つ記録面15の平坦性の高い磁気ディスクXを製造するのに適する。
【0057】
本方法の図5(c)を参照して上述した工程では、スタンパ25を介して拡散金属源材料膜24を加熱するのに変えて、スタンパ25を介して拡散金属源材料膜24に電圧を印加し、これにより、拡散金属源材料膜24における当該電圧印加から磁性膜12’に対して金属を拡散させてもよい。電圧印加工程では、具体的には、スタンパ25および磁性膜12’の間に、例えば1〜10Vの電圧を印加する。このような電圧印加工程では、電界や熱が駆動力となって、拡散金属源材料膜24から磁性膜12’に対する金属拡散が進行する。当該金属拡散により、磁性膜12’において当初は所定の磁性を有していた箇所の磁性が消滅または充分に減弱し、非磁性部12Bがパターン形成され、そして事実上同時に、記録磁性部12Aがパターン形成される。このようにして、磁性膜12’から、記録磁性部12Aおよび非磁性部12Bを含む連続膜としての記録層12を形成してもよい。
【0058】
図6は、磁気ディスクXを製造するための、本発明に係る第4の磁気ディスク製造方法における一部の工程を表す。本方法においては、まず、図6(a)に示すように、ディスク基板11上に軟磁性層13、磁性膜12’、および拡散金属源材料膜24を順次形成する。軟磁性層13および磁性膜12’の形成手法については、第1の磁気ディスク製造方法に関して上述したのと同様である。拡散金属源材料膜24の構成および形成手法については、第3の磁気ディスク製造方法に関して上述したのと同様である。
【0059】
本方法においては、次に、図6(b)に示すように、マスク26を、位置合わせしつつ、拡散金属源材料膜24に対して対向配置する。マスク26は、上述の非磁性部12Bのパターン形状に対応する開口部26aを有し、次の照射工程にて用いられるレーザ光またはX線を充分に遮断する材料よりなる。
【0060】
次に、図6(c)に示すように、マスク26を介して拡散金属源材料膜24に対してレーザ光またはX線を照射することにより、拡散金属源材料膜24における当該照射箇所から磁性膜12’に対して金属(例えばCu、In、Ag)を拡散させる。本工程では、格子振動や電子励起により生ずる熱が駆動力となって、拡散金属源材料膜24から磁性膜12’に対する金属拡散が進行する。当該金属拡散により、磁性膜12’において当初は所定の磁性を有していた箇所の磁性が消滅または充分に減弱し、非磁性部12Bがパターン形成され、そして事実上同時に、記録磁性部12Aがパターン形成される。このようにして、磁性膜12’から、記録磁性部12Aおよび非磁性部12Bを含む連続膜としての記録層12が形成される。
【0061】
この後、拡散金属源材料膜24の残査を記録層12上から除去し、そして、記録層12上に保護層14を形成する。拡散金属源材料膜24の除去手法としては、例えば、酸素プラズマを利用して行うアッシングを採用することができる。保護層14の形成手法については、第1の磁気ディスク製造方法に関して上述したのと同様である。以上のようにして、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有する磁気ディスクXを製造することができる。
【0062】
本方法においては、図6(c)を参照して上述した工程にて、磁性膜12’の所定箇所に対する金属拡散により非磁性部12Bを形成することによって、実質的に記録磁性部12Aをパターン形成することができ、当該記録磁性部12Aを含む記録層12を形成することができる。また、本方法においては、そのような記録層12を構成することとなる磁性膜12’を、図6(a)を参照して上述した工程にて、スパッタリング法などのいわゆる薄膜形成技術により連続膜として形成することができる。薄膜形成技術により形成される連続膜においては、上述の従来の磁気ディスク40における記録層42のような非連続膜におけるよりも、小さな表面凹凸すなわち高い表面平坦性を、達成しやすい。したがって、本方法は、記録層12の表面平坦性が反映される記録面15において、充分な平坦性を得るのに適する。このように、本方法は、上述の第1から第3の磁気ディスク製造方法と同様に、所定パターンの記録磁性部12Aを記録層12内に有し且つ記録面15の平坦性の高い磁気ディスクXを製造するのに適する。
【実施例】
【0063】
〔実施例1〕
〈サンプル膜体の作製〉
図7に示す積層構成を有する積層構造体を実施例1のサンプル膜体として作製した。本実施例のサンプル膜体の作製においては、まず、ガラス基板上にTaを成膜することによって厚さ3nmのTa層を形成した。このTa層は、その上に形成されるRu層の結晶配向性を向上させるための下地膜である。成膜手法とてしては、DC・RFマグネトロンスパッタリング装置を使用して行うスパッタリング法を採用した(後出の各層も同一の装置を使用して形成した)。本スパッタリングでは、スパッタガスとしてArガスを用い、スパッタガス圧力を0.5Paとし、投入電力を320Wとし、DC放電とした。
【0064】
次に、Ta層上にRuを成膜することによって厚さ35nmのRu層を形成した。このRu層は、その上に形成されるCoCrPt−SiO2層の結晶構造のc軸を膜面に対して垂直に配向させるためのものである。本スパッタリングでは、スパッタガスとしてArガスを用い、スパッタガス圧力を3.0Paとし、投入電力を340Wとし、DC放電とした。
【0065】
次に、Ru層上にCoCrPt−SiO2を成膜することによって厚さ15nmのCoCrPt−SiO2層を形成した。このCoCrPt−SiO2層は、上述の実施形態における磁性膜12’に相当し、垂直磁気異方性を有するグラニュラ膜である。本スパッタリングでは、スパッタガスとしてArガスを用い、スパッタガス圧力を2.0Paとし、投入電力を200Wとし、RF放電とした。
【0066】
次に、CoCrPt−SiO2層上にCuを成膜することによって厚さ3nmのCu層を形成した。このCu層ないしCuは、上述の実施形態における拡散金属源材料膜24や拡散金属源材料22に相当する。本スパッタリングでは、スパッタガスとしてArガスを用い、スパッタガス圧力を0.5Paとし、投入電力を300Wとし、DC放電とした。以上のようにして、実施例1に係るサンプル膜体を複数作製した。
【0067】
〈磁気特性変化の測定〉
本実施例のサンプル膜体について、加熱処理によるCoCrPt−SiO2層の磁気特性の変化を調べた。具体的には、各サンプル膜体について、所定の加熱温度で1分間加熱した後に室温に戻し、VSM(振動試料型磁力計)を使用して、磁性膜の膜面に対して垂直方向の保磁力および飽和磁化を測定した。加熱処理における加熱温度は、50℃、100℃、150℃、200℃、250℃、300℃、350℃、または400℃とした。加熱処理を経ない場合の測定値とともに、本実施例のサンプル膜体についての保磁力測定の結果を図10のグラフに示す。図10のグラフでは、横軸にて加熱温度(℃)を表し、縦軸にて保磁力(Oe)を表し、本実施例のサンプル膜体の測定に係るプロット(×)を実線E1で結ぶ。また、加熱処理を経ない場合の測定値とともに、本実施例のサンプル膜体についての飽和磁化測定の結果を図11のグラフに示す。図11のグラフでは、横軸にて加熱温度(℃)を表し、縦軸にて飽和磁化(emu/cc)を表し、本実施例のサンプル膜体の測定に係るプロット(×)を実線E1で結ぶ。
【0068】
〔実施例2〕
〈サンプル膜体の作製〉
図8に示す積層構成を有する積層構造体を実施例2のサンプル膜体として作製した。本実施例のサンプル膜体の作製方法は、Cu層に代えてCoCrPt−SiO2層上にAgを成膜して厚さ3nmのAg層を形成する以外は、実施例1のサンプル膜体の作製方法と同様である。このAg層ないしAgは、上述の実施形態における拡散金属源材料膜24や拡散金属源材料22に相当する。このAg層の形成する際のスパッタリングでは、スパッタガスとしてArガスを用い、スパッタガス圧力を0.5Paとし、投入電力を100Wとし、DC放電とした。実施例2に係るサンプル膜体も複数作製した。
【0069】
〈磁気特性変化の測定〉
本実施例のサンプル膜体について、実施例1のサンプル膜体と同様に、加熱処理によるCoCrPt−SiO2層の磁気特性の変化を調べた。加熱処理を経ない場合の測定値とともに、本実施例のサンプル膜体についての保磁力測定および飽和磁化測定の結果を図12および図13のグラフに示す。図12および図13のグラフでは、本実施例のサンプル膜体の測定に係るプロット(×)を実線E2で結ぶ。
【0070】
〔実施例3〕
〈サンプル膜体の作製〉
図9に示す積層構成を有する積層構造体を実施例3のサンプル膜体として作製した。本実施例のサンプル膜体の作製方法は、Ta層の形成からCoCrPt−SiO2層の形成まで、実施例1のサンプル膜体の作製方法に関して上述したのと同様である。本実施例のサンプル膜体も複数作製した。
【0071】
〈磁気特性変化の測定〉
本実施例のサンプル膜体について、実施例1のサンプル膜体と同様に、加熱処理によるCoCrPt−SiO2層の磁気特性の変化を調べた。加熱処理を経ない場合の測定値とともに、本実施例のサンプル膜体についての保磁力測定および飽和磁化測定の結果を図10から図13の各グラフに示す。図10から図13の各グラフでは、本実施例のサンプル膜体の測定に係るプロット(○)を実線E3で結ぶ。
【0072】
〔評価〕
図10から図13のグラフに表れているように、実施例3のサンプル膜体では、加熱処理を経てもCoCrPt−SiO2層の保磁力および飽和磁化は実質的には変化しない。これに対し、図10および図11に表れているように、実施例1のサンプル膜体では、加熱処理における加熱温度が高いほど、CoCrPt−SiO2層の保磁力および飽和磁化は有意に減弱する傾向にある。図12および図13に表れているように、実施例2のサンプル膜体でも、加熱処理における加熱温度が高いほど、CoCrPt−SiO2層の保磁力および飽和磁化は有意に減弱する傾向にある。実施例1,2のサンプル膜体におけるこのような磁気特性の減弱傾向は、Cu層またはAg層からそれに接するCoCrPt−SiO2層内へと加熱処理によりCuまたはAgが拡散すること、および、加熱温度が高いほどその拡散は進行することを、示唆するものである。一方、図10および図11に表れているように、実施例1のサンプル膜体では、約300℃以上の加熱温度でCoCrPt−SiO2層は実質的に非磁性化し、図12および図13に表れているように、実施例2のサンプル膜体では、約250℃以上の加熱温度でCoCrPt−SiO2層は実質的に非磁性化した。実施例1のサンプル膜体よりも実施例2のサンプル膜体の方がこのように非磁性化最低温度が低いのは、CoCrPt−SiO2層に対してはAgの方がCuよりも拡散しやすいためであると考えられる。本発明は、実施例1〜3のサンプル膜体において示される以上のような拡散・非拡散の原理を利用して、連続膜である記録層内に記録磁性部をパターン形成するものである。
【0073】
以上のまとめとして、本発明の構成およびそのバリエーションを以下に付記として列挙する。
【0074】
(付記1)磁性膜に対して金属を拡散させて非磁性部を形成することにより、当該磁性膜から記録磁性部および非磁性部を有する記録層を形成する工程を含む、磁気記録媒体製造方法。
(付記2)磁性膜上に、当該磁性膜を部分的に露出させるための開口部を有するマスクを設ける工程と、
拡散金属源材料を前記開口部内に供給する工程と、
加熱により、前記拡散金属源材料から前記磁性膜に対して金属を拡散させて非磁性部を形成する工程と、を含む磁気記録媒体製造方法。
(付記3)前記マスクは前記磁性膜上にてパターン形成されたレジストパターンである、付記2に記載の磁気記録媒体製造方法。
(付記4)前記マスクは、前記磁性膜上に載置されたものである、付記2に記載の磁気記録媒体製造方法。
(付記5)拡散金属源材料からなる膜を磁性膜上に形成する工程と、
凸部を有するスタンパにおける当該凸部を前記膜に当接させる工程と、
前記スタンパの前記凸部を介して前記膜を加熱することにより、前記膜における当該加熱箇所から前記磁性膜に対して金属を拡散させて非磁性部を形成する工程と、を含む磁気記録媒体製造方法。
(付記6)拡散金属源材料からなる膜を磁性膜上に形成する工程と、
凸部を有するスタンパにおける当該凸部を前記膜に当接させる工程と、
前記スタンパの前記凸部を介して前記膜に電圧を印加することにより、前記膜における当該電圧印加箇所から前記磁性膜に対して金属を拡散させて非磁性部を形成する工程と、を含む磁気記録媒体製造方法。
(付記7)拡散金属源材料からなる膜を磁性膜上に形成する工程と、
開口部を有するマスクを介して前記膜に対してレーザ光またはX線を照射することにより、前記膜における当該照射箇所から前記磁性膜に対して金属を拡散させて非磁性部を形成する工程と、を含む磁気記録媒体製造方法。
(付記8)前記拡散金属源材料は、前記金属の単体、前記金属を含む合金、または、前記金属を含む金属錯体の溶液もしくは前記金属を含む有機金属化合物の溶液である、付記2から7のいずれか一つに記載の磁気記録媒体製造方法。
(付記9)前記金属は、Cu、In、またはAgである、付記1から8のいずれか一つに記載の磁気記録媒体製造方法。
(付記10)連続膜である記録層を備え、
前記記録層は、記録磁性部と、当該記録磁性部に金属が拡散したのと同一の組成を有する非磁性部とを有する、磁気記録媒体。
(付記11)前記金属は、Cu、In、およびAgから選択される単体金属、または、Cu、In、もしくはAgを含む合金である、付記10に記載の磁気記録媒体。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係る磁気ディスクの平面図である。
【図2】図1に示す磁気ディスクの部分拡大断面図である。
【図3】本発明に係る第1の磁気ディスク製造方法を表す。
【図4】本発明に係る第2の磁気ディスク製造方法を表す。
【図5】本発明に係る第3の磁気ディスク製造方法における一部の工程を表す。
【図6】本発明に係る第4の磁気ディスク製造方法における一部の工程を表す。
【図7】実施例1のサンプル膜体における積層構成を表す。
【図8】実施例2のサンプル膜体における積層構成を表す。
【図9】実施例3のサンプル膜体における積層構成を表す。
【図10】実施例1,3のサンプル膜体について、保磁力の加熱温度依存性を表すグラフである。
【図11】実施例1,3のサンプル膜体について、飽和磁化の加熱温度依存性を表すグラフである。
【図12】実施例2,3のサンプル膜体について、保磁力の加熱温度依存性を表すグラフである。
【図13】実施例2,3のサンプル膜体について、飽和磁化の加熱温度依存性を表すグラフである。
【図14】ディスクリートトラックメディアである従来の磁気ディスクの平面図である。
【図15】図14に示す磁気ディスクの部分拡大断面図である。
【図16】図14に示す磁気ディスクの製造方法における一部の工程を表す。
【図17】図16の後に続く工程を表す。
【符号の説明】
【0076】
X,40 磁気ディスク
11,41 ディスク基板
12,42 記録層
12’,42A’ 磁性膜
12A,42A 記録磁性部
12B,42B 非磁性部
13 軟磁性層
14,43 保護層
15,44 記録面
21 レジストパターン
22 拡散金属源材料
23,26 マスク
24 拡散金属源材料膜
25 スタンパ
25a 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性膜に対して金属を拡散させて非磁性部を形成することにより、当該磁性膜から、記録磁性部および非磁性部を有する記録層を形成する工程を含む、磁気記録媒体製造方法。
【請求項2】
磁性膜上に、当該磁性膜を部分的に露出させるための開口部を有するマスクを設ける工程と、
拡散金属源材料を前記開口部内に供給する工程と、
加熱により、前記拡散金属源材料から前記磁性膜に対して金属を拡散させて非磁性部を形成する工程と、を含む磁気記録媒体製造方法。
【請求項3】
拡散金属源材料からなる膜を磁性膜上に形成する工程と、
凸部を有するスタンパにおける当該凸部を前記膜に当接させる工程と、
前記スタンパの前記凸部を介して前記膜を加熱することにより、前記膜における当該加熱箇所から前記磁性膜に対して金属を拡散させて非磁性部を形成する工程と、を含む磁気記録媒体製造方法。
【請求項4】
拡散金属源材料からなる膜を磁性膜上に形成する工程と、
開口部を有するマスクを介して前記膜に対してレーザ光またはX線を照射することにより、前記膜における当該照射箇所から前記磁性膜に対して金属を拡散させて非磁性部を形成する工程と、を含む磁気記録媒体製造方法。
【請求項5】
連続膜である記録層を備え、
前記記録層は、記録磁性部と、当該記録磁性部に金属が拡散したのと同一の組成を有する非磁性部とを有する、磁気記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−242182(P2007−242182A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−65559(P2006−65559)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】