説明

磁気記録装置、磁気記録システムおよび磁気記録媒体

【課題】正確にデータを記録することができる新規な磁気記録システムを提供する。
【解決手段】磁気記録システムが、ランド領域およびトラフ領域から成るパターン付き媒体、このパターン付き媒体にデータを書き込む書込み要素、およびこのパターン付き媒体からデータを読み取り、またトラフからサーボ情報を読み取る読取り要素を含む。ランド領域は、データを記憶し、トラフ領域は、データの記憶を妨げる。読取り要素は、書込み要素より幅が広い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データを記憶するためのランド領域およびデータの記憶を禁止するためのトラフ領域を有するパターン付き媒体に関し、また読取りワイド/書込みナローの記録ヘッドとともにこのパターン付き媒体を使用する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2001年2月16日出願の米国仮出願60/269517に対する優先権を主張するものである。
【0003】
磁気ディスク・ドライブは、ディスクとして知られる磁気媒体上にデジタル・データを記憶するデジタル・データ記憶装置である。ディスクは、一般に、デジタル・データを記憶するための複数のトラックを含む。データは、ディスクを被覆する磁気層に誘起された磁気極性遷移の形態でディスクのトラック上に記憶される。
【0004】
ディスク・ドライブの動作中、ディスクは、実質的に一定の角速度でスピン・モータによって軸のまわりを回転する。ディスクとのデータの転送を行うため、記録ヘッドとして知られる変換器が、回転するディスクのトラックの上方に中心を合わせられる。中心を合わせた後、ヘッドを使用してトラックにデータを転送する(書込み動作中)、またはトラックからデータを転送する(読取り動作中)ことができる。書込み中、例えば、書込み電流が中心を合わされたヘッドに送られて、トラック上に磁気極性遷移を誘起するヘッドの下部に交番磁界が生成される。読取り中、中心を合わされたヘッドは、動くトラック上の磁気極性遷移から発する磁界を検出して、トラック上のデータを表すアナログ読取り信号を生成する。
【0005】
記録ヘッドは、読取り動作を行うための読取り要素、および書込み動作を行うための書込み要素を有するデュアル要素であることが可能である。書込み要素が、ディスクのトラックから古いデータを「消去」する消去帯をその縁に含み、これによって読取り要素が古いデータを検出するのを防止するとうい条件で、読取り要素を書込み要素より幅広くすることが知られている。この構成は、米国特許第5940250号(McNeil他)で説明されている。
【特許文献1】米国特許第5940250号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、正確にデータを記録することができる新規な磁気記録システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般に、一態様では、本発明は、ランド領域およびトラフ領域から成るパターン付き媒体、このパターン付き媒体にデータを書き込む書込み要素、およびこのパターン付き媒体からデータを読み取る読取り要素を含む磁気記録システムである。読取り要素は、書込み要素より幅が広い。ランド領域は、データを記憶し、トラフ領域は、データの記憶を妨げる。つまり、トラフ領域は、古いデータが、ランド領域の外側に書き込まれるのを防止し、読取り要素にトラック外の雑音を検出させることなく、読取り要素の幅を広げることを可能にしている。読取り要素の幅を広げることにより、システムにおいて相当に信号対雑音比を有利にすることができる。
【0008】
前述した態様は、以下の特徴の1つまたは複数を含むことが可能である。読取り要素および書込み要素は、読取り中および書込み中にパターン付き媒体の上を飛ぶ記録ヘッドの一部であることが可能である。トラフ領域は、トラフ領域へのデータの磁気書込みを妨げるのに十分な記録ヘッドに対する深さを有することが可能である。パターン付き媒体は、基板上に配置されたポリマー層で作られていることが可能であり、この層が、ランド領域およびトラフ領域を規定する。基板の例には、ガラス基板、NiPクラッド・アルミニウム合金基板、ガラス・セラミック基板、およびチタニウム基板が含まれる。また、ポリマー層は、磁気層も含む。読取り要素は、書込み要素の書込み幅より広い読取り幅を有することが可能である。
【0009】
パターン付き媒体は、データを記憶するトラックを有する回転可能な磁気ディスクを含むことが可能である。トラックは、同心円、らせん、またはその他の任意の構成であることが可能である。トラックは、ランド領域を含むことが可能である。トラックは、トラフ領域によって回転可能な磁気ディスク上で分離されていることが可能である。ランド領域は、トラフ領域によって互いに分離されたデータ・アイランドを含むことが可能である。データ・アイランドの各々は、1ビットを記憶できることが可能である。
【0010】
一般に、別の態様では、本発明は、データを記憶する複数のトラックを有する磁気ディスクを含むディスク・ドライブを対象とする。トラックは、データを記憶するためのランド領域、およびランド領域を互いに実質的に分離するトラフ領域を含む。また、ディスク・ドライブは、磁気ディスクにデータを転送し、また磁気ディスクからデータを転送する記録ヘッドも含む。記録ヘッドは書込み要素および読取り要素を含む。読取り要素は、書込み要素の幅より広い幅を有する。
【0011】
本発明のこの態様は、以下の特徴の1つまたは複数を含むことが可能である。アクチュエータ・アームが、ディスク上でヘッドを位置付けるためにディスク・ドライブに含まれることが可能である。記録ヘッドは、読取り中および書込み中にディスクの上を飛ぶことが可能である。トラフ領域は、トラフ領域へのデータの磁気書込みを妨げるのに十分な記録ヘッドに対する深さを有することが可能である。磁気ディスクは、基板上に配置されたポリマー層から成るパターン付き媒体であることが可能である。ポリマー層は、ランド領域およびトラフ領域を規定し、上面に磁気層を含む。
【0012】
トラック上のランド領域は、トラフ領域によって互いに分離されたデータ・アイランドを含むことが可能である。データ・アイランドの各々は、少なくとも1ビットを記憶できる。トラックは、磁気ディスクの内径において、磁気ディスクの外径におけるのとは異なる密度を有することが可能である。トラフ領域は、磁気ディスク上への書込み中、消去帯として機能することが可能である。
【0013】
読取り要素の幅は、値Rminと値Rmaxの間にあることが可能であり、ただし、
Rmin=TWであり、かつ
Rmax=TW+2GAP-2RTMRであり、
上式で、TWは、トラック幅に対応し、GAPは、隣接するトラック間の距離に対応し、またRTMRは、トラック上の読取り要素の位置ずれに対応する。
【0014】
書込み要素の幅は、値Wminと値Wmaxの間にあることが可能であり、ただし、
Wmin=TW+WTMRであり、かつ
Wmax=TW+2GAP-2SQであり、
上式で、TWは、トラック幅に対応し、GAPは、隣接するトラック間の距離に対応し、WTMRは、トラック上の書込み要素の位置ずれに対応し、またSQは、書込み要素の位置ずれに起因するトラック間の距離の減少に対応する。
【0015】
一般に、別の態様では、本発明は、パターン付き磁気記憶媒体を対象とする。記憶媒体は、基板、およびこの基板上に形成された層を含む。この層は、ランド領域およびトラフ領域を規定する。ランド領域は、データを記憶し、トラフ領域は、ランド領域間のデータの記憶を妨げる。本発明のこの態様は、以下の特徴の1つまたは複数を含むことが可能である。
【0016】
ランド領域は、基板との関係でトラフ領域より高く突出させることができる。トラフ領域は、トラフ領域へのデータの磁気書込みを妨げるのに十分なランド領域に対する深さを有することが可能である。ランド領域は、トラフ領域によって互いに分離されたデータ・アイランドを含むことが可能である。データ・アイランドの各々は、少なくとも1ビットを記憶できる。ランド領域は同心円トラックまたはらせんトラックでちく、トラフ領域はトラックを互いに分離する。トラフ領域は、ランド領域間のデータの書込みを妨げるための消去帯として機能することが可能である。基板は、ガラス基板、NiPクラッド・アルミニウム合金基板、ガラス・セラミック基板、および/またはチタニウム基板であることが可能であり、また層は、上面に磁気層が配置されているポリマーであることが可能である。
【0017】
一般に、別の態様では、本発明は、データをデータ・トラックの中に磁気式で記憶するための記憶手段を含む装置を対象とする。データ・トラックは、記憶手段上に物理的にスタンピングされた消去帯によって分離される。また、この装置は、記憶手段にデータを書き込む書込み手段も含む。読取り手段が、記憶手段からデータを読み取る。読取り手段は、書込み手段の幅より広い幅を有する。この態様は、以下の特徴の1つまたは複数を含むことが可能である。
【0018】
消去帯は、記憶手段上でデータ・トラック間に形成されたトラフであることが可能である。記憶手段は、基板上に配置されたポリマー層で形成されたパターン付き媒体であることが可能である。ポリマー層は、データ・トラックおよび消去帯を含むこと、また上面に磁気層が配置されていることが可能である。読取り手段および書込み手段は、読取り中および書込み中、記憶手段の上を飛ぶ記録手段の一部であることが可能である。消去帯は、トラフへのデータの磁気書込みを妨げるのに十分な記録手段に対する深さを有するトラフであることが可能である。データ・トラックは、トラフによって分離されたデータ・アイランドのシーケンスを含むことが可能である。
【0019】
一般に、別の態様では、本発明は、ランド領域およびトラフ領域から成るパターン付き媒体を含む磁気記録システムを対象とする。ランド領域は、データを記憶し、トラフ領域は、データの記憶を妨げる。このシステムは、パターン付き媒体のランド領域に対してデータの読取りおよび書込みを行う記録ヘッドを含む。記録ヘッドは、読取り要素を有する。読取り要素は、ランド領域の幅より広い幅を有する。この態様は、以下の特徴の1つまたは複数を含むことが可能である。
【0020】
記録ヘッドは、読取り要素の幅より狭く、ランド領域の幅より広い幅を有する書込み要素を含むことが可能である。トラフ領域は、トラフ領域へのデータの磁気書込みを妨げるのに十分な記録ヘッドに対する深さを有することが可能である。パターン付き媒体は、基板上に配置されたポリマー層を含むことが可能である。ポリマー層は、ランド領域およびトラフ領域を規定することが可能であり、また上面に磁気層が配置されていることが可能である。
【0021】
パターン付き媒体は、データを記憶するトラックを有する回転可能な磁気ディスクであることが可能である。同心円トラックが、ランド領域であることが可能である。トラックは、トラフ領域によって回転可能な磁気ディスク上で分離されていることが可能である。ランド領域は、トラフ領域によって互いに分離されたデータ・アイランドを含むことが可能である。データ・アイランドの各々は、ブロックのデータを記憶できることが可能である。ブロックのデータは、1ビットであることが可能である。
【0022】
一般に、別の態様では、本発明は、データを記憶するランド領域、およびサーボ情報を記憶するトラフ領域を含む磁気記録媒体を対象とする。トラフ領域の中にサーボ情報を記憶することにより、記録媒体をスキャンするヘッドに連続的サーボを提供し、それと同時に、相当な量のデータを記憶するのに利用可能な媒体空間の量を増大させることが可能になる。この態様は、以下の1つまたは複数を含むことが可能である。
【0023】
ランド領域の中のデータは、トラフ領域の中のサーボ情報より高い周波数であることが可能である。トラフ領域は、トラフに対してランド領域より低い高さを有するステップを含むことが可能である。ステップはサーボ情報を含むことが可能である。ランド領域は、データ・トラックであることが可能であり、第1のトラフが、そのランド領域の一方の側を境界付け、また第2のトラフが、そのランド領域の別の側を境界付けることが可能である。第1のトラフの中のサーボ情報は、第2のトラフの中のサーボ情報とは異なる周波数であることが可能である。
【0024】
トラフは、サーボ信号およびグレイ・コードの少なくとも1つを含むことが可能である。ランド領域およびトラフ領域は、交互する同心円トラックまたはらせんトラックであることが可能である。ランド領域は、追加のトラフ領域によって互いに分離されたデータ・アイランドを含むことが可能である。データ・アイランドの各々は、ブロックのデータを記憶できることが可能である。ブロックのデータは、1ビットであることが可能である。
【0025】
一般に、別の実施形態では、本発明は、ランド領域およびトラフ領域から成るパターン付き媒体を含む磁気記録システムを対象とする。ランド領域は、データを記憶し、トラフ領域は、サーボ情報を記憶する。システムは、パターン付き媒体のランド領域に対してデータの読取りおよび書込みを行い、またトラフ領域からサーボ情報の読取りを行う記録ヘッドを含む。この態様は、以下の特徴の1つまたは複数を含むことが可能である。
【0026】
記録ヘッドは、読取り要素および書込み要素を含むことが可能である。読取り要素は、書込み要素の幅より広い幅を有することが可能である。ランド領域の中のデータは、トラフ領域の中のサーボ情報より高い周波数であることが可能である。記録ヘッドは、より高い周波数のデータを読み取るのに十分なだけランド領域に近く、またより低い周波数のサーボ情報を読み取るのに十分なだけトラフ領域に近く位置合わせすることができる。トラフ領域は、トラフに対してランド領域より低い高さを有するステップを含むことが可能である。このステップは、サーボ情報を含むことが可能である。
【0027】
ランド領域は、データ・トラックを含むことが可能であり、第1のトラフが、そのランド領域の一方の側を境界付け、また第2のトラフが、そのランド領域の別の側を境界付けることが可能である。第1のトラフの中のサーボ情報は、第2のトラフの中のサーボ情報とは異なる周波数であることが可能である。トラフは、サーボ情報およびグレイ・コードの少なくとも1つを含むことが可能である。
【0028】
ランド領域およびトラフ領域は、交互する同心円トラックまたはらせんトラックであることが可能である。ランド領域は、追加のトラフ領域によって互いに分離されたデータ・アイランドを含むことが可能である。データ・アイランドの各々は、ブロックのデータを記憶できることが可能である。ブロックのデータは、1ビットであることが可能である。パターン付き媒体は、ランドおよびトラフを含む交互するトラックを有する回転可能な磁気ディスクであることが可能である。パターン付き媒体は、フェイズ・ロック・ループ情報を記憶するデータ・セクタを含むことが可能である。
【0029】
磁気記録システムは、データおよびサーボ情報を受け取り、サーボ情報を出力する低域フィルタ、ならびにデータおよびサーボ情報を受け取り、データを出力する高域フィルタを含むことが可能である。
【0030】
一般に、別の態様では、本発明は、データにアクセスする方法を対象とする。この方法は、データを記憶するランド領域、およびサーボ情報を記憶するトラフ領域から成るパターン付き媒体上で記録ヘッドを移動させることと、ランド領域上にデータを転送することと、データを転送するのと同時にトラフ領域からサーボ情報を読み取ることと、そのサーボ情報を使用してランド領域に対して記録ヘッドを移動させることとを含む。この態様は、以下の特徴の1つまたは複数を含むことが可能である。
【0031】
ランド領域は、データ・トラックを含むことが可能であり、第1のトラフが、そのランド領域の一方の側を境界付け、また第2のトラフが、そのランド領域の別の側を境界付けることが可能である。サーボ情報は、第1のトラフからのサーボ情報を第2のトラフからのサーボ情報と比較して、その比較に基づいて記録ヘッドの位置合わせを修正することによって記録ヘッドを移動させるのに使用する。第1のトラフの中のサーボ情報は、第2のトラフの中のサーボ情報とは異なる周波数であることが可能である。記録ヘッドは、読取り要素および書込み要素を含み、読取り要素が、書込み要素の幅より広い幅を有することが可能である。
【0032】
この要約は、本発明の性質を迅速に理解できるように提供した。本発明の例的な実施形態の説明を以下に提示する。
【0033】
様々な図における同じ参照番号は、同じ要素を示す。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、以下の特徴の1つまたは複数を含むことが可能である。読取り要素および書込み要素は、読取り中および書込み中にパターン付き媒体の上を飛ぶ記録ヘッドの一部であることが可能である。トラフ領域は、トラフ領域へのデータの磁気書込みを妨げるのに十分な記録ヘッドに対する深さを有することが可能である。パターン付き媒体は、基板上に配置されたポリマー層で作られていることが可能であり、この層が、ランド領域およびトラフ領域を規定する。基板の例には、ガラス基板、NiPクラッド・アルミニウム合金基板、ガラス・セラミック基板、およびチタニウム基板が含まれる。また、ポリマー層は、磁気層も含む。読取り要素は、書込み要素の書込み幅より広い読取り幅を有することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
ディスク・ドライブの読取りと書込みの動作中、記録ヘッドは、トラック追跡として周知のプロセスで、所望のトラックの上方で中心を合わされた位置に維持される。デュアル要素ヘッドを使用する場合、このプロセスには、書込み動作中に書込み要素の中心を合わせること、および読取り動作中に読取り要素の中心を合わせることが必然的に伴う。様々な理由で、デュアル要素ヘッドの書込み要素は、対応する読取り要素がトラックの中心にあるとき、常にトラックの中心にあるとは限らず、逆もまた真である。
【0036】
図1は、ディスク18の上方の様々な位置でデュアル要素記録ヘッド16を示している図である。この図は、ディスク18の外径(O.D.)における第1のトラック20の上方、ディスク18の内径(I.D.)における第2のトラック22の上方、およびディスク18の中位径(M.D.)における第3のトラック24の上方にある記録ヘッド16を示している。図1に示した3つのヘッドは、比較だけを目的としている。一般に、ドライブ内の各ディスク表面の上方には1つのヘッドだけが存在することを理解されたい。また、図1に示した寸法は、例示の目的で誇張されていることも理解されたい。
【0037】
図1に示すとおり、記録ヘッド16は、ディスク18の表面の上方に記録ヘッドを担持するアクチュエータ・アーム40の先端に配置されている。アクチュエータ・アーム40は、回動点(図示せず)のまわりを回動して、アーム40の各トラックの中心線と成す角が、ディスクの表面にわたって様々であるようになっている。この角は、スキュー角として知られている。記録ヘッド16は、中心線30によって規定される中心を有する読取り(RD)要素26、および中心線32によって規定される中心を有する別の書込み(WR)要素28を含む。示すとおり、読取り要素の中心線30は、書込み要素の中心線32から横方向に意図的にオフセットされている。スキュー角と、読取り要素と書込み要素の間のオフセットの複合効果のため、読取り要素26および書込み要素28は、通常、同時にはディスク18の同一のトラック上に中心が合わない。つまり、2つの要素のどちらかが、特定のトラック上に中心を合わせられ、もう一方は、一般に、ある量だけ中心がずれている。
【0038】
トラック追跡機能を行うため、読取り要素26によってディスク18から読み取られたフィードバック情報を使用して記録ヘッド16の位置合わせを適切に行うサーボ・システム(図示せず)が一般に実装されている。読取り要素26が、サーボ・システムにフィードバック情報を提供するので、追加の情報がサーボ・システムに供給されない場合、システムは書込み要素28ではなく読取り要素26の中心を合わせる。したがって、書込み動作中、追加の情報がサーボ・システムに供給されない場合、書込み要素28の中心を合わせる補償値がサーボ・システムに渡される。サーボ・システムに渡されるこの補償値は、一般に、スキュー角と要素間のオフセットの複合効果に基づき、ディスクの表面にわたって様々である。
【0039】
ヘッドを位置合わせするのにサーボ・システムがディスク・ドライブによって使用される場合でさえ、通常のディスク・ドライブの動作中、記録ヘッドの要素の中心線と所望のトラックの中心線の間である量の位置ずれが存在する可能性がある。この位置ずれは、例えば、スピンドルの振れ、共振、およびディスクのフラッタ、熱によるトラックのシフト、ヘッドの沈下、アクチュエータの相互作用、不適切なサーボ書込み、その他などの様々な要因によって生じる。特定のディスク・ドライブに関して、通常のトラック追跡動作中のヘッド要素とトラックの間の位置合わせの不良はトラック位置ずれ(TMR)値によって特定される。TMR値は、ディスク・ドライブの通常のトラック追跡動作中に生じそうな要素の位置ずれの最大範囲を表す。つまり、ディスク・ドライブがトラック追跡を行っている間、要素の中心線がTMR値によって特定される範囲内のどこかにある確率が高く、ヘッドがこの範囲外にある確率は低い。一般に、TMRは、同様な、または同一のディスク・ドライブ・システムにおける過去の観察に基づいて統計的に導出された値である。
【0040】
1つのタイプのデュアル要素記録ヘッドは、磁気抵抗効果型(MR)読取り要素と、通常誘導性である別の書込み要素とを含む磁気抵抗効果型ヘッドである。MR読取り要素は、印加された磁界に基づいて変化する可変の抵抗率を有する小さい一片の磁気抵抗効果材料を含む。つまり、その材料に印加される磁界が増大するにつれ、通常、その材料の抵抗率が低下する。実際には、MR材料は、実質的に一定の電流がその材料に流されて、所望のトラックの付近に保持される。回転するトラック上の磁気遷移によって生成される磁界の変動により、磁気材料の抵抗が変化し、ディスク上に記憶されたデータを表すその材料に流れる可変電圧(すなわち、読取り信号)がもたらされる。MR読取り要素は、通常、誘導性の読取り要素によって生成されるものよりかなり高い電圧を有する読取り信号を生成するため、近年、相当に普及している。
【0041】
過去のデュアル要素ヘッドは、書込みワイド/読取りナローの手法を利用していた。しかし、この手法は、非線形のサーボ位置信号伝達関数に関連する問題をもたらすことが確認されている。したがって、読取りワイド/書込みナローのデュアル要素ヘッドが開発された。読取りワイド/書込みナローのデュアル要素記録ヘッドでは、読取り要素の幅が書込み要素の幅を上回る。
【0042】
図2A〜2Cは、パターン付きでない媒体における読取りワイド/書込みナローの構成を有するデュアル要素記録ヘッド42の使用を示している。この例では、パターン付きでない媒体は、記録表面上が実質的に平滑である磁気ディスクなどの記録媒体である。つまり、パターン付きでない媒体は、以下に説明する物理的にプレス加工されたランド領域およびトラフ領域を含まない。
【0043】
デュアル要素記録ヘッド42は、書込み幅(W)を有する書込み要素44、および読取り要素幅(R)を有する読取り要素46を含み、読取り幅が書込み幅より広い。また、記録ヘッド42は、記録ヘッドの移動の方向52に関して互いに実質的に横方向にオフセットされた読取り要素中心点48と書込み要素中心点50を含む。境界線54A、54Bは、データ・トラック56に関するTMR境界を表す。
【0044】
さらに、書込み要素44は、書込み要素44によってトラック56上に書き込まれたデータの両側に磁気消去帯を作成するための消去帯58Aおよび58Bを含む。磁気消去帯は書込み要素44のエッジにおける磁束から形成される。この磁束はすべての書込み要素に本来的に備わり、磁気消去帯のサイズを大きくするために大きくしたり、または小さくするために小さくすることが可能である。磁気消去帯の動作は本発明に絶対に必要ではないが、その動作の説明は以下に説明するパターン付き媒体によって提供される便益の理解を促進するであろう。
【0045】
図2Aは、デュアル要素記録ヘッド42を使用するトラック56に対する第1の書込み動作を示している。第1の書込み動作中、書込み要素44が、左TMR境界54A上に中心を合わせられ、したがって、第1のデータ60をトラック56上に中心から左にずれて書き込む。書込み要素42の磁気消去帯58A、58Bが、第1の消去ストリップ62A、62Bを作成する。この例では、消去ストリップ62A、62Bは、読取り可能なデータが全く記憶されていないトラック56の領域を含む。
【0046】
図2Bは、トラック56に対する第2の後続の書込み動作を示している。第2の書込み動作中、書込み要素44が、右TMR境界線54B上に中心を合わせられ、したがって、第2のデータ66をトラック56上に中心から右にずれて書き込む。また、書込み要素44の消去帯58A、58Bが、第2の書込み動作中に第2のデータ66の両側に第2の消去ストリップ68A、68Bを作成する。示すとおり、
データ66の左側の第2の消去ストリップ68Aが、第2の書込み動作後、そうでなければトラック56上に残ることになる第1のデータ60のすべてを消去する。これにより、図2Cの後続の読取り動作中、読取り要素46はトラック56上で第1のデータ60を検出しない。
【0047】
書込み要素上に磁気消去帯を備える代りに、または備えることに加え、効果的な消去帯をパターン付き媒体上に物理的に形成する(例えば、スタンピングする)ことが可能である。パターン付き媒体は、ランド領域(「ランド」)およびトラフ領域(「トラフ」)を含む磁気ディスクなどの磁気記憶デバイスである。図3を参照すると、ランド70(70a〜70c)が、パターン付き媒体72の突出した領域であり、またトラフ74(74a、74b)は、ランド70間に位置するくぼみである。
【0048】
図3および4aを参照すると、パターン付き媒体72は、基板76、およびその基板上に配置されたポリマー層78から成る磁気ディスクである。使用することが可能なポリマーの一例がプラスチックであるが、プラスチックの代りに、またはプラスチックに加えて、他のタイプのポリマーも使用することができる。ポリマー層を使用する代りに、未硬化の状態で処理され、後に高温で硬化させられるシリカを含むグレージング・コンパウンドから成る層を使用することができる。次の論文で、そのような層を製作するためのプロセスが説明されている。Tohge他著「Fine Patterning On Glass Substrates By The Sol−Gel Method」、Journal of Non−Crystalline Solids 100 (1988年)、501〜505ページ。基板76として使用することができる基板の例には、ガラス基板、NiPアルミニウム合金基板、ガラス・セラミック基板、およびチタニウム基板が含まれるがそれらには限定されない。パターンのスタンピングの前または後に、磁気層(図示せず)をポリマー(またはシリカ/ソル−ゲル)層の上に付着させる。ランド/トラフのパターンを反転させたものを保持する型を使用して媒体の層78上にランド/トラフ・パターンをスタンピングする。
【0049】
トラフは、データが書き込まれる周波数でトラフの中にデータが記憶されるのを妨げるのに十分な記録ヘッドおよび/またはランドに対する深さを有する。書込み動作中、読取りワイド/書込みナローの記録ヘッドが、ランドが読取り要素と書込み要素の両方によって実質的にカバーされるようにランド上に位置合わせされる。読取り要素は、書込み要素より幅広く、また書込み要素は、少なくともランドと同じだけの幅であり、より幅が広いことも可能である。
【0050】
書込み中、記録ヘッドは、パターン付き媒体の上を「飛ぶ」、すなわち、移動する。トラフは、トラフ内部にデータが書き込まれるのを妨げ、また好ましくは書き込まれるのを防止するのに十分なだけ記録ヘッドから離れている。つまり、トラフは、書込み要素によって生じさせられる磁束遷移が、そのトラフによって規定される媒体の領域の磁気極性に影響を及ぼすのを防止するのに十分なだけ記録ヘッドから離れている。一方、ランドは、ランド上にデータの磁気書込みを行うのを可能にするだけ十分に記録ヘッドに接近している。
【0051】
したがって、パターン付き媒体72にデータが書き込まれる際、ランドは、データ・トラックを構成し、トラフは効果的な消去帯を構成する。円形の磁気ディスク上のランドとトラフは交互する同心円として形成する(磁気ディスク上に形成されるあらゆるサーボ・スポークを考慮に入れて)ことができる。トラフは、ランド(すなわち、データ・トラック)を互いに分離し、物理的にも、磁気的にも明確に規定されたデータ・トラックを形成する。別法では、ランドとトラフは交互のらせんであることも可能である。また、その他のトラック構成も使用することができる。
【0052】
図4bは、図3および4aのパターン付き媒体の上面図を示している。図4bに示すとおり、読取り要素82および書込み要素84を含む記録ヘッド80が、ランド70a(データ・トラック)上に位置合わせされる。一回のパスで、書込み要素84がランドにデータを書き込む。データはランド70aに隣接するトラフ74aおよび74bには書き込まれない。その理由は、書込み要素84がデータが書き込まれる周波数でトラフの中に磁気遷移を誘起するには、トラフの上方に垂直方向(図3の矢印73)であまりにも離れ過ぎているからである。
【0053】
したがって、ランド70a上に新しいデータが、例えば、書込み要素84による第2回のパスで書き込まれる場合、第1回のパスによる残余のデータがランド70aに、またはトラフ74aおよび74bに存在していてはならない。したがって、読取り要素82がトラック70aからデータを読み取る際、第2回のパスからのデータだけが読み取られる。以上の利点を達するため、読取り要素の幅および書込み要素の幅に制約を課すことができる。
【0054】
図4bを参照すると、読取り要素82の幅88および書込み要素84の幅90に関する制約は、次のとおり決定される。読取り要素の最小幅(Rmin)は、次のとおり制約することができる。
Rmin=TW
上式で、TWは、パターン付き媒体72上に形成されたトラック70a(すなわち、ランド)の幅である。読取り要素の幅はトラック幅を下回ってはならない、すなわち、R≧TWである。書込み要素の最小幅(Wmin)は、次のとおり制約することができる。
Wmin=TW+WTMR
上式で、TWは、上記に定義したとおりであり、またWTMRは、書込み要素の位置ずれの量(すなわち、書込み要素84に関して生じる可能性があるTMRの量)である。
【0055】
読取り要素TMR(RTMR)とは、読取り要素82に関して生じる可能性があるTMRの量である。記録ヘッドの最小オフトラック・レジストレーション・キャパシティ(OTRCmin)は、次のとおり定義される。
OTRCmin=(R-TW)/2=RTMR
トラック間隔(Ts)は、TWと、70aおよび70bのような隣接するトラック間のギャップ(GAP)の合計として定義される。
Ts=TW+GAP
スクイーズ(SQ)は、書込み要素84がトラック70の幅TWを超えてトラフ74aにまで広がるときの、隣接するトラック間のギャップを縮小できる量である。スクイーズは、次のとおり定義される。
SQ=WFG+Overshoot
上式で、WFGは、大きさがサーボ位置情報によって判定される、ヘッドがオフ・トラックであるときに書き込むことができる所定の限界に対応する「書込み障害ゲート」であり、また「Overshoot」は、シーク中またはショック・イベント中に書込みを行うとき、記録ヘッドがWFGを超える量である。Overshootは、ディスク・ドライブのパラメータに基づき、特にサーボ帯域幅によって実証的に判定される定数である。
【0056】
スクイーズ条件(OSQ)下のOTRCは、スクイーズ・マージンをゼロに設定することによって以下のとおり定義される。
0SQmargin=Ts-TW/2-Wmax/2-SQ
上式で、Wmaxは、書込み要素84の最大幅であり、またTs、TW、およびSQは、上記のとおり定義される。OSQmarginをゼロに設定し、「Ts」を「TW+GAP」で置き換えることにより、次の式がもたらされる。
0=TW+2GAP-TW/2-Wmax/2-SQ
Wmaxに関して解くことにより、次の式がもたらされる。
Wmax=TW+2GAP-2SQ
読取り要素の最大幅(Rmax)は、パターン付き媒体の構造およびデュアル要素記録ヘッドに基づいて次のとおり定義することができる。
Rmax=TW+2GAP-2RTMR
【0057】
パターン付き媒体を使用すると、パターン付きでない媒体で使用される読取り要素と比べて、読取り要素の読取り幅を相当に広げることができる。このことの1つの理由は、古いデータがデータ・トラックの外に書き込まれるのをトラフが防止し、読取り要素が相当な量の古いデータを検出する恐れなしに、読取り要素の幅を広げることが可能になるからである。例えば、TMRの許容差およびトラック幅の許容差が、110,000トラック/インチ(TPI)に調整される一実施形態では、読取り要素の幅を2倍を超えて広げ、0.10ミクロン(μm)から0.22μmにすることができる。また、読取り要素の幅を広げることにより、信号対雑音比(SNR)が有利になる。つまり、例えば、古いデータからの雑音に対して、有効なデータの量が増加する。パターン付き媒体および読取りワイド/書込みナローの記録ヘッドを使用して、例えば、6デシベル(db)SNRの向上を得ることが可能である。
【0058】
本発明は、前述した実施形態に限定されない。パターン付き媒体上のデータ・トラックは、磁気ディスクの内径において、磁気ディスクの外径におけるのと同じ、または異なるトラック密度またはビット密度を有することが可能である。例えば、データ・トラックが、内径において、外径においてより高い密度を有することが可能である。すなわち、Tsが異なることが可能である。
【0059】
データ・トラックは、図5に示すとおり、データ「アイランド」を含むことが可能である。これらのデータ・アイランド100はそれぞれ、データのブロックを保持し、データ・トラック自体の内部でトラフ102によって互いに分離/隔離される。データのブロックは1ビットまたは複数ビットからなる。データ・トラック間のトラフ74と同様に、データ・アイランド100間のトラフ102は、トラフ領域102へのデータの磁気書込みを防止するのに十分な記録ヘッドおよび/またはデータ・アイランドに対する深さを有する(トラフ74の深さとトラフ102の深さは、同一である必要はない)。この構成により、読取り要素によって検出される雑音(例えば、トラック間の雑音)の量が抑えられることでさらなる便益が提供される。
【0060】
サーボ情報(例えば、位置誤り情報)もランド上に記憶することができる。サーボ情報は、磁気ディスクの各セクタの開始におけるサーボ・バーストを使用してランド上に記憶することができる。例えば、図4を参照すると、磁気媒体の特定のセクタの中の2つ以上のサブトラック(例えば、トラック70a、70b、および/または70cの部分)上にサーボ情報を記録することができる。あるいは、図5を参照すると、サーボ情報は、「データ・アイランド」上に記憶することができ、また実際、データ・アイランド自体の周波数および配置によって決めることができる。
【0061】
代替の実施形態では、パターン付き媒体のトラフがサーボ情報などのデータを含むことが可能である。ランドに書き込まれるデータより低い周波数でトラフの底面(または「フロア」)にサーボ情報を(磁気遷移として)書き込むことができる。例えば、サーボ情報を1メガヘルツ(MHz)で書き込むことができ、またランド上にデータを19ないし250MHzで書き込むことができる。以上の周波数、またはその他の周波数でデータおよびサーボ情報を書き込むことにより、読取りワイド/書込みナローの記録ヘッド80上の読取り要素のような読取り要素がデータとサーボ情報をともに検出できるようになる。
【0062】
より詳細には、記録ヘッドは近距離で高密度データを検出することができる。また、記録ヘッドはより離れた距離で低密度データを検出することもできる。したがって、記録ヘッドにより近いランド上にデータを高密度で書き込むことができ、また記録ヘッドからより離れたトラフの中にサーボ情報をより低い密度で書き込むことができる。したがって、記録ヘッドは、同一の移動高度で両方を同時に検出することができる。この実施形態では、読取り要素はランドより幅広く、したがって、ランドの両側にランドを越えてトラフまで広がり、読取り要素がデータとサーボ情報をともに検出できるようにしている。
【0063】
記録媒体上の記録ヘッドの高さとの関係でデータの信頼度を支配する式は、Wallaceの式と呼ばれている。Wallaceの式は、次のとおりである。
【数1】

Wallaceの式で、「FH」は、記録ヘッドの移動高度、すなわち、記録媒体上の距離であり、「λ」は、データを定義する2つの磁気遷移間の波長の距離であり、「V1」は、ランドの記録媒体上のデータ磁気遷移上の読取り要素の低い移動高度の振幅であり、「Vh」は、トラフの中のサーボ磁気遷移上の読取り要素の高い移動高度の振幅であり、また「ln」は、自然対数関数である。
【0064】
トラフの中の低い周波数の磁気遷移を読取り要素が読み取ることができるようにする移動高度(FH)はWallaceの式を解くことによって決定される。また、Wallaceの式を使用して、読取り要素が、ランド上の高い周波数の磁気遷移(すなわち、データ)を検出できるのを確認することもできる。
【0065】
データは(サーボ情報とは対照的に)高い周波数で書き込まれるため、書込み要素はトラフの中にデータを書き込むことができない。この結果、トラフは同様に有効な消去帯として作用することができる。
【0066】
サーボ情報を平滑な表面のトラフ上に書き込む代りに、パターン化されたステップをトラフの中に物理的に形成することができる。サーボ情報は、ステップ自体によって生じさせられる磁化の急激な変化によって低い周波数の信号を生成するパターン化されたステップを含む。図6は、パターン化されたステップを使用してパターン付きの磁気記録媒体110のトラフの中にサーボ情報を(またはその他データさえも)記憶する例を示している。
【0067】
図6の例では、ランドおよびトラフが、磁気ディスクの交互する同心円トラックを構成しているが、本発明は、そのように限定されない。前述したとおり、ランドおよびトラフは、らせんであること、または他の任意の構成を有することが可能である。前に図4bに関して説明したとおり、ランド112a、112b、および112cを使用してデータを記憶する。また、ランドは、前に図5で示したとおり、データ・アイランドを含むことも可能である。この場合、トラフ114a、114b、114c、および114dは、図6bに描くとおり、2つのレベル、すなわち、「フロア」レベル116およびステップ118を含む(図4bの線120は、トラフの深さの差を示す)。ステップ118は、フロア116に対してランドの高さより低い高さを有する。サーボ情報は、前述したとおり、ランド上に書き込まれるデータより低い周波数で配置されたステップを含む。
【0068】
トラフのフロア116が十分に深く、またステップの周波数が十分に低い場合、サーボ情報は、データより帯域幅が低いが、それでも記録ヘッドの読取り要素によって読み取り可能である。Wallaceの式を使用して、ステップおよびランドに対する記録ヘッドの移動高さ、ならびにデータの周波数およびサーボ情報の周波数が決定される。
【0069】
トラフの中に(パターン化されたステップ上で、または磁気遷移として「フロア」上で)記憶されたサーボ情報は、ランドの両側で異なる周波数である。図6に示すとおり、(パターン化されたステップの各々の)サーボ情報は、ランド112bの左側のトラフ114bの中では、ランド112bの右側のトラフ114cの中のサーボ情報より高い周波数である。サーボ情報の周波数の違いにより、記録ヘッドの連続的サーボが可能になる。
つまり、コントローラ(図示せず)が、トラフ114bからのサーボ情報とトラフ114cからのサーボ情報の間で振幅の差を取る。この差の大きさは、記録ヘッドが、どちらかのトラフの側に向き過ぎているかどうかを示す。どちらかに向き過ぎている場合、コントローラは、記録ヘッドの位置を調整して不要な向きの外れを補償する。
ヘッドは、114bからの信号の振幅と、114cからの信号の振幅が等しいとき、オン・トラックである。
【0070】
トラフに書き込まれるサーボ情報は、サーボ信号および/またはグレイ・コードを含むことが可能である。
サーボ信号は、記録ヘッドの位置を確認するのに使用するデータを含む。グレイ・コードは、磁気記録媒体上のデータ・トラックのトラック・アドレスを定義するデータである。
【0071】
動作の際に、ランド112b上を記録ヘッド120が移動するにつれ、記録ヘッドの読取り要素(図示せず)が、ランド112bの右側および左側をそれぞれ境界付けるトラフ114bおよび114cの中のサーボ情報を検出する。読取り要素は、ランドからのデータとともにトラフからのサーボ情報を読み取る。
図7を参照する。サーボ情報とデータが読取り要素120から前置増幅器に伝送される。前置増幅器122は、読取りヘッドによって読み取られた信号を増幅し、増幅された信号を低域フィルタ124と高域フィルタ126に伝送する。
【0072】
低域フィルタ124はトラフ114bおよび114cからの低い周波数のサーボ情報をコントローラに伝送する。コントローラはトラフ114bからのサーボ情報とトラフ114cからのサーボ情報を比較する(例えば、その間の差を取る)。コントローラは、記録ヘッドがどちらかのトラフの方に向き過ぎているかどうか判定するため、結果の差の値を1つまたは複数の所定の値と比較する。どちらかに向き過ぎている場合、コントローラは、記録ヘッドの位置を修正する信号を発行する。
【0073】
高域フィルタ126は、前置増幅器122の出力を受け取り、高周波数の信号だけを、すなわち、ランドからのデータ、およびPLL(フェイズ・ロック・ループ)情報(磁気記録媒体上の専用データ・セクタに含まれることが可能なタイミング情報である)だけを通過させる。
【0074】
トラフの中にサーボ情報およびグレイ・コードを記憶することにより、やはりサーボ情報およびグレイ・コードを専用データ・セクタの中に記憶する記録媒体と比べて、専用データ・セクタのサイズをより大きくすることができる。この結果、記録媒体上でデータのためのより大きな余地が存在する。
【0075】
本発明は、以上に提示した特定の実施形態に限定されない。様々な実施形態の異なる特徴を組み合わせることが可能である。例えば、単一のパターン付き磁気記録媒体において、図5のデータ・アイランドを図6のステップ付きトラフと組み合わせることが可能である。ステップ付きトラフの磁気記録媒体は、前述したその他のパターン付き媒体と同じ仕方で形成することができる。これに関して、パターン付き媒体は、ガラス基板上のポリマー層に限定されない。任意のタイプのプレス加工可能な磁気記録材料を使用することができる。パターン付き媒体は、磁気ディスクまたは他の回転可能な媒体に限定されない。パターン付き媒体は、磁気テープまたはそれに類するものであることが可能である。
【0076】
また、本明細書で具体的に説明していない他の実施形態も、頭記の特許請求の範囲のなかにある。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】デュアル要素記録ヘッドにおける読取り要素と書込み要素の間のオフセット、ならびに様々なトラック上にヘッドを位置合わせする際にこのオフセットが有する効果を示す図である。
【図2A】読取りワイド/書込みナローのアーキテクチャを有するデュアル要素記録ヘッドを使用する、あるトラックに対する書込み動作、および同一のトラックに対する第2の後続の書込み動作を示す図である。
【図2B】読取りワイド/書込みナローのアーキテクチャを有するデュアル要素記録ヘッドを使用する、あるトラックに対する書込み動作、および同一のトラックに対する第2の後続の書込み動作を示す図である。
【図2C】読取りワイド/書込みナローのアーキテクチャを有するデュアル要素記録ヘッドを使用する、あるトラックに対する書込み動作、および同一のトラックに対する第2の後続の書込み動作を示す図である。
【図3】パターン付き媒体、および読取りワイド/書込みナローのデュアル要素記録ヘッドの書込み要素の横断面の側方からの透視図である。
【図4】パターン付き媒体を構成する構成要素を示すパターン付き媒体の横断面の側方からの図(a)とパターン付き媒体、ならびにデュアル要素記録ヘッドの読取り要素および書込み要素に対するパターン付き媒体の関係を示す上面図(b)である。
【図5】データ・トラックの中にデータ・アイランドを含むパターン付き媒体の横断面の側方からの透視図である。
【図6】データを記憶するためのランド、およびサーボ情報を記憶するためのステップを有するトラフから成る磁気記録媒体を示す上面図(a)と磁気記録媒体の横断面の側方からの図(b)である。
【図7】パターン付き媒体のトラフの中にサーボ情報が書き込まれている磁気記録媒体を含む磁気記録システムを示すブロック図である。
【符号の説明】
【0078】
16,80…記録ヘッド、18…ディスク、20,22,24…トラック、26…読取り要素、28…書込み要素、70a,70b,70c…ランド、72…パターン付き媒体、74a,74b,114a,114b,114c,114d,102…トラフ、76…基板、78…ポリマー層、82…読取り要素、84…書込み要素、100…データ・アイランド、116…フロア、118…ステップ、120…記録ヘッド、122…前置増幅器、124…低域フィルタ、126…高域フィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを記憶するためのランド領域およびデータの記憶を妨げるためのトラフ領域から成るパターン付き媒体と、
前記パターン付き媒体に前記データを書き込む書込み要素と、
前記書込み要素の幅より広い幅を有し、前記パターン付き媒体から前記データを読み取る読取り要素とから構成され、
前記ランド領域は前記トラフ領域によって互いに分離されたデータ・アイランドを含む磁気記録システム。
【請求項2】
データを記憶するためのランド領域および前記ランド領域を互いに実質的に分離するトラフ領域を含む、データを記憶する複数のトラックを有する磁気ディスクと、
書込み要素および読取り要素を含み、前記読取り要素が前記書込み要素の幅より広い幅を有する前記磁気ディスクにデータを転送し、また前記磁気ディスクからデータを転送する記録ヘッドとを含むディスク・ドライブ。
【請求項3】
記憶手段上に物理的にスタンピングされた消去帯によって分離されているデータ・トラックの中にデータを磁気式に記憶するための記憶手段と、
前記記憶手段にデータを書き込むための書込み手段と、
前記書込み手段の幅より広い幅を有し、前記記憶手段からデータを読み取るための読取り手段とから構成され、
前記読取り手段および前記書込み手段が、読取り中および書込み中、前記記憶手段の上を移動する記録手段の一部であり、
前記消去帯は、前記トラフへのデータの磁気書込みを防止するのに十分な前記記録手段に対する深さを有することを特徴とする磁気記録装置。
【請求項4】
記憶手段上に物理的にスタンピングされた消去帯によって分離されているデータ・トラックの中にデータを磁気式に記憶するための記憶手段と、
前記記憶手段にデータを書き込むための書込み手段と、
前記書込み手段の幅より広い幅を有する前記記憶手段からデータを読み取るための読取り手段とから構成され、
前記読取り手段および前記書込み手段は、読取り中および書込み中、前記記憶手段の上を移動する記録手段の一部であり、
前記データ・トラックは、トラフによって分離されたデータ・アイランドのシーケンスを含むことを特徴とする磁気記録装置。
【請求項5】
データを記憶するためのランド領域、およびデータの記憶を禁止するためのトラフ領域から成るパターン付き媒体と、
読取り要素を有し、前記読取り要素が、前記ランド領域の幅より広い幅を有する前記パターン付き媒体の前記ランド領域に対してデータの読取りおよび書込みを行う記録ヘッドとから構成され、
前記記録ヘッドは、前記読取り要素の前記幅より狭く、かつ前記ランド領域の前記幅に等しいか、または前記ランド領域の前記幅より広い幅を有する書込み要素をさらに含む磁気記録システム。
【請求項6】
データを記憶するためのランド領域、およびデータの記憶を妨げるためのトラフ領域から成るパターン付き媒体と、
読取り要素を有し、前記読取り要素が、前記ランド領域の幅より広い幅を有する前記パターン付き媒体の前記ランド領域に対してデータの読取りおよび書込みを行う記録ヘッドとから構成され、
前記ランド領域は、前記トラフ領域によって互いに分離されたデータ・アイランドを含む磁気記録システム。
【請求項7】
データを記憶するランド領域と、
サーボ情報を記憶するトラフ領域と、
前記トラフに対して前記ランド領域より低い高さを有する前記サーボ情報を含むステップを含む磁気記録媒体。
【請求項8】
データを記憶するランド領域と、
サーボ情報を記憶するトラフ領域と、
ランド領域が、データ・トラックとから構成され、第1のトラフが、前記ランド領域の一方の側を境界付け、また第2のトラフが、前記ランド領域の別の側を境界付け、前記第1のトラフの中の前記サーボ情報が、前記第2のトラフの中の前記サーボ情報とは異なる周波数である磁気記録媒体。
【請求項9】
データを記憶するランド領域、およびサーボ情報を記憶するトラフ領域から成るパターン付き媒体と、
前記パターン付き媒体の前記ランド領域に対してデータの読取りおよび書込みを行い、かつ前記トラフ領域からサーボ情報を読み取る記録ヘッドとから構成され、
前記記録ヘッドは、読取り要素および書込み要素を有し、且つ前記読取り要素は、前記書込み要素の幅より広い幅を有する磁気記録システム。
【請求項10】
データを記憶するランド領域、およびサーボ情報を記憶するトラフ領域から成るパターン付き媒体と、
前記パターン付き媒体の前記ランド領域に対してデータの読取りおよび書込みを行い、かつ前記トラフ領域からサーボ情報を読み取る記録ヘッドとから構成され、
前記トラフ領域は、前記トラフに対して前記ランド領域より低い高さを有する前記サーボ情報を含むステップを含む磁気記録媒体。
【請求項11】
データを記憶するランド領域、およびサーボ情報を記憶するトラフ領域から成るパターン付き媒体と、
前記パターン付き媒体の前記ランド領域に対してデータの読取りおよび書込みを行い、かつ前記トラフ領域からサーボ情報を読み取る記録ヘッドとから構成され、
ランド領域は、データ・トラックを含み、第1のトラフは、前記ランド領域の一方の側を境界付け、また第2のトラフは、前記ランド領域の別の側を境界付け、前記第1のトラフの中の前記サーボ情報は、前記第2のトラフの中の前記サーボ情報とは異なる周波数である磁気記録媒体。
【請求項12】
データを記憶するランド領域、およびサーボ情報を記憶するトラフ領域から成るパターン付き媒体の上方で記録ヘッドを動かすステップと、
ランド領域上にデータを転送するステップと、
前記データを転送するのと同時にトラフ領域からサーボ情報を読み取るステップと、
前記サーボ情報を使用して前記記録ヘッドを前記ランド領域に対して動かすステップとを含み、
前記ランド領域はデータ・トラックを含み、第1のトラフは、前記ランド領域の一方の側を境界付け、また第2のトラフは前記ランド領域の別の側を境界付け、
前記サーボ情報を使用して前記記録ヘッドを動かすことが、前記第1のトラフからのサーボ情報を前記第2のトラフからのサーボ情報と比較し、前記比較に基づいて前記記録ヘッドの位置合わせを修正すること、
前記第1のトラフの中の前記サーボ情報が前記第2のトラフの中の前記サーボ情報とは異なる周波数であるデータにアクセスする方法。
【請求項13】
データを記憶するランド領域、およびサーボ情報を記憶するトラフ領域から成るパターン付き媒体の上方で記録ヘッドを動かすステップと、
ランド領域上にデータを転送するステップと、
前記データを転送するのと同時にトラフ領域からサーボ情報を読み取るステップと、
前記サーボ情報を使用して前記記録ヘッドを前記ランド領域に対して動かすステップとを含み、
前記記録ヘッドは読取り要素および書込み要素を有し、前記読取り要素は前記書込み要素の幅より広い幅を有するデータにアクセスする方法。
【請求項14】
データを記憶するためのランド領域およびデータの記憶を妨げるためのトラフ領域から成るパターン付き媒体と、
前記パターン付き媒体に前記データを書き込む書込み要素と、
前記書込み要素より幅が広い幅を有し、前記パターン付き媒体から前記データを読み取る、読取り要素とを含む磁気記録システム。
【請求項15】
記憶手段上に物理的にスタンピングされた消去帯によって分離されているデータ・トラックの中にデータを磁気式に記憶するための記憶手段と、
前記記憶手段にデータを書き込むための書込み手段と、
前記書込み手段の幅より広い幅を有する前記記憶手段からデータを読み取るための読取り手段とを含む磁気記録装置。
【請求項16】
データを記憶するランド領域、およびサーボ情報を記憶するトラフ領域から成るパターン付き媒体の上方で記録ヘッドを動かすステップと、
ランド領域上にデータを転送するステップと、
前記データを転送するのと同時にトラフ領域からサーボ情報を読み取るステップと、
前記サーボ情報を使用して前記記録ヘッドを前記ランド領域に対して動かすステップとを含むデータにアクセスする方法。
【請求項17】
アルミ合金基板と、
上記アルミ合金基板上に形成したNip層と、
上記Nip層上に形成した1又はそれ以上のパターン層とから構成されるパターン付き磁気記録媒体であって、
上記1又はそれ以上のパターン層はランド領域とトラフ領域を形成し、このランド領域はデータを蓄積し且つトラフ領域はランド領域間にデータを蓄積するのを禁止することを特徴とする磁気媒体。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−193944(P2007−193944A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118735(P2007−118735)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【分割の表示】特願2002−285575(P2002−285575)の分割
【原出願日】平成14年9月30日(2002.9.30)
【出願人】(500430198)コマーグ・インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】