説明

磁気転写方法および磁気転写装置

【課題】 磁気転写によって、磁気パターンの位置によらずに高品位の転写パターンを磁気転写用マスター担体からスレーブ媒体へ転写する。
【解決手段】 リング型ヘッド電磁石を、スレーブ媒体の上面あるいは下面側の少なくとも一方に配設し、スレーブ媒体あるいは電磁石をトラック方向に回転させ、スレーブ媒体面のトラック方向に磁界を印加することにより、あらかじめスレーブ媒体磁化をトラック方向に初期直流磁化した後、磁気転写用マスター担体と上記初期直流磁化したスレーブ媒体とを密着させスレーブ媒体面の初期直流磁化方向と逆向きのトラック方向に転写用磁界を印加させて、磁気転写を行う磁気転写方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気記録媒体に多くの情報を一度に記録する方法に関し、とくに大容量、高記録密度の磁気記録媒体への記録情報の転写方法に関する。
【0002】
【従来の技術】デジタル画像の利用の進展等で、パソコン等で取り扱う情報量が飛躍的に増加している。情報量の増加によって、情報を記録する大容量で安価で、しかも記録、読み出し時間の短い磁気記録媒体が求められている。ハードディスク等の高密度記録媒体や、ZIP(アイオメガ社)に代表される高密度のフロッピー(登録商標)ディスク型の磁気記録媒体では、一般のフロッピーディスクに比べて情報記録領域は狭トラックで構成されており、狭いトラック幅を正確に磁気ヘッドを走査し、信号の記録と再生を高S/N比で行うためには、トラッキングサーボ技術を用いて正確な走査を行うことが必要である。そこで、ハードディスク、リムーバル型の磁気記録媒体のような大容量の磁気記録媒体では、ディスクの1周のなかである間隔でトラッキング用のサーボ信号やアドレス情報信号、再生クロック信号等が記録された、いわゆるプリフォーマットがなされている。
【0003】磁気ヘッドはこのプリフォーマットの信号を読みとって自己の位置を修正することで正確にトラック上を走行することが可能となっている。現在のプリフォーマットはディスクを専用のサーボ記録装置を用いて、1枚ずつ、1トラックずつ記録して作製される。サーボ記録装置は高価であること、プリフォーマット作製に長時間を要するために製造に長時間を要し、製造コストにも影響を及ぼすという問題があった。
【0004】そこで、1トラックずつプリフォーマットを行わずに磁気転写で行う方式も提案されている。例えば、特開昭63−183623号公報、特開平10−40544号公報、および特開平10−269566号公報に転写技術が紹介されている。しかしながら、磁気転写方法において転写時に印加する磁界の条件およびその磁界を発生するための具体的な手段をはじめとして、実際に即した提案は行われてこなかった。
【0005】また、こうした従来の問題点を解決する記録方法として、特開昭63−183623号公報や特開平10−40544号公報において、基体の表面に情報信号に対応する凹凸形状が形成され、凹凸形状の少なくとも凸部表面に強磁性薄膜が形成された磁気転写用マスター担体の表面を、強磁性薄膜あるいは強磁性粉塗布層が形成されたシート状もしくはディスク状磁気記録媒体の表面に接触、あるいはさらに交流バイアス磁界、あるいは直流磁界を印加して凸部表面を構成する強磁性材料を励磁することによって、凹凸形状に対応する磁化パターンを磁気記録媒体に記録する方法が提案されている。
【0006】この方法では、磁気転写用マスター担体の凸部表面をプリフォーマットすべき磁気記録媒体、すなわちスレーブ媒体に密着させて同時に凸部を構成する強磁性材料を励磁することにより、スレーブ媒体に所定のフォーマットを形成する転写による方法であり、磁気転写用マスター担体とスレーブ媒体との相対的な位置を変化させることなく静的に記録を行うことができ、正確なプリフォーマット記録が可能であるという特徴を有している。しかも記録に要する時間も極めて短時間であるという特徴を有している。すなわち、前述した磁気ヘッドから記録する方法では、通常数分から数十分は必要であり、且つ記録容量に比例して転写に要する時間はさらに長くなるという問題があったが、この磁気転写法であると、記録容量や記録密度に関係なく1秒以下で転写を完了させることができると言う特徴と有している。
【0007】図1を参照して、磁気転写用マスター担体におけるプリフォーマット用のパターンの転写を説明する。図1(A)は磁気転写用マスター担体の磁性層面を模式的に説明した平面図であり、図1(B)は転写過程を説明する断面図である。磁気転写用マスター担体1のトラックの所定の領域に、転写すべきトラッキング用のサーボ信号やアドレス信号のパターンを形成したプリフォーマット領域2とデータ領域3が形成されており、磁気転写用マスター担体1とスレーブ媒体4とを密着させてトラック方向5の転写用外部磁界6を加えることによってプリフォーマット情報をスレーブ媒体側に記録情報7として転写することができるので、効率的にスレーブ媒体を製造することができるものである。ところが、このよう方法によって転写を行った場合には、情報信号品位が悪いものが生じることがあり、サーボ動作が不正確となるものが生じる場合があることが明かとなった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、磁気転写用マスター担体とスレーブ媒体とを密着させて外部磁界を印加してプリフォーマットパターンの転写によって作製したスレーブ媒体のサーボ動作が不正確となることを防止して安定的な転写方法および装置を提供することを課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、基板の表面の情報信号に対応する部分に磁性層が形成された磁気転写用マスター担体と転写を受ける磁気記録媒体からなるスレーブ媒体とを密着させて転写用磁界を印加する磁気転写方法において、リング型ヘッド電磁石をスレーブ媒体の上面あるいは下面側の少なくとも一方に配設し、スレーブ媒体あるいはリング型ヘッド電磁石をトラック方向に回転させ、スレーブ媒体面のトラック方向に磁界を印加することにより、あらかじめスレーブ媒体磁化をトラック方向に初期直流磁化した後、磁気転写用マスター担体と上記初期直流磁化したスレーブ媒体を密着させてスレーブ媒体面の初期直流磁化方向と逆向きのトラック方向に転写用磁界を印加させ磁気転写を行う磁気転写方法である。
【0010】基板の表面の情報信号に対応する部分に磁性層が形成された磁気転写用マスター担体と転写を受ける磁気記録媒体からなるスレーブ媒体とを密着させて転写用磁界を印加する磁気転写方法において、スレーブ媒体面のトラック方向に磁界を印加し、あらかじめスレーブ媒体磁化をトラック方向に初期直流磁化した後、磁気転写用マスター担体と上記初期直流磁化したスレーブ媒体を密着させ、リング型ヘッド電磁石を、スレーブ媒体の上面あるいは下面側の少なくとも一方に配設し、リング型ヘッド電磁石あるいは磁気転写用マスター担体とスレーブ媒体とを密着させた密着体をトラック方向に回転させ、初期直流磁化方向と逆向きのトラック方向の転写用磁界を印加させ磁気転写を行う磁気転写方法である。
【0011】リング型ヘッド電磁石を、スレーブ媒体の上面あるいは下面側の少なくとも一方に磁極の軸をスレーブ媒体面と平行に配設した時に発生する磁界のトラック方向における磁界強度分布がスレーブ媒体の保磁力Hcs以上の磁界強度部分をトラック方向位置で少なくとも1カ所以上有する前記の磁気転写方法である。リング型ヘッド電磁石を、スレーブ媒体の上面あるいは下面の少なくとも一方に配設した時に発生する磁界のトラック方向における磁界強度分布がスレーブ媒体の保磁力Hcs以上の磁界強度部分をトラック方向位置で一方向のみで有しており、逆方向の磁界強度はいずれのトラック方向位置でもスレーブ媒体の保磁力Hcs未満である前記の磁気転写方法である。
【0012】リング型ヘッド電磁石をスレーブ媒体の上面あるいは下面側の少なくとも一方に配設した時に発生する磁界のトラック方向磁界強度分布において、最適転写磁界強度範囲の最大値を超える磁界強度がいずれのトラック方向位置でも存在せず、最適転写磁界強度範囲内の磁界強度となる部分が一つのトラック方向で少なくとも1カ所以上存在し、これと逆向きのトラック方向の磁界強度がいずれのトラック方向位置においても、最適転写磁界強度範囲の最小値未満である前記の磁気転写方法である。最適転写磁界強度が、スレーブ媒体の保磁力Hcsに対して0.6×Hcs〜1.3×Hcsである前記の磁気転写方法である。また、スレーブ媒体の両側にリング型ヘッド電磁石を配置する前記の磁気転写方法である。
【0013】また、基板の表面の情報信号に対応する部分に磁性層が形成された磁気転写用マスター担体と転写を受ける磁気記録媒体からなるスレーブ媒体とを密着させて転写用磁界を印加する磁気転写装置において、リング型ヘッド電磁石を、スレーブ媒体の上面あるいは下面側の少なくとも一方に配設し、スレーブ媒体あるいは電磁石をトラック方向に回転させ、スレーブ媒体面のトラック方向に磁界を印加することによりあらかじめスレーブ媒体磁化をトラック方向に初期直流磁化する初期直流磁化手段、磁気転写用マスター担体と上記初期直流磁化したスレーブ媒体とを密着させる密着手段、スレーブ媒体面の初期直流磁化方向と逆向きのトラック方向に転写用磁界を印加させる転写磁界印加手段からなる磁気転写装置である。
【0014】基板の表面の情報信号に対応する部分に磁性層が形成された磁気転写用マスター担体と転写を受ける磁気記録媒体からなるスレーブ媒体とを密着させて転写用磁界を印加する磁気転写装置において、スレーブ媒体面のトラック方向に磁界を印加しあらかじめスレーブ媒体磁化をトラック方向に初期直流磁化する初期直流磁化手段、磁気転写用マスター担体と上記初期直流磁化したスレーブ媒体を密着させる密着手段、リング型ヘッド電磁石をスレーブ媒体の上面あるいは下面側の少なくとも一方に配設し、電磁石あるいは磁気転写用マスター担体とスレーブ媒体とを密着させた密着体を、トラック方向に回転させて初期直流磁化方向と逆向きのトラック方向の転写用磁界を印加させる転写磁界印加手段を有する磁気転写装置である。リング型ヘッド電磁石をスレーブ媒体の上面あるいは下面側の少なくとも一方に配設した時に発生する磁界のトラック方向における磁界強度分布がスレーブ媒体の保磁力Hcs以上の磁界強度部分をトラック方向位置で少なくとも1カ所以上有する前記の磁気転写装置である。
【0015】リング型ヘッド電磁石をスレーブ媒体の上面あるいは下面側の少なくとも一方に磁極の軸をスレーブ媒体面と平行に配設した時に発生する磁界のトラック方向における磁界強度分布がスレーブ媒体の保磁力Hcs以上の磁界強度部分をトラック方向位置で一方向のみで有しており、逆方向の磁界強度はトラック方向のいずれの位置でもスレーブ媒体の保磁力Hcs未満である前記の磁気転写装置である。
【0016】リング型ヘッド電磁石をスレーブ媒体の上面あるいは下面側の少なくとも一方に磁極の軸をスレーブ媒体面と平行に配設した時に発生する磁界のトラック方向磁界強度分布において、最適転写磁界強度範囲の最大値を超える磁界強度がいずれのトラック方向位置でも存在せず、最適転写磁界強度範囲内の磁界強度となる部分が一つのトラック方向で少なくとも1カ所以上存在し、これと逆向きのトラック方向の磁界強度がいずれのトラック方向位置においても最適転写磁界強度範囲の最小値未満である前記の磁気転写装置である。最適転写磁界強度がスレーブ媒体の保磁力Hcsに対して0.6×Hcs〜1.3×Hcsである前記の磁気転写装置である。スレーブ媒体の両側にリング型ヘッド電磁石を配置する前記の磁気転写装置である。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明者らは、磁気転写用マスター担体とスレーブ媒体とを密着させて外部より転写用磁界を印加した際に、転写が不安定で信号品位が低下した部分が生じるのは、転写時に印加する磁界が適切でないために信号品位が低下することが原因であることを見いだし本発明を想到したものである。
【0018】磁気転写用マスター担体からスレーブ担体への磁気転写においては、スレーブ媒体の保持力Hcsよりも高い外部磁界を印加すると、スレーブの磁化状態がすべて印加した方向に磁化し、このために本来転写すべきパターンの記録が行なわれないと一般には考えられていた。例えば、特開平10−40544号公報においても、段落番号0064において、磁気記録媒体の保持力と同程度以下とすることが好ましいことが記載されている。しかしながら、本発明者等の検討によって本方式における磁気転写の原理は図1に示す様に、磁気転写用マスター担体1のスレーブ媒体4に実質的に接触している凸の磁性層部分では転写用外部磁界6は、その凸部分へ吸収される磁界6aとなり、接触しているスレーブ媒体4の磁性層では記録できる磁界強度とならないが、磁気転写用マスター担体1のスレーブ媒体4に接触していない凹の部分に対応するスレーブ媒体4の磁性層では記録できる磁界強度となり、図の7に示す様に転写用外部磁界6の方向に磁化され、磁気転写用マスター担体1のプリフォーマット用パターンをスレーブ媒体4へ記録情報7として転写することができるものであることが判明した。したがって、磁気転写用マスター担体からスレーブ媒体への転写の際には、スレーブ媒体と接触している部分は多くの磁界が磁気転写用マスター担体のパターン部に入るために、スレーブ媒体には、保磁力Hcsよりも高い転写磁界を印加しても反転しないものと考えられる。そして、スレーブ媒体の保磁力Hcsと比較して特定の関係の強度を有する転写用磁界を適用することによって信号品位の高いスレーブ媒体を得ることができる。
【0019】そして、スレーブ媒体の保磁力Hcsと比較して特定の関係の強度を有する転写用磁界を適用することによって信号品位の高いスレーブ媒体を得ることができることを見いだしたものである。明瞭な転写をいかなるパターンにおいても実現するためには、スレーブ媒体をあらかじめ一方向に十分大きな磁界で、保磁力Hcs以上、好ましくはHcsの1.2倍以上で初期直流磁化しておき、特定の強度の転写用磁界、すなわち最適転写磁界強度範囲の磁界を印加するものであり、好ましい転写用磁界は、0.6×Hcs≦転写用磁界≦1.3×Hcsであり、その向きは初期直流磁化の向きと逆向きに印加するものである。また、転写用磁界はより好ましくは0.8〜1.2Hcsであり、さらに好ましくは1〜1.1Hcsである。
【0020】また、サーボ用のプリフォーマットを行う磁気記録媒体は、円盤状の記録媒体であり、回転の中心から同心円状に描かれたトラックに沿って情報を記録している。このような円盤状磁気記録媒体において、放射状のパターンを転写する磁界印加方法は、スレーブ媒体面のトラック方向、すなわち任意のトラック方向位置で円弧の接線方向に磁界を印加しあらかじめスレーブ媒体磁化をトラック方向に初期直流磁化する。
【0021】次いで、磁気転写用マスター担体と上記初期直流磁化したスレーブ媒体を密着させスレーブ媒体面のトラック方向に転写用磁界を印加させ磁気転写を行うが、あらかじめスレーブ媒体にトラック方向磁界を印加し初期直流磁化させた方向と磁気転写を行うために印加する転写用磁界とがスレーブ媒体面において逆向きであることが必要である。
【0022】したがって円盤状媒体の全面にわたって上記印加磁界条件の磁界を印加するためには、スレーブ媒体の保磁力Hcs以上の磁界強度部分をトラック方向位置で少なくとも1カ所以上有する様な磁界強度分布の磁界をトラック方向の一部分で発生させ、スレーブ媒体あるいは磁界をトラック方向に1周の回転をさせることにより初期直流磁化を実現することができる。
【0023】また、スレーブ媒体の保磁力Hcs以上の磁界強度部分をトラック方向位置で一方向のみで有しており、逆方向の磁界強度はいずれのトラック方向位置でもスレーブ媒体の保磁力Hcs未満である様な磁界強度分布の磁界をトラック方向の一部分で発生させ、スレーブ媒体あるいは磁界をトラック方向に1回転させることにより、あらかじめスレーブ媒体磁化をトラック方向に初期直流磁化するための磁界を印加することができる。
【0024】そして、最適転写磁界強度範囲の最大値を超える磁界強度がいずれのトラック方向位置でも存在せず、最適転写磁界強度範囲内の磁界強度となる部分が一つのトラック方向で少なくとも一カ所以上存在し、これと逆向きのトラック方向の磁界強度がいずれのトラック方向位置においても最適転写磁界強度範囲の最小値未満である様な磁界強度分布の磁界をトラック方向の一部分で発生させ、磁気転写用マスター担体と初期直流磁化したスレーブ担体を密着させた状態でトラック方向に回転させるかあるいは磁界をトラック方向に回転させることにより、スレーブ媒体面のトラック方向に転写用磁界を印加することによっても実現できる。
【0025】初期直流磁化および磁気転写に用いる電磁石は、スレーブ媒体の一端のトラックから他端のトラックまでの距離と同程度の大きさ、もしくはその距離よりも大きいものが好ましく、円盤状のスレーブ媒体にあってはスレーブ媒体の最外周トラックから最内周トラックまでの半径方向距離と同程度の大きさもしくはその距離よりも大きいものが好まれる。このような大きさのものを用いることによってスレーブ媒体、スレーブ媒体と磁気転写用マスター担体との密着体、もしくは電磁石のいずれかをトラック全長にわたって一方向に移動させるか1周の回転をするのみでスレーブ媒体面に均一な磁界を与えることが可能となる。また、電磁石を用いて印加する磁界強度は全トラック位置において均一なものが要求され、そのばらつきの大きさは全トラック位置で±5%以内が好ましく、さらには±2.5%以内とすることがより好ましい。
【0026】以下に図面を参照して、転写方法および転写装置について説明する。図2は、リング型ヘッド電磁石を用いた磁界の印加方法を説明する図である。図2(A)は、スレーブ媒体4の上面に、リング型ヘッド電磁石8を配置した状態でスレーブ媒体4を回転する例を示している。スレーブ媒体4の上面に設けたリング型ヘッド電磁石8から、図2(B)に示すようにスレーブ媒体4の面に対して磁界9が与えられる。図2(C)は、スレーブ媒体に与えられる磁界強度を示す図である。スレーブ媒体に与えられる磁界には、スレーブ媒体の保磁力Hcsを超えるピーク10が存在しており、スレーブ媒体を回転させるかあるいはリング型ヘッド電磁石を回転させることによってスレーブ媒体を初期直流磁化することができる。また、図2(D)は、スレーブ媒体4の上面および下面の両面に、リング型ヘッド電磁石8aおよび8bを、スレーブ媒体4面に配置した状態でスレーブ媒体4を回転する例を示しており、スレーブ媒体4の両面にそれぞれ1個ずつ設けたリング型ヘッド電磁石8aおよび8bから、図2(E)に示すようにスレーブ媒体4の面に対して磁界9が与えられる。
【0027】図3は、磁気転写用マスター担体からスレーブ媒体への転写方法を説明する図である。図3(A)は、スレーブ媒体と磁気転写用マスター担体との密着体への磁界の印加を説明する図であり、図3(B)は、図3R>3(A)の磁界の印加によって与えられる磁界の強度を説明する図である。スレーブ媒体4を磁気転写用マスター担体1と密着させた密着体11の表面に対して、スレーブ媒体の保磁力Hcs以上の磁界をトラック方向に与えることができるリング型ヘッド電磁石8を配設して磁界12を与えることによって、密着体11あるいはリング型ヘッド電磁石8の少なくとも一方を密着体11の中心軸に対してトラック方向に回転させることによって、密着体11の全面に初期直流磁化の磁化方向とは反対方向の磁界が与えられる。与えられる磁界のうち強度の小さなピーク13は、磁気転写用マスター担体からスレーブ媒体へのパターンの転写には何ら影響を与えず、強度の大きなピーク14のみが、磁気転写に寄与することとなる。また、強度の大きなピーク14は、磁気転写用マスター担体からスレーブ媒体への最適転写磁界強度範囲の磁界を与えることによってパターンの形状に係わらず良好なパターンを形成することが可能となる。
【0028】また、図3(C)は、密着体11の両面に、スレーブ媒体の保磁力Hcs以上の磁界をトラック方向に与えることができるリング型ヘッド電磁石8aおよび8bを配設して磁界12を与えた状態で、密着体あるいはリング型ヘッド電磁石の少なくとも一方を密着体の中心軸に対してトラック方向に回転させることによって、密着体の全面に初期直流磁化の磁化方向とは反対方向の磁界が与えられ、磁界の強度の大きなピークが磁気転写の作用をする。
【0029】また、図2および図3で示した磁気転写方法に用いる装置には、スレーブ媒体面とリング型ヘッド電磁石との距離、およびスレーブ媒体面に対する角度を任意に調整し得る機構が設けられており、スレーブ媒体とリング型ヘッド電磁石との間の距離、および角度を調整することにより、スレーブ媒体面で所望の磁界強度が得られる。
【0030】リング型ヘッド電磁石に用いるコア材料としては、軟鉄、ケイ素鋼、パーマロイ、高透磁率フェライト等を用いることができる。また、ヘッド間隔は、1mm〜20mmとすることが好ましく、5mm〜15mmとすることがより好ましい。
【0031】本発明の磁気転写に使用する磁気転写用マスター担体の製造方法について説明する。磁気転写用マスター担体用の基板としては、シリコン、石英板、ガラス、アルミニウム等の非磁性金属または合金、セラミックス、合成樹脂等の表面が平滑な板状体であり、エッチング、成膜工程での温度等の処理環境に耐性を有するものを用いることができる。表面が平滑な基板にフォトレジストを塗布し、プリフォーマットのパターンに応じたフォトマスクを用いて露光、現像したり、あるいはフォトレジストを直接にけがく等の方法によってフォトレジストにプリフォーマットの情報に応じたパターンを形成する。
【0032】次いで、エッチング工程において、反応性エツチング、アルゴンプラズマを用いた物理的エッチング、液体を用いたエッチング等の基板に応じたエッチング手段によって、パターンに応じて基板のエッチングを行う。エッチングによって形成する穴の深さは、転写情報記録部として形成する磁性層の厚さに相当する深さとするが、20nm以上1000nm以下であることが好ましい。厚すぎると磁界の広がり幅が大きくなるので望ましくない。形成する穴は、底面が基板の表面に平行な平面で形成されるような深さが均等な穴を形成することが好ましい。また、穴の形状は、面に垂直なトラック方向の断面が長方形の形状であることが好ましい。
【0033】次いで、磁性材料を真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の真空成膜手段、めっき法により形成した穴に対応した厚さで基板の表面まで磁性材料を成膜する。転写情報記録部の磁気特性は、抗磁力(Hc)は199kA/m(2500Oe)以下、好ましくは0.4〜119kA/m(5〜1500Oe)であり、飽和磁束密度(Bs)としては、0.3T(テスラ)以上、好ましくは0.5T以上である。次いで、フォトレジストをリフトオフ法で除去し、表面を研磨して、ばりがある場合は取り除くとともに、表面を平坦化する。
【0034】以上の説明では、基板に穴を形成し、形成した穴に磁性材料を成膜する方法について述べたが、フォトファブリーケション法によって基板上の所定の箇所に、磁性材料を成膜して転写情報記録部の凸部を形成した後に、凸部の間に非磁性材料を成膜あるいは充填し、転写情報記録部と非磁性材料部の表面を同一平面としても良い。
【0035】また、磁性層に用いることができる磁性材料としては、磁束密度が大きなコバルト、鉄あるいはそれらの合金を用いることができる。具体的には、Co、CoPtCr、CoCr、CoPtCrTa、CoPtCrNbTa、CoCrB、CoNi、Fe、FeCo、FePt等を挙げることができる。また、磁性層の厚さとしては、20〜1000nmであり、好ましくは30ないし500nmである。あまり厚いと記録分解能が低下する。
【0036】とくに、磁束密度が大きく、スレーブ媒体と同じ方向、例えば面内記録の場合には面内方向、垂直記録の場合には垂直方向の磁気異方性を有していることが明瞭な転写が行うためには好ましい。磁性材料は、細かな磁気粒子又はアモルファス構造を有していることが鋭利なエッジが形成できる点からも好ましい。
【0037】また、磁気材料に磁気異方性を形成するためには、非磁性の下地層を設けることが好ましく、結晶構造と格子常数を磁性層と同様のものとすることが必要である。具体的には、そのような下地層としては、Cr、CrTi、CoCr、CrTa、CrMo、NiAl、Ru等をスパッタリングによって成膜することができる。
【0038】また、磁性層の上にダイヤモンド状炭素膜等の保護膜を設けても良く、潤滑剤を設けても良い。保護膜として5〜30nmのダイヤモンド状炭素膜と潤滑剤が存在することがさらに好ましい。その上に潤滑剤が設けられていることが必要な理由は、スレーブとの接触過程で生じるずれを補正する際に摩擦が生じ、潤滑剤層がないと耐久性が不足するためである。
【0039】本発明の磁気転写用マスター担体は、ハードディスク、大容量リムーバル型磁気記録媒体等のディスク型磁気記録媒体への磁気記録情報の転写のみではなく、カード型磁気記録媒体、テープ型磁気記録媒体への磁気記録情報の転写にも用いることができる。
【0040】
【実施例】以下に実施例を示し、本発明を説明する。
実施例1および比較例1(磁気転写用マスター担体の作製)真空成膜装置において、室温にて1.33×10-5Pa(10-7Torr)まで減圧した後に、アルゴンを導入して圧力を0.4Pa(3×10-3Torr)とした条件下で、シリコン基板上に厚さ200nmのFeCo膜を形成し、3.5型の円盤状の磁気転写用マスター担体とした。保磁力Hcは8kA/m(100Oe)、磁束密度Msは28.9T(23000Gauss)であった。円盤状パターンを円盤中心から半径方向20mm〜40mmの位置までの幅10μの等間隔の放射状ライン、ライン間隔は半径方向20mmの最内周位置で10μm間隔とした。
【0041】(スレーブ媒体の作製)真空成膜装置において、室温にて1.33×10-5Pa(10-7Torr)まで減圧した後に、アルゴンを導入して圧力を0.4Pa(3×10-3Torr)とした条件下で、ガラス板を200℃に加熱し、CoCrPt25nm,Ms:5.7T(4500Gauss)、保磁力Hcs:199kA/m(2500Oe)である3.5型の円盤状磁気記録媒体を作製した。
【0042】(初期直流磁化方法)ピーク磁界強度がスレーブ媒体の表面において、スレーブ媒体の保磁力Hcsの2倍の388kA/m(5000Oe)となるように、図2で示したように両面に電磁石を配置して、スレーブ媒体の初期直流磁化を行った。
【0043】(磁気転写試験方法)初期直流磁化したスレーブ媒体と磁気転写用マスター担体とを密着させて、図3に示した両面に電磁石を有する装置を用いてスレーブ媒体の磁化とは逆の方向に印加して磁気転写を行った。また、磁気転写用マスター担体とスレーブ媒体の密着は、ゴム板を挟んでアルミニウム板上から加圧した。
【0044】(電磁変換特性評価方法)電磁変換特性測定装置(協同電子製 SS−60)によりスレーブ媒体の転写信号の評価を行った。ヘッドには、ヘッドギャップ:0.32μm、トラック幅:3.0μmであるインダクティブヘッドを使用した。読込信号をスペクトロアナライザーで周波数分解し、1次信号のピーク強度(C)と外挿した媒体ノイズ(N)の差(C/N)を測定した。各磁場強度でのC/Nのうち、最大値を0dBとし、相対値(△C/N)で評価を行い、表1に示した。なお、C/N値が−20dB以下の場合、磁気転写の信号品位が実用レベルでないため*で示した。
【0045】
【表1】
スレーブ媒体のHcs 199kA/m 転写用磁界の ピーク強度kA/m Hcsとの比 △C/N(dB) 59.7 0.3 * 99.5 0.5 −17.4 119 0.6 −5.1 159 0.8 −1.9 179 0.9 −0.3 199 1.0 0.0 219 1.1 −0.1 239 1.2 −0.8 259 1.3 −9.3 279 1.4 −12.3 298 1.5 −18.7 318 1.6 * 398 2.0 *
【0046】実施例2および比較例2保磁力Hcsが199kA/m(2500Oe)のスレーブ媒体に、ピーク磁界強度が239kA/m(3000Oe)、すなわちスレーブ媒体の保磁力のHcsの1.2倍の磁界強度でスレーブ媒体の初期直流磁化を行い、次に初期直流磁化したスレーブ媒体と磁気転写用マスター担体とを密着させて磁気転写を行った点を除き実施例1と同様にして磁気転写を行った後に、実施例1と同様にして測定し、その結果を表2に示す。転写用磁界のピーク強度は、図3に示す磁界強度分布のピークを示す。
【0047】
【表2】
スレーブ媒体のHcs 199kA/m 転写用磁界の ピーク強度kA/m Hcsとの比 △C/N(dB) 59.7 0.3 * 99.5 0.5 −16.2 119 0.6 −3.1 159 0.8 −1.6 179 0.9 −0.2 199 1.0 0.0 219 1.1 −0.2 239 1.2 −0.9 259 1.3 −7.3 279 1.4 −9.8 298 1.5 −16.5 318 1.6 * 398 2.0 *
【0048】比較例3保磁力Hcsが199kA/m(2500Oe)のスレーブ媒体に、ピーク磁界強度が159kA/m(2000Oe)、すなわちスレーブ媒体の保磁力のHcsの0.8倍の磁界強度でスレーブ媒体の初期直流磁化を行い、次に初期直流磁化したスレーブ媒体と磁気転写用マスター担体とを密着させて磁気転写を行った点を除き実施例1と同様にして磁気転写を行った後に、実施例1と同様にして測定し、その結果を表3に示す。転写用磁界のピーク強度は、図3の磁界強度分布のピークを示す。
【0049】
【表3】
スレーブ媒体のHcs 199kA/m 転写用磁界の ピーク強度kA/m Hcsとの比 △C/N(dB) 59.7 0.3 * 99.5 0.5 * 119 0.6 * 159 0.8 * 179 0.9 * 199 1.0 * 219 1.1 * 239 1.2 * 259 1.3 * 279 1.4 * 298 1.5 * 318 1.6 * 398 2.0 *
【0050】実施例3および比較例4実施例1と同様にして作製した保磁力Hcsが159kA/m(2000Oe)のスレーブ媒体に、ピーク磁界強度が318kA/m(4000Oe)、すなわちスレーブ媒体の保磁力のHcsの2倍の磁界強度でスレーブ媒体の初期直流磁化を行い、次に初期直流磁化したスレーブ媒体と磁気転写用マスター担体とを密着させて図3に示した装置を用いて磁気転写を行った点を除き実施例1と同様にして磁気転写を行った後に、実施例1と同様にして測定し、その結果を表4に示す。転写用磁界のピーク強度は、図3の磁界強度分布のピークを示す。
【0051】
【表4】
スレーブ媒体のHcs 159kA/m 転写用磁界の ピーク強度kA/m Hcsとの比 △C/N(dB) 47.7 0.3 * 79.6 0.5 −16.5 95.5 0.6 −3.2 127 0.8 −0.3 143 0.9 −0.1 159 1.0 0.0 175 1.1 −0.3 191 1.2 −0.8 207 1.3 −5.5 223 1.4 −9.8 239 1.5 −16.8 255 1.6 * 318 2.0 *
【0052】実施例4および比較例5保磁力Hcsが159kA/m(2000Oe)のスレーブ媒体にピーク磁界強度が191kA/m(2400Oe)、すなわちスレーブ媒体の保磁力のHcsの1.2倍の磁界強度でスレーブ媒体の初期直流磁化を行った点を除き、実施例4と同様に初期直流磁化したスレーブ媒体と磁気転写用マスター担体とを密着させて磁気転写を行った後に、実施例1と同様に測定し、その結果を表5に示す。転写用磁界のピーク強度は、図3の磁界強度分布のピークを示す。
【0053】
【表5】
スレーブ媒体のHcs 159kA/m 転写用磁界の ピーク強度kA/m Hcsとの比 △C/N(dB) 47.7 0.3 * 79.6 0.5 −10.2 95.5 0.6 −4.1 127 0.8 −0.6 143 0.9 0.0 159 1.0 −0.2 175 1.1 −0.1 191 1.2 −1.3 207 1.3 −8.9 223 1.4 −15.7 239 1.5 −18.7 255 1.6 * 318 2.0 *
【0054】比較例6実施例1と同様にして作製した保磁力Hcsが159kA/m(2000Oe)のスレーブ媒体に、ピーク磁界強度が127kA/m(1600Oe)、すなわちスレーブ媒体の保磁力のHcsの0.8倍の磁界強度でスレーブ媒体の初期直流磁化を行い、次に初期直流磁化したスレーブ媒体と磁気転写用マスター担体とを密着させて図3に示した装置を用いて磁気転写を行った点を除き実施例1と同様にして磁気転写を行った後に、実施例1と同様に測定し、その結果を表6に示す。転写用磁界のピーク強度は、図3の磁界強度分布のピークを示す。
【0055】
【表6】
スレーブ媒体のHcs 159kA/m 転写用磁界の ピーク強度kA/m Hcsとの比 △C/N(dB) 47.7 0.3 * 79.6 0.5 * 95.5 0.6 * 127 0.8 * 143 0.9 * 159 1.0 * 175 1.1 * 191 1.2 * 207 1.3 * 223 1.4 * 239 1.5 * 255 1.6 * 318 2.0 *
【0056】
【発明の効果】磁気転写用マスター担体から、スレーブ媒体への磁気転写において、スレーブ媒体のHcsに対して特定の強度の転写用磁界を与えることによってパターンの位置や形状によらずに高品位の転写パターンを有するスレーブ媒体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、磁気転写用マスター担体におけるプリフォーマット用のパターンの転写を説明する図である。
【図2】図2は、リング型ヘッド電磁石を用いた磁界の印加方法を説明する図である。
【図3】図3は、磁気転写用マスター担体からスレーブ媒体への転写方法を説明する図である。
【符号の説明】
1…磁気転写用マスター担体、2…プリフォーマット領域、3…データ領域、4…スレーブ媒体、5…トラック方向、6…転写用外部磁界、6a…凸部分へ吸収される磁界、7…記録情報、8,8a,8b…リング型ヘッド電磁石、9…磁界、10…ピーク、11…密着体、12…磁界、13…強度の小さなピーク、14…強度の大きなピーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板の表面の情報信号に対応する部分に磁性層が形成された磁気転写用マスター担体と転写を受ける磁気記録媒体からなるスレーブ媒体とを密着させて転写用磁界を印加する磁気転写方法において、リング型ヘッド電磁石をスレーブ媒体の上面あるいは下面側の少なくとも一方に配設し、スレーブ媒体あるいはリング型ヘッド電磁石をトラック方向に回転させ、スレーブ媒体面のトラック方向に磁界を印加することにより、あらかじめスレーブ媒体磁化をトラック方向に初期直流磁化した後、磁気転写用マスター担体と上記初期直流磁化したスレーブ媒体を密着させてスレーブ媒体面の初期直流磁化方向と逆向きのトラック方向に転写用磁界を印加させ磁気転写を行うことを特徴とする磁気転写方法。
【請求項2】 基板の表面の情報信号に対応する部分に磁性層が形成された磁気転写用マスター担体と転写を受ける磁気記録媒体からなるスレーブ媒体とを密着させて転写用磁界を印加する磁気転写方法において、スレーブ媒体面のトラック方向に磁界を印加し、あらかじめスレーブ媒体磁化をトラック方向に初期直流磁化した後、磁気転写用マスター担体と上記初期直流磁化したスレーブ媒体を密着させ、リング型ヘッド電磁石を、スレーブ媒体の上面あるいは下面側の少なくとも一方に配設し、リング型ヘッド電磁石あるいは磁気転写用マスター担体とスレーブ媒体とを密着させた密着体をトラック方向に回転させ、初期直流磁化方向と逆向きのトラック方向の転写用磁界を印加させ磁気転写を行うことを特徴とする磁気転写方法。
【請求項3】 リング型ヘッド電磁石を、スレーブ媒体の上面あるいは下面側の少なくとも一方に磁極の軸をスレーブ媒体面と平行に配設した時に発生する磁界のトラック方向における磁界強度分布がスレーブ媒体の保磁力Hcs以上の磁界強度部分をトラック方向位置で少なくとも1カ所以上有することを特徴とする請求項1に記載の磁気転写方法。
【請求項4】 リング型ヘッド電磁石を、スレーブ媒体の上面あるいは下面の少なくとも一方に配設した時に発生する磁界のトラック方向における磁界強度分布がスレーブ媒体の保磁力Hcs以上の磁界強度部分をトラック方向位置で一方向のみで有しており、逆方向の磁界強度はいずれのトラック方向位置でもスレーブ媒体の保磁力Hcs未満であることを特徴とする請求項1に記載の磁気転写方法。
【請求項5】 リング型ヘッド電磁石をスレーブ媒体の上面あるいは下面側の少なくとも一方に配設した時に発生する磁界のトラック方向磁界強度分布において、最適転写磁界強度範囲の最大値を超える磁界強度がいずれのトラック方向位置でも存在せず、最適転写磁界強度範囲内の磁界強度となる部分が一つのトラック方向で少なくとも1カ所以上存在し、これと逆向きのトラック方向の磁界強度がいずれのトラック方向位置においても、最適転写磁界強度範囲の最小値未満であることを特徴とする請求項2に記載の磁気転写方法。
【請求項6】 最適転写磁界強度が、スレーブ媒体の保磁力Hcsに対して0.6×Hcs〜1.3×Hcsであることを特徴とする請求項5に記載の磁気転写方法。
【請求項7】 スレーブ媒体の両側にリング型ヘッド電磁石を配置することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の磁気転写方法。
【請求項8】 基板の表面の情報信号に対応する部分に磁性層が形成された磁気転写用マスター担体と転写を受ける磁気記録媒体からなるスレーブ媒体とを密着させて転写用磁界を印加する磁気転写装置において、リング型ヘッド電磁石をスレーブ媒体の上面あるいは下面側の少なくとも一方に配設し、スレーブ媒体あるいは電磁石をトラック方向に回転させ、スレーブ媒体面のトラック方向に磁界を印加することによりあらかじめスレーブ媒体磁化をトラック方向に初期直流磁化する初期直流磁化手段、磁気転写用マスター担体と上記初期直流磁化したスレーブ媒体とを密着させる密着手段、スレーブ媒体面の初期直流磁化方向と逆向きのトラック方向に転写用磁界を印加させる転写磁界印加手段からなることを特徴とする磁気転写装置。
【請求項9】 基板の表面の情報信号に対応する部分に磁性層が形成された磁気転写用マスター担体と転写を受ける磁気記録媒体からなるスレーブ媒体とを密着させて転写用磁界を印加する磁気転写装置において、スレーブ媒体面のトラック方向に磁界を印加しあらかじめスレーブ媒体磁化をトラック方向に初期直流磁化する初期直流磁化手段、磁気転写用マスター担体と上記初期直流磁化したスレーブ媒体を密着させる密着手段、リング型ヘッド電磁石をスレーブ媒体の上面あるいは下面側の少なくとも一方に配設し、電磁石あるいは磁気転写用マスター担体とスレーブ媒体とを密着させた密着体を、トラック方向に回転させて初期直流磁化方向と逆向きのトラック方向の転写用磁界を印加させる転写磁界印加手段を有することを特徴とする磁気転写装置。
【請求項10】 リング型ヘッド電磁石をスレーブ媒体の上面あるいは下面側の少なくとも一方に配設した時に発生する磁界のトラック方向における磁界強度分布がスレーブ媒体の保磁力Hcs以上の磁界強度部分をトラック方向位置で少なくとも1カ所以上有することを特徴とする請求項8に記載の磁気転写装置。
【請求項11】 リング型ヘッド電磁石をスレーブ媒体の上面あるいは下面側の少なくとも一方に磁極の軸をスレーブ媒体面と平行に配設した時に発生する磁界のトラック方向における磁界強度分布がスレーブ媒体の保磁力Hcs以上の磁界強度部分をトラック方向位置で一方向のみで有しており、逆方向の磁界強度はトラック方向のいずれの位置でもスレーブ媒体の保磁力Hcs未満であることを特徴とする請求項8に記載の磁気転写装置。
【請求項12】 リング型ヘッド電磁石をスレーブ媒体の上面あるいは下面側の少なくとも一方に磁極の軸をスレーブ媒体面と平行に配設した時に発生する磁界のトラック方向磁界強度分布において、最適転写磁界強度範囲の最大値を超える磁界強度がいずれのトラック方向位置でも存在せず、最適転写磁界強度範囲内の磁界強度となる部分が一つのトラック方向で少なくとも1カ所以上存在し、これと逆向きのトラック方向の磁界強度がいずれのトラック方向位置においても最適転写磁界強度範囲の最小値未満であることを特徴とする請求項9に記載の磁気転写装置。
【請求項13】 最適転写磁界強度がスレーブ媒体の保磁力Hcsに対して0.6×Hcs〜1.3×Hcsであることを特徴とする請求項12に記載の磁気転写装置。
【請求項14】 スレーブ媒体の両側にリング型ヘッド電磁石を配置することを特徴とする請求項8ないし13のいずれかに記載の磁気転写装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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