説明

磁気転写用ヘッド

【課題】
記録密度が向上しても磁気転写によりサーボトラッキングパターンを磁気ディスクに形成できる磁気転写用ヘッドを得る。
【解決手段】
メディア7の内周部から外周部までを覆いうる長さの永久磁石19と、永久磁石19に取り付けられたヨーク18とを備え、ヨーク18のギャップは、ライトヘッド及びリードヘッドがメディア7上の内周部から外周部へ移動する時の円弧状の軌跡とメディア7上の各トラックとの交点におけるヘッドの移動時の軌跡である円弧の接線n1とトラックの接線t1とのなす角度をそれぞれ約2等分した角度で当該各交点におけるギャップ18aの接線が形成されるようにその形状が決定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気転写方式により、磁気ディスクに書き込むべきサーボトラッキングパターンである磁気転写用パターンを記録したマスターディスクのパターンを磁気ディスクに書込むための磁気転写用ヘッドに関するものであり、本来のデータを読み書きするリード用ヘッド及びライト用ヘッドの高精度な位置決めを可能とし、また磁気転写信号の円周方向の長さを短くすることを可能としたものに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気転写技術は、例えば、ハードディスクドライブ等の磁気記録装置の磁気ディスク媒体(以下、メディアと称す)に対し、そのサーボ信号であるバースト信号やアドレス情報信号,再生クロック信号等をプリフォーマット記録する際などに用いられるもので、予めこれらの情報を記録したマスターディスクを、プリフォーマット記録すべきメディアに接触させ、磁界をかけることで、その内容を転写する。その後磁気記録装置にこのメディアを組み込み、セルフテストにてそのプリフォーマット記録された信号を基に最終サーボトラッキングパターンを書き込む。
【0003】
これにより、サーボトラッキングパターンを書き込む際に、サーボトラックライターと呼ばれる、精密に制御された磁気ヘッドによりサーボトラッキングパターンを書き込む高価な専用装置を用いるよりもその生産性を向上でき、低コストでの生産が可能となるものと期待されている。
【0004】
図16はこのような磁気転写技術において、メディアを初期化するためにDCイレースを行う状態を示す、トラック方向に沿った断面図である。このDCイレースとは直流励磁磁界をメディアに印加することでそのイレースを行うものである。
【0005】
図において、1はメディア本体1bとその表面に形成された磁性層1aとからなるメディア、2はDCイレース時に印加する外部磁界の方向を表す矢印である。
【0006】
また、図17は磁気転写を行う様子を示す図であり、図において、3は非磁性体基板3bとその一方の主面に形成された磁性体3aとからなるマスターディスク、4は磁気転写時に印加する外部磁界の方向を表す矢印である。
【0007】
以下では、図18に示すフローチャートを用いて、従来の磁気転写方法について説明する。
まず、図16のように、メディア1に対しその円周方向に磁界をかけてDCイレースを行い、磁性層1aの磁化の方向を矢印2と同方向に揃える(ステップ201参照)。
【0008】
通常、メディアはメディアメーカからハードディスクドライブメーカに納入された時点ですでにDCイレースが行われているが、その磁化の方向が、ハードディスクドライブメーカの意図する方向と異なることがあるため、このようなDCイレースによる初期化が必要である。
【0009】
図19はこのDCイレース時に用いる専用のヘッドであり、ハードディスクドライブの完成後に使用する本来のデータの読み書き用のヘッドとは異なるものである。
【0010】
このヘッド10は永久磁石9にヨーク8を取り付けたものであり、円弧状のギャップ8aを有する。ギャップ8aを円弧状にするのは、データの読み書き用のヘッドの軌跡がメディア上で円弧を描くからである。
【0011】
図19に示すように、メディアの内周から外周までを覆う位置にヘッド10を固定し、ヘッド10またはメディア1のいずれか一方を、メディアセンターを中心として1回転以上回転させることでDCイレースを行う。その回転方向は左,右どちらの方向でも良い。このとき磁石9とメディア1との距離は0.5mmから2mmであり、実際に磁気転写を行ったメディアから検出される信号を確認し、その特性により決定する。この距離はメディアの保持力、磁石の強さ、パターンの形状、などに左右される。
【0012】
次に、非磁性体基板3b上に磁性体(Co等、任意の磁性体を使用可能である)3aにてパターンを作成したマスターディスク3を得る(ステップ202参照)。このパターンは、図17に示すものであり、ストライプ状の部分3aが、磁性体が形成された領域である。このパターンは、半導体装置と同様、フォトマスクを用いたフォトリソグラフィー工程により形成される。このステップ202とステップ201とは同時に実行してもよいし、先にステップ202を実行してもよい。
【0013】
次に、マスターディスク3の情報記録面とメディア1の磁性層側とを図17に示すように接触させ(ステップ203参照)、DCイレースの際に用いたものと同じ形状のヘッド(図18参照)10を用いて、メディア1をDCイレースさせた方向とは逆方向に磁界をかける(ステップ204参照)。このときマスターディスク上の磁性体近辺の磁界は、磁性体内を通過するためその近辺のメディア面は磁化反転されないが、磁性体のない部分においては磁化反転が生じ、磁化パターンを作成することができる。図17においては、磁性体3a同士の間の、磁束が描かれた部分が磁性体のない部分である。
【0014】
図20はこのようにしてメディア1に磁気転写されたサーボ信号であり、100本ないし200本がメディアの内周から外周にかけて円弧を描くように形成されている。サーボ信号の本数は一般的にTPI(Track Per Inch)の増加に伴い増加する。
【0015】
次に、このようにして磁気転写されたメディアを組み込み、ハードディスクドライブを完成する。ハードディスクドライブは、磁気記録用の1枚ないしは複数枚のメディアと、メディアを回転させるためのモーターと、データ読み書き用の1個ないしは複数個のライトヘッドとリードヘッドとを有するローターアームと、そのローターアームを駆動させる駆動装置と、信号を書き込む回路と、信号を読み出す回路とを有する。装置の仕様に応じて最低でも1枚の磁気転写されたメディアが磁気記録装置に組み込まれる(ステップ205参照)。
【0016】
図21は完成したハードディスクドライブのカバーを開けた状態を示す概略図であり、記録用ディスク(メディア)1に対しデータの読み書きを行う互いに近接して設けられたリード用およびライト用のヘッドからなるヘッド14が、ローターアーム13によりメディア1の内周と外周の範囲内でピボットセンター12に対し回動自在に設置されている。
【0017】
図22はその磁化されたパターンをリードライト用のヘッドにて読み取った信号である。この磁気転写に関する内容については特許文献1(「マスター情報担体およびマスター情報信号の磁気記録媒体への記録方法」)に記載されている。
【0018】
しかしながら、磁気転写に用いるマスターディスクはその作成工程上、磁性体部の幅と磁性体の間隔はどちらも0.5μm程度が現在の技術上の限界であり、従って、そのパターンの周波数は、通常の、即ちサーボトラックライターにより磁気ヘッドでトラッキングパターンを記録した場合の、磁気記録装置のサーボトラッキングパターンの周波数に対して1/5程度となる。
【0019】
従って、磁気転写方法により形成した磁化パターンを磁気記録装置の最終パターンとして使用すると、データ領域におけるトラッキングパターンの占有率が高くなるため、あくまで磁気転写信号は仮のサーボトラッキングパターンとして利用されている。
【0020】
また、マスターディスクは磁性体部,非磁性体部ともその幅が広く、磁気記録装置に使用されているバースト信号を使用できないため、それに代わる図23のような位相制御用の信号を用いている。この位相制御信号は3種類のパターンP1,P2,P3とデジタル信号であるP4からなり、P1,P2,P3はそれぞれ20〜30ビット(磁性体部、非磁性体部ともに20個〜30個)の長さが必要となり、合計60〜90ビットとなる。それに対して通常の磁気記録装置のサーボトラッキングパターンのバーストパターンは60ビット程度であり、位相制御信号はそのパターンが長くなる傾向にある。このため、位相制御信号を仮の信号とし、セルフサーボライトにより、完成後のハードディスクドライブが実際に使用するサーボトラッキングパターンを書き込む(ステップ206参照)。
【0021】
このセルフサーボライトとは、磁気転写で転写された仮のサーボトラッキングパターンを、完成後のハードディスクドライブ自体に備わっているデータ読み書き用ヘッドが読み取り、これを基準として、ドライブ自体のサーボ系を用いてデータ読み書き用ヘッドの位置決め制御を行い、最終的なサーボトラッキングパターンを書き込むようにしたものである。
【0022】
このような、位相制御信号を仮の信号とし、セルフサーボライトを行う方法は特許文献2(「ディスクドライブのセルフサーボ書込み方法及びそれに用いる埋め込み基準パターン」)に記載されている。
【0023】
しかしながら、磁気転写による位相制御に関しては、電気的ノイズによる影響が大きく、磁気記録装置が高TPI(Track Per Inch)になると現在の位相制御信号ビット長,信号処理方式ではヘッドの制御に問題が生じる可能性がある。
【0024】
また、磁気転写方式を用いた位相制御パターンはそのパターン長が長くなるため、メディアに書き込まれるサーボトラッキングパターンの個数の限界は350個程度であり、これはさほど大きくない値である。
【0025】
また、特許文献3(「磁気ディスク及びその磁化パターン形成方法並びに磁気ディスク装置」)には、メディアの半径方向に磁気記録を行う方法が紹介されている。これはサーボトラッキング信号の一部分であるバースト信号の書き込み方法を紹介したものである。
【0026】
サーボトラッキング信号にはバースト信号の他にデジタル信号部が含まれる。そのデジタル信号部は、読み取りのタイミングを調整するためのSYNC信号部,自動的に増幅率を決定するAGC信号部,当該信号部を有する信号はサーボトラッキング信号であると判別するSAM(Servo Address Mark)信号部,トラックナンバーを表しているトラックナンバー部などの情報から構成されている。なおかつデジタル信号部は従来の磁気記録装置のトラッキングの機構方式を考慮すると、メディアの半径方向に磁気記録したのでは、その目的である読み取りのタイミングを調整すること,増幅率を決定すること,サーボトラッキング信号であると認識すること、もしくは、トラックナンバーのデータを読み取ること、は不可能であり、それらの信号は円周方向に記録を行う必要がある。従って、サーボトラッキング信号は必ず円周方向(トラック方向)に記録する必要のあるデジタル信号部を有するため、バースト信号部を半径方向に磁気記録しようとした場合、円周方向と半径方向との2種類の記録をする必要がある。しかしながら、この2種類の信号を同時に書き込む方法についてはこの特許文献3には記載されていない。
【0027】
このような2種類の信号を書き込む方法として、デジタル信号部とバースト信号部とを分割して2つのマスターディスクに記録し、2回の書き込みによりこれら2種類の信号を書き込む方法が考えられるが、その場合、2つの信号の位置合わせが問題となる。これら2つの信号は半径方向のずれ量は数nm以内にする必要があり、現在実用化されている工程にてこれを行うことは非常に困難である。また、2回目の信号を書込む際に、1回目に書いた信号を書き消すおそれもある。
【特許文献1】特開平10−040544号公報(第4−6頁 図1−図4)
【特許文献2】特開2001−243733号公報(第6−17頁 図1−図19)
【特許文献3】特開2001−312808号公報(第10−12頁 図1−図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
このように、
1.現行の磁気転写パターンでは、マスターディスクの製造の問題により、そのパターンピッチを細かくすることができない。このことから、磁気転写によるパターンは仮のサーボトラッキングパターンとしてのみの使用にとどめざるを得ない。
【0029】
2.即ち、現行の磁気転写パターンはそのパターンピッチを細かくすることができないことから、従来のサーボトラッキングライターによる場合のようにバーストパターンによるリード用ヘッド及びライト用ヘッドの位置決め制御はできないと判断し、位相制御パターンを用いている。
【0030】
しかしながら、この位相制御は現行のパターン長ではノイズによる影響が大きく、将来、磁気記録装置の記録密度が上がり、高TPIとなった場合に、ヘッドの位置決め精度に問題が生じる。
【0031】
3.また、現行の磁気転写パターンは上述のようにそのパターンピッチを細かくすることができないことから、通常の磁気記録装置のサーボトラッキングパターンに比べその長さが5倍程度と長くなっている。従って、このパターンを仮のサーボトラッキングパターンとし、最終的なサーボトラッキングパターンをセルフサーボライト、即ち、完成したハードディスクドライブ自身が有するサーボ系にて書き込む必要がある。
【0032】
しかしながら、磁気転写によるサーボパターンの長さと最終パターンの長さとメディアの円周長から計算すると、メディアに書き込まれるメディア1周あたりのサーボトラッキングパターン個数の限界は350個程度(2.5inch、5400rpm)と、さほど大きくない値になってしまう。今後、TPIが上がりサーボトラッキングパターンのメディア1周あたりの個数が350個以上必要となった場合には、磁気転写パターンを書ききれなくなってしまう。
【0033】
本発明は、上記のような従来のものの問題点を解決するためになされたもので、将来記録密度が上昇した場合においてもサーボトラッキングパターンの記録が可能な磁気転写用ヘッドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明の請求項1に係る磁気転写用ヘッドは、互いに近接して設けられたライトヘッド及びリードヘッドと、前記ライトヘッド及び前記リードヘッドがその一端に支持され、磁気ディスク上を自在に回動するアクチュエータとを有する磁気記録装置の磁気ディスク上にトラッキングパターンを書き込むための磁気転写用ヘッドであって、前記磁気ディスクの内周部から外周部までを覆いうる長さの永久磁石と、該永久磁石に取り付けられたヨークとを備え、該ヨークのギャップは、前記ライトヘッド及びリードヘッドが前記磁気ディスク上の内周部から外周部へ移動する時の円弧状の軌跡と該磁気ディスク上の各トラックとの交点におけるヘッドの移動時の軌跡である円弧の接線とトラックの接線とのなす角度をそれぞれ約2等分した角度で当該各交点におけるギャップの接線が形成されるようにその形状が決定されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0035】
本発明の請求項1に係る磁気転写用ヘッドによれば、互いに近接して設けられたライトヘッド及びリードヘッドと、前記ライトヘッド及び前記リードヘッドがその一端に支持され、磁気ディスク上を自在に回動するアクチュエータとを有する磁気記録装置の磁気ディスク上にトラッキングパターンを書き込むための磁気転写用ヘッドであって、前記磁気ディスクの内周部から外周部までを覆いうる長さの永久磁石と、該永久磁石に取り付けられたヨークとを備え、該ヨークのギャップは、前記ライトヘッド及びリードヘッドが前記磁気ディスク上の内周部から外周部へ移動する時の円弧状の軌跡と該磁気ディスク上の各トラックとの交点におけるヘッドの移動時に軌跡である円弧の接線とトラックの接線とのなす角度をそれぞれ約2等分した角度で当該各交点におけるギャップの接線が形成されるようにその形状が決定されているようにしたので、通常磁気記録装置に使用しているバーストパターンと同じ制御を可能とするパターンを転写することが可能となり、精度よいサーボトラッキングパターンを提供できるとともにパターンの長さを短くすることが可能であるため、1トラックに転写するサーボトラッキングパターンの個数を多くすることが可能となる磁気転写用ヘッドが得られる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
(実施の形態1)
この実施の形態1では、デジタル部分とバースト信号部分との記録を、デジタル部分は円周方向に、バースト信号部分は半径方向にそれぞれ磁気記録を行うが、これらを2回に分けることなく1度に記録することを可能とした、磁気転写用パターンとその書き込み方法とリードライト用ヘッドの位置決め制御の信号処理について説明を行う。
【0037】
以下に、本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。
まず図1に示すように、DCイレース専用のヘッドを用いてメディアのDCイレースを行う(図3のステップ101参照)。この作業自体は図16に示す従来例と同様であるが、その際に用いる専用ヘッドが従来例とは異なる。
【0038】
即ち、この専用ヘッドは、図4(a)に示すように、永久磁石19にヨーク18を取り付けたものであるが、そのギャップ18a上のどのトラックtr1(,…,trn)との交点においても、トラックの接線t1とヘッドの移動時の軌跡である円弧の接線n1とのなす角(約90°)を2分割した角度(約45°)がギャップ18aの接線t2となるように、その円弧形状が決定されている。このようなギャップ形状により、どのトラックに対しても約45゜の角度をなすように磁界をかけることが可能となる。なお、このヘッドの代わりに図5に示すようなヘッドを用いてもよい。
【0039】
そして、この磁気転写専用のヘッドを図4(a)の位置に固定し、磁石19またはメディア7のいずれか一方を、メディアセンターを中心として1回転以上回転させる。その回転方向は左,右どちらの方向でも良い。このとき磁石19とメディア7との距離は0.5mmから2mmであり、実際に転写を行った信号を確認しその特性により決定する。この距離はメディアの保持力、磁石の強さ、パターンの形状、などに左右される。
また、永久磁石の取り付け向き、ヨークの形状によりメディアにかける磁界の向きが決定される。
【0040】
本発明は、サーボトラッキングパターンのデジタル部のパターンを、磁気記録装置が完成した際のメディアの円周方向に、バーストパターン部は半径方向に同時に書き込むことを特徴としている。従って、その永久磁石の向きは、図4(a)又は図5に示すように、デジタル部パターンが磁化される向きの中での理想の向き、およびバーストパターンが磁化される向きの中での理想の向き、の中間の向きにするのが望ましい。
【0041】
次に、マスターディスクをメディアに接触させてメディアの磁気記録層に磁界をかけるのであるが、ここでマスターディスクについて説明する。
【0042】
図2に示すように、マスターディスク3は非磁性体基板3b上に磁性体3aにて転写するべきパターンを形成している(ステップ102参照)。
【0043】
磁性体部のバースト信号部は平行四辺形であり、その2辺は円周状のトラック方向と平行となる円弧を直線近似した2つの直線からなり、残りの2辺はヘッドが内周から外周へ移動する時の円弧を直線近似した2つの平行直線からなり、それぞれのバースト信号パターンはマスターディスク製造工程において必要とされる間隔以上の間隔をおいて形成されている。
【0044】
より詳しくは、前記バースト信号パターンを形成している磁性体の形状寸法は半径方向がマスターディスク製造工程での製造可能な最小パターン以上の長さ、円周方向が磁気ディスク内周部のバースト信号においては数μm程度、磁気ディスク外周部のバースト信号においては半径に比例する長さを有し、隣同士のバースト信号パターンの間隔は半径方向ではマスターディスク製造工程での製造可能な最小間隔以上の長さ、円周方向が磁気ディスク内周部のバースト信号においてはマスターディスク製造工程での製造可能な最小間隔以上の長さ、磁気ディスク外周部のバースト信号においては半径に比例する長さを有し、n種類(nは2以上の整数)のバースト信号は半径方向の磁性体のピッチのn分の1の間隔で互いにずれて配置されているようにしている。このため、磁気転写により精度よいサーボトラッキングパターンが得られるとともに、磁気転写用パターンの長さを短くすることが可能であり、1トラックに転写するサーボトラッキングパターンの個数を多くすることが可能となるマスターディスクとなっている。
【0045】
このマスターディスク3の磁気転写用パターンは、従来の磁気転写に用いられるものでは位相制御用のパターンを使用しており、そのパターンは図23のような互いに逆方向の斜めの磁性体パターン2種類と、斜め方向ではなく半径方向に直線状となる通常パターンとを含んでいるものであった。そのそれぞれのパターンはノイズによる影響を緩和するために20bitないしは30bitの長さが必要とされている。また磁性体の幅と非磁性体部の幅は現在のマスターディスクの製造工程上0.5μm以上の幅が必要である。従ってその位相制御部のパターンのメディア円周方向の長さはメディアの最内周のパターン幅の狭い場所で(20ないし30bit)×2×3×0.5μm=60ないし90μmである。メディア外周部のパターン幅はその半径に比例して広くなるものであった。
【0046】
これに対し、本発明のマスターディスクにおける磁気転写用のパターンは、位相制御用のものではなく、従来のサーボトラックライターにより行っていた、バースト制御方式による書き込みに対応させるため、斜めのパターンはなく、バーストパターンは、図6(a),図6(b)に示すように、A,B,C,D,E,F,G,Hの8個となっている。この8個という数値は各バーストパターンのずれピッチより決定されるもので、ずれピッチを変更すると8個以外の数字となりうる。この図6にはバーストパターンA,B,C,D,E,F,G,Hが互いに離れて円周方向に少しずつずれて配置されたもの(図6(a)参照)と、隣り合うバーストパターンA,B,C,D,E,F,G,Hが互いに連接されており、バースト信号の平行四辺形のメディア半径方向の辺の部分に磁気転写した場合に発生するピークノイズを削減できるようにしたもの(図6(b)参照)との2種類のパターンを示しているが、そのいずれを用いてもよい。磁性体と非磁性体部のメディアの半径方向の幅はそれぞれ0.5μmとなっており、その円周方向の長さはメディアの最内周のサーボ信号において従来のバーストパターンの長さである4μm程度であり、それぞれのギャップ長を考慮しても5μm以下となり、その全長は5μm×8=40μmとなり従来のパターンに比べ30から50%短縮されたものとなる。AからHのそれぞれのバーストパターンは半径方向に磁性体のピッチの1/8の長さづつずれた位置となっている。AからHまでの8個のバーストパターンの順番は別にこだわる必要はない。また、磁性体と非磁性体部の半径方向の幅に関しても0.5μmにこだわる必要はない。今後0.5μm以下のパターンが作成可能になれば、その時点で作成可能な間隔を使用可能である。また逆に0.5μm以上のパターンも使用可能である。そのときはバーストパターンの個数を少なくしたり、多くしたりして調整を行う。磁性体(N)と非磁性体部(S)との半径方向の長さの比率は1対1でなくてもよく、(N-S)/(N+S)が±40%の比率に収まっていれば問題なく、この範囲内であればリードヘッドおよびライトヘッドの位置決め制御が可能である。この比率は各パターンの絶対パターン幅ではなく、実際転写をおこなった上での信号測定によるものである。この比率のことをシグナルアシンメトリと呼ぶ。
【0047】
次に、このマスターディスクをメディアに接触させて(ステップ103参照)、磁気転写を行う訳であるが、それはメディアの大きさと同じ大きさには限定されない。またメディアは非磁性体基板としてアルミやガラスを用いた、いわゆるアルミニウムディスクやガラスディスクでもよい。その後、マスターディスクの裏側からメディアのイレースに用いたものと同じ形状のヨークと永久磁石を用いて磁界をかける(ステップ104参照)。すなわち、ヘッドの形状は図4(a),図5の2種類あり、いずれもヘッドの移動時の軌跡である円弧の接線とトラックの接線とのなす角(約90°)の半分の角度で各トラックと交わるようにギャップが形成されており、これによりトラックに対し約45°の角度で磁界がかかる。イレース時に選択した図4(a),図5のいずれか一方のヘッドを、磁気転写時にも用いる。磁界のかけ方はイレース時と同じようにメディアまたは永久磁石を1回転以上回転させる。ただしその時の磁界の方向はイレース時とは逆の方向である。磁界の向きはイレース時のそれに対して180度逆となるのが望ましい。永久磁石とマスターディスク裏面との距離は0.5mmから3mmであり、実際に転写を行い、その際のメディアの信号を確認してその距離を決定する。
【0048】
このようにして作成されたメディアを組み込み、ハードディスクドライブを完成する(ステップ105参照)。
【0049】
ハードディスクドライブは、磁気記録用の1枚ないしは複数枚のメディアと、メディアを回転させるためのモーターと、データ読み書き用のライトヘッドとリードヘッドとが互いに近接して1個ないしは複数個設けられたローターアームと、そのローターアームを駆動させる駆動装置と、信号を書き込む回路と、信号を読み出す回路とを有する。装置の仕様に応じて最低でも1枚の磁気転写されたメディアが磁気記録装置に組み込まれる。メディアの磁気転写されている面は1面で十分である。組み立てられた後磁気記録装置のテスト工程にて磁気転写された信号にてヘッドの位置決めを行い、最終のサーボトラッキング信号のセルフライトを行う。即ち、磁気記録装置自身のすべてのヘッドにて、メディアの全面に最終のサーボトラッキング信号を書き上げる(ステップ106参照)。
【0050】
以下にその磁気転写信号にてヘッドの位置決め制御をおこなう方法を説明する。
本発明のマスターディスクのパターンは図6に示すようになっており、図6(a)に四角Qで囲んだバースト信号部Aのメディアに転写される信号は図7,図8のように3次元のグラフで表される。このグラフにおいて、縦軸はヘッドで読み出した際の電圧である。図7は本発明パターンを従来のマグネットとヨークと取り付け位置でDCイレースと磁気転写を行ったときに、転写される信号を表している。
【0051】
また、図8は本発明のパターンを本発明のマグネットとヨークにて円周方向に対して所定の角度をもって磁界をかけ、磁気転写を行った時の信号を3次元グラフで表したものである。図7ではそれぞれのバースト信号の磁性体で形成された平行四辺形(長方形)の部分の円周方向に平行な2つの辺にあたる部分には信号が発生していないが、図8ではその部分に信号X1,X2が発生している。また、図7と同様に半径方向の信号Y1,Y2も発生しており、信号ピークL1,L2が略L字状となっている。本発明はその円周方向の部分の信号X1,X2を読み取り、ヘッドの位置決めを行うようにしている。それぞれのバーストに対してウインドウを用いて、バースト信号の最初と最後のノイズが多いと予想される部分を取り除き、信号を取り込み信号処理を行う。
【0052】
従来のサーボトラックライターにより書かれたバースト信号は図9のように数10MHzの周波数にて磁気記録装置のヘッドもしくはこのヘッドと同等のヘッドで書き込まれている。従って記録される磁界の方向は必然的に円周方向となり、ヘッドにてその読み取った信号は図9に示すような孤立波形、もしくはサイン波形のような連続孤立波形となる。その波形のピーク電圧値を読み取ることによりヘッドの半径方向の位置を読み取ることが可能となっている。この波形は1つのバースト信号に対し孤立波形1つ(プラス側マイナス側1セット)であり、そのバースト信号のピーク電圧を読み取るのでは、電気的なノイズの影響などにより十分な信頼性が得られない。従って、その孤立波形を複数個書き込むことにより、そのノイズ成分の影響を緩和している。またサーボパターン、バースト信号はデータ領域を圧迫することからできるだけ短くすることが望ましい。しかしながらこの連続孤立波形の個数を削減することは先に述べたような理由により限界があるため、書き込み周波数を上げその信号の全長を短くすることが考えられる。ところが、周波数を上げるとそれぞれの孤立波形が干渉し、書き込んだ信号の読み取り時の電圧が下がってしまいノイズの影響が大きくなりヘッドの位置決め精度が悪化してしまう。以上の理由によりバースト信号は10個ないし20個程度の繰り返し信号でその周波数は数10MHzに決定されている。従って、従来のバースト信号では信号を再生しそのヘッドの位置決め信号を作成するために、この数10MHzの信号の最大電圧値を求める複雑な手法が必要となる。
【0053】
これに対し、本発明では磁気記録の方向は円周方向だけではなく、デジタル信号部は円周方向に、アナログ信号部であるバースト信号は半径方向に、それぞれ磁気転写されるようにこれらの中間の角度を取っている。従って本実施の形態1によるパターンを、本実施の形態1による磁気転写用ヘッドで磁気転写した場合、円周方向と半径方向に磁化された成分が存在し、この両方を読み出すことが可能である。
【0054】
従来のバースト信号は磁気記録装置のヘッドを使用し書込みを行っているので、円周方向の記録しかできない。その記録された信号を読み取った時、孤立波形の形状となる。この信号の電圧値によりヘッドの位置を認識することになるが、わずか1setでの情報ではノイズによる影響が大きく正確なヘッドの位置決めができないので、複数個の孤立波形を書込み正弦波の信号の形態を取ることによりその信号の正確さを向上させている。
【0055】
本発明は半径方向成分の磁界をかけ信号を記録し得るものなので、円周方向にヘッドが移動し信号を読み取った時、孤立波形ではなく、直流成分の電圧値として現れる。従って信号は、従来のバースト信号に書き込まれているような一定の周波数信号で書込まれていない。このため、読み取り後、一定周波数の信号のピーク電圧を求める複雑な手法は必要としない。
【0056】
図10は本発明のそれぞれのバーストの読み取り電圧値を半径方向のヘッドの位置ごとに表したグラフである。バーストを形成する磁性体の幅は0.5μm、磁性体の間隔も0.5μm、バースト信号の個数は8個、バースト信号の名前をデジタル信号部に近いほうからA、B、C、D、E、F、G、Hとしている。それぞれのバースト信号を形成する磁性体8個の隣同士のバースト信号の半径方向のずれは磁性体のピッチに対して1/8、そのずれている方向はすべて同じ方向であるとしている(Aバーストより、Bバーストはメディアの内周側に磁性体のピッチの1/8(1/8μm)ずれているとし、C、D、E、F、G、Hもそれぞれそのバースト信号のデジタル信号側のバースト信号に対して磁性体のピッチの1/8だけ、メディアの内径側にずれている。)。これらの数値はあくまで説明のための代表値としての値であり、本発明がこの指定したバーストの数、ずれ量(ピッチ)、磁性体の幅、磁性体の間隔に限定される訳ではない。グラフに表されているそれぞれのバースト信号波形は孤立波形に類似しており、その信号の立ち上がり部、立ち下がり部は直線とはなっておらず、ヘッドの半径方向の移動量とヘッドの出力値は比例関係にないことが理解できる。また図11はシグナルアシンメトリが40%発生している波形である。この信号でヘッドの位置決めをセルフサーボライトに対して十分正確に制御することは難しいと考えられる。
【0057】
しかし、これら8個のバースト信号のいくつかの電圧値を足し合わせたものを一つのバースト信号の値とすると、信号の立ち上がり部、立ち下がり部が直線状となり、この直線状となった信号の立ち上がり部、立ち下がり部を用いてヘッドの位置決めを行うことで、これらの問題は解消される。
【0058】
図12は1つバースト信号とその両隣のバースト信号、合計3つのバースト信号の値を足し合わせた信号の波形である。この図12では、A+B+CをB'とし、B+C+DをC'とし、C+D+EをD'とし、…………、G+H+AをH'とし、H+A+BをA'としている。これら3つのバースト信号を足し合わせたバースト信号の数は元のバースト信号の個数と同じ8個となっている。この信号はシグナルアシンメトリが0%の信号である。
【0059】
次に電圧値が相反する値となっているA'とE'の差、すなわち、A'−E'、B'−F'、C'−G'、D'−H'の波形を確認すると図13のようになり、立ち上がり,立ち下がりとも直線的になっており、ヘッドの位置決め制御に対して非常に良好な波形(値)を表している。
【0060】
また、図14はシグナルアシンメトリが40%になったときのA'−E'、B'−F'、C'−G'、D'−H'の波形である。この場合も、シグナルアシンメトリに全く影響されておらず、立ち上がり、立ち下がりの傾きが対称となり、またそれぞれの傾きはほぼ直線状となっている。また4つの波形の立ち上がりの直線部は重なりあっている部分が多くあるので、ヘッドの位置決め制御に関して余裕があることを知ることができる。もしこの重なりあっている部分に余裕がない場合はバースト信号のずれ量を少なくし、バースト信号の個数を多くすれば余裕度は確保できる。その時バースト信号を足し合わす数を増やすことは余裕度を増やす可能性の1つである。
【0061】
また、これらのグラフの波形はリードヘッド幅が0.1μmのシミュレーションである。しかしヘッド幅が0.02μmとなってもこの直線部は十分確保できる。従ってこのバースト信号は約6×105TPI以上まで利用できる可能性があると判断できる。
【0062】
また、この信号処理方式によれば、リードヘッドにて読み取った信号の電圧は従来の転写方式の出力信号に比べ低下すると考えられる。それはイレース時の磁界の向きと転写時の磁界の向きがトラック方向ではなく、トラックの方向に対して約45度となっているからである。従来の位相制御パターンにおいても位相制御の斜めのパターン部はメディア外周部で約45度となっており、その出力は斜めではないパターンに比べ10%強低下する。従ってその信号電圧は通常転写信号に比べ約80%から90%程度と推測する。しかしながら、この程度の信号電圧の低下はヘッドの位置決めに対して問題ないと判断できる。
【0063】
さらに、この信号処理方式によれば、シグナルアシンメトリが発生した場合でもヘッドの絶対的位置の補正が可能である。即ち、シグナルアシンメトリが発生するのはマスターディスクを作成する工程にて磁性体の幅が広くまたは狭くなる場合か、あるいは磁気転写時にマスターディスクとメディアとの間に微妙な隙間が発生するためである。しかしながら、これらのいずれの場合でもその読み取り信号の磁性体の中心部に相当する部分と非磁性体部の中心に相当する部分の位置は変化しない。即ち、この信号の処理方法によれば、例えばシグナルアシンメトリが発生していない制御信号を示す図13と、シグナルアシンメトリが40%発生している制御信号を示す図14とで、それぞれのX軸との交点は同じである。従ってシグナルアシンメトリはほぼ完全に補正することが可能であることが分かる。
【0064】
図15はこのような複数の波形を加算さらには減算して立ち上がり部あるいは立ち下がり部に直線性を持たせた信号を生成し、これを信号処理してヘッドの位置決めを行うヘッド位置決め制御回路の一部の構成の一例を示す。
【0065】
メディアに磁気転写されたトラッキングパターンに対応する磁気転写パターンはリードヘッド14aにより読み出され、ヘッドアンプ151はその読み出し信号を増幅する。サンプル値取得回路152は読み出し信号よりサンプル値を取得し、信号連続性検出回路154は、例えば図10に示すヘッド位置とバースト信号電圧との関係を示すグラフに示される8種類の信号を、それぞれの連続性を判定することにより、特に信号同士が交差する点において判別する。信号分離回路153はこの判別結果によりサンプル値取得回路152の出力信号を8種類の信号A,B,C,D,E,F,G,Hに分離する。加算回路155ないし162はこれら8種類の信号A,B,C,D,E,F,G,Hの中で隣り合う3つの信号
A,B,C
B,C,D
C,D,E
………
G,H,A
H,A,B
についてそれぞれ加算を行い、
B'(=A+B+C)
C'(=B+C+D)
D'(=C+D+E)
………
H'(=G+H+A)
A'(=H+A+B)
を得る。
減算回路163ないし166は
C'−G'
D'−H'
A'−E'
B'−F'
を演算する必要がある場合に設ければよいもので、上述のA'ないしH'の8種類の信号を用いる場合はこれら減算回路は必要としない。
【0066】
ウインドウ設定回路170はこのようにして得られた、A'ないしH'の8種類の信号(もしくはA'−E,B'−F',C'−G',D'−H'の4種類の信号)が直線性を呈する立ち上がり部もしくは立ち下がり部を抜き取るようにウインドウを設定し、信号処理回路171はこの立ち上がり部もしくは立ち下がり部における信号を用いてリードヘッド14aのトラッキングを行うようにその信号処理を行う。その際、抜き取られた信号は直線状となっているので、信号処理回路171は、ヘッドの正確な位置決め制御を容易に行うことが可能となる。
【0067】
このように、本実施の形態1によれば、
1.精度よいバーストパターンを提供できる。TPIが高くなっても使用可能である。
2.リードヘッド及びライトヘッドの位置決め精度を上げるために磁性体部および非磁性体部の間隔を細くする必要がなく、シグナルアシンメトリの問題がない。
3.サーボトラッキングパターンの長さを短くできるので、磁気記録装置のサーボトラッキングパターンの個数が増えたとしても使用可能である。即ち、直径2.5inchメディアの磁気記録装置にて現行方式では350個が、本実施の形態1では450個に増加可能である。
4.この磁気転写パターンを最終サーボトラッキングパターンとして使用可能である。あるいはバースト信号部のみを最終バーストパターンとして使用可能である。その場合はデジタル部のみを書き換える。
5.従来のバースト信号は一定の周波数で書込まれており、その信号の最大値を求める手法が必要であったが、本実施の形態1ではバースト信号の読み取り値は直流成分で現れるので、複雑な手法を必要としない。
【0068】
なお、上記実施の形態1では、磁気転写用のヘッドのギャップ形状を、リードヘッド及びライトヘッドの軌跡と磁気ディスクのトラックとの交点におけるヘッドの移動時の軌跡である円弧の接線とトラックの接線とのなす角度の半分である約45°としたが、最適値を言えばトラックとヘッドのオフセット角(スキュー角)により変化し、(90°+スキュー角)/2であらわされる。
【0069】
また、上記実施の形態1では、磁気記録装置としてハードディスクドライブを例に挙げて説明したが、これは各種の磁気ディスク装置、例えば、大容量のフレキシブルディスク装置やリムーバブルディスク装置に適用してもよい。
【0070】
さらに、上記実施の形態1では、ハードディスクドライブがリードヘッド及びライトヘッドの両方を有するものとして説明したが、リードヘッドのみを有するものに適用してもよい。
【0071】
また、上記実施の形態1では、バースト信号を8種類とし、その1/8ずつビッチをずらせて配置するようにしたが、バースト信号は2以上の複数種類(=n)であればよく、ピッチを1/nずつずらせて配置すればよい。
【0072】
また、上記実施の形態1では、図3のステップ101によるDCイレースをステップ102によるマスターディスクの作成より先に実行するようにした場合について示したが、これらのステップは同時に実行してもよいし、ステップ102をステップ101より先に実行するようにしてもよい。
【0073】
さらに、上記実施の形態1では、図4(a)に示すようにメディアの半径方向全面を覆う磁気転写用ヘッドを用いて磁気転写を行うようにしたが、図4(b)に示すように、ギャップ180aが直線状かつメディアの半径方向の一部しか覆わない小型の磁気転写用ヘッド200を用いることも可能であり、この場合、磁気転写用ヘッドをメディア7の外周部と内周部との間で図4(a)に示すヘッドギャップと同様の形状の円弧を描くように移動させればよい。これにより、ハードディスクドライブのローターアームの長さが変更となった場合、またはモーターのセンターとローターアームのピポットセンターの距離が変更になった場合、磁気記録用のヨークまたは取り付け位置を変更または新しく作成する必要が無くなり、経済的となる。なお、図4(b)において、180はヨーク、190はマグネットである。またこの図4(b)に示す磁気転写用ヘッドを使用する場合においても、同図に示すような右に凸の円弧を描くように移動させるのみならず、左に凸の円弧を描くように移動させてもよい。また、メディアのDCイレース時と磁気転写時とでは、図4(b)と同一の形状の磁気転写用ヘッドを同一の軌跡で移動させ、磁界の向きのみを逆にすればよい。
【0074】
また、上記実施の形態1では、水平磁気記録の場合についてのみを説明したが、垂直磁気記録であっても適用でき、同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上のように、この発明の磁気転写用ヘッドは、高精度のヘッドの位置決めが可能となり、また転写信号の円周方向の長さが短くなるようなトラッキングパターンを転写可能であるため、磁気記録装置の記録密度を向上するのに用いて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施の形態1による磁気転写方法におけるメディアのDCイレースの様子を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1による磁気転写方法におけるメディアの磁気転写の様子を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1による磁気転写方法を使用したハードディスクドライブの製造方法における一連の工程を示すフローチャート図である。
【図4(a)】本発明の実施の形態1による磁気転写方法に使用する磁気転写用ヘッドの構造の一例を示す図である。
【図4(b)】本発明の実施の形態1による磁気転写方法に使用する磁気転写用ヘッドの構造の他の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1による磁気転写方法に使用する磁気転写用ヘッドの構造の他の一例を示す図である。
【図6(a)】本発明の実施の形態1による磁気転写方法に使用するマスターディスクのディスクパターンの一例を示す図である。
【図6(b)】本発明の実施の形態1による磁気転写方法に使用するマスターディスクのディスクパターンの他の例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1による磁気転写方法に使用するマスターディスクのディスクパターンを、従来の磁気転写用ヘッドで転写したときの信号を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態1による磁気転写方法に使用するマスターディスクのディスクパターンを、本発明の磁気転写用ヘッドで転写したときの信号を示す図である。
【図9】従来のサーボトラックライターによりメディアに記録されたバースト信号を示す図である。
【図10】バースト信号の読み取り電圧を示す図である。
【図11】シグナルアシンメトリが40%のバースト信号の読み取り電圧を示す図である。
【図12】3つのバースト信号の和を取った場合の読み取り電圧を示す図である。
【図13】3つのバースト信号の和の差を取った場合の読み取り電圧を示す図である。
【図14】シグナルアシンメトリが40%の3つのバースト信号の和の差を取った場合の読み取り電圧を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態1による磁気転写方法により磁気転写されたメディアに対しヘッドの位置決めを行うヘッド位置決め制御回路の一部の構成例を示す図である。
【図16】従来の磁気転写方法におけるメディアのDCイレースの様子を示す図である。
【図17】従来の磁気転写方法におけるメディアの磁気転写の様子を示す図である。
【図18】従来の磁気転写方法を使用したハードディスクドライブの製造方法における一連の工程を示すフローチャート図である。
【図19】従来の磁気転写方法に使用する磁気転写用ヘッドの構造の例を示す図である。
【図20】ハードディスクドライブのメディアに記録されたサーボ信号を示す図である。
【図21】ハードディスクドライブの概略構成を示す図である。
【図22】磁気転写されたメディアからヘッドにて得られた信号を示す図である。
【図23】従来の磁気転写方法に使用するマスターディスクのサーボトラッキングパターンの例を示す図である。
【符号の説明】
【0077】
1 メディア
1a メディアの磁性層
1b メディア本体
2 外部磁界の方向を表す矢印
3 マスターディスク
3a マスターディスクの磁性体
3b 非磁性体基板
4 磁気転写時の外部磁界の方向を表す矢印
12 ローターアームのピボットセンター
13 ローターアーム
14 ヘッド
8,18,180 ヨーク
8a,18a,180a ギャップ
9,19,190 永久磁石
10,20,200 磁気転写用ヘッド
101,201 DCイレースを行う工程
102,202 マスターディスクを作成する工程
103,203 メディアとマスターディスクを重ね合わせる工程
104,204 磁気転写を行う工程
105,205 ハードディスクドライブを組立てる工程
106,206 セルフサーボライトを行う工程
L1,L2 L字状のピーク
tr1,…,trn トラック
t1 トラックの接線
t2 ヘッドギャップの接線
n1 ヘッドの移動時の軌跡である円弧の接線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに近接して設けられたライトヘッド及びリードヘッドと、
前記ライトヘッド及び前記リードヘッドがその一端に支持され、磁気ディスク上を自在に回動するアクチュエータとを有する磁気記録装置の磁気ディスク上にトラッキングパターンを書き込むための磁気転写用ヘッドであって、
前記磁気ディスクの内周部から外周部までを覆いうる長さの永久磁石と、
該永久磁石に取り付けられたヨークとを備え、
該ヨークのギャップは、前記ライトヘッド及びリードヘッドが前記磁気ディスク上の内周部から外周部へ移動する時の円弧状の軌跡と該磁気ディスク上の各トラックとの交点におけるヘッドの移動時の軌跡である円弧の接線とトラックの接線とのなす角度をそれぞれ約2等分した角度で当該各交点におけるギャップの接線が形成されるようにその形状が決定されている、
ことを特徴とする磁気転写用ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図5】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2008−276932(P2008−276932A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163599(P2008−163599)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【分割の表示】特願2003−411209(P2003−411209)の分割
【原出願日】平成15年12月10日(2003.12.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】