説明

礫を含む土を用いた植物生育基盤材料の製造方法

【課題】土に含まれる粘土粒子を植物生育基盤材料の生成に効率的に利用することを可能にし、また、予め礫を土から除去することによって、攪拌時に前記礫によりミキサの羽根が損傷したり、散布後に法面から前記礫が落下するのを防止すること。
【解決手段】礫を含む土を用いた植物生育基盤材料の製造方法は、前記植物生育基盤材料1mにつき約300リットルないし約600リットルの水を用意する第1ステップと、前記水の全部とふるいとを用いて前記礫を前記土から分離しかつ除去し、礫が除去された土と水との混合物を生成する第2ステップと、少なくとも前記土と水との混合物および団粒剤を混合する第3ステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切土、盛土等により形成された法面または平坦面(以下「法面等」という。)を緑化するための、礫を含む土を用いた植物生育基盤材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路の建設、宅地造成等の建設工事では、森林の伐採や抜根に続き、表土を含む地盤を掘削する。掘削された土は、前記法面等を緑化するための植物生育基盤材料として再利用されている。これにより、再利用されずに処分される土の量を低減することができる。また、前記表土には種子や肥料が多く含まれているため、前記法面等の緑化を促進することができる。
【0003】
前記植物生育基盤材料は、土と、団粒剤、接合剤、肥料、植物の破砕片、種子、水等の他の材料とを攪拌して混合することによって製造され、前記法面等に散布される。前記土、前記水および前記団粒剤が混合されることにより、前記土に含まれる粘土粒子が団粒化されて団粒構造が形成される。これにより前記植物生育基盤材料に保水性および保肥性を持たせることができる。
【0004】
前記建設工事で発生する土には礫が含まれている。礫を含む土を用いた植物生育基盤材料の従来の製造方法には、ふるいを用いて前記礫を前記土から分離しかつ除去し、礫が除去された土と前記他の材料とを攪拌して混合するものがある(例えば、特許文献1、2参照。)。
【特許文献1】特開平11−21900号公報
【特許文献2】特開2002−167763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記土は、一般に、粘土粒子を多く含み、粘性を有しているため、前記礫を含んだ状態で固まっている。このため、従来の製造方法では、前記土のふるい分けが十分に行われず、前記土の一部が前記ふるい上に残る。よって、前記植物生育基盤材料の生成にとって有効な成分である粘土粒子を効率的に活用することが困難である。そこで、前記土がふるい上に残らないようにするために前記ふるいの目をより大きくすると、前記礫が前記ふるいを通過するようになり、前記礫を前記土から十分に除去することができない。このため、攪拌時に前記礫によってミキサの羽根が損傷したり、散布後に前記法面から前記礫が落下して危険を招くという問題が生じる。
【0006】
本発明の目的は、前記土に含まれる粘土粒子を前記植物生育基盤材料の生成に効率的に利用できるようにすることである。また、本発明の他の目的は、予め前記礫を前記土から除去することによって、攪拌時に前記礫によりミキサの羽根が損傷したり、散布後に前記法面から前記礫が落下するのを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも土、水および団粒剤を含む混合物の生成に先立ち、礫が除去された土と水との混合物を生成することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る、礫を含む土を用いた植物生育基盤材料の第1の製造方法は、前記植物生育基盤材料1mにつき約300リットルないし約600リットルの水を用意する第1ステップと、前記水の全部とふるいとを用いて前記礫を前記土から分離しかつ除去し、礫が除去された土と水との混合物を生成する第2ステップと、少なくとも前記土と水との混合物および団粒剤を混合する第3ステップとを含む。前記水を用いて前記土をふるい分けることによって、前記礫を前記土から比較的容易に分離しかつ除去することができ、これにより、礫が除去された土と水との混合物を生成することができる。また、前記水を用いて前記土をふるい分けることによって、礫が除去された土を前記ふるいから流し落とすことができ、これにより、前記土に含まれる粘土粒子を前記土と水との混合物の生成に効率的に利用することができる。
【0009】
本発明に係る、礫を含む土を用いた植物生育基盤材料の第2の製造方法は、前記植物生育基盤材料1mにつき約300リットルないし約600リットルの水を用意する第1ステップと、前記水の一部とふるいとを用いて前記礫を前記土から分離しかつ除去し、礫が除去された土と水との混合物を生成する第2ステップと、少なくとも前記土と水との混合物、団粒剤および前記水の他の一部を混合する第3ステップとを含む。
【0010】
前記第1、第2の製造方法において、前記第2ステップは、ミキシング槽の外で前記土に前記水を加えつつ前記土をふるい分けることにより行うことができる。この場合、ふるい機能付バケットに入れられた前記土に前記水を噴射してもよいし、板状のふるいに載せられた前記土に前記水を噴射してもよい。また、前記第2ステップは、前記水の中で前記土をふるい分けることにより行うこともできる。
【0011】
前記第1の製造方法において、前記第3ステップは、前記土と水との混合物および前記団粒剤に加え、植物の破砕片、接合剤、肥料および種子の少なくとも1つを混合することができる。前記第2の製造方法において、前記第3ステップは、前記土と水との混合物、前記団粒剤および前記水の他の一部に加え、植物の破砕片、接合剤、肥料および種子の少なくとも1つを混合することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、少なくとも土、水および前記団粒剤を含む混合物の生成に先立ち、礫が除去された土と水との混合物を生成することによって、攪拌時に前記礫によりミキサの羽根が損傷したり、散布後に前記法面から前記礫が落下するのを防止することができる。また、土に含まれる粘土粒子を前記植物生育基盤材料の生成に効率的に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1に示すように、道路の建設、宅地造成等の建設工事の現場内に、礫を含む土10、水12および団粒剤14を用意する。土10は、前記現場で発生した土または他の現場から搬入された土である。土10をふるい分ける格子状の底部(図示せず)を有するふるい機能付バケット16をバックホウのような掘削運搬機械18に取り付ける。
【0014】
少なくとも土、水および団粒剤14を含む混合物を生成するために攪拌を行う2軸形の強制練りミキサのようなミキサ20を設置台22上に設置する。ミキサ20は、ミキシング槽24と、該ミキシング槽内に設けられた攪拌用の羽根26とを備える。また、水12を入れた給水タンク28と、水12の水量を調整する水計量タンク30と、土10に水12を噴射する水噴出装置32とを設置台22上に設置する。給水タンク28と水計量タンク30との間、水計量タンク30と水噴出装置32との間のそれぞれを送水管34で連結し、給水タンク28および水計量タンク30のそれぞれに、水を送り出すポンプ36を設置する。水噴出装置32はミキシング槽24より高い位置に固定する。
【0015】
植物生育基盤材料の製造を行うとき、図2に示すように、まず、水12の水量を調整し、これにより前記植物生育基盤材料1mにつき約300リットルないし約600リットルの水38を用意する。水量の調整は、ポンプ36で給水タンク28から水計量タンク30へ水12を供給し、水計量タンク30で水量を計ることにより行う。
【0016】
用意する水38の量は、土10に占める粘土粒子の比率に応じて変えることができる。前記植物生育基盤材料1mを製造するのに用意する水38の量は、土10が砂を多く含むときのように前記比率が約10%ないし約20%である場合は約300リットル、土10が一般的な森林の表土であるときのように前記比率が約30%ないし約50%である場合は約400リットル、前記比率が約50%ないし約60%である場合は約500リットルないし約600リットルが好ましい。水38の量は、上記の例に限定されず、土10の他の成分または含水比、団粒剤14の使用量等に応じて変えることができる。
【0017】
次に、ふるい機能付バケット16で土10をすくい、ふるい機能付バケット16をミキサ20のミキシング槽24上に移動させる。その後、水38をポンプ36により水計量タンク30から送水管34を経て水噴出装置32へ送り出し、該水噴出装置からふるい機能付バケット16内の土10に噴射しつつ土10をふるい分ける。これにより、前記礫を土10から分離しかつ除去し、礫が除去された土と水との混合物をミキシング槽24内に生成する。
【0018】
送水管34には直径が50mmのホースを用い、水噴出装置32には前記ホースの先端に取り付けられた直径が25mmのノズルを用いることができる。土10に占める粘土粒子の比率が約30%ないし約50%である場合、約150リットルの水38を用いて約0.25mの土10を1分程度でふるい分けることができる。したがって、約0.5mの土10と、約0.5mの植物の破砕片のような他の材料とを使用して前記植物生育基盤材料1mを製造するとき、土10のふるい分けに要する水量は約300リットルとなる。なお、土10のふるい分けに要する水量および時間は、土10に噴射する水38の圧力を調整することにより適宜設定することができる。
【0019】
土10のふるい分けは、水38の全部または一部を用いて行う。土10のふるい分けに要する水量が比較的多いときは、前記水量を水38の量の範囲内に抑えるために、水噴出装置32から噴射する水38の水圧を高くすることができる。土10のふるい分けに水38を用いることにより、前記礫を土10から比較的容易に分離しかつ除去することができる。また、礫が除去された土をふるい機能付バケット16内から残さず水38で洗い流すことができるため、土10に含まれる粘土粒子を前記土と水との混合物の生成に効率的に利用することができる。
【0020】
土10のふるい分けには、格子状の底部(図示せず)を有するふるい機能付バケット16に代え、軸線を中心に回転させることができる円筒状のふるいを有するふるい機能付バケット(図示せず)、他のふるい機能付バケットを用いてもよい。前記円筒状のふるいを有するふるい機能付バケットを用いる場合、前記円筒状のふるいに土10を入れ、該土に水38を噴射しつつ前記円筒状のふるいを回転させて土10をふるい分ける。
【0021】
また、土10のふるい分けは、ふるい機能付バケットに代え、図3に示すように、板状のふるい40を用いて行うことができる。この場合、まず、ふるい40をミキシング槽24上に設置し、バックホウのような掘削運搬機械(図示せず)で土10をふるい40上に載せる。その後、土10に水38を噴射して土10をふるい分ける。これにより、礫が除去された土と水との混合物42をミキシング槽24内に生成する。
【0022】
土10のふるい分けは、ミキシング槽24の外で土10に水38を加えつつ行う上記の方法のほか、水38の中で行う方法により行うことができる。図4に示す例では、まず、ミキサ20のミキシング槽24とは別に水槽44を用意し、水38を水槽44に入れる。次に、ふるい機能付バケット16で土10をすくい、ふるい機能付バケット16を水槽44内に入れ、水38の中で土10をふるい分ける。これにより前記礫を土10から分離する。その後、ふるい機能付バケット16を水槽44から出すことによって前記礫を除去し、礫が除去された土と水との混合物を水槽44内に生成する。その後、前記土と水との混合物をミキサ20のミキシング槽24に入れる。土10のふるい分けは、水槽44を用いることなく、ミキサ20のミキシング槽24内で行ってもよい。
【0023】
図5に示す例では、ふるい機能付バケット16に代え、板状のふるい46を用いて土10をふるい分ける。この場合、まず、ミキシング槽24内に板状のふるい46を取付け、ミキシング槽24内にふるい46の取付位置より高い位置まで水38を入れる。次に、前記掘削運搬機械(図示せず)で土10をふるい46上に載せ、水38の中で土10をふるい分ける。これにより前記礫を土10から分離する。その後、前記礫が残されたふるい46をミキシング槽24から取り出し、礫が除去された土と水との混合物をミキシング槽24内に生成する。
【0024】
その後、団粒剤14をミキシング槽24内に入れる。団粒剤14にはポリアクリルアミドのような高分子凝集剤を用いる。前記土と水との混合物を生成するのに水38の全部を使用した場合、前記土と水との混合物および団粒剤14をミキシング槽24内でミキサ20の羽根26で攪拌して混合し、植物生育基盤材料48を生成する(図2)。前記土と水との混合物および団粒剤14が混合されることにより、前記土に含まれる粘土粒子が団粒化されて団粒構造が形成される。植物生育基盤材料48が前記団粒構造を有することにより、植物生育基盤材料48に保水性および保肥性を持たせることができ、前記法面等の緑化を促進することができる。
【0025】
前記土と水との混合物および団粒剤14を混合するとき、前記土と水との混合物および団粒剤14に加え、植物の破砕片、接合剤、肥料および種子の少なくとも1つを混合することができる。前記植物の破砕片には、森林の伐採により発生した木の根、幹、枝葉等が含まれる。前記植物の破砕片が絡み合うことにより植物生育基盤材料48を補強することができる。前記植物の破砕片を植物生育基盤材料48の生成に利用することにより、再利用されずに処分される植物の破砕片の量を低減することができる。
【0026】
他方、前記土と水との混合物を生成するのに水38の一部を使用した場合、団粒剤14のほかに水38の他の一部をミキシング槽24内に入れ、前記土と水との混合物、団粒剤14および水38の他の一部をミキシング槽24内でミキサ20の羽根26で攪拌して混合し、植物生育基盤材料48を生成する(図6)。なお、水38が前記植物生育基盤材料1mにつき約300リットルであり、水38の一部が約200リットルであるとき、水38の他の一部は約100リットルである。水38が前記植物生育基盤材料1mにつき約400リットルであり、水38の一部が約300リットルであるとき、水38の他の一部は約100リットルである。水38が前記植物生育基盤材料1mにつき約600リットルであり、水38の一部が約450リットルであるとき、水38の他の一部は約150リットルである。
【0027】
前記土と水との混合物、団粒剤14および水38の他の一部を混合するとき、前記土と水との混合物、団粒剤14および水38の他の一部に加え、植物の破砕片、接合剤、肥料および種子の少なくとも1つを混合することができる。
【0028】
その後、植物生育基盤材料48をトラック50に搭載して運搬し、前記法面等へ散布する。
【0029】
本発明によれば、少なくとも土、水および団粒剤14を含む混合物の生成に先立ち、礫が除去された土と水との混合物を生成することによって、攪拌時に前記礫によりミキサの羽根が損傷したり、散布後に前記法面から前記礫が落下するのを防止することができる。また、水38を用いて土10をふるい分けることによって、土10に含まれる粘土粒子を植物生育基盤材料48の生成に効率的に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る植物生育基盤材料の製造方法の第1の実施例における設備配置図。
【図2】本発明に係る植物生育基盤材料の製造方法の作業手順。
【図3】本発明に係る植物生育基盤材料の製造方法の第2の実施例における設備配置図。
【図4】本発明に係る植物生育基盤材料の製造方法の第3の実施例における設備配置図。
【図5】本発明に係る植物生育基盤材料の製造方法の第4の実施例における設備配置図。
【図6】本発明に係る植物生育基盤材料の他の製造方法の作業手順。
【符号の説明】
【0031】
10 土
12、38 水
14 団粒剤
16 ふるい機能付バケット
24 ミキシング槽
44 水槽
40、46 板状のふるい
48 植物生育基盤材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
礫を含む土を用いた植物生育基盤材料の製造方法であって、前記植物生育基盤材料1mにつき約300リットルないし約600リットルの水を用意する第1ステップと、前記水の全部とふるいとを用いて前記礫を前記土から分離しかつ除去し、礫が除去された土と水との混合物を生成する第2ステップと、少なくとも前記土と水との混合物および団粒剤を混合する第3ステップとを含む、植物生育基盤材料の製造方法。
【請求項2】
礫を含む土を用いた植物生育基盤材料の製造方法であって、前記植物生育基盤材料1mにつき約300リットルないし約600リットルの水を用意する第1ステップと、前記水の一部とふるいとを用いて前記礫を前記土から分離しかつ除去し、礫が除去された土と水との混合物を生成する第2ステップと、少なくとも前記土と水との混合物、団粒剤および前記水の他の一部を混合する第3ステップとを含む、植物生育基盤材料の製造方法。
【請求項3】
前記第2ステップは、ミキシング槽の外で前記土に前記水を加えつつ前記土をふるい分けることを含む、請求項1または2に記載の植物生育基盤材料の製造方法。
【請求項4】
前記第2ステップは、前記水の中で前記土をふるい分けることを含む、請求項1または2に記載の植物生育基盤材料の製造方法。
【請求項5】
前記第2ステップは、ふるい機能付バケットに入れられた前記土に前記水を噴射することを含む、請求項3に記載の植物生育基盤材料の製造方法。
【請求項6】
前記第2ステップは、板状のふるいに載せられた前記土に前記水を噴射することを含む、請求項3に記載の植物生育基盤材料の製造方法。
【請求項7】
前記第3ステップは、前記土と水との混合物および前記団粒剤に加え、植物の破砕片、接合剤、肥料および種子の少なくとも1つを混合することを含む、請求項1に記載の植物生育基盤材料の製造方法。
【請求項8】
前記第3ステップは、前記土と水との混合物、前記団粒剤および前記水の他の一部に加え、植物の破砕片、接合剤、肥料および種子の少なくとも1つを混合することを含む、請求項2に記載の植物生育基盤材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−185121(P2007−185121A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−4292(P2006−4292)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(502281127)株式会社ファテック (83)
【Fターム(参考)】