説明

示差走査熱量計

【課題】ヒートシンクと冷却ブロックとの間の熱抵抗体への冷却ヘッドからの熱流入を抑制し、測定精度や冷却効率を向上させることができる示差走査熱量計を提供する。
【解決手段】測定試料及び基準物質を収納するヒートシンク10と、ヒートシンクを加熱するヒータ12と、ヒートシンクと離間しつつヒートシンクの下方に位置する冷却ブロック20と、ヒートシンクと冷却ブロックとの間に接続されてこれらの間に熱流路を形成する熱抵抗体14と、冷却ブロックに取外し可能に嵌合されるための内孔30iを有し外部の冷却装置によって冷却される冷却ヘッド30と、測定試料と基準物質との温度差を熱流差信号として出力する示差熱流検出器3、5とを備え、冷却ブロックのうち熱抵抗体との接続部20cより外側に、内孔と嵌合する側壁21pwが形成され、冷却ヘッドの上面30uが接続部より上方にはみ出さないように配置される示差走査熱量計1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部の冷却装置によって冷却される冷却ヘッドを、取外し可能に接続した示差走査熱量計に関する。
【背景技術】
【0002】
示差走査熱量計は、ヒートシンク内に収容された測定試料及び基準物質の温度を一定速度で変化させ、両者に流れる熱流差を測定する熱分析装置であり、ヒートシンクを加熱するヒータと、ヒートシンクを冷却する冷却機構を備えている。この冷却機構には、液化窒素などを気化させたガスを用いたガス冷却装置(特許文献1)や、コンプレッサーにより冷却された冷媒を用いる電気冷却装置が外部から接続され、冷却が行われるようになっている。
又、熱分析装置の冷却機構自身に冷却ヘッドの挿入孔を設けて外部の電気冷却装置を取外し可能に接続すると共に、この挿入孔に連通する排気流路を設けて冷却機構自身のガス冷却を可能とした示差走査熱量計が開示されている(特許文献2)。
さらに、円筒形のディスクを備えた冷却フランジを、熱抵抗器を介してヒートシンクの下方に接続した走査熱量計が開示されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7-122619号公報
【特許文献2】特開2006-58047号公報
【特許文献3】特開2002-310965号公報(図1、段落0045)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ガス冷却装置は冷媒の補充が煩わしい上にランニングコストも高く、電気冷却装置は使用可能な温度領域が限られるため、これらのいずれか一方しか冷却に使用できない場合には、示差走査熱量計の測定が制限される。
又、特許文献3記載の技術の場合、冷却フランジ(冷却ブロック)10の頂面12の上に外部の冷却装置を載置するため、冷却装置の冷却ヘッドが冷却フランジ10上の熱抵抗器9に直接対向するようにして近接し、冷却ヘッドと熱抵抗器9間で空気層を介した無視できない熱流入が生じる。これは、通常、冷却ヘッドと熱抵抗器9間に100℃以上の温度差があるためである。この場合、冷却ヘッドと熱抵抗器9間で輻射や対流などによる熱的影響が生じ、ヒートシンクへの熱伝導のアンバランスや不安定化を招く。一方で、冷却ヘッドを熱抵抗器9から遠ざけて冷却フランジ10と接触させると、冷却フランジ10内に熱抵抗が生じて自身の温度分布が大きくなり、冷却効率が低下する。
【0005】
一方、特許文献2記載の技術の場合、冷却ヘッドが冷却機構(冷却ブロック)内に完全に収容されるため、冷却ヘッドと熱抵抗器との間の熱流入の問題は生じないものの、冷却ブロックの偏った位置に円柱状の冷却ヘッドを挿入するため、冷却ブロックの冷却が均等に行われない可能性があり、この点で改善の余地がある。
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、外部の冷却装置によって冷却される冷却ヘッドを冷却ブロックに接続する場合に、ヒートシンクと冷却ブロックとの間の熱抵抗体への冷却ヘッドからの熱流入を抑制し、冷却速度や測定精度を向上できると共に、冷却効率も高めた示差走査熱量計の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の示差走査熱量計は、測定試料及び基準物質を収納するヒートシンクと、前記ヒートシンクを加熱するヒータと、前記ヒートシンクと離間しつつ該ヒートシンクの下方に位置する冷却ブロックと、前記ヒートシンクと前記冷却ブロックとの間に接続されてこれらの間に熱流路を形成する熱抵抗体と、前記冷却ブロックに取外し可能に嵌合されるための内孔を有し外部の冷却装置によって冷却される冷却ヘッドと、前記測定試料と前記基準物質との温度差を熱流差信号として出力する示差熱流検出器とを備え、前記冷却ブロックのうち前記熱抵抗体との接続部より外側に、前記内孔と嵌合する側壁が形成され、前記冷却ヘッドの上面が前記接続部より上方にはみ出さないように配置される。
このように冷却ヘッドの上面が接続部より上方にはみ出さないので、熱抵抗体が冷却ヘッドに直接対向せず、熱抵抗体と冷却ヘッドの間での空気層を介した熱流入を抑制することができる。又、冷却ヘッドの内孔に嵌合した側壁が接続部より外側に位置しているので、横方向から見たとき、冷却ヘッドの内面と接続部との間には必ず間隔が形成される。そのため、冷却ヘッドの内面と熱抵抗体とが直接接触することが防止される。又、冷却ヘッドの内孔と側壁との嵌合部から熱伝導が行われるので、他の嵌合部(例えば冷却ヘッド下面と冷却ブロック上面)からの熱伝導に比べて熱抵抗体へ至る熱流路が短くて済み、冷却速度を早くし、冷却効率を高めることができる。
さらに、冷却ヘッド内面が側壁を囲むように接するので、冷却ヘッドと冷却ブロックとの間の熱伝導損失が少なく、冷却効率を高めることができる。
【0007】
前記側壁は、前記冷却ブロックの上方又は下方に突出する突出部の外周面であってもよい。
このようにすると、突出部を冷却ヘッドの内孔に嵌合すればよいので、確実な嵌合を行うことができる。
【0008】
前記冷却ブロックの上面又は下面には、前記突出部と、該突出部を外側から離間しつつ囲む外周環とによって区画される環状の溝が形成され、前記内孔に前記突出部を嵌合しつつ前記冷却ヘッドが前記溝に収容されるようにしてもよい。
このようにすると、冷却ヘッドの外周と外周環の内面との接触部からも熱伝導が行われ、冷却ヘッドと冷却ブロックとの間の熱伝導損失がさらに少なくなり、冷却効率をより一層高めることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、外部の冷却装置によって冷却される冷却ヘッドを冷却ブロックに接続する場合に、ヒートシンクと冷却ブロックとの間の熱抵抗体への冷却ヘッドからの熱流入を抑制し、冷却速度や測定精度を向上できると共に、冷却効率も高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る示差走査熱量計の構成を示す断面図である。
【図2】ブロックの接続部近傍の部分拡大図である。
【図3】示差走査熱量計の構成を示す斜視図である。
【図4】第2の実施形態に係る示差走査熱量計の構成を示す断面図である。
【図5】第2の実施形態に係る示差走査熱量計の上面図である。
【図6】第3の実施形態に係る示差走査熱量計の構成を示す断面図である。
【図7】第4の実施形態に係る示差走査熱量計の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係る示差走査熱量計1の構成を示す断面図である。示差走査熱量計1は、測定試料及び基準物質を収納するヒートシンク10と、ヒートシンク10の外周に巻回されて該ヒートシンクを加熱する巻線状のヒータ12と、ヒートシンク10と離間しつつ該ヒートシンクの下方に位置する冷却ブロック20と、ヒートシンク10と冷却ブロック20との間に接続されてこれらの間に熱流路を形成する熱抵抗体14と、外部の電気式冷却装置(図示せず)によって冷却される冷却ヘッド30と、測定試料と基準物質との温度差を熱流差信号として出力する示差熱流検出器(熱電対用端子)3,5とを備えている。
なお、ヒータ12の外側は図示しないカバーで覆われている。
【0012】
ヒートシンク10は円筒状に形成され、軸方向の中央に位置する底面10dより上方が上筒10aを構成し、底面より下方が下筒10bを構成している。ヒートシンク10の底面10dと上筒10aで囲まれた内部空間には、それぞれ測定試料及び基準物質を設置するための測定試料ホルダ2及び基準物質ホルダ4が配置されている。又、測定試料ホルダ2及び基準物質ホルダ4にそれぞれ熱電対用端子3,5に同種金属線が接続され、それらはヒートシンク10の下方に引き出されて、いわゆる示差熱電対を形成するように、それぞれ増幅器61に接続されて測定試料と基準物質の温度差を検知できるようになっている。この温度差が熱流差信号として記録される。一方、熱電対用端子3からは、熱電対が引き出されて増幅器62に接続され、測定試料の温度が記録される。
さらに、ヒートシンク10の下筒10bの内面に制御熱電対18が取り付けられ、ヒートシンク10の温度を測定する。制御熱電対18の出力は、公知のPID制御回路からなるPID演算部71によって演算され、演算結果がヒータドライブ(駆動回路)72に出力され、ヒータ12の温度を制御可能になっている。
ヒートシンク10の上筒10aの上端には蓋11が着脱可能に載置され、ヒートシンク10内部を外気から遮断している。
ヒートシンク10は、耐熱性の観点、及び温度分布を小さくするため、高熱伝導率物質である純Ag等からなり、サンプルの熱的な変化に対して充分な熱容量を有している。
【0013】
冷却ブロック20は平面形が略直方体をなし、中心から円筒状の突出部20pが上方に突出し、突出部20pより外側が平坦面を構成しつつ、直角に立ち下がって下壁20dを形成している。又、突出部20pの外周面20pwと上記平坦面とが段状に接続されている。なお、外周面20pwが特許請求の範囲の「側壁」に相当するが、下壁20dは「側壁」に相当しない。また、突出部20pの外周面20pwと突出部20pの中心に開口した丸孔20hは冷却ブロック20を貫通している。又、冷却ブロック20の内部には、冷却ブロック20の外周に沿って矩形断面の空洞20aが設けられ、空洞20aは、冷却ブロック20の下壁20dに取り付けられた冷却ガス導入配管40及び冷却ガス排出配管41に連通している。従って、冷却ガス導入配管40に液化窒素などを気化させた冷却ガスや、圧縮空気からなる冷却ガスを導入することで、冷却ブロック20自身のガス冷却が可能となっている。なお、空洞20aは円形断面でもよい。
【0014】
又、冷却ブロック20下面の四隅にはそれぞれ支柱50が取り付けられ、支柱50を介して基台52上に冷却ブロック20が載置されている。
冷却ブロック20はヒートシンク10を冷却する冷却源として機能し、冷却ブロック20の熱容量は冷却能力、ヒータ12の能力、後述する熱抵抗体14の熱抵抗値等に応じて設定される。又、温度分布を小さくすると共にコストの点から、冷却ブロック20は高熱伝導率物質であるCu、Al等からなっている。
【0015】
熱抵抗体14の両端は、ヒートシンク10の下筒10bの下端面と、冷却ブロック20の突出部20pの上端面20cとにそれぞれロウ付けされて固定されている。熱抵抗体14は多数の矩形板からなり、各矩形板は下筒10bの下端面(及び突出部20pの上端面20u)の周方向に離間し、かつ各矩形板がこれら端面の外周縁より内側に配置されている(図2参照)。なお、突出部20pの上端面20uにおいて、熱抵抗体14より外側には環状の遮蔽板16を取り付け、空気層を介した冷却ヘッド30との間の熱流入をさらに防止してもよい。
そして、上端面20uのうち熱抵抗体14の下端との接続部20cが、特許請求の範囲の「熱抵抗体との接続部」に相当する。
【0016】
熱抵抗体14の熱抵抗値は、ヒートシンク10の最高/最低到達温度や、温度の昇降に対する追従性等に応じて決定される。ヒートシンク10と冷却ブロック20との間の温度差は最大600℃程度になり、熱抵抗体14に大きな熱応力がかかることから、熱抵抗体14とヒートシンク10(及び冷却ブロック20)はロウ付け等によって接続される。
熱抵抗体14を純Feから形成すると、以下のような純Feの熱伝導率の温度依存性を利用してヒートシンク10の最高/最低到達温度の幅を広げることができる。純Feは、他の金属に比べ、高温では熱伝導率が低下し、低温では熱伝導率が上昇する。
【0017】
冷却ヘッド30は外形が略直方体をなし、中心に円形の内孔30iが貫通している。又、冷却ヘッド30の側壁から外部の電気式冷却装置(図示せず)との接続部30cが延び、電気式冷却装置によって冷却ヘッド30が冷却されるようになっている。
そして、冷却ヘッド30を冷却ブロック20の上方に被せ、内孔30iに突出部20pを嵌合することにより、内孔30iの側面と突出部20pの外周面20pwとが接し、冷却ヘッド30と冷却ブロック20との間で熱伝導するようになっている。又、冷却ヘッド30の下面と冷却ブロック20の上面との接続部分でも熱伝導が行われる。
ここで、内孔30iへの突出部20pの嵌合をし易くするために、内孔30iの側面と突出部20pの外周面20pwとの間にクリアランスを適宜設けてもよい。その場合、当該クリアランス部分に熱伝導グリス等を充填するとなおよい。また、冷却ヘッド30の下面と冷却ブロック20の上面との接続部分に熱伝導グリスを用いればよいことは言うまでもない。
なお、冷却ヘッド30と冷却ブロック20とは図示しないネジ等によって固定される。又、冷却ヘッド30の外形は冷却ブロック20の外形より大きく、冷却ヘッド30が冷却ブロック20上面を完全に覆っている。この場合、冷却ヘッドと冷却ブロックとの接触面積は、冷却ヘッドの冷却能力との関係で必要十分な面積となるように設定すればよい。
【0018】
図2は、ブロック20の接続部20c近傍の部分拡大図である。冷却ヘッド30の上面30uは、接続部20cより上方にはみ出さず、接続部20cより下方に位置している。このため、熱抵抗体14が冷却ヘッド30に直接対向しないので、熱抵抗体14と冷却ヘッド30の間での空気層を介した熱流入を抑制することができる。
ここで、「冷却ヘッド30の上面」とは、冷却ヘッド30をブロック20に取り付けた際に最も上側(ヒートシンク10側)に位置する部分をいう。
【0019】
これに対し、冷却ヘッド30の上面30uが接続部20cより上方にはみ出した場合(図2の冷却ヘッド30x)、冷却ヘッド30の内面が接続部20c近傍で熱抵抗体14と空気層を介して直接対向し(図2の対向部F)、両者間での熱流入が生じる。
なお、冷却ヘッド30の上面30uが接続部20cより上方にはみ出さなければ、必ずしも冷却ヘッド30の上面30uが接続部20cより下方に位置しなくてもよく、冷却ヘッド30の上面30uと接続部20cとが面一でもよい。
【0020】
又、冷却ヘッド30の内孔30iに突出部20pを嵌合すると共に、突出部20pの外周が接続部20cより外側に位置しているので、横方向から見たとき、内孔30iの側面と接続部20cとの間には必ず間隔Fが形成される。そのため、冷却ヘッド30の内面と熱抵抗体14とが直接接触することが防止される。又、冷却ヘッド30の内孔30iと突出部20pの外周面20pwとの嵌合部から熱伝導が行われるので、他の嵌合部(例えば冷却ヘッド30下面と冷却ブロック20上面)からの熱伝導に比べて熱抵抗体14へ至る熱流路が短くて済み、冷却速度を早くし、冷却効率を高めることができる。
さらに、冷却ヘッド30内面が突出部20pを囲むように接するので、冷却ヘッド30と冷却ブロック20との間の熱伝導損失が少なく、冷却効率を高めることができる。特に、間隔Fを小さくすると(但し、0でない有限の大きさ)、冷却ヘッド30から冷却ブロック20を経て熱抵抗体14に至る熱流路が短くなるので、冷却効率が向上する。
【0021】
図3は、示差走査熱量計1の構成を示す斜視図である。冷却ブロック20の上方に被せられた冷却ヘッド30の内孔から、冷却ブロック20の突出部20p先端が露出し、突出部20p上面から熱抵抗体14が立ち上がっていることがわかる。なお、冷却ヘッド30の側壁の角部は、それぞれ面取りされている。又、図3では、遮蔽板16を装着した場合について図示している。
【0022】
図4は、第2の実施形態に係る示差走査熱量計1Bの構成を示す断面図である。なお、図4において、第1の実施形態に係る示差走査熱量計1と同一の構成部分については適宜図示を省略するか、又は同一の符号を付して説明を省略する。
第2の実施形態においては、第1の実施形態と同様な円筒状の突出部21pが冷却ブロック21の上方に突出し、突出部21pより外側で平坦面を構成すると共に、冷却ブロック21の外周縁に沿って平坦面から外周環21rが立ち上がっている。外周環21rは突出部21pを外側から離間しつつ囲んでおり、突出部21pの外周、冷却ブロック21の平坦面、及び外周環21rの内周によって溝21gが区画されている。
一方、冷却ヘッド31の外形は溝21gの外周とほぼ同一であり、冷却ヘッド31を上方から冷却ブロック21に被せると、冷却ヘッド31の内孔31iに突出部21pの外周面21pw(特許請求の範囲の「側壁」に相当)を嵌合しつつ、冷却ヘッド31が溝21g内にぴったりと嵌るようになっている。
なお、第1の実施形態と同様、熱抵抗体14の下端が冷却ブロック21の上端面21uに接続されて接続部21c(特許請求の範囲の「熱抵抗体との接続部」に相当)を形成している。
【0023】
第2の実施形態においても、冷却ヘッド31の上面31uが接続部21cより下方に位置している。このため、熱抵抗体14が冷却ヘッド31に直接対向しないので、熱抵抗体14と冷却ヘッド31の間での空気層を介した熱流入を抑制することができる。
又、冷却ヘッド31の内孔31iに突出部21pを嵌合すると共に、突出部21pの外周が接続部21cより外側に位置しているので、横方向から見たとき、内孔31iの側面と接続部21cとの間には必ず間隔(Fと同様)が形成される。そのため、冷却ヘッド31の内面と熱抵抗体14とが直接接触することが防止される。
さらに、第2の実施形態においては、冷却ヘッド31が溝21g内に収容されるため、冷却ヘッド31の外周と外周環21rの内面との接触部からも熱伝導が行われ、冷却ヘッド31と冷却ブロック21との間の熱伝導損失が第1の実施形態よりさらに少なくなり、冷却効率をより一層高めることができる。
【0024】
図5は、第2の実施形態に係る示差走査熱量計1Bの上面図である。図5に示すように、矩形状の冷却ブロック21の周縁から矩形状の外周環21rが立ち上がり、溝21gの外周壁を形成している。一方、溝21gの内周壁は円筒状の突出部21pで形成されている。このように、特許請求の範囲の「環状の溝」とは、溝の内周と外周が同一形状でなくてもよく、又、溝が円形でなく矩形等の各種形状であってもよい。又、外周環21rが冷却ブロック21の周縁より内側の所定位置から立ち上がってもよい。
なお、外周環21の一部には切り欠き21tが形成され、冷却ヘッド31の側方に延びる接続部31cと干渉しないようになっている。
【0025】
図6は、第3の実施形態に係る示差走査熱量計1Cの構成を示す断面図である。なお、図6において、第1の実施形態に係る示差走査熱量計1と同一の構成部分については適宜図示を省略するか、又は同一の符号を付して説明を省略する。
第3の実施形態において、冷却ブロック22は、第2の実施形態の冷却ブロック21を上下反対向きに配置した構成をなしている。つまり、円筒状の突出部22pが冷却ブロック22の下方に突出し、突出部22pより外側で平坦面を形成すると共に、冷却ブロック22の外周縁に沿って平坦面から外周環22rが立ち下がっている。外周環22rは突出部22pを外側から離間しつつ囲んでおり、突出部22pの外周、冷却ブロック22の平坦面、及び外周環22rの内周によって溝22gが区画されている。
一方、冷却ヘッド32の外形は溝22gの外周とほぼ同一であり、冷却ヘッド32を下方から冷却ブロック22に被せると、冷却ヘッド32の内孔32iに突出部22pの外周面22pw(特許請求の範囲の「側壁」に相当)を嵌合しつつ、冷却ヘッド32が溝22g内にぴったりと嵌るようになっている。
なお、支柱50は、外周環22rの下端縁に取り付けられている。
【0026】
第3の実施形態において、熱抵抗体14の下端は、冷却ブロック22の上面22uに、かつ丸孔22hの外周に沿って接続されて接続部22c(特許請求の範囲の「熱抵抗体との接続部」に相当)を形成している。又、接続部22cは、突出部22pの外周より内側に位置している
そして、冷却ヘッド32は冷却ブロック22より下方にあるため、冷却ヘッド32の上面32uが接続部22cより下方に位置している。このため、熱抵抗体14が冷却ヘッド32に直接対向しないので、熱抵抗体14と冷却ヘッド32の間での空気層を介した熱流入を抑制することができる。
又、冷却ヘッド32の内孔32iに突出部22pを嵌合すると共に、突出部22pの外周が接続部22cより外側に位置しているので、横方向から見たとき、内孔32iの側面と接続部22cとの間には必ず間隔(Fと同様)が形成される。そのため、冷却ヘッド32の内面と熱抵抗体14とが直接接触することが防止される。
さらに、第3の実施形態においても、冷却ヘッド32が溝22g内に収容されるため、冷却ヘッド32の外周と外周環22rとの接触部分からも熱伝導が行われ、冷却ヘッド32と冷却ブロック22との間の熱伝導損失が第1の実施形態よりさらに少なくなり、冷却効率をより一層高めることができる。
【0027】
図7は、第4の実施形態に係る示差走査熱量計1Dの構成を示す断面図である。なお、図7において、第1の実施形態に係る示差走査熱量計1と同一の構成部分については適宜図示を省略するか、又は同一の符号を付して説明を省略する。
第4の実施形態において、冷却ブロック23は、突出部を有しない略直方体状をなし、中心に丸孔23hが貫通している。又、冷却ブロック23の内部には、冷却ブロック23の外周に沿って矩形断面の空洞23aが設けられ、空洞23aは、冷却ブロック23の下面に取り付けられた冷却ガス導入配管40D及び冷却ガス排出配管41Dに連通している。なお、各配管40D,41Dは冷却ブロック23の下面から90度曲げられて側方に延びている。
一方、冷却ヘッド33は外形が略直方体をなし、中心に冷却ブロック23の外形よりやや大きい矩形孔33iが貫通している。又、冷却ヘッド33の側壁から外部の電気式冷却装置(図示せず)との接続部33cが延び、電気式冷却装置によって冷却ヘッド33が冷却されるようになっている。
【0028】
そして、冷却ブロック23の外側に冷却ヘッド33を被せると、冷却ヘッド33の矩形孔33iに冷却ブロック23の側壁23s(特許請求の範囲の「側壁」に相当)を嵌合しつつ、冷却ヘッド33が冷却ブロック23にぴったりと嵌るようになっている。このとき、冷却ヘッド33の上面33uと、冷却ブロック23の上面23uとが面一になるように両者が取り付けられる。
又、第4の実施形態において、熱抵抗体14の下端は、冷却ブロック23の上面23uに、かつ丸孔23hの外周に沿って接続されて接続部23c(特許請求の範囲の「熱抵抗体との接続部」に相当)を形成している。
【0029】
このように、冷却ヘッド33の上面33uは、接続部23cより上方にはみ出さない。このため、熱抵抗体14が冷却ヘッド33に直接対向しないので、熱抵抗体14と冷却ヘッド33の間での空気層を介した熱流入を抑制することができる。
又、冷却ヘッド33の内孔33iに冷却ブロック23の側壁23sを嵌合すると共に、側壁23sが接続部23cより外側に位置しているので、横方向から見たとき、内孔33iの側面と接続部23cとの間には必ず間隔(Fと同様)が形成される。そのため、冷却ヘッド33の内面と熱抵抗体14とが直接接触することが防止される。
【0030】
なお、第4の実施形態において、冷却ヘッド33の上面33uと冷却ブロック23の上面23uとが面一になっているが、上面33uを上面23uより下方にずらして取り付けてもよい。
【0031】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
又、冷却ヘッドを冷却する外部の冷却装置は、電気式冷却装置に限られず、液化窒素などを気化させたり圧縮空気を送気するガス冷却装置であってもよい。後者の場合、冷却ヘッド内にガス冷却装置からのガスを出入させる流路を設ければよい。
【符号の説明】
【0032】
1、1B、1C、1D 示差走査熱量計
3、5 示差熱流検出器(熱電対用端子)
10 ヒートシンク
12 ヒータ
14 熱抵抗体
20、21、22、23 冷却ブロック
20c、21c、22c、23c 熱抵抗体との接続部
21g、22g 溝
21r、22r 外周環
20p、21p、22p 突出部
20pw、21pw、22pw 側壁(突出部の外周面)
23s 側壁
30、31、32、33 冷却ヘッド
30i、31i、32i、33i (冷却ヘッドの)内孔
30u、31u、32u、33u 冷却ヘッドの上面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定試料及び基準物質を収納するヒートシンクと、前記ヒートシンクを加熱するヒータと、前記ヒートシンクと離間しつつ該ヒートシンクの下方に位置する冷却ブロックと、前記ヒートシンクと前記冷却ブロックとの間に接続されてこれらの間に熱流路を形成する熱抵抗体と、前記冷却ブロックに取外し可能に嵌合されるための内孔を有し外部の冷却装置によって冷却される冷却ヘッドと、前記測定試料と前記基準物質との温度差を熱流差信号として出力する示差熱流検出器とを備え、
前記冷却ブロックのうち前記熱抵抗体との接続部より外側に、前記内孔と嵌合する側壁が形成され、
前記冷却ヘッドの上面が前記接続部より上方にはみ出さないように配置される示差走査熱量計。
【請求項2】
前記側壁は、前記冷却ブロックの上方又は下方に突出する突出部の外周面である請求項1記載の示差走査熱量計。
【請求項3】
前記冷却ブロックの上面又は下面には、前記突出部と、該突出部を外側から離間しつつ囲む外周環とによって区画される環状の溝が形成され、
前記内孔に前記突出部を嵌合しつつ前記冷却ヘッドが前記溝に収容される請求項2記載の示差走査熱量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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