説明

示温テープ成形体およびその使用方法

【課題】ラベルタイプしかなかった示温材は大サイズのケーブルやパイプ等へは連続的に使うことが困難であったので、本発明の目的は、電線・ケーブル、液輸送パイプ等の特に長尺タイプのものの保守、点検に対し簡単に使える示温テープおよびその使用方法を提供する。
【解決手段】プラスチック系基材4の一方の面に示温剤2が塗布され、示温剤が塗布された基材の面には基材を保護する為の保護層3を設け、前記基材の他方の面には粘着層5が設けられた、長尺タイプで、任意の径の巻き芯に巻かれた示温テープ成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度管理が必要な各種設備、機器等の所望部位に貼付し、あらかじめ設定された温度に達したとき、発色現象により、その事実を表示する示温テープに関するものである。特に電線、ケーブル、液輸送パイプ等の保守、点検用として有用であり、貼り付け作業が容易で且つ危険ポイントを的確に判断し易くなる示温テープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、温度管理が必要な各種設備、機器等の保守、点検に使用される示温材は、ラベル状の示温シール(温度感知シール)があらゆる産業界に広く用いられている。
この示温シールはあらかじめ設定された温度に達すると、発色によってその事実を表示するもので、一度発色したら同じ表示を続ける不可逆タイプと、被測定物の温度の変化に応じて表示を変化させる可逆タイプが存在し、それらは単独で又は複合して使われている。
【0003】
この示温シールは一般に台紙の離型紙の上に貼られた状態であり、台紙から剥がして所望の部位に貼り付ける方式のラベルタイプとなっている(例えば、特許文献1、2、3参照)。
そして、糊面を保護する為に台紙(セパレーター)が必要であり、作業時に剥がす手間がかかることや、台紙がゴミとなることも欠点として挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−83020公報
【特許文献2】特開2006−29945公報
【特許文献3】特開2003−172661公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のラベルタイプの示温材では被測定部位が小さな面積(点状部位)のものであり、大きな面積あるいは長い部位(線状部位)を連続的に検知・測定したい場合は、シールを無作為多量に貼る作業が必要であり、貼着作業が大変である点、また、発熱が起こった際にそのポイントを的確に判断できない恐れがある等実質的に困難であった。
また、従来のラベルタイプは紙に示温剤を塗布するものであり、基材が紙であるために耐水性が悪いという欠点があった。そのうえ、基材が紙で伸びが無いために、従来のラベルタイプでは特にパイプ状の部位また、振動や伸縮が起こる部位ではでは破れや剥がれという問題点があった。
その他、紙に示温剤を塗布しているため屋外では雨水の浸入で変色、誤発色、或いは電気絶縁性の低下の危険性があった。更に、台紙(セパレーター)を必要とするため、使用時に剥がす手間がかかると共に、残った台紙がゴミとなるといった欠点があった。
【0006】
上記のような問題点に鑑み、従来、ラベルタイプしかなかった示温材は大サイズのケーブルやパイプ等へは連続的に使うことが困難であった。そこで、本発明の目的は、大型の構造体や、電線・ケーブル、液輸送パイプ等の特に長尺タイプのものだけでなく、小型の構造物に対しても、連続的に保守、点検するのに簡単に使える示温テープ成形体およびその使用方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために、示温シールをラベル状では無く長尺のテープ状とするのが良いことを見出した。
すなわち本発明は、
(1)少なくとも、プラスチック系基材の一方の面に示温剤が塗布され、示温剤が塗布された基材の面側には、示温剤を保護するための保護層を設けたことを特徴とする示温テープ成形体、
(2)少なくとも、プラスチック系基材の一方の面に示温剤が塗布され、示温剤が塗布された基材の面側には、示温剤を保護するための保護層を設け、前記基材の他方の面には、粘着層が設けられたことを特徴とする示温テープ成形体。
(3)前記基材の示温剤を塗布する面側が被接着処理を施されていること特徴とする(1)または(2)に記載される示温テープ成形体、
(4)前記示温剤がワックス混合物若しくは示温剤自体が発色する化学物質タイプの材料で構成されているか、またはワックス混合物若しくは示温剤自体が発色する化学物質タイプの材料に顔料が加えられていることを特徴とする(1)から(3)のいずれか1項に記載の示温テープ成形体、
(5)前記保護層表面が離型性を持っているノンセパレーターテープであることを特徴とする(1)から(4)のいずれか1項に記載の示温テープ成形体、
(6)前記保護層がフッ素系透明フィルムであることを特徴とする(1)から(5)のいずれか1項に記載される示温テープ成形体、
(7)前記示温剤が前記基材の幅方向の両端を除く部分の、長さ方向に塗布部と非塗布部に分けて塗布部にのみ塗布されていることを特徴とする(1)から(6)のいずれか1項に記載の示温テープ成形体、
(8)非可逆タイプの示温剤の塗布部と非塗布部が1個ずつの繰り返し構造を有しているか、又は塗布部が複数個の非可逆示温剤の塗布部を組み合わせた示温部位若しくは非可逆示温剤の塗布部と可逆示温剤の塗布部を組合せた複数個の塗布部を1単位とする繰り返し構造の示温部位を有していることを特徴とする(1)から(6)のいずれか1項に記載の示温テープ成形体、
(9)前記非塗布部に、テープの長さ方向または幅方向にミシン目をいれて、長さ方向または幅方向に裁断し易くしたことを特徴とする(7)または(8)に記載の示温テープ成形体、
(10)長さ方向の破断伸びが50%以上あることを特徴とする(1)から(9)のいずれか1項に記載される示温テープ成形体、
(11)体積抵抗率が1×1012Ω−cm以上で、破壊電圧が10kV/mm以上の電気絶縁性を持つことを特徴とする(1)から(10)のいずれか1項に記載される示温テープ成形体、
【0008】
(12)前記(1)から(11)のいずれか1項に記載の示温テープ成形体を示温剤の無い箇所で、幅方向に裁断した短尺のテープ又はラベル状として使用することを特徴する示温テープ成形体の使用方法、
(13)前記(1)から(11)のいずれか1項に記載の示温テープ成形体をケーブル又はケーブル保護管の長手方向に対して、直交する方向に1回転以上巻回するかまたは長手方向に1回以上螺旋巻きすることを特徴とする示温テープ成形体の使用方法、
(14)構造材料又は構造物の温度変化を示温テープ成形体で検知するために、前記(1)から(11)のいずれか1項に記載の示温テープ成形体を構造材料又は構造物を覆うように、構造材料又は構造物の周囲に1回以上巻き付けることを特徴とする示温テープ成形体の使用方法、および、
(15)構造材料又は構造物の温度変化を示温テープ成形体で検知するために、前記(1)から(11)のいずれか1項に記載の示温テープ成形体を構造材料又は構造物の表面または内面に長手方向に沿って貼り付けて、連続的に温度検知を行なうか、または間隔をあけて温度検知を行なうことを特徴とする示温テープ成形体による温度検知方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本願発明の示温テープ成形体は、テープ状であることで、大きな面積あるいは長い部位(線状部位)の温度を連続的に測定または検知したい場合等、特に電線・ケーブルや輸送パイプ、建築構造物(柱状物)等での作業において、巻きつけて、又は長く貼り付けて用いることができ、かつ、そのポイントが的確に判断できるメリットがあり好適である。
また、シールを無作為多量に貼る作業がテープを巻くだけの作業となることから、作業効率の向上にもつながる。巻きつけて、長さを稼いで貼り付けて用いることができるために、細径のケーブル等に巻き付ける場合にも、視認部位を複数個所にして視認しやすくすることができるために有効である。
【0010】
示温テープ成形体の基材と保護層を伸びのあるゴム・プラスチック系フィルムとしたことで、基材が紙の場合では、追従できずに、破れや剥がれが生じていた振動や伸縮が起こる部位でも追随し、破れや剥がれが無くなった。
また、基材および保護層(フィルム)は電気的に絶縁性の材料とすることで、電線や配電機器、電設機器等の箇所でも安心して使うことができる。
【0011】
さらに、基材フィルムの表面にコロナ処理や火炎処理などの被接着処理を施したことにより、印刷性の悪いゴム・プラスティック面に対して示温剤を印刷方式で塗布することができた。また、保護層(フィルム)との貼り合わせも良好であった。
更に、好ましい態様として、透明保護層に離型性を持たせ、ノンセパレーターのテープとすることで、実際に使用する際、毎回台紙(セパレーター)を剥がす手間を省けると同時に、ゴミの発生が少なくなる。
以上のことより、本発明の示温テープは、大きな面積あるいは長い部位(線)を連続的に測定することができ、振動や伸縮が起こる部位でも使用することができ、テープを巻くだけという単純作業にもかかわらず、効率の良い機能性を示すことができる。また、視認部位の長さを稼ぐことにより、細径のケーブル等の小型の構造物などの製品にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一態様の示温テープ成形体の断面図である。
【図2】本発明の一態様で、巻き芯に巻かれた状態の示温テープ成形体の斜視図である。
【図3】本発明の基材に対する示温剤の塗布位置を示す説明図である。
【図4−1】本発明の基材に示温剤を文字で塗布した状態を示す説明図である。
【図4−2】本発明の基材の示温剤の文字の周りに補助表示として円を描いた状態を示す説明図である。
【図5】本発明の示温テープ成形体を検査対象物に直交巻きした状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の示温テープ成形体を検査対象物に螺旋巻きした状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の示温テープ成形体の好ましい実施の態様の断面図を図1に、これを巻き芯に巻いた状態を図2に示す。示温テープ成形体1を構成するのは、プラスチック系基材4、示温剤2、および保護層3であり、さらに粘着層5を設けることが好ましく、他に補助的表示等を設けることができる。これらについて詳細に説明する。
【0014】
(a)プラスチック系基材
プラスチック系基材はフィルム状のものであり、前記基材に用いられる材料はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のプラスチックを挙げることができる。また、柔軟性をよくするために、これらにゴムや熱可塑性エラストマーをブレンドしたものも好適である。
(b)基材の製造方法
これらの基材は、単独又は複数の原料樹脂、配合剤をそのまま或いはバンバリーミキサー等でコンパウンディング後、通常下記の3つのいずれの方法によっても、フィルム状に製造することができる。(1)公知の押出、インフレーション成形を用いる方法、(2)Tダイによる押出成形方法、(3)カレンダーロール成型方法のいずれの方法も適用できる。
基材は、示温剤を塗布する面側をコロナ処理や火炎処理などの被接着処理を施し、示温剤や保護層の接着を容易で強固にできるようするのが好ましい。
【0015】
(c)示温剤
示温剤には、あらかじめ設定された温度に達すると示温剤自体が発色する発色型の材料と、あらかじめ設定された温度に達すると融解して透明になり、下地の基材色が現れるという熱溶融(ワックス)型の材料がある。
発色型のものには、例えば、水銀などのハロゲン化物およびその錯塩、複塩、コバルトやニッケル等の錯塩、複塩などがある。また、熱溶融(ワックス)型のもとしては、ワックス系、脂肪酸系、アルコール系、エーテル系などの化合物が挙げられる。
また、示温剤には、あらかじめ設定された温度範囲で発色したら同じ表示を続ける非可逆タイプのものと、被測定物の温度変化に追随して表示色を変化させる可逆タイプのものがある。一般に熱溶融型のものは前者に属するものが多く、発色型のものは、前者に属するものと、後者に属するものの両方がある。
これらの示温剤には顔料が加えられその色彩をより鮮明にすることができる。
本発明では、どちらの型、あるいはどちらのタイプのものも使用することができるが、非可逆タイプのものの方が温度変化の履歴が残るので、異常昇温の検知という意味では望ましく、これらを適宜組み合わせると過去の履歴と現在温度の両者が分かるので、可逆タイプと非可逆タイプを組み合わせて使用するのが好ましい。
【0016】
(d)示温剤の塗布方法
示温剤を基材フィルムに塗布する方法としては、シルク印刷、グラビア印刷などの方法が適用できる。特に、グラビア印刷が望ましく、ロールの窪みに塗布された示温剤を基材フィルムの表面に転写し、ブレードで余分な示温剤を除去することで、示温剤の塗布が行なえる。また、示温剤の塗布部の間隔を変えたり、指示温度の異なる示温剤を塗布する場合には、複数の印刷ロールを所定位置に配置することで対応することが可能である。
また、所定速度で印刷ラインを走る基材フィルムに示温剤を適下する滴下法によっても、示温剤を基材フィルムに塗布することができる。
このように、示温剤の滴下装置を印刷ラインに複数個所設置して、示温剤の滴下位置と種類および滴下するタイミングを変えることで、表示温度の異なる複数の示温剤を所望の間隔で複数個所塗布することができるので、ユーザの多様なニーズに答えることができる。
ここで、示温剤は示温剤を節約するために、通常間隔を空けて塗布するが、もちろん示温剤を基材フィルムの長手方向に連続的に塗布することも可能である。
【0017】
(e)保護層
保護層は示温剤を保護するためのものであるが、同時に基材を保護する機能を有するので、基材を保護するためでもある。
保護層に用いられる材料は、基材のフィルムと同様の材質のフィルム状のもので透明のプラスチック系が用いられ、同種の種類の材質のフィルムを用いるのが好ましいが、異なる種類のフィルムも用いることができる。
尚、基材と保護層に同種の材質のフィルムを用いるのが好ましいのは、基材と保護層を貼り合わせてテープとする場合の基材と保護層を貼り合わせた後のテープの物性値の制御が、基材と保護層が同種の材料で構成され、これらの物性値が近い方がしやすいからである。この場合に、耐候性、絶縁性、すべり性などを考慮して、示温テープに特徴を持たせるため、基材と保護層との適用材料を必要に応じて適宜変更することもできる。これらの保護層となるフィルムは、前記示温剤を塗布した基材と貼り合わせて用いるため片面に粘着剤を施すのが好適である。
また、耐候性のあるフッ素樹脂等の透明のプラスチックフィルムも好適である。
【0018】
(f)粘着層
基材の示温剤塗布面の反対側の面に粘着層を設けて、貼り付け性や巻きつけ性を持たせることができる。
粘着層は、従来より公知の種々の粘着剤により形成することができる。このような粘着剤としては、何ら限定されるものではないが、たとえばアクリル系、ゴム系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系等をベースポリマーとした粘着剤が用いられる。
これらのベースポリマーに凝集力を付加するためにイソシアネート系やエポキシ系等の架橋剤を配合することができ、発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、各種添加成分を含有させることができる。
基材に設けるこの粘着層は、予め設けていても良いし、基材と保護層を貼り合わせ後に設けても良い。
また、保護層が上記フッ素樹脂等離型性のある材料の場合はそのままノンセパレーターとすることもでき、場合により、保護層外面にシリコーン系、フッ素系、脂肪酸等の離型処理を施すことでノンセパレーターのテープにすることができる。
【0019】
(g)示温剤を塗布した基材のフィルムと保護層等のフィルムの貼り合わせ
示温剤を塗布した基材と保護フィルムの貼り合わせは、例えば、片側金属ロールで反対側がシリコーンのカレンダーロールを用いて、反応温度以下の低温圧着によって貼り合わせる。尚、保護フィルムの貼り合わせは、その他のいかなる方法で行なっても良い。
また、保護フィルムの貼り合わせ面又は基材の示温剤塗布面に粘着層を設けてもよい。前記保護フィルムの貼り合わせ面又は基材の示温剤塗布面側に設ける粘着層は、その反対面の粘着層より粘着力の強固なものが好ましい。
(h)さらに、これら基材、示温剤、保護層、粘着層以外に補助的表示部を設けても良い。
補助的表示部は、表示を強調させたり、その位置を示したりするために用いる。特に熱溶融型の示温剤は溶融後透明になるため、示温剤塗布部も示温剤溶融後は、基材の色と同色に見えるので、示温剤溶融後の示温剤塗布部が判りにくくなる。そのため、示温剤塗布部に予め補助的表示用の塗料を塗布してマーキングすることにより、塗布部を視認しやすくできる。補助的表示に用いる塗料は、示温剤の表示温度以上の温度でも、ほとんど変色しないか、或いは変色が少なく耐熱性が高いものを用いるが、同時に耐候性が高い方がより望ましい。補助的表示に用いる塗料は、使用用途を考慮して、種々のものを用いることができるが、耐熱性の高い鉱物性の材料を含むものが望ましい。
【0020】
以上のようにして、製造した示温テープ成形体における示温剤の塗布位置は、基材に対し種々の配置を取ることができる。その好ましい態様について記載する。
示温剤は、基材の幅方向の両端を除く中央部分で、長さ方向全体にほぼ等間隔で塗布されるが、図3に示すように、塗布部と非塗布部に分けて塗布部にのみ1個又は同一温度を指示する数個を塗布されているものも用いることができる。また、塗布部に複数個を塗布する場合には指示温度の異なる示温剤を塗布し、指示温度の違いを検知出来るようにすることができる。
さらに、示温テープ成形体は、非可逆タイプの示温剤の塗布部と非塗布部が1個ずつの繰り返し構造を有していても良く、又は塗布部が複数個の非可逆示温剤の塗布部を組み合わせた示温部位若しくは非可逆示温剤の塗布部と可逆示温剤の塗布部を組合せた複数個を1単位とする繰り返し構造の示温部位を有していことができる。
【0021】
示温剤の塗布形状は、「○」、「□」、「◇」、「☆」、その他どのようなものでも良く、図4−1に示すように指示温度をそのまま数値記入したものでも良い。
数値で記載する場合は、非可逆タイプで、複数の異なる指示温度の材料を塗布する場合には、指示温度の数値を記載した表示部分の色が変化するものの方が、表示部分が解けて透明になるものより望ましい。
示温剤による指示温度は、指示温度以上になった時に検知できるが、厳密な到達温度は表示できない。例えば、70℃、80℃、90℃の指示温度の示温剤で、100℃になると、ワックスタイプでは全てとけ、変色タイプでは全て変色し、90℃以上であることが検知できる。また、ワクッスタイプで85℃になると、70℃、80℃はとけるが、90℃は解けず、同様に、変色タイプで、85℃になると、70℃、80℃は変色するが、90℃は変色しないので、85℃が検知できる。
示温テープ成形体には、テープを貼り付けた日付けが分かるように、図4−1に示すように示温剤の塗布時に日付記入欄を設けておくと便利である。さらに、示温剤塗布部も示温剤溶融後は、示温剤塗布部が判りにくくなるので、図4−2に示すように示温剤塗布部に予め補助的表示用の塗料を塗布してマーキングし、塗布部を視認し易くするのも良い。
【0022】
得られる本発明の示温テープ成形体は、長さ方向の破断伸びが50%以上、好ましくは
100%以上である。このように、長さ方向の破断伸びが大きいので、振動や伸縮が起こる部位に対して有効である。地震などの揺れによる示温テープ成形体を貼り付けた構造体等が揺れ動いたりしても、テープがずれにくい。
さらに、本発明の示温テープ成形体は、体積抵抗率が1×1012以上、好ましくは1×1014Ω−cm以上、破壊電圧が10kV/mm以上、好ましくは20kV/mm以上の電気絶縁性を持つものであり、電気設備関係の構造体にも効果的に利用できる。
【0023】
本発明の示温テープ成形体は、製品の示温テープ幅の整数倍の広幅の成形体とすることができる。この場合は、示温テープ成形体をテープ長手方向に切断して所望本数の示温テープ成形体とした後、示温テープ成形体を示温剤の無い箇所で、用途に応じて幅方向に切断して、必要長さのテープ又は短尺のラベル状として使用することができる。このように、必要に応じて所望長さの示温テープ成形体として使用することができるので、ラベル状の示温ラベルと比べると、切断長さの自由度が高く、伸縮性に優れるので使いやすくなる。示温テープ成形体をテープ長手方向に切断して所望本数の示温テープ成形体とするのに、テープ長手方向にミシン目を入れて切断をし易くすることもできる。
【0024】
本発明の示温テープ成形体において、示温テープ成形体を所望幅に切断した後或いはもともと所望幅に製造した示温テープ成形体を種々のパターンに示温剤を塗布した後、示温テープ成形体の非塗布部に、テープの長さ方向にミシン目を入れて、長さ方向に裁断し易くしたことで、示温テープ成形体をミシン目位置で切断すれば、容易に切断して所望幅の示温テープとすることができる。また、前記の所望幅(製品幅)の示温テープを幅方向にミシン目を入れて、ミシン目に沿って切断することで、必要長さのテープとすることができる。
【0025】
本発明の示温テープ成形体を、ケーブル又はケーブル保護管等の検査対象物7の長手方向に対して、直交する方向に1回転以上巻回して固定する(図5参照)か、長手方向に1回転以上螺旋巻きして固定して(図6参照)使用することができる。例えば、細径のケーブル又は細径ケーブルのより線などに使用する場合には、本発明の示温テープ成形体の一端をケーブルに固定した後、前記示温テープ成形体を前記ケーブル又は前記より線と直交する方向に張力を加えながら1回転以上巻回して他端を固定することができ、示温テープ成形体に張力が加えられた状態で巻回されているので、巻きつけられた示温テープが緩みにくい効果がある。
【0026】
また、前記ケーブル又はより線に示温テープ成形体を巻き付ける時に、ラセン巻きを行ないその巻き回数を多くすれば、示温剤塗布部を複数回繰り返して、同一方向に向けて表示することができるので、示温テープが緩みにくい効果のみでなく、示温剤の温度変化を読み取りやすい利点がある。
逆に、内部に複数のケーブルが収納されている太径のケーブル保護管に示温テープ成形体を巻き付ける時には、複数本のいずれのケーブルが異常事態で昇温するか不明なために、ケーブル全周に渡って、所望長さの示温テープ成形体を巻き付けなければならないため、螺旋巻きが有効である。このようにすれば、ラベルをケーブル保護管の周囲全長に渡って、多数貼り付けることが不要になる。
【0027】
本発明の示温テープ成形体は、ケーブル又はケーブル保護管の温度表示以外にも使用できる。例えば、保護管等の構造材料又は構造物の温度変化を示温テープ成形体で検知するために、構造材料又は構造物の周囲に、前記構造材料又は構造物の周囲を覆うように示温テープ成形体を巻き付けることができる。このように、構造体に示温テープを巻き付ける時に、巻き付け方としては、1回以上、直交巻き又は螺旋巻きを行なうことができる。ここで、地震などで、大きなゆれがあった場合でも、示温テープ成形体は、テープの伸びがおおきいので、緩むことはない。
【0028】
本発明の示温テープ成形体は、ケーブル保護管の温度表示に使用するときでも、異なる形で使用できる。例えば、保護管の1箇所にケーブルが片寄って配置されている場合は、塗布部と非塗布部が交互に繰り返された示温テープ成形体をケーブル保護管の長手方向に、沿わせて貼り付けることができる。これにより、示温テープ成形体を貼り付けたいずれの位置での温度上昇をも示温テープにより、検知することができる。
【0029】
また、ビルの屋内配線に用いる配線用バスダクト等構造物の内面に、示温テープ成形体を貼り付け、漏電や火事などの温度上昇を検知する場合には、配線用バスダクト内面に貼り付けることができるが、各階ごとにバスダクトの取り出し口が設けられるために、所定長さごとに、温度検知が必要となるが、必ずしもバスダクト全長に渡って温度検知を行なう必要がない。このように、間隔を空けて必要部分のみに示温テープを貼り付けて、温度検知を行なうことも可能である。また、直交巻きや螺旋巻き、直線的な貼り付けなどの種々の形の巻き付け方ができ、特に螺旋巻きではラップ量を変えることができる。
【実施例】
【0030】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の示温テープについてさらに詳しく説明する。
本発明の示温テープは一方の面がコロナ処理され、他方の面が粘着層を設けたポリオレフィン系黒色フィルムの基材を用い、コロナ処理面に示温剤をグラビア印刷し、その上にフッ素樹脂等の透明のプラスチック粘着フィルムの保護層を貼り合わせて示温テープ成形体を作製する。
【0031】
得られた示温テープ成形体は、次のようにしてその特性を調べた。
(a)伸び:
JIS K 6251に準拠し、その伸び(%)を、ダンベル状1号形、引張速度500mm/分の条件で測定した。
(b)巻付作業性:
約φ30mmのポリエチレン(PE)被覆電線に1/4ラップで試験テープを巻きつけ、その作業性の良し悪しを官能試験により評価した。
(c)耐振動性:
約φ30mm、長さ500mmのポリエチレン(PE)被覆電線の中央部約200mmに試験テープを巻き付けた又は貼り付けた試料の両端を固定し、振動試験機にかけ(試験条件は、振幅:全振幅2.0〜2.5mm、加速度:34.3m/s、振動回数:10万回)、テープの剥がれ、破れ等の状況を観察した。
(d)耐水性:
降雨を想定して常温水中に24時間浸漬した後変色、誤発色を観察した。
(e)体積抵抗率:
JIS K 6911に準拠して測定した。
(f)破壊電圧:
JIS K 6911に準拠して測定した。
(g)耐候性:
JIS K 7350-2に準拠したウエザロ促進耐候性試験で行った。
【0032】
[実施例1]
図1は実施例1の示温テープの断面図である。
基材4は、ポリエチレン30質量部/EVA70質量部ブレンド系フィルム(カーボン1.5%含有)の一方の面にコロナ処理を行い、他方の面にアクリル系粘着剤0.03mm厚さの粘着層5を設けた厚さ0.20mm黒色フィルムである。
示温剤2は、90℃タイプのWAX示温インク(商品名:「WL−90」、アセイ工業(株)製)である。
保護層3は、厚さ0.05mmのフッ素樹脂の透明のプラスチック粘着フィルム(商品名:「DXフィルム」、電気化学(株)製)である。この外面はフッ素樹脂であるため適度な離型性がある。
この黒色の基材フィルム4のコロナ処理面に示温剤2をシルク印刷で間歇的に白丸状に塗布し、その上に保護フィルム3を貼り合わせた。
これを図2に示すように紙管製の巻き芯6に巻き取り、幅方向示温剤の無い箇所で裁断し、長さ3mのノンセパレーターのテープ状とした。
【0033】
本実施例の示温剤は90℃タイプであり、金属パイプに巻きつけてパイプを加熱し、90℃で1分以内に透明になり白丸が無くなり下地の黒色が明瞭になった。
本テープの伸びは200%、電気絶縁性は体積抵抗率で5×1014Ω−cm、破壊電圧は45kV/mmと非常に良好であった。耐候性試験では2000時間経過後も変色、誤発色は無く明瞭であった。また、耐水性試験では変色、誤発色は無く明瞭であった。巻付作業性も良好で、耐振動性は、テープの剥がれ、破れ等の状況を観察したが、異常は見られなかった。
【0034】
[実施例2]
基材4は、黒色ポリエチレンフィルム(厚さ0.20mm)で一方の面にコロナ処理をし、他面は実施例1と同様の粘着層5を設け、粘着面に離型紙を付けた。
示温剤2は、70℃タイプのWAX示温インク(商品名:「WL−70」、アセイ工業(株)製)である。
保護層3は透明のポリプロピレン粘着フィルム(厚さ0.10mm)である。
実施例1と同様に加工し、1m長さのテープ状とした。但し、離型紙を挿入したテープ状である。
本実施例の示温剤は70℃タイプであり、金属パイプに巻きつけてパイプを加熱し、70℃で1分以内に透明になり白丸が無くなり下地の黒色が明瞭になった。
本テープの伸びは150%、電気絶縁性は体積抵抗率で2×1014Ω−cm、破壊電圧は42kV/mmと非常に良好であった。耐候性は1000時間経過後保護層の変色がみられ、明瞭さは悪くなったが500時間までは変色は見られなかった。
耐水性試験では変色、誤発色は無く明瞭であった。巻付作業性と耐振動性も実施例1と同様に評価し、何れも良好であった。
【0035】
[実施例3]
基材と保護層は実施例1と同様であるが、示温剤はアセイ工業製のWAX示温インク「WL−70」、「WL−90」、「WL−110」(いずれも商品名)の3種類とし、3台の印刷機を並べて流れ方向に3種類の示温剤を順次印刷した。印刷は白丸ではなく数字で70、90、110とした。
また、長さ方向の非印刷部にミシン目を入れ、更に日付を書き込める欄を設け、場合により適宜ラベルと同じようにも使えるようにした。
実施例1と同様に加工し、2m長さのノンセパレーターのテープ状とした。
本実施例の示温剤は70℃と90℃、110℃の3タイプであり、金属パイプに巻きつけてパイプを加熱し、各温度毎にそれぞれの示温剤が1分以内に透明になり温度を示す数字が見えなくなり下地の黒色が明瞭になった。
本テープの伸びは190%、電気絶縁性は体積抵抗率で4×1014Ω−cm、破壊電圧は44kV/mmと非常に良好であった。耐候性は2000時間経過後も変色、誤発色は無く明瞭であった。
また、耐水性試験では変色、誤発色は無く明瞭であった。巻付作業性と耐振動性も実施例1と同様に評価し、何れも良好であった。
【0036】
[実施例4]
基材4は、黒色ポリエチレンフィルム(厚さ0.20mm)で一方の面にコロナ処理をし、他面は実施例1と同様の粘着層5を設けた。
示温剤2は、90℃タイプのWAX示温インク(商品名:「WL−90」、アセイ工業(株)製)である。
保護層3は、透明の片面シリコーン処理ポリエステル粘着フィルム(厚さ0.05mm)である。
実施例1と同様に加工し、2m長さのノンセパレーターのテープ状とした。
本実施例の示温剤は90℃タイプであり、金属パイプに巻きつけてパイプを加熱し、90℃で1分以内に透明になり白丸が無くなり下地の黒色が明瞭になった。
本示温テープの伸びは50%、電気絶縁性は体積抵抗率で5×1014Ω−cm、破壊電圧は43kV/mmと非常に良好であった。耐候性は1500時間経過後保護層の変色がみられ、明瞭さはやゝ悪くなったが1000時間までは変色は見られなかった。
また、耐水性試験では変色、誤発色は無く明瞭であった。巻付作業性と耐振動性も実施例1と同様に評価し、巻付作業性は実施例1と比べやゝ劣ったが、耐振動性は実施例1と同様異常は見られなかった。
【0037】
[比較例1]
紙の片面に発色タイプの示温剤が塗布され、その上にプラスチックフィルムの保護層があり、逆面は粘着剤が施されている、市販の示温ラベル(商品名:「サーモラベルLI−90」、日油技研(株)製)を利用した。
伸びはほとんど無く0%、耐候性は500時間、耐水性は24時間でいずれも変色が見られた。電線へ巻きつけることはできず、貼り付けた後、振動試験機にかけたが剥がれが見られた。
【0038】
前記実施例1〜4と市販の示温ラベルを比較して評価を行った結果を下記の表1に示した。
【0039】
【表1】

【0040】
以上のことから、本発明の示温テープ成形体は、テープを巻くだけという単純作業にもかかわらず、効率の良い機能性を示すことが出来、長尺用途や連続用途向け、特に電線、ケーブル、液輸送パイプ、バスダクト、柱状構造物等に極めて高い実用性があることが分かった。
【符号の説明】
【0041】
1 示温テープ成形体
2 示温剤
3 保護層
4 プラスチック系基材
5 粘着層
6 巻き芯
7 検査対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、プラスチック系基材の一方の面に示温剤が塗布され、示温剤が塗布された基材の面側には、示温剤を保護するための保護層を設けたことを特徴とする示温テープ成形体。
【請求項2】
少なくとも、プラスチック系基材の一方の面に示温剤が塗布され、示温剤が塗布された基材の面側には、示温剤を保護するための保護層を設け、前記基材の他方の面には、粘着層が設けられたことを特徴とする示温テープ成形体。
【請求項3】
前記基材の示温剤を塗布する面側が被接着処理を施されていること特徴とする請求項1または2に記載される示温テープ成形体。
【請求項4】
前記示温剤がワックス混合物若しくは示温剤自体が発色する化学物質タイプの材料で構成されているか、またはワックス混合物若しくは示温剤自体が発色する化学物質タイプの材料に顔料が加えられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の示温テープ成形体。
【請求項5】
前記保護層表面が離型性を持っているノンセパレーターテープであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の示温テープ成形体。
【請求項6】
前記保護層がフッ素系透明フィルムであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載される示温テープ成形体。
【請求項7】
前記示温剤が前記基材の幅方向の両端を除く部分の、長さ方向に塗布部と非塗布部に分けて塗布部にのみ塗布されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の示温テープ成形体。
【請求項8】
非可逆タイプの示温剤の塗布部と非塗布部が1個ずつの繰り返し構造を有しているか、又は塗布部が複数個の非可逆示温剤の塗布部を組み合わせた示温部位若しくは非可逆示温剤の塗布部と可逆示温剤の塗布部を組合せた複数個の塗布部を1単位とする繰り返し構造の示温部位を有していることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の示温テープ成形体。
【請求項9】
前記非塗布部に、テープの長さ方向または幅方向にミシン目をいれて、長さ方向または幅方向に裁断し易くしたことを特徴とする請求項7または8に記載の示温テープ成形体。
【請求項10】
長さ方向の破断伸びが50%以上あることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載される示温テープ成形体。
【請求項11】
体積抵抗率が1×1012Ω−cm以上で、破壊電圧が10kV/mm以上の電気絶縁性を持つことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載される示温テープ成形体。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の示温テープ成形体を示温剤の無い箇所で、幅方向に裁断した短尺のテープ又はラベル状として使用することを特徴する示温テープ成形体の使用方法。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか1項に記載の示温テープ成形体をケーブル又はケーブル保護管の長手方向に対して、直交する方向に1回転以上巻回するかまたは長手方向に1回以上螺旋巻きすることを特徴とする示温テープ成形体の使用方法。
【請求項14】
構造材料又は構造物の温度変化を示温テープ成形体で検知するために、請求項1から11のいずれか1項に記載の示温テープ成形体を構造材料又は構造物を覆うように、構造材料又は構造物の周囲に1回以上巻き付けることを特徴とする示温テープ成形体の使用方法。
【請求項15】
構造材料又は構造物の温度変化を示温テープ成形体で検知するために、請求項1から11のいずれか1項に記載の示温テープ成形体を構造材料又は構造物の表面または内面に長手方向に沿って貼り付けて、連続的に温度検知を行なうか、または間隔をあけて温度検知を行なうことを特徴とする示温テープ成形体による温度検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−91547(P2010−91547A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21937(P2009−21937)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】