説明

示温性インキ組成物及び印刷物

【課題】安価な示温性インキ組成物及び示温性を有する印刷物を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン樹脂と、ポリオール化合物及び/又はイソシアネート化合物を含有し、ポリオレフィン樹脂の含有率が30〜60重量%である示温性インキ組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は示温性インキ組成物に関する。さらに詳細には、包装用の印刷物等に示温性を付与するインキ組成物及びこの組成物を硬化して得られる層を印刷面に有する印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
包装材等の表面に、示温性を有する層を施すことにより、内容物等の温度変化を表示する技術がある。
例えば、特許文献1には、保冷物に添付する示温材が開示されている。この示温材は、不透水性基材の内部及び/又は表面に示温インキを保持している。
また、特許文献2には、スクラッチ隠蔽層付印刷物の贋造防止層に、示温インキを使用する技術が開示されている。
特許文献3には、個別情報が常温では発色しない感熱インキで印刷されていて、少なくともスクラッチ隠蔽層が施されるまでの間は、無色もしくは極淡色透明であるスクラッチ隠蔽層付印刷物が開示されている。
【0003】
上記の各文献で使用される示温インキや感熱インキとしては、染料をマイクロカプセルに封入したインキや、ロイコ染料を利用し加温によって発色させるものが使用されている。
しかしながら、染料を均一な粒径のマイクロカプセル化することは容易ではなく、その製造に複雑な工程が必要であった。そのため、インキのコストが高いという問題があった。尚、ロイコ染料も高価である。
また、染料は耐光性が乏しく、直射日光下では退色の危険性が大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−181248号公報
【特許文献2】特開2007−144692号公報
【特許文献3】特開2006−123380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、安価な示温性インキ組成物及び示温性を有する印刷物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下の示温性インキ組成物等が提供される。
1.ポリオレフィン樹脂と、ポリオール化合物及び/又はイソシアネート化合物を含有し、前記ポリオレフィン樹脂の含有率が30〜60重量%である示温性インキ組成物。
2.前記ポリオレフィン樹脂の融点が40〜100℃である1に記載の示温性インキ組成物。
3.前記ポリオレフィン樹脂が、下記(1)及び(2)の条件を満たすポリアルファオレフィン樹脂である、1又は2に記載の示温性インキ組成物。
(1)示差走査型熱量計(DSC)を用い、ポリアルファオレフィン樹脂を窒素雰囲気下190℃で5分間保持した後、−10℃まで5℃/分で降温させ、−10℃で5分間保持後、190℃まで10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから観測される融点が40〜100℃
(2)広角X線散乱強度分布にて、15deg<2θ<30degに側鎖結晶化に由来する、単一のピークが観測される
4.印刷面の一部又は全面に、1〜3のいずれかに記載の示温性インキ組成物を硬化して得られる層を有する印刷物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の示温性インキ組成物は、インキ中に分散させたポリオレフィン樹脂の結晶状態と溶融状態の変化によって示温性を発現するため、安価な材料で製造できる。また、インキの製法も簡単である。
本発明のインキは、ポリオレフィン樹脂の可逆変化(結晶状態−溶融状態)により示温性を発現するものであるため、印刷工程において、インキの乾燥に印刷物を加熱できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の示温性インキ組成物は、ポリオレフィン樹脂と、ポリオール化合物及び/又はイソシアネート化合物を含有し、ポリオレフィン樹脂を30〜60重量%含有することを特徴とする。
【0009】
本発明で使用するポリオレフィン樹脂は、炭素数2〜30のオレフィンを重合して得られる樹脂である。特にアルファオレフィンが望ましい。オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ペンテン、4−メチルペンテンー1、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデカン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコデセン等が挙げられる。これらのモノマーを一種単独で重合させてもよく、また、二種以上重合させ、共重合体としてもよい。
【0010】
本発明で使用するポリオレフィン樹脂は、融点が40℃〜100℃であることが好ましい。この範囲であると、食品や飲料等向けとして、得られるインキ層が実用上好ましい温度範囲で変化する。インキ層を缶等の包装材に形成し、この層の状態によって内容物が適温を維持しているか否か、簡単に判断できる。例えば、80℃前後の高温が最適温度である内容物の温度を、インキ層の状態変化(透明−不透明)により把握できる。
融点は、示差走査型熱量計(DSC)を用い、ポリオレフィン樹脂を窒素雰囲気下190℃で5分間保持した後、−10℃まで5℃/分で降温させ、−10℃で5分間保持後、190℃まで10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから観測される融点を意味する。
【0011】
本発明においては、ポリオレフィン樹脂として、特に、下記の(1)及び(2)の条件を満たす側鎖結晶性ポリアルファオレフィン共重合体(CPAO)が好ましい。
(1)融点(Tm)
示差走査型熱量計(DSC)を用い、ポリアルファオレフィン樹脂を窒素雰囲気下190℃で5分間保持した後、−10℃まで5℃/分で降温させ、−10℃で5分間保持後、190℃まで10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから観測される融点が40〜100℃である。融点(Tm)は、好ましくは40〜90℃である。
【0012】
(2)側鎖結晶化に由来する単一のピークの存在
広角X線散乱強度分布にて、15deg<2θ<30degに側鎖結晶化に由来する、単一のピークが観測される。これにより、結晶化が側鎖に起因してのみ起こるので低融点でも硬い材料となる事を可能にしている。
尚、広角X線散乱強度分布は、理学電機社製の対陰極型ロータフレックスRU−200を用い、30kV,100mA出力のCuKα線(波長=1.54Å)の単色光を1.5mmのピンホールでコリメーションし、位置敏感型比例計数管を用い、露光時間1分で得られる広角X線散乱(WAXS)強度分布である。
【0013】
本発明で使用するポリアルファオレフィン樹脂は、下記(3)〜(7)の特性を有する側鎖結晶性ポリアルファオレフィン共重合体(CPAO)であることが好ましい。
(3)重量平均分子量(Mw)
ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法により測定したポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が2,000以上であり、好ましくは8,000〜150,000の範囲にある。分子量分布(Mw/Mn)は5.0以下であり、好ましくは3.0以下である。
【0014】
(4)平均側鎖長
オレフィンの主鎖導入部分を除いた炭素数の平均値であり、好ましくは15以上、特に好ましくは15〜30である。例えば、ヘキサデセン(C16)/オクタデセン(C18)の90/10(モル比)共重合体の場合、側鎖長は(16−2)×0.9+(18−2)×0.1=16.2となる。
【0015】
(5)硬度
JIS K 2235に準拠し、温度25℃で測定した硬度は5以下が好ましく、特に好ましい範囲は2〜5である。
【0016】
(6)立体規則性指標値(M2)
「Macromolecules,24,2334(1991):T.Asakura,M.Demura,Y.Nishiyama」記載の方法に準拠して求めたM2は、50モル%以上であることが好ましく、さらに好ましくは50〜90モル%である。M2が50モル%以上の場合、重合体がアイソタクチック構造をとり、結晶性が向上する。
【0017】
(7)融解吸熱カーブの半値幅(Wm)
示差走査型熱量計により測定されたWmは10℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは6℃以下、特に好ましくは2〜4℃である。半値幅が小さいほど、均一な結晶が形成されていることを意味する。
【0018】
上述した特性を有する側鎖結晶性ポリアルファオレフィン共重合体は、例えば、特開2005−75908号公報やWO2003/070790に記載された方法により製造できる。具体的には、下記の重合用触媒(メタロセン系触媒)の存在下、炭素数16〜35の高級アルファオレフィン一種又は二種以上を単独重合又は共重合させたり、炭素数16〜35の高級アルファオレフィン一種以上と他のオレフィン一種以上とを共重合させることにより製造できる。
【0019】
・重合触媒
(A) 下記式(I)で表される遷移金属化合物
(B) (A)成分の遷移金属化合物又はその派生物と反応してイオン性の錯体を形成しうる化合物、及びアルミノキサンから選ばれる少なくとも一種類の成分
【0020】
【化1】

【0021】
〔式中、Mは周期律表第3〜10族又はランタノイド系列の金属元素を示し、E及びEはそれぞれ置換シクロペンタジエニル基,インデニル基,置換インデニル基,ヘテロシクロペンタジエニル基,置換ヘテロシクロペンタジエニル基,アミド基,ホスフィド基,炭化水素基及び珪素含有基の中から選ばれた配位子であって、A及びAを介して架橋構造を形成しており、又それらは互いに同一でも異なっていてもよく、Xはσ結合性の配位子を示し、Xが複数ある場合、複数のXは同じでも異なっていてもよく、他のX,E,E又はYと架橋していてもよい。Yはルイス塩基を示し、Yが複数ある場合、複数のYは同じでも異なっていてもよく、他のY,E,E又はXと架橋していてもよく、A及びAは二つの配位子を結合する二価の架橋基であって、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、珪素含有基、ゲルマニウム含有基、スズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−Se−、−NR−、−PR−、−P(O)R−、−BR−又は−AlR−を示し、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基又は炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基を示し、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。qは1〜5の整数で〔(Mの原子価)−2〕を示し、rは0〜3の整数を示す。〕
詳細については、上述した特開2005−75908号公報やWO2003/070790を参照すればよい。
【0022】
重合に用いるアルファオレフィンの炭素数は、10〜35が好ましく、さらに、14〜35が好ましく、特に、16〜35であることが好ましい。この範囲であれば、得られるアルファオレフィン重合体は、未反応モノマーが少なく、融点が40℃以上であり、融解と結晶化の温度域が狭く均一な組成となる。アルファオレフィンの炭素数が10以下の場合、重合して得られるアルファオレフィン重合体は結晶性に乏しく、融点が低いために常温でべたつきが残るおそれがある。一方、炭素数が35を超えると、未反応物の残存率が高くなることがある。
【0023】
上記炭素数10〜35のアルファオレフィンとしては、例えば1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン等が挙げられる。これらを一種又は二種以上用いてもよい。
炭素数10〜35の高級オレフィン一種以上と共重合される上記以外のオレフィンとしては、炭素数2〜30のオレフィンを用いることができ、特にアルファオレフィンが望ましい。
アルファオレフィンとしてはエチレン、プロピレン、1−ペンテン、4−メチルペンテンー1、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデカン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコデセン等が挙げられ、これらのうち一種又は二種以上を用いることが出来る。
【0024】
本発明に用いるポリオール化合物及び/又はイソシアネート化合物は、両化合物の反応により、ポリウレタン系樹脂を生成できる物であればよく、特に限定されない。
ポリオール化合物としては、ウレタン用ポリオールが使用でき、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブタジエングリコール、ポリペンタジエングリコール、ポリヘキサジエングリコール、ポリヘプタレングリコール、ポリオクタレングリコール、ポリノナレングリコール、ポリデカレングリコール等のグリコール類、水酸基残存アルキッド樹脂、水酸基含有液状ジエン系重合体、又はその水酸化物がポリオールであるポリウレタン系エラストマーが挙げられる。
【0025】
イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネートや、これらのジイソシアネート化合物の高分子量体であって、イソシアネート基を有するものが挙げられる。
ポリオール化合物及びイソシアネート化合物は、工業的に市販されているものを使用できる。
ポリオール化合物の水酸基に対するイソシアネート化合物のイソシアネート基(−NCO)の比率(NCO/OH)は、通常、0.4〜10.0の範囲が好ましく、さらに、好ましくは0.5〜5.0の範囲である。
【0026】
尚、本発明のインキ組成物では、ポリオール化合物及びイソシアネート化合物の少なくとも一方が配合されていればよい。例えば、インキ組成物は上述したポリオレフィンとポリオール化合物からなっていてもよい。この場合、インキ組成物の使用時に、インキ組成物に、イソシアネート化合物や硬化触媒を投入して硬化させる。即ち、2液型のインキ組成物として使用できる。
【0027】
本発明のインキ組成物全体に対するポリオレフィン樹脂の含有量は30〜60重量%であることが好ましく、特に、40〜60重量%であることが好ましい。30重量%未満では、インキ組成物を硬化して得られる膜の透明性が高くなりすぎ、低温時(不透明時)にも下地印刷絵柄が鮮明に視認できるため、示温性が不十分となる場合がある。一方、60重量%より多いと、インキ組成物が高粘度化し、印刷が不均一となる場合がある。
【0028】
また、ポリオレフィン樹脂のインキ中の粒径は1μm〜20μmが好ましい。1μm未満では、粒径を細かくするために過度のエネルギーが必要となるため好ましくなく、一方、20μmより大きいと印刷面が粗くなり、印刷面の耐摩擦性が劣化するおそれがある。
尚、粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定器(セイシン企業社製RPS85)を使用して測定した50重量%での粒度の値を意味する。
【0029】
本発明のインキ組成物では、上述したポリオレフィン樹脂、ポリオール化合物及び/又はイソシアネート化合物の他に、必要に応じて、硬化触媒、溶剤、流動性調整剤、酸化防止剤紫外線吸収剤、レベリング剤、消泡剤等の添加剤を使用することが出来る。
硬化触媒としては、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等のアミン類が一般的である。
また、流動性調整剤としては、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等の体質顔料、シランカップリング剤、アルミカップリング剤等の架橋化剤、オクチル酸アルミ、ステアリン酸アルミ等の膨潤剤が使用できる。
【0030】
本発明のインキ組成物は、例えば、ポリオール化合物及び/又はイソシアネート化合物に、粒径を1μm〜20μmに粉砕したポリオレフィン樹脂を混合することにより製造できる。使用時(成膜時)に、上記組成物に、アミン等の硬化触媒等を混合すればよい。
【0031】
本発明の印刷物は、下地となる印刷面の一部又は全面に、上述した本発明の示温性インキ組成物を硬化して得られる層を有する。本発明の印刷物は、例えば、包装用基材に文字や絵柄を印刷した印刷面上に、本発明のインキ組成物を上刷り印刷をすることで作製できる。本発明のインキ組成物を硬化して得られる層は、ポリウレタン樹脂にポリオレフィン樹脂を分散させた形態となっているため、ポリオレフィン樹脂の融点付近以下の温度では、インキ層は白濁した半透明となる。そのため、下地である文字や印刷絵柄の鮮明度を低下させる。一方、ポリオレフィン樹脂の融点付近以上の温度では、樹脂が溶融し透明化するので、下地の印刷絵柄が鮮明に目視できるようになる。再度、温度がポリオレフィン樹脂の融点以下となれば、下地の印刷絵柄は不鮮明になる。これにより内容物の温度が所定温度であるか否かを知ることが出来る。
【0032】
下地となる印刷面の印刷は、特に制限はなく、オフセット、グラビア、フレキソ、レタープレス等の印刷方式を使用できる。
インキ層の示温性の発現機構を考慮すると、印刷絵柄の色相は黒色、茶色、紺色等の濃色であることが好ましい。一方、黄色、クリーム色等の淡色は好ましくない。
【0033】
本発明のインキ組成物は、スクリーン印刷に適切な流動性を有するため、スクリーン印刷により印刷面上に塗布することが好ましい。例えば、下地に黒色、茶色、紺色等で印刷された印刷物の絵柄部分に、ナイロン等のスクリーン印刷版で、本発明のインキを印刷することが好ましい。印刷後、常温下又は加熱下にて硬化、乾燥させること示温性を有する印刷物が得られる。
低温時の不透明性を十分とするため、インキ層の厚さ圧は15μm以上が望ましい。
尚、本発明の印刷物では、示温性を示すインキ層の上に、さらにニス等を塗布してもよい。
【0034】
本発明の印刷物は、ウレタン系樹脂をバインダーとし、融点範囲が非常に狭いポリオレフィン樹脂を分散させたインキ層を有している。本発明の印刷物は、例えば、飲料缶や各種パッケージ等に使用できる。印刷面上に形成したインキ層の状態変化によって、コーヒーやお茶等の内容物の温度が適温であるか判断することが出来る。また、インキ層を形成したシール又はラベルを容器等に貼ることで、内容物の温度が適切であるかを知ることが出来る。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例で説明する。
製造例1
側鎖結晶性ポリα−オレフィン重合体(融点40℃:CPAO−40)の製造方法
加熱乾燥した1Lのオートクレーブに、出光興産(株)製「リニアレン18」を400mL入れ、重合温度90℃まで昇温した後、トリイソブチルアルミニウム0.5mmol、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを1μmol、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートを4μmol加え、水素を0.2MPa導入し、120分間重合した。重合反応終了後、反応物をアセトンにて沈殿させた後、加熱、減圧下、乾燥処理することにより、CPAO−40を200g得た。
得られたポリマーのGPCによる重量平均分子量(Mw)は23,000、融点は40℃であり、広角X線散乱強度分布の15deg<2θ<30degに、側鎖結晶化に由来する、単一のピークが観測された。
【0036】
製造例2
側鎖結晶性ポリα−オレフィン重合体(融点60℃:CPAO−60)の製造方法
加熱乾燥した1Lオートクレーブに、炭素数20、22、24のα−オレフィンの42/36/21%(モル比)混合体を400mL入れ、重合温度を110℃まで昇温した後、トリイソブチルアルミニウム0.5mmol、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’-ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを1μmol、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートを4μmol加え、水素を0.2MPa導入し、120分間重合した。重合反応終了後、反応物をアセトンにて沈殿させた後、加熱、減圧下、乾燥処理することにより、CPAO−60を210g得た。
得られた重合体のGPCによる重量平均分子量(Mw)は14,000、融点は60℃であり、広角X線散乱強度分布の15deg<2θ<30degに、側鎖結晶化に由来する、単一のピークが観測された。
【0037】
製造例3
側鎖結晶性ポリα−オレフィン重合体(融点80℃:CPAO−80)の製造方法
加熱乾燥した1Lオートクレーブに、炭素数26、28のα−オレフィンの35/65%(モル比)混合体を400mL入れ、重合温度140℃まで昇温した後、トリイソブチルアルミニウム0.5mmol、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを1μmol、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートを4μmol加え、水素を0.2MPa導入し、120分間重合した。重合反応終了後、反応物をアセトンにて沈殿させた後、加熱、減圧下、乾燥処理することにより、CPAO−80を180g得た。
得られた重合体のGPCによる重量平均分子量(Mw)は8,000、融点は80℃であり、広角X線散乱強度分布の15deg<2θ<30degに、側鎖結晶化に由来する、単一のピークが観測された。
【0038】
製造例4
側鎖結晶性ポリα−オレフィン重合体(融点90℃:CPAO−90)の製造方法
加熱乾燥した1Lオートクレーブに、炭素数28、30のα−オレフィンの80/20%(モル比)混合体を400mL入れ、重合温度140℃まで昇温した後、トリイソブチルアルミニウム0.5mmol、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを1μmol、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートを4μmol加え、水素を0.2MPa導入し、120分間重合した。重合反応終了後、反応物をアセトンにて沈殿させた後、加熱、減圧下、乾燥処理することにより、CPAO−90を150g得た。
得られた重合体のGPCによる重量平均分子量(Mw)は8,200、融点は90℃であり、広角X線散乱強度分布の15deg<2θ<30degに、側鎖結晶化に由来する、単一のピークが観測された。
【0039】
[示温性インキ組成物]
実施例1
粒径10μmのCPAO−40(融点40℃の側鎖結晶性ポリα−オレフィン重合体)を100部、PEG300(日油株式会社製、ポリエチレングリコール)を100部、デスモジュールW(住友ヴァイエルウレタン製イソシアネート化合物)を30部、500mlのビーカーに採取しホモミキサーにて500回転/分で30分撹拌してインキ組成物を作製した(ポリα−オレフィン重合体の含有率:43.5重量%)。
尚、本明細書において「部」は、「重量部」を意味する。
【0040】
実施例2
粒径10μmのCPAO−60(融点60℃の側鎖結晶性ポリα−オレフィン重合体)を100部、PEG300を100部、デスモジュールWを30部、500mlのビーカーに採取しホモミキサー500回転/分で30分撹拌してインキ組成物を作製した。
【0041】
実施例3
粒径10μmのCPAO−80(融点80℃の側鎖結晶性ポリα−オレフィン重合体)を100部、PEG300を100部、デスモジュールWを30部、500mlのビーカーに採取しホモミキサー500回転/分で30分撹拌してインキ組成物を作製した。
【0042】
実施例4
粒径10μmのCPAO−90(融点90℃の側鎖結晶性ポリα−オレフィン重合体)を100部、PEG300を100部、デスモジュールWを30部、500mlのビーカーに採取しホモミキサー500回転/分で30分撹拌してインキ組成物を作製した。
【0043】
比較例1
粒径10μmのCPAO−40を50部、PEG300を250部、デスモジュールWを30部、500mlのビーカーに採取し、ホモミキサー500回転/分で30分撹拌してインキ組成物を作製した(ポリα−オレフィン重合体の含有率:15.2重量%)。
【0044】
比較例2
粒径10μmのCPAO−40を140部、PEG300を60部、デスモジュールWを30部とした他は、比較例1と同様にしてインキ組成物を作製した(ポリα−オレフィン重合体の含有率:60.9重量%)。
【0045】
比較例3
粒径10μmのCPAO−80を50部、PEG300を250部、デスモジュールWを30部とした他は、比較例1と同様にしてインキ組成物を作製した(ポリα−オレフィン重合体の含有率:15.2重量%)。
【0046】
比較例4
粒径10μmのCPAO−80を140部、PEG300を60部、デスモジュールWを30部とした他は、比較例1と同様にしてインキ組成物を作製した(ポリα−オレフィン重合体の含有率:60.9重量%)。
【0047】
[印刷物]
下地となる印刷物は、基材(アクリル系ホワイトコーテイング塗装缶用鉄板)上に金属用墨インキをRIテスターにて印刷して作製した。
下地印刷物の印刷面に、上述した実施例及び比較例のインキ組成物を使用してインキ層を形成した。具体的には、インキ組成物に硬化触媒であるトリエタノールアミンを1.0%加えた後、250メッシュのナイロン製スクリーン印刷版を使用して、印刷面上に厚み25μmで印刷した。
その後、仕上げニスをロールコーターにて塗布し、200℃で5分加熱して仕上げニスを乾燥し、印刷物を得た。
【0048】
[印刷物の評価]
印刷物を伝熱プレート上に置き、加熱し、下地の絵柄が鮮明になった時点の温度を測定した。また、同温度で30分間保温した後、放置して下地の絵柄が不鮮明になった時点の温度を測定した。尚、昇温と冷却を5回繰り返してインキ層の可逆性を確認した。
評価結果を表1に示す。尚、評価基準は以下のとおりとした。
(A)印刷適性
インキ組成物のスクリーン通過の均一性を判断するため、印刷面におけるインキ組成物膜の均一性を目視で評価した。評価は以下のとおりとした。
○:印刷面が均一で下地の絵柄の不鮮明性も均一である
×:印刷面に濃淡の模様があり、下地の絵柄の状態にも濃淡が認められる
(B)不鮮明性
12mm角の明朝体アルファベット文字の判読で測定した。評価は以下のとおりとした。
○:30cmの距離での判読が不可能
×:30cmの距離での判読可能
比較例2,4は、インキ組成物の粘度が高いため、印刷面上に均一なインキ層を形成できなかった。
【0049】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の示温性インキ組成物は、包装容器等の印刷物に示温性を付与するインキとして好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン樹脂と、
ポリオール化合物及び/又はイソシアネート化合物を含有し、
前記ポリオレフィン樹脂の含有率が30〜60重量%である示温性インキ組成物。
【請求項2】
前記ポリオレフィン樹脂の融点が40〜100℃である請求項1に記載の示温性インキ組成物。
【請求項3】
前記ポリオレフィン樹脂が、下記(1)及び(2)の条件を満たすポリアルファオレフィン樹脂である、請求項1又は2に記載の示温性インキ組成物。
(1)示差走査型熱量計(DSC)を用い、ポリアルファオレフィン樹脂を窒素雰囲気下190℃で5分間保持した後、−10℃まで5℃/分で降温させ、−10℃で5分間保持後、190℃まで10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから観測される融点が40〜100℃
(2)広角X線散乱強度分布にて、15deg<2θ<30degに側鎖結晶化に由来する、単一のピークが観測される
【請求項4】
印刷面の一部又は全面に、請求項1〜3のいずれかに記載の示温性インキ組成物を硬化して得られる層を有する印刷物。