説明

社会性情動行動評価システム、社会性情動行動評価方法並びに社会性情動行動評価プログラム及びこれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体

【課題】判別が容易でかつ客観性、適応性の高い社会性情動行動評価システム及び社会性情動行動評価方法を提供する。
【解決手段】 社会性情動行動観測装置120は、社会性相互作用が制御された場面に置かれた被検個体の応答行動を観測することにより社会性情動行動観測データを取得する。社会性情動行動評価装置110は、取得された社会性情動行動観測データから多次元の行動パラメータを抽出し、当該行動パラメータの主成分分析による主成分空間に当該行動パラメータを投影しその分散を楕円に近似して得られる分散楕円の情報を利用して社会性情動行動指標を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の社会性情動行動を客観的かつ定量的に評価する社会性情動行動評価システム及び社会性情動行動評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人間社会においては、自閉症、注意欠陥/多動性障害(ADHD)等の、社会性情動表現障害者が激増している。ここで、「社会性」とは、社会の中での個体間の相互作用に関わることを意味し、「社会性情動行動」とは、個体間の相互作用から生じ、その相互作用に影響を及ぼす感情行動を意味する。社会性情動行動障害の症例、病因研究の現状では、単純な特定の脳領域(単一モジュール)の障害ではなく、複数のモジュールが関与し、それらの統合に関わる高次脳機能の障害であることが徐々に解かれているが、なお、報告は一定せず、神経基盤も未解明で、治療法も確立されるには至っていない。人間の社会性情動行動障害は発達期に発症することから、より幼若早期に社会性情動行動を定量的に診断できる評価系が必要とされている。
【0003】
また、人の臨床応用の前段階として、モデル動物による予備的検討は必須であるが、動物は人間の言葉のような伝達手段を持たないことから、社会性情動行動という動物の心理状態を、実験者が客観的に把握するためには、その定量的評価系が必要とされる。このような定量的評価系の存在により、人間の社会性情動行動障害に有効な薬物を動物実験によりスクリーニングすることが可能になるものと期待される。
【0004】
かかる観点から、本発明者らは、先に、生体を社会性相互作用が制御された異なる環境下に置いて得られた複数の行動パラメータを統計的に把握し、社会性情動行動の意味付けをおこなって得られた行動指標により、生体の社会性情動行動を客観的にかつ定量的に評価する方法を提案した(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−18066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術では、利用する行動指標のパタン情報が複雑であるため、その判別には未だ専門的な知識が必要であり、また、コンピュータを利用した評価の自動処理化が困難であるという問題があった。さらに、行動指標として統計的に意味付けがなされた特定の行動パラメータを利用するものであるため、被検生体によってはうまく評価ができない可能性があった。
【0007】
本発明は上記従来技術の有する問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、判別が容易でかつ客観性、適応性の高い社会性情動行動評価システム及び社会性情動行動評価方法を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、コンピュータによる自動処理に適した社会性情動行動評価システム及び社会性情動行動評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0010】
(1)すなわち、本発明は、被検個体から取得された社会性情動行動観測データから多次元の行動パラメータを抽出する行動パラメータ抽出手段と、前記行動パラメータ抽出手段により抽出した行動パラメータから社会性情動行動指標を算出する社会性情動行動指標算出手段と、を備え、前記社会性情動行動指標算出手段は、前記行動パラメータを合成して得られる低次元の合成成分空間に前記行動パラメータを投影して得られる前記行動パラメータの前記合成成分空間上の情報に基づいて前記社会性情動行動指標を算出することを特徴とする、社会性情動行動評価システムである。
【0011】
(2)本発明はまた、前記情報は、前記行動パラメータの前記合成成分空間上の投影点の分散を楕円に近似して得られる分散楕円の情報である、請求項1に記載の社会性情動行動評価システムである。
【0012】
(3)本発明はまた、前記情報は、前記行動パラメータの前記合成成分空間上の投影点の中心角に関する情報である、請求項1に記載の社会性情動行動評価システムである。
【0013】
(4)本発明はまた、前記合成成分空間は、前記行動パラメータの主成分分析による主成分空間である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の社会性情動行動評価システムである。
【0014】
(5)本発明はまた、前記社会性情動行動指標は、分散楕円の面積変化量、楕円中心の所定方向への変位量、分散楕円の重なり度、楕円長軸又は短軸の向き、楕円長軸と短軸の長さの比又は中心角変化量である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の社会性情動行動評価システムである。
【0015】
(6)本発明はまた、前記社会性情動行動観測データは、社会性相互作用が制御された場面に置かれた被検個体の応答行動を観測して得られたものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の社会性情動行動評価システムである。
【0016】
(7)本発明はまた、前記社会性情動行動指標算出手段により算出された社会性情動行動指標に基づいて被検個体の社会性情動行動を評価する社会性情動行動評価手段を更に有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の社会性情動行動評価システムである。
【0017】
(8)本発明はまた、被検個体の社会性情動行動を観測して社会性情動行動観測データを取得する社会性情動行動観測データ取得手段を更に有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の社会性情動行動評価システムである。
【0018】
(9)本発明はまた、前記社会性情動行動観測データ取得手段は、社会性相互作用が制御された場面に置かれた被検個体の応答行動を観測することにより前記社会性情動行動観測データを取得するものである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の社会性情動行動評価システムである。
【0019】
(10)更に、本発明は、被検個体から取得された社会性情動行動観測データから多次元の行動パラメータを抽出する行動パラメータ抽出ステップと、前記行動パラメータ抽出ステップにより抽出した行動パラメータから社会性情動行動指標を算出する社会性情動行動指標算出ステップと、を有し、前記社会性情動行動指標算出ステップは、前記行動パラメータを合成して得られる低次元の合成成分空間に前記行動パラメータを投影して得られる前記行動パラメータの前記合成成分空間上の情報に基づいて前記社会性情動行動指標を算出することを特徴とする、社会性情動行動評価方法である。
【0020】
(11)本発明はまた、前記情報は、前記行動パラメータの前記合成成分空間上の投影点の分散を楕円に近似して得られる分散楕円の情報である、請求項10に記載の社会性情動行動評価方法である。
【0021】
(12)本発明はまた、前記情報は、前記行動パラメータの前記合成成分空間上の投影点の中心角に関する情報である、請求項10に記載の社会性情動行動評価方法である。
【0022】
(13)本発明はまた、前記合成成分空間は、前記行動パラメータの主成分分析による主成分空間である、請求項10〜12のいずれか1項に記載の社会性情動行動評価方法である。
【0023】
(14)本発明はまた、前記社会性情動行動指標は、分散楕円の面積変化量、楕円中心の所定方向への変位量、分散楕円の重なり度、楕円長軸又は短軸の向き、楕円長軸と短軸の長さの比又は中心角変化量である、請求項10〜13のいずれか1項に記載の社会性情動行動評価方法である。
【0024】
(15)本発明はまた、前記社会性情動行動観測データは、社会性相互作用が制御された場面に置かれた被検個体の応答行動を観測して得られたものである、請求項10〜14のいずれか1項に記載の社会性情動行動評価方法である。
【0025】
(16)更に、本発明は、被検個体から取得された社会性情動行動観測データから多次元の行動パラメータを抽出する行動パラメータ抽出ステップと、前記行動パラメータ抽出ステップにより抽出した行動パラメータから社会性情動行動指標を算出する社会性情動行動指標算出ステップと、をコンピュータに実行させることを特徴とする社会性情動行動評価プログラムであって、前記社会性情動行動指標算出ステップは、前記行動パラメータを合成して得られる低次元の合成成分空間に前記行動パラメータを投影して得られる前記行動パラメータの前記合成成分空間上の情報に基づいて前記社会性情動行動指標を算出することを特徴とする、社会性情動行動評価プログラムである。
【0026】
(17)本発明はまた、前記情報は、前記行動パラメータの前記合成成分空間上の投影点の分散を楕円に近似して得られる分散楕円の情報である、請求項16に記載の社会性情動行動評価プログラムである。
【0027】
(18)本発明はまた、前記情報は、前記行動パラメータの前記合成成分空間上の投影点の中心角に関する情報である、請求項16に記載の社会性情動行動評価プログラムである。
【0028】
(19)本発明はまた、前記合成成分空間は、前記行動パラメータの主成分分析による主成分空間である、請求項16〜18のいずれか1項に記載の社会性情動行動評価プログラムである。
【0029】
(20)本発明はまた、前記社会性情動行動指標は、分散楕円の面積変化量、楕円中心の所定方向への変位量、分散楕円の重なり度、楕円長軸又は短軸の向き、楕円長軸と短軸の長さの比又は中心角変化量である、請求項16〜19のいずれか1項に記載の社会性情動行動評価プログラムである。
【0030】
(21)本発明はまた、前記社会性情動行動観測データは、社会性相互作用が制御された場面に置かれた被検個体の応答行動を観測して得られたものである、請求項16〜20のいずれか1項に記載の社会性情動行動評価プログラムである。
【0031】
(22)更に、本発明は、請求項16〜21のいずれか1項に記載の社会性情動行動評価プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0032】
(23)更に、本発明は、被検個体から取得された感情観測データから多次元の感情パラメータを抽出する感情パラメータ抽出手段と、前記感情パラメータ抽出手段により抽出した感情パラメータから感情指標を算出する感情指標算出手段と、を備え、前記感情指標算出手段は、前記感情パラメータを合成して得られる低次元の合成成分空間に前記感情パラメータを投影して得られる前記感情パラメータの前記合成成分空間上の情報に基づいて前記感情指標を算出することを特徴とする、感情評価システムである。
【0033】
(24)本発明はまた、被検個体から取得された感情観測データから多次元の感情パラメータを抽出する感情パラメータ抽出ステップと、前記感情パラメータ抽出ステップにより抽出した感情パラメータから感情指標を算出する感情指標算出ステップと、を有し、前記感情指標算出ステップは、前記感情パラメータを合成して得られる低次元の合成成分空間に前記感情パラメータを投影して得られる前記感情パラメータの前記合成成分空間上の情報に基づいて前記感情指標を算出することを特徴とする、感情評価方法である。
【0034】
(25)本発明はまた、被検個体から取得された感情観測データから多次元の感情パラメータを抽出する感情パラメータ抽出ステップと、前記感情パラメータ抽出ステップにより抽出した感情パラメータから感情指標を算出する感情指標算出ステップと、をコンピュータに実行させることを特徴とする感情評価プログラムであって、前記感情指標算出ステップは、前記感情パラメータを合成して得られる低次元の合成成分空間に前記感情パラメータを投影して得られる前記感情パラメータの前記合成成分空間上の情報に基づいて前記感情指標を算出することを特徴とする、感情評価プログラムである。
【0035】
(26)本発明はまた、請求項25に記載の感情評価プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、社会性情動行動指標として、被検個体から取得された行動パラメータの合成成分空間に行動パラメータを投影してその分散を楕円に近似して得られる分散楕円を利用するので、判別が容易でかつコンピュータによる自動処理に適した社会性情動行動評価システム及び社会性情動行動評価方法を提供することができる。
【0037】
また、本発明によれば、被検個体から取得された全ての多次元行動パラメータの情報を組み込んだ社会性情動行動指標を利用するので、客観性、適応性の高い社会性情動行動評価システム及び社会性情動行動評価方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態にかかる社会性情動行動評価システム100の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態にかかる社会性情動行動評価装置110の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】本実施形態における社会性情動行動評価装置110の社会性情動行動評価処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】本実施形態における社会性情動行動評価装置110の社会性情動行動観測処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】本実施形態の社会性情動行動観測処理において利用される社会性情動行動観測システムの一例を示す図である。
【図6】本実施形態の社会性情動行動観測処理において実施されるMIテストの一例を示す図である。
【図7】本実施形態における社会性情動行動評価装置110の行動パラメータ抽出処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】本実施形態における社会性情動行動評価装置110の社会性情動行動指標算出処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】多次元行動パラメータの主成分分析による第1−第2主成分空間上のデータプロット及び近似分散楕円の一例を示す図である。
【図10】本実施形態における社会性情動行動評価装置110の社会性情動行動評価処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】実施例1で抽出した行動パラメータとその意味及びその計測方法である。
【図12】声紋解析によるヒヨコの鳴声タイプの分類試験の結果を表わすグラフである。
【図13】社会性獲得評価のためのヒヨコの行動パラメータの多次元グラフである。
【図14】実施例1における社会性情動行動の評価結果を示すグラフである。
【図15】実施例2で用いられた社会性情動行動観測システムを説明するための図である。
【図16】実施例2で実施されたMIテストを説明するための図である。
【図17】実施例2で抽出した行動パラメータの一覧である。
【図18】声紋解析によるマーモセットの鳴声タイプの分類試験の結果を表わすグラフである。
【図19】実施例2における社会性情動行動の評価結果を示すグラフである。
【図20】実施例3で抽出した行動パラメータの一覧である。
【図21】行動パラメータ毎の因子負荷量ベクトルを8つの角度ごとに振り分けたグラフである。
【図22】図21における被検個体(雌)及び隣接刺激個体(雄)の各回の主成分得点プロット位置の色を対比して表した図である。
【図23】主成分得点プロットの移動角ωを説明するための図である。
【図24】横軸を移動角の平均、縦軸をホルモン血中濃度とするグラフを、引用するデータの組み合わせごとに示した図である。
【図25】実施例4における被検者の感情評価の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0040】
図1は、本発明の実施形態にかかる社会性情動行動評価システム100の全体構成を示すブロック図である。図1に示すように、社会性情動行動評価システム100は、社会性情動行動評価装置110と、社会性情動行動観測装置120とを備え、これらは通信ネットワーク130を介して相互に通信可能に接続されている。なお、通信ネットワーク130に接続される機器の種類および台数は、図1に示す例に限定されない。
【0041】
つぎに、上記各機器の構成について説明するが、上記各機器は後述する構成要素以外の構成要素を含んでいてもよく、あるいは、後述する構成要素のうちの一部が含まれていなくてもよい。
【0042】
図2は、本実施形態にかかる社会性情動行動評価装置110の構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、社会性情動行動評価装置110はコンピュータであり、CPU111、ROM112、RAM113、ハードディスク114、ディスプレイ115、入力装置116およびネットワークインタフェース117を備えており、これらは信号をやり取りするためのバス118を介して相互に接続されている。
【0043】
CPU111は、プログラムにしたがって上記各部の制御や各種の演算処理等を行う。ROM112は、社会性情動行動評価装置110の基本動作を制御する各種プログラムやパラメータを格納する。RAM113は、作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶する。ハードディスク114は、OS(オペレーティングシステム、基本ソフトウエア)や後述する社会性情動行動評価装置110の所定の動作を制御するためのプログラムおよびパラメータを格納する。
【0044】
ディスプレイ115は、各種の情報を表示する。入力装置116は、キーボードやマウス等であり、各種の入力を行うために使用される。
【0045】
ネットワークインタフェース117は、ネットワークに接続しネットワーク上の他の機器と通信するためのインタフェースであり、イーサネット(登録商標)、トークンリング、FDDI等の規格による有線又は無線通信インタフェースが用いられる。
【0046】
社会性情動行動観測装置120は、被検個体の社会性情動行動を観測する装置であり、被検個体から社会性情動行動データを取得する。社会性情動行動データのうち、被検個体の動作に関連するものについてはビデオカメラ、カムコーダ、デジタルスチルカメラ等の画像取得装置が、また、被検個体の音声や鳴声等に関連するものについてはマイクロフォンやICレコーダ等の音声取得装置が利用される。但し、社会性情動行動観測装置120は、例えばマイクロフォンの内蔵されたビデオカメラ等のように画像と音声を同時に取得可能な1台の観測装置で構成されてもよいし、より詳細な行動パラメータを計測するために複数の観測装置で構成されても構わない。
【0047】
通信ネットワーク130は、LAN、WAN、インターネット等のコンピュータネットワークであり、電話網、移動通信網、ISDN、パケット交換網等の公衆網を含んでもよい。
【0048】
なお、社会性情動行動評価システム100において、社会性情動行動評価装置110と社会性情動行動観測装置120とは、必ずしも通信ネットワークを介して接続されている必要はなく、例えば、USB、IEEE1394等のシリアルインタフェース、SCSI、IEEE1284等のパラレルインタフェース、Bluetooth(ブルートゥース)、IEEE802.11、HomeRF、IrDA等の無線通信インタフェース等を介して直接ローカル接続されていてもよい。
【0049】
次に、本実施形態に係る社会性情動行動評価システム100を用いた社会性情動行動評価方法の概要について、社会性情動行動評価装置110の動作を中心にして説明する。
【0050】
図3は、本実施形態における社会性情動行動評価装置110の社会性情動行動評価の処理全体の手順を示すフローチャートである。なお、図3のフローチャートにより示されるアルゴリズムは、社会性情動行動評価装置110のROM112に制御プログラムとして記憶されており、動作開始の際にRAM113に読み出されてCPU111により実行される(図4〜6及び図8においても同様である)。
【0051】
まず、社会性情動行動評価装置110は、図3のステップS110において社会性情動行動観測処理を行う。図4は、本実施形態における社会性情動行動評価装置110の社会性情動行動観測処理の手順を示すフローチャートである。図4のステップS210において、社会性情動行動評価装置110は、社会性情動行動観測処理の開始命令があるまで待機する(S210のNO)。入力装置116を介してユーザから開始命令の入力があると(S210のYES)、ステップS220に進んで、ネットワークインタフェース117から通信ネットワーク130を介して社会性情動行動観測装置120に対して社会性情動行動観測命令を送信し、ステップS230で社会性情動行動観測装置120から社会性情動行動観測データを受信するまで待機する(S230のNO)。
【0052】
図5は、本実施形態の社会性情動行動観測処理において利用される社会性情動行動観測システムの一例を示す図である。図5に示す社会性情動行動観測システムは被検個体がヒヨコの例であり、被検個体210を収容したテストケージ140の上方略中央に社会性情動行動観測装置としてのビデオカメラ120aが設置されており、被検個体210の行動を俯瞰的に観測して、得られた社会性情動行動観測データを社会性情動行動評価装置(図示せず)に送信するようになっている。但し、本実施形態で利用される社会性情動行動観測システムにおける社会性情動行動観測装置の種類や設置台数、設置位置等はこれに限定されるものではなく、例えば、テストケージの上方以外に側方にもビデオカメラを設定して被検個体の行動を側瞰的に観測することにより、被検個体の高さ方向の動作に関する社会性情動行動観測データを更に取得するようにしても構わない。なお、ここで得られる社会性情動行動観測データは、被検個体の動作に関しては被検個体の画像データであり、被検個体の音声(鳴声)に関しては被検個体の音声データである。画像データは動画像データ(ビデオデータ)であってもよいし、静止画像データであってもよい。
【0053】
また、本実施形態においては、社会性情動行動の観測は、被検個体に対して社会性相互作用(MI)テストを施してその応答行動を観測することにより行われる。図6は、本実施形態の社会性情動行動観測処理において実施されるMIテストの一例を示す図である。このMIテストとは、被検個体を、所定時間、社会性相互作用(MI)が制御された場面に置くテストである。ここで、社会性相互作用(MI)とは、社会性を構成する生命体が互いに影響し合い、その結果、互いの行動出力が生まれ、再びその行動が相手に影響を与え社会性の質が変化していく、という作用のこといい、MIを制御する因子としては、聴覚、視覚、嗅覚、体性感覚、運動、発声等の出力シグナル等がある。そのうち、図6では聴覚、視覚、嗅覚及び体性感覚の4つの因子を制御する例について示している。なお、図中の記号の意味については、「A」は聴覚MI、「V」は視覚MI、「O」は嗅覚MI、及び「T」は体性感覚MIをそれぞれ表わし、「+」は供与した(遮断しなかった)こと、及び「−」は阻害した(遮断した)ことをそれぞれ表している(以下本明細書において同様である)。例えば、図6(a)は、聴覚、視覚、嗅覚及び体性感覚の全てのMIがない孤立場面であり、被検個体210は、嗅覚MIのみが遮断され視聴覚MIが遮断されない嗅覚MI遮断壁(例えばアクリル樹脂製の透明薄板等)で囲繞されたテストケージ140aに収容され、他の個体から隔離された状態に置かれる。また、図6(b)は、聴覚MIのみが与えられる聴覚MI場面であり、被検個体210は、嗅覚MI遮断壁で囲繞されたテストケージ140aに収容され、視覚MIのみを遮断し聴覚MIは遮断しない視覚MI遮断壁150(例えばアクリル樹脂製の不透明薄板等)を介して、通常のケージに収容された隣接刺激個体(群)310と隣接した状態に置かれる。図6(c)は、視聴覚IMが与えられる視聴覚MI場面であり、被検個体210は、嗅覚MI遮断壁で囲繞されたテストケージ140aに収容され、通常のケージに収容された隣接刺激個体(群)310と障壁を介さずに隣接した状態に置かれる。図6(d)は、視覚IMのみが与えられる視覚MI場面であり、被検個体210は、嗅覚MI遮断壁で囲繞されたテストケージ140aに収容され、聴覚MIのみを遮断し視覚MIは遮断しない聴覚MI遮断壁(例えばアクリル樹脂製の透明厚板等)で囲繞されたケージに収容された隣接刺激個体(群)310と隣接した状態に置かれる。なお、いうまでもなく体性感覚MIは上記何れの遮断壁においても遮断される。MIテストでは、上記のようにして得られる設定場面のうち少なくとも2つを選択して実施することにより、場面の変化に対する被検個体の応答行動の変化から、被検個体の社会性情動行動を絶対評価することが可能となる。但し、被検個体の社会性情動行動を対照群と比較して相対評価するような場合は、MIテストで1つの設定画面のみを実施することによっても目的を達成することができる。
【0054】
社会性情動行動観測装置120は、通信ネットワーク130を介して社会性情動行動評価装置110から社会性情動行動観測命令を受信すると、被検個体のMIテストに応答する社会性情動行動の観測を開始し、社会性情動行動観測データを取得して通信ネットワーク130を介して社会性情動行動評価装置110に送信する。
【0055】
社会性情動行動評価装置110は、図4のステップS230で通信ネットワーク130及びネットワークインタフェース117を介して社会性情動行動観測装置120から社会性情動行動観測データを受信すると(S230のYES)、ステップS240に進み、受信した観測データをハードディスク114の所定の領域に保存する。そして、ステップS250において、社会性情動行動観測処理の終了命令があるまでステップS220〜S240の手順を繰り返して観測データをハードディスク114に記録する(S250のNO)。この際の観測データの記録方法は、観測データを所定期間連続して取得して記録するものであってよいし、所定間隔ごとに間欠的に取得して記録するものであってもよい。そして、入力装置116を介してユーザから終了命令の入力があると(S250のYES)、社会性情動行動観測処理を終了して図3のステップS110に戻る。
【0056】
次に、社会性情動行動評価装置110は、ステップS120に進んで、行動パラメータの抽出処理を行う。図7は、本実施形態における社会性情動行動評価装置110の行動パラメータ抽出処理の手順を示すフローチャートである。図7のステップS310において、社会性情動行動評価装置110は、ハードディスク114に記憶された社会性情動行動観測データをRAM113上に読み出し、ステップS320において、読み出した観測データに基づいて所定の行動パラメータを抽出する。ここで、行動パラメータとは、社会性情動行動を評価するために被検個体の所定の行動を定量化して得られるパラメータであり、例えば、被検個体の頭の中心位置の時間変化、頭の向きの時間変化、鳴声の頻度の時間変化、鳴声の強度、鳴声周波数分布の時間変化、コンポーネント(フォルマント)の幾何学的複雑度等が挙げられる。行動パラメータのうち被検個体の動作に関するものについては、取得した社会性情動行動観測データのうちの画像データを用い、例えば既知の画像認識処理、即ちノイズ除去、二値化、正規化等の補正処理、エッジ抽出等の特徴抽出処理及びパタンマッチング等の画像識別処理を順次行って被検個体の標的部位(例えば図5のヒヨコの例では頭部に付したマーカや嘴等)を抽出し、その位置や方向等を検出することにより得られる。また、行動パラメータのうち被検個体の音声(鳴声)に関するものについては、取得した社会性情動行動観測データのうちの音声データを用い、既知の声紋認識処理、例えばスペクトログラムによる声紋解析等を行い、声紋タイプの識別やその頻度等を検出することにより得られる。
【0057】
そして、ステップS330において、抽出した行動パラメータをハードディスク114に保存し、行動パラメータ抽出処理を終了して図3のステップS120に戻る。
【0058】
次に、社会性情動行動評価装置110は、ステップS130に進んで、社会性情動行動指標算出処理を行う。図8は、本実施形態における社会性情動行動評価装置110の社会性情動行動指標算出処理の手順を示すフローチャートである。図8のステップS410において、社会性情動行動評価装置110は、ハードディスク114に記憶された行動パラメータをRAM113上に読み出し、ステップS420において、読み出した多次元の行動パラメータを用いて主成分分析を行い、更にステップS430に進んで、得られた主成分分析による主成分空間に行動パラメータを投影する。具体的には、まず、ステップS120で得られた多次元の行動パラメータについて相関行列による主成分分析を行い、元の行動パラメータを2、3次元の低次元空間上に投影する。図9の300は、行動パラメータの相関行列による主成分分析の第1−第2主成分空間を示しており、310は当該空間上にプロットされた元データである。この段階で、行動パラメータは、各主成分を基底とする線形結合(固有ベクトル)の形で表わされる。ついで、固有ベクトルに主成分の固有値の1/2乗値を乗じて因子負荷量を導き、因子負荷量から各データプロットに対応する主成分スコアを計算する。因子負荷量が主成分の意味付けに重要であることは既知であるが、ステップS430においては、因子負荷量で表示された行動パラメータの主成分空間の原点を中心とした主成分のX方向の軸となす角度データ(中心角)も保存する。
【0059】
次いで、ステップS440に進んで、投影した行動パラメータの主成分空間上の分散を分散楕円で近似する。すなわち、得られた群のデータプロットについて分散共分散行列による主成分分析を行い、群平均(図9の320)を中心に、第1主成分固有値の1/2乗値を乗じた第1固有ベクトル正負方向(同図の白矢印)の両端を長軸とし、第2主成分固有値の1/2乗値を乗じた第2固有ベクトル正負方向(同図の黒矢印)の両端を短軸とする分散楕円(同図の330)を得て、当該分散楕円で分散の空間位置と広がりを近似する。
【0060】
図8において、ステップS440の分散楕円近似が終了したら、ステップS450に進んで、社会性情動行動指標を算出する。社会性情動行動指標は、ステップS440で得られた近似分散楕円から算出される、被検個体の社会性情動行動を定量的に評価するための指標であり、例えば、MI場面の変化に伴う分散楕円の面積変化量、MI場面の変化に伴う楕円中心の所定の変位方向への変位量、対照群の分散楕円との重なり度、楕円長軸又は短軸の向き、楕円長軸と短軸の長さの比等が挙げられる。また、ステップ430において保存された中心角データの変化量も社会性情動を定量的に評価するための指標となる。
【0061】
ステップS460において、算出した社会性情動行動指標を主成分分析及び分散楕円近似の結果とともにハードディスク114に保存し、行動パラメータ抽出処理を終了して図3のステップS130に戻る。
【0062】
そして、社会性情動行動評価装置110は、ステップS140に進んで、社会性情動行動評価処理を行う。図10は、本実施形態における社会性情動行動評価装置110の社会性情動行動評価処理の手順を示すフローチャートである。図10のステップS510において、社会性情動行動評価装置110は、ハードディスク114に記憶された社会性情動行動指標をRAM113上に読み出し、ステップS520において、読み出した社会性情動行動指標を所定の基準と照合(例えば社会性情動行動指標の値をハードディスク114に予め記憶していた所定の閾値と比較)する。そして、ステップS530において、社会性情動行動指標が基準を満たす(例えば社会性情動行動指標の値が閾値以上である)場合は(S530のYES)、ステップS540に進んで社会性情動行動は正常である(社会性獲得)との評価を選択し、ステップS530において、社会性情動行動指標が基準を満たさない(例えば社会性情動行動指標の値が閾値未満である)場合は(S530のNO)、ステップS550に進んで社会性情動行動は異常である(社会性発達不全)との評価を選択する。そして、ステップS560に進んで、ステップS530〜S550で得られた社会性情動行動の評価結果をディスプレイ115に表示し、又はネットワークインタフェース117を介してプリンタやコンピュータ等の外部機器に出力する。この際、より詳細な評価の参考とするため、ステップS130で得られた多次元行動パラメータの主成分分析による低次元空間上のデータプロットや近似分散楕円等のデータを社会性情動行動の評価結果とともに出力するようにしてもよい。
【0063】
ステップS560において評価結果の出力が完了したら、社会性情動行動評価処理を終了し、図3のステップS140に戻って、本実施形態の社会性情動行動評価の処理全体を終了する。
【0064】
本発明の社会性情動行動評価システム及び社会性情動行動評価方法の適用可能な被検個体としては、例えば、ヒト、コモンマーモセット、タマリンマーモセット、カニクイザル、マカクザル、テナガザル、ゴリラ、オランウータン、チンパンジー、マウス、ラット、モルモット、スンクス、ウサギ、ミニブタ、ブタ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ等の哺乳類、ニワトリ、ウズラ、ハト、キジ、カラス、カケス、インコ、オウム、キュウカンチョウ、カモ、アヒル、エミュー、シチメンチョウ等の鳥類、ハマチ、カンパチ、ブリ、マグロ、アジ、シマアジ、タイ、ヒラメ、アユ、ウナギ等の魚類、イカ、タコ等の軟体動物等が挙げられるが、社会性情動行動の観測可能な生体であればこれらに限定されるものではない。
【0065】
本発明の社会性情動行動評価システム及び社会性情動行動評価方法は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0066】
例えば、上記実施形態では、社会性情動行動の評価を、得られた社会性情動行動指標を所定の基準と照合することにより正常又は異常の何れかに判別するものであったが、本発明の社会性情動行動評価システムにおける社会性情動行動の評価方法はこれに限定されるものではなく、例えば、得られた社会性情動行動指標を何段階かの等級にランク付けして評価するものであってもよいし、得られた社会性情動行動指標をそのまま評価として出力するものであっても構わない。
【0067】
上記実施形態では、社会性情動行動評価装置と社会性情動行動観測装置は通信ネットワーク等を介して接続されていたが、本発明の社会性情動行動評価システムは、社会性情動行動観測装置としてカムコーダ等の録画機能や録音機能を有するものを用いることにより、社会性情動行動評価装置と社会性情動行動観測装置とをスタンドアロンで構成してもよい。この場合、社会性情動行動観測装置において上記社会性情動行動評価処理の手順のうち社会性情動行動観測処理の手順が実行され、社会性情動行動観測データが社会性情動行動観測装置内のメモリやハードディスク等の記憶手段に記録され、又は磁気テープ、メモリカード、光ディスク等の記録媒体に記録された後、記憶手段に記録された社会性情動行動観測データが社会性情動行動評価装置に転送され、又は記録媒体に記録された社会性情動行動観測データが社会性情動行動評価装置内に読み込まれて、社会性情動行動評価装置において残りの手順が実行される。
【0068】
また、上記実施形態では、上述した社会性情動行動評価処理の手順を社会性情動行動評価装置が実行するものであったが、本発明の社会性情動行動評価システム及び社会性情動行動評価方法は、上記社会性情動行動評価処理の手順のうち一部又は全部をユーザが行うものであっても構わない。その場合、社会性情動行動評価装置では、ユーザが処理する部分を除く残りの手順が実行される。
【0069】
本発明の社会性情動行動評価システム及び社会性情動行動評価方法では、行動パラメータとして、上述したもの以外にも、脳波、心電図、心拍(鼓動)数、血圧、脈拍数、酸素飽和度、呼吸数、筋電図、体温、生体が放射する熱線以外の近赤外線や超音波、生体に何らかの物理又は化学的摂動を加えたときに生体が放射する電磁波、体液(汗、涙、唾液、鼻水等)分泌量等の生体情報(バイタルサイン)を利用してもよい。この場合、社会性情動行動観測装置としては、脳波計、心電計、心拍計、血圧計、脈拍計、パルスオキシメーター、筋電計、体温計等の生体情報検出装置(バイタルセンサ)を利用することができる。
【0070】
また、本発明の社会性情動行動評価システム及び社会性情動行動評価方法は、被検個体の社会性情動行動の評価以外にも、怒り、威嚇、不快、脅え、緊張、警戒、快、安心、リラックス、喜び、信頼、恭順、不信、嫉妬等の感情全般を評価する感情評価システム及び感情評価方法としても利用することができる。この場合、被検個体の感情を観測する際には、被検個体に対してMIテストに加えて又は替えて、例えばアンケート等を実施しても良い。
【0071】
本発明の社会性情動行動評価システム及び社会性情動行動評価方法は、上記各手順を実行するための専用のハードウエア回路によっても、また、上記各手順を記述したプログラムをCPUが実行することによっても実現することができる。後者により本発明を実現する場合、社会性情動行動評価システムの各装置を動作させる上記プログラムは、フロッピー(登録商標)ディスクやCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体によって提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。この場合、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムは、通常、ROMやハードディスク等に転送され記憶される。また、このプログラムは、たとえば、単独のアプリケーションソフトとして提供されてもよいし、各装置の一機能としてその装置のソフトウエアに組み込まれていてもよい。
【0072】
次に、本発明の社会性情動行動評価システム及び社会性情動行動評価方法を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0073】
ヒヨコを被検個体として、本発明の社会性情動行動評価方法を用いて社会性情動行動の評価を行った。
【0074】
被検個体の作成
【0075】
多様な社会性情動行動を示すモデル被検個体を得るため、図6に示したMIテストと同様の方法により、MIが制御された環境下で被検個体を生後1週間から2週間まで飼育して、社会性相互作用に関する飼育条件が異なる被検個体群を作成した。具体的には、MIの制御因子を、聴覚(A)、視覚(V)、嗅覚(O)、体性感覚(T)及び同種他個体の記録音声(Aart:一方向的刺激でMI不成立)として、A+V+O−T+、A+V+O−T−、A−V−O−T+、A+V−O−T−、Aart+V−O−T−、A−V+O−T−及びA−V−O−T−の7種類の被検個体群を作成した。
【0076】
社会性情動行動の観測
【0077】
図5に示したように、被検個体210を収容したテストケージ140の上方略中央に社会性情動行動観測装置としてのビデオカメラ120aを設置し、MIテストに対する被検個体210の動作及び鳴声を動画像データ及び音声データとして取得し、コンピュータに送信して記録した。MIテストとしては、孤立場面(A−V−O−T−)と視聴覚MI場面(A+V+O−T−)の2つについて実施した。
【0078】
行動パラメータの抽出
【0079】
上記で得られた動画像データから1秒ごとの俯瞰画像データを抽出し、ノイズ除去、二値化、エッジ抽出、パタンマッチング等の画像認識処理を順次行って、図5に示した被検個体210の頭中心211(被検個体の頭部の中心に予め付しておいたマーカ)と嘴212を抽出し、単位時間ごとの頭中心211のテストケージ140中の水平面(図5のXY平面)上の位置及び嘴212の同平面上の方向(同図のθ)を検出した。また、得られた音声データから被検個体の鳴声のスペクトログラムを得て、個体差を表す声紋の特徴を除外して個体差を越えた鳴声を抽出し、鳴声タイプの分類及びその頻度を検出した。これらのデータに基づいて、図11に示す各行動パラメータを抽出した。
【0080】
なお、図12は、本実施例に先立って行った声紋解析によるヒヨコの鳴声タイプの分類試験の結果を表わすグラフであり、ヒヨコ(雄5羽)を被検個体として、1.孤立場面(A−V−O−T−)、2.聴覚MI場面(A+V−O−T−)、3.視聴覚MI場面(A+V+O−T−)の順で未知個体に対するMIテストを行い、記録された被検個体の鳴声のスペクトログラムによる声紋波形の最大最低構造部分(第一音節)の周波数高低差(f2−f1値)およびその頻度プロット(1つのプロットが1回の鳴声を示す)を、プロット同士の重なりを防いで両側に全プロットが並ぶように表示したものである。ここで、検出された鳴声をJ−call(f2−f1値が−2未満)dj−call(f2−f1値が−2以上0未満)及びD−call(f2−f1値が0以上)の鳴声タイプに分類すると、1の孤立場面ではD−callを頻発しdj−callおよびJ−callがほとんど出現しないのに対し、2の聴覚社会性相互作用場面から3の視聴覚社会性相互作用場面へと社会性相互作用に利用できる感覚の種類が増えるに従いdj−call、J−callの頻度が増加していくことから、これらの鳴声タイプは、D−call(不安、不快)、dj−call(中間様)、J−call(安心、快)の順で高社会親和性の意味が増加するものであることがわかる。本実施例では、これらの鳴声タイプの分類を用いて行動パラメータの抽出を行った。
【0081】
社会性情動行動指標の算出
【0082】
上記で得られた17種の行動パラメータの計測値を用いて相関行列による主成分分析を行い、第1−第2主成分空間(2次元情動空間)上に元の行動パラメータの計測値をプロットし、得られた群のデータプロットについて分散共分散行列による主成分分析を行い、群平均を中心とし、第1主成分固有値の1/2乗値を乗じた第1固有ベクトル正負方向の両端を長軸とし、第2主成分固有値の1/2乗値を乗じた第2固有ベクトル正負方向の両端を短軸とする分散楕円で当該プロットの分散を近似した。
【0083】
また、図13は、ヒヨコの1秒ごとの頭中心位置(プロットの位置)、嘴方向(プロットから伸びる棒の方向)、鳴声タイプ(プロットの色)、鳴声頻度(プロットの大きさ)、嘴つつき対象(プロットの内側色)を、位置X、Y軸及び時間軸(秒)の3次元グラフ上にプロットした行動パラメータの7次元グラフである。このような行動パラメータの多次元グラフにおいて類別される、喜び、リラックス、又は不満を強く声に出しながら境界面を直線往復運動する行動タイプのg−linearは、他者間社会性を獲得した正常モデルに顕著に出現する行動タイプであるが、これは隣接刺激群のヒヨコに近づきたいという表現であると考えられ、高い社会親和性を表わし、社会性獲得を示す行動指標である。また、g−linear行動をとる前に必ず見られる行動タイプのaa(g−linearを示さずにaaだけで止めてしまう場合もある)は、g−linearほど高い社会性親和性を示すものではないが、他個体への興味を示す行動として、中間様の社会性獲得の行動指標として定義される。本実施例では、本発明の社会性情動行動の評価方法を検証するために、被検個体をかかる社会性獲得行動指標で併せて評価した。
【0084】
社会性情動行動の評価
【0085】
図14(a)は、社会性獲得行動指標の出現割合による各被検個体群の社会性獲得の評価結果を表わしている。図中の黒帯は、被検個体群中のg−linear(強い他個体への親和性、他個体間との社会性獲得)を示した個体数の割合を示しており、白帯はaa(弱い他個体への親和性、中間様の社会性獲得)を示した個体数の割合を示しており、その他の部分は社会性発達不全(他個体への興味無し、他個体への社会性拒否)の個体数の割合を示している。なお、被検個体群の「to F」は、MIテストに既知の刺激個体群を用いたことを表しており、「to U」は未知の刺激個体群を用いたことを表している。また、各被検個体群のカッコ内の数字は被検個体群の個体数を表している。
【0086】
これらの結果から明らかなとおり、視聴覚MI飼育環境で得られた1〜3の被検個体群は、社会性獲得がなされた正常群であるのに対し、単感覚MI飼育環境で得られた4〜7の被検個体群はいずれも障害様で、降順に障害度が上昇することがわかった。
【0087】
図14(b)は、各被検個体群の17次元の行動パラメータを2次元情動空間上に投影して得られた近似分散楕円を示したものであり、実線はMIテストの孤立場面(A−V−O−T−)の応答データを、破線は視聴覚MI場面(A+V+O−T−)の応答データを、それぞれ示している。また、図14(c)の白三角の折線(実線)は、A+V+O−T−場面における2の被検個体群(A+V+O−T+to U、豊かなMIによる正常群)の楕円との重なり度、黒四角の折線(破線)は、8の被検個体群(A−V−O−T−、社会性発達不全群)の楕円との重なり度をそれぞれ表している。図14(d)は、各行動パラメータの因子負荷量を原点を中心とする放射状ベクトルで表示したものであり、2次元情動空間の意味を表している(図中の数字は図11に示した行動パラメータの番号を示している)。
【0088】
これらの結果から明らかなとおり、ほとんどの被検個体群において、孤立場面(A−V−O−T−)から視聴覚MI場面(A+V+O−T−)への変化に伴って、分散楕円が左下から右上へ分散を広げながら移動することがわかった。また、正常群の楕円との重なり度及び異常群の楕円との重なり度は、被検個体群の社会性獲得と極めて高い相関性を示した。従って、MI場面の変化に伴う分散楕円の面積変化量及び楕円中心の所定の変位方向への変位量、並びに対照群の分散楕円との重なり度は、被検個体の社会性情動行動評価指標として極めて有用であることがわかった。
【実施例2】
【0089】
幼若体のマーモセットを被検個体として、本発明の社会性情動行動評価方法を用いて社会性情動行動の評価を行った。
【0090】
被検個体の作成
【0091】
被検個体として、親に育てられた兄弟姉妹を有する個体(親元保育双子MI+)、親に育てられた一人っ子の個体(親元保育一子MI−)、及び人間に育てられた一人っ子の個体(人工保育一子MI−)のそれぞれ30〜120日齢(人間の乳幼児期に相当)の個体群を用意した。
【0092】
社会性情動行動の観測
【0093】
図15に示すように、被検個体220を収容したテストケージ140の上方略中央及び1つの側方略中央に、それぞれ社会性情動行動観測装置としてのビデオカメラ120a及び120bを設置し、MIテストに対する被検個体220の動作(被検個体220の頭中心221の位置及び目222の方向θを追跡)及び鳴声を動画像データ及び音声データとして取得し、コンピュータに送信して記録した。
【0094】
MIテストは、図16に示すように、被検個体220に対して隣接刺激個体320を用いて、孤立場面(A−V−O−T−)、聴覚MI場面(A+V−O−T−)、視聴覚MI場面(A+V+O−T−)及び視聴覚嗅覚MI場面(A+V+O+T−)の各場面を設定して、2個体間で行った。なお、図16において、テストケージ140cは、嗅覚及び体性感覚MIが遮断され視聴覚MIが遮断されない遮断壁(例えばアクリル樹脂製の透明薄板等)で、テストケージ140dは、体性感覚MIが遮断され嗅覚及び視聴覚MIの何れもが遮断されない遮断壁(例えばアクリル樹脂製の透明薄板に多数の穿孔を設けたもの等)で、それぞれ囲繞されたケージであり、視覚MI遮断壁150は、視覚MIのみを遮断し聴覚MIは遮断しない壁(例えばアクリル樹脂製の不透明薄板等)である。
【0095】
行動パラメータの抽出
【0096】
上記で得られた動画像データから1秒ごとの画像データを抽出し、ノイズ除去、二値化、エッジ抽出、パタンマッチング等の画像認識処理を順次行って、図15に示した被検個体220の頭中心221(被検個体の頭部の中心に予め付しておいたマーカ)と目222を抽出し、単位時間ごとの頭中心221のテストケージ140中の水平面(図6のXY平面)上の位置及び嘴222の同平面上の方向(同図のθ)を検出した。また、得られた音声データから被検個体の鳴声のスペクトログラムを得て、個体差を表す声紋の特徴を除外して個体差を越えた鳴声を抽出し、鳴声タイプの分類及びその頻度を検出した。これらのデータに基づいて、図17に示す各行動パラメータを抽出した。
【0097】
なお、図18は、本実施例に先立って行った声紋解析によるマーモセットの鳴声タイプの分類試験の結果を表わすグラフであり、豊かな社会性相互作用を行いながら飼育した被検個体を用い、図16に示す各場面について未知個体又は既知個体に対するMIテストを行い、記録された被検個体の鳴声のスペクトログラムから個体を超えて共通な声紋のパタンとして11種の鳴声タイプ(ph、tp、tr、tw、sh、ts、U、ba、eg、he、hi)を識別し、単位時間(20秒)に応答した各鳴声タイプの頻度を縦軸、日齢を横軸として、頻度パタンを調べたものである。その結果、Aタイプの鳴声は、若日齢の方が高頻度に出現し発達と共に消えることから、人間の赤ちゃんが母親等に助けを呼ぶ声に近いこと、Bタイプは、主に既知個体同士において、MIテストにおけるMI+因子が増えるほど(図16の場面(a)から(c)に進むほど)頻度があがることから、高社会親和性の鳴声であること、及びCタイプは、主に未知個体同士が声だけの社会性相互作用を行ったとき等で聞かれること、人間による捕獲時に高頻度に出現すること等から、威嚇や不安情動の高い鳴声であることが想像された。また、CタイプとBタイプの違いは、両者が全個体を通じて互いにほとんど重ならない傾向があり、Bタイプは互いに社会性記憶を有する個体同士で見られる一方、Cタイプは主に未知個体に対して発せられ、また、捕獲等動物にとって望ましくないと考えられる行為を行った人間に向けて頻繁に見せる威嚇行動がCタイプの発声中に同時に見られる傾向があることから、BおよびCタイプの鳴声の意味を、それぞれ安心及び緊張で対応づけた。本実施例では、これらの鳴声タイプの分類を用いて行動パラメータの抽出を行った。
【0098】
社会性情動行動指標の算出
【0099】
上記で得られた12種の行動パラメータの計測値を用いて、実施例1と同様にして近似分散楕円を求めた。
【0100】
社会性情動行動の評価
【0101】
図19(b)は、各被検個体群の12次元の行動パラメータを2次元情動空間上に投影して得られた近似分散楕円を示したものであり、黒色実線はMIテストの聴覚MI場面(A+V−O−T−)の応答データを、破線は視聴覚MI場面(A+V+O−T−)の応答データを、灰色実線は視聴覚嗅覚MI場面(A+V+O+T−)の応答データを、それぞれ示している。なお、被検個体群の「to F」は、MIテストに既知の刺激個体(同居の兄弟姉妹)を用いたことを表しており、「to U」は未知の刺激個体を用いたことを表している。また、各被検個体群のカッコ内の数字は被検個体群の個体数を表している。更に、図19(a)は、各場面における豊かなMIによる正常群(1の被検個体群、MI+to U)の楕円との重なり度をそれぞれ表している。図14(c)は、各行動パラメータの因子負荷量を原点を中心とする放射状ベクトルで表示したものであり、2次元情動空間の意味を表している(図中の数字は図17に示した行動パラメータの番号を示している)。
【0102】
これらの結果から明らかなとおり、全ての被検個体群において、MIテストにおけるMI+因子が増えるに伴って、分散楕円が動作に関係する行動パラメータの因子負荷量方向に分散楕円が移行し、異常群ほどその移動量が大きく正常群ほど小さいことがわかった。また、正常群の楕円との重なり度は、MIテストにおけるMI+因子が多くなるほど高い相関性を示した。従って、MI場面の変化に伴う分散楕円の楕円中心の所定の変位方向への変位量、並びに対照群の分散楕円との重なり度は、被検個体の社会性情動行動評価指標として極めて有用であることがわかった。
【実施例3】
【0103】
雌雄成体のマーモセットを被検個体として、本発明の社会性情動行動評価方法を用いて社会性情動行動の評価を行った。
【0104】
被検個体の作成
【0105】
被検個体として、それぞれ飼育環境の異なる2歳前後の雌成体の被検個体群(6頭)を用意した。
【0106】
社会性情動行動の観測
【0107】
図15と同様の社会性情動行動観測システムを用い、隣接刺激個体として2歳前後の雄成体を用いて、図16(d)の視聴覚嗅覚MI場面(A+V+O+T−)と同様の条件で、被検個体(雌)1頭に対し、隣接刺激個体(雄)を1頭2分間ずつ連続して6頭を会合させるMIテストを行った。
【0108】
行動パラメータの抽出
【0109】
上記MIテストで得られた動画像データ及び音声データから、実施例2と同様にして、図20に示す各行動パラメータを抽出した。
【0110】
社会性情動行動指標の算出及び評価
【0111】
上記で得られた25種の行動パラメータの計測値を用いて、相対行列による主成分分析を行い、得られた第1−第2主成分空間上に各行動パラメータを投影し、行動パラメータ毎の因子負荷量ベクトルについて、固有値の1/2乗値が大きいものに対し8つの角度ごとに振り分けたところ(図21)、主に動作に関する因子が第1主成分正方向に、不動が負方向に、不快な鳴声や行動指標の頻度が第2主成分の片方向に、快適や親和性を表現する鳴声や行動指標の頻度が第二主成分のもう一方の方向にそれぞれ分別された。図22の各行は雌の識別番号、各列はMIテストの回であり、図21における被検個体(雌)の各回の主成分得点プロット位置の色を各行列の左上直角三角、対する隣接刺激個体(雄)の主成分得点プロット領域の色を右下直角三角として表したものである。この結果より、例えば、最終回の6回目で、快や親和性を表現する色が多く表現されていることから、全体の各個体の感性状態が、テスト時間を経ることでリラックスしたことがわかる。
【0112】
一方、図23に示すように、被検個体(雌)の各回のプロット座標の中心角を求め、i+1回目からi回目の中心角を引いた主成分得点プロットの移動角ωを求めた。また、MIテストの直前及び直後に被検個体(雌)の静脈採血を行い、分離した血漿中のプロゲステロン及びコルチゾール量を蛍光抗体標識法で定量した。図24は、横軸を移動角の平均、縦軸をホルモン血中濃度とするグラフを、引用するデータの組み合わせごとに示したものである。各プロットを1次回帰してR2乗値(小数点第二四捨五入)を比較すると、プロゲステロンはテスト後の血中濃度と後半の移動角平均、コルチゾールはテスト後の血中濃度と全体の移動角平均において、強い相関性が認められ、解析空間の中心角の変化量は感性に影響を及ぼす各ホルモン量によって数値的に表現可能であることがわかった。
【実施例4】
【0113】
本発明の評価方法を用いて被検者の感情評価を行った。
【0114】
年齢26〜61の男女4人を被検者とし、被験者に社会性および非社会性に関する感情の動きを誘導するビデオを見せた後、被検者から各種生体情報を4秒毎に30分計測した。図25(a)は、得られた生体情報を、相関行列による主成分分析の第1、第2主成分空間にプロットしたグラフであり、(b)は各生体信号の因子負荷量を原点を中心とする放射状ベクトルで表示したものである。被検者から取得した生体情報は、脳波(国際10−20法19ヶ所のパワースペクトル値:図25(b)の1〜19)、表情動態(図25(b)の20及び21)、体表温度(図25(b)の22及び23)及び心拍(図25(b)の24及び25)である。試験期間30分のデータのうち、(1)リラックスした快適時(黒丸)、(2)愉快な笑い表現時(白丸)、(3)不快時(×)、のいずれかの感情について被験者の主訴および計測者による表情ビデオ確認によって感情表現が認められた時間を含む代表的な各1分間の15プロットについて、(1)〜(3)群データごとに分散共分散行列による主成分分析で得られた第1主成分固有値を1/2乗倍にしたベクトルを群平均から正負両方向に伸ばし、両ベクトル終点をつないだ線を長軸とし、第2主成分固有値の1/2乗倍したベクトルを、正負両方向に伸ばした両終点を短軸として近似分散楕円を得た。楕円の空間位置と広がりにより(1)〜(3)の特徴パタンを識別した結果、同被験者の同テスト中において、同様の感情状態を確認できた時間で同様の再現的な特徴パタンが表現されることがわかった。(1)は分散が小さく、他の群と重なっていた。(2)と(3)は特有空間が主に第2主成分で互いに反対方向に広がる特徴が有った。感情状態群ごとの特徴を示す分散楕円の特異空間領域の表現例は、4人の被験者で共通に認められた。被検者は、異種生物に対する社会性刺激ビデオにより異なる脳部位の脳波の信号の大きさが変化した結果が得られたことから、同異種社会性に関する応答出力から快/不快が生理指標動態に大きく影響を与えたと考えられる。この結果より、本発明の評価方法は、社会性情動行動の評価以外にも、感情全般を評価可能であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0115】
上述したように、本発明の社会性情動行動評価システム及び社会性情動行動評価方法は、判別が容易でかつコンピュータによる自動処理に適しており、客観性、適応性の高い社会性情動行動の評価が可能であるので、製薬業における実験動物による前臨床創薬スクリーニング、ペット産業における動物のストレス診断、畜産業におけるストレス診断とウイルス感染への予防措置レベルの決定支援、医療における発達診断支援技術、精神疾患の診断支援、及び薬物投与の効果判定、教育産業における教育効果(集中度、興味など)の判断支援、事業所における産業医療支援、環境・住宅・家電産業における快適空間の設計支援技術、IT産業における遠隔見守り、webコンテンツへの顧客の関心判断システム等に応用した場合極めて有用である。
【符号の説明】
【0116】
100 社会性情動行動評価システム
110 社会性情動行動評価装置
111 CPU
112 ROM
113 RAM
114 ハードディスク
115 ディスプレイ
116 入力装置
117 ネットワークインタフェース
118 バス
120 社会性情動行動観測装置
130 通信ネットワーク
140 テストゲージ
150 視覚MI遮断壁
210、220 被検個体
211、221 頭中心
212、222 嘴
310、320 隣接刺激個体(群)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検個体から取得された社会性情動行動観測データから多次元の行動パラメータを抽出する行動パラメータ抽出手段と、
前記行動パラメータ抽出手段により抽出した行動パラメータから社会性情動行動指標を算出する社会性情動行動指標算出手段と、を備え、
前記社会性情動行動指標算出手段は、前記行動パラメータを合成して得られる低次元の合成成分空間に前記行動パラメータを投影して得られる前記行動パラメータの前記合成成分空間上の情報に基づいて前記社会性情動行動指標を算出することを特徴とする、
社会性情動行動評価システム。
【請求項2】
前記情報は、前記行動パラメータの前記合成成分空間上の投影点の分散を楕円に近似して得られる分散楕円の情報である、
請求項1に記載の社会性情動行動評価システム。
【請求項3】
前記情報は、前記行動パラメータの前記合成成分空間上の投影点の中心角に関する情報である、
請求項1に記載の社会性情動行動評価システム。
【請求項4】
前記合成成分空間は、前記行動パラメータの主成分分析による主成分空間である、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の社会性情動行動評価システム。
【請求項5】
前記社会性情動行動指標は、分散楕円の面積変化量、楕円中心の所定方向への変位量、分散楕円の重なり度、楕円長軸又は短軸の向き、楕円長軸と短軸の長さの比又は中心角変化量である、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の社会性情動行動評価システム。
【請求項6】
前記社会性情動行動観測データは、社会性相互作用が制御された場面に置かれた被検個体の応答行動を観測して得られたものである、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の社会性情動行動評価システム。
【請求項7】
前記社会性情動行動指標算出手段により算出された社会性情動行動指標に基づいて被検個体の社会性情動行動を評価する社会性情動行動評価手段を更に有する、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の社会性情動行動評価システム。
【請求項8】
被検個体の社会性情動行動を観測して社会性情動行動観測データを取得する社会性情動行動観測データ取得手段を更に有する、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の社会性情動行動評価システム。
【請求項9】
前記社会性情動行動観測データ取得手段は、社会性相互作用が制御された場面に置かれた被検個体の応答行動を観測することにより前記社会性情動行動観測データを取得するものである、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の社会性情動行動評価システム。
【請求項10】
被検個体から取得された社会性情動行動観測データから多次元の行動パラメータを抽出する行動パラメータ抽出ステップと、
前記行動パラメータ抽出ステップにより抽出した行動パラメータから社会性情動行動指標を算出する社会性情動行動指標算出ステップと、を有し、
前記社会性情動行動指標算出ステップは、前記行動パラメータを合成して得られる低次元の合成成分空間に前記行動パラメータを投影して得られる前記行動パラメータの前記合成成分空間上の情報に基づいて前記社会性情動行動指標を算出することを特徴とする、
社会性情動行動評価方法。
【請求項11】
前記情報は、前記行動パラメータの前記合成成分空間上の投影点の分散を楕円に近似して得られる分散楕円の情報である、
請求項10に記載の社会性情動行動評価方法。
【請求項12】
前記情報は、前記行動パラメータの前記合成成分空間上の投影点の中心角に関する情報である、
請求項10に記載の社会性情動行動評価方法。
【請求項13】
前記合成成分空間は、前記行動パラメータの主成分分析による主成分空間である、
請求項10〜12のいずれか1項に記載の社会性情動行動評価方法。
【請求項14】
前記社会性情動行動指標は、分散楕円の面積変化量、楕円中心の所定方向への変位量、分散楕円の重なり度、楕円長軸又は短軸の向き、楕円長軸と短軸の長さの比又は中心角変化量である、
請求項10〜13のいずれか1項に記載の社会性情動行動評価方法。
【請求項15】
前記社会性情動行動観測データは、社会性相互作用が制御された場面に置かれた被検個体の応答行動を観測して得られたものである、
請求項10〜14のいずれか1項に記載の社会性情動行動評価方法。
【請求項16】
被検個体から取得された社会性情動行動観測データから多次元の行動パラメータを抽出する行動パラメータ抽出ステップと、
前記行動パラメータ抽出ステップにより抽出した行動パラメータから社会性情動行動指標を算出する社会性情動行動指標算出ステップと、をコンピュータに実行させることを特徴とする社会性情動行動評価プログラムであって、
前記社会性情動行動指標算出ステップは、前記行動パラメータを合成して得られる低次元の合成成分空間に前記行動パラメータを投影して得られる前記行動パラメータの前記合成成分空間上の情報に基づいて前記社会性情動行動指標を算出することを特徴とする、社会性情動行動評価プログラム。
【請求項17】
前記情報は、前記行動パラメータの前記合成成分空間上の投影点の分散を楕円に近似して得られる分散楕円の情報である、
請求項16に記載の社会性情動行動評価プログラム。
【請求項18】
前記情報は、前記行動パラメータの前記合成成分空間上の投影点の中心角に関する情報である、
請求項16に記載の社会性情動行動評価プログラム。
【請求項19】
前記合成成分空間は、前記行動パラメータの主成分分析による主成分空間である、
請求項16〜18のいずれか1項に記載の社会性情動行動評価プログラム。
【請求項20】
前記社会性情動行動指標は、分散楕円の面積変化量、楕円中心の所定方向への変位量、分散楕円の重なり度、楕円長軸又は短軸の向き、楕円長軸と短軸の長さの比又は中心角変化量である、
請求項16〜19のいずれか1項に記載の社会性情動行動評価プログラム。
【請求項21】
前記社会性情動行動観測データは、社会性相互作用が制御された場面に置かれた被検個体の応答行動を観測して得られたものである、
請求項16〜20のいずれか1項に記載の社会性情動行動評価プログラム。
【請求項22】
請求項16〜21のいずれか1項に記載の社会性情動行動評価プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項23】
被検個体から取得された感情観測データから多次元の感情パラメータを抽出する感情パラメータ抽出手段と、
前記感情パラメータ抽出手段により抽出した感情パラメータから感情指標を算出する感情指標算出手段と、を備え、
前記感情指標算出手段は、前記感情パラメータを合成して得られる低次元の合成成分空間に前記感情パラメータを投影して得られる前記感情パラメータの前記合成成分空間上の情報に基づいて前記感情指標を算出することを特徴とする、感情評価システム。
【請求項24】
被検個体から取得された感情観測データから多次元の感情パラメータを抽出する感情パラメータ抽出ステップと、
前記感情パラメータ抽出ステップにより抽出した感情パラメータから感情指標を算出する感情指標算出ステップと、を有し、
前記感情指標算出ステップは、前記感情パラメータを合成して得られる低次元の合成成分空間に前記感情パラメータを投影して得られる前記感情パラメータの前記合成成分空間上の情報に基づいて前記感情指標を算出することを特徴とする、感情評価方法。
【請求項25】
被検個体から取得された感情観測データから多次元の感情パラメータを抽出する感情パラメータ抽出ステップと、
前記感情パラメータ抽出ステップにより抽出した感情パラメータから感情指標を算出する感情指標算出ステップと、をコンピュータに実行させることを特徴とする感情評価プログラムであって、
前記感情指標算出ステップは、前記感情パラメータを合成して得られる低次元の合成成分空間に前記感情パラメータを投影して得られる前記感情パラメータの前記合成成分空間上の情報に基づいて前記感情指標を算出することを特徴とする、感情評価プログラム。
【請求項26】
請求項25に記載の感情評価プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2010−264087(P2010−264087A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118284(P2009−118284)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【Fターム(参考)】