説明

神経再生用医療デバイス

【課題】神経と接合するときに縫合作業を必要とせず、高度な熟練性を要することなく神経との接合を容易かつ迅速に確立し得る神経再生用医療デバイスを提供する。
【解決手段】神経再生用医療デバイス105は、中空のチューブ体110と、チューブ体の両端部のそれぞれに神経30を接続する接続部120とを有する。接続部は、神経の外周に接触自在な接触部材130と、接触部材を神経の径方向内方に向けて押付ける押付力を接触部材に付与する押付け部材140と、接触部材に設けられた第1の係合部231(リング溝222)と、押付け部材に設けられ第1の係合部に係合自在な第2の係合部232(ストッパリング223の外周リング部224)と、接触部材または押付け部材に設けられチューブ体に係合自在な第3の係合部233とを含む。そして、第1の係合部と第2の係合部とを係合することによって、押付け部材が押付力を接触部材に付与するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経再生用医療デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
末梢神経における外傷性あるいは医原性の損傷に対して、神経再生チューブを用いた末梢神経の再生治療が行われている(特許文献1参照)。神経と神経再生チューブとは、複数箇所において縫合糸によって縫合して接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2008/001952号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
神経と神経再生チューブとを縫合する手技において、術者は、顕微鏡を用いて観察しながら、神経上膜において神経再生チューブと縫合しなければならない。縫合時に、神経上膜よりも深層の神経束を坐滅すると、疼痛過敏などの障害が生じてしまう。神経と神経再生チューブとを縫合する手技には熟練が必要であり、手術時間も比較的長い時間を要している。
【0005】
本発明の目的は、神経と接合するときに縫合作業を必要とせず、高度な熟練性を要することなく神経との接合を容易かつ迅速に確立し得る神経再生用医療デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための神経再生用医療デバイスは、中空のチューブ体と、前記チューブ体の両端部のそれぞれに神経を接続する接続部と、を有している。前記接続部は、前記神経の外周に接触自在な接触部材と、前記接触部材を前記神経の径方向内方に向けて押付ける押付力を前記接触部材に付与する押付け部材と、前記接触部材に設けられた第1の係合部と、前記押付け部材に設けられ前記第1の係合部に係合自在な第2の係合部と、前記接触部材または前記押付け部材に設けられ前記チューブ体に係合自在な第3の係合部と、を含んでいる。そして、前記接触部材の前記第1の係合部と前記押付け部材の前記第2の係合部とを係合することによって、前記押付け部材が前記押付力を前記接触部材に付与するようにしている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の神経再生用医療デバイスによれば、接触部材の第1の係合部と押付け部材の第2の係合部とを係合することによって、押付け部材が、接触部材を神経の径方向内方に向けて押付ける押付力を接触部材に付与して、チューブ体の両端部のそれぞれに神経を接続するので、神経と接合するときに縫合作業を必要とせず、高度な熟練性を要することなく神経との接合を容易かつ迅速に確立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】神経再生用医療デバイスを示す正面図である。
【図2】図2(A)は、神経再生用医療デバイスの要部を示す断面図、図2(B)は、図2(A)に二点鎖線によって囲まれる2B部を拡大して示す断面図である。
【図3】チューブ体、接触部材、および押付け部材を示す斜視図である。
【図4】チューブ体、接触部材、および押付け部材を示す断面図である。
【図5】図5(A)(B)は、神経の外周に接触する部位を首振り自在に構成した接触部材の説明に使用する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の神経再生用医療デバイスを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、図面において、理解を容易にするために誇張して図示される部分を含んでおり、寸法比率が実際の比率と異なる場合がある。なお、説明の都合上、神経やチューブ体が伸びる方向を、それぞれ「神経の長手方向」「チューブ体の長手方向」という。
【0010】
図1〜図4を参照して、神経再生用医療デバイス105は、概説すれば、中空のチューブ体110と、チューブ体110の両端部のそれぞれに神経30を接続する接続部120と、を有している。接続部120は、神経30の外周に接触自在な接触部材130と、接触部材130を神経30の径方向内方に向けて押付ける押付力を接触部材130に付与する押付け部材140と、接触部材130に設けられた第1の係合部231と、押付け部材140に設けられ第1の係合部231に係合自在な第2の係合部232と、接触部材130または押付け部材140に設けられチューブ体110に係合自在な第3の係合部233と、を含んでいる。そして、接触部材130の第1の係合部231と押付け部材140の第2の係合部232とを係合することによって、押付け部材140は、接触部材130に押付力を付与している。接触部材130は、神経30の長手方向に伸びている。第1の係合部231は、接触部材130の外周面に形成されたリング状係合凹部222から構成され、第2の係合部232は、リング状係合凹部222に嵌り込むリング状係合凸部224から構成されている。以下、詳述する。
【0011】
チューブ体110は、神経30の端部を挿入する空間部111を備えている。周囲にある組織から区画して、神経30が再生する空間を確保することができる。チューブ体110の断面形状は、特に限定されず、円形形状のほか、楕円形や多角形など、再生すべき神経組織に応じた形状を種々選択することができる。
【0012】
チューブ体110は、生分解性材料または生体吸収性材料から形成することが好ましい。生分解性材料、および生体吸収性材料は、体液の浸透を許容する多孔質物質であり、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、またはそれらの共重合体を挙げることができる。
【0013】
チューブ体110は、生分解性材料または生体吸収性材料から形成することが好ましい。生分解性材料、および生体吸収性材料は、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、またはそれらの共重合体、あるいは、ポリアミノ酸およびそれらの共重合体を挙げることができる。
【0014】
チューブ体110は、該チューブ内外の物質交換を許容する観点から、長手方向の外表面側から内表面側に貫通する微細孔が形成されている多孔体であることが好ましいが、再生すべき神経組織の長さが比較的短い場合、或いは比較的速い神経組織の伸長が期待できる場合等においてはその限りではなく、必ずしも微細孔が形成されていなくてもよい。
【0015】
チューブ体110は、内周面の少なくとも一部に軸方向に伸びて形成され神経30の伸長をガイドするガイド溝112を有していることが好ましい(図2、図3、図4を参照)。再生する神経線維および関連する各種細胞に伸長する方向性を与えて、中枢側神経端と末梢側神経端とが接合する時間を短縮することができるからである。
【0016】
チューブ体110は、内部空間に収納され神経30の伸長を促進する材料を含む充填材150を有していることが好ましい(図1、図2を参照)。チューブ体110の内部において再生する神経30の細胞に対して適切な密度と足場を与え、神経軸索の接着や伸長を促進し、神経軸索の再生を促すことができるからである。充填材150として、例えば、細胞接着因子/分子、神経細胞増殖因子、線維芽細胞成長因子、神経作用因子、免疫活性因子、あるいは細胞外マトリックス(Extracellular Matrix)などを挙げることができる。
【0017】
本実施形態にあっては、チューブ体110は、その外周面に、外周面から突出するように係合リング部203(第4の係合部234に相当する)が形成されている。チューブ体110の端部に、神経30を保持したキャップ220が接続される。
【0018】
キャップ220は、接触部材130としての複数(図示例では2個。図3を参照)の弾性スリーブ部221と、弾性スリーブ部221からチューブ体110の長手方向に伸びる複数(図示例では4個。図3を参照)の弾性アーム部225と、を有している。弾性スリーブ部221には、神経30を挿通するための中心孔221aが形成されている。弾性スリーブ部221同士の間にはスリット226が形成されている。このスリット226によって、弾性スリーブ部221のそれぞれは、弾性的に変位することが可能となっている。同様に、弾性アーム部225同士の間にはスリット227が形成されている。このスリット227によって、弾性アーム部225のそれぞれは、弾性的に変位することが可能となっている。
【0019】
弾性スリーブ部221の外周面に、複数個(図示例では3個)のリング溝222(第1の係合部231に相当する)が形成されている。複数個のリング溝222は、チューブ体110の長手方向に沿うように配置されている。弾性スリーブ部221の外周面は、チューブ体110の長手方向に対して傾斜して形成されている。それぞれのリング溝222の底部と弾性スリーブ部221の内周面との間の寸法が異なっている。すなわち、図2(A)を参照して、3個のリング溝22は、図中左側ほど、リング溝222の底部と弾性スリーブ部221の内周面との間の寸法が大きい(D3>D2>D1)。したがって、それぞれのリング溝222の底部と弾性スリーブ部221の内周面との間の寸法が同じになるまで弾性スリーブ部221を変形させたとすると、図中左側ほど、スリーブ部221が径方向内方に向けて変位する量が増え、その結果、神経30を径方向内方に向けて押付ける力が増加する。
【0020】
弾性アーム部225の先端側(チューブ体110に向かい合う側)の内面に、チューブ体110の係合リング部203に係合自在な係合爪204(第3の係合部233に相当する)が形成されている。
【0021】
押付け部材140は、リング形状のストッパリング223から構成されている。ストッパリング223の外周リング部224(第2の係合部232に相当する)が、弾性スリーブ部221のリング溝222の何れかに嵌め込まれる。
【0022】
弾性スリーブ部221は、リング溝222にストッパリング223の外周リング部224が嵌め込まれることによって、径方向内方に向けて変位する。これによって、神経30の径方向内方に向けて押付ける力が弾性スリーブ部221に付与される。
【0023】
第1の係合部231であるリング溝222と、第2の係合部232であるストッパリング223の外周リング部224との組み合わせによって、押付力を増減調整自在である。すなわち、ストッパリング223の外周リング部224を嵌め込む位置を図2(A)に示される中央のリング溝222から左側のリング溝222に変更すると、リング溝222の底部と弾性スリーブ部221の内周面との間の寸法が大きくなることから、弾性スリーブ部221が径方向内方に向けて変位する量が増え、神経30を径方向内方に向けて押付ける力を増加させることができる。一方、ストッパリング223を嵌め込む位置を中央のリング溝222から右側のリング溝222に変更すると、リング溝222の底部と弾性スリーブ部221の内周面との間の寸法が小さくなることから、弾性スリーブ部221が径方向内方に向けて変位する量が減り、神経30を径方向内方に向けて押付ける力を減少させることができる。
【0024】
リング溝222とストッパリング223の外周リング部224とは、弾性アーム部225の係合爪204をチューブ体110の係合リング部203に係合する前に係合自在である。神経30へのキャップ220の取り付けと、チューブ体110へのキャップ220の接続とを独立して行うことができ、それぞれの作業を行い易くなる。
【0025】
チューブ体110は、長手方向に間隔を隔てて配置された複数個(図示例では3個)の係合リング部203を有し、複数個の係合リング部203の中から係合爪204を係合させる一の係合リング部203を選択可能であることが好ましい。図示例では、弾性アーム部225の長さ寸法よりも、隣り合う係合リング部203同士の間の離間寸法の方が長い。このため、チューブ体110を切断自在とし、係合爪204を係合させる一の係合リング部203を選択可能としてある。図1に符号cによって示される切断線に沿ってチューブ体110を切断する。係合リング部203を複数設けることで、チューブ体110の長さを調節可能とすることができる。こうすることで、神経30のそれぞれの断端間の距離に問わず、この神経再生用医療デバイス105を適用して、チューブ体110の長さを、神経30同士の間のギャップ寸法に合致した長さに簡単に調整できる。
【0026】
なお、弾性アーム部225の長さ寸法の範囲内で、複数個の係合リング部203を配置することによって、チューブ体110を切断することなく、チューブ体110の距離を調節可能とすることができる。
【0027】
キャップ220やストッパリング223は、チューブ体110と同様に、生分解性材料または生体吸収性材料から形成することが好ましい。
【0028】
図2(B)を参照して、接触部材130は、神経30の外周に向かい合う面に形成された微小突起135を備えていることが好ましい。接触部材130が神経30の外周に対して滑ることを防ぎ、神経再生用医療デバイス105と神経30との接合状態を安定して維持できるからである。本実施形態では、微小突起135は、接触部材130としての弾性スリーブ部221の内周面228に形成されている。
【0029】
この場合において、微小突起135の突出寸法は、神経30の神経上膜31の厚さを超えない寸法であることが好ましい。神経上膜31の厚みは、部位や神経の太さによって異なるが、概ね20μm〜200μmの厚みの範囲である。故に、微小突起135の突出寸法は、神経上膜31の厚みである20μm〜200μmの範囲を超えない範囲で、部位や神経の太さにより最適なものが選択され得るべきである。そうすることで、神経束32の坐滅を防止することができるからである。
【0030】
また、微小突起135の形状としては、神経30が抜け難い形状であれば特に限定されないが、長軸方向の断面構造が非対称かつ神経30がより抜け難い形状であることが好ましい。
【0031】
概念的に示す図5(A)(B)を参照して、接触部材130は、押付け部材140からの押付け力が伝達される本体部130aと、神経30の外周に接触する接触部130bと、接触部130bを本体部130aに対して首振り自在に保持する保持機構160と、を備えていることが好ましい。接触部材130の本体部130aが神経30の長手方向に対して交差する方向に傾いた場合であっても(図5(B)を参照)、保持機構160によって接触部130bを首振りさせて、接触部130bが神経30を径方向内方に向けて押付ける力を、神経30の長手方向に沿って均等に分散させ、局所的に集中することを防止できるからでる。図示する実施形態にあっては、接触部材130としての弾性スリーブ部221を、押付け部材140としてのストッパリング223からの押付け力が伝達される本体部130aと、神経30の外周に接触する接触部130bと、接触部130bを本体部130aに対して首振り自在に保持する保持機構160とから構成すればよい。
【0032】
保持機構160は、チューブ体110と同様に、生分解性材料または生体吸収性材料から形成することが好ましい。
【0033】
神経30、チューブ体110や弾性スリーブ部221の寸法は特に限定されないが、一例を挙げれば、
神経30 :外径 0.5〜8mm
チューブ体110:外径 0.62〜15mm
:内径 0.6〜12mm
:長さ 10〜100mm
弾性スリーブ部221:中心孔221aの径 0.6〜10mm
:長さ 3〜15mm
である。
【0034】
神経再生用医療デバイス105の使用例を説明する。
【0035】
まず、中枢側の神経端を図4中左側に示されるキャップ220における弾性スリーブ部221の中心孔221aに挿通し、末梢側の神経端を図中右側に示されるキャップ220における弾性スリーブ部221の中心孔221aに挿通する。
【0036】
ストッパリング223を、弾性アーム部225の側からキャップ220に挿入し、弾性スリーブ部221の外周面にスライド移動させる。リング溝222にストッパリング223の外周リング部224が嵌まり込み、弾性スリーブ部221が径方向内方に向けて変位する。これによって、神経30を径方向内方に向けて押付ける押付力を、弾性スリーブ部221に付与する(図2(A)を参照)。
【0037】
押付力を増減調整するときには、リング溝222とストッパリング223の外周リング部224との組み合わせを変更する。すなわち、押付力を増加させたいときには、外周リング部224を嵌め込む位置を図2(A)に示される中央のリング溝222から左側のリング溝222に変更する。リング溝222の底部と弾性スリーブ部221の内周面との間の寸法を大きくし、弾性スリーブ部221が径方向内方に向けて変位する量を増やす。逆に、押付力を減少させたいときには、外周リング部224を嵌め込む位置を中央のリング溝222から右側のリング溝222に変更する。リング溝222の底部と弾性スリーブ部221の内周面との間の寸法を小さくし、弾性スリーブ部221が径方向内方に向けて変位する量を減らせばよい。
【0038】
リング溝222とストッパリング223の外周リング部224とを係合させ、キャップ220を神経30に取り付けた後、キャップ220をチューブ体110の端部に差し込む。神経30のそれぞれの断端間の距離が短いときには、チューブ体110を切断することによって、係合爪204を係合させる一の係合リング部203を選択しておく。弾性アームの係合爪204をチューブ体110の係合リング部203に係合させ、キャップ220をチューブ体110に接続する。
【0039】
キャップ220のチューブ体110への接続が終わると、神経再生用医療デバイス105と神経30との接合が完了する。弾性舌部213の微小突起135が神経30の神経上膜31に食い込み、弾性スリーブ部221が神経30の外周に対して滑ることを防いでいる。これによって神経再生用医療デバイス105と神経30との接合状態を安定して維持できる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の神経再生用医療デバイス105によれば、チューブ体110の両端部のそれぞれに神経30を接続する接続部120は、神経30の外周に接触自在な接触部材130と、接触部材130を神経30の径方向内方に向けて押付ける押付力を接触部材130に付与する押付け部材140と、接触部材130に設けられた第1の係合部231(リング溝222)と、押付け部材140に設けられ第1の係合部231に係合自在な第2の係合部232(ストッパリング223の外周リング部224)と、接触部材130に設けられチューブ体110に係合自在な第3の係合部233(係合爪204)と、を含み、接触部材130の第1の係合部231と押付け部材140の第2の係合部232とを係合することによって、押付け部材140が押付力を接触部材130に付与するようにしている。このため、神経再生用医療デバイス105を神経30と接合するときに縫合作業を必要とせず、高度な熟練性を要することなく神経30との接合を容易かつ迅速に確立することができる。
【0041】
接触部材130は、押付け部材140からの押付け力が伝達される本体部130aと、神経30の外周に接触する接触部130bと、接触部130bを本体部130aに対して首振り自在に保持する保持機構160と、を備えているので、接触部材130が神経30を径方向内方に向けて押付ける力を、神経30の長手方向に沿って均等に分散させ、局所的に集中することを防止できる。
【0042】
接触部材130は、神経30の外周に向かい合う面に形成された微小突起135を備えているので、接触部材130が神経30の外周に対して滑ることを防ぎ、神経再生用医療デバイス105と神経30との接合状態を安定して維持できる。また、微小突起135の突出寸法は、神経30の神経上膜31の厚さを超えない寸法であるので、神経束32の坐滅を防止できる。
【0043】
第1の係合部231と第2の係合部232との組み合わせによって、押付力を増減調整自在である。このため、簡単な構造で、神経30との接合を容易かつ迅速に確立することができ、しかも、第1の係合部231と第2の係合部232との組み合わせを変えるだけで、神経30を径方向内方に向けて押付ける押付力を調整することができる。
【0044】
第1の係合部231と第2の係合部232とは、第3の係合部233をチューブ体に係合する前に係合自在であるので、接触部材130としての弾性スリーブ部221を神経30の径方向内方に向けて押付けた状態に維持でき、神経30へのキャップ220の取り付けと、チューブ体110へのキャップ220の接続とを独立して行うことができ、それぞれの作業を行い易くできる。
【0045】
第1の係合部231は接触部材130としての弾性スリーブ部221の外周面に形成されたリング状係合凹部222から構成され、第2の係合部232はリング状係合凹部222に嵌り込むリング状係合凸部224から構成されているので、第1の係合部231と第2の係合部232との係合を確実なものとし、接触部材130としての弾性スリーブ部221を神経30の径方向内方に向けて押付けた状態を安定して維持できる。
【0046】
第3の係合部233は、弾性スリーブ部221からチューブ体110の長手方向に伸びる弾性アーム部225に設けられているので、弾性アーム部225をチューブ体110の端部に差し込むようにして、弾性スリーブ部221をチューブ体110に接続することができ、接続作業を簡単に行うことができる。
【0047】
チューブ体110は長手方向に間隔を隔てて配置された複数個の第4の係合部234(係合リング部203)を有し、かつ、接触部材130がチューブ体110と一体になっておらず、単独の部材として存在していることにより、第3の係合部233を係合させる一の第4の係合部234を選択可能である。これにより、神経30を径方向内方に向けて押付ける押付力を、神経30の長手方向に沿って均等に分散させ、局所的に集中することを防止しつつ、チューブ体110の長さを、神経30同士の間のギャップ寸法に合致した長さに簡単に調整できる。
【0048】
また、チューブ体110は神経30の端部を挿入する空間部111を備えており、神経30が再生する空間を周囲から区画して確保することができる。
【0049】
さらに、神経再生用医療デバイス105を全て生分解性材料または生体吸収性材料から形成することにより、神経細胞が再生伸長し、中枢側神経端が末梢側神経端と繋がった後に、神経再生用医療デバイス105を体内から取り出す必要もない。
【0050】
チューブ体110は神経30の伸長をガイドするガイド溝112を有しているので、再生する神経線維および関連する各種細胞に伸長する方向性を与えて、中枢側神経端と末梢側神経端とが接合する時間を短縮することができる。
【0051】
チューブ体110は、内部空間に収納され神経30の伸長を促進する材料を含む充填材150を有しているので、神経軸索の接着や伸長を促進し、神経軸索の再生を促すことができる。
【0052】
以上、本発明の神経再生用医療デバイス105を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、神経再生用医療デバイス105を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0053】
例えば、第1の係合部231をリング状係合凹部222から構成し、第2の係合部232をリング状係合凸部224から構成した実施形態について図示したが、連続したリング形状ではなく、凹部あるいは凸部を断続的に設けたものでもよい。また、第1の係合部231を凸部形状とし、第2の係合部232を凹部形状(貫通孔を含む)としてもよく、具体的な係合形状は適宜変更することができる。
【0054】
また、第3と第4の係合部233、234についても、チューブ体110の第4の係合部234を凸部形状の第3の係合部233が嵌まり込む凹部形状(貫通孔を含む)にしてもよく、具体的な係合形状は適宜変更することができる。弾性アーム部225をチューブ体110の外周面に係合させる形態を示したが、弾性アーム部をチューブ体110の空間部111に挿入して、チューブ体110の内周面に係合させる形態としてもよい。
【0055】
チューブ体110に係合自在な第3の係合部233を接触部材130の側に設けた形態を示したが、接触部材130と押付け部材140とは一体となることから、第3の係合部233を押付け部材140の側に設けた形態とすることもできる。この場合には、ストッパリングの側に弾性アーム部を一体的に設けた構造となる。
【0056】
第1の係合部231と第2の係合部232との組み合わせによって押付力を増減調整自在であり、複数個の第1の係合部231を準備しておいて、1つの第2の係合部232を係合させる第1の係合部231を変更する形態を示したが、この例に限定されるものではない。例えば、外周リング部224の内径寸法が異なる複数個のストッパリング223を準備しておいて、1つのリング溝222に係合させる形態でもよい。この場合には、外周リング部224の内径寸法が異なるストッパリング223を係合させることによって、弾性スリーブ部221が径方向内方に向けて変位する量を変えて、神経30を径方向内方に向けて押付ける力を変えることができる。
【符号の説明】
【0057】
30 神経、
31 神経上膜、
32 神経束、
105 神経再生用医療デバイス、
110 チューブ体、
111 空間部、
112 ガイド溝、
113、114 端部開口、
120 接続部、
130 接触部材、
130a 本体部、
130b 接触部、
135 微小突起、
140 押付け部材、
150 充填材、
160 保持機構、
203 係合リング部(第4の係合部)、
204 係合爪(第3の係合部)、
220 キャップ、
221 弾性スリーブ部(接触部材)、
221a 弾性スリーブ部の中心孔、
222 リング溝(第1の係合部、リング状係合凹部)、
223 ストッパリング(押付け部材)、
224 ストッパリングの外周リング部(第2の係合部、リング状係合凸部)、
225 弾性アーム部、
226 弾性スリーブ部のスリット、
227 弾性アーム部のスリット、
228 内周面、
231 第1の係合部、
232 第2の係合部、
233 第3の係合部、
234 第4の係合部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空のチューブ体と、
前記チューブ体の両端部のそれぞれに神経を接続する接続部と、を有し、
前記接続部は、
前記神経の外周に接触自在な接触部材と、
前記接触部材を前記神経の径方向内方に向けて押付ける押付力を前記接触部材に付与する押付け部材と、
前記接触部材に設けられた第1の係合部と、
前記押付け部材に設けられ前記第1の係合部に係合自在な第2の係合部と、
前記接触部材または前記押付け部材に設けられ前記チューブ体に係合自在な第3の係合部と、を含み、
前記接触部材の前記第1の係合部と前記押付け部材の前記第2の係合部とを係合することによって、前記押付け部材が前記押付力を前記接触部材に付与する、神経再生用医療デバイス。
【請求項2】
前記接触部材は、前記押付け部材からの押付け力が伝達される本体部と、前記神経の外周に接触する接触部と、前記接触部を前記本体部に対して首振り自在に保持する保持機構と、を備えている、請求項1に記載の神経再生用医療デバイス。
【請求項3】
前記接触部材は、前記神経の外周に向かい合う面に形成された微小突起を備えている、請求項1または請求項2に記載の神経再生用医療デバイス。
【請求項4】
前記微小突起の突出寸法は、前記神経の神経上膜の厚さを超えない寸法である、請求項3に記載の神経再生用医療デバイス。
【請求項5】
前記第1の係合部と前記第2の係合部との組み合わせによって、前記押付力を増減調整自在である、請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の神経再生用医療デバイス。
【請求項6】
前記第1の係合部と前記第2の係合部とは、前記第3の係合部を前記チューブ体に係合する前に係合自在である、請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の神経再生用医療デバイス。
【請求項7】
前記第1の係合部は、前記接触部材の外周面に形成されたリング状係合凹部から構成され、
前記第2の係合部は、前記リング状係合凹部に嵌り込むリング状係合凸部から構成されている、請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の神経再生用医療デバイス。
【請求項8】
前記第3の係合部は、前記接触部材または前記押付け部材から前記チューブ体の長手方向に伸びる弾性アーム部に設けられている請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載の神経再生用医療デバイス。
【請求項9】
前記チューブ体は、長手方向に間隔を隔てて配置され前記第3の係合部と係合する複数個の第4の係合部を有し、
前記複数個の第4の係合部の中から前記第3の係合部を係合させる一の第4の係合部を選択可能である、請求項1〜請求項8のいずれか1つに記載の神経再生用医療デバイス。
【請求項10】
前記チューブ体は、前記神経の端部を挿入する空間部を備えている、請求項1〜請求項9のいずれか1つに記載の神経再生用医療デバイス。
【請求項11】
前記チューブ体は、生分解性材料または生体吸収性材料から形成されている、請求項1〜請求項10のいずれか1つに記載の神経再生用医療デバイス。
【請求項12】
前記チューブ体は、内周面の少なくとも一部に軸方向に伸びて形成され神経の伸長をガイドするガイド溝を有する、請求項1〜請求項11のいずれか1つに記載の神経再生用医療デバイス。
【請求項13】
前記チューブ体は、内部空間に収納され神経の伸長を促進する材料を含む充填材を有する、請求項1〜請求項12のいずれか1つに記載の神経再生用医療デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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