神経刺激を使って不快感を軽減するシステムおよび方法
【解決手段】 本明細書では、経皮的磁気刺激を実施するための新規性のある方法およびシステムが開示されている。この方法では、治療領域を経皮的に刺激する第1の磁気刺激装置を使って第1の磁場が生成され、前記治療領域を経皮的に刺激する第2の磁気刺激装置を使って第2の磁場が生成される。また本明細書では、経皮的磁気刺激に起因した不快感を軽減するための新規性のある方法およびシステムが開示されている。この方法では、第1の磁気刺激装置を使って、第1の位置および第2の位置で第1の磁場が生成される。前記第1の磁場は、前記第1の位置および前記第2の位置で磁気刺激を生じる。第2の磁場は、第2の磁気刺激装置を使って前記第2の位置で生成され、これにより前記第2の位置における刺激を軽減する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮的刺激の分野に関する。具体的には、本発明は不快感を軽減するための磁場使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの疾患は患者の身体の疾患部位に電気刺激を与えることにより治療され、または治療可能である。神経細胞、筋肉細胞、組織細胞は、それぞれ電気信号を伝達し電気刺激に応答する能力を持つ生体組織の形態である。電気刺激の例としては、変動磁場を利用する磁気刺激、および電気刺激または容量刺激を利用して組織に電場を印加する誘導刺激の2つを挙げることができる。
【0003】
例えば、導電体に磁場を通過させると電場が誘導され、その導電体に電流が流れる。種々の身体部分にも導電性があるため、変動磁場を身体各部に印加すると導電組織に電場が生じ電流が流れる。例えば生体組織の場合は、上記の結果生じる電流により組織内の神経細胞が脱分極を起こすため、組織を刺激できるようになる。また、例えば筋肉の場合は、刺激された神経細胞に関連した筋肉が収縮する。
【0004】
電気刺激には有益で治療効果のある生物学的作用が多数ある。例えば、磁気刺激は、損傷または麻痺した筋群のリハビリテーションに効果的である。磁気刺激は、脊椎に囲まれ直接アクセスすることが難しい脊髄の治療にも効果的であることが実証されている。(腰痛の原因である)背中の神経を通じた痛み、または他の位置では他の神経を通じた痛みの伝達をブロック(遮断)する上で磁気刺激を使用できる。さらに、身体を刺激する他の医療過程とは異なり、磁場刺激は非侵襲的に実施することができる。例えば、磁場を用いて体内に電流を発生させ、磁場を患者の皮膚を通過させることにより刺激が生じる。これと対称的に、従来の電気刺激による腰痛治療法では、刺激を与えるため脊髄に電極が配置される。末梢神経の場合は電気刺激を与えるため、問題のある神経に近接して針が挿入される場合がある。
【0005】
磁気刺激は、脳の領域を刺激する上で効果的であることも実証されている。治療上の関心領域の1つに神経精神疾患の治療がある。現在、米国では2800万人以上が何らかの神経精神疾患にかかっていると考えられており、具体的には、うつ病、統合失調症、躁病、強迫性障害、パニック障害、その他多くの疾患が含まれる。特にうつ病疾患は米国だけでも1900万人、可能性として世界全体では3億4000万人に発症していると考えられている。現代医学では、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(selective serotonin reuptake inhibitor:SSRI)、MAI、三環系抗うつ薬、リチウムなど数クラスの抗うつ薬や、電気けいれん療法(electroconvulsive therapy:ECT)など、うつ病患者にいくつかの治療オプションが提供されている。しかし、患者の多くは、うつ病症状に対しいまだ満足のいく結果を得られていない。今日ではECTが大うつ病性障害の効果的な治療法となっているが、副作用が深刻であるため多数の患者はこの処置を拒否している。
【0006】
近年、従来の方法および薬剤に反応しない患者にも、反復経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation:rTMS)が有意な抗うつ効果をもたらすことが示された。rTMSの一実施形態では、亜けいれん性(subconvulsive)の刺激を繰り返し前頭前皮質に与え、皮質神経に脱分極を起こす。通常、1ボルト/cm(V/cm)を超える電場を誘導すると神経細胞は脱分極する。この電場は、非侵襲的に印加された磁場が急速変動した結果生じるものである。
【0007】
現在では、脳左右の前頭前皮質領域は、気分および行動全般を制御する「回路」を含んだ辺縁系構造と強い通信リンクがあることが当業者に広く知られている。rTMSの目的の1つは、非侵襲的かつ亜けいれん性の技術でこれら生物回路に刺激を与え、ECTまたは薬剤による多数の副作用を排除してうつ病症状を緩和することである。ただし、うつ病治療用rTMSの副作用の1つとして、患者の刺激部位における不快感が報告されている。ここで、不快感は身体の他領域に対する他形態の磁気刺激でも起こりうることを理解すべきである。rTMSの場合、この不快感の一部は、頭皮における神経細胞膜の脱分極と、その結果rTMS周波数で起こる頭皮筋肉の収縮とにより生じる。試験の結果、約20%のrTMS患者がこの問題を非常に不快なレベルのものとして訴えていることがわかっている。一般に、治療用磁気刺激の電力が大きく周波数が高いほど、報告される不快感は増す。しかし、より深い中脳構造を望ましい態様で刺激するには、より大きな電力が必要であるため、電力レベルを落とすのは現実的な選択肢ではない。また、比較的高い周波数(例えば1Hzを超えるもの)は、より高い抗うつ効果があることが示されている。
【0008】
他のタイプの不快感は任意数の疾患に起因する可能性があり、特にrTMSだけの副作用とはいえない。また、患者は末梢神経など頭部以外の位置にも不快感を感じることがある。これは、患者体内の任意位置の任意深度で起こりうる。そのような場合、不快感を起こしている神経がどこに位置するかにかかわらず不快感を軽減できると有益である。このため、不快感の原因が電気刺激であってもその他であっても、不快感を軽減する技術を開発することが望ましい。また、患者の望ましい領域をより正確に刺激しつつ、周辺組織への刺激を最小限に抑える技術を開発することが望ましい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、経皮的磁気刺激を実施するための新規性のある方法およびシステムを対象としている。特に、本発明は、治療領域において集束磁場を生成する2若しくはそれ以上の磁気刺激装置を使用するための新規性のある方法およびシステムを対象としている。また、本発明は、独立駆動される2若しくはそれ以上の磁気刺激装置を使って不快感を軽減する新規性のある方法およびシステムを対象としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の対象については、法定要件を満たすよう特定的に説明する。ただし、この説明自体は本特許の範囲を限定することを意図したものではない。むしろ、本発明者らは、既存または将来の他の技術を参照することで、特許請求の範囲に記載された対象を他の方法で実施し、本明細書で説明する工程または要素と類似した異なる工程または要素も含むよう企図している。さらに、本明細書では、使用される方法の異なる態様を暗示するため、用語「工程」を使用するが、この用語は個々の工程の順序が明示的に説明されていない限り、本明細書に開示する種々の工程間でのいかなる特定順序を示唆すると解釈すべきではない。
【0011】
概要
1831年、導体に誘導される電場の大きさが、その導体を貫く磁束密度の変化率に比例することをマイケル・ファラデーが発見した。当業者に広く知られているこのファラデーの法則は、Eα=−(dB/dt)と表すことができる。ここで、Eは誘導される電場(ボルト/メートル単位)、dB/dtは磁束密度の時間変化率(テスラ/秒)である。すなわち、導体などの物体中に誘導される電場の大きさは、磁束密度と、磁束密度の時間変化率との2要因により決定される。磁束密度とその微分値が大きいほど、誘導されるピーク電場とその結果生じるピーク電流密度も大きくなる。磁束密度は磁場源からの距離の2乗に反比例して減少するため、導体が磁場源に近づくほど大きくなる。導体がコイルである場合、電場によりコイル内に誘導される電流はコイルの巻き数およびコイルの面積に比例して増加する。
【0012】
電場が導体中に誘導されると、この電場に対応する電流が導体内に生じる。この電流は、任意の時点における電場のベクトルと同方向に流れる。ピーク電場はdB/dtの最大である時点で起こり、他の時点ではそれより小さくなる。例えば磁気パルス後などに電場が小さくなると、電流はその電場を維持する方向に流れる(レンツの法則)。
【0013】
生体組織の電気刺激の場合、身体構造の特定部分(神経、組織、筋肉、脳など)は導体の機能を果たし、電場が存在すると電流を伝達する。これらの身体構造部分に時間変化する(パルス化などした)磁場を印加すると、その身体部分に経皮的に電場が生じる。例えばTMSの場合は、頭蓋骨を通して時間変化する磁場を印加することにより、脳組織内に電場、そして電流を生じさせることができる。誘導される電流に十分な密度があれば、膜のナトリウムチャネルが開き活動電位応答が生じる程度まで神経細胞の活動電位が低下しうる。次に電流の衝撃が軸索膜に沿って伝播し、神経伝達物質の変調を介して他の神経細胞へ情報が伝達される。このような磁気刺激は、皮質組織内のグルコース代謝と局部血流量に急速に影響することが示されている。大うつ病性障害の場合は、前頭前皮質とそれにつながる辺縁系構造とにおける神経伝達物質の調節不全および異常なグルコース代謝が最も可能性の高い病態生理であると考えられる。磁気刺激を前頭前皮質に繰り返し与えると、神経伝達物質の濃度および代謝に慢性的な変化が生じてうつ病が緩和されうる。
【0014】
上記と同様に、非皮質神経細胞(脳神経、末梢神経、感覚神経(知覚神経)など)も誘導電場によって刺激することが可能である。パルス磁場に誘導された刺激への応答における応答時間および伝導速度を観察することにより神経病理を診断するため、末梢神経を意図的に刺激する技術が開発されてきている。末梢神経または脳神経に印加する誘導電場が非常に強力であるか、あるいはそのような神経の小領域に集中した場合は、不快感および/または痛みが起きるおそれがある。この不快感は、罹患神経束の感覚神経を意図的に過剰刺激して外部からの痛み刺激に応答しなくなるようにする、あるいは痛みの感覚を起こしている誘導電場の強度および集束度を低下させることにより、軽減することができる。
【0015】
上記のとおり、経皮的磁気刺激は、うつ病治療だけに限定されないことを理解すべきである。うつ病のほか、本発明に係る経皮的磁気刺激の方法および装置は、てんかん、統合失調症、パーキンソン病、トゥレット症候群、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)、多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)、アルツハイマー病、注意欠陥/多動性障害、肥満症、双極性障害/躁病、不安障害(広場恐怖症を伴う、または伴わないパニック障害、対人恐怖症(別名「社会不安障害」)、急性ストレス障害、全般性不安障害など)、心的外傷後ストレス障害(DSMにおける不安障害の1つ)、強迫性障害(DSMにおける不安障害の1つ)、痛み(片頭痛、三叉神経痛のほか、糖尿病性神経障害、帯状疱疹後神経痛、また線維筋痛や局所性筋筋膜性疼痛症候群などの突発性疼痛性障害による痛みなどの神経因性疼痛を含む慢性疼痛性障害など)、脳卒中後のリハビリテーション(神経可塑性の誘導)、耳鳴り、融合を促進するための移植神経の刺激、物質関連障害(アルコール、コカイン、アンフェタミン、カフェイン、ニコチン、大麻などに対する依存症、乱用、離脱(禁断症状)など)、脊髄損傷および脊髄再生/リハビリテーション、脳卒中、頭部損傷、睡眠遮断逆転、原発性睡眠障害(原発性不眠症、原発性睡眠過剰症、概日リズム睡眠障害)、認知能力の向上、痴呆、月経前不機嫌性障害(PMS)、薬物送達システム(薬物への細胞膜透過性を変化させる)、タンパク質合成の誘導(転写と翻訳の誘導)、吃音症、失語症、嚥下障害、本態性振戦、および/または摂食障害(過食症、無食欲症、むちゃ食いなど)などに罹患した患者の治療に使用することができる。
【0016】
説明および明瞭化のため、本明細書における考察では、主に経頭蓋磁気刺激技術に起因する不快感に対する治療(処置)と、末梢神経における不快感の軽減とに重点を置いている。本発明は、いかなるタイプの不快感にも同等に適用でき、患者体内のいかなる位置にある神経の治療にも使用できることが理解されるであろう。また、本発明は、いかなるタイプの経皮的磁気刺激に関しても使用可能であり、決して経頭蓋用途だけに限定されることはない。
【0017】
例示的な強磁性コア刺激装置
強磁性コアは、例えば経頭蓋磁気刺激(Transcranial Magnetic Stimulation:TMS)、反復経頭蓋磁気刺激(Repetitive TMS:rTMS)、磁気発作治療(Magnetic Seizure Therapy:MST)、末梢神経不快感の軽減などの経皮的磁気刺激を実施する目的で磁場を生成するため使用することができる。上述したように、以下の例でも説明および明瞭化のためTMSおよびrTMSの実施形態に関連して説明しているが、上記のタイプの全てを含め、いかなるタイプの経皮的磁性刺激も、本発明の一実施形態に従った実施が可能である。
【0018】
また本発明は、強磁性コア磁気刺激装置を使用するものと限定されるわけではなく、例えば空芯磁気刺激装置など、他のコア材料も使用可能である。本明細書における説明では、説明および明瞭化のため強磁性コア磁気刺激装置について記述している。一実施形態では、強磁性コアは略半球形であり、別の一実施形態では、少なくとも0.5テスラで磁気飽和に至る高飽和磁性材料が強磁性コアに含まれる。一部の実施形態では、強磁性コアは、治療領域で磁場分布を最適化する形状される。他の治療形態における治療領域(末梢神経における不快感の軽減など)は、程度の差はあるがTMSの場合のように深部になる可能性がある。強磁性コアは生成する磁場の効率的な局所化を可能にする。治療位置に効果的に照準を合わせると、問題のある神経を適切に治療し、あるいは近傍の神経を不要に刺激することなく治療領域を治療することにより、不快感を軽減することができる。
【0019】
TMS用の一般的な強磁性コアコイルは、脳の表面付近から2〜3cmの領域にわたり皮質刺激閾値を超える磁場を生成するよう設計されている。この磁場は、皮質層のより深部でさらに減少することが理解されるであろう。隣接した組織より有意に高い導電率を有する、より深部の解剖学的構造(頭蓋骨孔を貫通する脳神経など)では、パルス磁場に誘導された電流が集中する傾向がある。この集中効果により、導電率が最も高い局部において、神経細胞刺激閾値を越える局所的な高電流密度がもたらされる。その構造が感覚神経(三叉神経束など)である場合は、磁場が皮質刺激閾値を超える領域の外部に当該神経が位置している場合でも刺激されるおそれがある。この問題に対する従来の解決策には、影響を受ける神経から離れる方向へTMSコイルを再位置決めする、影響を受ける神経と誘導電流ベクトルが非平行になるよう磁場を再配置する、または磁場が距離とともに急速に減少するようTMSコイルの寸法をより小さく設計するなどがある。当業者であれば、これらの解決策では意図された治療に不利な影響を与えるおそれのあることが理解されるであろう。
【0020】
上記と対称的に、本発明の一実施形態では、治療領域内の一次磁場を減少させることなく、一次TMSコイル場に重なる磁場を生成し、影響を受ける神経付近の誘導電場および電流を減少させるよう設計および配置された追加コイルをTMSコイルと伴に使用する。そのような二次コイルにより生成される場は、前記一次TMSコイルの場より小さい。これは当該二次コイルが、影響を受ける神経付近に物理的に配置され、神経が刺激される部位の誘導電流密度を減少させるよう機能するためのみに必要とされてためである。この(1つまたは複数の)二次コイルは、影響を受ける神経を過剰に刺激してTMS場に起因する刺激にそれ以上応答できなくするなど、他の手段により不快感を軽減する機能も果たすことができる。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に関連して使用可能な強磁性コア材料を具備した磁気刺激装置10、すなわち「コイル」を例示したものである。装置10は、巻線部材14に囲まれた強磁性コア12を有する。絶縁材料16は、コア12と巻線部材14との間に介装されている。装置10は、装置10を制御システム(明瞭化のため図1には示していない)に接続するケーブル20も含む。ケーブル20は、保護および張力緩和のためハウジング18に覆われている。
【0022】
強磁性コア12は、例えば3%方向性ケイ素鋼またはバナジウムパーメンジュール(別称Supermendur)など種々の強磁性材料から作製することができる。前記材料は、例えば高飽和レベル、変化の急激なB−H曲線(飽和状態から不飽和状態に急激に切り替わる)、低渦電流損失を有し、コストが実用的であるものが選択される。このコア材料から、渦電流損失を最小限に抑える電気的に絶縁された多数の層を作製することができる。積層配向は、例えば渦電流を遮るようにする(可能な限り誘導電流の方向に垂直にする)。また、前記材料が粒子配向を有する場合は、これを誘導磁束に平行に方向付けなければならない。一実施形態では、前記強磁性コアは米国特許第6,132,361号および5,725,471号明細書(それぞれ参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする)に基づいている。
【0023】
一実施形態では、患者治療に、通常、略半球形の強磁性コアで構成されたコイルを使って患者に磁場を印加する工程が含まれる。場の強度および切り替え率は、実施中の治療タイプに適切な態様で標的領域に刺激を与えられるよう十分なものにする。
【0024】
神経刺激のシステムおよび方法の実施形態
上記のとおり、経皮的刺激を使うと、例えば末梢神経など問題のある神経に磁場を直接印加することにより患者の不快感を軽減できる。また上述したように、患者への経皮的刺激は治療のためのものであるが、望ましくない副作用が生じるおそれがあることにも留意すべきである。例えば経頭蓋刺激の場合は、脳神経や三叉神経などには、各々の刺激閾値を越えた磁場が付与される。その結果、患者は、例えば筋肉の痙攣(けいれん)や感覚神経から来る痛みにより不快感を感じる場合がある。このため、治療しない領域(非治療領域)の位置における磁場を低減するよう磁場の照準を合わせることが有益である。
【0025】
不快感は任意の場合において軽減が可能である。例えば、前記影響を受ける神経に対して磁気刺激を適用し、当該神経を麻痺させる、過剰刺激する、あるいは当該神経を治療して不快感を軽減する処置を施すことにより不快感を直接治療することができる。神経に印加される磁場は、望ましい効果を達成するため、場の強度、パルス反復率、ベクトルの向き、周波数特性などについて修正できることが理解されるであろう。不快感を軽減する別の方法は、上記のとおり、組織の磁気刺激に伴い治療領域に近接して生じる有害な副次的刺激を低減することである。有害な副次的刺激を軽減するため使用されるこの方法は、不快感を生じている神経の治療に使用される方法と同じであっても異なるものであってもよい。いずれの場合でも、治療用磁場の照準を効果的に合わせることによって患者の不快感を軽減することができる。
【0026】
例えば、不快感を生じる一部の神経は、他の神経より大きな問題をとなることがわかっている。例えば経頭蓋磁気刺激の場合は、(頭蓋骨の左右側部に位置する)三叉神経の枝は、望ましくない刺激に対し特に問題になる場合があることがわかっている。具体的には、三叉神経の枝の一部は頭蓋骨組織内の深部に位置しており、小さな開孔(孔)を通じて頭蓋骨を貫通し、顔の領域まで長く延びている。上記のように、骨と、孔を貫通する神経とでは導電率が大きく異なるため、電流密度は孔において増加する。このため、表在脳神経が刺激閾値より低いレベルの磁気刺激を受けた場合でも、三叉神経とその枝は、深部に存在するにもかかわらず、当該神経の刺激閾値より高レベルの磁気刺激を受けてしまい、その結果、例えば経頭蓋磁気刺激中に顔面筋肉が収縮し、さらに/または痛みが生じるおそれがある。そのため患者の治療に使用する磁場は、治療位置だけで刺激閾値を越えるようにし、三叉神経など敏感な隣接組織では不快感を軽減するよう局所的に最小限に抑えなければならない。これを受け、例えば三叉神経孔の領域において、刺激レベル未満まで磁場を低減する方法が有益である。
【0027】
治療用磁場の照準を合わせる上で使用できる方法の1つに、受動的構成要素を使用して、磁場を遮断、若しくは、あるいは形成してより正確に治療領域に照準を合わせるものがある。図2は、経皮的刺激に起因した不快感を軽減する受動的技術を例示した図である。図2に示したように、システム200は、患者頭部202の上位に位置し且つ磁気刺激装置201の下位に位置する1若しくはそれ以上のフェライトパッド210を含む。当然のことながら、フェライトパッド210の物理的構成は説明および明瞭化のため例示したものであり、このような構成の排他的表現ではない。例えば、フェライトパッド210は、磁気刺激装置201と患者頭部202との間に配置することができる。また、フェライトパッド210は、患者頭部202に直接的および/または間接的に装着し、さらに/または磁気刺激装置201に直接的または間接的に接続することもできる。非経頭蓋の実施形態では、例えば、磁気刺激装置201と、治療領域に近接した任意の位置との間にフェライトパッド210を配置することができる。さらに、フェライトパッド210の数および配置は、いかなる特定の構成にも限定されず、本明細書で説明する他の方法と併用できる。
【0028】
フェライトパッド210は、磁気刺激装置201により生成される磁場(線204a〜e)を効果的に「吸収」するよう作用する。特に、フェライトパッド210は、表面近接組織を刺激する磁場(線204a〜e)をオフセット、低減、および/または吸収し、かつ治療目的で患者深部に侵入する磁場が実質的に影響を受けることのないよう設計および構成できる。またフェライト材料を使用することで、フェライトパッド210が典型的に低導電率を有し、したがって誘導される渦電流とそれに付随する加熱、または磁気刺激装置201によって生じる治療用磁場の一時的乱れとを抑えることができる。システム200はフェライト材料の場合を説明してきたが、これらのパッドを、他の非フェライト材料、および/またはフェライト材料と非フェライト材料との組み合わせで作製してもよいことは言うまでもない。
【0029】
図からわかるように、前記フェライトパッド210は、電源等により駆動されないという意味で「受動的」なものである。むしろ、このフェライトパッド210は、その単なる物理的存在により望ましくない刺激を軽減するものである。このフェライトパッド210は、望ましくない表面刺激の軽減には効果的だが、磁気刺激装置210の生成した前記磁場(線204a〜e)を受動的に吸収するだけであるため、深部における望ましくない刺激の軽減にはさほど効果的でない。さらに、フェライトパッド210は物理的に(サイズ、位置、形状など)構成することは可能あっても電気的に構成することは可能でないため、重ね合わせ効果または相殺効果により磁気刺激装置201の磁場と相互作用する磁場を当該パッド210で生成することはできない。
【0030】
上記を鑑み、経皮的刺激に起因した不快感を能動的に軽減する技術を例示した図が図3である。図3に示したように、システム300は電極302aおよび302bと通信可能な電源301を含む。図3では電極を2つ示しているが、任意数の電極も使用できることを理解すべきである。
【0031】
前述のとおり、磁気刺激装置201はパルス磁場(線205a〜d)を生成し、これにより電場(線204a〜e)が発生する。電場(204a〜e)は、患者頭部202内に望ましい電流および望ましくない電流の双方を誘導する。システム300は、表面近接部で前記望ましくない電流により生じる不快感の問題を克服すると同時に、前記望ましい電流が患者治療効果を持続できるようにする。特に、電源301は電極302に電力(電流および/または電圧)を供給し、当該電極は電源301からの電力を患者頭部202に伝導する。
【0032】
したがって、前記電極は、実質的に一定な電力または時間変化する電力を電極302に供給することにより、能動的に不快感を軽減することができる。この電力が実質的に一定である場合、電極302を介して患者頭部202に伝達される電力によって、電極302間または電極302近傍の患者の神経、筋肉、および組織に実質的に一定な電場が生じる。電極302により生じる電場は、特定の細胞(磁気刺激装置201によって不要に刺激される細胞)にバイアスをかける強度を有する場合がある。このバイアスレベルは、前記細胞のほぼ脱分極レベルまたはそれ以上であってよい。前記細胞に脱分極レベルまたは略脱分極レベルのバイアスをかけると、例えば電解質が前記細胞に沿って再分配され、電解質が細胞膜を越えて移動する能力が低下する。細胞は、磁気刺激装置201によって生じる誘導電場に繰り返し応答し続ける能力がないため、細胞膜を越える電解質移動が減少すると、磁気刺激装置201により前記細胞が受ける刺激が低下する。その結果、治療中に患者が感じていた不快感は軽減される。この例は実質的に一定な電源の場合を説明したが、言うまでもなく、電力は治療中常時供給されなくともよく、例えば、治療用磁気刺激に対応するパルスの開始後いつでもオフにすることができる。
【0033】
磁気刺激の適用中供給される実質的に一定な電源に加え、あるいはその代わりに、電源301が供給する電力は時間変化するものであってよい。電源301からの時間変化する信号は、磁気刺激装置201により望ましくない刺激を受ける筋肉、組織、および/または神経の脱感作に使用することができる。特に、電源301は、特定の神経、筋肉、および/または組織を事前(すなわち磁気刺激装置201による治療パルスの印加前)に刺激することにより、それらの神経、筋肉、および/または組織が、本来治療を目的とするパルスに望ましくない応答をする能力を低減するよう設計することができる。電極302は必然的に患者頭部の表面に配置されるため、この方法は、より深部における望ましくない神経刺激の軽減には対応していない。
【0034】
ここで図4Aを参照すると、経皮的刺激に起因した不快感を軽減する別の能動的技術を例示した図が示されている。図4Aに示したように、システム400は、刺激回路403から受電して患者頭部406に磁場(明瞭化のため図4Aには示さず)を生成する磁気刺激装置402を含む。前述のとおり、磁気刺激装置402は、例えばTMSを使ったうつ病の治療など、特定の有益な治療効果をもたらすため患者体内に電流を誘導するパルス磁場を生成する。ただし、この同じ磁場は、表面近接組織、神経、および筋肉に望ましくない電流を誘発して患者に不快感を与えるおそれもある。
【0035】
患者406またはその近接部(また可能性として患者と磁気刺激装置402との間)に位置する表面コイル401は、磁気刺激装置402により生成される磁場の望ましくない効果をオフセット、排除、または低減するために使用できる。パルスプログラマ405は適切な波形を生成し、駆動回路404は、パルスプログラマ405が生成した前記波形を受信して前記表面コイル401に電力を供給する。これにより、表面コイル401は、磁気刺激装置402により生成され表面近接組織、神経、および筋肉に望ましくない刺激を与える磁場の一部を相殺する磁場を独自に生成しうる。また、表面コイル402が生成する磁場の強度および分布は、磁気刺激装置402により生成される一次磁場の治療用強度が、治療領域で実質的に低下しないようにするものである。
【0036】
図4Bは、一実施形態におけるコイル401の詳細を例示した図である。このような一実施形態において、コイル401は取り付けパッド407に連結されており、この取り付けパッドはコイル401の動作と実質的に干渉しない任意の物質から作製できる。一実施形態において、取り付けパッド407は、当該取り付けパッドを患者頭部上(患者406など、明瞭化のため図4Bでは示さず)に配置できるよう、付着性裏地、または他の固定用手段が設けられている。また、図4Aに関連して上述した駆動回路404(明瞭化のため図4Bでは示さず)などの電源に前記コイル401を連結できるよう、接触子408a〜bも設けられている。図2〜3に関連して上述した技術と同様、表面コイル401は表面にしか構成できないため、治療領域の磁場に悪影響を及ぼさずに深部の望ましくない刺激を軽減する能力は制限されてしまう。
【0037】
図5〜9に関連して後述するように、本発明の実施形態は、複数の磁気刺激装置、すなわち「コイル」(例えば、図1を参照して上記で説明したように、強磁性コア材料を具備した磁気刺激装置10コアを有する装置)を提供することにより、治療用経皮的磁気刺激をもたらすと同時に不快感を軽減することができる。本発明の一実施形態では、このような磁気コイルを2若しくはそれ以上を使用して、意図された治療に悪影響を及ぼすことなく不快感を軽減する。
【0038】
例えば、また図5〜9に関連して以下で詳しく説明するように、一実施形態では、より大きな第1の磁気コイル(磁気刺激装置)を使用し、患者の治療領域を含む領域(患者頭部など)全体にわたり、比較的集束していない(広がりのある)刺激閾値強度未満の第1の磁場を生成する。そして、より小さい第2のコイルを使用し、比較的集束した刺激強度未満の第2の磁場を生成する。上記のとおり、磁場は、治療領域で(重ね合わせて)追加することにより、治療領域内で刺激閾値を越える集束磁場を生成し、周辺組織への刺激を最小限に抑えて不快感を軽減しながら治療を行なえるよう構成することができる。治療自体は、治療領域周辺の組織に対する刺激を低下させることによる不快感の軽減のほか、不快感の軽減が目的であることが理解されるであろう。
【0039】
このような一実施形態では、コイルを大きくするほど、必要に応じて患者体内のより深部に侵入できる磁場を生成でき、コイルを小さくすれば、治療領域に正確に照準を合わせるための集束磁場を生成できることがわかる。このように、大型コイルは正確に集束させた磁場を生成する場合は不要であり、また小型コイルは超高刺激閾値強度の磁場を生成するに場合は不要であるため、各サイズのコイルの欠点を緩和すると同時に各サイズの磁気コイルの利点を最大限に活用するものである。そのような一実施形態では、1若しくはそれ以上の治療領域で集束磁場を生成する目的で、任意の数、サイズ、および/または構成のコイルを使用できることが理解されるであろう。そのような構成では、付加的または副次的な不快感を周辺組織に生じることなく、不快感などを治療するためのカスタマイズされた磁場により、患者体内深部の治療位置に到達することが可能になる。これにより、単一磁気コイルの場合に比べ、患者の非治療領域にかかる磁場をより低減することができる。
【0040】
別の実施形態では、図8〜9に関連して以下で詳述するように、治療領域の刺激閾値を越える磁場を生成するため、1若しくはそれ以上のより大きな第1の磁気コイルが使用される。また、不快感を生じる神経に照準を合わせるよう1若しくはそれ以上の集束磁場を生成するため、1若しくはそれ以上のより小さな第2の磁気コイルが使われる。上述したとおり、磁場は、不快感を生じる神経の位置で重ね合わされた磁場が刺激閾値未満になり、治療領域での刺激が実質的に影響を受けることなく不快感が軽減される程度まで互いに相殺し合うよう構成することができる。あるいは、1若しくはそれ以上のより小さな第2の磁気コイルで、刺激により不快感を生じる領域に照準を合わせ、前記神経を意図的に過剰刺激し、前記神経が効果的に麻痺されて磁場に応答できなくすることもできる。また、そのような過剰刺激技術は、治療領域自体にも不快感軽減用に使用することができる。そのような相殺または過剰刺激を実施するため磁気コイルを使用すると、患者体内の深部に位置する不快感を生じる神経への刺激を軽減できることが理解されるであろう。
【0041】
以下では2コイル構成について説明しているが、一実施形態に基づきより多くのコイルを使ってもよいことが理解されるであろう。また以下の説明では、図1に関連して上述した前記強磁性コア材料を具備した磁気刺激装置10など、強磁性コアを具備した磁気刺激装置を採用しているが、空芯コイルを含むいかなるタイプの磁気刺激装置を使用しても、同等に本発明の一実施形態に整合したものとなる。
【0042】
図5は、2つ以上の強磁性コアコイルを使って経皮的刺激を実施するための技術を例示したブロック図である。刺激システム510では、望ましい量の電力をコイルに供給し、かつ適切な態様で前記コイルにパルスを印加することにより、前記コイルの動作を制御する。波形の形状や周波数などは、患者および/または実施する治療タイプに従い選択される。ユーザインターフェースおよび刺激装置制御511は、刺激システム510の利用者が、前記コイルの操作用に1若しくはそれ以上の望ましいパラメータを入力できるようにする。前記コイルを制御する目的では、任意数および/またはタイプのパラメータを入力できることが理解されるであろう。ユーザインターフェースおよび刺激装置制御部511は、上記の不快感軽減技術に使われるコントローラと同様な態様で構成することができるが、制御部511は、2つ以上の磁気刺激コイルを制御するようにもできることが理解されるであろう。
【0043】
パルスプログラマ512A〜Bは、前記ユーザインターフェースおよび刺激装置制御部511で受信された前記パラメータに従って適切な波形を生成し、これを各駆動回路513A〜Bに入力する。一実施形態では、この波形生成工程に追加パラメータが自動的に含まれることもある。駆動回路513A〜Bは、パルスプログラマ512A〜Bが生成した波形を受信し、一次コイルおよび二次コイル501A〜Bに電力を提供する。
【0044】
電力および波形特性を任意に組み合わせても、同等に一実施形態に整合することが理解されるであろう。例えば、一次パルスプログラマA 512Aが生成する波形の結果発生する磁場は、二次パルスプログラマB 512Bが生成する波形の結果発生する磁場と異なる特性を有する。治療領域において磁場が望ましい特性を有する限り、いかなる構成の磁場も使用可能である。
【0045】
一次コイル501Aは、図1に関連して上記説明した態様で一次磁場を生成する。上記のとおり、一次コイル501Aは、主な治療用磁場を提供することができ、あるいはより小領域の治療用磁場を提供するよう構成することもできる。同様に、二次コイル501Bは、一次コイル501Aが提供する磁場と同じ磁場を提供しても、あるいは一次コイル501Aが提供する磁場と異なる特性を有する磁場を提供してもよい。また、コイル501A〜Bは、それぞれ物理的に同一のものであっても、あるいは異なる機械的特性および/または電磁的特性を有してもよい。
【0046】
一実施形態において、一次コイル501Aは刺激レベル未満の磁場を生成するため使用され、二次コイル501Bは、刺激レベル未満の別の磁場を治療領域に追加する。一実施形態では、どちらの磁場も、単独では、患者の治療領域の刺激閾値または脳神経や三叉神経など他領域の刺激閾値を越えない。どちらの刺激レベル未満の磁場のレベルおよび位置も、上記のとおり望ましい治療位置で場が重なり合うよう選択することができる。この重ね合わされた磁場は、治療位置における神経細胞の脱分極により前記領域を刺激する上で十分な強度にできる。
【0047】
図6Aおよび6Bは、経皮的刺激の実施に使用される複数の磁気刺激装置(強磁性コアを具備した複数の磁気刺激装置)の例示的な構成を示した図である。図からわかるように、図6Aは患者1001の正面図、図6Bは患者1001の斜視図である。一次コイル501Aおよび二次コイル501Bは、図5に関連して上述したとおりである。これらの図では患者の頭部1001を示しており、治療領域1000は、患者頭部1001内の任意位置として例示している。図6Aの構成は、患者頭部1001に限定されない患者上の任意位置である治療領域に、治療用磁場を提供するようにできることが理解されるであろう。
【0048】
図6A〜Bでは、一次コイル501Aは、治療用磁場の大半を提供する「主な」コイルであってよく、二次コイル501Bは、治療領域1000で刺激閾値を越える磁場を生成する局所的な磁場を提供するものであってよい。例えば、一次コイル501Aは、頭蓋骨内のすべての点において刺激レベル未満の磁場を生成する。より小型の二次コイル501Bには、前記一次コイルと同期したパルスが印加され、前記治療領域1001に照準を合わせるため局所的な磁場が生成される。コイル501Aおよびコイル501Bの場の合計は、治療領域1000で刺激閾値を越え、標的領域の外側では刺激レベル未満まで急激に低下して、脳神経および特に三叉神経が刺激レベル未満の磁場にしか曝されないようにできる。これらコイル501Aおよび501Bは、三叉神経(特にその孔)で磁場が十分に減少することで、例えば患者1001に何の感覚も生じないよう設計できることが理解されるであろう。体内の他の位置の他の神経を治療する場合、上記のコイル構成は、末梢神経が患者体内の深部にある場合でも、そのような神経における患者の不快感を治療できることが理解されるであろう。
【0049】
図7は、経皮的刺激を実施するための複数の磁気刺激装置の使用を例示したフローチャートである。例示した方法700は、経皮的磁気刺激治療を促進しつつ、患者の不快感を最小限に抑えるものである。工程701では、信号が第1の導体に提供される。一実施形態では、この信号が、図5に関連して上述した一次駆動回路513Aにより生成され、一次コイル501Aの一部である前記第1の導体へ送信されることが理解されるであろう。同様に、工程702では、信号が第2の導体に提供される。一実施形態では、この信号が、二次駆動回路513Bにより生成され、二次コイル501Bの一部である前記第2の導体へ送信されることが理解されるであろう。
【0050】
工程703では、前記第1の導体を使って刺激閾値未満の電場および/または磁場が生成される。例えば一実施形態では、一次コイル501Aにパルスが印加され、図6A〜Bに関連して上述したように磁場が生成される。この磁場は、やはり上記のとおり比較的集束していない(広がりのある)場であることが理解されるであろう。工程704では、前記第2の導体を使って別の刺激閾値未満の電場および/または磁場を生成することができる。この場は、やはり上記のとおり、比較的集束した場であることが理解されるであろう。例えば、二次コイル501Bにパルスを印加して、図6A〜Bに関連して上述したように磁場を生成することができる。工程705では、前記導体により生成された磁場の強度および位置、また可能性として他のパラメータが調整され、重ね合わされた電場および/または磁場の領域が生成される。電場および/または磁場が初期に正しく設定されていれば、工程705での調整が不要になる場合もあることが理解されるであろう。
【0051】
工程706では、TMSやrTMSなどの経皮的磁気刺激治療に関連した上記の重ね合わせ磁場により患者が治療される。このような刺激および治療を図7で説明した態様により実施することにより、患者は、不快感を最小限に抑えた治療を受けられることが理解されるであろう。
【0052】
上記のとおり、複数のコイルは、本発明の一実施形態と整合した態様で、何通りの方法でも構成することができる。例えば、一実施形態に係る構成では、従来のTMS態様で第1のコイル(前記一次コイル501Aなど)を使用し、その場合、前記第1のコイルは、望ましいTMS刺激を適用する上で十分な場の強度を提供する。ただし、第2のコイル(前記二次コイル501Bなど)を付加的に使用し、これを不快感を生じる脳神経に近接して配置することにより、その脳神経からの不快感を軽減することが可能である。
【0053】
このような態様で2つのコイルを使用した場合、上記のように、一実施形態は、患者に不快感を与えている脳神経の領域において前記第2のコイルが磁場の一部または全部を相殺する(「局所的な場の相殺」と呼ばれる)よう構成でき、あるいは、前記第2のコイルが、前記脳神経を意図的に過剰刺激して神経を麻痺させ、前記第1のコイルからのパルスにそれ以上応答できないようにする(「過剰刺激」と呼ばれる)ようにも構成できる。前記第2のコイルを使った局所的な場の相殺は、前記第1のコイルから受ける感覚が特に急性の場合などに対する特定の応用で非常に重要となる。そのような応用の1つに、例えば統合失調症(幻聴)の治療におけるTMS使用がある。この応用での標的領域は、表在筋肉組織神経および表在三叉神経の枝付近である。一実施形態において、前記第2のコイルは、このような措置中に患者が受ける感覚を最小限に抑えるよう、経験的に基づき配置される。この特定の実施形態において、前記第2のコイルは、場が相殺されるように前記第1のコイルに対して配置すべきであることが理解されるであろう。
【0054】
問題のある1若しくはそれ以上の神経に対する過剰刺激は、本実施形態のもう1つの変形形態である。このような応用では、脳神経とカップリングするよう周波数が最適化されたパルス波形で、前記第2のコイルが操作される。パルスは、確実に前記神経が再分極できなくなり外部からの刺激に応答できなくなるよう、十分な率で繰り返し適用される。前記第2のコイルからのパルスは、必ずしも一次TMS治療と同期したものではない。一実施形態では、前記2つのコイルは、双方のコイルに同時にパルスが印加される場合、場が加算されないよう配置される。あるいは、一次TMS治療パルスの印加中は前記第2のコイルにパルスが印加されないよう、前記第2のコイルのシークエンスを構成することもできる。
【0055】
これを受け、経皮的刺激に起因する不快感の軽減に使用される複数の磁気刺激装置の例示的な構成を例示した図が図8である。図8の構成は、上記いずれの場合でも、すなわち局所的な場の相殺でも過剰刺激でも使用できることが理解されるであろう。また図8の構成は、説明および明瞭化のため経頭蓋治療に関連して説明しているが、これはこの構成が、上記に記載した方法を含めいかなる治療方法に関連しても使用できるためである。このため、一次コイル501Aは、患者頭部1001内の治療領域1000で望ましい刺激を与える上で十分である、一次的な治療用磁場を提供する。二次コイル501Bは、脳神経801を対象とした第2の磁場を提供する。脳神経801は、刺激治療の結果として不快感を生じるものであれば、いかなるタイプの脳神経であっても、また患者頭部1001のいかなる領域の神経であってもよいことが理解されるであろう。二次コイル501Bがもたらす磁場は、場の特性に応じ、前記一次磁場の一部を相殺して局所的な場の相殺を行うか、あるいは経頭蓋磁気刺激の実施中、確実に脳神経801が再分極できないように過剰刺激を行う。
【0056】
図9は、経皮的刺激に起因した不快感を軽減するための複数の磁気刺激装置の使用を例示したフローチャートである。図9に例示した方法900は、例えばTMSやrTMSその他の治療など、任意タイプの経頭蓋磁気刺激中に不快感を軽減するため、局所的な場の相殺および過剰刺激に同等に適用される。工程901では、一次電場および/または一次磁場(双方とも刺激閾値を越えており、治療領域の治療目的には十分である)を生成するため、第1の導体(一次コイル501Aなど)に信号が提供される。例えば一実施形態では、一次コイル501Aにパルスが印加され、図11に関連して上述したように磁場が生成される。
【0057】
工程902では、信号が第2の導体(二次コイル501Bなど)に提供され、二次電場および/または二次磁場が生成される。例えば一実施形態では、二次コイル501Aにパルスが印加され、図11に関連して上述したように磁場が生成される。工程903では、前記第1の導体により生成された磁場の強度および位置、また可能性として他のパラメータが調整され、治療領域に治療用磁場が提供される。この方法900では、前記第1の導体が単独で完全な治療用磁場を生成することが理解されるであろう。また、電場および/または磁場が初期に正しく設定されていれば、工程903での調整が不要になる場合もあることも理解されるであろう。
【0058】
工程904では、前記第2の導体により生成される磁場の強度および位置、また可能性として他のパラメータが調整される。一実施形態では、刺激を受けることにより患者に不快感を与え、または望ましくない影響を及ぼす神経その他の組織に関連した領域において、前記第1の導体が生成した磁場を相殺する上で十分な局所的磁場を、前記第2の導体が提供できる。このような態様では、前記神経に適用される磁場は、その刺激閾値未満である。別の実施形態では、不快感を生じる神経神経が治療中に再分極するのを防ぐため、前記第2の導体が前記神経を過剰に刺激する磁場を提供する。
【0059】
この方法900および図7の方法700は、組み合わせても使用できることが理解されるであろう。例えば、治療用磁場は、図7の方法700に基づき2つ以上の一次コイルにより生成することができる。また、方法900に従い、前記一次コイルにより生成される磁場に起因した不快感を軽減するため、1若しくはそれ以上の他のコイルを動作させてもよい。したがって、不快感を軽減する方法は、任意数の構成で組み合わせることができる。
【0060】
また、無髄神経細胞(髄鞘で覆われていない神経細胞)の場合は、有髄神経細胞と異なる周波数応答特性を有する(時値(クロナキシー)または応答時定数が異なる)ことも理解されるであろう。この事実は、目的の神経細胞に対しパルス周波数を最適化すると有利に活用することができる。例えば、前記第2のコイルを有髄脳神経に対し「チューニング」すると、皮質神経細胞への刺激効果を下げることができる。同様に、無髄神経細胞を最適に刺激するパルス周波数で前記第1のコイルを動作させると、脳神経への望ましくない刺激を最小限に抑えることができる。そのような「チューニング」は、本明細書で説明するいずれの技術、または技術の組み合わせに関連しても使用できることが理解されるであろう。
【0061】
当然のことながら、以上の例示的実施形態は単に説明目的で提供したものであり、決して本発明を限定すると解釈されるべきものではない。本明細書で使用する用語は、説明および例示のためのものであり、限定を意図した用語ではない。また、本明細書で説明した利点および目的は、本発明を実施するすべての実施形態でもたらせるとは限らない。さらに、本発明は、特定の構造、材料、および/または実施形態について本明細書で説明してきたが、本明細書に開示した特定の事柄に限定されるものではない。むしろ、本発明は、添付した請求項の範囲内に含まれる機能的に等価なすべての構造、方法、および用途へと拡張される。当業者であれば、本明細書の説明を活用することにより本発明に多数の修正(変更)を加えることができ、また本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更形態を実施することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に関連して使用される強磁性コア材料を具備した磁気刺激装置を例示した図である。
【図2】図2は、経皮的刺激に起因した不快感を軽減ための受動的技術を例示した図である。
【図3】図3は、経皮的刺激に起因した不快感を軽減ための能動的技術を例示した図である。
【図4A】図4Aは、経皮的刺激に起因した不快感を軽減するための別の能動的技術を例示した図である。
【図4B】図4Bは、経皮的刺激に起因した不快感を軽減するために使用するコイルを例示した図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に係る2つ以上の磁気刺激装置を使用して経皮的刺激を実施する技術を例示したブロック図である。
【図6A】図6A〜Bは、本発明の一実施形態に係る経皮的刺激を実施するために使用される複数の磁気刺激装置の例示的な構成を示した図である。
【図6B】図6A〜Bは、本発明の一実施形態に係る経皮的刺激を実施するために使用される複数の磁気刺激装置の例示的な構成を示した図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態に係る経皮的刺激を実施するための複数の磁気刺激装置の使用について例示したフローチャートである。
【図8】図8は、本発明の一実施形態に係る経皮的刺激に起因した不快感を軽減するために使用される複数の磁気刺激装置の例示的な構成を示した図である。
【図9】図9は、本発明の一実施形態に係る経皮的刺激に起因した不快感を軽減するための複数の磁気刺激装置の使用について例示したフローチャートである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮的刺激の分野に関する。具体的には、本発明は不快感を軽減するための磁場使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの疾患は患者の身体の疾患部位に電気刺激を与えることにより治療され、または治療可能である。神経細胞、筋肉細胞、組織細胞は、それぞれ電気信号を伝達し電気刺激に応答する能力を持つ生体組織の形態である。電気刺激の例としては、変動磁場を利用する磁気刺激、および電気刺激または容量刺激を利用して組織に電場を印加する誘導刺激の2つを挙げることができる。
【0003】
例えば、導電体に磁場を通過させると電場が誘導され、その導電体に電流が流れる。種々の身体部分にも導電性があるため、変動磁場を身体各部に印加すると導電組織に電場が生じ電流が流れる。例えば生体組織の場合は、上記の結果生じる電流により組織内の神経細胞が脱分極を起こすため、組織を刺激できるようになる。また、例えば筋肉の場合は、刺激された神経細胞に関連した筋肉が収縮する。
【0004】
電気刺激には有益で治療効果のある生物学的作用が多数ある。例えば、磁気刺激は、損傷または麻痺した筋群のリハビリテーションに効果的である。磁気刺激は、脊椎に囲まれ直接アクセスすることが難しい脊髄の治療にも効果的であることが実証されている。(腰痛の原因である)背中の神経を通じた痛み、または他の位置では他の神経を通じた痛みの伝達をブロック(遮断)する上で磁気刺激を使用できる。さらに、身体を刺激する他の医療過程とは異なり、磁場刺激は非侵襲的に実施することができる。例えば、磁場を用いて体内に電流を発生させ、磁場を患者の皮膚を通過させることにより刺激が生じる。これと対称的に、従来の電気刺激による腰痛治療法では、刺激を与えるため脊髄に電極が配置される。末梢神経の場合は電気刺激を与えるため、問題のある神経に近接して針が挿入される場合がある。
【0005】
磁気刺激は、脳の領域を刺激する上で効果的であることも実証されている。治療上の関心領域の1つに神経精神疾患の治療がある。現在、米国では2800万人以上が何らかの神経精神疾患にかかっていると考えられており、具体的には、うつ病、統合失調症、躁病、強迫性障害、パニック障害、その他多くの疾患が含まれる。特にうつ病疾患は米国だけでも1900万人、可能性として世界全体では3億4000万人に発症していると考えられている。現代医学では、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(selective serotonin reuptake inhibitor:SSRI)、MAI、三環系抗うつ薬、リチウムなど数クラスの抗うつ薬や、電気けいれん療法(electroconvulsive therapy:ECT)など、うつ病患者にいくつかの治療オプションが提供されている。しかし、患者の多くは、うつ病症状に対しいまだ満足のいく結果を得られていない。今日ではECTが大うつ病性障害の効果的な治療法となっているが、副作用が深刻であるため多数の患者はこの処置を拒否している。
【0006】
近年、従来の方法および薬剤に反応しない患者にも、反復経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation:rTMS)が有意な抗うつ効果をもたらすことが示された。rTMSの一実施形態では、亜けいれん性(subconvulsive)の刺激を繰り返し前頭前皮質に与え、皮質神経に脱分極を起こす。通常、1ボルト/cm(V/cm)を超える電場を誘導すると神経細胞は脱分極する。この電場は、非侵襲的に印加された磁場が急速変動した結果生じるものである。
【0007】
現在では、脳左右の前頭前皮質領域は、気分および行動全般を制御する「回路」を含んだ辺縁系構造と強い通信リンクがあることが当業者に広く知られている。rTMSの目的の1つは、非侵襲的かつ亜けいれん性の技術でこれら生物回路に刺激を与え、ECTまたは薬剤による多数の副作用を排除してうつ病症状を緩和することである。ただし、うつ病治療用rTMSの副作用の1つとして、患者の刺激部位における不快感が報告されている。ここで、不快感は身体の他領域に対する他形態の磁気刺激でも起こりうることを理解すべきである。rTMSの場合、この不快感の一部は、頭皮における神経細胞膜の脱分極と、その結果rTMS周波数で起こる頭皮筋肉の収縮とにより生じる。試験の結果、約20%のrTMS患者がこの問題を非常に不快なレベルのものとして訴えていることがわかっている。一般に、治療用磁気刺激の電力が大きく周波数が高いほど、報告される不快感は増す。しかし、より深い中脳構造を望ましい態様で刺激するには、より大きな電力が必要であるため、電力レベルを落とすのは現実的な選択肢ではない。また、比較的高い周波数(例えば1Hzを超えるもの)は、より高い抗うつ効果があることが示されている。
【0008】
他のタイプの不快感は任意数の疾患に起因する可能性があり、特にrTMSだけの副作用とはいえない。また、患者は末梢神経など頭部以外の位置にも不快感を感じることがある。これは、患者体内の任意位置の任意深度で起こりうる。そのような場合、不快感を起こしている神経がどこに位置するかにかかわらず不快感を軽減できると有益である。このため、不快感の原因が電気刺激であってもその他であっても、不快感を軽減する技術を開発することが望ましい。また、患者の望ましい領域をより正確に刺激しつつ、周辺組織への刺激を最小限に抑える技術を開発することが望ましい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、経皮的磁気刺激を実施するための新規性のある方法およびシステムを対象としている。特に、本発明は、治療領域において集束磁場を生成する2若しくはそれ以上の磁気刺激装置を使用するための新規性のある方法およびシステムを対象としている。また、本発明は、独立駆動される2若しくはそれ以上の磁気刺激装置を使って不快感を軽減する新規性のある方法およびシステムを対象としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の対象については、法定要件を満たすよう特定的に説明する。ただし、この説明自体は本特許の範囲を限定することを意図したものではない。むしろ、本発明者らは、既存または将来の他の技術を参照することで、特許請求の範囲に記載された対象を他の方法で実施し、本明細書で説明する工程または要素と類似した異なる工程または要素も含むよう企図している。さらに、本明細書では、使用される方法の異なる態様を暗示するため、用語「工程」を使用するが、この用語は個々の工程の順序が明示的に説明されていない限り、本明細書に開示する種々の工程間でのいかなる特定順序を示唆すると解釈すべきではない。
【0011】
概要
1831年、導体に誘導される電場の大きさが、その導体を貫く磁束密度の変化率に比例することをマイケル・ファラデーが発見した。当業者に広く知られているこのファラデーの法則は、Eα=−(dB/dt)と表すことができる。ここで、Eは誘導される電場(ボルト/メートル単位)、dB/dtは磁束密度の時間変化率(テスラ/秒)である。すなわち、導体などの物体中に誘導される電場の大きさは、磁束密度と、磁束密度の時間変化率との2要因により決定される。磁束密度とその微分値が大きいほど、誘導されるピーク電場とその結果生じるピーク電流密度も大きくなる。磁束密度は磁場源からの距離の2乗に反比例して減少するため、導体が磁場源に近づくほど大きくなる。導体がコイルである場合、電場によりコイル内に誘導される電流はコイルの巻き数およびコイルの面積に比例して増加する。
【0012】
電場が導体中に誘導されると、この電場に対応する電流が導体内に生じる。この電流は、任意の時点における電場のベクトルと同方向に流れる。ピーク電場はdB/dtの最大である時点で起こり、他の時点ではそれより小さくなる。例えば磁気パルス後などに電場が小さくなると、電流はその電場を維持する方向に流れる(レンツの法則)。
【0013】
生体組織の電気刺激の場合、身体構造の特定部分(神経、組織、筋肉、脳など)は導体の機能を果たし、電場が存在すると電流を伝達する。これらの身体構造部分に時間変化する(パルス化などした)磁場を印加すると、その身体部分に経皮的に電場が生じる。例えばTMSの場合は、頭蓋骨を通して時間変化する磁場を印加することにより、脳組織内に電場、そして電流を生じさせることができる。誘導される電流に十分な密度があれば、膜のナトリウムチャネルが開き活動電位応答が生じる程度まで神経細胞の活動電位が低下しうる。次に電流の衝撃が軸索膜に沿って伝播し、神経伝達物質の変調を介して他の神経細胞へ情報が伝達される。このような磁気刺激は、皮質組織内のグルコース代謝と局部血流量に急速に影響することが示されている。大うつ病性障害の場合は、前頭前皮質とそれにつながる辺縁系構造とにおける神経伝達物質の調節不全および異常なグルコース代謝が最も可能性の高い病態生理であると考えられる。磁気刺激を前頭前皮質に繰り返し与えると、神経伝達物質の濃度および代謝に慢性的な変化が生じてうつ病が緩和されうる。
【0014】
上記と同様に、非皮質神経細胞(脳神経、末梢神経、感覚神経(知覚神経)など)も誘導電場によって刺激することが可能である。パルス磁場に誘導された刺激への応答における応答時間および伝導速度を観察することにより神経病理を診断するため、末梢神経を意図的に刺激する技術が開発されてきている。末梢神経または脳神経に印加する誘導電場が非常に強力であるか、あるいはそのような神経の小領域に集中した場合は、不快感および/または痛みが起きるおそれがある。この不快感は、罹患神経束の感覚神経を意図的に過剰刺激して外部からの痛み刺激に応答しなくなるようにする、あるいは痛みの感覚を起こしている誘導電場の強度および集束度を低下させることにより、軽減することができる。
【0015】
上記のとおり、経皮的磁気刺激は、うつ病治療だけに限定されないことを理解すべきである。うつ病のほか、本発明に係る経皮的磁気刺激の方法および装置は、てんかん、統合失調症、パーキンソン病、トゥレット症候群、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)、多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)、アルツハイマー病、注意欠陥/多動性障害、肥満症、双極性障害/躁病、不安障害(広場恐怖症を伴う、または伴わないパニック障害、対人恐怖症(別名「社会不安障害」)、急性ストレス障害、全般性不安障害など)、心的外傷後ストレス障害(DSMにおける不安障害の1つ)、強迫性障害(DSMにおける不安障害の1つ)、痛み(片頭痛、三叉神経痛のほか、糖尿病性神経障害、帯状疱疹後神経痛、また線維筋痛や局所性筋筋膜性疼痛症候群などの突発性疼痛性障害による痛みなどの神経因性疼痛を含む慢性疼痛性障害など)、脳卒中後のリハビリテーション(神経可塑性の誘導)、耳鳴り、融合を促進するための移植神経の刺激、物質関連障害(アルコール、コカイン、アンフェタミン、カフェイン、ニコチン、大麻などに対する依存症、乱用、離脱(禁断症状)など)、脊髄損傷および脊髄再生/リハビリテーション、脳卒中、頭部損傷、睡眠遮断逆転、原発性睡眠障害(原発性不眠症、原発性睡眠過剰症、概日リズム睡眠障害)、認知能力の向上、痴呆、月経前不機嫌性障害(PMS)、薬物送達システム(薬物への細胞膜透過性を変化させる)、タンパク質合成の誘導(転写と翻訳の誘導)、吃音症、失語症、嚥下障害、本態性振戦、および/または摂食障害(過食症、無食欲症、むちゃ食いなど)などに罹患した患者の治療に使用することができる。
【0016】
説明および明瞭化のため、本明細書における考察では、主に経頭蓋磁気刺激技術に起因する不快感に対する治療(処置)と、末梢神経における不快感の軽減とに重点を置いている。本発明は、いかなるタイプの不快感にも同等に適用でき、患者体内のいかなる位置にある神経の治療にも使用できることが理解されるであろう。また、本発明は、いかなるタイプの経皮的磁気刺激に関しても使用可能であり、決して経頭蓋用途だけに限定されることはない。
【0017】
例示的な強磁性コア刺激装置
強磁性コアは、例えば経頭蓋磁気刺激(Transcranial Magnetic Stimulation:TMS)、反復経頭蓋磁気刺激(Repetitive TMS:rTMS)、磁気発作治療(Magnetic Seizure Therapy:MST)、末梢神経不快感の軽減などの経皮的磁気刺激を実施する目的で磁場を生成するため使用することができる。上述したように、以下の例でも説明および明瞭化のためTMSおよびrTMSの実施形態に関連して説明しているが、上記のタイプの全てを含め、いかなるタイプの経皮的磁性刺激も、本発明の一実施形態に従った実施が可能である。
【0018】
また本発明は、強磁性コア磁気刺激装置を使用するものと限定されるわけではなく、例えば空芯磁気刺激装置など、他のコア材料も使用可能である。本明細書における説明では、説明および明瞭化のため強磁性コア磁気刺激装置について記述している。一実施形態では、強磁性コアは略半球形であり、別の一実施形態では、少なくとも0.5テスラで磁気飽和に至る高飽和磁性材料が強磁性コアに含まれる。一部の実施形態では、強磁性コアは、治療領域で磁場分布を最適化する形状される。他の治療形態における治療領域(末梢神経における不快感の軽減など)は、程度の差はあるがTMSの場合のように深部になる可能性がある。強磁性コアは生成する磁場の効率的な局所化を可能にする。治療位置に効果的に照準を合わせると、問題のある神経を適切に治療し、あるいは近傍の神経を不要に刺激することなく治療領域を治療することにより、不快感を軽減することができる。
【0019】
TMS用の一般的な強磁性コアコイルは、脳の表面付近から2〜3cmの領域にわたり皮質刺激閾値を超える磁場を生成するよう設計されている。この磁場は、皮質層のより深部でさらに減少することが理解されるであろう。隣接した組織より有意に高い導電率を有する、より深部の解剖学的構造(頭蓋骨孔を貫通する脳神経など)では、パルス磁場に誘導された電流が集中する傾向がある。この集中効果により、導電率が最も高い局部において、神経細胞刺激閾値を越える局所的な高電流密度がもたらされる。その構造が感覚神経(三叉神経束など)である場合は、磁場が皮質刺激閾値を超える領域の外部に当該神経が位置している場合でも刺激されるおそれがある。この問題に対する従来の解決策には、影響を受ける神経から離れる方向へTMSコイルを再位置決めする、影響を受ける神経と誘導電流ベクトルが非平行になるよう磁場を再配置する、または磁場が距離とともに急速に減少するようTMSコイルの寸法をより小さく設計するなどがある。当業者であれば、これらの解決策では意図された治療に不利な影響を与えるおそれのあることが理解されるであろう。
【0020】
上記と対称的に、本発明の一実施形態では、治療領域内の一次磁場を減少させることなく、一次TMSコイル場に重なる磁場を生成し、影響を受ける神経付近の誘導電場および電流を減少させるよう設計および配置された追加コイルをTMSコイルと伴に使用する。そのような二次コイルにより生成される場は、前記一次TMSコイルの場より小さい。これは当該二次コイルが、影響を受ける神経付近に物理的に配置され、神経が刺激される部位の誘導電流密度を減少させるよう機能するためのみに必要とされてためである。この(1つまたは複数の)二次コイルは、影響を受ける神経を過剰に刺激してTMS場に起因する刺激にそれ以上応答できなくするなど、他の手段により不快感を軽減する機能も果たすことができる。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に関連して使用可能な強磁性コア材料を具備した磁気刺激装置10、すなわち「コイル」を例示したものである。装置10は、巻線部材14に囲まれた強磁性コア12を有する。絶縁材料16は、コア12と巻線部材14との間に介装されている。装置10は、装置10を制御システム(明瞭化のため図1には示していない)に接続するケーブル20も含む。ケーブル20は、保護および張力緩和のためハウジング18に覆われている。
【0022】
強磁性コア12は、例えば3%方向性ケイ素鋼またはバナジウムパーメンジュール(別称Supermendur)など種々の強磁性材料から作製することができる。前記材料は、例えば高飽和レベル、変化の急激なB−H曲線(飽和状態から不飽和状態に急激に切り替わる)、低渦電流損失を有し、コストが実用的であるものが選択される。このコア材料から、渦電流損失を最小限に抑える電気的に絶縁された多数の層を作製することができる。積層配向は、例えば渦電流を遮るようにする(可能な限り誘導電流の方向に垂直にする)。また、前記材料が粒子配向を有する場合は、これを誘導磁束に平行に方向付けなければならない。一実施形態では、前記強磁性コアは米国特許第6,132,361号および5,725,471号明細書(それぞれ参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする)に基づいている。
【0023】
一実施形態では、患者治療に、通常、略半球形の強磁性コアで構成されたコイルを使って患者に磁場を印加する工程が含まれる。場の強度および切り替え率は、実施中の治療タイプに適切な態様で標的領域に刺激を与えられるよう十分なものにする。
【0024】
神経刺激のシステムおよび方法の実施形態
上記のとおり、経皮的刺激を使うと、例えば末梢神経など問題のある神経に磁場を直接印加することにより患者の不快感を軽減できる。また上述したように、患者への経皮的刺激は治療のためのものであるが、望ましくない副作用が生じるおそれがあることにも留意すべきである。例えば経頭蓋刺激の場合は、脳神経や三叉神経などには、各々の刺激閾値を越えた磁場が付与される。その結果、患者は、例えば筋肉の痙攣(けいれん)や感覚神経から来る痛みにより不快感を感じる場合がある。このため、治療しない領域(非治療領域)の位置における磁場を低減するよう磁場の照準を合わせることが有益である。
【0025】
不快感は任意の場合において軽減が可能である。例えば、前記影響を受ける神経に対して磁気刺激を適用し、当該神経を麻痺させる、過剰刺激する、あるいは当該神経を治療して不快感を軽減する処置を施すことにより不快感を直接治療することができる。神経に印加される磁場は、望ましい効果を達成するため、場の強度、パルス反復率、ベクトルの向き、周波数特性などについて修正できることが理解されるであろう。不快感を軽減する別の方法は、上記のとおり、組織の磁気刺激に伴い治療領域に近接して生じる有害な副次的刺激を低減することである。有害な副次的刺激を軽減するため使用されるこの方法は、不快感を生じている神経の治療に使用される方法と同じであっても異なるものであってもよい。いずれの場合でも、治療用磁場の照準を効果的に合わせることによって患者の不快感を軽減することができる。
【0026】
例えば、不快感を生じる一部の神経は、他の神経より大きな問題をとなることがわかっている。例えば経頭蓋磁気刺激の場合は、(頭蓋骨の左右側部に位置する)三叉神経の枝は、望ましくない刺激に対し特に問題になる場合があることがわかっている。具体的には、三叉神経の枝の一部は頭蓋骨組織内の深部に位置しており、小さな開孔(孔)を通じて頭蓋骨を貫通し、顔の領域まで長く延びている。上記のように、骨と、孔を貫通する神経とでは導電率が大きく異なるため、電流密度は孔において増加する。このため、表在脳神経が刺激閾値より低いレベルの磁気刺激を受けた場合でも、三叉神経とその枝は、深部に存在するにもかかわらず、当該神経の刺激閾値より高レベルの磁気刺激を受けてしまい、その結果、例えば経頭蓋磁気刺激中に顔面筋肉が収縮し、さらに/または痛みが生じるおそれがある。そのため患者の治療に使用する磁場は、治療位置だけで刺激閾値を越えるようにし、三叉神経など敏感な隣接組織では不快感を軽減するよう局所的に最小限に抑えなければならない。これを受け、例えば三叉神経孔の領域において、刺激レベル未満まで磁場を低減する方法が有益である。
【0027】
治療用磁場の照準を合わせる上で使用できる方法の1つに、受動的構成要素を使用して、磁場を遮断、若しくは、あるいは形成してより正確に治療領域に照準を合わせるものがある。図2は、経皮的刺激に起因した不快感を軽減する受動的技術を例示した図である。図2に示したように、システム200は、患者頭部202の上位に位置し且つ磁気刺激装置201の下位に位置する1若しくはそれ以上のフェライトパッド210を含む。当然のことながら、フェライトパッド210の物理的構成は説明および明瞭化のため例示したものであり、このような構成の排他的表現ではない。例えば、フェライトパッド210は、磁気刺激装置201と患者頭部202との間に配置することができる。また、フェライトパッド210は、患者頭部202に直接的および/または間接的に装着し、さらに/または磁気刺激装置201に直接的または間接的に接続することもできる。非経頭蓋の実施形態では、例えば、磁気刺激装置201と、治療領域に近接した任意の位置との間にフェライトパッド210を配置することができる。さらに、フェライトパッド210の数および配置は、いかなる特定の構成にも限定されず、本明細書で説明する他の方法と併用できる。
【0028】
フェライトパッド210は、磁気刺激装置201により生成される磁場(線204a〜e)を効果的に「吸収」するよう作用する。特に、フェライトパッド210は、表面近接組織を刺激する磁場(線204a〜e)をオフセット、低減、および/または吸収し、かつ治療目的で患者深部に侵入する磁場が実質的に影響を受けることのないよう設計および構成できる。またフェライト材料を使用することで、フェライトパッド210が典型的に低導電率を有し、したがって誘導される渦電流とそれに付随する加熱、または磁気刺激装置201によって生じる治療用磁場の一時的乱れとを抑えることができる。システム200はフェライト材料の場合を説明してきたが、これらのパッドを、他の非フェライト材料、および/またはフェライト材料と非フェライト材料との組み合わせで作製してもよいことは言うまでもない。
【0029】
図からわかるように、前記フェライトパッド210は、電源等により駆動されないという意味で「受動的」なものである。むしろ、このフェライトパッド210は、その単なる物理的存在により望ましくない刺激を軽減するものである。このフェライトパッド210は、望ましくない表面刺激の軽減には効果的だが、磁気刺激装置210の生成した前記磁場(線204a〜e)を受動的に吸収するだけであるため、深部における望ましくない刺激の軽減にはさほど効果的でない。さらに、フェライトパッド210は物理的に(サイズ、位置、形状など)構成することは可能あっても電気的に構成することは可能でないため、重ね合わせ効果または相殺効果により磁気刺激装置201の磁場と相互作用する磁場を当該パッド210で生成することはできない。
【0030】
上記を鑑み、経皮的刺激に起因した不快感を能動的に軽減する技術を例示した図が図3である。図3に示したように、システム300は電極302aおよび302bと通信可能な電源301を含む。図3では電極を2つ示しているが、任意数の電極も使用できることを理解すべきである。
【0031】
前述のとおり、磁気刺激装置201はパルス磁場(線205a〜d)を生成し、これにより電場(線204a〜e)が発生する。電場(204a〜e)は、患者頭部202内に望ましい電流および望ましくない電流の双方を誘導する。システム300は、表面近接部で前記望ましくない電流により生じる不快感の問題を克服すると同時に、前記望ましい電流が患者治療効果を持続できるようにする。特に、電源301は電極302に電力(電流および/または電圧)を供給し、当該電極は電源301からの電力を患者頭部202に伝導する。
【0032】
したがって、前記電極は、実質的に一定な電力または時間変化する電力を電極302に供給することにより、能動的に不快感を軽減することができる。この電力が実質的に一定である場合、電極302を介して患者頭部202に伝達される電力によって、電極302間または電極302近傍の患者の神経、筋肉、および組織に実質的に一定な電場が生じる。電極302により生じる電場は、特定の細胞(磁気刺激装置201によって不要に刺激される細胞)にバイアスをかける強度を有する場合がある。このバイアスレベルは、前記細胞のほぼ脱分極レベルまたはそれ以上であってよい。前記細胞に脱分極レベルまたは略脱分極レベルのバイアスをかけると、例えば電解質が前記細胞に沿って再分配され、電解質が細胞膜を越えて移動する能力が低下する。細胞は、磁気刺激装置201によって生じる誘導電場に繰り返し応答し続ける能力がないため、細胞膜を越える電解質移動が減少すると、磁気刺激装置201により前記細胞が受ける刺激が低下する。その結果、治療中に患者が感じていた不快感は軽減される。この例は実質的に一定な電源の場合を説明したが、言うまでもなく、電力は治療中常時供給されなくともよく、例えば、治療用磁気刺激に対応するパルスの開始後いつでもオフにすることができる。
【0033】
磁気刺激の適用中供給される実質的に一定な電源に加え、あるいはその代わりに、電源301が供給する電力は時間変化するものであってよい。電源301からの時間変化する信号は、磁気刺激装置201により望ましくない刺激を受ける筋肉、組織、および/または神経の脱感作に使用することができる。特に、電源301は、特定の神経、筋肉、および/または組織を事前(すなわち磁気刺激装置201による治療パルスの印加前)に刺激することにより、それらの神経、筋肉、および/または組織が、本来治療を目的とするパルスに望ましくない応答をする能力を低減するよう設計することができる。電極302は必然的に患者頭部の表面に配置されるため、この方法は、より深部における望ましくない神経刺激の軽減には対応していない。
【0034】
ここで図4Aを参照すると、経皮的刺激に起因した不快感を軽減する別の能動的技術を例示した図が示されている。図4Aに示したように、システム400は、刺激回路403から受電して患者頭部406に磁場(明瞭化のため図4Aには示さず)を生成する磁気刺激装置402を含む。前述のとおり、磁気刺激装置402は、例えばTMSを使ったうつ病の治療など、特定の有益な治療効果をもたらすため患者体内に電流を誘導するパルス磁場を生成する。ただし、この同じ磁場は、表面近接組織、神経、および筋肉に望ましくない電流を誘発して患者に不快感を与えるおそれもある。
【0035】
患者406またはその近接部(また可能性として患者と磁気刺激装置402との間)に位置する表面コイル401は、磁気刺激装置402により生成される磁場の望ましくない効果をオフセット、排除、または低減するために使用できる。パルスプログラマ405は適切な波形を生成し、駆動回路404は、パルスプログラマ405が生成した前記波形を受信して前記表面コイル401に電力を供給する。これにより、表面コイル401は、磁気刺激装置402により生成され表面近接組織、神経、および筋肉に望ましくない刺激を与える磁場の一部を相殺する磁場を独自に生成しうる。また、表面コイル402が生成する磁場の強度および分布は、磁気刺激装置402により生成される一次磁場の治療用強度が、治療領域で実質的に低下しないようにするものである。
【0036】
図4Bは、一実施形態におけるコイル401の詳細を例示した図である。このような一実施形態において、コイル401は取り付けパッド407に連結されており、この取り付けパッドはコイル401の動作と実質的に干渉しない任意の物質から作製できる。一実施形態において、取り付けパッド407は、当該取り付けパッドを患者頭部上(患者406など、明瞭化のため図4Bでは示さず)に配置できるよう、付着性裏地、または他の固定用手段が設けられている。また、図4Aに関連して上述した駆動回路404(明瞭化のため図4Bでは示さず)などの電源に前記コイル401を連結できるよう、接触子408a〜bも設けられている。図2〜3に関連して上述した技術と同様、表面コイル401は表面にしか構成できないため、治療領域の磁場に悪影響を及ぼさずに深部の望ましくない刺激を軽減する能力は制限されてしまう。
【0037】
図5〜9に関連して後述するように、本発明の実施形態は、複数の磁気刺激装置、すなわち「コイル」(例えば、図1を参照して上記で説明したように、強磁性コア材料を具備した磁気刺激装置10コアを有する装置)を提供することにより、治療用経皮的磁気刺激をもたらすと同時に不快感を軽減することができる。本発明の一実施形態では、このような磁気コイルを2若しくはそれ以上を使用して、意図された治療に悪影響を及ぼすことなく不快感を軽減する。
【0038】
例えば、また図5〜9に関連して以下で詳しく説明するように、一実施形態では、より大きな第1の磁気コイル(磁気刺激装置)を使用し、患者の治療領域を含む領域(患者頭部など)全体にわたり、比較的集束していない(広がりのある)刺激閾値強度未満の第1の磁場を生成する。そして、より小さい第2のコイルを使用し、比較的集束した刺激強度未満の第2の磁場を生成する。上記のとおり、磁場は、治療領域で(重ね合わせて)追加することにより、治療領域内で刺激閾値を越える集束磁場を生成し、周辺組織への刺激を最小限に抑えて不快感を軽減しながら治療を行なえるよう構成することができる。治療自体は、治療領域周辺の組織に対する刺激を低下させることによる不快感の軽減のほか、不快感の軽減が目的であることが理解されるであろう。
【0039】
このような一実施形態では、コイルを大きくするほど、必要に応じて患者体内のより深部に侵入できる磁場を生成でき、コイルを小さくすれば、治療領域に正確に照準を合わせるための集束磁場を生成できることがわかる。このように、大型コイルは正確に集束させた磁場を生成する場合は不要であり、また小型コイルは超高刺激閾値強度の磁場を生成するに場合は不要であるため、各サイズのコイルの欠点を緩和すると同時に各サイズの磁気コイルの利点を最大限に活用するものである。そのような一実施形態では、1若しくはそれ以上の治療領域で集束磁場を生成する目的で、任意の数、サイズ、および/または構成のコイルを使用できることが理解されるであろう。そのような構成では、付加的または副次的な不快感を周辺組織に生じることなく、不快感などを治療するためのカスタマイズされた磁場により、患者体内深部の治療位置に到達することが可能になる。これにより、単一磁気コイルの場合に比べ、患者の非治療領域にかかる磁場をより低減することができる。
【0040】
別の実施形態では、図8〜9に関連して以下で詳述するように、治療領域の刺激閾値を越える磁場を生成するため、1若しくはそれ以上のより大きな第1の磁気コイルが使用される。また、不快感を生じる神経に照準を合わせるよう1若しくはそれ以上の集束磁場を生成するため、1若しくはそれ以上のより小さな第2の磁気コイルが使われる。上述したとおり、磁場は、不快感を生じる神経の位置で重ね合わされた磁場が刺激閾値未満になり、治療領域での刺激が実質的に影響を受けることなく不快感が軽減される程度まで互いに相殺し合うよう構成することができる。あるいは、1若しくはそれ以上のより小さな第2の磁気コイルで、刺激により不快感を生じる領域に照準を合わせ、前記神経を意図的に過剰刺激し、前記神経が効果的に麻痺されて磁場に応答できなくすることもできる。また、そのような過剰刺激技術は、治療領域自体にも不快感軽減用に使用することができる。そのような相殺または過剰刺激を実施するため磁気コイルを使用すると、患者体内の深部に位置する不快感を生じる神経への刺激を軽減できることが理解されるであろう。
【0041】
以下では2コイル構成について説明しているが、一実施形態に基づきより多くのコイルを使ってもよいことが理解されるであろう。また以下の説明では、図1に関連して上述した前記強磁性コア材料を具備した磁気刺激装置10など、強磁性コアを具備した磁気刺激装置を採用しているが、空芯コイルを含むいかなるタイプの磁気刺激装置を使用しても、同等に本発明の一実施形態に整合したものとなる。
【0042】
図5は、2つ以上の強磁性コアコイルを使って経皮的刺激を実施するための技術を例示したブロック図である。刺激システム510では、望ましい量の電力をコイルに供給し、かつ適切な態様で前記コイルにパルスを印加することにより、前記コイルの動作を制御する。波形の形状や周波数などは、患者および/または実施する治療タイプに従い選択される。ユーザインターフェースおよび刺激装置制御511は、刺激システム510の利用者が、前記コイルの操作用に1若しくはそれ以上の望ましいパラメータを入力できるようにする。前記コイルを制御する目的では、任意数および/またはタイプのパラメータを入力できることが理解されるであろう。ユーザインターフェースおよび刺激装置制御部511は、上記の不快感軽減技術に使われるコントローラと同様な態様で構成することができるが、制御部511は、2つ以上の磁気刺激コイルを制御するようにもできることが理解されるであろう。
【0043】
パルスプログラマ512A〜Bは、前記ユーザインターフェースおよび刺激装置制御部511で受信された前記パラメータに従って適切な波形を生成し、これを各駆動回路513A〜Bに入力する。一実施形態では、この波形生成工程に追加パラメータが自動的に含まれることもある。駆動回路513A〜Bは、パルスプログラマ512A〜Bが生成した波形を受信し、一次コイルおよび二次コイル501A〜Bに電力を提供する。
【0044】
電力および波形特性を任意に組み合わせても、同等に一実施形態に整合することが理解されるであろう。例えば、一次パルスプログラマA 512Aが生成する波形の結果発生する磁場は、二次パルスプログラマB 512Bが生成する波形の結果発生する磁場と異なる特性を有する。治療領域において磁場が望ましい特性を有する限り、いかなる構成の磁場も使用可能である。
【0045】
一次コイル501Aは、図1に関連して上記説明した態様で一次磁場を生成する。上記のとおり、一次コイル501Aは、主な治療用磁場を提供することができ、あるいはより小領域の治療用磁場を提供するよう構成することもできる。同様に、二次コイル501Bは、一次コイル501Aが提供する磁場と同じ磁場を提供しても、あるいは一次コイル501Aが提供する磁場と異なる特性を有する磁場を提供してもよい。また、コイル501A〜Bは、それぞれ物理的に同一のものであっても、あるいは異なる機械的特性および/または電磁的特性を有してもよい。
【0046】
一実施形態において、一次コイル501Aは刺激レベル未満の磁場を生成するため使用され、二次コイル501Bは、刺激レベル未満の別の磁場を治療領域に追加する。一実施形態では、どちらの磁場も、単独では、患者の治療領域の刺激閾値または脳神経や三叉神経など他領域の刺激閾値を越えない。どちらの刺激レベル未満の磁場のレベルおよび位置も、上記のとおり望ましい治療位置で場が重なり合うよう選択することができる。この重ね合わされた磁場は、治療位置における神経細胞の脱分極により前記領域を刺激する上で十分な強度にできる。
【0047】
図6Aおよび6Bは、経皮的刺激の実施に使用される複数の磁気刺激装置(強磁性コアを具備した複数の磁気刺激装置)の例示的な構成を示した図である。図からわかるように、図6Aは患者1001の正面図、図6Bは患者1001の斜視図である。一次コイル501Aおよび二次コイル501Bは、図5に関連して上述したとおりである。これらの図では患者の頭部1001を示しており、治療領域1000は、患者頭部1001内の任意位置として例示している。図6Aの構成は、患者頭部1001に限定されない患者上の任意位置である治療領域に、治療用磁場を提供するようにできることが理解されるであろう。
【0048】
図6A〜Bでは、一次コイル501Aは、治療用磁場の大半を提供する「主な」コイルであってよく、二次コイル501Bは、治療領域1000で刺激閾値を越える磁場を生成する局所的な磁場を提供するものであってよい。例えば、一次コイル501Aは、頭蓋骨内のすべての点において刺激レベル未満の磁場を生成する。より小型の二次コイル501Bには、前記一次コイルと同期したパルスが印加され、前記治療領域1001に照準を合わせるため局所的な磁場が生成される。コイル501Aおよびコイル501Bの場の合計は、治療領域1000で刺激閾値を越え、標的領域の外側では刺激レベル未満まで急激に低下して、脳神経および特に三叉神経が刺激レベル未満の磁場にしか曝されないようにできる。これらコイル501Aおよび501Bは、三叉神経(特にその孔)で磁場が十分に減少することで、例えば患者1001に何の感覚も生じないよう設計できることが理解されるであろう。体内の他の位置の他の神経を治療する場合、上記のコイル構成は、末梢神経が患者体内の深部にある場合でも、そのような神経における患者の不快感を治療できることが理解されるであろう。
【0049】
図7は、経皮的刺激を実施するための複数の磁気刺激装置の使用を例示したフローチャートである。例示した方法700は、経皮的磁気刺激治療を促進しつつ、患者の不快感を最小限に抑えるものである。工程701では、信号が第1の導体に提供される。一実施形態では、この信号が、図5に関連して上述した一次駆動回路513Aにより生成され、一次コイル501Aの一部である前記第1の導体へ送信されることが理解されるであろう。同様に、工程702では、信号が第2の導体に提供される。一実施形態では、この信号が、二次駆動回路513Bにより生成され、二次コイル501Bの一部である前記第2の導体へ送信されることが理解されるであろう。
【0050】
工程703では、前記第1の導体を使って刺激閾値未満の電場および/または磁場が生成される。例えば一実施形態では、一次コイル501Aにパルスが印加され、図6A〜Bに関連して上述したように磁場が生成される。この磁場は、やはり上記のとおり比較的集束していない(広がりのある)場であることが理解されるであろう。工程704では、前記第2の導体を使って別の刺激閾値未満の電場および/または磁場を生成することができる。この場は、やはり上記のとおり、比較的集束した場であることが理解されるであろう。例えば、二次コイル501Bにパルスを印加して、図6A〜Bに関連して上述したように磁場を生成することができる。工程705では、前記導体により生成された磁場の強度および位置、また可能性として他のパラメータが調整され、重ね合わされた電場および/または磁場の領域が生成される。電場および/または磁場が初期に正しく設定されていれば、工程705での調整が不要になる場合もあることが理解されるであろう。
【0051】
工程706では、TMSやrTMSなどの経皮的磁気刺激治療に関連した上記の重ね合わせ磁場により患者が治療される。このような刺激および治療を図7で説明した態様により実施することにより、患者は、不快感を最小限に抑えた治療を受けられることが理解されるであろう。
【0052】
上記のとおり、複数のコイルは、本発明の一実施形態と整合した態様で、何通りの方法でも構成することができる。例えば、一実施形態に係る構成では、従来のTMS態様で第1のコイル(前記一次コイル501Aなど)を使用し、その場合、前記第1のコイルは、望ましいTMS刺激を適用する上で十分な場の強度を提供する。ただし、第2のコイル(前記二次コイル501Bなど)を付加的に使用し、これを不快感を生じる脳神経に近接して配置することにより、その脳神経からの不快感を軽減することが可能である。
【0053】
このような態様で2つのコイルを使用した場合、上記のように、一実施形態は、患者に不快感を与えている脳神経の領域において前記第2のコイルが磁場の一部または全部を相殺する(「局所的な場の相殺」と呼ばれる)よう構成でき、あるいは、前記第2のコイルが、前記脳神経を意図的に過剰刺激して神経を麻痺させ、前記第1のコイルからのパルスにそれ以上応答できないようにする(「過剰刺激」と呼ばれる)ようにも構成できる。前記第2のコイルを使った局所的な場の相殺は、前記第1のコイルから受ける感覚が特に急性の場合などに対する特定の応用で非常に重要となる。そのような応用の1つに、例えば統合失調症(幻聴)の治療におけるTMS使用がある。この応用での標的領域は、表在筋肉組織神経および表在三叉神経の枝付近である。一実施形態において、前記第2のコイルは、このような措置中に患者が受ける感覚を最小限に抑えるよう、経験的に基づき配置される。この特定の実施形態において、前記第2のコイルは、場が相殺されるように前記第1のコイルに対して配置すべきであることが理解されるであろう。
【0054】
問題のある1若しくはそれ以上の神経に対する過剰刺激は、本実施形態のもう1つの変形形態である。このような応用では、脳神経とカップリングするよう周波数が最適化されたパルス波形で、前記第2のコイルが操作される。パルスは、確実に前記神経が再分極できなくなり外部からの刺激に応答できなくなるよう、十分な率で繰り返し適用される。前記第2のコイルからのパルスは、必ずしも一次TMS治療と同期したものではない。一実施形態では、前記2つのコイルは、双方のコイルに同時にパルスが印加される場合、場が加算されないよう配置される。あるいは、一次TMS治療パルスの印加中は前記第2のコイルにパルスが印加されないよう、前記第2のコイルのシークエンスを構成することもできる。
【0055】
これを受け、経皮的刺激に起因する不快感の軽減に使用される複数の磁気刺激装置の例示的な構成を例示した図が図8である。図8の構成は、上記いずれの場合でも、すなわち局所的な場の相殺でも過剰刺激でも使用できることが理解されるであろう。また図8の構成は、説明および明瞭化のため経頭蓋治療に関連して説明しているが、これはこの構成が、上記に記載した方法を含めいかなる治療方法に関連しても使用できるためである。このため、一次コイル501Aは、患者頭部1001内の治療領域1000で望ましい刺激を与える上で十分である、一次的な治療用磁場を提供する。二次コイル501Bは、脳神経801を対象とした第2の磁場を提供する。脳神経801は、刺激治療の結果として不快感を生じるものであれば、いかなるタイプの脳神経であっても、また患者頭部1001のいかなる領域の神経であってもよいことが理解されるであろう。二次コイル501Bがもたらす磁場は、場の特性に応じ、前記一次磁場の一部を相殺して局所的な場の相殺を行うか、あるいは経頭蓋磁気刺激の実施中、確実に脳神経801が再分極できないように過剰刺激を行う。
【0056】
図9は、経皮的刺激に起因した不快感を軽減するための複数の磁気刺激装置の使用を例示したフローチャートである。図9に例示した方法900は、例えばTMSやrTMSその他の治療など、任意タイプの経頭蓋磁気刺激中に不快感を軽減するため、局所的な場の相殺および過剰刺激に同等に適用される。工程901では、一次電場および/または一次磁場(双方とも刺激閾値を越えており、治療領域の治療目的には十分である)を生成するため、第1の導体(一次コイル501Aなど)に信号が提供される。例えば一実施形態では、一次コイル501Aにパルスが印加され、図11に関連して上述したように磁場が生成される。
【0057】
工程902では、信号が第2の導体(二次コイル501Bなど)に提供され、二次電場および/または二次磁場が生成される。例えば一実施形態では、二次コイル501Aにパルスが印加され、図11に関連して上述したように磁場が生成される。工程903では、前記第1の導体により生成された磁場の強度および位置、また可能性として他のパラメータが調整され、治療領域に治療用磁場が提供される。この方法900では、前記第1の導体が単独で完全な治療用磁場を生成することが理解されるであろう。また、電場および/または磁場が初期に正しく設定されていれば、工程903での調整が不要になる場合もあることも理解されるであろう。
【0058】
工程904では、前記第2の導体により生成される磁場の強度および位置、また可能性として他のパラメータが調整される。一実施形態では、刺激を受けることにより患者に不快感を与え、または望ましくない影響を及ぼす神経その他の組織に関連した領域において、前記第1の導体が生成した磁場を相殺する上で十分な局所的磁場を、前記第2の導体が提供できる。このような態様では、前記神経に適用される磁場は、その刺激閾値未満である。別の実施形態では、不快感を生じる神経神経が治療中に再分極するのを防ぐため、前記第2の導体が前記神経を過剰に刺激する磁場を提供する。
【0059】
この方法900および図7の方法700は、組み合わせても使用できることが理解されるであろう。例えば、治療用磁場は、図7の方法700に基づき2つ以上の一次コイルにより生成することができる。また、方法900に従い、前記一次コイルにより生成される磁場に起因した不快感を軽減するため、1若しくはそれ以上の他のコイルを動作させてもよい。したがって、不快感を軽減する方法は、任意数の構成で組み合わせることができる。
【0060】
また、無髄神経細胞(髄鞘で覆われていない神経細胞)の場合は、有髄神経細胞と異なる周波数応答特性を有する(時値(クロナキシー)または応答時定数が異なる)ことも理解されるであろう。この事実は、目的の神経細胞に対しパルス周波数を最適化すると有利に活用することができる。例えば、前記第2のコイルを有髄脳神経に対し「チューニング」すると、皮質神経細胞への刺激効果を下げることができる。同様に、無髄神経細胞を最適に刺激するパルス周波数で前記第1のコイルを動作させると、脳神経への望ましくない刺激を最小限に抑えることができる。そのような「チューニング」は、本明細書で説明するいずれの技術、または技術の組み合わせに関連しても使用できることが理解されるであろう。
【0061】
当然のことながら、以上の例示的実施形態は単に説明目的で提供したものであり、決して本発明を限定すると解釈されるべきものではない。本明細書で使用する用語は、説明および例示のためのものであり、限定を意図した用語ではない。また、本明細書で説明した利点および目的は、本発明を実施するすべての実施形態でもたらせるとは限らない。さらに、本発明は、特定の構造、材料、および/または実施形態について本明細書で説明してきたが、本明細書に開示した特定の事柄に限定されるものではない。むしろ、本発明は、添付した請求項の範囲内に含まれる機能的に等価なすべての構造、方法、および用途へと拡張される。当業者であれば、本明細書の説明を活用することにより本発明に多数の修正(変更)を加えることができ、また本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更形態を実施することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に関連して使用される強磁性コア材料を具備した磁気刺激装置を例示した図である。
【図2】図2は、経皮的刺激に起因した不快感を軽減ための受動的技術を例示した図である。
【図3】図3は、経皮的刺激に起因した不快感を軽減ための能動的技術を例示した図である。
【図4A】図4Aは、経皮的刺激に起因した不快感を軽減するための別の能動的技術を例示した図である。
【図4B】図4Bは、経皮的刺激に起因した不快感を軽減するために使用するコイルを例示した図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に係る2つ以上の磁気刺激装置を使用して経皮的刺激を実施する技術を例示したブロック図である。
【図6A】図6A〜Bは、本発明の一実施形態に係る経皮的刺激を実施するために使用される複数の磁気刺激装置の例示的な構成を示した図である。
【図6B】図6A〜Bは、本発明の一実施形態に係る経皮的刺激を実施するために使用される複数の磁気刺激装置の例示的な構成を示した図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態に係る経皮的刺激を実施するための複数の磁気刺激装置の使用について例示したフローチャートである。
【図8】図8は、本発明の一実施形態に係る経皮的刺激に起因した不快感を軽減するために使用される複数の磁気刺激装置の例示的な構成を示した図である。
【図9】図9は、本発明の一実施形態に係る経皮的刺激に起因した不快感を軽減するための複数の磁気刺激装置の使用について例示したフローチャートである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経皮的磁気刺激を実施する方法であって、
第1の磁気刺激装置を使って第1の位置および第2の位置において第1の磁場を生成する工程であって、前記第1の磁場は前記第1の位置および前記第2の位置において磁気刺激を生じさせるものである、前記生成する工程と、
第2の磁気刺激装置を使って前記第2の位置において第2の磁場を生成する工程と
を有する方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記第2の位置における磁気刺激は当該第2の位置で磁束密度を低減することにより軽減されるものである。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、前記第2の磁場は前記第2の位置において前記第1の磁場と破壊的に干渉するものである。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、前記第1の位置は治療領域である。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、前記第2の位置は治療領域である。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、前記第1の位置は脳である。
【請求項7】
請求項6記載の方法において、前記第2の位置は脳神経である。
【請求項8】
請求項6記載の方法において、前記第2の位置は三叉神経である。
【請求項9】
請求項1記載の方法において、前記第2の位置は疼痛(痛み)に敏感な位置である。
【請求項10】
請求項1記載の方法において、前記第2の位置において前記刺激を軽減する工程は、前記第2の磁場により前記第2の位置を過剰刺激する工程を有するものである。
【請求項11】
請求項10記載の方法において、前記過剰刺激により、前記第2の位置の疼痛感受性は低下するものである。
【請求項12】
請求項11記載の方法において、前記過剰刺激により、前記第2の位置の前記磁気刺激に応答する能力は低下するものである。
【請求項13】
請求項12記載の方法において、前記過剰刺激により、前記第2の位置の再分極は防止されるものである。
【請求項14】
請求項1記載の方法において、この方法は、さらに、
前記第1の磁場を検出する工程を有し、前記第2の磁場は前記検出された第1の磁場に基づき生成されるものである。
【請求項15】
請求項1記載の方法において、前記磁気刺激は磁場により相殺されるものである。
【請求項16】
請求項1記載の方法において、この方法はうつ病または統合失調症の治療に使用されるものである。
【請求項17】
経皮的磁気刺激を実施するシステムであって、
第1の位置を経皮的に刺激するための第1の磁気刺激装置と、
第2の位置で刺激を軽減するための第2の磁気刺激装置と
を有するシステム。
【請求項18】
請求項17記載のシステムにおいて、このシステムは、さらに、
前記第1の磁気刺激装置および前記第2の磁気刺激装置と通信可能な刺激装置回路を有するものである。
【請求項19】
請求項18記載のシステムにおいて、前記刺激装置回路は、前記第1の磁気刺激装置に第1の信号を提供し、前記第2の磁気刺激装置に第2の信号を提供するものである。
【請求項20】
請求項19記載のシステムにおいて、前記第1の信号および前記第2の信号は異なる信号である。
【請求項21】
請求項17記載のシステムにおいて、前記第1の磁気刺激装置および前記第2の磁気刺激装置は、それぞれの磁場に応じて配置されるものである。
【請求項22】
請求項17記載のシステムにおいて、前記第1の磁気刺激装置および前記第2の磁気刺激装置は異なる特性を有するものである。
【請求項23】
請求項22記載のシステムにおいて、前記異なる特性とは異なる形状である。
【請求項24】
請求項22記載のシステムにおいて、前記異なる特性とは異なるサイズである。
【請求項25】
請求項24記載のシステムにおいて、前記第1の磁気刺激装置は前記第2の磁気刺激装置より大きいものである。
【請求項26】
請求項17記載のシステムにおいて、前記第1の磁気刺激装置および前記第2の磁気刺激装置はそれぞれ強磁性コアを有するものである。
【請求項27】
請求項26記載のシステムにおいて、前記第1の磁気刺激装置は前記強磁性コアの周囲に設けられた平巻線部材を有するものである。
【請求項28】
請求項26記載のシステムにおいて、前記第2の磁気刺激装置は前記強磁性コアの周囲に設けられた平巻線部材を有するものである。
【請求項29】
請求項17記載のシステムにおいて、前記第1の磁気刺激装置は頭部上に配置されるものである。
【請求項30】
請求項17記載のシステムにおいて、前記第1の磁気刺激装置は末梢神経に近接して配置されるものである。
【請求項31】
請求項17記載のシステムにおいて、前記第1の磁気刺激装置および前記第2の磁気刺激装置に対して実質的に同様な時に実質的に同様な継続期間電力が供給されるものである。
【請求項32】
請求項31記載のシステムにおいて、前記第1の磁気刺激装置および前記第2の磁気刺激装置に対して実質的に同時にパルス電力が供給されるものである。
【請求項33】
請求項31記載のシステムにおいて、前記第1の磁気刺激装置および前記第2の磁気刺激装置に対して実質的に異なる時にパルス電力が供給されるものである。
【請求項34】
経皮的磁気刺激を実施するシステムであって、
第1の磁場を生成することにより治療領域を経皮的に刺激するための第1の磁気刺激装置と、
第2の磁場を生成することにより前記治療領域を経皮的に刺激するための第2の磁気刺激装置と
を有するシステム。
【請求項35】
請求項34記載のシステムにおいて、前記第1の磁場および前記第2の磁場は、それぞれ前記治療領域を十分刺激するレベル未満の場の強度を有するものである。
【請求項36】
請求項35記載のシステムにおいて、前記第1の磁場および前記第2の磁場は前記治療領域において重なり合い、当該治療領域を刺激する上で十分な場の強度を有するものである。
【請求項37】
請求項34記載のシステムにおいて、前記第1の磁気刺激装置および前記第2の磁気刺激装置は前記治療領域において局所的な磁場を生成するものである。
【請求項38】
請求項34記載のシステムにおいて、前記第1の磁気刺激装置および前記第2の磁気刺激装置はそれぞれ強磁性コアを有するものである。
【請求項39】
請求項38記載のシステムにおいて、前記第1の磁気刺激装置は前記強磁性コアの周囲に設けられた平巻線部材を有するものである。
【請求項40】
請求項38記載のシステムにおいて、前記第2の磁気刺激装置は前記強磁性コアの周囲に設けられた平巻線部材を有するものである。
【請求項41】
請求項34記載のシステムにおいて、前記第1の磁場は治療領域より大きな領域にわたり実質的に均一である。
【請求項42】
請求項41記載のシステムにおいて、前記治療領域は患者の頭部である。
【請求項43】
請求項41記載のシステムにおいて、前記治療領域は末梢神経である。
【請求項44】
請求項41記載のシステムにおいて、前記第2の磁場は前記治療領域に局所化されるものである。
【請求項45】
請求項34記載のシステムにおいて、前記第1の磁場および前記第2の磁場の合計値は、前記治療領域における所定の閾値を越えるものである。
【請求項46】
請求項45記載のシステムにおいて、前記所定の閾値は前記治療領域における標的神経の刺激閾値に相当するものである。
【請求項47】
請求項45記載のシステムにおいて、前記所定の閾値はヒトの疼痛耐性の関数である。
【請求項48】
請求項34記載のシステムにおいて、前記第1の磁場および前記第2の磁場の合計は、それぞれ前記治療領域以外の位置において所定の閾値未満の場の強度を有するものである。
【請求項49】
請求項48記載のシステムにおいて、前記位置は脳神経に相当するものである。
【請求項50】
請求項48記載のシステムにおいて、前記位置は三叉神経に相当するものである。
【請求項51】
請求項48記載のシステムにおいて、前記位置は頭蓋の孔に相当するものである。
【請求項52】
請求項48記載のシステムにおいて、前記位置は末梢神経に相当するものである。
【請求項53】
請求項34記載のシステムにおいて、前記第1の磁気刺激装置および前記第2の磁気刺激装置は異なる特性を有するものである。
【請求項54】
請求項53記載のシステムにおいて、前記異なる特性とは異なる形状である。
【請求項55】
請求項53記載のシステムにおいて、前記異なる特性とは異なるサイズである。
【請求項56】
経皮的磁気刺激を実施する方法であって、
第1の磁気刺激装置を使って、治療領域を経皮的に刺激するための第1の磁場を生成する工程と、
第2の磁気刺激装置を使って、前記治療領域を経皮的に刺激するための第2の磁場を生成する工程と
を有する方法。
【請求項57】
請求項56記載の方法において、前記第1の磁場および前記第2の磁場はそれぞれ前記治療領域を十分刺激するレベル未満の場の強度を有するものである。
【請求項58】
請求項57記載の方法において、前記第1の磁場および前記第2の磁場は前記治療領域において重なり合い、当該治療領域を刺激する上で十分な場の強度を有する磁場を形成するものである。
【請求項59】
請求項56記載の方法において、前記第1の磁気刺激装置および前記第2の磁気刺激装置は前記治療領域において局所的な磁場を生成するものである。
【請求項60】
請求項56記載の方法において、前記第1の磁気刺激装置および前記第2の磁気刺激装置により生成される磁場の合計値は、前記治療領域における所定の閾値を越えるものである。
【請求項61】
請求項60記載の方法において、前記所定の閾値は前記治療領域における標的神経の刺激閾値に相当するものである。
【請求項62】
請求項60記載の方法において、前記所定の閾値はヒトの疼痛耐性の関数である。
【請求項63】
請求項56記載の方法において、この方法は、さらに、
前記第1の磁場を検出する工程を有し、前記第2の磁場は前記検出された第1の磁場に基づき生成されるものである。
【請求項64】
請求項56記載の方法において、前記第1の磁場および前記第2の磁場の合計は、それぞれ前記治療領域以外の位置において所定の閾値未満の場の強度を有するものである。
【請求項65】
請求項64記載の方法において、前記位置は脳神経に相当するものである。
【請求項66】
請求項64記載の方法において、前記位置は三叉神経に相当するものである。
【請求項67】
請求項64記載の方法において、前記位置は末梢神経に相当するものである。
【請求項68】
請求項64記載の方法において、前記位置は頭蓋の孔に相当するものである。
【請求項69】
請求項56記載の方法において、この方法は、さらに、
前記第1の磁場を検出する工程を有し、前記第2の磁場は前記検出された第1の磁場に基づき生成されるものである。
【請求項1】
経皮的磁気刺激を実施する方法であって、
第1の磁気刺激装置を使って第1の位置および第2の位置において第1の磁場を生成する工程であって、前記第1の磁場は前記第1の位置および前記第2の位置において磁気刺激を生じさせるものである、前記生成する工程と、
第2の磁気刺激装置を使って前記第2の位置において第2の磁場を生成する工程と
を有する方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記第2の位置における磁気刺激は当該第2の位置で磁束密度を低減することにより軽減されるものである。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、前記第2の磁場は前記第2の位置において前記第1の磁場と破壊的に干渉するものである。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、前記第1の位置は治療領域である。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、前記第2の位置は治療領域である。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、前記第1の位置は脳である。
【請求項7】
請求項6記載の方法において、前記第2の位置は脳神経である。
【請求項8】
請求項6記載の方法において、前記第2の位置は三叉神経である。
【請求項9】
請求項1記載の方法において、前記第2の位置は疼痛(痛み)に敏感な位置である。
【請求項10】
請求項1記載の方法において、前記第2の位置において前記刺激を軽減する工程は、前記第2の磁場により前記第2の位置を過剰刺激する工程を有するものである。
【請求項11】
請求項10記載の方法において、前記過剰刺激により、前記第2の位置の疼痛感受性は低下するものである。
【請求項12】
請求項11記載の方法において、前記過剰刺激により、前記第2の位置の前記磁気刺激に応答する能力は低下するものである。
【請求項13】
請求項12記載の方法において、前記過剰刺激により、前記第2の位置の再分極は防止されるものである。
【請求項14】
請求項1記載の方法において、この方法は、さらに、
前記第1の磁場を検出する工程を有し、前記第2の磁場は前記検出された第1の磁場に基づき生成されるものである。
【請求項15】
請求項1記載の方法において、前記磁気刺激は磁場により相殺されるものである。
【請求項16】
請求項1記載の方法において、この方法はうつ病または統合失調症の治療に使用されるものである。
【請求項17】
経皮的磁気刺激を実施するシステムであって、
第1の位置を経皮的に刺激するための第1の磁気刺激装置と、
第2の位置で刺激を軽減するための第2の磁気刺激装置と
を有するシステム。
【請求項18】
請求項17記載のシステムにおいて、このシステムは、さらに、
前記第1の磁気刺激装置および前記第2の磁気刺激装置と通信可能な刺激装置回路を有するものである。
【請求項19】
請求項18記載のシステムにおいて、前記刺激装置回路は、前記第1の磁気刺激装置に第1の信号を提供し、前記第2の磁気刺激装置に第2の信号を提供するものである。
【請求項20】
請求項19記載のシステムにおいて、前記第1の信号および前記第2の信号は異なる信号である。
【請求項21】
請求項17記載のシステムにおいて、前記第1の磁気刺激装置および前記第2の磁気刺激装置は、それぞれの磁場に応じて配置されるものである。
【請求項22】
請求項17記載のシステムにおいて、前記第1の磁気刺激装置および前記第2の磁気刺激装置は異なる特性を有するものである。
【請求項23】
請求項22記載のシステムにおいて、前記異なる特性とは異なる形状である。
【請求項24】
請求項22記載のシステムにおいて、前記異なる特性とは異なるサイズである。
【請求項25】
請求項24記載のシステムにおいて、前記第1の磁気刺激装置は前記第2の磁気刺激装置より大きいものである。
【請求項26】
請求項17記載のシステムにおいて、前記第1の磁気刺激装置および前記第2の磁気刺激装置はそれぞれ強磁性コアを有するものである。
【請求項27】
請求項26記載のシステムにおいて、前記第1の磁気刺激装置は前記強磁性コアの周囲に設けられた平巻線部材を有するものである。
【請求項28】
請求項26記載のシステムにおいて、前記第2の磁気刺激装置は前記強磁性コアの周囲に設けられた平巻線部材を有するものである。
【請求項29】
請求項17記載のシステムにおいて、前記第1の磁気刺激装置は頭部上に配置されるものである。
【請求項30】
請求項17記載のシステムにおいて、前記第1の磁気刺激装置は末梢神経に近接して配置されるものである。
【請求項31】
請求項17記載のシステムにおいて、前記第1の磁気刺激装置および前記第2の磁気刺激装置に対して実質的に同様な時に実質的に同様な継続期間電力が供給されるものである。
【請求項32】
請求項31記載のシステムにおいて、前記第1の磁気刺激装置および前記第2の磁気刺激装置に対して実質的に同時にパルス電力が供給されるものである。
【請求項33】
請求項31記載のシステムにおいて、前記第1の磁気刺激装置および前記第2の磁気刺激装置に対して実質的に異なる時にパルス電力が供給されるものである。
【請求項34】
経皮的磁気刺激を実施するシステムであって、
第1の磁場を生成することにより治療領域を経皮的に刺激するための第1の磁気刺激装置と、
第2の磁場を生成することにより前記治療領域を経皮的に刺激するための第2の磁気刺激装置と
を有するシステム。
【請求項35】
請求項34記載のシステムにおいて、前記第1の磁場および前記第2の磁場は、それぞれ前記治療領域を十分刺激するレベル未満の場の強度を有するものである。
【請求項36】
請求項35記載のシステムにおいて、前記第1の磁場および前記第2の磁場は前記治療領域において重なり合い、当該治療領域を刺激する上で十分な場の強度を有するものである。
【請求項37】
請求項34記載のシステムにおいて、前記第1の磁気刺激装置および前記第2の磁気刺激装置は前記治療領域において局所的な磁場を生成するものである。
【請求項38】
請求項34記載のシステムにおいて、前記第1の磁気刺激装置および前記第2の磁気刺激装置はそれぞれ強磁性コアを有するものである。
【請求項39】
請求項38記載のシステムにおいて、前記第1の磁気刺激装置は前記強磁性コアの周囲に設けられた平巻線部材を有するものである。
【請求項40】
請求項38記載のシステムにおいて、前記第2の磁気刺激装置は前記強磁性コアの周囲に設けられた平巻線部材を有するものである。
【請求項41】
請求項34記載のシステムにおいて、前記第1の磁場は治療領域より大きな領域にわたり実質的に均一である。
【請求項42】
請求項41記載のシステムにおいて、前記治療領域は患者の頭部である。
【請求項43】
請求項41記載のシステムにおいて、前記治療領域は末梢神経である。
【請求項44】
請求項41記載のシステムにおいて、前記第2の磁場は前記治療領域に局所化されるものである。
【請求項45】
請求項34記載のシステムにおいて、前記第1の磁場および前記第2の磁場の合計値は、前記治療領域における所定の閾値を越えるものである。
【請求項46】
請求項45記載のシステムにおいて、前記所定の閾値は前記治療領域における標的神経の刺激閾値に相当するものである。
【請求項47】
請求項45記載のシステムにおいて、前記所定の閾値はヒトの疼痛耐性の関数である。
【請求項48】
請求項34記載のシステムにおいて、前記第1の磁場および前記第2の磁場の合計は、それぞれ前記治療領域以外の位置において所定の閾値未満の場の強度を有するものである。
【請求項49】
請求項48記載のシステムにおいて、前記位置は脳神経に相当するものである。
【請求項50】
請求項48記載のシステムにおいて、前記位置は三叉神経に相当するものである。
【請求項51】
請求項48記載のシステムにおいて、前記位置は頭蓋の孔に相当するものである。
【請求項52】
請求項48記載のシステムにおいて、前記位置は末梢神経に相当するものである。
【請求項53】
請求項34記載のシステムにおいて、前記第1の磁気刺激装置および前記第2の磁気刺激装置は異なる特性を有するものである。
【請求項54】
請求項53記載のシステムにおいて、前記異なる特性とは異なる形状である。
【請求項55】
請求項53記載のシステムにおいて、前記異なる特性とは異なるサイズである。
【請求項56】
経皮的磁気刺激を実施する方法であって、
第1の磁気刺激装置を使って、治療領域を経皮的に刺激するための第1の磁場を生成する工程と、
第2の磁気刺激装置を使って、前記治療領域を経皮的に刺激するための第2の磁場を生成する工程と
を有する方法。
【請求項57】
請求項56記載の方法において、前記第1の磁場および前記第2の磁場はそれぞれ前記治療領域を十分刺激するレベル未満の場の強度を有するものである。
【請求項58】
請求項57記載の方法において、前記第1の磁場および前記第2の磁場は前記治療領域において重なり合い、当該治療領域を刺激する上で十分な場の強度を有する磁場を形成するものである。
【請求項59】
請求項56記載の方法において、前記第1の磁気刺激装置および前記第2の磁気刺激装置は前記治療領域において局所的な磁場を生成するものである。
【請求項60】
請求項56記載の方法において、前記第1の磁気刺激装置および前記第2の磁気刺激装置により生成される磁場の合計値は、前記治療領域における所定の閾値を越えるものである。
【請求項61】
請求項60記載の方法において、前記所定の閾値は前記治療領域における標的神経の刺激閾値に相当するものである。
【請求項62】
請求項60記載の方法において、前記所定の閾値はヒトの疼痛耐性の関数である。
【請求項63】
請求項56記載の方法において、この方法は、さらに、
前記第1の磁場を検出する工程を有し、前記第2の磁場は前記検出された第1の磁場に基づき生成されるものである。
【請求項64】
請求項56記載の方法において、前記第1の磁場および前記第2の磁場の合計は、それぞれ前記治療領域以外の位置において所定の閾値未満の場の強度を有するものである。
【請求項65】
請求項64記載の方法において、前記位置は脳神経に相当するものである。
【請求項66】
請求項64記載の方法において、前記位置は三叉神経に相当するものである。
【請求項67】
請求項64記載の方法において、前記位置は末梢神経に相当するものである。
【請求項68】
請求項64記載の方法において、前記位置は頭蓋の孔に相当するものである。
【請求項69】
請求項56記載の方法において、この方法は、さらに、
前記第1の磁場を検出する工程を有し、前記第2の磁場は前記検出された第1の磁場に基づき生成されるものである。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2008−518677(P2008−518677A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539254(P2007−539254)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/039298
【国際公開番号】WO2006/050279
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(505338442)ニューロネティクス、インク. (13)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/039298
【国際公開番号】WO2006/050279
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(505338442)ニューロネティクス、インク. (13)
【Fターム(参考)】
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