説明

神経前駆細胞の培養と分化

システムと方法は、生後脳由来の神経前駆細胞からのニューロンとグリアの集団のラージ・スケールでの増殖と分化のために開発された。下垂体抽出物とマイトジェン因子を含んでいる培養条件において、細胞は基質に付着可能な神経幹細胞に由来し、培養物において保持され、連続的に継代された。マイトジェン因子の除去により、神経始原細胞のクラスターは神経幹細胞と未熟なニューロンのマーカーの共発現を誘導する。無制限な多数の細胞をニューロン新生の特有の段階において産生可能である。成熟時に神経細胞は拡張し、活動電位を生起可能な成熟したニューロンの表現型に分化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連特許)
本出願は、2003年11月7日に出願された米国仮出願第60/518,226号「神経前駆細胞の培養と分化」についての優先権を主張し、そのすべてがここに含まれている。
(連邦政府委託研究に関する宣言)
本発明は、助成番号NIH/NINDS NS37556、HL70143、T32HDO43730の下、合衆国政府の支援によってなされた。したがって、合衆国政府は、本発明における特定の権利を有する。
(発明の分野)
本発明は、概して発生生物学、神経科学、幹細胞、及び再生医学の分野に関する。さらに詳しくは、本発明は、神経前駆細胞を無制限に培養し分化するためのシステムと方法、及びそれにより得られる細胞組成に関する。
【背景技術】
【0002】
幹細胞は、広範囲な衰弱性疾患を治療する潜在能力を有するため、近年、大きな注目を引く対象となっている。幹細胞は、始原細胞の集団を生じさせることができる根源的な細胞である。始原細胞は、その起源に基づいて、次々と一つ以上の系統の中で様々な細胞型を生じさせることができる。幹細胞は骨髄、臍帯血及び胎児肝臓において極少数存在するが、皮膚、筋肉及び脳組織からも単離されている。幹細胞は、自己複製能と多分化能を有することによって、多数の組織や臓器の恒常性の基礎となっている。
【0003】
神経幹細胞は「神経前駆細胞」とも呼ばれ、ニューロンやグリアに進化することができ、神経系の損傷や病気、特にパーキンソン病、アルツハイマー病及び脊髄損傷の治療に利用可能であるため、興味が持たれている。しかし、神経幹細胞が組織中の細胞集団の非常に小さな分画を構成していることを一つの理由として、神経幹細胞の単離は依然として難しい。神経幹細胞は、明瞭に識別することが難しく、通常、その自己複製と分化の能力を検査することによって識別されている。幹細胞は通常、異種の細胞集団中に存在し、個々の幹細胞を識別し、その特性を測定することは難しい。
【0004】
従来の生後脳からの神経前駆細胞の単離方法は、その細胞のクローン形成能力に依存していた。具体的には、クローナル・ニューロスフェア法は、1990年代中期に開発され、浮遊培養における細胞の集団(「ニューロスフェア(細胞塊)」と呼ばれる)にまで、単一細胞をクローン的に増加させる方法を提供した(例えば、Kukekov et al.,Glia 21:399-407,1997を参照)。分離されたニューロスフェアから作製された単一細胞浮遊培養物は、第二のニューロスフェアを発生させる。播種された第一のニューロスフェアと第二のニューロスフェアは、ニューロン、アストロサイト、及びオリゴデンドロサイトを生じさせるが、これらの細胞は、治療のようなラージ・スケールの使用が非現実的であるような少数しか産生されない。さらに、個々の細胞型の分化がニューロスフェア中で非周期的に生じるため、特定の細胞型の出現の時間に関しては、不確かさが存在する。多数の神経前駆細胞と、その細胞由来であって識別されたニューロンとグリアを再生可能な方法で産生することができる培養システムが求められている。
【発明の開示】
【0005】
(発明の要約)
本発明は、これまでは実現不可能だった数の成体脳の神経幹細胞由来の神経前駆細胞を、試験管内で増殖し分化させる方法を提供する。独自の培養システムにおいて、幹細胞から機能的成熟ニューロンへのニューロン新生は、試験管内において正確に再現可能であり、ニューロン新生プロセスでの明確な特色ある段階における集積された細胞集団は、実質的には無制限に産生可能である。その細胞は、組織培養において増加可能であり、同期方式において増殖と分化を誘引可能であって、試験管内における増殖又は分化のいずれかの段階で後に使用するために凍結可能である。
【0006】
粘着性の培養条件における神経前駆細胞を培養するための従来の試みが失敗であったのに対し、下垂体抽出物とEGFとbFGFのようなマイトジェンの組み合わせを含む培養基が、神経前駆細胞を含む組織から分離した単一細胞の基質への付着を可能にすることが発見された。基質への付着に続いて、神経前駆細胞のラージ・スケールでの増加が再現可能に誘起される。培養条件をコントロールすることにより、その細胞は、同調して増殖と分化が誘起され、ニューロン新生プロセスの異なる段階において実質的に無制限の細胞を産生する。
【0007】
その培養は、莫大な数の分化されたニューロンとグリアを提供することができ、そのニューロンとグリアは、種々の神経学的な病気の治療法として利用可能であり、研究と診断目的のためにも使用可能である。例えば、公開された方法によって、固形基質上における神経前駆細胞の増殖は、表面領域について40,000〜80,000セル/cmもの数で生じ、その約45〜55%は新生ニューロンである。この技術分野でこれまでに知られている方法を用いたときには、このニューロンの多収量は前例がない。
【0008】
既述のとおり、ニューロン新生における特有のかなり特徴的な段階の細胞集団を含んでいるラージ・スケールの培養物を産生可能であって、任意に保存可能である。ニューロン新生の特有の段階において、細胞内で著しく集積されたその培養物の利用可能性は、移植やそのほかの治療上の用途に有用な神経前駆細胞の最適な特性を決定する場合において、非常に役立つであろう。生体内の成体の中枢神経系(CNS)におけるニューロン新生の理解は、いまだに進んでいない。近年、特定用途のグリア細胞は一生を通じて、新しいニューロンを生じさせることが明らかにされてきている(Doetsch,F.,Nature Neurosci.6:1127,2003)。ニューロンとグリアは双方初期の神経上皮に由来しており、発達過程において、共通の情報伝達系と下流転写因子を共有している(Rowitch,D.H.,Nat Rev Neurosci 5:409,2004)が、成体脳における一方の主要な細胞クラスをどのようにして他方へ置き換えることができるかということについては、依然として不明である。神経前駆細胞の増殖と同調分化、及び試験管内において十分に特徴的な表現型を有する細胞の生体内における挙動についての試験をここで可能にする組織培養システムの構築は、成体の中枢神経系(CNS)の組織由来の幹細胞の開発と治療上の用途への道を開くだろう。例えば、ニューロン新生の特定の段階における細胞において集積された細胞の構成は、正常状態と病的状態のCNSへ移植されることと結合されることに対して最も受容性を有する細胞を識別するために使用可能である。特に有用な細胞の組成は、このようにして識別され、大量に産生可能である。
【0009】
ほかの用途において、試験管内と生体内におけるこの細胞の挙動は、薬物スクリーニングとほかの科学的なスクリーニングのためのバイオアッセイに有効に用いることができる。この生成物は初期の幹細胞よりも便利な材料を提供し、上述のように、現存の成体の神経幹細胞技術よりも桁数の多い細胞を提供することができる。
【0010】
本発明は、多数のほかの用途においても有用であろう。例えば、その培養とシステムは、げっ歯類の脳室下帯(SVZ)における擬似生体内の幹細胞の活性を明らかにしたので(Alvarez-Buylla and Garcia-Verdugo,2002)、それらは研究用SVZ細胞のための新しい試験管内モデルシステムとして利用可能である。本発明は、さらに、成体のCNS肝細胞研究のためのシステムとして、例えば神経系の発生分化の新規の特有のマーカーを識別するために用いることができるが、それは現在、数と特異性に制限がある。
【0011】
それゆえに、一形態において、本発明は、神経前駆細胞を培養するための方法を提供する。その方法は、(a)動物検体から神経前駆細胞を含んでいる組織を単離するステップ、(b)その組織を単一細胞に分離するステップ、(c)増殖している、及び/又は分化した少なくとも一つの細胞型を含んでいる培養物を産生するために十分な時間で、その単一細胞を、下垂体抽出物とマイトジェン因子であるEGFとbFGFを含んでいる培地における基質に付着させるステップを含む。
【0012】
神経前駆細胞のニューロンとグリアへの分化を誘導するための有用な方法の変形例は、(d)マイトジェン因子を欠いた培地において細胞を培養するステップを含む。
【0013】
上記の方法の好ましい実施形態において、培地は、N2成分を含んでいる。
【0014】
培養条件と培地における培養時間の適切な調節により、本発明の方法は、ニューロン新生の明確な段階において増殖している、及び/又は分化した細胞型(ニューロンとグリア)の増大した集団から構成される細胞培養物を産生するために用いることができる。その培養物内で、細胞は培養条件に反応し、同調して成熟し、その結果として、細胞組成は任意の与えられた時間におけるニューロン新生の特有の段階において十分に集積する。
【0015】
それゆえに、ほかの形態において本発明は、神経前駆細胞あるいは神経始原細胞、又はそれらの細胞由来の分化したニューロンを含む細胞組成を提供し、ここでその細胞組成は、ニューロン新生の一つの段階において細胞を集積する。本発明の方法を実施すると、広く多様な細胞型を得ることができる。
【0016】
細胞組成のひとつの実施形態において、その集積された細胞型は、神経幹細胞とグリア細胞双方の表現型マーカーを発現する未熟な前駆細胞(「台形細胞」と称する)であるが、神経細胞系統のマーカーではない。それらの細胞を産生するために用いられる本方法のいくつかの変形例において、未熟な前駆細胞は、上記(c)ステップにおける植え付けより前に展開(培養における継代)することができる。
【0017】
ほかの実施形態において、細胞型は、急速に分裂する中間細胞(「涙滴細胞」と称する)であり、この中間細胞は、マイトジェン因子の使用停止後から約1日後の培養物において産生し、神経幹細胞の表現型マーカーとニューロン系統の表現型マーカーの双方を発現するが、グリア細胞のマーカーであるGFAPは発現しない。中間細胞のいくつかの実施形態は、神経幹細胞のマーカーであるネスチン、未熟なグリア細胞マーカーであるA2B5と早期のニューロン・マーカーであるβ−IIIチューブリンを発現する。この細胞のほかの実施形態は、ネスチンとβ−IIIチューブリン及びDlx−2を含む早期のニューロン系統マーカーを発現するが、MAP2、NeuN及びGADを含む後期のニューロン系統のマーカーは発現しない。
【0018】
マイトジェン因子の使用停止を必要とする本方法の変形例において、取得可能なほかの細胞の実施形態は、マイトジェン因子使用停止後、約2〜4日に培養物において出現するSVZ始原細胞(「フェーズ・ダーク」細胞あるいは神経芽細胞と称する)である。この細胞の集団は、神経幹細胞の表現型マーカーとニューロン系統の表現型マーカーの双方を発現するが、グリア細胞マーカーであるGFAPは発現しない。フェーズ・ダークSVZ始原細胞は、ネスチンと、β−IIIチューブリン及びDlx−2を含む早期ニューロン系統マーカー、そしてPSA−NCAM、MAP2、NeuN、あるいはGADのような後期ニューロン系統マーカーの少なくとも一つのマーカーを発現することができる。
【0019】
本方法のいくつかの変形例において、ステップ(d)の培地はさらにレチノイン酸を含み、レチノイン酸はマイトジェン因子使用停止後培養培地に加えられる。そのステップは、分化されたニューロンとグリアのいくつかの型を出現させる。それゆえ、本方法のいくつかの変形例において、その分化された細胞型は活動電位を生起させることができるニューロンであってもよい。その細胞型は双極細胞であってもよい。グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)を発現するGABA性ニューロンもまた、本発明の方法によって産生することができる。
【0020】
上述の方法は、アストロサイトやオリゴデンドロサイトのような分化したグリア細胞において集積されて含まれる細胞組成を産生するためにも使用される。
【0021】
本発明の細胞組成のひとつの好ましい実施形態は、その構成は、GFAPlow+/A2B5/ネスチン/Dlx−2/β−IIIチューブリンとして特徴付けられる未熟な前駆細胞の増殖において集積される。
【0022】
ほかの変形例において、その細胞組成は、GFAP/A2B5/ネスチン/Dlx−2+/−/β−IIIチューブリンとして特徴付けられる急速に分裂する中間細胞において集積される。
【0023】
さらに別の実施例において、その細胞組成は、GFAP/A2B5/ネスチン/Dlx−2/β−IIIチューブリン/PSA−NCAMとして特徴付けられるSVZ始原細胞において集積される。
【0024】
さらに別の細胞組成は、分化したニューロンにおいて集積される。
【0025】
本発明のほかの形態を以下に説明する。本発明は、以下に記述されるここに存在する詳細な記述と具体的な実施例の組み合わせのひとつあるいはそれ以上の参照により、より理解されるだろう。ほかに定義しなければ、ここで用いる全ての技術用語は、本発明の属する分野の通常の知識を有するものによって理解されるものと同様な意味を有する。
【0026】
ここで説明することと類似または同等の方法と物質は、本発明の実施や試験で使用可能であるが、適した方法と物質は以下で説明される。すべての出版物、特許出願、特許、及びここで言及された参考文献は、引用して完全に援用される。抵触の場合は、定義を含む本明細書が法的に規制するであろう。さらに、以下に論じた特定の実施形態は、一実施例であって、これに制限されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(詳細な発明)
本発明は、機能的なニューロンとグリアへの分化を誘起でき、これらの細胞で高度に集積される細胞組成を誘起することができる生後脳から、実質的に無制限な数の自己複製神経前駆細胞を増殖させるためのシステムと方法の開発に関連している。先に述べたように、下垂体抽出物と、EGFとbFGFのようなマイトジェンの組み合わせが含まれた培養基が、神経前駆細胞を含む脳の脳室下帯(SVZ)などの組織から分離された単一細胞の基質への付着を可能にすることが発見されている。基質への付着に続いて、神経前駆細胞のラージ・スケールでの展開は、再現性よく達成できる。培養条件の適切な調整により、細胞は増殖と分化を同調して誘起され、ニューロン新生過程の明確な段階において非常に多数の細胞を生み出すことができる。
【0028】
培養物中の細胞は、成熟ニューロンと成熟グリアへ分化する能力がある。ここに規定される新規の培養条件を使用することにより、未成熟なグリアの表現型に類似している生後脳由来の多能性細胞は、無制限な数で増殖可能であって、試験管内で任意にニューロンとグリアを生み出すように誘起される。この細胞培養システムは、生後のCNSから稀有な自己複製神経前駆細胞を増大するための新しく非常に有効な方法と、ニューロン新生過程の明確な段階における十分に特徴付けられた細胞内で高度に集積された細胞組成を生み出すための第1の方法を提供する。
【0029】
一形態において、本発明は、試験管内における神経前駆細胞の培養のための方法あるいはシステムを提供する。その方法は、(a)動物検体から神経始原細胞を含んでいる組織を単離するステップ、(b)その組織を単一細胞に分離するステップ、(c)増殖している、及び/又は分化した少なくとも一つ細胞型を含んでいる培養物を産生するために十分な時間で、その単一細胞を、下垂体抽出物とマイトジェン因子であるEGFとbFGFを含んでいる培地における基質に付着させるステップを含む。
【0030】
神経始原細胞を含む組織を、例えば成体の動物のSVZから単離する方法が知られており、以下の実施例で説明するように、動物から脳を取り除くことと、分析のためにそれらを培養培地(たとえば、以下に記述されるN5培地)に播種することを簡単に含む。一般的に側脳室は冠状断面が露呈され、周辺組織が脳切片から顕微解剖される。組織を約1mmの切片に細分化した後、組織の切片は、たとえば、ファイアー・ポリッシュされて幅が減少したガラス・ピペットを用いて、主に単一細胞を含む分離した細胞を得るためにトリプシン溶液中で粉砕される(たとえば、0.005%〜0.25%、pH7.3、37℃で15〜25分)。
【0031】
本発明を実施するために、粉砕後、分離した単一細胞は遠心分離機にかけられ、そして細胞ペレットはつぎに、少なくとも50,000セル/cmの密度でコーティングを施していないプラスチック組織培養皿(たとえば、マルチウェル細胞培養皿あるいはT−75フラスコ)の成長培地中に播種され、その後、37℃の加湿インキュベーターで一晩培養される。このステップは、基質への細胞の付着を可能にする。
【0032】
特定の学説に拘束される意図ではないが、成長培地において、EGFとbFGF、特に下垂体抽出物(たとえば、ウシ下垂体抽出物)の含有は、一般に粘着性の培養システムに利用されるプラスチック表面のような固形基質への神経前駆細胞の付着に必要とされ、または付着を大いに促進すると考えられる。この細胞の基質への付着は、この細胞のラージ・スケールでの展開を可能にする。従来、培地における神経前駆細胞の付着の達成は難しかった。それゆえ、この細胞はこれまでは、浮遊培養において培養され、ここで浮遊単一細胞は増殖し、分化の様々な段階において原形始原細胞の子孫に相当する異種表現型を含んでいる球形の細胞(ニューロスフェア)を形成する。
【0033】
前述のように、細胞付着のための基質への使用は、ニューロスフェアとして細胞が増殖する浮遊培養とは対照的に、成熟神経表現型へ分化する可能性のある増殖細胞の数を大いに増加させるという長所を備えている。たとえば、前述のように、固形基質における神経前駆細胞の増殖は、表面領域の最大40,000〜80,000セル/cmまで産生可能であり、そのうちの約45〜55%は新生させたニューロンであると推定されている。その数は従来ニューロスフェア培養物から得ることのできたニューロンの産生量を大きく上回る。
【0034】
本発明の方法とシステムのためのより好ましい基本的な成長培地は、神経幹細胞のメンテナンスと増殖をサポートするための一般に知られている培地である。細胞培養技術はこの分野において一般的に知られており、Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique,4th edition,by R.Ian Freshney,Wiley-Liss,Hoboken,NJ,2000と、General Techniques of Cell Culture,by Maureen A.Harrison and Ian F.Rae,Cambridge University Press, Cambridge,UK,1994などの方法論の専門書において詳細に記述されている。神経前駆細胞の細胞培養に適している基本的な成長培地の構成(たとえば、DMEMとHam’sF−12)は、細胞培養の当業者に知られている。
【0035】
神経前駆細胞の培養と増殖に適している成長培地のより好ましい成分は、たとえば、「N2成分」あるいは「N2サプリメント」として知られているサプリメントを含有しており、これらは、分離トランスフェリン、インスリン、プロゲステロン、亜セレン酸ナトリウム及びプトレシンを包含している。N2成分は、組織培養培地とサプリメントの商業用納入業者からそれぞれ購入することができ、あるいは、選択された濃度であらかじめ混合されたN2成分を含んでいる組織培養サプリメントは、たとえば、ハイクローンやR&Dシステムスなどの納入業者から商業用に入手することができる。
【0036】
神経前駆細胞の付着と増進を進めるためのとくに好ましい成長培地は、「N5」培地であり、それは、以下の構成成分よりなり、示された濃度で使用される。
DMEM/F−12培地(「DF」、インビトロジェン、Cat.No.11320-033)
2%抗生物質の抗真菌(インビトロジェン、Cat.No.15240-062)
5%ウシ胎仔血清(「FCS」ハイクローン、Cat.No.SH30031.03)
N2成分:100μg/mLヒト分離トランスフェリン、5μg/mLヒト・インスリン、20nMプロゲステロン、30nM亜セレン酸ナトリウム、100μMプトレシン
ウシ下垂体抽出物、37μg/mL
塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、40ng/mL
上皮増殖因子(EGF)、40ng/mL
その細胞は、示されるようにFCSを補充したN5培地において培養することができるが、本発明の実施においては、血清は必要不可欠ではないことが見出されている。
【0037】
播種一晩後、SVZ組織由来の単一細胞の播種された懸濁液からの非粘着性細胞は、その次の日に培養皿あるいはフラスコの組織から収集され、単一細胞の懸濁液は、上述のように非粘着性細胞から準備される。その細胞は、「神経前駆細胞」と称されるが、その後、N5培地において少なくとも50,000生存細胞/cmの密度で播種されてコンフレントに達するが、それは通常、コンフレントまで1日おきに培地を交換すると、これらの条件下における培養の1〜4日以内に起こる。前述のような培養条件化における増殖の後、ここで、神経前駆細胞を「神経始原細胞」あるいは「増殖する神経始原細胞」と呼ぶ。
【0038】
ここで用いられる「増殖する細胞型」は、DNA合成と有糸分裂を行える細胞型のことをいう。増殖する細胞型は、この分野によりよく知られている、放射性標識チミジンの取り込み、あるいは5−ブロモ−2−デオキシウリジン(BrdU)の結合などの方法で検出することができる。本発明の培養方法を用いて派生可能な細胞型を増殖させる例としては、これらに限定されるものでないが、ここで記述されている「神経前駆細胞」、「未成熟前駆細胞(「台形細胞」)」、「急速に分裂する中間細胞(「涙滴細胞」)」、そして「SVZ始原細胞」(あるいは「フェーズ・ダーク細胞」)のような様々な細胞型が含まれる。
【0039】
好都合なことに、これらの条件下における神経始原細胞の増殖は、繰り返し継代することができる。一般的に、細胞は、トリプシンによる粘着性細胞の除去により継代され、そして、細胞は75,000から85,000生存細胞/cmの間の密度で新しい培養皿あるいはフラスコに播種される。継代と培地交換後、マイトジェン、たとえば、EGFとFGFは、40ng/mLの濃度で供給され、それ以来2日間隔で、濃度を減らして(たとえば、20ng/mL)供給される。
【0040】
もっとも有利なことに、増殖期の間の与えられたどの段階においても、細胞は、期間を延ばすために、液体窒素中で凍結し、保存することができる。その後、その細胞は解凍され、同様な処理スケジュールを経て、その幹細胞の特性を失うことなく、凍結していない試料と同じ増殖速度を与える。たとえば、1継代において凍結された細胞は、その後、20継代まで連続継代して増殖できることが分かった。これらの細胞は、凍結することなく同様に連続継代された野生型C57/B6マウス由来の細胞と同一の性質を示した。
【0041】
任意の時間において、本発明の増殖細胞は、もし使用していたなら、培養培地のマイトジェン因子(EGFとbFGF)と血清の使用停止により分化を誘導することができる。これらの条件下において、増殖培養物からの成長因子の使用停止2〜3日後、小さいフェーズ・ダーク細胞のクラスターが増殖して出現する。さらに以下に説明するように、この細胞は、初めに未成熟ニューロンのマーカーを発現し、その後、より分化したニューロンのマーカーを発現する。
【0042】
ここで用いられる用語「分化された神経細胞型」は広く定義され、この分化を誘起するために、ここで定義され説明された条件下で培養された神経幹細胞、神経前駆細胞、又は神経始原細胞から培地内で成長する、神経特性を有する任意の細胞表現型を含む。当業者は、幹様グリア細胞(成体のSVZのアストロサイトなど)からニューロンへの変化が連続したものであると理解しているが、それにもかかわらず、以下に示すように、特定のニューロン系統だけの分化を示すマーカーの一部を発現する細胞を、その過程における選択された段階において認めることができ、単離と増殖が可能である。
【0043】
本発明のより好ましい実施形態において、分化された状態への誘導は、細胞を基質、たとえば、ガラス・カバースリップ、あるいは、ほかの適切な組織培養物表面へ付着させることにより達成される。好ましくは、培養物表面は、たとえば、ポリ−L−オルニチン(15μg/mL)/ラミニン(1μg/mL)、あるいはほかの適切な混合物により、被覆されている。そのような表面が細胞付着物とニューロンの分化と成熟のための理想的な基質を提供することが明らかにされている。未処理の基質(たとえば、ガラスあるいはプラスチック単独)を使用すると、細胞付着物が不足し、あるいは、誘導できる神経芽細胞の量が著しく減少する。
【0044】
機能的なニューロンは、ソング(Song)等により改良されたプロトコル(Nature 417:39,2002)によって、これらの培養物において生み出すことができる。つまり、レチノイン酸(シグマ・アルドリッチ、St. Louis, MO,0.5μM)を分化誘導後7日〜10日間の間に加え、2日おきに、たとえば、6日間補充する。レチノイン酸処理後2日間、シトシンβ−D−アラビノフラノシド(シグマ−アルドリッチ、0.5μM)を加える。ニューロンはその後、N2成分、0.5%FCSと脳由来神経向性因子(BDNF、20ng/mL、R&Dシステム ミネアポリス、MN)を補ったDF培地において分化することができる。培地は2日おきに交換する。
【0045】
本発明の培養システムと方法により生み出された細胞は、一つあるいはそれ以上の細胞型特性、あるいは細胞系統マーカー、たとえば、与えられた細胞型に発現した抗原あるいは特定の細胞系統に結合した抗原、あるいは分化過程における認識段階での細胞型に発現した抗原、の有無の検出により特徴づけられる。抗原性マーカー検出の好ましい方法は、免疫組織化学あるいは免疫細胞化学によるものであって、それにより、マーカー・タンパク質あるいは細胞におけるその一部を明確に認識する(結合する)抗体を、たとえば、蛍光顕微鏡の使用により視覚化する。この分野においてよく知られ以下の実施例において示されるように、3つあるいはそれ以上のマーカーは、異なったマーカーに対する抗体と細胞を多重反応させることによって、続いて、たとえば、異なった波長において蛍光を発し、それゆえ適切なフィルター・セットを用いた蛍光顕微鏡で観察する際に異なった色(主として緑、赤と青)を発するプローブ(蛍光色素、ローダミン、アレクサ−555、AMCA、Cy3、オレゴン・グリーンなど)で標識された二次抗体を用いて各マーカーの結合を検出することによって、同一の細胞中で一斉に検出される。
【0046】
異なった段階における別の細胞から分化する一つの段階における細胞、又は異なった段階における別の細胞からの一つの系統の細胞、あるいは、異なった系統の細胞を識別できる細胞型や細胞系統の適切な各マーカーは、多能性神経前駆細胞から完全に分化したニューロンとグリア細胞までの間の、細胞分化の状態を明らかにするために用いることができる。そのマーカーのいくつかは、分化の異なった段階におけるCNSの細胞の描写、識別に有用であるとして認識されている。
【0047】
幹様特性を持つ細胞を認識するために、有用なマーカーはネスチンである。ネスチンは、神経前駆細胞において発現されることが知られている中間フィラメント型である。未成熟なグリア細胞を識別するために用いることができるマーカーは、A2B5であり、未成熟なニューロン・ガングリオシドと認識されている。
【0048】
一般的に分化のいくつかの段階におけるグリア細胞(アストロサイト、オリゴデンドロサイトとミクログリアを含む)の好ましいマーカーは、グリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP)である。分化したグリア細胞の特定の種類のマーカー、すなわち、オリゴデンドロサイトは、CNPaseと04を含む。
【0049】
ニューロン(たとえば、神経芽細胞や、より分化した神経細胞の種類である双極細胞など)になる細胞は、特定のニューロン・マーカーの存在により識別することができ、β−IIIチューブリン、MAP2、NeuN、Dlx−2とPSA−NCAMを含むことが知られている。ここで用いられる「初期のニューロン・マーカー」あるいは「初期のニューロン系統のマーカー」の用語は、ニューロン経路に沿って差別化することが約束された未成熟な細胞により発現されることが知られている表現型のマーカーのことをいう。実施例のように、β−IIIチューブリン、PSA−NCAMとDlx−2は、初期のニューロン・マーカーとして規定されている。ここで用いられる「後期のニューロン系統のマーカー」は、分化したニューロン、たとえば、GABA性ニューロン、すなわち、抑制性神経伝達物質であるガンマ−アミノ酪酸(GABA)を発現するニューロン、において発現される表現型のマーカーである。GABA性ニューロンは、たとえば、グルタミン酸をGABAに変換する酵素である、65kDaと67kDaの形態のグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD65/67)などのマーカーにより、識別することができる。後期ニューロン系統のほかのマーカーは、MAP−2とNeuNを含む。
【0050】
本発明の細胞はまた、種々のタイプの顕微鏡法、たとえば限定されるものではないが、位相差/微分干渉顕微鏡法(DIC)、蛍光顕微鏡法、逆位相差顕微鏡法、共焦点顕微鏡法などの光学顕微鏡法、さらに走査型電子顕微鏡法と透過型電子顕微鏡法など、で見たときの形態学的外見(形、明度など)によって特徴付けられる。
【0051】
本発明の細胞はまた、たとえば、ホール・セル・パッチクランプ法などの単一細胞記録法にかけたときの以下の電気生理学記録パターンが示すように、機能特性により特徴付けられる。
【0052】
以下の実施例によってさらに十分に記述される検討内容において、SVZの神経前駆細胞から派生した増殖する神経始原細胞の表現型特性と、培養培地のマイトジェン因子の使用停止後に培地で生じる分化過程でみられる分化細胞の表現型特性は、広範囲に特徴付けられる。分析によって、培地の中で所定の時間に生み出される特徴的な形態学的、免疫表現型的、電気生理学的なプロフィールを有するいくつかの異なった細胞型が認識される。任意の特定の時間において、培養物は特定の表現型の細胞で高度に集積される。発明の方法を用いて増殖できるいくつかの主な細胞型の特性を、以下の表1に集約した。
【0053】
【表1】

【0054】
その結果、別の側面において、本発明は、神経前駆細胞又は神経始原細胞、あるいはそれらの細胞由来の分化したニューロンを含む細胞組成物を提供し、その組成物は、ニューロン新生の単一の段階における細胞を集積化する。用語「ニューロン新生の単一の段階における細胞の集積化」は、ニューロン新生の単一の段階における細胞を、例えばニューロスフェアーを含む培養物などの組織培養系よりも大きい比率で有することを意味しており、ニューロンに関係した幹細胞から広がる、ニューロン新生の広く分岐する段階における神経前駆細胞の異種集団の存在によって特徴付けられる。説明したように、最初に開示した方法は、ニューロン新生の任意の所定の段階における細胞の同時性誘導を可能にする。したがって、培地中の大多数の細胞は同時に成長し、結果としてニューロン新生の同じ段階における細胞の大きな集団となる。特に好適な細胞組成物は、独特の表現型プロファイルを持つ細胞が集積されている。限定されない例として、本発明は、GFAPlow+/A2B5/ネスチン/Dlx−2/β―IIIチューブリンとして特徴付けられる増殖する未成熟前駆細胞で集積される細胞組成物を提供する。ほかの細胞組成物は、GFAP/A2B5/ネスチン/Dlx−2+/−/β―IIIチューブリンとして特徴付けられる急速に分裂する中間細胞で集積される。別の細胞組成物の実施形態は、GFAP/A2B5/ネスチン/Dlx−2/β―IIIチューブリン/PSA−NCAMとして特徴付けられるSVZ始原細胞において集積される。さらにほかの変形例において、本発明は、分化したニューロンで集積された組成物を提供する。
【0055】
以下の好ましい実施形態の記述は、このシステム、方法と構成の適応化を説明する。これら実施例の記述にもかかわらず、本発明のほかの態様は、以下に与えられた記述にもとづいて作製、あるいは実施することができる。
【実施例1】
【0056】
(材料と方法)
次の材料と方法を、以下に記述される実施例2〜7において用いた。
【0057】
SVZ細胞の単離。C57/B6マウス(ジャクソン・ラボラトリー、バー・ハーバー、MN)とネスチン−GFPを発現している、年齢と性別が適合したトランスジェニック・マウス(J.L.Mignone, V.Kukekov, A.S.Chiang, D.Steindler, G.Enikolopov, J Comp Neurol 469, 311, 2004)は、標準条件下で飼育された。SVZ細胞を得るため、8日齢(P8)と成体(90日齢より大きい)動物(検体)の頭部を切断し、脳を取り出し、20mg/mLペニシリン、20mg/mLストレプトマイシン及び25ng/mLアンフォテリシンB(すべて「抗生物質」)を含んでいるDMEM/F−12(DF、インビトロジェン、カールスバッド、CA、Cat No.11320-033)に置いた。側脳室を冠状切断によって露呈させ、そして、周辺組織を脳切片から顕微解剖した。無菌状態下で、抽出した5匹の動物(検体)の組織をプールし、ダルベッコ・リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に入れ、手作業で1mmの切片に分離した。
【0058】
組織培養。上述のように準備した組織切片を、0.005%トリプシン(15分、37℃、pH7.3)中で砕いて細かくし、コートされていないT75プラスチック組織培養皿におけるN5培地に一晩置いた。N5培地:N2サプリメント(変更を加えたN成分(N成分は100μg/mLヒト分離トランスフェリン、5μg/mLヒト・インスリン、20nMプロゲステロン、30nM亜セレン酸ナトリウム、100μmプトレシン、を含む)であって、37μg/mLの下垂体抽出物、40ng/mLのEGFとFGF、1%抗生物質及び5%ウシ胎仔血清(FCS、ハイクローン、ローガン、UT)を補充した)を含んでいるDF。非付着細胞を集め、ファイアー・ポリッシュされたピペットを用いて徐々に砕いて細かくし、コートされていないプラスチック皿の上に置き換えた。その後、細胞をN5培地においてコンフレントまで増殖した。EGFとFGF(20ng)を2日おきに加えた。コンフレント細胞層を1×10個の細胞の一定分量で凍結し、液体窒素中に保存した。
【0059】
実験のために、細胞を解凍し、0.005%トリプシンとN5培地を用いて、2日おきに20ng/mLEGF/FGFを追加しながら、2回以上(最低5集団の倍加)継代した。分化誘導のために、ポリオルニチン(シグマ、セントルイス、MO、10μg/mL)とラミニン(1μg/mL)(LPO)をコートしたガラス・カバースリップにおいて、約2×10セル/cmの密度で、細胞を播種した。細胞を90〜100%コンフレントまで増殖させ、培養培地から成長因子と血清を除去することで分化を誘導した。BrDU(シグマ、セントルイス、MO、10μg/mL)で、分裂している細胞を標識した。
【0060】
ソング(Song)等(Nature 417:39,2002)により適合されたプロトコルによって、機能的なニューロンを生み出した。つまり、レチノイン酸(シグマ−アルドリッチ、0.5μM)を、分化誘導後7〜10日の間に加え、6日間の間2日おきに補充した。シトシンβ−−アラビノフラノシド(シグマ・アルドリッチ、0.5μM)をレチノイン酸処理後2日間加えた。その後、DFとともに0.5%FCSと脳由来の神経栄養因子(BDNF,20ng/mL)を補充したN2において、ニューロンを分化させた。ほかに特定しない限り、組織培養プラスチックウェアは、コーニング/コスター(コーニング、NY)から入手し、培地はインビトロジェン(カールスバット、CA)から、そして、成長因子はR&Dシステムス(ミネアポリス、MN)から入手した。培地は2日おきに交換した。
【0061】
ニューロスフェア法。P8と成体SVZからの3代継代細胞を、トリプシン処理し、計数し、前述のように(Kukekov VG et al., Exp.Neurol. 156:533,1999)1%メチルセルロースを含んでいるN5培地の2mL/ウェルにおける非粘着性の6ウェルプレート(コスター)において再懸濁した。EGFとFGF(20ng/mL)は2日おきに加えた。これらの条件下で生み出されたニューロスフェアのクローンを検証するために、SVZ細胞の連続希釈法を0.6〜20×10セル/cmから行った。直線状の播種:ニューロスフェアの関係は、2.5〜20×10セル/cmの密度の間で観察された。全てのニューロスフェア実験は、10セル/cmの播種密度において行った。
【0062】
ニューロスフェアを形成している細胞の存在量を定量化するために、第1のニューロスフェアの全数を明視野顕微鏡を用いてウェルごとに計数した(それぞれ、2つの独立した実験から得られた成体培養物とP8培養物について、n=3)。第2のニューロスフェアを分離した第1のニューロスフェアから得て、同様に評価した(それぞれ、2つの独立した実験から得られた成体培養物とP8培養物について、n=2)。ニューロスフェアを、細胞播種後14〜21日に計数した。統計的有意性のレベルを、p<0.01に設定し、そして、スチューデントのT検定を用いて計算した。ニューロスフェアをLPOコートされたガラス・カバースリップにおけるN5培地中で一晩培養した。ニューロスフェアから遊走した細胞を、培養培地からの成長因子と血清の除去後、7日の間、分化させた。個々の第1のニューロスフェアと第2のニューロスフェアを、ニューロン(すなわち、β−IIIチュ−ブリン、MAP2、NeuN)とグリア(すなわち、CNPase、GFAP、04)のマーカータンパク質を用いた二重免疫蛍光分析により、多能性について評価した。
【0063】
生細胞の顕微鏡法。3代継代SVZ細胞を、LPOコートされた3cmガラス・カバースリップ皿(ウィルコ・ウェルズBV、アムステルダム、オランダ)上のN5培地中でコンフレントまで成長させた。前述のように細胞を分化誘導し、標準培養条件(37℃、5%加湿CO)下で、ツァイス・セル・オブザーバー・システム(カール・ツァイス・マイクロイメージング社、トムウッド、NY)で観察した。5つのランダム化された視野(200X)を分化誘導後24時間の分析のために選定した。位相差画像を、最大30時間まで5分毎に撮影した。画像を、アキソビジョン(登録商標)・ソフトウェア(ツァィス、ゲッティンゲン、ドイツ)を用いて動画に編集した。
【0064】
免疫細胞化学。細胞を、PBS洗浄後、4%パラホルムアルデヒドで10分間固定した。非特異性抗体活性を、0.01%トリトンX−100(PBS−T)、10%FCSおよび5%ヤギ血清を含んでいるPBSで20分間ブロッキングした。一次抗体を、室温において1〜2時間、あるいは、PBS−Tと10%FCS中において4℃で一晩、使用した。
【0065】
一次抗体は、以下のものを含んでいる:A2B5(1:150、マウス・モノクローナルIgM、ケミコン、テメクラ、CA);β−IIIチューブリン(1:300、マウス・モノクロ−ナル、プロメガ、マディソン、WI);BrDU(1:50、マウス・モノクロ−ナル、ベクトン・ディッキンソン、サンノゼ、CA);CNPase(1:250、マウス・モノクロ−ナル、ケミコン、テメクラ、CA)、NeuN(1:50、マウス・モノクロ−ナル、ケミコン);04(1:150、マウス・モノクローナルIgM、ケミコン、テメクラ、CA);PSA−NCAM(1:400、マウス・モノクローナルIgM、ケミコン、テメクラ、CA);Map−2(1:30,000、トリ・ポリクローナル、Dr.ゲーリー・ショウより贈与):Dlx−2(1:50、ヤギ・ポリクローナル、サンタ・クルーズ・バイオテクノロジー、サンタ・クルーズ、CA);GAD65/67(1:125、ウサギ・ポリクローナル、サンタ・クルーズ・バイオテクノロジー);及びGFAP(1:600;ウサギ・モノクローナル、DAKO、カーピンテリア、CA)。
【0066】
二次抗体を、PBS−Tと10%FCS中において室温で45分間使用した。二次抗体は以下のものを含んでいる:アレクサ−555ヤギ抗−トリ(1:300、モレキュラー・プローブ、ユージン、OR);AMCAヤギ抗−ウサギIgG(1:50、ジャクソン・ラボ、ウェスト・グローブ、PA);Cy3ヤギ抗−マウスIgG(1:300、ジャクソン・ラボ、ウェスト・グローブ、PA);Cy3ヤギ抗抗−マウスIgM(1:600、ジャクソン・ラボ、ウェスト・グローブ、PA)、オレゴン・グリーン・ロバ抗−ヤギ(1:200、モレキュラー・プローブ、ユージン、OR)及びオレゴン・グリーン・ヤギ抗−ウサギ(1:200、モレキュラー・プローブ、ユージン、OR)。細胞核を、DAPI染色(1μg/mL、シグマ・アルドリッチ、セント・ルイス、MO)を用いて視覚化した。BrDU検出には、SSC−ホルムアルデヒド中における2時間の前処理、SSCでの3×10分の洗浄、2N塩酸での30分の洗浄、及び0.1Mホウ酸塩緩衝液での10分の洗浄が必要であった。
【0067】
蛍光顕微鏡法を、ライカDMLBアップライト顕微鏡(ライカ、バンノックバーン、IL)によって行い、画像をスポットRTカラーCCDカメラ(ダイグナスティック・インストルメント、スターリング・ヘイツ、MI)で記録した。いくつかの標本における3次元画像化を、アポトーム(登録商標)・テクノロジーを備え完全自動化されたアキシオバート200倒立顕微鏡を用いて行い、画像をアキシオビジョン(登録商標)・ソフトウェア(ツァィス、ゲッティンゲン、ドイツ)を用いて再構成した。
【0068】
電気生理学。培養培地を取り除き、そして、ガラス・カバースリップに分散した細胞を、実験の間35℃に保持され125mM塩化ナトリウム、3mM塩化カリウム、26mM重炭酸ナトリウム、1.25mMリン酸2水素ナトリウム、20mMグルコース、1mM塩化マグネシウム及び2mM塩化カルシウムを含んでいる、酸素で処理された人工の脳脊髄液(aCSF)を継続的に灌流させた保持チャンバーへ播種した。細胞培養物を、映像機能が強化されたDICとニコン・イクリプスE600FNアップライト顕微鏡(ニコン、USA)を備えた蛍光顕微鏡を用いて視覚化した。
【0069】
パッチ電極を、フレイミング・ブラウンP87−微小電極プーラー(サッター・インストルメント、ナヴァト、CA)を用いて、肉厚ホウケイ酸塩ガラス毛管(WPI,サラソータ、FL)から4〜6MΩの抵抗へ引き寄せた。細胞内のピペット溶液は、145mMK−グルコン酸塩、10mMHEPES、10mMEGTA及び5mMMgATP(pH7.2、オスモル濃度290)を含んでいた。
【0070】
ポスト・シナプス電流を測定する実験の間、145mMK−グルコン酸塩を、125mM塩化カリウムと20mMK−グルコン酸塩に置換した。記録をアキオパッチ−1D(商標登録)(アクソン・インストルメント、ユニオン・シティ、CA)で行い、5kHzでフィルターをかけた。クランペックス(商標登録)8.2(アクソン・インストルメント、ユニオン・シティ、CA)を、指令電位を伝えるため、そしてデータ収集物のために使用した。直列抵抗は20MΩより小さく、それが逸脱していないことを確かめるために頻繁にチェックした。電圧固定実験において、ステップ・プロトコルを行い、−100mVにおける200msのプレ・パルス期間の後に、50msの間、−80mVと+60mVの間の電位に細胞膜を保持した。電流固定実験の間、ステップ毎に10〜100pA間の電流をかけてステップ・プロトコルを行った。直列抵抗が20MΩより大きい細胞と、直列抵抗が変動する細胞を、検討から除外した。クランプフィット8.2(アクソン・インストルメント、ユニオン・シティ、CA)を、電圧と電流トレース分析のために使用した。
【0071】
ピクロトキシンを50μMの濃度で使用し、テトロドトキシンを400nMで使用した(アロモネ・ラボ、エルサレム、イスラエル)。とくに言及しない限り、全てほかの化学薬品と試薬は、シグマ・アルドリッチ(セント・ルイス、MO)から入手した。データは、平均±平均の標準誤差で表した。
【0072】
電子顕微鏡法。3代継代SVZ細胞を記述したようにLPOコートされたアクラル・カバースリップにおけるN5培地中で成長させた。細胞を固定し、分化する前、分化後24時間、そして、フェーズ・ダーク細胞コロニーの出現時において評価した。固定は、2.5%パラホルムアルデヒド、0.1%カコジル酸ナトリウム及び0.02%グルタルアルデヒドを含んでいるPBSにおいて室温で30分間行い、その後、4℃で1時間、0.1Mカコジル酸ナトリウム中の2%オスミウム酸で処理を行った。細胞を連続的に30〜100%エタノールの勾配で10分間浸漬して脱水した。細胞をその後、LX1 12(52%v/v)、NMA(31%v/v)、DDSA(17%v/v)及びDMP−30(触媒)を含んでいるエポキシ樹脂「エポン」に組み込んだ。電子顕微鏡法のための全ての試薬は、シグマ・アルドリッチ(セント・ルイス、MO)から入手した。
【0073】
エポンを組み込んだ標本を、ライカ・ウルトラカット(登録商標)T超ミクロトームにおいて薄い切片にし、そして、酢酸ウラニルとクエン酸鉛により対比染色した。サンプルを、ライカEM1 OA(登録商標)透過型電子顕微鏡で倍率範囲1〜16,000Xの間で視覚化した。画像は、CCDデジタル・カメラ(フィンガー・レイクス・インストルメンテイション、リマ、NY)を用いて取得した。
【実施例2】
【0074】
(試験管内におけるニューロン新生のステージI;増殖性の条件下での細胞の特性)
この実施例は、上記の方法において説明した増殖性の条件において保持されたSVZ培養物において出現する細胞の特性を記述する。
【0075】
細胞を、前述したように、幹細胞が潜んでいることが知られている神経性の脳の領域、すなわち、側脳室の脳室下帯(SVZ)から取得した。顕微解剖されたマウス脳組織の単一細胞懸濁液を、その後、試験管内におけるSVZニューロン新生の特有のイベントの識別のために使用した。
【0076】
より成熟したSVZ表現型の存在を最小限に抑え、同時に、推定上の幹細胞の集団を増大させるために、SVZ培養物を、神経幹細胞の増殖を維持し、促進することが知られている培地において、実験前に2回継代した(約5集団の倍加となる)。上述のように、培地サプリメントは上皮増殖因子(EGF)、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、血清及びN2成分を含んでいた。これにより、浮遊細胞集合体の形成あるいは細胞死による明らかな細胞損失がない粘着性条件において、単離された細胞の単層増殖が可能になった。
【0077】
実験分析において、細胞を、ラミニンとポリ−L−オルニチンでコートされたガラス・カバースリップに播種し、そして、コンフレント付近で評価した。図1Aと図1Bを参照すると、3代継代において、増殖中のSVZ培養物はふたつの主要な細胞集団を含んでいる。グリア繊維状酸性タンパク質(GFAP)を発現している大きな原形質アストロサイトが、台形の形態を有する基礎をなす小さな細胞の上に成長しているのが観察された。基礎をなす集団は、この条件における全ての細胞の約3分の2となっており、未成熟のニューロンのガングリオシドを認識するモノクローナル抗体A2B5で標識され、神経前駆細胞において観察される中間フィラメントであるネスチンに対して陽性であった。興味深いことに、これらの細胞の多くは、台形の形態をしており、いくつかのGFAPフィラメント(図1A、矢印)の共発現も観察された。ニューロン・マーカー(たとえば、β−IIIチュ−ブリン、Map−2、NeuN)あるいはオリゴデンドログリア・マーカー(たとえば、04、CNPase)は、基礎をなす細胞集団の中では検出されなかった。
【0078】
台形細胞の微細構造特性は、多数のミトコンドリアと遊離型リボソーム及び中間フィラメントを含む明るい流動細胞質に組み込まれた細長い細胞核を明らかにした(図1Cと図1D)。
【0079】
増殖している台形細胞のホール・セル・パッチ・クランプ記録は、過分極化した静止細胞膜電位(V、−740±2.6mV;n=45)、33.8±4.3pFの細胞膜静電容量(C)及び低入力抵抗(Rin、166.2±33.0MΩ)を有し、A型K電流(IK)が優越していることを示した(図1E)。記録された増殖細胞は、いずれも活動電位を生み出す能力がなかったが、小さい割合(13.3%、45のうち6)でテトロドトキシン(TTX)−感受性電位依存性ナトリウム・チャネルを保有していた。総じて、これらの発見は、とくに培養されたSVZ細胞の中の台形細胞集団は、未成熟のグリアの特性をもつことを示唆した。
【実施例3】
【0080】
(試験管内におけるニューロン新生のステージ1:SVZ始原細胞(「フェーズ・ダーク」細胞)の特性)
生後8日(P8)と成体(90日齢より大きい)SVZの増殖している培養物からFGF、EGFと血清を同時除去することによって、4日後の10〜100個のフェーズ・ダーク細胞の規定されたコロニーの出現が確実に誘導された(図1F)。この現象は、SVZ細胞の増殖の間は観察されず、EGFが細胞の分化を阻むという研究結果と一致した(Doetsch F. et al., Neuron 36:1021, 2002)。同様に培養された頭頂新皮質細胞は、フェーズ・ダーク・クラスターは産出せず、SVZ細胞もまた成長因子を欠いた培地においては増殖しなかった。
【0081】
フェーズ・ダーク細胞はGFAPとA2B5であり、さらにネスチンとβ−IIIチューブリンを発現した。図1Gを参照すると、これらの細胞の多くは、Dlx−2とPSA−NCAMの双方も発現した。これらの細胞の近接近において、PSA−NCAMに対して陰性であるが、Dlx−2に対しては陽性であるほかの細胞のクラスターが存在した。
【0082】
図1Hに見られるように、微細構造の研究は、高い細胞核/細胞質比率を有し、特徴的に密度が高く時には陥入した細胞核を有する、楕円あるいは円形の形態の小さい細胞(直径約5μm)を明らかにした。図1Iに示されるように、台形細胞が直接、新生細胞クラスターの基礎をなしている。この関係は、密接な関連が、試験管内におけるフェーズ・ダーク細胞の形成のために必要であることを示している。
【0083】
ホール・セル・パッチ・クランプによる電気生理学記録(図1J)によって、フェーズ・ダーク細胞(n=20)は形成時に、SVZ産生神経始原細胞が生体内で示す特性と同様の細胞膜特性を示すことが明らかなった(D.D.Wang, D.D.Krueger, A.Bordey, J Neurophysiol 90,2291,2003)。増殖SVZ細胞(図1E)と比較すると、フェーズ・ダーク細胞は、非常に低いC(6.8±0.51pF)と非常に高いRin(4.6±0.72GΩ)を有し、著しく大きく脱分極(すなわち、−18±1.6mV)していた。顕著なナトリウム・チャネルの寄与は、フェーズ・ダーク細胞において観察されなかった。
【0084】
フェーズ・ダーク細胞により示された細胞膜特性は、SVZ産生神経前駆細胞が生体内で示す特性と同様であった(Wang D. et al., J Neurophysiol 90,2291,2003)。SVZニューロン新生は、特徴的な一連のイベントとして進行し、多能性グリア細胞(B型細胞と呼ぶ)は、分裂して、遷移−増殖細胞集団(C型細胞)を経て、神経芽細胞(A型細胞)のコロニーを形成することができる(Doetsch F., Nat.Neurosci.6:1127,2003)。新生の神経芽細胞は、RMSを経てSVZから移動し、GABA性顆粒細胞と糸球体周辺細胞(PG)へ成熟し、抑制性介在ニューロンとしてげっ歯類の嗅球へ一体化する。ここで説明したフェーズ・ダーク細胞の、抗原性、微細構造性、機能性を兼ね備えたプロファイルは、げっ歯類SVZにおいて見出された幹細胞産生神経芽細胞と遷移−増殖細胞に独特のプロファイルと一致している(Doetsch,F. et al., J.Neurosci. 17:5046, 1997; Doetsch,F. et al., Neuron 36:1021, 2002)。
【実施例4】
【0085】
(試験管内におけるニューロン新生のステージII:成熟している新生ニューロンの形態学的機能的特性)
試験管内における運命分析を、培養物におけるフェーズ・ダーク細胞の出現がSVZ特有のニューロン新生の特有のイベントを表しているかどうかの決定に使用した。発明者等は、レチノイン酸を用いてSVZ培養物の最終的な分化を誘導し(「方法」を参照)、フェーズ・ダーク細胞の単離されたコロニーの形態学的、免疫学的及び生物物理学的発達について、長期にわたって追跡記録した。図2Aを参照すると、フェーズ・ダーク細胞は初め、ネスチンとβ−IIIチューブリンを共発現する(図2A、融合した画像)が、これらの細胞は、ネスチンをまもなく抑制し、双極過程を拡大し始める(図2B)。
【0086】
フェーズ・ダーク細胞の細胞膜特性と比較して、これら双極細胞(n=20、成長因子使用停止後9±2日)は、より極性を持つようになり(Vm、−47±5.0mV)、Cが増加し(11.8±0.54pF)、Rinが減少する(1.1±0.322GΩ)。従来の試験管内における研究(Stewart,R.R. et al., J.Neurophysiol. 81:95, 1999)と同様に、また、生体内における成熟している神経芽細胞からの記録(Belluzzi,O.et al., J.Neurosci. 23:10411, 2003)と同様に、双極細胞は、20mMテトラエチルアンモニウム(TEA、図2C)の使用に対して感度が高い、遅延型整流K電流を示す(IKdr)。興味深いことに、いくつかの双極細胞において、TEAの使用は、内在する、増殖(未成熟/グリア)SVZ細胞の典型的なカリウム電流であるIKを顕在化する(図1E参照);図2Cにおける細胞1と細胞2を比較する)。
【0087】
ナトリウム介在性電流は、このステージにおいて観察されなかった。培養中の時間とともに、神経分枝は次第に複雑になり、そして、より成熟したニューロン・マーカー(すなわち、Map−2、NeuN)を発現した。成長因子使用停止後4週間で、双極細胞は、特有の成熟したニューロン表現型に分化した(図2Dと図2E)。これらのニューロンは、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、ガンマ−アミノ酪酸(GABA)の細胞内合成の鍵酵素に対する抗原を、ほとんど単独で発現した。
【0088】
成長因子使用停止28±4日後におけるホール・セル・パッチ・クランプ記録(n=14)は、双極細胞と比較して、より低いV(−48.1±7.2mV)を示し、Rinは減少し(583.6±183.8MΩ)、Cは増加した(21.4±2.5pF)。図2Fを参照すると、TTX−感受性反復性活動電位は、この発達の段階において発生し、SVZ培養物由来のニューロンの最終的な分化を示している。成熟ニューロン(6/6記録された細胞)は、GABA−介在性シナプス伝達の抑制因子であるピクロトキシンの使用により明らかにされたように、意外にもほとんど単独に抑制性のイベントからなる自発的なシナプス活性を示した(図2G)。形態学的、機能的発見の組み合わせは、試験管内において長期間にわたってフェーズ・ダーク細胞が最初にGABA性介在ニューロン表現型に成長し、それゆえ、脳からの発生の合図がなくともSVZニューロン新生を繰り返すことを暗示している。
【実施例5】
【0089】
(試験管内におけるニューロン新生のステージIにおいて過渡的に現れる分裂活性を有する多能SVZ前駆細胞の特性)
生体内における研究からの知見と一致して、ここで記述したデータは、SVZニューロン新生は2つのステージにおいて進行すること、そして、グリア様細胞の神経芽細胞への変化は、初めの96時間以内に生じることを示している。記録を進めるためと、成長するSVZ細胞の迅速な動力学を特徴付けるために、リアル−タイム顕微鏡法を使用した。図3Aを参照すると、増殖しているSVZ培養物への成長因子と血清の使用を停止した後、細胞は一日のあいだ平面で不定形のグリアの外観を維持する。この「沈黙期」の後、突然で広範囲に及ぶ一連の急速な細胞分裂が観察される。細胞分裂は、劇的な形態学的変化を伴って起こり、早くも16〜24時間後に、フェーズ・ダーク細胞の最初の出現を最終的に導く。このかなり顕著なイベントのタイミングは、推定上のSVZ幹細胞の50%がこの脳領域の構成性の増殖細胞を使い果たした2日後に有糸分裂的に活性を有する、という生体内における観察報告と一致している。
【0090】
低速度撮影観察によっても、生体内において急速に分裂しているSVZ集団について、約12.7時間の細胞周期時間が記録されることが確かめられた。これらが最初に出現した後、フェーズ・ダーク細胞は小型になり、クラスターを形成し、それは分化誘導後4日間に及ぶ。この間、5−ブロモ−2−デオキシウリジン(BrdU)を用いた発生日決定実験により明らかにされたように、細胞分裂は続く。図3Bを参照すると、成長因子使用停止後48〜72時間で標識したとき、90%以上のフェーズ・ダーク細胞はBrdUを取り込む。72〜96時間の間にBrdUを使用すると小数のフェーズ・ダーク細胞だけ標識されるが、これは分裂活性期間が一時的であることを示している。
【0091】
これらの発見は、SVZ前駆細胞の成長が驚くほど短時間で一連の完全な形態学的変化を成し遂げることを明らかに示している。どのようにこれらの観察がより従来的なニューロスフェア法(Reynolds and Weiss, Science 255:1707, 1992; Kukekov et al., Exp.Neurol.156:333, 1999)と関連しているのか調査することは、興味深いことであった。各ニューロスフェア(NS)がニューロンとグリアの両方を生じさせることができる単一クローン的に派生した細胞凝集体に相当し、これらの分離されたNSのいくつかの細胞が第2のNSを形成することから、この試験結果は、所定の細胞集団における「幹細胞性」(クローン遺伝子性、多能性、自己複製性)の「事後」解析結果を表している。
【0092】
図3Cに示すように、我々のパラダイム(「方法」参照)を適用すると、NS法によって、成長因子使用停止後24時間においてNS数が一時的に増加することが明らかになった。この変化は重要かつ意味深く、増殖SVZ培養物と比較してNS数が約2倍(P8と成体がそれぞれ1.86倍と1.6倍)になり、使用停止後4日において初期のレベルに低下した。興味深いことに、成体SVZ培養物は、P8が分離するよりも少ない全数のNSしか生み出さないが、NSの相対変化度数は同程度である。我々は、P8と成体SVZ由来のNSの間の直径の相違にも気がついた。しかし、年齢グループと各研究時点の両方において、クローン的に産生され分離された第1のNSは第2のNSを派生し、これは自己複製への意味深い可能性を示している。図3Dと3Eを参照すると、播種された第1のNSと第2のNSがニューロンとグリアを生じさせることが確かめられ(β−IIIチュ−ブリンとCNPaseのそれぞれについての細胞の陽性の免疫反応性により証明された)、これはクローン原生単離物の多能性を実証している。
【実施例6】
【0093】
(急速に分裂し、幹様グリア細胞(未成熟の前駆細胞)とフェーズ・ダークSVZ始原細胞との間を仲介する、中間細胞型(「台形細胞」)の特性)
まとめると、この研究成果は、「幹細胞性」を上述したような急速に分裂する細胞集団に起因するものとしている。さらに、この新規細胞型を研究し識別するために、我々は、成長因子使用停止後1日の3代継代SVZ細胞を単離し、検査した。これらの細胞のパッチクランプ分析を、細胞分裂時において(図4A)、あるいは、その後まもなく行った(n=8)。その結果により、増殖しているSVZのそれらとフェーズ・ダーク細胞の間を仲介している受動的な細胞膜特性が明らかになった(V=−60±8.4mV;C=12.5±1.3pF;Rin=661±162.6MΩ)。興味深いことには、この一時的な集団は、増殖細胞により示された典型的なIKと対比して(図4Aと図1J及び図2Cを比較)、低いカリウム伝導性と卓越したIKdr(フェーズ・ダーク細胞と双極細胞に特徴的な)を示す。ナトリウム・チャネル介在性電流は観察されなかった。
【0094】
これらの細胞の免疫表現型は、独特のβ−IIIチューブリン陽性細胞の小さいクラスターへの近接近に位置する、強くA2B5を発現する有糸分裂細胞(図4C、矢印)を示す。この台形の形をした細胞集団は一貫性なくA2B5を発現し、そして凝集された、明るいDAPI(4,6−ジアジノ−2−フェニルインドール)−標識細胞核(図4D)を示す。これらの細胞は、Dlx−2をまれにしか発現せず、そして、常にPSA−NCAMとGFAPに対して陰性である。この発見の意味するものは当時は高く評価されていなかったが、興味深いことに、ここで記述した「台形細胞」が、我々の培養モデルにおいては一時的であるが、成体げっ歯類のSVZについての我々の以前の生体内の研究(Gates,M.A. et al, J.Comp.Neurol.361:249, 1995)において、存在することが認めてられていた。ここで記述された発見は、これらの細胞は、多能性があり、幹様グリア細胞とフェーズ・ダーク始原細胞の間を仲介していることを表している。
【0095】
β−IIIチューブリンの発現は、とくに紡錘体の関連性(図4E、挿入図)において独特である。学説に縛られることを望むわけでないが、β−IIIチューブリン遺伝子のプロモーター領域はAP2とMATH−2への応答配列を含んでいるので、この発見がこの細胞型/発生の時期の一時的な性質に関する糸口を与えることを確信している。これらの要素は、グリア/ニューロンの致死選択と細胞周期の調節に関係している。
【0096】
図4Fと図4Gを参照すると、台形細胞の電子顕微鏡法(図4F)は、顕著な液胞(図4G)を示している。中間フィラメントは欠いているが、多数のミトコンドリアと遊離リボソームは細胞質において観察された(図4H)。
【実施例7】
【0097】
(生体内モデルにおいて繰り返されるニューロンの発生と分化)
我々は、開示された研究に基づき、脳室下帯のニューロン新生が単離可能であって生体内において再現可能であるという有力な証拠を提供する。特有のニューロン新生イベントが脳の発生の合図とは関係なく正確に繰り返されることは驚くべきことであるが、単純化した培養モデルの使用が神経幹細胞生物学の機能的な側面の解明に役立つことが証明された(たとえば、Shen Q.et al.,Science 304:1253,2004を参照)。
【0098】
デクスター(Dexter)等の先駆的な研究(J.Cell Physiol.91:335,1977)は、いかにして骨髄からの細胞が、造血細胞の増殖と分化のための特有の環境信号を模倣した粘着性の培養条件において、それら自身を確立することができるかを示した。我々のモデルとここに示された結果はさらに血液生成と神経系の発生分化の類似点を支持するが、そのことを我々はすでに指摘した(Scheffler B et al. Trends Neurosci.22:348, 1999)。
【0099】
SVZは成体脳のひとつの主要な神経性のニッチに相当するので、それを我々はまとめて「脳髄質」と呼び、神経系の発生分化は脳髄質特有のイベントと呼ぶが、ひとつの単一細胞分裂の結果を明らかにするよりも、一連の有糸分裂イベントを通して出現するフェーズ・ダーク細胞を直接観察することは興味深い。この観察結果は、生後の生命体における幹細胞が促進する細胞補給が主に一時的な増殖期細胞集団を経由して発生するという見識と調和している(Potten et al., Development 110;1001, 1990)。同時に、我々の観察は、胚発生と似ていないことを強調しているが、そこでは放射状グリア細胞が一つの非対称細胞分裂を経て、直接的に皮質の神経芽細胞を生み出している(Miyata T et al., Neuron 31:727, 2001)。
【0100】
幹様グリア細胞の変形の視覚化と特性化に加えて、我々はグリアからニューロンの表現型への変化が急速であるという驚くべき発見をし。24時間以内に増殖グリア細胞(GFAPlow+/A2B5/Nestin/Dlx−2/β−IIIチュ−ブリンとして特徴付けられる)は、急速に分裂する中間細胞(GFAP/A2B5+/−/Nestin/Dlx−2+/−/β−IIIチュ−ブリンとして特徴付けられる)を生じさせる。中間細胞は、つぎに3日後、フェーズ・ダーク細胞となるが、神経芽細胞とも呼ばれる(GFAP/A2B5/Nestin/β−IIIチュ−ブリン/Dlx−2/PSA−NCAMとして特徴付けられる)。ここで実証された神経系の発生分化の早期の段階の間の急速な形態発生のリズムの発見は、成体脳における幹細胞の明らかに理解しにくい部分の説明を提供するだろう。
【実施例8】
【0101】
(材料と方法)
次の材料と方法を以下の実施例9〜13において使用し、本発明のシステムと方法のいくつかの変形例を説明する。
【0102】
動物。以下に記述された実験を、生後8日と成体(60日齢より大きい)マウスの脳組織を用いて行った。野生型C57/B6とネスチン−GFPトランスジェニックC57B1/6xBalb/cByハイブリッド・マウスを使用した。
【0103】
細胞の分化。1日目:マウスの頭部を切断し、SVZからの脳組織を急速に顕微解剖し、2%抗生物質−抗真菌性(abx;インビトロジェン 15240−062)溶液を補給した、氷のように冷たいDMEM/F−12培地(DF;インビトロジェン 11320-033)へ移した。脳室下帯(SVZ)の吻側及び後方部の組織を、顕微解剖、トリプシン処理し、プラスチック皿中で、Nサプリメント、5%血清、EGF及びbFGF(20ng/mL各々)を含んでいるDMEM/F−12培地において一晩培養した。
【0104】
より具体的には、非粘着性細胞を集め、いくつかの異なる条件下で、すなわち、モノクローナル・ニューロスフェアの形成ができる条件下で(Kukekov et al.,1997において記述されたように)、ポリクローナル・ニューロスフェアが形成される高密度浮遊培養において、粘着性の単分子層として、増殖した。
【0105】
脳組織は、各々のこれらの条件下において最大48時間までの間、生存能力が残存することが明らかになった。無菌条件下、組織を外科用メスを用いて小さい(約1mm)塊に細かく刻み、1%abxを含んでいるPBS(ダルベッコ・リン酸緩衝生理食塩水;インビトロジェン 14190-144)で2回洗浄した。そして、37℃で20分間平衡させた0.25%トリプシン溶液へ移した。ウシ胎仔血清(FCS;ハイクローン SH30071.03)を、1%の最終濃度まで加えた。そして、組織を、単一細胞懸濁液が得られるまで、全幅を減少するファイアー・ポリッシュされたガラス・ピペットによって砕いて粉末にした。細胞懸濁液を、遠心分離機で分離し、細胞をその後、EGFとbFGF各々40ng/mL、及び下垂体抽出物37μg/mLを補ったN5培地(DF、5%FCS、変更を加えたN成分(N成分は、100μg/mLヒト・分離トランスフェリン、5μg/mLヒト・インスリン、20nMプロゲステロン、30nM亜セレン酸ナトリウム、100μMプトレシン)、及び1%abx)において再懸濁した。細胞を、少なくとも50,000セル/cmの密度で、処理されていないプラスチック細胞培養皿あるいはフラスコへ播種し、そして、5%飽和させたCO環境の加湿した37℃のインキュベーター内で一晩培養した。
【0106】
2日目:次の日、非付着性細胞を組織培養皿/フラスコから集め、そして、単一細胞懸濁液を、トリプシン消化してあるいはトリプシン消化しないで、上述されているようにガラス・ピペットで粉砕することによって準備した。細胞をその後、少なくとも50,000生存細胞/cmの密度で6ウェル・プレートのウェル(コスター#3516)におけるEGFとbFGF各々40ng/mLを含んでいるN5培地へ加えた。細胞をその後、5%飽和させたCO環境の加湿した37℃インキュベーター内で一晩培養した。
【0107】
2日目以降:生後脳からの多能性細胞の拡張は、培養物において2日で始まった。EGFとFGFを(各々20ng/mL)、細胞がコンフレントになるまで一日おきに加えた。細胞は、これらの条件下1〜4日後、高いコンフレント・レベルにおおむね達した。そしてそれらを、その後、1:2稀釈において連続継代した。培養物における細胞が4日までにコンフレントにならなかった場合、培地を取り替え、そして、その培養を継続する。トリプシンを用いて付着性細胞を除去することにより、細胞を継代した。そして、その後これらの細胞を75,000と85,000生存細胞/cmの間の密度において、新しい培養皿/フラスコに播種する。継代と培地交換後、EGFとFGFを40ng/mLの濃度で供給し、そして、その後、20ng/mLの濃度で2日おきに供給した。
【実施例9】
【0108】
(増殖神経前駆細胞の冷凍保存と拡張)
増殖期の間のいくつかの与えられた段階において、細胞は期間を延長するために、液体窒素中で凍結し、保存することができる。細胞はその後、解凍することができ、そして、同じ処理スケジュールを受けることができる。それらの幹細胞の特性を欠くことなく、凍結していない標本と同じ拡張率で産出することができる。たとえば、1代継代において凍結された細胞は、その後、20代継代まで連続継代を経て拡張させることができる。これらの細胞は、凍結することなく同様に連続継代された野生型C57/B6マウス由来の細胞と性質において同一であった。
【実施例10】
【0109】
(成長因子除去後の試験管内におけるフェーズ・ダーク細胞の誘導)
以下の観察を、上記実施例8において記述された方法を用いて行ったが、それは、誘導可能で分化可能な自己複製する生後脳由来の神経前駆細胞の単離と研究に適していることが見出された。血清とN成分及び成長因子であるbFGFとEGFを含んでいる培養条件下、上述のマウスSVZ由来細胞を、ニューロスフェアとして、あるいは粘着性の単分子層において保持した。浮遊培養物において成長したニューロスフェアからのマイトジェン因子の除去により、小さいフェーズ・ダーク細胞のクラスターは、出現したネスチンとβ−IIIチューブリンを共発現した。
【0110】
P8と成体(60日齢より大きい)マウス由来の吻側あるいは後部の脳組織を用いて、成長因子使用停止後出現したフェーズ・ダーク細胞クラスターの存在と相対量で、比較を行った。その結果、モノクローナル・ニューロスフェア条件を用いると、フェーズ・ダーク細胞は、成体脳あるいは吻側P8脳から少しも得ることができず、そのクラスターの少数は、後部のP8脳組織から得ることができることがわかった。ポリクローナル・ニューロスフェアを用いると、小数のフェーズ・ダーク・クラスターが、モノクローナル・ニューロスフェア(P8、後部の)から得られた数に匹敵して、全ての4つの組織起源から得られる。それと対照的に、粘着性の培養条件は、成体吻側組織からの多数のフェーズ・ダーク細胞と、P8動物からの吻側と後方の両方のSVZ脳組織からの同じくらい多数のこれらの細胞の産生を招いた。もっとも顕著であることには、培養物において1代継代と5代継代後、付着性の単分子層は小さいフェーズ・ダーク細胞を依然として産生することができた。
【0111】
BrdU摂取(10μM×24hr)を用いた研究により、小さいフェーズ・ダーク細胞が成長因子使用停止後、48〜72時間の培養物において出現することが実証された。連続継代実験とBrdU分析により、小さいフェーズ・ダーク細胞が、事前の継代に関わらず、増殖している単層培養物からの成長因子使用停止後、2〜3日に一貫して「生まれる」ことが明らかになった。
【0112】
新生フェーズ・ダーク細胞は、未成熟のニューロン・マーカーを発現した。たとえば、5代継代培養物から成長因子使用停止後3日に出現しているフェーズ・ダーク細胞のクラスターが、PSA−NCAM、ネスチン及びβ−IIIチューブリンを発現することが確かめられた。GFAPの発現は観察されなかった。
【実施例11】
【0113】
(付着性の培養物におけるフェーズ・ダーク細胞の成熟)
成熟時において、フェーズ・ダーク細胞は、より成熟した神経形態を採用し、ネスチンの発現と拡張過程を失った。より正確に言えば、血清と成長因子の長期の使用停止により、未成熟神経芽細胞によく似た、双極性で、高移動性の活動期の明るい形態型へ成熟した楕円形のフェーズ・ダーク細胞へ発展する。出現の1日後において、それらは、ネスチンとβ−IIIチューブリンを共発現した。観察7日後、細胞は、それらの「出生クラスター」から移動していた。そして、この段階において、β−IIIチューブリンの発現は続いたが、ネスチンは発現しなかった。
【0114】
神経前駆細胞が、成長因子使用停止において生み出された、ただひとつの細胞型であるかどうかを確定するために、我々は増殖性の条件下で単分子層の特性を明らかにした。より正確に言えば、フェーズ試験において、細胞の増殖単分子層は、アストロサイトとの形態学的な類似性を示し、そして、ネスチンとGFAPを偏在的に共発現した。特有の形態をもつ増殖細胞の、小さいが識別可能な小集団も存在し、β−IIIチューブリンを発現した。いくつかのGFAPアストロサイトはビメンチンも共発現した。成熟オリゴデンドロサイトとニューロン・マーカー(たとえば、CNPaseとMAP2、それぞれ)は、この条件下において存在しなかった。
【0115】
成長因子使用停止後、付着性の単分子層において基礎をなす細胞層の分析結果も得られた。EGF、bFGF及び血清の供給の停止により、フェーズ・ダーク細胞クラスターの周辺領域において、CNPase発現オリゴデンドロサイトの出現が促されることが発見された。同様に、ビメンチン発現細胞の増加が観察された。さらに、基礎をなす細胞の多くは、GFAPとネスチンを発現し、そして、β−IIIチューブリンを少数発現した。免疫型検査の結果により、広範に多様な異なった細胞の小集団が、成長因子使用停止後、付着性細胞の間に存在することが明らかになった。
【実施例12】
【0116】
(付着性培養条件における細胞の維持と拡張)
ほかの表面の使用(たとえば、0.1%ゼラチンあるいはラミニン(1μg/mL)/ポリ−L−オルニチン(15μg/mL))が培養された細胞の増殖率と発生能を低減することに対し、処理されていないプラスチック培養皿、フラスコ、あるいは、6ウェル・プレートの使用は、培養された細胞の増殖率と発生の多能性を増進した。高い細胞密度は、付着性の培養条件において、多能性細胞の維持と拡張に有利に働いた。たとえば、上述された特有の条件下において、2日目の50,000生存細胞/cmにおける最初の播種の後、培養物のさらなる連続継代は、75,000セルと85,000セルの間の生存細胞/cmを必要とすると思われた。低い細胞密度を使うと、多能性と細胞周期時間の維持において負の影響があった。
【0117】
培地:DF培地を使用した上述の実験において、N成分を含有することにより培養過程が促進された。さらにまた、上述のように、15代継代まで多能性を欠くことなく、5%FCSを補足した培地において、細胞を増殖させることができた。5%FCSにおいて拡張した細胞は、誘導イベントへの反応におけるニューロンとグリアの表現型への分化において顕著な遅延を示した。たとえば、5%血清を含んでいる培地における最初の継代において、分化はたった2〜3日で起こった。相対的に、15代継代において、分化は、培養14日まで記録されなかった。興味深いことに、培養2日後、血清は、多能性脳細胞のさらなる拡張に必要とされるようには見えなかった。
【0118】
いくつかの実験において、FCSが培養1日後に除去されたとき、多能性細胞は粘着性の条件において順調に拡張した。血清の含まれていない培地(EGFとbFGFを補足したN培地(DF、変更を加えたN成分、及び1%abx))において培養された細胞は、急速な(さらに高度の継代において確実に2〜3日)自発的な分化の刺激を誘導する反応を示した。しかしながら、それらは、誘導過程(以下、実施例13参照)のための異なった手順を必要とした。
【0119】
EGFは、付着性の培養条件における多能性細胞の拡張に必要であるようにも思われた。この成長因子を、増殖培地へ最初40ng/mL供給し、そしてその後、1日おきに20ng/mLの濃度で加えた。EGFにおいて単独で培養された細胞は、5〜6日の倍加時間で継続的に増殖し、それらの多能性を示す、分化中の新生ニューロンとグリアの子孫の中の多数のオリゴデンドロサイトを維持した。比較として、bFGFを付着性培養条件において多能性細胞の拡張のために任意に選択した。bFGFとEGF(双方、最初は40ng/mL、その後(1日おきに)20ng/mL)が補足された培養物における細胞は、高い増殖率を示し(倍加時間平均36時間、少なくとも20代継代を超えて一定している)、そして、それらの多能性分化を、新生ニューロンとグリアの子孫の中の多数のニューロンへ維持した。興味深いことに、培地をEGFなしで、bFGF(10〜40ng/mL)が補足した場合、細胞は、2〜3代継代以内に増殖を中止した。これらの条件下、極少数の新生ニューロンとグリアは、分化の誘導時に観察された。PDGF(血小板由来の成長因子)とLIF(白血病抑制因子)の作用もこのシステムにおいて調べたが、拡張した細胞集団の維持や性質のために寄与しなかった。
【実施例13】
【0120】
(付着性培養条件における分化の誘導)
FGFとEGFを補足したN5培地において増殖する細胞は、上述のように、ニューロン、アストロサイト及びオリゴデンドロサイトへの分化を誘導した。より具体的に言えば、分化は、血清、FGF、及び/又はEGFの使用停止により誘導された。これは、FGFとEGFを補足されたN5培地の除去、細胞のPBSでの2回洗浄、そして、その後、血清及び/又は成長因子なしでN培地へ細胞を加えることにより行われた。全ての3つの要因は、同時に使用を停止する必要がある。成長因子の使用停止に続く血清の連続的な使用停止は、分化を引き起こさず、また、次の血清の使用停止に続く成長因子の使用停止も分化を引き起こさない。
【0121】
誘導の大部分を、ポリ−L−オルニチン(15μg/mL/ラミニン(1μg/mL))でコートされた表面(ガラス・カバースリップ)において行った。その表面は、細胞付着性、神経の分化及び成熟のための理想的な基質を提供することが分かっている。処理されていない基質(たとえば、ガラス又はプラスチック単独)の使用は、細胞性付着物の欠如を引き起こし、及び/又は、誘導できる神経芽細胞の量を著しく減少させた。順調な分化の誘導は、光学顕微鏡により評価することができる。たとえば、大きく平坦な基礎をなす細胞の上の、小さいフェーズ・ダーク細胞クラスター(神経芽細胞)の出現は、分化が誘導されたことを示している。神経芽細胞の出現が、分化が誘導されたことを示すと同時に、新生オリゴデンドロサイトとアストロサイトが基礎となる細胞層の中に見出される。誘導的なイベントと神経芽細胞の出現の間の時間は、培養における(継代)時間に対応して増加する。神経芽細胞は通常、1代継代における誘導後1〜2日、5代継代における誘導後3〜4日及び13代継代における誘導後14日に出現する。
【0122】
細胞を初めに血清を含んでいる培地において広範囲に継代し、その培地をその後、血清で培養した培養物(14日)より急速に(5日)小さいフェーズ・ダーク細胞を生み出す、血清を含んでいない培地に交換した。はじめにEGFとFGFを補足したN5培地において少なくとも1日のあいだ細胞を培養し、その後、血清、EGFおよびFGFを除去することにより、血清を含まない条件(EGFとFGFを補足したN5培地)において培養された細胞の分化を誘導した。この方法における誘導の後、神経芽細胞は1代継代も5代継代いずれにおいても2〜3日で出現する。
(他の実施形態)
本発明をその詳細な説明とともに説明したが、前述の説明は説明を目的としており、添付した特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を制限するものではない。他の特徴、効果、変形は、特許請求の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0123】
図面は、本明細書の一部を形成し、本発明一形態をさらに説明するために添付されている。
【図1】図1Aは、試験管内において抗A2B5抗体と抗GFAP抗体を用いて免疫染色した未成熟な前駆細胞(「台形」細胞)を示す蛍光顕微鏡写真である。細胞核はDAPIで染色されている。大きいアストロサイトはGFAPにより明確に染色されている。多数ある小さい台形の形をした細胞(矢印で示す)はA2B5に対して陽性である。多数の小さい細胞はGFAPとA2B5(矢印)相互を発現している。尺度目盛は50μmである。
【0124】
図1Bは、抗ネスチン抗体と抗GFAP抗体で免疫染色した図1Aの培養物の3次元の再構成を示す蛍光顕微鏡写真である。台形細胞はネスチンを発現し、GFAPアストロサイトの集団の下に位置している。
【0125】
図1Cは、台形細胞の微細構造を示している図1Bに示す培養物の電子顕微鏡写真である。尺度目盛は10μmである。
【0126】
図1Dは、図1Cの囲み領域を高倍率に示す電子顕微鏡写真である。台形細胞はグリアの特性を持ち、突起した中間フィラメント(矢印)を含んでいる。尺度目盛は2μmである。
【0127】
図1Eは、台形細胞のホール・セル・パッチクランプ電気生理学的記録(左:電圧固定、中央:電流固定)を示す二つのグラフと、台形細胞とパッチクランプ電極を示すDIC顕微鏡写真(右)である。
【0128】
図1Fは、成長因子の使用停止後4日の分化条件において培養されたSVZ細胞を示す蛍光顕微鏡写真である。挿入写真は、位相差顕微鏡により観察された「フェーズ・ダーク」SVL始原細胞のクラスターの出現を示す。集光するそれらの細胞の細胞核は、DAPIにより明るく染色されている。尺度目盛は20μmである。
【0129】
図1Gは、抗PSA−NCAM抗体と抗Dlx−2抗体により免疫染色された図1Fに示される細胞の蛍光顕微鏡写真である。それらの細胞は、Dlx−2に対して陽性であり、Dlx−2とPSA−NCAMに最も相互に発現する。尺度目盛は20μmである。
【0130】
図1Hは、図1Fと図1Gに示されるフェーズ・ダーク細胞の電子顕微鏡写真である。フェーズ・ダーク細胞はこの段階において台形細胞の上に位置し、野生型SVZのA型細胞とC型細胞と著しく酷似している。尺度目盛は20μmである。
【0131】
図1Iは、図1Hにおいて観察されたフェーズ・ダーク細胞の下に位置する台形細胞を示す電子顕微鏡写真である。尺度目盛は20μmである。
【0132】
図1Jは、フェーズ・ダーク細胞の電気生理学記録(左:電圧固定、中央:電流固定)を示す二つのグラフと、フェーズ・ダーク細胞とパッチクランプ電極を示すDIC顕微鏡写真(右)である。フェーズ・ダーク細胞は、その生体内におけるSVZ生まれの神経始原細胞に類似した膜特性を示している。
【図2】図2Aは、レチノイン酸を用いて末期的に分化を誘導したフェーズ・ダーク細胞を示す三つの蛍光顕微鏡写真である。フェーズ・ダーク細胞は、成長因子使用停止の4日後、抗ネスチン抗体(左)、抗β−IIIチューブリン抗体(中央)と抗GFAP抗体(右)を用いて免疫染色された。融合イメージ(右)は、それらの細胞によるネスチンとβ−IIIチューブリン相互の発現を示しているが、GFAPの発現は示していない。尺度目盛は25μmである。
【0133】
図2Bは、図2Aで説明した三つの蛍光顕微鏡写真であって、双極過程を拡張した成長因子使用停止の9日後のフェーズ・ダーク細胞を示す。この段階におけるフェーズ・ダーク細胞は、未成熟な双極細胞に相当し、GFAPとネスチンに対して陰性であるが、β−IIIチューブリンの発現を示し続ける。尺度目盛は25μmである。
【0134】
図2Cは、成長因子使用停止9日後の双極細胞におけるTEA−感受性K媒介遅延型整流電流の電圧固定特性を示す6つのグラフである。いくつかの細胞において(細胞1)、TEA使用は潜在的なK媒介電流を顕在化させる。
【0135】
図2Dは、成長因子使用停止後の試験管内における28日後の成熟ニューロン(顆粒細胞)の出現を示すDIC写真である。尺度目盛は30μmである。
【0136】
図2Eは、成長因子使用停止28日後の試験管内において生み出されたGABA性表現型を有する成熟ニューロンを示す蛍光顕微鏡写真である。その細胞は、抗GAD65/67抗体と抗β−IIIチューブリン抗体により免疫染色されている。細胞核はDAPIにより染色されている。尺度目盛は30μmである。
【0137】
図2Fは、分化誘導後28日の電気生理学的記録(左:電流固定回路、右:電圧固定回路)を示す二つのグラフである。ニューロンは、一連のTTX感受性活動電位を発生する。
【0138】
図2Gは、図2Fに記述されている電気生理学的記録の2つのグラフである。左のトレースは、自発的なシナプス活性が記録可能であり、そしてピクロトキシンの使用により完全に阻害される(PIC;右のトレース)ことを示す。
【図3】図3Aは、SVZ細胞のリアル・タイム顕微鏡法を示す一連の4つの顕微鏡写真である(3代継代)。矢印は、一連の急速な分裂イベントが27時間だけでフェーズ・ダーク細胞の大きなクラスターをもたらす領域を示す。そのシーケンスは、成長因子使用停止24時間後から始まる。尺度目盛は40μmである。
【0139】
図3Bは、位相差顕微鏡(左)、蛍光顕微鏡(中央)、位相差と露出過度な蛍光を組み合わせた顕微鏡(右)による分化誘導後48〜72時間におけるフェーズ・ダーク細胞の画像を示す3つの顕微鏡写真である。蛍光発光は、BrDUにさらして2日後の90%以上標識化されているフェーズ・ダーク細胞を示す。尺度目盛は25μmである。
【0140】
図3Cは、培養されたP8(左上方)と成体のSVZ細胞(左下方)由来のクローンのニューロスフェア(NS)それぞれを示す2つの位相差顕微鏡写真と、成長因子使用停止後、形成されたNS数(右上方)とNSの相対変化度数(右下方)を示す2つのグラフである。尺度目盛は200μmである。
【0141】
図3Dは、抗β−IIIチューブリン抗体により免疫染色された、ニューロスフェア由来のニューロンを示す蛍光顕微鏡写真である。尺度目盛は20μmである。
【0142】
図3Eは、抗CNPase抗体により免疫染色された、ニューロスフェア由来のグリアを示す蛍光顕微鏡写真である。尺度目盛は20μmである。
【図4】図4Aは、分化誘導24時間後の培養物に出現する急速に分裂する中間細胞の独特の形態学的電気生理学的特性を示す位相差顕微鏡写真(左)と電気生理学記録の2つのグラフ(中央:電圧固定、右:電流固定)である。尺度目盛は15μmである。
【0143】
図4Bは、未成熟グリア・マーカーA2B5に対する抗体で免疫染色された、図4Aに記載した中間細胞を示す蛍光顕微鏡写真である。矢印はA2B5を発現する分裂細胞を指す。尺度目盛は15μmである。
【0144】
図4Cは、涙滴様形態の特徴を持つ中間細胞(涙滴細胞)に陽性なβ−IIIチューブリンのクラスターを示す蛍光顕微鏡写真である。尺度目盛は20μmである。
【0145】
図4Dは、DAPIで染色された涙滴細胞を示す蛍光顕微鏡写真であり、凝集した細胞核と光っているDAPI標識が示されている。
【0146】
図4Eは、A2B5とニューロン・マーカーβ−IIIチューブリンに対する抗体で免疫染色された涙滴細胞を示す蛍光顕微鏡写真である。これら2つのマーカーの同時発現は、この一時的な表現型の顕著な特徴であり、同時発現のレベルは、個々のクラスターと細胞の間で異なる。挿入図は、示された分裂細胞におけるβ−IIIチューブリン・フィラメントと紡錘体組織の関係を示す。
【0147】
図4Fは、涙滴細胞を示す電子顕微鏡写真である。これらの細胞は、暗く、細胞核が細長く、細胞と核サイズは増殖しているグリアとフェーズ・ダーク細胞の中間である。尺度目盛は1μmである。
【0148】
図4Gは、細胞質の液胞と多数のミトコンドリアと遊離型リボソームを示す涙滴細胞の電子顕微鏡写真であり、中間細胞は示されていない。尺度目盛は0.5μmである。
【0149】
図4Hは、中間フィラメントを欠いている涙滴細胞の形態の詳細を示す図4Gよりも高出力で撮影された電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物検体から神経前駆細胞を含む組織を単離するステップ(a)と、この組織を単一細胞に分離するステップ(b)と、増殖している及び/又は分化した少なくとも一つの細胞型を含む培養物を産生するために十分な時間、下垂体抽出物とマイトジェン因子であるEGFとbFGFを含む培養物中の基質に前記単一細胞を付着するステップ(c)とを備えたことを特徴とする神経前駆細胞の培養方法。
【請求項2】
さらに、マイトジェン因子を欠いた中で細胞を培養するステップ(d)を備えたことを特徴とする請求項1記載の神経前駆細胞の培養方法。
【請求項3】
前記培養物がN2成分を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の神経前駆細胞の培養方法。
【請求項4】
前記細胞型が、神経幹細胞とグリア細胞の双方の表現型マーカーを発現し、神経細胞系統のマーカーを発現しない未成熟前駆細胞であることを特徴とする請求項1記載の神経前駆細胞の培養方法。
【請求項5】
前記未成熟前駆細胞が培養物中で継代されることを特徴とする請求項4記載の神経前駆細胞の培養方法。
【請求項6】
前記細胞型が、マイトジェン因子使用停止の約1日後に中で産生された急速分化中間細胞であり、神経幹細胞の表現型マーカーとニューロン系統の表現型マーカーの両方を発現し、グリア細胞マーカーであるGFAPを発現しないことを特徴とする請求項2記載の神経前駆細胞の培養方法。
【請求項7】
前記細胞が、神経幹細胞マーカーであるネスチンと、未成熟グリア細胞マーカーであるA2B5と早期神経細胞マーカーであるβ−IIIチューブリンとを発現することを特徴とする請求項6記載の神経前駆細胞の培養方法。
【請求項8】
中間体である神経始原細胞が、ネスチンと、β−IIIチューブリンとDlx−2を含む早期のニューロン系統のマーカーとを発現し、MAP2、NeuN、GADを含む後期のニューロン系統のマーカーを発現しないことを特徴とする請求項6記載の神経前駆細胞の培養方法。
【請求項9】
前記細胞型が、マイトジェン因子使用停止の約2〜4日後に培地中で産生されたSVZ始原細胞であり、神経幹細胞の表現型マーカーとニューロン系統の表現型マーカーの両方を発現し、グリア細胞マーカーであるGFAPを発現しないことを特徴とする請求項2記載の神経前駆細胞の培養方法。
【請求項10】
前記SVZ始原細胞が、ネスチンと、及びβ−IIIチューブリンとDlx−2を含む早期のニューロン系統のマーカーと、MAP2、NeuN、GADを含むグループから選択された後期ニューロン系統マーカーの少なくとも一つとを発現することを特徴とする請求項9記載の神経前駆細胞の培養方法。
【請求項11】
ステップ(d)の前記培養物がニューロンの分化を誘導するためにマイトジェン因子使用停止後に培養培地へ加えられたレチノイン酸を含むことを特徴とする請求項2記載の神経前駆細胞の培養方法。
【請求項12】
前記細胞型が活動電位を生起可能な分化ニューロンであることを特徴とする請求項11記載の神経前駆細胞の培養方法。
【請求項13】
前記細胞型が双極細胞であることを特徴とする請求項11記載の神経前駆細胞の培養方法。
【請求項14】
前記細胞型がグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)を発現するGABA性ニューロンであることを特徴とする請求項11記載の神経前駆細胞の培養方法。
【請求項15】
前記細胞型がグリア細胞であることを特徴とする請求項1記載の神経前駆細胞の培養方法。
【請求項16】
前記グリア細胞がアストロサイト又はオリゴデンドロサイトであることを特徴とする請求項15記載の神経前駆細胞の培養方法。
【請求項17】
前記培養物が表面領域に約40,000〜80,000セル/cmの細胞を含むことを特徴とする請求項1記載の神経前駆細胞の培養方法。
【請求項18】
神経前駆細胞又は神経始原細胞、又は前記細胞由来の分化ニューロンを含み、ニューロン新生の一つの段階の細胞が集積されたことを特徴とする細胞組成。
【請求項19】
GFAPlow/A2B5/ネスチン/Dlx−2/β−IIIチューブリンとして特徴付けられる増殖未成熟前駆細胞を含むことを特徴とする請求項18記載の細胞構成。
【請求項20】
GFAP/A2B5/ネスチン/Dlx−2+/−/β−IIIチューブリンとして特徴付けられる急速分裂中間細胞を含むことを特徴とする請求項18記載の細胞構成。
【請求項21】
GFAP/A2B5/ネスチン/Dlx−2/β−IIIチューブリン/PSA−NCAMとして特徴付けられるSVZ始原細胞を含むことを特徴とする請求項18記載の細胞構成。
【請求項22】
分化ニューロンを含むことを特徴とする請求項18記載の細胞構成。
【請求項23】
請求項1記載の方法により得られたことを特徴とする増殖未成熟前駆細胞を含む細胞組成。
【請求項24】
請求項5記載の方法により得られたことを特徴とする増殖未成熟前駆細胞を含む細胞組成。
【請求項25】
請求項6記載の方法により得られたことを特徴とする急速分化中間細胞を含む細胞組成。
【請求項26】
請求項9記載の方法により得られたことを特徴とするSVZ始原細胞を含む細胞組成。
【請求項27】
請求項11記載の方法により得られたことを特徴とする分化ニューロンを含む細胞組成。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−522796(P2007−522796A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538544(P2006−538544)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/037224
【国際公開番号】WO2005/046598
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(506152276)ユニヴァーシティ オブ フロリダ リサーチ ファウンデーション,インク. (1)
【Fターム(参考)】