説明

神経前駆細胞を増殖させるための組成物および方法

神経前駆細胞(NPC)および多能性幹細胞(PSC)を培養、増殖、凍結保存および操作するための組成物および方法を提供する。細胞は速やかな倍加時間を示し、インビトロにおいて長期間維持することができる。神経前駆細胞を増殖させる方法、およびヒトNPCおよび/またはPSCを宿主に移植する方法も提供されている。細胞は、移植前に治療薬を発現するように遺伝的に改変することができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、一般に、多能性幹細胞および神経前駆細胞の増殖および用途に関する。本発明は、幹細胞および神経前駆細胞の単離、調製、増殖、凍結保存、分化および移植のための組成物および方法を提供する。幹細胞および神経前駆細胞は、治療、診断および研究目的に有用となりうる。
【0002】
本願は、全体の内容が参照により本明細書に組み入れられる、2003年12月2日提出の米国仮特許出願第60/526,242号の恩典を主張する。本願全体に、種々の刊行物が参照されている。本発明が属する技術分野の状態をより詳細に記載するために、これらの刊行物の開示内容は全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
中枢神経系(CNS)の疾患には、神経変性性疾患(例えば、アルツハイマーおよびパーキンソン)、急性脳損傷(例えば、卒中、頭部外傷、脳性麻痺)および神経学的機能不全(例えば、抑うつ、てんかん、統合失調症)などの数多くの種々の状態が挙げられる。高齢者人口が増大すると、神経変性性疾患の多くはリスクが加齢と共に増加するので、神経変性性疾患は重要性がますます大きくなる問題となる。アルツハイマー病(AD)、多発性硬化症(MS)、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)およびパーキンソン病(PD)を含むこれらの神経変性性疾患は、CNSの特定されている位置の神経細胞の変性に関連しており、これらの細胞または関連する脳領域が目的の機能を実行することができなくなる。
【0004】
医薬品の投与によるCNS疾患の治療は、血液-脳関門を通過することができる薬物の範囲が狭いことおよび長期治療を受ける患者に薬物耐性が発生することを含む欠点がある。例えば、血液-脳関門を通過することができるドーパミン前駆体であるレボドパ(L-ドーパ)で治療されているパーキンソン患者はL-ドーパの作用に耐性となり、その作用を維持するために用量を徐々に増加することが必要になる。また、運動亢進および制御不能などのL-ドーパに関連する数多くの副作用がある。
【0005】
米国では1,500万人を超える人がパーキンソン病(PD)に罹患している。PDの薬物治療が使い尽くされると、患者は外科的介入に頼ることしかできない。現在の介入はPD症状を抑制することに焦点を絞っているが、この疾病の損傷を回復しようと試みることが必須である。このような回復は神経前駆細胞の移植により可能となる場合がある。
【0006】
胎児神経組織の移植が、パーキンソン病などの神経系の疾患の治療に適用されている。胎児神経移植片は、一定の薬物投与の必要性および血液-脳関門を回避するように設計されている薬物送達システムの必要性も回避することができる。しかし、移植に使用される細胞はレシピエントの免疫反応を誘導することがある。また、細胞は、隣接細胞と新たな神経連絡を形成することができる発生段階でなければならない。
【0007】
移植は、多発性硬化症(MS)などの脱髄疾患の治療法も提供する。ヒト脱髄疾患およびげっ歯類モデルでは、脱髄したニューロンがインビボにおいて再ミエリン化することができる実質的な徴候がある。MSでは、例えば、脱髄と再ミエリン化のサイクルが存在することが多いようである。数多くの実験条件において外因的に適用される細胞は、脱髄軸索を再ミエリン化することができることが示されている(例えば、Freidman et al., Brain Research, 378: 142-146, 1986; Raine, et al., Laboratory Investigation 59: 467-476, 1988)。脊髄から調製した解離グリア細胞懸濁液(Duncan et al., Neurocytology, 17: 351-360(1988);坐骨神経から調製したシュワン細胞培養物(Bunge et al., 1992, 国際公開公報第WO 92/03536号; Blakemore and Crang, J. Neurol. Sci., 70: 207-223, 1985);解離した脳組織の培養物(Blakemore and Crang, Dev. Neurosci. 10: 1-11, 1988);オリゴデンドロサイト前駆細胞(Gumpel et al., Dev. Neurosci. 11: 132-139, 1989);O-2A細胞(Wolswijk et al., Development 109: 691-608, 1990; Raff et al., Nature 3030: 390-396, 1983; Hardy et al., Development 111: 1061-1080, 1991);および不死化O-2A細胞系統(Almazan and McKay, Brain Res. 579:234-245, 1992)を使用して成功が示されている。
【0008】
O-2A細胞は、インビトロにおいてオリゴデンドロサイトおよびII型アストロサイトのみを生ずるグリア前駆細胞である。O-2A表現型についてインビボにおいて免疫陽性の細胞は、脱髄ニューロンをインビボにおいて再ミエリン化に成功することが示されている(Godfraind et al., J. Cell Biol. 109: 2405-2416, 1989)。標的ニューロン全てをインビボにおいて十分に再ミエリン化するためには大多数のO-2A細胞の注射が必要とされる。O-2A前駆細胞は培養で増殖させることができるが、わずかしか分裂することができない(Raff Science 243: 1450-1455, 1989)。また、また、単離技法は低収率源(視神経)を使用し、数多くの精製段階を必要とする。
【0009】
ドーパミンを産生するための成人PNS由来のニューロンの移植(Notter, et al., Cell Tissue Research 244: 69-76, 1986)、抑うつの一形態である学習性無力感を軽減するための成獣ラット松果体および副腎髄質から単離したモノアミン-含有細胞のラット前頭葉への移植(米国特許第4,980,174号);植え込まれた組織または細胞がカテコールアミンを放出するように誘導されたとき、鎮痛作用を生じるための、クロム親和細胞および副腎髄質のラット脳幹または脊髄への移植(米国特許第4,753,635号)を含む種々の神経移植方法が神経系の疾患を寛解させるために開発されている。しかし、副腎細胞は、CNSへの移植の結果、正常な神経表現型を獲得しておらず、従って、シナプス連結が形成されなければならない移植物にはあまり有用でない。
【0010】
別の神経移植法は、遺伝的に改変されている細胞の使用に関係する。この方法を使用して、外来遺伝子または導入遺伝子を細胞に導入して、細胞にその遺伝子を発現させる。導入遺伝子を含有するように改変されている細胞を神経変性部位に移植して、変性の症状の一部を軽減する働きをすることができる神経伝達物質および増殖因子などの産物を提供することができる(Rosenberg, et al., Science 242: 1575-1578, 1988)。遺伝的に改変されている細胞は、損失された細胞を補充するために、神経組織移植に使用されている。例えば、ドーパミンを産生させるチロシンヒドロキシラーゼのcDNAを含有するレトロウイルスベクターで線維芽細胞を遺伝的に改変し、パーキンソン病の動物モデルに植え込まれている(米国特許第5,082,670号)。しかし、現在入手可能な細胞系統を使用すると免疫反応を誘導するリスクが残っており、これらの細胞は宿主組織内に正常な神経連結を達成しないことがある。
【0011】
神経移植に使用するためおよび薬物スクリーニングのために神経前駆細胞を増殖する試みがなされているが、これらの努力はあまり成功していない。ニューロバーサル(Neurobasal)培地は培養中の神経前駆細胞の迅速な倍加時間を可能にしているが、これらの倍加時間は約1ヶ月観察され、その後細胞は分化し、前駆細胞の表現型を損失する。典型的には、最も最適な培養条件で、神経前駆細胞は約10継代培養しか生存しない。また、神経前駆細胞の約1〜2%しか凍結保存で生き残らない。さらに、神経前駆細胞をインビトロで維持するための現在の努力は、支持細胞層の使用を必要とし、かつ/または動物要素を導入する。支持細胞層を使用しても、神経前駆細胞は約6ヶ月しか維持されなかった。臨床適用のためには、動物要素を含まず、支持細胞層の使用を必要としないヒト神経前駆細胞を入手し、維持することが望ましい。
【0012】
移植のためおよび薬物スクリーニングのため、特にヒト前駆細胞および幹細胞のための大量の未分化神経前駆細胞および多能性幹細胞の必要性が残っている。インビトロにおいて長期増殖することができ、分化および/または遺伝的改変の制御を受けやすい神経前駆細胞の必要性も存在する。特に、神経前駆細胞を長期間維持し、増殖する方法の必要性および凍結保存後の収率を最適にする方法の必要性が存在する。
【発明の開示】
【0013】
発明の概要
本発明は、神経前駆細胞(NPC)および多能性幹細胞の培養、増殖、凍結保存および操作のための組成物および方法を提供する。本発明は、培地のカルシウム濃度が0.15 mM未満である、かついくつかの態様では、約0.06 mM未満である培養培地を提供する。いくつかの態様では、培地のカルシウム濃度は約0.05 mM〜0.15 mMである。培養培地は、さらに、約20 ng/ml(任意で、約20〜約100 ng/ml)の上皮細胞増殖因子(EGF)、約10 ng/ml(任意で、約10〜50 ng/ml)の塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、および約10 ng/ml(任意で、約10〜約150 ng/ml)のトランスフォーミング増殖因子α(TGFα)、および任意で、約7〜約30 ng/mlの白血病抑制因子(LIF)を含む。また、培地に懸濁させたNPCを含む相棒培養物も提供する。細胞培養物は、支持細胞層の非存在下およびヒト以外の動物起源由来の産物の非存在下での維持が成功している。
【0014】
一態様において、細胞培養物は、約0.03〜約0.09 mMの塩化カルシウムをさらに含み、培地は無カルシウム最小必須培地でフルボリューム(full volume)にされており、総カルシウム濃度は0.1 mM未満である。別の態様において、総カルシウム濃度は約0.05〜0.06 mMである。凍結保存のためには、低カルシウム培地にB27(典型的には、約2%)およびジメチルスルホキシド(典型的には、約DMSO)(10%)および増殖拡大培養培地に使用される栄養素を補給する。本発明により凍結保存されるNPCは50%を超える生存率を示す。一態様において、凍結-融解後の生存率は75%を越える。90%を超える凍結保存後生存率が観察されており、95%を超える生存率は、本発明の培地で凍結保存したNPCに特有であった。
【0015】
好ましくは、培養培地は血清を含まず、ヒト以外の動物産物を含まない。培地は、2%のB27サプリメントをさらに含んでもよい。典型的には、増殖因子、EGF、bFGF、LIFおよびTGFαは組換え増殖因子であり、NPCおよび増殖因子はヒト由来である。
【0016】
一態様において、NPCは胎児前脳由来である。本発明により培養されるNPCは、12日未満、典型的には約5日の倍加時間を有する。NPCはインビトロにおいて少なくとも1年増殖し続けることができる。本発明のNPCは、2.5年以上、250継代以上増殖し続けることが観察されている。
【0017】
本発明はさらに、本発明の培養培地において初代ヒト胎児脳組織を培養する段階を含む、神経前駆細胞を増殖する方法も提供する。本発明はさらに、NPCを凍結保存し、融解時にNPC生存を最適にする方法を提供する。ヒトNPCを宿主に移植する方法も提供する。一態様において、グリアからのニューロンの成長を促進するために、移植する前にL-グルタミンおよび白血病抑制因子(LIF)を培養培地に添加する。別の態様において、細胞培養物を宿主の複数の部位に移植する。よりさらに別の態様において、移植する前に治療薬を発現するようにNPCを遺伝的に改変する。
【0018】
本発明は、さらに、多能性幹細胞(PSC)を増殖する方法を提供する。本発明の方法は、本発明の培養培地において初代ヒト胎児前脳組織を培養する段階を含む。本発明の方法によって数ヶ月の期間にわたって培養される細胞において、普及率(prevalence)が増加することが示されている、幹細胞マーカーであるOct4の発現について培養物をモニターすることができる。
【0019】
発明の詳細な説明
本発明は、ヒト神経前駆細胞(NPC)の長期間増殖のためおよびNPCの凍結保存の成功のために最適化した培養培地の発見に基づいている。本発明により培養されるNPCは、インビトロにおいて1年より長く、3年も生存することができる。本発明によるNPCの凍結保存は、融解の結果生存率が95%以上である。また、本発明は、望ましい場合に付着および分化を実施するように培養NPCの操作を可能にする培養培地の変化を提供する。本発明により培養されるNPCは、脳への移植が成功しており、パーキンソン病の動物モデルの組織および機能を回復させている。さらに、NPCを増殖するために使用するものと同じ培養条件は、幹細胞マーカーのOct4を発現する多能性幹細胞(PSC)を培養することも示されている。
【0020】
定義
本明細書に使用する全ての科学用語および技術用語は、特に明記しない限り、当技術分野において通常に使用される意味を有する。本明細書に使用する以下の用語およびフレーズは明記する意味を有する。
【0021】
本明細書において使用する「低カルシウム」培地は0.15 mM未満のカルシウム(最終濃度)、典型的には約0.03〜0.09 mMをいう。低カルシウム培地は無カルシウム培地を含まない。「高カルシウム」培地は、0.15 mMより多いカルシウムをいう。
【0022】
本明細書において使用する「神経前駆細胞」(NPC)は、ネスチンに免疫陽性で、懸濁培養において連続培養が可能であり、適当な条件に暴露すると、ニューロンまたはグリア細胞に分化することができる細胞をいう。本明細書において言及する神経前駆細胞はインビトロにおいて少なくとも2〜3年生存することができる。
【0023】
本明細書において使用する「多能性幹細胞」(PSC)は、幹細胞マーカーのOct4に免疫陽性である細胞をいう。
【0024】
本明細書において使用する「遺伝的に改変されている」は、天然または組換え方法によって導入遺伝子を含有するように操作されている細胞をいう。例えば、NPCまたはそれらの子孫は、望ましいポリペプチドをコードする核酸分子を導入することによって遺伝的に改変することができる。
【0025】
本明細書において使用する「導入遺伝子」は、細胞に挿入され、機能的タンパク質に対応するアミノ酸配列をコードするDNAを意味する。典型的には、コードされるタンパク質は、CNSの細胞に治療作用または調節作用を発揮することができる。
【0026】
本明細書において使用する「タンパク質」または「ポリペプチド」は、天然起源から単離されている、組換え技法によって作製されているまたは化学的に合成されているかどうかにかかわらず、タンパク質、タンパク質の機能的断片およびペプチドを含む。本発明のポリペプチドは、典型的には、少なくとも約6つのアミノ酸を含み、生物作用または治療作用を発揮するのに十分な長さである。
【0027】
本明細書において使用する「ベクター」は、宿主細胞に関心対象の1つ以上の遺伝子または配列を送達し、好ましくは、発現することができる構築物を意味する。ベクターの例には、ウイルスベクター、裸のDNAまたはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミドまたはファージベクター、陽イオン凝縮剤に結合しているDNAまたはRNA発現ベクター、リポソームに封入されているDNAまたはRNA発現ベクター、およびプロデューサー細胞などのある種の真核細胞が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0028】
本明細書に記載する「発現調節配列」は、核酸の転写を誘導する核酸配列を意味する。発現調節配列は、構成的もしくは誘導プロモーターなどのプロモーターまたはエンハンサーであってもよい。発現調節配列は、転写される核酸配列に機能的に結合している。
【0029】
「核酸」または「ポリヌクレオチド」は、1本鎖または2本鎖形態のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーをいい、特に限定しない限り、天然型ヌクレオチドと同様の方法で核酸とハイブリダイゼーションする天然ヌクレオチドの公知のアナログを含む。
【0030】
本明細書において使用する「薬学的に許容される担体」は、作用成分と組み合わされるとき、成分が生物作用を保持することを可能にし、被験者の免疫系と無反応である任意の材料を含む。例には、リン酸緩衝生理食塩液、水、油/水エマルジョンなどのエマルジョンおよび種々の種類の湿潤剤などの標準的な薬学的担体のいずれかが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。エアゾールまたは非経口投与に好ましい希釈剤はリン酸緩衝生理食塩液または通常の(0.9%)生理食塩液である。
【0031】
このような担体を含む組成物は、周知の従来の方法によって製剤化される(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th edition, A. Gennaro, ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, 1990参照)。
【0032】
本明細書において使用する「ある1つの」("a" or "an")は、そうでないことを明らかに示さない限り、少なくとも1つを意味する。
【0033】
神経前駆細胞
本発明は、培養で無期限に維持することができ、ブロモデオキシウリジン(BrdU)およびネスチン染色が陽性であり、多能性である神経前駆細胞(NPC)を提供する。本発明のNPCは、ニューロン(例えば、MAP2、ニューロン特異的エノラーゼまたはニューロフィラメント陽性細胞)およびグリア(例えば、GFAPまたはガラクトセレブロシド陽性細胞)を作製することができる。本発明のNPCは、細胞培養で、典型的には懸濁培養として少なくとも1年維持することができる。本明細書に記載するNPCは2.5年も維持されており、一部のNPCは3年培養されている。
【0034】
本発明のNPCは培養の最初の2日で50%の増殖を示し、倍加時間は10日未満であり、典型的には約6日である。5日程度の倍加時間も観察されている。また、これらの細胞は長期間培養で増殖し続ける。しかし、Neurobasal(商標)培地などの従来の培地で培養されるNPCと異なり、これらの培養物は3〜4ヶ月後に低下を示さず、数年間数百継代生存し、増殖し続ける。
【0035】
また、本発明のNPCは、前駆細胞に特有である正常な構造および機能を示す。図5に示すように、NPCは培養中に胚様体を形成する。図4は、未分化のままであるNPCの集密的な増殖を示し、図6は、浮遊しているクラスターにおいて増殖しているNPCを示す。図12および13は、電子顕微鏡写真であり、本発明のNPCの正常な超微細構造を示す。
【0036】
NPCは、以下の実施例1に記載する胎児脳の中脳および/または終脳から調製することができる。典型的には、組織は、0.25 ug/mlのファンギソンおよび10 ug/mlのゲンタマイシンを添加したHank's Balanced Salt Solution(HBSS)などの汎用無血清培地に滅菌条件下で切開される。
【0037】
多能性幹細胞
本発明は、培養で無期限に維持することができ、幹細胞マーカーOct4の染色が陽性である多能性幹細胞(PSC)を提供する。本発明のPSCはOct4およびネスチンを同時発現し、これらの細胞がニューロンおよびグリアを作製することができることを示している。本発明のPSCは、典型的には懸濁培養として細胞培養で少なくとも1年維持することができる。本明細書に記載する前駆細胞/幹細胞培養物は、最初は、含まれるOct4陽性細胞はわずかな割合で、ネスチン陽性細胞がほとんどである。数ヶ月培養すると、Oct4陽性細胞の割合はかなり増加する。例えば、典型的な培養物は、5%のOct4陽性細胞から4ヶ月後には30%のOct4陽性細胞になる。
【0038】
本発明のPSCは、NPCについて本明細書に記載する全ての方法に使用することができる。これらの細胞のOct4陽性状態は、これらの細胞が神経環境を超えて多数の追加の用途が可能であることを示している。これらの細胞は多能性であるので、局所的なサイトカイン(天然および/または外因的に供給)および他の信号が適当な分化および遊走を誘導する種々の組織環境に置くことについて魅力あるものにしている。以下の方法の記載において、NPCはNPCおよび/またはPSCを表すことが理解される。
【0039】
細胞培養のための培地および方法
培養中のNPCの構造および機能に、培養培地による操作を実施した。例えば、培地のカルシウム濃度を0.05 mMから0.1 mMに上昇すると、前駆細胞は培養フラスコに付着する(図7参照)。培養培地にLIFを添加すると倍加時間を延長するが、ニューロン数は多くなる。LIFの添加は、NPCの大きいクラスターの形成を防ぐ助けもする。培地中のTGFαは倍加時間を大幅に短縮する作用をする(例えば、14日から5日へ)。従って、培養培地は特定の目的により選択され、増殖および増殖拡大に有利な成分もあれば、付着および分化に有利な成分もある。
【0040】
一般的な目的のためには、細胞培養は、低カルシウム基本培地(例えば、塩化カルシウムを補給する無Ca++EMEM)、典型的にはB27または等価なサプリメントおよび増殖因子(例えば、EGF、FGF、TGFα)を必要とする。任意の成分には、ニューロンの成長を促進するL-グルタミンおよびLIFが挙げられる。
【0041】
以下の実施例3は、NPCの増殖拡大および分化のための培養培地の最適化についての詳細な説明を提供する。一般に、長期増殖および増殖拡大は低カルシウム濃度を必要とする。これは、典型的には、カルシウムを添加する無カルシウム最小必須培地(EMEM)を使用することによって達成される。最適な増殖および増殖拡大は0.05〜0.06 mMのカルシウム濃度において観察されている。カルシウム濃度が上昇すると、例えば、0.15 mM以上、培養中のニューロンがより分化したニューロン表現型を取ると、それらの間のネットワーク形成が観察される。このような高カルシウム培養では、培養培地にLIFを添加しなくても、細胞の1〜2%しかアストロサイトマーカーGFAPに免疫陽性でない。
【0042】
NPCは、典型的には、懸濁培養で増殖される。初代細胞の最初の平板培養は30,000〜50,000細胞/cm2が最適であった。培地の交換は、細胞を試験管に取り出し、遠心分離(例えば、1,500 rpmで5分)することによって6日ごとに実施することができる。典型的には、元の培地の2 ml以外は全て破棄し、追加の3 mlの新鮮な培地を合わせた残りの2 mlのもとの培地にペレットを再懸濁させる。密度が400,000細胞/mlを超えたら、細胞を2つの培養容器(例えば、T75フラスコ)に分割してもよい。接種時の細胞の粉砕はNPCのクラスターを破壊し、培養培地中でのそれらの懸濁性を維持する助けをする。これらのパラメーターの変更は寛容性があり、特定の目的および条件に適するように最適化することができることを当業者は理解している。
【0043】
本発明のNPCは治療および診断的適用ならびに薬物スクリーニングおよび遺伝子操作に使用することができる。本発明のNPCおよび/または培養培地は、これらの適用のいずれかにおける使用を容易にする容器および/またはシリンジおよび他の材料を任意に含むキット形態で提供することができる。
【0044】
NPCの凍結保存
本発明は、NPCを凍結し、融解するための最適な方法および培地を提供する。NPCを保存し、融解に成功することができることは、臨床適用における使用に有用であり、好適なNPCの持続的で一定の供給を保証する。前駆細胞集団を用いて研究している専門家はほとんど凍結-融解後の細胞の生存率はわずか1〜2%しか観察していないが、本発明は、凍結-融解後の50%を越える生存率、典型的には95%を超える生存率を生じる培地および方法を提供する。
【0045】
凍結保存のため、NPCを、B27およびDMSOならびに増殖拡大(expansion)培養培地に使用される栄養素を補給した低カルシウム培地に懸濁させる。典型的には、凍結保存培地の増殖因子は、約20〜100 ng/mlの上皮増殖因子(EGF);約10〜50 ng/mlの塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF);および約1〜150 ng/mlのトランスフォーミング増殖因子α(TGFα)を含む。融解のため、NPCを増殖している培養培地およびフラスコまたは他の容器は、15〜40℃、好ましくは、約25〜37℃に事前加温される。典型的には、培養フラスコ(または他の容器)は、細胞の増殖に使用されるものと同じまたは同様のガス、湿度および温度条件のインキュベーターで事前加温される。例えば、典型的な温度は約37℃で、典型的なCO2レベルは約5%(およびO2が残り95%)である。
【0046】
NPCの治療的用途
本発明のNPCは、従来の技法を使用して宿主の中枢神経系(CNS)に植え込むことができる。神経移植または「移植(grafting)」は、宿主脳の実質内、脳室腔内または表面の硬膜下への細胞の移植に関係する。移植成功の条件には:1)植え込まれる細胞の生存率;2)適当な連結の形成および/または適当な表現型の発現;および3)移植部位における病的な反応が少ないことが挙げられる。
【0047】
NPCの治療的用途は、CNSの変性、脱髄性、興奮毒性、神経障害性および外傷状態に適用することができる。NPC移植片によって治療することができる状態の例には、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、アルツハイマー病(AD)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、てんかん、卒中、虚血および他のCNS外傷が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0048】
種々の神経組織を宿主脳に移植する方法は、参照として本明細書に組み入れられる、Neural Transplantation: A Practical Approach, S. B. Dunnett & A. Bjorklund(Eds.) Irl Pr; 1992に記載されている。これらの手技は、(脳の外側または実質外移植と比較して)実質内移植、すなわち宿主脳内移植を含み、移植時に脳実質に向かい合って存在するように、宿主脳内に組織を注射または沈着することによって実施される。
【0049】
実質内移植の手技は、宿主脳実質内にドナー細胞を定位的に注射することに関係する。移植片が宿主脳の不可欠な部分になり、宿主の生命のために生存するようになる場合には、これは重要である。典型的には、実質内移植は、細胞の事前分化に関係する。しかし、細胞の分化は、遊走して、連結を形成する能力を制限する。目的が、移植部位における神経物質の産生を達成することである場合には、事前分化した細胞の実質内移植が典型的には好ましい。
【0050】
または、移植片を室、例えば、脳室または硬膜下、すなわち介在する脳軟膜もしくは、くも膜および軟膜によって宿主脳実質から分離されている宿主脳表面に配置してもよい。硬膜下移植は、細胞を脳表面に注射することができる。いくつかの態様において、NPCを静脈内注射する。脳室内または静脈内導入されたNPCは宿主脳の適当な領域に遊走する。目的が回路網および機能の回復である場合には、脳室内(または静脈内)移植が好ましい。
【0051】
宿主脳の選択した領域への注射は、マイクロシリンジの針の挿入を可能にするように、穴を開け、硬膜を貫通することによって実施することができる。マイクロシリンジは、好ましくは、定位フレームに取り付けられ、脳または脊髄の望ましい位置に針を配置するために三次元定位座標が選択される。移植は、細胞懸濁液をシリンジに引き上げ、麻酔した移植片レシピエントに投与する。この手技を使用して複数回の注射を実施することができる。NPCを導入することができるCNS部位の例には、脳の被殻、基底核、海馬皮質、線条体または尾状核ならびに脊髄が挙げられる。
【0052】
細胞懸濁液手技は、脳または脊髄の任意の所定の部位へのNPCの移植を可能にし、比較的非外傷性で、同一の細胞懸濁液を使用して数箇所の異なる部位または同一の部位への同時の複数回の移植を可能にし、異なる特徴を有する細胞の混合を可能にする。多数の移植片は細胞種の混合物および/または細胞に挿入される導入遺伝子の混合物からなってもよい。好ましくは、約104〜約108細胞が移植片あたり導入される。任意で、NPCは未分化細胞のクラスターとして移植されてもよい。または、NPCは、移植前に分化するように誘導されてもよい。
【0053】
脊髄移植に好ましい場合がある腔への移植のためには、例えば、脊髄を覆っているグリア性瘢痕を除去し、ゲルフォーム(gelfoam)などの材料で出血を止めることによって、CNSの外側表面に近い領域から組織を除去して、移植腔を形成する。腔を形成するために吸引を使用してもよい。
【0054】
外傷のある脳へのNPCの移植は異なる手技を必要とする。移植を試みる前に、傷害部位をきれいにして、出血を止めなければならない。また、ドナー細胞は、外傷のある脳の病的な環境への移植片の孤立を防ぐために宿主脳の任意の病変または腔を充填するのに十分な増殖力を持っていなければならない。
【0055】
遺伝的に改変されたNPC
本発明は、標的組織部位に移植するためにNPCを遺伝的に改変する方法を提供する。一態様において、CNSの細胞の欠損、疾病および/または傷害を治療するために細胞をCNSに移植する。本発明の方法はまた、CNSまたは他の標的組織の疾病または外傷を治療するための他の治療手技と併用してトランスジェニックNPCの移植の使用も考慮している。従って、本発明の遺伝的に改変されているNPCおよび/またはPSCを、CNSの細胞に有用な作用を発揮する他の細胞、遺伝的に改変されている細胞および遺伝的に改変されていない細胞と同時移植することができる。従って、遺伝的に改変されている細胞は、同時移植される遺伝的に改変されていない細胞の生存率および機能を支持する働きをすることができる。
【0056】
さらに、本発明の遺伝的に改変されている細胞は、増殖因子、例えば、神経増殖因子(NGF)、ガングリオシド、抗生物質、神経伝達物質、神経ペプチド、毒素、神経突起促進分子および代謝拮抗剤およびドーパミンの前駆体、L-ドーパなどのこれらの分子の前駆体などのCNS(または他の標的組織)の欠損、外傷または疾病の治療に有用な治療薬と同時投与することができる。
【0057】
機能的遺伝子挿入物(導入遺伝子)を搬送するベクターを使用して、欠損、疾病または外傷により細胞が受けている障害を修復するために、CNSの細胞に直接または間接的に影響を与えることができる分子を産生するようにNPCおよび/またはPSCを改変することができる。一態様において、CNSの細胞の欠損、疾病または障害を治療するために、導入遺伝子、例えば、神経増殖因子(NGF)タンパク質をコードする遺伝子を含有するレトロウイルスベクターを導入することによってNPCを改変する。遺伝的に改変されているNPCから発現される導入遺伝子産物の産生の結果として、損傷したニューロンの機能の修復または回復によって欠損、アルツハイマー病もしくはパーキンソン病などの疾病または物理的外傷による傷害を治療するために、遺伝的に改変されているNPCを中枢神経系、例えば、脳に移植する。インビボにおいて寛解作用を有する内因性分子の産生を増強する導入遺伝子産物をCNSに導入するためにもNPCを使用することができる。
【0058】
当業者は、NPCおよび/またはPSCに導入遺伝子を導入するために使用することができる種々のウイルス性および非ウイルス性ベクターを理解している。導入遺伝子の送達は、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウムトランスフェクションおよびDEAE-デキストランによるなどの直接DNAトランスフェクションを含む周知の技法によって実施することができる。ウイルス送達システムには、例えば、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノおよびアデノ随伴ウイルスが挙げられる。
【0059】
導入遺伝子の核酸は組換え方法によって作製してもまたは従来の技法を使用して合成してもよい。導入遺伝子は、1つ以上の完全長の遺伝子または遺伝子の一部を含んでもよい。本発明に使用するために導入遺伝子によってコードされるポリペプチドには、増殖因子、増殖因子受容体、神経伝達物質、神経ペプチド、酵素、ガングリオシド、抗生物質、毒素、神経突起促進分子、代謝拮抗剤およびこれらの分子の前駆体が挙げられるが、それに限定されるわけではない。特に、NPCに挿入するための導入遺伝子には、チロシンヒドロキシラーゼ、トリプトファンヒドロキシラーゼ、ChAT、セロトニン、GABA-デカルボキシラーゼ、ドーパデカルボキシラーゼ(AADC)、エンケファリン、アンフィレグリン、EGF、TGF(αまたはβ)、NGF、PDGF、IGF、繊毛様神経栄養因子(CNTF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経栄養因子(NT)-3、NT-4および塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0060】
一般に、本明細書に記載するポリペプチド(融合タンパク質を含む)およびポリヌクレオチドは単離される。「単離された」ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、元の環境から取り出されているものである。例えば、天然型タンパク質は、天然系において共存する物質の一部または全てから分離されると、単離されたこととなる。好ましくは、このようなポリペプチドは純度少なくとも約90%であり、さらに好ましくは、純度少なくとも約95%であり、最も好ましくは、純度少なくとも約99%である。ポリヌクレオチドは、例えば、天然の環境の一部でないベクターにクローニングされている場合、単離されていると考えられる。
【0061】
治療は予防および治療を含む。予防または治療は、1つの部位または複数の部位に1つの時点においてまたは複数の時点において単回直接注射によって実施することができる。投与は、複数の部位にほぼ同時であってもよい。患者または被験者は哺乳類を含む。被験者は、好ましくは、ヒトである。
【0062】
投与および用量
組成物は、しばしば薬学的に許容される担体と共に任意の好適な方法で投与される。本発明に関連する細胞を被験者に投与する好適な方法は利用可能であり、特定の細胞組成物を投与するために2つ以上の経路を使用することができるが、特定の一経路が別の経路より迅速で、効果的な反応を提供できることが多い。
【0063】
本発明に関連して患者に投与される用量は、患者において有用な治療応答を経時的に発揮するまたは疾病の進行を阻止するのに十分であるべきである。従って、組成物は、特定の抗原に対する有効な免疫応答を誘発するおよび/または疾病または状態の症状および/または合併症を緩和、軽減、治癒または少なくとも部分的に停止するのに十分な量が被験者に投与される。これを達成するのに十分な量は「治療的に有効な用量」と規定される。
【0064】
本明細書に開示する治療組成物の投与経路および投与頻度ならびに用量は患者によって異なり、標準的な技法を使用して容易に設定することができる。典型的には、薬学的組成物は注射によって投与される。好ましくは、52週の期間において1〜10回投与することができる。個々の患者に対して別のプロトコールが適当である場合がある。
【0065】
好適な用量は、上記のように投与するとき、治療応答を促進することができ、未治療レベルと比較して改善が少なくとも10〜50%である化合物の量である。一般に、適当な用量および治療法は、治療および/または予防的利点を提供するのに十分な量の物質を提供する。このような応答は、未治療患者と比較したとき、治療患者における臨床成果の改善(例えば、頻度の高い完全もしくは部分的な寛解、または疾病のない長期生存)を確立することによってモニターすることができる。腫瘍タンパク質に対する既存の免疫応答の増加は、一般に、臨床成果の改善と関連する。このような免疫応答は、一般に、治療前後に患者から入手した試料を使用して実施することができる標準的な増殖、細胞毒性またはサイトカインアッセイを使用して評価することができる。
【0066】
薬学的組成物
本発明は、NPCおよび/またはPSCおよび任意で生理学的に許容される担体を含む薬学的組成物を提供する。本発明の範囲内の薬学的組成物は、生物学的に活性または不活性であってもよい他の化合物も含有してもよい。例えば、1つ以上の生物応答調節剤が、融合ポリペプチドに組み込まれて、または別個の化合物として組成物内に存在してもよい。
【0067】
当業者に公知の任意の好適な担体を本発明の薬学的組成物に使用することができるが、担体の種類は投与様式に応じて変わる。本発明の組成物は、例えば、頭蓋内、脳室内または硬膜下投与を含む任意の適当な投与方法用に製剤化することができる。生物分解性マクロスフェア(例えば、ポリラクテート、ポリグリコレート)も本発明の薬学的組成物の担体として使用することができる。好適な生物分解性マイクロスフェアは、例えば、米国特許第4,897,268号および米国特許第5,075,109号に開示されている。このような組成物は、緩衝液(例えば、中性緩衝生理食塩液またはリン酸緩衝生理食塩液)、炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン)、マンニトール、タンパク質、ポリペプチドまたはグリシンなどのアミノ酸、抗酸化剤、EDTAまたはグルタチオンなどのキレート剤、補助剤(例えば、水酸化アルミニウム)および/または保存剤も含んでもよい。
【0068】
実施例
以下の実施例は、本発明を例示するためならびに本発明を製造および使用する際に当業者の助けとするために提供されている。実施例は、本発明の範囲を限定することを決して意図していない。
【0069】
実施例1:前駆細胞の調製
この実施例は、神経前駆細胞(NPC)とも言われる脳前駆細胞(BPC)の調製を例示する。BPCは、胎児脳の終脳(T系統)および中脳(M系統)から誘導した。胎児脳は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって推奨されているガイドラインを使用して地元地域の医師から入手した。人工妊娠中絶が実施された後にだけ組織提供の要請を持ってドナーにアプローチし、その後同意書を得た。患者、婦人科医または診療所に金銭による対価または他の報奨を提供しなかった。母体の血液試料を入手し、以下の血清学的試験を実施した:HIV、A型、B型およびC型肝炎、HTLV-1、VDRLならびにCMV。胎児脳組織は、滅菌条件下において低圧吸引技法により入手した。中絶の適応、時期または方法に手技間の変化はなかった。中脳のすぐ隣の胎児組織を、好気性および嫌気性細菌、HSVおよびCMVについて培養した。グラム染色を使用して顕微鏡的診断も実施した。性器ヘルペス、癌、喘息、狼瘡、関節リウマチ、アレルギー、自己免疫起源の血管炎の病歴、薬物乱用歴または売春歴を有するドナーの胎児組織は除外した。
【0070】
胎児死体の妊娠期間は、超音波で測定した頭殿長(CRL)により判定した。妊娠週齢は6〜8週(CRL 20〜24 mm)の範囲であった。終脳および中脳試料は2人のドナー(CRL:20 mmおよび24 mm)から入手した。切開は、手術用顕微鏡(Leica, Wild MJZ, Meerbrugg, Switzerland)下で層流フード(Environmental Air Control, Inc.)内で4℃において実施した。汎用無血清培地(Ultraculture, Whittaker Bioproducts)を、5 mmolのL-グルタミンおよび10 μg/mlのカナマイシンおよび0.25μg/mlのファンギゾンを添加して使用した。培養培地で胎児組織を10回すすぎ、次いで脳を軟骨性の頭蓋骨および髄膜から剥離し、顕微解剖のために10μg/mlの硫酸カナマイシンおよび0.25μg/mlのファンギゾンを補給したHank's Balanced Salt Solution(HBSS)に移した。両半球(終脳)から背側皮質を傍矢状に切除した。さらに、腹側中脳および蓋の吻側半分を切開した。回収した試料をマイクロシザーで十分に細分化し、ファイアポリッシュピペットを使用して粉砕した。事前のトリプシン処理は使用しなかった。培養フラスコまたはガラスチャンバー付きスライドで平板培養する前に、細胞の生存率(トリパンブルー排除試験)および密度を評価した。平均生存率は96%であった。最適な平板培養密度は30,000〜50,000細胞/cm2であることが見出された。
【0071】
実施例2:起源組織の特徴づけ
この実施例は、上記のBPCの調製のために切開した組織の特徴づけを記載する。切開した組織に隣接する胎児脳組織領域を同様に処理し、免疫細胞化学ならびに電子および光学顕微鏡用に固定した。これらの隣接切片を、生存率および機能的特異性について回顧的に分析した。
【0072】
形態学的分析のためには、皮質および中脳を胎児から採取し、免疫細胞化学または超微細構造的形態のために処理した。切開後、組織の一部を4%緩衝(pH 7.4) PFA固定液で固定し、次いでパラフィンに包埋し、回転式ミクロトームで切片化した。この組織試料を組織化学的手法で処理して、種々のニューロンおよびグリアマーカー(AchE、TH、NSE、MAP2、BrDU、ネスチン等)を可視化した。
【0073】
ペルオキシダーゼ反応による免疫細胞化学的標識は、グリアマーカーグリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP;Lipshaw, Philadelphia, PA)、神経伝達物質GABA(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)およびドーパミン作動性マーカー、カテコールアミン作動性合成酵素TH(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)に対する抗体を用いて実施した。簡単に説明すると、切片を脱パラフィンし、漸減シリーズのエタノール浴で脱水し、次いで3%過酸化水素ブロッキング溶液(Signet Laboratories, Dedham, MA)中でインキュベーションした。一次抗体をスライドに適用し、次いでリン酸緩衝生理食塩液で2回すすいで除去した。次いで、スライドを結合試薬、次いで標識試薬中でインキュベーションし、次いでAEC色素原(Signet Laboratories, Dedham, MA)で可視化した。電子顕微鏡のためには、組織をカルノフスキー固定液に固定し、1%四酸化オスミウムで後固定し、エタノールおよびプロピレンオキシドのシリーズで脱水し、次いでMedcast樹脂(Ted Pella, Redding, CA)に包埋した。超薄切片を銅グリッドに回収し、鉛およびウランで染色し、JEOL-100CX電子顕微鏡で観察した。
【0074】
2〜4継代後、培養細胞のほとんどを回収し、液体窒素で凍結した。クリオ培地は、10%DMSO、4%のB-27サプリメントおよび5〜7μl/mlのMEM非必須アミノ酸溶液(Gibco, NY)を含有する増殖拡大培養培地を含有する。
【0075】
実施例2A:グリア細胞繊維性酸性タンパク質(Glial Fibrillary Associated Protein)(GFAP)の染色
Cytospin(登録商標)(ThermoShandon, Pittsburgh, PA)を使用して細胞をSuperfrost Plusスライドで平板培養し、次いで4%パラホルムアルデヒドで室温において20分固定した。1×PBS、pH 7.4(Gibco)において細胞の5分間の洗浄を2回行った。細胞を70%メタノールで4℃において終夜透過処理した。細胞を1×PBSにおいて5分間、2回洗浄し、次いでSuperBlock(商標)ブロッキング緩衝液(Pierce Biotechnology, Rockford, IL)で非特異的結合を室温において60分ブロックした。SuperBlockをスライドから除去し、細胞調製物を、0.1% Triton-X-100を含有するSuperBlock(商標)緩衝液で希釈したヒト特異的グリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP)に対するマウス由来の一次モノクローナル抗体(VectorLaboratories, Inc. Burlingame, CA)と共に室温において終夜インキュベーションした。細胞を1×PBSにおいて5分間、2回洗浄した。細胞の内因的ペルオキシダーゼ活性をImmunoPure Peroxidase Suppressor(商標)(Pierce Biotechnology, Rockford, IL)で室温において20分ブロックした。細胞の1×PBSにおける5分の洗浄を2回行い、0.1% Triton-X-100を含有するSuperBlock(商標)緩衝液で希釈したマウス宿主由来の一次抗体に特異的なビオチン化二次抗体(VectorLaboratories, Inc. Burlingame, CA)(ビオチン化抗マウスIgG、アフィニティー精製、ラット吸着)と共に室温において120分インキュベーションした。次いで、0.1 Mにおける細胞の5分間の洗浄を2回行い、ビオチンに特異的なターシャリー(tertiary)のペルオキシダーゼ-結合ストレプトアビジン(Vectastain Elite ABC reagent, VectorLaboratories)と共に室温において60分インキュベーションした。1×PBSにおける細胞の5分間の洗浄を2回行い、ジアミノベンジジン(VectorLaboratories, Inc)と共に室温において2分間インキュベーションした。これらの段階は全て加湿チャンバーを使用して実施した。室温の水道水における細胞の1分の洗浄を3回行い、Hematoxylin QS(VectorLaboratories, Inc. Burlingame, CA)で30秒対比染色した。室温の水道水における細胞の1分の洗浄を3回行い、ブルーイング試薬(bluing reagent)(Richard-Allen Scientific,)で室温において30秒処理し、暖かい水道水における1分の洗浄を3回行い、グリセルゲル(glycergel)(DakoCytomation, Carpinteria, CA)でカバースリップし、暗所で室温において保存した。
【0076】
実施例2B:5-ブロモデオキシウリジン(BrDU)の染色
Cytospin(登録商標)(Thermo Shandon, Pittsburgh, PA)を使用して細胞をSuperfrost Plus(商標)スライドで平板培養し、次いで4%パラホルムアルデヒドで室温において20分固定した。1×PBS、pH 7.4(Gibco)を用いる細胞の5分間の洗浄を2回行い、70%メタノールで4℃において終夜透過処理し、1×PBSにおける5分の洗浄を2回行い、非特異的な結合を防ぐために、SuperBlock(商標)ブロッキング緩衝液(Pierce Biotechnologies, Inc., Rockford, IL)で室温において60分処理した。SuperBlockをスライドから除去し、次いで1×PBS中で終夜インキュベーションした。内因的ペルオキシダーゼ活性をImmunoPure Peroxidase Suppressor(商標)(Pierce Biotechnologies)で室温において20分失活させた。0.1% Triton-X-100を含有するSuperBlock(商標)緩衝液で希釈したBrDU(VectorLaboratories, Inc.)に対するマウス由来の一次モノクローナル抗体を用いる1× 室温における5分の洗浄を2回行った。ついで、スライドのPBSにおける5分間の洗浄を2回行い、0.1% Triton-X-100を含有するSuperBlock(商標)緩衝液で希釈した、一次抗体に特異的な、アフィニティー精製しラット吸着させたビオチン化抗マウスIgG二次抗体(VectorLaboratories, Inc)と共に室温において120分インキュベーションした。この段階の後、1×PBSにおける細胞の5分間の洗浄を2回行い、ビオチンに特異的なターシャリー(tertiary)のペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジン(VectorLaboratories, Vectastain Elite ABC reagent)と共に室温において60分インキュベーションした。1×PBSにおける細胞の5分間の洗浄を2回行い、ジアミノベンジジン(VectorLaboratories, Inc)と共に室温において2分間インキュベーションした。最後に、室温の水道水における細胞の1分の洗浄を3回行い、Hematoxylin QS(Vector)で30秒対比染色し、室温の水道水における細胞の1分の洗浄を3回行い、ブルーイング試薬(bluing reagent)(Richard-Allen Scientific,)で室温において30秒処理し、暖かい水道水における1分の洗浄を3回行い、グリセルゲル(glycergel)(DakoCytomation, Carpinteria, CA)でカバースリップし、暗所で室温において保存した。
【0077】
実施例2C:ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)の染色
Cytospin(登録商標)(Thermo Shandon, Pittsburgh, PA)を使用して細胞をSuperfrost Plus(商標)スライドで平板培養し、次いで4%パラホルムアルデヒドで室温において20分固定した。1×PBS、pH 7.4(Gibco)を用いる細胞の5分の洗浄を2回行い、70%メタノールで4℃において終夜透過処理し、1×PBSにおける5分の洗浄を2回行い、非特異的な結合を防ぐために、SuperBlock(商標)ブロッキング緩衝液(Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL)で室温において60分処理した。SuperBlockをスライドから除去し、次いで0.1% Triton-X-100を含有するSuperBlock(商標)緩衝液で希釈したヒトNSEに対するマウス由来の一次モノクローナル抗体(Chemicon)と共に室温において30分インキュベーションした。
【0078】
1×PBSを用いる細胞の5分の洗浄を2回行い、ImmunoPure Peroxidase Suppressor(商標)(Pierce Biotechnology)を用いて内因的ペルオキシダーゼ活性を室温において20分抑制した。1×PBSにおける細胞の5分の洗浄を2回行い、0.1% Triton-X-100を含有するSuperBlock(商標)緩衝液で希釈したマウス宿主由来の一次抗体に特異的なビオチン化二次抗体(ビオチン化抗マウスIgG、アフィニティー精製、ラット吸着)と共に室温で120分間インキュベーションした。1×PBSにおける細胞の5分間の洗浄を2回行い、ビオチンに特異的なターシャリー(tertiary)のペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジン(VectorLaboratories, Vectastain Elite ABC reagent)と共に室温において60分インキュベーションした。この後、1×PBSにおける細胞の5分間の洗浄を2回行い、ジアミノベンジジン(VectorLaboratories, Inc)と共に室温において2分間インキュベーションし、室温の水道水における細胞の1分の洗浄を3回行い、Hematoxylin QS(VectorLaboratories, Inc)で30秒対比染色し、室温の水道水における細胞の1分の洗浄を再度3回行い、ブルーイング試薬(bluing reagent)(Richard-Allen Scientific)で室温において30秒処理し、暖かい水道水における1分の洗浄を3回行い、グリセルゲル(glycergel)(DakoCytomation, Carpinteria, CA)でカバースリップし、暗所で室温において保存した。
【0079】
実施例2D:CD34の染色
Cytospin(登録商標)(Thermo Shandon)により細胞をSuperfrost Plus(商標)スライドで平板培養し、次いで4%パラホルムアルデヒドで室温において20分固定した。1×PBS、pH 7.4(Gibco)を用いる細胞の5分の洗浄を2回行った。細胞を70%メタノールで4℃において終夜透過処理した。1×PBSにおける細胞の5分の洗浄を2回行った。非特異的な結合については、SuperBlock(商標)ブロッキング緩衝液(Pierce)で室温において60分ブロックして、カバーした。SuperBlockを除去し、0.1% Triton-X-100を含有するSuperBlock(商標)緩衝液で希釈したヒトCD34に対する一次抗体(マウス由来のヒト特異的CD34モノクローナル抗体;DakoCytomation, Carpinteria, CA)と共に細胞調製物を室温において終夜インキュベーションした。1×PBSにおける細胞の5分の洗浄を2回行った。
【0080】
内因的ペルオキシダーゼ活性をImmunoPure Peroxidase Suppressor(商標)(Pierce)で室温において20分抑制し、次いで1×PBSにおける5分の洗浄を2回行った。0.1% Triton-X-100を含有するSuperBlock(商標)緩衝液で希釈したマウス宿主由来の一次抗体に特異的なビオチン化二次抗体(ビオチン化抗マウスIgG、アフィニティー精製、ラット吸着;Vector)と共に室温において120分インキュベーションし、カバーした。1×PBSにおける細胞の5分間の洗浄を2回行った。ビオチンに特異的なターシャリー(tertiary)のペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジン(Vectastain Elite ABC reagent; Vector)と共に室温において60分インキュベーションし、カバーした。1×PBSにおける細胞の5分間の洗浄を2回行った。細胞調製物をペルオキシダーゼ酵素基質溶液ジアミノベンジジン(Vector)と共に室温において2分間インキュベーションした。室温の水道水における細胞の1分の洗浄を3回行った。Hematoxylin QS(Vector)で30秒対比染色した。室温の水道水における細胞の1分の洗浄を3回行った。シャープさを出すために、ブルーイング試薬(bluing reagent)(Richard-Allen Scientific,)で室温において30秒処理した。暖かい水道水における1分の洗浄を3回行った。グリセルゲル(glycergel)(DakoCytomation, Carpinteria, CA)でカバースリップし、暗所で室温において保存した。
【0081】
実施例2E:白血球共通抗原(CD45)の染色
Cytospin(登録商標)(Thermo Shandon)を使用して細胞をSuperfrost Plus(商標)スライドで平板培養し、次いで4%パラホルムアルデヒドで室温において20分固定した。1×PBS、pH 7.4(Gibco)を用いる細胞の5分の洗浄を2回行い、70%メタノールで4℃において終夜透過処理し、1×PBSにおける5分の洗浄を2回行った。非特異的な結合は、SuperBlock(商標)ブロッキング緩衝液(Pierce)で室温において60分ブロックし、次いで、0.1% Triton-X-100を含有するSuperBlock(商標)緩衝液で希釈したヒトCD45に対するマウス由来のヒト特異的抗白血球共通抗原一次モノクローナル抗体(DakoCytomation)と共に室温において30分インキュベーションした。
【0082】
1×PBSにおける細胞の5分の洗浄を2回行い、内因的ペルオキシダーゼ活性をImmunoPure Peroxidase Suppressor(商標)(Pierce)で室温において20分失活させた。この後、1×PBSにおける5分の洗浄を2回行い、マウス宿主由来の一次抗体に特異的な、0.1% Triton-X-100を含有するSuperBlock(商標)緩衝液で希釈したビオチン化二次抗体(ビオチン化抗マウスIgG、アフィニティー精製、ラット吸着、Vector Laboratories, Inc.)と共に室温において120分インキュベーションした。1×PBSにおける細胞の5分間の洗浄を2回行い、ビオチンに特異的なターシャリー(tertiary)のペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジン(VectorLaboratories, Inc, Vectastain Elite ABC reagent)と共に室温において60分インキュベーションし、1×PBSにおける細胞の5分間の洗浄を2回行い、ジアミノベンジジン(Vector Laboratories, Inc)と共に室温において2分間インキュベーションした。最後に、室温の水道水における細胞の1分の洗浄を3回行い、Hematoxylin QS(Vector Laboratories, Inc)で30秒対比染色し、室温の水道水における細胞の1分の洗浄を3回行い、シャープさを出すために、ブルーイング試薬(bluing reagent)(Richard-Allen Scientific,)で室温において30秒処理し、暖かい水道水における1分の洗浄を3回行い、グリセルゲル(glycergel)(DakoCytomation, Carpinteria, CA)でカバースリップし、暗所で室温において保存した。
【0083】
この染色プロトコールは、Oct-4(Chemicon)、βチューブリンクラスIII(Serotec)、ネスチン(R&D Systems)、チロシンヒドロキシラーゼ(Chemicon)およびヒトミトコンドリア(Chemicon)に対する抗体にも使用した。
【0084】
実施例3:培養培地の最適化
この実施例は、BPCの増殖拡大および分化に対する影響を試験した種々の培地要素を記載する。終脳および中脳由来のBPCの増殖速度を、以下の3つの標準的な培養培地において比較した:マイトジェンbFGF、EGF、TGFα、LIF;カスパーゼ3および8阻害剤;およびB-27サプリメントの少なくとも25種の種々の組み合わせを添加した、ダルベッコ変法イーグル培地(Dulbecco's Modification of Eagle's Medium)(DMEM);カルシウムを含有しないイーグル最小必須培地(Eagle's Minimum Essential Medium)(EMEM)(Biowhittaker)、Neurobasal(GibcoBRL)、Ultraculture(Biowhittaker)およびPFMR-4+8F(BRF)。各組み合わせの有効性を、短期および長期増殖拡大中の細胞の生存率および倍加時間ならびに線条体内移植後のラットPDモデルにおける行動的影響によって試験した。bFGF、EGF、TGFα、LIFおよびB-27を添加したEMEMベースの低カルシウム培養培地は最もすぐれた結果を提供した。
【0085】
数多くの成分を試験した後に、おそらく最も驚くべき結果は、カスパーゼ-1阻害剤、アセチル-Tyr-Val-Ala-Asp(Ac-YVAD)またはアセチル-Tyr-Val-Ala-Aspクロロメチルケトン(Ac-YVAD-CMK)(Calbiochem)を添加しても利点が見られなかったことであった。実際、増殖培地におけるカスパーゼ阻害剤の存在は細胞数の減少に関連していた。また、インターロイキン-1(IL-1)を使用しても利点は観察されなかった。グリア細胞系統由来神経栄養因子(GDNF)および繊毛様神経栄養因子(CTNF)は共に迅速な分化および細胞死を刺激することが見出された。
【0086】
トランスフォーミング増殖因子α(TGFα)は倍加時間をかなり短縮することが見出された(例えば、14日から5日へ)。白血病抑制因子(LIF)は神経細胞を促進し、NPCの大きいクラスターの形成を防止した。塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)は、他の栄養素が存在しない場合に使用しても良好な増殖を生じた。上皮増殖因子(EGF)は単独では活発な増殖を支持しなかったが、bFGFおよびTGFαと併用すると、最適な増殖が観察された。
【0087】
唯一の栄養素としてのbFGFにおいて増殖した細胞を、EGF+bFGF+TGFα(E+F+T)を含有する培地において増殖したNPCと比較した。動物あたり200万個の細胞をPDラット(パーキンソン病の動物モデル)に移植した。移植後6日目に、bFGFだけの細胞が12%の密度の低下を示したが、E+F+T細胞は167%の密度の増加を示した。
【0088】
前駆細胞増殖拡大培地
基本培地:
カルシウムを含有しないイーグル最小必須培地(EMEM)、BioWhittaker, Inc., Walkersville, MD、カタログ番号#06-1746。
サプリメント:
B27(2%)、Gibco BRL、カタログ番号#17504
r-hEGF(20 ng/ml)、Peprotech、カタログ番号#100-15
r-hFGF塩基性(bFGF、FGF2)、(20 ng/ml)、Peprotech、カタログ番号#100-18B
ピルビン酸ナトリウム(0.11 mg/ml)、Sigma、カタログ番号#S-8636
塩化カルシウム2H2O、(0.1 mM)、Sigma、カタログ番号#C-7902
オプション:
ゲンタマイシン(50μg/ml)、Sigma、カタログ番号#G-1272
アムホテリシン(Amphotericin)B(1.25μg/ml)、Sigma、カタログ番号#A-2942、または、Sigmaの100×抗生物質/抗真菌剤、カタログ番号#A-9909
【0089】
前駆細胞分化培地
基本培地:
PFMR-4+8F、Biological Research Faculty and Facility, Inc(BRFF)、カタログ番号#SF-240
または、DMEM、Neurobasalもしくはカルシウムを含有しないEMEM(最高0.1 mMのCaCl2にする)
分化因子:
グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)(10 ng/ml)、Sigma、カタログ番号#G-1777
IL-1α、(100 pg/ml)、Sigma、カタログ番号#I-2778
IL-11、(1 ng/ml)、Sigma、カタログ番号#I-3644
白血病抑制因子(LIF)、(1 ng/ml)、Sigma、カタログ番号#L-5283
N6,2'-O-ジブチリルアデノシン3',5'-サイクリックモノホスフェート(db-cAMP)、(100μM)、Sigma、カタログ番号#D-0627
フォルスコリン(Forskolin)(5μM)、Calbiochem-Behring Corp、カタログ番号#344270
オプション:
0.25μg/mlファンギゾン
10μg/ml硫酸カナマイシン
培地調製:
グルタミン酸は、培地に添加する場合には、最初の平板培地を提供するためだけに使用する。その後の栄養はグルタミン酸を含有しない培地である。
【0090】
増殖拡大培地

【0091】
分化培地

【0092】
Neurobasal培地:

製造したら、この培地は1〜2週間冷蔵保存する。
【0093】
実施例4:本発明の培地で培養したNPCの特徴
本発明の培地で培養するNPCは神経前駆細胞の特徴を有することが示された:それらはEMEM培地で無期限に維持することができ、BrDU染色が陽性を示し、ネスチンを発現し、低[Ca++]条件下で、ドーパミン作動性(35〜60%)およびセロトニン作動性(24〜40%)ニューロンならびに数多くの他のMAP2陽性細胞(10〜12%)およびグリア(GFAP陽性細胞15〜23%)を作製することができる。それらはまた、インビトロにおいて有核赤血球(2〜3%)およびラット虚血心に注射するとき、筋芽細胞を散発的に作製する。
【0094】
一方、NPCは、本発明の低カルシウムEMEM培地中で培養すると、懸濁状態で未分化状態を維持する。カルシウム濃度を例えば、0.1 mMに上昇すると、NPCはネットワークを形成し、神経細胞表現型を示す。グリアよりニューロンに好ましいLIFを添加しない場合でも、これらの培養細胞はわずか1〜2%がグリアマーカーGFAPに免疫陽性であり、この集団は主に神経細胞であることを示唆している。
【0095】
実施例5:パーキンソン病の動物モデルの脳へのNPCの移植
この実施例は、本発明により調製したNPCをラット脳に移植することに成功することができることを証明している。移植した細胞は、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)陽性細胞への正常な分化を示すことができることを実施例は示している。また、移植したNPCは、このパーキンソン病の動物モデルに特徴的な行動の欠陥を寛解させることを結果は示している。
【0096】
移植は、浮遊性NPCを培養フラスコから取り、培地の交換に実施するように遠心分離する。ペレットを残りの2 mlの培地に再懸濁し、この濃縮した懸濁液を血球計数器で計数する。追加の培地を添加して、最終細胞濃度を350,000細胞/μlにする。
【0097】
ハミルトンシリンジ(Hamilton Co., NV)を使用して、4μl(8μg)の6-ヒドロキシドーパミン、6-OHDA(Research Biomedicals International, MA)を注射することによって黒質を損傷させた。注射は2分間かけて実施し、注射後3分待って、針を除去する前に拡散させた。
【0098】
黒質損傷の2週間後に、ラットを全身麻酔下におき(ケタミン87 mg/kgおよびキシラジン10 mg/kg;または4%イソフランガス)、定位固定装置に固定した。頭皮切開を実施し、頭蓋骨の線条体の座標に穴を開けた。ハミルトンシリンジを使用して、定位座標A=-0.11;L=3.8;V=4.5の6-OHDA損傷の同側の線条体に前駆細胞を植え込んだ(動物あたり70,000細胞/2μl)。次いで、切開を閉じ、ベタジンで処理した。事前の条件なしに全てのNPCを植え込んだ。
【0099】
回旋行動試験は、ラットにアンフェタミンまたは基剤を皮下注射した。注射直後に、3フィート×3フィートで測定する運動チャンバー(Columbus Instruments, Columbus, OH)に動物を入れた。2分の調節期間後、チャンバーに取り付けたCCDカメラで全ての回転を追跡し、Videomex V(商標)ビデオイメージアナライザー(Columbus Instruments, Columbus, OH)で分析した。運動の活動および回転を60分記録した。
【0100】
T5またはM5細胞を植え込んだ両グループの動物は、回旋行動の大幅で、同程度の低下を示した。両グループの動物において、NPCの約14〜24%がTH陽性細胞に分化した。
【0101】
実施例6:黒質に植え込んだNPCはチロシンヒドロキシラーゼ陽性になる
上記の実施例5に記載するものと同様の方法を使用してNPC、M5およびT5細胞を植え込んだ。脳幹由来のM5細胞集団は、植え込む前はチロシンヒドロキシラーゼ(TH)陽性が24〜30%であった。植え込み後は、M5 NPCの54%がTH陽性であった。前脳由来のT5細胞は全て培養中はTH陰性であった。植え込むと、植え込んだNPCの32%がTH陽性であった。
【0102】
実施例7:NPCの分化
NPCの分化を誘導するように最適な条件を決定するために、上記の培養条件を変更し、操作した。得られた最適な分化培地は0.15 mM Ca++、0.5 mM L-グルタミン、10 ng/ml GDNF、15 ng/mlレチノイン酸を含有する。
【0103】
実施例8:NPCの凍結保存
NPCの凍結保存の最適条件を決定するために、培地の成分を変更し、操作した。DMSOに加え、B27は、かなりの保護作用を提供し、融解したNPCにおいて観察される非常に高い生存率に貢献すると思われる。
【0104】
凍結保存のためには、2% B27、LIF(15 ng/ml)、EGF(50 ng/ml)、FGFおよびTGF(25 ng/ml)および10% DMSOを補給した低カルシウム培地(0.06 mM Ca++ EMEM)に懸濁した。先ず、細胞を約-40℃のフリーザーに1〜1.5時間置き、その後液体窒素で保存する。細胞は、約-80℃以下、典型的には約-200℃において保存することができる。これらの検討に使用する液体窒素保存タンクは-197℃に維持する。
【0105】
融解は、培養培地およびフラスコを37℃の水浴で37℃に事前に加温した。この凍結保存方法を使用すると、95%以上の生存率が、融解時のNPCに常に観察される(色素排除細胞計数による)。典型的には、細胞は、融解後の最初の5〜7日で縮んだ形態および異常な形態を呈する。この外観にもかかわらず、細胞はトリパンブルー色素を排除することができる。約1週間後、細胞は凍結前の状態に回復し、典型的な形態、増殖および倍加時間を示す。
【0106】
実施例9:本発明の培養液における多能性幹細胞
NPCについて上記のように培養した細胞を、幹細胞マーカーOct4の発現について評価した。Oct4は、胚性幹細胞および成人幹細胞ならびに腫瘍細胞において特異的に発現されるが、分化した組織の細胞では発現されない転写因子である(Tai et al., Carcinogenesis, オンライン公表2004年10月28日)。Oct4陽性細胞は、減数分裂を開始し、隣接細胞を補充して、濾胞様組織を形成し、後に胚盤胞に発生する卵原細胞に培養で発生することもできる(Hubner, K. et al., Science, 2003, 300(5623): 1251-6)。培養におけるこの卵形成能力により、それらは生殖系列の核移植および操作に有用となり、不妊治療ならびに生殖細胞および体細胞の相互作用および分化に関する検討のためのモデルを作製するのに有用となる。
【0107】
培養6週まで、NPCについて上記したように培養した細胞は、若干の幹細胞(OCT4陽性)およびほとんどのネスチン陽性前駆細胞を示す。4ヶ月の培養期間を超えると、集団は約5%のOct4陽性細胞含有から約30%のOct4陽性細胞含有にシフトした。この観察は、これらの細胞は長期培養において脱分化することを示していると思われる。または、これは、長期培養における幹細胞の選択的生存を反映している可能性がある。
【0108】
図17に示すように、Oct4陽性細胞は、NPCマーカー、ネスチンを同時発現することも観察された。従って、ネスチン陽性細胞は神経細胞に分化することができるが、必ずしもこの経路を経るわけではない。
【0109】
実施例10:脳室内NPCは、パーキンソン病の動物モデルにおいて機能を回復する
パーキンソン病のこのラットモデルに特徴的な回旋行動欠損を形成するために、実施例5に上記するように黒質損傷をラットに実施した。上記のように調製した500,000のヒトNPCを脳室に注入した。回旋行動の寛解の成功を確認した回旋行動検討の終了後、免疫組織化学的調査のために組織切片を作製した。植え込んだNPCのヒト細胞は、線条体、黒質および海馬を含む神経組織に遊走し、ニューロンおよびグリアに分化することが見出された。
【0110】
図18は、ラット被殻において、写真の中心に分岐状の伸長部および右下の隅にグリア細胞が見られる琥珀色-茶色のヒトニューロンを示す顕微鏡写真である。これらの細胞は、500,000の未分化神経前駆細胞の脳室内注射の4ヶ月後に回旋行動の70%改善を示した動物の脳室から移行させた。抗ヒトミトコンドリア抗体。40×。
【0111】
上記から、本発明の具体的な態様が例示目的のために本明細書に記載されているが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の改良を加えることができることが理解される。従って、本発明は添付の特許請求の範囲による場合を除き、限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】EGF(E)、bFGF(F)、TGFα(T)およびLIF(L)の種々の組み合わせを補給した(「E+」)低カルシウム(0.06 mM) EMEMにおける培養NPCの増殖を示すグラフである。E+EFTは懸濁中のNPCの最適な増殖を提供した。
【図2】EGF(E)、bFGF(F)、TGFα(T)およびLIF(L)の種々の組み合わせを補給した(N+)Neurobasal(商標)培地において培養中のNPCの増殖を示すグラフである。N+EFTは付着細胞の最適な増殖を提供した。しかし、増殖速度は、インビトロにおいて3〜4ヶ月後に低下した。
【図3】TおよびM脳前駆細胞系統の免疫組織化学を示す顕微鏡写真である。強力なBrDU陽性反応が138継代後のM5系統細胞に観察された。拡大率20×。
【図4】M5 NPC細胞の集密的な増殖を示す位相差顕微鏡写真である。ほとんど全ての細胞が未分化状態を維持している。拡大率10×。
【図5】脳前駆細胞によって形成され、幹細胞/前駆細胞に特徴的である典型的な「胚様体」を示す位相差顕微鏡写真である。拡大率10×。
【図6】浮遊している小さいクラスター中で増殖している継代5のT5系統の脳前駆細胞を示す位相差顕微鏡写真である。拡大率10×。
【図7】NPCの浮遊している小さいクラスターおよび培地のCa++濃度を0.05 mMolから0.1 mMolに増加することにより、培養フラスコに付着するようになってきている数多くのNPC細胞を示す位相差顕微鏡写真である。拡大率10×。
【図8】胚様体として増殖しているT5系統のNPCを示す位相差顕微鏡写真である。継代154。拡大率10×。
【図9】M5系統のNPCの平らなクラスターを示す顕微鏡写真である。培養培地のCa++濃度は0.1 mMol。細胞の46%はBrDU陽性である。拡大率20×。
【図10】T5系統の細胞の浮遊している大きいクラスターを示す顕微鏡写真であり、中央に有糸分裂像が見られる。ギムザ染色。拡大率40×。
【図11】6-OHDA病変ラットの線条体のチロシンヒドロキシラーゼ(TH)陽性NPCを示す顕微鏡写真である。拡大率20×。
【図12】T5系統の未分化NPCの超微細構造を示す電子顕微鏡写真である。拡大率13,000×。
【図13】M5系統のNPCの超微細構造を示す電子顕微鏡写真である。細胞質は多数のミトコンドリアを含有する。拡大率13,000×。
【図14】M5系統の懸濁液におけるブロモデオキシウリジン(BrDU)免疫陽性NPCを示す顕微鏡写真である。免疫反応性細胞はジアミノベンジジン(DAB)染色されている。拡大率40×。
【図15】M3単一細胞懸濁液のブロモデオキシウリジン(BrDU)免疫陽性NPCを示す顕微鏡写真である。免疫反応性細胞はフルオレセインで標識されている。拡大率20×。
【図16】M3単一細胞懸濁液のネスチン免疫陽性NPCを示す顕微鏡写真である。免疫反応性細胞はフルオレセインで標識されている。拡大率20×。
【図17】同一NPCにおいてネスチンおよびOct-4の同時発現を示す顕微鏡写真である。緑色蛍光はOct-4を示し、赤色はネスチンを示す。20×。
【図18】ラット被殻の写真の中心に分岐状の伸長が見られ、写真の右下のコーナーにグリア細胞が見られる琥珀色〜茶色のヒトニューロンを示す顕微鏡写真である。これらの細胞は、500,000個の未分化脳前駆細胞の脳室内注射の4ヶ月後に回旋行動の70%の改善を示した動物の脳室から移行させた。抗ヒトミトコンドリア抗体。40×。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む細胞培養物:
(a)培地のカルシウム濃度が0.15 mM以下である、培養培地;
(b)約20〜100 ng/mlの上皮細胞増殖因子(EGF);
(c)約10〜50 ng/mlの塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF);
(d)約1〜150 ng/mlのトランスフォーミング増殖因子α(TGFα);
(e)培地に懸濁させた神経前駆細胞(NPC)および/または多能性幹細胞(PSC)。
【請求項2】
(f)約0.03〜約0.09 mMの塩化カルシウムをさらに含み、培地が無カルシウム最小必須培地でフルボリューム(full volume)にされており、総カルシウム濃度が0.1 mM未満である、
請求項1記載の細胞培養物。
【請求項3】
(g)約7〜30 ng/mlの白血病抑制因子(LIF)
をさらに含む、請求項1記載の細胞培養物。
【請求項4】
総カルシウム濃度が約0.05 mMである、請求項2記載の細胞培養物。
【請求項5】
EGFが約20 ng/mlである、請求項1記載の細胞培養物。
【請求項6】
bFGFが約10 ng/mlである、請求項1記載の細胞培養物。
【請求項7】
TGFαが約10 ng/mlである、請求項1記載の細胞培養物。
【請求項8】
LIFが約10 ng/mlである、請求項3記載の細胞培養物。
【請求項9】
培養培地が無血清である、請求項1記載の細胞培養物。
【請求項10】
2% B27サプリメントをさらに含む、請求項1記載の細胞培養物。
【請求項11】
増殖因子、EGF、bFGFおよびTGFαが組換え増殖因子である、請求項1記載の細胞培養物。
【請求項12】
細胞および増殖因子がヒト由来である、請求項1記載の細胞培養物。
【請求項13】
約0.11 mg/mlのピルビン酸ナトリウムをさらに含む、請求項1記載の細胞培養物。
【請求項14】
細胞が12日未満の倍加速度を有する、請求項1記載の細胞培養物。
【請求項15】
細胞が約5日の倍加速度を有する、請求項1記載の細胞培養物。
【請求項16】
細胞が、少なくとも1年間、インビトロにおいて増殖を継続する、請求項1記載の細胞培養物。
【請求項17】
細胞が胎児前脳に由来する、請求項1記載の細胞培養物。
【請求項18】
培養培地で初代ヒト胎児脳組織を培養する段階を含み、ここで培養培地が以下を含む、NPCおよび/またはPSCを増殖させる方法:
(a)0.03〜0.09 mMのカルシウム;
(b)約20〜100 ng/mlの上皮細胞増殖因子(EGF);
(c)約10〜50 ng/mlの塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF);および
(d)約1〜150 ng/mlのトランスフォーミング増殖因子α(TGFα)。
【請求項19】
(e)約7〜30 ng/mlの白血病抑制因子(LIF)
をさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
以下を含む、ヒトNPCおよび/またはPSCを宿主に移植する方法:
(a)請求項1記載の細胞培養物を入手する段階;および
(b)細胞培養物を宿主に移植する段階。
【請求項21】
移植する段階の前に、グルタミン(濃度0.5 mMまで)およびLIF(7〜30 ng/ml)を培養培地に添加する、請求項20記載の方法。
【請求項22】
細胞培養物を、宿主の複数の部位に移植する、請求項20記載の方法。
【請求項23】
NPCおよび/またはPSCが、移植する段階の前に治療薬を発現するように遺伝的に改変されている、請求項20記載の方法。
【請求項24】
以下を含む凍結保存培地:
(a)0.03〜0.09 mMのカルシウム;
(b)約20〜100 ng/mlの上皮細胞増殖因子(EGF);
(c)約10〜50 ng/mlの塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF);および
(d)約1〜150 ng/mlのトランスフォーミング増殖因子α(TGFα);
(e)約2% B27;および
(f)約10%ジメチルスルホキシド(DMSO)。
【請求項25】
請求項24記載の凍結保存培地で約-80℃以下の温度においてNPCおよび/またはPSCを保存する段階を含み、融解時に50%を超えるNPCおよび/またはPSCが生存している、NPCおよび/またはPSCを凍結保存する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2007−524405(P2007−524405A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542710(P2006−542710)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/040224
【国際公開番号】WO2005/056755
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(506188334)
【Fターム(参考)】