説明

神経変性、自己免疫脱髄、および糖尿病のウイルス病原に対する動物モデル系

神経変性、自己免疫脱髄、および自己免疫疾患(例えば、多発性硬化症(MS)を含む中枢神経系の疾患、および糖尿病)のウイルス病因についての非ヒト動物モデル系が提供される。このような非ヒト動物モデル系は、MSおよび糖尿病などの疾患の研究のために、そしてそのような疾患の処置のための候補治療化合物および候補組成物の同定ならびに特徴付けのために、適切に使用することができる。治療剤ナタリズマブによって本明細書に例示されるように、1種以上の治療剤による処置の後に、自己免疫疾患に感受性の高い患者において、中枢神経系の自己免疫疾患(例えば、進行性多病巣性白質脳障害(PML))を検出するためのマーカーおよび方法もまた、本明細書において提供される。例示的な動物モデル系は、HHV6−AおよびHHV6−Bなどのヘルペスウイルスに感染したマーモセット、トランスジェニックマウス、およびゼブラフィッシュの動物モデル系(この系において導入遺伝子はCD46をコードする)、ならびにMS、糖尿病および抗接着分子(例えば、ナタリズマブ)で処置される他の自己免疫疾患を有する患者のリスクをモニタリングするための方法を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、米国特許法(35 U.S.C.)セクション119(e)のもと、米国仮特許出願第60/618,277号(2004年10月12日出願)および同時継続の米国仮特許出願第60/720,676号(2005年9月26日出願)(これらの各々は本明細書においてその全体が参考として援用される)に対する優先権を主張する。
【0002】
(政府の支援)
以下に開示される発明の特定の局面は、米国多発性硬化症協会(National Multiple Sclerosis Society)助成金番号PP0916からの支援によって展開された。政府は、これらの発明の一部の局面に対して特定の権利を有し得る。
【背景技術】
【0003】
(発明の技術分野)
本発明は、一般的に、ウイルス病原および自己免疫疾患(例えば、多発性硬化症(MS)および糖尿病を含む中枢神経系の疾患)に関する。より具体的には、本明細書において、神経変性および自己免疫脱髄のウイルス病原に対する非ヒト動物モデル系が提供される。このような動物モデル系は、MSの研究のため、そしてMSを処置するための候補治療化合物および候補治療組成物の同定ならびに特徴付けのために、適切に使用され得る。本明細書においてはまた、自己免疫疾患に感受性が高い患者において、本明細書において例示される治療剤ナタリズマブによるような1種以上の治療剤での処理の後に、中枢神経系の自己免疫疾患(例えば、進行性多病巣性白質脳障害(PML))を検出するためのマーカーおよび方法も提供される。
【0004】
(関連分野の説明)
多発性硬化症(MS)は、中枢神経系(CNS)の異質性の免疫媒介性慢性脱髄障害の群を示し、350,000人の米国人および世界中で100万人を超える人々に影響している。MSは、男性の2倍頻度で女性に影響する。従ってMSはまた、重大な女性の健康問題である。病理学的には、MSは、単核細胞およびマクロファージからなる脈管周囲の浸潤の斑によって特徴付けられ、ミエリン鞘の集中的な破壊(脱髄)、希突起神経膠細胞の死滅、神経膠星状細胞の増殖、および軸策損傷を伴う。Lassmann, Multiple Sclerosis 4:93-98 (1998); Raine, Multiple Sclerosis and Chronic Relapsing EAE: Comparative Ultrastructural Neuropathology, in Multiple Sclerosis: Pathology, Diagnosis and Management 413-460 (Hallpike et al. eds., 1983);およびTrapp et al., The New England Journal of Medicine 338:278-285 (1998)。
【0005】
MSの病因は未知であるが、しかし、強力な状況的証拠から、MSは、環境的な誘因の存在下で遺伝的に感受性の高い宿主に生じる自己免疫疾患であることが示唆されている。Hohlfeld, Brain 120:865-916 (1997)および Oksenberg et al., Pathogenesis of Multiple Sclerosis: Relationship to Therapeutic Strategies, in Multiple Sclerosis: Advances in Clinical Trial Design, Treatment and Future Perspectives 14-46 (Goodkin et al. eds., 1996)。大体において、MS病変の病原に関係し得る因子に関する本発明者らの現在の知識は、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、CNSミエリンの抗原による感作によって実験動物で生じた自己免疫疾患の観察に基づいている。Martin et al., Ann. Rev. Immunol. 10:153-187 (1992); Miller et al., Immunol. Today 15:356-361 (1994);およびWekerle et al., Ann Neurol 36:S47-S53 (1994)。
【0006】
EAEの多くのモデルで出くわすしばしばステレオタイプ化された疾病とは対照的に、ヒトMSの臨床的表現型は、良性であることもあるし、種々の経過(再発形態、緩和形態、または進行形態を含み)を伴って速やかに無力化されることもある。臨床的な提示が均質でないことは、環境因子および/または受け継いだ遺伝的因子の複雑な影響を反映する可能性が最も高く、種々の割合の炎症、脱髄、ならびに希突起神経膠細胞および軸策の病理学を有する特異的な病変パターンを示す生検材料および剖検材料の最近の分析によって示唆されるように、別個の神経病理学的サブタイプに相関する可能性がある。Lassmann, Multiple Sclerosis 4:93-98 (1998); Lucchinetti et al., Ann. Neurol. 47:707-717(2000);およびStorch et al., Ann Neurol 43:465-471 (1998)。CNS自己免疫における組織損傷のエフェクター機構は、浸潤T細胞の直接毒性、炎症性サイトカインの分泌、抗体媒介性毒性、ならびに補体およびマクロファージの活性化を含む(Brosnan et al., Brain Pathol 6:243-257 (1996)において概説される)。
【0007】
疫学的研究(Kurtzke, Clin. Microbiol Rev. 6:382-427 (1993); Kurtzke et al., Neurology 36:307-328 (1986))、および神経向性ウイルスによる感染との関連で生じるCNS脱髄疾患の状況的証拠(Gilden et al., Multiple Sclerosis 2:179-183 (1996) ; Stohlman et al., Brain Pathol 11:92-106 (2001); Raine, in Textbook of Neuropathology 627- 714 (Davis et al., eds. 1997a))に基づいて、MSに対して長い間ウイルス病因が疑われている。有力な仮説は、感染が、分子模倣、つまり、ミエリンのペプチドの擬態(mimic)であるウイルスペプチドを、免疫系のT細胞が認識することによる現象を誘発し得る(直接模倣)というものである。ウイルス感染後のT細胞によるCNS浸潤はまた、模倣に起因しても急性感染の除去に起因してもいずれにせよ、ウイルスを内部に持つ細胞に対する直接的な細胞毒性か、あるいはCNS内の毒性環境およびマクロファージまたは小神経膠細胞の活性化を引き起こす炎症誘発生成物の産生(巻き添え損傷)のいずれかを通じて、ミエリンおよび/またはニューロンを損傷し得る。このことから、次いで、曝露されたCNS抗原に対して二次免疫攻撃が誘発され得る(Stohlman et al., Brain Pathol 11:92-106 (2001))。
【0008】
特定のウイルス感染またはワクチン接種(例えば、麻疹ウイルス、水痘−帯状疱疹ウイルス、ワクシニアウイルス、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、HTLV−I)と、急性の播種性脳脊髄炎、脳炎、または脊髄炎の原因との間の関連は、十分に認識されている。ウイルス感染がMS症状発現を誘発し得ることもまた、広く認められている。コントロールと比較して、MS血清または脳脊髄液(CSF)について、神経向性ウイルスに対してより抗体力価が高いことが報告されている(Johnson et al., N Engl J Med 310: 137-141 (1984);およびJohnson, Ann Neurol 36:S54-S60 (1994))。MSおよびCNSの感染において抗原が駆動するCNS限定免疫反応が存在することは、患者のCSF中で特定のオリゴクローナルバンドを見出したことによって(Tourtelotte et al., Neurology 30:240-244 (1980))、そして特定のB細胞免疫グロブリン遺伝子再配置のクローン性増殖がより最近になって実証されたことによって(Baranzini et al., J. Immunol. 163:5133-44 (1999); Owens et al., An. Neurol. 43:236-243 (1998); Colombo et al., J. Immunol. 164:2782-2789 (2000);およびQin et al., J. Clin. Invest. 102:1045-1050 (1998))、支持されている。CNS感染において、ウイルス抗原指向性であるオリゴクローナルバンドとは対照的に(Gilden et al.., Multiple Sclerosis 2:179-183 (1996))、MSにおけるオリゴクローナルバンドの特異性は確立されていない。しかし、最近、これらがエプスタイン−バーウイルスの一部の成分と反応し得ることが示唆されている(Cepok et al., J Clin Invest 115 :1352-60 (2005))。MS病因において原因とみなされているウイルスの数は絶えず増加しており、実際、インターフェロン(IFN)−βが、その抗ウイルス活性からMSに対する処置として最初に試された。
【0009】
ウイルス曝露とMSとの間の直接的な関係の確立において1つ困難なことは、そのような関係を確認するための適切なインビボ実験系がないことである。急性または慢性の脱髄疾患を誘導し得るウイルスの例としては、イヌジステンパーウイルス、マウス肝炎ウイルスのJHM株、マウスセムリキ森林ウイルス、ヒツジビスナウイルス、ヤギ関節炎−脳炎ウイルス、マカクザルのSV40、タイレルマウス脳脊髄炎ウイルス(TMEV)(Johnson, Ann Neurol 36:S54-S60 (1994))、およびリンパ球脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)(Evans et al., Journal of Experimental Medicine 184:2371-84 (1996))が挙げられる。感染に対して動物に感受性を与えるウイルスタンパク質は、トランスジェニックマウスのCNSにおいても発現させることが可能である(Evans et al., Journal of Experimental Medicine 184:2371-84 (1996))。疾患の病因は、これらのモデルの間で異なり、ウイルスの持続性に関連する成分(単相疾患)、またはウイルス感染に関連しない二次的なCNSの炎症および破壊を含み得る。TMEVによるマウスの感染は、胃腸炎を引き起こすが、これは急速に除去される。続いて、近交系の感受性の高い系統のみが、和らぐことのない重篤な進行性の脱髄疾患を発症する。これは、ミエリンに対する巻き添え損傷によるものだと考えられている。Stohlman et al., Brain Pathol 11: 92- 106 (2001)およびDal Canto et al., Microscopy Research and Technique 32:215-29 (1995)。LCMVによるマウスの感染は、CNS細胞標的を直接的に破壊する細胞傷害性のCD8+媒介性反応を引き起こす。これらのモデルが自己免疫CNS脱髄とウイルス感染との間の関係に第一の(かつ唯一存在する)洞察を提供しているとはいえ、有害な結果を伴わずにヒトに遍在的に感染するいずれかのウイルスとMSとの直接的関係を提供するには、まだ不十分であることを理解することは重要である。TMEV感染のCNS合併症は、遺伝的影響という限定的コントロールのもとにあり、非近交系のヒト集団に対してこれらの機構を当てはめるのは困難である。これらの疾患モデルの多くは、ウイルスを新生児動物に頭蓋内注入することを必要とし、EAEと類似する人工的な状況は、病原体に対するヒトの自然曝露をまねてはいない。
【0010】
Callithrix jacchus(C. jacchus)マーモセットを、アジュバント中のヒト白質全体およびミエリン/希突起神経膠細胞糖タンパク質(MOG)で免疫すると、ヒトMSの典型的形態と似た軽度から中程度の臨床的重症度の慢性的な再発寛解型(relapsing-remitting)疾患を引き起こす。急性のC. jacchus EAEの神経病理は、広い同一中心状の領域の一次脱髄(primary demyelination)、マクロファージ浸潤、アストログリオーシス(astrogliosis)、および希突起神経膠細胞の死滅からなる。Massacesi et al., Ann. Neurol 37:519-530 (1995); Genain et al., Immunol. Reviews 183:159-172 (2001);およびBrok et al., Immunol Rev 183:173-185 (2001)。ミエリン分解の超微細構造特性は、マーモセットEAEとヒトMSとにおいて類似しており、このことはミエリン破壊の共通機構を示唆する。Genain et al., Immunol. Reviews 183:159-172 (2001)およびRaine et al., Ann Neurol 46:144-160 (1999)。慢性EAEにおいては、再髄鞘形成が起こる。
【0011】
C. jacchusマーモセットは、小さな動物である(350〜400gm)が、連続的な臨床補助的(paraclinical)な研究および実験室研究(例えば、ミエリン抗原に対する末梢血液の反応性、CSFサンプリング、およびインビボ磁気共鳴画像法(MRI))を得ることができる。Genain et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 92:3601-3605 (1995); Genain et al., Methods: a Companion to Methods in Enzymology 10:420-434 (1996); Jordan et al., AJNR Am. J. Neuroradiol. 20:965-976 (1999);およびHart et al., Am. J. Pathol. 153 :649-663 (1998)。非近交種と同様に、マーモセットは、ミエリン抗原に対してヒトと類似した非常に広範な免疫学的レパートリーを示す。ミエリン全体およびMOGに加えて、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、MBP由来ペプチド、およびプロテオリピドタンパク質(PLP)への感受性が実証されている。Genain et al., Immunol. Reviews 183:159-172 (2001)。多様なエピトープ認識およびT細胞レセプターβ鎖の利用は、ミエリンタンパク質に対する脳炎誘発性レパートリーでみられる。Genain et al., J. Clin. Invest. 94:1339-1345 (1994); Uccelli et al., Eur. J. Immunol 31:474-479 (2001); Villoslada et al., Eur. J. Immunol. 31 :2942-2950 (2001);およびMesleh et al., Neurobiol Dis 9:160-172 (2002)。C. jacchusは、自己免疫の研究のためのユニークな霊長動物である。なぜならば、これらのサルは、自然発生的な骨髄キメラとして誕生するからである。同胞ペアまたはトリプレットが遺伝的に異なる一方、C. jacchusは、T細胞クローンの養子移植を可能にする互いの骨髄由来の細胞集団を共有し、そしてこれらに対して寛容である。Genain et al., J. Clin. Invest. 94:1339-1345 (1994); Villoslada et al., Eur. J. Immunol 31:2942-2950 (2001);およびWatkins et al., Journal of Immunology 144:3726-3735 (1990)。
【0012】
C. jacchusのMS様病変は、ミエリンに対する細胞応答と体液性応答との間の複雑な相互作用によって媒介される。MOGは、脱髄抗体に対する標的であることが示されている。Genain et al., J. Clin. Invest. 96:2966-2974 (1995)。重要なことに、MOG特異的自己抗体の病原性は、ヒトMSの選択された症例においても実証されている。Genain et al., Nat Med 5:170-175 (1999)。C. jacchusは、ミエリンおよび免疫系の遺伝子について、ヒトと非常に高い程度の相同性を共有している。MOG特異的なマーモセット免疫グロブリン遺伝子の最近のクローニングから、遺伝子使用およびエピトープ認識に関するマーモセットとヒトとの間の類似性が明らかにされている。von Budingen et al., Immunogenetics 53:557- 563 (2001) およびvon Budingen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:8207-8212 (2002)。
【0013】
ヒトヘルペスウイルス(HHV)6は、多発性硬化症(MS)の病因に関係している。このことは、MSの斑および血清においてHHV6 DNAが検出されること、MS罹患個体において抗HHV6反応性が存在すること、そしてこのウイルスに関連する脳炎および脳脊髄炎が報告されていることに基づいている。実際、疫学的研究から、ウイルスもしくは他の環境因子がMSを誘発し得るか、またはその経過に影響し得ることが示唆される。しかし、他のウイルスについてと同様に、HHV6−Aと疾患病因との間の因果律の直接的な関連についての証拠は得られていない。
【0014】
2種のHHV6改変体(HHV6−AおよびHHV6−B)は、広範なヒト宿主細胞および霊長動物宿主細胞に感染する能力を示す。HHV6−Bは、ほとんどが小児期の良性熱性疾患である、突発性発疹を引き起こす。HHV6に対する細胞レセプターは、膜補因子タンパク質(CD46)として認識されている。CD46は、他の微生物およびヘルペスウイルス(麻疹を含む)に対して無差別な遍在的レセプターであり、補体レセプタータンパク質のファミリーに属する。MSの初期段階において高いレベルの可溶性CD46が観察される。この知見もまた、再発の際のHHV6感染の役割についての証拠と解釈される。
【0015】
HHV6は、全てのヘルペスウイルス科に共通する7つの遺伝子ブロックを含む159kbp〜170kbp長ゲノム、β−ヘルペスウイルスにのみ見出される遺伝子群(ORF U2〜U14)、およびRoseolavirus属に特異的な遺伝子(ORF U15〜U25)を有するヘルペスウイルスである。3つの遺伝子、U22、U83およびU94は、HHV6に特異的である(HHV7ではない)。HHV6−Aの110個のORFと比較して、HHV6−Bは119個のORFを含む。Dockrell, J Med Microbiol 52:5-18 (2003)。この2種のHHV6改変体は非常に似ているにもかかわらず、非常に異なる細胞親和性および疾患の症状発現を有し、このことがこれらが異なるヘルペスウイルスであるという考えを支持する。
【0016】
HHV6−Bは、小児期において突発性発疹を引き起こすか、または最初の曝露は無症候性である場合がある。実際には、全ての個体が2歳前に感染する(Caserta et al., J Pediatr 145:478-84 (2004)およびZerr et al., N Engl J Med 352:768-76 (2005))。HHV6−Bは、種々の組織(リンパ系器官、脳、血清および唾液腺が挙げられる)において見出される。Ablashi et al., J Virol Methods 21:29-48. (1988); Levy et al., Lancet 335 :1047-1050 (1990); Levy et al., Virology 178:113-121 (1990)およびLusso et al., Baillieres Clin Haematol 8:201-23 (1995))。
【0017】
HHV6−Aは、CNSおよび皮膚に対して特定の指向性を有する。この改変体は、今までのところ、最初にHHV6に感染した小児においてほとんど単離も検出もされておらず、健康な集団におけるいずれの感染性疾患とも明確には関連していない。HHV6は、生涯を通じて潜伏状態または複製状態で消えずに残り、唾液腺で活発に複製する(改変体B)。HHV6による二次感染は、免疫易感染性の患者を除いて、通常症状は無い。Dockrell, J Med Microbiol 52:5-18 (2003)およびCampadelli-Fiume et al., Emerg Infect Dis 5:353-366 (1999)。HHV6−Aに対する抗体は、一般集団の大部分において見出され、生涯を通じて安定的に存続し、その後、高齢被験体において減退する。Levy, Lancet 349:558-563 (1997)。
【0018】
CD46細胞HHV6レセプター(Santoro et al., Cell 99:817-827 (1999))は、CNSを含め遍在的に発現するが、ヒトならびに特定の高等哺乳動物および霊長動物においてのみ発現し、このことから、このウイルスによって感染され得る種の範囲が狭いことが説明される。CD46は、C3bタンパク質およびC4bタンパク質に結合し、補体系を不活化する。従って、CD46の推定される機能の1つは、補体による自己溶解から細胞を保護することである。HHV6は、CD4+細胞、CD8+細胞、NK細胞およびγδ T細胞、B細胞、マクロファージ、樹状細胞、線維芽細胞、上皮細胞、ならびに種々のリンパ系由来細胞系またはCNS由来細胞系に感染し得る。Dockrell, J Med Microbiol 52:5-18 (2003); Campadelli-Fiume et al., Emerg Infect Dis 5:353-366 (1999);およびLevy, Lancet 349:558-563 (1997)。両方の改変体とも初代の胎児神経膠星状細胞に感染するが、HHV6−Aは、インビボでより大きな神経向性を有するようである。Hall et al., Clin Infect Dis 26:132-137 (1998)。HHV6によるインビトロ感染は単相性(monophasic)であり、その後、一般的に、細胞増殖の低下および/または細胞死が起こる。Grivel et al., J Virol 77:8280-9 (2003); Opsahl et al., Brain 128:516-27 (2005);およびSmith, et al., J Virol 79:2807-13 (2005)。インビボにおいて、HHV6は、ヒト胎児の胸腺および肝臓を移植されたSCIDマウスモデルにおいて示されるように、CD4 T細胞枯渇を誘導し(Gobbi et al., J Exp Med 189:1953-1960 (1999))、HIVが関連する免疫抑制の一因となり得る。記載されている増強効果または抑制効果のいずれかについて、HHV6感染が、EBV、サイトメガロウイルス(CMV)、およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)を含む他のウイルスに干渉することもまた明らかである。Levy, Lancet 349:558-563 (1997)。
【0019】
上記CD46レセプターは、麻疹ウイルスを含む多くの病原体によって共用され、この分子を通じたシグナル伝達は、T細胞の刺激および活性化の最も強力な機構の1つである。細胞質ドメインが異なるCD46のいくつかのアイソフォームがヒトで発現されており、CD46レセプターのこれら2クラスの関与は、Th1表現型またはTh2表現型に対する免疫応答の分極に関して反対の結果を有するようである(Marie et al., Nat Immunol 3:659-66 (2002); Russell, Tissue Antigens, 64:111-8 (2004);および Riley-Vargas et al., Trends Immunol 25:496-503 (2004))。
【0020】
インビボにおいて、HHV6は、ヒト胎児の胸腺および肝臓を移植されたSCIDマウスモデルにおいて示されるように、CD4+ T細胞枯渇を誘導し(Gobbi et al., J Exp Med 189:1953-1960 (1999)および Gobbi et al.., J Virol 74:8726-31 (2000))、HIVが関連する免疫抑制の一因となり得る(Lusso et al.., Immunol Today 16:67-71 (1995b))。記載されている増強効果または抑制効果のいずれかについて、HHV6感染が、EBV、サイトメガロウイルス(CMV)、およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)を含む他のウイルスに干渉することもまた明らかである(Levy, Lancet 349:558-63 (1997)およびAblashi et al., J Virol Methods 21:29-48 (1988))。霊長動物(マカクおよびチンパンジー)においてHHV6による感染のモデルを作製するために多くの試みがなされており、SCIDマウスモデルにおいてと同様に、HHV6−Aが、サル後天性免疫不全症候群において補助因子として作用するという考えを主に支持する(Lusso et al., J Virol 64:2751-8 (1990)およびLusso et al., AIDS Res Hum Retroviruses 10:181-7 (1994))。
【0021】
一般集団の95%よりも多くが新生児期の間に上記ウイルスに曝露されているので、病原体というさらなる因子の非存在下において、MS有病率(合衆国の白色人種(Caucasion)について、およそ1:1,000)の単一の原因としてHHV6感染を想定するのは困難である。MSとウイルス曝露との関係を説明するために提唱されている1つの可能性のあるシナリオは、一次感染が中枢神経系(CNS)に対して無症候性の免疫攻撃を誘発し、これが長い間の後に、CNS指向性自己免疫の発症につながるというものである。この仮説に賛成すると、MSを発症するリスクは生涯の早いうちに獲得するようであり、個体が小児の間に移住する場合、低/高有病率の地理的領域への、および該領域からの移動パターンにしたがう。MSの流行は、以前に単離された島集団が外来環境因子に新たに曝露された後にも観察されている。しかし、任意のウイルス曝露とMSの一般的形態との間の関連の直接的な証拠はまだ存在しない。
【0022】
MSに対する特定の関連性の中で、両方のHHV6改変体がTh1(炎症誘発性)表現型に対してT細胞の炎症反応を調節する能力を示すという最近の観察がある。Mayne et al., J Virol 75:11641-11650 (2001)。さらに、HHV6−Aによる内皮細胞感染の結果、脈管内皮の浸透性が上昇するようである。Caruso et al., J Med Virol 67:528-533 (2002)。従って、MSの病態生理学において異質性の考えを維持すると、まだ同定されていない特定の臨床的サブタイプまたは神経病理学的サブタイプに関して、MSとHHV6との間に関係性が存在するという可能性はある。しかし、このことが、このウイルスが、一般的に、全身性の自己免疫調節異常(dysregulation)、ウイルスDNAの検出、抗体反応性を伴う疾患とみなされているMSを引き起こすことの十分な証拠であると結論付けるのは時期尚早であるか、あるいはウイルス感染による関連でさえ、実際は、この疾患の原因ではなく疾患の結果を表す可能性もある。
【0023】
HHV6−AとMSとの間の関連は、最近、MS斑内の罹患した希突起神経膠細胞においてHHV6−B DNA配列が見出されたことによって示唆された(Challoner et al., Proc. Natl. Acad. Sci 92:7440-7444 (1995); Opsahl et al., Brain 128:516-27 (2005))。しかしながら、これらの観察は、その後の試みによっては確認されておらず(Coates et al., Nat Med 4:537-8 (1998))、免疫組織化学によって形式的に確認されることができなかった。HHV6 DNAはまた、正常被験体の脳およびアルツハイマー病においても見出されている(Luppi et al., J Med Virol 47:105-11 (1995); Lin et al., J Pathol 197:395-402 (2002))。従って、CNSでのウイルス配列の検出は、病原性を証明するためには十分ではない。血清的な研究から、コントロールと比較して、再発寛解型MSの患者において抗HHV6抗体の力価が上昇していることが報告されている(Ablashi et al., Mult Scler 4:490-6 (1998); Sola et al., J Neurol Neurosurg Psychiatry 56:917-9(1993); Soldan et al., Nature Medicine 3:1394-7 (1997))。しかし、血清および/またはCSF中のIgG/IgM反応性、血清、CSFおよび脳におけるHHV6 DNAまたはウイルス転写物の存在、HHV6に応答する末梢T細胞増殖、または培養物中のウイルス回収を試験する数多くのその後の研究は、これらの結果を明白には確認していない。以下の概説は、実施されている多くのHHV6関連研究の詳細な考察を提供する(Ablashi et al., J Virol Methods 21:29-48 (1988); Ablashi et al., Mult Scler 4:490-6 (1998); Krueger et al., Pathol Res Pract 185:915-29 (1989); Enbom, Apmis 109:401-11 (2001); Moore et al., Acta Neurol Scand 106:63-83 (2002); Krueger et al., Intervirology 46:257-69 (2003); DeRanieri et al., J Sch Nurs 20:69-75 (2004); Dewhurst, Herpes 11 Suppl 2:105A-111A (2004); Fotheringham et al., Herpes 12:4-9 (2005))。
【0024】
HHV6−Aと特定の形態のCNS脱髄との間の関連(MS提示の範囲の極値(extreme)を表す可能性がある)についてより有力なもの(compelling)は、脳脊髄炎の多くの症例報告、および感染とCNS疾患との間の明確な関係が強く示唆された急性および慢性の脊髄炎である(Carrigan et al., Neurology 47:145-148 (1996); Mackenzie et al., Neurology 45.:2015-7 (1995); McCullers et al., Clin Infect Dis 21:571-6 (1995); Novoa et al., J Med Virol 52:301-8 (1997); Portolani et al., J Med Virol 65:133-7 (2001); Portolani et al., Minerva Pediatr 54:459-64 (2002); Singh et al., Transplantation, 69:2474-9 (2000); Moore et al., Acta Neurol Scand 106:63-83 (2002); Dockrell, J Med Microbiol 52:5-18 (2003); Campadelli-Fiume et al., Emerg Infect Dis 5:353- 66 (1999); Gilden et al., Multiple Sclerosis 2:179-183 (1996); Kleinschmidt-DeMasters et al., Brain Pathol 11:440-51 (2001); Ward, Curr Opin Infect Dis 18:247-52 (2005))。
【0025】
MSおよび脳脊髄炎に加えて、HHV6曝露およびHHV6反応性との関連が、慢性疲労症候群および睡眠発作(narcoplepsy)についても主張されている。慢性疲労症候群(CFS)は、全ての年齢の成人の無力化疾患(incapacitating disease)であり、MSと特定の臨床的特徴(疲労)を共有し、また免疫媒介性である可能性が高い。MSと同様に、抗体反応性の研究は、CFSとHHV6との間の関係性の提供において矛盾している(Enbom, Apmis 109:401-11 (2001); Ablashi et al., J Clin Virol 16:179-91 (2000); Wallace et al., Clin Diagn Lab Immunol 6:216-23 (1999); Nicolson et al., Apmis 111:557-66 (2003))。
【0026】
HHV6感染とヒトMSを模倣するCNS炎症状態の発現との間の原因となる関係を理解するための実験系が必要とされている。このようなモデルの唯一の有用性は、感染とCNS疾患との間の原因となる時間依存的な関係を制御された様式で研究することを可能にする。従って、自己免疫CNS脱髄におけるこのウイルスの役割を特徴付けるために、HHV6曝露の後に長期的研究を可能にする実験系、ならびにこの自己免疫疾患の重症度を改善または低下させるのに有効な効果的な治療および処置レジメンを同定し、特徴付けることに適切な動物モデル系に対する必要性が、当該分野で依然として存在する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0027】
(発明の要旨)
本発明は、特に、神経変性、自己免疫脱髄、および糖尿病のウイルス病因のための非ヒト動物モデル系を提供することによって、これらの必要性および他の関連する必要性に対処する。このような動物モデル系は、多発性硬化症(MS)の研究のため、そしてMSを処置するための候補の治療化合物および治療組成物の同定ならびに特徴付けのために、適切に使用することができる。
【0028】
本発明による動物モデル系は、ヒトのMS疾患と相関的であり、従って、広範な利用性を見出す。このような動物モデル系は、例えば、(1)HHV6に曝露した後にCNS自己免疫の病因を制御する因子を同定するための機会を提供する;(2)MS疾患を処置するために効果的な可能性のある治療剤の同定および特徴付けのための適切な系を提供する;(3)さらなるもしくは代替的な、神経変性および自己免疫、免疫媒介性ヒト状態または感染性および感染後のヒト状態について、同様の調査および治療試験を実施するための適切な系を提供する;(4)MSの検出のためのバイオマーカーを新たに見出すことを可能にする;そして(5)HHV6誘導型CNS病理を治療するためのストラテジーおよび/または処置レジメンを開発する。
【0029】
特定の実施形態において、上記非ヒト動物は非ヒト霊長動物であって、この霊長動物は、ヘルペスウイルスによって感染される。典型的には、本発明に従ってヘルペスウイルスに適切に感染された非ヒト霊長動物としてはサルが挙げられ、マーモセット、新世界ザルおよび旧世界ザルからなる群より選択される。ここで、上記霊長動物は、上記ヘルペスウイルスによる感染に対して感受性が高い。
【0030】
マーモセット(C. jacchus)がヘルペスウイルスにより感染される非ヒト霊長動物モデル系が、本明細書において例示される。より具体的には、HHV6による非ヒト動物のインビボ感染に基づいたMS疾患の非ヒト動物モデル系が、本明細書において提示される。HHV6誘導型CNS脱髄の例示的な動物モデルは、コモンマーモセットC jacchus、新世界非ヒト霊長動物において作製されており、この動物は、自然発生的な自己免疫を発症し、そしてまた実験的アレルギー性脳脊髄炎の研究においても使用される。
【0031】
捕獲マーモセットは、HHV6に対してナイーブであり、ヒトCD46に相同的であるCD46を発現し、このことから、本明細書において提示されるように、最初の曝露と次の曝露とに続く事象をモデル化し、感染の結果を研究するための機会を提供する。CNS自己免疫脱髄は、HHV6−Aに対する成体マーモセットの反復曝露に関連するようである。
【0032】
従って、特定の実施形態において、1種以上のHHV6改変体により例示されたヘルペスウイルスに感染させたC. jacchusマーモセットが提供される。HHV6による感染は単相的であり、インビトロにおいて細胞を速やかに死に至らしめる(HHV6は、CNSグリア細胞においてアポトーシスを誘導し得る)一方、本明細書において、CNS脱髄疾患が、HHV6−Aによるナイーブな成体マーモセットの感染の後に起こることが実証される。いくつかの例において、特定の動物が、灰白質(特に、脳幹神経節)の病変、および著しい脳萎縮を進行させることがさらに実証される。いずれの特定の作用様式にも束縛されることを望まずに、このCNS疾患は、ミエリン抗原に対してT細胞の反応性が生じることに関連すると考えられる。
【0033】
本明細書で開示される非ヒト霊長動物モデル系において、多種多様なヘルペスウイルスを適切に使用することができる。CD46レセプターに特異的に結合し得るヘルペスウイルスが特に適切である。HHV6−AおよびHHV6−Bからなる群より選択されるヘルペスウイルスに感染される非ヒト霊長動物モデル系が、本明細書において例示される。
【0034】
企図される正確な適用に依存して、単一のヘルペスウイルス改変体に対する単回曝露によって、非ヒト霊長動物を感染させることができ、これにより、ヘルペスウイルスによる非ヒト霊長動物の感染が、中枢神経系の炎症性疾患の重症度を誘発および/または増大させる。代替的には、単一のヘルペスウイルス改変体に対する2回以上の曝露によって、非ヒト霊長動物を感染させ、上記ヘルペスウイルスへの非ヒト霊長動物の2回以上の曝露が、中枢神経系の炎症性疾患の重症度を誘発(trigger)および/または増大させるような他の適用が必要とされ得る。霊長動物が、2種以上のヘルペスウイルス改変体への1回以上の曝露により感染される非ヒト霊長動物モデル系が、さらに提供される。本明細書において提示される非ヒト霊長動物モデル系に特に適切なのは、HHV6−AおよびHHV6−Bからなる群より選択されるヘルペスウイルス改変体である。
【0035】
本発明の非ヒト霊長動物モデル系は、疾患の機構を研究するため、そして中枢神経系の多くの疾患(特に、中枢神経系の炎症性疾患および脱髄疾患)のための候補治療剤を同定および特徴付けするために、適切に使用される。多発性硬化症の非ヒト霊長動物モデル系が、本明細書において例示される。関連する局面において、1種以上のヘルペスウイルス改変体に非ヒト霊長動物を曝露すると、中枢神経系もしくは末梢神経系および神経筋接合部の他の炎症性疾患または悪性疾患の重症度を、さらに誘発および/または増大させ得る。
【0036】
例えば、非ヒト霊長動物を1種以上のヘルペスウイルスに曝露すると、新生物随伴症候群および小脳変性、辺縁系脳炎、眼球クローヌス−ミオクローヌス、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)、進行性多病巣性白質脳障害(PML)および他の広範性または病巣性の白質萎縮症(早発型および遅発型)、急性および慢性の多発性ニューロパシー(polyneurpathy)ならびに急性および慢性の多発神経根障害、急性播種性脳脊髄炎、ミオパシー、重症筋無力症、ギヤン−バレー症候群(Guillan Barre)、ミラー−フィッシャー症候群、イートン−ランバート症候群、CNS脈管炎、サルコイドーシスおよび神経サルコイドーシス、ラスムッセン病、新生物随伴性感覚性ニューロパシー、CNSリンパ腫、高悪性度および低悪性度の希突起神経膠腫ならびに高悪性度および低悪性度のグリア芽細胞腫、多形性グリア芽細胞腫(glioblastoma multiformis)、視神経膠腫および髄膜腫、脳室上衣細胞腫および髄芽細胞腫からなる群より選択される疾患の重要度を誘発および/または増大させ得る。
【0037】
本発明の代替的な局面は、1種以上のヘルペスウイルスへの非ヒト霊長動物の曝露が、睡眠発作、慢性疲労症候群、スティッフマン症候および小児の自閉症からなる群より選択される炎症性要素を含む神経学的疾患の重症度を誘発および/または増大させる局面を提供する。
【0038】
本発明のなおさらなる局面は、1種以上のヘルペスウイルスへの非ヒト霊長動物の曝露が、糖尿病、関節炎、貧血、狼瘡、天疱瘡、甲状腺炎、糸球体腎炎または間質性腎炎、心筋症、筋炎、皮膚筋炎、肝炎および潰瘍性大腸炎からなる群より選択される炎症性疾患および/または自己免疫疾患の重症度を誘発および/または増大させ得る局面を提供する。
【0039】
本発明のさらに他の局面は、1種以上のヘルペスウイルスの直接毒性を媒介する因子の同定に適切な非ヒト霊長動物モデル系と、希突起神経膠細胞、神経膠星状細胞、および脳細胞からなる群より選択される細胞型とを提供する。
【0040】
本明細書において開示される発明の他の実施形態は、脳萎縮または脊髄萎縮ならびに脳幹神経節および灰白質に影響する疾患における変性を研究するための非ヒト動物モデル系を提供し、ここで上記疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、レヴィー小体病、ラフォラ病、舞踏病およびアテトーシス、ハンティングトン病、および筋萎縮性側索硬化症(Lou Gherig's disease)からなる群より選択される。
【0041】
さらなる実施形態は、ウイルスと霊長動物免疫系との間の相互作用を研究するための非ヒト動物モデル系を提供し、上記霊長動物は、マーモセット、新世界ザル、および旧世界ザルからなる群より選択される。このような実施形態の特定の局面は、ウイルスのペアの間の相互作用を研究するための非ヒト動物モデル系を提供し、上記ウイルスのペアは、以下:(a)HHV6−AとHHV6−B;(b)HHV6とCMV;(c)HHV6とEBV;(d)HHV6とVZV;(e)HHV6とHHV8;(f)HHV6とHIV;および(g)HHV6とHTLVからなる群より選択される。
【0042】
本発明の他の実施形態は、疾患の重症度を低減するための候補化合物の能力を研究するための実験系を提供し、上記実験系は、ヘルペスウイルスに感染した非ヒト動物を包含し、上記疾患は、脱髄疾患、神経変性疾患、および多発性硬化症からなる群より選択され、そして上記疾患の重症度の低減は、ウイルスの複製および/または転写の阻害を測定することによって決定される。本明細書において提供されるこの実験系の特定の局面は、サル、野生型マウス、EAEマウス、およびCD46トランスジェニックマウスからなる群より選択される哺乳動物を包含し、上記実験系は、可溶性CD46(補体レセプター)を治療剤として試験することを可能にする。
【0043】
本発明の関連する局面は、疾患の重症度を低減するための可能性のあるワクチン治療を研究するための実験的な非ヒト動物モデル系を提供し、上記疾患は、多発性硬化症のような自己免疫疾患および/または神経変性疾患からなる群より選択される。このような実験系は、典型的には、ヘルペスウイルスに感染された非ヒト動物(例えば、げっ歯動物または非ヒト霊長動物)を含む。例えば、このヘルペスウイルスがHHV6−Aおよび/またはHHV6−Bである実験的な非ヒト動物モデル系が、本明細書において例示される。
【0044】
なおさらなる関連する局面は、ヘルペスウイルスへの曝露の後に自己免疫疾患および/または神経変性疾患の発症の原因となる遺伝子を同定するための実験系を含み、この実験系は、遺伝子発現アレイ、プロテオミクス、メタボノミクス、およびメタボロニクスからなる群より選択される技術を使用する。
【0045】
さらに他の関連する局面は、ヘルペスウイルスへの曝露の後に自己免疫疾患および/または神経変性疾患を引き起こし得る有害な自己抗体反応の発生の原因となる遺伝子を同定するための実験系を含み、この実験系は、遺伝子発現アレイ、プロテオミクス、メタボノミクス、およびメタボロニクスからなる群より選択される技術を使用する。
【0046】
他の関連する局面は、有益な自己抗体反応(例えば、ヘルペスウイルスに対する中和抗体反応)の発生の原因となる遺伝子を同定するための実験系を含み、この有益な自己抗体反応は、ヘルペスウイルスへの曝露の後に自己免疫疾患および/または神経変性疾患の発症を予防するか、あるいはこの発症を実質的に低下させる。このような実験系は、典型的には、遺伝子発現アレイ、プロテオミクス、メタボノミクス、およびメタボロニクスからなる群より選択される技術を使用する。
【0047】
本発明の他の実施形態において、CD46をコードする導入遺伝子とヘルペスウイルスとを含むトランスジェニック動物モデル系(例えば、マウス、ゼブラフィッシュ、ショウジョウバエ)および線虫動物モデル系が提供される。CD46をコードする導入遺伝子を含むトランスジェニックマウス動物モデル系が本明細書において例示され、このトランスジェニックマウスは、ヘルペスウイルスに感染されており、このヘルペスウイルスは、HHV6−AおよびHHV6−Bからなる群より典型的には選択される。これらの実施形態の特定の局面において、CD46をコードする導入遺伝子は、インビボで遍在的に発現する。代替的な局面において、CD46をコードする導入遺伝子は、脳、脊髄、および末梢神経からなる群より選択される組織においてインビボで発現する。
【0048】
本明細書において提示されるトランスジェニックマウス動物モデル系は、CD46トランスジェニックマウスをヘルペスウイルスへ単回曝露することによって達成し得、このようなウイルス曝露は、中枢神経系の炎症性疾患の重症度を誘発および/または増大させる。代替的な局面において、中枢神経系の炎症性疾患の重症度を誘発および/または増大させるために、トランスジェニックマウスをヘルペスウイルスに2回以上曝露することが必要とされる。本発明のなおさらなる局面において、上記CD46トランスジェニックマウスは、例えば、(a)HHV6−AとHHV6−B;(b)HHV6とCMV;(c)HHV6とEBV;(d)HHV6とVZV;(e)HHV6とHHV8;(f)HHV6とHIV;および(g)HHV6とHTLVのような2種以上のウイルスの組み合わせに曝露される。
【0049】
本明細書において開示されるトランスジェニックマウス動物モデル系は、中枢神経系または末梢神経系の疾患(例えば、神経系の炎症性疾患)の重症度を低下させるための候補化合物の能力を研究するために適切に使用される。典型的には、本明細書に記載のように、CD46トランスジェニックマウスを1種以上のヘルペスウイルスに曝露すると、多発性硬化症、糖尿病、関節炎、貧血、狼瘡、天疱瘡、甲状腺炎、糸球体腎炎もしくは間質性腎炎、心筋症、筋炎、皮膚筋炎、肝炎、および潰瘍性大腸炎からなる群より選択される炎症性疾患および/または自己免疫疾患の重症度を誘発および/または増大させる。このようなヘルペスウイルスに感染させたCD46トランスジェニック動物モデル系は、例えば、希突起神経膠細胞、神経膠星状細胞、および脳細胞からなる群より選択される細胞型に対するヘルペスウイルスの直接毒性を媒介する因子を同定するのに適切である。例示的な因子としては、CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞のような免疫系の細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
本発明の他の実施形態は、(a)可溶性CD46、(b)CD46に結合する細胞、および(c)CD46に結合する人工送達系からなる群より選択されるCD46改変体を含有する組成物を提供する。ここでこの組成物は、多発性硬化症および/または脳もしくは他の標的器官の他の自己免疫疾患ならびに免疫媒介性炎症疾患からなる群より選択される疾患の重症度を低減するのに有効であり、上記CD46は、全長ポリペプチドまたは切断型改変体として組換え形態で生成され、そして上記人工送達系は、リポソームまたは小胞のいずれかである。特定の局面において、このような組成物は、神経変性疾患および/または腫瘍の処置に有効である。
【0051】
本発明のなおさらなる実施形態は、例えば、多発性硬化症および/または脳もしくは他の標的器官の他の自己免疫疾患および免疫媒介性炎症疾患のような疾患を発症するリスクを有する患者を検出するための方法を提供する。特定の局面において、このような方法は、以下の(1)〜(4)の工程を包含する:(1)ヒトCD46に特異的に結合する抗体を含むことが疑われる生物学的サンプルを患者から単離する工程;(2)ヒトCD46に特異的に結合する抗体とヒトCD46を発現する細胞とを含む第一の複合体を得るために必要とされる時間の間、そのような条件下において、ヒトCD46またはその改変体を発現する細胞と上記生物学的サンプルを接触させる工程;(3)二次抗ヒト抗体と上記複合体を接触させる工程であって、この二次抗体は、上記第一の複合体に特異的に結合する二次抗ヒト抗体を含む第二の複合体を得るために必要とされる時間の間、そのような条件下において検出可能なタグを含む、工程;ならびに(4)上記結合された二次抗体上の検出可能なタグを検出する工程。典型的には、蛍光細胞分取(fluorescence activated cell sorting)の分析または検出タグを使用して二次抗体の存在を明らかにする他の方法によって、二次抗体上の検出可能なタグが検出される。検出可能なタグは、蛍光タグであってもよいし放射性同位元素であってもよい。特定の局面において、これらの実施形態に従う方法は、ヘルペスウイルスの複製(HHV6の複製を含む)に関連するか、またはこれに付随する活動的な破壊プロセスを有し、活性が継続している患者を同定するために適切に使用することができる。このような方法によって、患者で早期処置レジメンを開始することが可能であり、これによって多発性硬化症、慢性疲労症候群および他の関連疾患のような疾患の完全な発症が予防される。
【0052】
本発明の関連する実施形態は、患者(例えば、ヒト患者)において、ヘルペスウイルス媒介性感染(例えば、HHV6媒介性感染)の中和をもたらす抗体または細胞反応の存在を評価するための方法を提供する。早発型もしくは遅発型の器官特異的自己免疫(多発性硬化症および糖尿病を含む)をもたらす抗体および/またはT細胞反応を生じない患者を評価することを可能にする、同様の方法が提供される。これらの方法によって、抗体(例えば、中和抗体)または細胞反応が検出され、中枢神経系の疾患(例えば、多発性硬化症)を発症する患者のリスクならびに/あるいは糖尿病、関節炎、貧血、狼瘡、天疱瘡、甲状腺炎、糸球体腎炎または間質性腎炎、心筋症、筋炎、皮膚筋炎、肝炎、および潰瘍性大腸炎からなる群より選択される自己免疫疾患を発症する患者のリスクと相互に関連付けされる。
【0053】
これらの実施形態の代替的な関連局面は、患者サンプル内の細胞においてヘルペスウイルス媒介性毒性の重症度を低下するのに有効な化合物を同定するための方法を含み、このような方法は、(a)本明細書に記載の非ヒト動物モデル系に候補化合物を投与する工程、および(b)ヘルペスウイルス媒介性毒性の重症度が低下したかどうかを決定する工程を包含する。典型的には、このようなヘルペスウイルス媒介性毒性は、多発性硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、および小脳変性からなる群より選択される神経変性疾患と相関する。患者サンプル内の例示的な細胞としては、患者の血清、血液、脳脊髄液(CSF)の中のニューロンおよび細胞、ならびに/または他の患者サンプルが挙げられる。細胞毒性の測定は、毒性、溶解効果、サイトカイン媒介性死滅、アポトーシスを含む。
【0054】
有害な自己抗体の発生をアンタゴナイズする化合物または他の介入の治療価値を評価するための方法もまた提供され、抗体の産生は、例えば、HHV6−Aおよび/またはHHV6−Bのようなヘルペスウイルスに曝露されることによって誘導される。有益な自己抗体の発生を援助する化合物または他の介入の治療価値を評価するための関連方法が提供される。有害な自己抗体をアンタゴナイズするか、もしくは有益な抗体をアゴナイズするような細胞反応を介して免疫系を変更する化合物または介入の治療価値を評価するためのさらなる方法が提供される。
【0055】
本発明はまた、他の実施形態において、免疫抑制、移植、AIDS、および/または他の免疫不全に対して感受性が高い患者において、多発性硬化症および/または別の自己免疫疾患のような疾患状態での遍在的なウイルスによる感染のリスクを検出するための方法も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
(発明の詳細な説明)
本発明は、中枢神経系の自己免疫疾患は、免疫系がウイルス複製を抑制および制御することができなくなることの結果として生じるという、マーモセットおよびヒトにおいての観察に基づいている。本明細書において開示された観察に基づいて、本発明は、自己免疫脱髄疾患(例えば、多発性硬化症(MS))についての非ヒト動物モデル系を提供し、この動物モデル系は、神経変性疾患の治療的処置の様式の同定および特徴付けする際に利用を見出す。本発明の他の関連する実施形態において、ヒトの自己免疫脱髄に相関的なマーカーを検出するための方法論が提供される。本発明の種々の実施形態の各々は、本明細書の以下において詳細に説明され、本明細書で引用される文献と併せて最もよく理解される。これらの文献は、これから以下で記載されるものであっても上で既に記載されたものであっても、それらは全て、それらの文献があたかも個々に本明細書によって援用されるように、その全体が本明細書において参考として援用される。
【0057】
(中枢神経系の炎症状態および神経変性状態のマーモセット動物モデル系)
第一の実施形態において、HHV6感染とCNS炎症状態または神経変性状態の発生との間の原因に関する時間依存的関係を特徴付けるために有用な非ヒト実験動物モデル系が開示される。このような非ヒト動物モデル系は、制御された様式でヒトの多発性硬化症(MS)および糖尿病を模倣する霊長動物のモデル系によって例示される。
【0058】
上記で示されたように、本発明は、コモンマーモセット(Callithrix jacchus)(非ヒト霊長動物の新世界ザル)は、自然発生的な自己免疫を発症し、ヒトヘルペスウイルス6(HHV6)による感染に対して感受性が高く、そしてミエリン抗原での免疫化に対して非常に感受性が高いという観察に部分的に基づいている。このコモンマーモセットは、MSの治療および処置レジメンを同定および特徴付けするために適切に使用され得る実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)のMS様形態を発生させる。
【0059】
従って、特定の実施形態において、中枢神経系の炎症状態および/または神経変性状態(MSがよい例であるが、これに限定されない)についての非ヒト動物モデル系を提供する。このモデル系では、C. jacchusマーモセットは、例えば、1種以上のHHV6改変体(例えば、HHV6−Aおよび/またはHHV6−B)のようなヘルペスウイルスに感染される。本発明で開示される実施例において記載するように、HHV6での感染は単相的であり、インビトロにおいて細胞を速やかに死に至らしめるが、HHV6−Aによるナイーブな成体マーモセットのインビトロでの感染の結果としてはCNS脱髄疾患が起こる。いかなる特定の作用様式にも束縛されることを望むことなく、このCNS疾患および関連するCNS疾患は、ミエリン抗原に対するT細胞反応性を受けたアポトーシス性の細胞死に関連しているようにみえ、この細胞死は、臨床的な疾患に続いて発生するようであると考えられる。アポトーシスは、インビトロ実験によって実証されるとおり、神経膠細胞(オリゴ細胞、神経膠星状細胞)およびニューロンにも影響を与え得る。
【0060】
本発明による非ヒト実験モデル系は、ヒトの自己免疫神経変性疾患に相関的であり、従って、(1)HHV6−Aへの曝露後にCNS自己免疫の病因を制御する因子を同定するための機会を提供し、そして(2)中枢神経系の自己免疫疾患の処置に有効な可能性のある治療剤を同定および特徴付けるための適切な系を提供する。
【0061】
C. jacchusマーモセットがヘルペスウイルス(例えば、HHV6の改変体)への曝露の後に炎症性脱髄を発症するという本発明で開示される知見は、機能的なHHV6細胞レセプター(すなわち、CD46)を遍在的に発現し、かつヒトに近い系統発生を有する霊長動物種においてCNS脱髄のウイルス病因を理解するための独自の機会を提供する。HHV6に感染したC. jacchusマーモセット動物モデル系は、非近交系種においてCNS自己免疫脱髄の間の原因となる関連を制御する因子を明らかにするためのさらなる研究において利用を見出す。この非近交種は、異なる感受性およびHHV6(成人ヒト集団の大部分において病原性であるとはみなされていない遍在的なウイルス)への自然形態の曝露(例えば、血行性)を示し得る。
【0062】
C. jacchusマーモセットは、リンパ球の養子移植を可能にする自然発生的な骨髄キメラを有し、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスIIの多形性が限定されており、そしてウイルス感染(特に、ヘルペスウイルス)への高い程度の感受性についての基礎となるMHCクラスI領域が広く欠けているので、これらの動物は、本発明の動物モデル系において適切に使用され得る。
【0063】
本明細書において提示される非ヒト動物モデル系は、神経変性、自己免疫脱髄、および糖尿病に関連する疾患(例えば、MS)の基礎となる感染原因を診断するために適切なバイオマーカーの同定および確認において有用性を見出す。例えば、このような動物モデル系は、ヒトでのこのような疾患のために適切に使用することができ、前臨床段階を含め若年成人の疾患リスクを予測する。
【0064】
本明細書において開示される非ヒト動物モデルは、MSの場合だけでなく、他の疾患の場合においても、他の遍在的ヒトウイルスと、複合的な因子(agent)への曝露と、自己免疫または免疫不全の状態をもたす全ての生物との間の相互作用のモデル化において有用性を見出す。この点に関して、例えば、マーモセット動物モデルから得たデータは、バイオインフォマティクスによってこれらの相互作用をモデル化する能力を高めることが可能である。Krueger et al., (2004)。本明細書において開示される非ヒト動物モデル系はまた、HHV6感染によって駆動される神経変性、自己免疫脱髄、および糖尿病に関連する疾患(例えば、MS)の治療的介入および予防的介入のための治療標的ならびに治療剤の同定においても有用性を見出す。
【0065】
(実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)についてのコモンマーモセット動物モデル系)
コモンマーモセット(シロミミマーモセット(white ear-tuffed marmoset)、Callithrix jacchus jacchus)は、飼育下繁殖が容易であり、サイズが小さい(成体齢において、〜400gm)ことに起因して、パーキンソン症候群および加齢の動物モデルとして使用されている非ヒト霊長動物の新世界ザルである。Abbott et al., Comp Med 53:339-50 (2003); Mansfield, Comp Med 53:383-92 (2003); Zuhlke et al., Toxicol Pathol 31 Suppl: 123-7 (2003); Brack et al., Vet Pathol 18:45-54 (1981)およびGore et al., J Med Primatol 30:179-84 (2001)。マーモセットは、タマリンおよびヒトを含む他の霊長動物と密接に関連しており、多くの自己免疫疾患に対する異なる感受性ならびに大腸炎、甲状腺炎、および不明な病態生理からの腎不全による消耗症候群の自然発症を共にする。Levy et al., J Comp Pathol 82:99-103 (1972)およびClapp et al., in Carcinoma of the Large Bowel and Its Precursors: Progress In Clinical and Biological Research 247-61 (Ingalls et al. eds., 1985)。
【0066】
マーモセットは、多形性のMHCクラスII構成を有するが、進化的に大きく欠失したことに起因する非常に限定されたクラスIを有し(Watkins et al., Journal of Immunology 144:3726-3735 (1990); Antunes et al., Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 95:11745-11750 (1998)およびCadavid et al., J. Immunol. 157:2403-2409 (1996))、このことが多くのウイルスに対して感受性が高いことを説明する可能性が高い。さらに、マーモセットの系統発生はヒトと近く、多くの免疫系遺伝子および神経系遺伝子が、高い程度で保存されている。Uccelli et al., J. Immunol. 158:1201-1207 (1997); Uccelli et al., Eur. J. Immunol. 31:474-479 (2001); von Budingen et al., Immunogenetics 53:557-563 (2001); von Budingen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:8207-8212 (2002);およびMesleh et al., Neurobiol Dis 9:160-72 (2002)。
【0067】
C. jacchusマーモセットは、最近の10年においてEAEの強度な研究の被験体となっている。これは、C. jacchusマーモセットが、MSの臨床的な特徴および病理の証明を再現するCNS炎症性脱髄疾患を発症する性質によるものである。この種において、アジュバント中のヒトの白質全体、またはミエリン/希突起神経膠細胞糖タンパク質(MGO)による活動的な免疫化によって、ヒトMSの典型的な形態を思い起こさせる軽度から中程度の臨床的重症度を有する、慢性の再発寛解型疾患が生じる。急性のC. jacchusEAEの神経病理は、広範な同心状領域の一次脱髄、マクロファージ浸潤、アストログリオーシス(astrogliosis)、および希突起神経膠細胞の死滅からなる。Massacesi et al., Ann. Neurol. 37:519-530 (1995); Genain et al., Immunol. Reviews 183:159-172 (2001);およびBrok et al., Immunol Rev 183:173-85 (2001)。
【0068】
ミエリン分解の超微細構造特徴(ultrastructural feature)は、マーモセットEAEとヒトMSとで類似しており、このことからミエリン破壊の共通の機構が示唆される(Raine et al., Ann. Neurol. 46:144-160 (1999)および Genain et al., Immunol. Reviews 183:159-172 (2001))。マーモセットのMS様EAE病変の基礎となる原因機構は解明されており、それは、ミエリン指向性自己攻撃反応および病原性自己抗体反応の複雑な相互作用である。同上。
【0069】
(HHV6感染に関連する疾患のマーモセットモデル)
コモンマーモセットは、ヘルペスウイルスによる感染に対して感受性が高い(Provost et al., J Virol 61:2951-5 (1987); Jenson et al., J Gen Virol 83:1621-33 (2002); Ramer et al., Comp Med 50:59-68 (2000); Farrell et al., J Gen Virol 78 (Pt 6): 1417-24 (1997); Cox et al., J Gen Virol 77 (Pt 6): 1173-80 (1996); Wedderburn et al., J Infect Dis 150:878-82 (1984); Johnson et al., Proc Natl Acad Sci U S A 78:6391-5 (1981); de-The et al., Intervirology 14:284-91 (1980); Ablashi et al., Biomedicine 29:7-10 (1978) ;およびFalk et al., Int J Cancer 17:785-8 (1976)。マーモセットは、ヒトCD46に相同性が高いCD46分子を発現し、HHV6の種々の株(HHV6−AおよびHHV6−Bが挙げられるが、これらに限定されない)による感染によって例示されるとおり、ヘルペスウイルス感染についての標的である。
【0070】
HHV6に感染したヒトT細胞株とのトランスウェル共培養(trans-well co-culture)を使用して、マーモセットリンパ球(PBMC)がHHV6の改変体Aおよび改変体Bの両方にインビトロで感染され得るということが、本発明の一部として実証された。インビトロ共培養および感染についての方法論は、当該分野において周知であり、植物性血球凝集素でPBMCを刺激することによって容易にすることができる。このような例示的条件下において、HHV6の改変体Aおよび改変体Bに対して感染ヒト不死化T細胞株を曝露した後、5日〜10日以内に感染が起こる。
【0071】
マーモセットのインビボ感染は、種々のプロトコルを使用して、HHV6改変体を用いて達成することができる。これらのプロトコルは、本明細書の以下において詳述され、表3に要約され、そして以下に例示する:(1)HHV6−Aおよび/またはHHV6−Bにインビトロで感染させた(免疫蛍光(IFA)およびポリメーラーゼ連鎖反応(PCR)のような周知の技術によって実証する)動物自身のPBMCを静脈内(i.v.)投与し、6〜7週間後に生HHV6−Aウイルス改変体および/またはHHV6−Bウイルス改変体を含む細胞溶解物を静脈内注射する(動物#190−94およびU031−00について本明細書において開示した感染プロトコルを参照のこと);(2)HHV6−B感染細胞(例えば、MOLT3細胞)由来の溶解物を、5週間隔で2回i.v.注射する;(3)HHV6−Aに感染した細胞(例えば、HSB2細胞)を接種してHHV6−A+細胞を作製し(例えば、HHV6−A+HSB2細胞)、約3ヶ月後、HHV6−A感染細胞を注射するか(例えば、HHV6−A+HSB2細胞;動物#550−99について本明細書において開示した感染プロトコルを参照のこと)、または約3ヶ月後に非感染HSB2細胞を注射する(動物#367−94について本明細書において開示した感染プロトコルを参照のこと)。細胞の選択は、MOLT3細胞またはHSB2細胞の使用によって本明細書において例示されているが、代替的には、広範な範囲のCD46+造血性の株を含み得ることが理解され、これらとしては、K562細胞、HL−60細胞、U937細胞、KG−1細胞、Jurkat細胞、MOLT4細胞、およびSup T1細胞が挙げられるが、これらに限定されない。これらの細胞の各々は、American Type Culture Collection(ATCC; Manassas, VA)から容易に入手可能である。
【0072】
C. jacchusマーモセットは、HHV6−AおよびHHV6−Bに対してナイーブであり、これらのウイルスに容易に感染させることができる。HHV6−Aによる成体動物の反復感染により、病理学的にMSと類似した脈管周囲の炎症性脱髄を伴う軽度の慢性再発型CNS疾患を生じる。従って、本明細書に提示される動物モデル系は、遍在的ヒトウイルスとMSを模倣する慢性障害との間の原因となる関連を提供し、非近交系種においてこのような微生物と複雑な神経免疫反応との間の相互作用を特徴付けるためのモデルを与える。
【0073】
ヒトにおいてと同様にマーモセットにおいて持続および複製し得る改変体Aおよび改変体Bの両方によるHHV6感染は、一過性の免疫抑制を引き起こし得る。しかしながら、HHV6−A感染のみが、MS様CNS炎症性脱髄を生じると考えられている。いかなる特異的な機構的論理にも限定されることなく、可能性のある説明として、この改変体に対する好ましいCNS向性および/または神経膠細胞に対する溶解効果もしくはアポトーシス効果が挙げられる。ミエリン抗原による模倣は、この動物モデル系における炎症性CNS損傷についての主な機構でも原因となる機構でもないようにみえるが、遅発型のT細胞自己反応性は、慢性疾患の有害な効果(perpetration)において役割を果たす可能性がある。
【0074】
非近交系霊長動物種の個体において、HHV6への特定の時期の曝露の後に、新たにCNS脱髄が発症するという本発明の実証は、ヒト状態に非常に近い本明細書に開示された感染プロトコルのために、HHV6感染と神経変性および脱髄に関連する中枢神経系の疾患(例えば、多発性硬化症)との間の一過性の機構的関係を研究するために重要である。
【0075】
選択される投与の経路に依存して、最初の感染は、無症候性であってもほとんど無症候性であってもよい。しかし、典型的には、生のHHV6ウイルス(例えば、HHV6−Aウイルス)の第二の接種に対して動物を再び曝露すると、すぐに体重が減少して感覚欠損を伴う低緊張性麻痺を起こす。例えば、動物190−94およびU076−03について本明細書において提示されるデータを参照のこと。
【0076】
神経病理学および/または脳脊髄液(CSF)を分析すると、一般的に、複製するHHV6−Aの反復接種を受けた動物において、中枢神経系(CNS)の血液脳関門の機能停止および炎症が証明される。マーモセットの実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)でみられる脱髄と識別できない脱髄は、第2の接種の後に明らかになり得(例えば、動物#190−94を参照のこと)、この動物はまた、対応するMRI可視(磁気共鳴画像化)を提示し、T2強調した(T2-weighted)非常に強度の高い脳幹病変は以前に記載されたウイルス性CNS感染に関連する病理を思い起こさせる(Raine et at, J Neuropathol Exp Neurol 32:19-33 (1973); Raine, in Textbook of Neuropathology 627-714 (Davis et al. eds., 1997);およびMatsumoto et al., Acta Neurochir 141:439-40 (1999))。HHV6のウイルスの存在は、炎症性浸潤の近接において免疫組織化学によって実証することができる。対照的に、HHV6−Aは、組織学的に正常なCNS組織、脾臓、リンパ節、または他の末梢組織においては、PCRもしくは免疫組織化学のいずれによっても典型的には検出されない。HHV6ウイルスに感染したCNSの細胞は、プログラム化細胞死(すなわち、アポトーシス)のプロセスをさらに受け得る。
【0077】
(HHV6誘導性炎症および炎症性CNS脱髄をモニタリングするための方法)
本発明のさらなる局面において、マーモセット動物モデル系において、ウイルス抗原に対する免疫反応(T細胞および抗体の反応を含む)をモニタリングするための方法が提供される。例えば、ウイルス抽出物を抗原として使用する標準的な増殖アッセイを使用して、T細胞反応性(例えば、PBMCまたはリンパ系器官における反応性)を検出することができる。
【0078】
本発明は、ウイルス特異的免疫グロブリン反応(特に、IgGおよびIgMの反応)の検出に基づいたウイルス感染を検出するためのフローサイトメトリー方法をさらに提供する。本発明のこの局面は、広範なウイルス感染(特に、体液性免疫応答を誘発するウイルス感染)を検出する際に有用性を見出す。従って、例えば、本明細書において開示されるフローサイトメトリー方法は、ウイルス抗原(agent)がHHV6、HHV7、HHV8、CMV、EBV、HSV、JC、BK、およびSV40からなる群より選択されるウイルス感染の検出に有用である。他のウイルス感染もまた、本明細書において開示される方法によって検出することができる。
【0079】
本明細書において開示されるフローサイトメトリー方法は、当該分野で利用可能な既存のELISAベースの方法およびPCRベースの方法を越える実質的な改良であり、検出されるべき特定のウイルス抗原(agent)に対して特異性が高い。これらの方法は、ウイルス抗原に対するウイルス抗原に特異的に結合する抗ウイルス抗体は、感染細胞の表面上に独特な非天然型の転写後改変およびコンホメーションをとるという観察に基づいている。このような独特なウイルス抗原種は、ELISAおよびPCRの技術によって検出されないままである。
【0080】
特定の実施形態において、IgG抗体反応性は、例えば、1:50〜1:100の血清希釈、および蛍光標識(例えば、フルオレセイン(FITC)またはフィコエリトリン(PE))された抗サルIgG二次抗体を使用して、それぞれHHV6−Aおよび/またはHHV6−Bに感染した細胞株に対する血清のフローサイトメトリーによって評価することができる。このような方法は、典型的には、最初のウイルス曝露後に抗体反応性を検出し、この抗体は、二回目の接種、またはその後の接種の後に抗体力価が上昇する。動物における抗体(IgG)反応性は、典型的には、感染しているウイルス改変体に特異的であり、他のHHV6改変体または感染していない細胞株に対して反応性はない。
【0081】
HHV6 DNAの存在はまた、ウイルスゲノムの種々のエレメントに対するオリゴヌクレオチドを使用するネステッドPCR(nested PCR)反応によって連続的にモニタリングすることもできる。HHV6改変体(HHV6−Aではなく、HHV6−B)の公知の指向性と一致することを、感染動物の血液中で検出することができる。血液(HHV6−B)およびCNS(IHCによって検出されるHHV6−A)と対称的に、ウイルスの持続性またはウイルス複製は、典型的には、他の器官において検出されない。
【0082】
ウイルス感染は、宿主の免疫系がミエリンタンパク質ペプチドと似たウイルスペプチドを認識し、それによって免疫攻撃を誘発する現象である分子模倣をもたらし得る。例えば、Fujinami et al., Science 230:1043-1045 (1985)およびOldstone, Faseb Journal 12:1255-1265 (1998)を参照のこと。ミエリン塩基性タンパク質(MBP)の免疫優勢なペプチドに対するこのような相同性は、HHV6 U24タンパク質において最近記載された。Tejada-Simon et al., Ann Neurol 53:189-97 (2003)およびCirone et al., J Med Virol 68:268-72 (2002)。分子模倣は、他のウイルスで実証されているようにMBP反応性T細胞クローンの交差的な活性化(cross-activation)を導き得、MS攻撃または有害な影響を伴う(perpetrating)疾患を誘発する可能性のある機構を強調し得る。Wucherpfennig et al., Cell 80:695-705 (1995); Talbot et al., Curr Top Microbiol Immunol 253:247-71 (2001)およびLang et al., Nat Immunol 3:940-3 (2002)。
【0083】
本発明の一部として、T細胞の模倣がHHV6を接種した動物において生じ得ることがここで開示される。動物は、例えば、ミエリン希突起神経膠細胞糖タンパク質(MOG)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、他のHHV6抗原、および/またはそれらのペプチドに対して反応性を示し得る。連続的な血液サンプルを動物から得て、レクチン(PHA)に対する末梢T細胞免疫反応性(PBMC)をモニタリングすることができる。典型的には、二度目のHHV6接種に続いて、一過性状態の免疫抑制(PHAに対する反応性が低下することによって証明される)が起こり得、さらに後にウイルス抗原(例えば、MOGおよび/またはMBP)に対する反応性が生じ得る。
【0084】
希突起神経膠細胞およびニューロンのアポトーシスまたは死滅は、MSおよびEAEの病変の病因に関連することが示唆されている。Raine, J Neuroimmunol 77:135-52 (1997b); およびLucchinetti et al., Ann. Neurol. 47: 707- 717 (2000)。HHV6改変体はまた、CNS中の神経膠星状細胞のような神経膠細胞に対しても毒性であり得るが、保護効果についての可能性も報告されている。Kong et al., J Neurovirol 9:539-50 (2003); De Bolle et al., Clin Microbiol Rev 18:217-45 (2005);およびDonati et al., J Virol 79:9439-48 (2005)。HHV6に感染し、炎症性浸潤によって特徴付けられた動物(例えば、マーモセット)を、HHV6感染動物由来の脳の切片上でのTUNEL反応および/またはカスパーゼ3に対する染色によってさらに分析することができる。これらのアッセイ系は、病変の近くでアポトーシス細胞(例えば、神経膠細胞および/またはニューロン細胞)が存在することを実証する際に有用である。
【0085】
アポトーシスまたはプログラム化細胞死は、細胞容量の喪失、ゼイオーシス(zeiosis)、クロマチンの凝集、およびアポトーシス小体への核の断片化を含む一連の特徴によって特徴付けられる。フローサイトメトリーによってアポトーシスを定量化するために使用され得る当該分野で公知のいくつかの方法が存在する。最も一般的な方法の1つは、ヨウ化プロピジウムを使用してDNAを染色し、細胞周期プロフィールからサブ二倍体(sub-diploid)の細胞集団を探す方法である。DNA含有量/細胞周期分析のために最も一般的に使用される色素は、ヨウ化プロピジウム(PI)である。PIは、二重鎖DNAの主溝に入り込み、488nmで励起して600nm付近を中心として広く放射し得る蛍光性が高い付加物を生成する。PIは二重鎖RNAにも結合し得るので、最適なDNA分解のために、典型的には、細胞をRNaseで処理する。他の周知のフローサイトメトリーベースの方法としては、DNA鎖の分解を測定するTUNELアッセイ、および細胞内表面から細胞外表面への膜ホスファチジルセリンの再配置を検出するアネキシンV結合が挙げられる。さらに、システインプロテアーゼであるカスパーゼ(典型的には、カスパーゼ−3)の活性を、アポトーシスの尺度としてアッセイすることができる。カスパーゼは、蛍光基質(Pharmingen)を使用して検出することができる。顕微鏡調査およびゲル電気泳動によるDNAラダー形成の検出を使用して、フローサイトメトリーの結果を確認してもよい。
【0086】
ネクローシスのプロセスにある細胞および細胞集団を同定するためのアッセイ系もまた記載されており、当該分野で周知である。例えば、Dive et al., "Analysis and Discrimination of Necrosis and Apoptosis (Programmed Cell Death) by Multiparameter Flow Cytometry," Bioch Biophysica Acta 1133:275-285 (1992)を参照のこと。
【0087】
本発明の一部として、アポトーシスおよびネクローシスが、希突起神経膠細胞(TC620)、ならびにCRT(神経膠星状細胞)およびニューロン(SK−N−SH)において、HHV6−Aによって誘導されることが観察された。これらのデータは、表1に要約する。
【0088】
(表1)
(HHV6−A感染細胞株における3日目でのアポトーシスおよびネクローシス)
【表1】

【0089】
従って、本発明はHHV6−A媒介性の細胞死を検出するための方法をさらに提供し、この細胞死には、血液、脳脊髄液および/または尿のような患者サンプル中のプログラム化細胞死(アポトーシス)、ネクローシス、サイトカイン媒介性細胞死、細胞溶解ならびに毒性が含まれる。この実施形態に従う方法は、上記で考察した希突起神経膠細胞、神経膠星状細胞、およびニューロン、ならびに本明細書において例示した広範な範囲の細胞に適用された場合の細胞死を評価する工程を包含する。広範な範囲の組織サンプルおよび細胞型にこれらの方法を適用することが可能であり、表2に示すような種々のウイルスが誘導する疾患状態の検出において有用性を見出す。
【0090】
(表2)
(HHV6−A媒介性細胞死による疾患病因についてアッセイされ得る自己免疫疾患および対応する罹患した組織/細胞型)
【表2】

【0091】
(糖尿病のための非ヒト動物のHHV6−B感染モデル系)
本発明の別の実施形態において、糖尿病についての非ヒト動物モデル系が提供される。本発明のこの局面は、HHV6−Bヘルペスウイルス改変体が、一連の2回のこのウイルスの接種の後に、感染マーモセットにおいて体重減少および血糖値の上昇を誘導し得るという観察に基づく(図22を参照のこと;動物#50−01)。本明細書において開示される動物モデル系は、尿および/または血液の糖含有量を実質的に上昇させ、急激に体重が減少する。
【0092】
従って、HHV6−AおよびHHV6−Bからなる群より選択されるヘルペスウイルス改変体によるマーモセットの感染によって作製される糖尿病のマーモセット動物モデル系が、本明細書において提供される。この動物モデルは、約100mg/dlと約5,000mg/dlとの間、より典型的には約100mg/dlと約1,000mg/dlとの間、さらにより典型的には約150mg/dlと約500mg/dlとの間の尿および/または血液の糖含有量と、210日目において約15〜50%の間、より典型的には約20%と約30%との間の体重減少とによって特徴付けられる。具体的には、糖尿病のマーモセット動物モデル系が本明細書において例示され、この動物は、HHV6−Bに曝露され、HHV6−Bによる最初の接種の後、約1,000mg/dlの尿の糖含有量と、約210日で最初の体重からの〜27%の体重減少を示した。HHV6−Aヘルペスウイルス改変体を接種した動物とは対称的に、HHV6−Bに感染した動物は、実質的な神経学的欠損または中枢神経系病理を生じない。
【0093】
本発明の非ヒト動物モデル系は、糖尿病の発症に関連し得る広範な種々のウイルスに対して適切に拡張され得ることがさらに企図される。上記ウイルスとしては、1種以上のコロナウイルス、レオウイルス(rheovirus)、アデノウイルス、パラミクソウイルスおよび/またはコクサッキーウイルス(coksackie virus)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
(多発性硬化症および他の自己免疫疾患のためのトランスジェニック動物モデル系)
本発明の他の実施形態において、多発性骨髄腫および脱髄によって特徴付けられる中枢神経系の他の関連する自己免疫疾患のための非ヒトトランスジェニック動物モデル系が提供される。多種多様な動物種が、本発明のこれらの実施形態に関連して企図される。例えば、非ヒトトランスジェニックのマウス、ゼブラフィッシュ、ショウジョウバエ、および線虫の動物モデル系が本明細書において提供され、この系において動物は、CD46をコードする導入遺伝子を含み、ヘルペスウイルスに感染されるか、そして/またはヘルペスウイルスに曝露される。
【0095】
本発明によるトランスジェニックマウス動物モデル系は、当該分野で容易に利用可能な方法論を参照することによって作製することができる。例えば、以下に記載される方法論を参照のこと(これらの各々は、その全体が本明細書において参考として援用される):Hogan et al., "Manipulation the mouse embryo: A laboratory Manual" (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N. Y., 1986); Palmiter et al., Nature 300:611-15 (1982); Ebert et al., MoI. Endocrin. 2:277-83 (1988); Sutrave et al., Gene Dev. 4:1462-72 (1990); Pursel et al., Theriogenology 45:348 (1996);米国特許第6,323,390号、同第6,218,597号、同第6,137,029号、同第6,156,727号、同第6,127,598号、同第6,111,166号、同第6,107,541号および同第6,077, 990号。
【0096】
ヒトCD46導入遺伝子を含み、かつヒトCD46導入遺伝子を発現するトランスジェニックマウスは、麻疹ウイルス感染の研究に関して記載されている。Rall et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 94:4659-4663 (1997)は、CD46遺伝子がニューロン特異的プロモーターによって転写調節される脳の麻疹ウイルス感染についてのトランスジェニックマウスモデルを記載する。CD46を発現すると、一次ニューロンがMV−Edmonstonに感染するようになる。Horvat et al. (J. Virol, 70(10): 6673-6681 (1996))は、ヒトCD46を遍在的に発現するトランスジェニックマウスを記載する。これらの著者は、遍在的に発現するヒドロキシメチル−グルタリル補酵素Aレダクターゼ(HMGCR)の遺伝子プロモーターの制御のもとに、CD45のC−CYT2アイソフォーム(エキソン1〜6、9〜12、および14を含む)を配置した。この構築物は、B6DBAマウス卵母細胞の前核にマイクロインジェクトされ、標準的方法によってトランスジェニックマウスが作製された。Evlashev et al. (J. Virol. 74:1373-1382 (2000)およびJ. Gen. Virol. 82:2125-2129 (2001))は、MVが誘導する病理のトランスジェニックマウスモデルを記載し、このモデルにおいて、トランスジェニックマウスのいくつかの系統は、脳においてCyt1またはCyt2の細胞質テールのいずれかとともにヒトCD46を遍在的に発現するように作製された。Hahm et al. (J. Virol. 77:3505-3515 (2003))は、lckプロモーターの制御下でヒトシグナル伝達リンパ球性活性化分子(hSLAM)を発現するトランスジェニックマウスを記載する。hSLAMは、血液および脾臓においてCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞で発現し、CD4+胸腺細胞、CD8+胸腺細胞、CD4+CD8+胸腺細胞、およびCD4−CD8−胸腺細胞で発現した。これら文献の各々は、その全体が本明細書において参考として援用される。
【0097】
CD46をコードする導入遺伝子を含むトランスジェニックマウスの動物モデル系が本明細書において例示され、この系において、上記トランスジェニックマウスはヘルペスウイルスに感染され、このヘルペスウイルスは、HHV6−AおよびHHV6−Bからなる群より選択される。これらの実施形態の特定の局面において、CD46をコードする導入遺伝子は、インビボで遍在的に発現される。代替的な局面において、CD46をコードする導入遺伝子は、脳、脊髄および末梢神経からなる群より選択される組織においてインビボで発現される。このようなトランスジェニックマウス動物モデルは、多発性硬化症の機構的研究においての利用を見出し、多発性硬化症の処置のための治療および処置レジメン(例えば、本明細書の上記に詳細に記載したマーモセットMSモデル系によって同定されたもの)を含む候補の治療をさらに特徴付けるために使用される。
【0098】
本明細書において提示されたトランスジェニックマウス動物モデル系は、CD46トランスジェニックマウスをヘルペスウイルスに単回曝露することによって達成することができ、このモデル系において、このようなウイルス曝露は、中枢神経系の炎症性疾患の重症度を誘発および/または増大させる。代替的な局面において、トランスジェニックマウスをヘルペスウイルスに2回以上曝露することが、中枢神経系の炎症性疾患の重症度を誘発および/または増大させるために必要とされる。本発明のなおさらなる局面において、上記CD46トランスジェニックマウスは、例えば以下のような2種以上のウイルスの組み合わせに曝露される:(a)HHV6−AとHHV6−B;(b)HHV6とCMV;(c)HHV6とEBV;(d)HHV6とVZV;(e)HHV6とHHV8;(f)HHV6とHIV;および(g)HHV6とHTLV。
【0099】
ウイルス感染は、本質的には、ヘルペスウイルス感染のマーモセット動物モデル系について本明細書において記載されたように達成することができる。例えば、適切な組織サンプルを動物から取り出し、従来の組織培養技術に供し、1種以上のヘルペスウイルス改変体および/または上に示したようなウイルスの組み合わせにエキソビボで曝露し、その感染細胞を動物に再導入する。このような感染され得る自己由来技術に適切な細胞としては、細胞表面CD46を発現する細胞(例えば、PBMC、脾臓細胞、およびリンパ節細胞)が挙げられる。他の細胞型もまた、ヘルペスウイルス感染のために使用することができる。エキソビボウイルス感染の程度は、プラーク形成アッセイまたは単離物中のウイルス粒子のカウントに基づいた用量応答曲線を用いて、モニタリングおよび評価することができる。
【0100】
典型的には、静脈内注射、腹腔内注射、または皮下注射を介して、細胞を動物に再導入する。他の投与経路も適切であり得、企図される特定の細胞型および適用を考慮して当業者によって決定される。本明細書において注記されたように、動物のウイルス感染は、単回のエキソビボのウイルス曝露および再導入によって首尾よく達成することができるか、あるいは典型的には約3週〜約8週の間隔で、一連のエキソビボウイルス曝露および再導入をその後一回以上行うことを必要とする場合がある。適切に使用することができる多くの感染レジメンが、本明細書において例示される。
【0101】
本明細書において開示されるトランスジェニックマウス動物モデル系は、中枢神経系または末梢神経系の疾患(例えば、神経系炎症性疾患)の重症度を低減させるための候補化合物の能力を研究するために適切に使用される。典型的には、本明細書において記載するように、1種以上のヘルペスウイルスにCD46トランスジェニックマウスを曝露すると、多発性硬化症、糖尿病、関節炎、貧血、狼痘、天然痘、甲状腺炎、糸球体腎炎もしくは間質性腎炎、心筋症、筋炎、皮膚筋炎、肝炎、および潰瘍性大腸炎からなる群より選択される炎症性疾患および/または自己免疫疾患の重症度を誘発および/または増大させる。このようなヘルペスウイルスに感染されたCD46トランスジェニック動物モデル系は、細胞型(例えば、希突起神経膠細胞、神経膠星状細胞、および脳細胞からなる群より選択される細胞型)に対するヘルペスウイルスの直接毒性を媒介する因子の同定に適切である。毒性は、当該分野で周知の方法論によって本明細書に記載のように評価することができ、これらの方法論は、例えば、組織学的試験、アポトーシスおよび/もしくはネクローシスの評価、サイトカインおよび他の因子の測定、ならびに/または、末梢血/リンパ器官におけるT細胞および抗体の反応性であるが、これらに限定されない。例示的な因子としては、CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞のような免疫系の細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
(多発性硬化症および他の自己免疫疾患についてのトランスジェニックゼブラフィッシュモデル系)
ヒトCD46を発現するトランスジェニックゼブラフィッシュは、トランスジェニック構築物をゼブラフィッシュの細胞(典型的には、胎性細胞)に導入するか、またはMeng et al. Methods Cell Biol. 60:133-48 (1999)および米国特許出願公開番号2005/0120392(これらの各々は、その全体が本明細書において参考として援用される)に記載のように一個の胚に導入することによって作製することができる。例えば、トランスジェニック構築物は、ヒトCD46を発現するために米国特許出願公開番号2004/0117866およびChou et al., Transgenic Research 10:303-315 (2001)に記載のように、市販のプラスミド系(例えば、pDsRed2−1(Clontech)およびp−αEGFPITRを改変することによって作製することができる。このような構築物は、ゼブラフィッシュのゲノムに組み込まれ得るか、または人工染色体として構築され得る。トランスジェニック構築物は、当該分野で公知の技術(例えば、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポソーム送達、および粒子銃の衝撃)を使用して胎性細胞に導入することができる。1つまたは2つの細胞段階において胚をマイクロインジェクトすることができるか、または後で増殖する胚に組み込まれ得る胎性幹細胞に構築物を組み込むことができる。
【0103】
Rubenstein et al.、米国特許出願公開番号2005/0120392、2002/0187921および2004/0143865、ならびにTsai、米国特許出願公開番号2004/0117866に記載のように胚または胎性細胞を得ることができる。CD46導入遺伝子を含むゼブラフィッシュは、多数の方法(例えば、ノーザンブロッティングまたはサザンブロッティングによって導入遺伝子構築物の存在についてゼブラフィッシュのゲノムを調べる方法)によって同定することができる。ポリメラーゼ連鎖反応技術を使用して、導入遺伝子の存在を検出することもできる。
【0104】
レポータータンパク質の発現は、当該分野で公知の方法によっても検出することができる。例えば、RNAは、多数の核酸検出技術のうちのいずれを用いても検出することができる。代替的には、抗体を使用して発現産物を検出することができるか、または当業者は、GFPのような蛍光レポータータンパク質の発現を可視化および定量することができる。本明細書において使用される場合、レポータータンパク質とは、発現されたときに特異的に検出され得る任意のタンパク質である。レポータータンパク質は、発現配列からの発現を検出または定量するのに有用である。例えば、組織特異的な発現配列に作動可能に連結したレポータータンパク質をコードするヌクレオチド配列は、直系の発生を研究することを可能にする。このような研究において、レポータータンパク質は、発生プロセスをモニタリングするためのマーカーとして役立つ。
【0105】
多くのレポータータンパク質が当該分野で周知である。これらとしては、特異的な検出可能な産物を生成するβ−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、およびアルカリホスファターゼが挙げられるが、これらに限定されない。緑色蛍光タンパク質(GFP)、増強緑色蛍光タンパク質(eGFP、)サンゴ蛍光タンパク質(RCFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)および黄色蛍光タンパク質(YFP)のような蛍光レポータータンパク質もまた使用することができる。例えば、GFPまたはRCFPを利用することによって、基質を添加することなく、紫外光、水銀、キセノン、アルゴン、またはクリプトンのアーク光に曝露された際に蛍光が観察される。
【0106】
GFPのようなレポータータンパク質を使用すると、ゼブラフィッシュの発生の間に遺伝子発現を検出または評価するために好ましくあり得る外因性因子を添加することを必要とせずに、直接的に検出可能である。レポータータンパク質および組織特異的発現配列をコードする構築物を保有するCD46トランスジェニックゼブラフィッシュ胚は、空間的および時間的な発現パターンを分析するための、迅速なリアルタイムのインビボ系を提供する。
【0107】
(CD46ベースの組成物)
本発明の他の実施形態は、(a)可溶性CD46、(b)CD46に結合する細胞、および(c)CD46に結合する人工送達系からなる群より選択されるCD46改変体を含む組成物を提供し、この組成物は、多発性硬化症および/または脳もしくは他の標的器官の他の自己免疫疾患および免疫媒介性炎症疾患からなる群より選択される疾患の重症度を低減させるのに有効であり、上記可溶性CD46は、全長ポリペプチドとしてか、もしくは切断型改変体として組換え形態で産生され、そして上記人工送達系は、リポソームまたは小胞のいずれかである。特定の局面において、このような組成物は、神経変性疾患および/または腫瘍の処置に有効である。
【0108】
(CNS炎症状態および/または神経変性状態の非ヒト動物モデル系を使用する方法)
種々の実施形態において、本発明は、以下(1)〜(5)をさらに提供する:(1)疾患を発症するリスクを有する患者を検出するための方法;(2)ヘルペスウイルス媒介性感染(例えば、HHV6媒介性感染)の中和をもたらす抗体または細胞反応の存在を、患者(例えば、ヒト患者)において評価するための方法;(3)患者サンプル内の細胞中でヘルペスウイルス媒介性毒性の重症度を低減させるのに有効な化合物を同定するための方法;(4)有害な自己抗体の発生をアンタゴナイズする候補化合物または他の介入の治療的能力を評価するための方法;ならびに(5)多発性硬化症および/または別の自己免疫疾患のような疾患状態において遍在的ウイルスによる感染のリスクを、患者において検出するための方法。これらの方法の各々は、本明細書および実施例においてさらに詳細に記載される。
【0109】
1つの実施形態において、本発明は、例えば、多発性硬化症および/または脳もしくは他の標的器官の他の自己免疫疾患および免疫媒介性炎症疾患のような疾患を発症するリスクを有する患者を検出するための方法を提供する。特定の局面において、このような方法は、以下の工程(a)〜(d)を包含する:(a)ヒトCD46に特異的に結合する抗体を含むことが疑われる生物学的サンプルを患者から単離する工程;(b)ヒトCD46に特異的に結合する抗体およびヒトCD46を発現する細胞を含む第一の複合体を達成するのに必要とされる時間の間、そのような条件のもと、上記生物学的サンプルをヒトCD46またはその改変体(例えば、固体マトリックスまたはCD46発現細胞に吸着されるCD46)と接触させる工程;(c)上記複合体を二次抗ヒト抗体と接触させる工程であって、この二次抗体は、第一の複合体に特異的に結合する二次抗ヒト抗体を含む第二の複合体を達成するのに必要とされる時間の間、そのような条件のもとで検出可能なタグを含む、工程;ならびに(d)結合した二次抗体上の検出可能なタグを検出する工程。
【0110】
典型的には、二次抗体上の検出可能なタグは、蛍光細胞分取の分析または検出タグを使用して二次抗体上の検出可能なタグの存在を明らかにするような他の方法によって検出される。例えば、検出可能なタグは、蛍光タグであっても放射性同位元素であってもよい。特定の局面において、これらの実施形態に従う方法は、活性な破壊プロセスが、ヘルペスウイルスの複製(HHV6複製を含む)と関連するか、またはこれに付随して起こり、そして活性が継続している患者を同定するために適切に使用され得る。このような方法によって、早期処置レジメンを患者で開始することもできる。これによって、多発性硬化症、慢性疲労症症候群および他の関連障害の疾患が完全に発症するのを妨げる。
【0111】
本発明の関連する実施形態は、ヘルペスウイルス媒介性感染(例えば、HHV6媒介性感染)の中和をもたらす抗体または細胞反応の存在を、患者(例えば、ヒト患者)において評価するための方法を提供する。早発型または遅発型の器官特異的自己免疫(多発性硬化症および糖尿病を含む)をもたらす抗体および/またはT細胞反応を生じない患者を評価することを可能にする同様の方法が提供される。これらの方法によって、抗体(例えば、中和抗体)または細胞反応が検出され、中枢神経系の疾患(例えば、多発性硬化症)を発症する患者のリスクおよび/または糖尿病、関節炎、貧血、狼瘡、天疱瘡、甲状腺炎、糸球体腎炎もしくは間質性腎炎、心筋症、筋炎、皮膚筋炎、肝炎、および潰瘍性大腸炎からなる群より選択される自己免疫障害を発症する患者のリスクと相互に関連する。
【0112】
本発明の方法の他の実施形態は、患者サンプル内の細胞においてヘルペスウイルス媒介性毒性の重症度を低減するのに有効な化合物を同定するための方法を包含し、ここでこのような方法は、(a)本明細書に記載の非ヒト動物モデル系に候補化合物を投与する工程、および(b)患者サンプル内の細胞において、ヘルペスウイルス媒介性毒性の重症度が低下したかどうかを決定する工程、を包含する。典型的には、このようなヘルペスウイルス媒介性毒性は、多発性硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、および小脳変性からなる群より選択される神経変性疾患と互いに関連する。患者サンプル内の例示的な細胞としては、患者の血清、血液、脳脊髄液(CSF)および/または他の患者サンプル内のニューロンならびに細胞が挙げられる。細胞毒性の測定は、溶解効果、サイトカイン媒介性細胞死、およびアポトーシスを含むがこれらに限定されない。
【0113】
例えば、HHV6−Aおよび/またはHHV6−Bのようなヘルペスウイルスへの曝露によって産生が誘導される有害な自己抗体の発生をアンタゴナイズする化合物または他の介入の治療価値を評価するための方法もまた、提供される。有益な自己抗体の発生を援助する化合物または他の介入の治療価値を評価するための関連方法が提供される。有害な自己抗体がアンタゴナイズされるか、または有益な自己抗体がアゴナイズされるような細胞反応を介して免疫系を変更する化合物または介入の治療効果を評価するためのさらなる方法が、提供される。
【0114】
他の実施形態において、本発明はまた、多発性硬化症および/または別の自己免疫疾患のような疾患状態において、偏在性ウイルスによる感染のリスクを患者で検出するための方法を提供し、この方法において、上記患者は、免疫抑制、移植、AIDS、および/または他の免疫不全に対して感受性が高い。
【0115】
(中枢神経系の自己免疫疾患を検出するためのマーカーおよび方法)
以下の実施例で考察するように、再発寛解型多発性硬化症(MS)およびクローン病のような疾患に関して、ナタリズマブをインターフェロンベータ1−a(IFN−β)と組み合わせて受けた患者は、進行性多病巣性白質脳障害(PML)(HIVとJCウイルスとによる感染と関連している病因を有する疾患)を示すことが報告されている。例えば、Bossolasco et al., "Prognostic Significance of JC Virus DNA Levels in Cerebrospinal Fluid of Patients with HIV- Associated Progressive Multifocal Leukoencephalopathy" Clinical Infectious Diseases 40(5):738-744 (2005)を参照のこと。それと共に、PMLは、他の一般的なヒト病原体による日和見感染のような免疫抑制された個体(例えば、ADDS、移植患者)において、通常観察される。B細胞は、腎臓から脳にウイルスが移動することによって、PMLの病因に関連し得る。この疾患は、希突起神経膠細胞中でのJCウイルスの複製を通して媒介されると考えられる。
【0116】
ヒト患者でのこれらの観察に基づいて、本発明は、1種以上の治療適用による処置の後でPMLを発症した患者において、リンパ球サブセットの免疫学的特性を評価するためのマーカーおよび方法をさらに提供する。従って、本明細書に記載される実施形態は、Muromonab-CD3(Johnson & Johnson)、アブシキシマブ(Centocor)、リツキシマブ(Biogen IDEC)、ダクリズマブ(daclizumab)(Protein Design Labs)、バシリキシマブ(Novartis)、パリビズマブ(Palivizumab)(MedImmune)、インフリキシマブ(Centocor)、トラスツズマブ(Genentech)、ゲムツズマブ(Wyeth)、アレムツズマブ(Millennium/ILEX)、イブリツモマブ(Biogen IDEC)、アダリムマブ(Abbott)、オマリズマブ(Genentech)、トシツモマブ−I131(Corixa)、エファリズマブ(Genentech)、セツキシマブ(Imclone Systems)、およびベバシズマブ(Genentech)または例えば、多発性硬化症などの広範なウイルス関連免疫疾患のために現在使用されている他の強力な免疫抑制の生物学的製剤のような処置のもとにある場合に、進行性多病巣性白質脳障害(PML)または他の脳炎などの合併症に感受性が高い患者(ヒト患者を含む)の同定のためのマーカーおよび方法を提供する。
【0117】
従って、例えば、本発明は、自己免疫疾患における遍在的ウイルスによる感染のリスクを検出するためのフローサイトメトリー方法を提供する。この疾患としては、多発性硬化症、免疫抑制を用いて処置された疾患、移植、AIDS、および免疫不全の他の状態、他の神経変性病理または器官特異的病理を含む。このような方法は、患者サンプル(例えば、末梢血液)中で、CD19およびCD3のレベルおよび/またはCD19とCD3との比、CD4+CD25+集団、調節T細胞のレベル、および/またはCD8のレベルを測定する工程、ならびに、これらのレベルおよび/または比を、その患者がウイルス関連性の合併症および発癌性合併症を提示するリスクと相関付ける工程を包含する。多くのウイルス関連性の合併症は、その病因がウイルス(例えば、JC、HHV6、EBV、VZV、HHV7、HHV8、CMV、HSV IおよびHSV II)に関連している合併症であることが現在企図されている。
【0118】
ヘパリン化血液および凝固血清が、治療レジメンを受けた患者から回収され得、1種以上の蛍光タグされた一次抗体(例えば、CD3−FITC/PE/PerCp:SP34、CD4−FITC/PE:L200(BD Pharmingen)、CD8−FITC:SFCI21Thy2D3(Beckman Coulter)、CD19−PE:4G7、およびCD25−FITC:2A3(Becton-Dickinson))を使用して製造業者の指示に従って、フローサイトメトリー(FACS)分析のために染色され得る。
【0119】
典型的には、白血球(WBC)数、リンパ球数、ならびにCD3+CD4+細胞、CD3+CD8+細胞、およびCD19+細胞の絶対数は、本発明の方法によって測定されるウイルス関連性の合併症において影響を受けない。しかし、対照的に、CD3+CD8+細胞数の減少、CD19+細胞の絶対数の増加、CD19+細胞(成熟B細胞)の相対的割合の増加、およびCD19/CD3比の増加は、患者がウイルス関連性の合併症および発癌性合併症を示すというリスクの増加を示す。
さらに、CD4+CD25+T細胞は、調節活性を有するT細胞(Treg)を含み、このT細胞は、CD4+CD25+細胞の絶対数によって証明されるように、PMLを発症する患者おいて低下するか、または上記患者に実質的に存在しない。全リンパ球およびCD4+T細胞が比較的保存されているにもかかわらず、Treg集団の抑制が起き、そしてこれらの患者のB細胞集団、特にCD8+(サプレッサー)細胞の割合が増加する傾向があると考えられている。いかなる特定の機構的論理にも限定されることなく、T調節活性の喪失は、これらの患者においてB細胞の活性および輸送(trafficking)の制御が不十分であること、そして潜伏していて通常は良性のウイルス(例えば、JCウイルス)の複製を妨げることができないことの原因であり得ると考えられる。T調節活性の喪失から生じ得る「機能的に免疫不全」の状態はまた、例えば、PMLの場合において、他の遍在的な病原体が再活性化する能力にも影響し得る。
【0120】
T細胞サブセットのような免疫学的マーカー(特に、CD19+およびCD4+CD25+)の測定は、治療的に誘導される合併症の発症についてのリスクを有する患者を検出することに対して有用性を見出す。特に、本明細書において提示されるデータは、MSおよび治療の適用(例えば、ナタリズマブ)で処置された他の自己免疫疾患を有する患者のリスクをモニタリングするためのマーカーとして、CD19/CD3比、CD4+CD25+集団、CD8+細胞数およびCD3+細胞数の評価ならびに使用を支持する。
【0121】
本明細書に引用される全ての文献は、以下に記載のものも上記に記載のものも、その全体が本明細書において参考として援用される。
【実施例】
【0122】
以下の実施例は、説明のために提供され、限定のために提供されるものではない。
【0123】
(実施例1 インビトロでのマーモセット細胞の感染)
本実施例は、HHV6の改変体Aおよび改変体Bによるインビトロでの感染に対するマーモセットリンパ球(PBMC)の感受性を実証する。
コモンマーモセットは、ヘルペスウイルスによる感染に対して感受性であり(Provost et al., J Virol 61:2951-2955 (1987); Jenson et al., J Gen Virol 83:1621-1633 (2002); Ramer et al., Comp Med 50:59-68 (2000); Farrell et al., J Gen Virol 78(6): 1417-1424 (1997); Cox et al., J Gen Virol 77(6): 1173-1180 (1996); Wedderburn et al., J Infect Dis 150:878-882 (1984); Johnson et al., Proc Natl Acad Sd U S A 78:6391-6395 (1981); de-The et al., Intervirology 14:284-291 (1980); Ablashi et al., Biomedicine 29:7-10 (1978); Falk et al., Int J Cancer 17:785-788 (1976))、ヒトHHV6レセプターに対して相同性が高いCD46分子を発現する。Murakami et al., Biochem J 330:1351-1359 (1998)。HHV6感染ヒトT細胞株とのトランスウェル共培養を使用して、マーモセットリンパ球(PBMC)がHHV6の改変体Aと改変体Bとの両方にインビトロで感染され得ることを実証した。
【0124】
(実施例2 インビボでのマーモセットの感染)
本実施例は、HHV6の改変体Aおよび改変体Bによるインビボ感染に対するC. jacchusマーモセットの感受性を実証する。
種々のプロトコルを使用して、7匹の成体マーモセットをHHV6にインビボで感染させた(以下の表3に要約した):(1)HHV6−AまたはHHV6−Bによりエキソビボで感染させた(IFAおよびPCRにより証明した)動物自身のPBMCを静脈内接種し、6〜8週間後に同一の生ウイルス改変体を含む細胞溶解物を静脈内注射する;(2)5週間の間隔で、MOLT3 HHV6−B感染培養物に由来するウイルス溶解物を2回静脈内注射する;そして(3)HHV6−Aに感染させたHSB2細胞(HHV6−A+HSB2)を1回接種し、3ヶ月後に感染細胞または非感染細胞のいずれかを注射する。
【0125】
(表3)
(HHV6改変体によるコモンマーモセットの感染)
【表3】

【0126】
これらの動物の各々について、最初の感染ではほとんど症状はなかった。しかし、動物を生HHV6−Aに再び曝露すると、2回目の接種の後に、急速に体重が減少して感覚欠損を伴う低緊張性麻痺を起こした。図4の動物番号190−94および550−99を参照のこと。
【0127】
接種の前と後との種々の時間において、一部の動物においてMRI画像化を実施した。陽性結果は以下を含んだ:脳幹神経節中の広範囲のT2強調された低信号の(hypointensity)領域およびT1強調された低信号の領域(190−94、図5);顕著な局所性、そして広範性脳萎縮の程度がより低い。萎縮は、側脳質および軟膜下空間を含む脳脊髄容積の増大から明白であり、脳の左側の海馬の灰白質、側頭葉および後頭葉の周辺の領域で広くみられた(U031−00、図6)。これらの結果の両方とも、ウイルスCNS感染の後遺症(sequellae)および特徴に対応しているようであった。著しい萎縮および脳室容積の増大(図6)が、2回のウイルス接種後に安楽死させた動物において観察され(U031−00、163日目)、顕著な急性脱髄病変を示すが、認識できる萎縮は示さないより早い時点で安楽死させた動物においては観察されない(190−94、68日目)ことは、注目すべきである。動物U031−00における結果は、重度の身体的障害または認知障害を伴うMSの特徴である「エキソバキュオ(ex vacuo)」脳萎縮を思い起こさせる程度が高く、最初の提示にかかわらず(遅発寛解型、二次進行型(secondary progressive)および一次進行型(primary progressive))、この疾患の自然の過程での一般的な結果である。ヒトMSでの広範性脳萎縮または局所性脳萎縮のこのMRIパターンは、新規の限局性MRI病変の出現にかかわらずに観察され、疾患の経過の早期に現れても後期に現れても、脳室周囲の白質および/または灰白質の破壊ならびに喪失を反映すると考えられる。脳萎縮は多くの場合、可逆性の神経炎症の後のMSの発症の段階(ここで、ニューロンまたは希突起神経膠細胞に対して不可逆的な損傷が起こる)を表す臨床補助的なマーカーとみなされる。
【0128】
上記の結果から、ヒトのHHV6感染が、この疾患の異質な範囲内において神経学者に周知であるより「良性」な形態とは対照的に、白質および/または灰白質の破壊に関連する傾向のMSの特定のサブタイプを生じさせ得ることが示唆される。Pittock et al., Ann Neurol 56:303-306 (2004)を参照のこと。さらに(または、あるいは)、動物190−94の脳幹神経節構造と動物U031−00の局所的な萎縮との関連から、現在のマーモセットモデルもまた、ヒトでの一般的なウイルスに対する曝露と、神経変性または他の疾患(例えば、慢性疲労症候群(CFS)、睡眠発作、パーキンソン病、アルツハイマー病、ピック病、または痴呆の他の形態、進行性核上性麻痺、舞踏病アテトーシス(choreoathatosis)、亜急性硬化性全脳炎、クロイツフェルト−ヤーコブ病(Jacob- Creutzfeld)、進行性多病巣性白質脳障害(progressive multifocal leukiencephalopathy)、焦点てんかんまたは全身てんかんの後期発症型の特定の形態、ラスムッセン脳炎、小脳萎縮、複合型脊髄硬化症、MELASおよびカダシル(Cadasil)病)の表現型の重症度との間の原因となる関係を研究するために価値があることも示唆される。
【0129】
複製するHHV6−Aの繰り返し注入を受けた動物において軽度の炎症の脈管周囲または軟膜下の浸潤を示す神経病理が、全ての動物について得られた。炎症は、脈管周囲の分布で最も顕著であり、二回目の接種のすぐ後に屠殺した一匹の動物(190−94)において明らかに認識できる脱髄と関係していた。これらの病変は慣用的な染色ではマーモセットEAEの病変と区別できず、MRIによってインビボで検出することもできる(図5)。HHV6ウイルスの存在を、動物190−94の炎症性浸潤の近辺において、免疫組織化学によって実証した。図7A〜7Bを参照のこと。対照的に、組織学的に正常なCNS組織においても、脾臓、リンパ節、および試験したいくつかの末梢組織においても、PCRまたは免疫組織化学のいずれでもHHV6を検出できなかった。これらのデータから、完全に進行したMS様の炎症性脱髄病変を有するCNS病理の出現は、ウイルスの持続性および/または複製を必要とし得ることが示唆される。HHV6−B溶解物もしくはHHV6−A+細胞の単回注射を使用した重大な臨床疾患または神経病理の誘発は、このプロトコルに供された動物(すなわち、番号125および367−94)においてこれまでのところ検出されなかった。
【0130】
(実施例3 ウイルス抗原に対する免疫反応性)
本実施例は、HHV6抗原に対するT細胞および抗体の反応をモニタリングするための方法論を開示する。
ウイルス抗原に対するT細胞および抗体の反応を連続的にモニタリングするための方法を開発した。コロニー中のマーモセットはHHV6に対してナイーブであり、接種の後に抗体反応性が生じることが予備的な証拠から示された(図8を参照のこと)。PBMCまたはリンパ器官で、顕著なT細胞反応性は検出されなかった。HHV6 DNAの存在を、ネステッドPCR方法論によって連続的にモニタリングした。HHV6改変体の公知の指向性と矛盾なく、感染動物の血液中でHHV6−AではなくHHV6−Bを検出した(図9を参照のこと)。
【0131】
重要なことに、HHV6感染細胞に対するはっきりとした血清(IgG抗体)反応性は、接種の後の週の間に明らかになることを観察し、FACS分析を使用して容易に検出した一方、製造業者の指示に従って使用した固体支持体Strain Z-29(Applied Biosciences, Foster City, California)上にコーティングした精製ウイルス溶解物を利用した標準的なELISA法、およびウイルス抽出物でコーティングしたプレートを使用した本発明者らの実験室からのデータから、これらの血清のいずれにおいてもIgG反応性は全く検出されなかった(表4)。
【0132】
(表4)
(感染後安楽死させるまでのベースラインおよび種々の時間において、HHV6−AおよびHHV6−Bに感染した動物はHHV6に対する血清IgG反応性がない(精製ウイルス抽出物でコーティングしたELISAウェルを使用))
【表4】

【0133】
動物番号(一次抗体として血清を添加)および静脈切開のデータ。ブランク、血清なし;ポジティブ、ELISAキットで提供されるポジティブコントロール;ネガティブ、ネガティブコントロール;PP1095、非常に強いHHV6反応性を示す原発性進行性(PP)MSを有する患者由来の血清。バックグラウンドを超える陽性サンプルは、灰色の色調でマークしている(左パネル)。ELISAプレートから光学密度(OD)を読み取る。血清の希釈は、1:20である(右パネル)。
【0134】
本明細書において研究される4動物の各々について、安楽死の日のサンプルは、太字でマークしている。図8での結果(HHV6に感染させたHSB2細胞に対して反応性のIgGについてのポジティブFACS染色)と動物190−94由来のデータ(IgGについてELISAで読み取ったネガティブOD)を比較した。
【0135】
IgGに加えて、血清IgMの反応性を全ての動物で研究した。IgM反応性は、初期の一次免疫反応を反映していると考えられ、可溶性IgMは、病原性である可能性もあるが、成熟した超変異高親和性IgG抗体の産生を導く記憶B細胞反応の発生の前にまず現れる一過性の低親和性抗体とみなされる。実に驚くべきことに、本発明者らは、一部の動物が、ELISAによって検出することができる激しいIgM反応を起こすことを見出した。これらの動物はHHV6Bに感染させた動物およびHHV6A感染サルの一部を含む(550−99および367−94)。際立って対照的なことには、最も重度の炎症性脱髄の神経病理学的な病変を示した動物190−94は、ELISAによって検出されるIgM反応を起こさなかった(データは示さず)。
【0136】
これらの結果は、特定の個体のマーモセット(190−94、全ての動物と同様にこのウイルスに対してナイーブ)をHHV6に新たに曝露すると、1種以上のウイルス抗原(タンパク質、糖タンパク質または脂質)上のコンフォメーションエピトープのみを認識する特定のIgGサブクラス(アイソタイプ)の抗体が産生され、従って、ELISAではなくFACSによってのみ検出することができることを示唆する。他のエピトープに対してELISAで検出可能なIgM反応がない場合に、これらのIgG抗体が生じる。従って、このパターンの抗体反応性は、動物190−94の神経病理学的知見によって示されるように、炎症性脱髄の発生と関連しているようである(図7〜8)。他方、より軽度のCNS疾患を有する全ての動物またはCNS疾患ではない全ての動物は、HHV6の改変体Aまたは改変体Bに感染していても感染していなくても、ELISAによって検出することができるHHV6抗原に対して、顕著で、かつ非常に持続性の高いIgM免疫反応を示す。
【0137】
FACS分析によって検出可能なIgM反応性と、エピトープ認識およびアイソタイプスイッチングに関する種々の抗体の全体の特徴付けとはまだ調査中である一方、これらの知見は、個体被験体におけるHHV6に対する抗体反応の性質および動的特徴は、より高度な霊長動物の種においてこのウイルスへの曝露の結果と重要性に大きく影響し得るか、またはこれを制御さえし得るということを実際に示唆する。具体的には、ゲノム、ポストゲノム、転写後および/もしくは環境の影響または適切な制御反応(例えば、特異的な抗体中和)を起こさない任意のこれらの組み合わせのもとで、CNSにおいてウイルス持続性に関連する疾患および/または他の器官の疾患は、他の動物においては抑制される一方で感受性の高い動物において発症が許容されるという仮説を立てることができる。CD46ウイルスレセプターのオリゴマー化(Christiansen et al., J Virol 74:4672-4678 (2000))またはそのアイソフォーム(CD46−cyt1およびCD46 cyt2)の差次的発現が、CD4+T細胞およびCD8+T細胞の表現型と(Evlashev et al., J Gen Virol 82:2125-2129 (2001); Marie et al., Nat Immunol 3:659-666 (2002); Kemper et al., Nature 421 :388-92 (2003))、調節細胞と、NK細胞活性と(Grossman et al., Blood:Epub (2004))を制御することによって後天免疫の反応を調節するという最近の観察に従って、抗体アイソタイプスイッチングが、インビボでのHHV6の感染および複製の重要な調節機構であるということは、たとえ有望でなくとも極めて可能性が高い。狼瘡において、自己抗体由来のペプチド配列が、サイトカインの産生および免疫反応のTh表現型に影響し得ることが最近報告されている。Kalsi et al., Lupus 13:490-500 (2004)を参照のこと。さらに、そして本出願において特許請求されるものに対して重要なことには、HHV6または他のウイルスに対する宿主反応のインビトロ研究が、インビボでのウイルス感染の結果(例えば、クリアランスまたは持続性、および免疫系に対する影響)を予測する助けとなり得ることを想定することができる。Ning et al., J Med Virol 69:306-312 (2003)を参照のこと。従って、インビトロで観察される細胞反応および/もしくは抗体反応、またはインビボで既に存在するHHV6に対する抗体反応の特徴付けは、小児期の後半または成人期に入る前に個々の被験体がMSまたは他の自己免疫疾患を発症する傾向およびリスクを予測することに関して、価値のあるバイオマーカーとなり得る。
【0138】
これらの観察は、臨床的神経学およびMSまたは慢性疲労症候群に関して完全に新規であり、特に特徴的である。なぜならば、現在までの全ての研究は、ELISA方法のみを利用して、ヒトにおいてHHV6に対するIgG抗体またはIgM抗体のいずれかを検出するからである。
【0139】
(実施例5 インビボでのCNSミエリン抗原に対する反応性)
本実施例は、HHV6によるインビボ感染が内因性ミエリンペプチドと相同であるウイルスペプチドの免疫系による認識を誘導することを開示する。
HHV6によるウイルス感染は、分子模倣をもたらす。分子模倣とは、宿主免疫系によって、免疫攻撃を誘発するミエリンタンパク質ペプチドに似ているウイルスペプチドが認識される現象である(Fujinami et al., Science 230:1043-1045 (1985);およびOldstone, Faseb Journal 12:1255-1265 (1998))。MBPの免疫優勢ペプチドに対するこのような相同性は、最近、HHV6 U24タンパク質において記載された。Tejada-Simon et al., Ann Neurol 53:189-197 (2003)。
【0140】
これらのデータから、HHV6−Aを接種した動物でT細胞模倣が起こり、臨床的徴候および神経病理を示した動物は、MOG(細胞外ドメイン、aa1〜125)、MGO由来ペプチド(重複する20個のアミノ酸ペプチドの混合物)に対する顕著なT細胞反応を起こし、そしてMBPに対する弱いT細胞反応を起こすことが示唆される。図10Aおよび図10Bを参照のこと。マーモセットEAEで生じる典型的な体液反応とは対照的に、ミエリンタンパク質に対する顕著な抗体(IgG)反応は検出されなかった。ミエリンタンパク質とは対照的に、ウイルス溶解物に対する顕著なT細胞反応性は、PBMCとリンパ器官のいずれにおいても検出されなかった。
【0141】
ひとまとめにして考えると、これらのデータは以下を実証する:(1)飼育繁殖された成体C. jacchusマーモセットは、HHV6−Aに対してナイーブであり、血行性経路を介してこのウイルスに感染し得た。HHV6に対する抗体反応は、感染の後に起こる;(2)HHV6−Aによる反復感染は、MSと似た神経学的欠損および病理を有する炎症性CNS脱髄の形態を生じた;そして(3)MSは、ミエリン抗原に対するT細胞反応性の新規の出現と関連し、CNS病変でのウイルスの持続性が必要とされた。
【0142】
(実施例6 EAEに対するウイルス感染の効果)
ヒト自己免疫における病原体曝露の周知の効果と同様に、EAEを発症する傾向にある実験動物の感染は、疾患を悪化させる。Eralinna et al., J Neuroimmunol 55:81-90 (1994); Lieber et al., J Neuroimmunol 46:217-223 (1993); Massanari, Clin Immunol Immunopathol 19:457-462 (1981);およびMokhtarian et al., J Immunol 138:3264-3268 (1987)。ミエリンの脳炎誘発性エピトープに対する感受性を与えるTCR導入遺伝子を発現するマウスは、病原体がない環境下で飼育した場合、自発的疾患または重症疾患を発症しない。Goverman et al., Cell. 72:551-560 (1993)。従って、模倣を誘発し疾患を引き起こす際のHHV6の役割に加えて、これらのウイルスは、MSの疾患の表現型発現を調節する可能性を有する。同様に、さらなる実験証拠から、成体野生型C57/B16マウスを麻疹ウイルスまたはそのタンパク質のいずれかに曝露すると、MOGaa35〜55(げっ歯動物のMOGの免疫優勢エピトープ)で誘導したEAEの症状がさらに悪化することが示された(表5および図11)。
【0143】
(表5)
【表5】

【0144】
(実施例7 HHV6への曝露によるC. jacchusマーモセットでのMS様疾病の生成)
本実施例は、以下を決定するための方法論を開示する:(1)HHV6への単回曝露または反復曝露が疾患発現のために必要かどうか;(2)どのHHV6改変体がCNS自己免疫脱髄を生成するか;そして(3)何が関連疾患の過程か。
【0145】
各々8匹の動物からなる2つの群に、それら自身の同種の感染PBMCを静脈内注射することによって、最初にHHV6−AまたはHHV6−Bのいずいれかで感染させる。新たに単離したPBMCを2.5μg/mlの植物性血球凝集素(PHA)で刺激し、図3に記載されるトランスウェル系において、それぞれの感染性細胞株の存在下で共培養する。各改変体に由来する主要なカプシドタンパク質遺伝子DNAおよび共通の核抗原p41を検出する免疫蛍光(IFA)を増幅するための特異的なプライマーを使用するネステッドPCRによって、3〜7日後に、感染の成功を評価する。Soldan et al., Nature Medicine 3:1394-1397 (1997)およびSecchiero et al., J Clin Microbiol 33:2124-2130 (1995)。
【0146】
完全に洗浄した後、5〜10×106個の感染PBMCを各ドナーの静脈内に再注射し、疾患の臨床マーカーおよび臨床補助マーカーについて、120日間動物をモニタリングする。この期間の終わりに明らかな疾患が観察されない場合、次に動物に、適切なウイルス溶解物の二回目の注射をし、60日間までモニタリングする。ウイルス複製が誘導する細胞毒性ではなく純粋な分子模倣がCNS病理の一因となるのかどうかを調査するために、6匹の動物からなる第3の群に、同様に、ウイルスのUV不活化の後に同種のHHV6−A感染PBMCの二回の接種をする。
【0147】
動物がウイルスタンパク質に対する免疫反応性の証拠を示す時期に依存して、後半の実験は、不活化ウイルスの3回以上の接種に広げることができる。非特異的な因子を制御するために、さらに6匹の動物に同種のCMV感染PBMCまたはEBV感染PBMCを注射する。Ablashi et al., Biomedicine 29:7-10 (1978)。この方法論は、CNS脱髄疾患を生成するための曝露条件を規定し、2種のHHV6改変体にそれぞれ関連する異なる疾患表現型(例えば、急性型、慢性再発型および進行型)を同定する。この方法論は、疾患の発生および経過の初期の観察の結果に依存して調整することができる(例えば、複数接種)。
【0148】
感染プロトコルについて目隠しされた観察者によって、疾患の臨床的徴候について、動物を毎日モニタリングする。CNS炎症(CSF細胞増加症)の検出(Genain et al., J. Clin. Invest. 94:1339-1345 (1994))およびインビトロ調査のために、2週間ごとに血液とCSFとを収集する。明らかな臨床的徴候がはっきりしない事象において、C. jacchusでの連続的なMRI画像化を使用することができる。
【0149】
動物のうちの半分を疾患の急性段階(すなわち、発症から7日以内)で犠牲にし、これらのプロトコルが慢性疾患を誘導し得るか否かを確認するために、各群の残りの動物をさらに60日間観察する。深いペントバルビタール麻酔のもとで、この期間の終わりに全ての動物を全採血によって犠牲にし、その後すぐにPBSで心臓内灌流を行い、次いで下行大動脈をクランピングしながら固定する。このことによって免疫学的機能の細胞アッセイのために処理され得る脊髄の胸部分および腰部分、ならびにより低位置の身体のリンパ節および脾臓を保存する。
【0150】
視神経を含む脳脊髄軸全体を収集して複数の標本を得、固定して保存するか、または2mm切片に凍結する。慣用的な組織学、ならびに薄いエポキシ包埋切片、電子顕微鏡、および免疫組織化学によるさらなる分析のために、サンプルを処理する。
【0151】
(実施例8 HHV6に感染したC. jacchusマーモセットモデル系におけるCNS自己免疫の発症についてのインビボ機構の同定および特徴付け)
本明細書において提示されるデータ(前出)は、以下を実証した:(1)ミエリン成分に対する反応性の模倣型は、疾患の臨床的徴候および/または神経病理学的徴候を有する動物において発症した;(2)急性感染から時間を隔てたウイルス複製は、CNS破壊が起こるために必要とされた;そして(3)この病理を生じるためには2段階の感染が必要とされる可能性がある。
【0152】
連続的なPBMCサンプル、ならびに安楽死させたときの脾臓細胞およびリンパ節細胞におけるミエリン抗原(MBP、MOG、PLP、および20マーペプチド)およびウイルス溶解物に対して、T細胞増殖反応を検出することができる。FACS分析およびHHV6感染細胞株のIFAによって、血清およびCSFの抗体反応性(IgGおよびIgM)をまた試験することもできる。存在する場合には、これらの反応(例えば、Th1またはTh2)の性質は、マーモセットサイトカインのRT/PCRおよびELISAによって分析することができる。Genain et al., Immunol. Reviews 183:159-172 (2001)およびGenain et al., Science 274:2054-2057 (1996)を参照のこと。
【0153】
T細胞反応性の原因となる細胞型の同定は、ブロッキング抗体(CD4+、CD8+)を用いて行うことができる。ブロッキング抗体の存在下および非存在下で増殖反応を測定し、その反応がMHCクラスII分子およびクラスI分子によって制限されるかどうかを確認する。
【0154】
本明細書の上記に記載のように、安楽死の後にPCRおよび免疫組織化学(IHC)によって、PBMC、血清およびCFSの連続的なサンプル、ならびにCNSおよびコントロール組織において、ウイルス複製を試験することができる。Soldan et al., Nature Medicine 3:1394-1397 (1997)およびSecchiero et al., J Clin Microbiol 33:2124-2130 (1995)。実験室においてHHV6の改変体Aおよび改変体Bを増殖させるために使用する未感染のHSB2株およびMOLT3株と器官抽出物とを共培養することによって、ウイルス回収のアッセイが考えられる。
【0155】
病変の特徴付けを、形態学的研究および免疫組織化学(IHC)によって行う。炎症性浸潤の細胞の性質(T細胞[CD3+細胞]、CD4+細胞、CD8+細胞、B細胞[CD20];形質細胞(plasmocyte)[CD38];マクロファージ[HAM56、CD68]、神経膠星状細胞[GFAP])、およびサイトカインを、RT/PCRおよびIHCによって試験した(Th1:IL−2、TNFおよびIFN−γ;Th2:IL−4、IL−10、TGF−β)。MBP、PLP、MAGおよびMOGに対する抗体、抗リン酸化神経フィラメント抗体ならびにアポトーシスのマーカーを使用して、希突起神経膠細胞および軸策の病理を評価する。Lucchinetti et al., Ann. Neurol. 47:707- 717 (2000)およびTrapp et al., J. Neuroimmunol. 98:49-56 (1999)。希突起神経膠細胞またはニューロンが死滅する証拠が存在する場合、初代培養物の感染動物由来のリンパ球、およびミエリンタンパク質でトランスフェクトしたか、またはHHV6に感染したかのいずれかの細胞株の細胞毒性を試験するためのプロトコルを開発する。
【0156】
感染動物のCNSおよび他の器官のCD46発現レベル、ならびにこれらのそれぞれのコントロールをモニタリングする。循環する可溶性CD46のレベルは、MSの攻撃と相関する。Soldan et al., Ann Neurol 50:486-493 (2001)。マーモセットCD46、組換えヒトCD46、およびCD46をトランスフェクトした細胞株を認識するモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体のパネルとコントロールとを使用して、この分子を疾患活性のマーカーとして使用することができるかどうかを調査する。
【0157】
CNS病理を発症するHHV6−感染動物は、ウイルスに対して強力なT細胞反応を起こさず、このことから、これらの動物は、ウイルス感染を除くことができないことが示唆される。MSにおける免疫調節不全は、正常個体の自己免疫を抑制する調節機構の欠陥と主に関連し得(Antel et al., J Neuroimmunol 100:181-189 (1999))、HHV6クリアランスがMSにおいて不完全である可能性がある。Tejada-Simon et al., J Virol 76:6147-6154 (2002)。T細胞反応に加えて、標準的なウイルス中和アッセイを使用してこの可能性を試験し、感染動物の血清およびCSFにおいてHHV6中和抗体を検出する。
【0158】
これらの分析の時間依存性を、臨床疾患の出現に関してモニタリングする。例えば、HHV6感染の後に、急性の単相が起こるかどうか、あるいは慢性疾患(再発型または進行型)を決定できるかどうか、そしてミエリン特異的免疫反応もしくはHHV6特異的免疫反応とこれらの事象との相関、および/またはウイルス複製を測定できるかどうか。従って、分子内エピトープおよび分子間エピトープの伸び(spreading)(MSの再発に関する機構として提案されているげっ歯動物EAEにおいて観察される現象)を検出することができる。Miller et al., Immunol. Today 15:356-361 (1994)およびTuohy et al., Immunological Reviews 164:93-100 (1998)。
【0159】
(実施例9 複製する生HHV6ウイルスへの曝露は、マーモセットにおいてEAEの経過および重症度に影響する)
CD46トランスジェニックC57/B16マウスのMOGaa35〜55が誘導するEAE感染の悪化を測定することができる。致死量以下の麻疹ウイルスでの感染は、成体野生型C57/B16マウスでEAEの重症度を悪化させる。ウイルスタンパク質による感作は、生麻疹ウイルスと同程度に有効であり得、このことから模倣機構の可能性が示唆される。成体cyt1およびcyt2のCD46トランスジェニックマウスのアジュバント中のMOGaa35〜55による免疫に対する感受性を決定することができる。免疫の前の末梢注射を介して、麻疹ウイルスまたは複製するHHV6の改変体Aおよび改変体Bのいずれかで、これらの動物を感染させることができる。EBVまたはUV不活化HHV6を使用して、コントロール実験を行うことができる。実験は、30〜45日間の期間で実施することができ、ウイルスをその後に注射することによって動物を再感染させる試みを含むことも可能である。
【0160】
臨床的エンドポイントおよび神経病理学的エンドポイントをマウス実験で使用することができる。マーモセットについて記載されるものと同様の分析は、CNS疾患の発生と観察される種々の表現型に依存して調整することが可能である。マウスの実験から、細胞毒性株および細胞毒性クローンを養子移植(adoptive transfer)することによって同種のレシピエントに病原性が与えられるかどうかを確認することができる。
これらのモデルは、マイクロアレイを使用したCNS遺伝子の発現プロファイリングのために使用され得る。この技術は、マウスの分野で容易に利用可能であり、マーモセット組織についてAgilent and Affymetrix human DNA microchipsで確認されている。
【0161】
(実施例10 ヒトCD46トランスジェニックマウスにおけるHHV6感染によって生成される疾患表現型を測定するためのアッセイ系)
マウスにおけるHHV6感染のさらなるモデルを使用して、疾患機構の総合的な理解および処置ストラテジーのスクリーニングのための総合的な理解が提供される。CD46の発現は、げっ歯動物種において制限されている。Miwa et al., Immunogenetics 48:363-371 (1998)。ヒトCD46導入遺伝子を発現するマウスが作製され、麻疹ウイルスに感染可能であることが示された。Kemper et al., Clin Exp Immunol 124:180-189 (2001); Evlashev et al., J Virol 74:1373-1382 (2000);およびOldstone et al., Cell 98:629-640 (1999)。ヒトCD46の二種のアイソフォームを発現するいくつかのマウス系統が作製された。これら2種のアイソフォームは、MOGペプチドaa35〜55によって誘導されるEAEに感受性が高いC57/B16バックグラウンドに対して、細胞質テールの配列が異なる(cyt1およびcyt2)。Lyons et al., European Journal of Immunology 29:3432-3439 (1999)。これら2種のアイソタイプによるシグナル伝達は、Th1またはTh2の選択に関して反対の様式で、先天免疫および後天免疫を区別して影響を及ぼす。Marie et al., Nat Immunol 3:659-666 (2002)およびLudford-Menting et al., J. Biol Chem 277:4477-4484 (2002)。HHV6改変体による増殖感染によってこれらの動物において誘導され得るCNS脱髄病理をアッセイすることができる。
【0162】
cyt1およびcyt2のCD46トランスジェニックマウスの両方において、各々10〜15匹の動物の研究群について研究を行う:(1)新生仔授乳期マウス(2〜3日齢)に、30μlのHHV6−A、HHV6−Bおよび麻疹ウイルス(コントロールとして)を直接頭蓋内注射することによって感染させる。麻疹ウイルスの公知の致死量に基づく力価実験もまた行う。
【0163】
感染PBMCを用いた成体動物での持続感染を頭蓋内注射によって比較する。HHV6−Aの効果を別々に分析し、マーモセットと同様に二回以上の接種に対する単回接種の効果を45〜60日の期間にわたって試験する。コントロール実験には、EBVおよびUV不活化HHV6ウイルスを使用する。
【0164】
(実施例11 多発性硬化症患者および非感染個体におけるHHV6に対する免疫反応)
多発性硬化症における免疫調節不全は、正常個体で自己免疫を抑制する調節機構における欠陥と主に関連する。Antel et al., J Neuroimmunol. 100:181-189 (1999)。MSにおけるHHV6クリアランスの不足分を標準的なウイルス中和アッセイを使用してアッセイし、最初のエピソードからなる症候群(clinically isolated syndrome)(CIS)、再発寛解型MS(RRMS)および二次性進行型MS(SPMS)と共に提示される、患者の血清およびCSFの中のHHV6中和抗体を検出する。Tejada-Simon et al., J Virol 76:6147-6154 (2002)。HHV6曝露の後に、感受性の高い被験体がMSまたは他の状態を発症しないことを、Tサプレッサー(Ts)細胞およびT調節(Treg)細胞の不足を特徴付けることによってさらに調査した。これらの細胞の一部は、細胞伝達経路からCD46のcyt1およびcyt2を介して助長される。
【0165】
(実施例12 HHV6によって誘導される神経膠細胞アポトーシスおよび慢性再発性中枢神経系自己免疫脱髄)
本実施例は、自己免疫に対する傾向および実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)に対する感受性について周知であるC. jacchusマーモセットが、HHV6−Aへの曝露の後に炎症性脱髄を発症することを示す。
コモンマーモセットは、ヒトレセプターと相同性の高いCD46分子を発現する。HHV6感染ヒトT細胞株(HSB2およびMOLT3)とのトランスウェル培養を用いて、マーモセットの末梢血単核細胞(PBMC)を、インビトロでHHV6の改変体Aおよび改変体Bの両方に感染させ得ることが見出された。
【0166】
種々のプロトコルを使用して、9匹の成体マーモセットをインビボでHHV6に感染させた。このプロトコルとしては、以下が挙げられる:1)インビトロでHHV6−AまたはHHV−6Bに感染させた(IFAおよびPCRで確認した)その動物自身のPBMCを静脈内注射し、6〜8週間後に同じ生ウイルスを含む細胞溶解物を静脈内注射する;2)MOLT3のHHV6−B感染培養物に由来するウイルス溶解物を、8週間隔で2回静脈内注射する;そして3)HHV6−Aに感染させたHSB2細胞を1回接種し、8〜12週間後に感染細胞または非感染細胞のいずれかを注射する。
【0167】
マーモセットの最初の感染は、ほとんど症候がないことが見出された。生HHV6−Aウイルスに繰り返し曝露したマーモセット(190−94、550−99、U031−00、およびU076−01)において、体重低下と感覚欠損を伴う低緊張性麻痺が観察された。これらのマーモセットは、雄と雌のどちらも含み、成体齢(1歳〜9歳)であった。
【0168】
生HHV6−Aウイルスを2回受けたマーモセットにおいて、炎症および脱髄を伴う脈管周囲の浸潤に対応する非常に強度の高いT2強調病変(Hyper-intense T2-weighted lesion)が観察された。図12は、各段階での特徴的な神経病理学的特徴を有する再発型マーモセットEAEの例を示す。これらの病変は、図13Aおよび図13Bに示すように、慣用的な組織学的染色ではマーモセットEAEの病変と区別できなかった。図13Aは、第4脳室に隣接するマーモセットの脳幹での非常に強度の高いT2病変を示す。図13Bは、同じ動物での脱髄性炎症性浸潤を示す(LFB/PAS)。
【0169】
HHV6の存在は、図7Aおよび図7Bにおいて示すように、炎症性浸潤における免疫組織化学によって実証することができる。早期核抗原(early nuclear antigen)p41/p38についての染色は、希突起神経膠細胞の形態を有する細胞において、病変内でのウイルスの持続性/複製を実証する。従って、CNS病理の出現は、ウイルスの持続性および/または複製に必要とされ得る。図13Bに示すように、HHV6−A感染動物の病変内で多数のアポトーシス細胞を観察した(TUNEL)。
【0170】
ヒト希突起神経膠細胞腫(oligodendrocytoma)細胞株TC620を使用して、HHV6改変体の特異的なプロアポトーシス効果に関する仮説を試験した。図14Aおよび図14Bは、非感染細胞株(バックグラウンド、B)と比較して、HHV6−A感染細胞株(A)と共培養したTC620細胞におけるアポトーシスの増加(R4)および生細胞の減少(R2)を示す。図14Cは、HHV6−A感染細胞株およびHHV6−B感染細胞株と共にインキュベートした後に観察される希突起神経膠細胞アポトーシスの増加のパーセントを示す。アポトーシスはHHV6−A(HHV6−Bではない)の特異的な効果であることが見出された。
【0171】
HHV6−Aを接種した2匹のマーモセットおよびHHV6−Bを接種した1匹のマーモセット(コントロールとして)を、動物の再発経過およびミエリン抗原に対する反応性について長期間研究した。これらのマーモセットについての臨床的経過を図15Aに示す。連続的な血液サンプルを得て、植物性血球凝集素(PHA)、ミエリン/希突起神経膠細胞糖タンパク質(MOG)、およびミエリン塩基性タンパク質(MBP)に対する末梢T細胞免疫反応性(PBMC)を測定した。この結果を図15Bおよび15Cに示す。図15Bおよび図15Cに示すデータから、二回目のHHV6接種の後に、一過性の免疫抑制状態(PHAに対する反応性が低下する)が起こり、その後にMOGに対する反応性が現れることが示唆される。
【0172】
この実験証拠は、C. jacchusマーモセットがHHV6−AおよびHHV6−Bに対してナイーブであり、これらのウイルスに確実に感染し得ること、そしてHHV6−Aによる反復感染は、病理学的にMSと類似した脈管周囲の炎症性脱髄を伴う軽度の慢性再発性CNS疾患を生成することを示す。
【0173】
このモデルは、遍在的なヒトウイルスをMSを模倣する慢性疾患と原因として結びつける初めてのものであり、このような微生物と非近交種における複雑な神経−免疫反応との間のモデル相互作用を提供する。改変体Aおよび改変体Bの両方によるHHV6感染は、一過性の免疫抑制の原因となり得、両方の改変体がヒトにおいてと同様にマーモセットで持続および複製し得ることが見出された。しかし、HHV6−A感染のみが、MS様CNS炎症性脱髄を生じさせ、このことからこの改変体に対する優先的なCNS指向性の可能性および/または神経膠細胞に対するアポトーシス効果が示唆される。さらに、ミエリン抗原による模倣は、このモデルにおける炎症性CNS損傷に対して主要なものでも原因となる機構でもないようであることが見出された。それよりも、遅発型のT細胞自己反応性が、慢性疾患の悪影響(perpetration)において役割を果たす可能性がある。
【0174】
(実施例13 進行性多病巣性白質脳障害(PML)の症例においてナタリズマブが誘導する免疫抑制)
進行性多病巣性白質脳障害(PML)のいくつかの症例が、インターフェロンベータ1−a(IFN−β)に加えてナタリズマブを受けた再発寛解型多発性硬化症(MS)の患者の臨床試験の文脈において最近報告された。クローン病のためにナタリズマブで処置された別の患者もまた、致死形態のPMLを発症した。本実施例は、ナタリズマブおよびIFN−βで処理した後に進行性多病巣性白質脳障害(PML)を発症した患者において、リンパ球サブセットの免疫学的特性を対象としたものである。
【0175】
ナタリズマブは、T細胞および単球の表面上に発現する糖タンパク質a4b1インテグリン(極後期抗原(very late antigen)4、VLA−4)に対するヒト化モノクローナル抗体である。実験的には、ナタリズマブの投与は、血管内皮への細胞接着および血液脳関門を通過するリンパ球の遊出を妨げ、多発性硬化症(MS)での治療的用途について合理的なものである。抗接着分子アプローチは、炎症のマウスモデルにおいて、そしてヒトMSの試験において有効であることが証明されており、MRI活性および臨床的攻撃のほとんど全てをなくす。
【0176】
PMLは、重篤であり、多くの場合、遍在的なヒトウイルス(JCウイルス)に関連付けられている急速致死性白質脳症である。JCウイルスおよび関連するBKウイルスは、1950年代後半に数百万人のアメリカ人に投与されたポリオワクチンを汚染した親のサル空胞形成ウイルス(SV40)から進化したと考えられている。第一のこれらのポリオーマウイルス(パポバウイルス科)であるマウスポリオーマウイルスは、1953年にGrossによって単離され、固形腫瘍の発生を促進することが示された。SV40は、サービンの経口ポリオワクチンを製造するのに使用された腎臓細胞培養物において1960年にSweetおよびHilemanによって単離された。ホジキンリンパ腫によるPLMの症例と、免疫抑制された腎臓移植患者の症例とから、それぞれ、JCウイルスとBKウイルスとが1971年に単離された。これら2種のウイルスの単離の提供は、ヒト神経膠細胞を使用して行われ、このことは、これらのウイルスの優先的な指向性を強調するものである。ポリオーマウイルスは、小さなDNAウイルスであり(およそ5kbp)、脳に加えて腎臓細胞およびB細胞に特定の指向性を有する。SV40に対するレセプターは、MHCクラスI抗原であるようである。JCウイルスは、SV40とこのレセプターを共有していないようであるが、クラスリン依存性レセプターに媒介されるエンドサイトーシスピットおよびセロトニンレセプター5HT2ARを介して神経膠細胞および他の細胞型に侵入し得る。ヘルペスウイルス科と同様に、JCウイルスおよびBKウイルスは、ヒトにおいて感染の潜伏状態を維持するが、一生の間で時々再活性化される。約70〜100%の成人がJCウイルスおよびBKウイルスに対する抗体を有する。伝染の経路は知られておらず、動物貯蔵庫として知られている動物もいない。大部分の感染は無症候性であるが、一部の小児は、呼吸性症候群または膀胱炎を発症する場合がある。
【0177】
PMLは、通常、他の一般的なヒト病原体による日和見感染と同様に、免疫抑制された個体(例えば、AIDS、移植患者)において観察される。B細胞は、腎臓から脳にウイルスを輸送することによってPMLの病因に関与し、この疾患は、希突起神経膠細胞中のJCウイルスの複製によって媒介されると考えられている。
【0178】
ヘパリン化血液および凝固血清を以下から収集した:1)毎月、ナタリズマブおよびIFN−βで処置されている進行性PMLを有する患者(1人);2)同じ試験においてナタリズマブおよびIFN−βで処置されたが、PMLを発症していない患者(4人);3)ステロイドおよび血漿交換によって処置された視神経脊髄炎(NMO)を有する患者(3人);4)認可された疾患改変治療(インターフェロンベータ1−b、インターフェロンベータ1−a、またはコポリマー1)(MS−DMT)で処置された再発寛解型MSを有する患者(5人);および5)健康なコントロール個体(1人)。
【0179】
PMLを罹患した患者の年齢とできるだけ近い程度に全ての被験体をマッチさせた。製造業者の指示に従って、フローサイトメトリー(FACS)分析のために全血を染色した。以下の抗体クローンを使用した:CD3−FITC/PE/PerCp:SP34、CD4−FITC/PE:L200(BD Pharmingen)、CD8−FITC:SFCI21Thy2D3(Beckman Coulter)、CD19−PE:4G7、およびCD25−FITC:2A3(Becton-Dickinson)。MOG(細胞外ドメイン)に対する反応性について、血清でELISAを実施した。異なる群の間で血清の抗体反応性において差はないことが見出された。
【0180】
表6は、フローサイトメトリー研究の結果を示す。表4に示すとおり、全体のWBC数、リンパ球数、ならびにCD3+CD4+細胞、CD3+CD8+細胞、およびCD19+細胞の絶対数に差はなかった。しかし、ナタリズマブ+INF−βで処置した患者では、他の群と比較してCD3+CD8+細胞の数が低下したことを示す傾向であったことに注意されたい。図20A〜図20Hは、ナタリズマブ+IFN−βで処置した患者(左)、NMOで処置した患者(中央)、および従来のDMTで処置したMSを有する患者(右)におけるCD19+B細胞の相対的なパーセンテージおよびCD19+/CD3+数の比を示す。CD19+の絶対数は、MS−DMT群と比較してこれらの患者でも高く、CD19+細胞(成熟B細胞)の相対割合は有意に増加した(p<0.05)。結果として、表4および図20A〜図20Hに示すように、CD19+/CD3+細胞の絶対数の比を分析する場合、他のNMO患者およびMS患者と比較して、この群の間に有意な差があった。
【0181】
(表6)
【表6】

【0182】
T細胞の小さなサブセット(CD4+CD25+細胞)は、調節活性を有するT細胞(Treg)を含むと考えられ、これを試験した。これらのT細胞は、図16A〜Cに示すよに、コントロールサンプルにおいて変動するレベルのCD25を発現する。図16A〜Cは、健康なコントロール(図16A)、IFN−βのみで処置されたMS患者(図16B)およびナタリズマブ+IFN−βを受けたPMLを発症した患者(図16C)において、CD25に対する不均質な染色を示す(低〜高)(FITC)代表的なフローサイトメトリーのデータを示す。健康なコントロールとDMTの患者とを比較すると、ナタリズマブ+IFN−βで処置された一部の患者は、Treg集団の著しい減少を示した。この処置の合併症として、これらの患者およびPMLを発症した被験体においてTreg細胞は実質的に存在しなかった。図20Bは、ナタリズマブ+IFN−β(左)およびMS−DMT(右)で処置された患者、ならびにナタリズマブ+IFN−βでの処置の結果としてPMLを発症した被験体における、CD4+CD25+細胞の絶対数を示す。
【0183】
本実施例は、ナタリズマブ+IFN−βでの処置が、感受性の高い被験体のサブセットにおいて著しい免疫機能異常を誘導することを実証する。全リンパ球およびCD4+T細胞が比較的保存されているにもかかわらず、Treg集団の抑制が起こり、これらの患者のB細胞集団は、特にCD8+(サプレッサー)細胞の集団において増加する傾向があることが見出された。さらに、T調節活性が失われることは、これらの患者におけるB細胞の活性の不完全な制御および輸送、ならびに潜伏している通常は良性のウイルス(例えば、JCウイルス)の複製を妨げることができないことの原因であり得ることが見出された。PMLの症例のみに観察されたことであるが、この「機能的免疫不全」の状態はまた、他の遍在的病原体を再活性化する能力にも影響し得る。さらに、感染B細胞の血液脳関門を通過する輸送が、ナタリズマブによって阻害され得ないという可能性もある。
【0184】
本研究は、MSの任意の処置試験において強力かつ無差別の全身性免疫抑制という結果を理解することの重要性を強調する。MRIは、PMLのような合併症の早期の発症を検出するのに十分には感度が高くない可能性がある。なぜならば、MRIは、T2可視病変の基礎となる病理学に関する情報を提供しないからである。これらのデータは、T細胞サブセット(特に、CD19+およびCD4+CD25+)のような免疫学的マーカーは、ナタリズマブが誘導する合併症を発症するリスクを有する患者を検出するために有用であることを実証する。特に、このデータは、CD19/CD3比、CD4+CD25+集団、CD8+細胞数およびCD3+細胞数、ならびに他の免疫細胞(例えば、T調節細胞、記憶細胞、NK細胞が挙げられる)の数、およびそれぞれの比率を、MSおよび抗接着分子(例えば、ナタリズマブ)で処置される他の自己免疫疾患を有する患者のリスクをモニタリングするためのマーカーとして評価および使用することを支持する。
【0185】
本発明において記載されるアプローチは、免疫不全(構成型(constitutive)または後天型)、移植患者、ならびにAIDSおよび神経系AIDSを有する患者の集団において、あらゆる範囲のウイルス(CMV、HSVならびにHHV6、HHV7、およびHHV8の改変体のような他のヘルペスウイルスが挙げられるが、これらに限定されない)に関連するPMLおよび他の日和見感染のリスクをモニタリングするための方法において広い応用性を見出すことが認識される。
【図面の簡単な説明】
【0186】
【図1】図1A〜1Cは、Luxolファーストブルー/過ヨウ素酸Schiff(LFB/PAS)で染色した組織切片であり、C. jacchus EAEの神経病理を示す。図1Aは、外側脊髄および背側脊髄索における広い脈管周囲の浸潤を示す(急性EAE)。図1Bは、脳室周囲の白質における脳の脈管周囲の浸潤の低倍率視野である。図1Cは、顕著な脱髄を伴う単核細胞およびマクロファージの浸潤を明らかにする同じ病変の高倍率の拡大図である(LFB/PAS)。
【図2A】図2A〜2Cは、C. jacchus EAEとヒトMSとを比較する組織切片である。図2Aは、軸策(Ax)、マクロファージの浸潤(核(Mac)、右上)およびアストログリオーシス(gl)が保存された急性C. jacchus EAEの一次脱髄を示す。典型的なミエリン分解および小胞形成の形態学的変化が認識できる(*)。
【図2B】図2Bは、軸策(Ax)の回りのミエリン小胞形成の同じ特徴的パターンを示す急性ヒトMS病変(生検)を示す。マクロファージの核が右上に認識できる。
【図2C】図2Cは、再髄鞘形成を示す強度のグリオーシス(gl)および軸策(Ax)の回りの細く密集したミエリンを説明する慢性C. jacchus EAEを示す。比較のために、正常の髄鞘を有する軸策(太いミエリン)を右上の隅に示した(*)。
【図3】図3A〜図3Dは、HHV6によるマーモセットの末梢血単核細胞(PBMC)のインビトロ感染を示す。図3Aは、ネステッドPCRによって増幅されたHHV6 DNA(予測されるフラグメントサイズは258bp)を示すDNAゲルの写真である。レーン1は、感染10日後のHHV6−Aに感染させたマーモセットPBMC由来のDNAである。レーン2は、未感染のT細胞株HSB2由来のDNAである。レーン3およびレーン8は、HHV6−Aに感染させたHSB2由来のDNAである。レーン4は、未感染のT細胞株MOLT3由来のDNAである。レーン5およびレーン9は、HHV6−Bに感染させたMOLT3由来のDNAである。レーン6は、テンプレートのみである(コントロール)。レーン7は、HHV6−Bに感染させたマーモセットPBMC由来のDNAである。図3B〜Dは、HHV6核抗原p41に対して免疫蛍光(IFA)染色した細胞を示す。図3Bは、HHV6−A感染のマーモセットPBMCを示す。図3Cは、HHV6−A感染のHSB2細胞を示す。図3Dは、未感染のマーモセットPBMCを示す。
【図4】図4は、マーモセットEAEの評価尺度(grading scale)(0〜45)を使用して研究した7匹の動物における、臨床経過(神経学的徴候)を示す。Villoslada et al., J. Exp. Med. 191:1799-1806 (2000)。
【図5】図5は、安楽死させる直前の、インビボでの動物190−94(HHV6−Aに感染)の脳全体のMRIの冠状近接断面を示す。吻側から尾側の方向で、断面を1〜15までナンバリングする。断面3の左の線条(白矢印)、および断面12の第4脳室に隣接する不鮮明な異常な病変(黒矢印)における、低信号のT2強調シグナルに注意されたい。これは、図7Aで示す脱髄病変を表す。
【図6】図6は、安楽死させる直前の、インビボでの動物U031−00(HHV6−Aに感染)の脳全体のMRIの冠状近接断面を示す。吻側から尾側に、断面を1〜15までナンバリングする。顕著な溝および脳室(白矢印)に注意されたい。これは、側頭葉および後頭葉を含む脳の左側の脳脊髄と脳室の空間の拡大(黒矢印)に反映される著しい側性成立および非対称を伴う。局所的な萎縮(黒矢印)は、断面6、断面9および断面10で明らかであり、これは、図5で示す相当する断面と比較することができる。
【図7】図7Aは、動物190−94の脳幹における脱髄性炎症性浸潤を示す(Luxolファーストブルー)。図7Bは、早期核抗原p41/p38に対する染色を示し、病変内でのウイルスの持続性/複製を実証する。
【図8】図8は、動物190−94においてHHV6−A+ HSB2細胞に対する血清反応性を示すフローサイトメトリーデータのグラフである。左上のパネルは、アイソタイプコントロールに対する染色を示す。右上のパネルは、CD46に対する染色を示す。左中段のパネルは、コントロールの抗サルIgG抗体を示す。右中段のパネルは、ナイーブ血清を示す(0日目)。左下のパネルは、一回目の接種の後の血清を示す(35日目)。右下のパネルは、二回目の接種の後に安楽死されたときの血清を示す。白抜きの図形(open trace)は、抗サルIgG−FITCで得たネガティブシグナルを表す。
【図9】図9は、PBMC中のHHV6−B DNAのゲル電気泳動検出を示す。レーン1は、接種から7週間後のHHV6−B感染動物由来のDNAである。レーン2は、接種から7週間後のHHV6−A感染動物由来のDNAである。レーン3〜6は、ネガティブコントロールである。レーン7およびレーン8は、コントロールのHHV6−AおよびHHV6−Bに感染した系統由来のDNAである。
【図10】図10A〜図10Bは、動物190−94および動物125において、MBP、MOG(細胞外ドメイン)、および20マーの重複するMOGペプチドの混合物に対するT細胞増殖反応を示す図である。データを、安楽死させたときのPBMCから得る。
【図11】図11は、マウスEAEに対する麻疹ウイルス感作の影響を示す。
【図12】図12は、各段階において特徴的な神経病理学的特徴を有する再発型マーモセットEAEの例を示す。
【図13】図13A〜図13Bは、生HHV6−Aウイルスを2回受けた動物において炎症および脱髄を伴う脈管周囲の浸潤に対応する、高信号のT2強調病変の存在を示す。図13Aは、第4脳室に隣接する動物の脳幹における高信号のT2病変を示す。図13Bは、HHV6−A感染動物の脳切片の病変内で観察されるアポトーシス細胞を示す(TUNEL)。
【図14】図14A〜図14Cは、ヒト希突起神経膠細胞腫細胞株TC620に対するHHV6改変体の特異的なプロアポトーシス効果の効果を示す。図14および図14Bは、非感染細胞株(バックグラウンド、B)と比較して、HHV6−A感染細胞株(A)と共インキュベートしたTC620細胞におけるアポトーシスの増加(R4)および生細胞の減少(R2)を示す。図14Cは、HHV6−AおよびHHV6−Bの感染細胞株と共インキュベートした後に観察された希突起神経膠細胞のアポトーシスの増加のパーセントを示す。
【図15】図15Aは、HHV6−AおよびHHV6−Bを接種した動物についての臨床経過を示す。図15Bおよび図15Cは、その動物の連続的な血液サンプル中の植物性血球凝集素(PHA)、ミエリン/希突起神経膠細胞糖タンパク質(MOG)、およびミエリン塩基性タンパク質(MBP)に対する末梢T細胞免疫反応性(PBMC)の測定を示す。
【図16】図16A〜図16Cは、健康なコントロール(図16A)、IFN−β単独で処置されたMS患者(図16B)、およびナタリズマブ+IFN−βを受けるPMLを発症した患者(図16C)において、CD25に対する不均質な染色(低〜高)(FITC)を示す代表的なフローサイトメトリーデータを示す。
【図17】図17A〜図17Cは、動物190−94と同様に生HHV6−Aを2回接種した動物U076−03での神経病理学的結果を示す。図17Aは、皮質下白質の広範囲の炎症性浸潤を示す低倍率視野である。図17Bは、血管の回りの単核細胞およびマクロファージによる強度の浸潤(矢じり(arrowhead))、ならびにマーモセットEAEおよび急性MS病変に典型的な多数の領域でのミエリンの空胞形成および分解(矢印)を示す浸潤の詳細である(H&E;GM:灰白質;WM:白質)。図17Cは、顕著な脱髄およびマクロファージ活性を示す脈管周囲の炎症性浸潤のLuxolファーストブルー/PAS染色である。
【図18】図18は、病変を欠いた脈管周囲の白質(脳梁)において、希突起神経膠細胞の染色を示す免疫組織化学染色を示す。これにより、炎症性脱髄浸潤を欠く脳の領域においてウイルス複製が起こることが実証される。
【図19】図19Aは、細胞病変の部位での複製するHHV6ウイルス(p41)の染色を示し、図19Bは、複製するHHV6ウイルスの位置での希突起神経膠細胞の染色(CNPase)を示す。
【図20−1】図20A〜図20Hは、ナタリズマブ+IFN−βで処置された患者、NMOで処置された患者、および従来のDMTで処置されたMS患者において分析した全てのリンパ球サブセットを示す。丸:ナタリズマブ+アボネックス(INF−β);上向き三角:NMO(中程度);下向き三角:MS+FADによって認可された疾患改変治療(INF、コパクソン、まとめてDMTと呼ばれる)。図20Aは、CD19+/CD3+数の比を示す。図20Bは、活性化T調節細胞(CD4+CD25+)の絶対数を示す。図20Cは、全白血球数を示す。図20Dは、全リンパ球数を示す。
【図20−2】図20Eは、全ヘルパーT細胞(CD3+CD4+)比を示す。図20Fは、全CD8+サプレッサーT細胞(CD3+CD8+)を示す。図20Gは、全B細胞(CD19+)を示す。そして図20Hは、全リンパ球数と比較したCD19+B細胞数のパーセンテージを示す。
【図21】図21A〜図21Cは、ナタリズマブ(Tysabri)での処置後の5人の患者、ステロイドおよび血漿交換で処置された視神経脊髄炎の3人の患者(NMO)、および認可された疾患改変治療(インターフェロン−β 1−b、インターフェロン−β 1−a、またはコポリマー1)で処置された再発寛解型多発性硬化症(MS)の5人の患者における、全リンパ球(図21A)、CD19+細胞(図21B)、およびCD3+細胞を示す。
【図22】図22は、HHV6−B改変体を2回接種した動物50−01において、体重減少と血糖値の上昇が出現する時間経過を示す。HHV6−A改変体を接種した動物とは異なり、動物50−01は、いかなる顕著な神経学的欠損も生じなかった。これらの動物は、また、糖尿病と診断された時点の尿サンプルにおいて1,000mg/dlを超えており、急激に体重が減少した(〜27%初期体重、最初の接種の約210日後、矢印1)。*は、現在の実験を開始する2年前からの、慣用的な健康チェックとして行った血糖測定を示す。この値および約210日目の値は、正常な範囲内にある(Yarbrough et al., Lab Animal Science, (1984))。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多発性硬化症(MS)のための非ヒト動物モデル系であって、該非ヒト動物モデル系はサルおよびヘルペスウイルスを包含し、該サルが該ヘルペスウイルスに感染される、非ヒト動物モデル系。
【請求項2】
前記サルが、マーモセット、新世界ザルおよび旧世界ザルからなる群より選択され、該サルは、前記ヘルペスウイルスによる感染に対して感受性が高い、請求項1に記載の非ヒト動物モデル系。
【請求項3】
前記マーモセットがC.jacchusである、請求項2に記載の非ヒト動物モデル系。
【請求項4】
前記ヘルペスウイルスが、HHV6−AおよびHHV6−Bからなる群より選択される、請求項1に記載の非ヒト動物モデル系。
【請求項5】
前記サルの前記ヘルペスウイルスに対する単回曝露が、中枢神経系の炎症性疾患の重症度を誘発および/または増大させる、請求項1に記載の非ヒト動物モデル系。
【請求項6】
前記サルの前記ヘルペスウイルスに対する2回以上の曝露が、中枢神経系の炎症性疾患の重症度を誘発および/または増大させる、請求項1に記載の非ヒト動物モデル系。
【請求項7】
前記中枢神経系の炎症性疾患が、多発性硬化症である、請求項5または6に記載の非ヒト動物モデル系。
【請求項8】
前記サルの前記ヘルペスウイルス、他のヘルペスウイルスまたは他のウイルスに対する1回以上の曝露が、新生物随伴症候群および小脳変性、辺縁系脳炎、眼球クローヌス−ミオクローヌス、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)、PMLおよび他の広範性または病巣性の白質萎縮症(早発型および遅発型)、急性および慢性の多発性ニューロパシーおよび急性および慢性の多発神経根障害、急性播種性脳脊髄炎、ミオパシー、重症筋無力症、ギヤン−バレー症候群、ミラー−フィッシャー症候群、イートン−ランバート症候群、CNS脈管炎、サルコイドーシスおよび神経サルコイドーシス、ラスムッセン病、新生物随伴性感覚性ニューロパシー、CNSリンパ腫、高悪性度および低悪性度の希突起神経膠腫および高悪性度および低悪性度のグリア芽細胞腫、多形性グリア芽細胞腫、視神経膠腫および髄膜腫、脳室上衣細胞腫および髄芽細胞腫からなる群より選択される、中枢神経系もしくは末梢神経系および神経筋接合部の他の炎症性疾患または悪性疾患の重症度を誘発および/または増大させる、請求項1に記載の非ヒト動物モデル系。
【請求項9】
前記サルの前記ヘルペスウイルスまたは別のウイルスに対する1回以上の曝露が、炎症性要素を含む未知の原因の他の神経学的疾患の重症度を生じ、誘発および/または増大させ、該神経学的疾患が、睡眠発作、慢性疲労症候群、スティッフマン症候および小児の自閉症からなる群より選択される、請求項1に記載の非ヒト動物モデル系。
【請求項10】
前記サルの前記ヘルペスウイルスに対する1回以上の曝露が、糖尿病、関節炎、貧血、狼瘡、天疱瘡、甲状腺炎、糸球体腎炎もしくは間質性腎炎、心筋症、筋炎、皮膚筋炎、肝炎および潰瘍性大腸炎からなる群より選択される炎症性疾患および/または自己免疫疾患の重症度を誘発および/または増大させる、請求項1に記載の非ヒト動物モデル系。
【請求項11】
前記動物モデル系が、希突起神経膠細胞、神経膠星状細胞および脳細胞からなる群より選択される細胞型に対する前記ヘルペスウイルスの直接毒性を媒介する因子を同定するのに適切である、請求項1に記載の非ヒト動物モデル系。
【請求項12】
CD46をコードする導入遺伝子とヘルペスウイルスとを包含するトランスジェニックマウスモデル系であって、該マウスが、該ヘルペスウイルスにより感染される、トランスジェニックマウスモデル系。
【請求項13】
前記ヘルペスウイルスが、HHV6−AおよびHHV6−Bからなる群より選択される、請求項12に記載のトランスジェニックマウスモデル系。
【請求項14】
前記CD46をコードする導入遺伝子が、インビボで遍在的に発現される、請求項12に記載のトランスジェニックマウスモデル系。
【請求項15】
前記CD46をコードする導入遺伝子が、脳、脊髄および末梢神経からなる群より選択される組織においてインビボで発現される、請求項12に記載のトランスジェニックマウスモデル系。
【請求項16】
前記トランスジェニックマウスの前記ヘルペスウイルスに対する単回曝露が、中枢神経系の炎症性疾患の重症度を誘発および/または増大させる、請求項12に記載のトランスジェニックマウスモデル系。
【請求項17】
前記トランスジェニックマウスの前記ヘルペスウイルスに対する2回以上の曝露が、中枢神経系の炎症性疾患の重症度を誘発および/または増大させる、請求項12に記載のトランスジェニックマウスモデル系。
【請求項18】
前記中枢神経系の炎症性疾患が、多発性硬化症である、請求項16または17に記載のトランスジェニックマウスモデル系。
【請求項19】
前記マウスの前記ヘルペスウイルスに対する1回以上の曝露が、糖尿病、関節炎、貧血、狼瘡、天疱瘡、甲状腺炎、糸球体腎炎もしくは間質性腎炎、心筋症、筋炎、皮膚筋炎、肝炎および潰瘍性大腸炎からなる群より選択される炎症性疾患および/または自己免疫疾患の重症度を誘発および/または増大させる、請求項12に記載のトランスジェニックマウスモデル系。
【請求項20】
前記モデル系が、希突起神経膠細胞、神経膠星状細胞および脳細胞からなる群より選択される細胞型に対する前記ヘルペスウイルスの直接毒性を媒介する因子を同定するのに適切である、請求項12に記載のトランスジェニックマウスモデル系。
【請求項21】
前記因子が、CD4+T細胞およびCD8+T細胞からなる群より選択される、請求項20に記載のトランスジェニックマウスモデル系。
【請求項22】
脳萎縮または脊髄萎縮ならびに脳幹神経節および灰白質に影響する疾患における変性を研究するための非ヒト動物モデル系であって、該疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、レヴィー小体病、ラフォラ病、舞踏病およびアテトーシス、ハンティングトン病、および筋萎縮性側索硬化症(ルー・ゲーリグ病)からなる群より選択される、非ヒト動物モデル系。
【請求項23】
ウイルスと霊長動物免疫系との間の相互作用を研究するための非ヒト動物モデル系であって、該霊長動物は、ヒトおよび非ヒトからなる群より選択される、非ヒト動物モデル系。
【請求項24】
ウイルスのペアの間の相互作用を研究するための非ヒト動物モデル系であって、該ウイルスのペアは、(a)HHV6−AとHHV6−B;(b)HHV6−AとCMV;(c)HHV6−AとEBV;(d)HHV6−AとVZV;(e)HHV6−AとHHV8;(f)HHV6−AとHIV;(g)HHV6−AとHTLV;ならびに(h)HHV6−A、HHV6−B、CMV、EBV、VZVおよびHHV8のうちのいずれか1つとHIV、からなる群より選択される、非ヒト動物モデル系。
【請求項25】
疾患の重症度を低減するための候補化合物の能力を研究するための実験系であって、該実験系は、ヘルペスウイルスに感染した非ヒト動物を包含し、
該疾患は、脱髄疾患、神経変性疾患、および多発性硬化症からなる群より選択され、そして
該疾患の重症度の低減が、ウイルスの複製および/または転写の阻害を測定することによって決定される、実験系。
【請求項26】
サル、野生型マウス、EAEマウス、およびCD46トランスジェニックマウスからなる群より選択される哺乳動物を包含する実験系であって、該実験系は、可溶性CD46(補体レセプター)を治療剤として試験することを可能にする、実験系。
【請求項27】
(a)可溶性CD46、(b)CD46に結合する細胞、および(c)CD46に結合する人工送達系からなる群より選択されるCD46を含有する組成物であって、
該組成物は、多発性硬化症および/または脳もしくは他の標的器官の他の自己免疫媒介性炎症疾患および免疫媒介性炎症疾患からなる群より選択される疾患の重症度を低減するのに有効であり;
該可溶性CD46は、全長ポリペプチドまたは切断型改変体として、組換え形態で生成され;そして
該人工送達系は、リポソームまたは小胞のいずれかである、組成物。
【請求項28】
前記組成物が、神経変性疾患および/または腫瘍の処置に有効である、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
疾患の重症度を低減するワクチン治療の能力を研究するための実験系であって、該実験系は、ヘルペスウイルスに感染した動物を含み、該疾患は、自己免疫疾患および/または神経変性疾患である、実験系。
【請求項30】
前記疾患が多発性硬化症である、請求項29に記載の実験系。
【請求項31】
前記ヘルペスウイルスがHHV6である、請求項29に記載の実験系。
【請求項32】
患者において検出可能な疾患が発症する前に、自己免疫疾患および/または神経変性疾患を早期に検出するための非ヒト動物モデル系。
【請求項33】
前記患者が、小児またはティーンエージャーである、請求項32に記載の非ヒト動物モデル系。
【請求項34】
蛍光細胞分取分析または他の方法によって血清中のウイルス、例えば、これに限定されないがHHV6(すなわち、立体構造的であってタンパク質抗原に限定されない)に対する特定の抗体を検出するための1種以上の方法であって、検出タグが、細胞表面上の標的抗原または該抗原の天然のコンホメーションに似た他の提示における標的抗原に結合する抗体の存在を明らかにするために使用される、方法。
【請求項35】
HHV6の複製および活性と関連または同時に起こる活性な破壊プロセスが進行している被験体を同定する能力を上記のように評価する方法であって、該方法は、これらの被験体において早期処置を開始し、そしてMS、慢性疲労症候群および他の障害のような疾患の完全な発症を妨げるためのものである、方法。
【請求項36】
患者においてウイルス感染を検出するためのフローサイトメトリー方法であって、ウイルス特異的免疫グロブリン反応を検出する工程を包含し、該ウイルスは、HHV6、HHV7、HHV8、CMV、EBV、HSV、JC、BKおよびSV40からなる群より選択される、方法。
【請求項37】
抗体またはインビトロの細胞反応の測定が、多発性硬化症の発症についての個体のリスクを予測するためのバイオマーカーとして使用される、請求項34〜36に記載の方法。
【請求項38】
前記抗体の存在が、CNS障害を発症するリスクの予測である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記抗体の存在が、糖尿病、関節炎、貧血、狼瘡、天疱瘡、甲状腺炎、糸球体腎炎または間質性腎炎、心筋症、筋炎、皮膚筋炎、肝炎、および潰瘍性大腸炎からなる群より選択される自己免疫疾患を発症するリスクの予測である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
ヘルペスウイルスへの曝露の後の自己免疫疾患および/または神経変性疾患の発症の原因となる遺伝子を同定するための実験系であって、該実験系は、遺伝子発現アレイ、プロテオミクス、メタボノミクス、およびメタボロニクスからなる群より選択される技術を使用する、実験系。
【請求項41】
ヘルペスウイルスへの曝露の後に自己免疫疾患および/または神経変性疾患を引き起こし得る有害な自己抗体反応の発生の原因となる遺伝子を同定するための実験系であって、該実験系は、遺伝子発現アレイ、プロテオミクス、メタボノミクス、およびメタボロニクスからなる群より選択される技術を使用する、実験系。
【請求項42】
ヘルペスウイルスへの曝露の後に自己免疫疾患および/または神経変性疾患の発症を予防し得る有益な自己抗体反応(ウイルスに対する中和抗体)の発生の原因となる遺伝子を同定するための実験系であって、該実験系は、遺伝子発現アレイ、プロテオミクス、メタボノミクス、およびメタボロニクスからなる群より選択される技術を使用する、実験系。
【請求項43】
請求項1または12に記載のモデル系においてヘルペスウイルス媒介性毒性の重症度を低減するのに有効な化合物を同定するための方法であって、
(a)該モデル系に候補化合物を投与する工程、および
(b)該ヘルペスウイルス媒介性毒性の重症度が低減したかどうかを決定する工程
を包含する方法。
【請求項44】
請求項1に記載の有害な自己抗体の発生をアンタゴナイズする化合物または他の介入の治療価値を評価するための方法。
【請求項45】
請求項1に記載の有益な自己抗体の発生を援助する化合物または他の介入の治療価値を評価するための方法。
【請求項46】
有害な自己抗体をアンタゴナイズするか、または有益な抗体を援助するかのいずれかの方法で、細胞応答を介して免疫系を変更する化合物または介入の治療価値を評価するための、方法およびモデル系。
【請求項47】
前記ヘルペスウイルス媒介性毒性が、多発性硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、および小脳変性からなる群より選択される神経変性疾患と相関的である、請求項31に記載の方法。
【請求項48】
患者サンプルにおいてHHV−6媒介性細胞毒性を検出するための方法であって、該方法は、細胞死をアッセイする工程を包含し、該患者のサンプルは、CNSサンプル、血液サンプル、およびCSFサンプルからなる群より選択される、方法。
【請求項49】
免疫治療処置レジメンの後に、提示ウイルス関連性の発癌性合併症を発症する患者のリスクを評価するためのフローサイトメトリー方法であって、該方法は、
CD3+CD8+細胞の絶対数、CD19+の絶対数、CD19+細胞の相対的比率、およびCD19+/CD3+比を測定する工程、
を包含し、CD3+CD8+細胞の数の減少、CD19+の絶対数の増加、CD19+細胞の相対的比率の増加、およびCD19+/CD3+比の増加は、患者が、ウイルス関連性の発癌性合併症を示すことのリスクの増加を示す、方法。
【請求項50】
前記免疫治療処置レジメンが、ナタリズマブ、muromonab-CD3、アブシキシマブ、リツキシマブ、ダクリズマブ、バシリキシマブ、パリビズマブ、インフリキシマブ、トラスツズマブ、ゲムツズマブ、アレムツズマブ、イブリツモマブ、アダリムマブ、オマリズマブ、トシツモマブ−I131、エファリズマブ、セツキシマブ、およびベバシズマブからなる群より選択される抗体治療剤を前記患者に投与する工程を包含する、請求項49に記載のフローサイトメトリー方法。
【請求項51】
糖尿病のための非ヒト動物モデル系であって、該非ヒト動物モデル系はサルおよびヘルペスウイルスを包含し、該サルが該ヘルペスウイルスにより感染される、非ヒト動物モデル系。
【請求項52】
前記サルが、約200mg/dlと2,000mg/dlとの間の血液グルコースレベルを示す、請求項51に記載の非ヒト動物モデル系。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20−1】
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【図20−2】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2008−523785(P2008−523785A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536782(P2007−536782)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/036445
【国際公開番号】WO2006/044332
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(507121127)カーランテック,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】