説明

神経変性疾患のための潜在的薬物分子の同定における、アミロイドベータタンパク質チャネルその、構造および使用

本発明は、脂質膜中のヒトアミロイドベータタンパク質(AbP)の新奇のチャネル構造と、試験化合物、例えば薬、リガンド(天然または合成)、タンパク質、ペプチド、および有機小分子を、それらが膜AbPチャネルを結合したり阻害したりするような能力についてスクリーニングするための、迅速で、定量的で、特異的なアッセイに関する。本発明はさらに、アルツハイマー病や他の疾患を治療するための、治療上適切な化合物をスクリーニングし特定するステップに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2005年6月16日に出願されたUSSN60/692,048号に対する利益および優先権を主張する。USSN60/692,048号は、全ての目的に対して、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【0002】
連邦政府によって支援された研究および開発の下でなされた発明に対する権利に関する声明
本研究は、部分的に、National Institute of Healthによって資金援助された。米国合衆国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は、ハイスループットスクリーニングの分野に関する。再構成されたアミロイドベータタンパク質チャネルを含むスクリーニングシステムが開示される。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、プリオン脳症だけでなく、家族性英国型・デンマーク型認知症(FBD、FDD))、全身性疾患(例えば、II型糖尿病、軽鎖アミロイドーシス)、およびその他の疾患(例えば、嚢胞性線維症)を含むタンパク質コンフォメーション病は、タンパク質の三次元の(3D)立体構造を、自然の折り畳み構造(溶解性が多い)から非自然の折り畳み構造(不溶性が多い)へ変化させる、タンパク質のミスフォールディングに起因する(例えば、Temussiら(2003) Embo J., 22: 355−361; Dobson(2003) Nature, 426: 884−890; Selkoe(2003) Nature, 426: 900−904; Reveszら(2003) J. Neuropath. Exp. Neurol., 62: 885−898参照)。病態生理と変性を誘起する、そのようなミスフォールディングと3D立体構造の理解は、最も重要でなおかつ取り組みがいのある研究領域である(Temussiら(2003) Embo J., 22: 355−361)。
【0005】
これらのコンフォメーション病の一般的な定説の一つは、ミスフォールドしたタンパク質が、機能獲得をもたらし、細胞膜の組成を変化させ、細胞のイオン恒常性を不安定化させることにより細胞膜の病態生理学的細胞応答を誘起する、アミロイドと称される線維状構造をとることである。アミロイドの形成の基礎にある機構(アミロイドーシス)とその予防は、過去数十年間広く研究されてきた(例えば、Dobson(2003) Nature, 426: 884−890参照)。しかし、最近の研究は、線維状凝集は、単純に記憶機構でありおよび/または、さらに保護的でさえあること、アミロイドタンパク質の球状(線維状ではなく)立体構造は細胞変性と病態生理を誘起するのに十分であることを示している(Linら(2001) FASEB J., 15: 2433−2444; Zhuら(2000) FASEB J., 14: 1244−1254; Bhatiaら(2000) FASEB J., 14: 1233−1243; Walshら(2002) Nature, 416: 535−539; Gibsonら(2004) J. Neurochem., 88: 28 1−290; Bucciantiniら(2002) Nature, 416: 507−511; Koistinahoら(2001) Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 98: 14675−14680; Etcheberrigarayら(1994) Science, 264: 276−279)。
【0006】
数多くの研究で、球状ペプチド誘起性細胞機能障害の基礎をなす構造が研究されてきた(例えば、Temussiら(2003) Embo J., 22: 355−361; Pollardら(1995) Cell Mol. Neurobiol., 15: 513−526; Kourie and Henry(2002) Clin. Exp. Pharm. Physiol., 29: 741−753; Kayedら(2004) J. Biol. Chem., 279: 46363−46366参照)。これらの球状タンパク質の有害な影響は、続いて非特異的な膜の漏出が起こる重要な事象として、それらの膜タンパク質を介して(Kayedら(2004) J. Biol. Chem., 279: 46363−46366; Green et al. (2004) J. Mol. Biol., 342: 877−887)、または、最も起こりそうなものとしてはイオン恒常性を不安定化させるイオンチャネルを通る特異的なイオン輸送によって(例えば、 Kourie and Henry(2002) Clin. Exp. Pharm. Physiol., 29: 741−753; Linら(1999) Biochemistry, 38: 11189−11196; Rheeら(1998) J. Biol. Chem., 273: 13379−13382; Kawaharaら(2000) J. Biol. Chem., 275: 14077−14083; Arispeら(1993) Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 90: 10573−10577; Hirakuraら(2002) Amiroid 9: 13−2314参照)仲介されると提唱される(検討のために、例えば、Temussiら(2003) EMBO J., 22: 355−361; Pollardら(1995) Cell Mol. Neurobiol., 15: 513−526; Kourie and Shorthouse(2000) Am. J. Physiol., 278: C 1063−C 1087参照)。実際に、アミロイドペプチドは、人工の膜中だけでなく、天然の細胞原形質膜中でイオン伝導性を誘起する(Linら(2001) FASEB J., 15: 2433−2444; Etcheberrigarayら(1994) Science, 264: 276−279; Linら(1999) Biochemistry, 38: 11189−11196; Rheeら(1998) J. Biol. Chem., 273: 13379−13382; Kawaharaら(2000) J. Biol. Chem., 275: 14077−14083; Arispeら(1993) Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 90: 10573−10577; Hirakuraら(2002) Amiroid 9: 13−23)。しかし、膜中のこれらの球状ペプチドの三次元構造についてはほとんどわかっていない。Lashuelら(2002) Nature, 418: 291−291は最近、アミロイドの誘起原繊維に関する「ポア状」環構造を示した。しかし、これらの原線維は膜と関係していたことはなく(すなわち、膜複合体から分離、あるいは膜中で再構成されたことはない)、故にそれらが実際の膜ポアを形成するかどうかは知られていない。
【0007】
さらに、イオンポア形成を研究するための従来の方法は限られていた。伝統的には、単一チャネルイオン電流は、パッチクランプ技術を用いて研究されている(Neher and Sakmann(1976) Nature, 260: 799−802; Sakmann and Neher(1983) Single Channel Recording, Plenum New York)、この技術では、膜表面に接触し、イオン電流を測定するために、電解液で満たしたガラスピペットが使用される。近年、平面シリコン微細構造を用いる、マイクロチップを使ったパッチクランプに関心が集まっている。平面チップ装置内の開口部は、低い直列抵抗と、電気容量のおかげで低いバックグラウンド雑音を持ち(Fertigら(2002) Appl. Phys. Letts., 81: 4865−4867)、平面の設計は、AFMまたは蛍光顕微鏡を電気的記録と同時に用いて、現場測定を行えるようにする。しかし、これらのシステムは、イオンチャネルの分子分解能でのAFM画像化に有用であるには、可動性が高すぎる細胞全体を使用する。さらに、大きさがマイクロメートルのポアは、二重層中の再構成されたイオンチャネルの高分解能の画像化には、大きすぎる可能性がある。そのような研究の場合、定義済みのナノポアを持つ支持二重層システムは、より適した選択であろう。さらに、伝統的な技術は困難で、極微操作装置を用いて膜界面に配置される必要がある、正確に抜いたピペットを必要とする。
【0008】
シリコンウエハーを用いる複数のパッチクランプシステムが設計されテストされてきた。細胞システム全体の巨視的イオンチャネル活性が、イオンミルガラス基板を用いて研究されてきた(同文献)。同様に、卵母細胞がポリジメチルシロキサン(PDMS)基板にパッチクランプされた(Klemicら(2002) Sigworth Biosensors & Bioelectronics, 17: 597−604)。その他のマイクロチップを使ったパッチクランプ装置が、シリコンオキサイドで被覆された窒化膜(Fertigら(2000) Applied Physics Letters, 77: 1218−1220)、ポリイミドフィルム(Stettら(2003) Medical & Biological Engineering & Computing, 41: 233−240)、水晶基板(Fertigら(2002) Biophysical J., 82: 161A−161A)を使用して提唱されているが、シリコン装置は、単一チャネル伝導性を研究するのに、おそらく最も用途が広い選択肢である。伝統的なパッチピペットを模倣するために、シリコンオキサイドの極小ノズルが開発された(Lehnertら(2002) Appl. Phys. Letts., 81: 5063−5065)が、低い電気的シールのために、チャネル活性が認められなかった。巨視的チャネル活性は、シリコンウエハーを使った装置を用いて観察された(Pantojaら(2004) Biosensors & Bioelectronics, 20: 509−517)。シールの抵抗性を向上させるため、二重層付着のための疎水性表面を作成するために、シリコンポア上にテフロン(登録商標)を蒸着させた(Wilkら(2004) Appl. Phys. Letts., 85: 3307−3309)。静電結合を減らし、側方細胞捕捉分岐点を用いる、複数のパッチクランプシステムが設計されており、多重並列パッチ部位を可能にしている(Seoら(2004) Appl. Phys. Letts., 84: 1973−1975)。
【0009】
しかし、これらの技術は、それらの活性に関連するイオンチャネルの三次元の構造状態情報を提供しない。故に、イオンチャネルの構造的特徴を画像化し、同時にそれらの電気的活性を記録できる技術に対する需要が存在する。例えば、ヘミチャネルを通るカルシウムイオンの輸送は、AFM画像化を用いて細胞全体のレベルで実証されており(非特許文献1)、一方で開口したヘミチャネルと閉じたヘミチャネルの間の立体構造の相違は、脂質二重層中でヘミチャネルを再構成した後で、AFMを用いて画像化された(非特許文献2)。同様に、AFMは、タンパク質ミスフォールディング病に関連する、複数の種類のアミロイドイオンチャネルの三次元構造を研究するためにうまく利用されてきた(例えば、本書の実施例2、非特許文献3;非特許文献4参照)。しかし、三次元構造と単一イオンチャネルの活性の直接的な相関は、まだ実証されていない。
【非特許文献1】Quistら(2000) J. Cell. Biol., 148: 1063−1074
【非特許文献2】Thimm et al.(2005) J. Biol. Chem., 280: 10646−10654
【非特許文献3】Quistら(2005) Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 102: 10427−10432
【非特許文献4】Linら(2001) FASEB J., 15: 2433−2444
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
本発明は、脂質膜中の、ヒトアミロイドベータタンパク質(AbP)の新規のチャネル構造の発見と、試験化合物、例えば薬、リガンド(天然または合成)、タンパク質、ペプチド、および有機小分子を、それらが膜AbPチャネルを結合したり阻害したりするような能力についてスクリーニングするための、迅速で、定量的で、特異的なアッセイに関する。本発明はさらに、アルツハイマー病や他の疾患を治療するための、治療上適切な化合物をスクリーニングするステップと特定するステップに関する。
【0011】
故に、特定の実施形態では、本発明は、イオンチャネルの活動を変化させる分子をスクリーニングするための装置を提供する。装置は、典型的には固相支持体に取り付けられる脂質二重層を含み、脂質二重層は一つ以上のイオンチャネルタンパク質を含む。特定の実施形態では、固相支持体は一つ以上のナノポア(例えば、1、2、4、8、10、20、50、100、500、1000、またはそれ以上のナノポア)を含む。特定の実施形態では、ナノポアは直径約10nm〜約400 または 500nmの大きさで、好ましくは直径約20nm〜約200nmの大きさで、より好ましくは直径約50nm〜約100nmの大きさである。特定の実施形態では、ナノポアは、直径が約5nm、10nm、20nm、30nm、または50nm〜約500nm、400nm、300nm、250nm、200nm、150nm、100nm、90nm、80nm、または70nmである。様々な実施形態では、ナノポアは約400nm以下、好ましくは約300nm以下、より好ましくは約200nm以下の厚さを持つ面を通る。特定の実施形態では、ナノポアは膜および/またはシリコンウエハー中に形成され、一つ以上のナノポアがイオンチャネルと並ぶように、任意で配置される。装置は、脂質二重層の片面および/またはもう一方の面に液体レザバをさらに含んでもよい。特定の実施形態では、一つ以上のイオンチャネルタンパク質は、カルシウムチャネル、ナトリウムチャネル、カリウムチャネル、塩素チャネル、マグネシウムチャネルからなるグループから選択される。特定の実施形態では、一つ以上のイオンチャネルタンパク質は、アミロイドタンパク質(例えば、AbPチャネルタンパク質)を含む。装置は、化合物との接触に応答してチャネルの立体構造が変化したことを検出するための手段を、任意でさらに含んでもよい。そのような手段には、原子間力顕微鏡(AFM)プローブまたは走査型プローブ顕微鏡法(SPM)プローブが含まれるがこれに限定されない。様々な実施形態では、装置はイオンチャネル伝導率の測定法を提供するための手段を含んでもよい。様々な実施形態では、手段は、チャネルの伝導率とチャネルタンパク質の立体構造の測定法両方を提供する。様々な実施形態では、手段はチャネルの伝導率の測定法を提供し、AFMまたはSPMをさらに含む。様々な実施形態では、装置は、複数の異なるチャネル(例えば、少なくとも2、好ましくは少なくとも5、より好ましくは少なくとも10または20、最も好ましくは少なくとも50または100の異なるチャネル)を含む。特定の実施形態では、複数のチャネルはそれぞれ固相支持体中のポアと並んでいる。
【0012】
さらに提供されるのは、イオンチャネル(例えば、AbPチャネル)の伝導率または立体構造を変化させる能力について、試験物質をスクリーニングする方法である。方法は、典型的には、装置を上述のように試験物質と接触させるステップと、試験物質との接触に応答する、チャネルの立体構造および/または伝導率における変化を検出するステップを含む。特定の実施形態では、立体構造における変化はAFMまたはSPMを用いて測定される。様々な実施形態では伝導率における変化はAFMまたはSPM先端を電極として用いて測定される。特定の実施形態では、立体構造における変化と伝導率における変化は同時に測定される。
【0013】
本発明はまた、アミロイドタンパク質によって、ポアの立体構造または伝導性を変化させる能力について、試験物質をスクリーニングする方法を提供する。方法は、典型的には、一つ以上のアミロイドタンパク質を含むポアを含む脂質二重層を提供するステップと、脂質二重層を試験物質に接触させるステップと、ポアの立体構造および/または伝導性における変化を検出するステップを含み、立体構造および/または伝導性における変化は、試験物質がポアの立体構造または伝導性を変化させたことを示す。
【0014】
特定の実施形態では、本発明は組み込み型カーボンナノチューブカンチレバーと先端を持つAFMまたはSPMを提供する。本発明はまた、カーボンナノコーン、またはカーボンナノコーン先端を持つAFMまたはSPMを提供する。ナノコーンは、典型的には、先端に触媒が実質的に存在しない、高アスペクト比カーボンナノチューブ構造を含む。特定の実施形態では、ナノコーンは、約15度未満、好ましくは約10度未満、より好ましくは約5度未満の円錐角を持つ。特定の実施形態では、ナノコーンは、少なくとも約5:1、好ましくは少なくとも約10:1、より好ましくは少なくとも約12:1のアスペクト比(高さ:底面)を持つ。特定の実施形態では、ナノコーンは、約10nm未満、好ましくは約5nm未満、より好ましくは約3nm未満の先端半径を持つ。
【0015】
さらに提供されるのは、ナノコーンを作成する方法である。方法は、典型的には、電場制御CVD成長と組み合わせた、カーボンマスクのレジストフリー電子ビーム誘起蒸着(EBID)を含む。特定の実施形態では、方法はEBIDカーボンパターンををドライエッチングマスクとして利用する。
【0016】
定義
イオンチャネルは、細胞膜(例えば、脂質二重層)を通る荷電種(イオン)の通過を許容するための孔としてふるまう、細胞膜中のタンパク質である。特定の実施形態では、イオンチャネルは、特定の刺激に応答して開いたり閉じたりすることができ、故に閉鎖した細胞内コンパートメントおよび/または細胞全体の内外をイオンが通門するのを可能にする。イオンチャネルタンパク質は、それらが通すイオンの種類によって呼ばれてもよい。故に、例えば、カルシウムチャネルは、選択的に、または優先的にカルシウムイオン(Ca2+)の膜の通過を許容するイオンチャネルである。
【0017】
イオンチャネルタンパク質は、イオンチャネルの構成要素であるタンパク質である。
【0018】
用語「試験物質」は、本書で説明されるアッセイのうち一つ以上においてスクリーニングされる物質を意味する。物質は、実質的にはどのような化学物質であってもよい。それは単一の単離化合物として存在してもよいし、または化学ライブラリー(例えば、コンビナトリアルライブラリー)の一部であってもよい。特に好ましい実施形態では、試験物質は有機小分子である。
【0019】
用語「有機小分子」は、医薬品で通常用いられる有機分子に相当する大きさの分子を意味する。この用語は、生体高分子(例えば、タンパク質、核酸など)を含まない。好適な有機小分子は、最大約5000Da、より好ましくは最大2000Da、最も好ましくは 最大約1000Daの大きさである。
【0020】
用語「AbP」または「AβP」はヒトアミロイドベータタンパク質を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
詳細な説明
本発明は、特定のタンパク質ミスフォールディング、特に様々なチャネルタンパク質のミスフォールディング(例えば、イオンチャネルタンパク質)が様々な病態の病因にかかわっているということの発見に関する。アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、および同様のものを含むがこれに限定されない、タンパク質コンフォメーション病は、タンパク質ミスフォールディングに起因し、これはアミロイドと呼ばれる明確な線維状の特徴をもたらす。最近の研究では、アミロイドタンパク質の球状の(線維状でない)立体構造のみが、細胞病態生理を引き起こすのに十分であることが示されている。しかし、効果的な予防と治療をデザインする上で失われた関連性への鍵となる、これらの球状構造の三次元立体構造は、いまだ定義されていない。
【0022】
原子間力顕微鏡、円偏光二色性、ゲル電気泳動、電気生理学的記録用いることにより、我々は、アミロイド−β(1-40)、α−シヌクレイン、ABri、ADan、血清アミロイドA、アミリンを含む、アミロイド分子の配列が超分子の立体構造変化を経験することを示した。再構成された膜では、それらは形態学的に適合するイオンチャネル状構造を形成し、単一のイオンチャネル電流を導く。これらのイオンチャネルは、細胞のイオン恒常性を不安定にし、従って細胞の病態生理とアミロイド疾患における変性を引き起こす。
【0023】
故に、イオンチャネルと、特にアミロイドタンパク質を含む、イオンチャネルタンパク質は、ポア形成を調節する(例えば、阻害、または安定化/上方調節する)物質をスクリーニングする目的を提供し、そのような物質は、タンパク質構造病理の治療のための薬物療法の開発に有効なリード化合物を提供することが期待される。
【0024】
特定の実施形態では、アミロイドベータタンパク質(AbP)の線維形成は、AbPに起因する細胞毒性に必要とされず、生理学のレベルでは、線維状の形態を持たないAbPは細胞変性を引き起こすことがあることが発見された。さらに、この傷害は、これまで提唱されたように、酸化的傷害の機構またはタキキニン受容体の結合を介するものではない。
【0025】
我々は、43残基AbPが脂質膜にチャネル状構造を形成することを示した。我々は、二つの特定のチャネルの三次元形態、六量体および四量体チャネル(図1)を観察し、これは様々な生化学アッセイの結果とも一致する(図2)。
【0026】
培養細胞では、AbPイオンチャネルを介したCa2+の流入を、Zn2+を添加する、または細胞外Ca2+を除去することによって阻止すると、AbPに起因する毒性が阻害された。これらの発見と一致して、我々は、単層のリポソーム中に組み込まれた場合AbPイオンチャネルがCa2+流入を仲介し、Ca2+流入はZn2+と抗AbP抗体によって阻止されたことを示した。
【0027】
様々な実施形態では、本発明は、試験化合物、例えば薬、リガンド(天然または合成)、タンパク質、ペプチド、および有機小分子を、それらが一つ以上のアミロイドタンパク質(例えば、AbPチャネル)を含む膜イオンチャネルを結合したり阻害したり、あるいは代替的には、特定の場合では安定化させる能力についてスクリーニングするための、迅速で、定量的で、特異的なアッセイに関する。特定の実施形態では、AbPチャネルの調節は、細胞のカルシウム不均衡を防ぎ、これによりアルツハイマー病の症状を予防する、あるいは軽減する。
【0028】
本発明はまた、本発明のスクリーニングアッセイによって、膜AbPチャネルを阻害できるものとして特定された薬、リガンド、タンパク質、ペプチド、および有機小分子に関する。
【0029】
本発明は、一部分において、AbPが脂質膜内にチャネル状構造を形成するという我々の発見と実証に基づいている。我々は、チャネルの二つの三次元形態、六量体および四量体のチャネル(図1)を観察したが、これは生化学アッセイ(図2)とも一致する。
【0030】
アッセイのデザイン
様々な実施形態では、本発明は、組み込まれたイオンチャネルタンパク質(例えば、AbPチャネル)を持つリポソームまたは平面脂質二重層を、アルツハイマー病とその他の疾患を治療するための、治療上適切な分子をスクリーニングするための標的として用いるアッセイと装置を意図する。AbPチャネルタンパク質には、アミロイドβ前駆タンパク質(AbPP)のタンパク質分解産物、例えばAbP1−25、AbP1−39AbP1−40、AbP1−42、AbP1−43、および同様のものによる、全てのペプチドチャネルが含まれるが、これに限定されない。
【0031】
特定の実施形態では、一つ以上の試験物質は、脂質二重層内に存在するとき、一つ以上のイオンチャネルタンパク質、好ましくはアミロイドイオンチャネルタンパク質にそれらが結合する、好ましくは特異的に結合する能力について、スクリーニングされる。様々な実施形態では、アミロイドイオンチャネルタンパク質は、分離された二重層(例えば、固相支持体に取り付けられた二重層)へ、二重層を含むリポソームへ、二重層を含む卵母細胞(例えば、アフリカツメガエル卵母細胞)へ、細胞内および同様のものへ導入することができる。
【0032】
アミロイドチャネルタンパク質への試験物質の結合は、当業者に既知の多くの方法のどれを用いて検出してもよい。例えば、特定の実施形態では、試験物質は、検出可能な標識(例えば、蛍光標識、比色標識、放射性標識、スピン(スピン共鳴)標識、放射線不透性標識など)で標識される。アミロイドチャネルタンパク質を含む膜を、試験物質と接触され、典型的には洗浄し、その後アミロイドチャネルタンパク質と試験物質の関連を示す検出可能な標識について膜をスクリーニングする。特定の実施形態では、二次結合部分(例えば、標識を持つ部分)を結合させ、これにより結合された試験物質を標識するために使用するか、またはアミロイドチャネルタンパク質を結合するために使用し、この場合、二次物質状の標識と試験物質上の標識の関連は、試験物質のアミロイドチャネルタンパク質への結合を示す。後者の場合、特定の実施形態では、試験物質上の標識と二次物質上の標識は、一つの標識の励起が第二の標識からの放出につながり、これにより標識の関連を検出する効果的な手段を提供するように、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を起こす、選択された標識であってもよい。
【0033】
特定の実施形態では、アッセイは競合アッセイ形式である。そのようなアッセイでは、アミロイドチャネルタンパク質に結合することが知られる「競合」物質(例えば、抗体、有機小分子など)も利用される。競合物質を標識してもよく、アミロイドタンパク質を含む二重層が試験物質と接触する場合のそのような移動される物質の量は、試験物質の結合の測定法を提供する。特定の結合を検出する方法は、良く知られており、例えば様々な免疫アッセイにおいて一般的に用いられている。良く認識された多くの免疫学的結合アッセイ(例えば、米国特許4,366,241、4,376,110、4,517,288、4,837,168参照)のどれも、脂質二重層中のアミロイドチャネルタンパク質へ結合している試験物質を検出するのに適している。一般的な免疫アッセイの検討には、Asai(1993)Methods in Cell Biology Volume 37: Antibodies in Cell Biology, Academic Press, Inc. New York; Stites & Terr(1991) Basic and Clinical Immunology 7th Editionも参照されたい。
【0034】
特定の実施形態では、試験物質の結合を、リポソームへの試験物質の取り込みの存在下で細胞、卵母細胞、またはリポソームによるイオン(例えば、Ca2+)の取り込みの変化(例えば減少)を検出することによって検出できる。これを、例えば放射性同位元素(例えば、45Ca2+)、またはカルシウム感受性色素(例えば、アルセナゾIII(AIII)、Fura−2、Fluo−3、Fluo−4、カルシウムグリーンなど)を用いることで容易に検出できる。
【0035】
特定の実施形態では、試験物質によるアミロイドチャネルの調節を、細胞または卵母細胞中、またはリポソーム、脂質層、またはその他のex vivo系の中でのイオンのチャネル伝導性における変化をモニタリングすることで検出できる。イオンチャネル伝導率を検出する方法は当業者に良く知られている。伝統的には、単一のチャネルイオン電流が、パッチクランプ技術(例えば、Neher and Sakmann(1976) Nature, 260: 799−802、Sakmann and Neher(1983) Single Channel Recording, Plenum New Yorkを参照)を用いて研究されており、これは電解液で満たされたガラスピペットを、巻く表面に接触させてイオン電流を測定するのに用いる。マイクロチップを用いた様々なパッチクランプ方法も知られている(例えば、Fertigら(2002) Appl. Phys. Letts., 81: 4865−4867参照)。
【0036】
特定の実施形態では、本発明は、アミロイドタンパク質イオンチャネルを含む、脂質二重層によって隔たれた二つのチャンバーを含むex vivo系の使用を意図する。脂質二重層の全層にわたる伝導性は、連続的に監視される。例えばAbPチャネルの活動をブロックまたは調節する分子を分析するために、この装置を用いることができる。そのような装置の様々な特徴を下記で詳述する。
【0037】
特定の実施形態では、チャネルの伝導率および/または立体構造の変化を、走査型プローブ顕微鏡法(SPM)および/または、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定できる。SPMまたはAFMを用いてタンパク質立体構造変化を検出する方法が当業者に知られている(例えば、Miller and Engel(2001) RIKEN Rev., 36: 29−31参照)。
【0038】
チャネルタンパク質の立体構造変化をスクリーニングするための、マイクロチップを使ったSPM/AFM装置
特定の実施形態では、本発明は、試験物質を、それらがイオンチャネルタンパク質立体構造および/または伝導性を変化させる能力についてスクリーニングするための、マイクロチップを使った支持体二重層システムを意図する。様々な実施形態では、装置は、支持体に取り付けられた(配置された)脂質二重層を含む。支持体は、典型的には微細加工支持体(例えば、フォトリソグラフィー法および/または様々なイオンビームエッチング法を用いた微小構造)である。
【0039】
特定の実施形態では、支持体は一つ以上のナノポアを含む。ナノポアは、典型的には約10nm〜約400nm、好ましくは直径が約20nm〜約200nm、より好ましくは直径が約50〜約100nmの大きさである。特定の実施形態では、ナノポアは直径が約10nm、20nm、30nm、50nm、または70nm〜直径が約400nm、300nm、250nm、200nm、150nm、または100nmである。支持体は剛性支持体であってもよく、あるいは特定の実施形態では、膜支持体であってもよい。
【0040】
電子ビームリソグラフィーだけでなく、微細集束イオンビームを用いてナノポアを作成できる。そして、必要ならばポアの大きさを縮小するために、また絶縁表面を作成するために熱酸化物を用いることができる。
【0041】
境界明瞭なポアを持つチップを、ウィンドウ(膜)の上下両方の緩衝液の条件を制御できるような、両側チャンバープラスチックセル記録システム上に取り付けても良い。加えて、AFMまたはSPM先端を用いてイオンチャネルタンパク質立体構造を測定できるようにシステムを適応させることができる。AFMまたはSPM先端は電極として機能することもでき、ポアの上に浮遊する脂質二重層全体の膜ウィンドウ伝導性下で、また第二の電極(例えば、白金線)を用いて容易に測定できる。プローブは、電極として機能するナノチューブを任意でさらに含んでもよい。そのようなシステムの製作と使用を本書の実施例3に示す。本書に示される教示を用いると、そのようなシステムのその他の変化型を、当業者が容易に利用できるようになるであろう。
【0042】
カーボンナノチューブカンチレバーと先端が組み込まれた微細加工SPMプローブ
上記のように、特定の実施形態では、本発明は、好ましくは組み込み型カーボンナノチューブカンチレバーと先端を持つ微細加工SPMまたはAFMプローブを利用する。
【0043】
走査型プローブ顕微鏡(SPM)の分野が成長するにつれて、特別なカンチレバーと先端を備える新しいプローブに対する需要も、様々な応用の必要条件を満たすために高まっている。これらのプローブの大部分は、シリコンまたは窒化ケイ素のいずれかから作製され、同様の素材の先端を持つ。いくつかの応用に関しては、例えば電気的、磁気的などの測定を行うために先端は異なる材料でコーティングされる。非常に高分解能の画像を得ることが、科学コミュニティにとっては常に目標であった。シリコンは非常に脆弱であることから、鋭利な先端は硬い面上ではあまり長持ちしない。一方で、柔軟な試料、例えば生体細胞などは、硬質の先端によって傷つけられるリスクを有する。比較研究や信頼性のある研究を行うために、同じ先端を用いるデータの再現性が望ましい。既存のシリコン先端上へのナノチューブ先端の取り付けが、これらの問題に部分的な解決法をもたらした。しかし、時にはシリコン製および窒化ケイ素製のカンチレバーは非常にたやすく壊れ、結果的として重要な研究データの検証が不可能となる。非常に鋭利な先端を持つそのようなカンチレバーの材質や形状は、さらに開発されるべき分野である。
【0044】
特定の実施形態では、本発明は、カーボンナノチューブまたは同様の材質製のカンチレバーと先端の両方を任意で持ってもよい、SPM/AFMプローブを製造する方法を提供する。付属の図中に示すように、本発明で提示される製造の方法は、カーボンナノチューブ成長処理と併用してナノファブリケーション技術を利用する。これらのプローブの以下の特徴が、これらの性能においてこれらを独特なものにしている。これらは非常に低いバネ定数を持つ。これらは空気中で低いスクイーズ膜減衰効果を持ち。これらは液体中での画像化に適しており、鋭利な先端と長い耐用年数を持つ。
【0045】
図7は、組み込まれたカンチレバーと先端を持つ従来のSPMプローブの断面図を示す。プローブは、支持体、カンチレバー、先端の三つの部分を持つ。既知のプローブの性能と応用は、カンチレバーと先端によって決まる。基板は走査型プローブ顕微鏡におけるプローブアセンブリの取り扱いと取り付けをを容易にする。
【0046】
特定の実施形態では、本発明の方法は、厚く、垂直なカーボンナノチューブ(CNT)をシリコン表面から成長させ、それをカンチレバーとして用いるステップをを含む。CNTから作られた先端もまた、カンチレバーの終端にに取り付けることができる。次に、レーザー検出を介する表面の画像化を容易にするため、CNT反射体をCNTカンチレバーの終端付近に成長させてもよい。様々な実施形態では、シリコン基板とCNTカンチレバー成長の組立は、バッチ組立工程である。以下のセクションでは工程と組立装置のバリエーションを簡単に説明する。
【0047】
図8、パネルAは、図に記載される一連の標準微細加工処理ステップ後に形成される、シリコン基板の断面図を示す。工程中で形成される複数の基板を、図8、パネルBに示すようにカーボンナノチューブ9の成長後に分離できる。深い溝5とV字溝6で個々の基板が分離される。それらは約20umの厚さのシリコン膜によって保持されていることから、分離するにはそっと触れれば十分である。
【0048】
図8、パネルCは、CNT先端とCNT反射体を持つ、完成した装置の断面図を示す。レーザーを光源から検出器に跳ね返すため、反射体は金属層でコーティングされる。レーザー検出システムを持つプローブアセンブリの概略図を図9に示す。
【0049】
CNT成長を、様々な選択を作るように操作することができる。図10は、触媒8を持つシリコン基板上に成長させた垂直なCNT9aを示す。先端としてのCNTの一部分が、CNTカンチレバーの自由端に斜めに付加される(図11)。付加部分を、図12、パネルA〜Dに示すように、異なる応用のために、異なる形状や寸法で作成できる。
【0050】
CNTの正確な曲げを、CNTの成長の間に電場の方向を制御することによって達成できる。図13、パネルAは、CNTを斜めに成長させるための、触媒を持つシリコン基板用の取り付けブロックを示す。図13、パネルBとCは、そのようなシステムで斜めに成長させたCNTを示す。CNT成長角度を制御し、ジグザグ構造を作成するために、図14に示すように、スプリング先端をもたらす鋭い曲げを用いて操作できる。
【0051】
CNT先端の頂点は、平坦でも鋭利であってもよい(例えば、1〜2nm)。
【0052】
本書で説明する先端は、非常に低いバネ定数を持ち、例えばバイオセンサー用のミクロカンチレバーアレイや同様のものの製作に用いることができる。加えて、鋭い先端を持つCNTカンチレバーを、ポア伝導率または立体構造の変化を検出するのに用いてもよいし、生命科学や材料研究において高分解能の画像のために用いてもよい。傾いた先端はまた、側壁粗さの測定に有用である。CNT先端の平坦な頂点は、再現性と長い耐用年数を提供するであろう。
【0053】
V. イオンチャネルタンパク質立体構造および/または伝導率を調整する物質のハイスループットスクリーニング
様々な実施形態では、複数の異なる分子を同時にスクリーニングするために、上記のアッセイを平行配列で実施できる。故に、例えば、固相支持体上に取り付けるために、小さい単層のリポソームを架橋させ、マルチアレイシステム、例えば加工シリコンチップまたはマルチウェルシステムに埋め込むことができる。同様に、イオンチャネルが組み込まれた平面脂質二重層を、固相支持体、例えばマルチウェルプレートまたは加工チップに吸着させてもよい。そのような実施下では、複数の目的化合物を、例えばハイスループットスクリーニング(HTS)形式で、同時にテストできる。
【0054】
一つの好適な実施形態では、ハイスループットスクリーニング法は、所望の活性を持つ可能性がある、多数の化合物(候補化合物)を含むライブラリを提供するステップを含む。次に、所望の特徴的な活性を示す、それらのライブラリの構成要素(特定の化学種またはサブクラス)を特定するために、そのような「組み合わせ化学ライブラリ」を、本書で説明するように一つ以上のアッセイでスクリーニングする。そのようにして特定される化合物は、従来の「リード化合物」としての役割を果たし、またはそれら自身が所望の応用において用いられてもよい。
【0055】
A) イオンチャネル立体構造および/または伝導率を調節するための、組み合わせ化学ライブラリ
スクリーニングシステムで用いる試験物質の数と種類が増加する場合、イオンチャネル立体構造および/または伝導率を調節する物質をアッセイが特定する可能性が増加する。近年、線形組み合わせ化学ライブラリを、新たな化学物質の手がかりを生み出すのを支援するために用いることに注目が集まっている。組み合わせ化学ライブラリは、多数の化学的な「基礎的要素」、例えば試薬を組み合わせることにより、化学合成または生物学的合成のいずれかによって作製される多様な化学物質の一群である。例えば、線形組み合わせ化学ライブラリ、例えばポリペプチドライブラリは、アミノ酸と呼ばれる一連の化学的な基礎的要素を、既知の化合物長(すなわち、ポリペプチド化合物中のアミノ酸の数)になるようなあらゆる可能な方法を尽くして、組み合わせることによって作られる。化学的な基礎的要素をそのように組み合わせ混合することで何百万という化学物質を合成できる。例えば、100の可換性の化学的な基礎的要素を系統的に組み合わせ混合すると、1億の四量体化合物または100億の五量体化合物が理論的に合成されるのを、あるコメンテーターが観察している(Gallopら(1994) 37(9): 1233−1250)。
【0056】
組み合わせ化学ライブラリの準備とスクリーニングは、当業者に良く知られている。そのような組み合わせ化学ライブラリには、ペプチドライブラリ(例えば、米国特許第5,010,175, Furka(1991) Int. J. Pept. Prot. Res., 37: 487−493, Houghtonら(1991) Nature, 354: 84−88参照)が含まれるがこれに限定されない。ペプチド合成が、本発明とともに用いるように想定され意図される唯一の方法ということでは決してない。化学的に多様なライブラリを作成するためのその他の化学反応もまた使用できる。そのような化学反応には、以下が含まれるがこれに限定されない:ペプトイド(PCT公開番号WO 91/19735, 1991年12月26日)、コード化ペプチド(PCT公開番号WO 93/20242, 14 Oct. 1993)、ランダムバイオオリゴマー(PCT公開番号WO 92/00091, 1992年1月9日)、ベンゾジアゼピン(米国特許第5,288,514号)、ヒダントイン、ベンゾジアゼピン、ジペプチドなどのディバーソマー(Hobbs et al.,(1993) Proc. Nat. Acad. Sci. USA 90: 6909−6913)、ビニル性ポリペプチド(Hagiharaら(1992) J. Amer. Chem. Soc. 114: 6568)、ベータ−D−グルコース骨格を持つ非ペプチド性ペプチド模倣薬(Hirschmann et al.,(1992) J. Amer. Chem. Soc. 114: 9217−9218)、小化合物ライブラリの類似有機合成(Chenら(1994) J. Amer. Chem. Soc. 116: 2661)、オリゴカルバメート(Cho, et al.,(1993) Science 261:1303)、および/またはペプチジルホスホン酸(Campbell et al.,(1994) J. Org. Chem. 59: 658)。一般に、 Gordon et al.,(1994) J. Med. Chem. 37:1385、核酸ライブラリ(例えば、Strategene、Corp.参照)、ペプチド核酸ライブラリ(例えば、米国特許第5,539,083参照)、抗体ライブラリ(例えば、Vaughnら(1996) Nature Biotechnology, 14(3): 309−314参照)、PCT/US96/10287)、炭水化物ライブラリ(例えば、Liangら(1996) Science, 274: 1520−1522、米国特許第5,593,853号参照)、有機小分子ライブラリ(例えば、ベンゾジアゼピン、Baum(1993) C&EN, Jan 18, page 33、イソプレノイド、米国特許第5,569,588号、チアゾリジノンおよびメタチアザノン、米国特許第5,549,974号、ピロリジン、米国特許5,525,735号および5,519,134号、モルホリノ化合物、米国特許第5,506,337号、ベンゾジアゼピン、5,288,514などを参照)を参照されたい。
【0057】
組み合わせライブラリの準備のための装置は市販されている(例えば、357 MPS、390 MPS、Advanced Chem Tech、Louisville KY、Symphony、Rainin、Woburn、MA、433A Applied Biosystem、 Foster City、CA, 9050 Plus、Millipore、Bedford、MA参照)。
【0058】
多数の周知のロボットシステムも、液相化学用に開発されてきた。これらのシステムには、武田薬品工業株式会社(大阪、日本)が開発した自動合成装置などの自動ワークステーショや、化学者によって行われる手動の合成操作を模倣する、ロボットアームを利用する多くのロボットシステム(Zymate II, Zymark Corporation, Hopkinton, Mass.、Orca, Hewlett−Packard, Palo Alto、Calif.)が含まれる。上記の装置はいずれも、本発明と併用して用いるのに適している。本書で説明するように実行できるように、これらの装置に対して行う変更の種類と実行(もしあれば)、従来技術の業者には明らかであろう。加えて、数多くの組み合わせライブラリはそれ自身が市販されている(例えば、ComGenex, Princeton、N.J., Asinex, Moscow, Ru, Tripos, Inc.、St. Louis, MO、ChemStar, Ltd, Moscow, RU, 3D Pharmaceuticals, Exton, PA, Martek Biosciences、Columbia, MDなど参照)。
【0059】
B) イオンチャネル立体構造および/または伝導率を調節するための化学ライブラリのハイスループットアッセイ
本書で説明される、イオンチャネル立体構造および/または伝導率を調節する物質のためのアッセイのどれも、ハイスループットスクリーニングに適している。例えば結合アッセイはよく知られており、米国特許第5,559,410号はタンパク質結合のためのを開示し、一方で米国特許5,576,220号および5,541,061号はリガンド/抗体結合のスクリーニングのためのハイスループット法を開示する。
【0060】
さらに、本書で説明するマイクロチップを使った装置は、ハイスループットスクリーニングに非常に適している。そのようなアッセイと併用して試薬や同様のものを操作するためのロボットシステムは市販されている(例えば、Zymark Corp., Hopkinton, MA、Air Technical Industries, Mentor, OH、Beckman Instruments, Inc. Fullerton,CA、Precision Systems, Inc.、Natick, MAなど参照)。これらのシステムは、典型的には、全ての試料と試薬のピペッティング、液体分注、時間設定培養、アッセイに適した検出器中でのマイクロプレートの最終読み取りを含む、手順全体を自動化する。これらの設定可能なシステムは、ハイスループットと迅速な立ち上がりだけでなく、高度の柔軟性とカスタマイズ性を提供する。そのようなシステムの製造業者は、様々なハイスループットの詳細なプロトコルを提供する。故に、例えば、Zymark社は、遺伝子転写、リガンド結合、および同様のものの調節を検出するためのスクリーニングシステムを説明する、技術告示を提供する。
【0061】
その他のイオンチャネルタンパク質
本書で説明される装置は、イオンチャネルを形成するアミロイドタンパク質に関して示されるが、基本的に全てのイオンチャネルのチャネルの伝導性を増加、低下、またはブロックするような能力について、試験物質をスクリーニングするのに装置が適していることが理解されるであろう。イオンチャネルには、カルシウムチャネル、ナトリウムチャネル、カリウムチャネル、塩素チャネル、マグネシウムチャネル、および同様のものが含まれるがこれに限定されない。様々なカルシウム、ナトリウム、カリウム、塩素、マグネシウムチャネルのタンパク質成分が当業者に知られている。加えて、これらのチャネルとそのようなチャネルを含む特定のタンパク質の機能障害に起因する、病理学的状態も当業者に知られている。
【0062】
例えば、様々な事例的な塩素チャネルには、電位依存性塩素チャネル(CLC)が含まれるがこれに限定されず、これには、CLC−1、CLC−2、CLC−3、CLC−4、CLC−5、CLC−6、CLC−7、CLC−0、ClC−K/barttinチャネル(例えば、CLCN−KA、CLCN−KB)、細胞内塩素チャネルCLIC−1、CLIC−2、CLIC−3、CLIC−4、CLIC−5など、カルシウム依存性塩素チャネル(CLAC1、CLAC2、CLAC3など)、および同様のものが含まれるがこれに限定されない。機能不全の塩素チャネルに関連する病理には、先天性ミオトニー(CLC−1)、筋強直性ジストロフィー(DM1、DM2)、てんかん(CLC−2)、腎尿細管障害(CLC−5)、バーター症候群(CLC−KB)、嚢胞性線維症(上皮塩素チャネル)、大理石骨病などが含まれるがこれに限定されない。
【0063】
様々な事例的なナトリウムチャネルには、電位依存性Na+チャネル(例えば、SCN1、SCN1ASCN2A1、SCN2A2、SCN3A、SCN4A、SCN5A、SCN7A、SCN8A(PN4)、SCN9A(PN1)、SCN10A、SCN11A、SCN1B(β1)、SCN2B(β2)、SCN3B、SCN4B)、非電位依存性Na+チャネル(例えば、上皮ナトリウムチャネル、デジェネリンなど)、ナトリウム/水素交換(例えば、NAH1、NAH2、NAH3、NAH4、NAH5、SLC9A6、SLC9A7など)、SLC5A、SLC24、および同様のものが含まれるがこれに限定されない。機能不全のナトリウムチャネルに関連する病理には、高カリウム性周期性四肢麻痺、パラミオトニア、ミオトニー、筋無力症、3型QT延長症候群、進行性心伝導系障害(PCCD2:ルネーグル−レヴ症候群)、先天性非進行性心臓ブロック、特発性心室細動、先天性洞不全症候群(SCN5A)、高カリウム性周期性四肢麻痺、低カリウム性周期性四肢麻痺、先天性パラミオトニア、変動型ミオトニー、持続型ミオトニア、アセタゾールアミド反応性ミオトニー、悪性高体温症、筋無力症候群、多発性運動神経障害、急性運動神経軸索障害などが含まれるがこれに限定されない。
【0064】
様々な事例的なカルシウムチャネルには、電位依存性 Ca++チャネル(例えば、N−type、P−type、L−type、Q−type、R−type、P−typeなど)、リガンド依存性Ca++チャネル(例えば、Ca++輸送ATPase)、容量性Ca++エントリーチャネル、細胞内活性化チャネル、カルシウムセンサー、および同様のものが含まれるがこれに限定されない。機能不全のナトリウムチャネルに関連する病理には、低カリウム性周期性四肢麻痺(CACNL1A3 α1Sサブユニット)、悪性高体温症(CACNL1A3 α1S サブユニット)、合指症併発QT延長症候群(ティモシー症候群)、X染色体性先天性停在夜盲、家族性片麻痺性片頭痛、若年性ミオクローヌスてんかん、肉芽腫性ミオパシー、brodyミオパシー、ダリエホワイト病(毛包性角化症)などが含まれるがこれに限定されない。
【0065】
様々な事例的なカリウムチャネルには、電位依存性カリウムチャネル、内向き整流性のカリウムチャネル(例えば、(Kirチャネル、KCNKファミリー、KCNJファミリー、KCNHファミリー、KCNMファミリーなど)、遅延整流Kチャネル、Ca++感受性Kチャネル(例えば、BK、IK、SK)、TP感受性Kチャネル、Na活性化Kチャネル、および同様のものが含まれるがこれに限定されない。機能不全のカリウムチャネルに関連する病理には、心房細動、QT短縮症候群、一過性運動失調/ミオキミア症候群、ミオキミア&良性新生児てんかんなどが含まれるがこれに限定されない。
【0066】
前述のイオンチャネル、関連タンパク質、および病理は、事例的なものであることを目的としており、限定するものではない。その他のイオンチャネルとイオンチャネルタンパク質を、当業者は知るであろう。
【0067】
キット
特定の実施形態では、本発明は、本書で説明される様々な方法を実施するためのキットを提供する。キットは、例えば、本書で説明される分析装置を含んでもよい。様々な実施形態では、分析装置はマイクロチップを使った装置であり、市販されている読み取り装置と互換性がある形式で、任意に提供される。
【0068】
ミクロカンチレバー装置が貯留層を内蔵する場合には、貯留層は一つ以上の緩衝液、標識、および/または生物活性物質を必要ならば任意で含んでもよい。特定の実施形態では、生物活性物質またはその他の物質は、貯蔵寿命を伸ばすため、液体形状よりは乾燥形状で提供される。
【0069】
キットは、本書で説明されるアッセイの一つ以上を行うために、緩衝液、シリンジ、試料採取器具および/またはその他の試薬および/または装置を任意でさらに含んでもよい。
【0070】
キットを含む要素は、典型的には一つ以上の容器に入れて提供される。特定の好ましい実施形態では、容器は滅菌済みか、滅菌してもよいもの(例えば、施設の滅菌プロトコルに耐えうるもの)である。
【0071】
キットは、ユーザーにキットの装置の使用方法を教示する、指導資料とともに提供されてもよい。例えば、指導資料は、イオンチャネルを調節する物質をスクリーニングするように分析装置を使用する指示を提供できる。
【0072】
指導資料は典型的には文書または印刷物を含むが、資料はそのようなものに限定されない。そのような指示を保存でき、それらをエンドユーザーに伝達できる媒体ならどのようなもでも本発明が目的とするものである。そのような媒体には、電子記憶メディア(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光媒体(例えば、CD‐ROM)、および同様のものが含まれるがこれに限定されない。そのような媒体は、そのような指導資料を提供するインターネットサイトのアドレスを含んでもよい。
【実施例】
【0073】
以下の実施例は、請求の範囲に記載されている発明を示すために提供されるが、限定するものではない。
【0074】
実施例1
膜中のAbPチャネルを用いて再構成されたリポソームを用いると、AbPチャネルをブロックする化合物をスクリーニングできる。図3は、Zn2+と抗AbP抗体(3D6)が、40残基AbP1−40によって形成されたチャネルをブロックし、AbPチャネルを介する45CA2+のリポソームへの取り込みを阻害する実験を示す。図4は、42残基AbP1−42によって形成されたチャネルが抗体、Zn2+、およびトリスによってブロックされる同様の実験を示す。
【0075】
実施例2
アミロイドイオンチャネル:
タンパク質ミスフォールディング疾患との一般的な構造的関連
アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病を含む、タンパク質コンフォメーション病は、アミロイドと称される明確な線維状の特徴を与える、タンパク質ミスフォールディングに起因する。最近の研究では、アミロイドタンパク質の球状の(線維状でない)立体構造のみが、細胞病態生理を引き起こすのに十分であることが示されている。しかし、効果的な予防と治療をデザインする上で失われた関連性への鍵となる、これらの球状構造の三次元立体構造は、いまだ定義されていない。原子間力顕微鏡、円偏光二色性、ゲル電気泳動、および電気生理学的記録を用いて、われわれはここでAβ(1-40)、α−シヌクレイン、ABri、ADan、血清アミロイドA、アミリンを含む、アミロイド分子の配列が超分子の立体構造変化を経験することを示す。再構成された膜では、それらは形態学的に適合するイオンチャネル状構造を形成し、単一のイオンチャネル電流を導く。これらのイオンチャネルは、細胞のイオン恒常性を不安定にし、従って細胞の病態生理とアミロイド疾患における変性を引き起こす。
【0076】
材料と方法
1,2−ジオレイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC)をAvanti Polar Lipidsより購入した。ヒトα−シヌクレイン組み換えタンパク質(α−シヌクレイン:分子量14.5kDa)とヒトアポ血清アミロイドA(SAA)をAlpha Diagnostics(San Antonio,TX)とPeproTech(Rocky Hill、NJ)からそれぞれ購入した。Aβ(1-40)、アミリン、ADan、ABriを、N−t−ブチルオキシカルボニル化学反応によってW. M. Keck Facility(Yale大学)で合成し、逆相HPLCで精製した。HepesをSigmaから購入し、16.5% トリス−N−トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン(トリシン)〜SDSプレキャストゲルカセット、SDSサンプルバッファー、トリス〜トリシン〜SDS泳動バッファー、分子量マーカーをBio−Radから購入した。全ての溶液を、Millipore浄化システムのMilli−Qで作成した超純水(抵抗率〜18.2M〜〜cm−1)を用いて調製した。
【0077】
CD分光分析
0.1−cm路程細胞中、24°C、1−nm間隔で波長帯190〜260nmにわたって、J−720分光偏光計(Jasco, Easton, MD)を用いて、遠紫外中のペプチド種(典型的には300μlの5mMトリス、pH7.4につき25〜50μg)のスペクトルをモニタリングすることで二次構造の変化を評価した。結果をモル楕円率で表した(deg〜cm〜mol−1)。
【0078】
ポリアクリルアミドゲル電気泳動
新たに溶解したABri、ADan、SAA、α−シヌクレインを、架橋結合させずに、還元性条件下で16.5%トリス〜トリシンポリアクリルアミドゲル上で電気泳動し、一方アミリンとAβ(1-40)を同じ条件下だが、以下に説明するようにグルタルアルデヒドを用いて共有結合架橋させた後で泳動した。DOPCリポソーム中で再構成されたペプチドオリゴマーのの抽出を、脂質-ペプチド混合物の凍結融解し、遠心してペレットを採取することによって行った。ペレットを10mM Hepes溶液(pH7.4)で洗浄し、続いて10mM Hepes中に再懸濁した。ペプチドが取り込まれずに混合物中に残っていないことを確かにするため、この手技を3回繰り返した。その後、リポソームをSDSサンプルバッファー(200mMトリス/HCl/2%SDS/40%グリセロール/0.04%クマシー・ブルーG−250、pH6.8)に溶解した。 SDSサンプルバッファーを、水に新たに溶解したペプチドに加えた。ペプチドを、16.5%トリス〜トリシン〜SDSポリアクリルアミドゲル(SDS〜PAGE)上で電気泳動によって分離した。分子量マーカー(Bio−Radより)をサンプルと平行に泳動させた。ペプチドを10%酢酸で固定し、クマシー・ブルーG−250(Invitrogen)または銀染色(Bio−Rad)で染色した。
【0079】
DOPC膜および溶液中でのAβ(1-40)とアミリンの架橋結合
架橋結合なしだと、Aβ(1-40)とアミリンについてのゲル中の多量体の量は非常に少ないが、これはおそらく、ゲルで泳動させる前に90℃まで加熱した場合それらが壊れてしまうからである。我々は、Linら(2001)FASEB J., 15: 2433-2444の説明に従って、400μlのDOPC/Aβ(1-40)とDOPC〜アミリン混合液に、最終濃度が12mMグルタルアルデヒドになるように、50μlのグルタルアルデヒドを加えて、DOPC膜中で再構成されたAβ(1-40)とアミリンオリゴマーを架橋結合させた。反応を、100μlのトリス溶液(1M)を用いて、アミリンは10分後、Aβ(1-40)は20分後にそれぞれ停止させた。6μlのグルタルアルデヒドを、最終濃度が12mMグルタルアルデヒドになるように超純水中の24μl(1mg/ml)のAβ(1-40)またはアミリン溶液に加え、続いて20μlのトリス/SDS/PAGEサンプルバッファーを、アミリンには10分後、Aβ(1-40)には20分後にそれぞれ加えた。架橋結合産物を2%SDS溶液中に可溶化し、SDS/PAGEで分析した。比較として、我々は、膜に関連しないペプチドも架橋結合させた。
【0080】
イオンチャネル電流測定
平面リン脂質二分子膜を、Mirzabekovら(1999) Meth. Enzymol. 294: 61-74の説明に従って形成した。ヘプタン中に溶解された脂質の泡を、小さい(100〜300μm)テフロン(登録商標)試験管の端に置いた。銀/塩化銀電極は、膜に接する水性成分を電圧クランプに接続した。膜を通るイオンチャネル電流をAxopatch amplifier(Axon Instruments、Sunnyvale、CA)で記録した。データを1kHzでフィルタにかけ、VHSテープに保存した。再現性のある膜の形成と安定性と、適切な膜の厚さを確保するために、膜容量と抵抗を連続して監視した。不安定な性質、異常容量、または異常抵抗を示した膜は使用しなかった。可溶性タンパク質(例えばBSA)を用いる対照実験は、膜は非アミロイドペプチドと相互作用しなかったことを示した。膜の片面に接する水溶液を浸透させることによって、ペプチド試料を導入した。
【0081】
AFM画像化のための試料準備
平面脂質二重層を、リポソーム融合を用いて、続いてLinら(2001) FASEB J., 15: 2433-2444の手法を改変した手技を用いて雲母表面上の破断によって準備した。簡単に言うと、DOPCをクロロホルムに溶解し、乾燥アルゴンの気流下で乾燥させた。DOPCペレットを一晩真空乾燥させ、続いて10mM Hepes(pH7.4)に最終濃度1mg/mlになるように再懸濁した。脂質を1時間水和し、その間時折ボルテックスした。次にリポソームを凍結融解し、続いて400−と200−nmポアサイズの一組のフィルターに通した。ペプチドを超純水に溶解し、1:20の荷重配分比でDOPCリポソームと混合した。脂質-タンパク質混合液を、水槽中で30秒間超音波分解した。次に、ペプチドを用いて再構成されたリポソームを、新たに劈開した雲母上に20分間蒸着し、雲母表面と接触して融合と断裂が起こり、平面脂質二重層を形成させるようにした。その後試料を洗浄し、画像化の前にアミロイドが取り込まれないで残らないように、それ以上のアミロイドは添加しなかった。
【0082】
AFM画像化と画像分析
文献5の説明に従って、Extender electronics moduleを備えるNanoscope IIIa Multimode AFMを用いて(Veeco、Santa Barbara、CA)AFM画像を得た。通常のバネ定数〜0.06N/mを持つ、オキサイドで尖らせた窒化ケイ素カンチレバーを大部分の実験に使用した。通常接触モードとタッピングモード(9〜15kHz間の振動数で)の両方で画像化を行った。時折、高周波化共鳴ピーク(28-33kHz)を用いた。走査周波数は1〜12Hzの間の範囲とした。全ての画像化を、10mMのHepes溶液(pH7.4)中でAFM液体セルを用いて室温で行った。走査条件の継続的な調整を通して、定期的な時間間隔で走査サイズを増加することによって定期的にダメージを検査することで、画像化が表面構造に影響しないことを確実にした。
【0083】
AFM画像を、Veeco softwareを用いて処理し分析した。いくつかのAFM画像は低域フィルタに通した。ピクセレーションを減らすために、単一のイオンチャネル画像を追加の低域Gaussianフィルターに通した。断面分析とベアリング分析ソフトウェアによって、新たに溶解したペプチド分子の大きさに加えて、膜中の再構成されたチャネルの大きさを得た。高さモードのAFM画像の断面中に観察された構造の大きさを、支持体平面(新たに溶解した膜に関連しないペプチドの場合は雲母表面、アミロイドチャネルの場合は二重層膜表面)に対して全高の3分の2で測定した(Linら(2001) FASEB J., 15: 2433-2444)。再構成されたチャネルについての大きさとポアの統計値を、振幅モード画像中の各粒子に対する50〜200チャネル状の構造から得た。ペプチドで再構成された二重層では、AFM 画像化において低ゲインが必要とされることが多く、これにより振幅画像は高さ画像よりも、分析に関してより信頼度が高くなった。
【0084】
結果
二次構造と膜誘起オリゴマー化
Aβ(1-40)、α−シヌクレイン、ABri、ADan、SAA、アミリンの二次構造を、CD分光分析で評価した。異なるアミロイドペプチドについて様々な立体構造が観察された:Aβ(1-40)とα−シヌクレインは主に不規則な立体構造を示し、ADanとアミリンはβ−構造が豊富で、ABriはβ−シートと不規則立体構造の混合で、SAAは基本的にα−へリックスだった(図1)。次に、二分子膜中で再構成される前と後の水溶性球状アミロイドのオリゴマーの性質を、SDS/PAGEで分析した。新たに溶解したアミロイドペプチドは、主にそれらの分子量に対応する強いバンドを持つ単量体として現れる(図2)。少量の二量体に対応する弱いバンドと、高次オリゴマーも存在している(図2)。反対に、リポソーム中で再構成された後に分離されたアミロイドペプチドは、それらの水溶性の対照物と比べると著しく高い濃度で高次(三量体から八量体)オリゴマーとして現れる(図1、左のバンド)。膜誘起オリゴマー化の程度は、様々なペプチド間で非常に様々であった。アミリンとAβ(1-40)が主に三量体〜六量体である一方、α−シヌクレインとSAAは四量体〜八量体だったが、ADanとABriはそれぞれ六量体と四量体のみであった(図2)。
【0085】
これらの結果は、脂質二重層では、低い割合の単量体と二量体も存在するものの、著しく高い割合のこれらのアミロイドがオリゴマー(三量体以上)であることを示す。一方、可溶性アミロイドペプチドは主として単量体または二量体であり、低い割合の高次オリゴマー複合体が存在する。故に、脂質膜に挿入されてもなお、可溶性ペプチド一部の大きなオリゴマー複合体も自身の構造を保持できるが、脂質環境では、アミロイドペプチドはより大きいオリゴマー複合体を好む立体構造変化を経験する(Linら(2001) FASEB J., 15: 2433-2444; Lashuelら(2002) Nature 418: 291)。膜中の大きなオリゴマー複合体の存在は、それらが超分子構造を形成できることを示唆する。
【0086】
アミロイドペプチドは、脂質膜中で再構成された場合、単一のイオンチャネル電流を誘導する
我々は、単一チャネル電気生理学的記録法を用いて、再構成された二重層中のこれらのオリゴマー複合体の活性を検査した。全ての6つのアミロイドペプチドは、適切な脂質二重層中で再構成されたとき、単一チャネルイオン伝導性を誘導した。図3は、これらの6つのペプチドのそれぞれについての平面脂質二分子膜全体の時間に応じた、単一チャネル電流の例を示す。アミリンを例外として(膵島アミロイドポリペプチド、すなわちIAPP)、全てのアミロイドは不均一な単一チャネル伝導性を持つチャネルを形成し、これは複数の異なるオリゴマー種がチャネル構造を形成したことを示唆していた(Linら(2001) FASEB J., 15: 2433-2444)。単一チャネル記録は、融合して巨視的伝導性になるのが多く観察され、これは前者が後者の原因であることを示唆する。二分子膜に接する溶液への片側的なアミロイドの添加は、チャネル活性を誘導するのに十分であった。複数の大きさの単一チャネルは、ペプチド凝集状態に依存するのが通常観察された。添加されたペプチドがないと、チャネルは決して観察されなかった。チャネル形成活性は、時にペプチド凝集の状態によって変化し、例えば、DMSOを用いた分解後に、一時的に水の中で再凝集を行うと、チャネル形成活性が高められることが多かった。
【0087】
アミロイドチャネルの完全な電気的特性は、本研究の主な焦点ではなく、むしろ、我々が本研究で報告する様々なアミロイドの三次元の膜構造が、実際にイオンチャネル伝導性と電流を誘導するという結果を支持するような確認要素がむしろ目標であった。アミロイドペプチドのこれまでの電気生理学的研究[Aβ(1-40)(Arispeら(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 10573-10577)、アミリン(Mirzabekovら(1996) J. Biol. Chem. 271: 1988-1992)、SAA(Hirakuraら(2002) アミロイド 9: 13-23)、NAC(α−シヌクレイン 60-95)(Kagan and Azimova(2003) Biohys. J. 84: 53A(abstract))]は、複数の伝導性、イオン選択性、特定の作動薬、拮抗薬、および抗体の役割を含む、電気生理学的特性の詳細を明らかにした。概して、本研究で得られた結果はこれらのペプチドのこれまでの研究と一致している。以前には特定されていなかったABriおよびADanチャネル伝導性をここで報告する:これらは両方とも不均一な単一チャネル伝導性を示し、巨視的伝導性はその他のアミロイドペプチドチャネルのそれと同様に著しく増加する(Kaganら(2004) J. Membr. Biol. 202: 1-10)。
【0088】
二分子膜中で再構成されたアミロイドペプチドはチャネル状構造を形成する
膜誘起立体構造変化の構造的特徴を理解するために、我々は、天然(可溶性、非膜形成性)の形と、脂質二重層で再構成された場合の両方に存在する、これらのアミロイドの三次元構造を画像化するためにAFMを使用した。新たに溶解したペプチドのAFM画像は、平均直径1〜10nmを持つ球状形態を示す(図4)。AFM画像におけるそれらの大きさの分布と、その他の類似ペプチドの画像との比較に基づくと(Linら(2001) FASEB J., 15: 2433-2444; Zhuら(2000) FASEB J., 14: 1244-1254; Bhatia et al.(2000) FASEB J., 14: 1233-1243; Linら(1999) Biochemistry 38: 11189-11196; Rheeら(1998) J. Biol. Chem. 273: 13379-13382; Lashuelら(2002) Nature 418: 291; Lashuelら(2003) J. Mol. Biol. 332: 795-808; Lashuelら(2002) J. Mol. Biol. 322: 1089-1102; Srinivasanら(2003) J. Mol. Biol. 333: 1003-1023; Dingら(2002) Biochemistry 41: 10209-10217)、高次オリゴマー複合体を除外できないものの、これらの球状構造は大部分が単量体と二量体のように思われた。意義深いことには、溶液中で大きな線維状凝集を形成するという、アミロイドの傾向を示すこれまでの報告とは異なり、我々は、リアルタイムAFM画像化を用いて、これらのペプチドが数時間(>4)にわたって自身の球状構造を維持し、生理学的濃度が高いときでさえ(>1mg/ml)大きさの分布にも著しい変化はなく、著しい凝集もないことを確認した(データ示さず)。それらの表面の生理化学的性質の複雑さは、雲母基板へのそれらの吸着に反映されていた。可溶性ADanとアミリンを雲母表面上に吸着させるのは困難であったが、これは単量体またはオリゴマー複合体がほとんどないことと、主にAFM画像中の大きな凝集体の存在を反映している(図4)。反対に、ABri、α−シヌクレイン、およびSAAは雲母表面に高度に誘引され、これは単量体に加えて、それらの高密度クラスターの両方の存在を反映している。
【0089】
我々は次に、観察されるイオン電流が(図3)実際に球状オリゴマーアミロイドによって、それらが二分子膜中で再構成されるときに形成されるポアによるものである可能性を検討した。我々は、新たに溶解したペプチド分子がリポソーム表面上に吸着され、部分的なフォールディングを経験した後に、脂質二分子膜中でオリゴマー化するであろうと推論した(Linら(2001) FASEB J., 15: 2433-2444)。代替的には、規定のポアを持つ予め形成されたオリゴマー複合体(Lashuelら(2002) Nature 418: 291; Lashuelら(2003) J. Mol. Biol. 332: 795-808; Lashuelら(2002) J. Mol. Biol. 322: 1089-1102)が膜中に直接進入できた。大きなリポソームの融合から得られた二重層は〜75%の全ての再構成実験で解像できた。Aβ(1-40)を用いて再構成され、雲母表面上で固定化された平面脂質二分子膜の例を図5の挿入部分に示す。これまでの研究と一致して(同文献)、脂質二重層は、大きさが数平方μmで、〜5から5.5nmの厚さ[単一の二分子膜の厚さ(同文献)]の、形状が不規則な扁平な斑を示す。AFMを用いてより高い分解能で検査すると、アミロイドペプチドをもたず脂質小胞のみで形成される平面脂質二分子膜の斑の表面は、際立った特徴を示さなかった(データ示さず)。これらの表面の平均粗度は<0.1nm変動した。
【0090】
脂質二重層の表面は、ひとたび脂質膜中で再構成されると、単量体と二量体の球状ペプチドの大部分は安定した高次多量体と共存するように見えることを示している。中分解能画像化(走査サイズ500〜1,000nm、512〜512ピクセル)では、多量体ペプチド複合体は外径が8〜12nmの円盤状形状を持ち、直径1〜2nmの中心ポア状のくぼみを持つことが多い(図5)。これらの構造は、周囲の平坦な脂質二分子膜から〜1nm突出している。チャネル状構造の存在は様々なアミロイド間で変動するが、これはおそらく脂質とそれらの相互作用における多様性と、二重層への最終的な安定した挿入を反映している。平均では、全ての再構成された二重層の66〜75%が、直径10〜12nmの球状多量体複合体を示し、これはそれらが超分子構造を形成することを示唆している。〜20%のこれらの構造では、中心ポア状構造を解像でき、これはチャネル状構造の形成を示した。明確な中心ポア状特徴の存在は、AFM先端形態(平坦な先端)またはサブユニットの局在的移動(水和条件での画像化による)による、過小評価の可能性があり、あるいは再構成された膜中でのチャネル形成の割合が低いことを反映する可能性もあった。大部分の二重層試料では、より大きな構造も膜の上または中に観察することができたが、中心ポア状特徴は持たなかった。
【0091】
個々のチャネル状構造をより高い分解能で詳しく検査すると、複数のサブユニット配列の可能性が明らかになった。4つのサブユニットからなる長方形、5つのサブユニットからなる5角形、6つのサブユニットからなる6角形、そして8つのサブユニットからなる8角形である(図6)。個々のサブユニットの膜外の突出は0.2〜0.5nm変動した。Aβ(1-40)とADanは、主に4から6つのサブユニット構造であった。SAAとα−シヌクレインにのみ最大8つのサブユニットが観察された。五量体は主にアミリンに観察された。ABriについては、解像度は、ほんの少数のチャネル状の基礎構造を分解するやっとだった。4つのサブユニットチャネルと、時として6つのサブユニットチャネルは、全体として2倍の回転対称性を示した。我々はその存在を確認しなかったが、低次オリゴマー(例えば、二量体、三量体)が高次複合体(四量体、六量体など)を作る事は可能である。時折、サブユニットは位置を変え、サブユニットの配列の対称性を壊しているようである。ポアの大きさは、シヌクレインとABriが最小(〜1nm)で、Aβ(1-40)、ADan、アミリン、SAAでは大きかった(〜2nm)。様々なアミロイドペプチドの、異なる多量体構造と基礎構造はSDS/PAGE(図2)とサイズ排除クロマトグラフィー(データ示さず)から得られた結果と一致し、アミロイド-膜相互作用のモデル(Temussiら(2003) EMBO J. 22: 355-361; Curtainら(2003) J. Biol. Chem. 278: 2977-2982; Mobleyら(2004) Biophys. J. 86: 3585-3597)、Durellらによって提唱された三次元構造(1994) Biophys. J. 67: 2137-2145と一致する。サブユニットのバリエーションも、本研究で観察された複合電気伝導性(図3)だけでなく、その他(Linら(2001) FASEB J., 15: 2433-2444; Linら(1999) Biochemistry 38: 11189-11196; Rheeら(1998) J. Biol. Chem. 273: 13379-13382; Kawaharaら(2000) J. Biol. Chem. 275: 14077-14083; Arispeら(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 10573-10577)と一致する。
【0092】
考察
アミロイドの形成(アミロイドーシス)の基礎をなす機構とその予防を理解する上で、十分な進歩が得られたにもかかわらず、タンパク質コンフォメーション病の主要なイニシエーターとして、アミロイドーシスが原因で起こっているものはほとんどない。我々の今回の結果は、可溶性アミロイドサブユニットが、それらの最初の二次構造にかかわらず(図1)、膜二重層中で再構成された場合(図4−6)超分子三次元構造をとることを示す。可溶性アミロイドの立体構造は、溶媒、pH、そして金属(Zn、Cu)を含む複数の因子に依存する(Curtainら(2003) J. Biol. Chem. 278: 2977-2982)。我々の研究では、我々はアルコール誘導体を避け、試料が複数の相転移を経るのを防ぎ、適切な生理学的条件でAFM画像化を行った。故に、我々の研究で画像化した構造は、球状アミロイド有機ペプチドの超分子の三次元特徴を真に象徴するものである。球状アミロイド有機ペプチドは、膜を二つの相に区分するとと報告され(Greenら(2004) J. Mol. Biol. 342: 877-887)、通常ADDLと称される大きな球状複合体は非特異的な膜崩壊と漏出性を誘発した(Kayedら(2004) J. Biol. Chem. 279: 46363-46366)。アミロイドで再構成されたリポソーム内へのカルシウムの取り込みに関する我々のこれまでの研究では、我々は、非特異的なカルシウム漏出(Linら(1999) Biochemistry 38: 11189-11196; Rheeら(1998) J. Biol. Chem. 273: 13379-13382)を観察したことはなかった。膜分配研究(16)は、ペプチドの添加の前に、基板に吸着されるあらかじめ形成された膜を用いてきた。そのような支持二重層は、アミロイドとインキュベートされた場合リフォールディング〜再構築に関して限られた能力しか持たず、イオンチャネル再構成には不適であり、我々の知る限りは、人工の膜の中(本研究のように)またはin vivoでの細胞の原形質膜中のいずれかにおけるイオンチャネル再構成に関する全ての発表された研究では、二分子膜は両方からペプチドに接触可能であった。
【0093】
我々の研究における再構成されたアミロイドペプチドの超分子三次元構造はイオンチャネルに似ている(Linら(2001) FASEB J., 15: 2433-2444; Lashuelら(2002) Nature 418: 291; Lashuelら(2003) J. Mol. Biol. 332: 795-808; Lashuelら(2002) J. Mol. Biol. 322: 1089-1102)。我々は、異なるアミロイドペプチドによって様々な、多量体チャネルの不均一な集団を観察する。アミロイドチャネル[四量体から六量体、および高次構造(図6)]の構造的不均一性は、単量体および二量体可溶性ペプチドが膜に挿入された後の高次オリゴマー変化と一致し、ペプチドの性質と相関する(図2)。この結果は、サイズ排除クロマトグラフィーと、再構成された膜中に挿入された後に分離されるペプチドのスペクトル分析によってさらに裏付けられる(データ示さず)。さらに、そのような不均一性は、我々が本研究で検査したアミロイドペプチドの、元もとの様々な二次構造、電荷分布、組織と疾患の特異性に従う。構造的、生化学的所見は、これらのアミロイドに関する不均一な単一チャネル伝導性を示す電気生理学的データによって裏付けられ、様々なアミロイド長によって形成されるイオンチャネルが、多段階のチャネル伝導性を示すというこれまでの研究にも一致する。これらの多段階の伝導性は、アミロイドチャネル構造中の複合立体構造変化に起因する可能性もあるし、または単一チャネルを形成するサブユニットの数の差を、単純に反映する可能性もある(Kawaharaら(2000) J. Biol. Chem. 275: 14077-14083; Arispeら(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 10573-10577; Durellら(1994) Biophys. J. 67: 2137-2145; Hirakuraら(1999) J. Neurosci. Res. 57: 458 -466)。チャネル形成活性もまた、脂質と脂質混合物の性質に伴って変化する可能性がある(Arispe and Doh(2002) FASEB J. 16: 1526-1536; Lin and Kagan(2002) Peptides 23: 1215-1228)。それでもやはり、我々のデータは、全てのこれらのペプチドが二分子膜中で再構成された場合、イオンチャネル活性を誘起することを強く示している。
【0094】
アミロイドイオンチャネルは、細胞がアミロイド有機ペプチドに出会った場合、病理生理学的作用および変性作用を誘発するための、最も直接的な経路を提供するものであり、これらのチャネルは特異的なイオン輸送を仲介するものであり(Linら(2001) FASEB J., 15: 2433-2444; Linら(1999) Biochemistry 38: 11189-11196; Rheeら(1998) J. Biol. Chem. 273: 13379-13382; Kawaharaら(2000) J. Biol. Chem. 275: 14077-14083; Arispeら(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 10573-10577; Hirakuraら(2002) アミロイド 9: 13-23)、それ故に細胞のイオン恒常性を不安定化する。イオン恒常性が失われると、細胞カルシウムが有毒な量に増加し、これは病態生理や変性につながる初期の細胞的事象の一般的な特徴である(Linら(2001) FASEB J., 15: 2433-2444; Zhu et al.(2000) FASEB J., 14: 1244-1254; Bhatia et al.(2000) FASEB J., 14: 1233-1243; 19, 26)。In vivoとin vitro研究は、アミロイド分子が安定した小オリゴマーを生理学的濃度(低ナノモル)だけでなく、最大マイクロモルのレベルで形成できることを示した。これらのアミロイドの産生、オリゴマー化、そして分解は動態過程である。通常の条件下では、可溶性アミロイドは様々なアミロイド結合タンパク質と結合し、おそらくは血液脳関門にわたって存在する受容体輸送機構を通じて、通常は脳脊髄液から血流中へ除去される。疾患のある脳では、可溶性アミロイドの量は著しく上昇している。この上昇は、脳脊髄液中のアミロイドの過剰な蓄積と、細胞の原形質膜中のカルシウム透過性アミロイドチャネルの形成につながる可能性がある。アミロイドチャネルが長い期間にわたって蓄積し続けると、最終的には用量依存性方式で、破壊的なレベルの細胞の遊離型カルシウムを増加させることになる。まだ特定されていないその他の細胞の脆弱性とともに、有毒なカルシウムの量は細胞の機能不全と変性をもたらす。いくつかの最近の研究から得られた細胞の毒性データは、そのような筋書きを裏付けている。
【0095】
要約すると、我々のデータは、様々なアミロイド分子が、ポア状構造を実際に形成し、膜中でのチャネル活性を誘発するという明確な証拠を提供する。我々の結果は、タンパク質ミスフォールディングに起因する病理生理学的細胞活性と変性を誘発する、球状アミロイド複合体の構造的独自性を提供する。アミロイドイオンチャネルが原形質膜全体でのイオン交換を可能にし、故に細胞のイオン恒常性を破壊する。計り知れない電気生理学的証拠が、アミロイド有機細胞病態生理および変性の一般的な特徴である、最終的に細胞のカルシウム負荷につながる、そのようなイオン交換を示唆している。
【0096】
実施例3
イオンチャネル活性のためのオンチップ検出システム:AFM画像化と微細加工されたシリコンチップナノポアで支持された二重層を介した電流記録
この実施例では、我々は、イオンチャネルの存在と、それらの脂質二重層中での電気伝導度を検出するために、シリコンチップを使った支持二重層システムについて説明する。微細加工シリコン膜中で電子ビームリソグラフィーだけでなく、微細集束イオンビームを用いてナノポアを作成した。必要ならばポアの大きさを縮小するために、また絶縁表面を作成するために熱酸化を使用した。境界明瞭なポアを持つチップは、ウィンドウの上下両方の緩衝液の条件を制御できるような、両側チャンバープラスチックセル記録システム上に容易に取り付けられた。両側チャンバーシステムにより、ポアの上に浮遊する脂質二重層全体の伝導性を測定するために、AFM先端を一つの電極として用いて、膜ウィンドウ下で白金線を第二の電極として挿入できた。原子間力画像化と剛性度測定と静電容量測定は、境界明瞭なナノポア上の脂質二重層の支持の実現可能性を示す。グラミシジンをオンラインで添加すると、イオンチャネル形成ペプチドは、IVカーブ測定を用いて測定される特徴的なイオン伝導性をもたらした。このシステムは、チャネルの立体構造の三次元の構造機能研究の直接研究に、理想的に適している。
【0097】
ここで、支持二重層研究に使用できる、それぞれチャネルの上下にひとつずつ存在する二つの液体区分を持つ、シリコン膜中でのナノポアの加工に関して報告する。ナノポアを持つこれらのシリコンチップは、再構成された脂質二重層を支持する。脂質二重層はAFMを用いてそれらを画像化できるくらいに十分に堅い。導電性AFM先端を用いて、イオンチャネル形成ペプチドである、グラミシジンのオンラインでの添加によって、脂質二重層中とチップナノポア上に形成されるイオンチャンネルについて電流を記録した。
【0098】
結果と考察
電子ビームリソグラフィーによって作成された初期の試験ポアのAFM画像化は、50nm〜200nm以上の範囲の直径を持つポアを示す。そのようなナノポアの例を図15に示す。AFMと一体化した光学顕微鏡で所望のパターンを見つけるために、大きいマーカーを使用した。脂質二重層をチップの上に蒸着した後、チップ中のポアを二重層で覆う。そのような大きな開口部では二重層は崩壊して、ナビゲーションを簡単にするため、また、ナノポアが二重層の下のどこに位置するかの基準として、大きいコーナーマーカーはなお肉眼で見える(図15)。
【0099】
図15、パネルBは、チップ上に支持される二重層を示す。二重層はチップ中のポアを覆い、加えて二重層中の複数の穴を明らかにする。それらの穴に沿ったAFM断面高さ測定は、〜5.5nmの深さの穴を示し、これは一般的な脂質二重層の公称の厚さである(Linら(2001) FASEB J., 15: 2433−2444)。二重層は時に、アラインメントマークの、500nmにわたる広い割れ目になるほど十分に強力である。図16は、二重層がアラインメントマークの一部分の上に浮遊するが、その他の部分をでは裂ける状態を示す。残存する二重層の浮遊部分は、何回かのAFMスキャンにも安定だったことから、おそらくは、二重層は、AFM画像化の間ではなく、自身の蒸着の間に裂けた。
【0100】
AFMのエネルギーカーブ測定は、窒化ケイ素膜上の二重層の剛性(図16上)、アラインメントマークの端に沿って崩壊する二重層の剛性(図16中)、開口部上に浮遊する二重層の剛性(図16下)を示す。窒化ケイ素基板上の二重層に対して、AFM先端が浮遊二重層上にある場合に、同じカンチレバー偏位を得るのに必要なzトラベル量の増加は、二重層が実際にアラインメントマーク穴の上に浮遊することを示す。穴の端での若干軟らかい表面の表れは、おそらく二重層の端に側面から接触するAFM先端に起因する。図16の挿入は、浮遊二重層をより詳細に示し、画像化エネルギー(〜1.5nN)は、繰り返しの画像化にも安定な膜を持つのに十分に低い。
【0101】
チップ中のナノポアを通る電流を測定するには、シリコンウィンドウ中FIBによって作成したポアを用いた。プラズマ助長CVDを用いて熱酸化物を沈着させて、チップ中のポアを絶縁し、大きさを縮小させた。それらは、我々の電子ビームリソグラフィーがポアを作成する場合のように、漏れ電流を生じさせる大きなアラインメントマーカーを含まず、ただ一つのポアのみがそれぞれの金型中に刻まれる。さらに、FIBの刻み過程は、直接的な一段階過程で、試料を汚染する可能性がある光または電子ビームレジスト材料の必要がなくなる。単一のポアを通る電気伝導度を測定するために、底面電極を持つ細胞中の窒化物膜の下で135 mM KCl溶液を使用し、同時に構造を画像化する間、白金被覆AFM先端を電流を測定する第二電極として使用した。完成したカンチレバーホルダーを通る局所(大部分ではなく)伝導性を測定するために、膜の上部には緩衝液を使用せず、カンチレバーホルダーアセンブリの残りの部分ではなく、先端頂点を通る伝導性のみを得るために、先端と試料の間の水メニスカスを維持するために、湿潤な空気だけを穏やかに表面上に流した。画像化と伝導性測定を同時に行った結果を図17に示す。
【0102】
135mM KCl溶液中で、窒化ケイ素膜の下に位置する底面電極に適用される、様々なバイアス電圧を用いてポアを繰り返し画像化する。高さの画像は、ポアの深さと大きさを正確に示さず、ポアは浅く見える。これは、白金被覆先端の先端半径が大きいことによって、先端が広がりを誘起することによる。底面電極と先端の間に流れる電流が存在する、明るい場所を示す。「電流スポット」はポアより大きく、これはポア付近の湿度による水膜が、電流が流れるようにするのに十分な伝導性を持ち、故に電流はポア上の領域だけに完全に限定されないことを示す。ポアチップの下の底面電極に適用されるバイアス電圧を、−0.5ボルトから−1.0ボルトに上げ、その後−2.0ボルトに上げると、電流が5から65pA、65から214pAにそれぞれ増加した(図17)。これは、これらの先端電極を用いて10pS以下のイオンチャネル伝導性と、大きな支持ポアを検出する能力を示す。多くのイオンチャネルのような小さなポアや、局在電流フローの場合は、伝導先端の感受性は単一のイオンチャネル伝導性を測定するのに十分である。
【0103】
チップ中のナノポア上の二重層の密封効果を研究するため、脂質小胞をチップ上に置いた。小胞融合から二重層が形成される30分後、過剰な未吸着の脂質と小胞を表面からすすぎ落とした。支持ナノポアチップと被覆している吸着された脂質二重層全体のバルク電気伝導度を、その内部にAFM先端ホルダーアセンブリが沈められたチップの上面に135mM KCl溶液を滴下し、窒化膜の下に135mM KClを滴下して測定した。測定されたIVカーブは、平坦に近く、二重層全体の伝導性が0.025nSであるのを示す。イオンチャネル伝導性を測定するのにナノポアチップを使用する可能性を確認するために、グラミシジン(既知のイオンチャネル形成ペプチド)を0.2mg/mlの濃度で溶液に加えた。1Vバイアスを窒化ケイ素膜の下の底面電極に適用する間の、伝導性に対するグラミシジンの効果を図18に示す。
【0104】
伝導性は、グラミシジン添加数秒以内に増加した。4分後、伝導性の増加は、おおよそ1nSに安定した(図18)。グラミシジンが二重層の上下に存在するKCl溶液ベースの同じ水の中に溶解されることから、伝導性の増加はイオンチャネル形成に起因し、漏出性の膜によって生じた溶媒に起因するものではない。その他のタンパク質が無い場合は電流は測定されず、他に非特異的な漏えい電流はなかった。これは、グラミシジンが脂質二重層中の任意の位置にイオンチャネルを形成し、その一部は、被覆している窒化ケイ素膜を通るナノポアのうちの一つの場所と一致するであろうことを示す。グラミシジンイオンチャネルの伝導性は通常小さく、非常に様々で、溶媒に依存し、洗浄剤の性質に非常に影響を受ける。約10pSが正常な伝導性と仮定し、我々は、支持チップ中のナノポアを被覆する、機能するグラミシジンイオンチャネルの数が約100であると推定する。単一チャネル伝導性を測定するのに、全く努力しなかった。さらに、個々のイオンチャネルを画像化するのに全く努力しなかった。高分解能画像化と伝導性測定を同時に行うため、先端頂点のみで、液体中の局所伝導性を測定できる、鋭い先端(例えばナノチューブ)を利用してもよい。我々はそのようなナノチューブ先端を開発し(Chenら(2006) Appl. Phys. Letts., 88(153102)、そのような先端を用いると同時に伝導性/画像化研究を単一のイオンチャネルレベルで行うことが可能である。
【0105】
要約すると、我々は、埋め込みチャネルと受容器を持つ、または持たない脂質二分子膜の支持のための使用に適したナノポアチップのデザインを報告し、これらのチャネルと受容器の膜外の部分の両側はオンラインでの薬理学的および生化学的摂動に使用しうる。システムは同時のAFM画像化と電気的記録を可能にし、故に、高分解能を用いたイオンチャネルの直接的な構造機能相関の研究の可能性を開く。チャネルを通るイオン電流を記録しながら、イオンチャネルのオンライン通門と開閉した状態でのそれらの構造的特徴を画像化することが可能となるであろう。汚染のリスクなしに(ワックスで被覆された先端のように)最頂点のみで伝導するAFM先端を可能にするであろう、AFM先端技術のさらなる開発とともに、このナノポアチップは、同時の分子分解画像化と単一チャネルの電気的記録を可能にするものである。
【0106】
実験デザイン
ナノポアを作成するために、二つの方法を用いた。最初のテストとして、AFM先端をポアに容易に誘導する目的で、光学的顕微鏡で容易に位置画確認できる大きいマーカーと、様々な大きさのポアの配列を組み合わせる、電子ビームリソグラフィーを使って、200nmの厚さの窒化ケイ素ウィンドウ(SPI Supplies, West Chester PA)中にポアを作成した。50kV加速電圧、50−100 pA電流、高分解抵抗としてZEP520で、LaB6 電子源を備える、Jeol JBX 5DII システム(Jeol, Peabody MA)を用いてパターン化を行った。100% 酢酸アミル中でパターンを作成した後、Bosch Deep Reactive Ion Etchを、窒化ケイ素ウィンドウを通してポアをエッチングするために使用した。最終剥離と清浄後、SEMとともにAFM(Veeco Metrology、Santa Barbara、CA)によってポアの画像を得た。
【0107】
第二に、シリコン膜を使用した。シリコン・オン・インシュレータ(SOI)ウエハーを用いてそれらを微細加工した。図19、パネルAに示すように、SOIウエハーは、厚さがそれぞれ、0.34μm、0.3μm、300μmの素子層、埋没酸化被膜、ハンドルウエハーからなる。KOH溶液中でシリコンをエッチングするためのマスク層として、300Aの厚さの熱酸化層、続いて1000Aの低応力のLPCVD窒化ケイ素を蒸着した。図19、パネルBに示すように、エッチング用にシリコンウエハーを露出させるために、窒化ケイ素と酸化被膜中にウィンドウをあけるために、フォトリソグラフィー処理を行った。33%KOH 水溶液を用いて70℃で、次に、7mm×7mmの大きさで、それぞれが中心部に200μm×200μmのピラミッド上の開口部を持つ、金型の配列を作成するために、ウエハーをエッチングした。埋没酸化被膜の位置でエッチングを終了し、酸化およびシリコン膜ウィンドウを残した。この終了後のウエハーを図19、パネルCに示し、ピラミッド状の形状の開口部を持つウエハーの裏側のSEM画像を図19、パネルEに示す。LPCVD窒化ケイ素層を熱いリン酸中で除去した。緩衝化HF中で酸化被膜を剥離し、シリコン膜を残した。集束イオンビーム(FIB International)を用いて金型を加工し、各金型中のシリコン膜を通る直径70〜150nmの一つのナノポアを作った。直径70nmのポアを図19、パネルFに示す。電気的絶縁性を提供するために、様々な厚さの熱酸化層を、金型の上面と底面の両方に作った。最終構造を図19、パネルDに示す。
【0108】
全ての試料について、膜の上下の液体を交換するために、ナノポア膜をプラスチック液体セル上に取り付けた。135mM KCl溶液中でIVカーブを得た。カンチレバー状にした先端ホルダーを、上面上の一つの電極と、ポアチップの下の基準電極として持つ、伝導AFMセットアップを用いて電流を測定した(図20)。絶縁コートがないとき、チップの両側に緩衝液が存在するときは、完成した先端ホルダークリップを介して電流を測定する。AFM先端頂点のみを通る電流を画像化するために、ポアチップの下でだけ伝導性を135mM KCl溶液を用いて測定し、上部表面上に湿潤空気の流れを維持した。この設定は、先端と試料の間の局所水メニスカスだけを許容することで、各ポアを通る局所伝導性が測定されることを、確実にした。
【0109】
これまでに述べられた方法で(Linら(1999) Biochemistry, 38: 11189−11196)準備された脂質小胞(DOPC)を蒸着した後にポアを画像化するためにもAFMを用いた。簡単に言うと、ガラス試験管内でDOPC脂質を乾燥させて小胞を形成し、乾燥機に一晩静置し、時折超音波処理して緩衝液中で再水和した。小胞の蒸着には、小滴(50マイクロリットル、1mg/ml)の小胞をポアチップ上に置き、30分間吸着させ、緩衝液ですすいだ。二重層の蒸着の後、IV測定の前に、イオン強度は、二重層の水和化が適切に保たれるように、ポアチップの上下ともに135mM KClに戻され、先端ホルダーを介して電流を測定した。ひとたび二重層によって適切な密封が達成されたら、イオンチャネル形成ペプチドであるグラミシジン(135mM KClとともにミリQ水に溶解された)を緩衝液に加え、グラミシジンが二重層と相互作用する時間に応じて電流を測定した。
【0110】
実施例4
原子間力顕微鏡の画像化のための、非常に鋭いカーボンナノコーンプローブ
原子間力顕微鏡(AFM)の鍵となる要素は、プローブ先端であるが、これはAFM画像化の分解能と信頼性はその鋭さ、形状、材料の性質によって決められるからである。シリコン性または窒化ケイ素製の標準的な市販プローブは、狭いまたは深い構造的特徴への容易なアクセスを許容しない、ピラミッド形状の先端を持ち、一般的に約10nmの比較的平坦な先端半径を持つ。カーボンナノチューブ(CNT)の高アスペクト比形状と優れた機械的強度は、AFM先端としての画像化に利点を提供する。それらの優れた物理学的および化学的特性によって(Dresselhaus et al., editors Carbon Nanotubes: Synthesis、Structure, Properties, and Applications、Springer, Berlin, 2001; Bowerら(2002) Appl. Phys. Lett. 80: 3820−2002; Fennimoreら(2003) Nature, 424: 408)、様々な手法でCNTはピラミッド形状の上に取り付けられるとともに(Daiら(1996) Nature, 384: 147; Nishijimaら(1999) Appl. Phys. Lett. 74: 4061; Stevensら(2000) Appl. Phys. Lett. 77: 3453; Hallら(2003) Appl. Phys. Lett. 82: 2506; Tangら(2005) Nano Lett. 5: 11)、熱化学気相堆積(CVD)を用いて直接的に成長が行われてきた(Hafnerら(1999) Nature, 398: 761; Cheungら(2000) Appl. Phys. Lett. 76: 3136; Yenilmezら(2002) Appl. Phys. Lett. 80: 2225)。取り付け法は手作業で時間がかかり、再現性のないCNT形状と設置となることが多い。熱CVD方法は、場合によってはAFM先端のウエハー規模の作成をもたらすことがあるが、CNTの数、方向、長さを制御するのは難しい。
【0111】
CNTプローブの活用を考える上で重要な側面は、もし長さが合理的に長く作られた場合、望ましい小径を持つ単層ナノチューブプローブが特有の熱振動問題を示す傾向があり、故にそれらを深い構造的プロファイルのトレースに使用できないことである。一方で、多層ナノチューブ、例えばdcプラズマ助長CVD(dc−PECVD)で合成されたもの(Merkulovら(2002) Appl. Phys. Lett. 80: 4816; Chen et al.(2004) Appl. Phys. Lett. 85: 5373; AuBuchonら(2004) Nano Lett. 4: 1781; Chhowallaら(2001) J. Appl. Phys. 90: 5308)は、20〜100nm領域のより大きな径を持ち、故に機械的および熱安定性の向上を示すが、ナノチューブプローブ先端にある触媒粒子(または底面成長機構によって成長させたナノチューブ中の天然ドーム構造)は有限の曲率半径を持ち、これがAFM分解能を制限する。
【0112】
近年、先端のないカンチレバー上にdc−PECVDによって多層ナノチューブプローブを作成するために、二つの方法が用いられてきた(Yeら(2004) Nano Lett. 4: 1301; Cuiら(2004) Nano Lett. 4: 2157)。しかしこれらの方法は、いくらか複雑で、多様なパターン化ステップを必要とする。両方の方法における触媒ドットは、典型的な電子(電子ビーム)リソグラフィーに続く、スピンコートしたポリメチルメタクリレート(PMMA)層の剥離によってパターン化される。レジスト層の信頼性があり均一なスピンコートは、通常比較的広い領域を必要とし、狭く、細長い形状を持つ先端のないカンチレバーについて達成するのは難しい。これらの報告のうちの一つでは(Yeら(2004) Nano Lett. 4: 1301)、パターン化された触媒ドットはカンチレバーの作成の前に形成されたが、触媒ドットが残存し、次の微細加工ステップの間触媒活性を保つために、PECVD堆積Si3N4層によって触媒を保護しなければならなかった。その他の報告では(Cuiら(2004) Nano Lett. 4: 2157)、カンチレバー上の余分のNi触媒を除去するために、触媒ドットを市販の先端のないカンチレバー上にパターン化するために、電子ビームリソグラフィーステップを二回用いなければならなかった。報告されたプローブ先端半径もまた比較的大きい。
【0113】
この実施例では、我々は、先端のないカンチレバー上に非常に鋭い先端を持つ高アスペクト比カーボンナノコーン(CNC)プローブを、電場制御CVD成長と組み合わせた、カーボンマスクのレジストフリー電子ビーム誘起蒸着(EBID)を用いて作成した。ナノスケール特徴と深い溝の高分解能AFM画像化がCNCプローブを用いて示される。
【0114】
CNCプローブの加工過程を図21に概略的に示す。まず、カンチレバーの上面(NSC/先端なし、MikroMasch、米国)を〜10nmの厚さのNiフィルムで電子ビーム蒸着でコーティングした。カーボンドットのEBIDの場合は、NPGSソフトウェア(J. C. Nabityリソグラフィーシステム)を備えるJEOL IC845走査型電子顕微鏡(SEM)を使用した。加速電圧は30kVで、ビーム電流は50pAであった。炭素の蒸着時間を、目的のドットの大きさに応じて8秒から30秒の間で変えた。チャンバー中に天然に存在している残存炭素含有分子が、無定形カーボンドットをカンチレバー表面上に作成するEBID処理に十分であったため、特別な炭素前駆分子は導入しなかった。図21、パネルBに示すように、〜300nmの選択された直径を持つ単一のカーボンドットを、カンチレバーの前部の端付近にEBIDによって蒸着した。カーボンドットは、化学エッチングのための便利なエッチングマスクとして機能する。次に、[H3PO4]:[HNO3]:[CH3COOH]:[H2O]=1:1:1:2の混合液を用いて、マスクの下の部分を除いて、Niフィルムをエッチングして取り去った。触媒のパターン化後の、カーボンドットマスクの除去を、1分間の酸素反応性イオンエッチング(RIE)を用いて行い、図21、パネルCに示すようにNi領域を露出させた。次にNi領域を持つカンチレバーを、図21、パネルDのCNCの二次成長のために、dc−PECVDシステムに移した。CNCプローブの成長を、NH3およびC2H2ガス(比率4:1)の混合ガスを3mトールの圧力で用いて、700℃で10〜20分行った。適用された電場を、所望の方向に沿ってナノコーンの成長を導くために利用した。
【0115】
カーボンナノドットのEBIDは、電子ビーム抵抗層に関連するステップを使用せずに基板上にナノスケールのパターンを直接的に加工するための、単純な記述技術である(Broersら(1976) Appl. Phys. Lett. 29: 596)。炭素の蒸着は、基板上に吸着された揮発性分子を、高エネルギー集中電子を介して非揮発性蒸着に分離することによって生じる。小さいカンチレバー上に単一のドットを準備する、典型的電子ビームリソグラフィー法を比べると、EBIDプロセスは、SEMにおいて10000倍以上の高い倍率での現場制御を通じて、所望の位置で触媒領域をより正確にパターン化できる。
【0116】
EBIDカーボンパターンの使用がドライエッチングマスクとして実施されてきたが(Broersら(1976) Appl. Phys. Lett. 29: 596)、我々が知る限りではそれらをウェットエッチングマスクとして使用する報告はなかった。我々は、様々な酸およびその他の化学物質、例えばHCl、HF、HNO3、H2O2、アセトン中での、カーボンドットの化学的なエッチング能を検討し、これらの化学物質に浸した後、カーボンドットは非常に安定であり、基板上に付着したままであることを見出した。カーボンドットは、それらが化学的エッチングに耐性であるが、酸素RIEによって容易に除去できるという点で特有の利点を持つ。我々は、酸素RIEプロセスがNiフィルムに影響を与えず、CNT/CNC核生成と成長に対するその触媒活性を低下させることを見出している。CNC成長における実験的研究は、10nmの厚さのNi触媒領域の直径は、多層CNCの望ましくない核生成と成長を回避するために、〜300nmより小さくするべきであることを示している。我々のカーボン領域化学エッチングマスク技術は、信頼性のあるリソグラフィーのために、レジスト層を均一にコーティングできない小さい試料、例えば予め加工された先端のないカンチレバーなどの上にパターンを作成するのに通常有用である。
【0117】
dc−PECVDシステムにおいて適用したバイアスを調整することにより、CNTの形態を制御できる。適用電圧が450Vと低いと、成長の間は触媒粒子の大きさは変化せず、結果として得られるCNTは、図22、パネルAとBに示すように等径のナノチューブである。例えば、550Vに適用電圧を増加すると、図22、パネルCとDに示すように、プラズマエッチングのスパッタリング効果によって、先端上の触媒粒子の直径を徐々に減少させることができる。触媒の大きさを徐々に小さくすると、成長時間とともにナノチューブの直径の変化をもたらし、ナノコーン形状が得られ、CNC先端にある触媒粒子が最終的に完全に除去され、これが非常に鋭い先端を得るための鍵となる機構である。
【0118】
図23、パネルAとBは、先端のないカンチレバー上に成長させた我々のCNCプローブ(矢印で示す)のSEM画像を示す。図23、パネルAでは、先端のないカンチレバーの端付近に成長させた単一のCNCプローブを示す。高倍率のSEM顕微鏡写真である図23、パネルBは、高さが〜2.5μm、底面の直径が200nmで、円錐角<5°を持つCNCを示す。図23、パネルBの挿入は、CNC先端の透過電子顕微鏡(TEM)画像の例であり、これは数ナノメーターの湾曲先端半径を示す。ナノコーンの微細構造は、これまでの研究に概して一致して、結晶相と非晶相の混合のように見える(Chen et al.(2004) Appl. Phys. Lett. 85: 5373; Wangら(2005) Relat. Mater. 14: 907)。図23、パネルB中のCNCプローブは、CVD成長の間に電場の方向を操作することによって意図的に傾斜させたことに留意すべきである。そのような傾斜プローブは、安定した画像化のために、プローブ自体がほぼ垂直になるように、AFMカンチレバーの作業傾斜角度を補正することから、望ましい。CNCプローブの傾斜角度は、カンチレバー表面の通常の方向に対して〜13°である。
【0119】
空気中での画像化のために、Nano−scope IIIaコントローラー(VEECO Instruments)をとともにDimension 3100 AFMを用いてタッピングモードでCNCプローブの性能を評価した。Si表面上にスパッタ蒸着した銅フィルムの表面(厚さ〜300nm)を、図24、パネルA〜Cに示すように我々のCNCプローブを用いて画像化した。これらの画像は、境界明瞭な円形粒状構造、粒子の大きさが〜5nm以下のものでさえ明確に示す。よりはっきりした粒子境界と画質が、CNC先端の鋭さによって明らかになった。
【0120】
CNC先端の高アスペクト比の利点を示すために、300nmライン/スペース、500nmの深さのPMMAパターンを評価し、我々のCNC先端に対する従来のSi先端の画像化性能を評価した。Siプローブで得られた画像、図24、パネルCは、ピラミッドの角度によって紛らわしい画像パターンを示す。一方でCNCプローブは、垂直な壁の形状を含むパターンの真の形状を明らかにし、図24、パネルDに示すように、CNFプローブが深い外形パターンの線をトレースできることを示している。図24、パネルEから、画像化されたパターンの右の側壁の傾斜55°〜56°と、左の側壁の傾斜86°〜88°は、Siピラミッド形状自身のそれと実際に一致する。形状の計算から、Siピラミッドの先端は、どうやってもPMMAパターンの底面に届かない。実験結果もこれを確認した。図24、パネルFに示すように、CNCプローブで得られた同じパターンの側壁の傾きは約87°〜89°である。これらのデータは、CNCプローブが、破損せずに急なステップ構造をトレースするのに十分に強いことを示す。
【0121】
CNCプローブの機械的耐久性と接着強度を評価するために、長くて8時間、AuまたはCuフィルム上で、連続スキャンモードでプローブを操作した。得られたAFM画像の方位分解能は、時間0に最初にスキャンした画像と比べると、顕著な変化はなかった(データ示さず)。
【0122】
要約すると、望ましい熱安定性と機械的強度を持つ、鋭く高アスペクト比のカーボンナノコーンプローブの作成が、触媒ナノドットのレジストフリーパターン化と電場誘導CVD成長によって実証された。ナノコーン先端上の触媒粒子は、時間依存的サイズリダクションを通じて完全に除去され、故にAFM画像化や深い外形分析に使用できる非常に鋭い先端をもたらした。
【0123】
本書で説明される実施例と実施形態は、事例的な目的のためのみであり、その観点からの様々な改変または変更は当業者に示唆され、本出願と添付の特許請求の範囲の精神と範囲内に含まれることが理解される。本書で引用した全ての出版、特許、そして特許出願は、参照することによって全ての目的に対するその内容を本願明細書に引用したものとする。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】図1は、溶液中の変異アミロイド分子の円偏光二色性スペクトルを示す。5mMトリス(pH7.4)中での、ABri、ADan、α−シヌクレイン、アミリン、SAA、Aβ(1-40)の円偏光二色性分光分析は、0.1−cm路程の細胞で、24℃、1nmの間隔で190〜260nmの波長帯にわたり、Jasco J−720分光偏光計で行われた。結果をモル楕円率(deg cm mol−1)で表す。
【図2】図2は、16.5%SDS〜PAGE上でのABri、ADan、α−シヌクレイン、アミリン、SAA、Aβ(1-40)の、還元性条件下での電気泳動を示す。右のレーンは水溶液中のペプチド示し、左のレーンは、2% SDS中で可溶化した後の、DOPC膜中のペプチドを示す。分子量マーカーの位置を左に示す。アミリンとAβ(1-40)は溶液と膜の中両方で架橋結合させた。溶液中では、全てのペプチドについて単量体が観察される。Aβ(1-40)、ABri、アミリンについて、少量の二量体が溶液中に観察される。膜では、単量体と二量体のほかに、アミリンとAβ(1-40)について三量体が観察され、ABri、アミリン、Aβ(1-40)、α−シヌクレインについて四量体が観察される。さらに観察されるのは、アミリンとAβ(1-40)についての五量体、α−シヌクレイン、SAA、ADan、アミリン、Aβ(1-40)についての六量体、α−シヌクレインとSAAについての七量体と八量体である。
【図3】図3は、アミロイドチャネルの単一チャネル記録を示す。電圧固定条件下で、時間の関数としての電流のトレースが示される。個々のイオンチャネルの開閉に対応する電流の急上昇が、全ての6つのアミロイドペプチドについて観察できる。溶液は100mMのKCLを含み、(10mM KClを含有するBと、1 M KClを含有するFを除く)pH7.4に緩衝化した。ペプチド濃度は以下の通りである。(A) Aβ(1-40):21 μg/ml、V=−30mV。(B)アミリン:3 μg/ml、V=−50mV。(C)ABri:50μg/ml、V=−50mV。(D)ADan:100μg/ml、V=−50mV。(E)NAC:15nM、V=−50mV。(F)SAA:1μg/ml、V=−60mV。
【図4】図4は、新しく溶解したペプチド分子のAFM画像を示す。緑色の矢印は、幅8〜12nm、高さ1〜2nmの、表面吸着したペプチドを示す(単量体のサイズと一致する)。矢印は、高次のオリゴマーとクラスターを示す。ABriについては、最も観察された特色は、単量体と二量体であり、その他のペプチドについては、より大きな多量体と集合体が観察される。ADanとアミリンについては、吸着された単量体の量は少なく、大部分は多量体とクラスターが観察される。α−シヌクレインについての一実験では、点線で示す線維状構造が観察された。ペプチドを雲母上に20〜40分吸着し、その後吸着されないペプチドを除去するために洗浄し、緩衝液中で撮像した(実施例2の材料と方法を参照)(スケールバー:ADanでは500nm、その他の全てのペプチドでは100nm)。
【図5】図5は、膜二重層中で再構成されたアミロイドペプチドのAFM画像を示す。挿入部分は、〜5nmの厚さの脂質二重層を示す。Aβ(1−40)、ADan、α−シヌクレインについては、中心ポアを持つチャネル状構造を容易に解像できる。ABri、SAA、アミリンについては、一部の多量体構造上にのみ中心ポアを解像できる。矢印は、環状構造が明確に観察される場所を示す。それらの示されたチャネルについては、チャネルのサイズ(外径)は、Aβ(1-40)が16nm、ABriが14nm、ADanが14nm、α−シヌクレインが16nm、SAAが12nm、アミリンが15nmである(スケールバー:100nm)。
【図6】図6は、高分解能での個々のチャネル状構造を示す。それぞれの分子について二つの例が示され、中に中心ポアを観察することができる。表面から突出する様子が観察されるサブユニットの数は、4から8サブユニットまで様々である。AFM画像の分解能は、個々のサブユニット構造を解像するのに十分ではない。[画像サイズは、Aβ(1-40)が25nm、α−シヌクレインが25nm、ABriが35nm、ADanが20nm、アミリンが25nm、SAAが20nm。]
【図7】図7は、従来のプローブの断面を概略的に図示する。
【図8】図8パネルA、B、Cは、本書で説明する、プローブに関する処理ステップを図示する。
【図9】図9は、検出機構を持つプローブの組立の概略図を図示する。
【図10】図10は、垂直に伸びるナノチューブを図示する。
【図11】図11は、斜めに伸びるCNTセグメントが付け加えられた、垂直に伸びるナノチューブを図示する。
【図12】図12、パネルA〜Dは、異なる形状のカーボンナノチューブ先端を示す。
【図13】図13、パネルA、B、Cは、斜めに伸びるカーボンナノチューブの機構を図示する。
【図14】図14は、カーボンナノチューブの伸長操作の例を図示する。
【図15】図15、パネルA:ナノポアの配列のタッピングモードAFM画像(左)。電子ビームリソグラフィーを用いてポアは窒素ケイ素ウインドウ中に突出し、50〜100nmの大きさである。パネルB:脂質小胞の沈着後、ポアを覆う二重層が形成される(中心、緩衝液のもと撮像)。二重層は複数の穴を持ち、二重層中の穴の断面は、脂質二重層の典型的な厚さである深さ5.5nmを示す。スケールバーは1ミクロン。パネルCは、窒素ウインドウを撮像する、液体セルAFMの設定の概略図を示す。
【図16】図16は、部分的に脂質二重層で覆われるアラインメントマーク上で得られるエネルギー距離カーブを示す。十字は、基板上で得られるエネルギーカーブの位置(上)、マークの端(中)、そしてマーク上部に浮遊する二重層(下)を示す。接触点から前もって設定された偏位までのz−距離の増加は、軟らかい試料を示す(矢印)。挿入は、1.5nNのエネルギーを用いて反復して画像化された、安定した浮遊二重層を示す。スケールバー:500nm。
【図17A】図17Aは、組み合わされたAFM高さおよび電流画像化を示す。左側の画像は、様々なバイアス電位、−2.0V(上)、−1.0V(中)、−0.5V(下)で繰り返し画像化した、同じFIB破砕ポアのトポグラフィーを示す。右側の画像は電流の画像であり、ポアの上にはっきりとしたシグナルが観察される。電流の量を、電流画像の断面図に示し、−2.0Vで214pA、−1.0Vで65pA、−0.5Vで5pAである。
【図17B】図17Bは、窒化膜ウィンドウの下の緩衝液中の白金電極を用いる設定の概略図を示す。スケールバー:1ミクロン。
【図18A】図18Aは、ナノポア上に浮遊する脂質二重層試料にグラミシジンを加えた後、10秒(上)、2分(中)、4分(下)に採取したIVカーブを示す。IV電圧範囲 −0.5 〜0.5ボルト。伝導性は、0.025nS(二重層のみ)から0.25nS、0.5nS、1nSにそれぞれ増加する。
【図18B】図18Bは、設定の概略図を示す。
【図18C】図18Cは、蒸着した酸化膜と二重層を持つFIB誘起ナノポアの概略図を示す。
【図19】図19、パネルA〜Fは、加工手順を概略的に示す。パネルA:素子層(グレイ)、埋没酸化膜(斜線)、ハンドルウエハー(グレイ)。B)マスク層として加えた熱酸化膜(斜線)と窒化ケイ素(白)。C)フォトリソグラフィーがエッチングされたピラミッド上形状の穴を残す。D)マスク層の除去と、酸化層の蒸着が続く、FIBを用いるナノポア加工。詳細については実施例3参照。E)エッチング後のウエハーの裏面は、200×200ミクロンのピラミッド上開口を示す。F)FIBによって作成されたナノポア、直径70nm。
【図20】図20は、AFMと、組み合わされた電気的記録の設定を概略的に示す。トポグラフィーと電流の画像が同時に得られる。
【図21】図21、パネルA〜Dは、単一CNCベースのAFM先端のための、レジストフリー加工技術の概略図を示す。パネルA:電子ビーム蒸着による触媒蒸着。パネルB:カーボンドットマスクの電子ビーム誘導蒸着。パネルC:金属ウェットエッチングとカーボンドットの除去。パネルD:CNCプローブのCVD成長。
【図22】図22、パネルA〜Dは概略図とカーボンナノチューブとナノコーン形成のSEMを示す。パネルA:等径カーボンナノチューブ成長の概略図。パネルB:450Vのdcバイアスで20分間、Si基板上で成長させた等径CNTのSEM画像。パネルC:スパッタによるCNT先端の触媒粒子の漸減と、CNT直径の付随減少の概略図。パネルD:550Vで20分間、完全に除去された触媒粒子を持つCNCのSEM画像。
【図23】図23、パネルAとBは、単一CNCプローブのSEM画像を示す。パネルA:カンチレバーの端付近で成長させた単一CNCプローブのSEM上面画像(低倍率、30°傾斜図)。パネルB:CNCプローブのSEM側面画像。挿入:CNC先端のTEM画像。
【図24】図24、パネルA〜Fは、ナノコーンと従来の先端を用いるAFM画像化の比較を示す。パネルA:銅フィルムAFM画像。パネルB:拡大銅フィルムAFM画像。パネルC:従来のSiピラミッド先端によるPMMAラインパターンのAFM画像。パネルD:CNC先端による同じPMMAパターンの画像。パネルE:画像パネルCの高さ外形。パネルF:画像パネルDの高さ外形。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンチャネルの活性を変化させる分子をスクリーニングするための装置であって、固相支持体に取り付けられた脂質二重層を含み、該脂質二重層は一つ以上のイオンチャネルタンパク質を含む装置。
【請求項2】
前記固相支持体は、一つ以上のナノポアを含む、請求項1の装置。
【請求項3】
前記ナノポアは直径約10〜約400nmの大きさである、請求項2の装置。
【請求項4】
前記ナノポアは直径約20〜約200nmの大きさである、請求項2の装置。
【請求項5】
前記ナノポアは直径約50〜約100nmの大きさである、請求項2の装置。
【請求項6】
前記ナノポアは400nm以下の厚さを持つ面を貫通する、請求項2の装置。
【請求項7】
前記ナノポアは200nm以下の厚さを持つ面を貫通する、請求項2の装置。
【請求項8】
前記ナノポアは膜中に形成される、請求項2の装置。
【請求項9】
前記ナノポアはシリコンウエハー中に形成される、請求項2の装置。
【請求項10】
前記装置は、前記脂質二重層の片面に液体レザバを提供する、請求項1の装置。
【請求項11】
前記装置は、前記脂質二重層の各面に液体レザバを提供する、請求項1の装置。
【請求項12】
前記一つ以上のイオンチャネルタンパク質は、カルシウムチャネル、ナトリウムチャネル、カリウムチャネル、塩素チャネル、マグネシウムチャネルからなる群から選択される、請求項1の装置。
【請求項13】
前記一つ以上のイオンチャネルタンパク質はアミロイドタンパク質である、請求項1の装置。
【請求項14】
前記一つ以上のイオンチャネルタンパク質はAbPチャネルタンパク質である、請求項1の装置。
【請求項15】
前記装置は、化合物との接触に応答したチャネルの立体構造変化を検出するための手段をさらに含む、請求項1の装置。
【請求項16】
前記手段はAFMまたはSPMを含む、請求項15の装置。
【請求項17】
前記手段は、チャネルの伝導率の測定法を提供する、請求項15の装置。
【請求項18】
前記手段は、チャネルの伝導率とチャネルタンパク質の立体構造の測定両方を提供する、請求項15の装置。
【請求項19】
前記手段は、チャネルの伝導率の測定法を提供し、さらにAFMまたはSPMを含む、請求項18の装置。
【請求項20】
前記装置は複数の異なるチャネルを含む、請求項1の装置。
【請求項21】
前記装置は、少なくとも10、20、50、または100の異なるチャネルを含む、請求項20の装置。
【請求項22】
複数の前記チャネルは、それぞれ前記固相支持体中のポアと一列に並ぶ、請求項20の装置。
【請求項23】
AbPチャネルの伝導率または立体構造を変化させる能力について試験物質をスクリーニングする方法であって、
請求項1〜21に記載の装置を試験物質と接触させるステップと、
該試験物質との接触に応答した、チャネルの立体構造および/または伝導率における変化を検出するステップと
を含む方法。
【請求項24】
立体構造における前記変化はAFMまたはSPMを用いて測定される、請求項23の方法。
【請求項25】
伝導率における前記変化はAFMまたはSPM先端を電極として用いて測定される、請求項23の方法。
【請求項26】
立体構造における変化と伝導率における変化とが同時に測定される、請求項23の方法。
【請求項27】
一体型カーボンナノチューブカンチレバーおよび先端を有する、AFMまたはSPM。
【請求項28】
アミロイドタンパク質による、ポアの立体構造または伝導性を変化させる能力について試験物質をスクリーニングする方法であって、
一つ以上のアミロイドタンパク質を含むポアを含む脂質二重層を提供するステップと、
該脂質二重層を試験物質と接触させるステップと、
該ポアの立体構造および/または伝導性における変化を検出するステップとを含み、立体構造および/または伝導性における変化は、該試験物質がポアの立体構造または伝導性を変化させたことを示す、方法。
【請求項29】
カーボンナノコーンであって、先端に実質的に触媒が存在しない高アスペクト比カーボンナノチューブ構造を含む、ナノコーン。
【請求項30】
前記ナノコーンは約10度未満の円錐角を持つ、請求項29のナノコーン。
【請求項31】
前記ナノコーンは約5度未満の円錐角を持つ、請求項29のナノコーン。
【請求項32】
前記ナノコーンは、少なくとも約10:1のアスペクト比(高さ:底面)を持つ、請求項29のナノコーン。
【請求項33】
前記ナノコーンは、少なくとも約12:1のアスペクト比(高さ:底面)を持つ、請求項29のナノコーン。
【請求項34】
前記ナノコーンは約10nm未満の先端半径を持つ、請求項29のナノコーン。
【請求項35】
前記ナノコーンは約5nm未満の先端半径を持つ、請求項29のナノコーン。
【請求項36】
前記ナノコーンは約3nm未満の先端半径を持つ、請求項29のナノコーン。
【請求項37】
ナノコーンを作成する方法であって、電場制御CVD成長と併用される、カーボンマスクのレジストフリー電子ビーム誘起蒸着(EBID)を含む方法。
【請求項38】
前記方法は、ドライエッチングマスクとしてEBID炭素パターンを利用するステップを含む、請求項37の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2008−544252(P2008−544252A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516947(P2008−516947)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/022451
【国際公開番号】WO2006/138160
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(500025503)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (26)
【Fターム(参考)】