説明

神経変性疾患用モデル

【課題】ADなどの神経変性疾患の病理とよく似た病理を有する動物モデルが必要である。
【解決手段】本発明のGSK-3βタンパク質を過剰発現するトランスジェニック動物は、神経変性疾患用モデルとして有用である。また、アルツハイマー病のモデルとしての、上記トランスジェニック動物の使用、神経変性疾患を治療するための薬物または療法の試験における上記トランスジェニック動物の使用、さらに、本発明のトランスジェニック動物に療法を実施すること、および病理または挙動に対する影響をモニタリングすることを含むアルツハイマー病の治療に有用な療法の同定方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経変性疾患、特にアルツハイマー病の動物モデルに関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は、先進国において最も普通に見られる神経変性疾患であり、進行性の記憶喪失および言語・行動障害により特徴付けられ、究極的には死へと導く(Alzheimer、1911年; Yankner、1996年)。ADにおける認識衰退には、ニューロン性萎縮および主に皮質、海馬と小脳の損失が伴う(Gomez-Islaら、1997年)。ニューロンの細胞死の特定のパターンに加えて、ADは、2つの神経病理学的特徴である老人斑および神経原線維変化(NFT)により特徴付けられる。
【0003】
老人斑は、しばしば異栄養性神経突起で囲まれている39〜43アミノ酸のβ-アミロイドペプチド(AB)から作られるアミロイド原線維の細胞外沈着物である(Glenner and Wong、1984年; Mastersら、1985年; Selkoe、1994年)。
【0004】
NFTは、過剰にリン酸化された微小管結合タンパク質タウから組み立てられる二重らせん状細線維(PHF)の神経内に発生した凝集物である(Greenbergら、1992年; Grundke-Iqbalら、1986年; Leeら、1991年; Morishima-Kawashimaら、1995年)。NFTは、ADにおいて変性を受けている脳領域全てに見られ、それらの出現の空間時間的パターンは、細胞死および総体的症状の空間時間的パターンとよく相関する(Arriagadaら、1992年; Braak and Braak、1991年; Gomez-Islaら、1997年)。
【0005】
ADの病因に対する分子学的洞察は、遺伝形のAD(FAD)により罹患した家族の遺伝的研究から為された。これらが原因となるのはAD症例の少ない割合だけであるが、この疾患を引き起こす原因となる3種の異なる遺伝子における変異が確認できた。これらの遺伝子は、プレセニリン-1(presenilin-1)および-2(PS-1およびPS-2)並びにアミロイド前駆体タンパク質(APP)(Hardy、1996年)である。APPにおける変異は、Aβの産生を増加させる結果となり(Price and Sisodia、1998年)、一方、PS-1およびPS-2の変異は、APPから長く、最もアミロイド産生性であるAβ(Aβ42)形へのプロセシングを促進させる(Citronら、1997年; Duffら、1996年; Price and Sisodia、1998年; Scheunerら、1996年)。Aβ誘導性神経毒性のインビトロ研究およびインビボ研究と共にこの遺伝子的証拠から、ADを引き起こす重要な事象として、Aβ形成および/またはAβ凝集が指摘されている。
【0006】
グリコーゲンシンターゼキナーゼ-3β(GSK-3β)の活性化が提案されているが、神経機能障害の原因となる下流の細胞内作動因子については殆ど知られていない。
【0007】
GSK-3βは最初、グリコーゲン代謝調節の役割によって確認された、CNSに最も豊富なプロリン指向性セリン/スレオニンキナーゼである。(Woodgett、1990年)。インスリンおよびIGF-1を媒介としたシグナル伝達に関係することとは別に、GSK-3βは、β-カテニンの安定性を調節する重要な酵素としてwnt/winglessシグナリング経路にも関与し、その結果、核へのトランスロケーションおよびその転写活性に関与する(Anderton、1999年; Earth、1997年)。
【0008】
GSK-3βは、PHFの特徴である過剰にリン酸化されたタウ産生の最適候補酵素の1つである(Lovestone and Reynolds、1997年)。GSK-3βは、微小管から精製でき(Ishiguroら、1988年)、トランスフェクションされた細胞においても(Lovestoneら、1994年)およびインビボでも(Hongら、1997年; Munoz-Montanoら、1997年)PHFにおいても過剰にリン酸化された多くの部位のタウをリン酸化することが示されている。さらに、GSK-3βは、変性前のニューロンの原形質に蓄積し、AD神経原線維変化を発現した脳内でのその分布は、これらの変化の発現の順序と一致する(Peiら、1999年; Shiurbaら、1996年)。
【0009】
皮質および海馬の一次ニューロン培養物をAβへさらすと、GSK-βの活性化(Takashimaら、1996年)、タウの過剰リン酸化(Busciglioら、1995年; Ferreiraら、1997年; Takashimaら、1998年)、および細胞死(Busciglioら、1995年; Estusら、1997年; Forloniら、1993年; Looら、1993年; Pikeら、1991年; Takashimaら、1993年)を誘導することが示された。アンチセンス・オリゴヌクレオチドまたはリチウムのいずれかによってGSK-3βの発現または活性を阻止することによって、皮質および海馬の一次培養におけるAβ誘導性神経変性が防止された(Alvarezら、1999年; Takashimaら、1993年)。
【0010】
PS-1は、ヒト脳サンプルの共免疫沈降実験において、GSK-3βとタウに直接結合することが示された(Takashimaら、1998年)。したがって、PS-1がGSK-3βとタウを密に近接させることができることから、PS-1が、GSK-3βによりタウのリン酸化を調節している可能性が示唆される。トランスフェクション実験におけるPS-1の変異体は、PS-1/ GSK-3βの結合を増加させ、タウのリン酸化を増加させる (Takashimaら、1998年)。さらに、PS-1はまた、トランスフェクションされた細胞において(Murayamaら、1998年; Yuら、1998年)およびインビボで(Yuら、1998年; Zhangら、1998年)、GSK-3βの基質であるβ-カテニンと複合体を形成することが示され、またこの相互作用はβ-カテニンの安定性を増加させる(Zhangら、1998年)。病原性PS-1変異により、β-カテニンを安定化させるPS-1の能力が減少し、これは次に、PS-1変異を有するAD患者におけるβ-カテニン濃度が減少する結果となる(Zhangら、1998年)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Alzheimer、1911年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ADなどの神経変性疾患の病理とよく似た病理を有する動物モデルが必要であり、これは、この疾患の理解と新規療法の試験にとって極めて重要である。
【0013】
本発明は、この動物モデルの問題に取り組む。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、GSK-3βタンパク質が過剰発現しているアルツハイマー病のトランスジェニック動物モデルを提供する。
【0015】
(好ましい実施形態)
特に、本発明は、GSK-3βタンパク質の発現が条件付きであるトランスジェニック動物モデルを提供する。
【0016】
好ましくは、GSK-3βが過剰発現する唯一の酵素であり、実際、GSK-3βが過剰発現する唯一のタンパク質であることがさらに好ましい。驚くべきことに、GSK-3βタンパク質のみが過剰発現されると、ADとよく似た病理がトランスジェニック動物において生じる。具体的には、GSK-3βの過剰発現の結果、核のβ-カテニン濃度の減少、タウタンパク質のリン酸化の増加、ニューロンの細胞死、反応性星状細胞増加症、並びに小神経膠細胞症がもたらされる。トランスジェニック・モデルの病理と自然の病態とが類似しているため、本発明のモデルは疾患分析にとって価値が高い。
【0017】
好ましくは、トランスジェニック研究に用いられる動物は、マウス、ラットまたは霊長類などの哺乳動物である。トランスジェニック研究に使用される他の好適な動物は、当該分野でよく知られている。
【0018】
本発明はまた、トランスジェニック動物の生産に使用される方法にまでわたっている。
【0019】
本発明の動物モデルは、ADなどの神経変性疾患を治療するための新しい薬剤または療法の試験に有用である。したがって、本発明は、本発明のトランスジェニック動物に療法を実施すること、および病理または挙動に対する影響をモニタリングすることを含むADの治療に有用な療法の同定方法にまでわたっている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】マウスの設計を示す図である。AはBitetO構築体を示す図である。これは、分岐配向において2つのCMVプロモーター配列に連結された回帰性tetオペレーター配列の7コピーから成る。この2方向性プロモーターには、1つの方向ではGSK-3βcDNA配列(その5'末端にMYCエピトープをコード化)、他の方向では、核局在化シグナル(NLS)を含むβ-ガラクトシダーゼ(LacZ)配列が続く。Bは、COS細胞を、BitetO構築体およびヒトタウに対してコードする発現ベクターを含有するプラスミドとコトランスフェクションしたことを示す図であり(1レーンから6レーン)、tTAの発現を可能にする第3のプラスミドを、培地中に1μg/mlテトラサイクリンの非存在下(3レーンおよび4レーン)または存在下(5レーンおよび6レーン)のいずれかに加えた(3レーンおよび6レーン)。タンパク質抽出物を、GSK-3β、AD様リン酸化タウ(PHF-1)、全タウ(7.51)およびβ-ガラクトシダーゼ(β-Gal)に対する抗体によりプローブした。Cは、Tet/GSK-3βマウスは、CarnKIIaプロモーター(tTA)の制御下tTAを発現するマウスと、ゲノム中にBitetO構築体を組み入れたマウス(TetO)とを掛け合せることにより生じたことを示す図である。ダブルトランスジェニック子孫(Tet/GSK-3β)は、テトラサイクリンまたはその類縁体を経口投与しtTAによるトランス活性化を妨げない限り、脳内に構成的にGSK-3βを発現することが期待される。
【図2】Tet/GSK-3βマウスにおけるトランスジーン発現のパターンを示す図である。A〜Bは、薬物未経験(A)またはドキシサイクリンを出産直前に5日間母体に投与後生まれた(B)PO Tet/GSK-3βマウスからの脳矢状切片のX-gal染色を示す図である。C〜Eでは、成体(3カ月)Tet/GSK-3βマウス脳の矢状切片におけるβ-ガラクトシダーゼの免疫組織化学により、異なる神経層である皮質(C)、海馬(D)および線条(E)における発現が明らかにされている図である。Hは、海馬; Cx、皮質; St、線条; 11-VI、皮質層; cc、脳梁; DG、歯状回; Hil; 門; GP、淡蒼球を示す図である。Bの目盛り用バーは、A〜Bにおいて1mmに相当する。Eの目盛り用バーは、C〜Eにおいて200μmに相当する。
【図3】Tet/GSK-3βマウスの皮質および海馬中のGSK-3βの過剰発現を示す図である。Aは、皮質(1レーンおよび2レーン)、小脳(3レーンおよび4レーン)、野生型(1レーン、3レーンおよび5レーン)またはTet/GSK-3β(2レーン、4レーンおよび6レーン)マウスの海馬(5レーンおよび6レーン)からのタンパク質抽出物のウェスタンブロットを示す図である。Bは、Tet/GSK-3βマウスにおけるGSK-3β濃度のパーセント増加を示すヒストグラムを表す図である。C〜Eは、GSK-3β(CおよびD)またはMYC(E)に対する抗体により実施された野生型(C)またはTet/GSK-3β(DおよびE)マウスの皮質切片の免疫組織化学を示す図である。F〜Hは、GSK-3β(FおよびG)またはMYC(H)に対する抗体により実施された野生型(F)またはTet/GSK-3β(GおよびH)マウスの海馬切片における免疫組織化学を示す図である。I〜Kは、F〜Hに示された歯状回を高倍率で示す図である。目盛り用バーは、C〜Eにおいては100μm、F〜Hにおいては200μm、I〜Iにおいては60μm、Kにおいては40μmに相当する。
【図4】β-カテニン濃度およびタウのリン酸化に及ぼすGSK-3β過剰発現の作用を示す図である。Aは、抗β-カテニン抗体でプローブされた野生型(Wt)またはTet/GSK-3β(TG)マウスの皮質(Cx)および海馬(Hipp)からの総細胞、膜、細胞質ゾルおよび核調製物のウェスタンブロットを示す図である。Bは、PHF-1抗体およびβ-チューブリン抗体でプローブされた野生型(Wt)またはTet/GSK-3β(TG)マウスの皮質(Cx)、小脳(Cb)および海馬(Hipp)からのタンパク質抽出物のウェスタンブロットを示す図である。Cは、示された抗体でプローブされた野生型(Wt)、tTA、TetO、またはTet/GSK-3βマウスからの海馬抽出物のウェスタンブロットを示す図である。
【図5】Tet/GSK-3βマウスにおけるタウの細胞体樹状突起局在化を示す図である。A〜Dは、野生型(AおよびB)またはTet/GSK-3β(CおよびD)マウスの歯状回における免疫組織化学を示す図である。E〜Fは、野生型(E)またはTet/GSK-3β(F)マウスの歯状回における7.51抗体で実施された免疫組織化学を示す図である。B図中の矢印は、薄く染色された苔状線維を示す。C図中の挿入図は、PHF-1免疫染色顆粒細胞のより高い倍率を示す。目盛り用バーは、A〜D図においては200μm、E〜F図においては60μmに相当する。
【図6】PHF-1陽性ニューロンの電子顕微鏡調査を示す図である。Aは、Tet/GSK-3βマウス海馬歯状回における2種のニューロンの電子顕微鏡写真を示す図である。N1は、拡散細胞質顆粒免疫染色に加えて、周囲の神経網(矢じり印)から周回の大部分が剥離していることを表しているPHF-1免疫陽性ニューロンの核を示す。N2は、PHF-1免疫陰性ニューロンの核を示す。Bは、斑点状にPHF-1反応生成物を示し、粗細胞質内網状構造と関連する図4Aの同一マウスの歯状回におけるもう1つのPHF-1免疫陽性ニューロンを示す図である。Nは未標識核を示す。Cは、図4Bの枠部分の高倍率であり、反応生成物(矢印)のパッチおよび粗細胞質内網状構造の標識化を示す図である。重金属染色は実施しなかった。目盛り用バーは、全パネルにおいて0.5μmに相当する。
【図7】Tet/GSK-3βマウスのニューロンの細胞死および反応性神経膠症を示す図である。A〜Bは、野生型(A)またはTet/GSK-3β(B)マウスの歯状回のTUNEL染色を示す図である。矢印は、TUNEL陽性核を示す。C〜Dは、野生型(C)またはTet/GSK-3β(D)マウスの歯状回におけるGFAP免疫組織化学を示す図である。Eは、PHF-1免疫染色のニューロンを囲む肥胖星状膠細胞突起を示すTet/GSK-3βマウスの海馬歯状回の電子顕微鏡写真を示す図である。Nは核である。*印は拡散細胞質顆粒免疫染色を示す。★印は、肥胖星状膠細胞突起を示す。挿入図は、膠中間フィラメントの特徴的な束状構造を示す神経膠星状突起の高倍率である。Fは、Tet/GSK-3βマウスの歯状回のOX-42免疫染色を示す図である。矢印は、微細な免疫活性小神経膠細胞微小突起を示す。矢じり印は、免疫染色反応性細胞質体を示す。SMは、分子層、SGは顆粒層、Hは門である。目盛り用バーは、A〜Bにおいては50μm、C〜Dにおいては60μm、Eにおいては0.5μm、およびFにおいては30μmに相当する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
好ましくは、マウスでtet調節系を使用する。tet調節系は、真核細胞系およびマウスにおいて条件付き遺伝子発現に用いられてきた(Gingrich and Roder、1998年)。変異形のハンチンチンのトランスジェニックな発現を行うためにこの系を用いることにより、我々の何人かは最近、神経変性疾患の最初の条件付き動物モデルを作製した(Yamamotoら、2000年)。tet調節系は、トランスジーンの毒性による周産期の死亡を回避し、成体生物でのみトランスジーンの発現を引き起こし、関連する表現型の変化が生じたときに、トランスジーンの発現を中止するように用いることが可能であることから、病理条件を模倣する場合に特に有用であり得る(Kelz、1999年; Yamamotoら、2000年)。
【0022】
この系の調節は、テトラサイクリン制御性トランス活性化因子(tTA)、すなわちtetリプレッサーDNA結合ドメインおよびVP16トランス活性化ドメインから成るキメラタンパク質を介して達成される(Gossen and Bujard、1992年)。このタンパク質は、tetOオペレーター配列に特異的に結合し、隣接のCMV最小プロモーターから転写を誘導する。したがって、tTA要素およびtetO要素双方の組み合わせにより、所与のトランスジーンの連続的なトランス活性化が可能となる。テトラサイクリンとその類縁体はtTAに結合できる。これが生じると、tTAは、tetOへの結合を妨げられ、転写が阻害される。
【0023】
このようにして、我々は、胎仔でのトランスジーンの発現による周産期の死亡を回避しながら、成体期に脳内でGSK-3βを過剰発現する条件付きのトランスジェニック・マウスを作製した。これらのマウスは、海馬ニューロンにおけるβ-カテニンの不安定化および、タウの過剰リン酸化を示し、後者は、タウのもつれ前のような細胞体樹状突起の局在化をもたらす。タウの細胞体樹状突起の局在化を示すニューロンは、異常形態並びに周囲の神経網からの剥離を示すことが多い。反応性星状細胞増加および小神経膠細胞は、ニューロンのストレスおよび死を暗示する。この知見は、さらに歯状回顆粒細胞のTUNEL着色により確認された。皮質および海馬におけるGSK-3βの過剰発現は、核のβ-カテニン濃度の減少、AD関連エピトープにおけるタウのリン酸化の増加、ニューロンの細胞死、反応性星状細胞増加、並びに小神経膠細胞をもたらす。したがって、我々の結果は、GSK-3βのインビボ過剰発現が神経変性をもたらすことを示し、これらのマウスは、アルツハイマー病の病因に対するGSK-3β脱調節との関連性を研究する動物モデルとして使用できることを示唆する。
【実施例】
【0024】
本発明を、我々の実験的研究の以下の実施例によりさらに説明する。
【0025】
注射用フラグメントの生成
8.0kbのAse Iフラグメント(BitetO)を顕微注入用に用いた。BitetOを生成するために、N-末端MYCエピトープを有するアフリカツメガエルのGSK-3B cDNAに対応する1.5kbのHind IIIフラグメントをpcDNA3- GSK3プラスミドから切り取った(Sanchezら、2000年)。このフラグメントを、Hind IIIで消化したpCRIIクローニング・ベクター(インビトロゲン)にサブクローニングした。正しい配向性を、Xho I消化により試験した。次いで1.5kbフラグメントをNsi I-Not I消化により切り取り、lacZレポーター配列を有するサイトメガロウイルス(CMV)最小プロモーターに連結された2方向性tetO配列を含有するプラスミドのPst I-Not I部位にサブクローニングした(pBI-3、(Baronら、1995年)。最後に、8.0kbのAse I BitetOフラグメントを、CBAxC57BL/6の単細胞の胚に顕微注入した。ファウンダーマウスをPCRにより同定し、サザン分析法により確認した。次に、ファウンダーマウスを、野生型CBAxC57BL/6マウスと交配し、サザン分析法をF1子孫に対して実施し、顕微注入フラグメントの多回挿入事象を調べた。ここに報告された全マウスは単回の組込み事象から得た(データは示さず)。
【0026】
COS細胞のトランスフェクション
COS-7細胞を、10%(v/v)ウシ胎仔血清、2mMグルタミン、100単位ml-1ペニシリンおよび100μgml-1ストレプトマイシンを補った変法ダルベッコ必須培地(DMEM; Gibco BRL)で維持し、加湿インキュベータ中95%空気/5% CO2、37℃でインキュベートした。35mm直径のシャーレ中50〜70%集密性度の細胞を、製造元の推奨に従って、LipofectAMINE(Gibco BRL)/DNA 5μgにより一時的にトランスフェクションした。トランスフェクション48時間後に細胞を採集し、分析した。
【0027】
動物
Centro de Biologia Molecular "Severo Ochoa"動物施設でマウスを飼育した。マウスは、1ケージにつき4匹を収容し、飼料と水は随時摂取可能とし、7時に点灯する12/12時間の明暗サイクルで温度制御環境下に維持した。
【0028】
抗体
次の抗タウ抗体を用いた:7.51(Novakら、1991年)(英国ケンブリッジ、MRC、C. Wischik博士より恵与)、PHF-1(Greenbergら、1992年; Otvosら、1994年)(米国ニューヨーク州ブロンクス、アルバート・アインシュタイン大学P. Davies博士より恵与)、12E8(Seubertら、1995年)(米国カリフォルニア州サンフランシスコ、アテナ、P. Seubert博士より恵与)、AD2(Buee-Scherrerら、1996年)(仏国モンペリエ、C. Mourton-Gilles博士より恵与)。441個のアミノ酸である最長のヒトタウのイソ体の残基ナンバリングによると(Goedertら、1989年)、抗体12E8は、262番目のセリンがリン酸化される際にタウと反応する(Seubertら、1995年)。抗体PHF-1およびAD2は、セリン396および404がリン酸化される際にタウを認識する(Buee-Scherrerら、1996年; Otvosら、1994年)。他のモノクローナル抗体は、抗GSK3-β(Transduction Laboratories)、抗β-カテニン(Transduction Laboratories)、抗β-チューブリン(Sigma)、抗β-ガラクトシダーゼ(Promega)、抗myc(米国アイオワ州、Developmental Studies Hybridoma Bank)、抗GFAP(米国カリフォルニア州、PharMingen)、OX42(スペイン国、Instituto Cajal、P. Bovolenta博士より恵与)、ED1(英国、Serotec)であった。核タンパク質U"snRNPに対して誘導した抗体は、J. Ortin博士(スペイン国マドリッド、CNB)より恵与された。
【0029】
免疫組織化学
マウスをペンタールで深麻酔し、0.1 Mリン酸緩衝液中4%パラホルムアルデヒドで10分間経心的に灌流した。脳は、室温で2時間4%パラホルムアルデヒドで後固定し、4℃で48時間PBS中の30%ショ糖に浸けた。矢状切片(30μm)を、凍結ミクロトーム中で切断し、PBS中に採取した。遊離浮遊切片をPBS中の0.3% H2O2で前処理し、0.2%トリトンX-100、10%正常ヤギ血清(GmCO)および1% BSA(Boehringer Mannheim)を含有するPBS中、一次抗体:PHF-1(1/150)、AD-2(1/2000)、抗myc(1/20)、抗GSK-3β(1/500)、抗β-ガラクトシダーゼ(1/5000)、抗GFAP(1/250)、OX42(1/1000)と共に一晩4℃で培養した。PBSで3回洗浄後、切片は、Elite Vectastainキット(Vector Laboratories)を用いて標準アビジン-ビオチン免疫組織化学プロトコルにより実施された。色素原反応を、ジアミノベンジジン(Sigma)および0.003% H2O2により10分間実施した。切片をクロマラム(chromalum)で被覆したスライド上に載せ、Aqua-PolyMount(Polysciences)でカバーグラスをした。一次抗体を除いたものは標識欠如となった。
【0030】
LacZ染色
LacZ染色を次のとおり実施した。新鮮な凍結切片を4%パラホルムアルデヒドSoren緩衝液中10分間、後固定した。次いでスライドをLacZ染色溶液(PBS中1mg/ml X-gal(4-クロロ-5-ブロモ-3-インドリル-β-ガラクトシダーゼ、Boehringer Mannheim)、5mM フェロシアン化カリウム、5mMフェリシアン化カリウムおよび2mM MgCl2)中30℃で1時間インキュベートした。染色後、切片をすすいで乾式マウントした。
【0031】
TUNELアッセイ
アポトーシスの特徴を示すDNAフラグメントを、パラホルムアルデヒドで後固定した脳においてTUNEL法により検出した。ビブラトーム切片のTUNEL染色を、製造元の指示に従って実施した(インシトウ細胞死検出、POD; Boehringer Mannheim)。Dnase Iによる処理を陽性対照として用いた。
【0032】
細胞レベル下(サブセルラー)分画
膜および細胞質ゾルの抽出物を調製するために、組織を氷冷リン酸緩衝液生理食塩水で洗浄し、低張緩衝液(0.25Mショ糖、20mM HEPES pH7.4、2mM EGTA、1mM PMSF、10μg/mlアプロチニン、10μg/mlロイペプチンおよび10μg/mlペプスタチン)にホモジナイズした。ホモジネート(全細胞フラクション)を、850 x gにて4℃で15分間遠心分離で澄明にし、次に得られた上澄液を、100.000 x gにて4℃で1時間遠心分離して、ペレットとして膜フラクションおよび上澄液として細胞質フラクションを単離した。
【0033】
脳の核は、2Mショ糖クッションを通して沈降させた。3匹の動物の脳領域は、緩く装着したテフロン(登録商標)乳棒付きのポッターホモジナイザを用いて、0.32Mショ糖、10mMトリス-HCl pH7.4、3mM MgCl2、1mM DTT、0.1%トリトンX-100、10μg/mlアプロチニン、10μg/mlロイペプチンおよび10μg/mlペプスタチン中にホモジナイズした。ホモジネートは、チーズ布を通して濾過し1000 x gにて10分間遠心分離した。ペレットを、トリトンを含まず1.9Mショ糖を補った3mlのホモジナイズ用媒体で再懸濁した。この調製液を、2Mショ糖(10ml)のクッションにより層化し、HB4ロータ(Sorvall)中12,000 x gにて遠心分離した。ペレットを0.5mlの0.32Mショ糖中に再懸濁した。脳の核の純度を、クリスタルバイオレット染色後、光学顕微鏡により評価した。さらに、知られた核タンパク質であるU2snRNPを、ウェスタンブロット分析法における核マーカとして用いた。
【0034】
ウェスタンブロット分析法
脳を、氷冷プレート上で素早く切断した。ウェスタンブロット分析用の抽出物は、20mM HEPES、pH7.4、100mM NaCl、20mM NaP、1%トリトンX-100、1mMオルトバナジン酸ナトリウム、5mM EDTAおよびプロテアーゼ阻害剤(2mM PMSF、10μg/mlアプロチニン、10μg/mlロイペプチンおよび10μg/mlペプスタチン)から成る氷冷抽出用緩衝液中で脳領域をホモジナイズすることにより調製した。このサンプルをホモジナイズし、15,000gにて4℃で20分間遠心分離した。生じた上澄液を採取し、タンパク質含有量をBradfordにより決定した。30μgの総タンパク質を、10%ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動し、ニトロセルロース膜(Schleicher and Schuell)に移した。次の一次モノクローナル抗体:抗GSK3β(1/2000)、PHF-1(1/200)、AD2(1/2000)、12E8(1/200)、7.51(1/100)、抗MYC(1/100)、抗β-チューブリン(1/5000)、抗β-ガラクトシダーゼ(1/5000)を用いて実験を実施した。濾液を、5%脱脂乾燥乳中4℃で一晩抗体と共にインキュベートした。二次的ヤギ抗マウス抗体(1/5000; Gmco)およびECL検出試薬(Amersham)を免疫検出のために用いた。免疫反応の定量は、比重走査により実施した。統計解析は、ステューデントのt検定を用いて実施した。
【0035】
電子顕微鏡用の組織プロセッシング
電子顕微鏡用に、ビブラトーム切片を用いた。免疫染色後、切片を2% OsO4中で1時間後固定し、脱水し、アラルダイトに包埋し、プラスチックカバーグラスを用いてFormvar被覆スライドに平らに載せた。重合後、選んだ領域を写真に撮り、切り取り、アラルダイトに再包埋し、1μmに再切断した。これらの半分の薄さの切片を再度写真に撮り、超薄型切片に再切断した。この超薄型切片を、人為的な沈殿を避けるために重金属染色をすることなくJeol電子顕微鏡で観察した。
【0036】
マウス構築体
2方向性tet応答性プロモーター(Baronら、1995年)を有するプラスミド(Biteto)を生成してから、1方向においてGSK-3βcDNA(その5'末端のMYCエピトームをコードする)、他方向において核局在化シグナルに融合したβ-ガラクトシダーゼ(β-gal)をコードするcDNAの双方を生成した(図1A)。このプラスミドを、COS細胞において実施したトランスフェクション実験で評価した(図1B)。このプラスミドそれ自体またはタウをコードする発現ベクターと共にコトランスフェクションされたプラスミド(図1B、1レーンおよび2レーン)は、GSK-3βに対する抗体によるウェスタンブロット法により証明されたようにGSK-3β濃度に何ら作用を及ぼさなかった。tTAの発現を可能にするプラスミド(図1B、3レーンおよび4レーン)と共にコトランスフェクションされた場合、GSK-3β濃度の著しい増加が明白であった。このことは、PHFタウのリン酸化エピトームを認識するPHF-1抗体によるウェスタンブロット法により証明されたように、タウのリン酸化を増加させる結果となった。テトラサイクリンが存在した場合(図1B、5レーンおよび6レーン)、GSK-3βのトランス活性化は失われた。したがって、これらの実験は、BitetO構築体からGSK-3βが条件付きで発現をしていることを示している(図1A)。
【0037】
次にBitetO構築体を卵母細胞に顕微注入し、生じた5系統のトランスジェニック・マウスを、包括的にTetOと名付けた(図1C)。tTAマウス系統において、tTAトランスジーンは、カルシウムカルモジュリンキナーゼIIaプロモーター(CamKIIa-tTA系統EおよびB)の制御下にある(Mayfordら、1996年)。これらのtTA系統は、前脳において特に高い発現を有し、CNSにおいて制限された条件付きの発現を可能にするために選ばれた(Mayfordら、1996年; Yamamotoら、2000年)。TetOマウスを、tTAマウスと掛け合せると、出生したダブルトランスジェニック子孫(Tet/GSK-3βと名付けた)は、双方のトランスジーンを構成的に発現すると予想される(図1C)。しかし、この発現は、テトラサクリンまたはその類縁体の存在下では排除できる。
【0038】
tet調節系の条件付きトランスジェニック・マウスを作製する以前の実験では、tetO構築体の挿入のゲノム部位および/またはコピー数は、tTAによるトランス活性化の最終パターンおよびレベルに影響を与えることが示されている。BitetO構築体におけるβ-Galレポーター配列は、X-Gal染色またはβ-Galに対する免疫組織化学のいずれかによりダブルトランスジェニック・マウスにおけるトランスジーン発現パターンの迅速な分析を可能にし、さらにテトラサイクリンによるトランスジーン・サイレンジングの効果の試験を可能にする。我々は、どのTetOマウス系統が我々の研究にとってより好適であるかを決めるためにこれを利用した。
【0039】
各種TET/GSK-3βマウス系統の特性評価
5系統のTetOをtTA系統と交配した際、それらのうち3系統が、線条においてのみβ-Gal発現を示した(データは示さず)。残りの2系統のTetO(系統G6およびG7)は、皮質および海馬などのADに関連する脳領域で高レベルのトランスジーン発現を示し、我々の研究に特に好適であったため残りの系統G6およびG7に研究の焦点を当てた。これら2系統は、内因性CamKIIcαと極めて類似した空間パターンでβ-Galをトランス活性化し、皮質、海馬、線条および小脳扁桃において明白に発現する(図2)。成体Tet/GSK-3βマウスの脳切片における免疫組織化学は、皮質の種々のニューロン層において、海馬(海馬台、CA1、CA2、CA3および歯状回を含む)の種々の領域、および1.1線条においてβGalの発現を示す(図2C〜E)。淡蒼球、視床、聴覚脳幹および小脳などの他の脳領域にβ-Gal発現は検出されなかった(図2A、2E、3A、図示せず)。同様のパターンおよびトランスジーン発現レベルが、いずれかのCamKIIα-tTA系統(EまたはB)を1系統のTetO(G6またはG7)と組み合わせた場合に得られた。本研究において、我々は、各々の組み合わせを相互に変えて用いた。したがって今後、シングル・トランスジェニック・マウスには用語tTAおよびTetO、ダブルトランスジェニック動物にはTet/GSK-3Bを用いることとする。
【0040】
Tet/GSK-3Bマウスは、生育可能で繁殖力があり、トランスジーン発現を抑制する薬理学的介入がなければ正常に見える。これは、脳内にGSK-3β発現が増加するという以前に前提とした毒性と矛盾するように思われる(Brownless、1997年)。しかし、tTAマウスとTetOマウス間のヘテロ接合交配は、各遺伝子型(野生型、tTA、TetO、およびTet/GSK-3β)について25%の予想頻度とはならなかった。Tet/GSK-3βマウスでは表現が低下した(14%、n=401)。このことは、Tet/GSK-3βマウスにおけるGSK-3βの胎仔での過剰発現による致死性を示していると思われる。
【0041】
我々は以前、ハンチントン病のCamKIIα-tTA駆動動物モデル(HD94)において周産期のトランスジーンの発現および致死性を観察した(Yamamotoら、2000年)。HD94マウスの場合、妊娠マウスに、E15から誕生まで、任意の飲用水に入れたテトラサイクリン類縁体のドキシサイクリン(2mg/ml)を投与すると、生後のトランスジーン発現のみが生じ、4種の予想遺伝子型の頻度が25%まで回復する。したがって、我々は、周産期のドキシサイクリン処理の同一プログラムをTet/GSK-3Bマウスに適用することにした。我々は、POでは非処理マウスが前脳においてX-gal染色を示すが、処理マウスでは染色されないことを見つけた(図2AおよびB)。このことは、Tet/GSK-3βマウスにおけるトランスジーン発現が胎仔期に始まり、ドキシサイクリンによって阻害できることを示している。予想どおり、周産期のドキシサイクリン処理により、Tet/GSK-3βマウスの頻度は25%まで正常化し、したがって、同腹仔のダブルトランスジーン・マウスの生産を最大にしたので、周産期のドキシサイクリン処理を日常に使用した。
【0042】
Tet/GSK-3βマウスは、皮質および海馬でGSK-3βを過剰発現する。次いで我々は、ウェスタンブロット分析法により、β-Gal発現を示す脳領域がGSK-3βの濃度増加を示すことも確認した。抗MYC抗体でタンパク質抽出物をプローブすると、トランスジーンGSK-3βの最高レベルの発現は海馬で生じ、次が皮質であり(図3A)、一方、線条では発現が殆ど検出されなかった(図示せず)。したがって、3月齢マウスからの抽出物をGSK-3βに対して誘導した抗体でプローブすると(図3AおよびB)、野生型マウスに対して、Tet/GSK-3βマウスの海馬におけるGSK-3β濃度の有意な(p<0.02)40+/-12.4%の増加が観察された。皮質抽出物もまた、Tet/GSK-3βマウスにおいてGSK-3β濃度の増加(17+/-5%)を示した。線条(図示せず)または小脳などの非前脳領域(図3B)においてはGSK-3β濃度の差はなかった。次に我々は、1月齢から12月齢の範囲で、Tet/GSK-3βマウスの海馬および皮質に生じるGSK-3βの増加をモニタした。過剰発現のレベルは、試験した月齢の全てにおいて同様であり(図示せず)、本研究における残りの実験は、2.5月齢と6月齢の間の成体マウスに対し行われた。
【0043】
どの細胞集団がGSK-3βを過剰発現するかの洞察を得るために、抗MYC抗体および抗GSK-3β抗体の双方で免疫組織化学を実施した。皮質において、GSK-3βに関する免疫活性の増加が、II層およびIII層の錐体皮質ニューロン(図3C〜E)および脳梁に隣接した薄片VIニューロン(図示せず)に見られた。
【0044】
海馬において、GSK-3βの過剰発現は全領域(海馬台、CA1、CA2、CA3、および歯状回)において明らであり、歯状回およびCA2では最も広汎な増加を示した(図3F〜H)。野生型マウスの歯状回は、GSK-3βに関して非常に弱いIRを示したが(図3Fおよび3I)、一方、Tet/GSK-3βマウスの歯状回においては、各ニューロンがGSK-3βを過剰発現した(図3Gおよび3I)。これらニューロンのあるものは、抗GSK-3β抗体および抗MYC抗体の双方により、著しく高い染色性を示し(図3I〜K)、しばしば収縮細胞体など(図示せず)の異常形態を示した。CA2錐体ニューロンでは、細胞体および樹状突起の双方において顕著な染色が、Tet/GSK-3βマウスに見られた(図3G〜H)。
【0045】
次に我々は、AD関連基質のβ-カテニンおよびタウに及ぼすGSK-3β過剰発現の影響をウェスタンブロット法により分析した。β-カテニンは、細胞間接着結合の成分であるが、またTcf/LEFファミリーのHMG-ボックス転写因子と関連しており、標的遺伝子の転写を促進する。GSK-3βは、β-カテニンの安定化および引き続く核トランスロケーションを調節する重要な酵素である(Anderton、1999年; Barthら、1997年)。
【0046】
我々は、まず全皮質および海馬抽出物中のβ-カテニン濃度を分析した(図4A)。野生型マウスとTet/GSK-3βマウスとの間に相違は見出せなかった。次に各種細胞区画におけるβ-カテニン濃度を分析した。図4Aに見られるように、皮質または海馬からの膜または細胞質ゾル抽出物中のβ-カテニン濃度に変化はなかった。核抽出物を分析すると、皮質中のβ-カテニン濃度に有意差は見られなかった。しかし、我々は、海馬中において野生型の同腹仔つがいと比較して、Tet/GSK-3〜マウスの核β-カテニン濃度において有意な(p<0.05、n=6)35+/-8%減少を観察した。核β-カテニンのこの減少は、Tet/GSK-3βマウスの歯状回における免疫電子顕微鏡法によっても明白であった(図示せず)。
【0047】
次に、小脳におけるのと同様にMYC発現を示すこれらの脳領域(皮質、線条および海馬)においてタウ抗体によるウェスタンブロット法を実施した。PHF-1抗体により検出されたように、海馬のみがタウのリン酸化レベルの増加を示した(図4B、および図示せず)。PHF-1抗体により検出されたタウのAD様リン酸化の増加は、タウの同一のリン酸エピトープに対して誘導されたAD2抗体を用いて再現された(図4C)。Tet/GSK-3βマウスのPHF-1およびAD2IRの増加は、全タウイソ体を認識するリン酸化非依存性タウ抗体7.51では増加が見られなかったため、全タウの濃度変化によるものではない。さらに、プロリン残基に隣接しておらず、インビボでGSK-3β非依存性であることが示されている(Munoz-Montanoら、1997年)セリン262におけるリン酸化は、12E8抗体により検出されたようにTet/GSK-3βマウスに影響を与えない(図4C)。
【0048】
我々は、4種の可能な遺伝子型(野生型、tTA、TetO、およびTet/GSK-3〜)におけるタウのリン酸化およびトランスジェニックスタンパク質の発現を比較した(図4C)。Tet/GSK-3βマウスのみが、β-Gal発現およびGSK-3β、PHF-1タウおよびAD2タウの濃度増加を示し、したがってTet/GSK-3βマウスにおけるトランスジーン発現並びに引き続く効果は、BitetO構築体のtTAによるトランス活性化によるものであり、TetOマウスにおける後者の漏出によるものではなかったことを示した。
【0049】
AD様過剰リン酸化タウの細胞体樹状突起の局在化
我々は、海馬ニューロン集団が、ウェスタンブロット法により観察されたPHF-1 IRの増加を示す免疫組織化学により分析した。PHF-1の増加、免疫染色は歯状回において最も明白であった(図5)。野生型マウスにおいて、歯状回の顆粒細胞は、検出可能なPHF-1 IRを示さない(図SA)、しかしCA3に投影する苔状線維にいくらかの染色が検出できた(図5B)。Tet/GSK-3Bマウスは、苔状線維染色が著しく増加し(図5D)、興味深いことに、たいていの顆粒細胞は、強い細胞体樹状突起のPHF-1免疫染色を示し、したがって、AD神経原線維変性のもつれ前の段階に似ている(図5C)。
【0050】
GSK-3βによるタウのリン酸化は、インビトロおよびトランスフェクションされた細胞で微小管に対するタウの親和性を減じる(Lovestoneら、1996年)。これは、PHF-1抗体により見出された細胞体樹状突起染色を部分的に説明できる。これを試験するため、タウのチューブリン結合ドメインに対し誘導され、したがって微小管に結合していない場合のみタウを認識する抗体、7.51により免疫組織化学を実施した。興味深いことに、7.51抗体は、Tet/GSK-3βの細胞体を染色したが、野生型歯状回顆粒細胞を染色しなかった(図5F)。7.51染色細胞の形態は、PHF-1抗体で見られたものと極めて類似していた(図5Cの挿入図を参照)。
【0051】
過剰リン酸化タウの強い細胞体樹状突起免疫染色はまた、PHFなどのタウの異常集合体型を示している可能性がある。AD脳内のチオフラビン-S染色は、神経原線維の変性並びにアミロイドプラークの双方を明らかにする。したがって、Tet/GSK-3βマウスの脳切片においてチオフラビン-S染色を実施した。チオフラビン-S蛍光は、歯状回の顆粒細胞、または他の脳領域のいずれにも検出されなかったので、PHF束状構造並びにβ-シートタンパク質集合体が無いことが示された。チオフラビン-S蛍光の欠如は、短いPHFの僅かな存在と両立し得るので、神経原線維変性の最初のステップを表している可能性がある。
【0052】
この可能性を分析するために、次に、Tet/GSK-3β顆粒細胞が、PHF-1に対して強い細胞体樹状突起免疫標識化を示すことから、それらの電子顕微鏡検査を行った。拡散反応生成物が、これらのニューロンの核周囲部に存在したが(図6A〜C)、ある場合には、暗反応生成物の斑点も見られた(図6C)。しかし、PHFは、暗反応生成物の斑点、または拡散免疫標識細胞質の他の部分においても見られなかった。興味深いことに、免疫標識物質は、粗小胞体(RER)シスターネの細胞質面に沿ってしばしば見られ、ある場合には上記暗染色斑点は、これら標識RER シスターネに密に近接している(図6C)。興味深いことに、拡散PHF-1細胞質標識を有するTet/GSK-3βニューロンは、周囲の神経網から剥離して現れることが非常に多く、大部分の辺縁部に沿って広がった細胞外空間を示すが、一方、非標識ニューロンは如何なる剥離も示さなかった。また、野生型マウスの顆粒ニューロンの剥離も見られなかった。
【0053】
ニューロンの細胞死およびTet/GSK-3βマウスの海馬における反応性神経膠症
前述の試験では、GSK-3Bがアポトーシスを防ぐPI 3-キナーゼ/PKB生存経路により阻害されることを示した(Crossら、1995年; Crossら、1994年; Hurelら、1996年; Saitoら、1994年)。これは、PS-1における変異によるβ-カテニンの不安定化が、ニューロンのアポトーシスを増加させるという(Zhangら、1998年)観察と共に、GSK-3βの過剰発現の結果としてTet/GSK-3βマウスにアポトーシスが生じるか否かを探索する促しとなった。
【0054】
Tet/GSK-3βマウスの各種ニューロン集団は、野生型マウスに存在しないTUNEL標識化を示した。これは、主に歯状回の顆粒細胞において観察された(野生型歯状回の標識の無いものに対して、Tet/GSK-3β歯状回の30μm切片1個につき5個の標識顆粒細胞まで)(図4AおよびB)。いくつかのTUNEL陽性細胞はまた、Tet/GSK-3βマウスの皮質薄片VIでは脳梁に隣接して見られた(図示せず)。
【0055】
次に、Tet/GSK-3βマウスにおけるGSK-3βの過剰発現により引き起こされたニューロン変性および/またはニューロンの細胞死が、反応性星状細胞増加や小神経膠細胞などの神経膠細胞変性を伴うか否かを試験した。神経膠細胞原線維酸性タンパク質(GF AP)に対し誘導した抗体により実施された免疫組織化学は、種々の脳領域における反応性星状細胞増加症を明らかにした。TUNEL標識と一致して、GF AP染色は、歯状回および深い皮質層に最も広がっていた(図7CおよびD、および図示せず)。電子顕微鏡検査により、Tet/GSK-3βマウスの歯状回における高度に活性化された神経膠星状細胞突起の存在、神経膠星状細胞中間体線維の全体が確認された。これらは、しばしばPHF-1 IRニューロンの周囲に見られた(図7E)。
【0056】
小神経膠細胞症が、Tet/GSK-3βマウスの海馬に生じたかどうかを試験するために、OX42抗体、LN-3抗体およびED1抗体により免疫組織化学を実施した。これら3種の抗体の全てに同様の結果が得られた(図7Fは、OX-42の免疫組織化学を示す)。野生型海馬切片と比較すると、微細な神経膠星状細胞突起の増加が、Tet/GSK-3βマウスの顆粒層に見られた。さらに、反応性小神経膠細胞に相当する免疫染色細胞体は、Tet/GSK-3βマウスのみの主に海馬の分子層に見られた(7Fの矢じり印)。
【0057】
考察
条件付きのトランスジェニック法をここで用いることにより、我々は、GSK-3βのインビボ過剰発現が神経変性をもたらすことを示す。GSK-3βを過剰発現する条件付きトランスジェニック・マウスはまた、B-カテニン不安定化および過剰リン酸化タウのもつれ前のような細胞体樹状突起局在化などのADの各種生化学的並びに細胞性の態様と類似している。したがって、我々の結果は、GSK-3βの脱調節がADの病因における重要な事象であるという仮説を支持し、これらのマウスが、この病理のいくつかの態様を研究するためも有用な動物モデルをとして役立つ可能性を高める。
【0058】
GSK-3βは、Wntシグナル化経路の成分として動物の発育期に活性であり、細胞死の決定およびパターン形成において重要な役割を果たす(Bourouisら、1990年; Ruelら、1993年; Siegfriedら、1992年; Siegfriedら、1994年)。したがって、GSK-3βを阻害するリチウム能力は、催奇形性作用の原因となることが示唆された(Klein and Melton、1996年; Stambolicら、1996年)。発育早期におけるそれらの十分に確立された役割とは別に、Wntシグナル化およびGSK-3βは、生後の小脳顆粒細胞のシナプス形成に関与することが示されている(Hallら、2000年; Lucas and Salinas、1997年)。Brownleesおよび共同研究者は、ニューロン特異的プロモーターを用いてもGSK-3βの検出可能な過剰発現を有するトランスジェニック・マウスを生産できなかった理由が、CNSの胎仔期、および生後発育期のGSK-3β過剰発現の毒性によって説明できる。これに促されて、これらの著者は厳密に制御された誘導発現系の利用を示唆している(Brownleesら、1997年)。我々の場合、ダブルトランスジェニック・マウスの一部が周産期に死ぬこと、そしてこのことが胎仔期にトランスジーン発現を沈黙させることにより救うことができることも見出している。しかし、何匹かのマウスは薬理学的介入なしで生存できる。何故このことが起こり得るかには少なくとも2つの理由がある。第1に、我々が使用するプロモーター(CamKIIα)は、Brownleesおよび共同研究者により使用されたもの(NF-L)よりも制限された発現パターンを有すること。第2に、我々の2成分系においては、トランスジーンそれ自体は沈黙していること。これによりトランスジーンの毒性によるファウンダー動物の致死性が避けられる。引き続くtTAとの繁殖により、トランスジーンの胎仔の過剰発現に許容性の非遺伝的背景を有するこれらのダブルトランスジェニックの子孫を選ぶことができる。
【0059】
過剰リン酸化タウの細胞体樹状突起の蓄積は、AD神経原線維変性の展開における早期の事象である(Braakら、1994年)。タウのもつれ前のような免疫染色が、タウの種々のイソ体を過剰発現するトランスジェニック・マウスに見られる(Brionら、1999年; Gotzら、1995年; Ishiharaら、1999年; Spittaelsら、1999年)。これらのマウスにおけるタウの細胞体樹状突起の局在化は、微小管のタウ結合能の飽和によると思われる。次に、過剰のタウは、細胞体に蓄積し易く、リン酸化やコンフォメーションの変化などの後の修飾を受け易い。Tet/GSK-3βマウスにおいて、過剰リン酸化およびタウの細胞体樹状突起の局在化はタウの全濃度に影響を与えることなく生じ、したがって、ADおよび他のタウパシーに見られる状態に、より密に類似している。Tet/GSK-3βマウスに見られる7.51免疫染色の増加および、以前のインビトロ研究(Novakら、1991年)によれば、Tet/GSK-3Bマウスにおけるタウのリン酸化増加は、微小管に対するタウの親和性減少に続いて、細胞体内におけるタンパク質の蓄積を最も導き易い。
【0060】
我々は、Tet/GSK-3βマウスにおける細胞体樹状突起タウが小胞体にしばしば関連することを見出している。同様の結果が、タウの最短イソ体を過剰発現するトランスジェニック・マウス(Brionら、1999年)および高齢ヒツジ(Nelsonら、1993年)に見出された。これら全ての場合、免疫検出は、PHF-タウに見られるリン酸化またはコンフォメーションエピトープを認識する抗体により実施された。興味深いことに、AD脳中のPHFは、小胞体および他の膜構造からしばしば生じることが見出されている(Grayら、1987年; Metuzalsら、1988年; Papasozomenos、1989年)。したがって、動物モデルにおいて、タウと小胞体との会合は、神経原線維病変部形成の早期段階を表す。タウと小胞体との会合に対するその他の矛盾のない説明としては、PS-1との相互作用があり得る。PS-1は、ヒト脳抽出物に実施された共免疫沈降実験におけるタウとGSK-3βとの双方に結合することが判っており(Takashimaら、1998年)、PS-1は、主として小胞体とゴルジ体に局在している(Selkoe、1998年)。
【0061】
いくつかの機構が、Tet/GSK-3βマウスに検出されたニューロンのストレスおよび死の原因となり得る(反応性膠細胞およびTUNELの染色により明らかとなった)。タウのリン酸化および区画化に及ぼすGSK-3β過剰発現の効果に鑑みて、可能な機構は微小管細胞骨格の解体である。この場合、タウによる微小管の安定化が減少する結果、AD脳に見られたもの(Terry、1998年)と同様に微小管含量の減少がTet/GSK-3βマウスに予想されるであろう。さらに、GSK-3βは、PI-3キナーゼを伴う生存経路により否定的に調節され(Crossら、1995年; Crossら、1994年; Hurelら、1996年; Saitoら、1994年)、皮質ニューロンを栄養因子の離脱またはPI-3キナーゼ阻害剤とで培養した誘発は、アポトーシスを引き起こすGSK-3βを刺激することとなる(Hetmanら、2000年; Pap and Cooper、1998年)。最後に、β-カテニン媒介転写の減少により、β-アミロイドにさらされた(Zhangら、1998年)、または変異株PS-1(Weihlら、1999年)によりトランスフェクションされた一次ニューロン培養においてニューロンのアポトーシスを増加させることが示された。アポトーシスに対する感受性増加の原因となるβ-カテニンによりトランス活性化された標的遺伝子については殆ど知られていない。Tet/GSK-3βマウスは、示差ディスプレイ法またはDNA-ミクロアレイ法によるこのような遺伝子を確認する有用な系であり得る。
【0062】
特にβ-アミロイド毒性カスケードおよびプラーク形成(Price and Sisodia、1998年)に関連して、ADのトランスジェニック・マウスモデルの生産に向けてこの2、3年間は大きな進歩があった。APPの変異体のより高い発現レベルを有するマウスを生産することにより、またそれらを、APPをAβ42へと都合よくプロセッシングする変異PS-1トランスジェニック・マウスと繁殖させることにより、引き続いて改善がなされた(Gueriette and Tanzi、1999年)。しかしながら、GSK-3βの調節解除がADの病因における重要な事象である場合、Tet/GSK-3βマウスは、ADの代わりのマウスモデル、および/または補足的マウスモデルを構成し得る。
【0063】
ADの形質導入モデルについて、今までなされた努力の大部分は、ADの神経病理学的特徴の類似化に焦点が当てられた。これは、ヒトにおいて長年にわたり形成されるものを、マウスの寿命内に再現させるために、過度に人工的な修飾が必要とすると思われる。別途に、ヒトに特異的な手がかり(インビボβ-アミロイド誘導毒性(Geulaら、1998年)の場合のように)を必要とすることから、マウスにおけるAD神経病理学の全態様を類似化することが実際には可能ではないかもしれない。GSK-3βは、AD様タウの過剰リン酸化、β-アミロイド誘導毒性およびPS-1変異を伴う経路の近似現象において見出された酵素である。ADの既に存在するマウスモデルと比較すると、Tet/GSK-3βマウスは、究極的にADのいくつかの態様が原因となり得る下流の神経内機能不全を再現する点でユニークである。この仮説の予知により、GSK-3β濃度(または活性)および基質が、AD患者間で変化していることが見出されるはずである。これを有利とする証拠が既に報告されている(Peiら、1999年; Shiurbaら、1996年)。
【0064】
Tet/GSK-3βマウスにおける神経変性は、リチウム、すなわち比較的特異的なGSK-3β阻害剤の神経保護効果とよく一致する。リチウムの神経保護効果は、GSK-3βを阻害する能力(Alvarezら、1999年; Hetmanら、2000年)、およびBcl-2(Chenら、1999年)をアップレギュレートする能力およびニューロン(Manjiらにより改訂、1999年)におけるBaxタンパク質(Chen and Chuang、1999年)をダウンレギュレートする能力に帰せられる。斯様に、Tet/GSK-3βマウスは、来るべきGSK-3β特異的阻害剤の神経保護効果を試験するのに良好な手段である。さらに、これらの有効性を、テトラサクリン類縁体を投与することによりトランスジーン発現を沈黙させる効果と比較することができる。
【0065】
[参考文献]














【特許請求の範囲】
【請求項1】
GSK-3βタンパク質を脳内で過剰発現する非ヒトトランスジェニック動物であって、前記GSK-3βタンパク質の発現がtetで調節される条件付きのGSK-3β発現系の制御下にある、非ヒトトランスジェニック動物。
【請求項2】
GSK-3βが過剰発現する唯一の酵素である請求項1に記載の非ヒトトランスジェニック動物。
【請求項3】
GSK-3βが過剰発現する唯一のタンパク質である請求項1に記載の非ヒトトランスジェニック動物。
【請求項4】
哺乳動物である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の非ヒトトランスジェニック動物。
【請求項5】
哺乳動物がマウス、ラットまたは霊長類である請求項4に記載の非ヒトトランスジェニック動物。
【請求項6】
アルツハイマー病のモデルとしての請求項1乃至5のいずれか一項に記載の非ヒトトランスジェニック動物の使用。
【請求項7】
神経変性疾患を治療するための薬物または療法の試験における請求項1乃至5のいずれか一項に記載の非ヒトトランスジェニック動物の使用。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の非ヒトトランスジェニック動物に療法を実施すること、および病理または挙動に対する影響をモニタリングすることを含むアルツハイマー病の治療に有用な療法の同定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−85653(P2012−85653A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−1386(P2012−1386)
【出願日】平成24年1月6日(2012.1.6)
【分割の表示】特願2001−585317(P2001−585317)の分割
【原出願日】平成13年5月18日(2001.5.18)
【出願人】(593005895)コンセホ・スペリオール・デ・インベスティガシオネス・シエンティフィカス (67)
【氏名又は名称原語表記】CONSEJO SUPERIOR DE INVESTIGACIONES CIENTIFICAS
【出願人】(502415548)ウニベルシダッド・アウトーノマ・デ・マドリード(ウ・ア・エメ) (2)
【Fターム(参考)】