説明

神経学的な自己免疫性障害

本発明は、哺乳類における自己免疫性の神経学的な障害を診断する方法であって、哺乳類からの体液サンプルにおいて、少なくとも一つのKv1-複合体タンパク質のエピトープに対する自己抗体を検出する工程を含む方法;および関連する方法, アッセイのキット, 単離または精製された自己抗体または抗体 断片,又はその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の説明】
【0001】
本発明は、自己免疫性障害に関する, また特に哺乳類における係る障害を診断する方法に関する。また、本発明により提供される事項は、係る診断に使用するキット, および自己抗体を検出するための方法および組成物である。
【0002】
電位開口型のカリウムチャンネル (VGKC) 抗体は、三つの主な臨床の症候群: 神経ミオトニー(NMT), モルヴァン症候群(MoS)および 辺縁系脳炎(LE: limbic encephalitis)と関連する。NMTは、筋痙攣および硬直, および時々は疼痛を生じる末梢神経過剰興奮性症候群(peripheral nerve hyperexcitability syndromes)を記載する。MoSは、NMTに加えて自律神経性の特性、一例を挙げると多汗, 便秘, 心臓の不規則性, および中枢神経系の特性, 特に錯乱(confusion), 幻覚(hallucinations)および不眠を記載する。抗-VGKC 抗体と関連するLEは、健忘症の中枢神経系 (CNS)-限定の特性, 人格または精神医学的な障害, および発作(癲癇)を含む。これらのコンディション(特に、MoS)は、胸腺または他の腫瘍(肺癌, リンパ腫, 婦人科の悪性疾患)と関連する可能性があるが、抗-VGKC 抗体関連性のLEは主に非-腫瘍随伴性(non-paraneoplastic)である。全ての三つの症候群は、亜急性に発病し、免疫療法応答性である可能性がある。加えて、他の臨床の症候群(例えば、特発性の癲癇)を呈している幾つかの患者においてこれらの抗体が認知される。大抵の患者は、これまで成人で認められたが、数例はこれらの抗体をともなう小児であり、LEまたは癲癇と診断されている。既にインビボでNMTで示されたとおり[1]、多くの証拠はLE および MoSの免疫グロブリン G (IgG)の病原性への関与を支持している。第一に、患者は、たびたび血漿交換後に迅速な臨床上の回復を経験する[2,3]。第二に、個々の患者の抗体価は、臨床状態の変化と相関する[2,3]。第三に、患者 IgGは、海馬(ほとんど全てのCNSの臨床特性を限局化しえる解剖学的な領域)に結合する[2-4]。抗-VGKC 抗体 および CNS 特性をともなう凡そ500の患者は、UKにおいて最近5 年で診断された(A Vincent, 未発表の観察)。
【0003】
ヨウ素標識アルファ-デンドロトキシン (I125-αDTX)-標識したジギトニン可溶化哺乳類脳ホモジネートを免疫沈降する患者血清は、抗-VGKC 抗体を含んでいることが示された[5,6]。電位型カリウムチャンネルは、Kv1 (Shaker) サブタイプを含む幾つかの 構造的に異なるファミリーのチャンネルからなる。Kv1 アルファ サブユニットは、排他的に他の Kv1 サブユニットとホモまたはヘテロ四量体化して活性なチャンネルを形成しえる。αDTXはKv1.1, 1.2 および 1.6と結合する、これらKvは脳組織に全て存在し、Kv1.1 および 1.2は末梢神経に見つけられる。これらの 3 サブユニットは、Kv1.4により及びKvβ1, 2 および 3により変更された機能および表面発現を有することができる、Kvβ2は脳組織において最も多く存在するKvβメンバーである。
【0004】
LE および MoSを有する患者は、一般にNMT患者よりも高い抗-VGKC抗体価を有する。NMT 抗-VGKC 抗体の抗原性の標的および機能的な効果は、以前に詳細に研究された。NMT IgGは、発現したKv1sと結合することが示されており、Kv1 電流をダウンレギュレートする[5-7]。しかし、LEまたはMoSの抗-VGKC 抗体を検査した研究は、僅か一例のみ存在する[8]。
【0005】
最近、幾つかの新規のKv1-相互作用タンパク質が記載された[9, 10]。本発明は、Kv1-複合体タンパク質〔例えば、三つのKv1-複合体タンパク質CASPR2 (contactin associated protein 2), Lgi1 (leucine-rich glioma inactivated gene 1), TAG1 (transient axonal glycoprotein-1, contactin 2としても知られる)(必ずしもKv1タンパク質自身であるとは限らない)〕がLE および MoSを有する幾つかの患者の自己抗体の標的であることを示している。
【0006】
第一の側面によると、本発明は、哺乳類における自己免疫性の神経学的な障害を診断する方法を提供し、該方法は哺乳類の体液サンプルにおいて、少なくとも一つのKv1-複合体タンパク質のエピトープに対する自己抗体を検出する工程を含む。
【0007】
少なくとも一つの Kv1-複合体タンパク質は、Kv1-複合体の他のタンパク質と複合体化/結合しえる。或いは、少なくとも一つの Kv1-タンパク質は、Kv1-複合体の分離体(例えば、共局在しない、複合体と物理的に結合しない)であってもよい。自己抗体は、複合型/結合状態にないときでさえ、通常の複合型/結合タンパク質と結合しえる。
【0008】
Kv1-複合体タンパク質は、Kv1に必須または非必須のアクセサリータンパク質であってもよい。Kv1-複合体タンパク質は、少なくとも一つのKv1, CASPR2, Lgi1 および TAG1を含んでもよい。Kv1-複合体タンパク質は、少なくとも一つのCASPR2, Lgi1 および TAG1を含んでもよい。一態様において、Kv1-複合体タンパク質は、Kv1を含まなくてもよい。
【0009】
CASPR2, Lgi1 および TAG1は、Kv1と相互作用する又は物理的に連結することが示されたタンパク質である。例えば、CASPR2 および Tag1は、Kv1 タンパク質がランビエ絞輪に局在するため必要である。
【0010】
Kv1-複合体タンパク質は、CASPR2を含む又はそれから本質的になっていてもよい。Kv1-複合体タンパク質は、Lgi1を含む又はそれから本質的になっていてもよい。Kv1-複合体タンパク質は、TAG1を含む又はそれから本質的になっていてもよい。Kv1-複合体タンパク質は、CASPR2, Tag1, Lgi1, および Kv1以外のKv1-複合体のタンパク質を含む又はそれらから本質的になっていてもよい。
【0011】
好ましくは自己免疫性の神経学的な障害は、辺縁系脳炎, モルヴァン症候群, 神経ミオトニー又は関連するコンディションである。好ましくは前記神経学的な障害は、辺縁系脳炎またはモルヴァン症候群, 又は神経ミオトニーである。神経学的な障害が辺縁系脳炎である場合、神経学的な障害の優性な特性は、発作、例えば、てんかん, 又は健忘症又は精神医学的な障害単独を含みえる。
【0012】
自己免疫性の神経学的な障害がモルヴァン症候群および/または神経ミオトニーである場合、Kv1-複合体タンパク質はCASPR2を含みえる。CASPR2に対する自己抗体は、胸腺の悪性疾患(thymic malignancies)および/または他の悪性疾患のリスクの増加を示す又はリスクの増加と関連する可能性がある。
【0013】
自己免疫性の神経学的な障害が辺縁系脳炎または優勢的(predominantly)に癲癇である場合、Kv1-複合体タンパク質はLgi1を含みえる。
【0014】
自己免疫性の神経学的な障害が神経ミオトニーおよび/または辺縁系脳炎および/または癲癇である場合、Kv1-複合体タンパク質はTAG1を含みえる。
【0015】
自己免疫性の神経学的な障害が である場合、Kv1-複合体タンパク質はCASPR2 および TAG1を含みえる。
【0016】
好ましくは、本発明の方法は、さらに以下の工程:
a) 体液をKv1-複合体タンパク質又はその抗原決定基と接触させることと;
b) Kv1-複合体タンパク質又はその抗原決定基および体液に存在する抗体の間で形成された任意の抗体-抗原複合体を検出することと、を含み,
前記複合体の存在は、自己免疫性の神経学的な障害, 好ましくは辺縁系脳炎, モルヴァン症候群, 神経ミオトニー又は関連するコンディションの指標(indicative)である。
【0017】
好ましくは、本発明の方法は、臨床症状の評価と組み合わせて行われる。本発明の方法及び臨床症状の分析の組み合わせを使用して個体が有する特定の神経学的な障害を決定しえる。
【0018】
自己抗体は、当該技術において周知の免疫学的なアッセイ技術により検出しえる。適切な技術の例には、ELISA, ラジオイムノアッセイ, 競合アッセイ, 阻害アッセイ, サンドイッチアッセイなどが含まれる。一般的に言えば、係るアッセイは抗原を使用し、抗原は固体の支持体に固定化されてもよい。試験されるサンプルは、抗原と接触させられる。また、抗原に特異的な自己抗体がサンプルに存在する場合、それらは免疫学的に抗原と反応して自己抗体-抗原複合体を形成し、これを次に検出又は定量的に測定しえる。代わりに、抗原は、細胞の表面に又は透過化した細胞内に発現できる[16]。自己抗体-抗原複合体の検出は、それぞれ全てのヒト IgGsまたはIgMsに共通の一般的な特性を認識する二次的な抗-ヒト免疫グロブリン抗体(典型的には、抗-IgGまたは抗-ヒトIgM)を用いて実施してもよい。通常、二次抗体は、酵素〔例えば、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)〕に結合されて、自己抗体/抗原/二次抗体の複合体の検出が酵素基質の付加および引き続く酵素反応産物の比色定量, 化学発光または蛍光検出により達成される、または蛍光シグナルと結合されえる[16]。好ましくは、前記方法は、タグをつけた又は標識した抗-IgG抗体である二次抗体を使用する。好ましくは抗-IgG 抗体は、レポーター分子で標識される。レポーター分子は、重金属, 蛍光または発光性の分子, 放射性のタグ又は酵素タグによるものであってもよい。酵素タグは、HRPであってもよい。
【0019】
好ましくは、抗-IgG 抗体からのシグナルの強度は、ポジティブコントロールまたはネガティブコントロールと比較した際に体液におけるKv1-複合体タンパク質自己抗体の相対的な量の指標である。
【0020】
更なる側面によると、本発明は、少なくとも一つの Kv1-複合体 タンパク質の少なくとも一つのエピトープを含む哺乳類における自己免疫性の神経学的な障害を診断するアッセイのキットを提供する。
【0021】
更なる側面によると、本発明は、少なくとも一つの Kv1-複合体 タンパク質の少なくとも一つのエピトープを含む哺乳類における自己免疫性の神経学的な障害のリスクの増加を検出するアッセイのキットを提供する。
【0022】
好ましくは、キットは、キットを使用するための説明書を含む。好ましくは、キットは、少なくとも一つのKv1-複合体タンパク質の少なくとも一つのエピトープを哺乳類からの体液サンプルと接触させるための手段も含む。好ましくは神経学的な障害は、辺縁系脳炎, モルヴァン症候群, 神経ミオトニー又は関連するコンディションである。
【0023】
関連するコンディションは、重い発作のない健忘症, 重い健忘症のない癲癇および/または重い健忘症のない人格/精神医学的な障害および/または胸腺の悪性疾患を含みえる。
【0024】
本発明のキットは、さらにキャリブレーション曲線を作成するための規準液を含みえる。
【0025】
別の側面によると、本発明は、少なくとも一つの Kv1-複合体タンパク質のエピトープに特異的な単離又は精製された自己抗体を提供する。係る抗体は、体液サンプル(bodily fluid sample)から単離されてもよい。
【0026】
なお別の側面によると、本発明は、少なくとも一つの Kv1-複合体 タンパク質 自己抗体に特異的な単離又は精製された抗体または抗体断片を提供する。係る抗体は、神経学的な障害および/または関連するコンディションの治療のための医薬として又は医薬の調製に使用しえる。好ましくは前記神経学的な障害は、辺縁系脳炎, モルヴァン症候群, 又は神経ミオトニーである。係る抗体は、薬学的組成物に薬学的に許容される担体, 賦形剤または希釈剤と共に含まれてもよい。関連するコンディションは、重い発作のない健忘症, 重い健忘症のない癲癇および/または重い健忘症のない人格/精神医学的な障害および/または胸腺の悪性疾患を含みえる。
【0027】
モノクローナルまたはポリクローナル 抗体または抗体断片は、当業者に周知の技術を用いて調製されえる。
【0028】
また、Kv1-複合体 タンパク質自己抗体に特異的な抗体は、神経学的な障害(例えば、辺縁系脳炎, モルヴァン症候群, 神経ミオトニー, または関連するコンディション)を検出するため又は係るコンディション又は胸腺の悪性疾患のリスクの増加を決定するための診断キットに使用しえる。
【0029】
本発明の任意の側面において使用する体液は、血漿, 血清, 全血(whole blood), 尿, 汗, リンパ, 糞便, 脳脊髄液, 又は乳頭吸引物(nipple aspirate)を含みえる。好ましくは、体液は、血清または血漿である。
【0030】
更なる側面によると、本発明は、神経学的な障害(例えば、辺縁系脳炎, モルヴァン症候群, または関連するコンディション)を患っている患者を治療する方法を提供し、該方法は前記患者に効果的な量の本発明の抗体又は少なくとも一つのKv1-複合体タンパク質又はそのエピトープを投与することを含む。
【0031】
なお更なる側面によると、本発明は、神経学的な障害(例えば、辺縁系脳炎, モルヴァン症候群, または関連するコンディション)を緩和(alleviating)する又は治療する能力のある化合物を同定する方法を提供し、該方法は候補化合物を少なくとも一つの Kv1-複合体 タンパク質又はそのエピトープおよび少なくとも一つの Kv1-複合体タンパク質に結合する能力のある抗体の存在下で接触させる工程を含み、前記抗体の少なくとも一つの Kv1-複合体 タンパク質又はそのエピトープへの結合を阻止する化合物は神経学的な障害を治療するための候補である。
【0032】
当業者は、上記で議論した任意の好ましい特性が本発明の任意の側面に適用できることを認識するだろう。
【0033】
本発明の好適な態様を以下に説明する図面および例を参照して単なる例示として記載する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】LEまたはMoS 血清は、ウサギ皮質抽出物からKv1sを沈降させるが、直接的にKv1sと結合しない。
【0035】
A. LEおよびMoS血清のタイトレーションによって、可溶化したウサギ皮質ホモジネート中で高いレベルのI125-αDTX-標識Kv1sが沈降する。
【0036】
B. 細胞内エピトープと結合する抗-Kv1.1, 1.2 および 1.6 抗体 (1:500)は、透過化したKv1.1, 1.2 または1.6のトランスフェクト細胞に結合する。抗-ウサギ IgG (1:750; 568nm)で視覚化した。抗-Kv1抗体の良好な特異性が観察された。
【0037】
C. HEK 細胞はKv1.sおよび増強緑色蛍光タンパク質 (EGFP) (488nm)でコトランスフェクションされた。Kv1.1-EGFP共発現HEK 細胞に適用されたLE (n=15) および MoS (n=6) 血清 (1:20)は、抗-ヒト IgG Alexa 蛍光 (568nm)を用いて表面への結合が検出されなかった。1.1, 1.2, 1.4, 1.6 および β2を含むKv1 サブユニットの組み合わせのコトランスフェクション後に結合は認められなかった。しかしながら、Kv1.1の細胞外エピトープに対する抗体(1:100)は、Kv1.1 トランスフェクト細胞に結合した。
【図2】機能的なαDTX-感受性 Kv1電流は、LE および MoS IgGの短期の適用(acute application)により影響されなかった。
【0038】
A. Kv1.1でトランスフェクトされたHEK-293 細胞は、αDTX-感受性の電流を示す。
【0039】
B. 同様に, Kv1.6でトランスフェクトされたHEK-293 細胞は、大きい振幅(large amplitude)のαDTX-感受性電流をしめした; これらの電流は、Kv1.1-媒介性電流よりも有意に大きい振幅の電流であった。
【0040】
C および D. Kv1.1 (C) および Kv1.6 (D) 電流は、コントロール又は患者の血清の短期の適用により影響されない。
【図3】αDTX-感受性のKv1電流は、Le および MoS IgGの長期の適用(chronic application)により影響されない。
【0041】
A および B: αDTX-感受性 Kv1.1 (A) および Kv1.6 (B) 媒介性の電流は、患者の血清との 1 日のインキュベーションに続いて有意に低下しなかった(p>0.05, 一元配置 ANOVA)。
【0042】
C および D: 同様に、Kv1.1 (C)又はKv1.6 (D) 媒介性の電流における有意な減少は、患者血清との3-日のインキュベーション後に観察されなかった(p>0.05, 一元配置 ANOVA)。
【図4】患者の血清と抗-Kv1sは異なる量の I125-αDTX-標識 Kv1sをウサギ皮質抽出物から沈降させ、患者の血清はI125-αDTX-標識 Kv1sをトランスフェクト細胞抽出物から沈降させなかった。
【0043】
A. 各アッセイ(n=3 実験)において抽出されたウサギ皮質からの50,000 cpmのI125-αDTX-標識 Kv1sでの複数の抗-Kv1の市販抗体, LE (n=5) および MoS (n=3) 血清のタイトレーション。健常コントロールの値を差し引いて比較データ(specific data)をつくった。
【0044】
B. 一部位結合の双曲線で予測された図 4Aの各抗-血清により沈降したI125-αDTX 結合部位の最大数(GraphPad Prism V5)。
【0045】
C. トランスフェクト細胞から抽出されたI125-αDTX-標識 Kv1.1/1.2/1.4/1.6/β2はLEまたはMoS 血清 (5ul)により沈降されなかったが、抗-Kv1 抗体 (5ul; n=5 実験)により沈降された。健常コントロールの血清または無関係の抗-ウサギ抗体を用いて非特異的な結合が減じられた。
【図5】LE および MoS血清結合部位は、125I-αDTX-複合体から解離する。CASPR2 抗体は、脳抽出物から125I-αDTXを免疫共沈降し、LE/MoS 血清と同様に解離する。
【0046】
A. I125-αDTX-標識, ジギトニン-可溶化ウサギ皮質複合体と結合するLE(n=5) および MoS (n=3) IgGは、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)に抗-Kv1.1/1.2 IgGの結合よりも大きい感受性を示した(全て8血清の組み合せの結果)。
【0047】
B. 抗-CASPR2 抗体は、標識した脳ホモジネートからトータルのI125-αDTX 結合部位の20%を沈降させ、LE および MoS 血清で認められた結果と類似していた(図 4a)。加えて、抗-LgI1抗体はトータルのI125-αDTX 結合部位の>60%を沈降させ、また抗-TAG1抗体はトータルのI125-αDTX 結合部位の<10%を沈降させた。このようにトータルのI125-αDTX 結合部位の高い比率がLgi1と複合体化し、小さい比率がTAG1と複合体化する。
【0048】
C. Aで示された実験と類似する実験において、CASPR2抗体(2 実験の平均)の及びLgi1 抗体(3 実験の平均)の解離パターンは、抗-Kv1.1/1.2 IgG 結合と比べてLE 患者のIgG (n=5)のものと類似する。
【図6】幾つかのLE/MoS 血清は、直接的にCASPR2の細胞外ドメインと結合する。溶液における結合は高度に特異的であり、これらのタイターは125I-αDTX免疫沈降のタイターと相関する。
【0049】
A. LE および MoS血清(1:100)は、発現したCASPR2の細胞外ドメインと結合する(x1000 拡大率)。
【0050】
B. CASPR2-EGFP抽出物の100fU (蛍光単位)を、5ulの患者血清とインキュベーションし、免疫沈降した。I125-αDTX-標識した脳ホモジネートを免疫沈降することが知られている188の血清のうち、32 (18%)がCASPR2-EGFPも沈降させた。I125-αDTX-結合部位を沈降させなかった他の神経疾患を有する患者からの血清は、CASPR2-GFP 蛍光免疫沈降アッセイ (FIPA)を用いて陽性ではなかった。これらの疾患には脳症(EN), 胸腺腫, 多発性硬化症 (MS), 自律神経性の疾患(ANS) および健常コントロール(HC)が含まれる。これらの血清は、MuSK-EGFPの細胞外ドメインを沈降または結合しない(図 6a, 下部パネル)。
【0051】
C. 抗-CASPR2 FIPAのタイターは、I125-αDTX脳ホモジネート免疫沈降のタイターと直線的に相関する(Spearmanの相関係数 r2=0.89, P<0.0001)。
【0052】
D. CASPR2の細胞外ドメインに対する抗-CASPR2陽性の血清の免疫吸着によって、I125-αDTX-脳抽出物からの沈降が未然に防がれる*。
【0053】
しかしながら、Kv1.1-1.2-1.6 発現HEK細胞の細胞外ドメインに対する吸着は、I125-αDTX-脳抽出物の沈降物を除去しない。
【図7】CASPR2 抗体は、IgG1 および IgG4 サブクラスであり、高親和性である。それらは直線化したCASPR2にウエスタンブロットで結合しない。
【0054】
A. 既にCASPR2-GFP 発現HEK 細胞に結合した抗-CASPR2 抗体に結合するサブクラス特異的な抗-IgGs二次抗体によって、抗-CASPR2抗体サブクラスの相対量の定量が可能である。
【0055】
B. 抗体親和性のスキャッチャード分析は、CASPR2-GFP抽出物を非-飽和容量の患者血清(n=5)とタイトレーションすることにより計算された。1.2 x10-8MのKd値(± 標準偏差 0.54 x10-8M)が得られた。
【0056】
C. CASPR2は180KDaの分子量を有する。マウス 抗-CASPR2 抗体は、CASPR2 抽出物中の180kDa のバンドを検出するが(†, 囲み)、Kv1.1/1.2/1.6 抽出物では検出しない(*)。試験済みの抗-CASPR2 陽性血清は、CASPR2 抽出物 (†)においてウエスタンブロットで一致するバンドと結合しない。
【図8】血清 IgGのTAG1トランスフェクトHEK細胞への結合。
【0057】
A. TAG1 トランスフェクト細胞に結合する市販の抗体によって、TAG1が細胞表面で発現されることが示された。
【0058】
B. TAG1-HEK (EGFP 陽性) 細胞の表面に結合するNMTの患者血清IgGの例。臨床診断が確認された患者から試験された108 血清のうち、僅か4つが明らかにTAG1に結合した。これらのうち三つは、神経ミオトニーの患者からのものであった。
【0059】
C. コントロール血清(n=40)は、結合しなかった。
【図9】血清 IgGのLgi1トランスフェクトHEK細胞への結合。
【0060】
A. Lgi1-HEK 細胞に結合する血清IgGの二つの例。試験された108 血清のうち、39はLgi1-トランスフェクト細胞に結合した。コントロール血清(他の疾患, 健常個体)は、結合しなかった(n=70)。
【0061】
B. しかしながら、結合はEGFPコトランスフェクトHEK細胞に独占的なものではなく、(以前の報告[24, 25]のとおり)Lgi1が培地に分泌され、その幾つかがトランスフェクトされた(EGFP 陽性, 緑色) および トランスフェクトされなかった(EGFP陰性, 非緑色) HEK細胞の双方の表面に結合することを示唆している。
【図10】Lgi1 反応性の血清 IgGのトランスフェクトされなかったHEK 細胞への結合。
【0062】
A - Lgi1 培地, Lgi1-トランスフェクト HEK 細胞からの上清で1 時間インキュベーションしたトランスフェクトされなかった HEK 細胞は、前にLgi1に結合すると同定された患者血清 IgGにより結合された(図 9)。
【0063】
B - MUSK 培地, MUSK-トランスフェクト HEK 細胞上清からの上清で1 時間インキュベーションしたトランスフェクトされなかった HEK 細胞は、これらの 患者のIgGにより結合されなかった。
【図11】ルーチンの臨床検査のVGKC抗体タイターが異なるVGKC Kv1-複合体タンパク質に対する抗体を有する患者において示される。コントロール血清は、<100 pM(ライン)を沈降させる。
【図12】患者におけるVGKC 抗体タイターは、参照する神経学者により提出された質問表から決定された異なる臨床表現型に分けられた。
【図13】研究された108 患者のサンプルの臨床特性を示している表。
【図14】抗体の特異性により分類された患者の臨床特性を示している表。Lgi1 抗体を有する36/39 患者は辺縁系脳炎を有し、神経ミオトニーを有する患者はいない、また胸腺の悪性疾患を有する患者もいない。対照的に、CASPR2 抗体を有する10/27 患者はモルヴァン症候群を有し、8患者は神経ミオトニーを有し、10患者は胸腺の悪性疾患を有する。以上のとおり、これらの二つの別個の抗体の認識によって、「VGKC」抗体と関連する臨床上の不均一性の多くの部分が説明される。
【0064】
結果
LE/MoS血清は、125I-αDTX -VGKCsをウサギ皮質抽出物から免疫沈降するが、VGKC Kv1.1 および 1.6の電流を阻害しない。
【0065】
LE/MoS 血清は、本研究に使用された8 血清 (5 LE および 3 MoS)で示されたとおり、125I-αDTX -標識 VGKCsをウサギ又はヒトの皮質のジギトニン抽出物から免疫沈降する能力により同定される(図 1a)。抗体のタイターは、これらのプロットから決定され、2006 および 6412 pM (正常な 範囲 <100pM)の間で変動した。抗体が個々のVGKCsに結合するかどうかを決定するため、我々はHEK 細胞に個々のKv1.1, 1.2 および 1.6 サブユニットを発現させた。我々は、ウサギ 抗-Kv1 抗血清での間接的な免疫細胞化学を用いて適切なサブユニットの発現が存在することを確認した。これらのウサギ抗体は細胞内エピトープと結合するので、我々は細胞を透過化した。抗体は、抗体の適切なKv1サブタイプに特異性を示した(図 1b)。加えて、細胞は、Kv1.1 の細胞外免疫染色(図 1c)により、また未透過化細胞における125I-αDTX 結合部位の測定により示されたとおり、幾つかのKv1サブユニットを細胞の表面に発現した。しかし、残念なことに我々が試験した21のLE/MoS 血清の何れも同様な検出可能な表面結合を示さなかった(図 1c)。
【0066】
血清は依然としてKv1sの機能又は発現に影響するだろう可能性があった。トランスフェクトされた HEK 細胞は、αDTXにより阻害された電位依存性の電流を示した(図 2a,b)。我々は、Kv1.1または1.6を発現しているHEK 細胞を血清中(1:50-1:1000に希釈)でインキュベーションし、血清適用の前後で電流を比較した(図 2c,d)。健常な血清は、培地単独と比較してKv1電流を変化させなかった。記録された平均電流にある程度の変動性が存在したにもかかわらず、全体的には健常コントロール血清におけるインキュベーションと比較して、電流における患者血清の有意な影響は存在しなかった(一元配置 ANOVA; 図 2c,d)。
【0067】
幾つかの抗体は、直接的に彼等の標的抗原の機能に影響しないが、表面発現の減少をともなうインターナリゼーションの時間および温度に依存的な増加を生じる[12, 13]。患者の抗体が時間が経てば細胞表面発現を減少させるかどうかを確認するため、我々は細胞を1または3 日、37℃でインキュベーションし、αDTX-感受性の電流を試験した[12]。しかしながら、αDTX-感受性の電流に如何なる影響も認められなかった(図 3a-d)。従って、全体的には、これらの結果によって、HEK細胞表面において機能的な, αDTX-結合Kv1sの存在が確認されたが、患者の抗体が細胞に結合したこと又はチャンネルの機能または数に影響したことを示すことはできなかった。
【0068】
LE/MoS 血清は、脳抽出物から125I-αDTX -VGKCsの亜集団を沈降させない、またKv-トランスフェクトHEK細胞から125I-αDTX -VGKCsを沈降させない。
【0069】
さらに研究するため、我々は患者血清によりウサギ皮質から抽出された125I-αDTX-標識 VGKCの免疫沈降をKv1.1, 1.2, および 1.6に対するウサギ抗体によるものと比較した。全ての哺乳類の脳の125I-αDTX 結合部位には、Kv1.2が含まれると考えられる[14]。抗-Kv1.2は、50,000の最大 125I-αDTX 結合部位の81%を免疫沈降した(図 4a)。Kv1.1またはKv1.6 抗体の付加で、さらなる沈降は達成されなかった(補足データ 図 1B)。それ故、僅か19%の125I-αDTXがVGKCsに非結合性である。対照的に、抗-Kv1.1, 1.6 および 1.4による沈降は、それぞれ51%, 17% および 7%でプラトーに達した(図 4a)。これらのデータは、代替のKv1抗体を用いた以前の未発表の研究と整合性がある(補足データ 1c)。しかしながら、我々が同じアッセイで個々のLE/MoS 血清を試験した際に、それらは血清過剰でさえも一貫して125I-αDTXの最大カウント未満を免疫沈降した(図 4a)。プラトーの値は各血清で同一ではなかったにもかかわらず(図 1a)、平均値は試験した全てのLE/MoS血清に関して最大値の32% (23-43%の範囲)であった(図 4b)。
【0070】
これらのデータは、血清がαDTX-標識チャンネルの亜集団に結合しえることを示唆する。さらに探索するため、我々はKv1.1, 1.2, 1.4, 1.6 および β2 サブユニットをHEK細胞において個々に及び共にの両方で発現させ、細胞をウサギ皮質抽出物の調製に使用したものと同一の様式で2% ジギトニンに抽出した。抽出物を、125I-αDTX 標識し、抗-Kv1s および LE/MoS 血清による免疫沈降で試験した。個々のウサギ抗体の結果は、ウサギ皮質抽出物で認められたものと類似したが、LE/MoS血清による沈殿は存在しなかった(図 4c)。以上、これらの結果は、LE/MoS 抗体がホモマー又はヘテロマーの Kv1 サブユニットのいずれかに直接的に結合しないとの結論に我々を導いた。
【0071】
LE/MoSは、Kv1-複合型のタンパク質と結合する。
【0072】
これらの所見の一つの説明は、LE/MoS 抗体がウサギ皮質抽出物においてKv1sと結合するが、トランスフェクトHEK細胞に存在しないタンパク質と結合することであった。この仮説を検証するため、我々は125I-αDTX-標識ウサギ皮質抽出物をドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の濃度を増加させることで処理し、ウサギ 抗-Kv1 抗体 および LE/MoS 血清での免疫沈降を行った。結果はαDTX-結合複合体への患者の抗体の結合およびKv1.1 および 1.2 抗体の結合の間の解離を実証し、前者はSDS処理により感受性である(図 5a)。
【0073】
以前に脳抽出物においてKv1sまたはDTX結合部位と結合することが報告された幾つかのタンパク質が存在し、これにはロイシンリッチ神経膠腫不活化遺伝子 1 (Lgi1: leucine-rich glioma inactivated gene 1), コンタクチン結合タンパク質 2 (CASPR2), 一過性軸索糖タンパク質-1 (TAG1: transient axonal glycoprotein-1) および ポストシナプスデンシティー(PSD: post-synaptic density)メンバーが含まれる[9, 10, 15]。我々がこれらのタンパク質に対する抗体を試験した際、抗-Lgi1は61% のαDTX 結合部位を免疫沈降し、TAG1は約5%を免疫沈降した。これに対して、抗-CASPR2 抗体は、ウサギ抽出物から沈降されたαDTX-結合部位の比率(図 5b)およびSDSの濃度の増加に対する感受性(図 5c)の双方においてLE/MoS 血清のものと非常に類似する反応を示した。これらの所見は、我々のウサギ皮質抽出物において有意な比率のαDTX-標識 VGKCsがCASPR2と結合することを示し、LE/MoS 抗体が直接的にCASPR2と結合しえることを示唆する。同様に、 Lgi1 抗体による沈殿は、Kv1 特異的な抗体のものよりも大きなSDS感受性(図 5c)を示し、このタンパク質もLE/MoS 抗体の潜在的な標的であることを示唆している。
【0074】
幾つかのLE/MoS 血清抗体はCASPR2と結合する
LE/MoS 抗体がCASPR2と結合するかどうかを直接的に問うため、我々は細胞内C-末端にEGFPを導入することによりタンパク質をタグ付け後、HEK 細胞において完全長 ヒト CASPR2を発現させた。多くのLE/MoS血清がこれらの細胞の表面に結合し、ベクター単独でトランスフェクトされた細胞の表面に結合しない(図 6a)。EGFP-タグ付けCASPR2を用いる利点は、そのCASPR2によって血清抗体を定量的に溶液中で測定する迅速な方法を提供できることである〔アクアポリン-4 抗体に関して、Waters et al[16]〕。125I-αDTX-標識 ウサギ 皮質抽出物のコントロール値よりも多く沈降する188の血清を、沈降物における緑色蛍光を測定することによりEGFP-CASPR2を免疫沈降する能力について我々は試験した(図 6b)。健常個体または他の神経疾患の個体からの血清によって、感知できる蛍光が沈降されず、10 FUsの値がカットオフとして確立された。全部で18%のLE/MoS 血清は、各血清により沈降された12 および 100 FUsの間で変動する値で陽性である。これらの血清は、全てCASPR2の細胞外ドメインと結合した(図 6a)。この抗体に陽性の患者の集団内でウサギ皮質抽出物におけるVGKCsとの結合および直接のCASPR2への結合の間に非常に密接な相関性が存在した(図 6c)。さらに抗体の特異性を確認するため、我々は血清をCASPR2-発現HEK細胞で事前に吸着させた。これによって、CASPR2-EGFP 抽出物からのCASPR2の免疫沈降が無効となり、またウサギ皮質抽出物からの125I-αDTX-VGKCsの免疫沈降が無効となった(図 6d)。
【0075】
抗-CASPR2抗体の特性。
【0076】
多くの病原性の自己抗体は、高親和性, IgG, 補体活性化し、またコンホメーション依存性である。CASPR2-EGFP-発現HEK細胞のアイソタイプ特異的二次抗体での免疫染色によって、CASPR2 IgG サブクラスの相対的な存在量の決定が可能である(図 7a)。大抵のCASPR2抗体は、IgG1 および IgG4 サブクラスであり、僅かにIgG2であり、殆んどIgG3はない。また、我々は、異なる濃度のCASPR2-EGFPと結合する個々の患者の血清の限定量(limiting amounts)を試験し、スキャッチャードプロットで結果を分析した。五患者を分析して1.2 +/- 0.54 x10-8の平均Kdを得た(SD; 図 7b)。市販の抗-CASPR2抗体は、ウエスタンブロッティングを用いてCASPR2-トランスフェクト細胞の抽出物において強いバンドを180kDaで同定したが、試験したCASPR2抗体陽性の十患者はこのバンドに結合しなく、CASPR2抗体が変性したCASPR2抽出物に存在しないコンホメーションエピトープに結合することを示唆している(図 7c)。
【0077】
少数のVGKC抗体陽性の血清がTAG1に結合する
我々は最初にTAG1への結合に関して多くの血清を検査しなかった。というのも、抗-TAG1抗体は、僅か<10%の125I-αDTX 結合部位を脳抽出物から免疫沈降したからである(図 5B)。図 8Aは、ウサギ 抗-TAG1の結合により示されたとおり、TAG1-トランスフェクトHEK細胞が表面にTAG1を有することを示す。二患者の血清からのIgGの結合は、図 8Bに示される。血清は、未透過化のTAG1 トランスフェクト(EGFP コトランスフェクト)細胞の細胞外表面と結合する。我々は、試験した108のうちの四血清にTAG1結合抗体を見つけた。
【0078】
高い比率のLE/MoS血清がLgi1と結合する。
【0079】
Lgi1 トランスフェクト細胞に血清 IgGが結合することを高い比率の血清において我々は見つけた(以下を参照されたい)。しかしながら、結合は、EGFP コトランスフェクトHEK細胞の表面(EGFP陽性, 図 9A)のみならず、トランスフェクトされなかった周囲の細胞も検出した(図 9B)。Lgi1が培地に分泌され、次に全てのHEK細胞の表面に結合することが可能であると思われる(というのも、この事項は、以前に報告されているからである[上記の24, 25])。
【0080】
この事項が事実であったのかを検討するため、我々は上清をLgi1-トランスフェクト細胞から取得し、これをトランスフェクトされなかった HEK 細胞と1 時間、室温でインキュベーションした。これらの非トランスフェクト細胞を、次にLgi1 反応性を有する血清からのIgGの結合を捜すことにより結合Lgi1に関して試験した(図 9A)。他の抗原(例えば、MuSK)を発現している細胞からではなく(図 10B)、Lgi1-トランスフェクトされたHEK細胞からの上清(図 10A)が、HEK 細胞の表面にLgi1を転移でき、そこにLgi1-陽性患者の血清IgGが結合した。これによってLgi1が分泌され、また培養においてPC12 細胞の細胞表面に付着できるとの以前の観察が確認され、また拡張された(例えば、[24, 25])。
【0081】
CASPR2, TAG1 および LgI1 抗体の臨床上の関連性
我々の所見の臨床上の関連性を確立するため、我々はVGKC抗体を有する患者からの108の血清を三つの抗原を発現しているHEK細胞への結合に関して試験した。これらのサンプルには、ルーチンの分析に送ったVGKC 抗体高値(>400 pM)で主にCNS(LEまたはモルヴァン)疾患の患者を含むことが予想された88血清および付加的な20血清(神経ミオトニーの患者から13およびモルヴァン症候群から7)が含まれる。これらは我々のアーカイブから選択された。というのも、モルヴァン症候群が稀なため、また神経ミオトニー患者が典型的に低レベルの125I-αDTX-VGKCsに結合する抗体を有し、高い力価の患者中で低く提示されるだろうためである。
【0082】
三つの異なる抗体と関連するVGKC抗体のタイターが図 11に示される。これは、タイターがLgi1 陽性患者において最大であり、CASPR2 陽性患者において中等度であり、TAG1 陽性患者において低いことを示す(125I-αDTX-VGKCの免疫沈降で<100 pMであった一つの血清を含む)。
【0083】
我々は、主に参照する神経学者の詳細な質問表から臨床情報を得た(Oxford Research Ethics Committee A approval, 07/Q160X/28)。65患者は辺縁系脳炎(そのうち六患者は、癲癇を主要な特性として有する)を有し、12患者はモルヴァン症候群を有し、25患者は神経ミオトニーを有し、僅か六患者が癲癇, ジストニーまたは驚愕症候群(startle syndromes)(これらの分類に直接的に適合しない)を有していた。これらの患者は、VGKC 抗体と関連する障害の周知のスペクトルを代表する。異なる患者の臨床上のサブグループのVGKC抗体タイターの分布が図 12に示される。個々の患者における前のデータからの予想のとおり、それらタイターは辺縁系脳炎において最大であり、モルヴァン症候群においてより低く、神経ミオトニーにおいて最低であった。後者のグループは、ルーチンの検査においてVGKC抗体に関して陰性であった八患者を含む。図 13は、臨床症候群を示し、各グループの患者の数、非胸腺腫瘍(これらは可変性であり、僅か二人がサンプル参照時に臨床的に活動性であった)の根拠を有する数、および胸腺の悪性疾患の数(VGKC抗体と頻繁に関連する唯一の腫瘍タイプである)を示す[5]。
【0084】
図 14は、三つの異なる抗体の各々と関連する患者を示す。著しいことにLgi1抗体は殆んど独占的に辺縁系脳炎(39のLgi1陽性血清のうち三血清のみが他の症候群の患者からであった)の患者に認められ、重要なことに胸腺の悪性疾患の患者で認められなかった。対照的に, CASPR2抗体は、モルヴァン症候群の12患者のうち10患者に認められ、胸腺の悪性疾患の患者の10/11に認められた。加えて、CASPR2 抗体は、神経ミオトニーの25 患者のうち8患者に認められた。TAG1 抗体は四患者にのみ認められたが、これらのうち三患者は神経ミオトニーを有し、一患者はVGKC抗体に関して陰性であり;他のTAG1陽性患者は辺縁系脳炎を有していた。
【0085】
考察
我々は、以前に中枢神経系発現Kv1-タイプカリウムチャンネルに対する抗体を有すると信じられていた患者における新規の自己抗体標的としてCASPR2を記載する。加えて、我々は、他の患者の高い比率がLgi1 抗体を有し、少ない比率がTAG1 抗体を有していたことを示す(VGKC抗体の検査において陰性であった一患者を含む)。これらの抗体の存在は患者の異なる臨床特性と相関する。これらの結果は、異なる臨床表現型が神経系における異なるVGKC Kv1-複合体タンパク質を標的とする特異的な抗体の存在に依存するらしいことを初めて実証する。我々がここに規定する抗体は、VGKC 抗体陽性サンプルの65%を代表する。抗体検出アッセイにおけるさらなる改善によって、このパーセンテージを増加させえる。
【0086】
αDTXは、Kv1.1, 1.2 および 1.6(哺乳類の脳において最も豊富なKv1サブユニット)を標識する。LE および MoS IgGがαDTX-標識した脳タンパク質を免疫沈降するとの観察は、LE および MoS IgGのKv1タンパク質への直接の結合を示すと想定されてきた。脳組織の免疫組織化学は、特に、患者の血清でKv1.2の共局在化を示すことによりこの仮説を支持している[4], [3],[17]。さらにまた、一つの研究は、LE および MoS IgGの異種性の哺乳類細胞株において発現されたKv1sへの結合を示している[8]。しかしながら、特定の Kv1 サブタイプにLEまたはMoSの血清が優先的であるとのことによって、なぜ末梢性に産生された抗-Kv1抗体を有する患者が中枢神経系の表現型のみを呈示しえるのかについて説明できない。
【0087】
機能上、NMTの患者からのIgGの受動転移(passive transfer)によって、カリウムチャンネル機能不全に二次的なニューロンの過剰興奮性と整合性が取れた電気生理学的な変化が作られた[1]。同様に、LEおよびMoSの患者は発作, 神経ミオトニー およびニューロン欠損 [2], [18]などのニューロン過剰興奮性の特性を示す。また、Kv1.1変異の患者およびKv1.1-ノックアウトマウスは、発作を発生する[19],[20]。これらの証拠によって、Kv1 サブユニットはLE および MoS IgGの最も有力な抗原性の標的とされた。しかしながら、分子レベルでのアプローチは、この仮説を納得のゆくように確認していない。
【0088】
LEまたはMoS IgGがKv1.1と結合する場合、それらは抗-Kv1.1 抗体と同じ量の125I-αDTXを沈降させると予想される。抗-Kv1.1, 1.2, 1.4 および 1.6 沈降物に関する我々のデータは以前の研究[14, 21]と非常に類似するが、LE および MoS IgGはKv1sの亜集団を沈降させる(何らかの単独の抗-Kv1抗体と類似する量ではない)。この事項は、それらがKv1 タンパク質の何れか一つと結合するのではないことを示唆している。
【0089】
Kv1は四量体して機能的なαDTX-感受性チャンネルをHEK細胞の表面に形成する。しかしながら、我々は、LE および MoS IgGへの曝露後に電流抑制も表面の免疫蛍光で決定される結合も検出できなかった。IgGがKv1sの細胞内ドメインと結合する可能性を除外するため、我々は診断上のアッセイを模倣する条件下で細胞を可溶化し、我々の脳組織中に存在するものと類似するKv1 サブユニットのヘテロマーを抽出した。このパラダイムを用いて、我々はLEまたはMoS IgGが125I-αDTX-標識 Kv1sを沈降させることを実証することができなかった。以上より、Kv1 機能不全がLE および MoS 表現型の分子的な相関(molecular correlate)である可能性があり、またLE および MoS IgGが125I-αDTX 標識哺乳類脳ホモジネートからカウントを沈降させるにもかかわらず、それらは直接的にKv1 タンパク質に結合することにより沈降を行わない。従って、それらはKv1-発現HEK細胞に存在しない脳組織中でKv1と複合体化する別のタンパク質を共沈降する可能性がある。この仮説はKv1.1/1.2 および LE/MoS抗原の差別的なSDS感受性により強められ、特にそれらが125I-αDTX-結合脳複合体内で別々のより末梢性のタンパク質と結合する証拠が提供された。
【0090】
CASPR2は、大きい細胞外ドメインを有するKv1-共沈降分子である[9]。加えて、αDTX 複合体からのCASPR2の解離パターンは、LE および MoS患者のものと類似していた。可溶化したCASPR2-EGFPを用いるFIPAによって、診断アッセイ陽性の患者の32 (18%)において陽性値が得られた。抗-CASPR2抗体は、血清の研究の診断アッセイにおいて陰性である中枢神経系の疾患, 自律神経性の機能不全または胸腺腫の患者に存在しなかった。全ての抗-CASPR2 IgGは、CASPR2の細胞外ドメイン内のエピトープと結合した。これらのIgGsは直線化したCASPR2をウエスタンブロットで認識しなく、これらが哺乳類で発現されたCASPR2において利用可能なコンホメーションエピトープに結合することを示唆している。抗-CASPR2 抗体は、IgG1 および IgG4 サブクラスが優勢であった。IgG1 サブクラスは、抗-CASPR2 抗体-関連疾患の病因において補体結合に役割がある可能性を示唆する。これらの抗体は、高親和性であり、他の神経疾患において認められたものと類似する。CASPR2抗体免疫吸着後の診断アッセイにおいて検出可能な抗体が存在しなく、また抗-CASPR2のタイターおよび診断アッセイのタイターの間の直線的な相関性は、これらの抗-CASPR2が前に電位開口型カリウムチャンネル抗体と称した幾つかの抗体であることを強く示唆する。
【0091】
CASPR2の単独の神経発現によって、ニューロンの表面でのみ発生する抗体媒介性の病状が確立される。この事項は、LE および MoS患者において観察された臨床特性と一致する。CASPR2 および Tag1ノックアウトマウスは、野生型ニューロンに認められた傍パラノード(juxtaparanodal)-クラスター化したKv1sとは対照的にアクソンをとおした拡散性のKv1 分布を示す[22]。同様に、CASPR2のC末端短縮体(CASPR2 C-terminal truncations)を保持しているヒトからの脳組織は、対照の脳に認められるものよりもより拡散したKv1 発現を示した。これらの患者は、発作, 認知障害および腱反射の非存在を呈する[23]。CASPR2の中心および末梢の神経系分布を考慮に入れると、この遺伝的なモデルは、抗-CASPR2 陽性患者内にMoSが過剰に存在するとの我々の所見と類似する。
【0092】
抗-CASPR2抗体は、次の三つの主要な機構により前にクラスター化したKv1sの類似する分散を生じえる:
i) 補体結合および局所性の組織ダメージ,
ii) それらの標的タンパク質の直接の刺激または遮断および
iii) 標的抗原のインターナリゼーション。
【0093】
抗-CASPR2抗体がi) および iii)を介して作用を媒介することが最も可能性がある。Kv1sの数の減少によって、相対的に脱分極し過興奮性の膜が作られるえる。
【0094】
類似する考慮が、Lgi1またはTAG1に対する抗体に適用される。Lgi1は主に中枢神経系に、特に関心がもたれるのは、CASPR2を発現しない領域(例えば、海馬の苔状線維層)に発現する; このことからこれらの抗体を有する患者がなぜ優勢的に辺縁系脳炎を呈し、側頭葉MRIの高シグナルおよび側頭葉の癲癇と関連するのかが説明さええる[2]。そのうえ、lgi1をコードしている遺伝子における変異は、末梢神経の機能不全を示さない側頭葉の癲癇のファミリーにおいて認められる[28]。対照的に、TAG1は神経ミオトニーの患者における抗体の標的を提供できるランビエ絞輪でKv1.1およびKv1.2およびCASPR2と共に発現され、またTag1 ノックアウトマウスは以前にCNSおよびPNSの近接傍絞輪(juxtaparanodes)でクラスター化したKv1 タンパク質の分散(dispersion)を示した[22, 27]。全体的に、これらの所見は、抗-「VGKC」抗体と関連する臨床上の不均一性の重要な新しい理解を提供し、将来的に患者のより正確な同定および分類を提供するだろう。我々がここで使用する細胞に基づくアッセイは、高い頻度で溶液からタグをつけた抗原の免疫沈降に依存するアッセイよりも感度が高い〔例えば、[11, 16]〕。一例を挙げると、神経ミオトニーの14患者の付加的なコホートにおいて、我々は免疫沈降アッセイによりVGKC抗体に関して陰性であった5個体においてCASPR2またはTAG1 抗体を見つけた。このように、これらの標的の同定, およびアッセイの開発によって、表現型の差が説明されるのみならず、診断が改善されるだろう。
【0095】
方法
臨床材料
血清サンプルは、-20 oCで貯蔵された。臨床医は、患者をサブクラスに分類するため臨床上の詳細な事項を提供した。LE 血清は、健忘症および神経ミオトニーのない発作を有するものに分類された。MoS血清は、中枢神経系の特性に加えて自律神経性の特性および神経ミオトニーを有していた。コントロールには、胸腺腫(n=9), 亜急性に発病する自律神経性の疾患(n=34), 多発性硬化症 (n=14), 非-125I-αDTX沈降性の脳症(n=50)の患者および健常コントロール(n=10)が含まれる。88の血清を、何らかの既知の臨床の表現型に関係なく、中等度から高度のVGKC 抗体タイター(全て >400 pM)の血清から選択した。詳細な質問表から臨床情報を得るため、質問表を参照する神経学者に送り、情報をデータベースに照合した(Oxford Research Ethics Committee A approval, 07/Q160X/28)。これによって三つの主な臨床表現型を区別することが可能となった。前記患者のうち六患者は、これらのカテゴリーにうまく適合しなかった: 四患者は癲癇単独を有し、一患者は過剰驚愕(excessive startle)をともなうジストニーを有し、一患者は過剰驚愕単独を有していた。既知のモルヴァン症候群 (n=7)または神経ミオトニー (n=13)をともなう患者からの20の付加的な血清を、所見および統計学的分析の確認のためこれらの患者の数を増加するため加えた。
【0096】
ウサギの皮質から抽出されたVGKCsの放射性免疫沈降
VGKC複合体を、2% ジギトニン(Calbiochem, USA)を用いてDTX-緩衝剤 (100mM NaCl, 20mM Tris, 5mM KCl pH 7.12に調整)中で37oC、20 分間で可溶化されたウサギ皮質膜から抽出した。上清を、PTX (0.02M リン酸緩衝剤 および 0.1% Triton X100)で1:2に希釈し、I125-αDTX (Perkin Elmer, USA)でインキュベーションした。この抽出物を、PTXで100万カウントパーミニット(cpm)/mlに希釈した。解離実験に関して、ドデシル硫酸ナトリウム (SDS)をI125-αDTX 標識抽出物に2 時間、RTで加えた。50ulのI125-αDTX-標識抽出物を、血清または市販の抗体(PTXで50ulにした)と一晩、4oCでインキュベーションした。二次抗体 (抗-ヒト IgG (The Binding Site, UK)または抗-ヤギ IgG (Jackson Immunoresearch Laboratories Inc, USA))を、10ul/1ulで血清に90 分間、RTで添加した。沈降物を0.5ml PTX中で遠心し、生じたペレットをPTXで二回洗浄し、ガンマカウンター(Cobra2, Perkin Elmer)で読み取った。特異的cpm(specific cpm)として表す場合、結果は健常コントロールのデータが差し引かれたものである。
【0097】
プラスミド構築物
完全長 ヒト Kv1.1, 1.2, 1.4, 1.6 および β2をコードしているcDNAsを、pcDNA3.1-hygro (Invitrogen Ltd, CA, USA)にクローン化した。完全長 ヒト MuSK-GFP構築物は、以前に記載された[2]。CASPR2 のcDNAを含んだベクター pCR4-TOPO(IMAGE: 7939625 geneservice, Cambridge, Englandより)をEcoRIで消化した。断片をpcDNA3.1 (+) (Invitrogen, UK)にサブクローンして、哺乳類細胞において発現されるタグ無しのCASPR2を得た。CASPR2をEGFPでタグ化するため、pcDNA3.1 (+)-CASPR2 プラスミドをXhoI および XmaIで消化した。断片をpEGFP-N1 (Clontech Laboratories, CA, USA)にサブクローン化した。
【0098】
ヒト Lgi-1に関して、cDNAをGeneservice社から購入し、次のプライマーでPCRにより増幅した:
FPlgiIpcdna: GATCGCTAGCCCACCATGGAATCAGAAAGAAGCAAAAGG NheI
RPlgiIpcdna: GATCCTCGAGTCATGCGCTTAAGTCAACTATGACATG XhoI
精製産物をpGEM-Teasyにサブクローン化した。このクローンおよびClontechからのプラスミド pcDNA3.1(+)をNheI および XhoIで消化した。断片を共にライゲーションし、構築物を精製し、シークエンシングで検証した。
【0099】
FPlgiIpcdna: GATCGCTAGCCCACCATGGAATCAGAAAGAAGCAAAAGG NheI
RPlgiIpcdna: GATCCTCGAGTCATGCGCTTAAGTCAACTATGACATG XhoI
ヒト TAG1 cDNAは、Karagogeos博士(Dr D Karagogeos, University of Crete; [27]を参照されたい)から供与された。
【0100】
トランスフェクションおよびヒト胚性腎臓細胞の培養
HEK293 細胞をダルベッコ修正イーグル培地(DMEM: Dulbecco's modified eagle's medium)に10% 胎児ウシ血清 (FCS, TCS Cellworks Ltd, Buckingham, UK)および各々100単位/mlのペニシリン G および ストレプトマイシン (Invitrogen, CA, USA)を添加した培地で37℃、5% CO2 雰囲気で培養した。細胞を、免疫吸着およびトキシン結合実験のため6 ウェル培養プレートで、顕微鏡観察のため6-ウェル細胞培養プレートに配置した13mm ガラスのカバーガラスで、またタンパク質抽出のため175cm2 フラスコで成長させた。ポリエチレンイミン(PEI)を用いて、細胞をKv1.1, 1.2, 1.4, 1.6, β2, EGFP (増強緑色蛍光タンパク質), MuSK-EGFP, CASPR2-EGFP, Lgi1またはTAG1 cDNAで一過性にコトランスフェクトした。EGFPの発現をAxion 200 Zeiss 倒立蛍光顕微鏡を用いて視覚化した。
【0101】
免疫細胞化学
トランスフェクションの48 時間後、HEK 細胞の免疫蛍光染色を行った。カバーガラスを24-ウェルの培養プレートに移し、DMEM-N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N'-(2-エタンスルホン酸) (HEPES)に1% ウシ血清アルブミン(BSA)を有するもので希釈したマウス 抗-Kv1.1 細胞外ドメイン抗体 (1:100, Dr J Trimmer, Californiaから供与された)または患者血清(1:20-100)で室温 (RT)で1 時間インキュベーションした。細胞を引き続いてDMEM-HEPES緩衝剤で3回洗浄し、リン酸緩衝塩類溶液(PBS)中で3% ホルムアルデヒドでRT、15分間固定した。細胞を上記のとおり洗浄し、(i) 抗-マウス IgGまたは抗-ヒト IgG Alexa Fluor 568-結合型二次抗体 (Invitrogen-Molecular probes, Paisley, UK)を1%BSA-DMEM-HEPES緩衝剤中で1:750希釈したもの又は(ii) マウス 抗-ヒト IgG1, 2, 3または4 (Binding Site, Birmingham, UK)を1%BSA-DMEM-HEPES 緩衝剤で1:50希釈したもの、引き続いてヤギ 抗-マウス アイソタイプ特異的IgG-Alexa Fluor 568-結合型抗体(Invitrogen-Molecular probes, Paisley, UK)で45 分間、RTで標識した。細胞透過化に関して、細胞を最初に固定液(上記のとおり)でインキュベーションし、全ての溶液に0.1% TritonX100を含有させた。ウサギ 抗-Kv1.1/1.2 および 1.6 抗体 (1:500, Alamone, Israel)を、抗-ウサギ IgG Alexa Fluor 568-結合型の二次抗体 (Invitrogen-Molecular probes, Paisley, UK)で視覚化した。続いて、細胞をPBSで3回洗浄し、スライドを蛍光封入剤(DakoCytomation, Cambridge, UK)にDAPI (4',6'-diamidino-2-phenlindoledichloride, 1:1000)を有するものにマウントした。それらをMacProbe v4.3 デジタル イメージングシステムを用いて視覚化した。サブクラスの分析に関して、全てのスライドは、以前に確認[11]されたとおり0 から4のスコアリングシステムを用いて盲検観察者(blinded observers)により検査された。TAG1 および Lgi1に関して、我々は学術的な目的のための発生研究ハイブリドーマバンクから購入したマウス 抗 TAG1 (IgG1)(http://dshb.biology.uiowa.edu/からの'3.1C12'), およびSanta Cruz Biotechnology Incから購入したヤギ 抗 Lgi1, C19 (sc-9583) および N18 (sc-9581)を使用した。
【0102】
電気生理学
HEK-293 細胞をKv1.1 および GFPまたはKv1.6 および GFP (上記のとおり)でトランスフェクトし、ホールセルパッチクランプ記録のためガラスのカバーガラスに直接的に配置した。細胞の電位クランプ記録を145 NaCl, 6 KCl, 1 MgCl2, 10 HEPES, 2 CaCl2, および 5 グルコース(NaOHでpH 7.4)を(mMで)含んでいる外部緩衝液の定常バス(1 mlの容量)で行った。〜2-5MΩの抵抗性の記録ピペットを、ホウケイ酸毛細管ガラス (Harvard Apparatus)から調製し、150 KCl, 10 EGTA, 1 CaCl2, 1 MgCl2 および 10 HEPES(KOHでpH 7.4)を(mMで)含んでいる標準の細胞内液を充填した。細胞を倒立蛍光顕微鏡 (Nikon)を用いて視覚化し、GFP発現細胞のみを記録した。記録は、室温(20-24℃)で行われた。CsCl-に基づく細胞内液を用いた予備的な実験によって、示された電流はカリウム媒介性であることが確認された(データ示さず)。
【0103】
α-DTX-感受性電流は、記録の間にα-DTX (1 μM, Sigma-Aldrich)を直接的にバスに適用することにより示された(緩衝液の均等な容量をコントロール実験に使用した)。血清サンプルを使用前に外部記録溶液(external recording solution)に対して透析し、長期的に適用されるサンプルを培養培地に希釈(1:50-1:1000)した。表れる電流における血清の短期の影響を、記録の間に直接的に血清を適用することにより決定した(a-DTXの付加と類似)。患者血清の長期の影響を、記録前のKv1-トランスフェクトHEK-293細胞での1-3 日インキュベーションにより決定された。
【0104】
データを1 kHzで低域フィルタ(low-pass filtered)し、10 kHzで獲得した。記録は、Axopatch-1D増幅器, Digidata 1320 シリーズ ディジタイザーおよびパルスゼネレーション, データ収集およびデータ分析のためのpClampの一揃いのプログラム(Axon Instruments)を用いて行った。分析に含められる細胞は、記録の間に30%未満の変化の低いアクセス抵抗(Ra, <20 MΩ); 高いインプット抵抗(Ri, >1GΩ、-70 mV (+10 mV ステップ); ベースライン安定性および小さいリーク電流(< -50 pA)を有していた。ピーク電流測定は、検査パルスを-80 mVの保持電位(holding potential)から+40 mVで300 msで適用することにより行った。また、活性化および定常状態の不活性化の電位依存性を、分析した(データ示さず)。統計学的な有意性を、単独比較に関して両側スチューデントのt-検定および多重比較に関して一元配置 ANOVAsを用いて評価した。
【0105】
タンパク質の抽出および標識化
トランスフェクションの48 時間後、コンフルエントな175cm2 フラスコをPBSで洗浄し、1:100のプロテアーゼインヒビターカクテルを有するDTX-緩衝剤中の2% ジギトニン(Sigma-Aldrich, UK)で溶解した。溶解物を、1 時間回転させ、遠心(13,000rpm、5 分間、4oC)し、上記のとおりI125-αDTXで標識した。これら及びGFP-タグをつけた抽出物(100fU/アッセイ)の双方を、5ulのヒト 血清またはウサギ抗-CASPR2(Dr E Pelesから供与)抗体での免疫沈降に供試した。ペレットを180ulのPTXに再懸濁し、96 ウェルプレートに移し、蛍光プレートリーダー(Gemini XS, Molecular Probes)を用いて分析した。この後者のアッセイは、蛍光免疫沈降アッセイ(FIPA: fluorescent immunoprecipitation assay)として知られる。
【0106】
ウエスタンブロッティング
トランスフェクトされた細胞の抽出物を、SDSベースのローディングバッファーおよび還元剤(Invitrogen, CA, USA)で煮沸した。15ul抽出物/ウェル(タンパク質濃度で均等化)を4-12%のSDSポリアクリルアミドゲル (Invitrogen, UK)にロードし、90 分間、200mVで電気泳動した。ゲルを90 分間、30mVでニトロセルロースペーパーに転写した。個々のストリップをPBS-0.1% tween, 5% ミルクタンパク質溶液でブロックした。引き続いて、膜をブロッキング溶液で希釈(1:100)した一次抗体で1 時間インキュベーションし、PBS-0.1% tweenで3回洗浄し、ブロッキング溶液で希釈(1:200)したHRP-結合型の抗-ウサギまたは抗-ヒト IgG 二次抗体(DakoCytomation, UK)で30 分間インキュベーションした。ブロットをジアミノベンジジン (DAB)で発色させた。
【0107】
[参照文献]
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類における自己免疫性の神経学的な障害を診断する方法であって、哺乳類からの体液サンプルにおいて、少なくとも一つのKv1-複合体タンパク質のエピトープに対する自己抗体を検出する工程を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、a) 前記体液を少なくとも一つのKv1-複合体タンパク質又はその抗原決定基と接触させることと; b) 少なくとも一つのKv1-複合体タンパク質又はその抗原決定基および前記体液に存在する抗体の間で形成された任意の抗体-抗原複合体を検出することと、を含み、前記複合体の存在は、自己免疫性の神経学的な障害の指標である方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、さらに哺乳類の臨床症状を評価することを含む方法。
【請求項4】
哺乳類における自己免疫性の神経学的な障害を診断するためのアッセイのキットであって、少なくとも一つの Kv1-複合体 タンパク質の少なくとも一つのエピトープおよび前記キットを使用するための説明書を含むキット。
【請求項5】
請求項 4に記載のキットであって、さらにキャリブレーション曲線を作成するための規準液を含むキット。
【請求項6】
少なくとも一つの Kv1-複合体 タンパク質のエピトープに特異的な単離又は精製された自己抗体または抗体断片。
【請求項7】
抗-Kv1-複合体タンパク質自己抗体に特異的な単離又は精製された抗体または抗体断片。
【請求項8】
請求項 7に記載の抗体または抗体断片であって、さらにタグまたは標識を含む抗体または抗体断片。
【請求項9】
前記抗体が抗-IgG抗体である、請求項 7または請求項 8に記載の抗体または抗体断片。
【請求項10】
神経学的な障害の治療のための医薬の調製における請求項7〜9の何れか一項に記載の抗体の使用。
【請求項11】
請求項4または5に記載のキットであって、さらに請求項 7, 8または9の抗体または抗体断片を含むキット。
【請求項12】
神経学的な障害を患っている患者を治療する方法であって、前記患者に効果的な量の請求項 7, 8または9に記載の抗体または抗体断片または少なくとも一つのKv1-複合体タンパク質又はそのエピトープを投与することを含む方法。
【請求項13】
神経学的な障害を緩和する又は治療する能力のある化合物を同定する方法であって、候補化合物を少なくとも一つの Kv1-複合体 タンパク質又はそのエピトープおよび少なくとも一つの Kv1-複合体タンパク質に結合する能力のある抗体の存在下で接触させる工程を含み、前記抗体の少なくとも一つの Kv1-複合体 タンパク質又はそのエピトープへの結合を阻止する化合物は神経学的な障害を治療するための候補である方法。
【請求項14】
上記の請求項の何れか一項に記載の方法, キット, 単離または精製された自己抗体または抗体断片,または使用であって、前記自己免疫性の神経学的な障害は辺縁系脳炎, モルヴァン症候群, 神経ミオトニーおよび関連する障害を含んでいる群から選択される方法, キット, 単離または精製された自己抗体または抗体断片,または使用。
【請求項15】
上記の請求項の何れか一項に記載の方法, キット, 単離または精製された自己抗体または抗体断片,または使用であって、前記体液は、血漿, 血清, 全血, 尿, 汗, リンパ, 糞便, 脳脊髄液および乳頭吸引物を含んでいる群から選択される方法, キット, 単離または精製された自己抗体または抗体断片,または使用。
【請求項16】
前記哺乳類はヒトである、上記の請求項の何れか一項に記載の方法, キット, 単離または精製された自己抗体または抗体断片,または使用。
【請求項17】
前記Kv1-複合体タンパク質は少なくとも一つの Kv1, CASPR2, Lgi1 および TAG1を含む、請求項1〜3 および12〜16の何れか一項に記載の方法, 請求項4〜5 および 11の何れか一項に記載のアッセイのキット,または請求項6〜9の何れか一項に記載の単離または精製された自己抗体または抗体断片,または請求項10に記載の使用。
【請求項18】
前記Kv1-複合体タンパク質は少なくとも一つの CASPR2, Lgi1 および TAG1を含む、請求項17に記載の方法, アッセイのキット, 単離または精製された自己抗体または抗体断片,または使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2012−506555(P2012−506555A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532726(P2011−532726)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【国際出願番号】PCT/GB2009/051441
【国際公開番号】WO2010/046716
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(503361318)イシス イノベイション リミテッド (3)
【Fターム(参考)】