説明

神経性炎症性疾患の治療、及び/又は予防のためのIL−18BPアイソフォームの使用

本発明は、神経性、及び/又は炎症性疾患の治療又は予防のための、IL-18に結合しないIL-18-BPアイソフォーム、あるいはその作動薬の使用に関する。本発明の構成における使用に好ましいアイソフォームには、IL-18BPbとIL-18BPdが含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、広く、神経炎症に関連する神経性疾患の分野にある。より詳しく述べると、本発明は、神経性、及び/又は炎症性疾患の治療、及び/又は予防用医薬品の製造のための、例えば、IL-18BPbやIL-18BPdなどのIL-18に結合しないIL-18BPアイソフォームの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
1. 神経炎症に関連する神経性疾患
神経炎症は、ほとんどの神経性疾患の共通点である。多くの刺激が、神経炎症を引き起こし、それがニューロン又は乏突起膠細胞が被る被害によって引き起こされるか、あるいは、外傷の、中枢神経若しくは末梢神経損傷の、又はウイルス若しくは細菌感染の結果であるかのいずれかであり得る。神経炎症の主な結果は、(i)星状細胞による様々な炎症性ケモカインの分泌;そして、(ii)星状細胞を更に刺激する追加の白血球の動員である。例えば、多発性硬化症(MS)、アルツハイマー病(AD)、又は筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの慢性神経変性疾患において、持続性神経炎症の存在が上記疾患の進行に関与すると考えられている。神経炎症に関連する神経性疾患はまた、神経性炎症性疾患とも呼ばれる。
【0003】
慢性神経変性疾患
慢性神経変性疾患において、病理は炎症反応と関連する。最近の証拠は、全身性炎症が、順々に、挙動に影響を及ぼすかもしれない、脳における炎症性サイトカイン及び他の伝達物質の過剰な合成につながる病変した脳の局所炎症に影響を与えるかもしれないことを示唆している(Perry、2004年)。慢性神経変性疾患には、とりわけ、多発性硬化症(MS)、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多系統萎縮症(MSA)、プリオン病、及びダウン症が含まれる。アルツハイマー病(AD)は、脳組織の変化から生じる精神機能における低下にかかわる障害である。これには、血管の障害、1次性変性認知症、及びびまん性脳萎縮によって引き起こされたのではない脳組織の縮小が含まれる。アルツハイマー病はまた、老人性認知症/アルツハイマー型(SDAT)とも呼ばれる。過去10年間にわたって得られた多量の証拠は、神経炎症がアルツハイマー病(AD)病変に関連するという結論を支持した(Tuppo及びArias、2005年)。それが、加齢による知的低下の最も一般的な原因である。発生率は10,000に約9人である。この障害は、男性より女性にわずかに多く発症し、主として、より高齢な人で起こる。原因は不明である。
【0004】
前記疾患の発生に関与するかもしれない神経化学的な要因には、アセチルコリン、ソマトスタチン、サブスタンスP、及びノルエピネフリンを含めた神経インパルスを伝達するために、神経細胞によって使用される物質(神経伝達物質)の不足が含まれる。環境要因には、アルミニウム、マンガン、及び他の物質への暴露が含まれる。感染要因には、脳と脊髄(中枢神経系)に影響するプリオン(ウイルス様生物体)感染が含まれる。(症例の5〜10%に相当する)いくつかのファミリーにおいて、障害の発生に対する遺伝的素因が存在するが、これは遺伝形質の厳密な(メンデルの)パターンに沿わない。診断は、通常、認知症の他の原因を除外することによって成される。発症は、知的機能の進行性喪失を伴う記憶障害によって特徴付けられる、情緒の変動、言語能力の変化、歩行の変化、及び障害の進行による他の変化があるかもしれない。脳組織のサイズの減少(萎縮)、脳室の拡張(脳内の空間)、及び脳組織内の沈着物がある。
【0005】
パーキンソン病(PD)は、震え、並びに歩行、動作、及び協調の困難を特徴とする脳疾患である。前記疾患は、筋肉の動きを制御する脳の一部への傷害に関連する。それはまた、振戦麻痺(paralysis agitans又はshaking palsy)とも呼ばれる。ヒト及び動物研究からの次第に増加する証拠は、神経炎症がPDにおけるニューロンの喪失に対する重要な寄与因子であることを示唆した(Gaoら、2003年)。前記疾患は、1,000人に約2人に発症し、ほとんどの場合、50歳を過ぎてから発現する。それは、男性と女性の両方を襲い、そして、高齢者の最も一般的な神経性炎症性疾患の1つである。用語「パーキンソン病」は、たまたまこの症状群を引き起こす最も一般的な状態である、パーキンソン病に見られる動作変化のタイプの併発を伴うあらゆる状態を指す。
【0006】
パーキンソン病は、他の障害、又は外的要因(続発性パーキンソン病)によって引き起こされるかもしれない。パーキンソン病は、筋肉動作を制御する脳の部分(脳幹神経節及び錐体外路の領域)の神経細胞の進行性劣化によって引き起こされる。インパルスを伝達するために細胞によって使用される物質(伝達物質)の1つであるドーパミンは、通常、この領域で産生される。脳のこの領域の劣化は、身体が使用できるドーパミンの量を減少させる。不十分なドーパミンは、ドーパミンと、例えば、アセチルコリンなどの他の伝達物質の間のバランスを乱す。ドーパミンがなければ、神経細胞はメッセージを適切に伝達できないので、筋肉機能の喪失を招く。脳の細胞が劣化する正確な理由は知られていない。前記障害は、様々な程度の機能喪失を伴って身体の片側又は両側に影響を与えるかもしれない。筋肉制御の喪失に加えて、パーキンソン病の人々の一部は、重度の鬱状態になる。精神能力の早期喪失は珍しいが、重度のパーキンソン病と共に、その人は、(認知症、幻覚などを含めた)総合的な精神機能の低下を示すかもしれない。認知症はまた、前記障害を治療するために使用される薬剤の一部の副作用でもある。
【0007】
ハンチントン病(HD)は、遺伝性の、常染色体優性の神経性炎症性疾患である。前記疾患は、通常、50歳代まで臨床的に明らかにならず、そして、通常、発症の17年後の死への容赦のない進行に関係がある精神障害、不随意運動障害、及び認知低下をもたらす。ハンチントン病の原因となる遺伝子はハンチンチンと呼ばれる。それは第4p染色体上に位置し、発症前、及び出産前の診断の効果的な手段を提供する。遺伝的異常は、過剰な数の縦列反復CAGヌクレオチド配列から成る。CAG反復を有する他の疾患には、例えば、ケネディー病、及び遺伝子命名法により脊髄小脳失調(SCAs)としても知られている常染色体優性小脳失調症(ADCAs)の大部分などの脊髄性筋萎縮症(SMA)が含まれる。HDにおいて、幅広く発現されている遺伝子が、どのように選択的に神経細胞死をもたらすのか知られていない。配列の解析により、他の既知遺伝子に対する明白な相同性がなく、且つ、その機能への洞察をはっきりと提供する構造モチーフ又は機能ドメインが同定されなかったことが更に明らかにされた。特に、これらの幅広く発現されている遺伝子がどのように選択的な神経細胞死を引き起こすかという疑問には、答えが出ないままである。
【0008】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、脳及び脊髄における神経細胞の破壊のせいで、随意筋の神経制御の進行性喪失を引き起こす障害である。ルー・ゲーリック病とも呼ばれる筋萎縮性側索硬化症はまた、筋の使用及び制御の喪失にかかわる障害でもある。これらの筋を制御する神経は、縮小し、そして、消滅し、神経刺激の欠如による筋肉組織の喪失をもたらす。ALSの根本的な原因は、分からないままであるが、神経炎症がALSにおいて重要な役割を果たしているかもしれない(Consilvioら、2004年)。随意筋(例えば、脚や腕の筋肉などの意識下で制御するもの)を発端に、筋の強さと協調が低下する。筋肉制御の喪失の程度は進行し続け、そして、ますます多くの筋肉群がかかわるようになる。例えば、呼吸及び飲込みを制御する筋肉などの準随意筋への神経刺激の喪失があるかもしれない。思考又は判断に対する影響は全くない。原因は不明である。ALSは10万人に約1人が発症する。一部の症例において、家系内発症するように思われる。障害は女性に比べ男性により多く発症する。通常、症状は、成人期まで、多くの場合、50歳以降まで発現しない。
【0009】
多系統萎縮症(MSA)は、未知の病因の、散発性の、成人発症型神経変性疾病である。原発性でないにせよ、発病過程において、希突起神経膠細胞によって大きな役割が担われる点で、慢性神経変性疾患の中でもその症状は珍しいかもしれない。データは、MSAになる危険性に炎症関連遺伝子が果たす役割を支持する(Infanteら、2005年)。パーキンソン病との主な相違点は、MSA患者がL-ドーパ治療に対して応答しないことである。
【0010】
多発性硬化症(MS)は、再発-寛解型又は進行性の経過を取る中枢神経系(CNS)の炎症性脱髄性疾患である。MSは唯一の脱髄性疾患でない。末梢神経系(PNS)において対応するものは、慢性炎症性脱髄性多発神経根障害(CIDP)である。加えて、急性の単相性障害、例えば、CNSにおけるギランバレー症候群(GBS)と呼ばれる炎症性の脱髄性多発神経根障害、及びCNSにおける急性散在性脳脊髄炎(ADEM)などが存在する。MSとGBSの両方が異種の症候群である。MSにおいて、遺伝因子を伴った異なる外因の侵襲は、診断基準を最終的に満たす疾患経過をもたらす。両疾患において、軸索傷害が原発性脱髄性病変に加えられ、永久的な神経欠損を招く可能性がある。MSは、免疫系の白血球が中枢神経系(CNS)の白質に対する侵襲を始める自己免疫異常である。灰白質もまた、かかわるかもしれない。MSの正確な病因は不明であるが、
【0011】
寄与因子には、遺伝的、細菌、及びウイルス感染が含まれるかもしれない。標準的な発現(全症例の85%)において、それは、数週間、続く神経機能障害の症状発現、そしてそれに続く、実質的な又は完全な回復に対応する、再発/寛解相を交互に行うことを特徴とする(Noseworthy、1999年)。寛解期間は、時間が経つにつれてより短くなる。その後、多くの患者は、部分的であるか、又は全く回復しない神経機能のゆるやかな喪失を特徴とする最終的な疾患相に入る。これは、二次進行型MSと呼ばれる。わずかな割合(全MS患者の〜15%)は、疾患の発症に続いて神経機能のゆるやかで途切れない低下に見舞われる(一次進行型MS)。MSの病因の基礎となる分子機序は、ウイルスや細菌感染を含めた遺伝的及び環境要因から起こると思われる。これらの作用機序は、脳血液関門を越える、及びCNS組織内へのT細胞及びマクロファージの遊走の増強を促す。
【0012】
遺伝的及び環境要因は、血液脳関門を越える炎症細胞の増強された流れ込みにつながる。これは、CNS組織内への自己反応性T細胞及びマクロファージの増強された遊走をもたらす。T細胞によるサイトカイン分泌は、抗原提示細胞(APCs)を活性化する。APCsのMHCクラスII分子との関連で自己反応性T細胞が推定「MS抗原」、多くの場合、髄鞘タンパク成分、に遭遇すると、それらは活性化するかもしれない。そして、いくつかのその後の作用機序が、希突起膠細胞及びミエリンを損傷するように作用する。補体及び抗体媒介性細胞障害反応は、一部の患者の傷害の大部分を引き起こすかもしれないと同時に、他の患者では、Fasリガンドのシグナル伝達、及びCD4+ T細胞によるTNF-αのような炎症誘発性サイトカインの放出が白質を攻撃するかもしれない。活性化されたマクロファージもまた、高められた食作用及び因子の分泌を通して役割を果たすかもしれない。これが、広範囲の脱髄とその後のCNSの軸索の間の伝導効率の喪失をもたらす。しかしながら、その後の修復機構は、炎症過程をいったん解消する再ミエリン化を引き起こす。MS患者の再ミエリン化された軸索は、再ミエリン化軸索の周りの鞘の薄い外観によって病理学的に認識される。多くの場合、伝導効率の喪失を補おうと試みる、追加のナトリウム・チャンネル及びイオン・チャンネルの異常なレパートリーが、脱ミエリン化された軸索膜内に挿入されているのがわかる。これらの異常な発現パターンは、MSがチャンネル病も含むかもしれないことを示唆する。乏突起膠細胞前駆細胞は、MS病巣における再ミエリン化を促進するかもしれない。
プリオン病及びダウン症もまた、神経炎症にかかわることが示された(Eikelenboomら、2002年;Hunterら、2004年)。
【0013】
感染に続いて起こる神経性炎症性疾患
例えば、急性散在性脳脊髄炎などの一部の神経障害は、通常、その疾患の免疫学的な原因を示唆する、ウイルス感染又はウイルス予防接種(あるいは、ごく稀に、細菌予防接種)に続いて起こる。ウイルス予防接種に続いて起こる急性炎症性末梢神経障害、又はギラン-バレー症候群は、同じ推定上の免疫病因を有する類似した脱髄性障害であるが、それらは末梢構造だけに影響を及ぼす。
ヒトT細胞性リンパ増殖性ウイルスによる感染に関連する緩徐進行性脊髄疾患であるHTLV関連ミエロパシーは、両脚の痙性衰弱を特徴とする。
【0014】
中枢神経系の感染症は非常に深刻な感染症である;脳膜炎は脳と脊髄を囲む膜を冒す;脳炎は脳自体を冒す。中枢神経系(脳と脊髄)に感染するウイルスには、ヘルペスウイルス、アルボウイルス、コクスサッキーウイルス、エコーウイルス、及びエンテロウイルスが含まれる。これらの感染症の一部は、主として髄膜(脳を覆っている組織)を冒し、そして、脳膜炎を引き起こす;他のものは主として脳を冒し、そして、脳炎を引き起こす;多くのものが膜と脳の両方を冒し、そして、髄膜脳炎を引き起こす。脳膜炎は脳炎に比べて小児ではるかに一般的である。ウイルスは、2つのやり方で中枢神経系を冒す。それらは、直接感染して、そして、急性疾患中に細胞を破壊する。感染からの回復の後に、感染に対する身体の免疫応答は、時々、神経周囲の細胞に対する二次損傷を引き起こす。この二次損傷(後感染性脳脊髄炎)は、急性疾患からの回復の数週間後に症状を持つ小児を生み出す。
【0015】
損傷に続いて起こる神経性炎症性疾患
外傷、低酸素血症、及び虚血を含めた急性発作によって引き起こされるCNSへの損傷は、灰色質と白質の両方を冒す可能性がある。CNSへの損傷は、神経炎症にかかわっている。例えば、外傷又は炎症後のCNSの白血球浸潤は、星状細胞におけるMCP-1ケモカインの上方制御によって一部、誘発される(Panenkaら、2001年)。
外傷は、神経の損傷又は傷害である。それは、筋肉制御と感覚を含めた傷害レベル以下で制御される全ての神経機能を冒す脊髄外傷であるか、あるいは、例えば、非開放性頭部損傷によって引き起こされた外傷などの脳外傷かもしれない。
【0016】
脳低酸素症は、特に大脳半球への酸素欠乏、より一般的には、その用語は脳全体の酸素欠乏を表すために使用される。低酸素血症の重症度によって、症状は、精神錯乱から不可逆的な脳損傷、昏睡、そして、死亡まで及ぶかもしれない。脳卒中は、通常、脳の減少した血流量(虚血)によって引き起こされる。それはまた、脳血管障害又は偶発症候とも呼ばれる。それは、脳のいずれかの部分への血液供給が中断された時に発生する脳機能の喪失を伴った脳障害の一群である。脳は、体内の血液循環の約20%を必要とする。脳への主な血液供給は、頚部の2本の動脈(頚動脈)を経由するものであり、その後、頚部動脈はそれぞれ脳の特定の領域に出ている複数の動脈へと脳内で分岐する。短時間の血流の中断さえ脳機能の低下(神経欠損)を引き起こす可能性がある。
【0017】
症状は、冒された脳の領域により異なり、そして、一般的に、視覚の変化、話し方の変化、身体の一部の動き又は感覚の低下、又は意識レベルの変化のような問題が含まれる。血流が数秒より長い期間、減少した場合、その領域内の脳細胞は破壊され(梗塞を起こし)、脳のその領域への永久的な損傷、又は死亡さえも引き起こす。脳卒中は、1,000人に約4人が発症する。それは、米国を含めて大部分の先進国において3番目に多い死亡原因である。脳卒中の発生率は、歳を取るごとに劇的に上昇し、その危険性は35歳以降、10年ごとに倍増する。65歳を越える人の約5%が、少なくとも1回は脳卒中にかかったことがある。障害は、より多くの場合、女性に比べて男性に起こる。虚血性脳卒中の原因は、脳内に形成される凝血塊(血栓)、及び他の場所から脳に移動する凝血塊、又は動脈硬化性プラーク若しくは他の物質の破片(塞栓)である。脳内での出血すること(出血)は、脳卒中によく似た症状を引き起こすかもしれない。アテローム性動脈硬化に続発する脳卒中(脳血栓症)、及び塞栓症によって引き起こされた脳卒中(移動した凝血塊)が、最も一般的な脳卒中である。
【0018】
外傷性神経損傷は、CNS又はPNSの両方に関係があるかもしれない。単に、頭部損傷又は非開放性頭部損傷とも呼ばれる外傷性脳損傷は、頭部への外部打撃による脳への損傷がある場合の傷害を指す。それは、車又は自転車の事故中に主に起こるが、溺水、心臓発作、脳卒中、及び感染の結果としても起こるかもしれない。このタイプの外傷性脳損傷は、通常、脳への酸素又は血液供給の欠如に起因して生じ、それ故に、「無酸素性損傷」とも呼ばれ得る。脳損傷又は非開放性頭部損傷は、自動車事故又は転落において見られるような頭部への殴打がある時に起こる。損傷の直後の意識喪失期間があるかもしれず、それは、数分、数週、又は数ヶ月続くかもしれない。一次的脳損傷は、特に、頭蓋骨の破片が存在する場合には、主に衝撃部位にて、損傷の時点で起こる。大きな打撲傷は、脳内出血を伴うか、又は皮質の裂傷と同時に起こるかもしれない。びまん性軸索傷害は、頭蓋骨内の脳の回転運動によって生み出された神経突起の剪断及び引っ張りひずみの結果として起こる。小さな出血性病巣又は軸索へのびまん性傷害が存在するかもしれず、それらは、光学顕微鏡的にしか検出できない。二次的脳損傷は、傷害後しばらくして発現する合併症の結果として起こる。それらには、脳内出血、脳外動脈への外傷性損傷、頭蓋内ヘルニア、低酸素性脳障害、又は脳膜炎が含まれる。
【0019】
脊髄傷害は、両下肢麻痺及び四肢麻痺のための入院の大部分を占める。80%を越えるものが、交通事故の結果として起こる。傷害の2つの主要な群:開放性傷害と非開放性傷害が、臨床的に認識されている。開放性傷害は、脊髄と神経根の直接的な外傷を引き起こす。貫通傷は、大規模な分裂と出血を引き起こす。非開放性傷害は、脊髄傷害の大部分を占め、そして、通常、放射線学的に確認できる脊椎骨の破断/脱臼を通常伴う。脊髄への損傷は、骨傷害の程度に依存し、そして、2つの主な病期:打撲傷、神経線維切断、及び出血性壊死であるところの一次損傷、並びに硬膜外血腫、梗塞、感染、及び水腫であるところの二次損傷、と見なすことができる。
【0020】
末梢神経障害
末梢神経障害は、単独の又はいずれかの組合せによる、感覚喪失、筋脱力及び萎縮、減少した深部腱反射、及び血管運動症状の症候群である。末梢神経障害は、ウォーラー変性とも呼ばれる過程である軸索変性を伴う。神経炎症は、ウォーラーの変性の一因となっている(Stollら、2002年)。
【0021】
疾患は、1つの神経を冒す(単発神経障害)、離れた領域の2つ以上の神経を冒す(多発性単神経障害)、又は、同時に多数の神経を冒す(多発神経障害)かもしれない。(例えば、糖尿病、ライム病、尿毒症において、又は毒剤で)軸索が主に冒されるかもしれず、あるいは、(例えば、急性若しくは慢性の炎症性多発神経障害、大脳白質萎縮症、又はギラン-バレー症候群において)髄鞘又はシュワン細胞であるかもしれない。無髄及び有髄の細経線維への損傷は、主として温度感覚及び痛覚の喪失をもたらし、有鞘の大径線維への損傷は、運動又は固有受容感覚の欠陥をもたらす。一部の(例えば、鉛毒性、ダプソンの使用、(ダニ咬傷によって引き起こされた)ライム病、ポルフィリア、若しくはギラン-バレー症候群による)神経障害は、主として運動性繊維を冒し;(例えば、癌、ハンセン病、AIDS、糖尿病、又は慢性ピリドキシン中毒の後根神経節炎による)その他のものは、主として後根神経節又は知覚線維を冒し、感覚症状を生み出す。時折、(例えば、ギラン-バレー症候群、ライム病、糖尿病、及びジフテリアにおいて)脳神経もまた関与する。罹患した様相を同定することは、原因の特定に役立つ。
【0022】
外傷は、1つの神経に対する局所的な傷害の最も一般的な原因である。関節の乱暴な筋肉活動又は力ずくの過伸展(例えば、小さな道具の小さな握り、空気ハンマーからの過度の振動)は、小さな外傷を繰り返すかもしれないので、局所的神経障害を生み出すかもしれない。通常、圧迫性又は絞扼性麻痺は、(例えば、熟睡中に、又はやせた人若しくは悪液質の人、及び多くの場合、アルコール症の人の感覚喪失中に)骨ばっている隆起にて、又は(例えば、手根管圧迫症候群において)細い管にて表在神経(尺骨神経、橈骨神経、及び腓骨神経)に影響する。圧迫性麻痺はまた、腫瘍、骨肥厚、ギプス包帯、松葉杖、又は(例えば、園芸における)長期間の窮屈な姿勢からも生じるかもしれない。神経への出血、及び寒さ又は放射線照射への暴露が、神経障害を引き起こすかもしれない。単発神経障害は、直接的な腫瘍侵襲から生じるかもしれない。
【0023】
多発性単神経障害は、通常、膠原病(例えば、多発動脈炎、SLE、シェーグレン症候群、RA)、サルコイドーシス、代謝病(例えば、糖尿病、アミロイドーシス)、又は感染症(例えば、ライム病、HIV感染)に続発する。微生物は、(例えば、ハンセン病において)神経の直接浸潤によって多発性単神経障害を引き起こすかもしれない。
急性熱性疾患による多発神経障害は、(例えば、ジフテリアにおける)毒素、又は(例えば、ギラン-バレー症候群における)自己免疫反応から生じるかもしれず;時々、免疫化に続いて起こる多発神経障害もまた、たぶん自己免疫であろう。
毒剤は、通常、多発神経障害を引き起こすが、時々、単発神経障害を引き起こす。それらには、エメチン、ヘキソバルビタール、バルビタール、クロロブタノール、スルホンアミド、フェニトイン、ニトロフラントイン、ビンカアルカロイド、重金属、一酸化炭素、リン酸トリオルトクレシル、オルトジニトロフェノール、多くの溶剤、他の工業性毒物、及び特定のAIDS薬(例えば、ザルシタビン、ジダノシン)が含まれる。
【0024】
化学療法によって誘発された神経障害は、ビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン、及びビンデシン)、プラチナ含有薬物(シスプラチン)、及びタキサン(パクリタキセル)を含めた、いくつかの一般的に使用される化学治療法薬剤の顕著な、そして、重大な副作用である。末梢神経障害の誘導は、化学療法薬を用いた治療を制限する際の共通要因である。
栄養欠乏症及び代謝障害は、多発神経障害をもたらすかもしれない。多くの場合、(例えば、習慣性飲酒、脚気、悪性貧血、イソナイアジッドで誘発されたピリドキシン欠乏、吸収不良症候群、及び妊娠悪阻における)ビタミンB欠乏が原因となる。多発神経障害はまた、甲状腺機能不全症、ポルフィリア、サルコイドーシス、アミロイドーシス、及び尿毒症においても起こる。糖尿病は、知覚運動性遠位多発神経障害(最も一般的)、多発性単発神経障害、及び(例えば、眼球運動又は外転脳神経の)局所性単発神経障害を引き起こす。
【0025】
代謝障害(例えば、糖尿病)又は腎不全による多発神経障害は、多くの場合、数ヶ月又は数年にわたりゆっくり発現する。それは、多くの場合、近位に比べて遠位でより重度である下肢の感覚異常で始まることが多い。末梢の刺痛、麻痺、激しい疼痛、又は関節の固有受容感覚と振動感覚の不全が、多くの場合、顕著である。疼痛は、多くの場合、夜にひどくなり、そして、患部に触れることによって、又は温度変化によって一層悪化するかもしれない。重い場合には、感覚喪失と、通常、靴下及び手袋型分布を伴う他覚的徴候がある。アキレス腱及びその他の深部腱反射は、減少するか、又は消失する。指の無痛性潰瘍又はシャルコー関節は、感覚喪失が深刻である時に、発現するかもしれない。知覚性又は固有受容性欠乏は、歩行異常に通じるかもしれない。運動障害は、遠位筋の衰弱と萎縮をもたらす。不随意神経系が、追加的に又は選択的に関与し、夜間下痢、尿及び糞便の失禁、性交不能症、又は起立性低血圧につながるかもしれない。血管運動症状は異なる。皮膚は、標準に比べて血色が悪く、そして、乾燥しており、時々、うす暗い染みを伴うかもしれない。発汗が、過剰であるかもしれない。栄養変化(滑らかでつややかな皮膚、へこんだ若しくは隆起した爪、骨粗鬆症)は、重度の、長期間の症例において一般的である。
【0026】
栄養性多発神経障害は、アルコール症及び栄養不良によくみられる。一次軸索障害は、最も長く、且つ、最も大きい神経における二次的な脱髄及び軸索破壊につながるかもしれない。原因がチアミン又は他のビタミン(例えば、ピリドキシン、パントテン酸、葉酸)の欠乏であるかどうかは不明である。ピリドキシン欠乏による神経障害は、通常、結核のためにイソナイアジッドを飲んでいる人のみに起こり;ピリドキシンが不足しているか、又は依存している幼児は痙攣を起こすかもしれない。肢遠位部の消耗、及び左右対称の衰弱は、通常、進行が緩徐であるが、急速に進行する可能性があり、時々、感覚喪失、知覚異常、及び疼痛を伴う。ふくらはぎ及び足のうずき、筋痙攣、冷感、ヒリヒリする痛み、及びしびれ感は、接触によって悪化するかもしれない。病因がはっきりしない時には、総合ビタミンが与えられるかもしれないが、それらは、立証された効果を持っていない。
【0027】
遺伝性神経障害は、感覚運動神経障害又は知覚神経障害として分類される。シャルコー-マリー-ツース病は、最も一般的な遺伝性感覚運動神経障害である。稀に見られる感覚運動神経障害は、生まれた時に始まり、そして、重度の障害をもたらす。知覚神経障害において、知覚神経障害は稀であって、遠位の疼痛と温度感覚の喪失が、振動感覚と位置感覚の喪失に比べて顕著である。主たる問題は、頻繁な感染と骨髄炎による無痛症に起因するペダル・ミューティレーション(pedal mutilation)である。遺伝性神経障害にはまた、肥厚性間質性神経障害とデジェリン-ソッタス病も含まれる。
【0028】
悪性腫瘍はまた、モノクローナル免疫グロブリン異常症(多発性骨髄腫、リンパ腫)、アミロイド侵襲、栄養欠乏症によって、又は傍腫瘍性症候群として多発神経障害を引き起こすかもしれない。
例えば、感染性病原菌又は自己免疫発作などの様々な病因によるとはいえ、神経性炎症性疾患は全て、神経機能の喪失を引き起こし、そして、麻痺症と死亡につながるかもしれない。一部の神経性炎症性疾患における炎症性発作を軽減させるいくつかの治療薬が利用可能であるが、神経機能の回復につながり得る新規治療法を開発する必要性がある。
【0029】
2. STATsシグナル伝達
炎症誘発性応答及び抗炎症性応答のモジュレーターとしてのSTATsシグナル伝達の役割は、多くの生物系において説明された(Pfitznerら、2004年)。STAT2活性化は、インターフェロンβ(IFN-β)によって媒介される。STAT2プロモーターには、インターフェロン刺激応答要素(ISRE)がある(Vanら、1995年)。ヒト星状細胞において、STAT2活性化は、MCP-1ケモカインの誘導を減少させる(Huaら、2002年)。例えば、MCP-1などのケモカインは、炎症部位への白血球の動員を命令し、そして、また、未感作のヘルパーT細胞によるサイトカイン産生の調節にも関与するかもしれない。MS患者におけるMCP-1産生の低減を介したIFN-βの有益な効果は、生体外での実験によって確認された(Comabellaら、2002年)。
【0030】
MCP-1に関連する生理活性は、MCP-1が、多くの感染性疾患、炎症性疾患、及び自己免疫性疾患において、単球、及び他の細胞型(例えば、星状細胞)の動員、並びにTヘルパー応答に関連するサイトカインの発現を制御することを実証するトランスジェニック動物及び他の動物モデルによって大規模に研究された。MCP-1はまた、旋毛虫(Trichinella spiralis)によって引き起こされる寄生虫感染を媒介することも示された(Conti及びDiGioacchino、2001年)。それ故に、多くの病的状態において、MCP-1が、マクロファージを動員することによって炎症反応を促進すると考えられる。
STAT2活性化は、低減されたMCP-1誘導をもたらすことによる、神経炎症に関連する障害の有望な治療方法である。
【0031】
3. IL-18結合タンパク質(IL-18BP)
1989年に、マウス脾臓細胞から得られるインターフェロンγ(IFN-γ)を誘導する、エンドトキシンで誘発された血清の活性について説明された(Nakamuraら、1989年)。この活性に関与する因子は、IFN-γ誘導因子(IGIF)と命名され、そして、後に、インターロイキン-18(IL-18)と命名された。IL-18のヒトcDNA配列は、1996年に報告された(Ushioら、1996年)。組み換えIL-18は、どうやら別個の経路を通じて、IL-12に比べてより強力にIFN-γを誘導した(Micallefら、1996年)。IL-18は、それだけではIFN-γを誘導しないが、主として分裂促進因子又はIL-2と共に同時刺激物質として機能する。IL-18は、どうやらIL-2依存性経路を通じてT細胞の増殖を促進し、且つ、試験管内ではTh1サイトカイン産生を促進し、そして、促進されたIFN-γ産生に関して、IL-12と組み合わせた時に相乗効果を示す(Maliszewskiら、1990年)。IL-18は、Th1細胞におけるFasリガンドの機能的活性を増大させることによって免疫調節又は炎症において潜在的な役割を果たしている(Contiら、1997年)。IL-18はまた、副腎皮質でも発現されるので、ストレスが多い経験の後に免疫系を調整する際に重要な役割を果たしている分泌型神経-免疫調節物質であるかもしれない(Chater、1986年)。加えて、IL-18発現は、自己免疫性NODマウスにおいて異常な調節がされており、糖尿病発生と密接に関連している(Rotheら、1997年)。生体内において、IL-18は、プロIL-18の切断によって形成され、そして、その内因性の活性は、P.アクネス(P. acnes)におけるIFN-γ産生、及びLPS媒介性致死率に相当するように見える。成熟IL-18は、IL-1β変換酵素(IL-1β変換酵素、ICE、カスパーゼ-1)によって、その前駆体から産生される。
【0032】
IL-18受容体は、リガンド結合において協力する、少なくとも2種類の構成要素から成る。IL-18に対する高親和性及び低親和性結合部位は、マウスIL-12刺激性T細胞において見つかり、多重鎖受容体複合体を示した(Yoshimotoら、1998年)。今までのところ、2つの受容体サブユニットが同定され、共にIL-1受容体ファミリーに属する(Parnetら、1996年)。IL-18のシグナル伝達は、NF-κBの活性化にかかわる(DiDonatoら、1997年)。
最近、IL-18に対して高い親和性を有する可溶性タンパク質が、ヒト尿から単離され、そして、ヒト及びマウスcDNAが説明された(Novickら、1999年c)(WO 99/09063)。そのタンパク質は、IL-18結合タンパク質(IL-18BP)と名付けられた。
【0033】
IL-18BPは、既知のIL-18受容体の中の1つの細胞外ドメインではなく、分泌され、天然に循環しているタンパク質である。それは、分泌タンパク質の新規ファミリーに属する。そのファミリーには、IL-18BPに対して高い相同性を有するいくつかのポックスウイルスにコードされたタンパク質が更に含まれる(Novickら、1999年b)。IL-18BPは、脾臓において構成的に発現されており、免疫グロブリン・スーパーファミリーに属し、そして、IL-1II型受容体に対して限られた相同性しか持たない。その遺伝子は、ヒト染色体11q13上に位置を特定され、且つ、膜貫通領域をコードするエクソンは8.3kbのゲノム配列内に見つからなかった(Novickら、1999年a)。mRNAスプライシングから生じ、且つ、様々なcDNAライブラリーにおいて見られたIL-18BPの4つのヒト・アイソフォームと2つのマウス・アイソフォームが、発現され、精製され、そして、結合及びIL-18生物活性の中和について評価された(Kimら、2000年b)。ヒトIL-18BPアイソフォームa(IL-18BPa)は、速い結合速度、遅い解離速度、及び399pMの解離定数(K(d))を有するIL-18に対する最大親和性を示した。IL-18BPcは、29個のC末端アミノ酸を除いてIL-18BPaのIgドメインを共有しており;IL-18BPcのK(d)は10倍低い(2.94nM)。それにもかかわらず、IL-18BPaとIL-18BPcは、2モルを超えるモル濃度にて95%を上回るIL-18を中和する。ヒトIL-18BPbとIL-18BPdアイソフォームは、完全なIgドメインを欠いており、IL-18を結合又は中和する能力を欠いている。分子モデリングは、リガンドへの高親和性結合の原因である可能性がある、IL-18BPのIgドメイン内の大きな混成静電及び疎水性結合部位を特定した(Kimら、2000年a)。
【0034】
IL-18BPaとIL-18BPcはIL-18阻害剤として機能するので、これらのアイソフォームはIL-18活性と関係がある免疫応答に関連した疾患を治療するための潜在的治療薬として提案された。しかしながら、非IL-18関連疾患におけるIL-18BPアイソフォームの有益な効果はまだ示されていない。加えて、IL-18BPb及びIL-18BPdアイソフォームの生物学的意味は、従来技術で十分に理解されていない。
【発明の開示】
【0035】
発明の概要
本発明の目的は、神経性、及び/又は炎症性疾患の治療、及び/又は予防の新規手段を提供することである。
本発明は、IL-18BPbとIL-18BPdが、IL-1βとIFN-γによって同時刺激された星状グリア細胞によるIL-6炎症誘発性サイトカインとMCP-1ケモカインの分泌を減少させたという知見に基づいている。実験は、IL-18BPaやIL-18BPcと異なり、IL-18BPbとIL-18BPdが、膠芽細胞腫において、炎症反応のモジュレーターとして機能する因子であるSTAT2の核内移行を誘発することを示した。IL-18BPbとIL-18BPdがTrail誘発性アポトーシスから繊維芽細胞を顕著に保護することが本発明の構成の中で更に示された。
それ故に、本発明の第1の側面は、神経性、及び/又は炎症性疾患の治療用、及び/又は予防用医薬品の製造のためのIL-18に結合しないIL-18BPアイソフォーム、あるいは、上記IL-18BPアイソフォームの作動薬の使用に関する。
【0036】
第2の側面は、神経性、及び/又は炎症性疾患の治療用、及び/又は予防用医薬品の製造のための、IL-18に結合しないIL-18BPアイソフォームをコードする核酸配列を含む核酸分子の使用に関する。
第3の側面は、神経性、及び/又は炎症性疾患の治療用、及び/又は予防用医薬品の製造における、細胞においてIL-18に結合しないIL-18BPアイソフォームの内因性産生を誘導、及び/又は促進するためのベクター、あるいは、上記IL-18BPアイソフォームの作動薬の使用に関する。
【0037】
第4の側面は、神経性、及び/又は炎症性疾患の治療用、及び/又は予防用医薬品の製造における、IL-18に結合しないIL-18BPアイソフォームを産生するように遺伝子を組み換えられた細胞、あるいは、上記IL-18BPアイソフォームの作動薬の使用に関する。
第5の側面は、必要に応じて医薬として許容される担体と一緒に、有効量のIL-18に結合しないIL-18BPアイソフォーム、あるいは、有効量の上記IL-18BPアイソフォームの作動薬を、それらを必要とする患者に投与するステップを含む、神経性、及び/又は炎症性疾患の治療方法に関する。
【0038】
配列の簡単な説明
配列番号1は、IL-18BPbアイソフォームのアミノ酸配列に相当する。
配列番号2は、IL-18BPdアイソフォームのアミノ酸配列に相当する。
配列番号3は、IL-18BPaアイソフォームのアミノ酸配列に相当する。
配列番号4は、IL-18BPcアイソフォームのアミノ酸配列に相当する。
配列番号5〜12は、実施例5で使用したプライマーのヌクレオチド配列に相当する。
【0039】
本発明の詳細な説明
本発明の構成の中で、IL-18BPbとIL-18BPdが、IL-1βとIFN-γによって同時刺激された星状グリア細胞において炎症誘発性サイトカインであるIL-6とケモカインであるMCP-1の両方の分泌を減少させることがわかった。
これに加えて、IL-18a及びIL-18cと異なって、IL-18BPb及びIL-18BPdが、膠芽細胞腫細胞において、炎症反応のモジュレーターとして機能する因子であるSTAT2の核内移行を誘発することが示された。
【0040】
本発明はまた、IL-18BPbとIL-18BPdが、Trail誘発性アポトーシスから繊維芽細胞を顕著に保護するという知見にも基づいている。
それ故に、本明細書中に提示された実験的証拠は、神経性、及び/又は炎症性疾患を治療する新しい可能性を提供する。
それ故に、本発明は、神経性、及び/又は炎症性疾患の治療用、及び/又は予防用医薬品の製造のための、IL-18に結合しないIL-18BPアイソフォーム、あるいは、上記IL-18BPアイソフォームの作動薬の使用に関する。
【0041】
用語「IL-18BP」は、本明細書中では、IL-18結合タンパク質のスプライス変異、及び/又はアイソフォームを含めた、WO 99/09063又はNovickら(1999年)に規定されるようなIL-18結合タンパク質に関する。用語「IL-18BP」は、本明細書中では、その突然変異タンパク質、融合タンパク質、機能的な誘導体、活性画分若しくはフラグメント、又は循環的並び換え誘導体(circularly permutated derivatives)、あるいは、塩を更に網羅する。4種類の異なるヒト・アイソフォーム:IL-18BPa、IL-18BPb、IL-18BPc、及びIL-18BPd、が現在、知られている。これらのアイソフォームは、Kimら(2000年)において規定されている。IL-18BPbは配列番号1に相当し、IL-18BPdは配列番号2に相当し、IL-18BPaは配列番号3に相当し、そして、IL-18BPcは配列番号4に相当する。
【0042】
本明細書中に使用される場合、用語「IL-18に結合しないIL-18BPアイソフォーム」は、Kimら(2000年)に規定されるように、IL-18に結合する、及び/又は中和する能力を欠いているIL-18BPアイソフォームを指す。用語「IL-18に結合しないIL-18BPアイソフォーム」は、天然に存在するポリペプチド、並びにその突然変異タンパク質、塩、融合タンパク質、機能的な誘導体、活性画分、又は循環的並び換え誘導体を指す。IL-18に結合しない天然に存在するIL-18BPアイソフォームには、ヒトIL-18BPb及びヒトIL-18BPdが含まれる。「IL-18に結合しないIL-18BPアイソフォーム」はまた、「本発明によるIL-18BPアイソフォーム」とも呼ばれるかもしれない。
【0043】
IL-18を結合するIL-18BPアイソフォームの能力は、例えばKimら(2000)に記載されているとおり、開示された成熟IL-18を固定化した状態でBIAcoreセンサーチップを使用して計測される。そのような方法は、平均解離定数、結合速度、及び解離速度の計算を可能にする。例えば、IL-18を中和するIL-18BPアイソフォームの能力は、例えば、Kimら(2000年)の1190〜1191ページにおいて「Human and Mouse IL-18 assays」と題された段落に列挙されたものなどのアッセイによりIL-18生物活性に対するIL-18BPアイソフォームの効果を計測することによって計測される。あるいは、IL-18を中和するIL-18BPアイソフォームの能力は、Kimら(2000年)の1192ページにおいて「Titration of IL-18BP Activity」と題された段落で教示されるように計測されてもよい。
【0044】
用語「IL-18に結合しないIL-18BPアイソフォームの作動薬」は、本明細書中では、IL-18に結合しないIL-18BPアイソフォームの活性を刺激、又は模倣する分子に関連する。そのような作動薬は、例えば、STAT2核内移行の推進、IL-6やMCP-1の分泌阻害、及び/又はTrail誘導性アポトーシスからの保護など、IL-18に結合しないIL-18BPアイソフォームによって伝達される活性を促進する作用物質を網羅する。本明細書中に開示される全ての方法及び用途は、IL-18に結合しないIL-18BPアイソフォーム、又はその作動薬のいずれかにより果たされるかもしれない。
【0045】
用語「治療」及び「予防」は、本明細書中に使用される場合、神経性、及び/又は炎症性疾患、並びに神経性、及び/又は炎症性疾患に伴った疾患又は合併症の症状、あるいは原因の1つ以上を予防すること、抑制すること、軽減すること、改善すること、又は回復させることとして理解されるべきである。神経性、及び/又は炎症性疾患を「治療」する時、本発明による物質が疾患の発症後に与えられ、「予防」は、疾患の兆候が患者に気付かれる前の物質の投与に関係する。
【0046】
用語「神経性、及び/又は炎症性疾患」は、本明細書中では、知られている神経性、及び/又は炎症性疾患又は障害、あるいは、CNS又はPNSの損傷の全てを網羅する。好ましくは、前述の神経性、及び/又は炎症性疾患は、「神経性炎症性疾患」とも呼ばれる神経炎症に関連する神経性疾患である。これらの疾患には、「本発明の背景」において詳細に説明したものが含まれる。
【0047】
神経性、及び/又は炎症性疾患は、例えば、神経伝達に関連する疾患、頭痛、頭部外傷、CNS感染症、神経-眼科及び脳神経障害、脳葉の機能及び機能不全、動作の障害、知覚麻痺及び昏睡、脱髄性疾患、精神錯乱と認知症、頭頚接合部の異常、発作性障害、脊髄障害、睡眠障害、末梢神経系の障害、脳血管障害、又は筋疾患などのCNS又はPNSの機能不全に関連した障害を含む。これらの障害の定義に関して、例えば、The Merck Manual for Diagnosis and Therapy、第17版、Merck Research Laboratories発行、1999年を参照のこと。
【0048】
好ましくは、本発明の神経性、及び/又は炎症性疾患は、外傷性神経傷害、脳卒中、CNS又はPNSの脱髄性疾患、神経障害、及び慢性神経変性疾患から成る群から選択される。
外傷性神経傷害は、PNS又はCNSにかかわるかもしれず、それは、先の「本発明の背景」で記載されているように、両下肢麻痺を含めた脳又は脊髄外傷であるかもしれない。
【0049】
脳卒中は、脳の低酸素血症又は虚血によって引き起こされるかもしれない。それはまた、脳血管障害又は偶発症候とも呼ばれる。脳卒中は、脳の領域への血液循環の欠如によって引き起こされる脳機能の喪失(神経欠損)を伴うかもしれない。血液循環の欠如は、脳内で形成される凝血塊(血栓)、又は他の場所から脳に移動する動脈硬化プラーク又は他の物質の破片(塞栓)に起因するかもしれない。脳内での流血(出血)が、脳卒中によく似た症状を引き起こすかもしれない。脳卒中の最も一般的な原因は、アテローム性動脈硬化(脳血栓症)に続発する脳卒中であり、それ故に、本発明はまた、アテローム性動脈硬化の治療にも関する。
【0050】
末梢神経障害は、単独又はいずれかの組合せによる、感覚喪失、筋脱力及び萎縮、減少した深部腱反射、及び血管運動症状の症候群に関連するかもしれない。神経障害は、1つ神経を冒す(単発神経障害)か、離れた領域の2つ以上の神経を冒す(多発性単神経障害)か、又は同時に多くの神経を冒す(多発神経障害)かもしれない。軸索が、(例えば、糖尿病、ライム病、若しくは尿毒症において、又は毒剤により)主に冒されるか、それとも、(例えば、急性若しくは慢性の炎症性多発神経障害、白色変性症、又はギラン-バレー症候群において)髄鞘又はシュワン細胞であるかもしれない。本発明により治療される更なる神経障害は、例えば、銅の毒性、ダプソンの使用、ダニ咬傷、ポルフィリア、又はギラン-バレー症候群に起因するかもしれず、それらは主として運動性繊維を冒すかもしれない。その他のもの、例えば、癌の後根神経節腫、ハンセン病、AIDS、糖尿病、又は慢性ピリドキシン中毒などに起因するものは、主として背根神経節を、又は知覚線維を冒し、感覚症状を生じるかもしれない。脳神経はまた、例えば、ギラン-バレー症候群、ライム病、糖尿病、及びジフテリアなどにかかわるかもしれない。
【0051】
アルツハイマー病は、脳組織の変化から生じる精神機能の低下にかかわる障害である。これは、脳組織の縮小、1次性変性認知症、及びびまん性脳萎縮を含むかもしれない。アルツハイマー病はまた、老人性認知症/アルツハイマー型(SDAT)とも呼ばれる。
パーキンソン病は、震え、及び歩行、動作、及び協調の困難を含めた脳の障害である。その疾患は、筋肉の動きを制御する脳の一部への損傷に関連し、それはまた、振戦麻痺(paralysis agitans又はshaking palsy)とも呼ばれる。
【0052】
ハンチントン病は、遺伝性の、常染色体優性の神経性炎症性疾患である。遺伝的異常は、過剰な数の縦列反復CAGヌクレオチド配列から成る。CAG反復を有する他の疾患には、例えば、ケネディー病、及び遺伝的命名法により脊髄小脳失調(SCAs)として知られている常染色体優性脊髄小脳失調(ADCAs)の大部分などの脊髄性筋萎縮症(SMA)が含まれる。
【0053】
筋萎縮性側索硬化症であるALSは、脳及び脊髄における神経細胞の破壊を含めた随意筋の神経制御の進行性喪失を引き起こす障害である。筋萎縮性側索硬化症はまた、ルー・ゲーリック病とも呼ばれ、筋肉の使用及び制御の喪失にかかわる障害である。
多発性硬化症(MS)は、再発-寛解、又は進行性の経過をとる中枢神経系(CNS)の炎症性疾患である。MSは脱髄性疾患だけではない。末梢神経系(PNS)におけるその対応物は、慢性炎症性脱髄性多発神経根障害(CIDP)である。加えて、例えば、PNSにおけるギラン-バレー症候群(GBS)及びCNSにおける急性散在性脳脊髄炎(ADEM)と呼ばれる炎症性脱髄性多発神経根障害などの急性の、単相性障害が存在する。
【0054】
神経性、及び/又は炎症性疾患は、先天的な代謝障害に起因するかもしれない。本発明の好ましい態様において、神経性、及び/又は炎症性疾患は、それ故に、先天的な代謝欠損に起因する。本発明によって網羅される先天的な代謝障害は、例えば、糖尿病、フェニルケトン尿症、他のアミノ酸尿症、テイ-サックス病、ニーマン-ピック病、及びゴーシェ病、フルラー症候群;クラッベ病及び他の白色変性症、であるかもしれない。それらは、主にCNSにおける髄鞘の発達に影響するかもしれない。
それほどよく知られない神経性炎症性疾患、例えば、神経線維腫症、又は多系統萎縮症(MSA)などもまた、本発明の範囲内に存在する。本発明により治療されるかもしれない更なる障害は、先の「本発明の背景」で詳細に記載されている。
【0055】
更に好ましい態様において、神経性、及び/又は炎症性疾患は、末梢神経障害、最も好ましくは、糖尿病性神経障害である。化学療法に関連する/誘発された神経障害もまた、本発明により好まれる。用語「糖尿病性神経障害」は、先の「本発明の背景」で詳細に記載されている、糖尿病性神経障害のいずれかの形態、糖尿病性神経障害に付随するか若しくはそれにより引き起こされる1つ以上の症状又は障害、あるいは、神経を冒す糖尿病の合併症に関する。糖尿病性神経障害は多発神経障害であるかもしれない。糖尿病性多発神経障害において、多くの神経が同時に冒される。糖尿病性神経障害はまた、単発神経障害であるかもしれない。例えば、局所的単発神経障害において、疾患は、例えば、眼球運動又は外転脳神経などの単独の神経を冒す。それはまた、2つ以上の神経が、離れた領域で冒される時、多発性単神経障害であるかもしれない。
【0056】
更に好ましい態様において、神経性、及び/又は炎症性疾患は、脱髄性疾患である。脱髄性疾患は、好ましくは、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)及び多発性硬化症(MS)のようなCNSの脱髄性症状、並びに末梢神経系(PNS)の脱髄性疾患を含む。後者には、例えば、慢性の炎症性脱髄性多発神経根障害(CIDP)及び、例えば、ギラン-バレー症候群(GBS)と呼ばれる炎症性脱髄性多発神経根障害などの急性の単相性障害などの疾患が含まれる。
【0057】
本発明の更に好ましい態様は、神経変性疾病の治療、及び/又は予防に関する。神経変性疾病は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、及びALSから成る群から選択される。
好ましくは、IL-18に結合しないIL-18BPアイソフォームは、以下の:
a)配列番号1を含むポリペプチド;
b)配列番号1の第29〜113アミノ酸を含むポリペプチド;
c)配列番号1の第76〜113アミノ酸を含むポリペプチド;
d)配列番号2を含むポリペプチド;
e)配列番号2の第29〜161アミノ酸を含むポリペプチド;
f)アミノ酸配列が、(a)〜(e)の配列の少なくとも1つに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性をもっている、(a)〜(e)のいずれの突然変異タンパク質;
g)中程度のストリンジェント条件下、若しくは高いストリンジェント条件下、(a)〜(e)のいずれかをコードする天然のDNA配列の相補配列にハイブリダイズするDNA配列によってコードされる、(a)〜(e)のいずれかの突然変異タンパク質;
h)アミノ酸配列のあらゆる変化が、(a)〜(e)のアミノ酸配列に対する保存的なアミノ酸置換である、(a)〜(e)のいずれかの突然変異タンパク質;
i)(a)〜(h)のいずれかの塩、又は融合タンパク質、機能的な誘導体、活性画分、又は循環的並び換え誘導体、
から成る群から選択される。
【0058】
当業者は、本発明によるIL-18BPアイソフォームの突然変異タンパク質、対立遺伝子変異体の塩、融合タンパク質、機能的な誘導体、本発明による天然に存在するIL-18BPアイソフォームの活性画分又は循環的並び換え誘導体が、前述の天然に存在するアイソフォームに類似した、又はそれに比べて更に良好な生物学的な活性を保有するであろうことを更に理解するであろう。
【0059】
好ましい活性画分には、IL-18BPb若しくはIL-18BPdの活性と等しい活性か、又はそれに比べて良好な活性をもつか、又はそれらは、例えば、より良好な安定性、低い毒性、若しくは免疫原性などの更なる利点を有するか、あるいは、それらは、量産するのがより簡単であるか、若しくは精製するのがより簡単である。当業者は、突然変異タンパク質、活性フラグメント、及び機能的な誘導体が、先に触れたように、適切なプラスミド内に対応するcDNAをクローンニングし、そして、同時培養アッセイにおいてそれらを試験することによって作り出され得ることを理解するであろう。
【0060】
本発明によるタンパク質は、グリコシル化されるか、若しくは非グリコシル化されるかもしれず、それらは、例えば、体液などの天然起源に由来するか、又はそれらは、好ましくは、組み換えによって作り出されるかもしれない。組み換え発現は、例えば、E.コリ(E. coli)などの原核生物発現系において、又は例えば、昆虫細胞などの真核生物、そして、好ましくは、例えば、CHO細胞若しくはHEK細胞などの哺乳動物発現系において実施されるかもしれない。
【0061】
本明細書中では、用語「突然変異タンパク質」は、野生型IL-18BPアイソフォームと比べて得られた生成物の活性を著しく変えることなく、天然のIL-18-BPアイソフォームのアミノ酸残基の1つ以上が、異なったアミノ酸残基に置き換えられているか、若しくは削除されているか、又は1以上のアミノ酸残基がIL-18BPアイソフォームの天然の配列に加えられている、IL-18BPb又はIL-18BPdの類似体を指す。これらの突然変異タンパク質は、公知の合成法によって、及び/又は部位特異的突然変異誘発技術によって、あるいは、そのために好適ないずれか他の公知の技術によって調製される。用語「突然変異タンパク質」は、配列番号1によって表されるIL-18BPbポリペプチドの天然に存在する対立遺伝子変異体、及び/又は配列番号2によって表されるIL-18BPdポリペプチドの天然に存在する対立遺伝子変異体を網羅する。
【0062】
本発明に従って使用され得る、本発明によるIL-18BPアイソフォームの突然変異タンパク質、又はそれをコードする核酸には、本明細書中に提示された教示と手引きに基づいて、必要以上の実験なしに、当業者によって日常的に得られる置換ペプチド又はポリヌクレオチドとして実質的に対応する配列の有限集合が含まれる。
【0063】
本発明による突然変異タンパク質には、中程度の若しくは高いストリンジェント条件下、本発明によるIL-18BPアイソフォームをコードするDNA又はRNAにハイブリダイズする、例えば、DNA又はRNAなどの核酸によってコードされるタンパク質が含まれる。用語「ストリンジェント条件」は、当業者が従来「ストリンジェント」と呼ぶ、ハイブリダイゼーションとその後の洗浄条件を指す。Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、前掲、Interscience、N.Y.、§§ 6.3及び6.4(1987年、1992年)及びSambrookら(Sambrook, J. C.、Frrtsch, E. F.、及びManiatis, T.(1989年)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor, NY)を参照のこと。
【0064】
これだけに制限されることなく、ストリンジェント条件の例には、調査中のハイブリダイゼーションの算出されたTmを12〜20℃下回り、例えば、2×SSCと0.5%のSDS中で5分、2×SSCと0.1%のSDS中で15分間;0.1×SSCと0.5%のSDS中で37℃にて30〜60分間、その後、0.1×SSCと0.5%のSDS中で68℃にて30〜60分間の洗浄条件が含まれる。当業者は、ストリンジェント条件はまた、DNA配列、オリゴヌクレオチド・プローブ(例えば、10〜40塩基など)、又は混成オリゴヌクレオチド・プローブの長さに依存することも理解している。混成プローブが使用される場合、SSCの代わりに塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)が使用されることが望ましい。Ausubel、前掲を参照のこと。
【0065】
好ましい態様において、あらゆるそのような突然変異タンパク質が、添付の配列表の配列番号1の配列又は配列番号2の配列に対して少なくとも40%の同一性を有する。より好ましくは、それは、それらに対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、あるいは、最も好ましくは、少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する。
【0066】
他の好ましい態様において、そのような突然変異タンパク質は、IL-18BPに結合しない天然に存在するIL-18BPアイソフォームの配列に対して少なくとも40%の同一性を有する。より好ましくは、それは、それらに対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、最も好ましくは、少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する。
【0067】
同一性は、配列を比較することによって測定される2つ以上のポリペプチド配列、又は2つ以上のポリヌクレオチド配列の間の相関を反映する。一般に、同一性は、比較される配列の全長にわたる、それぞれ、2つのポリヌクレオチド、又は2つのポリペプチド配列の正確なヌクレオチド対ヌクレオチド、又はアミノ酸対アミノ酸の一致を表す。
【0068】
正確な一致が存在しない配列に関して、「%同一性」が測定されるかもしれない。一般に、比較されるべき2つの配列を、配列間の最大の相関関係を生じさせるように整列させる。これは、整列の度合いを高めるにいずれか又は両方の配列に「ギャップ」を挿入することを含むかもしれない。%同一性は、比較されるそれぞれの配列の全長にわたって測定される(いわゆる「広範囲の整列」)、それは、特に同じで若しくは非常に似通った長さの配列に好適であり、あるいは、越えるより短い、規定された長さにわたり(いわゆる「局所的な整列」)、それは、同等ではない長さの配列に関してより好適であるかもしれない。本発明の構成の中で、「%同一性」は、比較されるそれぞれの配列の全長にわたって測定された広範囲の同一性パーセントを指す。
【0069】
公知のコンピュータ・プログラムが、いずれか特定のポリペプチドが本発明の配列に対して一定のパーセンテージ同一性であるかどうか測定するために使用されるかもしれない。そのようなアルゴリズム及びプログラムには、例えば、TBLASTN、BLASTP、FASTA、TFASTA、及びCLUSTALWが含まれる(Altschulら、1990年a;Altschulら、1997年a;Higginsら、1996年;Pearson及びLipman、1988年;Thompsonら、1994年)。タンパク質及び核酸配列の相同性は、当該技術分野で周知であるBasic Local Alignment Search Tool(「BLAST」)を使用することによって好ましくは評価される(Altschulら、1990年b;Altschulら、1997年b;Karlin及びAltschul、1990年b)。
【0070】
BLASTプログラムは、タンパク質又は核酸配列データベースから好ましくは得られる問い合わせアミノ若しくは核酸配列と試験配列の間の、本明細書中で「スコアの高いセグメント対」と呼ばれる類似したセグメントを特定することによって相同性配列を特定する。スコアの高いセグメント対は、その多くが当該技術分野で知られているスコア・マトリックスによって、好ましくは特定される(すなわち、整列される)。使用されるスコア・マトリックスは、BLOSUM62マトリックスであるかもしれない(Gonnetら、1992年;Henikoff及びHenikoff、1993年)。PAM又はPAM250マトリックスもまた、使用されるかもしれない(例えば、Schwartz及びDayhoff編、(1978年)Matrices for Detecting Distance Relationships:Atlas of Protein Sequence and Structure、Washington:National Biomedical Research Foundationを参照のこと)。BLASTプログラムは、特定された全ての高スコア・セグメント対の統計的有意性を評価して、そして、好ましくは、例えば、ユーザによって指定されたパーセント相同性などのユーザによって指定された有意性の閾値を満たすそれらのセグメントを選択する。好ましくは、スコアの高いセグメント対の統計的有意性は、カルランの統計的有意性式を使用することで評価される(Karlin及びAltschul、1990年a)。BLASTプログラムは、初期設定のパラメーター又はユーザによって提供される修飾パラメーターを用いて使用されるかもしれない。
【0071】
広範囲な配列アラインメントとも呼ばれる、問い合わせ配列(本発明の配列)と対象配列の間の最良の全体的な一致を測定するための好ましい方法は、Brutlagのアルゴリズムに基づくFASTDBコンピュータ・プログラムであり、それらを使用することで測定できる(Brutlagら、1990年)。配列整列において、問い合わせ配列と対象配列は共にアミノ酸配列である。前述の広範囲な配列整列の結果は、同一性の割合(%)の単位である。FASTDBアミノ酸整列に使用される好ましいパラメーターは:マトリクス=PAM 0、kタプル(k-tiple)=2、ミスマッチ・ペナルティー=1、連結ペナルティー=20、ランダム化群=25、長さ=0、カットオフ・スコア=1、ウインドウ・サイズ=配列長、ギャップ・ペナルティ=5、ギャップ・サイズ・ペナルティー=0.05、ウインドウ・サイズ=247又は対象アミノ酸配列の長さであるのいずれか短い方、である。
【0072】
内側の欠損によってではなく、N若しくはC末端の欠失により対象配列が問い合わせ配列より短い場合には、広範囲な同一性の割合(%)について計算する時に、FASTDBプログラムは対象配列のN及びC末端の先端切断を考慮しないので、同一性の割合(%)による結果を手作業で修正しなければならない。問い合わせ配列と比べて、N及びC末端にて先端を切断されている対象配列において、同一性の割合(%)は、問い合わせ配列の全塩基の中のパーセントとして対応する対象残基と一致又は整列しない、対象配列のN及びC末端である問い合わせ配列の残基数を計算することによって修正される。残基が一致/整列するかどうかは、FASTDBの配列整列の結果によって判断される。そして、このパーセンテージは、最終的な同一性の割合(%)のスコアに達するように指定されたパラメーターを使用した前記FASTDBプログラムによって計算された同一性の割合(%)から差し引かれる。この最終的な同一性の割合(%)のスコアが、本発明の目的のために使用される。問い合わせ配列と一致/整列しない対象配列のN及びC末端の残基だけが、同一性の割合(%)のスコアを手作業で調整する目的のために考慮される。すなわち、対象配列の最も遠いN及びC末端残基の外側の問い合わせアミノ酸残基だけである。
【0073】
例えば、90アミノ酸残基の対象配列を、100残基の問い合わせ配列と整列させて、同一性の割合(%)を測定する。対象配列のN末端で欠失が起こっているので、FASTDB整列は、N末端において最初の残基と一致又は整列していない。10個の不対残基は配列の10%に相当するので(一致しなかったN及びC末端における残基数/問い合わせ配列の総残基数)、FASTDBプログラムによって計算された同一性の割合(%)のスコアから10%が差し引かれる。残った90残基が完全に一致している場合には、最終的な同一性の割合(%)は90%になるだろう。
【0074】
本発明による突然変異タンパク質の好ましい変更は、「保存的な」置換として知られているものである。本発明によるIL-18BPアイソフォームの保存的なアミノ酸置換には、群メンバーの間の置換がその分子の生物学的機能を維持する十分に類似した生理化学的性質を有する群の中に同義アミノ酸が含まれるかもしれない(Grantham、1974年)。特に、その挿入又は欠失がわずかなアミノ酸、例えば30アミノ酸未満、好ましくは10アミノ酸未満にのみ影響を及ぼし、そして、機能的な立体構造に重要なアミノ酸、例えば、システイン残基、を取り外し又は置き換えしない場合には、アミノ酸の挿入及び欠失もまた、それらの機能を変更せずに先に規定された配列において行われるかもしれないことが明らかである。そのような欠失、及び/又は挿入によって作り出されたタンパク質及び突然変異タンパク質は、本発明の範囲に含まれる。
【0075】
好ましくは、同義アミノ酸群は、表Iで規定されるものである。より好ましくは、同義アミノ酸群は、表IIで規定されるものであり;そして、最も好ましくは、同義アミノ酸群は、表IIIで規定されるものである。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
本発明における使用のための、本発明による天然に存在するIL-18BPアイソフォームの突然変異タンパク質を得るために使用され得るタンパク質のアミノ酸置換の製造に関する例には、例えば、Markらに対する米国特許番号第4,959,314号、同第4,588,585号、及び同第4,737,462号;Kothsらに対する米国特許番号第5,116,943号;Namenらに対する米国特許番号第4,965,195号;Chongらに対する米国特許番号第4,879,111号;及びLeeらに対する米国特許番号第5,017,691号などに提示されるあらゆる公知の方法ステップ;並びに米国特許番号第4,904,584号(Shawら)に提示されているリジン置換タンパク質などが含まれる。
【0080】
用語「融合タンパク質」は、例えば、体液中で長い滞留時間を有する別のタンパク質と融合させた本発明による天然に存在するIL-18BPアイソフォーム、又は突然変異タンパク質、若しくはそのフラグメントを含むポリペプチドを指す。それ故に、本発明によるIL-18BPアイソフォームは、別のタンパク質、ポリペプチド、又は同様のもの、例えば、免疫グロブリン、若しくはそのフラグメントに融合されるかもしれない。免疫グロブリンFc部分は、特に、二量体又は多量体Ig融合タンパク質の製造に好適である。本発明によるIL-18BPアイソフォームは、例えば、IgのFc部分によって二量化された本発明によるIL-18BPアイソフォームを作り出すような方法で免疫グロブリンの部分に連結されるかもしれない。他の態様において、本発明によるIL-18BPアイソフォームの配列は、シグナル・ペプチド、及び/又は促進された分泌を可能にするリーダー配列に融合される。リーダー配列は、例えば、PCT出願PCT/EP 2004/052302で開示されたIgSP-tPAプレ-プロペプチドに相当するかもしれない。
【0081】
本明細書中に使用される「機能的な誘導体」は、当該技術分野で知られている手段によって、残基又はN若しくはC末端基上の側鎖として生じ、且つ、医薬として許容されるまま残る、すなわち、それらが、実質的にIL-18BPb、及び/又はIL-18BPdの活性と実質的に類似したタンパク質の活性を破壊することなく、また、それを含む組成物に毒性特性を与えない限り本発明に含まれる官能基から調製されるかもしれない、本発明による天然に存在するIL-18BPアイソフォームの誘導体、並びにそれらの突然変異タンパク質及び融合タンパク質に及ぶ。
【0082】
これらの誘導体には、例えば、抗原部位をマスクし、体液中でEL-18BPアイソフォームの滞留を延長するかもしれないポリエチレングリコール側鎖が含まれる。他の誘導体には、カルボキシル基の脂肪族エステル、アンモニア又は1級若しくは2級アミンとの反応によるカルボキシル基のアミド、アシル部分(例えば、アルカノイル又はカルボシクリル・アロイル基)で形成されたアミノ酸残基の遊離アミノ基のN-アシル誘導体、あるいは、アシル部分で形成された遊離ヒドロキシル基(例えば、セリル又はトレオニル残基のもの)のO-アシル誘導体が含まれる。
【0083】
本発明によるの天然に存在するIL-18BPアイソフォーム、突然変異タンパク質、及び融合タンパク質の「活性画分」として、本発明は、単独の、又はそれに連結している関連分子若しくは残基、例えば、糖若しくはリン酸残基、と一緒に、タンパク質分子のポリペプチド鎖のあらゆる断片、又は前駆体、あるいは、それら自体によるタンパク質分子若しくは糖残基の集合体に及ぶが、上述の断片がIL-18BPb、及び/又はIL-18BPdに実質的に類似した活性を有することを条件とする。
【0084】
用語「塩」は、本明細書中、本発明によるIL-18BPアイソフォーム又はその類似体のカルボキシル基の塩、及びアミノ基の酸付加塩の両方を指す。カルボキシル基の塩は、当該技術分野で知られている手段によって形成され、そして、無機塩、例えば、ナトリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、第二鉄塩、亜鉛塩など、及び、例えば、アミンを用いて形成されたもののような有機塩基、例えば、トリエタノールアミン、アルギニン若しくはリジン、ピペリジン、プロカインなどを用いた塩が含まれるかもしれない。酸付加塩には、例えば、鉱酸、例えば、塩酸若しくは硫酸などを用いた塩、及び、有機酸、例えば、酢酸又はシュウ酸などを用いた塩が含まれる。もちろん、そのような塩のいずれもが、本発明に関連するIL-18BPアイソフォームの生物活性を維持しなければならない。
【0085】
本発明によるIL-18BPアイソフォームの機能的な誘導体、本発明によるIL-18BPアイソフォームは、例えば、安定性、半減期、生物学的利用能、人体による許容度、又は免疫原性などのタンパク質の性質を改良するために重合体に結合されるかもしれない。この目標を達成するために、本発明によるIL-18BPアイソフォームは、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)に連結されるかもしれない。PEG化は、例えば、WO 92/13095に記載されている公知の方法によって実施されるかもしれない。
それ故に、本発明の好ましい態様において、本発明によるIL-18BPアイソフォームはPEG化されている。
【0086】
本発明の更に好ましい態様において、融合タンパク質は免疫グロブリン(Ig)融合を含む。融合は、直接的なものであるか、あるいは、長さが1〜3アミノ酸残基くらい短い、又は例えば、長さが13アミノ酸残基のより長いものであり得る短リンカー・ペプチドを介したものであるかもしれない。前記リンカーは、例えば、IL-18BPアイソフォーム配列と免疫グロブリン配列の間に導入される、例えば、配列E-F-M(Glu-Phe-Met)によって表されるトリペプチドであるか、又は、例えば、Glu-Phe-Gly-Ala-Gly-Leu-Val-Leu-Gly-Gly-Gln-Phe-Metを含む13アミノ酸のリンカー配列であるかもしれない。得られた融合タンパク質には、例えば、体液中の長い滞留時間(半減期)、又は増強された比活性、増強された発現レベルなどの改良された特性がある。Ig融合はまた、融合タンパク質の精製を容易にするかもしれない。
【0087】
更に他の好ましい態様において、本発明によるIL-18BPアイソフォームは、Ig分子の定常領域に融合される。好ましくは、それは、例えば、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインのような重鎖領域に融合される。Ig分子の他のアイソフォーム、例えば、アイソフォームIgG2若しくはIgG4、又は、例えば、IgMのような他のIgクラスなどもまた、本発明による融合タンパク質の製造に好適である。融合タンパク質は、単量体、又はヘテロ若しくはホモ多量体である多量体であるかもしれない。融合タンパク質の免疫グロブリン部分は、補体結合又は補体カスケードを活性化しないか、又はFc受容体に結合しないように更に修飾されるかもしれない。
【0088】
本発明は、同時の、連続した、又は別々の使用に適した、神経性、及び/又は炎症性疾患の治療用、及び/又は予防用医薬品の製造のための本発明によるIL-18BPアイソフォームと、免疫抑制剤の組合せ物の使用に更に関する。
免疫抑制剤は、ステロイド、メトトレキサート、シクロホスファミド、抗白血球抗体(例えば、CAMPATH-1など)などであるかもしれない。
【0089】
本発明は、神経性、及び/又は炎症性疾患の治療用、及び/又は予防用医薬品の製造のための以下の:
(i)IL-18に結合しないIL-18BPアイソフォーム、又は上記IL-18BPアイソフォームの作動薬;及び
(ii)インターフェロン、オステオポンチン、及びクラステリンから成る群から選択されるポリペプチド、
の同時の、連続した、又は別々の使用に更に関する。
【0090】
用語「インターフェロン」は、当該特許出願において使用される場合には、例えば、先の「本発明の背景」の項で触れたあらゆる種類のIFNsを含め、文献中でそういうものとして規定されているあらゆる分子を含むものとする。インターフェロンは、好ましくは、ヒトのものであるかもしれないが、生物活性がヒト・インターフェロンと類似しており、且つ、分子がヒトにおいて免疫原性でない限り、他の種に由来するかもしれない。具体的には、あらゆる種類のIFN-α、IFN-β、及びIFN-γが前記の規定に含まれる。IFN-β、より詳しく述べると、IFN-β1aが、本発明による好ましいIFNである。用語「インターフェロンβ(IFN-β)」には、本発明に使用される場合、生体液からの分離によって得られるか、又は原核生物若しくは真核生物の宿主細胞からDNA組み換え技術によって得られる、ヒト線維芽細胞インターフェロン、並びに塩、機能的な誘導体、変異体、類似体、及び断片が含まれるものとする。インターフェロンもまた、タンパク質の安定性を改良するために重合体に結合されるかもしれない。インターフェロンβとポリオール・ポリエチレングリコール(PEG)の間の複合体は、例えば、WO 99/55377に記載されている。
【0091】
「オステオポンチン」はまた、本明細書中に使用される場合、オステオポンチンの突然変異タンパク質、断片、活性画分、及び機能的な誘導体も網羅する。これらのタンパク質は、例えば、WO 02/092122に記載されている。
「クラステリン」は、本明細書中に使用される場合、また、クラステリンの突然変異タンパク質、断片、活性画分、及び機能的な誘導体も網羅する。これらのタンパク質は、例えば、WO 04/084932に記載されている。
【0092】
本発明の好ましい態様において、本発明によるIL-18BPアイソフォームは、以下の量:
a)約0.001〜100mg/kg体重;又は
b)約0.01〜10mg/kg体重;又は
c)約0.1〜1mg/kg体重;又は
d)約9、8、7、6、5、4、3、2、又は1mg/kg体重、
にて使用される。
【0093】
本発明は、末梢神経性疾患の治療用、及び/又は予防用医薬品の製造のための核酸分子の使用であって、上記核酸分子は以下の:
a)配列番号1を含むポリペプチド;
b)配列番号1の第29〜113アミノ酸を含むポリペプチド;
c)配列番号1の第78〜113アミノ酸を含むポリペプチド;
d)配列番号2を含むポリペプチド;
e)配列番号2の第29〜161アミノ酸を含むポリペプチド;
f)アミノ酸配列が、(a)〜(e)の配列の少なくとも1つに少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する(a)〜(e)のいずれかの突然変異タンパク質;
g)中程度のストリンジェント条件下、若しくは高いストリンジェント条件下、(a)〜(e)のいずれかをコードする天然のDNA配列の相補体にハイブリダイズするDNA配列によってコードされる(a)〜(e)のいずれかの突然変異タンパク質;
h)アミノ酸配列内のあらゆる変更が(a)〜(e)のアミノ酸配列に対する保存的なアミノ酸置換である(a)〜(e)のいずれかの突然変異タンパク質;
i)(a)〜(h)のいずれかの塩、融合タンパク質、機能的な誘導体、活性な断片又は循環的並び換え誘導体、
から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸配列を含む前記使用に更に関する。
【0094】
核酸は、例えば、筋肉内注射によって、例えば、裸の核酸分子として投与されるかもしれない。
それは、ヒトの体内において、好ましくは、適切な細胞又は組織内において、核酸分子によってコードされた遺伝子の発現に有用である、例えば、ウイルス配列などのベクター配列を更に含むかもしれない。
それ故に、好ましい態様において、核酸分子は、発現ベクター配列を更に含む。発現ベクター配列は、当該技術分野で周知であり、それらは着目の遺伝子の発現に役立つ更なる要素を含む。それらには、例えば、プロモーターやエンハンサ配列などの調節配列、選択マーカー配列、複製開始点などが含まれるかもしれない。これにより、遺伝子治療アプローチが、疾患を治療又は予防するために使用される。有利なことには、本発明によるIL-18BPアイソフォームの発現は、その後、その場で行われる。
【0095】
本発明の好ましい態様において、発現ベクターは、筋肉内注射によって投与されるかもしれない。
本発明によるIL-18BPアイソフォームの内因性産生を誘導、及び/又は促進するためのベクターの、通常、上記IL-18BPアイソフォームの発現の停止しているか、又は十分でない量の上記IL-18BPアイソフォームしか発現していない細胞における使用もまた、本発明により想定される。ベクターは、本発明によるIL-18BPアイソフォームを発現することを所望される細胞において機能的な調節配列を含むかもしれない。そのような調節配列は、例えば、プロモーター又はエンハンサであるかもしれない。そして、調節配列は、相同組み換えによってゲノムの適切な遺伝子座内に導入され、これにより、その発現が誘導又は促進されることが求められる遺伝子と調節配列を作動できるように連結するかもしれない。その技術は、通常、「内因性遺伝子活性化」(EGA)と呼ばれ、そして、それは、例えば、WO 91/09955に記載されている。
【0096】
本発明は、末梢神経性疾患の治療用、及び/又は予防用医薬品の製造における、本発明によるIL-18BPアイソフォームを産生するように遺伝子を組み換えた細胞の使用に更に関する。
本発明は、神経性疾患の治療用、及び/又は予防用医薬品の製造のための本発明によるIL-18BPアイソフォームを産生するように遺伝子を組み換えた細胞に更に関する。これにより、細胞治療アプローチが、人体の適切な部分に薬物をデリバリーするために使用されるかもしれない。
【0097】
本発明は、以下の:
a)治療的有効量の本発明によるIL-18BPアイソフォーム、又はその作動薬;
b)医薬として許容される担体;及び、必要に応じて
c)治療的有効量の免疫抑制剤、
を含む、神経性、及び/又は炎症性疾患の治療、及び/又は予防のために特に有用な医薬組成物に更に関する。
【0098】
免疫抑制剤は、例えば、インターフェロン、オステオポンチン、及びクラステリンから成る群から選択されるポリペプチドであるかもしれない。
「医薬として許容される担体」の定義は、有効成分の生物活性の有効性を妨げず、且つ、それが投与される宿主にとって毒性でないあらゆる担体を網羅するように意図されている。例えば、非経口投与のために、活性タンパク質は、例えば、生理的食塩水、デキストロース溶液、血清アルブミン、及びリンゲル液などの溶媒中、注射用単位投与形態で処方されるかもしれない。
【0099】
本発明による医薬組成物の有効成分は、さまざまな方法で個人に投与される。投与経路には、皮内、(例えば、持続放出製剤による)経皮、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、経口、硬膜外、局所、くも膜下腔内、直腸、又は鼻腔内経路が含まれる。その他の治療として有効な投与経路、例えば、上皮若しくは内皮組織を通じた吸収、又は生体内で発現され、そして分泌されるべき活性物質をもたらす、活性物質をコードするDNA分子が(例えば、ベクターを介して)患者に投与される遺伝子治療、が使用されてもよい。加えて、本発明によるタンパク質は、例えば、医薬として許容される界面活性剤、賦形剤、担体、希釈剤、及び溶媒などの生理活性物質の他の成分と一緒に投与されてもよい。
【0100】
非経口(例えば、静脈内、皮下、筋肉内)投与のために、活性タンパク質は、溶液、懸濁液、乳濁液、又は医薬として許容される非経口的溶媒(例えば、水、生理的食塩水、デキストロース溶液)、及び等張性(例えば、マンニトール)又は化学的安定性(例えば、保存料と緩衝剤)を維持する添加物を伴った凍結乾燥粉末として処方されてもよい。製剤は、一般的に使用される技術によって殺菌される。
【0101】
本発明による活性タンパク質の生物学的利用能はまた、例えば、PCT特許出願WO 92/13095に記載されているように、ポリエチレングリコールに分子を連結して、人体内での分子の半減期を延ばす結合手順を使用することによって改善されてもよい。
治療的有効量の活性タンパク質は、タンパク質型、タンパク質の親和性、拮抗薬によって示されるいずれかの残留細胞毒性活性、投与経路、(無毒レベルの内因性IL-18BP活性を維持することの望ましさを含めた)患者の臨床症状を含めた多変数関数になる。
【0102】
「治療的有効量」は、投与した時に、本発明による1L-18BPアイソフォームが神経性、及び/又は炎症性疾患に対して有益な効果を発揮するような量である。個人に、単回若しくは複数回投与として、投与される投薬量は、IL-18BPの薬物動力学特性、投与経路、患者の症状及び特徴(性別、年齢、体重、健康状態、体格)、症状の程度、併用治療、治療の頻度、並びに所望される効果を含めたさまざまな要因によって変化する。
【0103】
本発明によるIL-18BPアイソフォームは、好ましくは、約0.001〜10mg/kg体重、約0.01〜5mg/kg体重、約0.1〜3mg/kg体重、又は約1〜2mg/kg体重で使用される。更に好ましいIL-18BPの量は、約0.1〜1000μg/kg体重、約1〜100μg/kg体重、又は10〜50μg/kg体重の量である。
【0104】
本発明により好まれる投与経路は、皮下経路による投与である。筋肉内投与が、本発明により更に好まれる。
更に好ましい態様において、本発明によるIL-188Pアイソフォームは、毎日又は一日おきに投与される。
【0105】
日用量は、分割された投与量で、又は所望の成果を得るために有効な徐放形態で通常与えられる。2回目又は次の投与は、最初の又は先に個人に投与された用量と比べて同じであるか、より少ないか、又はより多い投薬量で実施されてもよい。2回目又は次の投与は、疾患の発症中に、又は発症前に投与されてもよい。
本発明によると、本発明によるIL-18BPアイソフォームは、治療的有効量で、他の治療薬より前に、同時に、又は連続して(例えば、多剤レジメン)、具体的にはインターフェロンと共に、個人に予防的、又は治療的に投与されることができる。
他の治療薬と同時に投与される活性物質は、同じ又は別個の組成物で投与されてもよい。
【0106】
本発明は、必要に応じて医薬として許容される担体と一緒に、有効量の本発明によるIL-18BPアイソフォーム、又はその作動薬を、それを必要とする患者に投与するステップを含む、神経性、及び/又は炎症性疾患の治療方法に更に関する。そのような方法において、IL-18BPアイソフォーム又はその作動薬は、インターフェロン、オステオポンチン、及びクラステリンから成る群から選択されるポリペプチドと一緒に投与されるかもしれない。
【0107】
学術雑誌の記事若しくは抄録、公開若しくは未公開の米国若しくは外国特許出願、交付された米国若しくは外国特許、又はその他の参考文献を含めた、本明細書中に引用された全ての参考文献は、引用された参考文献中に提示された全てのデータ、表、図面、及び文章を含め、完全に本明細書中に援用される。加えて、本明細書中に引用された参考文献の中に引用された参考文献の全内容もまた、完全に援用される。
【0108】
公知の方法ステップ、在来の方法ステップ、公知の方法、又は在来法を参照することは、本発明のいずれかの側面、説明、又は態様が、関連技術により開示、教示、又は示唆されると認める方法ではない。
【0109】
先の具体的な態様の説明が本発明の全般的な本質を十分に明らかにしているので、他のものが、(本明細書中に引用された参考文献の内容を含めた)当該技術分野の技能の範囲内の知識を応用することによって、必要以上の実験なしに、本発明の全般的な概念から逸脱することなく、そのような具体的な態様を容易に修飾する、及び/又は様々な適用に適合させることができる。それ故に、そのような適応及び修飾は、本明細書中に提示された教示及び手引きに基づく、開示された態様の同等物の趣旨の範囲内にあるものとする。本明細書中の表現又は用語は、説明のためのものであって、制限するためのものではないことが理解されるべきであり、本明細書中の用語又は表現は、当業者の知識と組み合わせて、本明細書中に提示された教示及び手引きを踏まえて当業者によって解釈されるべきである。
【0110】
これまで本発明について説明してきたので、実例として提供され、しかも、本発明を制限しない以下の実施例を参照することによって、より容易に本発明が理解されるだろう。
【実施例】
【0111】
実施例1:IL-18BPb及びdアイソフォームの組み換え発現
それらの精製を可能にするためにそれらのC末端の先端にタグを融合させたIL-18BPb及びIL-18BPdアイソフォームを、HEK細胞により発現させ、以下のとおり精製した。
組み換えタンパク質を含む、100mlの培地サンプルを、100mlの冷たいバッファーA(50mMのNaH2PO4;600mMのNaCl;8.7%(w/v)のグリセロール、pH7.5)で希釈した。サンプルを、0.22μmの細菌濾過器(Millipore、500mlのフィルター・ユニット)を通して濾過し、そして、無菌の角型培地ビン(Nalgene)中に保存した。
【0112】
精製を、自動サンプル・ローダー(Labomatic)に接続したVISIONワークステーション(Applied Biosystems)により4℃にて実施した。精製手順には、2つの連続的ステップ:タグに特異的なアフィニティ・クロマトグラフィーとそれに続くセファデックスG‐25媒質(Amersham Pharmacia)カラム(1.0×10cm)によるゲル濾過、が含まれた。
第1クロマトグラフィー・ステップは、1.6mlの画分中に回収された溶出タンパク質をもたらした。
【0113】
第2クロマトグラフィー・ステップのために、セファデックスG‐25ゲル濾過カラムを、2mlのバッファーD(1.137MのNaCl;2.7mMのKCl;1.5mMのKH2PO4;8mMのNa2HPO4;pH7.2)で再生し、それに続いて、4カラム容量のバッファーC(137mMのNaCl;2.7mMのKCl;1.5mMのKH2PO4;8mMのNa2HPO4;20%(w/v)のグリセロール;pH7.4)で平衡化した。第1ステップから溶出したピーク画分を、VISION装置の統合サンプル・ローダーを通してセファデックスG‐25カラムに自動的に添加した。タンパク質を、2ml/分の流速にてバッファーCで溶出した。脱塩サンプルを、2.2mlの画分中に回収した。画分を、0.22μm無菌遠心分離フイルター(Millipore)に通して濾過し、冷凍し、そして、−80℃にて保存した。サンプルのアリコートを、クマシー染色によってSDS-PAGE(4〜12%のNuPAGEゲル;Novex)により、及び抗タグ抗体を用いたウエスタンブロットにより分析した。
【0114】
クマシー染色:NuPAGEゲルを、室温にて1時間、0.1%のクマシー・ブルーR250染色溶液(30%のメタノール、10%の酢酸)中で染色し、それに続いて、背景が透明になり、且つ、タンパク質バンドがはっきりと見えるまで20%のメタノール、7.5%のの酢酸の溶液中で脱色した。
【0115】
ウエスタンブロット:電気泳動に続いて、タンパク質を、4℃、290mAにて1時間、ゲルからニトロセルロース膜に電気転写した。その膜を、室温にて1時間、バッファーE(137mMのNaCl;2.7mMのKCl;1.5mMのKH2PO4;8mMのNa2HPO4;0.1%のTween20、pH7.4)中、5%の粉ミルクでブロッキングした。その膜を、続いて、2.5%の粉ミルクを含むバッファーE中、2種類のウサギ・ポリクローナル抗タグ抗体(G-18及びH-15、それぞれ0.2ug/ml;Santa Cruz)の混合物と一緒に4℃にて一晩、インキューベートした。室温にて補足のインキュベーション時間の後に、その膜を、バッファーE(3×10分間)で洗浄し、そして、2.5%の粉ミルクを含むバッファーE中、1/3000に希釈した二次HRP複合化抗ウサギ抗体(DAKO、HRP 0399)と一緒に室温にて2時間、インキューベートした。バッファーE(3×10分間)で洗浄した後に、その膜をECLキット(Amersham Pharmacia)で1分間、現像した。その膜を、続いて、Hyperfilm(Amersham Pharmacia)に感光させ、そのフィルムを現像し、そして、ウエスタンブロット像を視覚的に分析した。
【0116】
タンパク質アッセイ:タンパク質濃度を、標準物質としてウシ血清アルブミンを用いて、BCAタンパク質分析キット(Pierce)を使用して測定した。平均タンパク質回収率は、500mlの培地あたり216μgの精製IL-18bpになった。
【0117】
実施例2:ヒト神経膠芽腫細胞U373におけるSTAT2核内移行に対するIL-18BPb及びIL-18BPdアイソフォームの効果
略語:
STAT:シグナル伝達物質及び転写活性化因子
U373:ヒト起源からの神経膠芽腫細胞
ArrayScan HCS System(Cellomics(商標)製):画像解析システム
核内移行単位:核内移行を、「Cytoplasm to Nucleus Translocation Application」ソフトウェア(画像解析システム、ArrayScan HCS System、Cellomics(商標))を使用して計測した。核内移行単位は、細胞質領域の平均強度を差し引いた核領域の標的の平均強度の測定値を表す。核内移行単位は、所定のウェル(近似的に100細胞/ウェル)内の全ての分析細胞の平均値である。使用したソフトウェアにおいて、関数名は「MeanNuc-CytolntenDiff」であり、そして、単位は「蛍光強度」であった。
s.e.m.:標準誤差
【0118】
序論
星状細胞の生物学に対するIL-18BPb及びIL-18BPdの効果を評価した。例えば、c-Jun、NFκB、STAT1、STAT2、及びSTAT3などの転写因子の細胞質から核への移行に基づく一連のアッセイを、ヒト星細胞腫細胞株U373において実施した。陽性対照は:c-Jun及びNFκBアッセイに関してはIL-1β、STAT1及びSTAT3アッセイに関してはIFNγ、及びSTAT2アッセイに関してはIFNβであった。
【0119】
材料と方法
U373細胞、(ECACC、注文番号:89081403)を、80μlの、10%のFCSを含むDMEM中、96ウェル・プレート(Packard ViewPlate(商標)-96、黒色、カタログ番号6005225)内に4000細胞/ウェルの密度で播種した。そのプレートを、5%のCO2の加湿インキュベーター内で37℃にて一晩、静置した。翌日、試験されるタンパク質を含む20μlの培地を、上記ウェルに加えた。30分後に、培地を取り除き、そして、細胞を3.7%のホルムアルデヒドで固定した(Sigma、カタログ番号25,254-9)。
【0120】
市販キットを使用し、且つ、製造業者の指示に従って、細胞を免疫染色のために加工した。c-Junアッセイのために、Cellomics c-Jun activation HitKit(商標)(カタログ番号K01-0003-1)を使用した。NFκBアッセイのために、Cellomics NFκB activation HitKit(商標)(カタログ番号K01-0001-1)を使用した。STAT1アッセイのために、Cellomics STAT1 activation HitKit(商標)(カタログ番号K01-0002-1)を使用した。STAT2アッセイのために、Cellomics STAT2 activation HitKit(商標)(カタログ番号K01-0005-1)を使用した。STAT3アッセイのために、Cellomics STAT3 activation HitKit(商標)(カタログ番号K01-0008-1)を使用した。
【0121】
免疫染色の後に、そのプレートを、Array-Scan II装置により読み取った。
陽性対照:c-Jun及びNFκBの核内移行アッセイに関して、0.5ng/mlのIL-1β(R&D systems、カタログ番号201-LB)を陽性対照として使用した。STAT2の核内移行アッセイに関して、1000IU/mlの組み換えヒトIFNβを陽性対照として使用した。STAT1及びSTAT3のアッセイに関して、5000IU/mlの組み換えヒトIFNγ(R&D systems、カタログ番号285-IF-100)を陽性対照として使用した。
【0122】
データ分析
結果を核内移行単位として表現した。いくつかの実験を比較するために、結果はまた、陽性対照(IL-1β、IFNγ、及びIFNβ)を用いて計算した最大刺激に対するパーセンテージとして表現した。統計を、スチューデントT検定、若しくは分散分析(ANOVA)及び一元配置ANOVAと、それに続く1つの実験あたりの群の数に依存するダネット検定を使用して実施した。有意性の閾値をp<0.05に設定した。結果を、平均±平均の標準誤差(s.e.m.)として表現した。
【0123】
結果
U373細胞にIL-18BPb又はIL-18BPdを加えることは、STAT2の核内移行を有意に刺激した(図3a)。刺激は、IFNβで得られる最大刺激の30〜50%に相当した。IL-18BPb及びIL-18BPdは、STAT1、STAT3、c-Jun、又はNFκBの核内移行を引き起こさなかった(STAT1及びSTAT3で得られた結果に関する図3b)。
組み換えヒトIL-18BPa、組み換えヒトIL-18BPc、及び組み換えマウスIL-18BPd(ヒトIL-18BPaのオルソログ)もまた、U373におけるSTAT2の核内移行に関して試験した。これらのIL-18BPアイソフォーム及び変異体のいずれもSTAT2の移行を刺激しなかった(IL-18BPa及びmIL-18BPdを用いて得られた結果に関する図4)。
IL-18BPa及びIL-18BPcの天然リガンドであるIL-18は、いずれのSTAT2の核内移行も引き起こさず(図4)、IL-18BPb及びdを用いて得られた効果が、全てのIL-18BPアイソフォームの一般的な効果でないという事実を際立たせた。
【0124】
結論
先の実験は、IL-18BPb及びIL-18BPdがU373細胞におけるSTAT2の核内移行を誘導することによって細胞内信号を開始する能力を持っていることを示した。例えば、c-Jun、NFκB、STAT1、及びSTAT3などの他の転写因子が誘発されていないので、STAT2の核内移行の誘導は特異的である。IL-18BPa及びIL-18BPcがSTAT2移行を刺激していないという事実は、全てのアイソフォーム間のアミノ酸配列の比較(図2)と共に、IL-18BPb及びIL-18BPdの第36カルボキシ末端アミノ酸が応答の特異性を媒介していることを示唆している。これらのIL-18BPb及びIL-18BPdの第36カルボキシ末端アミノ酸は、配列番号2の第78〜113アミノ酸に相当する。
【0125】
実施例3:IL-18BPb及びdは、ヒト神経膠芽腫細胞U373及びU251におけるIL-6及びMCP-1の産生を減少させる
序論
IL-6及びMCP-1は炎症誘発性ケモカインである。IL-1β及びIFNγは、ヒト神経膠芽腫細胞U373及びU251においてIL-6及びMCP-1の分泌を刺激する。IL-1β及びIFNγによって刺激したU373又はU251細胞におけるIL-6及びMCP-1分泌に対するIL-18BPb及びIL-18BPdの効果を試験した。
【0126】
材料と方法
U373細胞(ECACC、注文番号:89081403)又はU251細胞(Health Science Research Resources Bank(HSRRB)参照番号:U-251 MG)を、100μlの、10%のPCSを含むDMEM中、96ウェル・プレート(Packard ViewPlate(商標)-96、黒色、カタログ番号6005225)内に4000細胞/ウェルの密度で播種した。その細胞を、5%のCO2の加湿インキュベーター内に37℃にて一晩、静置した。翌日に、試験すべきタンパク質を含む20μlの培地を、IL-1β及びIFNγを含む80μlの培地と一緒にウェルに加えた。IL-1βとIFNγの終濃度は、以下のとおり:0、1、3、10、及び30μg/mlであった。24及び48時間後に、50μlの培地を採取した。IL-6及びMCP-1レベルを、ELISAキットを使用して計測した(R&D systems:DuosetのヒトIL-6、カタログ番号DY206;DuosetのヒトMCP-1、カタログ番号DY279)。
【0127】
データ分析
結果を、1mlあたりのタンパク質のpgとして表現した。統計を、スチューデントT検定、若しくは分散分析(ANOVA)及び一元配置ANOVAと、それに続く1つの実験あたりの群の数に依存するダネット検定を使用して実施した。有意性の閾値をp<0.05に設定した。結果を、平均±平均の標準誤差(s.e.m.)として表現した。
【0128】
結果
IL-1βでのU373細胞の処理は、用量依存的な様式でIL-6及びMCP-1分泌の両方を誘導した。IFNγの補足的な添加は、IL-6及びMCP-1分泌の両方を更に増加させる(図5a)。IL-1β+/−IFNγに付随したIL-18BPb又はIL-18BPdでの細胞の処理は、用量依存的な様式でIL-6分泌及びMCP-1分泌のレベルを有意に減少させた(図5a)。同じ効果は、別のヒト星状グリア細胞株のU251でも得られた(図5b)。それはまた、IL-18BPb単独又はIL-18BPd単独でU251又はU373細胞によるIL-6又はMCP-1分泌を誘導しなかったことも示した。
【0129】
結論
これらの一連の実験は、IL-1β及びIFNγ誘発応答のモデルにおけるIL-18BPb及びIL-18BPdの抗炎症性機能を実証している。
【0130】
実施例4:IL-18BPb及びIL-18BPdはTRAIL誘導性アポトーシスを抑える
序論
TRAIL誘導性アポトーシスから細胞を救うIL-18BPb及びIL-18BPdの能力を、マウス繊維芽細胞株のL929細胞において調査した。
【0131】
材料と方法
L929マウス繊維芽細胞(CCL-1)を、100μlの、2%のFCSを含むDMEM中、20,000細胞/ウェルにて96ウェル・プレート内に播種した。その細胞を、5%のCO2の加湿チャンバー内、37℃にて一晩、インキューベートした。翌日に、アポトーシスを誘導するために、培地を、1μg/mlのアクチノマイシンD(Fluka、注文番号01817)及び2ng/mlのTRAIL(R&D、組み換えヒトTrail/TNFS10、カタログ番号375-TEC)を含む新しい培地に取り替えた。24時間後に、上清のLDHレベルを測定した(Promega、注文番号:G179A)。10ng/mlのオステオプロテゲリン(R&D、カタログ番号:185-OS)を陽性対照として使用した。
【0132】
データ分析
結果を吸光度(OD)として表現した。統計を、測定分散分析(ANOVA)及び一元配置ANOVAと、それに続くダネット検定の尺度を使用して実施した。有意水準をp<0.05に設定した。結果を、平均±平均の標準誤差(s.e.m.)として表現した。
【0133】
結果
培地へのIL-18BPb又はdの添加は、Trail誘導性アポトーシスからL929細胞を有意に保護した。30μg/mlのIL-18BPbで得られる保護レベルは、オステオプロテゲリンで得られた保護レベルの47%に相当し、そして、30μg/mlのIL-18BPdで得られる保護レベルは、オステオプロテゲリンで得られた保護レベルの55%に相当した(図6)。
【0134】
結論
これらの実験は、アポトーシスが外在した細胞死のアッセイにおけるIL-18BPb及びIL-18BPdの保護的な役割を明らかにしている。よって、IL-18BPb及びIL-18BPdは、繊維芽細胞において抗アポトーシス活性を示す。
【0135】
実施例5:IL-18BPdアイソフォームの組織発現
序論
IL-18BPdの発現に関するリアルタイムPCR分析を、その組織分布に関する情報を提供するために様々な人体組織において実施した。
【0136】
材料と方法
配列番号7〜12によって表されるプライマーを、PE Applied Biosystems(Foster City, CA)製のPrimer Expressソフトウェアを使用して設計した。配列番号5及び6は、GAPDH特異的プライマー(ハウスキーピング対照)に相当する。配列番号7及び8は、イントロン-GAPDHプライマー(DNA混入対照)に相当する。配列番号9及び10は、全てのヒトIL-18BPアイソフォームを増幅するプライマーに相当する。配列番号11及び12は、hIL-18BPdアイソフォームに特異的なプライマーに相当する。
【0137】
潜在的なゲノムDNAの混入を、特異的なイントロン-GAPDHプライマーを用いてPCRを実施することによって排除した。非特異的増幅の不存在を、アガロースゲル電気泳動によってPCR産物を分析することによって確認した。リアルタイムPCRを、5μl/ウェルの逆転写産物(0.5ngの総RNA)、0.5U/ウェルのAmpEraseウラシルN-グリコシラーゼを含めた25μl/ウェルのSYBRグリーンPCR・マスター・ミックス(PE Applied Biosystems)、及び300nMのプライマーを用いて実施した。PCRを、ABI PRISM 7700検出システム(PE Applied Biosystems)により、50℃にて2分間、そして、95℃にて10分間を実施し、次に、95℃にて15秒間、そして、60℃にて1分間を40サイクル実行した。組織逆転写cDNAサンプルを、こうして増幅し、そして、それらのサイクル閾値は測定した。全てのサイクル閾値を、ハウスキーピング遺伝子のGAPDHに標準化した。
【0138】
結果:
Taqman分析は、IL-18BPdの組織分布における実質的な相違点を明らかにした。IL-18BPdは、脾臓、膵臓、及び胎盤(GAPDH発現の80%以上)において主に発現されていた(図7)。
4種類のIL-18BPアイソフォームの全てのmRNAを増幅するプライマーを使用する時、転写産物が心臓と筋(結果は未掲載)において検出された。興味深いことに、心臓と筋は、IL-18BPdのmRNAを欠いている(図7)。これらの臓器において検出されたIL-18BP転写産物は、たぶん、これらの臓器において発現されていることが以前に示された(Mallatら、2004年)、アイソフォームIL-18BPaのmRNAに相当する。
【0139】
結論:
これらの結果は、IL-18BPd発現の臓器依存性調節を示唆している。加えて、それらは、IL-18BPd発現がIL-18BPaの副産物でないという事実を裏付けている。
結論として、IL-18BPdアイソフォームは、独自の作用機序、及び独自の発現パターンの両方を示す。
【0140】
【表4】

【0141】
【表5】

【0142】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】ヒトIL-18BP遺伝子、並びにヒトIL-18BPa、IL-18BPb、IL-18BPc、及びIL-18BPdスプライス・アイソフォームの構造について図式的に表す。
【図2】ヒトIL-18BPa、IL-18BPb、IL-18BPc、及びIL-18BPdアイソフォームのアミノ酸配列を示す。
【図3A】ヒトU373星細胞腫細胞におけるSTAT2の核内移行に対するIL-18BPb及びIL-18BPdの効果を示す。
【図3B】STAT1、STAT2、及びSTAT3の核内移行に対するIL-18BPdの効果を示す。対照は:STAT1に関してはIFN-γによって誘導された移行、そして、STAT2及びSTAT3に関してはIFNβによって誘導された移行である。有意性は、非刺激細胞に対して計算された、*p<0.01、**p<0.001。
【図4】U373細胞におけるSTAT2の核内移行に対するIL-18とIL-18BPaの効果を示す。陽性対照は、IFNによって誘導された移行である。有意性は、非刺激ウェルに対して計算された、*p<0.01、**p<0.001。
【図5A】刺激の48時間後の、IL-1β及びIFN-γによって刺激したU373細胞によるMCP-1分泌に対するIL-18BPbの効果を示す。有意性は、IL-18BPbで処理しなかった刺激細胞に対して計算された、*p<0.05、**p<0.005、***p<0.001。
【図5B】刺激の24時間後の、IL-1β及びIFN-γによって刺激したU251細胞によるIL-6分泌に対するIL-18BPbの効果を示す。有意性は、IL-18BPbで処理しなかった刺激細胞に対して計算された、*p<0.01、**p<0.005、***p<0.001。
【図6】L929細胞におけるTrail誘発性アポトーシスに対するIL-18BPb及びIL-18BPdの効果を示す。有意性は、TRAIL刺激細胞に対して計算された、*p<0.05、**p<0.005。
【図7】様々なヒト組織におけるIL-18BPdの発現を示す。GAPDH発現が、内部標準として使用された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経性、及び/又は炎症性疾患の治療用、及び/又は予防用医薬品の製造のためのIL-18に結合しないIL-18BPアイソフォーム、あるいは、上記IL-18BPアイソフォームの作動薬の使用。
【請求項2】
前記IL-18BPアイソフォームが、以下の:
a)配列番号1を含むポリペプチド;
b)配列番号1の第29〜113アミノ酸を含むポリペプチド;
c)配列番号1の第78〜113アミノ酸を含むポリペプチド;
d)配列番号2を含むポリペプチド;
e)配列番号2の第29〜161アミノ酸を含むポリペプチド;
f)アミノ酸配列が、(a)〜(e)の配列の少なくとも1つに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する(a)〜(e)のいずれかの突然変異タンパク質;
g)中程度のストリンジェント条件下、又は高いストリンジェント条件下、(a)〜(e)のいずれかをコードする天然のDNA配列の相補鎖にハイブリダイズするDNA配列によってコードされる(a)〜(e)のいずれかの突然変異タンパク質;
h)アミノ酸配列のあらゆる変更が(a)〜(e)のアミノ酸配列に対する保存的なアミノ酸置換である(a)〜(e)のいずれかの突然変異タンパク質;
i)(a)〜(h)のいずれかの塩若しくは融合タンパク質、機能的な誘導体、活性画分、又は循環的並び換え誘導体、
から成る群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記神経性、及び/又は炎症性疾患が、外傷性神経傷害、脳卒中、CNS又はPNSの脱髄性疾患、神経障害、及び慢性神経変性疾患から成る群から選択される、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記CNS又はPNSの脱髄性疾患が、末梢神経障害である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記末梢神経障害が、糖尿病性神経障害である、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記慢性神経変性疾病が、多発性硬化症(MS)、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)から選択される、請求項3に記載の使用。
【請求項7】
前記神経性、及び/又は炎症性疾患が、先天性代謝障害によって引き起こされる、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項8】
前記IL-18BPアイソフォームを、血液脳関門の通過を促進する担体分子、ペプチド、又はタンパク質に融合させる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記IL-18BPアイソフォームをペグ化する、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記IL-18BPアイソフォームを、免疫グロブリン(Ig)ドメインに融合させる、請求項8に記載の使用。
【請求項11】
前記医薬品が、同時の、連続した、又は別々の使用のための、インターフェロン、オステオポンチン、及びクラステリンから成る群から選択されるポリペプチドを更に含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記IL-18BPアイソフォームを、約0.001〜100mg/kg体重、約0.01〜10mg/kg体重、約9、8、7、6、5、4、3、2、若しくは1mg/kg体重、又は約0.1〜1mg/kg体重の量で使用する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−542340(P2008−542340A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514119(P2008−514119)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【国際出願番号】PCT/EP2006/062864
【国際公開番号】WO2006/128911
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(507348713)ラボラトワール セローノ ソシエテ アノニム (29)
【Fターム(参考)】