説明

神経新生を調節する薬剤及び条件を同定する方法

神経新生を調節する薬剤及び条件を同定する方法及びツールが開示される。本開示は、移植に適した神経幹細胞の集合を同定する方法及びツールにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示された発明は、神経新生を調節する薬剤及び条件を同定する方法及びツールに関する。さらに、開示された発明は、対象への移植用の神経細胞をex vivoで調製することに関する方法及び組成物に関する。開示された発明は、移植に適した神経幹細胞の集合を同定する方法及びツールにも関する。
【0002】
関連出願へのクロスリファレンス
本出願は、35 U.S.C. 119(e)のもとで2005年7月8日に出願された米国仮特許出願60/697,905号及び2006年1月31日に出願された米国仮特許出願60/763,883号の優先権の利益を主張する。両出願は、十分に記載されているように本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
神経新生は、動物及びヒトの脳において生命維持に必須の過程であり、生物体の一生を通して新たな神経細胞が連続して新生されている。新生された細胞は、中枢神経系の機能細胞に分化することができ、そして脳に現存する神経回路へと組み込まれる。神経新生は、哺乳動物の脳の2つの限られた領域:側脳室の脳室下帯(SVZ)及び海馬の歯状回において成人のあいだ持続する。これらの領域では、多能性神経前駆細胞(NPC)は、分裂を続け、そして新たな機能ニューロン及びグリア細胞を生じさせている(総説については、Gage, 2000を参照のこと)。様々な因子が、成体の海馬における神経新生を刺激できるということが示されてきた。例えば、副腎摘出、自発運動、高密度環境、海馬依存性学習、及び抗うつ薬である(Yehuda 1989、van Praag 1999、Brown J 2003、Gould 1999、Malberg 2000、Santarelli 2003)。他の因子、例えば副腎ホルモン、ストレス、年齢及び薬剤乱用は、神経新生にマイナスの影響を与える(Cameron 1994, McEwen 1999, Kuhn 1996, Eisch 2004)。
【0004】
神経新生を調節する能力を有する薬剤は、多くの疾患、例えば非限定的に、アルツハイマー病、パーキンソン病、外傷性脳損傷、発達障害、うつ病、及び気分障害、脳卒中、及びてんかんに対する治療薬として大いに有望である。例えば、パーキンソン病は、黒質部のドーパミン作動性ニューロンの変性の結果、黒質線条体路の欠如により特徴付けられる進行性神経変性障害である。パーキンソン病の原因は知られていないが、パーキンソン病は、ドーパミン作動性(チロシンヒドロキシラーゼ(TH)陽性)中脳ニューロンの進行性の死滅を伴い、運動不全を誘導する。パーキンソン病の特徴的な症状は、最大70%のTH陽性黒質ニューロンが変性した際に現れる。失われたドーパミン作動性ニューロンを取り除き、又は異常な大脳基底核回路を破壊することを目的とした外科的治療が近年試験されてきた(C. Honeyら、1999)が、新たに診断された患者において疾患の進行を食い止める最初の目的は、いまだ実現されていない。こうして、パーキンソン病又はその症状を治癒し、予防し、又は治療するための成功した方法はいまだ存在しない。しかしながら、パーキンソン病における神経変性の役割を考えると、神経新生に基く治療は、当該疾患の根本となる原因を直接治療する手段を提供する。
【0005】
神経新生を調節する薬剤は、うつ病及び他の気分障害の治療に大いに有望である。例えば、神経新生は、うつ病患者の海馬において重要な恒常性の役割を果たすと考えられている。うつ病などの病気の刺激は、神経萎縮及び死滅を引き起こし、海馬の体積の低下をもたらす。海馬の体積は、うつ病の期間及び重篤度と相関する。抗うつ薬は、海馬体積の低下を回復することができると報告された。既知の抗うつ薬は、動物モデルにおいてそのような刺激効果を示すと報告され、そして遺伝モデルにより、海馬の神経新生には、抗うつ活性が必要とされうるということが示唆された。例えば、神経変性には、前臨床的にProzac及び他の抗うつ薬の抗うつ効果が必要とされると報告された(Santarelli, Saxeら、2003)。さらに、抗うつ薬の作用開始に必要とされる時間は、神経新生のタイムコースと関連があると報告された。こうして、現在利用できるうつ病治療用の抗うつ薬の、うつ病を治療する能力は、少なくとも部分的にその神経新生を刺激する性質に起因すると言うことが証拠により示唆される。
【0006】
神経新生に対するその効果にも関わらず、現在利用されている多くの抗うつ薬は、他の過程を調節するために主に開発されてきた。例えば、多くの医薬は、複雑なシグナルネットワークに寄与する特定の受容体システムを標的とし、そして多機能性である。結果として、多くの医薬は、不所望な副作用及び低い効力をもたらしうる非特異的な作用メカニズムを有する。例えば、主要な抗うつ薬(つまり、SSRI)は、治療集合の少なくとも10%にかなりの性的な副作用(性欲の低下及び遅漏)、GIの副作用(吐き気)、及び中枢神経系の副作用(頭痛)を与え、そして作用の開始まで4〜6週間必要とすることも多い。さらに、うつ病を患う患者の30〜40%は、経口抗うつ薬での治療に応答しない。こうして、神経新生を特異的に標的とする薬剤の同定は、現在の抗うつ薬の副作用と関連する受容体及び経路を避けることにより、うつ病のより特異的かつ効果的な治療の開発の機会を提供する。
【0007】
神経新生に基く治療は、原発性又は転移性脳腫瘍の放射線照射治療又は化学療法治療に伴う認知低下の治療にも効果的である可能性がある。このような低下は、約50%の患者で生じるが、現在ではあまり成功した治療又は予防戦略が少ない。動物モデルでは、放射線誘導性脳損傷は、神経新生の低下から生じる海馬の機能不全により引き起こされると考えられている(Monjeら、2002)。放射線は、神経前駆細胞集合の増殖能力における欠陥を誘導する一方、残った神経前駆細胞は、神経ではないグリアの運命をたどる。グラフト化された幹細胞/前駆細胞が放射線を浴びた動物の海馬へと移植された場合、これらの細胞の神経への分化が顕著に低下し、微小環境が神経新生に影響を与えるということを示唆した。放射線照射は、神経前駆細胞の増殖及び運命に影響を与えるサイトカインを分泌する活性化ミクログリアの数の顕著な増加をもたらす(Monjeら、2002)。例えば、ミクログリアは、インターロイキン(IL)‐6を分泌する。インターロイキン-6は、おそらく低い神経分化能のため(Monjeら、2003)、in vitroでの神経新生、細胞生存及びニューロンの集積を低下させる。こうして、IL‐6は、海馬における血管新生の強力な調節因子である。神経新生のさらなる調節因子、例えば神経新生を刺激する事ができる薬剤、を同定することは、放射線照射及び化学療法治療の変性又は認知効果を回復させる可能性がある。
【0008】
こうして、神経変性を調節できる治療薬の同定は、様々な新生物疾患及び/又は神経障害の効果的な治療をもたらしうる。さらに、医薬品又は他の薬剤、例えば食品添加物又は環境毒素への曝露は、神経新生を妨げ、脳機能への有害な結果、例えば認知障害及び記憶障害をもたらす可能性がある。従って、神経新生を調節する薬剤を試験する感度良くかつ効果的な方法に対する高い必要性が存在する。
【0009】
上記文献の引用は、前述の全てが妥当な従来技術であるということを認めることを意図するわけではい。これらの文献の日付又は内容についての全ての言及は、出願人に利用可能な情報に基いており、そしてこれらの文献の日付又は内容の正確性を認めることを構成しない。
【発明の開示】
【0010】
開示された発明は、神経新生を調節する化合物又は条件(又は以下に定義される神経新生調節薬)を同定するin vitro方法を提供する。幾つかの実施態様では、開示された発明の方法を用いて同定された神経新生調節薬は、神経新生をin vivoで調節する。当該方法として、神経新生を増大させる薬剤又は条件を検出又は同定する「栄養(trophic)」アッセイが挙げられる。当該方法として、神経新生を可能にする細胞への毒性を介して、神経新生を阻害又は低下させる薬剤又は条件を検出又は同定する「毒性(toxic or toxicity)」アッセイが挙げられる。
【0011】
有利なことに、開示された発明の方法は、神経新生についての広範囲の治療様式の効果を検出するために高い感受性、特異性、及び予測値を有するツールを提供する。幾つかの実施態様では、開示された発明の方法は、血管新生カスケードにおける重要なステップを調節する分子又は他の治療を同定することにより改善された抗うつ薬を開発するために使用される。改良抗うつ薬として、現在利用できる医薬品に比較してうつ病及び関連する気分障害の治療において高い効力を示す薬が挙げられる。
【0012】
開示された発明の態様として、定量可能な及び/又はハイスループットな方法において体現されうるニューロスフィア(neurosphere)の成長(又は増殖)についてのアッセイ、並びに、懸濁状態にある非接着性ニューロスフィアとは相反する単層、つまり接着形態での神経細胞に基いたアッセイが挙げられる。
【0013】
こうして第一態様では、ニューロスフィアアッセイ(NSA)として知られている細胞培養における神経幹細胞を同定及び特徴決定するための方法が本明細書に記載される。NSAでは、神経組織、例えば側脳室のSVG又は海馬のDGなどから単離された細胞は、非制限的な例として、上皮成長因子(EGF)及び/又は塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)などの分裂促進因子の存在下で増殖して、ニューロスフィアと名づけられる細胞の球状のクラスター(Spherical Cluster)を形成する。培養されたニューロスフィアは、神経幹細胞(NSC)の主な特徴、例えば自己再生能力、つまり親細胞の特徴を保持する子孫細胞を作成する能力、並びに多能性、つまり幹細胞の由来元である組織の1超(ないし全ての)細胞型を形成する能力、を示す。中枢神経系(CNS)の場合、多能性は、ニューロン及びグリア細胞(星状細胞及びオリゴデンドロサイト)を形成する能力を含む。多能性NSCは、幾つかの条件下で他の細胞型、特に内皮細胞へと分化する能力を有してもよい。
【0014】
様々な実施態様では、開示された発明は、ニューロスフィア細胞培養において神経新生を調節する薬剤を検出するための改善された方法を提供する。幾つかの実施態様では、ニューロスフィアにおいてNSCを培養することは、解離された細胞を用いた方法に対して1以上の利点を提供する。例えば、幾つかの実施態様では、ニューロスフィアは、NSCが存在するin vivo環境の特定条件、例えば他のNSC、様々な分化状態における前駆細胞、及び/又はCNSにおける成熟細胞との細胞間接触、を模倣する。従って、ニューロスフィアは、神経新生調節薬及び特定のメカニズム、例えば非制限的な例として正又は負のフィードバックを含む細胞間連絡に関するメカニズムを介して作用する条件を検出するために使用されうる。
【0015】
幾つかの実施態様では、成長又は増殖の検出用のNSAが本明細書に記載される。幾つかの場合、ニューロスフィアでの成長を検出する方法は、ニューロスフィアにおける細胞の生存度の高さを検出又は計測することに基く。他の実施態様では、当該方法は、ニューロスフィアでの細胞の増殖度の高さを検出又は計測することに基く。本明細書に開示されるこのような方法の非限定的な例として、1)ニューロスフィアの大きさの検出又は計測:2)例えば非限定的な例として、ELISA、染色、又は他のアッセイなどによる細胞性因子の発現の検出又は計測;及び3)ニューロスフィアにおける遺伝子発現の検出又は計測が挙げられる。
【0016】
開示された発明は、さらに、ニューロスフィア成長を検出又は計測することによる神経新生を調節する薬剤又は条件を同定する方法を含む。このような方法は、非限定的な例としてヒトNSCなどのNSCを含むニューロスフィアの集合を培養し、そして場合によりニューロスフィアの集合から個々のニューロスフィアを単離することを含む。ニューロスフィアの成長を検出又は計測することに加え、培養されたニューロスフィアは、試験薬剤又は条件に晒され、続いて神経新生の性質及び/又は程度を指し示すニューロスフィアの少なくとも1の性質が計測される。神経新生を指し示す性質として、非限定的な例として、1以上の遺伝子の発現;並びに1以上のニューロスフィア若しくは試験細胞集合又はそれらの部分集合における神経幹細胞、前駆細胞、又は分裂細胞の数及び/又は割合が挙げられる。計測は、試験薬剤又は条件に晒されたことのない培養されたニューロスフィアの同一集合又は単離ニューロスフィアに比較してなされてもよい。
【0017】
追加の実施態様では、本明細書に開示されるニューロスフィアに基く方法は、1以上の特徴を含みうる。このような特徴の非制限的な例として、ニューロスフィアの細胞又はニューロスフィアに存在する細胞を解離させ;例えば、標的薬剤又は条件に晒した後にニューロスフィアに基いて計測するなどして、解離された細胞の少なくとも1の性質を計測し;及び/又は解離された細胞の性質を、ニューロスフィアの1以上の性質と相関させることを含む。さらなる実施態様では、本明細書に記載される方法は、ニューロスフィアの集合からニューロスフィアの部分集合を単離し、ニューロスフィアの部分集合において細胞を解離させ;そしてNSCを含む解離された細胞の集合を測定するという追加の特徴を含む。追加の実施態様は、試験薬剤又は条件に晒された1以上の単離ニューロスフィアにおけるNSCの割合と、試験薬剤又は条件に晒されていないニューロスフィアの部分集合におけるNSCの割合とを比較するステップを含む。
【0018】
第二態様では、以下のステップ:
単層培養においてヒト神経幹細胞の集合を試験薬剤又は条件に晒し;そして
神経新生の程度及び/又は性質を指し示す神経細胞の少なくとも1の性質を計測する
を含む、神経新生を調節する薬剤及び条件を検出するための方法が本明細書に記載される。様々な実施態様では、単層に基く方法は、単層培養においてNSCの同定、単離、及び/又は濃縮を介して、及び/又は試験細胞増殖においてNSCの微小環境を調節することにより、NSCに対する神経新生調節効果を直接検出することを可能にする。さらなる実施態様では、開示された発明の単層に基く方法は、神経新生調節薬の検出及び同定を促進するニューロスフィアに基く方法と併せて使用される。
【0019】
幾つかの実施態様では、本明細書に開示される方法において使用されるNSCの単層は、従来のNSCの単層から継代された。こうして、従来の単層に由来する子孫細胞の単層を用いることが本明細書に開示される。他の実施態様では、NSC単層は、本明細書に記載される1以上のニューロスフィアから製造される。こうして、このような単層は、従来のNSC単層から継代されることはなかった。
【0020】
開示された発明の実施において使用され、ニューロスフィア形態及び単層形態の両方を含む神経細胞は、好ましくは哺乳動物、例えばマウス、ラット、ラビット、又は霊長類から単離され、そして最も好ましくはヒト組織から単離される。ヒトNSCを単層細胞培養で増殖させ、そして維持することが難しいと報告されていたので、幾つかの実施態様では、細胞培養で神経幹細胞の単離及び伸張を促進するニューロスフィアとしてヒト神経細胞を培養し、そして連続的に継代した。開示された発明の態様であって細胞の単層を含む態様は、ニューロスフィアを解離させ、続いてそれらを接着表面上で培養することに部分的に基き、その結果、次に神経新生を検出するのに適した単層として継代できる実質的に均一な単層細胞を生成する。
【0021】
その結果、幾つかの実施態様では、開示された発明の方法は、(a)NSCを単層として支持体上で培養し;(b)当該細胞を1以上の試験薬剤と接触させ;(c)神経及び/又は神経新生の程度を指し示すNSCの少なくとも1の特徴を計測し;そして(d)NSCの少なくとも1の特徴を、試験細胞と平衡して培養されたが試験薬剤を投与されていない対照NSCの特徴と比較することを含む。本明細書に開示されるさらなる方法は、(a)NSCの単層を1以上の試験薬剤と接触し;そして(b)神経新生の性質及び/又は程度を指し示すNSCの少なくとも1の特徴を計測することを含む。幾つかの場合、これらの実施態様は、従来の単層細胞から継代された単層細胞で行われてもよい。別の場合、単層細胞は、ニューロスフィアから調製されてもよい。
【0022】
別の実施態様では、開示された発明が、(a)NSCをニューロスフィアとして培養し;(b)当該ニューロスフィアを解離させ、そして当該細胞を支持体上で細胞を単層として培養し;(c)細胞を1以上の試験薬剤と接触させ;そして(d)神経新生の性質及び/又は程度を指し示すNSCの少なくとも1の特徴を計測することを含む。
【0023】
さらなる実施態様では、栄養性又は毒性アッセイ法は、1以上のニューロスフィアからNSCを解離させ;当該NSCを分裂促進因子を枯渇させて蒔き;そして当該NSCを分裂促進因子の不存在下で試験薬剤又は条件に晒して、当該薬剤又は条件が当該細胞に栄養性であるか又は毒性であるかを同定することを含む。本明細書に記載される様に、栄養性化合物、例えばヒスタミン、及び毒性薬剤、例えばBAY‐60‐7550が同定された。
【0024】
代わりの実施態様では、開示された発明の方法は、解離されたニューロスフィアの細胞を仕分けしてNSCを単離することを含み、当該NSCは、次に単層として培養され、以下に記載される様に、1以上の試験薬剤で処理し、そして神経新生の特徴である性質についてアッセイされた。幾つかの実施態様では、NSCの仕分けは、細胞型特異的標識でNSC又は非NSCを標識し、自動化プロセス、例えば蛍光活性化細胞選別装置(FACS)などを用いて当該細胞を仕分けすることに関する。他の実施態様では、細胞型特異的標識は、NSC又は非NSCを含むニューロスフィアにおいて細胞集合の計測を提供する。
【0025】
更なる実施態様では、開示された発明の方法は、神経新生を調節する効果の検出を促進する1以上の因子(以後、「構成因子(constitutive factor)」と呼ぶ)の存在下でNSCを培養することを含む。1以上の構成因子は、神経新生調節効果の検出を促進する。1以上の構成因子の存在は、神経新生が生じているin vivo環境を模倣することなどにより、神経新生調節因子の同定を有利に促進しうる。幾つかの実施態様では、開示された発明の方法において有用な構成因子は、神経新生が生じることが知られている脳の領域に内在する分子、又はそのような内在性分子の効果を模倣及び/又は調節する分子である。神経新生が生じることが知られている領域は、非限定的に、歯状回、脳室下帯領域、及び嗅球を含む。構成因子は、任意のタイプの分子、治療様式、又は実験条件を含みうる。幾つかの実施態様では、構成因子は、非限定的に、セロトニン、セロトニン前駆体、ノルエピネフリン、ドーパミン、AMPA、GABA、グルタミン酸塩、及び上記の組合せを含む群から選ばれる1以上の神経伝達物質を含む。構成因子でありうるほかの因子として、非限定的に、分裂促進因子、例えばVEGF及びIGF‐1、及びイオンが挙げられる。
【0026】
第三態様では、移植に適した神経幹細胞を同定する方法が提供される。ここで、当該方法は、神経細胞のソースから神経幹細胞の集合を単離し;神経幹細胞を試験薬剤に晒し;そして神経新生への当該試験薬剤の効果を計測することを含み、ここで有意な効果は、試験集合の細胞のソースから得た神経幹細胞が、移植に適しているか又は不適であるかを指し示す。様々な実施態様では、当該試験薬剤に神経幹細胞を晒すことは、神経及び/又はグリア細胞系列に分化する神経幹細胞の割合;分裂細胞である神経幹細胞の割合;及び/又は試験集合中の神経幹細胞の数について有意な影響を有する。移植に適していると同定された細胞について、神経細胞の源に由来する更なる細胞は、対照に移植されてもよい。移植された細胞は、次にin vivoで神経新生を引き起こしてもよいし、又は場合により当業者に知られているか、又は本明細書で開示された方法により同定された1以上の神経新生薬剤又は条件を投与することにより神経新生を引きおこされてもよい。
【0027】
さらなる実施態様では、これらの方法は、例えば治療及び/又は実験目的のin vivoでの移植に適した神経幹細胞の集合及び/又はソースを同定又は生成する方法である。様々な実施態様では、このような方法として、神経細胞のソース、例えば特定の組織、ホスト、又は細胞系列から神経幹細胞の集合を単離し;神経幹細胞を試験薬剤に晒し;そして、移植用の細胞の安定性を指し示す細胞の1以上の性質を計測することが挙げられる。様々な実施態様では、移植用の安定性を指し示す性質として、非限定的に、神経新生の程度及び/又は性質を指し示す1以上の遺伝子の発現、試験薬剤又は条件への応答性又は非応答性、試験薬剤又は条件の存在下での生存性、特定の細胞系列への分化する傾向が挙げられる。当該方法は、引用された方法のうちの一つを用いて同定された神経幹細胞を生成し、そしてこれらの幹細胞を動物、例えば非限定的な例として脊椎動物へと移植することを含む。さらなる実施例は、哺乳動物、例えばヒトを含む。
【0028】
移植用の細胞の調製方法も開示される。非限定的な例として、そして神経新生をできると観察された神経細胞の代わりに、神経細胞のソースから得た更なる細胞が、ex vivoで神経新生を誘導されて、次に対象に移植されてもよい。幾つかの実施態様では、神経細胞は、すでに誘導されていてもよいし、一方別の実施態様では、神経細胞は、移植前に本明細書に記載されるように神経新生を引き起こされていてもよい。もちろん、すでに誘導されたが、完全な神経新生を引き起こしていない細胞が移植されてもよい。ex vivoでの神経新生の誘導は、当業者に知られているか又は本明細書に開示されている方法により同定される1以上の神経新生剤又は条件と接触されるか、又は晒されることにより行われてもよい。
【0029】
第4の態様では、従来の方法を越える改善点をもたらす方法が提供される。例えば、神経幹細胞を含む細胞集合を提供し;細胞集合を試験化合物と接触させ;そして神経新生を指し示す細胞の少なくとも1の特徴を計測することを含む方法が存在する場合において、本明細書に記載される方法は、細胞集合を当該試験薬剤に加えて神経伝達物質、例えば成体アミンと接触させることにより、従来の方法に対する改善を提供しうる。
【0030】
第5態様では、潜在的な神経新生効果について試験化合物をアッセイする方法が提供される。ここで、当該方法は、in vitroで、成長培地と接触された神経幹細胞を含む細胞集合を提供し;成長培地中で神経伝達物質を提供し;細胞集合を試験化合物と接触させ;そして神経幹細胞による神経新生の程度及び/又は性質についての試験化合物の効果を測定するを含む。様々な実施態様では、神経伝達物質は、生体アミン、つまりドーパミン、セロトニン、又はノルエピネフリンなどのモノアミン、又は1以上の生体アミンのレベル又は活性を調節する化合物、例えばモノアミン再取り込み阻害剤、モノアミン受容体調節因子、又はモノアミンオキシダーゼ阻害剤である。別の実施態様では、生体アミンではない神経伝達物質が使用されてもよい。
【0031】
第6態様では、試験集合における細胞により発現される1以上の遺伝子(神経新生マーカー)を同定する方法が提供される。ここで当該遺伝子(単数又は複数)の発現は、試験薬剤又は条件による神経新生の調節を示唆する。幾つかの実施態様では、神経新生マーカーを検出する方法として、神経幹細胞を含む細胞集合を、試験薬剤又は条件に晒し;神経新生の程度及び/又は性質を指し示す細胞の少なくとも1の性質を計測し;試験集合の細胞による少なくとも1の遺伝子の発現を計測し、そして遺伝子発現を、神経新生を指し示す試験細胞の計測された性質と相関させることを含む。
【0032】
第7態様では、神経保護薬を検出する方法が提供される。ここで当該方法は、神経幹細胞の集合を、神経新生を阻害する薬剤又は条件に晒し;神経幹細胞を試験薬剤に晒し;そして試験薬剤が神経新生の阻害を軽減する当該試験薬剤の能力を計測することを含む。幾つかの実施態様では、神経新生を阻害する薬剤又は条件に晒すことが、生体内条件を模倣する状態、例えば神経新生の増加が治療介入として所望される疾患に関わる状態であってもよい。こうして、このような曝露の非限定的な例として、1以上のオピオイド又は炎症性サイトカインの存在が挙げられる。さらなる例として、神経新生を阻害する細胞性物質(cellular agent)又は細胞因子が挙げられ、例えば反応性星状細胞により放出されるアンジオテンシン又はアンジオテンシン前駆体が挙げられる。或いは、放射線照射又は1以上の毒性薬剤、例えばホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤(例えばPDE2 BAY‐60‐7550)への曝露は、神経新生の阻害剤として使用されうる。本方法の実施態様として、抗神経新生性の薬剤又は条件に晒された後に神経新生を回復又は元に戻す薬剤又は条件、或いはその組合せを同定する方法を含む。
【0033】
開示された発明の第8態様として、患者が神経新生調節薬での治療に応答性であるかを評価する方法が挙げられる。ここで当該方法は、治療を必要とする患者から細胞サンプルを取得し、ここで当該サンプルは神経幹細胞を含み、当該サンプルを神経調節薬にさらし;そして神経新生マーカー遺伝子の発現を計測することを含み、ここでマーカー遺伝子が発現しているか又は発現していないかが、当該患者が神経新生調節薬での治療に応答性であるかを予想することを含む。
【0034】
開示された発明の実施態様は、試験薬剤及び条件の、神経幹細胞の1以上の性質を、時間の関数として計測する自動化ハイスループット方法を含む。有利なことに、本明細書に記載される方法は、既知の方法に対して特定の神経新生調節効果を検出するための高い能力を提供する。
【0035】
さらなる実施態様の詳細は、添付の図面及び以下の記載に記載される。他の特徴、対象、及び実施態様の利点は、図面及び詳細な説明、及び特許請求の範囲から明らかであろう。
【0036】
「神経新生」は、本明細書において、in vivo又はin vitroでの神経細胞の増殖(細胞成長)、分化、移動、及び/又は生存として定義される。開示された発明の実施態様は、神経新生の非限定的な指標として増殖又は分化又は生存のいずれかを検出又は計測することを含む。神経新生は、通常の発達の間に生じる神経新生、並びに疾患、損傷、又は治療介入の後に生じる神経再生を包含することを意図される。
【0037】
神経新生は、in vivo又はin vitroにおける星状細胞の増殖、分化、移動、及び/又は生存を指す「星状細胞新生(astrogenesis)」とは区別される。星状細胞の非制限的な例として、星状細胞、活性化ミクログリア細胞、星状細胞前駆体及び増強細胞、及び星状細胞前駆細胞及び由来細胞が挙げられる。星状細胞は、生体、胎児、又は胚の星状細胞であってもよく、そして動物又はヒトの中枢神経系又は神経組織などの組織を含む至る所に存在しうる。星状細胞新生は、通常の発達のあいだに生じる星状細胞の増殖及び/又は分化、並びに疾患、損傷、又は治療介入、例えば本明細書に記載される様にブスピロンなどの星状細胞新生薬の高い濃度で治療、の後に生じる星状細胞新生を含む。
【0038】
神経新生は、in vivo又はin vitroにおけるオリゴデンドロサイト細胞の増殖、分化、移動及び/又は生存を指すオリゴデンドロサイトの生成を含む。オリゴデンドロサイト細胞の非制限的な例として、オリゴデンドロサイト、オリゴデンドロサイト前駆体及び増強細胞、並びにオリゴデンドロサイト前駆及び由来細胞を含む。オリゴデンドロサイトは、成体、胎児又は胚のオリゴデンドロサイトであってもよく、そして中枢神経系又は神経組織などの組織を含む動物又はヒトを含むどこにでも存在してもよい。オリゴデンドロサイトの生成としては、通常の発達のあいだに生じるオリゴデンドロサイトの増殖及び/又は分化、並びに疾患、損傷、又は治療介入の後に生じるオリゴデンドロサイトの生成又は保護が挙げられる。
【0039】
本明細書に記載される細胞の増殖又は成長は、1以上の細胞の集合が複製する能力、並びに有糸分裂を介してその数を増加させることを指す。これは、細胞数の計測又はニューロスフィアサイズの増加の場合など全体の細胞体積の増加により計測されうる。細胞増殖を減少又は阻害する薬剤、化合物、又は条件は、本明細書で使用される毒性である。毒性の形態として、例えば細胞静止作用などによる有糸分裂の阻害、並びに細胞毒性効果による致命傷の両方が挙げられる。細胞の増殖を増加させる薬剤、化合物、又は条件は、「栄養(trophic)」薬と呼ばれうる。細胞増殖の低下又は阻害の検出又は計測に基く方法は、「毒性アッセイ」と呼ばれてもよく、一方、細胞増殖の増加を検出又は計測に基く方法は、「栄養」又は「増殖」又は「成長」アッセイと呼ばれうる。
【0040】
「神経細胞」と言う語句として、神経幹細胞(NSC)、神経前駆細胞、及びこのような幹細胞及び前駆細胞の子孫細胞、例えばそれらから生じた分化した細胞が挙げられる。1の実施態様では、神経細胞は、成体、胎児、又は胚性の神経幹細胞であるか又は細胞集合である。幾つかの実施態様では、神経細胞は、成体、胎児、又は胚性の前駆細胞であるか又は細胞集合、つまり幹細胞と前駆細胞の混合物を含む細胞の集合である。神経細胞は、全ての脳前駆細胞(brain progenitor cell)、及び全ての脳前駆体細胞(brain precursor cell)を含む。
【0041】
「神経新生調節薬」は、薬剤又は試薬の不存在下で神経新生の程度又は性質に対して、in vivo又はex vivoで神経新生の程度又は性質を促進、阻害、又はそうでなければ調節することができる薬剤または試薬として定義される。
【0042】
神経新生の調節は、神経新生をできる細胞又は細胞の集合における神経新生の増加又は減少を指す。調節の非制限的な例として、例えば神経細胞の集合などにおける神経新生の直接的な増加又は低下、或いは神経新生の阻害の増加又は低下が挙げられる。代表的かつ後者の非制限的な例は、星状細胞又は星状細胞新生の低下である。
【0043】
「幹細胞」という語句(例えば、神経幹細胞(NSC))は、本明細書に使用される場合、自己複製ができ、かつ神経、星状細胞、及び/又はオリゴデンドロサイトに分化できる未分化細胞を指す。
【0044】
「前駆細胞」という語句(例えば、神経前駆細胞)は、本明細書に使用される場合、それ自体幹細胞ではない幹細胞に由来する細胞を指す。幾つかの前駆細胞は、1より多くの細胞型に分化できる子孫細胞を生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本明細書に記載されるアッセイ方法において使用するのに適した神経幹細胞及び/又は前駆細胞は、哺乳動物、例えばヒト(死後又は手術後)、そして実験動物(例えば、げっ歯類、ヒト以外の霊長類、イヌ、ネコなど)から得ることができる。神経幹細胞及び/又は前駆細胞は、他の脊椎動物、例えば、爬虫類、両生類、魚類及び鳥類、又は無脊椎動物から得ることもできる。ヒト又は動物は、雄又は雌であってもよく、胎児、子供、成体、又は老体であってもよく、そして健常であるか又は神経性疾患又は障害を示すか又は罹患していてもよい。こうして、幾つかの実施態様では、開示された発明の方法に使用される神経細胞は、1以上の試験薬剤を投与された試験動物から単離される。別の実施態様では、神経細胞は神経学的状態と診断された対象から単離される。幾つかの態様では、神経学的状態は、神経新生の性質及び/又は程度の変化を伴う状態であるか又は神経変性疾患である。
【0046】
ヒトNSCは培養物中で長時間に渡り伸張することができて、多能性NSCの安定な細胞株を生成する。このような細胞系列由来のヒトNSCは、凍結により保存することができ、そして続いて実験用に再構成することができる。こうして、幾つかの実施態様では、樹立された細胞株からのNSCが、開示された発明の実施において用いられる。ヒト及びげっ歯類NSCの単離及び精製は、米国特許第6,767,738号、第6,265,175号、第6,013,521、及び5,766,948号に記載され、これらはその全てを本明細書に援用される。
【0047】
NSCは、神経幹細胞又は前駆細胞を含む任意の神経組織から得ることができる。具体的な組織として、嗅球(OB)、海馬の歯状回(DG)、側脳室の脳室下帯(SVG)が挙げられる。NSCをこのような組織から得るための方法は、当業者に知られている(例えば、米国特許第5,753,506号;及びGrittiら、J. Neurosci. 16:1091-1100 (1996)を参照のこと)。解離された組織から単離された細胞をニューロスフィアとして細胞を培養し(実施例1を参照のこと)、そしてNSCの1以上の特徴を有する細胞を示すことにより、NSCとして同定できる。幾つかの実施態様では、ニューロスフィアの細胞又はニューロスフィアにおける細胞は継代されて、第二世代、第三世代、又は更なる世代のニューロスフィアを形成する能力(つまり、自己再生能力)を示す。さらなる態様では、ニューロスフィアの細胞又はニューロスフィアにおける細胞は、それらがニューロン、星状細胞、及び/又はオリゴデンドロサイトへと分化する条件下で培養される。
【0048】
初代細胞に加え、神経幹細胞及び/又は前駆細胞株は、開示された神経新生アッセイ及び方法で使用できる。非制限的な例として、マウス海馬起源のMHP36細胞(Grayら、Philos. Trans. Royal Soc. Lond. B. Biol. Sci. 354:1407-1421 (1999))、ラットの中脳起源のCSM14.1細胞(Haasら、J. Anat. 201 :61-69 (2002))、及び神経細胞系列に沿って分化される胚性幹細胞が挙げられる。
【0049】
本明細書に記載される様に、本開示の1の態様は、ヒトNSCなどのNSCを同定及び/又は特徴決定するためにニューロスフィアを使用することである。これらの方法は、ニューロスフィアアッセイ又はNSAと呼ばれてもよい。一般的なプロトコルが実施例1に記載される。例示の非制限的な実施態様では、単離された神経細胞が、例えば上皮成長因子(EGF)及び/又は塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)などの分裂促進因子の存在下で培養される。ここで、当該細胞は分裂し、そしてニューロスフィアと呼ばれる細胞の空間クラスターを形成する。幾つかの実施態様では、ニューロスフィアは、分化の様々な段階の細胞型の混合物、例えば、NSC、前駆細胞、及び分化ニューロン、及びグリア細胞を含む。こうして、様々な開示された実施態様において、本明細書に提供される方法において使用されるニューロスフィアは、例えば構成細胞を分離し、そしてそれらを分裂促進因子のうちの1つの存在下で培養することにより、順次継代される。有用な分裂促進因子として、非限定的にEGF、bFGF、FGF、VEGF、及びLIFが挙げられる。
【0050】
ニューロスフィアは、例えば切断により物理的に、又は例えばトリプシンを用いて酵素的に分離することができる。有利なことに、分化された細胞及び分化している細胞は、解離された細胞を再プレーティングする際に死滅し、その結果次の世代のニューロスフィア(第二世代、第三世代など)は、高い割合のNSCを含む。様々な実施態様では、本明細書に提供される方法において使用されるニューロスフィアは、少なくとも2、又は3回、又はそれより多く継代される。別の実施態様では、少なくとも4又は5回又はさらに多く、例えば少なくとも6回以上継代されて、本明細書に記載されるニューロスフィアが、スフィア形成能を有する前駆細胞とは対照的に、実質的に多能性NSCから構成される。
【0051】
実施例2は、培養されたニューロスフィアの1以上の態様について、1の試験薬剤又は複数の試験薬剤の効果を検出する自動化されたハイスループット法を記載する。当該技術は、時間の関数として、制御された条件下で、個々のニューロスフィアの様々な態様の観察、検出、及び計測を許容することが重要である。例えば、実施例2に記載される実施態様では、1のニューロスフィアは、非分化条件下で96ウェルプレートの各ウェルにおいて時間をかけて観察され、そしてニューロスフィアの増殖は、時間の関数としてその大きさ(その直径又は他の寸法により示される)を計測することにより検出される。
【0052】
開示された発明は、特定又は限定されたサイズ範囲のニューロスフィアを使用することにより、例えば、目に見える断面領域の検査することにより決定される、NSCの成長又は増殖を計測する方法を含む。幾つかの実施態様では、本方法は、約1.4mm2未満の領域を有するニューロスフィア、例えば、少なくとも約0.01mm2〜約1.4mm2の領域を有するニューロスフィアの使用を含む。他の実施態様では、約0.01、約0.02、約0.04、約0.05、約0.06、約0.08、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、又は約1.4mm2が当該方法において使用されてもよい。もちろん、上記値のいずれかにより定められた範囲の大きさ、例えば約0.1〜約0.2mm2、約0.1〜約0.3mm2、約0.1〜約0.4mm2、約0.1〜約0.5mm2、約0.1〜約0.6mm2、約0.1〜約0.7mm2、約0.1〜約0.8mm2、約0.1〜約0.9mm2、約0.1〜約1.0mm2、約0.2〜約0.3mm2、約0.2〜約0.4mm2、約0.2〜約0.5mm2、約0.2〜約0.6mm2、約0.2〜約0.7mm2、約0.2〜約0.8mm2、約0.2〜約0.9mm2、約0.2〜約1.0mm2、約0.3〜約0.4mm2、約0.3〜約0.5mm2、約0.3〜約0.6mm2、約0.3〜約0.7mm2、約0.3〜約0.8mm2、約0.3〜約0.9mm2、約0.3〜約1.0mm2、約0.4〜約0.5mm2、約0.4〜約0.6mm2、約0.4〜約0.7mm2、約0.4〜約0.8mm2、約0.4〜約0.9mm2、約0.4〜約1.0mm2、約0.5〜約0.6mm2、約0.5〜約0.7mm2、約0.5〜約0.8mm2、約0.5〜約0.9mm2、約0.5〜約1.0mm2、約0.6〜約0.7mm2、約0.6〜約0.8mm2、約0.6〜約0.9mm2、及び約0.6〜約1.0mm2は、開示された本方法の実施において使用されうる。これらの特定された大きさ、又はサイズ範囲にニューロスフィアを解離させるか、又は大きさを合わせる方法は、当業者に知られており、そして本明細書に開示されている。非限定的な例は、組織チョッパー(Tissue Chopper)を用いて手動で切断することを含む。
【0053】
このような大きさのニューロスフィアは、自動化又は半自動化方法、例えば、1以上のニューロスフィアを、マルチウェルプレートのウェル中で上記サイズ範囲で1以上のニューロスフィアを配置することにより、有利に用いられてもよい。プレートの非限定的な例として、384ウェル又は1536ウェルを有するプレートが挙げられる。ニューロスフィアの配置は、任意の都合のよい手段によりなされてもよく、例えば、その切断の前又は間に生育された馴化培地の使用を含む。もちろん、ニューロスフィアは、場合により個々のウェルへと懸濁した後に新たな培地(例えば、非制限的な例として維持培地など)を添加することにより、場合により栄養補充されてもよい。幾つかの実施態様では、新たな培地は、ウェルの約50%〜約75%の体積であってもよい。ニューロスフィアは、次に培地を通して1以上の試験薬剤(又は化合物)、及び/又は1以上の試験条件に晒されてもよい。
【0054】
ニューロスフィアの試験薬剤又は試験条件の効果、又は効果がないことは、次に、時間にわたり、ウェルのニューロスフィアの大きさを計測することによりアッセイされる。幾つかの実施態様では、計測は、例えば、数日から約1、約2、又は約3週間以上の間、毎日、2日ごと、3日ごと、又はそれより少ない頻度で領域の増加についてされる。もちろん、ニューロスフィアの大きさの増加は成長を表す一方、大きさが増加しないこと又は減少することは、成長がないこと及び/又は細胞死を指し示す。幾つかの実施態様では、計測は、ウェル中の1以上のニューロスフィアを全て目で見ることができ計測されるように、ウェルの全容量又は領域が計測される。有利なことに、これは、計測される全てのニューロスフィアに対する試験薬剤又は試験条件の効果の計測を許容する。
【0055】
場合により、可視領域としてのウェルの全体イメージの取得は、低倍率を用い、そして明視野条件下で細胞分析器及びプレートリーダーを用いて、自動化されてもよい。低倍率の非制限例として、約2倍、約3倍、約4倍、又は約5倍〜約10倍が挙げられる。自動化は、ニューロスフィアのサイズの計測を含んでもよく、例えば、非制限的な例として分析を行う各ウェル中でニューロスフィアの直径を計測することによる。
【0056】
こうして開示された発明として、約0.6mm2未満、例えば少なくとも約0.2mm2〜約0.6mm2の断面領域を有するニューロスフィアを、試験薬剤又は試験条件に晒すこと;そして、当該細胞において神経新生を指し示す性質を計測した後に、当該ニューロスフィアにおける神経新生を調節する試験薬剤又は試験条件を同定することを含む。この調節は、時間経過に伴ってニューロスフィアのサイズの増加、低下、又は変化がないことをもたらしうる。こうして、単離されたニューロスフィアの性質は、ニューロスフィアの1以上の寸法を含む。
【0057】
幾つかの実施態様では、ニューロスフィアの大きさの計測は、本明細書に記載されるニューロスフィアを可視化する装置を用いること、及び/又はニューロスフィアのサイズを計測するための装置の使用などにより、全体として又は一部において自動化されてもよい。別の実施態様では、ニューロスフィアは、ヒト神経幹細胞を含んでもよく、一方更なる実施態様では、計測は、試験薬剤又は条件に晒された後に1回以上、例えば2回以上、3回以上行われる。
【0058】
別の実施態様では、増殖は、本明細書に記載される方法を用いて、又は当業者に知られている他の技術を用いて計測することができる。幾つかの実施態様では、個々のニューロスフィアが、ニューロスフィアの集合から単離され、そして単離されたニューロスフィアが、1以上の試験薬剤又は条件で処理される。幾つかの実施態様では、ニューロスフィアは、同じニューロスフィアを時間をかけて観察することを可能にする条件下で維持される場合に単離される。
【0059】
本明細書に開示される様々な実施態様において、ニューロスフィアに基く方法は、検出されると以前に知られていなかった神経新生についての効果、例えば時間依存性効果(例えば、過渡変化)、又は(例えば、シグナルカスケードに応答する)多段階プロセスを介して生じる効果を検出する能力を有する。例えば、幾つかの実施態様では、ニューロスフィアは、化合物又は処理様式Aで処理され、そして所定の期間観測し、続いて化合物又は処理様式B(又は処理様式AとBを混ぜた様式)で処理される。さらなる実施態様では、次にニューロスフィアを含む細胞を(典型的に、ニューロスフィアの1以上の態様を計測した後に)解離させ、そして細胞の1以上の特徴が計測される。
【0060】
例えば、ニューロスフィアを解離させ、そして(例えば、実施例3に記載される様に)単層培養に蒔き、そしてその分化の程度及び/又は性質が、本明細書に記載される技術、又は当業者に知られている他の技術を用いて計測される。さらなる実施態様では、非分化条件でのニューロスフィアを含む細胞型の組成物が、例えば以下に記載される細胞特異的標識を用いて、又は当業者に知られている他の技術を用いて決定される。こうして、開示された発明のニューロスフィアに基く方法は、個々の神経新生についての処理様式の効果を計測すること、並びにこのようなニューロスフィアを含む細胞の1以上の特徴(例えば、細胞型組成物、発達運命など)の点での効果の評価を可能にする。有利なことに、開示された発明の方法は、神経新生の程度及び/又は性質における変化を検出することに、従来技術の方法に比べて実質的に高い感度を有する。さらに、開示された発明の方法は、神経新生について処理様式の範囲の効果を迅速かつ経済的にスクリーニングするための自動化ハイスループット方法を提供する。
【0061】
本開示の別の態様は、単層培養におけるNSCの1以上の態様についての試験薬剤又は条件の効果を計測することにより、神経新生調節約及び/又は条件を検出する方法である。様々な実施態様では、単層状に細胞を配置することは、ニューロスフィアを含む細胞球状クラスターとは対照的に、多細胞環境(multicellular)において行われる方法に比べて特定の神経新生調節薬剤及び/又は条件を検出する能力を高める。特定の論理によりとらわれることなく、ニューロスフィアが、神経幹細胞、前駆細胞、及び/又は分化細胞の混合物を含むことが多いということが知られており、そしてこの異種組成物が、実験結果を解釈することを難しくしうるということが認められる。例えば、特定の条件下では、ニューロスフィアの1以上の性質についての試験薬剤の効果は、(例えば、細胞間接触、分泌因子を介して、NSC上に効果を発揮する近隣細胞のため)非NSCにより媒介されうる。さらに、連続的に継代されたニューロスフィアでさえ、非NSCの実質的な集合を含みうる。なぜなら、NSCが、継代の際の自然発生的分化及び/又は非対称細胞分裂するためである(例えば、1のNSC及び1の前駆体細胞を生じさせる)。有利なことに、本明細書に記載される単層に基く方法は、例えば、試験集合における神経幹細胞の微小環境においてうまくコントロールすること及び/又はNSCに対する試験薬剤の効果を直接観察することを可能にすることによって、特定の神経新生効果の検出を促進する。こうして、幾つかの実施態様では、単層に基く方法において観察される効果は、近隣細胞又は他の微小環境の変化による実質的な影響を受けずに、NSCに対する試験薬剤又は条件の効果を実質的に反映する。
【0062】
本開示の態様は、部分的に、単層としての神経細胞、例えばヒト神経幹細胞の安定な培養方法に基く。ヒトNSCを単層培養で培養するための代表的なプロトコルを実施例3に記載する。幾つかの実施態様では、NSCは、酵素切断、例えばACCUTASE(商標)の酵素活性を用いてニューロスフィアから単離され、そしてピペットでトリチュエーションされた。次に細胞を洗浄し、計数し、そしてポリリジン及びラミニンで皮膜された表面上に蒔いた。幾つかの実施態様では、ポリリジンは、ポリ-D-リジンよりはかなり多い割合のポリL-リジンを含み、そして好ましくは、実質的にポリD-リジンを伴わないポリ-L-リジンを含む。他の実施態様では、細胞を直接神経組織から単離するか、又は樹立されたNSC細胞株から派生させた。単層培養においてヒトNSCの長期間の培養及び継代を、EGF、bFGF、ヘパリン、及び白血病抑制因子(LIF)を含む培地中で達成する。実施例3において利用されるこれらの成長因子の割合は、ヒトNSCの成長及び維持について最適化された。細胞を酵素的に、例えばACCUTASE(商標)を用いて基質から解離させ、そしてこの細胞をポリ-L-リジン及びラミニン皮膜表面上に再プレーティングした。
【0063】
重要なことに、単層としてNSCを培養する方法は、幹細胞性質が保存されるように細胞の継代を可能にする。これは、合成培地の特定の因子に細胞を晒し、そして規定の支持体上で培養を可能にして、当該細胞を神経新生の検出又は計測に使用することを楽にする。こうして開示は、本明細書に開示されるように因子及び培地の存在下で皮膜されたプレート上で単層培養として細胞を継代させることを含むNSCの培養方法を含む。培養されるか又は継代された細胞は、単層に基く方法、及び本明細書に記載されるアッセイにおいて使用されてもよい。幾つかの実施態様では、細胞は、神経新生を調節する薬剤又は条件を同定する方法において使用される。当該方法は、ヒト神経細胞を含む単層細胞培養物を、試験薬剤又は条件へと曝露し、そして当該細胞において神経新生を指し示す性質を計測した後に当該細胞の神経新生を調節する試験薬剤又は条件を同定することを含みうる。幾つかの実施態様では、神経細胞は、ヒト神経幹細胞(NSC)を含む。或いは、ニューロスフィアから単離され、そして単層培養へと変更された細胞であって、単層培養として継代されていない細胞は、開示の方法を実施する際に使用されうる。
【0064】
さらなる実施態様では、単層としてプレートされる細胞は、固体表面上への接着前に、薬剤又は条件に晒される。接着した後に、次に細胞を本明細書に記載される様に培養する。薬剤が用いられる場合、追加の薬剤が、培養の翌日に、そして当該薬剤の効果について細胞をアッセイする前に細胞へと導入されうる。本発明の非制限的な例として、約7日以上、数日のタイムコースに渡り行われる方法を含み、ここで当該最後の日に、神経新生を指し示す性質を計測又は検出する。長期間の方法は、約9、約11、約13、約15、約17、約19、又は約21日以上を含む。薬剤が用いられる場合、細胞は、任意の後日、例えば、1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後に薬剤に晒されてもよい。ここで当該方法は7日目に行われる。ある条件が使用される場合、当該細胞は、当該方法の期間のあいだ曝露されてもよいし、そして維持されてもよい。
【0065】
本明細書に記載される様に、開示発明の方法は、神経新生の程度及び/又は性質を指し示す神経細胞の1以上の特徴を計測し、そして計測された特徴を、1以上の対照群の細胞における計測された特徴と比較することを含む。様々な実施態様では、神経新生の性質及び/又は程度を指し示すNSCの特徴は、in vitro及び/又はin vivoにおける神経細胞の増殖、分化、移動、及び/又は生存を指す。NSC及び/又は前駆細胞の増殖、分化、移動、及び/又は生存は、本明細書に記載される技術を用いて、本明細書に記載される技術を用い、及び/又は当業者に知られている他の技術を用いて計測できる。
【0066】
幾つかの実施態様では、神経新生の性質及び/又は程度を指し示す特徴は、NSCの増殖能力である。実施例4は、様々な条件下での単層培養におけるNSCの増殖を計測する自動化ハイスループット法の1の実施態様を記載する。1の実施態様では、ニューロスフィアは、上に記載される様にACCUTASE(商標)を用いて酵素的に切断され、計測され、そしてポリ-L-リジン及びラミニン皮膜マルチウェルプレート上で培養される。典型的な実験では、50000個の細胞が100μlのウェルごとにプレートされる。当該細胞の増殖能力についての試験薬剤の効果を計測するために、1以上の試験薬剤を加え、そして細胞を分裂促進因子の存在下で培養する。実施例4において、5個の試験薬剤を96ウェルプレート中で二回試験して、8点の用量応答曲線を作成する。細胞を所定の時間培養液中に維持した後に、細胞を固定し、染色し、そして自動化プレートリーダー及び専用ソフトウェアを用いて数えた。試験薬剤の存在下における用量応答曲線を、試験薬剤が存在しない対照と比較される。対象条件下での一般的な用量応答曲線、つまり毒性又は栄養性のいずれでもない薬剤を伴った用量曲線が、図1Bに示される。
【0067】
増殖は、3Hチミジン、ブロモデオキシウリジン(BrdU、チミジンアナログ)、又は他の増殖活性指示薬の細胞の取込み能力により計測できる。細胞は、増殖マーカー、例えば、増殖細胞核抗原(PCNA)又はcdc2などの発現について評価されうる。これらの実施態様では、遺伝子発現は、以下に記載されるレポーターシステムを用いて計測することができる。
【0068】
神経新生の性質及び/又は程度を指し示す特徴は、NSCをニューロン、星状細胞、オリゴデンドロサイト、及び/又は他の細胞型例えば内皮細胞へと分化させる能力を含みうる。培養されたNSCは、分裂促進因子の不存在下で培養された場合に一般的に分化する。実施例5は、実施例4の増殖アッセイに類似するNSC分化を計測する自動化ハイスループット法を記載する。1の実施態様では、ニューロスフィアは酵素的に解離され、数えられ、そして増殖アッセイについて記載されるように単層培養に蒔かれる。但し当該細胞は、EGF及びbFGFの不存在下で培養される。所定の時間培養された後に、細胞を固定し、そして特定の細胞型について特異的である抗体で標識した。例えば、グリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP)抗体は、特異的に星状細胞を標識し、β-チューブリンIII(TUJ-1)及び神経線維抗体、例えばNF-200は、ニューロンを特異的に標識し、及びO1及びO4抗体は、特異的にオリゴデンドロサイトを標識する。様々な系列の細胞について特異的であるほかのマーカーは、当業者に知られており、そしてそれらに対する抗体は、市販されているか、又は既知の方法により作成できる。一次抗体が標識されていない場合、当該細胞は次に一般的に標識された二次抗体、例えば酵素的または蛍光標識された抗体と接触され、そして細胞は可視化されるか又はソートされる。細胞を免疫標識する方法、並びに免疫標識された細胞を検出及びソートする方法は、当業者に周知である。細胞の分化について試験薬剤の効果は、プレートされ、分化した細胞の割合、又は対照細胞に対して1以上の特定の細胞系列へと分化した細胞の割合として計測できる。
【0069】
NSCの分化についての異なる薬剤の効果を評価するハイスループット・ハイコンテントアッセイが開示される。当該アッセイは、本明細書に記載される様に、安定な単層NSC培養方法の能力に基く。当該アッセイは、場合により分化検出システムとして小型化されてもよい。本明細書の実施例5は、濃度応答曲線形式で複数回の分析を許容するこのような分化検出アッセイの1の実施態様を含む。当該アッセイ法は、固定された密度のNSC、例えばヒトNSCをマルチウェルプレートのウェル中にプレートすることを含みうる。開示された発明の幾つかの実施態様では、具体的な密度は約60000、約70000、約80000、又は約90000細胞/cm2である。他の実施態様では、約78125細胞/cm2の密度が使用される。当該方法において用いるためのマルチウェルプレートの非制限的な例として、10μg/mlのポリ-D-リジン及び50μg/mlのマウスラミニンの基質で皮膜された96、384、及び1536ウェルプレートが挙げられる。
【0070】
当該細胞は、分裂促進因子を含まない試験培地中で培養されるか、又は細胞をプレートする際すぐに本明細書に記載される試験分化薬剤又は条件に晒されてもよい。安定な分化適合性培養は、当業者に知られた自動化装置、例えば、プレート後3〜4日の間に試験分化薬剤又は化合物を場合により伴う新たに調製された(新たな)培地で培地の50%を置き換えることができる装置を用いてもよい。神経新生に影響しうる条件の非制限的な例として、酸素濃度、pH、及び細胞がさらされる二酸化炭素濃度が挙げられる。酸素濃度に関して、in vivo環境又は脳環境、例えば低酸素分圧(非制限的な例として約5〜8%)は、単層又はニューロスフィアのいずれに基こうとも本明細書に開示される方法の実施において使用されてもよい。
【0071】
得られたNSC分化の計測は、本明細書に記載される様に、そして当業者に記載される固定及び染色により行われうる。幾つかの実施態様では、複数の波長でウェルごとに複数の写真を撮る自動化装置の使用は使用されてもよい。神経分化の定量は、Tuj1染色の量を計測し、そしてその数をヘキスト染色された細胞核の自動化計数により測定された細胞数により割ることによってもよい。星状細胞への分化の定量は、GFAP染色の量を計測し、そして当該数を、ヘキスト染色された細胞核を自動化計数することにより測定された細胞数により割ることによる。高濃度のセロトニン(5-HTP)を有するニューロンへのNSCの高い分化を示す濃度応答曲線は、図4Aに示される。星状細胞又はオリゴデンドロサイト分化への薬剤の影響も、他の細胞型特異的抗体を用いて同様の様式で測定されてもよい。
【0072】
本明細書に記載される様に、ニューロスフィアの細胞の全てがNSCであるわけではなく、そして開示された発明の単層培養法の利点は、(前駆細胞及び/又は分化細胞ではなく)NSCの1以上の態様についての試験薬剤の効果を検出する能力である。いくつかの実施態様では、ニューロスフィアから派生される単層培養は、NSC及び/又は他の分化細胞型 (例えば、ニューロン及びグリア細胞)に特異的な抗体で標識されて、NSC及び/又は分化細胞が存在する最初の単層培養における細胞の割合が測定されうる。同様の標識方法は、次に1以上の試験薬剤の存在下で実験条件下で細胞を培養後に使用されうる。この様式では、培養細胞の1以上の態様の変化により計測される場合、試験薬剤の効果は、NSCの集合の変化に反映される。例えば、NSCの増殖は、最初にプレートされたNSCの数の関数として培養液中に精製されたNSCの数として計測されうる。同様に、分化された細胞の数は、最初にプレートされたNSCの数に対して測定されうる。或いは、実験条件下で計測された分化細胞の数は、最初の集合における分化細胞の数に対して分析することができる。
【0073】
別の実施態様では、神経新生を指し示すNSCの態様は、培養されたニューロスフィアを解離させることにより検出でき、そして、蛍光活性化セルソーターと組み合わせて例えばNSC特異的抗体で標識することによりNSCをソートすることによって検出されうる。或いは、分化細胞は、細胞型特異的抗体を用いFACSによりソートされて、未分化細胞の集合を残す。抗体に基く方法に加えて、細胞は、ベクター、例えば以下に詳細に記載される受容体コンストラクトに結合された誘導プロモーターを有するプラスミドなどのベクターで形質転換することにより標識できる。ソートされたNSCは、次に単層培養にプレートされ、そして実施例4及び5に対して記載される様に試験薬剤で処理されうる。有利なことに、単層培養において実験を行う前にNSCを予めソートすることは、NSCについて培養細胞の集合を濃縮する。このような濃縮は、より正確にNSCの神経新生性質の変化を反映し、及び/又は非NSCについての潜在能力を低減して、培養におけるNSCの性質に影響する。
【0074】
幾つかの実施態様において、神経新生の性質及び/又は程度を指し示す特徴は、1以上の遺伝子の発現の程度又は性質である。例えば、幾つかの実施態様では、遺伝子発現の調節は、培養されたNSCを、その発現が神経新生の性質及び/又は程度を指し示す遺伝子のプロモーターであって、レポーターコンストラクトをコードする核酸配列に結合されたプロモーターを含む1以上のベクターで形質転換することによりアッセイされる。当該プロモーターコンストラクトは、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェラーゼ(luc)、黄色蛍光タンパク質(YFP)などにより提供される蛍光、化学発光、発色、又は生物発光シグナルを提供しうる。1の実施態様において、遺伝子発現は、フローサイトメトリー(FACS分析)又は他の自動化方法により検出される化学発光又は蛍光基質を用いて計測される。別の実施態様では、レポーターコンストラクトは、分光光度計により検出される着色シグナル、例えばo-ニトロフェニル-D-ガラクトピラノシド(ONPG)の存在下でβ-ガラクトシダーゼにより提供される着色シグナル、を提供する。特別な実施態様では、レポーターシステムは、遺伝子発現の定量的な検出を可能にする。実施例6及び7は、げっ歯類及びヒト培養NSCにおいて使用するための遺伝子レポーターアッセイをそれぞれ記載する。
【0075】
幾つかの遺伝子特異的プロモーターは、細胞が神経又はグリア系列にそって分化する場合、ラット神経幹細胞(rNSC)中で具体的に活性化されるということが示された。これらのプロモーターとして、非限定的に、NeuroD1(ND1)、mGluR2、ニューロフィラメント・ヘビー(NFH)、GAP43、グリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)及びネスチン遺伝子に特異的なプロモーターが挙げられる。
【0076】
遺伝子発現の調節は、遺伝子によりコードされる1以上のポリペプチドの生成又は分泌により検出されうる。タンパク質産生及び分泌を検出する方法として、バイオアッセイ、結合アッセイ、免疫アッセイなどが挙げられ、そして当業者に周知である。
【0077】
幾つかの実施態様では、神経新生の程度及び/又は性質を指し示す特徴は、NSCの膜電位である。NSC及び/又は前駆細胞の膜電位の変化は、イオンチャネル、つまり細胞膜を横断する内在性タンパク質のクラス、によりもたらされる。膜には、2個のタイプのイオンチャネル、つまりゲート型及び非ゲート型が存在する。非ゲート型チャネルは、常に開いており、そして外因性因子により有意に影響されることはない。非ゲート型チャネルは、主に静止期膜電位の維持において重要である。対照的にゲート型チャネルは、特異的な外因性、電気的、機械的、又は化学的シグナルに応答して開閉する。膜を隔てた荷電の分離、そしてその結果得られた膜電位は、細胞への又は細胞からのイオンの総流出がある場合に乱される。荷電分離の減少は、脱分極と呼ばれ、荷電分離の増加は、過分極と呼ばれる。培養細胞の膜電位の変化は、当業者に知られている技術を用いて計測できる。
【0078】
幾つかの実施態様では、神経新生の程度及び/又は性質を指し示す特徴は、NSC及び/又は前駆細胞の形態である。細胞形態は、観察により、及び/又は非限定的に、密度、形態、及び樹状突起の連結性、樹状分岐、突起の陥没、軸索形成割合及び軸索伸張、並びにNSC又は前駆細胞の増殖、分化、移動、及び/又は生存性の割合の変化に相関する当業者に知られた他のパラメーターを含むパラメーターを計測することにより評価されてもよい。例えば海馬において、神経可塑性は、学習と記憶に関係する変化の基礎をなすと信じられており、そして新たなシナプスの生成と、存在するシナプス接続の切断において表されうる。中枢神経系における神経間のシナプス相互作用の部位は、樹状プロセスにおいて見られる突起として知られている突起部である。樹状突起は、様々な刺激に応答して密度、形態、及び接続性が変化すると知られており、そして神経可塑性の位置としての主要な候補である。幾つかの実施態様では、海馬の神経において突起密度又は連結性の変化は、神経新生の能力における変化、及び学習と記憶形成に関与しうる。これらの特徴の計測又は検出は、コースに渡ってなされうるか、又は約21日後、又は約1月又はそれより長い期間なされうる。
【0079】
本明細書に記載されるスクリーニングアッセイにおいて、神経新生を調節するその能力に付いて試験される候補化合物は、非限定的に、薬剤、小分子、ペプチド、ペプチドミメティクス、核酸、ヌクレオシドアナログ、例えばアジドチミジン、ジデオキシイノシン、ジデオキシチミジン、ジデオキシシチジン、又はシトシンアラビノシド、炭水化物、脂質、幹細胞などの細胞、又はそれらの任意の組合せを含む生物分子又は化学分子の任意のタイプでありうる。当該薬剤は、放射線照射などの治療様式を含みうる。特定のアッセイ形式が望まれる場合、候補化合物は、検出可能なように標識され、又は固体支持体に結合されうる。幾つかの実施態様では、試験薬剤は、有機小分子、例えば、コンビナトリアル化学法により調製される分子など有機小分子である。別の実施態様で又は試験薬剤は、約10kDa未満、約8kDa未満、約6kDa未満、約4kDa未満、約2kDa未満、又は約1kDa未満の分子量を有する分子である。更なる実施態様では、分子は、血液脳関門を通過できるか、又はできると信じられている。
【0080】
化合物の巨大ライブラリー、例えば単純又は複雑な有機分子、金属含有化合物、炭水化物、ペプチド、タンパク質、ペプチドミメティクス、糖タンパク質、リポタンパク質、核酸、抗体などを含む化合物の巨大ライブラリーを製造する方法は、当業者に周知であり、そして例えば、Huse,米国特許第5264,563号、Francisら、Curr. Opin. Chem. Biol. 2:422-428(1998); Tietze ら、Curr. Biol., 2: 363-371(1998); Sofia, Mol Divers. 3:75-94 (1998); Eichlerら、Med. Res. Rev. 15:481-496 (1995)に記載される。開示された発明の方法において使用するための多数の天然及び合成化合物を含むライブラリーは、販売元から得ることができる。
【0081】
幾つかの実施態様において、開示された発明の方法は、1以上の因子(以後、構成因子と呼ばれる)であって、化合物又は他の治療様式の神経新生調製効果の検出を促進する因子の存在下で行われる。単層培養におけるヒトNSCの増殖についての試験薬剤の効果の検出を促進するために神経伝達物質を使用することは、実施例8に記載され、そして図2〜5示される。構成因子は、1の組成物又は別々の組成物を含むことができ、そして試験薬剤又は試験条件に対する異なる時間又は同じ時間で神経幹細胞の試験増殖を誘導することができる。本明細書に提供される方法における構成因子の使用は、その配列又は投与様式により制限されない。開示された発明の方法において有用である構成因子は、任意の分子又は治療様式を含むことができ、神経新生を増強、拮抗、又はそうでなければ調節するものを含む。様々な実施態様では、構成因子は、神経幹細胞の試験集合の1以上の性質についての試験薬剤との組合せにおける相加効果を超える効果を有する。例えば、幾つかの実施態様では、構成因子は1以上の試験薬剤との相乗効果を発揮する。更なる実施態様では、構成因子は、試験薬剤の効果を調節する神経新生を増強し、及び/又は試験薬剤は構成因子の効果(単数又は複数)を増強する。相乗、増強を評価する方法、並びに他の組合わされた効果は、当業者に知られており、そして例えば、Chou and Talalay, Adv Enzyme Regul., 22:27-55 (1984)に記載される。本明細書に記載される方法において使用される構成因子が、1以上の試験薬剤と組み合わせた相加効果を超える効果を有してもよい一方、幾つかの方法における構成因子(単数又は複数)の存在が、1以上の神経新生調節薬又は神経性効果の検出をいくらか促進する限り、特定の応答タイプ又はレベルが、開示された方法を実施するために必要とされない。
【0082】
幾つかの実施態様では、構成因子(単数又は複数)は、CNSに内在性である化合物又は他の成分、又はこのような化合物の1以上の生理的効果を刺激及び/又は阻害する分子を含む。有利なことに、1以上の構成因子でのNSCの処理は、NSCを試験薬剤による神経新生の程度及び/又は性質における変化の誘導により影響されやすくする。構成因子の存在下におけるNSCの培養は、開示された発明の方法のシグナル対ノイズ比を増加させることによる神経新生調節薬の検出を促進する。任意の特定の論理にとらわれることなく、構成因子は、in vivoでNSCの環境を模倣することにより神経新生調節薬の検出を促進しうる。こうして、幾つかの実施態様では、構成因子は、脳領域の環境を模倣すると信じられており、ここでNSC及び/又は神経新生はin vivoで生じることが知られている。
【0083】
こうして、開示された発明は、in vivo脳環境又は化学が内在因子を含むことによりモデル化されている方法を含む。in vitroモデルが、成体、つまりin vivoの文脈で完全な再現性を有さないことが多い一方、本明細書に開示される方法により提供される改善点は、in vivo環境の優れたモデリングにより内在性環境の優れた復元を含む。例えば、NSC単層分化アッセイは、培養条件に対する具体的薬剤の添加によりin vivo脳環境をよりよく真似るように改善される。幾つかの実施態様では、加えられた薬剤は、1以上の構成因子でありうる。当該因子の非限定的な例として、神経伝達物質、例えば生体アミンである神経伝達物質及び生体アミンではない神経伝達物質を含む。in vivo環境をモデリングすることは、そうでなければin vitro実験において存在しない特異的in vivo条件下でNSC分化を調節する薬剤の同定を許容する。実施例8は、開示の方法においてセロトニンを例示的に含むことを含む。
【0084】
幾つかの実施態様では、本明細書に提供される方法において有用である構成因子は、1以上の神経伝達物質、例えば神経伝達物質(場合により生体アミン)であって、種、CNSの領域、及び/又は開示された方法において使用される神経幹細胞の由来元の組織に内在する神経伝達物質を含む。因子(単数又は複数)は、in vivo環境に存在する全ての因子である必要がないが、その代わりに任意の1以上の化合物又は薬剤であってもよい。
【0085】
こうして、開示された発明は、神経新生活性について試験化合物をアッセイする方法を含み、当該方法は、神経伝達物質に晒された神経幹細胞における神経新生を計測することを含む。幾つかの実施態様では、細胞は、神経伝達物質を含む増殖培地の存在下で神経幹細胞を含む細胞のin vitro集合内に存在する。当該細胞は、神経新生が計測される前に試験化合物と接触される。
【0086】
特定の実施態様では、構成因子は、生体アミン、例えば、ドーパミン、エピネフリン、ノルエピネフリン、セロトニン、ヒスタミン、或いはそれらの代謝産物、プロドラッグ、又はアナログである。さらなる実施態様では、生体アミンは、アセチルコリン、チラミン、トリプタミン、オクトパミン、β-フェニルエチルアミン、フェノールアミン又はポリアミン、或いは他の生理的に活性なアミンである。様々な実施態様では、生体アミンは、任意の試験薬剤又は条件の検出を促進する構成因子として使用されうる。例えば、図4A及び4Bは、別の生体アミン(ドーパミン)の効果を調節する神経新生の検出を促進するために、生体アミン(5-HTP)を使用することを示し、当該生体アミン(ドーパミン)は、神経細胞系列にそって神経幹細胞の分化を刺激する。さらに、図2A〜2Cは、非生体アミン化合物、例えばアンフェタミン(図2B)及びメチルフェニデート(図2C)を含むほかの非生体アミン化合物の神経新生効果の検出を促進する構成因子としてドーパミンを用いることを示す。
【0087】
様々な実施態様では、ドーパミン以外の生体アミンが、構成因子と指定要される。例えば、幾つかの実施態様では、構成因子はセロトニン、ノルエピネフリン、ヒスタミン、或いはそれらの代謝物、プロドラッグ、又はアナログである。例えば図4A及び4Bは、セロトニンプロドラッグである5-ヒドロキシ-トリプトファン(5-HTP)を用いることを示す。これは、in vivoで迅速に代謝されて、構成因子としてセロトニンを形成して、神経伝達物質試験薬剤(ドーパミン)の効果を調節する神経新生の検出を促進する。別の実施態様では、構成因子の存在は、試験薬剤のみで得られる用量応答曲線に対して、試験薬剤の用量応答曲線を左側にシフトさせる。例えば、図4Bに示されるように、構成因子(例えば、5-HTP)の添加は、試験薬剤のIC50又はEC50を調節することができる。有利なことに、構成因子の存在下において試験薬剤をアッセイすることは、神経新生調節効果の検出を可能にし、当該効果は層でない場合、構成因子の不存在下では検出できない。例えば、そして理論に束縛されずに、多くの化合物が高濃度で(例えば、約5、15、又は30μM超の用量で)毒性効果であって、本明細書に記載されるアッセイにおいて計測される1以上の性質の開始及び/又は当該性質との相互作用する効果を発揮するということが信じられている。こうして、図4Bに示される実施例は、さらなる実施態様の例であり、ここで2以上の薬剤、2以上の条件、又は薬剤と条件の組合せの効果は、本明細書に開示されるようにアッセイされて、その組合せ効果が同定される。これらの方法として、1の薬剤が本明細書に記載される構成因子であり、そして別の薬剤又は条件がそれぞれ「試験薬剤」又は「試験条件」である実施態様を含む。
【0088】
さらなる実施態様では、ノルエピネフリンは、構成因子として使用される。神経及び正常細胞系列にそった神経幹細胞の分化についてのノルエピネフリンの効果は、図3A(神経)及び3B(星状細胞)において示される。本明細書に開示されるこれらの及び他の技術の範囲では、通常の実験を実施する当業者は、容易にノルエピネフリン及び/又は他の生体アミンを本明細書に記載される構成因子として利用する。
【0089】
幾つかの実施態様では、構成因子として使用される生体アミンは、「トレースアミン」(TA)であるか、或いはその代謝物、前駆体、プロドラッグ、又はアナログである。TAは、内在性であり、従来の生体アミン(例えばドーパミン、5-HT、ノルエピネフリン)に構造的に関連しているCNS活性アミンである。ある食品、例えばチョコレート、チーズ、及びワインは、TA及び/又はTA関連化合物のある食品供給源を提供しうる。構成因子として有用である哺乳動物TAの例として、非限定的に、トリプタミン、p-チラミン、m-チラミン、オクトパミン、シネフリン及びβ-フェニルエチルアミン(β-PEA)が挙げられる。さらに有利なTA関連化合物として、非限定的に5-ヒドロキシトリプタミン、アンフェタミン、ブフォテニン、5-メトキシトリプタミン、ジヒドロメトキシトリプタミン、およびフェニルエフリンが挙げられる。
【0090】
TAは、トレースアミン関連受容体(TAAR)と呼ばれる多くの固有受容体に結合し、そして活性化することが示されてきた。当該受容体は、従来の生体アミン受容体にホモロジーを有するGタンパク質結合受容体のファミリー(TAAR1-TAAR9)を含む。しかしながら、多くのTAARは、すでに特定のリガンドと関連し、さらなる内在性TA又はTA関連リガンドの存在を示唆する。さらに、結合試験により、既知のTAがCNSにおける非TAAR部位に結合することが示唆される、他のTA受容体及び/又は経路が示唆される。そうして、様々な実施態様では、構成因子はTAARのリガンドであり、及び/又はTAの1以上の生物的効果を媒介する。
【0091】
幾つかの実施態様では、構成因子はβ-PEAであり、哺乳動物CNSにおいてかなりの神経調節役割を有すると同定され、そして海馬において比較的高いレベルで発見される(例えば、Tegaら、Biomed Chromatogr., 3(3):118-20(1989))。「PEA仮説」によると、低下されたレベルのβ-PEAはうつ病をもたらし、一方過剰のβ-PEAレベルは躁病エピソードを導く。特定の論理により束縛されることなく、神経新生の喪失は、うつ病の病因における重要な因子であり、そしてその結果β-PEAは、十分なレベルの神経新生に必要とされうるし、又はそうでなければ神経新生を促進又は調節する。こうして、様々な実施態様では、β-PEAは、神経新生を刺激する薬剤及び/又はうつ病の治療に有用な薬剤として使用される。さらなる実施態様では、構成因子は、βーPEAの代謝物、プロドラッグ、前駆体、又は他のアナログ、例えばβ-PEA前駆体であるL-フェニルアラニン、当該薬剤はうつ病の治療に有効であるβ-PEAにそって示され;β-PEA代謝物であるβ-フェニル酢酸(β-PAA)、当該薬剤はうつ病の症状に対する運動の陽性効果における役割を果たすと示され;又はβ-PEAアナログであるメチルフェニダート、アンフェタミン、及び関連する化合物、これらはADHDなどの認知障害を治療するために使用される、である。
【0092】
多くのTAは、MAO-A及び/又はMAO-Bによる迅速な細胞外代謝のため、短い半減期(例えば約30秒未満)を有する。当該MAO-A及び/又はMAO-Bは、TA代謝の主要な経路を提供する。こうして、幾つかの実施態様では、TAレベルは、MAO-A及び/又はMAO-Bの活性を調節することにより制御される。例えば、幾つかの実施態様では、内在性TAレベルは、MAO-A及び/又はMAO-Bの阻害剤、その例は本明細書に提供される、を投与することにより増加する(そしてTAシグナル伝達が増加する)。TAは、例えば、生体アミントランスポーターによる取り込みを阻害することにより、ドーパミン、ノルエピネフリン、及び5-HTシグナル伝達経路にかんして神経調節効果を有するとしめされてきた。こうして、幾つかの実施態様では、TAは、本明細書にさらに完全に記載される様に生体アミン調節因子として使用される。
【0093】
さらなる実施態様では、構成因子は、生体アミン(生体アミン調節因子)のレベル又は活性を調節する化合物、薬剤、又は条件である。例えば、幾つかの実施態様では、生体アミン調節因子は、「取り込み阻害剤」であり、シナプス間隙及び/又は他の細胞外領域からの取り込みを阻害することにより、1以上のモノアミン神経伝達物質の細胞外レベルを増加させる。「取り込み阻害剤」という用語は、生体アミンの輸送を阻害する化合物(例えば取り込み阻害剤)、及び/又はトランスポータータンパク質(例えば、ドーパミントランスポーター(DAT)、NEトランスポーター(NET)、5-HTトランスポーター(SERT)、及び/又は細胞外モノアミントランスポーター(EMT))による生体アミン基質の結合を阻害する化合物(例えば取り込み遮断約)及び/又は細胞外生体アミンの除去を媒介するほかの分子を含む。例えば、図2B及び図2Cは、アンフェタミン及びメチルフェニダートの使用をそれぞれ構成因子として使用する。これらの及び他の精神刺激薬は、生体アミンの輸送を強力に阻害すると知られており、この阻害は、シナプス間隙での生体アミンのレベルを増加させ、本明細書に提供される様々なアッセイにおいて、神経新生効果を促進することを可能にする。生体アミン取り込み阻害剤は、例えばKoe, J. Pharmacol. Exp. Ther. 199:649-661(1976)において記載される様に特定の生体アミンに関するその効力に従って一般的に分類される。しかしながら、1以上の生体アミンに対して活性である化合物についての言及は、in vivoで調節されるモノアミンについて包括的(exhaustive or inclusive)であることを意図しないが、本明細書に提供される方法で用いる化合物を選択する際に当業者に一般的な指針を意図する。
【0094】
幾つかの実施態様では、生体アミン調節因子は、1以上のほかの生体アミンに対して、1以上の生体アミンの取り込みを選択的/優先的に阻害しうる取り込み阻害剤である。様々な実施態様では、本明細書に提供される組合せにおいて有用である生体アミン取り込み阻害剤として、(i)選択的セロトニン取り込み阻害薬(SSRI)、例えばパロキセチン (例えば、第3,912,743号及び第4,007,196号に記載される)、ネファゾドン (例えば、第4,338,317号に記載される)、フルオキセチン (例えば、第4,314,081号及び第4,194,009号に記載される)、セルトラリン(例えば、第4,536,518号に記載される)、エシタロプラム (例えば、第4,136,193号に記載される)、シタロプラム (例えば、第4,136,193号に記載される)、フルボキサミン (例えば、第4,085,225号に記載される)、及びアラプロクラート;(ii)
セロトニン及びノルエピネフリン再取り込み阻害剤(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、例えばベンラファキシン(例えば、第4,761,501号に記載される), デュロキセチン(例えば、第4,956,388号に記載される)、ミルナシプラン(例えば、第4,478,836号に記載される)、シブトラミン(BTS 54 524) (例えば、Buckettら、Prog. Neuro-Psychopharmacol. Biol. Psychiatry 12: 575-584 (1988)に記載される)及びその主要アミン代謝産物(primary amine metabolite)(BTS 54 505)、アモキサピン、マプロチリン、及び三環系抗うつ薬、アミトリプチリン、デシプラミン(例えば、第3,454,554号に記載される)、及びイミプラミン;(iii)ノルエピネフリン再取り込み阻害剤、例えばタルスプラム、トモキセチン、ノルトリプチリン、ニソキセチン、レボキセチン(例えば、第4,229,449号に記載される)、及びトモキセチン(例えば、第4,314,081号に記載される);(iv)ノルエピネフリン及びドーパミン再取り込み阻害薬、例えば、ブプロピオン(例えば、第3,819,706号及び第3,885,046号に記載される)、及び(S,S)-ヒドロキシブプロピオン(例えば、第6,342,496号に記載される);及び(v)選択的ドーパミン再取り込み阻害薬、例えば、メジホキサミン、アミネプチン(例えば、第3,758,528号及び第3,821,249号)、GBR12909、GBR12783及びGBR13069(Andersen、Eur J Pharmacol、166:493-504 (1989)に記載される)が挙げられる。
【0095】
幾つかの実施態様では、生体アミン調節因子は、例えばシナプス前受容体(例えば、自己受容体、ヘテロ受容体)を調節することにより、パッケージングを調節することにより(例えば、ベシクル形態)及び/又は生体アミンの放出(例えばベシクル融合及び放出)及び/又はそうでない場合生体アミン放出の調節により、シナプス前の部位からの生体アミンの放出を刺激する生体アミン「放出物質(releaser)」である。有利なことに、生体アミン放出物質は、シナプス前ニューロンの活性とは独立して、シナプス間隙又は他の細胞外領域内で1以上の生体アミンのレベルを増加させる方法を提供する。本明細書に提供される組合せにおいて有用である生体アミン放出物質として、例えば、5-HT放出物質フェンフルラミン及びp-クロロアンフェタミン(PCA);及びドーパミン、ノルエピネフリン、及びセロトニン放出化合物であるアミネプチン(例えば、第3,758,528号及び第3,821,249号に記載される)が挙げられる。
【0096】
幾つかの実施態様では、生体アミン調節薬は、その代謝を阻害することにより1以上の生体アミンの細胞外濃度を増加させる、生体アミン「代謝調節薬」である。例えば、幾つかの実施態様では、代謝調節薬は、酵素モノアミンオキシダーゼ(MAO)の阻害剤である。当該酵素は、細胞外で生体アミンを不活性な化学種へと分解することを触媒する。本明細書に提供される方法において有用なMAO阻害剤ついては、5-ヒドロキシトリプタミン(セロトニン)(5-HT)及びノルエピネフリン(NB)を優先的に脱アミン化するMAO-Aイソ型の阻害剤及び/又はフェニルエチルアミン(PEA)及びベンジルアミンを優先的に脱アミン化するMAO-Bイソ型の阻害剤が挙げられる(MAO-A及びMAO-Bの両方ともが、ドーパミンDAを代謝する))。様々な実施態様では、MAO阻害剤は、可逆的又は不可逆的であってもよく(例えば、可逆性MAO-A阻害剤(RIMA)、そしてMAO-A及び/又はMAO-Bに対して様々な効力を有してもよい(例えば、非選択的両方の阻害剤又はイソ型選択的阻害剤)。本明細書に記載される方法において有用なMAO阻害剤の例として、クロルジリン、L-デプレニル、イソカルボキサジド (マルプラン(Marplan))、アヤワスカ、ニアラミド、イプロニアジド、イプロクロジド、モクロベミド (Aurorix(登録商標))、フェネルジン (ナーディル(Nardil))、トラニルシプロミン (パーナート(Parnate)) (フェネルジンと同属性)、トロキサトン、レボ-デプレニル (セレギリン)、ハルマラ(harmala)、RIMAs(例えば、モクロベミド、Da Pradaら、J Pharmacol Exp Ther 248: 400-414 (1989);ブロファロミン;及びベフロキサトン、Curetら、J Affect Disord 51 : 287-303 (1998))、ラザベミド(Ro 19 6327)(Ann. Neurol., 40(1): 99-107 (1996))、及びSL25.1131(Aubinら、J. Pharmacol. Exp. Ther., 310:1171-1182(2004)に記載される)が挙げられる。
【0097】
幾つかの実施態様では、生体アミン調節因子は、生体アミン受容体、例えばセロトニン受容体(例えば、5-HT1-7受容体)、ドーパミン受容体(例えば、D1-D5受容体)、及び/又はアドレナリン作動性受容体(例えば、α及びβアドレナリン作動性受容体)の活性を調節する。生体アミン受容体調節因子は、任意の作用メカニズムを介して作用する化合物を含む。受容体調節因子の例として、5-HT1Aアゴニスト又は部分的アゴニスト、例えば8-ヒドロキシ-2-ジプロピルアミノテトラリン(8-OHDPAT)、ブソピロン、ゲピロン、イプサピロン、およびフレシノキサン;5-HT1Aアンタゴニスト、例えばWAY100,635;5-HT2Cアゴニスト又は部分的アゴニスト、例えばm-クロロフェニルピペラジン;5-HT2A/2Cアンタゴニスト、例えばリタンセリン、エトペリドン及びネファゾドン;ドーパミン受容体刺激薬、例えば7-OH-DPAT及びキンピロール;ドーパミン受容体拮抗薬、例えばハロペリドール、U-99194A、及びクロザピン;アドレナリン拮抗薬、例えばイダゾキサン及びフルパロキサン;アドレナリン受容体刺激薬、例えばモダファニル、サルブタモール、クレンブテロール、アドラフィニル、及びSR58611A(Simiandら、Eur J Pharmacol, 219:193-201 (1992);に記載される);及び非定型抗精神病薬、例えばクロザピン(Clozaril(登録商標))、オランザピン (Zyprexa(登録商標))、クエチアピン(Seroquel(登録商標))、リスペリドン(Risperdal(登録商標))、ジプラシドン(Geodon(登録商標))、アリピプラゾール (Abilify(登録商標))、及びセルチンドール (Serlect(登録商標))が挙げられる。さらなるCNS活性モノアミン受容体調節薬は当業者に知られており、そして例えばMerck Index 第12版(1996)に記載されている。
【0098】
本明細書に提供される組み合わせて有用であるさらなる生体アミン調節薬として、三環系抗うつ薬、例えば、アモキサピン、クロミプラミン、ドチエペン(dothiepen)、ドキセピン、ロフェプラミン (例えば、第4,172,074号に記載される)、トリミプラミン、及びプロトリプチリン;四環系抗うつ薬、例えば、ミルタザピン(例えば、第4,062,848号に記載される)、ミアンセリン(例えば、第3,534,041号に記載される)、マプロチリン (例えば、第3,399,201号に記載される)、及びセチプチリン;非定型抗精神病薬、例えばクロザピン、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドン、アリピプラゾール、及びセルチンドール;並びにトラゾドンが挙げられる。
【0099】
更なる実施態様では、開示された発明の方法において使用される構成因子は、1以上の海馬の歯状回(DG)領域に内在する1以上の因子を含み、当該領域では、成人の脳において神経新生が生じることが知られている。例えば、歯状回の主なニューロンは顆粒細胞であり、嗅内皮質の星状細胞からの求心性入力を受容する。ここで嗅内皮質の軸索は、歯状回への有孔質経路入力を形成する。次にDGニューロンは、苔状繊維として知られている軸索の束を介してCA3野へと投射する。貫通線維に位置する軸索は、NMDA受容体、AMPA受容体及び他の受容体サブタイプで作用する神経伝達物質グルタミン酸を放出する。こうして、幾つかの実施態様では、開示された発明の方法において、利用される構成因子として、例えばNMDA受容体を特異的に刺激する非内在性アミノ酸誘導体であるN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)、又はNMDA受容体調節因子、例えばAP5(2-アミノ-5ホスホノペンタン酸)、DTG、(+)ペンタゾシン、DHEA、Lu 28-179、BD 1008、ACEA1021、GV150526A、セルトラリン、又はクロルジリンが挙げられる。幾つかの実施態様では、構成因子(単数又は複数)は、AMPA受容体アゴニスト、例えばα-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソオキサゾールプロピオン酸(AMPA)、又はAMPA受容体アンタゴニスト、例えば7-スルファモイルベンゾ-(f)-キノキサリン-2,3-ジオン(NBQX)を含む。NMDA及び/又はAMPA受容体を刺激又は拮抗作用する他の因子は、当業者に知られており、そして構成因子として使用されてもよい。
【0100】
別の重要な神経新生領域は、側脳室の脳室下帯領域 (SVZ)であり、当該領域は成獣哺乳動物脳において神経新生の原発部位を含むと考えられている。SVGで生じた神経幹細胞及び/又は前駆細胞は、吻側細胞移動経路(RMS)を辿って嗅球に移動する。いくつかの神経細胞は、RMSを辿っている間に神経新生の様々な段階、例えば移動、増殖、及び様々な程度の分化を引き起こす。こうして、幾つかの実施態様では、開示された発明の方法において使用される構成因子(単数又は複数)は、SVG、RMS及び/又は嗅球に内在する1以上の因子を含む。様々な分子がこれらの領域に存在し、神経新生に潜在的に影響しうる。例えば、γ-アミノブチル酪酸(GABA)は、SVG/RMSの培養前駆細胞において見られる阻害性神経伝達物質であり、様々な疾患/病気、例えばパーキンソン病及びてんかんと関連した。幾つかの実施態様では、構成因子は、GABA又はGABAの効果を模倣及び/又は調節する分子、例えば、バクロフェン、つまり仮出願第60/731,937号に記載された化合物である。さらなる実施態様では、他の神経伝達物質、成長因子、ホルモン、又は、SVG、RMS、又は嗅球に内在するほかの分子が、構成因子として使用される。
【0101】
構成因子のさらに非限定的な例として、1以上の因子、例えば非限定的に、LIF、EGF、FGF、bFGF及びVEGFが挙げられる。さらに別の実施態様では、構成因子としては、好ましくは生理学的に関連のある濃度で存在する1以上のイオンが挙げられる。例えば、カルシウムは、CNSの様々なシグナル経路において重要な役割を果たし、そしてナトリウムは、ニューロンの静止膜電位を維持するのに必須である。さらに、マグネシウム及び他のイオンは、コファクターとして機能しうるか、又は他の受容体亜型の機能を調節しうる。クロリドイオンはまた、幾つかの受容体、例えばGABA受容体の効果を調節する。別の実施態様では、構成因子(単数又は複数)は、イオンの効果を模倣する分子又はイオンの細胞内又は細胞外で交換する分子を含む。
【0102】
幾つかの実施態様では、構成因子は、神経新生を促進又は阻害すると知られている生理状態、例えばストレス、加齢、運動、及び神経疾患/損傷と関連する。例えば、コルチコステロイドは、ストレスに応答して副腎により放出されるホルモンであって、発達期及び成人の歯状回において神経新生に影響することが示されたホルモンである。こうして、1の態様では、コルチコステロイド、例えばコルチコステロン又はコルチソールは、開示された発明の方法において有用な構成因子を含む。さらなる実施態様は、以下にさらに記載されるin vivo疾患状態のモデリングを含む。
【0103】
更なる実施態様では、構成因子(単数又は複数)は、in vivoで存在しうる外から供給された因子であってもよい。非制限的な例として、代謝調節型グルタミン酸(mGlu)受容体調節因子、例えばBarlowらにより2005年12月14日に出願された米国仮特許出願、題名「Methods of Treating Conditions of the Central and Peripheral Nervous Systems by Modulating Neurogenesis」に記載された化合物、ムスカリン性薬剤、例えば、サブコメリン(sabcomeline)、つまり米国仮出願第60/727,127号に記載された化合物;ヒストンデアセチラーゼ調節因子、バルプロ酸、MS275、アピシジン(apicidin)、つまり米国仮出願第60/715,219号に記載された化合物;シグマ受容体調節因子、例えばDTG、ペンタゾシン、SPD-473、つまり米国仮出願第60/719,282号に記載された化合物;GSK3-β調節因子、例えばTDZD-8、つまり米国仮出願第60/721,303号に記載された化合物;ステロイドアンタゴニスト又は部分アゴニスト、例えばタモキシフェン、センクロマン(cenchroman)、クロミフェン、ドロロキシフェン(droloxifene)、又はラロキシフェン;又はホスホジエステラーゼ阻害剤、例えばイブジラスト、つまり、米国仮出願第60/729,966号に記載された化合物が挙げられる。1以上の神経調節因子、神経伝達物質、又は成長因子の生理的効果を模倣及び/又は調節する分子は、開示された発明の方法における構成因子を含んでもよい。
【0104】
幾つかの実施態様では、外から供給された構成因子は、向知性化合物である。例えば、図5は、神経細胞系列にそった神経幹細胞の分化についての、CNS受容体リガンドであるα-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソキサゾールプロピオン酸(AMPA)の調節効果の検出を促進するために、合成向知性化合物(M6、つまりシクロ-(Pro‐Gly))の使用を記載する。さらなる向知性化合物は、当業者に知られており、非限定的に、ピラセタム、レビテラセタム(leviteracetam)、ネフィラセタム、アニラセタム、オキシラセタム、ピラミラセタム(pyramiracetam)、ピリチノール、麦角アルカロイド、ガランタミン、セレギリン、セントロフェノキン(centrophenoxine)、デスモプレッシン、ビンポセチン、ピカミロン(picamilon)、ミラセミド(milacemide)、及びニセルゴリンが挙げられる。図5に示される例は、さらなる実施態様の例であり、ここで2以上の薬剤の効果は、本明細書に開示されるようにアッセイされて、その組合せ効果を同定する。図5では、AMPAは、本明細書に記載される「構成因子」と考えられうる一方、向知性化合物は、AMPA活性を増強する「試験薬剤」である。或いは、そして本明細書に開示されるように同等の様式で、AMPAは、試験薬剤と考えられてもよい一方、向知性化合物は、AMPAにより増強される「構成因子」である。実施態様はこうして、第一、第二、又は更なる薬剤を用いて単独で調られた第一薬剤又は条件と組み合わせて、神経新生を増加、増強、促進、又は支持する第二、つまり更なる薬剤を検出又は同定する方法を含む。
【0105】
さらなる実施態様では、外から供給された構成因子は、非ステロイド性抗炎症薬剤(NSAID)、例えば、セレコキシブ、ロフェコキシブ、メロキシカム、ピロキシカム、バルデコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブ、エトドラク、ニメスリド、アセメタシン、ブフェキサマク、ジフルニサル、エテンザミド、エトフェナメート、フロブフェン(flobufen)、イソキシカム(isoxicam)、ケブゾン、ロナゾラク、メクロフェナム酸、メタビゾル(metamizol)、モフェブタゾン、ニフルミン酸、オキシフェンブタゾン、パラセタモール、フェニリジン(phenidine)、プロパセタモール、プロピフェナゾン、サリチルアミド、テノキシカム、チアプロフェン酸、オキサプロジン、ロルノキシカム、ナブメトン、アスピリン、ミノサイクリン、ベノリレート(benorylate)、アロキシプリン、サルサラート、イブプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、フェンブフェン、ベノキサプロフェン、スプロフェン、ピロキシカム、メロキシカム、ジクロフェナク、ケトロラック、フェンクロフェナク(fenclofenac)、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、キシフェンブタゾン(xyphenbutazone)、フェニルブタゾン、フェプラゾン、アザプロパゾン、フルフェナム酸又はメフェナム酸である。
【0106】
幾つかの実施態様では、外から供給された構成因子は、オピオイド受容体アンタゴニスト(例えば、μ、δ、及び/又はκアンタゴニスト)、例えばアルビモパン、シプロジム(cyprodime)(例えば、WO 93/02707に記載される)、ナルトレキソン(例えば、第3,332,950号に記載される)、ナロキソン(例えば、第3,254,088号に記載される)、ナルメフェン (例えば、第3,814,768号及び第 3,896,226号に記載される)、ナルトリンドール(NTI)(例えば、第4,816,586号)、ナロルフィン(例えば、第2,364,833号及び第2,891,954号に記載される)、ナルトリベン(NTB)(例えば、第4,816,586号に記載される)、DPI-2505(例えば、第5,658,908号に記載される)、メチオジド(methiodide)、ナロキソナジン、ナリド(nalide)、ナルメキソン(nalmexone)、ナロルフィン、ジニコチン酸(dinicotinate)、ナルトリンドール イソチオシアン酸塩、ノルビナルトルフィミン(nor-BNI)、b‐フナルトレキサミン(b-funaltrexamine)(b-FNA)、シクラゾシン、メチオジド、BNTX、ICI-174,864、LY117413、MR2266或いは、第4,816,586号、第4,891,379号、第4,191,771号、第6,313,312号、第6,503,905号又は第6,444,679号に開示される化合物である。
【0107】
さらなる実施態様では、開示された発明の方法は、神経新生を阻害すると知られている薬剤又は刺激に対して、保護的機能を発揮する1以上の試験薬剤の能力を計測するために使用される。こうして、幾つかの実施態様では、構成因子(単数又は複数)は、非限定的に、放射線照射、化学療法に用いられた薬剤、及び薬剤乱用を含み、そして開示された発明の方法が、構成因子の神経新生阻害効果に対してNSCを保護する1以上の試験薬剤又は治療様式の能力を検出するために使用される。こうして、開示された発明は、神経新生を阻害又は低減させる毒性の低下を検出する方法を含む。当該方法は、ヒト神経細胞の第一単層細胞培養を神経新生を阻害する薬剤又は条件に曝露し、そしてヒト神経細胞の第二単層細胞培養を神経新生を阻害する試験薬剤又は条件へと曝露し;そして当該第一単層に比較して第二単層における神経新生に対する毒性の低下を計測するを含みうる。さらなる実施態様では、当該方法は、さらに神経保護的薬剤又は条件として、神経新生に対する毒性を低減する薬剤又は条件を同定することをさらに含む。幾つかの実施態様では、当該方法は、炎症性サイトカインなどの薬剤、及び星状細胞媒介性の毒性の下で、神経保護的薬剤又は条件を検出又は同定することでありうる。
【0108】
さらなる実施態様では、「毒性」薬剤、又は「毒性」を検出する方法も開示される。これらの方法は、神経新生可能な細胞への毒性を介して神経新生を阻害又は低減させる薬剤又は条件を検出又は同定する。毒性アッセイ法は、当該細胞に対して栄養性又は毒性である薬剤又は条件を同定するために、分裂促進因子の不存在下で試験薬剤又は条件にNSCを晒すことを含む。場合により、NSCは、1以上のニューロスフィアから分離され、続いて分裂促進因子を取り除いてプレートされる。或いは、NSCは、分裂促進因子が培地から取り除かれた継代単層のNSCである。実施例9は、代表的な毒性薬剤、例えばBAY‐60‐7550の同定を記載する。
【0109】
開示された発明は、当該条件を複製する薬剤又は条件の使用により、in vivo疾患、条件、又は状態を調節することに基く方法をさらに含む。これらのin vitro方法は、疾患を治療するために有用である薬剤の同定を可能にする。非制限的な例として、オピオイド誘導性うつ病は、オピオイドに対する慢性的な曝露から生じうる疾患状態である。ヒトNSCなどのNSCの単層培養の分化を用いて、当該疾患状態をモデル化する方法は、当該細胞をオピオイドに曝露して、疾患状態をモデル化することに基く。当該状態を寛解又は回復させる薬剤又は条件は、次に本明細書に開示されるアッセイ方法の使用により検出されうる。
【0110】
幾つかの実施態様では、疾患条件又は状態は、in vivoで炎症応答を生じさせる炎症性サイトカイン、細菌トキシン、又は他の薬剤を取り込むことによりモデル化される。さらなる例として、アンジオテンシン又はアンジオテンシン前駆体などの反応性星状細胞により放出される化合物が挙げられる。1以上のこのような薬剤の存在を含む方法は、神経新生について薬剤のマイナス効果を回復又は寛解させる化合物又は条件を同定又は検出するためのスクリーニングツールとして使用されうる。
【0111】
疾患状態についての代わりのモデルは、星状細胞の生成又は星状細胞新生の検出又は計測を提示する。星状細胞は、ニューロンに対して毒性であると知られており、そして多くの疾患及び病気は、脳の損傷領域への星状細胞の浸潤及び/又は増殖により引き起こされるか又は悪化される。非制限的な例として、脳卒中及び他の脳損傷の形態が挙げられる。開示された発明のさらなる実施態様として、NSCの星状細胞への分化を阻害する薬剤及び/又は条件の検出又は同定の方法、並びに星状細胞への分化を増加させる薬剤及び/又は条件を検出又は同定する類似の方法が挙げられる。実施例10は、in vivo疾患のモデル化する代表的な方法を記載する。
【0112】
様々な実施態様では、開示された発明の方法は、以下の実施例に記載される比較のように対照に対する比較に関する。例えば、幾つかの実施態様としては、試験薬剤で処理されたNSCの特徴を、試験細胞と並行して培養されたが、当該試験薬剤を投与されていない対照NSCの同じ特徴と比較するステップを含む。しかしながら、対照との比較は、必ずしも開示された発明の方法に必須ではない。例えば、幾つかの実施態様では、NSCの挙動又は特徴は、特定条件下で前もって特徴決定されており、対照と比較することは必要でなくなる。対照が使用される場合、神経新生調節効果又は他の目的の効果又は結果の検出を促進する任意のタイプの対照が使用できる。例えば、幾つかの実施態様では、対照が候補化合物に晒されていないということを除いて試験調製品と同様に処理された調製品又は生物である。別のタイプの対照は、対照調製品が試験化合物の神経調節効果に対して無反応であるように改変されるということを除いて、試験調製品に類似した調製品である。後者の場合、試験化合物への試験調製品の応答は、実質的に同じ条件下で同じ化合物への対照調製品の応答(又は応答の欠如)と比較される。
【0113】
幾つかの実施態様では、神経新生を調節する化合物又は他の処理様式は、化合物又は処置様式を伴わない対照化合物又は対照に比較して、一般的に少なくとも約5%、又は少なくとも約10%、約25%、約50%、約100%、約500%又はそれ以上だけ一般的に神経新生を促進するか、或いは代わりに、少なくとも約5%、又は約10%、約25%、約50%、約90%、又はそれ以上だけ神経新生を低減する。しかしながら、開示された発明の方法は、そのような変化の検出に限られないが、神経新生の性質、程度、又は他の態様における任意の変化を検出できる。例えば、幾つかの実施態様では、開示された発明の方法は、別の薬剤の効果からNSCを保護する試験薬剤の能力を検出するために使用される。
【0114】
開示された発明の更なる態様として、実験、治療、又は他の目的のために、in vivoで移植するためのNSC及び/又は前駆細胞を含む細胞の集合を同定する方法を含む。幾つかの実施態様では、開示された発明は、移植に望ましい1以上の特徴を有する細胞の特定の集合、例えば特定の組織、宿主(例えば、神経学的状態と診断された宿主由来)、種、細胞株、又は他の起源由来の細胞などを検出するために使用される。移植に望ましい特徴は、例えば、細胞の増殖、分化、移動、生存及び/又は生存性を調節する試験薬剤又は処理様式の能力、並びに細胞の増殖、分化、移動、生存及び/又は生存性についての試験薬剤又は処理様式の効果に対する細胞の抵抗性を含むことができる。幾つかの開示された方法は、1以上の構成因子の存在下で、試験薬剤又は他の治療様式に応答するか又は抵抗性である細胞集合を同定するために使用される。
【0115】
幾つかの実施態様では、移植に適している神経幹細胞を同定する方法が開示される。当該方法は、神経幹細胞の集合から、神経幹細胞の部分集合を単離し;神経新生を増加させる薬剤又は条件に細胞の部分集合を晒し;そして当該集合において神経新生の増加を検出することを含み、ここで神経新生の増加は、神経幹細胞の集合が、移植に適していることを示す。神経新生の増加は、神経細胞系列又はグリア細胞系列にそって分化する部分集合において神経幹細胞の集合の増加により示されうる。或いは、神経新生における増加は、有糸分裂細胞の集合の増加により、又は神経幹細胞の数の増加により示される。
【0116】
さらなる実施態様では、移植に適している神経幹細胞を同定する方法は、神経幹細胞の集合からの神経幹細胞の部分集合を単離し;神経新生を増加させる薬剤又は条件に細胞の部分集合を晒し;そして神経新生の存在を示す部分集合において1以上の遺伝子の発現を検出することを含んでもよい。ここで、当該発現は、集合由来の神経幹細胞が、移植に適しているということを示す。
【0117】
幾つかの実施態様では、in vivoの方法は、上に記載される細胞培養技術を用いて検出された試験薬剤の効果を調節する神経新生を確認及び/又は説明するために使用される。有利なことに、in vivo方法により、化合物が通常対象及び、神経損傷及び疾患を有する対象の両方において神経新生の効果について試験される。例えば、脳卒中又は神経損傷のため生じた外傷についての実験動物モデルは、当業者に知られている。神経新生を調節する試験薬剤の能力を計測するin vivoアッセイは、ヒトの治療用に製造される目的の化合物の安全性、毒性、薬理学的、及び治療効果の証拠を提供できる。
【0118】
1のこのようなin vivo技術は、培養NSCを、神経新生を調節することが発見された1以上の薬剤処理し、そして当該NSCを試験動物に投与することに関する。幾つかの実施態様では、このような細胞は、例えば、受容体コンストラクトで形質転換することにより標識され、そして当該細胞の移動、生存、分化、又は当該細胞のほかの特徴は、試験動物において観察される。
【0119】
神経新生は学習と記憶に関与するので、試験薬剤の神経調節効果は、さらに、試験薬剤を対象に投与し、そして認知機能に関する1以上のタスクを実行する対象の能力を観察することによりさらに調査されうる。げっ歯類又は他の哺乳動物の認知機能を計測する方法は当業者に知られている。幾つかの実施態様では、神経調節効果は、開示された発明の方法を用いて試験薬剤についてin vitroで検出され、そしてin vivo方法は、薬剤、例えば抗うつ薬、抗不安薬、又は認知向上薬の潜在的治療用途を決定するために利用される。
【0120】
様々なデリバリー方法が当業者に知られており、そして目的の組織内のNSC又は前駆細胞に、試験薬剤をデリバリーするために使用できる。当該デリバリー方法は、目的の組織、化合物の性質(つまり、その安定性、及び血液脳関門を通過する能力)、及び実験の期間などの因子に依存するであろう。例えば、浸透圧ミニポンプは、神経新生領域、例えば側脳室に植え込まれうる。或いは、化合物は、脳又は脊柱の髄液中、又は眼内に直接注射することにより投与することができる。化合物は、(例えば静脈又は皮下注射、又は経口デリバリーにより)末梢に投与することができ、そして続いて血液脳関門を通過する。
【0121】
開示された発明の方法を用いて神経新生を調節することが発見された化合物は、神経新生を促進し、阻害し、又はそうでない場合調節することが有利である神経系の様々な障害を予防又は治療する治療薬剤として直接使用できる。開示された発明の方法により同定される化合物は、ex vivoで神経新生を促進、阻害、又はそうでない場合に調節するために使用でき、その結果、神経幹細胞、神経前駆細胞及び/又は分化神経細胞を含む細胞組成物は、次に同じ適応症を予防又は治療するために個人に使用されうる。開示された発明の方法は、神経新生に所望されない効果をもたらす薬剤及び/又は状態を同定するために使用され、その結果、例えば低い神経新生に付随する神経学的状態を患う患者は、このような薬剤及び/又は状態を避けることができる。
【0122】
開示された発明の方法により神経新生を調節することが発見された化合物で処理されうる神経系障害としては、非限定的に神経変性疾患、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、ルー・ゲーリック病、多発性硬化症、老年認知症、ピック病、パーキンソニズム認知症症候群、進行性皮質下神経膠症、進行性核上性麻痺、視床変性症候群、及び遺伝性失語症が挙げられる。神経幹細胞障害、神経前駆体障害、虚血性障害、神経学的 外傷性傷害、感情障害、神経精神医学的障害、網膜変性疾患、網膜損傷及び外傷、学習及び記憶障害、統合失調症、及び他の精神病、脳回欠損症候群、抑うつ、双極性うつ病、双極性障害、不安症候群、不安障害、恐怖症、ストレス関連症候群、認知機能障害、侵襲、薬剤及びアルコール乱用、妄想性強迫行動症候群、季節性気分障害、境界性人格障害、及び脳性麻痺がさらに挙げられる。さらなる態様では、開示された発明の方法で検出された化合物で処理できる神経系の障害としては、非限定的に、認知症、てんかん、傷害性てんかん、側頭葉てんかん、脊椎損傷、脳損傷、脳手術、外傷性脳損傷、外傷性脊髄損傷、癌治療に関連する脳損傷、癌処置に関連する脊髄損傷、感染症関連脳傷害、炎症関連性脳傷害、感染症関連性脊髄損傷、炎症関連性脊髄損傷、環境毒関連性脳傷害、環境毒関連性脊髄損傷、自閉症、注意欠陥障害、過眠症、睡眠障害、及び認知障害が挙げられる。開示された発明の方法により同定される化合物は、通常の個人に使用されて、学習及び/又は記憶を高めるため、又は学習及び/又は記憶に欠陥を有する個人を治療するため、並びに末梢神経系の疾患、例えばPNS神経障害(例えば、血管性神経障害、糖尿病性神経障害、アミロイド神経障害など)、神経痛、腫瘍、ミエリン関連性疾患などが挙げられる。
【0123】
神経新生を調節する化合物で効果的に治療されうるほかの病気が当業者に知られている(例えば、米国出願公開第20020106731号を参照のこと)。
【実施例】
【0124】
実施例
以下の実施例は特許請求される発明を示すために与えられるが、特許請求される発明を制限するものではない。
【0125】
実施例1:一次組織からのニューロスフィア培養物の樹立
目的の組織は、対象(例えば、ヒト胚)から解剖され、そして0.6%グルコースを含む氷冷PBS(Sigma P4417)を入れたペトリ皿中に静置した。解剖された小片を滅菌エッペンドルフチューブ中に置き、そして0.1%トリプシン溶液(Worthington Biochem LS003707)で37℃にて10〜20分間処理した。次にトリプシンを取り除き、続いて0.1%トリプシン阻害剤(Sigma T6522)で37℃にて10分間処理した。トリプシン阻害剤を除いた後に、サンプルをDNAse(SigmaD4527)で10分間37℃でインキュベートし、続いてDNAseを取り除き、そして継代培地(30%Hams F12(Gibco 11765-062)、70%DMEM(Gibco 11965-118)、1%PSA(Gibco- BRL 15420-062)、2%B27(Gibco-BRL 17504-044)、20ng/mlのEGF及びFGF-2+ヘパリン(5μg/ml)、及び場合により10ng/mlのLIF(Chemicon LIF1010)でインキュベートした。次に組織を大孔ピペットチップ(例えば、P1000)でトリチュエーションし、次に小孔ピペットチップ(例えばP200)でトリチュエーションし、各チップを通して約20回通過させて1細胞懸濁状態を達成した。細胞をヘモサイトメーターで計数し、そしてトリパンブルーを用いて生存度を評価した(Sigma)。
【0126】
細胞懸濁液を200K細胞/mlの密度でT25又はT75フラスコに蒔いた。スフィアを崩壊させないように気を付けながら培地の半分を取り除き、そして新たな培地と取り替えることにより、3又は4日毎にフラスコに培地を加えた。スフィアは、初期成長の間継代培地中に維持される。スフィアは、解剖バサミ(McIlwain)を用いて機械的に切断することにより継代された。約4週後、ヒトニューロスフィアを維持培地(30%Hams F12(Gibco 11765-062)、70%のDMEM(Gibco 11965-118)、1%PSA(Gibco- BRL 15420-062)、1%N2(Gibco-BRL 17502-048)、20ng/mlのEGF(Sigma E9644)へと切り替えた。15〜20週目で、ヒト培養物を10ng/mlのLIF(Chemicon LIF1010)を加えられた維持培地中で増殖させる。げっ歯類のスフィアを長期間の培養ために継代培地中に残した。
【0127】
実施例2:個々のニューロスフィアを含むヒトNSCの増殖を計測するための自動化ハイスループット法
実施例1に記載される様に、維持培地+LIF中でヒト神経幹細胞(hNSC)を増殖させる。2回の切断の間で90°回転させて200μmの切断間隔でセットされたMcIlwein製の組織チョッパー(Tissue Chopper)を用いて正確に2回切断し、続いて45°回転させて第3の切断をすることを含む手動の切断後ちょうど3日間ニューロスフィアを培養する。これにより、0.02mm2〜0.6mm2の領域を有するニューロスフィアの約24%を有する具体的なサイズ範囲がもたらされ、マルチウェルプレート(384又は1536ウェル)中にプレートすることを可能にする。
【0128】
例えば、手動切断後3日目に、ニューロスフィアをゆっくり攪拌して、等しく分配されたニューロスフィアを有する懸濁液を得て、そして滅菌ピペットを用いて少量(例えば10μl)の溶液を、各ウェルが、0.02〜0.6サイズ範囲の1以上のニューロスフィアを含むように、透明底の384ウェルプレート(例えば、Costar3712)の各ウェルへと移した。次に維持培地を加えて、各ウェルを固定体積(例えば、30μl)にし、そして1以上の試験薬剤を割り当てられたウェルに加える。典型的に試験薬剤は、4回試験され、そしてある濃度範囲であった。対照ウェルは、維持培地+LIFを含む陽性対照、及びEGF/bFGFを含まない維持培地+LIFを含む陰性対照を含む。所定の期間プレートを5%CO2で37℃にてインキュベートした。
【0129】
処理量を増加させるためのアッセイの自動化の例として、ウェルの画像を、IN Cell Analyzer 1000(商標)プレートリーダー並びに各ニューロスフィアの直径を計測するようにカスタマイズされたIN Cell Developer Toolbox(商標)ソフトウェアを用いて撮影された。このハイスループットアッセイにおいて、画像は、明視野として撮影され、その結果、ニューロスフィアの全体は、マルチウェルプレート(384又は1536ウェル)における小さいウェル[捕捉視野;選択されたスフィア;計測;数日/数週にわたる繰り返す]と小さい倍率(最大で2×〜4×の倍率)の組合せを用いることを通して捕捉されうる。重要なことは、細胞分析機が、ウェルにより規定される領域の画像を捕捉するように用いられ、続いて当該領域におけるニューロスフィアが同定され、そして計測される。これは、多くの日数又は多くの週のあいだ繰り返されてもよく、その結果各ウェルにおける同じニューロスフィアが長い時間にわたり計測された。
【0130】
必要とされる撮像を可能にするために必須の焦点化(倍率)及び明視野条件にかけられるマルチウェルプレートとして、Costarブラック滅菌組織培養処理された384ウェルプレート(カタログ番号3712)が挙げられる。複数の計測は、所定のインキュベート時間にわたり行うことができる。ニューロスフィアが数日よりも長くインキュベートされるならば、維持培地が新たな溶液と置換される。以下の式:
[(時間0での領域)‐(時間Xでの領域)/時間0での領域)*100]
を用いて基線を超える変化の割合(%)としてデータを典型的に表現する。化合物、タクリンは、図6に示されるようにニューロスフィアの成長を促進させた。
【0131】
実施例3:ヒトニューロスフィアの単層培養への移植
ヒト神経幹細胞(hNSC)は、実施例1に記載される様に維持培地中でニューロスフィアとして増殖する。当該細胞は、組織チョッパー(McIllwain Instruments)上で200μmのスフィア直径へと機械的に切断することにより、7〜14日毎に継代され、そして3〜4日毎に半分の培地を新たな培地へと置換することにより培地交換した。ニューロスフィアをACCUTASE(商標)(酵素の組合せ、リン酸緩衝生理食塩水、及びフェノールレッド、Innovative Cell Technologies製、San Diego)で酵素処理するか、又はトリプシン(Worthington Biochem LS003707)により切断した後に接着単層培養へと移された。
【0132】
簡潔に記載すると、ニューロスフィアは、エッペンドルフチューブへと移され、1分間静置させ、そして予め37℃に暖められたACCUTASE(登録商標)で10分間処理した。ニューロスフィアをP200チップで約20〜30回ゆっくりトリチュエーションすることにより解離させた。200gで2分間遠心した後に、細胞は次に維持培地(30%Hams F12(Gibco 11765-062)、70% DMEM(Gibco 11965-118)、1%PSA(Gibco-BRL15420-062)、1%N2(Gibco-BRL 17502-048)、20ng/mlのEGF(Sigma E9644))で洗浄し、そしてヘモサイトメーターで計数し、そしてトリパンブルー(Sigma)を用いて生存度を評価した。細胞を10μg/mlポリ-L-リジン(Sigma P5899)及び50μg/mlのマウスラミニン(L2020)で被膜された表面上に蒔く。
【0133】
接着性hNSCの継代及び長期間の増殖は、30%Hams F12(Gibco 11765-062)、70%DMEM(Gibco 11965-118)、1%PSA(Gibco- BRL 15420-062)、1%N2(Gibco-BRL 17502-048)、20ng/mlのEGF(Sigma E9644)、10ng/mlのLIF(Chemicon LIF1010)、20ng/mlのbFGF(R及びD 233-FB)並びに5μg/mlのヘパリン(Sigma H3149)を含む培地を用いて達成された。接着性の細胞は、暖めたACCUTASE(商標)中で細胞が剥がれるまで一時的にインキュベートし、そして当該細胞を維持培地で洗浄することにより細胞を回収し、続いて1000rpmで3分間遠心することにより、2〜3日毎に継代を行った。細胞を計数し、そして10pg/mlのポリ-L-リジンと50μg/mlのマウスラミニンで皮膜された細胞上に蒔いた。これにより、合成培地中の特定の因子への曝露、並びに合成支持体上での培養に基いて単層としてヒト神経幹細胞を安定的に培養することが可能になる。これは、単層形態で細胞の継代を許容し、その結果幹細胞の性質が保存される。
【0134】
単層として培養されたNSCの複数の細胞系列へと分化する能力は、以下の特定の細胞運命を促進する様々な薬剤へと晒すことを介して確認されうる。NSCが得られ、96ウェルプレート中に蒔かれ、そして試験培地がEGF又はbFGF(分裂促進因子を含まない試験培地)を含まないことを除いて、上で記載される試験化合物で処理される。或いは、開始試験培地は上で記載されるとおりであるが、試験培地は、所定の期間の後、例えば4日目で、分裂促進因子を含まない試験培地と交換される。以下の対照が含まれる:対照1:分裂促進因子を含まず、10μMのDHEAを含む試験培地(神経分化についての陽性対照);対照2:EGF及びbFGFを含む試験培地(陰性対照);対照3:分裂促進因子を含まず、50ng/mlのBMP-2及び0.5%FBSを含む試験培地(星状細胞分化についての陽性対照);並びに対照4:分裂促進因子を含まず、2ng/mlのIGF-1を含む試験培地(オリゴデンドロサイト分化についての陽性対象)。
【0135】
上に記載される様にプレートをインキュベートし、洗浄し、そして固定した。固定された細胞を細胞型特異的抗体で染色する。このような抗体の例として、GFAP(星状細胞)、TUJ-1及びNF-200(ニューロン)、及びO1及びO4(オリゴデンドロサイト)が挙げられる。これらの複数の神経細胞系列(細胞型)へと分化する能力が確認された(データ未掲載)。このことは、単層培養において分化するNSCの特徴が保持又は維持されることを反映する。
【0136】
実施例4:単層培養を用いた自動化増殖(成長又は栄養)アッセイ
実施例2において記載される様に、滅菌、組織培養処理された透明底の96ウェルプレート(例えばCostar3712)を、10μg/mlポリL-リジン及び50μg/mlのマウスラミニンで被膜する。維持培地(実施例2を参照のこと)中の10〜15のニューロスフィア(100000細胞/スフィアと見積もる)をエッペンドルフチューブに移し、そして実施例2に記載される様に酵素により解離させた。約50000細胞を、100μl/ウェルでプレートした。約1時間インキュベートすることにより細胞を接着させ、そして100μl/ウェルの試験化合物を加えた。図1Aは、5個の化合物を2回試験して、8点の用量応答曲線を得る典型的な実験についてのウェルの割り当てを示す。試験培地(30% Hams F12(Gibco 11765-062)、70% DMEM(Gibco 11965-118)、1% PSA(Gibco- BRL 15420-062)、1% N2(Gibco-BRL 17502-048)、20ng/ml EGF(Sigma E9644)、10ng/ml LIF(Chemicon LIFlOlO)、20ng/ml bFGF(R及びD 233-FB)及び5μg/mlヘパリン(Sigma H3149))中でPerkin-Elmer MultiPROBE II PLUSHT EX(プロトコル8点ヒトHRC96ウェル)を用いて、化合物を調製する。
【0137】
各プレートは、試験培地(陽性対照)及び成長因子を含まない試験培地(陰性対照)を含む対照を含む。プレートを合計で7日間、37℃で5%CO2でインキュベートする。4日目に、細胞プレートを吸引し、そして新たな化合物/培地を加える。インキュベート後、ウェルを0.1Mトリス緩衝生理食塩水(TBS)で1回洗浄し、そして100μl/ウェルの固定/核染色溶液(8μg/mlのヘキスト33342及び3.7%ホルムアルデヒドを含む0.1MのTBS)で30分間室温でインキュベートした。次に細胞を0.1MのTBSで4回洗浄する。ウェルあたり又は画像(つまり、視野)あたりの細胞数を、IN Cell Analyzer1000(商標)プレートリーダー及びIN CellDeveloper Toolbox(商標)ソフトウェアを用いて計測する。非神経新生(非栄養性)及び非毒性化合物(ナルトレキソン)についての典型的な用量応答曲線を図1Bに示す。
【0138】
実施例5:単層培養を用いた自動化分化アッセイ
分化したNSCの同定、並びに実施例3に記載される単層におけるニューロン、星状細胞、及び他の細胞の相対数を手動で計数することは、通常の様式で行われうる。実施例3に記載される安定な単層NSC培養法を、場合により分化システムを小型化して用いることにより、NSCの分化についての様々な薬剤の効果を評価するハイスループット、ハイコンテントアッセイが可能である。
【0139】
濃度応答曲線形式における複数の分析を許容するアッセイの小型化を、10μg/mlのポリ-D-リジン及び50μg/mlマウスラミニンの基質で被膜された96、384、及び1536ウェルプレートを含むハイスループット・マルチウェルプレートに、約78,125細胞/cm2の具体的密度で細胞をプレートすることによって、ヒトNSCについて達成した。分裂促進因子を含まない試験培地中で細胞を培養するか、又は細胞をプレートしてすぐに本明細書に記載される分化薬剤に曝露させた。安定な分化適合性の培養物は、自動化装置(例えば非限定的な例として、Perkin Elmer Evolution P3, Perkin Elmer Multiprobe II Plus 及びBio-Tek ELx405 Select CW)を用いて使用されて、実験の開始後3〜4日の間で、50%の培地を新たに調製された培地及び分化薬剤へと取り替えた。
【0140】
得られたNSC分化の計測は、本明細書に記載される固定及び染色、そして次に自動化装置(InCell Analyzerハイスループット造影システム)を使用してウェル毎の複数の写真を複数の波長で撮ることにより行われうる。Tuj1染色された細胞の量を計測し、そしてヘキスト染色された細胞核を自動計数することを通して測定される細胞の数により割ることによって、神経分化の定量を行った。GFAP染色された量を計測し、そしてヘキスト染色された核を自動計測することを通して測定された細胞数で割ることにより、星状細胞分化の定量を行った。高濃度のセロトニン(5-HTP)を有するニューロンへのNSCの分化の増加を示す濃度応答曲線を図4Aに示す。星状細胞又はオリゴデンドロサイト分化についての薬剤の影響は、他の細胞型特異的抗体を用いて同様の様式で測定できる。この抗体の例として、GFAP(星状細胞)、NF-200(ニューロン)、及びO1及びO4(オリゴデンドロサイト)が挙げられる。
【0141】
実施例6:in vitroにおけるげっ歯類遺伝子受容体アッセイ
げっ歯類神経幹細胞(rNSC)をbFGFを含む維持培地(30% Hams F1 (Gibco 11765-062)、70% DMEM (Gibco 11965-118)、1% PSA(Gibco- BRL 15420-062)、1% N2(Gibco-BRL 17502-048)、20ng/mlのbFGF(R及びD 233-FB)、1mMのL-グルタミン)中で培養する。全てのプラスチック又はガラス製品を、10μg/mlのポリ-L-オルチニン及び50μg/mlのマウスラミニンで被膜する。細胞を室温で1分間トリプシンとインキュベートし、5mlの維持培地で懸濁し、1000gで3分間遠心し、そして小孔パスツールピペットを用いてゆっくりトリチューエーションすることにより1mlの維持培地中で懸濁することによって、細胞を単離する。次に細胞をヘモサイトメーターで計数し、そしてトリパンブルー(Sigma)を用いて生存度について評価した。0.5μgレニラ・ルシフェラーゼ及び5μgのプロモーター特異的ウミシイタケルシフェラーゼからなる混合物を、緑色蛍光タンパク質(GFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)又は蛍光タンパク質DsRedに結合された遺伝子特異的プロモーターと用いる。
【0142】
GFPベクター対照を、電気穿孔の有効性を可視化するために並行して用いる。2×106細胞を典型的に各電気穿孔について用いる。懸濁された細胞をDNAと混合して、100μlの核因子溶液中でトランスフェクションした。次に混合物を電気穿孔バイアルに移し、電気穿孔し、そして細胞を500μlの維持培地と混合する。9.5mlの維持培地を電気穿孔毎に、試験される薬剤の2倍の濃度を含む維持培地と等体積になるまで加えた。37℃5%CO2中で2日間細胞をインキュベートする。当該培地を吸い取り、そして適切な量の溶解緩衝液を加える。細胞抽出物をすぐに読み取り、又は後に分析するために凍結させた。プロモーター特異的なルシフェラーゼの活性化又は蛍光タンパク質のレベルが、例えばTecan Genios Proリーダー上で分析される。
【0143】
in vitroでのヒト遺伝子レポーターアッセイ
ヒト皮質幹細胞を、EGF/LIFを伴う維持培地(30% Hams F12(Gibco 11765-062)、70% DMEM(Gibco 11965-118)、1% PSA(Gibco- BRL 15420-062)、1% N2(Gibco-BRL 17502-048)、20ng/mlのEGF(Sigma E9644)、20ng/mlのLIF(Chemicon LIFlOlO)))中で増殖させる。組織チョッパーで10〜14日毎に細胞を4つに切断して継代する。スフィア直径は、好ましくは500μmを超えることはない。古い合成培地の半分を取り除き、そして半分の新たな培地を加えることにより3〜4日毎に細胞の培地交換を行った。ニューロスフィアは場合により、実施例3に記載される様に単層として継代することもできる。細胞をプロモーター特異的遺伝子レポーターコンストラクトでトランスフェクションし、そしてプロモーター活性化のレベルを実施例6に記載されるように計測した。
【0144】
実施例8:神経新生調節のin vitroでの検出を促進するための構成因子としての神経伝達物質の使用
ニューロスフィアとして維持されるヒトNSCを、ラミニン/ポリ-L-リジン被膜プレート上で単層としてプレートし、そして当該試験培地が神経新生調節薬の検出を促進するために様々な濃度で1以上の神経伝達物質を含むように改変されることを除いて、実施例3及び4に記載される様に、増殖及び/又は分化についてアッセイする。図4Bは、NSC増殖について試験薬剤(ドーパミン)の効果の検出を促進する神経伝達物質(セロトニン又は5-HTP)についての結果を示す。増殖は、対照実験についての平均細胞強度を引かれた視野あたりの平均細胞強度として計測される。データを2個の独立した5-HTPの濃度を伴って及び伴わずにドーパミンの用量応答曲線としてプロットする。
【0145】
所定の実施例では、各曲線は、試験薬剤濃度の関数として平均細胞強度を示し、それぞれのバックグランド細胞強度レベルが差し引かれた(培地の数値のみが、ドーパミン曲線から差し引かれ、そして10μMの5-HTP及び30μMの5-HTPが、ドーパミンの存在下で対応する数値から差し引かれる)。試験薬剤(ドーパミン)は、10μMの5-HTP(丸)の存在下で実質的に高められるNSC増殖(四角)について、少量の用量応答効果を有し、そして、特に高濃度の試験薬剤で30μMの5-HTP(三角)の存在下でさらに高められる。このデータにより、神経伝達物質及び試験薬剤により神経分化の相乗的増強が示される。
【0146】
この例は、in vivoにおける脳の環境が、脳内に存在する1以上の内在性因子を用いることによりモデル化されうる。ドーパミン(in vivoにおける脳化学の成分)の存在下で細胞を培養し、そして神経分化が、実施例5に記載される様に決定された。ドーパミンのみが、NSCのニューロンへの分化を促進することはない。しかしながら、脳において通常見られる神経伝達物質、5-HTPの添加は、ドーパミンへの曝露に対し細胞を感作させて、ドーパミンに応答するNSC分化を濃度依存的に増加させる。
【0147】
実施例9:自動化NSC単層毒性/栄養性アッセイ
NSCについての薬剤の栄養効果を計測するためのハイスループット、自動化アッセイの開発は、上に記載される単層培養条件の最適化、上に記載される培養システムの小型化により提供される。
【0148】
完結に記載すると、実施例5に記載される様にヒスタミンの存在下で細胞を培養した。ビヒクルとしてDMSO中にヒスタミンを溶解し、そして細胞をビヒクルの最大濃度である0.3%に晒した。固定し、そして細胞をヘキスト染色に晒すことにより細胞数を測定した。InCell Analyzer1000を用いて自動的に画像を獲得し、そして染色された核を自動的に計数することにより細胞数を測定した。ヒスタミンは、濃度依存的な様式で細胞増殖を促進した(図8を参照のこと)。
【0149】
薬剤の毒性効果は、同様に決定することができる。上に記載される様にNSCをBAY-60-7550に晒し、そして細胞数を定量した。BAY-60-7550は、濃度依存的な様式で細胞死を引き起こし、高濃度での毒性を示した(図9を参照のこと)。
【0150】
実施例10:in vivo疾患状態のモデリング
通常の神経分化レベルを、内在的に生成される因子DHEAを用いて作り出した。これらの細胞をオピオイドモルヒネに同時に晒すことは、通常のNSC分化の阻害をもたらした。神経新生を回復させることができる薬剤を同定するためのアッセイが開発された。細胞をモルヒネ及びナルトレキソン(モルヒネ作用の阻害剤)の両方にさらした。ナルトレキソンへの曝露は、神経新生の回復をもたらした(図10を参照のこと)。上に記載される様に単層アッセイにおいて細胞をプレートし、培養し、造影し、そして分析した。
【0151】
星状細胞新生についてのアッセイは、NSCの星状細胞への分化を阻害する薬剤を同定するために使用することができる。5HT1aアゴニストであるブスピロンは、ニューロン及び星状細胞への分化を促進する(図11を参照のこと)。メラトニンは単独で、星状細胞新生に影響を示さないが、メラトニン濃度の増加をブスピロンの結果の濃度応答曲線へと加えることは、星状細胞の抑制をもたらし、一方、ニューロンへの分化が保存される。上に記載される様に細胞をプレートし、培養し、造影し、そして分析した。
【0152】
特許、特許出願、及び刊行物を含む本明細書に引用される全ての参考文献は、具体的に援用されていてもいなくとも、その全てを本明細書に援用される。
簡単な開示が十分に提供されたが、同じことが、開示の本質及び範囲から逸脱することなく、かつ過度の実験をすることなく、同等のパラメーター、濃度、及び条件の範囲内で行われうるということが当業者により認められよう。
【0153】
本開示が、具体的実施態様に関して記載された一方、さらに改変することができるということが理解されよう。本出願は、本開示が属する技術分野に慣用されるか又は知られており、かつ本明細書において記載された本質的特徴に適用されうるそうした本開示からの逸脱を含む。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】図1Aは、培養液中でNSCの増殖について1以上の試験薬剤の効果を計測する一般的な実験の96ウェルプレートについてのウェルの割り当てを示す。図1Bは、化合物(ナルトレキソン)についての一般的な用量-応答曲線を示し、対照条件下でアッセイされた場合、毒性又は増殖性を引き起こすことはない。当該化合物は、こうしてある濃度範囲では細胞に対して毒性でも栄養性でもない。
【図2A】図2Aは、神経細胞系に沿った培養ヒト神経幹細胞の分化についての、ドーパミン(黒四角)の様々な濃度の効果を示す用量応答曲線である。バックグランドの培地の値が引かれ、そしてデータは、神経陽性対照に対して標準化される。ドーパミンは、1μM以上の濃度で神経分化について少しの効果を発揮する。
【図2B】図2Bは、構成因子の存在下及び不存在下の両方で、神経細胞系に沿って、培養ヒト神経幹細胞の分化に対する様々な濃度の試験薬剤(アンフェタミン)の効果を示す用量依存曲線である。培地のバックグランド値が引かれ、そしてデータは神経陽性対照に対して標準化される。アンフェタミン自体(黒四角)は、試験された濃度範囲(最大100μM)内で神経分化について有意な効果を有さない一方、アンフェタミンと構成因子として10μMのドーパミンの組合せ(黒丸)は、有意に神経分化を高めた(約30μMのEC50)。
【図2C】図2Cは、構成因子の存在下及び不存在下の両方における神経細胞系に沿った培養ヒト神経幹細胞の分化についての様々な濃度の試験薬剤(メチルフェニデート)の効果を示す用量応答曲線である。培地のバックグランド値が引かれ、そしてデータは神経陽性対照に対して標準化される。メチルフェニデート自体(黒四角)は、約1μMより高い濃度で神経分化について少しの効果しか有さない一方、メチルフェニデートと構成因子として10μMのドーパミンの組合せ(黒丸)は、試験されたメチルフェニデートの濃度範囲にわたって(約3nM〜約10μM)有意に神経分化の程度を高めた(約30μMのEC50)。
【図3A】図3Aは、神経細胞系に沿った培養ヒト神経幹細胞(hNSC)の分化についての神経伝達物質であるノルエピネフリンの様々な濃度の効果を示す用量応答曲線である。培地のバックグランド値が引かれ、そしてデータを神経陽性対照に対して標準化する。データを2個の独立した実験、実験1(黒四角)及び実験2(黒丸)について示す。ノルエピネフリンは、平均約4μMのEC50のマイクロモル濃度で神経分化を高めた。
【図3B】図3Bは、神経細胞系に沿った培養ヒト神経幹細胞(hNSC)の分化についての神経伝達物質であるノルエピネフリンの様々な濃度の効果を示す用量応答曲線である。培地のバックグランド値が引かれ、そしてデータを星状細胞陽性対照に対して標準化する。データを2個の独立した実験、実験1(黒四角)及び実験2(黒丸)について示す。ノルエピネフリンは、試験された濃度範囲(約0.01μM〜約10μM)内で星状細胞の分化に影響を与えなかった。
【図4A】図4Aは、神経細胞系にそった培養ヒト神経幹細胞(hNSC)の分化についてのセロトニン前駆体5‐ヒドロキシLトリプトファン(5‐HTP)(黒丸)の様々な濃度の効果を示す用量応答曲線である。培地のバックグランド値が引かれ、そしてデータを神経陽性対照に対して標準化する。5‐HTPは、約4μM以上の濃度で神経分化を有意に高める一方、低い濃度では有意な効果を有さない。
【図4B】図4Bは、構成因子の存在下及び不存在下の両方で、神経細胞系にそった培養ヒト神経幹細胞(hNSC)の分化についての試験薬剤(神経伝達物質であるドーパミン)の様々な濃度の効果を示す用量応答曲線である。培地のバックグランド値が引かれ、そしてデータを神経陽性対照に対して標準化する。ドーパミン自体(黒四角)は、試験された濃度範囲内(約0.01μM〜10μM)内で神経分化について弱い効果しか有さない一方、ドーパミンと、「構成因子」として5‐HTPの10μM(黒丸)又は30μM(黒三角)のいずれかの濃度との組合せは、神経分化を有意に高め、EC50値は約3nM〜約10μMであった。
【図5】図5は、第二因子の存在下及び不存在下の神経細胞系に沿った培養ヒト神経幹細胞(hNSC)の分化についてのAMPAの様々な濃度の効果を示す用量応答曲線である。培地のバックグランド値が引かれ、そしてデータを神経陽性対照に対して標準化される。AMPA自体(黒四角)は、試験された最も高い濃度(約30μM)で神経分化について少しの効果しか与えなかった一方、AMPAと10μMの向知性薬M6、又はシクロ-(Pro-Gly)(黒丸)は、試験されたAMPA濃度の範囲を通して神経分化の有意に高いレベルを導いた(約3nM〜約10μM)。
【図6】図6は、ニューロスフィアにおけるタクリンがNSC増殖を促進したことを示す。
【図7】図7は、DHEAが、96ウェルプレートで単層として培養されたヒトNSCの分化を促進することを示す。
【図8】図8は、ヒスタミンが96ウェルプレートで単層として培養されたヒトNSCの高い細胞増殖を促進することを示す。
【図9】図9は、PDE2阻害剤であるBAY-60-7550が、96ウェルプレートで単層として培養されたヒトNSCにおける毒性を誘導することを示す。
【図10】図10は、ナルトレキソンが、NSC神経分化のオピオイド誘導性阻害を回復させることを示す(黒丸は、DHEAを陽性対照として処理した細胞から得たデータを表す;黒三角は、ナルトレキソン及びモルヒネの両方で処理された細胞からのデータを示し;白三角は、モルヒネのみで処理された細胞からのデータを示す)。モルヒネと合わせてナルトレキソンが存在することは、陽性対照のレベルに近いレベルにまで細胞分化を回復させる。
【図11】図11は、ブスピロンとメラトニンの組み合わせが、星状細胞への分化を阻害する一方(下のパネル)、神経分化をもたらす(上のパネル)ということを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経新生を調節する薬剤又は条件を同定する方法であって、当該方法が以下の:
ヒト神経細胞を含む単層細胞培養物を、試験薬剤又は条件に晒し、そして
当該細胞において神経新生を示す性質を計測した後に、当該細胞において神経新生を調節するものとして当該試験薬剤又は条件を同定する
を含み、ここで当該神経細胞が場合によりヒト神経幹細胞(NSC)を含む、前記方法。
【請求項2】
前記曝露、及び場合により前記同定が、EGF、bFGF、FGF、VEGF、LIF、モノアミン、又は神経伝達物質の存在下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記神経新生の調節が、分裂している神経細胞の集合における変化により示される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記神経新生の調節が、前記神経細胞における1以上の遺伝子の発現の変化により示される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞培養物が、NSCを含み、そして神経新生の調節が、当該培養物中でのNSCの集合の変化により示される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記神経新生の調節が、当該培養物におけるニューロン又は星状細胞の集合の変化により示される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記曝露が、第二薬剤又は条件の存在下で行われ、ここで、当該第二薬剤又は条件が前記細胞培養における神経新生の調節を高める、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第二薬剤又は条件が、場合によりセロトニン、ドーパミン、ノルエピネフリン、及び当該物質のいずれかのアナログ、代謝物、又はプロドラッグから選ばれるモノアミン神経伝達物質である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第二薬剤又は条件が、1以上の神経伝達物質又はモノアミンのレベル又は効果、例えばモノアミン神経伝達物質の再取り込み、を調節する薬剤である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記第二薬剤又は条件が、モノアミン受容体調節物質である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記第二薬剤又は条件がMAO阻害剤である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
毒性の低下を検出する方法であって、当該方法が以下の:
ヒト神経細胞の第一単層細胞培養物を神経新生を阻害する薬剤又は条件に晒し、そしてヒト神経細胞の第二単層細胞培養物を試験薬剤又は条件並びに神経新生を阻害する上記薬剤又は条件に晒し;そして
当該第一単層に比べて第二単層における神経新生に対する毒性の低下を計測する
を含む、前記方法。
【請求項13】
神経新生に対する毒性を低減する薬剤又は条件を、神経保護性の薬剤又は条件と同定することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
神経幹細胞を、移植に適した細胞として同定する方法であって、当該方法が、以下の:
神経幹細胞の集合から神経幹細胞の部分集合を単離し;
当該細胞の部分集合を、神経新生を調節する薬剤又は条件に晒し;そして
当該部分集合における神経新生の増加又は低下を検出する
を含み、ここで神経新生の増加が、当該神経幹細胞の集合が移植に適しているということを指し示す、前記方法。
【請求項15】
前記神経新生の増加が、部分集合において神経細胞系列又はグリア細胞系列にそって分化する神経幹細胞の集合の増加により示される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記神経新生の増加が、有糸分裂細胞の集合の増加により示される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記神経新生の増加が、神経幹細胞の数の増加により示される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
神経新生の前記増加が、星状細胞の集合の減少又は星状細胞新生の減少により示される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
移植に適した神経幹細胞の同定方法であって、当該方法が以下の:
神経幹細胞の部分集合を神経幹細胞の集合から単離し;
当該細胞の部分集合を神経新生を増加させる薬剤又は条件に晒し;そして
当該部分集合において神経新生の存在を指し示す1以上の遺伝子の発現を検出する
を含み、ここで当該発現が、当該集合由来の神経幹細胞が移植に適していることを示す、前記方法。
【請求項20】
神経新生アッセイを行う方法であって、以下の:
神経幹細胞を含む細胞の集合を試験化合物と接触させ;そして
神経新生を指し示す細胞の1以上の特徴を計測する
を含み、改善点が以下の:
当該細胞集合を神経伝達物質とさらに接触させること
を含む、前記方法。
【請求項21】
前記神経伝達物質が、場合によりドーパミン、セロトニン、又はノルエピネフリンから選ばれるモノアミンである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
神経新生活性について試験化合物をアッセイする方法であって、当該方法が以下の:
神経伝達物質を含む増殖培地の存在下で、神経幹細胞を含むin vitro細胞集合を試験化合物と接触させ;そして
当該神経幹細胞における神経新生を計測する
を含む、前記方法。
【請求項23】
前記神経伝達物質が、場合によりドーパミン、セロトニン、又はノルエピネフリンから選ばれるモノアミンである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記計測が、当該神経幹細胞の増殖を検出することを含む、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
神経新生を調節する薬剤又は条件を同定する方法であって、当該方法が以下の:
少なくとも約0.2mm2〜約0.6mm2の断面領域を有するニューロスフィアを、試験薬剤又は条件へと晒し;そして
当該細胞における神経新生を指し示す性質を計測した後にニューロスフィアにおける神経新生を調節する試験薬剤又は試験条件を同定する
を含む、前記方法。
【請求項26】
単離されたニューロスフィアの性質がニューロスフィアの1以上の寸法を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ニューロスフィアが、ヒト神経幹細胞を含む、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
前記計測が、試験薬剤又は条件に晒された後に、2以上の時点で行われる、請求項25〜27のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2009−500043(P2009−500043A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520437(P2008−520437)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/026677
【国際公開番号】WO2007/008758
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(508004661)ブレインセルス,インコーポレイティド (8)
【Fターム(参考)】