説明

神経検査装置を備える外科手術装置

本発明は、手術の間に、外科手術用HF発生器および電気外科手術器具を使用して神経を検査するための外科手術装置に関する。この外科手術装置には、外科手術用HF発生器からの高周波処置用電流を神経刺激用電流に変換するための変換器が備わっている。制御可能な切換スイッチによって、処置用電流あるいは神経刺激用電流が電気外科手術器具へ択一的に導かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経を検査するための外科手術装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波外科手術(HF外科手術)において、組織構造体は、外科手術装置に取り付けられた外科手術器具によって切除されるかあるいは凝固される。このような組織構造体にそれらを通る神経があるときには、外科手術器具を使用すると、神経が損傷するかあるいは破壊されるおそれがある。例えば、顔における神経が損傷すると、患者の表情が損なわれるため、このことが不快に感じられる。
【0003】
このような理由から、場合によっては組織を通る神経がある組織を切除するかあるいは凝固させるときには、切除するかあるいは凝固させる部位に検査電流を印加して関連筋肉の刺激を引き起こすことが普通である。これにより、ある筋肉領域、あるいはどの筋肉領域が影響を受けるかを知ることができ、場合によってはどこか他の箇所を切除することもある。しかしながら、この検体電流については、直流あるいは低周波交流を利用しなければならず、これは、別の神経検査設備を介して供給されるのが普通である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このことに関連して、米国特許出願公開第2006/0184164A1号公報には、相異なるモードで、具体的には組織の切除、凝固、および刺激付与のためのモードで作動することのできる外科手術器具を備えたHF外科手術装置が開示されている。このHF外科手術装置には、神経を刺激するための直流を供給する直流供給源と、組織を切除あるいは凝固させるための高周波電流を供給するHF(High−Frequency)発生器とが備わっている。このHF外科手術装置が複雑な設計をしており、また、大きい空間を占めることは、本明細書において不都合であると認識されている。
【0005】
国際出願公開第00/13600号パンフレットには、高周波電流によって神経を処置するモータのための外科手術器具を取り付けることのできるHF外科手術装置が開示されている。神経の処置とともに、神経の刺激もまた可能であり、このことは例えば、神経を処置するためにもまた使用されるHF外科手術装置の同じ外科手術器具で実行することができる。組織を処置するためのエネルギーはHF発生器によって供給され、組織を刺激するためのエネルギーはパルス発生器によって供給される。しかしながら、国際出願公開第00/13600号パンフレットに開示された外科手術器具もまた、比較的複雑であり、また、かさばっている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、ほとんど苦労することなく製造することができるともに空間節約型である外科手術装置を開示することである。この課題は請求項1に記載の外科手術装置で達成される。
【0007】
具体的には、上記の課題は、手術の間に外科手術用HF発生器および電気外科手術器具を使用して神経を検査するための外科手術装置で達成され、この外科手術装置には、外科手術用HF発生器からの高周波処置用電流を神経刺激用電流に変換するための変換器と、上記処置用電流かあるいは上記神経刺激用電流かのいずれか一方を上記電気外科手術器具へ選択的に送給するための制御可能な切換スイッチとが備わっている。
【0008】
本発明の要点は、上記変換器が、上記外科手術装置の中に設けられた外科手術用HF発生器からの高周波処置用電流を、該電流を神経の刺激のためにもまた利用することができるように変換することにある。これにより、別の直流電流あるいは神経刺激のための低周波発生器の必要性がなくなり、結果として、上記外科手術装置が従来技術から知られた装置よりもコンパクトであるように構成されるだけでなく、より簡単に製造される。このようにして、コストを節約することができる。
【0009】
上記変換器には、神経刺激用電流としての直流を発生させるための整流回路が備わっているのが好ましい。したがって、特に簡単な方法で、上記外科手術用HF発生器の高周波処置用電流を、神経を刺激するための適切な電流に変換することができる。
【0010】
さらなる好ましい実施形態では、上記変換器は、刺激用低周波電流を発生するための周波数分割器を備えており、これはまた、外科手術用HF発生器の高周波処置用電流を神経の刺激のために適切な電流に変換するための複雑でない設計により、特に簡単な可能性を示す。
【0011】
上記変換器には、神経刺激用電流の時間的に規定されたパルスあるいはパルスシーケンスを作成するためのパルス変調ユニットが備わっているのが好ましい。それによって、適切な刺激パターンを作成することができる。
【0012】
好ましい実施形態では、上記変換器には、神経刺激用電流の定電流強度を発生するための定電流源が備わっている。この展開は、再現可能な刺激を発生させるために適している。
【0013】
上記定電流源は所定の電流強度に調整することができるのが好ましい。これにより、上記変換器の、人体の内部における相異なる組織への適用とその相異なる電気抵抗値への適用とが可能になる。
【0014】
好ましい実施形態では、上記変換器には、規定の神経刺激用電流パラメータを発生させるために外科手術用HF発生器の出力電流パラメータと電圧パラメータとを調整することができるような制御方法で外科手術用HF発生器へと接続された駆動装置が備わっている。これは、規定の神経刺激用パラメータを調整するための簡単な選択肢である。
【0015】
好ましくは、上記変換器が特定のハウジングあるいはハウジングインサートの中に配置されているとともに、上記変換器をプラグ接続部などによって上記外科手術装置へ接続することができることである。この種の実施形態は、変換器を有する現存の外科手術装置を備え付けるために特に適している。
【0016】
本発明は、図面を参照することによっていっそう詳しく説明される例示的な実施形態を用いて、更なる特徴と利点とを開示することにより説明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】取り付けられた電気外科手術器具が備わった外科手術装置と処置される組織の部分との模式図を示している。
【図2】図1のように取り付けられた電気外科手術器具が備わった外科手術装置と処置される組織との、図1から外れている外科手術装置の代替実施形態を示している。
【図3】図1から外れている変換器の代替実施形態を示している。
【図4】図1および図2のような電気外科手術器具および組織部分とともに変換器のさらなる代替実施形態を示している。
【0018】
以下の説明では、同一の参照符号が、同一および類似の作用部品のために使用されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1には、変換器20と外科手術用HF発生器10と取り付けられた電気外科手術器具4とが備わった外科手術装置が示されている。電気外科手術器具4で処置または刺激することができる組織部分2もまた示されている。
【0020】
外科手術用HF発生器10には、この場合には、3つの手術要素11a〜11cおよび2つの表示要素12a,12bとともにHF発振器14が備わっている。外科手術用HF発生器10は、スイッチ13によって制御することができる。スイッチ13は、外科手術用HF発生器10の外側に配置されているとともに、有線によってあるいは無線で外科手術用HF発生器10へ接続され、また、例えば、フットスイッチとして構成されている。
【0021】
外科手術用HF発生器10を特徴付ける周波数、電圧、電流強度などのようなさまざまなパラメータは、手術要素11a〜11cによって調整することができる。表示要素12a,12bは、これらの調整可能なパラメータおよび他のパラメータを表示する。
【0022】
上記HF発生器からの高周波処置用電流が、接続用ライン8を介して変換器20の変換器入力部21へ送給される。
【0023】
制御可能な切換スイッチ22の設定に応じて、高周波処置用電流は、基本的に変化しない形態(図1における切換スイッチ22の設定のように)か、あるいは、変換器回路23を経る迂回路のために変化した形態かのいずれかで、変換器20を通過する。
【0024】
変換器出力部24aが、接続用ライン8’を介して、組織2に接続された中性電極7へ接続されている。変換器出力部24bが、接続用ライン8’’を介して、活性電極6が備わった電気外科手術器具4へ接続されている。
【0025】
さらにまた、電気外科手術器具4には手術要素5が備わっており、これは、情報送信ユニット3を介して、上記スイッチを制御する切換スイッチ22へ接続されている。この接続はまた、有線接続で、あるいは、例えば赤外線接続や無線接続のような無線で構成することもできる。無線接続の場合には、変換器20および電気外科手術器具4には、関連情報の受信および送信を行う、対応した受信装置および送信装置(図示せず)が備わっている。
【0026】
さらなる情報(内部および外部の情報とは別の情報)もまた、情報送信ユニット3を介して送信することができる。例えば、変換器20における誤差が電気外科手術器具4の表示要素(図示せず)へ送信される、ということが想定される。変換器20の微調整もまた、変位可能要素あるいは枢動可能要素、例えば、周波数、電圧、電流などのようなさまざまなパラメータによって、電気外科手術器具4の手術要素5を介して行うことができる。
【0027】
変換器23には例えば、整流回路25(図2を参照)あるいは周波数分割器(図示せず)が備わっていてもよい。
【0028】
図2において、変換器回路23は、ダイオード26を有する整流回路25からなっている。また、図2において、電気外科手術器具4の手術要素5は、情報送信ユニット3を介して、切換スイッチ22へだけでなく、外科手術用HF発生器10へも接続されている。駆動装置は、所望の神経刺激用電流を発生させるために電流外科手術用HF発生器10の出力電流パラメータおよび電圧パラメータを調整することができるように、外科手術用HF発生器10を制御する。
【0029】
図1において明らかにされたように、図2においてもまた、全体構成は、2つのモジュール、具体的には外科手術用HF発生器10および変換器20から基本的に構成されている。これに代えて、変換器20が外科手術用HF発生器10の一体構成要素である場合もまた想定できる。このモジュール化設計には、市販されている外科手術用HF発生器の後付けがいっそう容易に達成できる、という利点がある。
【0030】
図3は、図2の変換器回路23の展開図を示している。整流回路25は、この場合には、ダイオード26およびコンデンサ27からなっており、定電流源30が、トランジスタ28(この場合にはpnpトランジスタ)および抵抗器29a〜29cによって公知の方法で設けられている。
【0031】
図4に示されるように、情報送信ユニット3は(図3と同様に)電気外科手術器具4の手術要素5を変換器回路23へ接続することもできるので、変換器23の調整は、電気外科手術器具4の手術要素5によって実行することができる。変換器回路23からの情報およびデータもまた、情報送信ユニット3を介して電気外科手術器具4へ送ることができる。とりわけ、所定の電流強度のための変換器回路23の調整もまた、実行することができる。
【0032】
また図4に示されたように、電気外科手術器具4と変換器回路23との間には、情報送信ユニット3を介して変換器回路23と電気外科手術器具4との双方に接続されたパルス変調ユニット31が配置されている。このパルス変調ユニット31は、神経刺激用電流の時間的に規定されたパルスあるいはパルスシーケンスを発生させるように作用する。好ましくは、手術要素5の単独駆動によって、組織が特定の(短い)時間帯だけ刺激用電流を受けるとともに電気外科手術器具4の切除あるいは凝固の手術を再設定するための手術要素5の新たな駆動が必要でないように、パルスあるいはパルスシーケンスが誘発される。
【0033】
ここで、上記のすべての部品が、単独でも、またどのように組み合わされても本発明にとって、具体的には図面に示された細部にとって、不可欠であるように権利要求されていることに留意すべきである。その修正は当業者の常識である。
【符号の説明】
【0034】
2 組織部分
3 情報送信ユニット
4 電気外科手術器具
5 手術要素
6 活性電極
7 中性電極
8 接続用ライン
10 外科手術用HF発生器
11a 手術要素
11b 手術要素
11c 手術要素
12a 表示要素
12b 表示要素
13 スイッチ
14 HF発振器
20 変換器
21 変換器入力部
22 切換スイッチ
23 変換器回路
24a 変換器出力部
24b 変換器出力部
25 整流回路
26 ダイオード
27 コンデンサ
28 トランジスタ
29a 抵抗器
29b 抵抗器
29c 抵抗器
30 定電流源
31 パルス変調ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術の間に外科手術用HF発生器(10)および電気外科手術器具(4)を使用して神経を検査するための外科手術装置であって、
前記外科手術用HF発生器(10)からの高周波処置用電流を神経刺激用電流に変換するための変換器(20)と、
前記処置用電流かあるいは前記神経刺激用電流かのいずれか一方を前記電気外科手術器具(4)へ選択的に送給するための制御可能な切換スイッチ(22)と
を備える外科手術装置。
【請求項2】
前記変換器(20)は、前記神経刺激用電流としての直流電流を発生させるための整流回路(25)を備えていることを特徴とする請求項1に記載の外科手術装置。
【請求項3】
前記変換器(20)は、低周波刺激用電流を発生させるための周波数分割器を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の外科手術装置。
【請求項4】
前記変換器(20)は、前記神経刺激用電流の時間的に規定されたパルスあるいは時間的に規定されたパルスシーケンスを発生させるためのパルス変調ユニット(31)を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の外科手術装置。
【請求項5】
前記変換器(20)は、前記神経刺激用電流の定電流強度を発生させるための定電流源(30)を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の外科手術装置。
【請求項6】
前記定電流源(30)は、所定の電流強度に調整することができることを特徴とする請求項5に記載の外科手術装置。
【請求項7】
前記変換器(20)は、規定の神経刺激用電流パラメータを発生させるために外科手術用HF発生器(14)の出力電流パラメータと電圧パラメータとを調整することができるような制御方法で、外科手術用HF発生器(10)へと接続された駆動装置を備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の外科手術装置。
【請求項8】
前記変換器(20)は、特定のハウジングあるいはハウジングインサートの中に配置されているとともに、前記変換器をプラグ接続部などによって前記外科手術装置へ接続することができるように構成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の外科手術装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2011−517596(P2011−517596A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503373(P2011−503373)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/002571
【国際公開番号】WO2009/124726
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(503053099)エルベ エレクトロメディツィン ゲーエムベーハー (50)
【Fターム(参考)】