説明

神経標的の最適化された刺激のための装置および方法

哺乳動物の体内の神経標的またはその近傍に位置づけられた少なくとも1つの微小電極を使用して該標的を刺激するために使用することが可能な好適周波数を同定する。効率的かつ効果的な刺激を確立するために、ある範囲の異なる周波数にわたって微小電極-組織界面を示す電気インピーダンス値を測定するための、インピーダンス分析器を設ける。電気インピーダンス測定値のうち好適な1つを純抵抗に最も近いものとして同定する。次に好適インピーダンス値に関連する周波数(ピーク抵抗周波数)またはその近傍で神経標的を刺激することで、最適な電荷移動、最小限の信号歪み、増加した刺激効率、および微小電極腐食の防止などの望ましい特質を促進することができる。ピーク抵抗周波数を使用して、好適パルス形状を決定することができる。ピーク抵抗周波数におけるニューロン活動および/またはインピーダンスの絶対値の微小電極測定により、標的を同定することができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本明細書に記載の装置および方法は、概して、哺乳動物の体内の組織を刺激するための導電性電極の使用に関する。より具体的には、本装置および方法は、神経標的を刺激するための導電性電極の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
今日、神経刺激は、電極を神経組織と接触するように配置することで、いくつかの疾患を処置するために有効に使用されている。一般に、神経刺激の過程で使用される医療機器は、電荷および電界のうち1つまたは複数を組織に移すことで、患者に有利である生理学的変化をもたらすか、または生理学的測定を行う。例えば、電気神経刺激を蝸牛において使用することで、可聴音によりもたらされる応答と同様の応答をもたらす。別の例としては、電極を動物の脊椎の近傍に配置し、電気パルスを発生させるように構成することで疼痛を処置する。別の例としては、電極を視床下核、淡蒼球を含む神経標的の刺激用に脳深部に配置し、電気パルスを発生させるように構成することで、パーキンソン病、本態性振戦またはジストニーなどの運動障害の症状を処置する。そのような治療はてんかんおよび他の神経障害の症状を処置することもできる。神経刺激は網膜および末梢神経系などの身体の他の部分においても使用される。
【0003】
そのような電気刺激の局在化は重要であり、治療におけるより高い効率をもたらす。電気刺激のより高度な局在化はより小さい電極を一般に必要とする。より小さい電極は、体内の生理学的流体などの電解質と接触するように配置されると、特定の電気特性を示す。
【0004】
電気刺激に使用する刺激信号はその振幅、パルス形状およびパルス周波数により完全に記述することができる。信号振幅は電圧または電流の単位で一般に測定される。パルス形状はその幾何形状およびパルス幅により一般に記述される。例えば、一般に使用されるパルス形状は、マイクロ秒などの時間単位で測定されるパルス幅を有する矩形パルスである。最後に、パルス繰り返し周波数は、電極に印加される秒当たりのパルス数を一般に記述する。例えば、幅50マイクロ秒の矩形パルスは130Hzの周波数で電極に印加することができる。有効な処置を与える振幅、パルス形状およびパルス繰り返し周波数の適当な組み合わせは一般に決定困難である。
【0005】
刺激効率を増加させるいくつかの試みがなされてきた。しかし、使用した方法は電力消費量、組織ナルコーシスに対する直接的影響を示すものであり、腐食により電極材料を潜在的に劣化させる。経験的およびシミュレーションによる方法を使用することで1kHzまたは10kHzなどの特定の周波数において刺激振幅「閾値」が発見された。閾値決定技術はPalankerらおよびJensenらが網膜刺激の場合において経験的に説明している。
【0006】
マイクロスケール電極による組織の電気刺激は、既に特定されたが適切に対処されていないいくつかの問題を提示している。第一に、微小電極と周囲組織との間の界面インピーダンスは極めて高く、通常は、直径50μmの電極について、1kHzという生物学的には相当な周波数において1MΩのオーダーである。そのような高いインピーダンスのため、活性化のために神経組織にわたって十分な電圧を得るには高い電流必要性が生じる。生理学的流体の一般に電解質の環境において電極材料は腐食しやすいため、そのような高電流は電極材料を破壊することがある。危険な毒素が組織内に放出されることがあるため、そのような腐食は望ましくない。さらに、高電流は埋め込み可能なデバイスの電池寿命を急速に減少させる。
【発明の概要】
【0007】
概要
電気ニューロン刺激に好適な周波数および/またはパルス形状および/または振幅を同定するためのシステムおよび方法が本明細書に記載される。神経標的に位置づけられる少なくとも1つの微小電極について電気インピーダンスを測定する。ある範囲の異なる周波数にわたって測定を繰り返し、電気インピーダンス測定値のうち1つを純抵抗に最も近いものとして同定する。同定されたインピーダンスが得られた測定された周波数を本明細書では「ピーク抵抗周波数」と呼ぶ。刺激信号のパラメータ、すなわち振幅、パルス形状およびパルス周波数を、ピーク抵抗周波数の特性を使用して決定およびいくつかの場合では最適化することができる。続いて、ピーク抵抗周波数またはそのごく近傍において実質的なスペクトル内容、エネルギーを有する信号を少なくとも1つの微小電極に印加することで、この周波数で組織(ニューロン)を治療的に刺激する。
【0008】
本発明の一態様は、好適パルス形状で少なくとも1つの微小電極により神経標的を刺激するためのプロセスに関する。本プロセスによれば、いくつかの微小電極の各々を通じて、いくつかの周波数の各々において、微小電極-組織界面インピーダンスを示す各電気インピーダンス値を測定する。電気インピーダンス値から、少なくとも1つの微小電極の各々についてピーク抵抗周波数を同定する。ピーク抵抗周波数の逆数未満のパルス幅を有する好適刺激パルス形状を同定する。矩形波などの単極性パルスの場合、パルス幅はピーク抵抗周波数の逆数の半分に等しいものであり得る。次に、同定された標的を、ピーク抵抗周波数とは必ずしも等しい必要はない生理学的に関連性のあるパルス周波数を使用して、好適パルス形状で刺激することができる。
【0009】
本発明の一態様は、少なくとも1つの微小電極と、インピーダンス分析器と、好適周波数検出器とを含む、神経標的を刺激するためのデバイスに関する。インピーダンス分析器は少なくとも1つの微小電極の各々と電気的に連絡しており、微小電極は神経標的に位置づけ可能である。インピーダンス分析器は、少なくとも1つの微小電極の各々について、いくつかの異なる周波数の各々において、微小電極-組織界面を示す各電気インピーダンス値を測定するように構成されている。好適周波数検出器はインピーダンス分析器と連絡しており、少なくとも1つの微小電極の各々において測定された電気インピーダンス値から各好適周波数を検出するように構成されている。少なくともいくつかの態様では、最小位相角を有するインピーダンス測定値に従って好適周波数を決定する。刺激源は少なくとも1つの微小電極と連絡しており、各好適周波数で神経標的を刺激するように構成されている。
【0010】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの微小電極で神経標的を刺激するためのプロセスに関する。本プロセスによれば、少なくとも1つの微小電極を通じて、いくつかの異なる周波数の各々において、微小電極-組織界面のインピーダンスを示す各電気インピーダンス値を測定する。好適刺激周波数を電気インピーダンス値から同定し、神経標的を好適刺激周波数で刺激する。
【0011】
本発明のさらに別の態様は、少なくとも1つの微小電極で神経標的を刺激するためのプロセスに関する。本プロセスによれば、少なくとも1つの微小電極の各々を通じて各電気インピーダンス値を測定する。電気インピーダンス測定値は、いくつかの異なる周波数の各々において微小電極-組織界面インピーダンスを示す。各電気インピーダンス値から、少なくとも1つの微小電極の各々について好適刺激周波数を同定する。少なくとも1つの微小電極の各々について、好適刺激周波数で好適刺激振幅を同定する。次に好適刺激周波数および好適刺激振幅で神経標的を刺激することができる。
【0012】
本発明のさらに別の態様は、少なくとも1つの微小電極で神経標的を刺激するためのプロセスに関する。本プロセスによれば、いくつかの微小電極の各々を通じて、いくつかの異なる周波数の各々において、微小電極-組織界面インピーダンスを示す各電気インピーダンス値を測定する。電気インピーダンス値から、少なくとも1つの微小電極の各々についてピーク抵抗周波数を同定する。各ピーク抵抗周波数を使用して好適な刺激パルス形状および振幅を決定する。パルス形状を先に記載のように決定し、その振幅はピーク抵抗周波数におけるインピーダンスの絶対値に反比例するものとして決定することができる。次に、同定された標的を、ピーク抵抗周波数または生理学的に関連性のあるパルス周波数のいずれかを使用して、好適なパルス形状および振幅で刺激することができる。
【0013】
本発明のさらに別の態様は、少なくとも1つの微小電極で神経標的を刺激するためのプロセスに関する。本プロセスによれば、いくつかの微小電極の各々を通じて、いくつかの異なる周波数の各々において、微小電極-組織界面インピーダンスを示す各電気インピーダンス値を測定する。電気インピーダンス値から、複数の微小電極の各々についてピーク抵抗周波数を同定する。各ピーク抵抗周波数から、神経標的に位置づけられるものとして微小電極のうち1つまたは複数を同定する。
【0014】
本発明の上記のおよび他の目的、特徴および利点は、同様の参照文字が異なる図面を通じて同一部分を指す添付の図面において図示される、本発明の好適な態様の以下のより詳細な説明により明らかであろう。図面は必ずしも縮尺通りではなく、代わりに、本発明の原理を図示する際に強調が加えられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】神経標的刺激器の例示的態様の機能ブロック図である。
【図2】神経標的に位置づけられた例示的微小電極構造を図示する解剖学的組織の一部の断面図である。
【図3】神経標的刺激器の例示的代替態様の機能ブロック図である。
【図4】神経刺激器の操作モードを制御するための状態機械の例示的態様の模式図である。
【図5A】埋め込み型神経標的刺激器の微小電極より得られた例示的微小電極-組織界面のインピーダンス分光法掃引から得られた絶対値および位相の結果をそれぞれ図示する。
【図5B】埋め込み型神経標的刺激器の微小電極より得られた例示的微小電極-組織界面のインピーダンス分光法掃引から得られた絶対値および位相の結果をそれぞれ図示する。
【図5C】埋め込み型神経標的刺激器の微小電極より得られた別の例示的微小電極-組織界面のインピーダンス分光法掃引より得られた絶対値および位相の結果をそれぞれ図示する。
【図5D】埋め込み型神経標的刺激器の微小電極より得られた別の例示的微小電極-組織界面のインピーダンス分光法掃引より得られた絶対値および位相の結果をそれぞれ図示する。
【図6】図6Aは、例示的微小電極の微小電極-組織界面の断面図である。図6Bは、例示的微小電極の微小電極-組織界面のインピーダンス応答に近似した例示的回路モデルである。
【図7】好適刺激周波数で神経標的を決定および刺激するための例示的プロセスの流れ図である。
【図8】刺激モードで構成されている神経標的刺激器の例示的態様の機能ブロック図である。
【図9】複数の調節可能な刺激源を有する神経標的刺激器の例示的態様の機能ブロック図である。
【図10】パルス源から刺激源信号を得るように構成されている神経標的刺激器の例示的態様の機能ブロック図である。
【図11】刺激源と少なくとも1つの微小電極との間で電気的に連絡するように位置づけ可能な帯域フィルタの例示的態様の模式図である。
【図12】バターワース設計を使用して実現される例示的帯域フィルタの代表的性能曲線のプロットを図示する。
【図13】図13Aは、フィルタリング後の例示的パルス信号およびそれから得られる例示的刺激信号のプロットを図示する。図13Bは、図13Aのフィルタリングされた信号および一連の同様にフィルタリングされたパルスのズームアウトを図示する。
【図14】パルス源より刺激源信号を得るように構成されている神経標的刺激器の例示的態様の機能ブロック図である。
【図15】ヒトに埋め込まれた例示的神経標的刺激器を図示するヒト解剖学的組織の一部の斜視図である。
【図16】神経標的刺激器の例示的態様の上面図である。
【図17】神経標的刺激器の例示的代替態様の上面図である。
【図18】神経標的の刺激に使用可能な埋め込み型微小電極を同定するための例示的プロセスの流れ図である。
【図19】神経標的刺激器の例示的代替態様の機能ブロック図である。
【図20】神経刺激器の操作モードを制御するための状態機械の例示的態様の模式図である。
【図21】神経標的の刺激に使用可能な埋め込み型微小電極を同定するための例示的代替プロセスの流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好適な態様の詳細な説明
ピーク抵抗周波数の同定は、インピーダンス分光法による単純な概念であるが、少なくともそれが未だ微小電極には適用されていないことが理由で、ニューロン刺激の分野では新しいものである。生存動物内の標的神経部位での微小電極の埋め込み後、微小電極アレイの周囲に組織反応が漸進的に形成される。組織反応が埋め込み直後のある期間内に実質的に変化し、続いてこの初期期間後に安定化することが観察された。この組織反応は個々の微小電極の電流の流れを改変する傾向がある。これは、それらの各微小環境が変動するためである。一般に、各微小電極-組織界面のインピーダンスは、微小電極のアレイの各微小電極について実質的に異なる。
【0017】
電気インピーダンス分光法と本明細書で呼ぶ技術を使用して、周囲組織を考慮した上で微小電極の電気インピーダンスが最も抵抗性が高くかつ最も容量性が低い、各微小電極に好適な周波数を同定することが可能である。この周波数またはその近傍で行われる神経部位の刺激は、信号歪みの最小化および周囲組織に対する電荷移動の最大化を促進する。信号歪みの最小化は、微小電極-組織界面の容量性成分が信号成分に最小限の影響を示すことが理由であり、電荷移動の最大化は、微小電極-組織界面が大部分が抵抗性であることが理由である。いくつかの態様では、刺激信号の各種局面を調整することができる。この周波数での刺激が生理学的に有効ではない場合、または刺激源がそのような周波数を送ることが可能ではない場合、パルスの性質、例えばその形状を代わりに最適化することができる。パルス形状をフィルタリングするか、そうでなければピーク抵抗周波数の逆数の約半分に等しいパルス幅を設定することで、ピーク抵抗周波数に近いかまたは等しい実質的なスペクトル内容を有するようにパルス形状を適応させることができる。得られたフィルタリングされた信号は歪みの低減および電荷移動の強化をもたらす。
【0018】
図1を参照すると、神経標的刺激器114の例示的態様の機能ブロック図が示されている。刺激器114は、関心対象の神経標的に位置づけ可能な少なくとも1つの微小電極115を含む。刺激器114はまた、電気インピーダンスを測定するように構成されているインピーダンス分析器116と、好適周波数検出器117と、神経標的を電気的に刺激するための刺激器118とを含む。
【0019】
インピーダンス分析器116は、電気インピーダンスを測定するための各種の公知の技術のいずれかを使用することができる。一般に、インピーダンス分析器116は、既知のまたは測定可能な性質を有する試験電気信号を微小電極-組織界面に与える。そのような性質としては電圧源の電圧レベルまたは電流源の電流レベルが挙げられる。場合によっては、試験電圧または電流は、微小電極-組織界面に印加される際に、微小電極-組織界面の物理的性質に従って感知電流または感知電圧を誘導する。インピーダンス分析器116は、試験信号対感知信号の比を形成することで、オームの法則Z=V/Iに従ってインピーダンス値を与えることができる。微小電極-組織インピーダンスZは複合量であるため、試験電気信号および感知電気信号の各々を絶対値および位相の両方を有するものとして同定する。
【0020】
操作中に、インピーダンス分析器は、少なくとも1つの微小電極115を取り囲む微小電極-組織界面の複合インピーダンスを測定する。インピーダンス分析器は、印加試験電気信号の周波数を変動させることで、複数の異なる周波数において測定を繰り返す。好ましくは、複数の周波数は、生物学的に関連性のある周波数を含む周波数範囲に及ぶ。好適周波数検出器117は、純抵抗に最も近い測定インピーダンスを同定する。ゼロに最も近い位相値を有するインピーダンス測定値を同定することで、そのような決定を達成することができる。例えば、最小絶対値相(すなわちMIN |∠Z|)を有する測定インピーダンスを同定することができる。最小リアクタンス(すなわちMIN(Im{Z}))を有するインピーダンス測定値を同定することで、そのような決定を達成することもできる。インピーダンスが純抵抗に最も近いと決定される周波数をピーク抵抗周波数として同定する。次に、刺激器118を調整することで、好適刺激周波数またはその近傍における周波数または周波数帯域において刺激信号を与える。あるいはまたはさらに、生理学的に関連性のあるパルス周波数がわかっている場合、刺激器118を調整することで、ピーク抵抗周波数に等しいかまたは近い実質的なスペクトル内容を有するパルス形状を有する刺激信号を与える。次にこの好適パルス形状を所定のパルス繰り返し周波数で送る。あるいは、生理学的に関連性のあるパルス周波数がわかっておりかつ刺激器118が所定のパルス形状を与える場合、パルス形状の時間特性を調節することで、好適刺激周波数またはその近傍において実質的なスペクトル内容を与えることができる。例えば、実質的に矩形のパルスを送る刺激器では、矩形パルスのパルス幅をピーク抵抗周波数の逆数の半分に等しくなるように調節する。次にこの好適パルス幅を所定のパルス周波数で送る。別の例としては、二相電荷平衡方形パルスを送る刺激器では、刺激パルスのパルス幅を、進みパルスであれ遅れパルスであれ、ピーク抵抗周波数の逆数の半分に等しくなるように調節する。次にこの好適パルス幅を所定のパルス周波数で送る。次に刺激信号を少なくとも1つの微小電極115に印加する。
【0021】
図2を参照すると、神経標的110に位置づけられる例示的微小電極プローブ100を図示する解剖学的組織108の一部の断面図が示されている。プローブ100は、支持構造104に沿って分布する微小電極102のアレイを含む。好ましくは、プローブ100は、微小電極102のうち1つまたは複数を神経標的110に隣接して位置づけることを可能にする形状およびサイズである。この目標に向けて、プローブの構築に使用する材料、ならびに構築の特徴、サイズおよび形状を生体適合性のために選択することができる。図示するように、微小電極プローブの1つまたは複数の微小電極112を神経標的110に接触するように位置づける。
【0022】
支持構造104はポリマー円筒などの硬質または半硬質構造であり得る。あるいはまたはさらに、構造は、微小電極102がその上に導電膜層として形成される1つまたは複数の可撓性の実質的に非導電性の層(すなわち誘電リボン)などの可撓性構造であり得る。1つまたは複数の微小電極102は、円筒状支持構造103の内部管腔を通りかつ/または可撓性でリボン様の支持構造104に沿って細長い膜層を使用して形成することが可能な1つまたは複数の導線106を通じて、電子回路(図示せず)と連絡している。
【0023】
一般に皮質の刺激のためにかつ視床下核、淡蒼球を含む神経標的の脳深部の刺激のために、微小電極を脳内に配置することができる。動物解剖学的組織のそのような部分の神経刺激のために、網膜、末梢神経系などの身体の他の部分に微小電極を配置することもできる。概して各種態様を通じて微小電極を論じるが、微小電極のサイズの上限または下限を限定する意図はない。本明細書に記載のデバイスおよび方法は概して拡張性があり、微小電極のサイズは意図される用途に従って決定される。神経学的用途のうちの少なくとも一部では、微小電極はサブミリメートルの寸法である。いくつかの態様では、微小電極はサブミクロンの寸法である。いくつかの態様では、微小電極は、約100μmの中心間間隔で直線アレイで配列される、約50μmの直径を有する平面構造として形成される。微小電極の平面構造は円、楕円、多角形などの規則的形状、不規則的形状、または規則的形状と不規則的形状との組み合わせを有し得る。
【0024】
このデバイスは、定位脳手術または内視鏡検査などの一般的な神経外科技術を使用して、標的脳構造などの神経標的近傍に埋め込み可能である。デバイスは、支持なしで、またはデバイスの外寸より小さい内寸を有するカニューレに入れて挿入可能である。次にデバイスが適切な位置になる時点でカニューレを引っ込める。あるいは、カニューレからの支持ありまたはなしで、但しデバイス内の管腔の内径より小さい外径の中心硬質ロッドによってデバイスを挿入することができる。デバイスが適切な位置になる時点で硬質ロッドまたはスタイレットを引っ込める。
【0025】
操作者は、微小電極を、その電気活性に従って神経標的(例えば脳)の特定の領域を同定するように構成されている記録ユニットに接続することができる。神経標的からの記録に使用する微小電極は、標的の刺激に使用する微小電極と同一の微小電極であり得る。あるいはまたはさらに、神経標的からの記録に使用する微小電極は、標的の刺激に使用する微小電極と分離した微小電極であり得る。記録用の微小電極は刺激用の微小電極とはサイズ、形状、数および配列のうち1つまたは複数が異なり得るため、異なる微小電極を使用する。
【0026】
1つまたは複数の相互接続リードを通じて微小電極を刺激源に接続することができる。いくつかの態様では、刺激源の少なくとも一部が体外に存在し得る。あるいはまたはさらに、刺激源を体内に完全に埋め込むことができる。刺激源の任意の埋め込み素子を密閉型の生体適合性エンベロープと共に製作しかつ/またはそれに収容する。信号源のそのような生体適合性包装は、例えば人工ペースメーカーの分野で周知である。
【0027】
刺激源は、所定の入力に従って所望の信号を生成する制御可能な信号発生器であり得る。例えば、信号発生器は、所望の出力刺激信号周波数を示す入力を受け取ることができる。そのような出力刺激信号は、パルス、電荷平衡パルス、正弦波、方形波、三角波およびこれらの基本的波形の組み合わせなどの種々の波形を有し得る。いくつかの態様では、刺激源は、微小電極部位に信号を印加するためのパルス発生器を含む。パルス発生器からの信号を、微小電極に直接接続することができ、または電子機器を使用して前処理することができる。いくつかの態様では、そのような前処理電子機器を埋め込み可能なデバイス内に組み込む。前処理電子機器は、元の信号の特定の部分をフィルタリングすることで、微小電極のピーク抵抗周波数またはその近傍にある元の信号の周波数成分のみを送信することができる。信号より多くの微小電極が存在する態様では、電子機器は微小電極のうち好ましい1つまたは複数に刺激信号を伝送することができる。
【0028】
神経標的刺激器124の例示的態様のより詳細な機能ブロック図を図3に示す。刺激器124は、関心対象の神経標的に位置づけ可能な少なくとも1つの微小電極122を有する微小電極アレイ120を含む。刺激器124はまた、電気インピーダンスを測定するように構成されているインピーダンス分析器128と、神経標的を電気的に刺激するための刺激器130とを含む。インピーダンス分析器128および刺激器の各々を微小電極アレイ120の1つまたは複数の微小電極122に電気的に結合させることができる。
【0029】
いくつかの態様では、刺激器124は、1つまたは複数の微小電極122にインピーダンス分析器128および刺激器130のうち1つまたは複数を選択的に結合させるための、図示される信号ルータ126を含む。信号ルータ126は、微小電極122のうち1つまたは複数とインピーダンス分析器128および刺激器130のうち1つまたは複数との間で電気信号を伝達するための伝送ネットワークを含み得る。例えば、信号ルータ126は、インピーダンス分析器128および刺激器のうち1つまたは複数に微小電極122の各々を接続する導電性分岐回路を含み得る。導電性分岐に沿った導電性経路を作製または破壊するために、1つまたは複数のスイッチをそのような導電性分岐回路内に含めることができる。そのようなスイッチは、インピーダンス分析器128および刺激器130のうち1つまたは複数に対する微小電極122のうち1つまたは複数の選択的相互接続を可能にする。そのようなスイッチは、微細加工リードリレーなどの微細加工スイッチのうち1つまたは複数を使用して製作することができる。あるいはまたさらに、スイッチのうち1つまたは複数をトランジスタなどの電子スイッチを使用して実現することができる。
【0030】
刺激器124は、インピーダンス分析器128、刺激器130および信号ルータ126のうち1つまたは複数と連絡しているプロセッサ132も含む。プロセッサ132は、予めプログラムされた命令に従ってインピーダンス分析器128、刺激器130および信号ルータ126のうち1つまたは複数を制御するように構成されている1つまたは複数のマイクロプロセッサを含み得る。プロセッサ132は入/出力ポート133を含み得る。そのようなポート133を使用して、予めプログラムされた命令をアップロードすること、電気インピーダンス測定値などの測定結果を得ること、ならびにインピーダンス分析器128、刺激器130および信号ルータ126のうち1つまたは複数の設定を検討することができる。プロセッサ132は、予めプログラムされた命令、測定結果、および機器設定のうち1つまたは複数を記憶するためのメモリ134とさらに連絡し得る。
【0031】
刺激器124は、微小電極選択器135、ピーク抵抗周波数検出器137、機器制御器138、およびいくつかの場合では省電力マネージャ139(透視で示す)などの1つまたは複数のさらなる機能素子を含み得る。これらのさらなる機能素子135、137、138、139のうち1つまたは複数は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはハードウェア、ファームウェアおよびソフトウェアのうち1つもしくは複数の組み合わせで実現可能である。例示的態様では、これらのさらなる機能素子135、137、138、139の各々を、マイクロプロセッサ132上で動くプロセスとして実現する。1つまたは複数のさらなる機能素子135、137、138、139を設ける場合はその操作を含む刺激器124の操作を調和させるために実行プロセス131を設けることができる。
【0032】
メモリ134を設ける場合はそれを使用して、少なくとも1つの微小電極122の各々のインピーダンス測定値を少なくとも一時的に記憶することができる。あるいはまたはさらに、メモリ134を使用して、少なくとも1つの微小電極122の各々について決定されるピーク抵抗周波数を記憶することができる。メモリ134は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、光学ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置およびフラッシュメモリなどの1つまたは複数の記憶素子を含み得る。メモリ134は、単一素子として構成されるか、またはオンチッププロセッサメモリおよび別個のメモリチップと同様に分散型とすることができる。
【0033】
刺激器124は、インピーダンス分析器128、刺激器130、信号ルータ126およびプロセッサ132のうち1つまたは複数に電力を与えるための電源136も含む。いくつかの態様では、電源136は動物体内に埋め込み可能である。あるいはまたはさらに、電源136の少なくとも一部は体外に存在し得る。電源136は蓄積コンデンサなどの電気蓄積素子を含み得る。あるいはまたはさらに、電源136は電池などの電気化学蓄積素子を含み得る。あるいはまたはさらに、電源136は磁気誘導に基づく電気機械的電力変換素子を含み得る。電源136は整流、調節および濾波のうち1つまたは複数を実現するように構成されている電力調整回路も含み得る。いくつかの態様では、電源は充電式である。
【0034】
いくつかの態様では、プロセッサ132は図4に図示する例示的状態機械などの状態機械を実現する。状態機械を使用して図3に関して記載の刺激器124の異なる操作モードを選択することができる。例えば第1のモードまたは状態では、刺激器124は微小電極アレイ120を通じて電気インピーダンス値を測定するように構成されている。このモードでは、プロセッサ132は、インピーダンス分析器128および信号ルータ126が、インピーダンス分析器128を1つまたは複数の微小電極122のうち選択された1つと電気的に連絡するように配置することを可能にする。第2のモードまたは状態では、刺激器124は微小電極アレイ120の微小電極122のうち1つまたは複数についてピーク抵抗周波数を決定するように構成されている。第3のモードまたは状態では、刺激器124は、各ピーク抵抗周波数に調節した微小電極122のうち1つまたは複数で神経標的を刺激するように構成されているか、または該ピーク抵抗周波数により決定される好適パルス形状で刺激するように構成されている。例示的状態機械の第3のモードでは、プロセッサは刺激信号の印加前にインピーダンス分析器128を動作不能にしかつ刺激器130を動作可能にする。
【0035】
インピーダンス測定結果を、測定されたインピーダンスの絶対値140を図示する図5Aおよび測定されたインピーダンスの位相144を図示する図5Bに示す。特に、インピーダンス分光法掃引により得られる絶対値および位相の結果を、例示的微小電極-組織界面について図示する。絶対値および位相は一緒になって、複合インピーダンス値を表すフェーザ、すなわち測定電圧フェーザ対測定電流フェーザの比を記述する。あるいは、同一の複合電気インピーダンスを異なる形で、例えば実数値(すなわち抵抗)と虚数値(すなわちリアクタンス)との組み合わせとして表現することができる。あるいはまたはさらに、アドミタンス分光法掃引を同一の微小電極-組織界面について得ることができる。アドミタンスは本質的にインピーダンスの逆数であり、実数部はコンダクタンスを反映し、虚数部はサセプタンスを反映する。ピーク抵抗周波数は、純コンダクタンスに最も近いアドミタンスに関連する周波数である。例示的態様はインピーダンスに関するものであるが、限定的であるようには意図されていない。すなわち、本明細書に記載の方法およびデバイスを、本発明の範囲より逸脱することなくアドミタンスを測定するために実現する可能性がある。
【0036】
周波数下限141と周波数上限143との間に規定された周波数範囲にわたって分布するいくつかのサンプル周波数について電気インピーダンス分光法掃引を行う。隣接する周波数サンプル間の周波数間隔は、一定であり得る(例えばサンプル数-1で割った周波数範囲)か、またはサンプルの周波数に従って変動し得る。いくつかの態様では、隣接する周波数サンプル間の周波数間隔をサンプルの周波数の常用対数に従って決定する。例示的インピーダンス分光法掃引を1つの微小電極部位において100Hz〜1MHzで行った。この掃引は、選択される神経標的に応じて神経学的に関連性のある周波数範囲を含む。いくつかの態様では、周波数範囲を約100Hzまたはそれ未満〜約10kHzで選択することができる。他の態様では、この範囲の上に、下にまたは上下に拡大し得る異なる周波数範囲を使用する。あるいはまたはさらに、選択される周波数範囲は本明細書に示す例示的範囲より狭いことがある。測定インピーダンスの絶対値|Z|は両対数スケールで図示され、100Hzでの約6kΩ〜1MHzでの800Ωで変動する。測定インピーダンスの位相∠Zは同一の周波数範囲にわたって図示され、約-80°〜約-15°の範囲である。位相は負であり、容量性リアクタンスを示唆している。
【0037】
例示的測定結果では、位相角の絶対値の最小値(すなわち0°に最も近い位相角)は約20kHzにおいて生じる。位相角の絶対値は20kHzより高いおよび低い周波数で増加する。したがって、20kHzでのインピーダンス値(すなわち|Z| = 5kΩ、∠Z = -15°)は、それが最小のリアクタンスを有することから、測定値のうち純抵抗に最も近いインピーダンス値を表す。本明細書ではピーク抵抗周波数149と呼ぶ、この測定値が生じる周波数は、約20kHzである。各微小電極部位は異なる特性を一般に示すため、微小電極のうち1つまたは複数について異なるピーク抵抗周波数が得られることがある。
【0038】
図3を再度参照すると、ピーク抵抗周波数検出器137は、インピーダンス分析器128からインピーダンス測定値を受け取り(これらの値はメモリ134がその中に格納されている場合はそこから読み取ることができる)、これらの値から、純抵抗に最も近いと決定される測定インピーダンスに関連するピーク抵抗周波数を同定する。少なくとも1つの微小電極122の各々のインピーダンス測定値を、各インピーダンス分光法掃引について少なくとも測定複合インピーダンス位相角およびその関連周波数を含む、表などの適当なデータ構造でメモリ134に記憶させることができる。単純な探索または比較操作を記憶データに対して行って、最小絶対値を有する位相角を同定することができる。この値に関連する周波数が、同定されたピーク抵抗周波数である。
【0039】
実行プロセス131は、機器制御器138を通じて刺激器124を開始させることで、選択された少なくとも1つの微小電極122についてピーク抵抗周波数またはその周辺において刺激信号を与える。この周波数でのみ刺激するか、またはこの周波数に非常に近い帯域幅を有する周波数成分を有する信号で刺激することで、選択された少なくとも1つの微小電極122について最適化された組織刺激が達成可能である。最適化された組織刺激は、最小限の信号歪みで、組織に対する最適な電荷移動を一般に可能にする。各微小電極部位は異なる特性を一般に示し、異なるピーク抵抗周波数を有する。
【0040】
あるいはまたはさらに、複合インピーダンスを使用して、刺激器により印加される刺激の閾値または信号振幅レベルを設定することができる。そのような好適な閾値または信号振幅レベルは、その周波数で周囲組織を刺激するために最も適応したものとして選択することができる。例えば、ピーク抵抗周波数での組織抵抗が20kΩであることがわかった場合、刺激器は刺激信号振幅を調整することで、組織に送信される信号を最適化することができる。例えば、組織抵抗が比較的小さい場合、刺激器は刺激振幅を低下させることで電池寿命を節約するかまたは損傷を限定することができる。組織抵抗が大きい場合、刺激器は刺激振幅を増加させることで、細胞刺激に必要である適切な閾電位に到達することができる。刺激信号振幅レベルと測定組織抵抗との間の関係はオームの法則に従って決定することができる。同一組織抵抗での印加電流の増大は微小電極-組織界面における電位の増加をもたらす。
【0041】
あるいはまたはさらに、複合インピーダンスを使用して、刺激器により印加されるパルス形状を設定することができる。そのような好適パルス形状は、生理学的に関連性のあるパルス周波数で周囲組織を刺激するために最も適応したものとして選択可能である。例えば、ピーク抵抗周波数が20kHzであることがわかった場合、刺激器は、方形パルスなどの所定の単極性パルス形状を、ピーク抵抗周波数の逆数の2分の1に等しいパルス幅を有するように調整することができる。この場合はパルス幅を25マイクロ秒に調整する。このパルス幅を有する方形パルスはピーク抵抗周波数において実質的なスペクトル内容を有する。
【0042】
別の例としては、ピーク抵抗周波数が20kHzであることがわかった場合、刺激器は、正弦波パルスまたは電荷平衡パルスなどの所定の二極性パルス形状を、ピーク抵抗周波数またはその近傍において実質的なスペクトル内容を有するように調整することができる。最適化されたパルス形状は、最小限の信号歪みで、組織に対する最適な電荷移動を一般に可能にする。各微小電極部位は異なる特性を一般に示し、異なるピーク抵抗周波数を有し、したがって異なる好適パルス形状を必要とし得る。
【0043】
あるいはまたはさらに、複合インピーダンスを使用して、既存の刺激器により印加されるパルス形状をフィルタリングすることができる。そのような好適パルス形状は、生理学的に関連性のあるパルス周波数で、または刺激器が送ることができる周波数で、周囲組織を刺激するために最も適応したものとして選択可能である。例えば、ピーク抵抗周波数が20kHzであることがわかった場合、フィルタリング機構を使用して、単極性方形パルスなどの所定のパルス形状(例えば100マイクロ秒幅パルス)を、ピーク抵抗周波数において大きいスペクトル内容を有するように再形状化することができる。最適化されたパルス再形状化は、最小限の信号歪みで、組織に対する最適な電荷移動を一般に可能にする。各微小電極部位は異なる特性を一般に示し、異なるピーク抵抗周波数を有し、したがって異なる好適パルス形状を必要とし得る。例示的態様では矩形パルスを論じているが、三角形、のこぎり形、台形、正弦形、二乗余弦形などの他のパルス形状が使用可能であるということが想定される。いくつかの態様では、パルスそれ自体の形状をフィルタリングすること、例えば矩形パルスを台形パルスに変化させることができる。
【0044】
図6Aを参照すると、例示的微小電極-組織界面の断面図が、脳組織内に埋め込まれている微小電極について図示されている。隣接して埋め込み物を取り囲む被包層が、埋め込み型デバイスと脳組織塊との間に示される。一般に、生物学的組織は、神経刺激装具などの埋め込み型デバイスに応答して反応する。組織反応は、装具の埋め込み直後に開始し、初期反応期間にわたって続き、その後組織反応は速度低下するかまたは実質的に完全に終了し得る。例示的脳組織-微小電極界面では、組織反応が、埋め込み後約2週間にかけて被包層内に形成されるアストロサイトおよびミクログリアの増加をもたらすことが観察された。微小電極-組織界面の電気インピーダンスが、隣接して微小電極を取り囲む組織に少なくとも部分的に依存するため、変化する被包層によるそのような変動は、測定インピーダンスの対応する変動を生じさせる。実験結果はこの初期反応期間中のピーク抵抗周波数の減少を示した。ピーク抵抗周波数はその時に本質的に安定化する。この変動を理解して、インピーダンス測定を定期的に、特にこの初期反応期間中に繰り返すことで、刺激周波数を調整し、それによりこの期間を通じて効率的な電荷移動を維持することができる。初期反応期間後に、インピーダンス測定を定期的に、但しより低頻度で行うことで、長期的変動を追跡し、それにより適切なピーク抵抗周波数を維持することができる。
【0045】
同等の回路モデルを使用して、電極-組織界面の挙動を緊密にシミュレートすることができる。図6Bは界面の例示的モデルを示す。例示的脳用途では、脳組織の電気インピーダンスを2つの異なる抵抗に分割することができる: (i) 埋め込み損傷および組織反応に直ちに影響されない組織を記述する、定常な変化しない抵抗を表すR、および(ii) 埋め込みによる組織反応が進行するに従って増加する、隣接して埋め込み型微小電極を取り囲む組織の抵抗を表すR被包。R組織という用語を簡潔さのために使用することができ、ここでR組織 = R+ R被包である。回路素子RCTは電荷移動抵抗を表し、これは二重層に起因し得る一定位相素子(constant phase element)CPEDLに平行して示される。CPEのインピーダンスは下記式で概算することができる。

【0046】
一定位相素子は、n値 = 1の場合はコンデンサ、n値 = 0の場合は抵抗器のように働く。回路素子C寄生は電極の絶縁材料を通じて金属トレースと電解質との間に形成される。ワールブルグインピーダンスまたはトレース抵抗性などの他のインピーダンス成分をモデルに加えることができる。しかし、図6Bに図示する回路素子は、そのような脳組織用途に適用可能な周波数範囲および電圧/電流振幅内でのインピーダンスの大部分に寄与している。
【0047】
このモデルを使用して、回路モデル素子の値を選択することでシミュレーションを行うことができる。第1の例示的モデルを以下のパラメータでシミュレートする: RCT = 500kΩ; R = 1kΩ; R被包 = 4kΩ(したがってR組織 = 5kΩ); CPEDL-T = 100nF; CPEDL-n = 0.8; およびC寄生 = 200pF。一般に、ピーク抵抗周波数は、電極-組織インピーダンスの位相が0°に最も近い周波数を発見することで決定される。図5Aおよび図5Bに示すように、この第1の例示的モデルでは、ピーク抵抗周波数は約20kHzであるとわかる。
【0048】
インピーダンスの絶対値はピーク抵抗周波数において約5kΩであるとわかるが、これはR組織 = 5kΩを選択することで予め決定された。測定を行う場合、ピーク抵抗周波数を発見するアルゴリズムは、R組織のインピーダンスの絶対値を決定する周波数を与える。この絶対値を使用して、刺激に使用する電圧または電流の振幅を設定することができる。このようにして、ピーク抵抗周波数またはその近傍における刺激に好適な振幅を決定する。
【0049】
ピーク抵抗周波数を同定するアルゴリズムを改変して不正確な結果の発生を回避するという場合があり得る。そのような場合は、RCTの位相寄与がR組織の位相寄与よりもさらにゼロに近いことがある用途に適切である。図6Bに示すものと同じ同等の回路モデルを使用して、やはり先の例示的モデルと同一のパラメータを使用するが但しCPEDL-T = 10nFとすることで、第2の例示的シミュレーションを行うことができる。このパラメータの選択により、RCTからのインピーダンス寄与が、図示例において考慮される周波数範囲である約100Hz〜約1MHzにわたってより明らかになる。図5Cおよび図5Dに示すように、改変なしのこの第2の例示的モデルでは、ピーク抵抗周波数は100Hzであるとわかる。100Hzでのインピーダンス値がゼロに最も近い位相を有するが、それは組織(すなわちR組織)に関連していないことが理由で誤った結果を表す。微小電極に送られる信号は、RCTではなくR組織が理由で、ピーク抵抗周波数またはその近傍にあるはずである。この例では、正確なピーク抵抗周波数での位相がその位相におけるピークの最大であることに留意することで、誤った結果を回避することができる。
【0050】
誤った結果を回避する別の方法は、R組織のみが最大値に実際に寄与していることがわかっている周波数範囲内でアルゴリズムを実行するというものである。この場合、正確な結果を与えるアルゴリズムの周波数範囲は1kHz〜1MHzである。あるいはまたはさらに、インピーダンスの相対ピーク抵抗値を掃引に沿って同定することができ、最高周波数を有する相対ピークをピーク抵抗周波数として選択することができる。図5Aおよび図5Bの図示例では2つの相対ピークを同定する: 約100Hzでの第1のピーク151および約60kHzでの第2の相対ピーク148'。より大きい周波数ピーク148'の選択がピーク抵抗周波数を与える。
【0051】
図7を参照すると、好適刺激周波数で神経標的を決定および刺激するための例示的プロセスの流れ図が図示される。
【0052】
操作
流れ図に記載のように、操作は、各微小電極部位について複数の異なる周波数において微小電極-組織界面の電気インピーダンスを最初に測定すること(150)を包含する。インピーダンス分析回路は周波数掃引を行い、微小電極-組織界面のインピーダンススペクトルを取り込む。標準的インピーダンス分析技術を使用する掃引周波数測定として、そのような測定を行うことができる。各微小電極部位において測定されたインピーダンス値から最も抵抗性の高いインピーダンス値を同定する(160)。インピーダンスの測定および最も抵抗性の高いインピーダンスの決定を他の電極について繰り返すことができる(170)。したがって、そのような掃引周波数測定を使用して、各微小電極部位について最適刺激周波数および/または最適パルス形状および/または最適振幅を同定することができる。その後、最も抵抗性の高い各インピーダンスに関連するピーク抵抗周波数もしくは好適パルス形状、その近傍またはその周辺に刺激源を調節することで、1つまたは複数の微小電極部位のうちの少なくとも1つについて刺激信号を発生させる(180)。あるいはまたはさらに、刺激信号を、予め設定した生理学的に決定されたパルス周波数、例えば100マイクロ秒幅パルスを伴って1秒当たり約130パルスのパルス繰り返し速度で発生させ、そのパルス形状および/または振幅をピーク抵抗周波数特性に基づいて最適化値に調節する。微小電極部位に取り付けた回路により信号を発生させることができるか、またはパルス発生器などの既存の信号源からそれをフィルタリングすることができる。次に調節された刺激信号を、本明細書にさらに記載のように、最適な刺激のために各微小電極を通じて神経標的に印加することができる(190)。
【0053】
図8を参照は、刺激モードで構成されている神経標的刺激器200の例示的態様の機能ブロック図である。刺激器200は、神経標的に位置づけ可能な微小電極アレイ206を含む埋め込み可能部分202を含む。埋め込み可能部分202は、神経標的を能動的に刺激するための信号発生デバイス208も含む。いくつかの態様では、微小電極アレイ206の1つまたは複数の微小電極の各々は専用の信号発生デバイス208と連絡している。いくつかの態様では、信号振幅、パルス形状および/またはパルス幅などの信号発生器出力の1つまたは複数の性質を改変するために信号フィルタ210を設ける。各刺激信号を、ピーク抵抗周波数に基づいて、個々の微小電極-組織界面について、最適化された周波数、パルス形状または振幅において与える。埋め込み可能部分202は電池などの電源212を含み得る。いくつかの態様では、埋め込み可能部分202は、体外ユニット204との外部連絡用に構成されている遠隔測定および制御モジュール214も含む。そのような特徴を使用して、埋め込み可能部分202を操作するための体外制御を与えることができる。
【0054】
図9を参照すると、刺激モードで構成されている神経標的刺激器220の例示的代替態様の機能ブロック図が図示されている。神経標的刺激器220は複数の微小電極222a、222b、…222n(一般に222)を含む。刺激器220は、相互接続した微小電極部位222のピーク抵抗周波数に基づく特性を有する信号を与えるように構成可能な各信号発生器224a、224b、…224nを通じて微小電極222の各々と連絡している制御回路226も含む。ピーク抵抗周波数またはその実質的に近傍において信号を生成することができる。あるいは、所定の周波数で信号を生成することができるが、ピーク抵抗周波数に等しいかまたは近いスペクトル内容を有するようにそのパルス形状を決定する。あるいはまたはさらに、信号の振幅を、ピーク抵抗周波数におけるインピーダンスの絶対値に適応させることができる。
【0055】
図10を参照すると、いわゆる伝送モードで構成されている神経標的刺激器230の別の例示的態様の機能ブロック図が図示されている。刺激器230は、神経標的に位置づけ可能な微小電極アレイ236を含む埋め込み可能部分232を含む。埋め込み可能部分232は、神経標的を能動的に刺激するために微小電極236のうち1つまたは複数に刺激信号を向けるように構成されている信号伝送回路240も含む。この態様では、別個の埋め込み可能なパルス発生器247から刺激信号を得る。パルス発生器247は、1つまたは複数の信号リードを含む相互接続ケーブル246を通じて埋め込み可能部分232と連絡している。埋め込み可能部分232は、微小電極236のうち1つまたは複数を通じた神経標的の刺激に適したパルス発生器247からの出力信号を調整するように構成されている少なくとも1つの信号調整器238も含む。埋め込み可能部分232は電池などの電源242を一般に含む。いくつかの態様では、埋め込み可能部分232は、体外ユニット234と連絡するように構成されている、埋め込み可能部分232を操作するための制御を与える遠隔測定および制御モジュール244も含む。
【0056】
既存信号のフィルタリング
いくつかの態様では、信号調整器238は、既存の信号を微小電極アレイに伝送する前にプレフィルタリングまたは利得調整する(例えば予め増幅および/または減衰させる)かそうでなければ調整する、フィルタリング回路を含む。いくつかの普及しているフィルタの選択肢としては、無限インパルス応答(IIR) フィルタなどのデジタルフィルタ、インダクタおよびコンデンサなどの、1つまたは複数の電気部品を使用する電子フィルタ、ならびに表面弾性波(SAW)デバイスが挙げられる。周知のフィルタ合成技術を通じてフィルタを好適な性能特徴を有するように設計することができる。フィルタ合成における制御可能な特徴の一部としては濾波帯域幅、コーナー周波数、通過帯域リップルおよび相対側波帯レベルが挙げられる。そのようなフィルタとしてはバターワースフィルタ、チェビシェフ1型および2型フィルタならびに楕円フィルタと呼ばれる分類が挙げられる。特定の実施形態は、アナログであれデジタルであれ、受動であれ能動であれ、ほとんど異ならない。これはどの実施形態からの出力でも所望の出力にやはり一致するためである。バンドパスフィルタの例示的態様では、以下の図11A(絶対値)および図11B(位相)に示す周波数応答は、方形波信号をプレフィルタリングすることで特定の微小電極部位のためにその周波数スペクトルの最も重要な要素を保持するフィルタを示す。フィルタの中心周波数(または通過帯域)Fcを各微小電極のピーク抵抗周波数またはその近傍において選択する。
【0057】
図11を参照すると、刺激源と少なくとも1つの微小電極との間で電気的に連絡しているアクティブバンドパスフィルタの例示的態様の模式図が図示されている。特定の抵抗器R1、R2およびコンデンサC1、C2の値を選択してアクティブフィルタの合成性能とする。図11のバンドパスフィルタの例示的性能曲線を図12に図示する。フィルタは、約600kHz〜約1.8MHzの通過帯域を、この帯域内の実質的に線形の位相応答と共に与える。
【0058】
例示的刺激信号を図13Aに図示し、この図はフィルタリングの前および後の代表的方形波信号を示す。方形波信号(破線)は、+2.5〜0で変動する振幅を、約100μ秒のパルス幅と共に有する。方形波が広帯域信号であることが一般に知られている。先に記載のように、方形波は微小電極部位に印加する前にフィルタリングする。フィルタリングプロセスは、所望の出力周波数に基づいて、方形波の周波数スペクトルの一部を選択する。ソリッド信号312は、得られたフィルタリングされた信号の時間領域表現である。図13Bは、例示的フィルタリング刺激信号のパルス列がどのようにして現れるかを示す。生理学的機構を通じてパルス周波数は決定済みである。この場合、微小電極部位のピーク抵抗周波数特性を使用して、パルス周波数ではなくパルスのみを形状化し、それにより電荷輸送を最適化しかつ信号歪みを最小化する。いくつかの態様では、例示的刺激パルスは負の振幅のパルスであり得るものであり、この場合フィルタは同等に機能し、負の出力信号を与える。
【0059】
図14を参照すると、刺激モードで構成されている神経標的刺激器250の例示的代替態様の機能ブロック図が図示されている。神経標的刺激器250は複数の微小電極252a、252b、…252n(一般に222)を含む。刺激器250は、ピーク抵抗周波数帯域フィルタ回路254a、254b、…254n(一般に254)を通じて微小電極252の各々に連絡しているルータ回路256も含む。埋め込み可能なパルス発生器258はパルス信号をルータ回路256に与える。ルータ回路256は、各ピーク抵抗帯域フィルタ回路254を通じて、選択される微小電極252のうち1つまたは複数に入力パルス信号を向ける。各ピーク抵抗帯域フィルタ回路254は、関連する微小電極252のピーク抵抗周波数に調節可能であり、この周波数は本明細書に記載の技術を使用して決定することができる。フィルタ回路254は、広帯域入力パルス信号から、各ピーク抵抗周波数を含む周波数のサブバンドを選択する。次にフィルタリングされた信号を各微小電極252を通じて神経標的に印加する。そのようなフィルタリングされたパルスの場合、パルス繰り返し周波数は必ずしもピーク抵抗周波数と同等またはその近傍ではない。パルス周波数は所定のものである。したがって、フィルタ回路は、パルス形状を、ピーク抵抗周波数に等しいかまたは近い主なスペクトル内容からなるように再形状化するのみである。例示的な埋め込み可能なパルス発生器としては、ミネソタ州Medtronic Corpより市販されているMedtronic SOLETRA(商標)神経刺激器が挙げられる。
【0060】
ヒト解剖学的組織の一部の斜視図を図15に図示するものであり、この図は脳深部刺激用に位置づけられる例示的神経標的刺激器の埋め込みを示す。微小電極プローブ264をヒト脳272内の神経標的270に位置づける。電子機器268の一部を脳の外側に埋め込むことで、脳内への侵襲を最小化しかつ/またはそれに対する無線アクセスを容易にすることができる。図示するように、パルス発生器262などの電子機器の別の部分を胸腔内などの対象の身体の遠隔部分に埋め込む。ケーブル266もまた対象の体内に埋め込み、電子機器268にパルス発生器262を相互接続するように構成する。
【0061】
微小電極アセンブリ320の例示的態様の上面図を図16に図示する。アセンブリ320は、細長いプローブ基材324の遠位端に沿って位置づけられた微小電極322のアレイを含む。第1の電子機器アセンブリ328を細長いプローブ基材324の近位端に位置づける。第1の電子機器アセンブリ328は、マイクロプロセッサなどの1つまたは複数の集積回路素子321と、1つまたは複数の別個の電子部品332とを含み得る。第1の電子機器アセンブリ328は、細長いプローブ基材324に沿って延びる各トレース326を通じて微小電極322の各々に相互接続している。本明細書に記載の埋め込み可能な神経刺激器の1つまたは複数の機能を実現するように電子機器アセンブリ328を構成することができる。いくつかの態様では、細長いプローブ基材は電子機器アセンブリ328の少なくとも一部も含む。
【0062】
いくつかの態様では、第1の電子回路328をケーブル334を通じて埋め込み型パルス発生器(図示せず)に接続する。いくつかの態様では、図示するように、第2の電子機器アセンブリ(または第1の電子機器アセンブリの一部)は遠隔測定アンテナなどの遠隔測定回路339を含む。例示的態様では、電子回路328、338の少なくとも一部を微小電極322に隣接して位置づけ、例えば細長いプローブ基材324により連結させる。
【0063】
機械部品
機械部品および関連する組み立てプロセスは、気密性および生体適合性の様式でアセンブリ320を収容するために役立つ。それらは既存の埋め込み可能なパルス発生器、または体外制御ユニットに対する接続も可能にし得る。体外ユニットは電力、プログラミング能力および情報検索を与えることができる。いくつかの態様では、現在利用可能な外部蝸牛刺激システムと非常に類似した形でアセンブリ320を埋め込むことができる。埋め込み可能なパルス発生器を含む態様では、それは情報を受け取るために、および埋め込み可能なパルス発生器から微小電極アレイ322に信号を伝送するように電気ユニットをプログラムするために役立つ。
【0064】
微細加工部品
本デバイスは、微細加工部品、電子部品および機械部品を組み入れることで、高度に局在化しかつ効率的な刺激を与える。微細加工部品は微小電極アレイからなる。このアレイはポリイミド、ポリウレタン、パリレンまたはポリシロキサン(シリコーン)などのポリマー材料で実現することができ、白金、白金-イリジウム、イリジウム、酸化イリジウムまたはチタンなどの高い電荷輸送能力を有する金属または金属酸化物の薄膜層またはめっき層を含む。ポリマー層および金属層は、スピンコーティング、DC/RFスパッタリング、フォトリソグラフィー、プラズマエッチング、および二酸化ケイ素またはフォトレジストなどの二次材料または犠牲材料からなるマスクによるエッチングなどの微細加工の確立された原理を使用して順次固着させ、成形することができる。金属層を成形することで、微小電極アレイ、ならびにアレイを電子機器およびハウジングに接続するトレースを作り出すことができる。ポリマー層は、トレースを互いに隔離するが埋め込み物の刺激/記録チップの構造を与えるために役立つ。そのような微細加工部品を構築する記述可能ないくつかの製作方法が存在する。
【0065】
電子部品
本デバイスの電子部品または超小型電子部品は以下を可能にする: (i) 電気インピーダンス分光法を使用して個々の微小電極部位についてピーク抵抗周波数を同定する能力; (ii) 各微小電極の特徴的ピーク抵抗周波数で刺激すること(これは信号歪みの最小化および組織に対する電荷移動の最大化を保証する); あるいは既存のパルス発生器からの信号を好適なパルス形状に再形状化すること; ならびに(iii) 微小電極アレイによる、ニューロン活動の刺激および変調、ならびにどの微小電極部位を刺激するかを選択する能力。
【0066】
別個の部品、集積回路技術、デジタル信号処理(DSP)または3つすべての組み合わせを使用して、電子機器を実現することができる。電子機器を1つのユニットに組み入れることができ、または既存の埋め込み可能なパルス発生器(IPG)との組み合わせで使用することもできる。電子機器は、IPGから微小電極アレイへの信号を適切に調整または伝送する遠隔測定プログラミングインターフェースを含み得る。
【0067】
図17を参照すると、微小電極構造の例示的代替態様の側面図が図示されている。この態様では、微小電極アレイ352より離れて電子機器アセンブリ356を位置づける。相互接続導線354の配置を通じて微小電極アレイ352を電子機器アセンブリ356に連結させる。本明細書に記載の埋め込み可能な神経刺激器の1つまたは複数の機能を実現するように電子機器アセンブリ356を構成することができる。図示するように、電子機器アセンブリ356を相互接続ケーブル360を通じて埋め込み型パルス発生器(図示せず)に接続することもできる。あるいはまたはさらに、電子機器アセンブリ356は外部遠隔測定デバイス362との連絡用の遠隔測定回路を含み得る。
【0068】
電子機器アセンブリは地電位358に対する相互接続用の接地導線を含み得る。本明細書に記載の態様のいずれかにおいて、2つ以上の微小電極(例えば隣接する微小電極)の間でインピーダンス測定および/または刺激を実現することができる。あるいはまたはさらに、1つまたは複数の微小電極と電気接地基準との間でインピーダンス測定および/または刺激を実現することができる。あるいはまたはさらに、1つまたは複数の微小電極と埋め込み可能なパルス発生器のケーシングとの間でインピーダンス測定および/または刺激を実現することができる。
【0069】
図18は、神経標的の刺激に使用可能な埋め込み型微小電極を同定するための例示的プロセスの流れ図である。神経標的部位を能動的に刺激するように決定される部位として選択することができる。種々の異なる標的部位においてニューロン活動をモニタリングし、ニューロン活動を有する標的部位を同定し、同定部位を刺激することで、これを達成することができる。
【0070】
より詳しくは、微小電極アレイを動物の体内に埋め込むことができる。微小電極アレイを神経標的区域内に少なくとも部分的に位置づけることができ、アレイの範囲は標的の領域に及ぶ。アレイは直線、曲線、平面、コンフォーマルおよび三次元などの複数の各種形態のいずれかを取り得る。微小電極アレイの各微小電極においてニューロン活動を測定する(370)。ニューロン活動が何らかの閾値レベルを超える微小電極において神経標的を同定する(375)。いくつかの態様では、ニューロン活動を後続の分析用に記録する。ニューロン活動が観察された微小電極のうちの少なくとも1つを選択する(380)。続いて、同定された神経標的を、少なくとも1つの選択された微小電極を使用して刺激する(385)。
【0071】
いくつかの態様では、微小電極選択プロセスを埋め込みに続いて1回実行する。他の態様では、微小電極選択プロセスを、標的に位置づけられる微小電極を同定するために定期的に繰り返す。神経装具は時が経つにつれて移動することがあるため、埋め込み物の任意の予測される再位置づけに適合するために十分に広がるように微小電極アレイを設計する。微小電極間の間隔は神経標的の十分な空間分解能に適合するように選択する。一部の態様では、微小電極選択プロセスを規則的に処置過程の一部として繰り返す。すなわち、刺激はニューロン活動の測定に応答して生じる。
【0072】
図19は、ニューロン活動を観察しかつ図18に関して記載の例示的プロセスなどの微小電極選択プロセスを実現するように構成されている神経標的刺激器の例示的態様の機能ブロック図である。例示的神経標的刺激器401は、図3に関して記載の例示的刺激器と本質的に同様であり、記録器440を加えたものである。能動的に刺激する部位は、その部位でのニューロン活動の存在または欠如に従って部位をシミュレートする記録モードの結果として選択する。例示的態様では、記録器を信号ルータ426を通じて微小電極422のうちの1つまたは複数に結合させる。記録器440は相互接続された微小電極の各々におけるニューロン活動を記録する。微小電極選択プロセス435は、記録されたニューロン活動を検討して、閾値を超えた活動が観察される電極を同定する。同定された微小電極をメモリ434に記憶し、信号ルータ426を通じてインピーダンス分析器428および刺激器431などの、システムの他の素子に相互接続することができる。ピーク抵抗周波数検出器437、機器制御器438、実行プロセス441および省電力機構439などの他の機能素子は本明細書に記載のように作動し得る。
【0073】
いくつかの態様では、プロセッサ432は図20に図示する例示的状態機械などの状態機械を実現する。状態機械を使用して図19に関して記載される刺激器401の異なる操作モードを選択することができる。例えば、第1のモードまたは状態では、刺激器401は微小電極アレイ420の微小電極422を通じて電気的神経活動を測定するように構成されている。このモードでは、プロセッサ432は、記録器440および信号ルータ426が、記録器440を1つまたは複数の微小電極422のうち選択された1つと電気的に連絡するように配置することを可能にする。第2のモードまたは状態では、刺激器124は微小電極422のうち1つまたは複数を通じて神経標的を示す神経活動を検出するように構成されている。標的の近くにある1つまたは複数のニューロンのシナプス電位により生成される電位などの電位に関して、神経活動を測定することができる。一般に、個々の微小電極422の測定される応答は、標的に対するその相対位置に応じて異なる。第3のモードでは、プローブ選択器435は、意図される標的または実質的にその近傍に位置づけられる微小電極422のうち1つまたは複数を同定する。プローブ選択器435は信号ルータ426との組み合わせで、同定された微小電極422を選択する。第4のモードまたは状態では、刺激器431は1つまたは複数の選択された微小電極422を使用して神経標的を刺激するように構成されている。本明細書に記載のように決定される各ピーク抵抗周波数で、または該ピーク抵抗周波数に関する最適なパルス形状で、刺激を与えることができる。例示的状態機械の第4のモードでは、プロセッサ432は刺激信号の印加前にインピーダンス分析器428を動作不能にしかつ刺激器431を動作可能にする。
【0074】
いくつかの態様では、ピーク抵抗周波数を発見するために行うものと同一の周波数掃引を使用して、解剖学的組織標的を同定しかつどの微小電極を該標的と接触するように配置するか、およびどの微小電極をそうしないかを決定することができる。その後、刺激信号を正しい微小電極のみに送ることができる。図21は、そのようなプロセスを使用する神経標的の刺激に使用可能な埋め込み型微小電極を同定するための例示的プロセスの流れ図である。神経標的部位を、そのピーク抵抗周波数によって神経標的に位置づけられるように決定される部位として選択することができる。種々の異なる標的部位においてピーク抵抗周波数をモニタリングし、比較的低いピーク抵抗周波数を有する標的部位を同定し、同定部位を刺激することで、これを達成することができる。
【0075】
インピーダンス分光法を使用して同定可能な脳の解剖学的組織区域間にはいくつかの差異が存在する。例えば、各材料の各電気コンダクタンス間の測定される差異に従って灰白質と白質との間の違いを同定することができる。また、脳の特定の区域は、埋め込み型プローブに対する例えばグリア細胞からのより実質的な組織応答を誘導し、したがって埋め込み物の周囲により密な細胞性の被覆を作り出すことがある。そのような、組織反応がより大きい区域に埋め込まれる微小電極は、より低いピーク抵抗周波数、その周波数での大きいインピーダンスの絶対値、またはその両方を登録する。標的区域がより大きい組織応答を有することがわかっている場合、正しい区域内の微小電極を適切に同定し、標的組織を刺激するようにプログラムすることができる。同様に、標的化区域が周囲領域よりも小さい組織反応を有することがわかっている場合、この区域内の微小電極はより高いピーク抵抗周波数、その周波数でのより小さいインピーダンスの絶対値、またはその両方を有する。したがって、標的化組織と接触している微小電極を同様に同定し、標的組織を刺激するようにプログラムすることができる。
【0076】
より詳しくは、図21を参照すると、微小電極アレイを動物の体内に埋め込むことができる。先に記載のように(例えば図18に関して)、微小電極アレイを神経標的区域内に少なくとも部分的に位置づけることができ、アレイの範囲は標的の領域に及ぶ。微小電極アレイの各微小電極においてピーク抵抗周波数を測定する(570)。本明細書に記載の技術のいずれかによりそのような測定を達成することができる。ピーク抵抗周波数が何らかの閾値レベル未満であると測定される微小電極においてインピーダンス分光法を使用して神経標的を同定する(575)。標的の外側にある微小電極はこの閾値レベルにおいてピーク抵抗周波数を示さない。異なる神経区域内のピーク抵抗周波数の差異は、異なる神経区域内の組織反応の程度における差異、または異なる神経区域の組織の電気的性質における差異のうち1つまたは複数に起因し得る。神経標的区域内にあると決定される微小電極のうちの少なくとも1つを選択する(580)。続いて、同定された神経標的を、少なくとも1つの選択された微小電極を使用して刺激する(585)。
【0077】
本明細書に記載のデバイスおよび方法のいずれかを使用して、パーキンソン病、本態性振戦またはジストニーなどの運動障害の症状を処置することができる。海馬を刺激する場合、そのような治療はてんかんの症状を処置することができる。本明細書に記載のデバイスおよび方法を神経刺激として使用して、網膜、末梢神経系などの身体の他の部分を処置することもできる。
【0078】
神経刺激デバイスおよび技術の各種態様を本明細書で説明した。これらの態様は例として示され、本発明の範囲を限定するようには意図されていない。さらに、説明した態様の様々な特徴を様々な方法で組み合わせて数多くのさらなる態様を作ることができるということを認識すべきである。
【0079】
本発明をその好適な態様を参照して特に示しかつ説明したが、添付の特許請求の範囲により包含される本発明の範囲より逸脱することなく形態および詳細の様々な変更を本発明において行うことができるということを、当業者は理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経標的に位置づけ可能な少なくとも1つの微小電極と、
少なくとも1つの微小電極の各々と電気的に連絡しているインピーダンス分析器であって、少なくとも1つの微小電極の各々について、複数の異なる周波数の各々において、微小電極-組織界面を示す各電気インピーダンス値を測定するように構成されている、インピーダンス分析器と、
インピーダンス分析器と連絡している好適周波数検出器であって、少なくとも1つの微小電極の各々において測定される電気インピーダンス値から各好適周波数を検出するように構成されている、好適周波数検出器と、
少なくとも1つの微小電極のうちの少なくとも1つと連絡している刺激源であって、各好適周波数で神経標的を刺激するように構成されている、刺激源と
を含む、神経標的を刺激するための装置。
【請求項2】
少なくとも1つの微小電極の各々が神経標的の細胞または細胞群の寸法に近似した寸法を有する微小電極である、請求項1記載の装置。
【請求項3】
複数の電気微小電極を含む、請求項1記載の装置。
【請求項4】
複数の電気微小電極が細長い支持構造に沿って配設されている、請求項3記載の装置。
【請求項5】
刺激源と少なくとも1つの微小電極のうちの少なくとも1つとの間で電気的に連絡している少なくとも1つの電気フィルタをさらに含む、請求項1記載の装置。
【請求項6】
少なくとも1つの電気フィルタが少なくとも1つの微小電極のうちの少なくとも1つについて各好適周波数を含むように調節可能である、請求項5記載の装置。
【請求項7】
刺激源と少なくとも1つの微小電極の各々との間で電気的に連絡している各電気フィルタをさらに含む、請求項6記載の装置。
【請求項8】
刺激源が、パルス発生器と、該パルス発生器と少なくとも1つの微小電極のうちの少なくとも1つとの間で電気的に連絡している電気フィルタとをさらに含む、請求項1記載の装置。
【請求項9】
少なくとも1つの微小電極の各々とインピーダンス分析器および刺激源のうちの少なくとも一方との間に信号経路を選択的に確立するように構成されている信号ルータをさらに含む、請求項1記載の装置。
【請求項10】
少なくとも1つの微小電極の各々と連絡しているセンサであって、ニューロン活動を示す電気信号を測定するように構成されている、センサと、
少なくともセンサおよび信号ルータと連絡している制御器であって、センサにより測定される電気信号に応答して、微小電極のうちの少なくとも1つと刺激源との間に信号経路を選択的に確立するように構成されている、制御器と
をさらに含む、請求項9記載の装置。
【請求項11】
少なくとも1つの微小電極を通じて、複数の異なる周波数の各々において、微小電極-組織界面インピーダンスを示す各電気インピーダンス値を測定する工程;
電気インピーダンス値から好適刺激周波数を同定する工程; および
好適刺激周波数で神経標的を刺激する工程
を含む、少なくとも1つの微小電極で神経標的を刺激する方法。
【請求項12】
好適刺激周波数を同定する工程が各電気インピーダンス測定値から最小の位相角を有する好適電気インピーダンス値を決定することを含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
刺激する工程が
広帯域信号を受け取ること; および
広帯域信号の、好適刺激周波数を含むスペクトルサブ部分を選択すること; および
広帯域信号の選択されたスペクトルサブ部分を使用して神経標的を刺激すること
を含む、請求項11記載の方法。
【請求項14】
広帯域信号がパルス発生器信号を含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
広帯域信号のサブ部分を選択することが各好適周波数の逆数未満のパルス幅までパルス発生器信号のパルスをフィルタリングすることを含む、請求項13記載の方法。
【請求項16】
広帯域信号のスペクトルサブ部分を選択することが広帯域信号をフィルタリングすることを含む、請求項13記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの微小電極の各々においてニューロン活動を示す電気信号を測定する工程; および
測定された電気信号に応答して、微小電極のうちの少なくとも1つと刺激源との間に信号経路を選択的に確立する工程
をさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項18】
好適刺激周波数で神経標的を刺激する工程が、少なくとも1つの微小電極のうちの1つより多くについて、各好適刺激周波数で実質的に同時に達成される、請求項11記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの微小電極を通じて、複数の異なる周波数の各々において、微小電極-組織界面インピーダンスを示す各電気インピーダンス値を測定する工程;
電気インピーダンス値から、少なくとも1つの微小電極の各々について好適刺激周波数を同定する工程; および
電気インピーダンス値から、少なくとも1つの微小電極の各々について、好適刺激周波数で好適刺激振幅を同定する工程; および
好適刺激周波数および好適刺激振幅で神経標的を刺激する工程
を含む、少なくとも1つの微小電極で神経標的を刺激する方法。
【請求項20】
好適刺激振幅を同定する工程が、電気インピーダンス値に応答して電流および電圧のうちの少なくとも一方の振幅を調整することを含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
複数の微小電極の各々を通じて、複数の異なる周波数の各々において、微小電極-組織界面インピーダンスを示す各電気インピーダンス値を測定する工程;
電気インピーダンス値から、複数の微小電極の各々についてピーク抵抗周波数を同定する工程; および
各ピーク抵抗周波数から、神経標的に位置づけられる微小電極のうち1つまたは複数を同定する工程
を含む、少なくとも1つの微小電極で神経標的を刺激する方法。
【請求項22】
好適刺激周波数で神経標的を刺激することをさらに含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1つの微小電極を通じて、複数の異なる周波数の各々において、微小電極-組織界面インピーダンスを示す各電気インピーダンス値を測定するための手段と、
電気インピーダンス値から、純抵抗に最も近い各インピーダンス値に関連する周波数である好適刺激周波数を同定するための手段と、
好適刺激周波数で神経標的を刺激するための手段と
を含む、神経標的を刺激するための装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2011−529732(P2011−529732A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521276(P2011−521276)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/052077
【国際公開番号】WO2010/014686
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(511024791)
【Fターム(参考)】