説明

神経標的を刺激するためのシステムと方法

本明細書は、特に、ヒトの耳付近の神経標的を刺激するための方法を開示する。一実施形態によれば、 デバイスは、患者の耳垂上にクリップで留められ、該デバイスは、神経刺激電極を備える。神経刺激信号は、一実施形態によれば、耳垂付近の神経標的を経皮的に刺激するように電極に印加される。生理学的パラメータは、デバイスに接続されたセンサを使用して感知される。一実施形態によれば、神経刺激信号は、感知したパラメータに応じて調整される。使用される方法は、降圧および心臓改善療法を含む、種々の治療計画である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本願は、2007年5月16日に出願された米国特許出願第11/749,500号を優先権の恩恵として主張するものであり、出願は本明細書に参照として援用されている。
(技術分野)
本開示は、概して、医療デバイスに関し、より具体的には、ヒトの耳付近の神経標的を刺激するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
神経刺激は、いくつかの研究の主題となっており、いくつかの治療に対して提案されている。自律神経系は体の生理的活性を制御し、自律神経系の緊張の平衡失調は、多くの疾患および病状に関連する。心不全中に低下した自律平衡(交感神経における増加および心臓副交感神経の緊張における低下)は、左心室機能障害および死亡率の増加に関係することが認められている。交感神経の抑制、ならびに、副交感神経の活性化は、心筋梗塞後の低下した不整脈の脆弱性に関係している。迷走神経刺激は、睡眠障害、消化管運動、摂食障害、肥満、拒食症、胃腸系障害、高血圧、およびてんかんを治療すると提案されている。副交感神経の直接電気刺激は、交感神経活性の低減を誘発し、血管の抵抗を低減して血圧を低下させながら、圧反射を活性化できる。迷走神経の副交感神経線維の直接刺激は、交感神経系を介して心拍を低下することが認められている。加えて、いくつかの研究は、迷走神経の慢性刺激が心臓の虚血性障害後の心筋の予防効果であり得ることを示している。しかしながら、電極の移植は侵襲的手順であり、心筋梗塞直後に電極を移植することは困難である場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
他の神経を標的にする神経刺激は、同様の有益な効果を示している。神経標的を刺激する向上されたシステムおよび方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書は、特に、患者の耳垂に載置するためのデバイスを開示する。デバイスは、一実施形態によれば、耳垂に着脱可能に取り付けられるように適合されたクリップを備える。デバイスは、電極を含む神経刺激装置も備える。神経刺激装置は、耳垂付近の神経標的を刺激するように適合される。神経刺激装置は、神経刺激 信号を受容するために刺激回路と通信するようにさらに適合される。デバイスは、生理学的パラメータを監視するように適合されたセンサを備える。種々の実施形態によれば、デバイスは、生理学的パラメータを使用して治療法を滴定する。一実施形態では、センサは、赤外線センサを有する。センサは、一実施形態において、パルス酸素濃度計センサを含む。
【0005】
本明細書は、特に、ヒトの耳付近の神経標的を刺激するための方法を開示する。一実施形態によれば、デバイスを患者の耳垂にクリップで留め、該デバイスは、神経刺激電極を含む。一実施形態によれば、神経刺激信号は、耳垂付近の神経標的を経皮的に刺激するために電極に印加される。生理学的パラメータは、デバイスに接続されたセンサを使用して感知される。一実施形態によれば、神経刺激信号は、感知されたパラメータに応じて調整される。
【0006】
本明細書は、特に、高血圧を治療する方法を開示する。一実施形態によれば、血圧低下療法が有効であり得る患者が特定される。種々の実施形態によれば、耳垂付近の神経標的を経皮的に刺激するための神経刺激を提供するステップを含む、血圧低下療法を患者に提供する。
【0007】
本明細書は、特に、心臓機能改善治療方法を開示する。一実施形態によれば、心臓機能改善療法に有効であり得る患者が特定される。種々の実施形態によれば、耳垂付近の神経標的を経皮的に刺激するために、心臓機能改善療法が患者に提供される。
【0008】
本発明の開示は、本出願のいくつかの教示の概要であり、本主題の独占的または包括的治療になることを意図されてはいない。本主題についてのさらなる詳細は、発明を実施するための形態および添付の特許請求の範囲に見られる。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびこれらの法的同等物によって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1A,Bは、末梢血管制御に対する神経機構を図示している。
【図2】図2A,Bは、種々の実施形態による、神経刺激療法を提供するために、耳垂にクリップで留められるように適合された神経刺激装置電極を有する神経刺激装置を図示している。
【図3】図3は、神経刺激デバイスの種々の実施形態のブロック図を図示している。
【図4】図4は、種々の実施形態による、神経刺激システムに使用する赤外線センサを図示している。
【図5】図5は、開ループの刺激システムにおけるヒトの耳付近の神経標的を刺激するための神経刺激装置の種々の実施形態を図示している。
【図6】図6は、種々の実施形態による、閉ループの刺激システムにおけるヒトの耳付近の神経標的を刺激するための神経刺激装置を図示している。
【図7】図7は、ヒトの耳付近の神経標的を刺激するための方法の実施形態を図示している。
【図8】図8は、種々の実施形態による、高血圧の治療方法を図示している。
【図9】図9は、心臓機能改善治療方法の実施形態を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本主題の以下の発明を実施するための形態は、例証として、本主題が実施され得る具体的な側面および実施形態を示す添付の図面の主題に言及する。これらの実施形態は、当業者が本主題を実施できるように十分な詳細で記載される。本開示の「一」、「1つ」、または「さまざまな」実施形態への言及は、必ずしも同一の実施形態ではなく、そのような言及は、2つ以上の実施形態を企図する。以下の発明を実施するための形態は、例証的であり、制限する意味で受け取られるべきではない。本主題の範囲は、特許請求の範囲が与えられる法的同等物の範囲ともに、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0011】
本主題の種々の実施形態は、ヒトの耳付近の神経標的を刺激するためのシステムおよび方法に関連する。神経刺激は、血圧を継続的に低下させることで、高血圧および/または冠動脈疾患を治療するために使用できる。神経刺激は、心臓機能を改善(心臓の健康状態を改善するための心臓改善療法または心臓への間欠的ストレス)して心不全を治療するためにも使用できる。ヒトの耳付近の神経標的を刺激するためのシステムは、種々の実施形態において、経表皮的または移植されたデバイスを含むことができる。ヒトの耳付近の神経標的には、迷走神経の耳介枝が挙げられるが、これに限定はされない。
【0012】
種々の実施形態は、神経刺激の閉ループ制御を提供する。いくつかの神経刺激の実施形態は、血圧モニタと統合され、いくつかは、頸動脈からの血圧を感知する。他の実施形態は、開ループシステムを介して刺激を伝達し、例えば、短期療法、および比較的短期間の間欠的または定期的治療によって提供され得る。
【0013】
末梢神経刺激への経表皮的手段およびいくつかの表在性皮下手段は、刺激する電極との直接的神経接触を回避することが可能であり、それによって、神経炎および直接的接触電極に一般的に関連する損傷に関連する問題を低減する。
【0014】
神経生理学の議論を以下に提供する。自律神経系(ANS)は、「不随意」な器官を制御し、随意収縮(骨格)筋は、体性運動神経によって制御される。不随意な器官の実施例は、呼吸器および消化器を含み、血管および心臓も含む。しばしば、ANSは、例えば、腺を制御し、皮膚、目、胃、腸、および膀胱内の筋肉を制御し、心筋および血管周辺の筋肉を制御するための不随意で反射的な形で機能する。神経系は、体(例えば、血管制御、体内器官等)から神経信号を中枢神経系(CNS)に伝達する求心性神経を含み、CNSからの神経信号を体内に伝達する求心性神経を含む。
【0015】
ANSには、交感神経系および副交感神経系が挙げられるが、これらに限定されない。交感神経系は、ストレスおよび緊急時への「闘争または逃走反応」に関連する。他の効果の中でも、「闘争または逃走反応」は、血圧および心拍を上昇させて骨格筋の血流を増大し、消化を低下させて「闘争または逃走反応」に対するエネルギーを提供する。副交感神経系は、他の効果の中でも、エネルギーを保存するために血圧および心拍を低下させ、消化を増大させる、弛緩および「休息および消化反応」に関連する。ANSは、正常な内部機能を維持し、体性神経系とともに機能する。
【0016】
図1Aおよび1Bは、末梢血管制御に対する神経機構を図示している。迷走神経は、これらの図で図示している。図1Aは、概して、血管運動神経中枢への求心性神経を図示している。求心性神経は、神経中枢(CNS)に向かうインパルスを伝える。血管運動神経中枢は、血管のサイズを制御するために血管を拡張し収縮する神経に関する。図1Bは、概して、血管運動神経中枢からの遠心性神経を図示している。遠心性神経は、神経中枢(CNS)から離れてインパルスを伝える。
【0017】
交感神経系および副交感神経系を刺激するステップは、心拍および血圧以外の効果を有することができる。例えば、交感神経系を刺激するステップは、瞳孔を拡張させ、唾液および粘液産出を減少させ、気管支筋を弛緩させ、胃の不随意収縮(蠕動)および胃の運動性の継続する波を減少させ、肝臓によるグリコーゲンからグルコースへの変換を増大させ、腎臓による尿分泌を減少させ、膀胱壁を弛緩させて膀胱の括約筋を締める。副交感神経系を刺激するステップ(交感神経系を抑制するステップ)は、瞳孔を収縮させ、唾液および粘液産出を増加させ、気管支筋を収縮させ、胃および大腸の分泌および運動性を増加させ、小腸の消化を増加させ、尿分泌を増加させ、膀胱壁を収縮して膀胱の括約筋を弛緩する。交感神経系および副交感神経系に関係する機能は多く、互いに完全に統合することができる。
【0018】
迷走神経は、神経刺激がCNSに伝達される求心性神経である。迷走神経刺激は、同時に、副交感神経を増加させ、交感神経活性を減少させ、MI後の患者における致死的な不整脈に対するさらなるリモデリングまたは素因を予防し、自律平衡を回復し、HRV(心拍変動)を増大するのに役立ち、肥大性心筋症(HCM)、神経性高血圧、および不整脈予防における副交感神経を増大させ、交感神経性緊張を低下させ、狭心症症状を低減させ、冠血流(CBF)を増加させ、MI後の鬱血性心不全(CHF)の発達を予防すると考えられている。
【0019】
大耳介神経および小耳介神経を含む迷走神経の耳介神経は、頸神経叢に由来する。大耳介神経は、外耳の表面、ならびに、耳下腺および乳様突起にわたる皮膚を刺激する。耳下腺は、耳の前方に見られ、顎骨の下縁に沿った耳垂の下の領域に伸延する唾液腺である。乳様突起は、耳の裏側のヒトの頭蓋骨の側頭骨の円錐状の突起である。
【0020】
本開示は、少なくとも部分的に、抗高血圧および/または心臓機能改善に対すて耳垂または外耳道付近の神経標的の刺激を提供するためのデバイスに関する。一実施形態では、デバイスは非侵襲である。実施例には、血圧の慢性的低下、または収縮および拡張機能障害、左室駆出分画率(LVEF)、拡張末期容積(EDV)、および/または心不全の治療における改善のための、経表皮的刺激装置を有するクリップ式の耳垂デバイス(例えば、図2Aおよび2Bのような)または耳栓(外耳道に突出する)が挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態では、デバイスは移植可能である。実施例には、血圧の慢性的低下、または収縮および拡張機能障害、左心室駆出分画率(LVEF)、拡張末期容積(EDV)、および/または心不全の治療のための内耳に外科的に移植されたデバイスが挙げられるが、これに限定されない。デバイスは独立型であり得るか、またはペースメーカー、心臓再同期療法デバイス(CRT)、圧受容体刺激装置、または迷走神経刺激デバイス等の他の移植されたデバイスと通信し得る。別のデバイスと通信するとき、デバイスのうちの1つは、他のデバイス内の療法送達を制御し得、および/または、デバイスは、滴定治療のためのセンサ情報を交換し得る。経穴チャネルは耳内で交わるため、耳付近の神経標的の刺激は、例えば、疼痛管理、肥満、摂食障害、および嗜癖に対する潜在的用途を有する。
【0021】
図2Aおよび2Bは、種々の実施形態による、神経刺激療法を提供するために耳垂にクリップで留められるように適合された神経刺激装置電極を有する神経刺激装置を図示している。図2Aは、ヒトの耳200およびヒトの耳垂にクリップで留められるように適合された神経刺激電極(例えば、双極電極)を有する神経刺激デバイス203を図示している。神経刺激電極は、神経刺激デバイスに接続される。神経刺激デバイスは、適切な神経刺激を神経刺激電極に提供して、耳介神経枝、または耳付近の他の神経標的の脱分極を引き起こすことが可能である。
【0022】
種々の実施形態によれば、図示した神経刺激デバイス203は、開ループ刺激システムとして機能する。開ループ刺激システムでは、神経刺激は、パラメータの所定のまたはプログラムされた組に基づき印加される。したがって、例えば、種々の開ループの実施形態は、所定の波形(例えば、ホワイトノイズ、方形波、正弦波、三角波等)、大きさ、周波数、バースト周波数、および持続時間で刺激される。いくつかの実施形態は間欠刺激を提供し、いくつかの実施形態は周期的刺激を提供する。周期的刺激は、一定間隔における刺激に関する。間欠刺激は、他の時間ではなく、ある時間内に刺激を印加することに関する。間欠刺激は、必ずしも一定間隔における刺激を提供することを意味しない。
【0023】
種々の実施形態によれば、図示した神経刺激デバイス203は、閉ループ刺激システムとして機能する。閉ループシステムでは、生理信号が感知される。神経刺激デバイスは、感知された生理センサに基づいて、適用された神経刺激療法を適切に調整する。生理センサの実施例には、心拍および血圧を検出するためのセンサが挙げられ、心電図(ECG)モニタがさらに挙げられる。
【0024】
図2Bは、クリップ210を使用して耳垂に設置された神経刺激デバイス203を図示している。デバイスの他の種類は、本開示の範囲から逸脱することなく可能である。実施例には、耳道に設置された拡張可能なステントのような電極、もしくは、移植された神経電極またはデバイスが挙げられるが、これらに限定されない。種々の実施形態は、外耳道の表面に対して電極を迅速に設置するための耳栓等の拡張可能形態の電極を組み込む。いくつかの実施形態では、神経刺激デバイスの筐体は、導電性であり、電極として機能する。
【0025】
図3は、種々の実施形態よる、図2A〜2Bのデバイス203等の神経刺激デバイスのブロック図を図示している。一実施形態によれば、デバイス300は、耳垂に着脱可能に付着するように適合されたクリップ(図2Bに図示する)を備える。デバイスは、電極304を含む神経刺激装置302も備える。神経刺激装置302は、耳垂付近の神経標的を刺激するように適合されている。神経刺激装置は、刺激回路306と通信して神経刺激信号を受信するようにさらに適合されている。デバイスは、生理パラメータを監視するように適合されたセンサ308も備える。種々の実施形態によれば、センサ308は、例えば、パルス酸素濃度計センサ、間隙センサ、および発光ダイオード(LED)等の赤外線センサを含み得る。センサは、血圧、グルコース、呼吸数および/または心拍を感知するように構成され得る。デバイスは、種々の実施形態によれば、生理学的パラメータを使用して治療法を滴定する。
【0026】
種々の実施形態によれば、センサ308は、血圧を示すパラメータを感知するように適合された血圧センサを含み、神経刺激信号は、感知したパラメータを使用して、継続的に血圧を低下させるように適合されている。一実施形態によれば、神経刺激装置は、継続的に血圧を低下させるように、事前にプログラムされたスケジュールを使用して刺激療法を送達する。種々の実施形態によれば、センサ308は、心臓機能を示すパラメータを感知するように適合された心臓機能センサを含み、神経刺激信号は、感知されたパラメータを使用して、心臓機能を改善するように適合されている。一実施形態によれば、神経刺激装置は、心臓機能を改善するように、事前にプログラムされたスケジュールを使用して刺激療法を送達する。一実施形態では、デバイス300は通信回路をさらに備える。さまざまな実施形態において、通信回路は、植え込み型および/または外部デバイスと通信するように適合されている。
【0027】
図4は、種々の実施形態による、神経刺激システムに使用する赤外線センサ400を図示している。赤外線センサの一実施例には、血圧、心拍変動(HRV)、グルコース、呼吸数および/または心拍を監視するための、パルス酸素濃度センサまたは他のセンサが挙げられる。センサは、一実施形態によれば、光源405および光検出器410を備える。センサを使用して、指420、足指、または耳垂等の末端の血管415内のパラメータを検出する。一実施形態によれば、ヘモグロビンによる光吸収は、酸素飽和およびパルスによって異なり、酸素飽和は、記録された信号(パルス酸素濃度計の実施形態)に由来し得る。赤外線センサの他の実施例は、種々の実施形態における植え込み型であり得る。
【0028】
図5は、種々の実施形態による、開ループ刺激システム内のヒトの耳付近の神経標的を刺激するための神経刺激装置515を図示する。そのような神経刺激デバイスは、図2Aおよび3の刺激装置203および302の開ループの実施形態として機能することが可能である。図示した神経刺激装置の実施形態515は、神経刺激回路516、コントローラ517、およびメモリ518を備える。図示した実施形態は、少なくとも1つのリード520に接続する少なくとも1つのポート519をさらに備える。したがって、例えば、リード520(複数)は、デバイス515からの着脱が可能であり、他のリードは、デバイスに使用されることが可能である。神経刺激回路516は、ポート519(複数)に接続され、神経刺激信号をリード520(複数)上の少なくとも1つの神経刺激電極521に提供し、適切な信号が適切に配設された神経刺激電極または電極に提供されている場合に、ヒトの耳付近の神経標的を刺激する。いくつかの実施形態は、単一のリードおよびリード上の単一の電極を使用して神経標的を刺激する。しかしながら、複数のリードおよびリード上の複数の電極を使用され得る。種々の実施形態によれば、神経刺激電極521は、耳垂にクリップで留められるように設計されている。種々の実施形態によれば、神経刺激電極521は、外耳道に配設されるように設計されている。種々の実施形態によれば、神経刺激電極521は、耳の後ろの頭皮上、および耳にわたるまたはそうでなければその付近に配設された、パッチ電極等の経表皮的電極であるように設計されている。これらの耳の配置は、非侵襲的である。植え込み型刺激装置は、本開示の範囲から逸脱することなく使用され得る。非侵襲的技術を用いて、電極は、最低限の訓練を受けた人によって迅速に配設すされることができ、したがって、治療法を迅速に適用することが可能になる。したがって、例えば、治療は、緊急時に迅速に適用され得る。これらの実施形態は、抗高血圧および/または心臓改善療法のための迅速で非侵襲的方法も提供する。
【0029】
図示された神経刺激装置515は、トランシーバまたは他の入力/出力(IO)回路522、およびアクチュエータ523をさらに備える。IO回路により、神経刺激装置デバイスは、他のデバイスと通信することが可能になり、したがって、それを使用して、例えば、神経刺激装置デバイスをプログラムする、および/または長い期間にわたって記録された履歴神経刺激装置データをアップロードすることができる。無線トランシーバを使用して、外部デバイスおよび植え込み型デバイスの両方にIO機能を提供することができる。アクチュエータ523は、プログラムされた療法を開始するための手段を提供する種々のアクチュエータの実施形態では、機械スイッチ、電気スイッチ、電子スイッチおよび磁気スイッチ等のスイッチが挙げられる。アクチュエータは、医師、救急隊員、または患者によって始動され、事前にプログラムされた療法を開始することができる。したがって、種々の実施形態によれば、例えば、患者は、神経刺激装置デバイスの植え込み型形態に隣接する磁石を配設して狭心症療法を開始することが可能である。
【0030】
メモリ518は、デバイスの機能を実行するためのコントローラによって操作可能なコンピュータ読み取り可能な命令を含む。したがって、種々の実施形態において、コントローラは、命令通りに動作して、抗高血圧および心臓改善療法等のプログラムされた刺激療法524を提供するように適合されている。加えて、種々の実施形態において、コントローラは、神経刺激信号のパラメータを設定するように適合され、いくつかの実施形態では、神経刺激の強度を調整するために、概して、刺激強度モジュール525によって図示される等、神経刺激信号のパラメータは変化する。いくつかの実施形態は、波形、振幅、周波数、バースト周波数、および持続時間を制御および/または変化し、いくつかの実施形態は、2つ以上の波形、振幅、周波数、バースト周波数、および持続時間の種々の組み合わせを制御および/または調整する。波形の実施例には、正弦波、方形波、三角波、および「ホワイトノイズ」信号が挙げられる。ホワイトノイズ信号は、自然発生の神経活性を模倣する。種々の「開ループ」システムは、プログラムされた療法による神経刺激強度を変化して、所望の影響を提供する。例えば、いくつかの実施形態は、神経刺激信号のパラメータを変化して、神経刺激信号への神経の適応を防止または低減する。
【0031】
図6は、種々の実施形態による、閉ループ刺激システム内のヒトの耳付近の神経標的を刺激するための神経刺激装置を図示している。そのような神経刺激デバイスは、図2Aおよび3の刺激装置203および302の開ループの実施形態として機能可能である。図示された神経刺激装置の実施形態615は、神経刺激回路616、フィードバック回路626、コントローラ617、およびメモリ618を備える。図示された実施形態は、少なくとも1つのリード620に接続するための少なくとも1つのポート619をさらに備える。したがって、例えば、リード(複数)は、デバイスからの着脱が可能であり、他のリードは、デバイスとともに使用することが可能である。例えば、第1のポートに接続される1つ目のリードは、神経刺激電極621を備え、第2のポートに接続される2つ目のリードは、生理センサ627を備える。別の実施例において、1つのポートに接続された1つのリードは、神経刺激電極621および生理センサ627の両方を備える。生理センサ627の実施例には、パルス酸素濃度センサ等の赤外線センサ、または血圧、心拍変動(HRV)、グルコース、呼吸数、および/または心拍を監視するための他のセンサが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
神経刺激回路は、ポート(複数)に接続され、神経刺激信号をリード(複数)上の少なくとも1つの神経刺激電極に提供し、適切な信号が適切に配設された神経刺激電極に提供される場合に、ヒトの耳付近の神経標的を刺激する。種々の実施形態において、神経刺激電極621は、耳垂にクリップで留められるように設計されている。種々の実施形態において、神経刺激電極621は、外耳道内に配設されるように設計されている。種々の実施形態において、神経刺激電極621は、耳の後ろの頭皮上、および耳を覆ってまたはそうでなければ隣接して配設されている、パッチ電極等の経表皮的電極であるように設計されている。耳の配置は、非侵襲的である。植え込み型刺激装置は、本開示の範囲から逸脱することなく使用され得る。
【0033】
フィードバック回路626は、生理センサ627からの信号を受信するようにポート(複数)に接続されている。センサは、少なくとも部分的に、神経刺激に依存する生理機能を感知する。そのような機能の実施例には、心拍および血圧が挙げられる。したがって、種々の実施形態は、生理センサとして心拍センサを実装し、種々の実施形態は、生理センサとして血圧センサを実装する。記載されたように、種々の実施形態において、生理センサは、赤外線センサまたはパルス酸素濃度計センサを含む。頸動脈は、耳介神経枝付近を通る。したがって、種々の実施形態は、頸動脈から心拍を直接検出することが可能なセンサを提供し、種々の実施形態は、頸動脈から血圧を直接検出することが可能なセンサを提供する。そのようなセンサの一実施例は、血流を感知するように適合された音響センサである。感知した血流は、血圧および/または心拍を判断するために使用可能である。しかしながら、他のセンサ技術を使用することもできる。トランシーバ622、アクチュエータ623、およびメモリ618は、図5に関して前述されている。本議論は、簡潔のために反復しない。
【0034】
メモリ618は、デバイスの機能を実行するためのコントローラによって操作可能なコンピュータ読み取り可能な命令を含む。したがって、種々の実施形態において、コントローラは、命令通りに動作して、抗高血圧および心臓改善療法等のプログラムされた刺激療法624を提供するように適合されている。種々の「閉ループ」システムは、概して、刺激強度モジュール625によって図示されているように、所望の効果を提供するために事前にプログラムされた療法による、フィードバック回路によって受信された感知された生理信号に基づき、神経刺激の強度を変化する。したがって、閉ループシステムは、必要に応じて、いくつかの測定された生理パラメータを上界および下界内に維持するために、神経刺激強度を減少および増加することが可能である。
【0035】
図7は、種々の実施形態による、ヒトの耳付近の神経標的を刺激するための方法700を図示する。実施形態によれば、デバイスは、705において、患者の耳垂上にクリップで留められ、該デバイスは神経刺激電極を備える。実施形態によれば、710において、神経刺激信号は電極に印加され、耳垂付近の神経標的を経皮的に刺激する。715において、生理パラメータは、デバイスに接続されるセンサを使用して感知される。一実施形態では、センサは赤外線センサを有する。血圧、グルコース、呼吸数および/または心拍を感知するセンサ等の他のセンサが、本開示の範囲から逸脱することなく使用され得る。実施形態によれば、720において、神経刺激信号は、感知されたパラメータに対して調整される。種々の実施形態によれば、感知された生理パラメータは、血圧を示すパラメータを含み、神経刺激信号は、感知されたパラメータを使用して継続的に血圧を低下させるように印加される。種々の実施形態によれば、生理パラメータは、心臓機能を示すパラメータを含み、神経刺激信号は、感知されたパラメータを使用して心臓機能を改善するように印加される。
【0036】
図8は、種々の実施形態による、高血圧の治療のための方法800を図示している。実施形態によれば、805において、血圧低下療法が有効であり得る患者が特定される。種々の実施形態によれば、810において、耳垂付近の神経標的を経皮的に刺激するために神経刺激を送達するステップを含む血圧低下療法が、患者に送達される。種々の実施形態によれば、神経刺激は、患者の耳垂上にクリップで留められたデバイスから送達される。一実施形態では、神経刺激が、迷走神経の耳介枝に送達される。他の神経標的は、異なる実施形態において使用される。一実施形態では、患者は、外部センサを使用する療法に対して特定される。別の実施形態では、患者は、移植されたセンサを使用する療法に対して特定される。閉ループシステムの実施形態では、血圧は、移植されたセンサまたは外部センサ、および感知された血圧を使用して調整された神経刺激(周波数、持続時間等)のいずれかを使用して感知され得る。
【0037】
図9は、種々の実施形態による、心臓改善療法のための方法900を図示している。実施形態によれば、905において、心臓改善療法が有効であり得る患者が特定される。種々の実施形態よれば、910において、耳垂付近の神経標的を経皮的に刺激するために神経刺激を送達するステップを含む、心臓改善のための治療法が、患者に送達される。種々の実施形態によれば、患者は、心臓機能を示すパラメータを感知することで、少なくとも部分的に療法に対して特定される。感知されたパラメータの実施例には、呼吸数、心拍、およびグルコースレベルが挙げられるが、これらに限定されない。実施形態によれば、心臓機能を示すパラメータは、パルス酸素濃度計センサ、もしくは他の赤外線またはLEDセンサを使用して感知される。閉ループシステムの実施形態では、神経刺激は、感知された心臓機能を示すパラメータを使用して調整され得る(周波数、持続時間等)。
【0038】
図8および9の方法の種々の実施形態は、患者の耳垂に電極をクリップで留めるステップ、外耳道内に双極電極を配設するステップ、もしくは耳の後ろまたは耳介神経枝にわたって経表皮的電極を配設するステップ等、非侵襲性技術を使用して、神経刺激電極を配設する。種々の実施形態は、耳介神経枝を刺激するために神経刺激装置および電極を経皮的に移植するステップ等、最小限に侵襲的な技術を使用して神経刺激電極を配設する。
【0039】
図示された方法700、800、900は、所望の神経刺激療法を提供するために、メモリ518、618等のメモリ内のコンピュータ読み取り可能な命令として格納され、図5および6のコントローラ517および617等のコントローラで操作されることが可能である。
【0040】
具体的な実施形態は、本明細書に図示され記載されているが、同一目的を達成するために計算された任意の配列が、示した具体的な実施形態に置換され得ることは、当業者には容易に理解されるであろう。上記の説明は、制限ではなく例証することを意図すされていることを理解されたい。本主題の範囲は、特許請求の範囲が付与される同等物の全体の範囲とともに、添付の特許請求の範囲を参照して判断されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の耳垂に載置するためのデバイスであって、
該耳垂に着脱可能に取り付けられるように適合されたクリップと、
電極を含む神経刺激装置であって、該神経刺激装置は、該耳垂付近の神経標的を刺激するように適合され、該刺激装置は、刺激回路と通信して神経刺激信号を受信するようにさらに適合されている、神経刺激装置と、
生理学的パラメータを監視するように適合されたセンサと、
を備え、
該デバイスは、該生理学的パラメータを使用して治療法を滴定する、デバイス。
【請求項2】
前記センサは、血圧を示すパラメータを感知するように適合された血圧センサを含み、前記神経刺激信号は、該感知されたパラメータを使用して、継続的に血圧を低下させるように適合されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記神経刺激装置は、継続的に血圧を低下させるように、事前にプログラムされたスケジュールを使用して刺激療法を送達する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記センサは、心臓機能を示すパラメータを感知するように適合された心臓機能センサを含み、前記刺激信号は、該感知されたパラメータを使用して心臓機能を改善するように適合されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記神経刺激装置は、心臓機能を改善するように、事前にプログラムされたスケジュールを使用して刺激療法を送達する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
植え込み型デバイスと通信するように適合された通信回路をさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記センサは、赤外線センサを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
デバイスであって、
耳の外耳道内に設置されるように適合された電極プラグと、
該電極プラグに電気的に接続された神経刺激装置であって、該神経刺激装置は、該耳付近の神経標的を刺激するように適合され、該刺激装置は、刺激回路と通信して神経刺激信号を受信するようにさらに適合されている、神経刺激装置と、
生理学的パラメータを監視するように適合されたセンサと
を備え、
該デバイスは、該生理学的パラメータを使用して治療法を滴定する
デバイス。
【請求項9】
前記電極プラグは、発泡性フォームを含む、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記センサは、赤外線センサを含む、請求項8に記載のデバイス。
【請求項11】
前記赤外線センサは、パルス酸素濃度計センサを含む、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記センサは、血圧を示すパラメータを感知するように適合された血圧センサを含み、前記神経刺激信号は、該感知されたパラメータを使用して、継続的に血圧を低下させるように適合されている、請求項8に記載のデバイス。
【請求項13】
前記神経刺激装置は、継続的に血圧を低下させるように、事前にプログラムされたスケジュールを使用して刺激療法を送達する、請求項8に記載のデバイス。
【請求項14】
前記センサは、心臓機能を示すパラメータを感知するように適合された心臓機能センサを含み、前記神経刺激信号は、前記感知したパラメータを使用して、心臓機能を改善するように適合されている、請求項8に記載のデバイス。
【請求項15】
前記神経刺激装置は、心臓機能を改善するように、事前にプログラムされたスケジュールを使用して刺激療法を送達する、請求項8に記載のデバイス。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−527256(P2010−527256A)
【公表日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508384(P2010−508384)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/006023
【国際公開番号】WO2008/143814
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】