説明

神経障害の診断、診断補助および/またはその進行のモニタリングのための方法、キットおよび試薬

本発明者らは、個体の血液試料(例えば、血清または血漿を含む血液)に存在する1パネルのバイオマーカーを特定し、その濃度またはレベルは神経障害の個体において変化する。したがって、任意の1または複数のこれらのバイオマーカーのレベル変化を用いて、認知機能を評価し、神経障害を診断もしくは診断補助し、および/または患者における神経障害(例えば、患者における疾患の進行の追跡および/または患者における薬物もしくは外科的治療の効果の追跡)をモニタリングすることができる。また、任意の1または複数のこれらのバイオマーカーのレベルの変化、患者の層別化(即ち、神経障害である可能性が高いと診断された個体または神経障害であると診断された個体を前記障害の異なるクラスに分けること)、軽度の認識機能障害(MCI)の診断または診断補助、ならびに認識機能障害の診断または診断補助のために使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、個体における神経障害、例えば、アルツハイマー病の診断、診断補助および/またはその進行のモニタリングのための方法、キットおよび試薬に関する。また、個体における神経障害の診断、診断補助および/またはその進行のモニタリングに使用するためのバイオマーカーを同定する方法、ならびに神経障害、例えば、アルツハイマー病の治療および/または予防用の候補薬物をスクリーニングする方法も包含される。
【背景技術】
【0002】
神経障害は、中枢神経系(脳、脳幹および小脳)、末梢神経系(脳神経を含む)、および自律神経系(その一部は中枢神経系と末梢神経系に局在する)に関わる一群の状態である。主な枝分かれは、認知症、頭痛、昏迷および昏睡、発作、睡眠障害、精神的外傷、感染、腫瘍、神経眼科学的疾患、運動障害、脱髄疾患、脊髄疾患、ならびに末梢神経、筋および神経筋接合部の障害である。神経性疾病は、典型的には、いくつかの他の身体機能の知能および認識機能障害および/または喪失をもたらす神経系(脳および脊髄を含む)への損傷と関連している。
【0003】
神経障害は、治療が常に困難であり、多くの場合、事実上変性性である非常に多様且つ慢性的な集合的な状態を表す。それらは、限定されないが、アルツハイマー病、多発性硬化症、脳性麻痺、パーキンソン病およびニューロパシー(末梢神経に影響を与える状態)を含む。これらのうち、アルツハイマー病(AD)は、おそらく、特に老齢人口において、認知症の最も共通した原因の1つである。
【0004】
ADは、典型的には、脳細胞(ニューロン)が退化する不可逆的な進行性神経障害として特徴付けられ、結果として、認識機能、一次記憶、判断と推理、運動協調、およびパターン認識の喪失(Mckhann et al.,Neurology 34;939(1984)を参照されたい)をもたらし、ADは認知症の最も主な原因である。認知症は、65歳を超える人口の約9.5パーセントに影響を及ぼす典型な老人性疾患であり、それらの73パーセントがこの疾患の重傷形態を被り、有害な習慣的行動および他の重篤な症状を伴う。また、認知症は、心臓病、脳卒中および肺癌に続いて4番目に最も共通した死因である。人口が急速に老齢化するため、認知症患者の数は増加し続けることが予測される。認知症のタイプに従って、51パーセントの認知症患者はアルツハイマー型認知症を被り、34パーセントの認知症患者は血管性認知症を被っている。残りの15パーセントの病因因子は、感染症、代謝性疾患などである。したがって、アルツハイマー病および血管性認知症は、依然として、認知症の最も共通した原因であり、認知症を引き起こす疾患の大部分を占めている。
【0005】
ADの進行した段階において、記憶および精神機能の全てが失われることがある。ADのヒトは、精神機能が徐々に低下し、多くの場合、軽度の記憶障害が始まることもあり、続いて、雇用を維持する能力、慣れ親しんだ作業を計画し、それを実行する能力、ならびに結論を下し、判断を行う能力が喪失する。ADの最大要因(単数または複数)は依然として判明していないが、この疾患を発症するヒトの可能性を増加させるいくつかの危険因子がある。
【0006】
アルツハイマー病の症状を改善しようとするいくつかの薬剤が存在する一方で、現在、疾患を改善する治療がない。いくつかの事象で、疾患を改善する治療は、永久的脳障害の発病前に与えられると場合には最も効果的であり得る。しかしながら、ADであるという臨床的診断がなされるときには、広範囲の神経喪失がすでに起こっている(Price et al.,2001,Arch Neurol 58(9):1395−402参照)。したがって、ADなどの神経障害を有するそれらの患者をより良好に診断することが必要であり、そのため、疾患を改善する治療薬が、疾患の進行のより早い段階で投与され得る。
【0007】
現在、生存患者における認知症(例えば、AD)を診断する一次的方法は、詳細な家族歴を問診し、記憶試験および心理検査を行い、一時的(例えば、意気消沈もしくはビタミンB12欠乏)または永久的(例えば、脳卒中)状態についての他の説明を除くことを伴う。また、画像試験が信頼され、例えば、磁気共鳴映像法(MRI)および陽電子放出断層撮影法(PET)などがあり、それらは、一般的に、二次的試験として行われる。
【0008】
ADの主な臨床的特徴は、記憶喪失、言語機能障害、ならびに他の認知障害、例えば、失行症、計算不能症および左−右見当識障害をもたらす進行性認識低下である。また、ADの患者は、判断力の低下および一般的な問題解決能力の低下を発症する。さらに、非認知的症状または非行動症状はADに共通し、人格が進行性受動性から顕著な興奮へと変動する。
【0009】
このような臨床診断は有用であり得る一方で、このような方法は確実ではなく、ADの最終診断は、典型的には、病理学的所見によって決定される。剖検でのADの患者において観察される2つの病理学的特徴は、海馬、大脳皮質、および認知機能に本質的な脳の他の領域における(i)細胞外アミロイドプラーク、および(ii)細胞内タングルを含む。
【0010】
ADの診断における別の妨害は認知症のタイプを特定している。研究によれば、ADの臨床診断の精度は、約50〜82%であり、血管性認知症の臨床診断の精度は約40〜80%である。このように大幅な変化は、臨床医および同様に患者に懸念を残す。このため、ADは、死後まで完全な精度で診断することができず、その際、剖検は、患者脳においてこの疾患に特徴的なアミロイドプラークと神経原線維変化を示す。さらに、臨床診断手法は、患者が、顕著に異常な記憶喪失または人格変化を示し始めた後にだけ役立つ。それまで、患者は、何年もADであった可能性がある。
【0011】
患者における標的のレベルを測定することによって、ADを診断するかまたは鑑別診断する試みがなされ、その患者のレベルは、認知症患者の脳脊髄液(「CSF」)において明確に増加または減少する。バイオマーカーに関して、タンパク質であるアミロイドベータとタウは、おそらくは、今日までに最もよく特徴付けられている。研究は、AD患者由来のCSF試料は、正常量よりも高いタウと、正常量よりも低いベータアミロイドを含むことを示している。これらのバイオマーカーはCSFに放出されるので、腰椎穿刺(または「脊椎穿刺」)が試験のための試料を得るために必要とされ、それは、それ自体の危険性および可能性のある不都合な副作用を示す。また、このような手法は、痛み、不快症状を伴い、専門の医療機関だけがこのような手法を行うための施設および専門家を有する。
【0012】
上記に照らして、ADなどの神経障害を有するものを、特に疾患の発病時に、同定するための改善された方法が必要であり、それは疾患の進行の遅延を補助し得る。結果として、診断を補助するように、ADなどの神経障害と関連したバイオマーカーを同定することが当該技術分野において必要である。
【発明の概要】
【0013】
本発明者らは、個体の生物試料(例えば、血清または血漿を含む血液)に存在するバイオマーカーの回収を確認していて、バイオマーカーの濃度またはレベルは、神経障害、例えば、アルツハイマー病(AD)を有する個体において変化する。
【0014】
バイオマーカーは、神経障害、例えばADの診断および/または診断補助のために、個別にまたは組み合わせて使用されてもよい。このようにして、本発明の一態様では、個体からの生体液試料などの生物試料中の1または複数のバイオマーカーの量を測定すること、および測定された量と測定された各バイオマーカーに対する参照値を比較することによる、個体における神経障害の診断または診断補助のための方法が提供される。このようにして得られた情報は、個体における神経障害の診断を補助するかまたは診断するために用いられてもよい。
【0015】
したがって、一態様では、本発明は、神経障害の診断、診断補助、個体の1もしくは複数のクラスへの層別化、またはその進行のモニタリングのための方法を提供し、該方法は、個体からの生物試料中の少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルを、該少なくとも4つのバイオマーカーについての参照レベルと比較することを備え、ここで、該少なくとも4つのバイオマーカーは、下記:
【表A1】

【0016】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される。
【0017】
別の実施形態では、少なくとも4つのバイオマーカーのうちの少なくとも2つは、下記:
コルチゾール
IGF.BP.2−インスリン様成長因子結合タンパク質2
IL.17−インターロイキン−17
膵臓ポリペプチド
ApoE ECU−アポリポタンパク質E
修正されたカルシウム(Ca corr)=総Ca+((40−alb)0.02))
ABeta 42
アポリポタンパク質E4対立遺伝子
VCAM−1−血管細胞接着分子1
および天然に存在するその変異体からなる群より選択される。
【0018】
いくつかの実施形態では、本発明の方法が神経障害の進行のモニタリングに関する場合、参照レベルは、より早い時間点での個体からの生物試料から得られた測定されたレベルである。
【0019】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルを組み合わせて、個体からの生物試料中の少なくとも1つの他のバイオマーカーの測定レベルを、該少なくとも1つの他のバイオマーカーおよび該少なくとも4つのバイオマーカーについての参照レベルと比較することをさらに備え、ここで、該少なくとも1つの他のバイオマーカーが、下記:
【表A2】

【0020】
および天然に存在するその変異体からなるマーカー(複数のマーカー)のパネルから選択される。
【0021】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルと組み合わせて、個体からの生物試料中の少なくとも別のバイオマーカーの測定レベルを、該少なくとも別のバイオマーカーおよび該少なくとも4つのバイオマーカーと比較することをさらに備え、ここで、該少なくとも別のバイオマーカーは、下記:
【表A3】

【0022】
および天然に存在するその変異体からなるマーカー(複数のマーカー)のパネルから選択される。
【0023】
いくつかの実施形態では、個体からの生物試料中の少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルを比較することが、下記:
【表A4】

【0024】
および天然に存在するその変異体からなる群より選択される少なくとも3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つまたは9つのバイオマーカーの測定レベルを比較することを備える。
【0025】
いくつかの実施形態では、本方法は、下記:
【表A5】

【0026】
の測定レベルを比較することを含む。
【0027】
個体からの生物試料中のバイオマーカーの測定レベルにおける、同じバイオマーカーの参照レベルと対比したときの差は、典型的には、神経障害を指示するかまたは重症な神経障害を指示する。
【0028】
いくつかの実施形態では、本発明のバイオマーカーは、個体の年齢と組み合わせて、神経障害の診断、診断補助、個体の1もしくは複数のクラスへの層別化、またはその進行のモニタリングに用いることができる。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態では、測定レベルを、測定された各バイオマーカーについての参照レベルと比較することは、測定レベルと参照レベルとの間の倍数差を計算することを備える。本発明のいくつかの実施形態では、本方法は、測定された各バイオマーカーについての倍数差と最小の倍数差レベルを比較することをさらに備える。本発明のいくつかの実施形態では、本方法は、測定レベルと参照レベルの比較に対する値を得るためのステップをさらに備える。また、本明細書において記載されるように、該方法によって得られた値を備えるコンピュータ読込み可能なフォーマットが本明細書において提供される。
【0030】
いくつかの実施形態では、バイオマーカーが、バイオマーカーの参照レベルと比較して、約20%〜約100%増加または減少している場合に、神経障害であると診断される。
【0031】
いくつかの実施形態では、生物試料は、末梢の生体液試料であり、限定されないが、脳脊髄液、血液、血清または血漿を含む。いくつかの実施形態では、生物試料は血漿である。
【0032】
いくつかの実施形態では、測定値と参照値の比較は、測定値と参照値との間の倍数差を計算することを含む。いくつかの実施形態では、測定値は、試料中のバイオマーカー(単数または複数)のレベルを測定することによって得られ、一方、他の実施形態では、測定値は第三者から得られる。典型的には、個体からの生物試料中の少なくとも1つのバイオマーカーの測定レベルにおける、該少なくとも1つのバイオマーカーの参照レベルと比較した場合の増加または減少は、神経障害の診断を示唆する。
【0033】
本発明の更に別の態様では、個体における神経障害の診断、診断補助および/またはその進行のモニタリング、および/または個体の層別化において使用するための少なくとも1つのバイオマーカーを同定する方法が提供され、該方法は、複数のバイオマーカーについての1セットの生物試料から測定値を得ることと、ここで、該1セットの生物試料は神経障害に基づいてサブセットに分けることができ;少なくとも1つのバイオマーカーについての各サブセットからの測定値と比較することと;測定値がサブセット間で有意に異なる少なくとも1つのバイオマーカーを同定することとを備える。
【0034】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカーについての各サブセットからの測定値を比較することは、ランダムフォレスト(Random Forest)、サポートベクターマシン(Support Vector Machine)、マイクロアレイデータのための線形モデル(Linear Models for MicroArray data)(LIMMA)および/またはマイクロアレイデータの有意性検定(Significance Analyses of Microarray Data)(SAM)、最良優先(Best First)、貪欲ステップワイズ(Greedy Stepwise)、ナイーブベイズ(Naive Bayes)、線形前進選択(Linear Forward Selection)、分散探索(Scatter Search)、線形判別分析(Linear Discriminant Analysis)(LDA)、ステップワイズロジスティック回帰(Stepwise Logistic Regression)、レシーバーオペレーティング特性(Receiver Operating Characteristic)、および分類ツリー(Classification Trees)(CT)から選択される1または複数の統計法によって行われる。
【0035】
本発明の更に別の態様では、神経障害を治療するための候補薬物を同定する方法が提供され、該方法は、下記:
【表A6】

【0036】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される少なくとも4つのバイオマーカーの発現および/または活性の調節における活性について正の候補薬物をアッセイすることを備える。
【0037】
別の実施形態では、少なくとも4つのバイオマーカーのうちの少なくとも2つは、
コルチゾール
IGF.BP.2−インスリン様成長因子結合タンパク質2
IL.17−インターロイキン−17
膵臓ポリペプチド
ApoE ECU−アポリポタンパク質E
修正されたカルシウム(Ca corr)=総Ca+((40−alb)0.02))
ABeta 42
アポリポタンパク質E4対立遺伝子
VCAM−1−血管細胞接着分子1
および天然に存在するその変異体からなる群より選択される。
【0038】
いくつかの実施形態では、本方法は、神経障害を治療するための候補薬物をアッセイすることをさらに備え、該方法は、少なくとも1つの他のバイオマーカーと少なくとも4つのバイオマーカーの発現および/または活性の調節における活性が見込まれる候補薬物をアッセイすることを備え、ここで、他のバイオマーカーは、下記:
【表A7】

【0039】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される。
【0040】
いくつかの実施形態では、本発明は、神経障害を治療するための候補薬物をアッセイすることをさらに備え、該方法は、少なくとも別のバイオマーカーと少なくとも4つのバイオマーカーの発現および/または活性の調節における活性が見込まれる候補薬物をアッセイすることを備え、ここで、別のバイオマーカーは、下記:
【表A8】

【0041】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される
本発明のいくつかの他の実施形態では、神経障害を治療するための候補薬物を同定する方法が提供され、該方法は、少なくとも4つのバイオマーカーと少なくとも1つの他のバイオマーカーの発現および/または調節をする活性について候補薬物をアッセイすることを備え、ここで、該バイオマーカーは、本明細書に記載される通りである。
【0042】
いくつかの実施形態では、本方法は、下記:
【表A9】

【0043】
および天然に存在するその変異体からなる群より選択される少なくとも3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つまたは9つのバイオマーカーの発現および/または活性の調節における活性についての有望な候補薬物をアッセイすることを備える。
【0044】
いくつかの実施形態では、本方法は、下記:
【表A10】

【0045】
の発現および/または活性の調節における活性が見込まれる候補薬物をアッセイすることを備える。
【0046】
また、本発明は、個体における神経障害の診断、診断補助および/またはその進行のモニタリング、および/または個体の層別化(即ち、神経障害である可能性が高いと診断された個体または神経障害であると診断された個体を該障害の異なるクラスに分けること)において使用するためのキットを提供し、該キットは、少なくとも4つのバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬を備え、該少なくとも4つのバイオマーカーは、下記:
【表A11】

【0047】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される。
【0048】
別の実施形態では、少なくとも4つのバイオマーカーのうちの少なくとも2つは、下記:
【表A12】

【0049】
および天然に存在するその変異体からなる群より選択される。
【0050】
いくつかの実施形態では、本キットは、少なくとも4つのバイオマーカーについて1つの試薬を組み合わせた、少なくとも1つの他のバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬をさらに備え、ここで、該少なくとも1つの他のバイオマーカーは、下記:
【表A13】

【0051】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される。
【0052】
いくつかの実施形態では、本キットは、少なくとも4つのバイオマーカーについて1つの試薬と組み合わせた、少なくとも別のバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬を備え、ここで、該少なくとも別のバイオマーカーは、下記:
【表A14】

【0053】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される。
【0054】
いくつかの実施形態では、本発明は、個体における神経障害の診断、診断補助および/またはその進行のモニタリング、および/または個体の層別化(即ち、神経障害である可能性が高いと診断された個体または神経障害であると診断された個体を該障害の異なるクラスに分けること)において使用するためのキットを提供し、該キットは、少なくとも4つのバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬、少なくとも1つの他のおよび別のマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬を備え、ここで、該マーカーは本明細書に記載される通りである。
【0055】
いくつかの実施形態では、本キットは、下記:
【表A15】

【0056】
および天然に存在するその変異体からなる群からなるマーカーのパネルから選択される少なくとも3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つまたは9つのバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬を備える。
【0057】
いくつかの実施形態では、本キットは、下記:
【表A16】

【0058】
に特異的な少なくとも1つの試薬を備える。
【0059】
いくつかの実施形態では、本キットは、少なくとも1つの参照バイオマーカーを備え、ここで、該参照バイオマーカーは、下記:
【表A17】

【0060】
および天然に存在するその変異体からなる群より選択される。
【0061】
いくつかの実施形態では、本キットは、本明細書に記載されているように、個体における神経障害の診断および/または診断の補助、および/またはその進行のモニタリング、および/または個体の層別化(即ち、神経障害である可能性が高いと診断された個体または神経障害であると診断された個体を該障害の異なるクラスに分けること)の方法を実施するための使用説明書をさらに備える。
【0062】
いくつかの実施形態では、バイオマーカーに特異的な試薬は、バイオマーカーを検出することができる抗体、またはその断片である。いくつかの実施形態では、本発明のキットは、当該バイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬が結合する表面を含む。いくつかの実施形態では、本発明のキットは、バイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬をそれに結合させた、本明細書に記載されている表面と、試験試料が比較され得る参照試料の組み合わせを含む。参照試料は、確認された神経障害を有する個体からの生物試料(または個体の群から保存された試料)であってもよい。
【0063】
また、本発明は、個体における神経障害の診断、診断補助および/またはその進行、および/または個体の層別化において使用するための組成物を提供し、該組成物は、少なくとも4つのバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬を備え、ここで、少なくとも4つのバイオマーカーは、下記:
【表A18】

【0064】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーの第1のパネルから選択される。
【0065】
別の実施形態では、少なくとも4つのバイオマーカーのうちの少なくとも2つは、下記:
コルチゾール
IGF.BP.2−インスリン様成長因子結合タンパク質2
IL.17−インターロイキン−17
膵臓ポリペプチド
ApoE ECU−アポリポタンパク質E
修正されたカルシウム(Ca corr)=総Ca+((40−alb)0.02))
ABeta 42
アポリポタンパク質E4対立遺伝子
VCAM−1−血管細胞接着分子1
および天然に存在するその変異体からなる群より選択される
いくつかの実施形態では、本組成物は、少なくとも4つのバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬と組み合わせた、少なくとも1つの他のバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬をさらに備え、ここで、該少なくとも1つの他のバイオマーカーは、下記:
【表A19】

【0066】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される
いくつかの実施形態では、本組成物は、少なくとも4つのバイオマーカーについて少なくとも1つの使用と組み合わせて、少なくとも別のバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬をさらに備え、ここで、該少なくとも別のバイオマーカーは、下記:
【表A20】

【0067】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される。
【0068】
いくつかの実施形態では、本発明は、個体における神経障害の診断、診断補助および/またはその進行のモニタリング、および/または個体の層別化(即ち、神経障害である可能性が高いと診断された個体または神経障害であると診断された個体を該障害の異なるクラスに分けること)において使用するための組成物を提供し、該キットは、少なくとも4つのバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬、および他のおよび別のマーカーの少なくとも1つに特異的な少なくとも1つの試薬を備え、該マーカーは、本明細書に記載される通りである。
【0069】
いくつかの実施形態では、本組成物は、下記:
【表A21】

【0070】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される少なくとも3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つまたは9つのバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬をさらに備える。
【0071】
いくつかの実施形態では、本組成物は、下記:
【表A22】

【0072】
に特異的な少なくとも1つの試薬を備える。
【0073】
別の実施形態では、少なくとも4つのバイオマーカーのうち少なくとも2つは、下記:
コルチゾール
IGF.BP.2−インスリン様成長因子結合タンパク質2
IL.17−インターロイキン−17
膵臓ポリペプチド
ApoE ECU−アポリポタンパク質E
修正されたカルシウム(Ca corr)=総Ca+((40−alb)0.02))
ABeta 42
アポリポタンパク質E4対立遺伝子
VCAM−1−血管細胞接着分子1
および天然に存在するその変異体からなる群より選択される。
【0074】
また、本発明は、神経障害の診断もしくは診断補助、および/または神経障害のモニタリングのためのシステムを提供し、該システムは、個体からの生物試料中の少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルを、該少なくとも4つのバイオマーカーについての参照レベルと比較するためのコンピュータ手段を備え、ここで、該少なくとも4つのバイオマーカーは、下記:
【表A23】

【0075】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される。
【0076】
また、本発明は、神経障害について個体を治療するための方法を提供し、該方法は、個体からの生物試料を得ることと;生物試料中の少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルを、該少なくとも4つのバイオマーカーについての参照レベルと比較することと、ここで、該少なくとも4つのバイオマーカーは、下記:
【表A24】

【0077】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択され;該少なくとも4つのバイオマーカーの参照レベルと比較して、該少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルにおいて差があり、神経障害または重度の神経障害を示す場合、神経障害の症状を軽減することができる治療学的に有効な量の薬物を個体に投与することとを備える方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】ランダムフォレスト、ブーストツリー(Boosted trees)および線形判別分析を用いて生じさせた予測モデルについてのレシーバーオペレーティング特性曲線を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0079】
[神経障害を診断補助または診断する方法]
本発明者らは、バイオマーカーの濃度またはレベルが神経障害を有する個体において変化する、個体の生物試料(例えば、血清および血漿を含む血液)に存在する1パネルのバイオマーカーを同定している。したがって、任意の1または複数のこれらのバイオマーカーのレベルの変化は、認知機能を評価し、神経障害を診断もしくはその診断を補助し、および/または患者における神経障害をモニタリングする(例えば、患者における疾患の進行を追跡、および/または患者における医学的または外科的治療の効果を追跡する)ために用いることができる。また、任意の1または複数のこれらのバイオマーカーのレベルの変化は、患者を層別化(即ち、神経障害である可能性が高いと診断された個体または神経障害であると診断された個体を該障害の異なるクラスに分けること)し、軽度認識障害(MCI)の診断または診断補助、ならびに認識障害の診断または診断補助に用いることができる。
【0080】
したがって、一態様では、本発明は、神経障害の診断を補助する方法を提供し、該方法は、個体からの生物試料中の少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルを、該少なくとも4つのバイオマーカーについての参照レベルと比較することを備え、ここで、該少なくとも4つのバイオマーカーは、下記:
【表A25】

【0081】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される。
【0082】
別の実施形態では、少なくとも4つのバイオマーカーのうち少なくとも2つのバイオマーカーは、下記;
コルチゾール
IGF.BP.2−インスリン様成長因子結合タンパク質2
IL.17−インターロイキン−17
膵臓ポリペプチド
ApoE ECU−アポリポタンパク質E
修正されたカルシウム(Ca corr)=総Ca+((40−alb)0.02))
ABeta 42
アポリポタンパク質E4対立遺伝子
VCAM−1−血管細胞接着分子1
および天然に存在するその変異体からなる群より選択される。
【0083】
本発明の別の態様では、神経障害を診断するための方法が提供され、該方法は、個体からの生物試料中の少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルを、該少なくとも4つのバイオマーカーについての参照レベルと比較することを備え、ここで、該少なくとも4つのバイオマーカーは、下記:
【表A26】

【0084】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される。
【0085】
簡潔にするために、以下の記載のいくつかは、アルツハイマー病(AD)との関連でなされる。しかしながら、当業者は、本発明がまた、他の神経障害の診断、診断補助および/またはその進行のモニタリング、ならびに他の神経障害の重症度に従う患者の層別化においても使用されてもよいことを理解し、他の神経障害は、例えば、神経退化と関連した疾患を含み、限定されないが、PD、前頭側頭認知症、脳血管疾患、多発性硬化症、およびニューロパシーを含む。また、本発明のバイオマーカーは、ADおよび他の神経障害における認知機能を評価するために用いることができる。
【0086】
本明細書で使用するとき、用語「バイオマーカー」は、限定されないが、生物試料(例えば、生体液試料)に存在するタンパク質(ポリペプチド)、ポリヌクレオチドおよび/または代謝物を含み、神経障害を有する対象由来の生物試料中のそのレベル(例えば、濃度、発現および/または活性)は、正常な対照の対象における同じバイオマーカーのレベルと比較して増加または減少する。また、任意に列挙されたバイオマーカーは、それらの遺伝子およびタンパク質の同義語を含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルと組み合わせた、個体からの生物試料中の少なくとも1つの他のバイオマーカーの測定レベルと、該少なくとも1つの他のバイオマーカーおよび少なくとも4つのバイオマーカーについての参照レベルと比較することをさらに備え、ここで、少なくとも1つの他のバイオマーカーは、下記:
【表A27】

【0088】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される。
【0089】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、(i)少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベル、および(ii)少なくとも1つの他のバイオマーカーの測定レベル、のいずれかまたはその両方と組み合わせて、個体からの生物試料中の少なくとも別のバイオマーカーの測定レベルを、該少なくとも4つのバイオマーカーおよび少なくとも別のバイオマーカーおよび/または少なくとも1つの他のバイオマーカーについての参照レベルと比較することをさらに備え、ここで、少なくとも別のバイオマーカーは、下記:
【表A28】

【0090】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーの第3のパネルから選択される。
【0091】
いくつかの他の実施形態では、本発明は、神経障害の診断を補助するための方法を提供し、該方法は、他のおよび第3のマーカーと組み合わせた、個体からの生物試料中の少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルを、該少なくとも4つのバイオマーカーおよび少なくとも1つの他の別のマーカーについての参照レベルと比較することを備え、ここで、該マーカーは、本明細書に記載される通りである。
【0092】
いくつかの実施形態では、個体からの生物試料中の少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルを比較することが、下記:
【表A29】

【0093】
および天然に存在するその変異体からなる群より選択される少なくとも3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つおよび9つのバイオマーカーの測定レベルを比較することを含む。
【0094】
当業者は、本明細書に記載されているように、神経障害を有する個体の診断補助、診断、および/またはモニタリングにおける本発明の方法の感受性および/または選択性の程度は、一般に大きく、この場合、該方法は、生物試料中の5つ全てのバイオマーカーの測定レベルを比較することを含むことを理解する。
【0095】
当業者は、本明細書に記載されているように、神経障害を有する個体の診断補助、診断、および/またはモニタリングにおける本発明の方法の感受性および/または選択性の程度は、一般に大きく、この場合、該方法は、生物試料中の9つ全てのバイオマーカーの測定レベルを、該少なくとも1つの他のバイオマーカーおよび/または少なくとも別のバイオマーカーと共に比較することを備える。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明の方法は、個体の生物試料中の下記:
【表A30】

【0097】
の測定レベルを、該バイオマーカーについての参照レベルと比較することを備える。
【0098】
典型的には、個体からの生物試料中のバイオマーカーの測定レベルの、同バイオマーカーについての参照レベルと比較した際の変化は、神経障害であることを示す。
【0099】
いくつかの実施形態では、本発明のバイオマーカーは、例えば、本明細書に記載されているように(例えば、本明細書中の実施例部分に記載されているように)、個体における神経障害の診断を補助および/または診断するために、個体の年齢を組み合わせて用いることができる。
【0100】
本発明のいくつかの実施形態では、測定レベルを、測定された各バイオマーカーについての参照レベルと比較することが、測定レベルと参照レベルとの間の倍数差を計算することを備える。本発明のいくつかの実施形態では、本方法は、測定された各バイオマーカーについての倍数差と最小倍数差レベルを比較することをさらに備える。本発明のいくつかの実施形態では、本方法は、測定レベルと参照レベルの比較についての値を得るステップをさらに備える。また、本明細書には、本明細書中に記載されるように、該方法によって得られる値を備えたコンピュータ読み込み可能なフォーマットが提供される。
【0101】
いくつかの実施形態では、神経障害は、バイオマーカーのレベル(例えば、濃度、発現および/または活性)が、該バイオマーカーの参照レベルと比較して、約20%〜約100%増加または減少するときに診断される。
【0102】
いくつかの実施形態では、生物試料は末梢の生体液試料であり、限定されないが、脳脊髄液、血液、血清または血漿を含む。いくつかの実施形態では、生物試料は血漿である。
【0103】
いくつかの実施形態では、測定レベルと参照レベルの比較は、測定レベルと参照レベルとの間の倍数差を計算することを含む。いくつかの実施形態では、測定値は試料中のバイオマーカー(単数または複数)のレベルを測定することによって得られ、一方、他の実施形態では、測定レベルは第三者から得られる。典型的には、少なくとも1つのバイオマーカーの参照レベルと比較して、個体からの生物試料中の少なくとも1つのバイオマーカーの測定レベルにおける増加または減少は、神経障害の診断を示唆する。
【0104】
本明細書で使用するとき、用語「アルツハイマー病患者」、「AD患者」、および「ADであると診断された個体」などは、ADであると診断されたか、またはADである可能性が高いと診断された個体を集合的に指す。
【0105】
本明細書で使用するとき、用語「生物試料」は、典型的には、診断またはモニタリングのアッセイに使用することができる個体から得られた様々な試料タイプを指し、限定されないが、血液(全血)、血漿もしくは血清、尿、脳脊髄液、涙または唾液を含む。血液試料は、例えば、血小板、リンパ球、多形核細胞、マクロファージ、赤血球を含む、血液に存在する様々な細胞型を含んでもよい。本発明のいくつかの実施形態では、バイオマーカーは、表1に列挙されたものから選択される。また、この用語は、試料の調達後に任意の方法で、例えば、試薬による処理、可溶化、またはある成分、例えばタンパク質もしくはポリヌクレオチドについての富化によって操作された試料を含む。
【0106】
本明細書で使用するとき、用語「末梢の生体液試料」とは、典型的には、中枢神経系に由来しない生体液試料(即ち、CSF試料ではない)を指し、血液試料およびCNSに由来しない他の生体液(例えば、涙、唾液、尿)を含む。
【0107】
用語「ADバイオマーカー」などは、本明細書で使用するとき、バイオマーカーが、ADを有する個体を診断補助し、診断し、モニタリングし、または分類するために用いられるためだけであることを示すことを意図しない。本開示によって明確になるように、本発明のバイオマーカーはまた、例えば、認知機能を評価し、MCIを評価し、ADを分類するなど、ならびに認知機能を評価し、他の神経障害、例えば神経変性と関連した疾患を分類することに有用である。
【0108】
用語「バイオマーカーポリヌクレオチド」とは、本明細書で使用するとき、典型的には、本発明のバイオマーカーをコードするポリヌクレオチド配列、関連したトランス作用制御エレメント(例えば、プロモータ、エンハンサ、および他の遺伝子調節配列)、および/または本発明のバイオマーカーをコードするmRNAのいずれかを指す。
【0109】
本明細書で使用するとき、「診断を補助する」ための方法とは、典型的には、神経障害(例えば、AD)の存在、または性質に関する臨床的決定を補助し、確定診断に関して決定的であってもよく、またはそうでなくてもよい方法を指す。したがって、例えば、神経障害の診断を補助するための方法は、本明細書に記載されるように、個体からの生物試料中の1または複数のバイオマーカーの量を測定することを備えることができる。別の例では、本発明に係る神経学的状態の診断を補助するための方法は、神経障害の臨床的評価の他の方法と組み合わせて用いることができ、その臨床的評価には、限定されないが、記憶および/または心理テスト、画像試験(例えば、磁気共鳴映像法(MRI)および陽電子放出型断層撮影(PET))、言語機能障害および/または他の焦点認識障害(例えば、失行、計算不能および左−右失見当)の評価、判断力の低下および一般的な問題解決の困難性の評価、進行性受動から顕著な興奮までの範囲の個人的な変化の評価、および患者の脳脊髄液中のアミロイドベータとtauタンパク質レベルの測定を含む。
【0110】
本明細書で使用するとき、用語「層別化すること」とは、典型的には、神経障害に基づく異なるクラスまたは階層に個体を層別化することを指す。例えば、神経障害を有する個体の集団を層別化することは、この疾患の重傷度(例えば、軽度、中程度、進行性など)に基づいて個体を帰属することを伴う。
【0111】
本明細書で使用するとき、用語「神経疾患」および「神経障害」とは、典型的には、中枢神経系の疾患または障害を指す。神経疾患または神経障害は、限定されないが、多発性硬化症、ニューロパシー、および神経変性障害、例えば、AD、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、軽度認識障害(MCI)、ダウン症、および前頭側頭型認知症、レヴィー小体を伴う認知症、血管性認知症、パーキンソン病認知症などを含む認知症の全ての形態を含む。この用語は、AD/MCIに類似し、これに結びつく全ての疾患を含む。パーキンソン病患者の約30%はアルツハイマー病を発症する。鉄恒常性および酸化的ストレスは、両疾患、ならびに炎症経路において役割を果たす。ダウン症候群の人々は、アミロイド斑病理学を発症し、多くは、続いてアルツハイマー病を発症する。任意に、神経疾患または神経障害は、特定の炎症、及びアミロイド斑形成病理学を有する疾患または障害を含む。
【0112】
本明細書で使用するとき、用語「個体」とは、典型的には、哺乳動物を指し、限定されないが、ヒト、霊長類、家畜、げっ歯類および愛玩動物を含む。
【0113】
「正常な」個体、または「正常な」個体からの試料は、定量的および定性的データに関して本明細書で使用するとき、典型的には、ADおよび他の神経学的状態を有しないものとして医師によって評価されているかまたは評価された、およびミニメンタルステート試験(MMSE)スコアを有するか、または25〜30の範囲のMMSEスコアに達したであろう個体を指す(Folstein et al.,J.Psychiatr.Res 1975;12:1289−198参照)。「正常な」個体は、典型的には、5〜10年の範囲内で年齢が合致し、限定されないが、評価されるべき個体と年齢が合致している個体を含む。
【0114】
本明細書で使用するとき、「軽度ADを有する個体」とは、(i)ADであると診断されたか、またはADである可能性が高いと診断され、および(ii)ミニメンタルステート試験(MMSE)を用いて評価され、スコアが22〜27であるか、またはMMSE試験によりスコアが22〜27に達したであろう個体である。したがって、「軽度AD」は、本明細書で使用するとき、典型的には、MMSEで評価され、スコアが22〜27であるか、またはMMSE試験によりスコアが22〜27に達したであろう個体におけるADを指す。
【0115】
本明細書で使用するとき、「中程度ADを有する個体」は、(i)ADであると診断されているか、またはADである可能性が高いと診断され、および(ii)MMSE)を用いて評価され、スコアが16〜21であるか、またはMMSE試験によりスコアが16〜21に達したであろう個体である。したがって、「中程度AD」は、MMSEで評価され、スコアが16〜21であるか、またはMMSE試験によりスコアが16〜21に達したであろう個体におけるADを指す。
【0116】
本明細書で使用するとき、「重度ADを有する個体」は、(i)ADであると診断されているか、またはADである可能性が高いと診断され、および(ii)MMSE)を用いて評価され、スコアが12〜15であるか、またはMMSE試験によりスコアが12〜15に達したであろう個体である。したがって、「重度AD」は、MMSEで評価され、スコアが12〜15であるか、またはMMSE試験によりスコアが12〜15に達したであろう個体におけるADを指す。
【0117】
本明細書で使用するとき、用語「治療」とは、典型的には、症状の緩和、改善、および/または安定化、ならびに特定の障害における症状の進行の遅延を指す。例えば、ADの「治療」は、ADの1または複数の症状の排除、ADの1または複数の症状の減少、ADの症状の安定化(例えば、ADのより進行した段階への進行の停止)、およびADの1または複数の症状の進行(即ち、悪化)の遅延、の任意の1以上を含む。
【0118】
本明細書で使用するとき、用語「倍数差」とは、典型的には、本発明のバイオマーカーの測定値と参照値との間の程度差の数値表現を指す。倍数差は、測定された数値を参照の数値で割ることによって数学的に計算され得る。例えば、バイオマーカーについての測定値が20ナノグラム/ミリリットル(ng/ml)であり、参照値が10ng/mlである場合、倍数差は2である。したがって、バイオマーカーについての測定値が10ナノグラム/ミリリットル(ng/ml)であり、参照値が20ng/mlである場合、倍数差は−0.50(または−50%)である
本明細書で使用するとき、「参照値」は、絶対値、相対値、上限および/または下限を有する値、値の範囲、平均(average)値、中央値、平均(mean)値、または特定の対照もしくは基準値と比較した場合の値であってもよい。参照値は、個体試料の値に基づいて、例えば、AD、MCIまたは認識障害を有する個体に由来する試料から得られた値であってもよいが、より早い時間点であるものであり、または試験される個体以外のAD患者、または本明細書に記載されるような「正常な」個体(即ち、ADおよび他の神経学的状態であると診断されていない個体)に由来する使用から得られた値であり得る。参照値は、大多数の試料に基づき、例えば、AD患者もしくは正常な個体由来であってもよく、または試験されるべき試料を含む試料もしくは除かれている試料のプールに基づいてもよい。参照値は、より早い時間点で採取された試料に由来してもよい。
【0119】
本明細書で使用するとき、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」は、他に指示がなければ、単数または複数を意味し得る(即ち、1または複数を意味し得る)。
【0120】
本明細書で使用するとき、用語「天然に存在する」とは、典型的には、天然に存在するアミノ酸配列を有するペプチドバイオマーカー(例えば、天然のタンパク質)(またはその変異体)を指す。バイオマーカーがポリヌクレオチドである場合、当業者は、用語「天然に存在する」とは、典型的には、天然に存在する核酸配列を有するバイオマーカーを指すことを理解する。
【0121】
本明細書で使用するとき、バイオマーカーの「変異体」は、天然の分子に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列または核酸配列を示してもよい。また、用語「変異体」によって、天然の分子に対して、少なくとも90%同一、好ましくは少なくとも95%同一、より好ましくは少なくとも98%同一、さらにより好ましくは99%同一、または最も好ましくは99.9%同一であるアミノ酸配列または核酸配列を有する天然に存在する分子が包含される。同一パーセントは、目視検査および数学的計算によって決定されてもよい。天然に存在する変異体のうち、天然の生物活性を保持した天然のバイオマーカーまたは実質的なその同等物が提供される。また、本明細書において、実質的に生物活性がない天然に存在する変異体、例えば、生物活性なバイオマーカーの突然変異または前駆体に由来する変異体も提供される。
【0122】
また、本発明のバイオマーカーの変異体は、バイオマーカーの天然の形態に実質的に相同であるが、1もしくは複数の欠失、挿入または置換のために、天然のものとは異なる形態であるアミノ酸配列または核酸配列を有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含んでもよい。いくつかの実施形態では、変異体は、天然の形態と比較した場合、アミノ酸残基または核酸残基の1〜10個の欠失、挿入または置換を含むポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含む。所定の配列は、例えば、類似の物理化学的特徴を有する残基によって置換されてもよい。このような保存的置換の例には、Ile、Val、LeuまたはAlaなどの1つの脂肪族残基の別の脂肪族残基への置換;LysとArg間、GluとAsp間、またはGlnとAsn間などの極性残基同士の置換;またはPhe、TrpもしくはTyrなどの1つの芳香族残基の別の芳香族残基への置換がある。他の保存的置換は、例えば、類似の疎水的特徴を有する全領域の置換を伴い、当該技術分野において周知である。また、変異体は、天然分子の切断によって生じさせてもよい。「保存的アミノ酸置換」は、典型的には、アミノ酸が、類似の側鎖を有するアミノ酸で置換されるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当該技術分野において画定されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。したがって、バイオマーカーポリペプチドのアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリー由来の別のアミノ酸残基で置換されてもよい。
【0123】
バイオマーカーの生物活性は、対象とするバイオマーカーの性質に依存して、当該技術分野において知られている任意の多数の手段によって、当業者により評価され得る。
【0124】
本発明の方法によって導かれる結果の評価は、本明細書に記載されている定性的もしくは定量的な方法によって、および/または使用される参照点のタイプによってデータが得られるか否か依存し得る。例えば、本明細書中、実施例に記載されるように、生体液試料中の定量値または絶対値(例えば、タンパク質濃度レベル)を得ることができる。「定量的」な結果またはデータは、典型的には、試料中のバイオマーカーの濃度(pg/mlまたはng/ml)を含むことができる絶対値を指す。定量値の例は、直接的には、例えば、ELISAによるタンパク質レベルの濃度の測定である。「定性的」な結果またはデータは、典型的には、参照値と比較される参照値を指す。
【0125】
また、結果は、ランダムフォレスト、サポートベクターマシン、マイクロアレイデータのための線形モデル(LIMMA)および/またはマイクロアレイデータの有意性検定(SAM)、最良優先、貪欲ステップワイズ、ナイーブベイズ、線形前進選択、分散探索、線形判別分析(LDA)、ステップワイズロジスティック回帰、レシーバーオペレーティング特性、および分類ツリー(CT)からなる群より選択される統計法の1つまたは複数によって評価および比較されてもよい。いくつかの実施形態では、本発明のバイオマーカーに特異的な複数の試薬が、適切な基質(表面)、例えば、スライド、フィルターまたはビーズに結合される。結果の定性的評価は、標準化データを含んでもよい。この開示に、バイオマーカーの種々のセットが記載されている。本発明は、これらのセット、該セットの任意の1または複数のメンバー、ならびに該セットを含むマーカーの使用を意図することが理解される。
【0126】
試薬は、抗体またはその抗原結合断片(例えば、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、抗イディオタイプ、キメラまたは一本鎖抗体、およびFAb、F(ab’)およびFAb発現ライブラリー断片、scFV分子、ならびにそのエピトープ結合断片を含む)、オリゴヌクレオチドもしくは断片、または本発明のバイオマーカーに結合し得る他の低分子を含んでもよい。
【0127】
[認知機能障害の評価、診断または診断補助の方法]
また、本発明は、認知機能を評価し、認知機能障害を評価し、認知機能障害を診断または診断補助する方法を提供し、該方法は、個体からの生物試料中の少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルを、該少なくとも4つのバイオマーカーについての参照レベルと比較することを備え、ここで、該少なくとも4つのバイオマーカーは、下記:
【表A31】

【0128】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される。
【0129】
別の実施形態では、少なくとも4つのバイオマーカーのうちの少なくとも2つは、下記:
コルチゾール
IGF.BP.2−インスリン様成長因子結合タンパク質2
IL.17−インターロイキン−17
膵臓ポリペプチド
ApoE ECU−アポリポタンパク質E
修正されたカルシウム(Ca corr)=総Ca+((40−alb)0.02))
ABeta 42
アポリポタンパク質E4対立遺伝子
VCAM−1−血管細胞接着分子1
および天然に存在するその変異体からなる群より選択される。
【0130】
いくつかの実施形態では、個体からの生物試料中の少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルを比較することが、下記:
【表A32】

【0131】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される少なくとも3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つまたは9つのバイオマーカーの測定レベルを比較することを備える。
【0132】
当業者は、本明細書に記載されるように、神経障害を有する個体の診断補助、診断および/またはモニタリング、および/または個体の層別化における本発明の方法の感受性および/または選択性の程度は、一般により大きく、この場合、本方法は、生物試料中の9つのバイオマーカーの測定レベルを比較することを備えることを理解する。
【0133】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルと組み合わせた、個体からの生物試料中の少なくとも1つの他のバイオマーカーの測定レベルを、該少なくとも1つの他のバイオマーカーおよび少なくとも4つのバイオマーカーについての参照レベルと比較することをさらに備え、ここで、該少なくとも1つの他のバイオマーカーは、下記:
【表A33】

【0134】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される。
【0135】
いくつかの実施形態では、個体からの生物試料中の少なくとも1つの他のバイオマーカーの測定レベルを比較することが、下記:
【表A34】

【0136】
および天然に存在するその変異体からなる群より選択される、少なくとも最大全てのバイオマーカーの測定レベルを比較することを備える。
【0137】
当業者は、本明細書に記載されるように、神経障害を有する個体の診断補助、診断および/またはモニタリング、および/または個体の層別化における本発明の方法の感受性および/または選択性の程度は、一般により大きく、この場合、該方法は、生物試料中の9つ全ての他のバイオマーカーの測定レベルを比較することを備えるが、個体からの生物試料中の1つの他のバイオマーカーの測定レベルを十分に比較し得ることを理解する。
【0138】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルと組み合わせた、個体からの生物試料中の少なくとも別のバイオマーカーの測定レベルを、該少なくとも別のバイオマーカーおよび少なくとも4つのバイオマーカーについての参照レベルと比較することをさらに備え、ここで、該少なくとも別のバイオマーカーは、下記:
【表A35】

【0139】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーの第3のパネルから選択される。
【0140】
いくつかの実施形態では、個体からの生物試料中の少なくとも別のバイオマーカーの測定レベルを比較することが、下記:
【表A36】

【0141】
から選択される少なくとも最大全てのバイオマーカーの測定レベルを比較することを備える。
【0142】
当業者は、本明細書の記載されるように、神経障害を有する個体の診断補助、診断および/またはモニタリング、および/または個体の層別化における本発明の方法の感受性および/または選択性の程度は、一般により大きく、この場合、該方法は、生物試料中の11個全ての第3のバイオマーカーの測定レベルを比較することを備えるが、個体からの生物試料中の別のバイオマーカーの測定レベルを十分に比較することができる。
【0143】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、個体からの生物試料中の少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルを比較し、さらに、個体からの生物試料中の少なくとも1つの他のバイオマーカーの測定レベルを比較することを備え、該少なくとも4つのバイオマーカーと少なくとも1つの他のバイオマーカーの測定レベルは、個体からの同じ生物試料由来であるか、または異なる生物試料由来である。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、個体からの生物試料中の少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルを比較し、さらに、個体からの生物試料中の少なくとも別のバイオマーカーの測定レベルを比較することを備え、該少なくとも4つのバイオマーカーと少なくとも別のバイオマーカーの測定レベルは、個体からの同じ生物試料由来であるか、または異なる生物試料由来である。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、個体からの生物試料中の少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルを比較し、さらに、個体からの生物試料中の少なくとも1つの他のバイオマーカーの測定レベルを比較し、さらに、個体からの生物試料中の少なくとも別のバイオマーカーの測定レベルを比較することを備え、該少なくとも4つのバイオマーカー、少なくとも1つの他のバイオマーカー、および少なくとも別のバイオマーカーの測定レベルは、個体からの同じ生物試料由来であるか、または異なる生物試料由来である。
【0144】
当業者は、本発明のいくつかの実施形態では、本明細書に記載されるように、神経障害を有する個体の診断補助、診断および/またはモニタリング、および/または個体の層別化における本発明の方法の感受性および/または選択性の程度は、より大きくてもよく、この場合、本願明細書に記載されるように、該方法は、生物試料中の全てのバイオマーカーの測定レベルを、該少なくとも1つの他のバイオマーカーおよび/または少なくとも別のバイオマーカーと比較することを備える。
【0145】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明の方法は、個体の生物試料中の、下記:
【表A37】

【0146】
の測定レベルを、該バイオマーカーについての参照レベルと比較することを備える。
【0147】
[個体を層別化するための方法]
本発明のさらに別の態様では、個体を神経障害の1または複数のクラスに層別化する(即ち、神経障害である可能性が高いと診断された個体または神経障害であると診断された個体を該障害の異なるクラスに分ける)ための方法が提供され、該方法は、個体からの生物試料中の少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルを、該少なくとも4つのバイオマーカーについての参照レベルと比較することを備え、ここで、該少なくとも4つのバイオマーカーは、下記:
【表A38】

【0148】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される。
【0149】
別の実施形態では、少なくとも4つのバイオマーカーのうち少なくとも2つは、下記:
コルチゾール
IGF.BP.2−インスリン様成長因子結合タンパク質2
IL.17−インターロイキン−17
膵臓ポリペプチド
ApoE ECU−アポリポタンパク質E
修正されたカルシウム(Ca corr)=総Ca+((40−alb)0.02))
ABeta 42
アポリポタンパク質E4対立遺伝子
VCAM−1−血管細胞接着分子1
および天然に存在するその変異体からなる群より選択される。
【0150】
いくつかの実施形態では、個体からの生物試料中の少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルを比較することが、下記:
コルチゾール
IGF.BP.2−インスリン様成長因子結合タンパク質2
IL.17−インターロイキン−17
膵臓ポリペプチド
ApoE ECU−アポリポタンパク質E
修正されたカルシウム(Ca corr)=総Ca+((40−alb)0.02))
ABeta 42
アポリポタンパク質E4対立遺伝子
VCAM−1−血管細胞接着分子1
からなる群より選択される少なくとも3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、または9つのバイオマーカーの測定レベルを比較することを備える。
【0151】
当業者は、本明細書に記載されるように、神経障害を有する個体の診断補助、診断および/またはモニタリング、および/または個体の層別化における本発明の方法の感受性および/または選択性の程度が、一般にはより大きく、この場合、該方法は、生物試料中の最大全てのバイオマーカーの測定レベルを比較することを備えることを理解する。
【0152】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルと組み合わせた、個体からの生物試料中の少なくとも1つの他のバイオマーカーの測定レベルを、該少なくとも1つの他のバイオマーカーおよび少なくとも4つのバイオマーカーについての参照レベルと比較することをさらに備え、ここで、該少なくとも1つの他のバイオマーカーは、
【表A39】

【0153】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される。
【0154】
いくつかの実施形態では、個体からの生物試料中の少なくとも1つの他のバイオマーカーの測定レベルを比較することが、少なくとも最大16個の他のバイオマーカーの測定レベルを比較することを備える。当業者は、本明細書に記載されるように、神経障害を有する個体の診断補助、診断および/またはモニタリング、および/または個体の層別化における本発明の方法の感受性および/または選択性の程度が、一般的により大きく、この場合、該方法は、生物試料中の9つ全ての他のバイオマーカーの測定レベルを比較することを備えるが、個体からの生物試料中の1つの他のバイオマーカーの測定レベルを十分に比較し得ることを理解する。
【0155】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルと組み合わせた、個体からの生物試料中の少なくとも別のバイオマーカーの測定レベルを、該少なくとも別のバイオマーカーおよび少なくとも4つのバイオマーカーについての参照レベルと比較することをさらに備え、ここで、該少なくとも別のバイオマーカーは、下記:
【表A40】

【0156】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーの第3のパネルから選択される。
【0157】
いくつかの実施形態では、個体からの生物試料中の少なくとも別のバイオマーカーの測定レベルを比較することが、少なくとも3〜25個の連続した別のバイオマーカーの測定レベルを比較することを備える。当業者は、本明細書に記載されるように、神経障害を有する個体の診断補助、診断および/またはモニタリング、および/または個体の層別化における本発明の方法の感受性および/または選択性の程度が、一般的にはより大きく、この場合、該方法は、生物試料中の11個全ての第3のバイオマーカーの測定レベルを比較することを含むが、個体からの生物試料中の別のバイオマーカーの測定レベルを十分に比較し得ることを理解する。
【0158】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、個体からの生物試料中の4つのバイオマーカーの測定レベルを比較することを備え、さらに、個体からの生物試料中の少なくとも1つの他のバイオマーカーの測定レベルを比較することを備え、該バイオマーカーの測定レベルは個体からの同じ生物試料由来であるか、または異なる生物試料由来である。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、個体からの生物試料中の4つのバイオマーカーの測定レベルを比較することを備え、さらに、個体からの生物試料中の少なくとも別のバイオマーカーの測定レベルを比較することを備え、該バイオマーカーの測定レベルは個体からの同じ生物試料由来であるか、または異なる生物試料由来である。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、個体からの生物試料中の4つのバイオマーカーの測定レベルを比較し、さらに、個体からの生物試料中の少なくとも1つの他のバイオマーカーの測定レベルを比較し、さらに、個体からの生物試料中の少なくとも別のバイオマーカーの測定レベルを比較することを備え、該バイオマーカーの測定レベルは個体からの同じ生物試料由来であるか、または異なる生物試料由来である。
【0159】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明の方法は、個体の生物試料中の、下記:
【表A41】

【0160】
の測定レベルを、該バイオマーカーについての参照レベルと比較することを備える。
【0161】
[神経障害の進行をモニタリングするための方法]
本発明のさらなる態様では、神経障害の進行をモニタリングするための方法が提供され、該方法は、個体からの生物試料中の少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルを、該バイオマーカーについての参照レベルと比較することを備え、ここで、該少なくとも4つのバイオマーカーは、下記:
【表A42】

【0162】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される。
【0163】
別の実施形態では、少なくとも4つのバイオマーカーのうちの少なくとも2つは、下記:
コルチゾール
IGF.BP.2−インスリン様成長因子結合タンパク質2
IL.17−インターロイキン−17
膵臓ポリペプチド
ApoE ECU−アポリポタンパク質E
修正されたカルシウム(Ca corr)=総Ca+((40−alb)0.02))
ABeta 42
アポリポタンパク質E4対立遺伝子
VCAM−1−血管細胞接着分子1
および天然に存在するその変異体からなる群より選択される。
【0164】
いくつかの実施形態では、個体からの生物試料中の少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルを比較することが、下記:
【表A43】

【0165】
および天然に存在するその変異体
を備える集団について少なくとも最大9つ(連続した番号付けされる)の測定レベルを比較することを備える。
【0166】
当業者は、本明細書に記載されるように、神経障害を有する個体の診断補助、診断および/またはモニタリング、および/または個体の層別化における本発明の方法の感受性および/または選択性の程度が、一般的にはより大きく、この場合、該方法は、生物試料中の全てのバイオマーカーの測定レベルを比較することを備える。
【0167】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルと組み合わせた、個体からの生物試料中の少なくとも1つの他のバイオマーカーの測定レベルを、該少なくとも1つの他のバイオマーカーと少なくとも4つのバイオマーカーについての参照レベルと比較することを備え、ここで、該少なくとも1つの他のバイオマーカーは、下記:
【表A44】

【0168】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される。
【0169】
いくつかの実施形態では、個体からの生物試料中の少なくとも1つの他のバイオマーカーの測定レベルを比較することが、少なくとも最大16個のバイオマーカーの測定レベルを比較することを備える。当業者は、本明細書に記載されているように、神経障害を有する個体の診断補助、診断および/またはモニタリング、および/または個体の層別化における本発明の方法の感受性および/または選択性の程度は、一般にはより大きく、この場合、該方法は、生物試料中の9つ全ての他のバイオマーカーの測定レベルを比較することを備えるが、個体からの生物試料中の1つの他のバイオマーカーの測定レベルを十分に比較し得ることを理解する。
【0170】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルと組み合わせた、個体からの生物試料中の少なくとも別のバイオマーカーの測定レベルを、該少なくとも別のバイオマーカーおよび少なくとも4つのバイオマーカーについての参照レベルと比較することをさらに備え、ここで、該少なくとも別のバイオマーカーは、下記:
【表A45】

【0171】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される。
【0172】
いくつかの実施形態では、個体からの生物試料中の少なくとも別のバイオマーカーの測定レベルを比較することが、少なくとも最大全ての別のバイオマーカーの測定レベルを比較することを備える。当業者は、本明細書に記載されているように、神経障害を有する個体の診断補助、診断および/またはモニタリング、および/または個体の層別化における本発明の方法の感受性の程度は、一般により大きく、この場合、該方法は、生物試料中の11個全ての第3のバイオマーカーの測定レベルを比較することを備えるが、個体からの生物試料中の別のバイオマーカーの測定レベルを十分に比較し得ることを理解する。
【0173】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、個体からの生物試料中の4つのバイオマーカーの測定レベルを備え、さらに、個体からの生物試料中の少なくとも1つの他のバイオマーカーの測定レベルを比較することを備え、ここで、該バイオマーカーの測定レベルは、個体からの同じ生物試料由来であるか、または異なる生物試料由来である。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、個体からの生物試料中の4つのバイオマーカーの測定レベルを備え、さらに、個体からの生物試料中の少なくとも別のバイオマーカーの測定レベルを比較することを備え、ここで、該バイオマーカーの測定レベルは、個体からの同じ生物試料由来であるか、または異なる生物試料由来である。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、個体からの生物試料中の4つのバイオマーカーの測定レベルを備え、さらに、個体からの生物試料中の少なくとも1つの他のバイオマーカーの測定レベルを比較することを備え、さらに、個体からの生物試料中の少なくとも別のバイオマーカーの測定レベルを比較することを備え、ここで、該バイオマーカーの測定レベルは、個体からの同じ生物試料由来であるか、または異なる生物試料由来である。
【0174】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明の方法は、生物試料中の、下記:
【表A46】

【0175】
の測定レベルを、該バイオマーカーについての参照レベルと比較することを備える。
【0176】
本発明のいくつかの実施形態では、バイオマーカーに対する測定レベルは、1回を超える時間点で個体から得られる。このような「連続」サンプリングは、例えば、神経障害の進行のモニタリングに十分に適している。連続サンプリングは、任意の所望のタイムスケジュール、例えば、月1回、年4回(即ち、3カ月ごと)、半年ごと、1年ごと、2年ごと、またはそれほど頻繁でなく、行うことができる。測定レベルと参照レベルとの間の比較は、新しい試料が測定される各時間で行われてもよく、またはレベルに関連したデータはそれほど頻繁でない分析について保持されてもよい。
【0177】
本発明のいくつかの実施形態では、末梢の生体液試料を含む生物試料は、ADまたはMCIなどの神経障害を有することが疑われるかまたはそれを発症している個体から回収される。また、本発明は、認知機能評価が望まれる個体からの試料を意図する。あるいは、個体(または、例えば研究および/または臨床医に関わる他者)は、神経障害であるかまたは神経障害であることが疑われる任意の指示なしにこのような評価を望んでもよい。例えば、正常な個体は、このような情報を望んでもよい。いくつかの実施形態では、個体は65歳以上であるが、生物試料、例えば末梢の生体液試料が、本発明の方法において使用するために採取される個体は、早期発症のADまたは家族性ADが疑われる35〜40歳程度の若さであってもよい。
【0178】
[バイオマーカーを同定するための方法]
また、本発明は、神経障害の診断、診断補助および/またはモニタリング、および/または個体の層別化(即ち、神経障害である可能性が高いと診断された個体または神経障害であると診断された個体を該障害の異なるクラスに分けること)に有用な1または複数のバイオマーカーを同定するための方法を提供する。
【0179】
本発明の一態様では、個体における神経障害の診断、診断補助および/またはその進行のモニタリング、および/または個体の層別化における使用のための少なくとも1つのバイオマーカーを同定するための方法が提供され、該方法は、複数のバイオマーカーについて1セットの生物試料から測定値を得ることと、ここで、該セットの生物試料は、神経障害に基づいてサブセットに分けることができ、少なくとも1つのバイオマーカーについて各サブセットからの測定値を比較することと;該測定値がサブセット間で有意に異なる少なくとも1つのバイオマーカーを同定することとを備える。
【0180】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカーについて各サブセットからの測定値を比較することが、ランダムフォレスト、サポートベクターマシン、マイクロアレイデータのための線形モデル(LIMMA)および/またはマイクロアレイデータの有意性検定(SAM)、最良優先、貪欲ステップワイズ、ナイーブベイズ、線形前進選択、分散探索、線形判別分析(LDA)、ステップワイズロジスティック回帰、レシーバーオペレーティング特性、および分類ツリー(CT)からなる群より選択される統計学的方法の1または複数によって行われる。
【0181】
いくつかの実施形態では、本方法は、ブーストツリー(BT)を用いることによって、少なくとも1つのバイオマーカーについての各サブセットからの測定値を比較することを備える。いくつかの実施形態では、本方法は、個体における神経障害の診断または診断補助における少なくとも85%の感受性と少なくとも85%の特異性を提供する。
【0182】
いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つのバイオマーカーについての各サブセットからの測定値を比較することが、ランダムフォレスト、サポートベクターマシン、マイクロアレイデータのための線形モデル(LIMMA)および/またはマイクロアレイデータの有意性検定(SAM)、最良優先、貪欲ステップワイズ、ナイーブベイズ、線形前進選択、分散探索、線形判別分析(LDA)、ステップワイズロジスティック回帰、レシーバーオペレーティング特性、および分類ツリーの組み合わせによって行われることを備える。
【0183】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカーは、下記:
【表A47】

【0184】
および天然に存在するその変異体からなる群より選択される。
【0185】
いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つのバイオマーカーについて各サブセットからの測定値を比較することを備え、さらに、本明細書(例えば、本明細書中の実施例)に記載されるように、1セットの生物試料が得られた個体の年齢を比較することを備えてもよい。
【0186】
本発明のいくつかの実施形態では、バイオマーカーのパネルのレベルは、1または複数の個体からの1セットの生物試料について得られる。該試料(例えば、正常な個体および筋萎縮性側索硬化症であると診断された個体からの試料、または軽度ADを有する個体および重度ADおよび/または他の神経疾患を有する個体、例えば神経変性疾患を有する個体からの試料)は、神経疾患に基づいて1または複数のサブセットに分離することができる。該試料からの測定値は互いに比較され、サブセットのうちで有意に異なるそれらのバイオマーカーを同定する。次に、サブセットのうちで有意に変化するそれらのバイオマーカーは、本明細書に記載されるように、神経障害の診断補助、診断、層別化および/またはモニタリングのための方法に用いられてもよい。
【0187】
本発明の他の態様では、1または複数の個体からの1セットの生物試料(この場合、試料は、神経障害に基づいて1または複数のサブセットに分離され得る)における1パネルのバイオマーカーの測定値が比較され、ここで、有意に変化するバイオマーカーは、本明細書に記載されるように、神経疾患の診断補助、診断、層別化および/またはモニタリングに有用である。本発明のさらなる態様では、1または複数の個体からの1セットの生体液試料(この場合、該試料は、神経障害に基づいて1または複数のサブセットに分離され得る)における一群のバイオマーカーのレベル(例えば、濃度、発現および/または活性)は、測定値を生じさせるために測定され、ここで、ラベルが(例えば、参照レベルから)有意に変化するバイオマーカーは、本明細書に記載されるように、神経障害の診断補助、診断、層別化および/またはモニタリングに有用である。
【0188】
本発明のこの態様は、典型的には、1または複数の個体に由来する1セットの生物試料、例えば血液試料を利用する。このセットの試料は、神経障害または重度の神経障害に基づいて1または複数のサブセットに分割され得るように選択される。サブセットへの分割は、疾患の存在/不存在、疾患の層別化(例えば軽度対中程度)、または疾患のサブ層別化(例えば、再発/寛解対進行性再発)に基づいていてもよい。
【0189】
本発明の実施において測定されるバイオマーカーは、例えば、対象とする生物試料において見出される任意のタンパク性生物学的マーカーであってもよい。表1は、例示的なバイオマーカーの回収または集団を含む。
【0190】
したがって、本発明の一態様では、本明細書に記載されるように、神経障害の診断補助、診断、検出および/または層別化に用いることができる少なくとも1つのバイオマーカーを同定するための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、1セットの生物試料からの複数のバイオマーカーについての1セットの測定値を得ること、この場合、1セットの生物試料は、神経障害と関連した少なくとも2つのサブセットに分けることができ、各バイオマーカーについてのサブセット間の該測定値を比較すること、該サブセット間で有意に異なるバイオマーカーを同定することによって実行される。
【0191】
測定値を比較するためのプロセスは、当該技術分野において知られている任意の方法によって行うことができ、マイクロアレイの有意分析、ツリーハーベスティング(Tree Harvesting)、CART、MARS、自己組織化マップ(Self Organizing Maps)、多頻度アイテム集合(Frequent Item Set)、またはベイジアンネットワークを含む。本発明のいくつかの実施形態では、測定値を比較するためのプロセスは、ランダムフォレスト(RF)、ブーストツリー(BT)、マイクロアレイデータのための線形モデル(LIMMA)、分類ツリー(CT)、線形判別分析(LDA)、ステップワイズロジスティック回帰およびレシーバーオペレーティング特性(ROC)からなる群より選択される統計法の1または複数によって行われる。
【0192】
RF(分類)は、各ケースにクラスメンバーシップを推測ための分類ツリーを用いる変数選択法である。RFは多数の分類ツリー(森)を増やし、クラスメンバーシップを予測するために木から候補数をカウントする(各木は特定クラスについての候補を提供する)。RFは変数重要度を出力し、それは、各変数がどれほど十分にクラスメンバーシップを予測するかに関する相対的測定である。変数重要度は、各RFモデルから精度における平均減少としてプロットされる。有用なバイオマーカーの減少したリストをコンパイルし、クラス予測の精度を増大させるために、変数減少後の多重RF相互作用は、変数重要度に基づいてコンピュータ計算され得る。
【0193】
LIMMA法は、マイクロアレイデータの分析において幅広く用いられている。その一般的な目的は、2つのクラス間の遺伝子発現差を同定することであり、この場合、P>>Nである(即ち、観察よりも変数が多い)。本方法は、典型的には、標準線形モデルをデータに適合させることから開始し、次に、変数全体で情報を借りるための経験ベイズアプローチを用い、拡張された自由度とともに中程度のt−統計を用いる。LIMMA法は、平均試料間の相対差において有用である偽発見率(False Discovry Rate)(FDR)調整されたp値(q値)を出力する。LIMMA法は、HCとAD参加者間の平均バイオマーカーレベルの差を決定するために用いることができる。
【0194】
CT法は、非線形回帰に対する代替のアプローチであり、この場合、多重変数間に多数の複雑な相互作用があり、それらは、本来、連続的であるかまたは絶対的である。本方法は、多重変数間の相互作用が同じになるように、データの多重分割または再分割(再帰分割)を創出する。再帰分割は、多重分類ツリーの創出に類似し、この場合、内部分岐が質問であり、外葉はこの質問に対する回答である。単一の分割またはツリーが策定されていると、単一の局所モデルは、最終のツリー構造を出力する前にコンピュータ計算され、どの分岐(または変数)が分離されるべきかの基準を含む。この方法は、(i)モデルにおける最終ツリーのためにどの変数が選択されるかを調べることを可能にし、(ii)レシーバーオペレーティング特性(ROC)分析と組み合わせたさらなるバイオマーカー分析を可能し;ライフスタイルを遺伝子マーカーおよびバイオマーカーを統合して、比率するAD危険性を同定するという利点を有する。
【0195】
BT(分類)は、初期化の二元分類ツリー(ルートノードおよび2チャイルドノード)を構築する変数選択およびクラス予測法であり、続いて、従前ツリーからの分割残余に基づいて別のツリーを適合する。この計算は、何度も繰り返され、クラス予測について投票前の加重リモデリングプロセスが全てのツリーから合計されるように作動する。BTは、変数重要度と類似して、各変数がどれくらい十分にクラスメンバーシップを予測するかに基づいて相対測定を与える相対測定を提供する。またBT法は、クラスメンバーシップの予測された可能性を生じさせ、それは、予測されたクラスメンバーシップと実際のクラスメンバーシップの比較に有用である。
【0196】
LDAは、2以上のクラス群を分離する変数の線形的組み合わせを決定する統計法である。
【0197】
多段階ロジスティック回帰は、多数の予測変数がロジスティック回帰フレームワークに添加させる統計法であり、多重の「段階」は、統計モデル内のエラーを減少させるために、変数の添加/除去のために採用される。このようにして、本方法は、モデル内に添加された変数の各々を正確に評価し、各々はどのくらいこの予測に貢献するかを決定する。よって、本明細書に記載されているRF、BT、LIMMAおよびCT法から選ばれるバイオマーカー(年齢を含む)を用いて多段階ロジスティック回帰を行い、標準のロジスティック回帰と比較することができる。
【0198】
ROC法は、基準を定義するための診断ツールとして初期に用いられ、それにより、あるマーカーは、設計されたクラスに集合的にヒトを分類することができる。ROC分析は、多重出力を提供し、それらのうちの1つである、曲線下領域(AUC)はモデル性能を評価するために有用な測定である。AUC統計は、異なる数のバイオマーカーを用いて、ロジスティック回帰と多段階ロジスティック回帰モデル(例えば、トレーニングセットデータ)を比較するために、バイオマーカー分析内で利用することができる。また、テストセットデータ上で計算された統計モデルからの感受性と特異性は、モデルの性能の図式的比較を与えるためにプラットされ得る。
【0199】
一態様では、本発明は、個体における神経障害の診断、診断補助および/または個体における神経障害の進行のモニタリング、および/または患者の層別化(即ち、神経障害である可能性が高いと診断された個体または神経障害であると診断された個体を該障害の異なるクラスに分けること)に有用な少なくとも1つのバイオマーカーを同定するための方法を提供し、該方法は、複数のバイオマーカーについて1セットの生物試料からの測定値を得ること、ここで、1セットの生物試料は、神経障害または重度の神経障害に基づいてサブセットに分類することができ、少なくとも1つのバイオマーカーについて各サブセットから測定を比較すること;測定値がサブセット間で異なる(例えば、有意に異なる)少なくとも1つのバイオマーカーを同定することとを備える。いくつかの実施形態では、この比較プロセスは、マイクロアレイの重要分析を用いて行われる。いくつかの実施形態では、神経障害はアルツハイマー病である。
【0200】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカーは、下記:
【表A48】

【0201】
および天然に存在するその変異体からなる群より選択される。
【0202】
本明細書に開示される表2および3は、年齢が合致した正常対照、または他の比較AD型の神経変性、例えばPDおよびPNと比較して(即ち、全ての対照と比較して)、AD対象において増加または減少されるバイオマーカーの列挙(本明細書に記載される方法によって一団にされる)を提供する。表1〜3に列挙された任意の1または複数のバイオマーカー、またはバイオマーカーに特異的な試薬は、例えば、ADの診断補助もしくはADの診断のため、または他の非AD神経変性疾患もしくは障害、例えば、PDおよびPNと区別するようにADを診断するために、本明細書に開示された方法において用いることができる。
【0203】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるように、ADを含む神経障害の診断補助または診断のために、本発明の方法において使用するための正に相関したADバイオマーカーは、表2および3に列挙されバイオマーカーからなる群より選択され得る。
【0204】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、本明細書に記載されているように、1つの他のスクリーニングとして、個体における神経障害の診断補助、診断および/またはモニタリング、および/または個体の層別化のための他の方法前に、その後、および/またはそれと同時に用いることができる。
【0205】
また、本発明は、本明細書に記載される方法の結果を評価する方法を提供する。このような評価は、一般には、結果を概要し、例えば、臨床的および/または診断的フォローアップおよび/または治療オプションに関して、医師およびその他の者にアドバイスすることで補助し得る。また、本発明は、本明細書に記載されるADバイオマーカーのレベルを測定するか、またはその測定レベルを得るか、もしくはその測定レベルを比較することによって、以下:認知機能および/または機能不全;MCI;AD;ADの程度(例えば、軽度、中程度、重度);およびADの進行の任意の1または複数の指標について生物試料を評価するための方法を提供する。認知機能不全を評価する方法には、一般には、MMSEスコアリングと同等であると許容されるADAS−COGが含まれてもよい。
【0206】
[治療モデル化の効率を評価する方法]
いくつかの実施形態では、本発明はまた、例えば、1箇所または複数箇所の回収センター(単数または複数)からの、損傷した認知機能を被り、および/または神経障害と診断された、個体または個体の集団における治療モデルの効率を評価するための方法を提供し、該方法は、(i)個体からの生物試料中の少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルを、該少なくとも4つのバイオマーカーについての参照レベルと比較することを備え、ここで、少なくとも4つのバイオマーカーは、下記:
【表A49】

【0207】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される。
【0208】
別の実施形態では、少なくとも4つのバイオマーカーのうちの少なくとも2つは、下記:
コルチゾール
IGF.BP.2−インスリン様成長因子結合タンパク質2
IL.17−インターロイキン−17
膵臓ポリペプチド
ApoE ECU−アポリポタンパク質E
修正されたカルシウム(Ca corr)=総Ca+((40−alb)0.02))
ABeta 42
アポリポタンパク質E4対立遺伝子
VCAM−1−血管細胞接着分子1
および天然に存在するその変異体からなる群より選択される。
【0209】
いくつかの実施形態では、個体からの生物試料において少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルを比較することが、少なくとも最大全てのバイオマーカーの測定レベルを比較することを備える。当業者は、本明細書に記載されるように、神経障害を有する個体の診断補助、診断および/またはモニタリング、および/または個体の層別化における本発明の方法の感受性および/または選択性の程度が、一般にはより大きく、この場合、該方法は、生物試料において、本明細書に列挙された全てのバイオマーカーの測定レベルを比較することを備えることを理解する。
【0210】
典型的には、治療の診断効率は、適切な参照に対する測定レベルに基づくものであり、ここで、適切な参照は治療の開始前および/または治療中に採取された測定レベルである。少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルは、治療モデルの評価中に1回または複数回得られてもよい。
【0211】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルと組み合わせた、個体からの生物試料中の少なくとも1つの他のバイオマーカーの測定レベルを、該少なくとも1つの他のバイオマーカーおよび少なくとも4つのバイオマーカーについての参照レベルと比較することをさらに備え、ここで、該少なくとも1つの他のバイオマーカーは、下記:
【表A50】

【0212】
および天然に存在するその変異体からなる他のマーカーのパネルから選択される。
【0213】
いくつかの実施形態では、個体からの生物試料中の少なくとも1つの他のバイオマーカーの測定レベルを比較することが、少なくとも最大16個の他のバイオマーカーの測定レベルを比較することを備える。当業者は、本明細書に記載されるように、神経障害を有する個体の診断補助、診断および/またはモニタリング、および/または個体の層別化における本発明の方法の感受性および/または選択性の程度が、一般にはより大きく、ここで、該方法は、生物試料中の少なくとも最大16個の他のバイオマーカーの測定レベルを比較することを備え、個体からの生物試料中の少なくとも1つの他のバイオマーカーを比較するには十分であり得ることを理解する。
【0214】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルと組み合わせた、個体からの生物試料中の少なくとも別のバイオマーカーの測定レベルを、該少なくとも別のバイオマーカーおよび少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルについての参照レベルと比較することを備え、ここで、該少なくとも別のバイオマーカーは、下記:
【表A51】

【0215】
および天然に存在するその変異体からなる第3のパネルのマーカーから選択される。
【0216】
いくつかの実施形態では、個体からの生物試料中の少なくとも1つの他のバイオマーカーの測定レベルを比較することが、少なくとも最大全ての別のバイオマーカーの測定レベルを比較することを備える。当業者は、本明細書に記載されるように、神経障害を有する個体の診断補助、診断および/またはモニタリング、および/または個体の層別化における本発明の方法の感受性および/または選択性の程度が、一般にはより大きく、この場合、該方法は、生物試料中の少なくとも最大全ての別のバイオマーカーの測定レベルを比較することを備えるが、個体からの生物試料中の少なくとも1つの別のバイオマーカーを比較するには十分であり得ることを理解する。
【0217】
いくつかの実施形態では、1箇所または複数箇所の回収センター(単数または複数)からの、機能が損なわれた認知機能を被っている、および/または神経障害であると診断された個体または個体の集団における、本発明の治療手段の効率を評価するための方法は、個体からの生物試料生物試料中の4つのバイオマーカーの測定レベルを比較することを備え、さらに、個体からの生物試料中の少なくとも1つの他のバイオマーカーの測定レベルを比較することをさらに備え、ここで、該バイオマーカーの測定レベルは、個体からの同じ生物試料由来であるか、または異なる生物試料由来である。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、個体からの生物試料中の4つのバイオマーカーの測定レベルを比較し、さらに、個体からの生物試料中の少なくとも別のバイオマーカーの測定レベルを比較することを備え、ここで、第1と第3のバイオマーカーの測定レベルは、個体からの同じ生物試料由来であるか、または異なる生物試料由来である。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、個体からの生物試料中の4つのバイオマーカーの測定レベルを比較することを備え、さらに、個体からの生物試料中の少なくとも1つの他のバイオマーカーの測定レベルを比較することを備え、さらに、個体からの生物試料中の少なくとも別のバイオマーカーの測定レベルを比較することを備え、ここで、第1の、1つの他の、及び第3のバイオマーカーの測定レベルは、個体からの同じ生物試料由来であるか、または異なる生物試料由来である。
【0218】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明の方法は、下記:
【表A52】

【0219】
の測定レベルを比較することを備える。
【0220】
当業者は、本明細書に記載されるように、5つ以上の要素で構成される、複合物(または集合体)またはこのような複合物の任意のサブセットとして、血清、CSF、または他の生物試料中の本発明のバイオマーカーの相対的濃度は、AD、PD、前頭側頭認知症、脳血管疾患、多発性硬化症、およびニューロパシーの臨床表現型の予測、疾患検出、分類、モニタリング、および治療における任意の個々のバイオマーカーの絶対濃度よりも予測的であることを理解する。
【0221】
本発明の方法を実施するための本発明のバイオマーカーの任意の1つの使用は、感受性および特異性の可能なレベルを提供し得るが、当業者は、本発明の方法の有効性(例えば、感受性および/または特異性)は、典型的には、4を超えるバイオマーカーが利用されるときに増大することを理解する。本発明のいくつかの実施形態では、本方法は、一般に、本明細書中の表2に列挙されるように、少なくとも5つのバイオマーカーが利用される場合に増大される。
【0222】
多重バイオマーカーは、様々な方法によって、本明細書に開示されているバイオマーカーから選択され得て、ランダムフォレスト、サポートベクターマシン、マイクロアレイデータのための線形モデル(LIMMA)および/またはマイクロアレイデータの有意性検定(SAM)、最良優先、貪欲ステップワイズ、ナイーブベイズ、線形前進選択、分散探索、線形判別分析(LDA)、ステップワイズロジスティック回帰、レシーバーオペレーティング特性、および分類ツリーを含む。本発明者らは、臨床表現型の予測のために良好な感受性および特異性を有する小セットのバイオマーカーを同定するために組み合わせてこれらの方法を用いた。
【0223】
[参照レベル]
神経障害(例えばAD)を診断する方法について、本明細書に記載されるように、参照レベルは、典型的には、所定のバイオマーカーについて「正常」であると考えられる予め決定されたレベル(例えば、神経障害であるとは診断されていない1または複数の年齢が合致した個体についての平均レベル、または別の神経障害であると診断された1または複数の年齢が合致した個体および/または健常な年齢が合致した個体についての平均レベル)であるが、同時に決定される参照レベル(例えば、試験される試料を含む試料のプールに由来する参照値)もまた本発明によって意図される。本発明のバイオマーカーについて、参照レベルを下回るかまたは上回るバイオマーカーについての測定レベルは、神経障害の診断を示唆する(すなわち、その診断を補助する)か、またはその診断を指示する。
【0224】
バイオマーカーの測定レベル(単数または複数)と参照レベル(単数または複数)の間の比較が、神経障害(例えば、ADまたはMCI)を示唆/指示する差(即ち、増加または減少)を示す場合、適切な診断が補助されるかまたは行われる。反対に、測定レベル(単数または複数)と参照レベル(単数または複数)の比較が、神経状態の診断を示唆または指示する差を示さない場合、適切な診断が補助されず、および行われない。
【0225】
バイオマーカーについての測定レベルとの比較に用いられる参照レベルは、前述の検討から理解されるように、実施される本発明の態様に依存して変化してもよい。診断方法について、「参照レベル」は、典型的には、診断法の対象である神経障害に苦しめられていない集団(正常な健常個体を含む)から得られたレベルの平均などの予め定められた参照レベルであるが、いくつかの例では、参照レベルは、ADなどの神経障害を有するものを含む個体群からの平均または中央値レベルであり得る。本発明のいくつかの実施形態では、予め定められた参照レベルは、年齢が合致した集団から得られたレベルに由来する(例えば、そのレベルの平均または中央値である)。本発明のいくつかの実施形態では、年齢が合致した集団は、非AD神経変性障害を有する個体を備える。
【0226】
MCI診断法(即ち、MCIの診断または診断補助の方法)について、参照レベルは、ADまたはMCIを患っていない集団から得られたレベルの平均などの予め決定された参照レベルであってもよいが、いくつかの例では、参照レベルは、MCIおよび/またはAD患者を含む個体群からの平均または中央値レベルであり得る。本発明のいくつかの実施形態では、予め決定された参照レベルは、年齢が合致した集団から得られたレベルに由来する(例えば、そのレベルの平均または中央値である)。
【0227】
ADモニタリング法(例えば、AD患者におけるAD進行の診断または診断補助の方法)について、参照レベルは、ADおよびMCIを患っていない集団、MCIまたはADであると診断された集団から得られたレベルの平均などの予め決定されたレベルであってもよく、いくつかの場合には、参照レベルは、MCIおよび/またはAD患者を含む個体群からの平均または中央値レベルであり得る。あるいは、参照レベルは、特定の患者に対する病歴参照レベル(例えば、同じ個体に由来する試料であるが、より早い時間点から得られたバイオマーカーレベル)であってもよい。いくつかの場合、予め決定された参照レベルは、年齢が合致した集団から得られたレベル由来である(例えば、そのレベルの平均または中央値である)。
【0228】
AD分類法(即ちADの軽度、中程度および重度状態にAD患者を層別化する方法)について、参照レベルは、ADまたはMCIと診断された集団(好ましくはADであると診断された集団)からの平均または中央値レベルである予め決定された参照レベルであってもよい。本発明のいくつかの実施形態では、予め決定された参照レベルは、年齢が合致した集団から得られたレベルに由来する(例えば、そのレベルの平均または中央値である)。
【0229】
年齢が合致した集団(そこから参照値が得られてもよい)は、理想的には、試験される個体と同じ年齢であるが、およそ年齢が合致した集団もまた許容される。およそ年齢が合致した集団は、試験される個体の年齢の1、2、3、4、もしくは5年以内であってもよく、または試験される個体の年齢を包含する異なる年齢群であってもよい。およそ年齢が合致した集団は、2、3、4、5、6、7、8、9年、または年増分であってもよい(例えば、62歳の個体についての参照レベルについての供給源として役割を果たす「5年増分」群は、58〜62歳の個体、59〜63歳の個体、60〜64歳の個体、61〜65歳の個体、または62〜66歳の個体を含んでもよい)。
【0230】
[バイオマーカーのレベルの同定および/または測定]
いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、試験される末梢の生物試料のサブセット間で有意に異なる場合、本明細書に記載されるように、神経変性の診断補助、診断、分類および/またはモニタリングに有用であるときに「同定された」と考えられる。バイオマーカーのレベルは、典型的には、特定のバイオマーカーが偶然に同定された可能性が予め決定された値よりも小さい場合に「有意に異なる」。このような可能性が正確な方法に依存することを計算する方法は、サブセット間のレベルを比較するために利用する(例えば、SAMを用いる場合、q値は誤認の可能性を与え、p値はt検定(または類似の統計学的分析)を用いた場合に可能性を与える)。当業者に理解されるように、予め決定された値は、試料あたりで測定されるバイオマーカー数、および利用される試料数に依存して変化する。したがって、予め決定された値は、50%程度の高さから20%、10%、5%、3%、2%、または1%程度の低さの範囲であってもよい。
【0231】
本明細書において記載されるように、少なくとも4つのバイオマーカーのレベルは、個体からの1または複数の生物試料において測定される。バイオマーカーレベルは、生物試料中のバイオマーカーのレベルを測定することができる任意の利用可能な測定技術を用いて測定されてもよい測定は、末梢の生体液試料中のバイオマーカーのレベルが参照値を上回るかまたは下回るかどうかを指示し得る限り、この測定は定量的または定性的のいずれであってもよい。
【0232】
測定レベルは、特定のバイオマーカーの一次測定、バイオマーカー自体の量(定量データ、試料中のバイオマーカー分子の数を検出することなどによる)の測定であってもよく、または、バイオマーカーの二次測定であってもよい(バイオマーカーの量は、必ずしもそうでなくてもよいが、推定され得て(定量データ)、酵素活性(バイオマーカーが酵素である場合)の測定、もしくはバイオマーカーをコードするmRNAの測定などである)。また、定量データは、一次測定に由来しもてもよく、またはそれから得られてもよい。
【0233】
いくつかのアッセイは、試料の事前処理なしに生物試料の試験を可能にするが、大部分の生物試料は試験前に処理されることが期待される。処理は、一般に、血液試料中の赤血球、白血球、血小板などの細胞(有核および無核)を排除する形態をとり、さらに、血液からある種の凝固カスケードタンパク質を含んでもよい。いくつかの例では、末梢の生体液はEDTAを含む容器に回収される。
【0234】
いくつかの実施形態では、バイオマーカーレベルは、アフィニティーに基づく測定技術を用いて測定される。本明細書で使用するとき、用語「アフィニティー」とは、本明細書で使用するとき、当該技術分野において理解され、典型的には、本願明細書に記載されるように、薬剤(例えば、バイオマーカー、またはそのエピトープに対する抗体、またその断片)の結合の程度、または強度を意味する。アフィニティーは、当該技術分野において知られている多数の方法で測定され、および/または発現され得て、限定されないが、平衡解離定数(KまたはK)、見掛けの平衡解離定数(KD’またはKd’)、およびIC50(競合アッセイにおいて50%阻害を達成するのに必要とされる量;本明細書において「I50」と相互交換可能に使用される)。当業者は、本発明の目的のため、アフィニティーはエピトープに結合する抗体の所定の集団に対する平均アフィニティーであることを理解する。1mlあたりのIgGのmg(またはmg/ml)に関して、本明細書において報告されるKD’の値は、血清、血漿または他の生物試料の1mlあたりの免疫グロブリンmgを示す。
【0235】
アフィニティーに基づく測定技術は、典型的には、測定されるバイオマーカーに特異的に結合する薬物(即ち、本明細書に記載されるように、抗体、アプタマー、またはその断片などの「アフィニティー試薬」)を用いるが、他の技術、例えば、分光に基づく技術(例えば、マトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間、またはMALDI−TOF、分光計)または生物活性を測定するアッセイ(例えば、成長因子の分裂促進活性を測定するアッセイ)を用いてもよい。
【0236】
アフィニティーに基づく技術は、抗体に基づくアッセイ(イムノアッセイ)およびアプタマーを利用するアッセイ(他の分子に特異的に結合する核酸分子)を含み、例えば、ELONAである。さらに、抗体とアプタマーの両方を利用するアッセイはまた意図される(例えば、捕捉のための抗体と検出のためのアプタマーを利用するサンドイッチフォーマットアッセイ)。
【0237】
イムノアッセイ技術を採用する場合、生物試料中のバイオマーカーのレベルを定量的または定性的に測定し得る任意のイムノアッセイ技術を用いてもよい。適切なイムノアッセイ技術は、限定されないが、ラジオイムノアッシ、免疫蛍光アッセイ、酵素免疫アッセイ、化学発光アッセイ、酵素免疫測定法(ELISA)、イムノ−PCRおおびウェスタンブロットアッセイ、多重種および試料タイプについて少量の試料(±100iL)で多重タンパク質を測定するための多重分析物プロフィーリング(MAP)を含み、臨床検査室改善法(CLIA)に従って保証される。
【0238】
同様に、生物試料中のバイオマーカーのレベルを定量的または定性的に測定され得るアプタマーに基づくアッセイは、本発明の方法ににおいて用いられてもよい。典型的には、アプタマーは、イムノアッセイのほぼ全てのフォーマットにおいて抗体に置換されてもよいが、アプタマーは、追加のアッセイフォーマット(例えば、PCRなどの核酸増幅技術を用いて、結合されたアプタマーの増幅など(例えば、米国特許第4,683,202号参照))、または複合プライマー(例えば、米国特許第6,251,639号および第6,692,918号)を可能にする。
【0239】
多種多様のアフィニティーに基づくアッセイが当該技術分野において知られている。アフィニティーに基づくアッセイは、典型的には、対象とするバイオマーカーに由来する少なくとも1つのエピトープを利用し、多くのアフィニティーに基づくアッセイフォーマットは1を超えるエピトープを利用する(例えば、2以上のエピトープは「サンドイッチ」フォーマットアッセイに関わる;少なくとも1つのエピトープは、マーカーを捕捉するために用いられ、少なくとも1つの異なるエピトープはマーカーを検出するために用いられる)。
【0240】
アフィニティーに基づくアッセイは、競合または直接反応フォーマットであってもよく、サンドイッチ型フォーマットを利用してもよく、さらに、異種(例えば、固体支持体を利用する)または同種(例えば、単一相で起こる)であってもよく、および/または利用してもよくもしくは免疫沈降であってもよい。多くのアッセイは、標識されたアフィニティー試薬(例えば、抗体、ポリペプチド、またはアプタマー)の使用を伴う。標識は、例えば、酵素、蛍光、化学発光、放射活性、または色素分子であってもよい。プローブからシグナルを増幅するアッセイもまた知られ、例えば、ビオチンとアビジンを利用するアッセイ、酵素標識され、媒介されたイムノアッセイ、例えば、ELISAおよびELONAアッセイを利用するアッセイである。本明細書おいて、「定量的データ」と呼ばれる例では、バイオマーカー濃度はELISAを用いて得られた。バイオマーカーまたはバイオマーカーに特異的な試薬のいずれかが表面に結合し得て、レベルが直接的または間接的に測定され得る。
【0241】
異種フォーマットでは、アッセイは2相(典型的には、水溶液および固体)を利用する。典型的には、バイオマーカー特異的アフィニティー試薬は、生物試料のバルクからのバイオマーカーの分離を促進するための固体支持体に結合される。アフィニティー試薬/バイオマーカー複合体の形成を可能にするのに十分な時間反応後、抗体(またはその断片)を含む固体支持体または表面は、典型的には、結合されたポリペプチドの検出前に洗浄される。バイオマーカーの測定のためのアッセイにおけるアフィニティー試薬は支持体(例えば、固体または半固体)上に与えられてもよい。あるいは、試料中のポリペプチドは支持体または表面上に固相化され得る。用いることができる支持体の例は、ニトロセルロース(例えば、メンブレンまたはマイクロタイターウェルフォームにおける)、ポリ塩化ビニル(例えば、シートまたはマイクロタイターウェルにおける)、ポリスチレンラテックス(例えば、ビーズまたはマイクロタイタープレートにおける)、ポリフッ化ビニリジン(vinylidine)、ジアゾ化ペーパー、ナイロンメンブレン、活性化ビーズ、ガラスおよびプロテインAビーズである。これらのアッセイについての標準フォーマットと競合フォーマットの両方が当該技術分野において知られている。したがって、本明細書において、バイオマーカーに特異的な試薬に結合される少なくとも1つのバイオマーカーを含む複合体が提供され、ここで、試薬は表面に結合される。また、本明細書において、バイオマーカーに特異的な試薬に結合された少なくとも1つのバイオマーカーを含む複合体が提供され、ここで、該バイオマーカーは表面に結合される。
【0242】
アレイタイプの異種アッセイは、本発明の方法が多重バイオマーカーを利用して実施される場合、バイオマーカーレベルの測定に適している。本発明の方法の実施に用いられるアレイタイプのアッセイは、通常、予め決定されたパターン(例えば、グリッド)で、基質に結合された異なるバイオマーカーに特異的な2以上の捕捉試薬とともに固体基質を利用する。末梢生体液試料は基質に適用され、試料中のバイオマーカーは捕捉試薬によって結合される。試料の除去(および適切な洗浄)後、結合されたバイオマーカーは、種々のバイオマーカーに特異的に結合する適切な検出試薬の混合物を用いて検出される。検出試薬の結合は、視覚システム、例えば、蛍光色素に基づくシステムを用いて達成される。捕捉試薬は、予め決定されたパターンで基質上に整列されるため、アレイタイプのアッセイは、多重検出システムを必要とせずに、多重バイオマーカーの検出という利点を与える。
【0243】
同種フォーマットでは、アッセイは、単一相(例えば、水溶液相)で行われる。典型的には、生物試料は、溶液中のバイオマーカーに特異的なアフィニティー試薬とともにインキュベートされる。例えば、それは、形成される任意のアフィニティー試薬/抗体複合体を沈殿する条件下であってもよい。これらのアッセイについての標準フォーマットと競合フォーマットの両方は当該技術分野において知られている。
【0244】
標準(直接反応)フォーマットでは、バイオマーカー/アフィニティー試薬複合体のレベルは直接的にモニタリングされる。これは、例えば、バイオマーカー/アフィニティー試薬複合体を形成し、結合される標識化された検出試薬の量を決定することによって達成されてもよい。競合フォーマットでは、試料中のバイオマーカーの量は、複合体中の標識された既知量のバイオマーカー(または他の競合試薬)の結合に対する競合効果をモニタリングすることによって推定される。結合または複合体形成の量は、定性的または定量的のいずれかで決定され得る。
【0245】
本発明のいくつかの実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカーに特異的な試薬は抗体、またはその断片である。適切な抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体である。ポリクローナル抗体は、当該技術分野において周知である方法によって生産されてもよく、動物にバイオマーカー抗原を注射し、動物から血液試料を回収し、抗体を含む血清を回収することを含む。このようなポリクローナル抗体は、任意の動物宿主、例えばヤギ、ウサギ、ヒツジ、サル、ウマ、ブタ、ウシおよびイヌから調製されてもよい。
【0246】
試薬は、1を超えるバイオマーカーに特異的であってもよい(例えば、それに結合することができる)。例えば、試薬がポリクローナル抗体、またはその混合物である場合、1つのバイオマーカーに特異的ないくつかの抗体と別のバイオマーカーに特異的な別の抗体がある。
【0247】
モノクローナル抗体は、当該技術分野において周知である方法、例えば、ハイブリドーマ法(Kohler and Milstein(1976)European Journal of Immunology 6:511−519参照)、またはファージ抗体ライブラリー技術(Clackson et al.,Nature,352:624−628,1991;Marks et al.,J.Mol.Biol.,222(58):1−597,1991)によって調製されてもよい。ハイブリドーマ法は、1つのグループとして対象とするバイオマーカー、および別のグループとして癌または骨髄腫細胞株を用いて注射される、免疫学的に相性の良い宿主動物、例えばマウスから抽出される細胞を採用してもよい。これらの2つのグループの細胞は、当該技術分野において周知である方法、例えば、ポリエチレングリコールを用いる方法によって互いに融合され、抗体産生細胞は標準の組織培養法によって増殖される。均一な細胞コロニーが限界希釈を用いてサブクローニングすることによって得た後、バイオマーカーに特異的な抗体を産生し得るハイブリドーマは、標準の方法に従ってインビトロまたはインビボにおいて多量に培養される。ハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体は、精製せずに使用されてもよいが、典型的には、最良の結果を得るように、当該技術分野において周知である方法によって精製された後に用いられる。ファージ抗体ライブラリー法は、ファージ抗体ライブラリーが、様々なバイオマーカーに対する抗体遺伝子(一本鎖断片可変(scFv)タイプ)を得ること、ファージ表面上に融合タンパク質の形態でそれらを発現させることによって、インビトロで構築される方法であり、本発明のバイオマーカーに結合し得るモノクローナル抗体はライブラリーから単離される。
【0248】
上記方法によって調製される抗体は、ゲル電気泳動、透析、塩析、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどを用いた単離されてもよい。さらに、本発明の抗体は、抗体分子の機能的断片、ならびに2つの全長軽鎖と2つの全長重鎖を有する完全形態を含んでもよい。抗体分子の機能的断片は、少なくとも抗体結合を保持している断片を意味し、Fab、F(ab’)2、Fvなどを含む。
【0249】
具体的には、血漿ApoE法を測定するための適切な方法は、Lui et al,J Alzheimers Dis.2010;20(4):1233−42.“Plasma amyloid−beta as a biomarker in Alzheimer’s disease:the AIBL study of aging”に報告され得る。
【0250】
また、本発明の方法は、本明細書に記載されるように、本方法を実施することができる任意のデバイスを用いて実施されてもよい。使用され得るデバイスの例は、限定されないが、全てのタイプのコンピュータを含む、電気計算機デバイスを含む。本発明の方法がコンピュータで実施される場合、該方法のステップを実行するためのコンピュータを構成するために用いられてもよいコンピュータプログラムは、コンピュータプログラムを含むことができる任意のコンピュータ読み取り可能な媒体に含ませることができる。使用され得るコンピュータ読み取り可能な媒体の例は、限定されないが、CD−ROM、DVD、ROM、RAM、ならびに他のメモリーおよびコンピュータ記憶デバイスを含む。また、本方法のステップを実行するためのコンピュータを構成するために用いられてもよいコンピュータプログラムは、電子ネットワーク上で、例えば、インターネット、ワールドワイドウェブ、イントラネット、または他のネットワーク上で提供されてもよい。
【0251】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、本発明の方法のステップを実施するようにシステムを実行するためのプログラムコード手段を含むプロセッサおよびコンピュータ読み取り可能な媒体を備えるシステムにおいて実施される。プロセッサは、本発明の方法の実施に必要とされる操作を実行することができる任意のプロセッサであってもよい。プログラムコードは、典型的には、システムを実施する場合、本発明の方法のステップを実行するようにシステムをもたらすことができる任意のコードを意味する。プログラムコード手段の例は、限定されないが、C++、Java、またはFortranなどの高レベルのコンピュータ言語で書かれた、本発明の方法を実行するための指令、アセンブリ言語などの低レベルのコンピュータ言語で書かれた、この特許において記載される方法を実行するための指令、またはコンパイル済み言語およびリンクされた機械言語などのコンピュータ実行形態で、この特許に記載される方法を実行するための指令を含む。
【0252】
バイオマーカーとアフィニティー試薬を備える形成された複合体は、アッセイのフォーマットおよびユーザーの選択に依存して、当該技術分野において知られている多数の既知の技術にいずれかによって検出される。例えば、未標識アフィニティー試薬は、DNA増幅技術(例えば、アプタマーおよびDNA標識抗体に対する)、またはアフィニティー試薬に結合する標識「二次」抗体を用いて検出されてもよい。あるいは、アフィニティー試薬は標識されてもよく、複合体の量は、直接的に(色素(蛍光または視覚可能な)、ビーズ、もしくは酵素標識アフィニティー試薬に関する)または間接的に(ビオチンで「タグ化された」アフィニティー試薬、発現タグなどに関する)決定されてもよい。本明細書において、提供された例は、ケミルミネッセンスを用いた「定量データ」フィルターに基づく抗体アレイと呼ばれ、バイオマーカーについての測定結果を得るために用いられた。
【0253】
当業者に理解されるように、シグナルの検出様式は、アッセイで利用される正確な検出システムに依存する。例えば、放射線標識された検出試薬を利用する場合、シグナルは、生物試料からのシグナルを定量することができる技術、または生物試料からのシグナルと参照試料からのシグナルを比較することができる技術、例えば、シンチレーションカウント、オートラジオグラフィー(典型的には、走査デンシトメトリーと組み合わせる)などを用いて測定される。ケミルミネッセンス検出システムを用いる場合、シグナルは、典型的には、照度計を用いて検出される。検出システムからシグナルを検出するための方法は、当該技術分野において周知であり、本明細書にさらに記載することを要しない。
【0254】
1を超えるバイオマーカーが測定される場合、生物試料は多数の分割量に分けられてもよく、別々の分割量は、異なるバイオマーカーを測定するために使用される(また、特定試料中のバイオマーカーのレベルの多重決定を可能にするために生物試料を多重分割量に分割することも実施される)。あるいは、生物試料(またはそこからの分割量)は、アレイタイプのアッセイまたは多重検出技術を利用するアッセイ(例えば、異なる蛍光色素マーカーで標識された検出試薬を利用するアッセイ)などの単一アッセイにおいて異なるバイオマーカーの個々のレベルを測定することができるアッセイを用いる1回の反応において多重バイオマーカーのレベルを決定するために試験されてもよい。
【0255】
バイオマーカーを測定する場合、「反復」測定を行うことが当該技術分野において共通している。反復測定は、通常、試料を多重分割量に分け、同一アッセイシステムの別々の反応においてバイオマーカー(単数又は複数)を別々に測定することによって得られる。反復測定は、本発明の方法に必要ではないが、本発明のいくつかの実施形態では、反復試験、例えば二重および三重試験を利用する。
【0256】
[バイオマーカーのレベル比較]
本発明に従って、測定値と参照値を比較するプロセスは、バイオマーカーの測定値と参照値のタイプに適した任意の便利な方法において実行されてもよい。本明細書に記載されているように、「測定」は、定量的または定性的測定技術を用いて実行することができ、測定値と参照値を比較する様式は、採用される測定技術に依存して変更し得る。例えば、定性的な熱量測定アッセイがバイオマーカーレベルを測定するために用いられる場合、該レベルは、着色した反応生成物の強度を視覚的に比較することによって、または着色した反応生成物の密度もしくは分光測定からのデータを比較する(例えば、測定デバイスから誘導される数値データまたはグラフデータ、例えば、棒グラフを比較する)ことによって、比較されてもよい。しかしながら、本発明の測定に用いられる測定値は、通常、定量値(例えば、試料の1ミリリットルあたりのバイオマーカーのナノグラムなどの濃度の定量測定、または絶対値)である。本発明の他の実施形態では、測定値は定性的である。定量的測定と同様に、比較は、数値を調べることによって、データの表示を調べる(例えば、棒グラフまたは折れ線グラフなどのグラフ表示を調べる)ことによって行うことができる。
【0257】
比較のプロセスは、マニュアル(例えば、当該方法の実施者による目視検査)であってもよく、または自動的であってもよい。例えば、アッセイデバイス(例えば、ケミルミネッセンスシグナルを測定するための照度計)は、測定値とバイオマーカーに対する参照値を比較することを可能にする電気回路およびソフトウェアを含んでもよい。あるいは、別々のデバイス(例えば、デジタルコンピュータ)は、測定値(単数又は複数)と参照値(単数又は複数)を比較するために用いられてもよい。比較のための自動化デバイスは、バイオマーカー(単数又は複数)に対する記憶された参照値を含んでもよく、または測定値(単数又は複数)と、同時に測定された参照試料に由来する参照値を比較してもよい。
【0258】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、測定レベル(単数又は複数)と参照レベル(単数又は複数)のシンプルまたはバイナリ比較を利用する(例えば、測定レベルと参照レベルの比較は、測定レベルが参照レベルよりも高いかまたは低いかどうかを決定する)。例えば、バイオマーカーに対する測定値が参照値よりも低いことを示す比較は、神経障害の診断を指示するかまたは示唆する。
【0259】
本明細書に記載されるように、生物試料中のバイオマーカーは、定量的(絶対値)または定性的(相対値)に測定され得る。所定の評価についての各バイオマーカーレベルは重複してもよく、または重複しなくてもよい。本明細書に記載されているように、本発明のいくつかの実施形態について、定量的データは、MMSEスコアによって測定され得る、認知機能障害(軽度、中程度または重度)の所定レベルを指示し、本発明の他の実施形態では、定量的データは認知機能障害の所定レベルを指示する。
【0260】
当業者に明らかなように、試験されるバイオマーカー(単数又は複数)について反復測定が行われる場合、参照値と比較される測定値は、反復測定を考慮する値である。反復測定は、「測定値」として、測定値の平均または中央値のいずれかを用いることによて考慮されてもよい。
【0261】
[バイオマーカー調節活性のための予測薬剤のスクリーニング]
本発明はまた、本発明のバイオマーカーの調節における活性が見込まれる候補薬物をアッセイすることによって、神経障害を治療するための候補薬物をスクリーニングする方法を提供する。このようなスクリーニングアッセイは、インビトロおよび/またはインビボで行うことができる。本明細書に記載されているように、スクリーニング方法において同定された候補薬物は、例えば、AD、MCIおよび/または神経障害の治療のための治療薬剤として有用であり得る。
【0262】
したがって、神経障害を治療するための候補薬物を同定するための方法を提供することが本発明の別の態様であり、該方法は、下記:
【表A53】

【0263】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーの第1のパネルから選択される少なくとも4つのバイオマーカーの発現及び/または活性の調節における活性のための予測候補薬物をアッセイすることを備える。
【0264】
別の実施形態では、少なくとも4つのバイオマーカーのうち少なくとも2つは、下記:
コルチゾール
IGF.BP.2−インスリン様成長因子結合タンパク質2
IL.17−インターロイキン−17
膵臓ポリペプチド
ApoE ECU−アポリポタンパク質E
修正されたカルシウム(Ca corr)=総Ca+((40−alb)0.02))
ABeta 42
アポリポタンパク質E4対立遺伝子
VCAM−1−血管細胞接着分子1
および天然に存在するその変異体らなる群から選択される。
【0265】
いくつかの実施形態では、少なくとも4つのバイオマーカーの発現および/または活性の調節における活性についての有望な候補薬物をアッセイすることが、下記:
【表A54】

【0266】
および天然に存在するその変異体からからなる群より選択される少なくとも3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、または9つのバイオマーカーの発現および/または活性の調節における活性が見込まれる候補薬物をアッセイすることを備える。
【0267】
当業者は、本明細書に記載されるように、神経障害を治療するための候補薬物を同定する感受性および/または選択性の程度が、一般的により大きく、この場合、該方法は、全てのバイオマーカーの発現および/または活性の調節における活性が見込まれる候補薬物をアッセイすることを備えることを理解する。
【0268】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、バイオマーカーの少なくとも4つの発現および/または活性の調節における活性が見込まれる候補薬物をアッセイすることを組み合わせた、少なくとも1つの他のバイオマーカーの発現および/または活性の調節における活性が見込まれる候補薬物をアッセイすることをさらに備え、ここで、該少なくとも1つの他のバイオマーカーは、下記:
【表A55】

【0269】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される。
【0270】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの他のバイオマーカーの発現および/または活性の調節における活性が見込まれる候補薬物をアッセイすることが、少なくとも最大16個全てのバイオマーカーの発現および/または活性の調節における活性が見込まれる候補薬物をアッセイすることを備える。当業者は、本明細書に記載されるように、神経障害を治療するための候補薬物を同定する感受性および/または選択性の程度が、一般には大きく、この場合、当該方法は、他の全てのバイオマーカーの発現および/または活性の調節における活性が見込まれる候補薬物をアッセイすることを備えるが、ただ1つの他のバイオマーカーの発現および/または活性の調節における活性が見込まれる候補薬物をアッセイするために十分であり得る。
【0271】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、少なくとも4つのバイオマーカーの発現および/または活性の調節における活性が見込まれる候補薬物をアッセイすることを組み合わせた、少なくとも別のバイオマーカーマーカーの発現および/または活性の調節における活性が見込まれる候補薬物ををアッセイすることをさらに備え、ここで、該少なくとも別のバイオマーカーは、下記:
【表A56】

【0272】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーの第3のパネルから選択される。
【0273】
いくつかの実施形態では、少なくとも別のバイオマーカーの発現および/または活性の調節における活性が見込まれる候補薬物をアッセイすることが、少なくとも最大全ての別のバイオマーカーの発現および/または活性の調節における活性が見込まれる候補薬物をアッセイすることを備える。当業者は、本明細書に記載されるように、神経障害を治療するための候補薬物を同定する感受性および/または選択性の程度が、一般的により大きく、この場合、当該方法は、別のバイオマーカーの発現および/または活性の調節における活性が見込まれる候補薬物をアッセイすることを備えるが、たった別のバイオマーカーの発現および/または活性の調節における活性が見込まれる候補薬物をアッセイするには十分であり得ることを理解する。
【0274】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、少なくとも4つのバイオマーカーの発現および/または活性の調節における活性が見込まれる候補薬物をアッセイすることを備え、さらに、少なくとも1つの他のバイオマーカーの発現および/または活性の調節における活性が見込まれる候補薬物をアッセイすることを備える。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、少なくとも4つのバイオマーカーの発現および/または活性の調節における活性が見込まれる候補薬物をアッセイすることを備え、さらに、少なくとも別のバイオマーカーの発現および/または活性の調節における活性が見込まれる候補薬物をアッセイすることを備える。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、少なくとも4つのバイオマーカーの発現および/または活性の調節における活性が見込まれる候補薬物をアッセイすることを備え、さらに、少なくとも1つの他のバイオマーカーの発現および/または活性の調節における活性が見込まれる候補薬物をアッセイすることを備え、さらに、少なくとも別のバイオマーカーの発現および/または活性の調節における活性が見込まれる候補薬物をアッセイすることをさらに含む。
【0275】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明の方法は、下記:
【表A57】

【0276】
の発現および/または活性の調節における活性が見込まれる候補薬物をアッセイすることを備える。
【0277】
本発明のスクリーニング法は、本明細書に記載されているバイオマーカー、および/または「薬物標的」としてのバイオマーカーポリヌクレオチドを利用してもよい。予測される薬物は、アッセイシステムにおける薬物標的の調節における活性について試験され得る。当業者に理解されるように、調節活性について試験する様式は、バイオマーカーおよび用いられる薬物標的(例えば、タンパク質または遺伝子)の形態に依存する。多種多様な適切なアッセイは当該技術分野において知られている。
【0278】
バイオマーカータンパク質自体が薬物標的である場合、予測される薬物は、タンパク質自体のレベルまたは活性の調節における活性について試験される。バイオマーカーのレベルの調節は、例えば、バイオマーカータンパク質の半減期を増加または減少させることによって達成され得る。バイオマーカーの活性の調節は、その同族受容体(単数もしくは複数)またはリガンド(単数もしくは複数)に結合するバイオマーカーの利用可能性を増加または減少させることによって達成され得る。
【0279】
バイオマーカーポリヌクレオチドが薬物標的である場合、予測される薬物は、バイオマーカーの合成の調節における活性について試験される。予測される薬物の調節活性について試験する正確な様式は、試験について選択されるバイオマーカーポリヌクレオチドに依存してもよい。例えば、薬物標的がバイオマーカーポリヌクレオチドである場合、調節活性は、典型的には、遺伝子から転写されたmRNAを測定することによって(転写調節)、またはこのような転写の結果として生成されたタンパク質を測定することによって(翻訳調節)、試験される。当業者に理解されるように、多くのアッセイフォーマットは、バイオマーカー遺伝子の修飾形態を利用し、この場合、異種配列(例えば、酵素などの発現マーカー、またはオリゴ−ヒスチジンなどの発現タグ、またはmycなどの別のタンパク質に由来する配列をコードする)は、バイオマーカータンパク質をコードする配列に融合する(または置換さえする)。このような異種配列(単数または複数)は、薬物標的から転写されたタンパク質レベルの便利な検出を可能にする。
【0280】
本発明のスクリーニング法において使用するための予測される薬物は、有機分子および無機分子(およびそれらの複合体)を含む、いずれかの分類の化合物および/または複合体であってもよい。当業者に理解されるように、有機分子は、最も一般的には、バイオマーカー調節活性についてスクリーニングされる。本発明のいくつかの実施形態では、試験するための予測される薬物は標的バイオマーカータンパク質を排除する。
【0281】
スクリーニングアッセイは、細胞不含有インビトロアッセイ、細胞培養アッセイ、器官培養アッセイ、およびインビボアッセイ(例えば、ADまたはMCIなどの神経障害の動物モデルを利用するアッセイ)を含む、当該技術分野において知られているいずれかのフォーマットにおいてであってもよい。したがって、本発明はまた、神経障害を治療するための候補薬物を同定するための予測される薬物をスクリーニングする様々な実施形態を提供する。
【0282】
本発明のいくつかの実施形態では、予測される薬物は、細胞不含有アッセイにおける神経障害を治療するための候補薬物を同定するためにスクリーニングされる。各予測される薬物は、細胞不含有環境において薬物標的とともにインキュベートされ、バイオマーカーの調節が測定される。本発明のスクリーニング法に有用な細胞不含有環境は細胞溶解物(薬物標的がバイオマーカー遺伝子である場合に特に有用である)、ならびに全血などの生体液または血漿および血清などの全血由来の分画された流体(バイオマーカータンパク質が薬物標的である場合に特に有用である)を含む。薬物標的がバイオマーカー遺伝子(またはポリヌクレオチド)である場合、測定される調節は、転写または翻訳の調節であってもよい。薬物標的がバイオマーカータンパク質である場合、調節は、バイオマーカータンパク質によるその同族受容体またはリガンドに結合する利用可能性のタンパク質の半減期のものであってもよい。
【0283】
本発明のいくつかの実施形態では、予測される薬物は、細胞に基づくアッセイにおける神経障害を治療するための候補薬物を同定するためにスクリーニングされる。各予測される薬物は、培養細胞とともにインキュベートされ、標的バイオマーカーの調節は測定される。ある実施形態では、培養細胞は、星状膠細胞、神経細胞(例えば、海馬ニューロン)、線維芽細胞、またはグリア細胞である。薬物標的がバイオマーカー遺伝子(ポリヌクレオチド)である場合、転写または翻訳調節が測定されてもよい。薬物標的がバイオマーカータンパク質である場合、バイオマーカータンパク質はまた、アッセイ混合物に添加され、タンパク質の半減期の調節、またはバイオマーカータンパク質のその同族受容体またはリガンドに結合する利用性の調節が測定される。
【0284】
本発明の更なる実施形態は、器官培養に基づくアッセイにおける神経障害を治療するための候補薬物を同定するために予測される薬物のスクリーニングに関する。いくつかの実施形態では、各予測される薬物は、非ヒト動物由来の器官(例えば、脳スライスなどの脳組織の一部)の器官全体または器官の一部のいずれかとともにインキュベートされ、標的バイオマーカーの調節が測定される。薬物標的がバイオマーカー遺伝子(ポリヌクレオチド)である場合、転写または翻訳調節が測定されてもよい。薬物標的がバイオマーカータンパク質である場合、バイオマーカータンパク質はまたアッセイ混合物に添加され、タンパク質の半減期の調節、またはバイオマーカータンパク質のその同族受容体またはリガンドに結合する利用可能性の調節が測定される。
【0285】
追加の実施形態は、インビボアッセイにおいて利用する神経障害を治療するための候補薬物を同定するための予測される薬物のスクリーニングに関する。いくつかの実施形態では、各予測される薬物は、非ヒト動物に投与され、標的バイオマーカーの調節が測定される。特定の薬物標的と、対処されるべき神経障害の治療の側面に依存して、このようなアッセイに使用される動物は、「正常」動物(例えば、C57マウス)または神経障害のモデルである動物のいずれかであってもよい。例えば、ADの多数の動物モデルが、当該技術分野において知られ、3xTg−ADマウス(Caccamo et al.,2003,Neuron 39(3):409−21)、ヒトアミロイドベータ前駆体タンパク質(APP)とプレセニリン遺伝子を過剰発現しているマウス(Westaway et al.,1997,Nat.Med.3(1):67−72)、および他のもの(Higgins et al.,2003,Behav.Pharmacol.14(5−6):419−38参照)が挙げられる。薬物標的がバイオマーカー遺伝子(ポリヌクレオチド)である場合、転写または翻訳調節が測定されてもよい。薬物標的がバイオマーカータンパク質である場合、標的バイオマーカーの半減期の調節、またはバイオマーカータンパク質のその同族受容体またはリガンドに結合する利用可能性の調節が測定される。標的ADバイオマーカーの調節を測定するための正確な様式は、バイオマーカーの同一性、アッセイのフォーマット、および実施者の選択に依存してもよい。転写、翻訳、タンパク質半減期、タンパク質利用可能性、および測定され得る他の側面の調節を測定するための多種多様な方法は、当該技術分野において知られている。これらの技術の一般知識を考慮して、それらは本明細書においてさらに記載する必要はない。
【0286】
[キットおよび試薬]
本発明はまた、本明細書に記載されるように、本発明の方法において使用するための方法(例えば、個体における神経障害の診断、診断補助および/またはその進行のモニタリング、および/または個体の層別化(即ち、神経障害であると推定上診断された個体、または神経障害であると診断された個体をこの障害の異なるクラスに分類すること))において使用するためのキットを提供し、該キットは、少なくとも4つのバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬を含み、ここで、少なくとも4つのバイオマーカーに得意的な少なくとも1つの試薬は、下記:
【表A58】

【0287】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーの第1のパネルから選択される。
【0288】
別の実施形態では、少なくとも4つのバイオマーカーのうち少なくとも2つは、下記:
コルチゾール
IGF.BP.2−インスリン様成長因子結合タンパク質2
IL.17−インターロイキン−17
膵臓ポリペプチド
ApoE ECU−アポリポタンパク質E
修正されたカルシウム(Ca corr)=総Ca+((40−alb)0.02))
ABeta 42
アポリポタンパク質E4対立遺伝子
VCAM−1−血管細胞接着分子1
および天然に存在するその変異体からなる群より選択される。
【0289】
いくつかの実施形態では、キットは、バイオマーカーの少なくとも4つについて1つの試薬と組み合わせて、少なくとも1つの他のバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬を含み、ここで、該少なくとも1つの他のバイオマーカーは、下記:
【表A59】

【0290】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーの他の集団から選択される。
【0291】
いくつかの実施形態では、キットは、第1のバイオマーカーのうちの少なくとも2つに対する1つの試薬と組み合わせた、少なくとも別のバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬をさらに備え、ここで、該少なくとも別のバイオマーカーは、下記:
【表A60】

【0292】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーの第3のパネルから選択される。
【0293】
いくつかの実施形態では、キットは、少なくとも1つの他のバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬および/または少なくとも別のバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬と組み合わせた、少なくとも4つのバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬をさらに備え、ここで、該バイオマーカーは、本明細書に記載される通りである。
【0294】
いくつかの実施形態では、本キットは、該マーカーのパネルから選択される少なくとも全てのバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬を備える。
【0295】
いくつかの実施形態では、本キットは、他のバイオマーカーについてのマーカーのパネルから選択される少なくとも最大16個の他のバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬をさらに備える。
【0296】
いくつかの実施形態では、別のバイオマーカーに対するマーカーのパネルから選択される別のバイオマーカーの少なくとも25個に特異的な少なくとも1つの試薬をさらに備える。
【0297】
いくつかの実施形態では、本キットは、下記:
【表A61】

【0298】
に特異的な少なくとも1つの試薬を備える。
【0299】
いくつかの実施形態では、本キットは、本明細書に記載されるように、個体における神経障害の診断および/または診断補助、および/または個体の層別化(即ち、神経障害である可能性が高いと診断された個体または神経障害であると診断された個体を該障害の異なるクラスに分けること)のための方法を行うための使用説明書をさらに備える。
【0300】
いくつかの実施形態では、バイオマーカーに特異的な試薬は、バイオマーカーを検出することができる抗体またはその断片である。いくつかの実施形態では、本発明のキットは、当該バイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬が結合される表面を含む。いくつかの実施形態では、本発明のキットは、バイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬が結合した、本明細書に記載される表面と、試験試料が比較され得る参照試料の組み合わせを含む。参照試料は、確認された神経障害を有する個体からの生物試料(または個体群からの貯蔵された試料)であってもよい。
【0301】
バイオマーカーに特異的な単一試薬を含むキットは、一般に、容器(例えば、バイアル、アンプル、または他の適した貯蔵容器)内に密封された試薬を有するが、基質(例えば、アッセイ反応槽の内面)に結合された試薬を含むキットもまた意図される。同様に、1を超える試薬を含むキットはまた、容器内に試薬を(別々にまたは混合して)有してもよく、または基質に結合された試薬を有してもよい。
【0302】
いくつかの実施形態では、バイオマーカー(単数または複数)に特異的な試薬(単数または複数)は、検出可能なマーカー(例えば、蛍光色素もしくは検出可能な酵素)を用いて標識され、または検出を促進するために修飾される(例えば、アビジンまたはストレプトアビジンに基づく検出系を用いて検出を可能にするためにビオチン化される)。いくつかの実施形態では、バイオマーカー(単数または複数)に特異的な試薬(単数または複数)は、直接的に標識および修飾されない。
【0303】
また、本発明のあるキットは、結合されたバイオマーカー特異的試薬(即ち、バイオマーカーに特異的な試薬)の検出のための1または複数の試薬を含む。当業者に明らかなように、検出試薬(単数または複数)の同一性は、キットに含まれるバイオマーカー特異的な試薬(単数または複数)のタイプ、および意図された検出系に依存する。検出薬物は、バイオマーカー特異的試薬に特異的な抗体(またはその断片)(例えば、二次抗体)、ヌクレオチドに基づくバイオマーカー特異的な試薬を増幅するためのプライマー(アプタマー)、またはバイオマーカー特異的な試薬に結合されたヌクレオチド「タグ」を増幅するためのプライマー、ビオチン修飾されたバイオマーカー特異的な試薬(単数または複数)を検出するためのアビジンもしくはストレプトアビジンコンジュゲートを含む。検出系は、当該技術分野において周知であり、本明細書においてさらに記載する必要はない。
【0304】
また、バイオマーカーを捕捉するための修飾された基質または他のシステムは、特に、キットがサンドイッチフォーマットアッセイにおいて使用するために設計されているとき、本発明のキットに含まれてもよい。捕捉システムは、バイオマーカーアッセイシステム、例えば、バイオマーカー特異的試薬(単数または複数)を用いて被覆されたマルチウェルプレート、バイオマーカー特異的試薬(単数または複数)を用いて被覆されたビーズなどにおいて有用な任意の捕捉システムであってもよい。捕捉システムは当該技術分野において周知であり、本明細書においてさらに記載する必要はない。
【0305】
いくつかの実施形態では、本発明のキットは、アレイの形態でバイオマーカー特異的試薬(単数または複数)を含む。アレイは、予め決定されたパターン(例えば、グリッド)における基質に結合されたバイオマーカーに特異的な少なくとも2つの異なる試薬(各々の試薬は異なるバイオマーカーに特異的である)を含んでもよい。したがって、本発明はまた、下記:
【表A62】

【0306】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される。
【0307】
別の実施形態は、少なくとも4つのバイオマーカーのうちの少なくとも2つは、下記:
コルチゾール
IGF.BP.2−インスリン様成長因子結合タンパク質2
IL.17−インターロイキン−17
膵臓ポリペプチド
ApoE ECU−アポリポタンパク質E
修正されたカルシウム(Ca corr)=総Ca+((40−alb)0.02))
ABeta 42
アポリポタンパク質E4対立遺伝子
VCAM−1−血管細胞接着分子1
および天然に存在するその変異体からなる群より選択される。
【0308】
いくつかの実施形態では、アレイは、少なくとも4つのバイオマーカーに特異的な1または複数の試薬と組み合わせた、少なくとも1つの他のバイオマーカーに特異的な1または複数の試薬をさらに備え、ここで、該他のバイオマーカーは、下記:
【表A63】

【0309】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーの他の集団から選択される。
【0310】
いくつかの実施形態では、アレイは、少なくとも4つのバイオマーカーに特異的な1または複数の試薬と組み合わせた、少なくとも別のバイオマーカーに特異的な1または複数の試薬をさらに備え、ここで、該少なくとも別のバイオマーカーは、下記:
【表A64】

【0311】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される。
【0312】
いくつかの実施形態では、本発明はまた、少なくとも4つのバイオマーカーに特異的な1または複数の試薬を単独で、または(i)少なくとも1つの他のバイオマーカーに特異的な1または複数の試薬、および(ii)少なくとも別のバイオマーカーに特異的な1または複数の試薬と、ここで該バイオマーカーは本明細書に記載される通りである、のいずれかまたはその両方と組み合わせて備えているアレイを提供する。
【0313】
いくつかの実施形態では、本アレイは、下記:
【表A65】

【0314】
に特異的な1または複数の試薬を備える。
【0315】
いくつかの実施形態では、本アレイは、本明細書に記載されるマーカーのパネルのいずれかから選択されるバイオマーカーに特異的な1または複数の試薬を備える。
【0316】
いくつかの実施形態では、本アレイは、他の集団から選択される最大16個の他のバイオマーカーの任意数のマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬をさらに備える。
【0317】
いくつかの実施形態では、本アレイは、1パネルの別のマーカーから選択される最大25個のバイオマーカーの任意数のマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬をさらに備える。
【0318】
バイオマーカーの他の例とバイオマーカーのセットが本明細書に記載されている。異なるバイオマーカー特異的試薬(「捕捉試薬」)の局在によって、同じ反応において多数の異なるバイオマーカーのレベルの測定が可能となる。アレイ形態である試薬を含むキットは、一般に、サンドイッチ形態であり、そのため、キットはまた検出試薬を備えてもよい。本発明のいくつかの実施形態では、キットは、異なる検出試薬を含み、各々の検出試薬は異なるバイオマーカーに特異的である。このような実施形態における検出試薬は、通常、基質に結合された試薬と同じバイオマーカーに特異的な試薬であり(とはいえ、検出試薬は、典型的には、基質に結合された試薬よりもバイオマーカー標的上の異なる部分または位置に結合する)、一般に、アフィニティー型検出試薬である。任意の他のフォーマットアッセイ用の検出試薬と同様に、検出試薬は、検出可能な部分で修飾され、別々の検出可能な部分の結合を可能にするように修飾され、または未修飾であってもよい。また、未修飾であるか、または別々の検出可能な部分の結合を可能にするように修飾されている検出試薬を含むアレイ型キットは、さらに検出可能な部分(例えば、検出試薬に結合する検出可能な部分、例えば、未修飾の検出試薬、またはビオチン修飾された検出試薬を検出するための検出可能な部分を用いて修飾されたストレプトアビジンを結合する標識された抗体)を含んでもよい。
【0319】
本発明のいくつかの実施形態では、本キットはまた、本明細書に記載されるように、個体における神経障害を診断、診断補助および/または分類し、および/または個体における神経障害の進行をモニタリングする方法を行うための使用説明書を備える。
【0320】
本発明を行うためのキットの使用に関連した使用説明書は、一般的に、キットの内容物が、本発明の方法を行うためにどのように用いられるべきかを記載する。使用説明書は、試料要件(例えば、形態、プレアッセイ手順および大きさ)、バイオマーカー(単数または複数)を測定するために必要なステップ、および結果の解釈の仕方を含んでもよい。
【0321】
本発明のキットに提供される使用説明書は、典型的には、ラベルまたはパッケージ挿入物(例えば、キットに含まれるペーパーシート)上の書かれた指示であるが、機械読み込み可能な使用説明書(例えば、磁気または光学式記憶ディスクに書き込まれた指示)もまた想定される。本発明のいくつかの実施形態では、機械読み込み可能な使用説明書は、キットに含まれる試薬を用いて得られる測定値を比較するためのプログラマブルデジタルコンピュータ用のソフトウェアを備える。
【0322】
[組成物]
本発明はまた、本発明の方法において使用するための(例えば、個体における神経障害の診断、診断補助および/またはその進行のモニタリング、および/または個体の層別化のための)組成物を提供し、該組成物は、少なくとも4つのバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬を備え、ここで、該少なくとも4つのバイオマーカーは、下記:
【表A66】

【0323】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーの第1のパネルから選択される。
【0324】
別の実施形態では、少なくとも4つのバイオマーカーのうちの少なくとも2つは、下記:
【表A67】

【0325】
および天然に存在するその変異体からなる群より選択される。
【0326】
いくつかの実施形態では、本組成物は、少なくとも4つのバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬と組み合わせた、少なくとも1つの他のバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬をさらに備え、ここで、該少なくとも1つの他のバイオマーカーは、下記:
【表A68】

【0327】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーの他の集団から選択される。
【0328】
いくつかの実施形態では、本組成物は、少なくとも4つのバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬と組み合わせた、少なくとも別のバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬をさらに備え、ここで、該少なくとも別のバイオマーカーは、下記:
【表A69】

【0329】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーの第3のパネルから選択される。
【0330】
いくつかの他の実施形態では、本発明は、個体における神経障害の診断、診断補助および/またはその進行のモニタリング、および/または個体の層別化(即ち、神経障害である可能性が高いと診断された個体または神経障害であると診断された個体を該障害の異なるクラスに分けること)において使用するための組成物を提供し、該キットは、少なくとも4つのバイオマーカーに特異的な試薬、ならびに他のおよび/または第3のバイオマーカーの少なくとも1つに特異的な少なくとも1つの試薬を備え、ここで、該バイオマーカーは本明細書に記載される通りである。
【0331】
いくつかの実施形態では、本組成物は、列挙された少なくとも最大全てのバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬をさらに備える。
【0332】
いくつかの実施形態では、本組成物は、マーカーの他の集団から選択される他のバイオマーカーのうち少なくとも最大16個に特異的な少なくとも1つの試薬をさらに備える。
【0333】
いくつかの実施形態では、本組成物は、1パネルの別のマーカーから選択される別のバイオマーカーのうち少なくとも最大25個に特異的な少なくとも1つの試薬をさらに備える。
【0334】
いくつかの実施形態では、本組成物は、下記:
【表A70】

【0335】
に特異的な少なくとも1つの試薬を備える。
【0336】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載されているバイオマーカーの1以上を含む組成物(例えば、参照試料および/または適切な対照として用いるためである)を提供する。
【0337】
また、本発明は、神経障害の診断もしくは診断補助、および/または神経障害のモニタリングのシステムを提供し、該システムは、個体からの生物試料中の少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルを、該少なくとも4つのバイオマーカーについての参照レベルと比較することを備え、ここで、該少なくとも4つのバイオマーカーは、下記:
【表A71】

【0338】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーの第1のパネルから選択される。
【0339】
別の実施形態では、少なくとも4つのバイオマーカーのうち少なくとも2つは、下記:
コルチゾール
IGF.BP.2−インスリン様成長因子結合タンパク質2
IL.17−インターロイキン−17
膵臓ポリペプチド
ApoE ECU−アポリポタンパク質E
修正されたカルシウム(Ca corr)=総Ca+((40−alb)0.02))
ABeta 42
アポリポタンパク質E4対立遺伝子
VCAM−1−血管細胞接着分子1
および天然に存在するその変異体からなる群より選択される。
【0340】
また、本発明は、神経障害について個体を治療する方法を提供し、該方法は、個体から生物試料を得ることと;生物試料中の少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルを、該少なくとも4つのバイオマーカーについての参照レベルと比較することと、ここで、該少なくとも4つのバイオマーカーは、下記:
【表A72】

【0341】
および天然に存在するその変異体からなるマーカーの第1のパネルから選択され;少なくとも4つのバイオマーカーの参照レベルと比較して、少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルにおいて差がある場合、これは神経障害または重度の神経障害を示し、神経障害の症状を軽減することができる治療学的に有効な量の薬物を個体に投与することとを備える。例示的な薬物は、限定されないが、コリンエステラーゼ阻害剤(例えば、ガランタミン、リバスチグミン、ドネペジル)およびN−メチルD−アスパラギン酸(NMDA)アンタゴニスト(例えば、メマンチン)を含む。
【0342】
別の実施形態では、少なくとも4つのバイオマーカーのうちの少なくとも2つは、下記:
【表A73】

【0343】
および天然に存在するその変異体からなる群より選択される。
【0344】
以下の実施例は、本発明を例証するために提供されるものであって、いずれの方法でも本発明の範囲を限定することを意図していない。
【実施例】
【0345】
オーストラリアイメージングバイオマーカーおよびライフスタイル(AIBL)研究からのバイオマーカーデータの統計学的分析
A.導入
AIBL研究の一部として、151個のバイオマーカーの測定は、以下に分類された1113人のボランティア参加者から得られた。
【0346】
・アルツハイマー病(AD)であると診断された(211人の参加者)
・軽度の認識機能障害(MCI)であると診断された(134人の参加者)
・健常対照(HC)(768人の参加者)
データは統計学的に分析され、ADをHCと区別することができたバイオマーカーの小パネルを同定した。HCI群は、本研究において含めなかった。
【0347】
B.データ削除および異常値チェック
下記による分析前にデータを削除した:
(a)検出限界未満として記録されたバイオマーカー値を小さい正値で置換する;
(b)誤った値を明確に除く。データの主要バルクと明らかに不適合であるものとして、統計記述学の検査およびデータの診断的プロットによって同定される値を除き、バイオマーカーについての中央値によって置換された。
【0348】
(c)多変量正規帰属(Schafer,J.L.(1997)Analysis of Incomplete Multivariate Data.Chapman & Hall,London)を用いた欠測データについての値をインプットし、5回繰り返し、それにより、5つの類似データセットが生じ、各々は、欠測データについてインプットされた異なる値を有した。
【0349】
別々の分析が5セットの各々について行われ、それにより、決測データに対するロバスト性を評価することができた。
【0350】
151個のバイオマーカーのうち、17個は60%またはそれを超える参加者について決測値を有することが見出された。これらは更なる分析は除外し、本研究では134個を残した。
【0351】
記述統計学および診断プロットの検査は、バイオマーカー値の分布において実質的な歪みを示した。これは、全てのバイオマーカー値を対数変換することによって減らされた。
【0352】
C.統計モデリング
いくつかの異なる統計アプローチを用いて、ADとHC参加者間を区別する式を特定し、これは、それらのバイオマーカー値の小さなサブセットに基づいている。複数方法の使用は、最終セットのバイオマーカーの有用性についての結論のロバスト性を増加させ、これは、各々の方法が異なるバイアスをもたらすためである。複数方法によって選択されたバイオマーカーは、有効な予測を与える可能性がより大きい。
【0353】
トレーニングセット/テストセットアプローチを用い、それにより、このモデルに適合させるために使用されるデータは、予測因子としてそれらの性能を試験するためい用いられたデータから分離された。AD症例およびHC参加者の群は、各々、この群の70%からなるトレーニングセットと、この群の残りの30%からなるテストセットとに分けられた。モデルをトレーニングセットに適合し、それらの性能をテストセットにおいて評価した。適合とテストを5回繰り返し、5つのインプットされたデータセットごとに1回である。
【0354】
4つの方法を用いて、ADとHCとの間の良好な区別を与えるバイオマーカーの小さなサブセットを特定した。これらは、以下の通りである:
1. ランダムフォレスト(RF) (Breiman, Leo (2001). "Random Forests". Machine Learning 45 (1): 5−32; incorporated herein by reference in its entirety);
2. マイクロアレイデータのための線形モデル(LIMMA) (G.K. Smyth. Linear models and empirical bayes methods for assessing differential expression in microarray experiments. Statistical Applications in Genetics and Molecular Biology, 3, 2004; incorporated herein by reference in its entirety);
3. 分類ツリー(CT) (Breiman, Leo; Friedman, J. H., Olshen, R. A., & Stone, C. J. (1984), Classification and regression trees, Monterey, CA: Wadsworth & Brooks/Cole Advanced Books & Software; incorporated herein by reference in its entirety); and
4. ブーストツリー(BT) ([2] J.H. Friedman (2001). “Greedy Function Approximation: A Gradient Boosting Machine,” Annals of Statistics 29(5):1189-1232; incorporated herein by reference in its entirety).
多重方法の使用は、適合されたモデルの詳細に対して、得られる選択をよりロバストにする。
【0355】
1.ランダムフォレスト
RF(分類)は、各症例に対してクラスメンバーシップを推測するために分類ツリーを用いる変数選択法である。RFは、クラスメンバーシップを予測するために、多数のクラスツリーを増やし、ツリー(各ツリーは特定のクラスについて投票を与える)からの投票の数をカウントする。RFは、「変数重要度」による各バイオマーカーの影響を測定し、これは、各変数がどれくらい十分にクラスメンバーシップを予測することができるかに基づく相対的測定である。R統計パッケージについてのrandomForestパッケージ(A.Liaw and M.Wiener(2002).Classification and Regression by randomForest.R News 2(3),18−22)を用いて、モデルを適合させた。
【0356】
2.マイクロアレイデータ分析のための線形モデル(LIMMA)
LIMMAは、マイクロアレイデータの分析に幅広く用いられている。その一般的な目的は、観察よりも多い多数の変数が存在する2つのクラス間の遺伝子発現差を同定することである。当該方法は、標準線形モデルをデータに適合することから開始し、次に、変数全体で情報(資料エラーの減少)を取り入れるEmpirical Bayersアプローチを用い、拡張された自由度を有する中程度t−統計値を用いる。LIMMA法は、各バイオマーカーについての偽発見率(FDR)調整されたp値(「q値」)を出力し、それは、予測因子としてその値を指示する。R統計パッケージについてのLIMMAプログラムは、この研究に使用された(Smyth,G.K.(2005).Limma:linear models for microarray data.In:Bioinformatics and Computational Biology Solutions using R and Bioconductor,R.Gentleman,V.Carey,S.Dudoit,R.Irizarry,W.Huber(eds.),Springer,New York,pages 397−420)。
【0357】
3.分類ツリー
CT法は、複数変数間に多数の複雑な相互作用が存在する非線形回帰への代替アプローチであり、変数が本質的に連続的であるかまたは絶対的であるかに関係がない。当該方法は、データの複数の分割または細分(再帰的分割)を生じさせ、それにより、複数変数間の相互作用がより単純になる。再帰的分割は、複数の分類ツリーを生じさせることと類似し、この場合、内部の分岐は問題であり、外部の葉はその問題に対する回答である。最終ツリーは、変数のサブセットのみを用いる。R統計パッケージ内のrpartコマンドは、本研究のために用いられた(R Development Core Team(2009).R:A language and environment for statistical computing.R Foundation for Statistical Computing,Vienna,Austria.ISBN 3−900051−07−0,URL http://www.R−project.org.)。
【0358】
4.一般化されたブースト回帰モデリング(ブーストツリー)
BTは、初期化の二元分類ツリー(ルートノードおよび2チャイルドノード)を構築する変数選択およびクラス予測法であり、続いて、従前ツリーからの分割残余に基づいて別のツリーを適合する。この計算は、何度も繰り返され、クラス予測について投票前の加重リモデリングプロセスが全てのツリーから合計されるように作用する。BTは、変数重要度と類似して、各変数がどれくらい十分にクラスメンバーシップを予測するかに基づいて相対測定を与える相対的な影響測定を出力する。R統計パッケージ内のgmbコマンドがこの研究に使用された(R Development Core Team(2009).R:A language and environment for statistical computing. R Foundation for Statistical Computing,Vienna,Austria.ISBN 3−900051−07−0,URL http://www.R−project.org)。
【0359】
各方法は、区別のために各バイオマーカーの値の指標:RFにおける変数重要度、LIMMAのq値、CTにおける封入/排除、およびBTにおける相対的影響、を与える。これらの指標は、帰属によって生じる5つのデータセット全体で平均化された。RF、LIMMAおよびBT法の各々について、これらの平均化された指標によって同定された上位30のバイオマーカーは、CTモデルに含まれる15個のバイオマーカーとともに、表1に与えられ、一方、表2は、該方法のうち2つ以上によって選択された25個のバイオマーカーを与える。
【表1−1】

【表1−2】

【0360】
ボールドイタリック体であるバイオマーカーは4つ全ての方法によって選択され、ボールド体のバイオマーカーはそれらの方法のうち3つによって選択され、イタリック体であるバイオマーカーはそれらの方法のうち2つによって選択され、通常テキストであるバイオマーカーはたった1つの方法によって選択された。
【表2】

【0361】
表3は、当該方法の4つ全てによって選択された5つのバイオマーカー、ならびにBTを除く全ての方法についてのリストの上位に近い2つを与える。また、年齢はこのリストに含まれ、これは、ADであると診断された個体の可能性に明らかに影響を及ぼすためである。
【表3】

【0362】
D.予測モデルおよびモデル検証
予測のための最大値の8個のバイオマーカーを同定したので、3つの異なる方法を用いて、ADまたはHCとして新たな個体を分類するために用いることができるこれらのバイオマーカーの予測機能を決定した。予測機能は、新しい個体からのデータに基づいて計算することができ、この新しい個体は、予測機能値が所定のカットオフ値を上回るかまたは下回るかに従ってADまたはHCとして評価され得る。カットオフ値は、AD症例をADとして評価する感受性および可能性と、HCをHCとして評価する特異性および感受性との間の均衡を達成するように選択され得る。上記されるRFとBT法は、線形判別分析(LDA)とともに適用された。LDA法は、予測機能がバイオマーカー値の容易に計算される機能であるという利点を有し、一方、RFとBTは、それらの評価に特定のソフトウェアを要求する。このようにして、LDAの性能はRFとBTと同程度である場合、予測因子の実用化に利点を有することになる。
【0363】
979人の参加者のうちたった15人について、8個のバイオマーカーにおいて欠測データが存在することが見出された。従って、予測モデリングと検証において、これらの15人の参加者に関するデータは、結論における帰属の何らかの影響を避けるために排除された。
【0364】
3つのモデルは、上記で使用された70%トレーニングセットに適合され、次に、このモデルの性能は、モデル適合手法から排除された30%テストセットを用いて試験された。この手法は、別々に無作為に選ばれたトレーニングセットおよびテストセットを用いて5回繰り返された。このようにして、結果は、適合プロセスによって偏らない。
【0365】
性能は、レシーバーオペレーティング特性(ROC)曲線を用いて測定され、これは、全ての可能なカットオフ値についてバイオマーカーの機能に基づく試験の感受性対特異性のグラフである(Pepe MS.(2003)The Statistical Evaluation of Medical Tests for Classification and Prediction.Oxford University Press,pp 67−68)。
【0366】
E.結果
RF、BTおよびLDAについてのROC曲線を図1にプロットする。図1から見ることができるように、LDA曲線は、RFとBT曲線に匹敵する性能を示す。具体的に、LDA曲線は、0.8〜0.9の特異性周辺の領域の大部分でRFとBT曲線を上回る(1−特異性=0.1〜0.2)。これは、より単純なLDAモデルがこの領域におけるカットオフ値を用いた試験について良好な性能を与えることを示し、それは、多くの場合、最も関心のあるものである。
【0367】
表4は、感受性=特異性を与えるように選ばれたカットオフポイントに対する3つの方法についての感受性と特異性を与える。また、ROC曲線を比較するために通常用いられる曲線下面積(AUC)が含まれる。3つ全ての方法は、良好な性能を与え、再度、LDA法が他の方法よりも僅かに良好であるようである。
【表4】

【0368】
適合されたLDAモデルの係数は表5に与えられる。この値は、IL−17を除く全てのバイオマーカーについて正であり、AD危険性がIL−17濃度の増加とともに減少するが、年齢の増加、IL−17以外のバイオマーカーの濃度増加とともに増加し、APOEのE4対立遺伝子のキャリヤーについてより高いことを示す。
【表5】

【0369】
F.結果
151個のバイオマーカーのセットから6個のバイオマーカーのセットの選択(ApoE状態および年齢とともに)は、良好な感受性および特異性を有するAD状態の単純な予測因子を提供する。LDAを用いて生じさせたバイオマーカーの加重平均の使用は、この予測因子を行うために適している。
【0370】
G.アルツハイマー病の臨床診断
認識低下の病歴で呼ばれた患者は、典型的には、メモリークリニックに到達する。現在の研究プロセスは、問診、試験および親族の情報提供による病歴を含む。続く調査は、神経心理学、画像および血液試験を含んでもよく、病歴および検査所見から必要とされる。
【0371】
本発明は、ADまたは他の神経障害の診断または診断補助の改善手段を臨床医に与える。本発明の方法は、単独で、または既存の診断手段と組み合わせて行うことができる。例えば、臨床医は、患者から生体液試料(例えば、血液)を回収し、診断研究所に試料を送付し、本発明の方法を行うことになる。結果は、パネルで生化学的マーカーの血清レベル、認識低下の可能性、ADおよび/または他の神経障害(単数または複数)の発症について与えられる。
【0372】
臨床医は、参考としてこの情報を用い、認識低下、ADおよび/または他の神経障害(単数または複数)の発症の程度を評価し、したがって、それらの患者の健康の管理に寄与する。
【0373】
認識低下およぼADおよび/または他の神経障害(単数または複数)の発症の程度を知ることは、下記を補助することができる:
・治療を検討すること;
・ADおよび/または他の神経障害の開始を遅延させる新しい治療のための試みを含めること;
・より多くの侵襲性診断試験(即ち、腰椎穿刺、放射線を用いた画像化)に進めるか否かを検討すること;
・認識低下を遅延させるためにいくつかの証拠を伴って厳しい身体的活動および抗酸化プログラム介入について検討すること;
・後のために計画すること(例えば、資産管理、医療および法律の代理権に関する計画、ライフスタイルの修正など)。
【0374】
現在、明確な治療または予防プログラムがない一方で、本発明による神経障害を有する個体を同定する能力は、新規な介入および予防手段の開発をもたらす可能性がある。
【0375】
H.血液試料を分析するための材料および方法
血液試料を採取し、試験するために臨床病理学研究所に転送する。保存された血液試料は、3本の異なるチューブタイプ:リチウム−ヘパリンチューブ、プロスタグランジンE1(Sapphire Biosciences,33.3ng/ml)が添加されたEDTAチューブ、および血清チューブから供給された。
【0376】
血液試料は、市販のバイオマーカー検出アッセイ(例えば、ELISA)において使用するための血漿について処理された。血液試料は、1800gで15分間、室温にて遠心分離され、血漿は、ポリプロピレンチューブに移され、分析するまで液体窒素中で保存された。任意の凍結−融解サイクルに供されていない0.5mlの分割量を分析のためにRules Based Medicine(RBM,テキサス州オースチン)に輸送された。分析時点で18カ月を超えて経過した患者試料はなかった。
【0377】
I.Luminex xMAPパネル
血漿試料は、Rules Based Medicine(RBM,テキサス州オースチン)から市販されている多重化されたluminexヒトディスカバリーxMAPパネルを用いて分析された。全てのアッセイは、CLIA標準に従って確認された。要約すると、luminex技術は、ポリスチレンマイクロスフィアビーズの表面上でイムノアッセイを多重化する。マイクロスフィアビーズを充填し、これは、最大100個の独自に色分けされたビーズを生じる2つのスペクトル的に区別できる蛍光色素の比率を有するこれらのビーズは、圧死に特異的な捕捉抗体を用いて被覆され、標準のサンドイッチフォーマットまたは競合イムノアッセイフォーマットのいずれかで行われた。捕捉抗体マイクロスフィアは、ブロッキング溶液および希釈した血漿または較正対照とともに1時間インキュベートされた。ビーズをリンスし、ビオチン化された検出試薬を添加した。次に、ストレプトアビジン−フィコエリスリンを各ウェルに添加し、60分間インキュベートした。更なる洗浄ステップ後、ビーズを読み取り溶液に懸濁し、luminex装置で読み込んだ。
【0378】
アッセイのいくつかは定量の下限を画定した。この実験の目的で、検出の下限(LD)を用いた。LLDは、20個の記載したブランク試料(血漿マトリックスで作られる)を分析することによって決定され、平均バックグラウンドを計算し、3つの標準偏差を平均に加えた。AIBLデータセットは、151個のバイオマーカー多重パネルを用いて分析された。
【0379】
文献、行為、物質、デバイス、物品などの任意の考察は、単に本発明についての背景を提供する目的のために本明細書に含められる。任意または全てのこれらの事柄は、従来技術の基礎の一部を形成するか、またはこれが本願の各請求項の優先日前に存在した場合、本発明に関連した分野における共通の一般的な知見であったことを示唆および意味するものではない。
【0380】
最後に、種々の他の修飾および/または変更は、本明細書に概要される本発明の精神から逸脱することなしに行われてもよいことは理解されるはずである。
【0381】
将来の特許出願は、本出願に基づいてまたはその優先権を主張して出願されてもよい。以下の仮の請求項は、単に例示として提供され、任意のこのような将来の出願において主張され得るものの範囲を限定することを意図しないことは理解されるべきである。本発明または複数の発明をさらに定義するかまたは再定義するために、後日、仮の請求項に特徴を添加するかまたは削除してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経障害を診断する、神経障害の診断を補助する、個体を神経障害の1または複数のクラスに層別化する、または神経障害の進行をモニタリングするための方法であって、個体からの生物試料中の少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルを、前記少なくとも4つのバイオマーカーについての参照レベルと比較することを備え、ここで、前記少なくとも4つのバイオマーカーは、下記:
【表a1】

および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される方法。
【請求項2】
前記少なくとも4つのバイオマーカーのうちの少なくとも2つが、下記:
コルチゾール
IGF.BP.2−インスリン様成長因子結合タンパク質2
IL.17−インターロイキン−17
膵臓ポリペプチド
ApoE ECU−アポリポタンパク質E
修正されたカルシウム(Ca corr)=総Ca+((40−alb)0.02))
ABeta 42
アポリポタンパク質E4対立遺伝子
VCAM−1−血管細胞接着分子1
および天然に存在するその変異体からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記個体からの生物試料中の少なくとも1つの他のバイオマーカーの測定レベルを、前記少なくとも1つの他のバイオマーカーについての参照レベルと比較することをさらに備え、ここで、前記少なくとも1つの他のバイオマーカーは、下記:
【表a2】

および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記個体からの生物試料中の少なくとも別のバイオマーカーの測定レベルを、前記少なくとも別のバイオマーカーについての参照レベルと比較することをさらに備え、ここで、前記少なくとも別のバイオマーカーは、下記:
【表a3】

および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記参照レベルが、先行する時間点における前記個体からの生物試料から得られた測定レベルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記個体からの生物試料中の前記少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルを比較することが、下記:
コルチゾール
IGF.BP.2−インスリン様成長因子結合タンパク質2
IL.17−インターロイキン−17
膵臓ポリペプチド
ApoE ECU−アポリポタンパク質E
修正されたカルシウム(Ca corr)=総Ca+((40−alb)0.02))
ABeta 42
アポリポタンパク質E4対立遺伝子
VCAM−1−血管細胞接着分子1
および天然に存在するその変異体からなる群より選択される少なくとも3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つまたは9つのバイオマーカーの測定レベルを比較することを備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記個体からの生物試料中の前記少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルおよび前記少なくとも2つの他のバイオマーカーの測定レベルを比較することが、下記:
【表a4】

の測定レベルを比較することを備える、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記神経障害がアルツハイマー病である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記生物試料が血漿である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
個体からの生物試料中の少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルを、前記少なくとも4つのバイオマーカーについての参照レベルと比較することが、ランダムフォレスト、サポートベクターマシン、マイクロアレイデータのための線形モデル(LIMMA)および/またはマイクロアレイデータの有意性検定(SAM)、最良優先、貪欲ステップワイズ、ナイーブベイズ、線形前進選択、分散探索、線形判別分析(LDA)、ステップワイズロジスティック回帰、レシーバーオペレーティング特性ならびに分類ツリー(CT)からなる群より選択される統計法の1つまたは複数によって行われる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
各バイオマーカーについての測定レベルを比較することがブーストツリー(BT)を用いて行われ、個体における神経障害の診断又は診断補助における少なくとも85%の感受性と少なくとも85%の特異性を与える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
各バイオマーカーからの測定レベルを比較することが、ランダムフォレスト(RF)、ブーストツリー(BT)、マイクロアレイデータのための線形モデル(LIMMA)および分類ツリー(CT)の組み合わせによって行われる、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
個体における神経障害の診断、診断補助および/またははその進行のモニタリング、および/または個体の層別化において使用するためのキットであって、少なくとも4つのバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬を備え、ここで、前記少なくとも4つのバイオマーカーは、下記:
【表a5】

および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択されるキット。
【請求項14】
前記少なくとも4つのバイオマーカーのうちの少なくとも2つが、下記:
コルチゾール
IGF.BP.2−インスリン様成長因子結合タンパク質2
IL.17−インターロイキン−17
膵臓ポリペプチド
ApoE ECU−アポリポタンパク質E
修正されたカルシウム(Ca corr)=総Ca+((40−alb)0.02))
ABeta 42
アポリポタンパク質E4対立遺伝子
VCAM−1−血管細胞接着分子1
および天然に存在するその変異体からなる群より選択される、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
少なくとも1つの他のバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬と比較することをさらに備え、ここで、前記少なくとも1つの他のバイオマーカーは、下記:
【表a6】

および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも別のバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬をさらに含み、ここで、前記少なくとも別のバイオマーカーは、下記:
【表a7】

および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される、請求項13または14のいずれか1項に記載のキット。
【請求項17】
下記:
コルチゾール
IGF.BP.2−インスリン様成長因子結合タンパク質2
IL.17−インターロイキン−17
膵臓ポリペプチド
ApoE ECU−アポリポタンパク質E
修正されたカルシウム(Ca corr)=総Ca+((40−alb)0.02))
ABeta 42
アポリポタンパク質E4対立遺伝子
VCAM−1−血管細胞接着分子1
および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される少なくとも3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つまたは9つのバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬を備える、請求項13〜16のいずれか1項に記載のキット。
【請求項18】
前記キットが、下記:
【表a8】

からなる群より選択される少なくとも2つの他のバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬を備える、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
前記神経障害がアルツハイマー病である、請求項13〜18のいずれか1項に記載のキット。
【請求項20】
前記少なくとも1つの試薬が、抗体、またはその断片を備える、請求項13〜19のいずれか1項に記載のキット。
【請求項21】
少なくとも1つの参照バイオマーカーをさらに含み、ここで、前記参照バイオマーカーは、下記:
【表a9】

および天然に存在するその変異体からなる群より選択される、請求項13〜20のいずれか1項に記載のキット。
【請求項22】
神経障害の治療および/または予防における使用のための候補薬物を同定するための方法であって、前記候補薬物が、インビトロまたはインビボにおける少なくとも1つのバイオマーカーのレベル、発現および/または活性を調節するか否かを決定するステップを備え、ここで、前記少なくとも1つのバイオマーカーは、下記:
【表a10】

および天然に存在するその変異体からなる群より選択される方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つのバイオマーカーが、下記:
コルチゾール
IGF.BP.2−インスリン様成長因子結合タンパク質2
IL.17−インターロイキン−17
膵臓ポリペプチド
ApoE ECU−アポリポタンパク質E
修正されたカルシウム(Ca corr)=総Ca+((40−alb)0.02))
ABeta 42
アポリポタンパク質E4対立遺伝子
VCAM−1−血管細胞接着分子1
および天然に存在するその変異体からなる群より選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つのバイオマーカーが、下記:
【表a11】

からなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
個体における神経障害の診断、診断補助および/または進行のモニタリング、および/または個体の層別化において使用するための少なくとも1つのバイオマーカーを同定するための方法であって、
複数のバイオマーカーについて1セットの生物試料から測定値を得ることと、ここで、前記セットの生物試料は、神経障害に基づくサブセットに分けられる、
少なくとも1つのバイオマーカーについて各サブセットからの測定値を比較することと、
測定値がサブセット間で相違する少なくとも1つのバイオマーカーを同定することと、
を備える方法。
【請求項26】
少なくとも1つのバイオマーカーについての各サブセットからの測定値を比較することが、ランダムフォレスト、サポートベクターマシン、マイクロアレイデータのための線形モデル(LIMMA)および/またはマイクロアレイデータの有意性検定(SAM)、最良優先、貪欲ステップワイズ、ナイーブベイズ、線形前進選択、分散探索、線形判別分析(LDA)、ステップワイズロジスティック回帰、レシーバーオペレーティング特性および分類ツリー(CT)からなる群より選択される統計法の1つまたは複数によって行われる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1つのバイオマーカーについての各サブセットからの測定値を比較することが、ブーストツリー(BT)を用いて行われ、前記方法が、個体における神経障害の診断または診断補助において少なくとも85%の感受性および少なくとも85%の特異性を与える、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも1つのバイオマーカーについての各サブセットからの測定値を比較することが、ランダムフォレスト(RF)、ブーストツリー(BT)、マイクロアレイデータのための線形モデル(LIMMA)および分類ツリー(CT)の組み合わせによって行われる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも1つのバイオマーカーが、下記:
【表a12】

および天然に存在するその変異体からなる群より選択される、請求項25〜28のいずれか1項の記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも1つのバイオマーカーについての各サブセットからの測定値を比較することが、前記セットの生物試料が得られた個体の年齢を比較することをさらに含む、請求項25〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
神経障害の治療または予防のための候補薬物を同定するための方法であって、下記:
【表a13】

および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される少なくとも4つのバイオマーカーのレベル、発現および/または活性の調節における活性が見込まれる候補薬物をアッセイすることを備える方法。
【請求項32】
前記少なくとも4つのバイオマーカーのうちの少なくとも2つが、下記:
コルチゾール
IGF.BP.2−インスリン様成長因子結合タンパク質2
IL.17−インターロイキン−17
膵臓ポリペプチド
ApoE ECU−アポリポタンパク質E
修正されたカルシウム(Ca corr)=総Ca+((40−alb)0.02))
ABeta 42
アポリポタンパク質E4対立遺伝子
VCAM−1−血管細胞接着分子1
および天然に存在するその変異体からなる群より選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
下記:
【表a14】

および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される少なくとも1つの他のバイオマーカーのレベル、発現および/または活性の調節における活性が見込まれる候補薬物をアッセイすることをさらに備える、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
下記:
【表a15】

および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される少なくとも別のバイオマーカーのレベル、発現および/または活性の調節における活性が見込まれる候補薬物をアッセイすることをさらに備える、請求項31〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
下記:
【表a16】

および天然に存在するその変異体からなる群より選択される少なくとも5つ、6つ、7つ、8つまたは9つのバイオマーカーの調節における活性が見込まれる候補薬物をアッセイすることを備える、請求項31または32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
下記:
【表a17】

のレベル、発現および/または活性の調節における活性が見込まれる候補薬物をアッセイすることを備える、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
個体における神経障害の診断、診断補助および/またはその進行のモニタリング、および/または個体の層別化で用いるための組成物であって、少なくとも4つのバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬を備え、ここで、前記少なくとも4つのバイオマーカーは、下記:
【表a18】

および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される組成物。
【請求項38】
前記少なくとも4つのバイオマーカーのうちの少なくとも2つは、下記:
コルチゾール
IGF.BP.2−インスリン様成長因子結合タンパク質2
IL.17−インターロイキン−17
膵臓ポリペプチド
ApoE ECU−アポリポタンパク質E
修正されたカルシウム(Ca corr)=総Ca+((40−alb)0.02))
ABeta 42
アポリポタンパク質E4対立遺伝子
VCAM−1−血管細胞接着分子1
および天然に存在するその変異体からなる群より選択される、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
少なくとも1つの他のバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬をさらに備え、ここで、前記少なくとも1つの他のバイオマーカーは、下記:
【表a19】

および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される、請求項37または38に記載の組成物。
【請求項40】
少なくとも別のバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬をさらに備え、ここで、前記少なくとも別のバイオマーカーは、下記:
【表a20】

および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される、請求項37〜39のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項41】
下記:
【表a21】

および天然に存在するその変異体からなる群より選択されるパネルのマーカーから選択される少なくとも5つ、6つ、7つ、8つまたは9つのバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬を備える、請求項37または38のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項42】
下記:
【表a22】

に特異的な少なくとも1つの試薬を備える、請求項38に記載の組成物。
【請求項43】
前記神経障害がアルツハイマー病である、請求項37〜42のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項44】
前記少なくとも1つの試薬が、抗体、またはその断片を備える、請求項37〜43のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項45】
神経障害の診断もしくは診断補助および/または神経障害のモニタリングのためのシステムであって、個体からの生物試料中の少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルを、前記少なくとも4つのバイオマーカーについての参照レベルと比較するためのコンピュータ手段を備え、ここで、前記少なくとも4つのバイオマーカーは、下記:
【表a23】

および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択されるシステム。
【請求項46】
前記少なくとも4つのバイオマーカーのうちの少なくとも2つが、下記:
コルチゾール
IGF.BP.2−インスリン様成長因子結合タンパク質2
IL.17−インターロイキン−17
膵臓ポリペプチド
ApoE ECU−アポリポタンパク質E
修正されたカルシウム(Ca corr)=総Ca+((40−alb)0.02))
ABeta 42
アポリポタンパク質E4対立遺伝子
VCAM−1−血管細胞接着分子1
および天然に存在するその変異体からなる群より選択される、請求項45に記載のシステム。
【請求項47】
神経障害について個体を治療するための方法であって、
個体から生物試料を得ることと、
前記生物試料中の少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルを前記少なくとも4つのバイオマーカーについての参照レベルと比較することと、ここで、前記少なくとも4つのバイオマーカーは、下記:
【表a24】

および天然に存在するその変異体からなるマーカーのパネルから選択される、および
前記少なくとも4つのバイオマーカーの参照レベルと比較して、前記少なくとも4つのバイオマーカーの測定レベルに差があり、神経障害または重度の神経障害を示す場合、前記神経障害の症状を軽減することができる治療学的に有効な量の薬物を前記個体に投与することと、
を備える方法。
【請求項48】
前記少なくとも4つのバイオマーカーのうちの少なくとも2つが、下記:
コルチゾール
IGF.BP.2−インスリン様成長因子結合タンパク質2
IL.17−インターロイキン−17
膵臓ポリペプチド
ApoE ECU−アポリポタンパク質E
修正されたカルシウム(Ca corr)=総Ca+((40−alb)0.02))
ABeta 42
アポリポタンパク質E4対立遺伝子
VCAM−1−血管細胞接着分子1
および天然に存在するその変異体からなる群より選択される、請求項47に記載のシステム。

【図1】
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【公表番号】特表2013−511732(P2013−511732A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540227(P2012−540227)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001575
【国際公開番号】WO2011/063453
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(393028081)コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼーション (12)
【Fターム(参考)】