説明

秤量用ボート

【課題】多量の試料を量ることが容易で、また天びん上重さが変化する不安定な試料も量ることができる、有機元素分析用の試料を量るためのボートを提供する。
【解決手段】試料をはかりとり燃焼させて該試料に含まれる成分を求めるにあたり、該試料を乗せるボートにおいて、前記試料を収納する収納室5と前記収納室5につながり上方を向いた第1の開口3と前記収納室5につながり横方向を向いた第2の開口4とを有することを特徴とし、金属箔を折り曲げて形成されたものであって、壁1,2を折り曲げることで第1の開口と第2の開口をふさぐことが可能となる。このボートはつまみ手により扱いやすくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、元素分析測定において試料を測るボートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、有機元素分析測定には試料をはかりいれる容器として円形の錫カップ又は箱型の白金、石英、セラミック製のボートが使われる。錫カップは容器として安定が悪く、さらに試料を多く入れすぎると重さの調節が困難である。一方、白金、石英、セラミックボートは質量が重いために精密な秤量を行う場合は天秤に負荷がかからないように載せる操作に技術を必要とする上、ごく微量の試料を扱う場合は正確な秤量が困難である。さらに試料を多く入れすぎると取り出して重さを調整するのが困難である。
【0003】
試料をはかり取る操作について上記各ボートの使用の手順を以下に示す。
1.各ボートを天秤の所定の位置に置く。
2.各ボートの風袋としての重量を消去し見かけ上無過重にする。
3.各ボートを手前の冷却台にのせて試料を適量入れる。
4.再び天秤に載せて、重量を表示させて目的量でない場合は、手前の冷却台に戻す。
5.軽い場合はさらに試料を加え、重い場合は試料を少し取り戻す。
6.各ボートを天秤の所定の位置において重量を見る。
7.この操作を目的の重さになるまで繰り返す。
8.最後に重量を測って秤量作業は終了する。
【0004】
上記測定における元素分析装置への挿入後については説明を省略する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】有機微量定量分析 有機微量分析研究懇談会編集 1963年 南江堂出版 P57−58
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、現在使用される錫カップや各種のボートにおいては試料の最適な量をはかるための、多く入れたものを取り出すのが難しく、また、開放型であるために空気中では重量の不安定な試料のはかりとりができない点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決する本発明は、試料をはかりとり燃焼させて該試料に含まれる成分を求めるにあたり該試料を乗せるボートにおいて、
前記試料を収納する収納室と、
前記収納室につながり、上方を向いた第1の開口と、
前記収納室につながり横方向を向いた第2の開口を有することを特徴とする。
本発明によるボートは試料を第1の開口から収納室に収納した後、ボートを傾けて前記収納室につながる第2の開口より試料を少しずつ落としながら試料の量を調整できる。また手早い作業を行うことができる。
【0008】
また、本発明のボートは金属箔を折り曲げて形成されたものであって前記収納室を確定する壁が折り曲げ可能なものであって、前記壁を折り曲げることで前記第1の開口と第2の開口と塞ぐことが可能になることを特徴とする。試料が空気との接触により重量が不安定なものや秤量中に輝散するものには従来の秤量ボートでは不向きであるが、前記第1の開口と前記第2の開口を塞ぐことができるため、不安定な試料を正確にはかることができる。また、あらゆる分野の天びんによる試料のはかりとりに有効な、使い捨て秤量容器として用いることができる。
【0009】
本発明のボートは、前記第1の開口に対面する対面部を有し、前記対面部は横方向に突出したつまみ手が設けられたものであることを特徴とする。そのつまみ手をつかんでボートを移動させたり傾けて試料を下方に落としたりすることを特徴とする。従来の小さい錫カップの場合はつまみにくく、天びんに安定して載せる操作に熟練を必要とするが、上記つまみ手により上記操作が誰でも簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるボートは、試料を収納する収納室に入れた試料をボートを傾けて、前記収納室につながる第2の開口部より少しずつ落としながら試料の量を調節できる。
【0011】
上述したように本発明により成形された軽量なボートで精密な秤量作業をストレスなくおこなうことができるため秤量作業工程を大きく改善し、迅速な計測を実現するものである。
【0012】
また、本発明は空気中の重量が不安定な試料の秤量にもボートをそのままつぶして密封できるため正しい秤量値が得られ、さらに長時間放置できるため分析計へ挿入する時間制約から解放されて自由な分析作業計画をたてることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ボートを斜め上方から見たときのボートの斜景図である。
【図2】ボートを側方から見たときのボートの側面図である。
【図3】本発明を実施する場合のフロー図である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0014】
試料をはかりとり燃焼させて該試料に含まれる成分を求めるにあたり、該試料を乗せるボートBについて図1に従い説明する。
前記試料を収納する収納室5と、
前記収納室5につながり上方を向いた第1の開口3と、
前記収納室につながり横方向を向いた第2の開口4を有し、
前記第1の開口3と前記第2の開口4はつながったものであることを特徴とし、
このボートは金属箔を折り曲げて形成されたものであって、
前記収納室5を確定する折り曲げ可能な壁を有し、
前記壁は、折り曲げられることで前記第1の開口3と前記第2の開口4を塞ぐことが可能なものであり、
前記壁は、前記第1の開口3に対面する対面部を有し、
前記対面部は、横方向に突出したつまみ手6が設けられたものであることを特徴とするボート。また、金属箔の軽量な材料で成形されたボートの使用は秤量時の天びん皿への負荷が少なくなり秤量の精度を向上できるものである。
【0015】
発明の方法はできるだけ天びんに負荷をかけずに、また入りすぎた試料の調節や空気中では重量の不安定な試料を密封し重量を安定にする方法で容易なはかりとり作業を実現した。
【実施例1】
【0016】
試料をはかりとり燃焼させて該試料に含まれる成分を求めるにあたり、試料をはかり取る操作について上記ボートの使用手順について図3を用いて説明する。
1.ボートBのつまみ手6をピンセットでつかみ、天びんの所定の位置に置く(ステップS1)。
2.ボートBの風袋としての重量を天びんの操作説明書記載の通り消去し、見かけ上無過重にする(ステップS2)。
3.ボートBのつまみ手6をピンセットでつかみ、手前に用意しておいた冷却台にそのボートBを載せて収納室5に試料を第1の開口3から適量入れる(ステップS3)。
4.再びボートBのつまみ手6をピンセットでつかみ、天びんに載せて重量を表示させて(ステップS4)、目的重量でない場合は、手前の冷却台に戻す(ステップS5)。
5.ボート収容室5の試料が軽い場合はさらに試料を第1の開口3から加え(ステップS6)、重い場合はボートBのつまみ手6をピンセットでつかみ、ボートを傾けて試料を適量第2の開口4からすべり落とす(ステップS7)。
6.ボートBのつまみ手6をピンセットでつかみ、天びんの所定の位置において重量を見る(ステップS8)。
7.この操作を目的の重さになるまで繰り返す。この際重量表示が不安定な試料はできるだけ手早く目的の重さにし、ボートを折りたたみ密封する(ステップS9)。
8.最後に重量を測って(ステップS10)秤量作業は終了する。
【0017】
また、本発明は空気中では重量の不安定な試料の秤量にもボートをそのままつぶして密封できるため、秤量時安定させることができるので正しい秤量値が得られ、さらにそのまま長時間放置できるため、分析計へ挿入する時間制約から解放され、自由な分析作業計画を立てることができる。上述したように本発明により軽量なボートで精密な秤量をストレスなく行うことができるため秤量工程を大きく改善し、迅速な計測を実現するものである。
(実験)
【0018】
発明のボートを用いて秤量精度が良くなった事例について実験データを表1に示す。従来のボートと発明のボートについて10回の繰り返し数を横軸に、秤量操作による秤量値の誤差を縦軸にプロットしたものであるが、グラフは従来のボートは初回の変動が大きく慣れるに従い良くなるが発明のボートは其の差が少なく誰にでも容易に取り扱えることを示唆している。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0019】
近年環境規制対象物質としてPBB,ポリ臭素化シ゛フェニル類の含有されない証明が必要である。それには原料に臭素化合物を含有していないかどうか調べる必要が多くなってきた。特に電気電子機器の有害物質使用制限RoHS指令で規制されている有機化合物中の臭化物イオンの定量のニーズが高い。本発明の方法はこれらの分析の試料をはかりとるための容器である。医薬品やその他産業用試料のCHN元素分析及び塩素、臭素、ヨウ素及び硫黄の含有の判定や品質検査用として利用できる。また石油、鉄鋼、土壌中の微量の塩素や硫黄の測定やゴミ焼却用高温ガス炉の安定化と制御のために可燃分中の塩素の定量、ダイオキシン含有判定の高効率な塩素の定量など多くの環境分野の分析のための秤量ボートとしての利用を挙げることができる。
【符号の説明】
【0020】
1. ボート第1の横面
2. ボート第2の横面
3. ボート第1の開口
4. ボート第2の開口
5. 試料収容室
6. ボートつまみ手




【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料をはかりとり燃焼させて該試料に含まれる成分を求めるにあたり、該試料を乗せるボートBにおいて
前記試料を収納する収納室5と
前記収納室5につながり,上方を向いた第1の開口3と
前記収納室につながり、横方向を向いた第2の開口4とを有することを特徴とするボート。
【請求項2】
前記第1の開口と前記第2の開口はつながったものであることを特徴とする請求項1記載のボート
【請求項3】
このボートは金属箔を折り曲げて形成されたものであって、
前記収納室を確定する折り曲げ可能な壁を有し、
前記壁は、折り曲げられることで前記第1の開口と前記第2の開口を塞ぐことが可能なものであることを特徴とする請求項1又は2記載のボート。
【請求項4】
前記壁は、前記第1の開口に対面する対面部を有し、
前記対面部は、横方向に突出したつまみ手が設けられたものであることを特徴とする請求項3記載のボート。


















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−208065(P2012−208065A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75299(P2011−75299)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【特許番号】特許第4840626号(P4840626)
【特許公報発行日】平成23年12月21日(2011.12.21)
【出願人】(309033884)
【Fターム(参考)】