説明

移動壁用吊車装置

【課題】 車体の下面がベアリングに摺接することによる音の発生や振動を抑制することができる移動壁用吊車装置を提供する。
【解決手段】 車体2が方向転換部を走行したとき、ベアリングが摺接して車体2の水平状態を維持する車体2の下面56が合成樹脂で形成されている。車体2のベアリングが摺接する下面56には、ベアリングの径と同じ径の円弧状の円弧凹部58が形成されていることが好ましい。車体2は、扁平な直方体状に形成された金属製のインナーブロック21と、インナーブロック21の4つの側面に圧入され車輪4を回転可能に支持する車輪軸22と、インナーブロック21を覆い車体2の外形を形成する合成樹脂製のカバー5とで構成されていることが好ましい。そのカバー5は、インナーブロック21を上下方向から挟持して覆う互いに着脱可能なアッパーカバー51及びロアカバー52とからなることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動壁を吊り下げ支持した状態で天井に敷設したレールに沿って走行する移動壁用吊車装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンベンションホール、宴会場、会議室、研修室、ギャラリー、美術館、博物館等において、広い空間を使用目的に応じて手動で移動できる移動壁で所望のサイズに間仕切りすることが行われている。移動壁は、天井に敷設されたレールに案内されて走行する吊車装置によって吊り下げ支持されている。
レールは、矩形筒体の下辺の中央が開口されたスリットを有する形状に形成されている。レールの両下辺の内側となる両上面が一対の走行面として形成されている。レールは、方向転換を行えるように十字状、T字状、L字状に連結されて方向転換部が形成されている。この場合、スリットも方向転換部と同じ十字状、T字状、L字状に形成されている。
【0003】
吊車装置は、金属で直方体状に形成されレール内を走行する車体と、車体の下面からスリットを通って下方に延び移動壁が吊り下げ支持される連結部と、車体の4つの側面に回転可能に設けられ車体の下面から出っ張った4つの車輪とを備えている。
吊車装置は、互いに平行な2つの側面に設けられた一対の車輪の一方が一対の走行面上を走行することによりレールに沿って走行する。このとき、残りの一対の車輪が一対の走行面の間で中に浮いた状態となる。吊車装置は、方向転換部で走行方向を直交する方向に変えることができる。つまり、レールを走行した吊車装置が方向転換部に至ると、レールは、例えば、十字状に形成されていると、走行方向を直交する2方向のどちらかの方向に変えられる。この場合、方向転換前に走行したレールの一対の走行面上を走行した一対の車輪とは異なる別の一対の車輪がそのレールと直交する方向に延びる別のレールの一対の走行面上を走行する。
【0004】
吊車装置が方向転換部に至ると、一対の走行面上を走行した一対の車輪の一方又は両方が走行していたレールとは直交する方向に延びる別のレールの一対の走行面の間に落ち込む。例えば、方向転換部が十字状に形成されている場合には、4つの車輪のすべてが走行面の間に落ち込む。このため、走行方向を変えない場合及び変える場合のいずれの場合も落ち込んだ車輪を走行面上に乗り上げさせるための余分な力が必要であった。また、吊車装置が直線状に走行する場合でも、走行途中に方向転換部があると、方向転換部を通過する毎に衝撃と振動が移動壁に加わった。
【0005】
このため、方向転換部の内側の角部の開口部と走行面との間に、走行面より上方に突出した無方向性に転動可能な金属製のベアリングを設けて、吊車装置が走行して方向転換部に至ったとき、車体の下面にベアリングが摺接して車体の水平状態を維持することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。これにより、車輪が一対の走行面の間に落ち込むことがなくなり車輪を走行面上に乗り上げさせるための余分な力が不要であり、また、吊車装置が方向転換部を通過する毎に車輪の落ち込むによる衝撃と振動が移動壁に加わることもなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公平4−25506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の吊車装置は、走行して方向転換部に至ったとき、車体の下面にベアリングが摺接して車体の水平状態を維持するが、車体及びベアリングが金属でそれぞれ形成されているから、金属同士の摺接による音が発生したり振動したりする。すなわち、車体がベアリング上に載置された状態で支持されるから、この状態で車体が走行すると、車体の移動に伴ってベアリングが転動するので、金属板上で金属の球体が転がるようなゴロゴロといった音が発生したり、金属の球体が金属板の上を転がるときに起こる振動が起こったりする。特に、移動壁の重量が重い場合には、音の発生や振動が大きくなる。
本発明が解決しようとする課題は、車体の下面がベアリングに摺接することによる音の発生や振動を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係る移動壁用吊車装置は、間隔をあけて直線上に延びる一対の走行面及び前記一対の走行面の間の中央に開口されたスリットを有する直線レールを十字状、T字状、L字状の少なくとも1つの形状に連結して方向転換部を形成し、前記方向転換部に、無方向性に転動可能なベアリングを前記走行面より上方に突出して設けてなるレールを走行する吊車装置であって、前記スリットを通って下方に延び移動壁を吊り下げ支持する連結部を有し下面に前記ベアリングが摺接する車体と、前記車体の四方にそれぞれ延びる各軸の軸回りにそれぞれ回転可能に設けられ同じ方向に回転する2組の一方が前記一対の走行面上を走行して前記車体が水平状態で走行し、前記車体の走行方向が前記方向転換部で変わったとき前記2組の一方が走行した一対の走行面と方向が異なる別の一対の走行面上を前記2組の他方が走行する4組の車輪とを備え、前記車体が前記方向転換部を走行したとき、前記ベアリングが摺接して前記車体の水平状態を維持する前記車体の下面が、合成樹脂で形成されていることを特徴とする。
【0009】
吊車装置が走行して方向転換部に至り、車体の下面にベアリングが摺接して車体の水平状態が維持されるとき、ベアリングが摺接する車体の下面が合成樹脂で形成されているので、車体の下面がベアリングに摺接することによる音の発生や振動が抑制される。また、金属に比べ合成樹脂の方が摩擦係数が大きくかつ表面硬度が低いから、車体の下面にベアリングが摺接したとき、車体の走行に伴ってベアリングが転動し易いので、吊車装置は方向転換部でスムーズに走行する。
【0010】
この場合において、車体のベアリングが摺接する下面に、ベアリングの径と同じ径の円弧状の円弧凹部を形成することができる。これにより、ベアリングと車体の下面との接触は円弧状の線接触になるので、車体の下面が摩耗し難くなる。また、この場合において、一対の走行面とスリットの両方の間に位置される走行面とそれぞれ平行な2つの直線と、その一対の走行面と直交する方向に延びる別の一対の走行面とスリットの両方の間に位置される別の走行面とそれぞれ平行な2つの直線とが交差する十字状又はT字状の方向転換部の4つの箇所の上方に、下方に延びて車体の上面に達する長さのガイドピンをそれぞれ突出し、車体の上面に、ガイドピンが挿入されて車体の方向転換部を通過する直線走行と車体の方向転換部で方向を変える方向転換走行をガイドするガイドピンより幅広なガイド溝を格子状に設け、車体の上面を、合成樹脂で形成することができる。また、この場合において、車体を、扁平な直方体状に形成された金属製のインナーブロックと、インナーブロックの4つの側面に圧入され車輪を回転可能に支持する車輪軸と、インナーブロックを覆い車体の外形を形成する合成樹脂製のカバーとで構成することができる。カバーを、インナーブロックを上下方向から挟持して覆う互いに着脱可能なアッパーカバーとロアカバーとで構成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車体の下面がベアリングに摺接することによる音の発生や振動を抑制することができる。また、吊車装置の走行を方向転換部でスムーズに行える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る実施形態の吊車装置に移動壁を吊り下げ支持した状態を示す斜視図である。
【図2】本実施形態の吊車装置に移動壁を吊り下げ支持した状態を示す一部断面図である。
【図3】本実施形態の吊車装置の一例を示す図で、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は正面一部断面図である。なお、図3(a)、(c)及び(d)は車輪が取り付けられた図、(b)は車輪が取り付けられていない図、また、(d)は図中の左側が車輪と車体の中央での断面で右側が中央からずれた位置での車体の断面である。
【図4】本実施形態の吊車装置を示す分解斜視図である。
【図5】本実施形態の吊車装置が走行する直線レール及びレールカバーの一例を示す断面図である。
【図6】本実施形態のレールの方向転換部構造で直線レールを十字状に連結した状態を示す図で、(a)は分解斜視図、(b)は部品の位置関係が理解し易いように表した図、(c)は一部横断面図である。
【図7】本実施形態のレールの十字状の方向転換部構造を示す下方から見た斜視図で、(a)はフリーベアユニットを装着前の状態を示す斜視図、(b)はフリーベアユニットを3つ装着した状態を示す斜視図である。
【図8】本実施形態のフリーベアユニットの一例を示す分解斜視図である。
【図9】本実施形態の吊車装置が十字状の方向転換部を通過する状態を説明するための図で、(a)は車体が2つのベアリングに接触した状態を示す図、(b)は車体が残りの2つのベアリングに接触した状態を示す図、(c)は車体が方向転換可能状態になった状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る移動壁用吊車装置の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1及び図2に示すように、本実施形態の移動壁用吊車装置(以下、「吊車装置1」という。)は、移動壁9を吊り下げ支持して天井に敷設されたレール6に案内されて走行するものである。移動壁9は、例えば、コンベンションホール、宴会場、会議室、研修室、ギャラリー、美術館、博物館等において、広い空間を使用目的に応じて所望のサイズに間仕切りするのに用いられる矩形パネル状に形成されている。移動壁9の幅方向の両側の上端にそれぞれ吊車装置1が連結されている。すなわち、移動壁9は、2つの吊車装置1によって吊り下げ支持されており、手動で2つの吊車装置1とともにレール6に沿って移動することができるようになっている。また、移動壁9は方向転換部7で方向転換を行う場合には、まず、走行方向前方の吊車装置1が方向転換部7で方向転換を行ってから次に走行方向後方の吊車装置1が方向転換部7で方向転換を行うことにより、移動壁9の方向が変わるようになっている。
【0014】
レール6は、図1、図6及び図7に示すように、直線レール60を十字状、T字状、L字状の少なくとも1つの形状に連結して方向転換部7を形成してなる。直線レール60は、図2及び図5〜図7に示すように、断面横長の略矩形筒体の下辺であるレール片61の中央が開口されたスリット62を有する形状を基本形状とし、例えば、アルミニウムの押出し型材から成形されている。なお、直線レール60の材料としては、アルミニウムに限定されず、他の材料、例えば、鉄鋼材、ステンレス等を用いてもよい。
【0015】
直線レール60の両レール片61の内側の面である上面が、吊車装置1の一対の車輪4が走行する同一の水平面に等間隔をあけて直線上に延びる一対の走行面61aとして形成されている。直線レール60の両側辺の内面の下方には、内面側に膨出させたすなわち肉厚に形成されたガイド部64がそれぞれ設けられている。
【0016】
また、直線レール60の両レール片61のスリット62側の端部は、それぞれレール片61とスリット62との間で下方に断面L字状に延びた段部63を有して形成されている。両段部63の端部は、下方に互いに平行に延びスリット62を形成するスリット片65としてそれぞれ形成されている。段部63の下面の幅方向の略中央部には、下方にスリット片65と平行で略同じ長さ延びてからスリット片65とは反対側に直交する方向に延びる断面L字状のフランジ片66がそれぞれ設けられている。すなわち、フランジ片66は、スリット片65と平行な垂直部66aと、レール片61と平行な水平部66bとからなり、水平部66bの下面とスリット片65の端面とが面一に形成されている。フランジ片66の垂直部66aとスリット片65との互いに対向する面の高さ方向の略中央部には、それぞれ係合凹部67が設けられている。また、フランジ片66の水平部66bの先端は、段部63側にわずかにL字状に折り曲げられて形成されている。このフランジ片66の水平部66bと段部63との間に、天井面を形成する天井パネルや天井板等の天井部材91が挿入され、天井内にレール6が配設されるようになっている。
【0017】
また、フランジ片66の水平部66bの表面には、レールカバー8が装着される。レールカバー8は、スリット片65の端面とフランジ片66の水平部66bの表面を覆い、かつ、フランジ片66の水平部66bのL字に曲がった表面を覆う断面略L字状に形成されている。レールカバー8の内面(スリット片65の端面やフランジ片66の水平部66bの表面を覆う側の表面)には、フランジ片66の垂直部66aとスリット片65との互いに対向する表面に沿ってその垂直部66aとスリット片65との間に挿入される2つの弾性変形可能な係合片81が設けられている。これら係合片81には、垂直部66aとスリット片65の係合凹部67にそれぞれ係合する係合凸部82が設けられている。これにより、天井から露出するスリット片65の端面、スリット片65とフランジ片66の水平部66bとの間、及び水平部66bの表面がレールカバー8によって覆われるようになっている。その結果、直線レール60同士を連結した繋ぎ目や後述するL字取付板11を取り付けるためのビス等がレールカバー8に覆われて天井を見上げた場合には目視で見えないようになっている。すなわち、スリット62とレールカバー8しか見えないようになっている。
【0018】
直線レール60の上辺の中央は、上方に凸状に突出した凸部68が形成されている。凸部68の上面は、幅方向の両側にそれぞれ延びてフランジ69として形成されている。このフランジ69を介して直線レール60が天井内の下地等の部材92に例えばレール固定ブラケット93を介して固定されるようになっている。なお、直線レール60の下地等の部材92への固定は、レール固定ブラケットに限定されず、その他の方法、例えば、ボルトを用いたりしてもよい。また、凸部68内の両側面には、互いに対向する側面側に突出する突出片70が上下方向に間隔をあけて2つそれぞれ形成されている。下方側の突出片70は、直線レール60の上辺に沿って形成され、上方側の突出片70は、凸部68内の側面のほぼ中央部の位置に形成されている。これにより、凸部68内の上方側の突出片70より上方が、後述する固定プレート15にガイドプレート16を固定するための例えばビス97のネジ部の逃がしになっている。
【0019】
方向転換部7は、直線レール60を十字状、T字状、L字状の少なくとも1つの形状に連結して、吊車装置1の走行方向を直交する方向に変えるものである。なお、本実施形態では、方向転換部7が十字状に形成されている場合について説明し、その他のT字状又はL字状の方向転換部については十字状の方向転換部7と作用効果が略同じであるので、説明を省略する。直線レール60を十字状に連結してなる方向転換部7は、図6及び図7に示すように、4つの直線レール60の連結する側の端部を中央が突出した平面視山型に形成して、これら4つの端部を突き合わせた状態で隣接する直線レール60の端部を互いに例えば溶接によって接合されてなる。この方向転換部7では、スリット62も十字状に形成されている。すなわち、直線レール60の端部は、2つの斜辺部60aによって突出され、これら斜辺部60aが直線レール60の幅方向に対してそれぞれ45度の角度で傾斜されている。隣接する2つの直線レール60の斜辺部60a同士を互いに突き合わせることで、直線レール60が互いに直交する方向に連結されている。また、方向転換部7の内側の角部のスリット62と走行面61aとの間、つまり、後述するベアリング12を取り付ける箇所は、直線レール60を連結した状態で、例えば、隣接する2つの直交する方向に延びる直線レール60の両端部の段部63及び走行面61aの一部に跨って矩形状に開口されている。この開口部とスリット62で後述するフリーベアユニット10が通過可能な通過穴71が形成されている。
【0020】
また、直線レール60の端部の斜辺部60aの近傍の両段部63、具体的には例えば、スリット片65とフランジ片66の間の両段部63には、フリーベアユニット10の構成要素であるL字取付板11を取り付けるための通し穴がそれぞれ設けられている。L字取付板11は、幅が段部63の上面の幅と同じか若干短い寸法で形成され、平面視直角に曲がったL字状に形成されている。また、L字取付板11の曲がり部には、ベアリングケース13を取り付けるための穴11aが設けられ、両辺部には、受け部14を取り付けるためのビス95の頭部を収容し得る2つのビス穴11bとL字取付板11を直線レール60に取り付けるためのネジ穴11cがそれぞれ設けられている。このL字取付板11の両辺部が方向転換部7の内側の角部の2つの互いに隣接する直線レール60の端部の段部63にそれぞれ載置された状態で直線レール60の下方からネジ部材例えばボルト96を直線レール60の通し穴に通してL字取付板11のネジ穴11cに螺合することにより、L字取付板11が着脱可能に2つの互いに隣接して直交する直線レール60に跨った状態で取り付けられる。
【0021】
また、十字状に連結された各直線レール60の凸部68内の突出片70間には、十字状の固定プレート15の4つの各片15aがそれぞれ挿入されている。固定プレート15は、例えば、鋼板で十字状に形成されている。固定プレート15の直線方向に延びる2つの辺15aの先端間の長さは、例えば、直線レール60の両側辺の内面間の長さより若干短い寸法で形成されている。固定プレート15の厚さは、凸部68内の突出片70間の長さより短い例えば若干短い寸法で形成されている。また、固定プレート15の各辺15aの幅は、凸部68内の両側面間の長さより短くかつ両側面の突出片70間の長さより長い寸法、例えば、両側面間の長さより若干短い寸法で形成されている。また、同一の直線方向に延びる一方の2つの辺15aの端部近傍の中央部には、ネジ穴15bが設けられている。この固定プレート15は、4つの直線レール60の端部を突き合わせる際に各直線レール60の凸部68内の突出片70間に4つの各片15aをそれぞれ挿入して直線レール60内に配置される。これにより、4つの直線レール60を互いに溶接によって接合する際には、直線レール60が上下左右に動くことなく互いに位置決めされた状態で接合されるので、4つの直線レール60を上下方向にずれて生じる段差がほとんどなく、かつ、水平方向にずれることもほとんどない状態で連結することができる。
【0022】
また、方向転換部7の互いに連結した4つの直線レール60の端部内には、固定プレート15にネジ部材例えばビス97により着脱可能に取り付けられたガイドプレート16が配置されている。ガイドプレート16は、例えば、直線レール60の両側辺のガイド部64間の長さより若干短い寸法の正方形平板状に例えば鋼板で形成されている。ガイドプレート16には、固定プレート15のネジ穴15bに対応するように2つの穴16aが設けられている。穴16aは、固定プレート15と反対側がビス97の頭部を収容し得るように形成されている。これにより、2つのビス97を直線レール60内でそれぞれガイドプレート16の穴16aを通して固定プレート15のネジ穴15bに螺合させて締め付けることにより、4つの直線レール60の端部の上部が固定プレート15とガイドプレート16により挟持されるようになっている。その結果、4つの直線レール60を互いに溶接によって接合する際には、直線レール60が上下左右に動くことが確実に防止されるので、4つの直線レール60を十字状に互いに位置ずれすることなく確実に連結することができる。また、4つの直線レール60の端部を固定プレート15とガイドプレート16で挟持することで、レール6の連結箇所の補強として機能するので、特に直線レール60がアルミニウムで形成されている場合には、レール6の連結強度を高くできる。また、ガイドプレート16は、例えば、鋼板の固定プレート15にビス97で固定されているので、アルミニウムで形成された直線レール60にビスで固定する場合に比して、強固に固定することができる。その結果、後述するガイドピン17の固定も強固にすることができることになる。
【0023】
また、ガイドプレート16の固定プレート15と反対側の表面には、ガイドピン17が下方に突出して設けられている。ガイドピン17は、ガイドプレート16の表面の正方形の2つの対角線が交差する箇所と各角部との間の略中央部の各4箇所の位置に配置されている。4つのガイドピン17は、例えば鋼製でガイドプレート16に溶接で接合されている。4つのガイドピン17は、吊車装置1が方向転換部7を走行するときに、後述する車体2の上面に設けられたガイド溝57内に挿入されて吊車装置1(車体2)の方向転換部7を通過する直線走行と方向転換部7で方向を変える方向転換走行をガイドするものである。このように、ガイドピン17を有するガイドプレート16は、直線レール60内でのビス97のネジ止め作業により固定されるので、天井やレール6を壊すことなく取り外すことができ、しかも、直線レール60の両側辺のガイド部64間の長さより若干短い寸法の正方形平板状に形成されているので、直線レール60を通して交換することができる。なお、ガイドピン17を有するガイドプレート16を方向転換部7の通過穴71を通過可能な形状に形成することで、ガイドピン17を有するガイドプレート16の交換が一層簡単に行える。
【0024】
また、方向転換部7には、無方向性に転動可能なベアリング12つまりフリーベアリングが設けられている。ベアリング12は、方向転換部7の内側の角部のスリット62と走行面61aとの間に配置されている。ベアリング12は、方向転換部7が十字状で形成されている場合には、4つの角部のすべてに設けられている。ベアリング12は、一端の開口部から一部が突出した状態で他端が閉塞された円筒体状のベアリングケース13に無方向性に転動可能に収容されている。ベアリングケース13の閉塞面の中央には、外周にねじ山が形成されているネジ部13aが同軸上に設けられており、このネジ部13aをL字取付板11の曲がり部の穴11aに通し例えばワッシャー98を介してナット99等を螺合させて、ベアリングケース13の閉塞面がL字取付板11の曲がり部の表面である取付面に面接触した状態で着脱可能に取り付けられている。すなわち、ベアリングケース13及びベアリング12は、L字取付板11を介して直線レール60に着脱可能に取り付けられている。ベアリング12は、ベアリングケース13がL字取付板11に取り付けられた状態で、走行面61aと同一面から上方に突出している。
【0025】
ベアリングケース13及びベアリング12は、移動壁9を吊り下げ支持した吊車装置1つまり車体2を水平状態に維持するもので、かつ、ベアリングケース13がスリット62に突出しないものであれば特に限定されず、走行面61aの幅と略同じ寸法の直径の寸法のベアリングケース13を用いてもよいが、方向転換部7に取り付けることができるなかで一番径の大きなものを取り付けることが好ましい。すなわち、ベアリング12及びベアリングケース13は、移動壁9を吊り下げ支持する際の荷重がかかるため、移動壁9の重量が重いものもあるので、できるだけ径の大きなものが好ましい。このように、取付可能な最大のベアリングケース13を取り付ける場合、ベアリングケース13の直径は走行面61aの幅より大きな寸法で形成されているから、方向転換部7に取り付けたとき、走行面61aの長手方向の延長上、すなわち、平面視車輪4が通過し得る位置にベアリングケース13の一部が突出する(図6(c)及び図9参照。)。このため、ベアリングケース13の上面13bを平坦に形成し、この上面13bを走行面61aと面一になるように形成することが好ましい。
【0026】
また、方向転換部7には、受け部14が設けられている。受け部14は、吊車装置1が方向転換部7を走行したとき、吊車装置1の車輪4がスリット62上から走行面61a上に移動し得るすべての箇所のスリット62と走行面61aとの間に取り付けられている。受け部14は、方向転換部7が十字状で形成されている場合には、方向転換部7の内側の各角部にベアリング12をはさんでL字に2つずつ合計8つ設けられている。受け部14は、例えば、直方体のブロック状に形成されている。受け部14の下面には、ネジ穴が2つ設けられており、この受け部14の下面をL字取付板11の一方の辺部の取付面に面接触した状態で、2つのビス95をそれぞれ2つのビス穴11bを通して受け部14のネジ穴にそれぞれ螺合させることにより、受け部14の上面の一縁部が走行面61aに近接されかつその縁部と直交する側面がベアリングケース13に接触又は近接した状態で受け部14がL字取付板11に着脱可能に取り付けられている。すなわち、受け部14は、L字取付板11を介して直線レール60に着脱可能に取り付けられている。
【0027】
受け部14の高さは、L字取付板11に取り付けられた状態で、平坦面の上面14aが走行面61aと同一平面になる寸法で形成されている。直線レール60の幅方向の受け部14の長さは、段部63の上面の幅と同じ寸法で形成されている。直線レール60の幅方向の受け部14の長さは、走行面61aの幅と同じ寸法で形成されている。また、受け部14の上面14aのスリット62側となる縁部は、面取りされて面取り部14bが形成されている。面取りは、受け部14の上面の縁部すなわち角部を削り角面や丸面等の形状に加工するものである。受け部14は、潤滑性、耐摩耗性、耐熱性、機械的強度に優れる合成樹脂、例えば、吊車装置1の車体2のカバーと同じ材料のポリアセタール樹脂(POM)等で成形されている。
【0028】
このように、図6〜図8に示すように、2つの受け部14と1つのベアリング12を含むベアリングケース13がL字取付板11にそれぞれ着脱可能に取り付けられて、フリーベアユニット10が形成される。このフリーベアユニット10は、直線レール60の端部に着脱可能に取り付けられ、かつ、方向転換部7の通過穴71を通過可能に形成されている。これにより、受け部14が磨耗したり壊れたり、ベアリングケース13が壊れたときには、直線レール60を交換することなく、フリーベアユニット10だけ交換すればよく、しかも、壊れたりした部材だけを交換すればよい。なお、図7及び図8中、符号11dは、レール6内特に方向転換部7内を見え難くするため等のL字片を示す。すなわち、L字片11dは、フリーベアユニット10を隣接する2つの直交する方向に延びる直線レール60の端部に跨って取り付けたとき、通過穴71を形成するために開口したその2つの直交する方向に延びる直線レール60の両端部が閉塞され、この閉塞された箇所のスリット片となるような断面L字の板状に形成されている。
【0029】
吊車装置1は、図2〜図4に示すように、水平断面略正方形の略直方体状に形成された車体2と、車体2の下面の中央部から下方に延び移動壁9を吊り下げ支持する連結部3と、車体2の四方である4つの側面に回転可能にそれぞれ設けられた4組図示例では4つの車輪4とを備えている。車体2は、直方体状の金属製のインナーブロック21と、インナーブロック21の4つの側面にそれぞれ圧入され車輪4を回転可能に支持する支軸である車輪軸22と、インナーブロック21を覆い車体2の外形を形成するカバー5とからなる。
【0030】
インナーブロック21は、水平断面正方形の扁平な直方体状で金属により形成されている。インナーブロック21の4つの側面の幅方向の中央部には、車輪軸22を圧入するための穴21aがそれぞれ設けられている。インナーブロック21には、上下面の中央を上下方向に貫通し、後述するトロリーボルト31のネジ部31aのみが貫通する貫通穴21bが設けられている。車輪軸22は、インナーブロック21の穴21aに圧入される圧入部22aと車輪4を軸周りに回転可能に支持する軸部22bとを有している。車輪軸22は、圧入部22aがインナーブロック21の穴21aに圧入されることで、軸部22bが側面に対して直交する方向に突出するようになっている。すなわち、車輪軸22は、四方に突出するようにインナーブロック21の穴21aに圧入されるようになっている。
【0031】
カバー5は、インナーブロック21を覆う水平断面正方形の略直方体状に形成されている。カバーの4つの側面には、車輪4が収容される車輪ハウス53がそれぞれ設けられている。車輪ハウス53は、収容される車輪4の外側の端面とカバー5の側面とが、例えば、面一になるように形成されている。カバーの4つの角部(隣接する2つの側面の間の角部)は、それぞれRに形成されている。また、カバーの幅(互いに平行な2つの側面間の寸法)、つまり、車体2の幅は、直線レール60の両側辺のガイド部間の長さより少し短い寸法で形成されている。これにより、車体2は、一対の走行面61aを走行する一対の車輪4の端面やカバーの側面が両側辺のガイド部64にガイドされるので、直線レール60内を横つまり幅方向にぶれることなく直線レール60に沿って移動できるようになっている。また、カバーの高さ、つまり、車体2の高さは、直線レール60内で車体2が走行し得る寸法で形成されている。
【0032】
カバー5は、部品などの成形材料として汎用され、潤滑性、耐摩耗性、耐熱性、機械的強度に優れる合成樹脂、例えば、ポリアセタール樹脂(POM)等で成形されている。カバー5は、インナーブロック21と一体に成形してもよいが、インナーブロック21を上下方向から挟持して覆う互いに着脱可能な上下に略2分割なアッパーカバー51とロアカバー52からなることが好ましい。
【0033】
ロアカバー52には、インナーブロック21を嵌合させた状態で収容するブロック凹部54が設けられている。ロアカバー52の4隅の近傍には、上下方向に貫通する通し穴52aがそれぞれ設けられている。また、通し穴52aと対向するアッパーカバー51の4隅の近傍には、内周面にネジ溝が形成されたネジ穴が設けられている。これにより、インナーブロック21を収容したロアカバー52の上面にアッパーカバー51を面接触させた状態でネジ部材、例えば、ビス59のネジ部をロアカバー52の通し穴52aを通してからアッパーカバー51のネジ穴に螺合させて締め付けることにより、金属製のインナーブロック21が合成樹脂製のロアカバー52とアッパーカバー51で着脱可能に覆われて車体2の外形が形成されるようになっている。なお、インナーブロック21を嵌合させた状態で収容するブロック凹部をロアカバー52に設けたが、アッパーカバー51に設けてもよく、また、ロアカバー52とアッパーカバー51の両方に跨って設けるようにしてもよい。
【0034】
車体2の上面でもあるアッパーカバー51の上面55は、水平な平坦に形成されている。また、上面55は、車輪4の上部を完全に覆うように形成してもよいが、図示するように、車輪4の上部が突出するように形成することが望ましい。上面55には、インナーブロック21の貫通穴21bに同軸で連通する連通穴55aが設けられている。連通穴55aは、トロリーボルト31の頭部31b及びスラストベアリング32が挿入され得る径で形成されている。
【0035】
アッパーカバー51の上面55には、挿通穴55aと側面とのほぼ中央に側面に平行に延びる断面凹状のガイド溝57が設けられている。すなわち、ガイド溝57は、アッパーカバー51の上面55に格子状つまり♯状に設けられている。ガイド溝57は、吊車装置1が方向転換部7を走行するとき、ガイドピン17が挿入されて吊車装置1の方向転換部7を通過する直線走行と方向転換部7で方向を変える方向転換走行をガイドするものである。ガイド溝57の幅とガイドピン17の幅つまり直径とは、ガイド溝57の幅の方が長い寸法で形成されていれば特に限定されないが、ガイド溝57の幅の方ができるだけ長くなるような寸法で形成されていることが好ましい。具体的には例えば、ガイド溝57の幅が12mmでガイドピン17の直径が8mmであることが好ましい。これは、吊車装置1が方向転換部7を走行するときに、車体2の方向転換部7を通過する直線走行と方向転換部7で方向を変える方向転換走行を行える最大許容範囲にガイドピン17の直径とガイド溝57の幅がそれぞれ設定されている。これにより、吊車装置1が方向転換部7を走行するときに、吊車装置1がぶれたりしたり多少傾いたりしながら走行しても、車体2の直線走行と方向転換走行が行える場合には、ガイドピン17とガイド溝57とが接触することなく吊車装置1が走行し、吊車装置1の走行が行えない状態になり得るときにガイドピン17とガイド溝57とが接触して車体2の直線走行と方向転換走行が行えるようにガイドするようになっている。その結果、吊車装置1には、ガイドピン17とガイド溝57とが接触することによる衝撃を抑制することができ、かつ、その衝撃による音の発生及び振動を抑制することができる。
【0036】
車体2の下面でもあるロアカバー52の下面56は、4つの車輪4の下部がそれぞれ下面56から出っ張る位置で水平な平坦に形成されている。下面56には、インナーブロック21の貫通穴21bに同軸で連通しかつ貫通穴21bと同径の連通穴56aが設けられている。また、下面56は、吊車装置1が方向転換部7を走行する際にベアリング12が摺接するように形成され、このベアリング12が摺接する下面56には、ベアリング12の径と同じ径の円弧状の円弧凹部58が形成されている。円弧凹部58は、下面56に格子状つまり♯状に設けられている。下面56から突出する車輪4の突出長さは、車輪4が走行面61aを走行する状態でベアリング12が円弧凹部58に摺接し得る寸法で形成されている。なお、下面56に円弧凹部58が設けられていない場合には、車輪4の下面56からの突出長さは、ベアリング12の突出長さと同じ寸法で形成される。このように下面56及び円弧凹部58を設けることにより、吊車装置1が方向転換部7を走行するとき、下面56の円弧凹部58にベアリング12が摺接して車体2の水平状態が維持されるようになっている。
【0037】
連結部3は、例えば、スラストベアリング32をアッパーカバー51の連通穴55aに挿入し、この連通穴55a、スラストベアリング32、インナーブロック21の貫通穴21b及びロアカバー52の連通穴56aをネジ部の先端から順次通して車体2の下面から下方にネジ部31aが突出するトロリーボルト31を備えている。このトロリーボルト31は、ネジ部31aがスペーサーチューブ33、アジャスター34及びスプリングワッシャー35を順次通されてから六角ナット36が螺合されて移動壁9に連結される。移動壁9の幅方向の両側の上端にそれぞれ吊車装置1が連結されている。これにより、移動壁9は、2つの吊車装置1によって吊り下げ支持され、かつ、各吊車装置1毎に移動壁9に対してトロリーボルト31の軸回りに回転可能になっている。
【0038】
車輪4は、合成樹脂で形成されていることが好ましく、ラジアルベアリング41を介して車体2の4つの車輪軸22の軸部22bにその軸部周りに回転可能にそれぞれ取り付けられている。車輪4の幅は、走行面61aの幅より小さな寸法で形成されている。これら4つの車輪4のうち同じ方向に回転する一対の車輪4の一方がレールの走行面61a上を走行するようになっている。なお、車輪4は、車体2の4つの側面にそれぞれ1つずつ合計4つ設けたが、各側面に1つの車輪が設けられていればこれに限定されず、各側面に2つ以上の車輪を設けるようにしてもよいし、また、各側面に車輪軸を偏心させて設けるようにしてもよい。
【0039】
さて、2つの吊車装置1の車体2を直線レール60内に走行可能に位置させる。このとき、2つの吊車装置1の連結部3は、直線レール60のスリット62から下方に延びた状態になっている。これら2つの連結部3を移動壁9の幅方向の両側の上端にそれぞれ連結することにより、図1に示すように、移動壁9は、2つの吊車装置1によって吊り下げ支持されている。この移動壁9に手動で直線レール60が延びる方向に力を作用させると、移動壁9が2つの吊車装置1とともにレールに沿って移動する。このとき、吊車装置1の4つの車輪4のうち同じ方向に回転する一対の車輪4の一方が一対の走行面61a上を走行し、残りの一対の車輪4がその一対の走行面61aの間で宙に浮いた状態で、吊車装置1が走行する。
【0040】
車体2は、走行する一対の車輪4の端面やカバー5の側面が直線レール60の両側辺のガイド部64に接触してガイドされて、直線レール60内を横つまり直線レール60の幅方向にぶれることなく走行する。このとき、カバー5が合成樹脂で形成されていることで、カバー5が金属で形成されている場合に比して、カバー5がレール6(ガイド部64)に接触することによる音の発生や振動を抑制することができる。そして、吊車装置1が十字状、T字状、L字状のいずれの方向転換部7を走行するときでも、車体2の下面56の円弧凹部58にベアリング12が摺接して車体2の水平状態が維持されるから、車輪4が走行面61aの間の特にスリット62に落ち込むことなく吊車装置1が走行する。
【0041】
すなわち、吊車装置1が例えば十字状の方向転換部7に至ると、まず、図9(a)に示すように、車体2の下面56の円弧凹部58のうち走行方向に延びる2つの円弧凹部58の走行方向前方の縁部が2つのベアリング12に接触する。このとき、一対の走行面61a上を走行している一対の車輪4は、一対の走行面61a上に位置されている。このように、車体2は、2つのベアリング12と一対の車輪4とで支持された状態で走行する。吊車装置1がさらに走行すると、図9(b)に示すように、走行面61a上を走行した一対の車輪4がその一対の走行面61aからそれぞれ受け部14上を走行するとともに、先にベアリング12が接触した2つの円弧凹部58の走行方向前方の縁部が残りの2つのベアリング12に接触する。そして、図9(c)に示すように、走行してきた一対の車輪4は、受け部14上から走行方向と直交する方向に延びるスリット62上に移動し、吊車装置1が方向転換部7の中央に至る。このとき、車体2は4つのベアリング12により水平状態に維持され、かつ、4つの車輪4がすべて十字状のスリット62上で宙に浮いた状態すなわち方向転換可能状態になる。この方向転換可能状態になると、吊車装置1は、今まで走行してきた走行方向に加えて、その走行方向と直交する2方向に方向を転換することができる。
【0042】
吊車装置1が方向転換部7を通過して直線方向に走行する場合には、方向転換部7まで走行してきた同じ一対の車輪4がそれぞれ受け部14上を走行してから一対の走行面61a上に至るとともに、車体2の下面56の円弧凹部58からまず2つのベアリング12が離れ、そして、残りの2つのベアリング12も離れて、吊車装置1が直線方向に走行する。また、吊車装置1の走行方向が方向転換部7で直交する方向に変わったとき、方向が変わる前に一対の走行面61a上を走行した一対の車輪4とは異なる別の一対の車輪4がそれぞれ受け部14上を走行してから方向が変わる前の走行面61aと方向が異なる別の一対の走行面61a上を走行し、車体2の下面56の円弧凹部58から2つのベアリング12が離れ、そして、残りの2つのベアリング12らも離れて、吊車装置1が方向転換して走行する。
【0043】
このように、吊車装置1が方向転換部7を走行するとき、方向転換部7のベアリング12が摺接して車体2つまり吊車装置1の水平状態を維持する車体2の円弧凹部58を含む下面56が合成樹脂で形成されているので、合成樹脂の方が金属に比べ摩擦係数が大きくかつ表面硬度が低いから、車体2の下面56が金属で形成されている場合に比して、車体2の下面56がベアリング12に摺接することによる音の発生や振動が抑制される。また、合成樹脂の方が金属に比べ摩擦係数が大きくかつ表面硬度が低いから、車体2の下面56にベアリング12が摺接したとき、車体2の走行に伴ってベアリング12が転動し易いので、吊車装置1は方向転換部7でスムーズに走行する。
【0044】
したがって、本実施形態の吊車装置1は、車体2の下面56が合成樹脂で形成されているので、車体2の下面がベアリング12に摺接することによる音の発生や振動を抑制することができ、かつ、方向転換部7でスムーズに走行する。
【0045】
また、吊車装置1が十字状又はT字状の方向転換部7を走行するとき、車体2の上面55のガイド溝57に方向転換部7に設けられたガイドピン17が通常非接触状態で挿入される。これにより、吊車装置1の方向転換部7を通過する直線走行と方向転換部7で方向を変える方向転換走行がガイドされるので、吊車装置1の方向転換部7での直線走行又は方向転換走行が確実に行える。このとき、ガイド溝57及びガイドピン17は、ガイドピン17の直径よりガイド溝57の幅の方ができるだけ長くなるような寸法で形成されていることで、吊車装置1が方向転換部7を走行するときに、吊車装置1がぶれたりしたり多少傾いたりしながら走行しても、車体2の直線走行と方向転換走行が行える場合には、ガイドピン17とガイド溝57とが接触することなく吊車装置1が走行し、吊車装置1の走行が行えない状態になり得るときにガイドピン17とガイド溝57とが接触して車体2の直線走行と方向転換走行が行えるようにガイドするので、ガイドピン17が車体2に接触することによる音の発生及び振動を抑制することができる。また、ガイド溝57を含む車体2の上面56が合成樹脂で形成されている場合には、ガイドピン17が車体2に接触したときにはその接触による音の発生及び振動を抑制することができる。
【0046】
また、車体2の下面56の円弧凹部58にベアリング12が摺接するので、下面56が平坦に形成されている場合に比して、車体2の下面56が摩耗し難くなっている。すなわち、ベアリング12が接触する車体2の下面が平坦に形成されている場合には、ベアリング12と下面との接触は点接触になるが、ベアリング12の径と同じ径か又はその径より若干大きな径の断面円弧状の円弧凹部58にベアリング12が接触する場合には、ベアリング12と下面56との接触は円弧状の線接触になるので、車体2の下面56が摩耗し難い。また、円弧凹部58は、車体2の走行方向をガイドする機能としても作用するので、吊車装置1の方向転換部7での直線走行又は方向転換走行が確実に行われる。
【0047】
また、車体2は、直方体状の金属製のインナーブロック21と、インナーブロック21の4つの側面にそれぞれ圧入され車輪4を回転可能に支持する車輪軸22と、インナーブロック21を上下方向から挟持して覆う取り外し可能な合成樹脂製のアッパーカバー51及びロアカバー52との別部品からなることで、簡単に分解することができるので、車体2の一部が破損した場合には、車体2全体を交換することなくその破損した部品のみを交換することができる。
【0048】
さらに、車体2が、インナーブロック21と車輪軸22とアッパーカバー51及びロアカバー52との別部品からなること、特にインナーブロック21とカバー5とが別部品であると、インナーブロック21とカバーとが一体成形されている場合に比して、吊車装置1の組み立てが簡単に行える。すなわち、インナーブロック21とカバー5とが一体成形されていると、この一体成型品に車輪軸22と車輪4を取り付ける場合、車輪軸22のインナーブロック21への圧入及び車輪軸22への車輪4の取付する際にカバーが邪魔になるので、吊車装置1の組み立てが簡単に行えない。本実施形態では、インナーブロック21とカバー5すなわちアッパーカバー51及びロアカバー52とが別部材であるから、インナーブロック21に車輪軸22と車輪4を取り付けてからアッパーカバー51及びロアカバー52を取り付けることができるので、吊車装置1の組み立てが簡単に行える。また、車体2を処分する際に、特にインナーブロック21とアッパーカバー51及びロアカバー52とを簡単に分解することができるので、金属と樹脂との分別が簡単に行える。また、車体2の外形が合成樹脂で形成されていると、車体2の外形が加工しやすく、かつ、直線レール6の内側に衝突しても音の発生や振動を抑制することができる。
【0049】
また、吊車装置1が方向転換部7を走行するとき、4つの車輪4のなかには必ずスリット62上を通過して宙に浮いた状態から走行面61a上に移動して走行するものがある。このとき、車輪4は、受け部14の面取り部14bから上面に移動してから走行面61a上に移動するので、車輪4の縁部すなわち角部にあたることなくスムーズに移動し、かつ、その角部にあたることによる音の発生や振動が抑制される。また、吊車装置1が方向転換部7を走行する際、方向転換部7まで走行してきた一対の車輪4が走行面61a上から受け部14の上面を走行してからスリット62上に至るので、吊車装置1が方向転換部7を走行する際に吊車装置1に傾く方向に力が作用した場合、車輪4が受け部14の上面14aに位置されているときには、吊車装置1が傾くことが抑制される。また、受け部14が合成樹脂で形成されていることで、受け部14の上面14aに車輪4が接するとき、受け部14が金属で形成されて金属の表面を車輪4が接する場合に比して、車輪4が接する際の音の発生を小さく、かつ、振動も少なくすることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 吊車装置
2 車体
3 連結部
4 車輪
5 カバー
6 レール
7 方向転換部
9 移動壁
12 ベアリング
17 ガイドピン
21 インナーブロック
22 車輪軸
51 アッパーカバー
52 ロアカバー
55 上面
56 下面
57 ガイド溝
58 円弧凹部
60 直線レール
61a 走行面
62 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をあけて直線上に延びる一対の走行面及び前記一対の走行面の間の中央に開口されたスリットを有する直線レールを十字状、T字状、L字状の少なくとも1つの形状に連結して方向転換部を形成し、前記方向転換部に、無方向性に転動可能なベアリングを前記走行面より上方に突出して設けてなるレールを走行する吊車装置であって、
前記スリットを通って下方に延び移動壁を吊り下げ支持する連結部を有し下面に前記ベアリングが摺接する車体と、前記車体の四方にそれぞれ延びる各軸の軸回りにそれぞれ回転可能に設けられ同じ方向に回転する2組の一方が前記一対の走行面上を走行して前記車体が水平状態で走行し、前記車体の走行方向が前記方向転換部で変わったとき前記2組の一方が走行した一対の走行面と方向が異なる別の一対の走行面上を前記2組の他方が走行する4組の車輪とを備え、
前記車体が前記方向転換部を走行したとき、前記ベアリングが摺接して前記車体の水平状態を維持する前記車体の下面が、合成樹脂で形成されていることを特徴とする移動壁用吊車装置。
【請求項2】
前記車体の前記ベアリングが摺接する下面には、前記ベアリングの径と同じ径の円弧状の円弧凹部が形成されている請求項1に記載の移動壁用吊車装置。
【請求項3】
前記一対の走行面と前記スリットの両方の間に位置される前記走行面とそれぞれ平行な2つの直線と、その一対の走行面と直交する方向に延びる別の一対の走行面とスリットの両方の間に位置される前記別の走行面とそれぞれ平行な2つの直線とが交差する前記十字状又はT字状の方向転換部の4つの箇所の上方には、下方に延びて前記車体の上面に達する長さのガイドピンがそれぞれ突出され、前記車体の上面には、前記ガイドピンが挿入されて前記車体の方向転換部を通過する直線走行と前記車体の方向転換部で方向を変える方向転換走行をガイドする前記ガイドピンより幅広なガイド溝が格子状に設けられ、該車体の上面は、合成樹脂で形成されている請求項1又は2に記載の移動壁用吊車装置。
【請求項4】
前記車体は、扁平な直方体状に形成された金属製のインナーブロックと、前記インナーブロックの4つの側面に圧入され前記車輪を回転可能に支持する車輪軸と、前記インナーブロックを覆い前記車体の外形を形成する合成樹脂製のカバーとで構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の移動壁用吊車装置。
【請求項5】
前記カバーは、前記インナーブロックを上下方向から挟持して覆う互いに着脱可能なアッパーカバーとロアカバーとからなる請求項4に記載の移動壁用吊車装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−231517(P2011−231517A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102842(P2010−102842)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【Fターム(参考)】