説明

移動式温熱療法装置

【解決手段】 温熱療法を実施する装置は、注入口と排出口とを有するリザーバカートリッジと、前記リザーバカートリッジの前記排出口に接続されるリザーバカートリッジ端部と流出カテーテルに接続される流出カテーテル端部とを有する使い捨て流出チューブと、前記リザーバカートリッジの前記注入口に接続されるリザーバカートリッジ端部と流入カテーテルに接続される流入カテーテル端部とを有する使い捨て流入チューブと、前記流出チューブに接続されるポンプと、少なくとも1つの使い捨て温度センサーと少なくとも1つの圧力センサーとに接続する一体型コンピュータと、前記リザーバカートリッジに近接して位置する電熱加熱器と、前記リザーバカートリッジ、前記加熱器、及び前記一体型コンピュータを収容するハウジングとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年3月23日付けで出願された米国仮出願第60/896,610号の利益を主張するものであり、この全体がこの参照により本明細書に組み込まれるものである。
【背景技術】
【0002】
手術及び/又は化学療法と併用して腹腔内温熱療法を提供する温熱療法装置の使用は、余命数週間又は数カ月と云われた患者の延命及び転帰に良い結果をもたらしてきた。この著しい効果は、ある程度病変部位への温熱又は薬剤及び温熱の直接接触療法に起因する。腹腔内温熱療法は、癌に限定されない、癌を含む様々な病気に有効な治療法であることが証明されてきた。病変した細胞を熱、治療薬、及び/又は薬剤に曝すことは、患者の予後により積極的かつ大きな効果を与える。
【0003】
従来の温熱療法装置は、患者に供給する流体を加熱するため、例えば熱交換器などのパッシブ加熱システムを使用する。熱交換器は通常、一組のチューブを介して水槽に接続されている。水槽は、水槽内の水を加熱する加熱器に通常接続されている。加熱された水槽の水は通常2つの分室、すなわち水を収容する第1の分室と患者に投与される液体を収容する第2の分室とを有する熱交換器へポンプ移送される。前記2つの分室は一般に金属板で分けられている。水槽からの温水は、熱交換器の第1の分室内の水を加熱する。その後、熱交換器内の水は金属板を加熱し、次に流体を加熱する。この様に流体への直接的な熱伝導ではなく、一連の熱伝導によって流体は加熱される。
【0004】
流体を間接的に加熱する方法は、多数の熱交換ポイント(例えば、水槽から熱交換器、熱交換器の第1の分室から金属板、金属板から他の分室、そして熱交換器から患者)があるため熱損失を引き起こす。さらに、従来の温熱療法装置は大型であり300ポンドを超える重量がある。これにより機動性及び収納性に限界があり、前記装置を手術室の外で使用することは不適切とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の方法を説明する前に、システム、方法論、又は手順は変更するものであるのでこれらの特定のシステム、方法論、又は手順に、本発明は限定されるものでないことは理解されるべきである。本明細書で使用された用語は、特定の実施形態を説明する目的のみにおいて使用されたものであり、また添付の特許請求項の範囲のみにより限定される開示された本発明の範囲を限定することを意図したものでないことは理解されるべきである。
【0006】
実施形態において、温熱療法を実施する装置は、注入口と排出口とを有するリザーバカートリッジと、前記リザーバカートリッジの前記排出口に接続されたリザーバカートリッジ端部と流出カテーテルに接続された流出カテーテル端部とを有する使い捨て流出チューブと、前記リザーバカートリッジの注入口に接続されたリザーバカートリッジ端部と流入カテーテルに接続された流入カテーテル端部とを有する使い捨て流入チューブと、前記流出チューブに接続されたポンプと、少なくとも1つの使い捨て温度センサーと少なくとも1つの圧力センサーとに接続する一体型コンピュータと、前記リザーバカートリッジに近接して位置する電熱加熱器と、前記リザーバカートリッジ、前記加熱器、及び前記一体型コンピュータを収容するハウジングとを含む。
【0007】
実施形態において、温熱療法を実施するシステムは、温熱療法を実施するための装置と、前記一体型コンピュータと接続した複数の予備温度センサーとを含む。温熱療法を実施する装置は、注入口と排出口とを有する使い捨てリザーバカートリッジと、前記リザーバカートリッジの排出口に接続されたリザーバカートリッジ端部と流出カテーテルに接続された流出カテーテル端部とを有する使い捨て流出チューブと、前記リザーバカートリッジの注入口に接続されたリザーバカートリッジ端部と流入カテーテルに接続された流入カテーテル端部とを有する使い捨て流入チューブと、前記流出チューブに接続されたポンプと、少なくとも1つの使い捨て温度センサーと少なくとも1つの圧力センサーとに接続する一体型コンピュータと、前記リザーバカートリッジに近接して位置する電熱加熱器と、前記リザーバカートリッジ、前記加熱器、及び前記一体型コンピュータを収容するハウジングとを含む。
【0008】
温熱療法を実施するシステムは、温熱療法を実施する装置と、第1の接続チューブによって流出チューブに接続され且つ第2の接続チューブによって耐久性に優れた圧力センサーに接続された圧力アイソレータとを含む。温熱療法を実施する装置は、注入口と排出口とを有するリザーバカートリッジと、前記リザーバカートリッジの排出口に接続されたリザーバカートリッジ端部と流出カテーテルに接続された流出カテーテル端部とを有する使い捨て流出チューブと、前記リザーバカートリッジの注入口に接続されたリザーバカートリッジ端部と流入カテーテルに接続された流入カテーテル端部とを有する使い捨て流入チューブと、少なくとも1つの使い捨て温度センサーと少なくとも1つの圧力センサーとに接続する一体型コンピュータと、前記リザーバカートリッジに近接して位置する電熱加熱器と、前記リザーバカートリッジ、前記加熱器、及び前記一体型コンピュータを収容するハウジングとを含み、さらに耐久性に優れた圧力センサーを有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の実施形態は、添付図面を参照することによって、より深く理解されるであろう。図面の要素のスケールは必ずしもお互いに関連していない。対応する同様の部材には、同様の参照符号を付して示す。
本発明の態様、特徴、及び利点は、以下の説明及び添付図面を参照することによってより明確になるであろう。
【図1】図1は、実施形態に従った温熱療法装置の典型的な構成要素を示す。
【図2】図2は、実施形態に従った初期モードで動作する温熱療法装置を示す。
【図3】図3は、実施形態に従ったハウジングに収納された温熱療法装置の典型的な構成要素を示す。
【図4】図4は、実施形態に従った典型的なリザーバカートリッジ及び仕切り(スクリーン)を示す。
【図5】図5は、実施形態に従った典型的な圧力アイソレータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付の特許請求項の範囲の中で使用される単数形"a""an"、及び"the"は、文脈で明示されない限り、複数形の指示対象を含むことに注意されなければならない。従って、「ポンプ」の意味は1若しくはそれ以上のポンプを示し、当業者に周知である同等物も含む。明らかに否定されない限り、本明細書内で使用されるすべての技術上及び科学上の用語は、当業者に一般に理解されるのと同様の意味を有する。
【0011】
本明細書に使用される用語「〜を有する(comprising)」は「これに限定されるものではない(including but not limited to)」を意味する。本明細書に使用される用語「約(about)」は、使用された数字の数値の±10%を意味する。例えば、約50%は45%〜55%の範囲の数値を意味する。
【0012】
本明細書に使用される用語「治療薬(therapeutic agent)」は、患者の望ましくない症状若しくは病気を治療、防止、改善、又は予防するために使用される薬剤を意味する。実施形態において、治療薬は化学療法剤を含む。
【0013】
治療薬と併用される「投与(administering)」は、標的組織内へ若しくは標的組織上へ治療薬を直接投与する、又は治療薬が標的とされた組織に良い影響を与えるよう患者に治療薬を投与することを意味する。組成物の「投与(administering))は、経口投与、注射、注入若しくは吸収若しくは腹腔内温熱療法との併用、 又はこれらの方法の組み合わせによって成し遂げられる。この手法は、更に加熱療法、放射線療法、及び超音波療法も含む。
【0014】
本明細書で使用される用語「対象(target)」は、機能若しくは状態の非活性化、破裂、破損若しくは破壊若しくは保存、維持、修復、又は改善のいずれかが望まれる物質を言及している。例えば、異常細胞、病原体、又は感染性物質は、疾患の被験者の望ましくない物質とみなされ、治療対象となる。
【0015】
用語「治療(treating)」は、特定の障害、疾患、若しくはその状態の予防、特定の障害、疾患、若しくはその状態に関連した症状の緩和、及び/又は特定の障害、疾患、若しくはその状態に関連した症状の予防を意味する。
【0016】
用語「患者(patient)」は一般に、本明細書で説明された化合物の投与対象となるあらゆる生体を意味しており、これらに限定されるものではないが、あらゆる人間以外の哺乳類、霊長類、又は人間を含む。この様な「患者」は、特定の病気にかかった状態の徴候、症状、又は病理を示していることもあるし、示していないこともある。
【0017】
本明細書で使用される用語「効果的"effective"」又は「治療効果のある"therapeutically effective"」は、研究者、獣医、医者、又は他の臨床医により求められている組織、臓器、システム、動物、個体、又は人間の生物学的若しくは医学的な反応を誘発することを言及している。生物学的又は医学的な反応とは、例えば(1)病気、病状、若しくは障害の病理及び/又は症状を経験している個体の病気、病状、若しくは障害を抑制すること、或いは病気、病状、若しくは障害の病理及び/又は症状の悪化を抑止すること、(2)病気、病状、若しくは障害の病理若しくは症状を経験している個体の病気、病状、若しくは障害を改善すること、或いは個体によって経験若しくは示される病理及び/又は症状を好転させることのうち1若しくはそれ以上を含む。
【0018】
実施形態において、図1で示された本発明の温熱療法装置は、リザーバカートリッジ100、流出チューブ105、流入チューブ110、ポンプ115、加熱器120、コンピュータ125、及びハウジング180を含む。
【0019】
実施形態において、加熱器120は熱伝導を最大にするため、リザーバカートリッジ100に近接して配置される。加熱器120は、例えば流体130に電熱を供給するための電熱加熱器である。電熱加熱器は流体130への直接的な熱伝導を促進する。代替の実施形態において、加熱器120は、当技術分野において既知である例えばウォーターバス、浸水湯沸かし器、又は同種の加熱器のあらゆるタイプである。
【0020】
実施形態において、コンピュータ125はコンピュータと視覚ディスプレイが同一のユニットにあるものを意味する一体型である。1つの実施形態において、前記視覚ディスプレイはタッチスクリーンである。別の実施形態において、コンピュータ125はハウジング180より取り外し可能である。例えば、コンピュータ125は前記装置の移動前にハウジング180より取り外し、患者の治療前に前記装置に接続することができる。
【0021】
実施形態において、リザーバカートリッジ100は患者に投与される流体130を保管若しくは受け取る。リザーバカートリッジ100は使い捨てであり、注入口140と排出口135を有する。実施形態において、リザーバカートリッジ100はロックアウト回路、抵抗回路、及び/又は同種のものを有する。ロックアウト回路は、患者の治療が完了した後スイッチが切られるヒューズリンクを含む。例えば、治療完了時、ヒューズリンクは短絡(ショート)する。これにより、例えばリザーバカートリッジ100のような使い捨て部品を無許可で使用すること、若しくは無許可で再利用することを防いでいる。リザーバカートリッジ100は1若しくはそれ以上の注入口及び/又は排出口を有する。前記吸入口及び/又は排出口は、流体130の流出を防ぐため密閉されており、リザーバカートリッジ100が温熱療法装置に接続されている間の無菌環境の維持に貢献している。
【0022】
実施形態において、流体130はリザーバカートリッジ100に収容されている。流体130は流体導入チューブ185を介してリザーバカートリッジ100に導入される。流体導入チューブ185は1若しくはそれ以上の弁、クランプ、又は注入口を含み、制御速度下で薬剤などの生理的に相溶性の溶液を流体130へ導入することを可能にする。この様な装置は当技術分野において知られており、例えばIVスパイク190、195などを含む。
【0023】
実施形態において、リザーバカートリッジ100は、PVCプラスティック膜及び/又は他のプラスティック材料を使用して製造されている。リザーバカートリッジ100はRF溶接及び/又はRF熱加工により密閉され得る。実施形態において、リザーバカートリッジ100は仕切り(スクリーン)215を有する。図4は典型的なリザーバカートリッジ100と仕切り215を示している。仕切り215は注入口140に近接して配置されている。実施形態において、仕切り215はリザーバカートリッジ100を流入チェンバー200及び流出チェンバー205に分離している。流入チェンバー200は流入チューブ110より流体130を受け入れる。流体130は仕切り215を通過して、第2チェンバー205へと流入する。仕切り215は、流入チューブ110を介してリザーバカートリッジ100に戻った流体130を濾過することにより、例えば脂肪組織などの巨視的な残留物を取り除く。仕切り215はプラスティック及び/又は同様の素材で製造された使い捨てである。仕切り215は100〜140ミクロン以上の大きさの粒子を濾過により除去することができる。
【0024】
実施形態において、流体130は無菌の流体を有する。別の実施形態では流体130は、薬品、薬剤、若しくは同様のものを有する。実施形態において、温熱療法は、温熱療法を使用していない時に比べて、対象とされる病気に対する化学療法剤の効果を高めるよう補助する。実施形態において、流体130は、例えばシクロホスファミド、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、シスプラチン、ゲムシタビン、ミトキサントロン、オキサリプラチン、エトポシド、イリノテカン、パクリタキセル、ドセタキセル、5−フルオウラシル、フロクスウリジン、カルボプラチン、又は当業者に周知である他の化学療法剤などの1若しくはそれ以上の化学療法剤を有している。
【0025】
実施形態において、リザーバカートリッジ100及び流体130は加熱器120によって加熱される。加熱器120は熱伝導を最大にするように使用され、装置の電力消費量は約15アンペアまでになる。代替として、他の電力消費量の値は約30アンペアまでになるになる。
【0026】
実施形態において、流体130の温度が所望の値に達したら、ポンプ115により流出チューブ105を介して患者150へポンプ移送する。実施形態において、流出チューブ105は近端と遠端とを有し、使い捨てである。流出チューブ105はその近端で、リザーバカートリッジ100の排出口135に接続され、流出チューブ105の遠端は流出カテーテル145に接続される。流出カテーテル145は患者150に挿入される。
【0027】
実施形態において、ポンプ115は外輪(パドルホイール)、ローラーポンプ、脈動ポンプ、遠心ポンプ、及び/又は同様のものである。実施形態において、ポンプ115は流出チューブ105に接触しており、流体130を約毎秒4,000ミリリットルの率でポンプ移送する。患者と流体の接触を最大にする効果的な治療を提供するには、従来の装置に比べ高い流量が重要である。また、高流量により、効果的な温熱療法において重要な流体の温度が維持される。前記流量と流体により提供される温熱とを組み合わせることによって、温熱療法の効力を高める。
【0028】
実施形態において、流体130は患者150に投与された後、流入チューブ110を介してリザーバカートリッジ100へと再循環される。前記加熱された流体の再循環は、患者の深部体温を上昇させ及び/又は一定期間高温を維持するために行われる。
【0029】
実施形態において、流入チューブ110は近端と遠端とを有し、使い捨てである。流入チューブ110はその遠端(流入カテーテル端部)が流入カテーテル155を介して患者150へ接続され、その近端(リザーバカートリッジ端部)が注入口140でリザーバカートリッジへ接続されている。患者150から流れ出る流体130は、リザーバカートリッジ100の中で再加熱され、再び患者150へポンプ移送される。一定の治療効力が現れるように、本工程を複数の再循環サイクルで、特定の期間継続する。
【0030】
実施形態において、1若しくはそれ以上の流入チューブ110及び流出チューブ105は、フランジ又は同様の部分を有する。流入チューブ110はその遠端(流入カテーテル端部)にフランジを有し、流出チューブ105はその遠端(流出カテーテル端部)にフランジを有する。前記フランジはプラスティック及び/又は他の適切な材料で製造される。実施形態において、前記フランジは、医師又は他の医療専門家がより迅速に効率良く患者150に流入チューブ110及び/又は流出チューブ105を接合する補助を行なう。更に、前記フランジは流入チューブ110の遠端(流入カテーテル端部)及び/又は流出チューブ105の遠端(流出カテーテル端部)の密閉部として機能する。
【0031】
実施形態によれば、本発明の温熱療法装置は流体の温度及び圧力を監視するセンサーを含む。実施形態において、温度センサーは、標準サーミスタ、赤外線サーミスタ、若しくは同様のものである。図1で示されるように、温度センサー160、165は、リザーバカートリッジ100の中の流入チューブ110の近端及び流出チューブ105の近端に位置する。温度センサー160、165は、流体130がリザーバカートリッジ100に流入する時点及び流出する時点の両時点で流体130の温度を監視する。実施形態において、温度センサー160,165は使い捨てである。実施形態において、温度センサー160、165はコンピュータ125と接続している。
【0032】
実施形態において、温熱療法を実施するシステムは、1若しくはそれ以上の予備温度センサーと本開示で説明された温熱療法装置とを含む。予備温度センサーは、患者皮膚上及び/又は患者の体内の様々な部位に配置される。1若しくはそれ以上の予備温度センサーは、標準接続又は同種のものを介して温熱療法装置に接続されたプラグインサーミスタである。別の実施形態において、1若しくはそれ以上の予備温度センサーは前記温熱療法装置と無線で接続している。実施形態において、医療専門家は予備温度センサーのうちの1つを参照用として選択することもできる。医療専門家は予備温度センサーが配置された地点で温度を監視することが可能であり、温熱療法装置は温熱療法装置に配置された温度センサー160、165ではなく、むしろ選択した予備温度センサーを基準にして流体の温度を制御することもできる。
【0033】
図1に示すように、実施形態によれば、圧力センサー175はリザーバカートリッジに近接した流出チューブ105の中に配置されている。圧力センサー175はポンプ115から下流の流出チューブ105の中に位置するのが好ましい。実施形態において、圧力センサー175はポンプ115から下流した直後の出力チューブ105の中に配置されている。圧力センサー175により、流体130がリザーバカートリッジ100を流出した時点の流体130の圧力を監視することができる。実施形態において、圧力センサー175はコンピュータ125と接続している。実施形態において、圧力センサー175は使い捨てである。
【0034】
別の実施形態において、ハウジングは圧力センサー220を収容する。圧力センサー220は耐久性が高い。圧力センサー220は、圧力アイソレータ225を介して流体130の圧力を測定する。圧力隔離機225は、第1のチェンバー255、第2のチェンバー260、注入口240、排出口245、及び/又は膜230を有する。第1の接続チューブ235は流出チューブ105と注入口240をつなぐ。第2の接続チューブ250は排出口245と圧力センサー220をつなぐ。膜240は第1のチャンバー255と第2のチャンバー255を分離する。膜230は不浸透性であり、流体130が圧力センサー220と接触するのを妨げている。実施形態において、圧力センサー220は第1のチャンバー255と第2のチャンバー260の圧力格差を基準にして流体130の圧力を測定する。
【0035】
図面で温度センサー160、165及び圧力センサー175、220が特定の位置において図示されているが、センサー160、165、175、220は異なる位置に配置されてもよい。さらに、1若しくはそれ以上の温度センサー160、165及び圧力センサー175、220はコンピュータ125と無線で接続することもできる。更に、本発明の装置により追加の温度センサー及び/又は圧力センサーを実施することもできる。
【0036】
本発明の装置は、流体130がリザーバカートリッジ100の中に入っている間の流体130の温度を監視することにより、約±摂氏0.5度(±0.5℃)の範囲の正確な温度調節を可能にする。言い換えると、例えば流体がリザーバカートリッジを出た時の温度と、流体が患者150の体内に入る時の温度の変化は約0.5℃以下である。好適な実施形態において、リザーバカートリッジ100の中の流体130の温度は43℃を超えることはない。そのため、患者150に投与される時の流体130の温度は約42.5℃を超えないことが望ましい。リザーバカートリッジ100の中の流体130の温度は43℃以外の温度で維持することも可能であり、例えば、装置の操作者が所望の療法効果が得られるように、若しくは以下で説明するような初期モードで装置の運転を維持するように設定できる。
【0037】
実施形態において、コンピュータ125及びタッチスクリーン170は、ある条件が起こると、可聴警報及び可視警報を提供するように構成されている。例えば、リザーバカートリッジ100の中の流体130の温度が特定の温度を超えた場合、可聴警報及び/若しくは可視警報が始動する。同様に、流体130の圧力若しくは温度が既定の閾値を越えると、可聴警報及び/若しくは可視警報が始動するようにもできる。
【0038】
安全予防処置として、1つの実施形態によれば、加熱器120は、流体130の温度が特定の温度を超えると温熱の供給を停止する。1つの実施形態によれば、加熱器120は、流体130の圧力が特定のレベルを超えと温熱の供給を停止する。
【0039】
同様に、実施形態において、ポンプ115は、流体130の圧力が特定のレベルを超えるとポンプ移送を停止する。実施形態において、ポンプ115は、流体130の温度が特定のレベルを超えとポンプ移送を停止する。
【0040】
コンピュータ125はプロセッサとプロセッサ読取り可能記憶媒体とを有する。コンピュータ125はプログラム可能であり、ユーザーからの入力を受け取ることができる。例えば、ユーザーは、温度レベル、圧力レベル、若しくは同様のものをタッチスクリーン170若しくは他の入力インターフェイスを介して特定することができる。ユーザーは更に、例えば治療持続期間、装置が初期モードで動作する期間、若しくは同様のものの他の情報も入力することができる。実施形態において、コンピュータ125は治療などに関連する測定値などのデータを記録することができる。例えば、患者に治療を施している間、コンピュータ125は1若しくはそれ以上の温度センサー160、165、予備温度センサー、及び/又は同様のものが示す1若しくはそれ以上の温度を記録できる。さらに、コンピュータ125は流量、圧力値、治療時間、及び/又は同様のものを記録することができる。
【0041】
コンピュータ125は、ポンプ115、加熱器120、温度センサー160、165、及び圧力センサー175と接続している。コンピュータ125はポンプ115の運転を制御し、温度センサー160、165、及び圧力センサー175を監視する。実施形態において、流体130の温度又は圧力が特定のレベルを超えた場合、コンピュータ125は可聴警告及び可視警告を提供する。別の実施形態において、流体130の温度が特定の温度を超えた場合、又は流体130の温度が特定の範囲を外れた場合、コンピュータ125は加熱器120を停止する。同様に、実施形態において、流体130の圧力が特定の圧力レベルを超えた場合、又は流体130の圧力が圧力の特定の範囲を外れた場合、コンピュータ125はポンプ115を停止する。流体130の温度が特定の温度を超えた場合、又は流体130の温度が温度の特定の範囲を外れた場合、コンピュータ125はポンプ115を停止する。同様に、流体130の圧力レベルが特定の圧力レベルを超えた場合、又は流体130の圧力レベルが圧力の特定の範囲を外れた場合、コンピュータ125は加熱器120を停止する。
【0042】
他の実施形態において、本発明の装置は患者に未接続の状態で動作している。この状態は「初期モード」と呼ばれ 、図2で図示されている。初期モードでは、装置は患者に投与される流体130を加熱及び再循環させて準備する。初期モードでは、流出チューブ105はコネクタ265を介して流入チューブ110に接続される。本発明の使用に適した様々なチューブコネクタが当技術分野では知られており、例えば有刺チューブコネクタ(barbed tubing connector)若しくは同種のもの、又は望ましいコネクタ機能を果たすために適した他のコネクタが含まれる。その様に、流体130はリザーバカートリッジ100から、流出チューブ105を介し、コネクタ265を介し、そして流入チューブ110を介してリザーバカートリッジ100に戻るように送り出される。流体130は、流体130が患者に投与される前に特定の期間ポンプ移送される。初期モードで動作しているとき、前記リザーバの中の流体130の温度は例えば53℃までの温度で維持される。本発明の装置が患者に接続される前において、前記装置は流体130の温度が許容レベルを下回らないことを確実にするため初期モードで動作される。運転者は装置が初期モードで動作する期間を設定することもできる。
【0043】
実施形態において、リザーバカートリッジ100、加熱器120、及びコンピュータ125はハウジング180の中に収容されている(図3)。実施形態において、これら構成要素は互いに近接して配置されている。構成要素の近接した配置は、手術室内及び手術室外の両方を含む様々な臨床設定での装置の可搬性及び使い易さの一因となるっている。
【0044】
上記の開示、他の特徴及び機能、又はこれらの代替手段の様々なものを好ましく組み合わせて他の多くの異なるシステムやアプリケーションとすることも可能であることは理解されるべきである。後で当業者によって作成されるであろう本明細書の現時点では未知若しくは予期されていない代替手段、修正、変更、又は改良は、添付の特許請求項の範囲で包含されるように意図されていることも理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温熱療法を実施する装置であって、
注入口と排出口とを有するリザーバカートリッジと、
前記リザーバカートリッジの前記排出口に接続されるリザーバカートリッジ端部と、流出カテーテルに接続される流出カテーテル端部とを有する使い捨て流出チューブと、
前記リザーバカートリッジの前記注入口に接続されるリザーバカートリッジ端部と、流入カテーテルに接続される流入カテーテル端部とを有する使い捨て流入チューブと、
前記流出チューブに接続されるポンプと、
少なくとも1つの使い捨て温度センサーと少なくとも1つの圧力センサーとに接続する一体型コンピュータと、
前記リザーバカートリッジに近接して位置する電熱加熱器と、
前記リザーバカートリッジ、前記加熱器、及び前記一体型コンピュータを収容するハウジングと
を有する温熱療法装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、前記リザーバカートリッジは無菌液を含むものである。
【請求項3】
請求項1記載の装置において、前記リザーバカートリッジは使い捨てである。
【請求項4】
請求項1記載の装置において、前記一体型コンピュータは一体型タッチスクリーンを有するものである。
【請求項5】
請求項1記載の装置において、前記一体型コンピュータは前記ハウジングから取り外されるものである。
【請求項6】
請求項1記載の装置において、前記リザーバカートリッジは、前記流入チューブのリザーバカートリッジ端部に位置する使い捨て温度センサーを有するものである。
【請求項7】
請求項1記載の装置において、前記リザーバカートリッジは、前記流出チューブのリザーバカートリッジ端部に位置する使い捨て温度センサーを有するものである。
【請求項8】
請求項1記載の装置において、前記流出チューブは、前記流出カテーテル端部に位置する圧力センサーを有するものである。
【請求項9】
請求項1記載の装置において、前記リザーバカートリッジは、
流体を収容し、且つ、
前記流体の温度が摂氏43度以下に維持されるよう構成されているものである。
【請求項10】
請求項1記載の装置において、患者に投与される時の前記流体の温度が摂氏42.5度以下に維持されるよう構成されているものである。
【請求項11】
請求項1記載の装置において、前記リザーバカートリッジに収容されている流体の温度と当該流体が患者に投与される時の流体の温度との差が、±摂氏0.5度の範囲に維持されるよう構成されているものである。
【請求項12】
請求項1記載の装置において、この装置が主要モードで動作している時の流体の温度が摂氏53度以下に維持されるよう構成されているものである。
【請求項13】
請求項1記載の装置において、流体の温度が特定の温度を超えたときに信号を提供する少なくとも1つの温度アラームをさらに有するものである。
【請求項14】
請求項13記載の装置において、前記信号は聴覚信号である。
【請求項15】
請求項13記載の装置において、前記信号は視覚信号である。
【請求項16】
請求項13記載の装置において、前記加熱器は、前記流体の温度が特定の温度を超えたとき、温熱の提供を停止するよう構成されているものである。
【請求項17】
請求項1記載の装置において、流体の圧力が特定の圧力レベルを超えたときに信号を提供する少なくとも1つの圧力アラームをさらに有するものである。
【請求項18】
請求項17記載の装置において、前記信号は聴覚信号である。
【請求項19】
請求項17記載の装置において、前記信号は視覚信号である。
【請求項20】
請求項17記載の装置において、前記ポンプは、前記流体の圧力レベルが前記特定の圧力レベル以下の値に下がるまで、ポンプ移送を停止するよう構成されているものである。
【請求項21】
請求項1記載の装置において、前記ポンプは、毎分約4000ミリリットルで流体をポンプ移送するよう構成されているものである。
【請求項22】
請求項1記載の装置において、この装置の電力消費量は約15アンペアである。
【請求項23】
請求項1記載の装置において、この装置は、さらに、
治療完了時に短絡(ショート)するよう構成されたロックアウト回路を有するものである。
【請求項24】
請求項1記載の装置において、前記リザーバカートリッジは、
流体と、
仕切り(スクリーン)とを有し、
この仕切りは、前記リザーバカートリッジを流入チェンバーと流出チェンバーに分離するものであり、
前記流入チェンバーは前記流入チューブへ接続され、
前記流出チェンバーは前記流出チューブに接続されるものである。
【請求項25】
温熱療法を実施するシステムにおいて、
温熱療法を実施する装置を有し、この装置は、
注入口と排出口とを有する使い捨てのリザーバカートリッジと、
前記リザーバカートリッジの前記排出口に接続されるリザーバカートリッジ端部と、流出カテーテルに接続される流出カテーテル端部とを有する使い捨て流出チューブと、
前記リザーバカートリッジの前記注入口に接続されるリザーバカートリッジ端部と、流入カテーテルに接続される流入カテーテル端部とを有する使い捨て流入チューブと、
前記流出チューブに接続されるポンプと、
少なくとも1つの使い捨て温度センサーと少なくとも1つの圧力センサーとに接続する一体型コンピュータと、
前記リザーバカートリッジに近接して位置する電熱加熱器と、
前記リザーバカートリッジ、前記加熱器、前記一体型コンピュータ、及び前記一体型コンピュータを収容するハウジングと
を有するものである前記装置と、
前記一体型コンピュータと接続する複数の予備温度センサーと
を有するシステム。
【請求項26】
請求項25記載のシステムにおいて、前記一体型コンピュータは、
ユーザーから、前記複数の予備温度センサーの中から選択された1つを受け取り、
前記選択された予備温度センサーに関連した1若しくはそれ以上の測定を基準にして、流体温度を制御するよう構成されているものである。
【請求項27】
温熱療法を実施するシステムであって、
温熱療法を実施する装置を有し、この装置は、
注入口と排出口を有する使い捨てリザーバカートリッジと、
前記リザーバカートリッジの前記排出口に接続されるリザーバカートリッジ端部と、流出カテーテルに接続される流出カテーテル端部とを有する使い捨て流出チューブと、
前記リザーバカートリッジの前記注入口に接続されるリザーバカートリッジ端部と、流入カテーテルに接続される流入カテーテル端部とを有する使い捨て流入チューブと、
前記流出チューブに接続されるポンプと、
少なくとも1つの使い捨て温度センサーと少なくとも1つの圧力センサーとに接続する一体型コンピュータと、
前記リザーバカートリッジに近接して位置する電熱加熱器と、
前記リザーバカートリッジ、前記加熱器、及び前記一体型コンピュータを収容するハウジングであって、耐久性に優れた圧力センサーを有するものである前記ハウジングと
を有するものである前記装置と、
圧力アイソレータであって、第1の接続チューブによって前記流出チューブに接続され、第2の接続チューブによって前記耐久性に優れた圧力センサーに接続されているものである前記圧力アイソレータと
を有するシステム。
【請求項28】
請求項27記載のシステムにおいて、前記圧力アイソレータは、
注入口と、
排出口と、
前記圧力アイソレータの注入口に接続される第1のチェンバーと、
前記圧力アイソレータの排出口に接続される第2のチェンバーと、
前記第1のチェンバーと前記第2のチェンバーに分離する膜と
を有し、
前記耐久性に優れた圧力センサーは、前記第1のチェンバーと前記第2のチェンバーの間の圧力差に基づいて流体の圧力を測定するように構成されているものである。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−522066(P2010−522066A)
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501148(P2010−501148)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/058035
【国際公開番号】WO2008/118864
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(509264844)サーマル セラピューティク システムズ、インク. (1)
【Fターム(参考)】