移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具及びローラ保持方法
【課題】点検時におけるローラの吊り上げ作業の作業性及び安全性を向上させる移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具を提供する。
【解決手段】移動手摺遅れ検出装置２のローラ保持治具１は、ローラ４と移動手摺３との間隙に挿入され、ローラ４を保持するローラ保持部５と、ローラ保持部５と連結し、移動手摺３に沿って設けられるアングル材７により支持される支持部６と、支持部６をアングル材７に固定する固定用締結具８及び外れ防止用締結具９と、を備え、ローラ４の移動手摺３の移動方向の側部に取り付けられ、吊り上げられたローラ４と移動手摺３との間隙に移動手摺３の移動方向からスライドさせて所定の位置に設置し、吊り上げられたローラ４を降ろしてローラ保持部５にローラ４を保持する。
【解決手段】移動手摺遅れ検出装置２のローラ保持治具１は、ローラ４と移動手摺３との間隙に挿入され、ローラ４を保持するローラ保持部５と、ローラ保持部５と連結し、移動手摺３に沿って設けられるアングル材７により支持される支持部６と、支持部６をアングル材７に固定する固定用締結具８及び外れ防止用締結具９と、を備え、ローラ４の移動手摺３の移動方向の側部に取り付けられ、吊り上げられたローラ４と移動手摺３との間隙に移動手摺３の移動方向からスライドさせて所定の位置に設置し、吊り上げられたローラ４を降ろしてローラ保持部５にローラ４を保持する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具及びローラ保持方法に係り、特に、エスカレータの移動手摺の移動速度が踏み段の移動速度に対して一定の許容値を越えて同期しなくなると作動する移動手摺遅れ検出装置の動作状態を点検するために、移動手摺に接触して回転するローラを移動手摺から吊り上げて保持する移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具及びローラ保持方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
エスカレータの移動手摺の移動速度は、踏み台の移動速度と同期しなければならない。これは、エスカレータの移動手摺の移動速度が、踏み台の移動速度よりも遅くなると、移動手摺につかまった乗客は転倒したりつまずいたりする虞があるからである。そのため、エスカレータの定格速度に対する移動手摺の移動速度の割合が一定の許容値を越えて遅くなる状態が一定時間継続した場合には、移動手摺遅れ検出装置が作動してエスカレータを停止させる安全管理がなされている。
【０００３】
この移動手摺遅れ検出装置は、エスカレータの上部と下部との２箇所に設置されるのが一般的である。この移動手摺遅れ検出装置は、帰路側（下側）の移動手摺の内面に接触して回転するローラと、このローラと同軸に設けられたパルス円盤と、近接スイッチとにより移動手摺の移動速度を検出している。すなわち、移動手摺の移動は回転運動に変換され、近接スイッチがパルス円盤の回転によるパルスインターバルを検出する。移動手摺の移動速度が減少するとパルスインターバルが長くなり移動手摺の遅れが検知される。
【０００４】
この移動手摺遅れ検出装置は、エスカレータの安全性を確認するため定期的に検査される。この移動手摺遅れ検出装置を検査する場合は、移動手摺遅れ検出装置のローラを移動手摺から離間させてエスカレータを動作させ、ローラの回転速度による移動手摺遅れ検出装置の移動手摺の遅れの検出が正常であるか否かを検査する。
【０００５】
図４に、従来、この移動手摺遅れ検出装置の検査におけるローラの吊り上げ方法を示す。ローラ４は、ローラ４の上方にあるアングル材等（図示せず）に電線１１等の紐状の材料で結んで吊り上げられ、移動手摺３から離間されていた。移動手摺３の側方には、ガイドレール部（図示せず）のアングル材７が、移動手摺３に沿って設置されている。
【０００６】
一方、特許文献１には、エスカレータの手摺ベルトの内面に金属板を装着させ、検出器により、手摺ベルトの移動速度を算出し、算出された移動速度が所定の許容範囲内か否かを判定するエスカレータ用移動手摺監視装置が開示されている。
【０００７】
【特許文献１】特開２００３−４０５７１号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
上述したように、従来、移動手摺遅れ検出装置の検査において、ローラを近接するアングル材等に電線等の紐状の材料で結んで吊り上げていた。このため、電線等が切断したり、結び目が解けたりする危険性があった。また、電線等がエスカレータの機器に干渉してエスカレータ機器の破損が生じる虞があった。さらに、ローラの吊り上げに用いるアングル材の位置はエスカレータの機種によって異なるため、検査のたびにアングル材の位置に合わせて電線等の紐状の材料を設置しなければならないという問題があった。
【０００９】
本願の目的は、かかる課題を解決し、点検時におけるローラの吊り上げ作業の作業性及び安全性を向上させる移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具及びローラ保持方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
上記目的を達成するため、本発明に係る移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具は、エスカレータの移動手摺の移動速度が踏み段の移動速度に対して一定の許容値を越えて同期しなくなると作動する移動手摺遅れ検出装置の動作状態を点検するために、移動手摺に接触して回転するローラを移動手摺から吊り上げて保持する移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具であって、ローラと移動手摺との間隙に挿入され、ローラを保持するローラ保持部と、ローラ保持部と連結し、移動手摺に沿って設けられるアングル材により支持される支持部と、支持部をアングル材に固定する締結具と、を備え、ローラの移動手摺の移動方向の側部に取り付けられ、吊り上げられたローラと移動手摺との間隙に移動手摺の移動方向からスライドさせて所定の位置に設置し、吊り上げられたローラを降ろしてローラ保持部にローラを保持することを特徴とする。
【００１１】
また、移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具は、締結具が、固定用締結具と外れ止め用締結具とからなり、固定用締結具は、支持部に設けられた締結孔に係合し、アングル材に対して略水平方向から押え付け、外れ止め用締結具は、支持部に設けられた貫通孔を貫通し、アングル材に対して略鉛直方向から押え付け、固定用締結具がアングル材から外れるのを防止することが好ましい。
【００１２】
また、移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具は、外れ止め用締結具が、その軸部にバネが設置され、ローラ保持治具を所定の位置にスライドさせて挿入する際にはバネを縮め、アングル材と接触しないように挿入されることが好ましい。
【００１３】
さらに、本発明に係る移動手摺遅れ検出装置のローラ保持方法は、エスカレータの移動手摺の移動速度が踏み段の移動速度に対して一定の許容値を越えて同期しなくなると作動する移動手摺遅れ検出装置の動作状態を点検するために、手摺内面に接触して回転するローラを移動手摺から吊り上げて保持する移動手摺遅れ検出装置のローラ保持方法であって、移動手摺に沿って設けられるアングル材にローラ保持治具を設置する工程と、移動手摺遅れ検出装置のローラを吊り上げて移動手摺から離間させる工程と、ローラ保持治具をローラと移動手摺との間隙に移動手摺の移動方向からスライドさせて所定の位置に設置する工程と、吊り上げられたローラを降ろし、ローラ保持治具のローラ保持部に保持させ、ローラ保持治具を締結具により固定する工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【００１４】
上記構成により、移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具は、移動手摺に沿ったアングル材を利用してローラを移動手摺から浮かせて保持することが可能となる。これにより、移動手摺遅れ検出装置の点検時におけるローラの吊り上げ作業の作業性及び安全性を向上させることが可能となる。
【００１５】
また、移動手摺遅れ検出装置のローラ保持方法は、ローラ保持治具をローラと手摺内面との間隙に手摺移動方向からスライドさせて挿入して所定の位置に設置することで、移動手摺遅れ検出装置の点検時におけるローラの吊り上げ作業の作業性及び安全性を向上させることが可能となる。
【００１６】
以上のように、本発明に係る移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具及びローラ保持方法によれば、点検時におけるローラの吊り上げ作業の作業性及び安全性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１７】
以下に、図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。
【００１８】
図１に、本発明に係る移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具の１つの実施形態の概略構成を示す。また、図２に、図１のローラ保持治具のＡ−Ａ側面図を示す。ローラ保持治具１は、ローラ保持部５、支持部６、固定用締結具８、及びバネ１０を内蔵する外れ防止用締結具９から構成される。
【００１９】
ローラ保持治具１のローラ保持部５は、本実施形態では平板である。このローラ保持部５は、移動手摺３と移動手摺遅れ検出装置２のローラ４との間隙に挿入され、ローラ４を上下方向に保持する。また、ローラ保持治具１の支持部６は、Ｕ字型の板である。この、支持部６は、アングル材７の縦板１２をそのＵ字の内部に挟み込むように設置される。
【００２０】
固定用締結具８は、本実施形態では蝶ネジである。この蝶ネジの先端には、アングル材７の縦板１２を押え付けるための押え板１４が取付けられている。固定用締結具８は、ローラ保持治具１の支持部６に設けられた雌ネジ部１５に係合され、アングル材７を押え板１４で支持部６に対して押さえ込んで密着させる。すなわち、Ｕ字型の支持部６は、そのＵ字の内部にアングル材７を挟み込み、固定用締結具８が締め込まれることでアングル材７に固定される。
【００２１】
外れ防止用締結具９は、支持部６に設けられた開口部１６を貫通し、その先端には支持板１７が取付けられている。この支持板１７は、アングル材７の横板１３の下部に接している。ローラ４の自重が図１に示すＰ点に鉛直下向きに生じた場合、アングル材７を支点とし、固定用締結具８に鉛直上向きの力が発生する。この外れ防止用締結具９は、この固定用締結具８に生じる鉛直上向きの力により、固定用締結具８が押さえつけているアングル材７から外れるのを防止する。すなわち、支持部６の固定用締結具８と接続する箇所に上向きの力が発生したときに、外れ防止用締結具９は、アングル材７の横板１３の下部に接している支持板１７により反力をとって抵抗する。
【００２２】
固定用締結具８及び外れ防止用締結具９は、いずれもローラ保持治具１の支持部６に設けられた孔明（雌ネジ及び開口部）に挿入され、ナットにより締め込まれる。従って、それぞれの締結具８，９は、検査中や運搬時にローラ保持治具１から外れず、誤って治具や締結具を落下させる虞がない。また、ローラ保持治具１の取り付け及び取り外しの作業は、締結具の締め込みのみであり、工具を用いる必要がなく簡易で安全な点検作業となる。また、アングル材７には、締結具用の孔明を設ける必要がないため、検査の際にはローラ保持治具１をアングル材７に容易に設置でき簡易な点検作業となる。
【００２３】
図３にローラ４の保持方法の手順を示す。（ａ）移動手摺の近傍にあるガイドレール部（図示せず）のアングル材７にローラ保持治具１を設置する。（ｂ）移動手摺遅れ検出装置２のローラ４を吊り上げて手摺から離間させる。このローラ４の吊り上げは、人力にて吊り上げることができる。（ｃ）ローラ保持治具１をローラ４と移動手摺との間隙に移動手摺の移動方向からスライドさせて挿入して所定の位置に設置する。アングル材７は、移動手摺３に沿って設置されているため、このローラ保持治具１のスライドが可能となる。また、このローラ保持治具１のスライドの際には、外れ止め締結具９を引張り、軸部に設置されたバネ１０を収縮させ、アングル材７に接触しないようにしてスライドさせる。（ｄ）吊り上げられたローラ４を降ろし、ローラ保持治具１のローラ保持部５に保持する。そして、ローラ保持治具１を固定用締結具８により固定し、外れ防止用締結具９により外れ防止を行う。
【図面の簡単な説明】
【００２４】
【図１】本発明に係る移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具の１つの実施形態の概略構成を示す断面図である。
【図２】図１のローラ保持治具のＡ−Ａ側面図である。
【図３】ローラ保持方法の手順を示す図１のＡ−Ａ側面図である。
【図４】従来の移動手摺遅れ検出装置の検査時におけるローラの吊り上げ方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【００２５】
１ ローラ保持治具、２ 移動手摺遅れ検出装置、３ 移動手摺、４ ローラ、５ ローラ保持部、６ 支持部、７ アングル材、８ 固定用締結具、９ 外れ防止用締結具、１０ バネ、１１ 電線、１２ 縦板、１３ 横板、１４ 押え板、１５ 雌ネジ部、１６ 開口部、１７ 支持板。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具及びローラ保持方法に係り、特に、エスカレータの移動手摺の移動速度が踏み段の移動速度に対して一定の許容値を越えて同期しなくなると作動する移動手摺遅れ検出装置の動作状態を点検するために、移動手摺に接触して回転するローラを移動手摺から吊り上げて保持する移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具及びローラ保持方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
エスカレータの移動手摺の移動速度は、踏み台の移動速度と同期しなければならない。これは、エスカレータの移動手摺の移動速度が、踏み台の移動速度よりも遅くなると、移動手摺につかまった乗客は転倒したりつまずいたりする虞があるからである。そのため、エスカレータの定格速度に対する移動手摺の移動速度の割合が一定の許容値を越えて遅くなる状態が一定時間継続した場合には、移動手摺遅れ検出装置が作動してエスカレータを停止させる安全管理がなされている。
【０００３】
この移動手摺遅れ検出装置は、エスカレータの上部と下部との２箇所に設置されるのが一般的である。この移動手摺遅れ検出装置は、帰路側（下側）の移動手摺の内面に接触して回転するローラと、このローラと同軸に設けられたパルス円盤と、近接スイッチとにより移動手摺の移動速度を検出している。すなわち、移動手摺の移動は回転運動に変換され、近接スイッチがパルス円盤の回転によるパルスインターバルを検出する。移動手摺の移動速度が減少するとパルスインターバルが長くなり移動手摺の遅れが検知される。
【０００４】
この移動手摺遅れ検出装置は、エスカレータの安全性を確認するため定期的に検査される。この移動手摺遅れ検出装置を検査する場合は、移動手摺遅れ検出装置のローラを移動手摺から離間させてエスカレータを動作させ、ローラの回転速度による移動手摺遅れ検出装置の移動手摺の遅れの検出が正常であるか否かを検査する。
【０００５】
図４に、従来、この移動手摺遅れ検出装置の検査におけるローラの吊り上げ方法を示す。ローラ４は、ローラ４の上方にあるアングル材等（図示せず）に電線１１等の紐状の材料で結んで吊り上げられ、移動手摺３から離間されていた。移動手摺３の側方には、ガイドレール部（図示せず）のアングル材７が、移動手摺３に沿って設置されている。
【０００６】
一方、特許文献１には、エスカレータの手摺ベルトの内面に金属板を装着させ、検出器により、手摺ベルトの移動速度を算出し、算出された移動速度が所定の許容範囲内か否かを判定するエスカレータ用移動手摺監視装置が開示されている。
【０００７】
【特許文献１】特開２００３−４０５７１号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
上述したように、従来、移動手摺遅れ検出装置の検査において、ローラを近接するアングル材等に電線等の紐状の材料で結んで吊り上げていた。このため、電線等が切断したり、結び目が解けたりする危険性があった。また、電線等がエスカレータの機器に干渉してエスカレータ機器の破損が生じる虞があった。さらに、ローラの吊り上げに用いるアングル材の位置はエスカレータの機種によって異なるため、検査のたびにアングル材の位置に合わせて電線等の紐状の材料を設置しなければならないという問題があった。
【０００９】
本願の目的は、かかる課題を解決し、点検時におけるローラの吊り上げ作業の作業性及び安全性を向上させる移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具及びローラ保持方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
上記目的を達成するため、本発明に係る移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具は、エスカレータの移動手摺の移動速度が踏み段の移動速度に対して一定の許容値を越えて同期しなくなると作動する移動手摺遅れ検出装置の動作状態を点検するために、移動手摺に接触して回転するローラを移動手摺から吊り上げて保持する移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具であって、ローラと移動手摺との間隙に挿入され、ローラを保持するローラ保持部と、ローラ保持部と連結し、移動手摺に沿って設けられるアングル材により支持される支持部と、支持部をアングル材に固定する締結具と、を備え、ローラの移動手摺の移動方向の側部に取り付けられ、吊り上げられたローラと移動手摺との間隙に移動手摺の移動方向からスライドさせて所定の位置に設置し、吊り上げられたローラを降ろしてローラ保持部にローラを保持することを特徴とする。
【００１１】
また、移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具は、締結具が、固定用締結具と外れ止め用締結具とからなり、固定用締結具は、支持部に設けられた締結孔に係合し、アングル材に対して略水平方向から押え付け、外れ止め用締結具は、支持部に設けられた貫通孔を貫通し、アングル材に対して略鉛直方向から押え付け、固定用締結具がアングル材から外れるのを防止することが好ましい。
【００１２】
また、移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具は、外れ止め用締結具が、その軸部にバネが設置され、ローラ保持治具を所定の位置にスライドさせて挿入する際にはバネを縮め、アングル材と接触しないように挿入されることが好ましい。
【００１３】
さらに、本発明に係る移動手摺遅れ検出装置のローラ保持方法は、エスカレータの移動手摺の移動速度が踏み段の移動速度に対して一定の許容値を越えて同期しなくなると作動する移動手摺遅れ検出装置の動作状態を点検するために、手摺内面に接触して回転するローラを移動手摺から吊り上げて保持する移動手摺遅れ検出装置のローラ保持方法であって、移動手摺に沿って設けられるアングル材にローラ保持治具を設置する工程と、移動手摺遅れ検出装置のローラを吊り上げて移動手摺から離間させる工程と、ローラ保持治具をローラと移動手摺との間隙に移動手摺の移動方向からスライドさせて所定の位置に設置する工程と、吊り上げられたローラを降ろし、ローラ保持治具のローラ保持部に保持させ、ローラ保持治具を締結具により固定する工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【００１４】
上記構成により、移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具は、移動手摺に沿ったアングル材を利用してローラを移動手摺から浮かせて保持することが可能となる。これにより、移動手摺遅れ検出装置の点検時におけるローラの吊り上げ作業の作業性及び安全性を向上させることが可能となる。
【００１５】
また、移動手摺遅れ検出装置のローラ保持方法は、ローラ保持治具をローラと手摺内面との間隙に手摺移動方向からスライドさせて挿入して所定の位置に設置することで、移動手摺遅れ検出装置の点検時におけるローラの吊り上げ作業の作業性及び安全性を向上させることが可能となる。
【００１６】
以上のように、本発明に係る移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具及びローラ保持方法によれば、点検時におけるローラの吊り上げ作業の作業性及び安全性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１７】
以下に、図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。
【００１８】
図１に、本発明に係る移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具の１つの実施形態の概略構成を示す。また、図２に、図１のローラ保持治具のＡ−Ａ側面図を示す。ローラ保持治具１は、ローラ保持部５、支持部６、固定用締結具８、及びバネ１０を内蔵する外れ防止用締結具９から構成される。
【００１９】
ローラ保持治具１のローラ保持部５は、本実施形態では平板である。このローラ保持部５は、移動手摺３と移動手摺遅れ検出装置２のローラ４との間隙に挿入され、ローラ４を上下方向に保持する。また、ローラ保持治具１の支持部６は、Ｕ字型の板である。この、支持部６は、アングル材７の縦板１２をそのＵ字の内部に挟み込むように設置される。
【００２０】
固定用締結具８は、本実施形態では蝶ネジである。この蝶ネジの先端には、アングル材７の縦板１２を押え付けるための押え板１４が取付けられている。固定用締結具８は、ローラ保持治具１の支持部６に設けられた雌ネジ部１５に係合され、アングル材７を押え板１４で支持部６に対して押さえ込んで密着させる。すなわち、Ｕ字型の支持部６は、そのＵ字の内部にアングル材７を挟み込み、固定用締結具８が締め込まれることでアングル材７に固定される。
【００２１】
外れ防止用締結具９は、支持部６に設けられた開口部１６を貫通し、その先端には支持板１７が取付けられている。この支持板１７は、アングル材７の横板１３の下部に接している。ローラ４の自重が図１に示すＰ点に鉛直下向きに生じた場合、アングル材７を支点とし、固定用締結具８に鉛直上向きの力が発生する。この外れ防止用締結具９は、この固定用締結具８に生じる鉛直上向きの力により、固定用締結具８が押さえつけているアングル材７から外れるのを防止する。すなわち、支持部６の固定用締結具８と接続する箇所に上向きの力が発生したときに、外れ防止用締結具９は、アングル材７の横板１３の下部に接している支持板１７により反力をとって抵抗する。
【００２２】
固定用締結具８及び外れ防止用締結具９は、いずれもローラ保持治具１の支持部６に設けられた孔明（雌ネジ及び開口部）に挿入され、ナットにより締め込まれる。従って、それぞれの締結具８，９は、検査中や運搬時にローラ保持治具１から外れず、誤って治具や締結具を落下させる虞がない。また、ローラ保持治具１の取り付け及び取り外しの作業は、締結具の締め込みのみであり、工具を用いる必要がなく簡易で安全な点検作業となる。また、アングル材７には、締結具用の孔明を設ける必要がないため、検査の際にはローラ保持治具１をアングル材７に容易に設置でき簡易な点検作業となる。
【００２３】
図３にローラ４の保持方法の手順を示す。（ａ）移動手摺の近傍にあるガイドレール部（図示せず）のアングル材７にローラ保持治具１を設置する。（ｂ）移動手摺遅れ検出装置２のローラ４を吊り上げて手摺から離間させる。このローラ４の吊り上げは、人力にて吊り上げることができる。（ｃ）ローラ保持治具１をローラ４と移動手摺との間隙に移動手摺の移動方向からスライドさせて挿入して所定の位置に設置する。アングル材７は、移動手摺３に沿って設置されているため、このローラ保持治具１のスライドが可能となる。また、このローラ保持治具１のスライドの際には、外れ止め締結具９を引張り、軸部に設置されたバネ１０を収縮させ、アングル材７に接触しないようにしてスライドさせる。（ｄ）吊り上げられたローラ４を降ろし、ローラ保持治具１のローラ保持部５に保持する。そして、ローラ保持治具１を固定用締結具８により固定し、外れ防止用締結具９により外れ防止を行う。
【図面の簡単な説明】
【００２４】
【図１】本発明に係る移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具の１つの実施形態の概略構成を示す断面図である。
【図２】図１のローラ保持治具のＡ−Ａ側面図である。
【図３】ローラ保持方法の手順を示す図１のＡ−Ａ側面図である。
【図４】従来の移動手摺遅れ検出装置の検査時におけるローラの吊り上げ方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【００２５】
１ ローラ保持治具、２ 移動手摺遅れ検出装置、３ 移動手摺、４ ローラ、５ ローラ保持部、６ 支持部、７ アングル材、８ 固定用締結具、９ 外れ防止用締結具、１０ バネ、１１ 電線、１２ 縦板、１３ 横板、１４ 押え板、１５ 雌ネジ部、１６ 開口部、１７ 支持板。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
エスカレータの移動手摺の移動速度が踏み段の移動速度に対して一定の許容値を越えて同期しなくなると作動する移動手摺遅れ検出装置の動作状態を点検するために、移動手摺に接触して回転するローラを移動手摺から吊り上げて保持する移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具であって、
ローラと移動手摺との間隙に挿入され、ローラを保持するローラ保持部と、
ローラ保持部と連結し、移動手摺に沿って設けられるアングル材により支持される支持部と、
支持部をアングル材に固定する締結具と、
を備え、
ローラの移動手摺の移動方向の側部に取り付けられ、吊り上げられたローラと移動手摺との間隙に移動手摺の移動方向からスライドさせて所定の位置に設置し、吊り上げられたローラを降ろしてローラ保持部にローラを保持することを特徴とする移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具。
【請求項２】
請求項１に記載の移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具において、締結具は、固定用締結具と外れ止め用締結具とからなり、固定用締結具は、支持部に設けられた締結孔に係合し、アングル材に対して略水平方向から押え付け、外れ止め用締結具は、支持部に設けられた貫通孔を貫通し、アングル材に対して略鉛直方向から押え付け、固定用締結具がアングル材から外れるのを防止することを特徴とする移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具。
【請求項３】
請求項１又は２に記載の移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具において、外れ止め用締結具は、その軸部にバネが設置され、ローラ保持治具を所定の位置にスライドさせて挿入する際にはバネを縮め、アングル材と接触しないように挿入されることを特徴とする移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具。
【請求項４】
エスカレータの移動手摺の移動速度が踏み段の移動速度に対して一定の許容値を越えて同期しなくなると作動する移動手摺遅れ検出装置の動作状態を点検するために、手摺内面に接触して回転するローラを移動手摺から吊り上げて保持する移動手摺遅れ検出装置のローラ保持方法であって、
移動手摺に沿って設けられるアングル材にローラ保持治具を設置する工程と、
移動手摺遅れ検出装置のローラを吊り上げて移動手摺から離間させる工程と、
ローラ保持治具をローラと移動手摺との間隙に移動手摺の移動方向からスライドさせて所定の位置に設置する工程と、
吊り上げられたローラを降ろし、ローラ保持治具のローラ保持部に保持させ、ローラ保持治具を締結具により固定する工程と、
を備えることを特徴とする移動手摺遅れ検出装置のローラ保持方法。
【請求項１】
エスカレータの移動手摺の移動速度が踏み段の移動速度に対して一定の許容値を越えて同期しなくなると作動する移動手摺遅れ検出装置の動作状態を点検するために、移動手摺に接触して回転するローラを移動手摺から吊り上げて保持する移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具であって、
ローラと移動手摺との間隙に挿入され、ローラを保持するローラ保持部と、
ローラ保持部と連結し、移動手摺に沿って設けられるアングル材により支持される支持部と、
支持部をアングル材に固定する締結具と、
を備え、
ローラの移動手摺の移動方向の側部に取り付けられ、吊り上げられたローラと移動手摺との間隙に移動手摺の移動方向からスライドさせて所定の位置に設置し、吊り上げられたローラを降ろしてローラ保持部にローラを保持することを特徴とする移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具。
【請求項２】
請求項１に記載の移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具において、締結具は、固定用締結具と外れ止め用締結具とからなり、固定用締結具は、支持部に設けられた締結孔に係合し、アングル材に対して略水平方向から押え付け、外れ止め用締結具は、支持部に設けられた貫通孔を貫通し、アングル材に対して略鉛直方向から押え付け、固定用締結具がアングル材から外れるのを防止することを特徴とする移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具。
【請求項３】
請求項１又は２に記載の移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具において、外れ止め用締結具は、その軸部にバネが設置され、ローラ保持治具を所定の位置にスライドさせて挿入する際にはバネを縮め、アングル材と接触しないように挿入されることを特徴とする移動手摺遅れ検出装置のローラ保持治具。
【請求項４】
エスカレータの移動手摺の移動速度が踏み段の移動速度に対して一定の許容値を越えて同期しなくなると作動する移動手摺遅れ検出装置の動作状態を点検するために、手摺内面に接触して回転するローラを移動手摺から吊り上げて保持する移動手摺遅れ検出装置のローラ保持方法であって、
移動手摺に沿って設けられるアングル材にローラ保持治具を設置する工程と、
移動手摺遅れ検出装置のローラを吊り上げて移動手摺から離間させる工程と、
ローラ保持治具をローラと移動手摺との間隙に移動手摺の移動方向からスライドさせて所定の位置に設置する工程と、
吊り上げられたローラを降ろし、ローラ保持治具のローラ保持部に保持させ、ローラ保持治具を締結具により固定する工程と、
を備えることを特徴とする移動手摺遅れ検出装置のローラ保持方法。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図２】
【図３】
【図４】
【公開番号】特開２００８−１７９４３７（Ｐ２００８−１７９４３７Ａ）
【公開日】平成２０年８月７日（２００８．８．７）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００７−１３３４０（Ｐ２００７−１３３４０）
【出願日】平成１９年１月２４日（２００７．１．２４）
【出願人】（０００２３６０５６）三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２０年８月７日（２００８．８．７）
【国際特許分類】
【出願日】平成１９年１月２４日（２００７．１．２４）
【出願人】（０００２３６０５６）三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Ｆターム（参考）】
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