移動栽培システムの抜取装置
【課題】 栽培ベンチの抜取装置を配置した移動栽培システムであっても、作業者の通行や作業の邪魔にならないように構成すると共に、他方向のラインにも移動を可能として、抜取装置の設置台数を軽減し、抜取装置による日陰の形成を抑制と、園芸施設全体のコストを実施できる移動栽培システムを提供する。
【解決手段】 公敷レール上には、吊下げレールを備えて、このレールには抜取装置が懸架されるように構成し、抜取装置は、吊下げレールに懸架される懸架部と、それぞれを伸縮自在の昇降装置で接続すると共に、栽培ベンチ上に搭載可能であって、栽培ベンチと共に移動可能とした。
【解決手段】 公敷レール上には、吊下げレールを備えて、このレールには抜取装置が懸架されるように構成し、抜取装置は、吊下げレールに懸架される懸架部と、それぞれを伸縮自在の昇降装置で接続すると共に、栽培ベンチ上に搭載可能であって、栽培ベンチと共に移動可能とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
農園芸施設の育成植物を積載する栽培ベンチを移動式とした移動循環栽培システムにおいて、育成植物の生育状態に応じた配列順番の変更や、収穫計画の変更による収穫順序の変更を実施するための、栽培ベンチの移動装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来の農園芸施設において、食用に生産される葉物野菜や、ある程度生育の後の販売を行なう観賞用植物の生育方法において、特開平８−１１６７９２号公報（特許文献１）のように、温室やビニールハウス内に所定間隔をもって隣接して備えられた複数の台脚の上端に、パイプ状のレールの連結を複数列備えて、棚即ち栽培ベンチに備えられたガイド車輪によって、栽培ベンチが移動自在としながら植物を育成させる園芸用ベンチが記載されている。
【０００３】
また、複数の栽培ベンチを縦横に複数列配置して、投入口から搬出口に徐々にその位置を移動しながら、栽培ベンチ上の植物が生育させる栽培空間（栽培室）と、栽培空間から搬出された栽培ベンチから、生育の終了した植物を収穫し、栽培ベンチを洗浄し、また栽培ベンチ上に播種を行い、再度栽培空間に栽培ベンチを投入するまでの作業を行なう作業空間を備え、栽培空間と作業空間に移動させるためのレールを備えて、栽培ベンチが循環しながら植物の生育を行なう栽培装置は、特開平９−２７５８１５号公報（特許文献２）や特開２００７−２５２３１５公報（特許文献３）に記載されている。
【０００４】
そして、前記特許文献２・３のような栽培装置において、品種等の違いによる生育状況の差や、先に取出したい栽培計画の変更等によって、指定する栽培ベンチの場所を変更するために、栽培ベンチを跨いだ形態の台車をとそのレールを備えて、先出ししようとする栽培ベンチを水平姿勢を保持しながら吊上げて運搬する先出し装置を併設した栽培装置が、特開２００２−０９５３５５公報（特許文献４）に記載されている。
【０００５】
【特許文献１】特開平８−１１６７９２号公報
【特許文献２】特開平９−２７５８１５号公報
【特許文献３】特開２００７−２５２３１５公報
【特許文献４】特開２００２−０９５３５５公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
特許文献４における先出し装置は、先出ししようとする栽培ベンチ（栽培槽）を一方向の列に対して移動する装置であって、栽培列が複数ある場合、それぞれの列に対応した先出し装置を備える必要がり、栽培施設にかかるコストの上昇が問題となる。
【０００７】
また先出し装置は、一方向に移動するためのレールが栽培ベンチ（栽培槽）を跨いで備えているので、栽培を管理するための作業者が通行しようとする通路を狭く構成するか、通路を確保するために、栽培ベンチ同士の列を空けて配置する必要があり、作業者の通行場所の減少から発生する効率の低下や、栽培施設における生育領域率の減少が発生し、栽培施設のコスト高や栽培効率の悪化を引き起こす課題が発生している。
【０００８】
そこで本発明では、先出し装置即ち抜取装置を備える園芸施設であっても、抜取装置専用のレールが作業者の通行を妨げない場所に配置して、作業者の通行や作業の邪魔にならないように構成し、抜取装置が一方向だけの移動に留まらず他方向にも移動を可能として、抜取装置の設置台数を軽減することによって、園芸施設全体のコストの低減を可能とする移動栽培システムを提供しようとするものである。
【０００９】
また、抜取装置の設置台数を必要最小限とすることで、植物が生育する空間に抜取装置による日陰の形成を抑制し、良好な光合成を行なわせること、そしてこの抜取装置を栽培ベンチ上に搭載させることを可能としているので、栽培空間から作業空間まで移動レールが配置している場所であれば何処へでも移動可能としているので、抜取装置の修理点検を容易に行なうことの出来る栽培システムの移動装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
前記目的を達成するために、本発明の請求項１に係わる移動栽培システムの抜取装置は、育成植物を積載した栽培ベンチを、投入ラインから取出しラインに向かって敷設した広敷レール上に広域に展開した栽培空間と、栽培空間と隣接して、取出しラインの出口から投入ラインの入口までを繋げる作業空間とを、栽培ベンチが移動しながら播種・育成・収穫のそれぞれの作業を循環する移動栽培システムにおいて、公敷レール上には、吊下げレールを備えて、このレールには栽培ベンチの並びの順番を変更させる抜取装置が懸架されるように構成したことを特徴とするものである。
【００１１】
また、上記目的を達成するための本発明の請求項２に係わる移動栽培システムの抜取装置は、請求項１記載の移動栽培システムの抜取装置において、抜取装置は、栽培ベンチ上に搭載可能であって、栽培空間と作業空間を栽培ベンチと共に移動可能として、栽培空間では、吊下げレールに懸架できるよう構成したことを特徴とするものである。
【００１２】
さらに、請求項３に係る移動栽培システムの抜取装置は、請求項１又は請求項２記載の移動栽培システムの抜取装置において、抜取装置は、吊下げレールに懸架される懸架部と、栽培ベンチを吊上げる吊上げ部とで構成され、それぞれは伸縮自在の昇降装置で接続されたことを特徴とするものである。
【００１３】
請求項４に係る移動栽培システムの抜取装置は、請求項３記載の移動栽培システムの抜取装置において、昇降装置の駆動源は、抜取装置に内装する蓄電池を電源部とすることを特徴とするものである。
【００１４】
請求項５に係る移動栽培システムの抜取装置は、請求項４記載の移動栽培システムの抜取装置おいて、栽培空間の端面には、抜取装置に内装する蓄電池の充電部を備えたことを特徴とするものである。
【００１５】
請求項６に係る移動栽培システムの抜取装置は、請求項５記載の移動栽培システムの抜取装置において、抜取装置が吊下げレールに懸架され、栽培空間の端面にその位置変更をしたことを条件に、蓄電池の電源部と、栽培空間の充電部が接続されるよう構成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【００１６】
本発明によれば、栽培空間で広域に生育の状態に応じて徐々にその位置を移動するように複数の広敷レール（列）に配置されたそれぞれの栽培ベンチを、品種や種類などの生育の状態の違いや、先に取出す必要があるものを、列の後方や取出しラインに優先的に移動することを可能として、栽培体系や栽培計画の変更が生じても、収穫や出荷の順序を容易に変更することの出来る作業体系を確立し、農業経営を優位に展開できるシステムの構築を可能としている。
【００１７】
そして本発明の抜取装置は、その栽培空間の上方で植物の成育が略終了する植物を搭載する栽培ベンチを上方に吊上げても抜取装置自体に接触せず、さらに作業者の作業や通行に支障来たさない位置に抜取装置とそれを吊下げるレールを備えているので、作業空間を効率的に又は有効的に利用できる抜取装置を提供する。
【００１８】
なお、この抜取装置は植物の有無に係らず栽培ベンチ上に搭載が可能なので、複数の広敷レールの列に移動が可能であると共に、投入ラインや取出しライン、作業ラインのいずれのラインをも移動可能であるため、抜取装置のメンティナンス等を作業者の希望や、空間の空いている場所で行なえるという汎用性をも備えているものである。
【００１９】
この抜取装置は吊下げレールに吊り下がるための動力は、自らが備える蓄電池によって行なうよう構成されているので、配線の引き回しを行なうことなく、そしてその充電源を栽培空間の端面に備えて、抜取装置をその端面に移動するだけで電源部と充電部が接触し、容易に充電を行なうことができる効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２０】
図１は本発明が実施される移動栽培システムの施設全体を表す平面図、図２は本発明の実施されている移動栽培システムの部分詳細を表す平面図、図３は図２の栽培システムの一部を表す正面図、図４は本発明の実施の形態の抜取装置を表す正面図、図５は図４の状態の栽培ベンチと抜取装置の関係を表す正面部分拡大図、図６は本発明の実施の形態の抜取装置の側面図、図７は抜取装置の実施状態を表す側面図、図８は抜取装置が吊下げレールに懸架された状態を示す側面図、図９は抜取装置の作動状態を表す正面図、図１０は抜取装置の作動状態を表す正面図、図１１は抜取装置によって栽培ベンチの移動を開始している状態を示す正面図、図１２は図１１の抜取装置と栽培ベンチの接触部を表す部分拡大正面図、図１３は抜取装置の待機状態を示す正面図である。
【００２１】
図１に示す栽培システム１は、植物を一定期間育成する領域となる広域な栽培空間２と、栽培空間２に隣接し、播種及び収穫、洗浄作業を行なう作業空間３から形成されている。
【００２２】
平面視長方形で育成植物を積載した栽培ベンチ４は、栽培空間２に平面視縦横方向に列を成し、管理通路以外略隙間無く配置されている。栽培空間２の一端側には投入口５を、そして他端側には取出し口６が配置されていて、投入口５から栽培空間２の突端まで栽培ベンチ４を送り込むレールの投入レール７が、そして栽培空間２内の他端側の突端から取出し口６まで栽培ベンチ４を取り出すための取出しレール８が備えられている。
【００２３】
投入レール７と取出しレール８の間を繋ぎ、栽培空間２内に複数列まんべんなく栽培ベンチ４を栽培空間２に広げるため、栽培ベンチ４一列につき二本の広敷レール９が、投入レール７と取出しレール８の間に配置されている。この複数列の広敷レール９によって栽培ベンチ４は、栽培空間２に満遍なく広げられて、投入レール７から投入され、そして取出しレール８から取り出されることによって、広敷レール９上を植物の生育が進むに連れて投入口側方向から取出し口側方向に栽培ベンチは徐々にその生育場所を移動するようになっている。
【００２４】
投入レール７と取出しレール８の高さは略同じで、広敷レール９がそれらのレールより高く配置され、投入レール７から広敷レール９又は、広敷レール９から取出しレール８に栽培ベンチを上昇又は下降させるための昇降装置１０が広敷レール９と投入レール７及び取出しレール８が接する位置に設けられていて、栽培ベンチ４が良好にそれぞれのレールへの移行を可能としている。
【００２５】
作業空間３には、取出し口６の取出しレール８から投入口５の投入レール７までの間を繋ぐ、作業ラインとなる作業レール１１が配置されていて、この作業レール１１上で栽培ベンチ４上で生育した植物の収穫や、ベンチの洗浄・播種が行なわれるようになっている。なお取出しレール８から作業レール１１、作業レール１１から投入レール７にレールを乗り換える場合の昇降装置１０が備えられている。
【００２６】
なお、図示してはいないが、栽培ベンチ４の裏面には広敷レール９・作業レール１１を走行するための車輪を備えていて、その車輪は筒状の車輪が一方に、そして２個の同形・同大のベアリングでレールを上方から挟み込むように構成された車輪が他方のレールに対応する位置にそれぞれ一対配置されている（図２参照）。
【００２７】
さらに作業空間３には、取出し口６に近いほうから、図１では向かって右方向から収穫スペース１２・洗浄部１３・播種スペース１４の順に配置されている。
【００２８】
栽培空間２の上方には、栽培空間内全体を行渡る範囲で、広敷レール９と平行に吊下げレール１５が備えられている。この吊下げレール１５は広敷レール９と同様に断面視円状のパイプで、栽培ベンチ４を移動させるために必要な一列の広敷レール９一対と同じく、吊下げレール１５も一対で、広敷レール９と同位置の上方に配置されている。この吊下げレール１５は図７の詳細図に示すように、断面視円状のパイプの下端面を支持材２０によって接続支持され、そのパイプの上面は懸架される車輪の通過が出来るようになっている。
【実施例１】
【００２９】
抜取装置１６は、懸架部１７と吊上げ部１８から構成され、これらは昇降部１９によって接続されている。
【００３０】
懸架部１７は、平面視長方形又はひし形の懸架フレーム２１と、上面に備えた４本の吊部材２２と、懸架フレーム２１の長辺方向両端の垂直棒２３と、懸架フレーム２１の間に蓄電池３４とその収納場所を備えている。吊部材２２の上端はそれぞれに２個の同形・同大のベアリングが、レールとなる丸パイプを上方から挟み込むように構成された走行部２４を備えて、吊下げレール１５に吊り下がり走行できるようになっている。また垂直棒２３は作業者の作業や通行に邪魔にならず、手を伸ばした状態でその下端をつかみやすい位置に配置されている。
【００３１】
吊上げ部１８は平面視長方形の吊下げフレーム２５の長辺に３箇所ずつ、計６箇所に支点Ａ２６を備えている。また吊下げフレーム２５の中央部上面には長辺方向に支点Ｂ２７が配置され、その支点Ｂ２７を貫通する貫通軸２８の両端は角度を９０°に屈曲させた作動棒２９が水平から上方の垂直の位置まで回転自在になっている。
【００３２】
作動棒２９による貫通軸２８の回転は、支点Ｂ２７からは吊下げフレーム２５上面のアームＡ３０と接続し、アームＡ３０の他端はアームＢ３１と接続されている。このアームＢ３１は吊下げフレーム２５の側面に垂直方向に配置され、その途中に支点Ａ２６が固定されているので、作動棒２９の回転によってアームＢ３１の下端が開閉するようになっている。
【００３３】
それぞれのアームＢ３１は図５に示すように、内側に引掛け材３２と、下端に外面が下方向に折れ曲がったベース板３３が取り付けられている。
【００３４】
以上のように構成された、懸架部１７と吊下げ部１８のそれぞれは、昇降部１９によって結びつけられていて、懸架フレーム２１の下面には、昇降部１９の駆動モータ３５と駆動ギア３６が取り付けられている。駆動モータ３５は懸架レール２１の略中央に位置し、駆動ギア３６は懸架レール２１の短辺方向の中央で、長辺の中央から均等位置に備えられていて、この駆動ギア３６の稼動によってその内部を上下移動する昇降軸３７が吊下げ部１８に固定されている。さらにこの昇降軸３７には、それに隣接して複数の案内軸３８が備えられ、昇降部１９による上下動におけるガタツキや傾きを解消し、スムーズな昇降を可能にしている。
【００３５】
図４・図５に示すように、吊下げ部１８の作業棒２９を水平方向に倒すことによって、アームＢ３１の下端は内側方向に位置して、栽培ベンチ４の幅と略同等に左右一対のベース板３３が配置され、ベース板３３の外面が下方向に折れ曲がっているので、栽培ベンチ４のフレーム枠から脱落することなく抜取装置１６自体が搭載されるようになっている。
【００３６】
上記のように栽培ベンチ４上に抜取装置１６が搭載され、栽培ベンチ４と共に移動が可能であるので、投入レール７・取出しレール８・広敷レール９・作業レール１１を栽培ベンチ４と共に移動が可能となる。
【００３７】
栽培ベンチ４上に搭載された抜取装置１６は、投入レール７と取出しレール８の間、そして広敷レール９の上方に設置された吊下げレール１５に吊り下がり移動しながら栽培ベンチの抜取を可能とする。
【００３８】
図７に示すように、投入レール７若しくは取出しレール８を移動する栽培ベンチ４上に搭載された抜取装置１６は、抜き取ろうとする若しくは移動させようとする栽培ベンチ４０の列の広敷レール９を目標に投入レール７若しくは取出しレール８を移動させる。そして抜取装置１６の昇降部１９を吊上げ部１８と懸架部１７が遠ざかる方向に、そして吊り下がろうとする吊下げレール１５より走行部２４が若干高くなる位置まで稼動させる。その後投入レール７若しくは取出しレール８を栽培ベンチ４が、吊下げレール１５上に走行部２４が配置されるまで移動させる。吊下げレール１５と走行部２４の垂直方向の位置が揃った事を確認後、抜取装置１６の懸架部１７と吊下げ部１８の距離が縮まる方向に昇降部１９を稼動させることによって、走行部２４が吊下げレール１５上にはまり込み、さらに吊上げ部１８が栽培ベンチ４から切り離され空中に吊上げられる（図８）。
【００３９】
この吊上げ部１８の上昇位置は、アームＢ３１とベース板３３が、栽培ベンチ４０上空に至るまでの間の栽培ベンチ上の植物に接触することのない距離まで上昇するように、昇降部１９を稼動させることが必要である。
【００４０】
昇降部１９の停止後、作業者は作業棒２９を水平状態から上方の垂直状態に回転させることによって、左右のアームＡ３０を中央方向に引き寄せ、それに接続しているアームＢ３１も引き寄せる方向に働き、支点Ａ２６の作用によってアームＢ３１の下端が外側に開き、栽培ベンチ４よりも広がって配置されるようになる（図９）。
【００４１】
走行部２４は二つのベアリングが左右上方斜めから吊下げレール１５を挟み込んでいるので、吊り下がった抜取装置１６の移動を簡単に行なうことが出来、作業者は前後のどちらかの垂直棒２３を握って抜取装置１６を図９のように押しながら、目標の栽培ベンチ４０の位置まで移動していく。そして抜き取ろうとする又は移動しようとする栽培ベンチ４０の上方で、作業棒２９の垂直位置を保ちアームＢ３１の下端が左右に開いた状態で、昇降部１９を稼動させてゆっくり吊下げ部１８を下降させていく。
【００４２】
そして、アームＢ３１の下端が、支点Ａ２６を中心に回転した場合に、栽培ベンチ４０の側面を挟み込むと思われる場所まで吊上げ部１８を下ろした後、昇降部１９を停止させる。その後、作業棒２９を垂直方向から水平方向に回転させることによって、アームＢ３１の下端を栽培ベンチ４０の側面に接触させる。栽培ベンチ４０（４）の側面は図１２に示すように、側面の上方は内側に窪み、その上面端は下方向に向けた引っ掛かり形状をしているので、作業棒２９を水平方向に倒した位置を保持しながら、昇降部１９を再度稼動させて吊上げ部１８を上方向に上げることによって、アームＢ３１の内側に備えたそれぞれの引掛け材３２が栽培ベンチ４０のフレームに引っ掛かって栽培ベンチ４０を持ち上げることが出来る。
【００４３】
作業者は抜取装置１６によって生育中の他の栽培ベンチと接触しない範囲まで空中に持ち上げられた栽培ベンチ４０は、希望する広敷レール９上や先出しするために取出しレール８上や、異なる広敷レールの列に移動するため、投入レール７上に配置するため、垂直棒２３を手で握って押しながら希望する場所へ抜取装置１６の位置を変更し、昇降部１９を稼動させて吊上げ部１８を降下させて栽培ベンチ４０をそれぞれのレール上に配置しアームＢ３１を栽培ベンチのフレームの引っ掛かり状態を解除し、昇降部１９を稼動させ吊下げ部１８を上昇させて、待機場所へと移動させる。
【００４４】
図１３に係る移動栽培システムの抜取装置１６は、待機状態での待機位置を示す図である。抜取装置１６の昇降部１９の動力源となる蓄電池３４には充電部４５を備えていて、施設内の側面にはその充電部４５と接触する位置に電源部４６を備えている。
【００４５】
抜取装置１６を使用しない場合には、作業者の通行や作業の邪魔にならない高さまで吊上げ部１８を引き上げた状態で、施設内の端まで配置されている吊下げレール１５の端まで抜取装置１６を作業者が移動させる。そして吊下げレール１５の端の待機場所に配置されたときに、蓄電池３４に繋がる充電部４５が、施設側面に配置されている電源部４６と接触し、蓄電池に充電を行なうことができるので、抜取装置１６を使用する場合に、昇降部１９の動力源の残りの電力量を気にすることなく抜取作業を行なうことを可能としている。
【００４６】
この抜取装置１６自体は栽培ベンチ４上に搭載されているので、栽培ベンチ４が移動可能なレール全て移動可能とすることから、抜取装置１６の保守点検を行なう場合に、点検作業を行なう作業者が行ないたい場所や、作業の邪魔にならない場所に移動して行なうことが出来る。
【００４７】
そして、複数列の広敷レール９の列を、投入レール７や取出しレール８を栽培ベンチ４と共に移動することによって、容易な列移動を可能としながら抜き取り作業を行なうことが出来るので、複数の抜取装置を配置することなく、必要最小限の抜取装置の台数で、抜取作業や移動作業を行なうことを可能とし、施設全体のコストの低減を可能としている。
【００４８】
特に、葉物の移動栽培方式において、１回目の葉だけを収穫の作業後、栽培ベンチをそのままの状態で投入ラインから栽培空間に投入して、生育させ二番の葉を収穫する栽培方法も行なわれているが、種から生育させるベンチと、一度収穫が終了した栽培ベンチから生育する葉の成長は、一度収穫が済んだベンチからの生育が早いのは当然であるので、新たに播種したベンチと混在に栽培空間に配置されても、抜取装置によって、生育の早いものを早く取出せる位置に変更するなど、栽培形態を容易に変更させることが出来、農業経営形態に良好に作用するものである。
【図面の簡単な説明】
【００４９】
【図１】図１は本発明が実施される移動栽培システムの施設全体を表す平面図である。
【図２】本発明の実施されている移動栽培システムの部分詳細を表す平面図である。
【図３】図２の栽培システムの一部を表す正面図である。
【図４】本発明の実施の形態の抜取装置を表す正面図である。
【図５】図４の状態の栽培ベンチと抜取装置の関係を表す正面部分拡大図である。
【図６】本発明の実施の形態の抜取装置の側面図である。
【図７】抜取装置の実施状態を表す側面図である。
【図８】抜取装置が吊下げレールに懸架された状態を示す側面図である。
【図９】抜取装置の作動状態を表す正面図である。
【図１０】抜取装置の作動状態を表す正面図である。
【図１１】抜取装置によって栽培ベンチの移動を開始している状態を示す正面図である。
【図１２】図１１の抜取装置と栽培ベンチの接触部を表す部分拡大正面図である。
【図１３】抜取装置の待機状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【００５０】
１ 栽培システム
２ 栽培空間
３ 作業空間
４ 栽培ベンチ
５ 投入口
６ 取出し口
７ 投入レール
８ 取出しレール
９ 広敷レール
１０ 昇降装置
１１ 作業レール
１２ 収穫スペース
１３ 洗浄部
１４ 播種スペース
１５ 吊下げレール
１６ 抜取装置
１７ 懸架部
１８ 吊上げ部
１９ 昇降部
２０ 支持材
２１ 懸架フレーム
２２ 吊部材
２３ 垂直棒
２４ 走行部
２５ 吊下げフレーム
２６ 支点Ａ
２７ 支点Ｂ
２８ 貫通軸
２９ 作動棒
３０ アームＡ
３１ アームＢ
３２ 引掛け材
３３ ベース板
３４ 蓄電池
３５ 駆動モータ
３６ 駆動ギア
３７ 昇降軸
３８ 案内軸
３９ 給排水ライン
４０ 栽培ベンチ
４５ 充電部
４６ 電源部
【技術分野】
【０００１】
農園芸施設の育成植物を積載する栽培ベンチを移動式とした移動循環栽培システムにおいて、育成植物の生育状態に応じた配列順番の変更や、収穫計画の変更による収穫順序の変更を実施するための、栽培ベンチの移動装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来の農園芸施設において、食用に生産される葉物野菜や、ある程度生育の後の販売を行なう観賞用植物の生育方法において、特開平８−１１６７９２号公報（特許文献１）のように、温室やビニールハウス内に所定間隔をもって隣接して備えられた複数の台脚の上端に、パイプ状のレールの連結を複数列備えて、棚即ち栽培ベンチに備えられたガイド車輪によって、栽培ベンチが移動自在としながら植物を育成させる園芸用ベンチが記載されている。
【０００３】
また、複数の栽培ベンチを縦横に複数列配置して、投入口から搬出口に徐々にその位置を移動しながら、栽培ベンチ上の植物が生育させる栽培空間（栽培室）と、栽培空間から搬出された栽培ベンチから、生育の終了した植物を収穫し、栽培ベンチを洗浄し、また栽培ベンチ上に播種を行い、再度栽培空間に栽培ベンチを投入するまでの作業を行なう作業空間を備え、栽培空間と作業空間に移動させるためのレールを備えて、栽培ベンチが循環しながら植物の生育を行なう栽培装置は、特開平９−２７５８１５号公報（特許文献２）や特開２００７−２５２３１５公報（特許文献３）に記載されている。
【０００４】
そして、前記特許文献２・３のような栽培装置において、品種等の違いによる生育状況の差や、先に取出したい栽培計画の変更等によって、指定する栽培ベンチの場所を変更するために、栽培ベンチを跨いだ形態の台車をとそのレールを備えて、先出ししようとする栽培ベンチを水平姿勢を保持しながら吊上げて運搬する先出し装置を併設した栽培装置が、特開２００２−０９５３５５公報（特許文献４）に記載されている。
【０００５】
【特許文献１】特開平８−１１６７９２号公報
【特許文献２】特開平９−２７５８１５号公報
【特許文献３】特開２００７−２５２３１５公報
【特許文献４】特開２００２−０９５３５５公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
特許文献４における先出し装置は、先出ししようとする栽培ベンチ（栽培槽）を一方向の列に対して移動する装置であって、栽培列が複数ある場合、それぞれの列に対応した先出し装置を備える必要がり、栽培施設にかかるコストの上昇が問題となる。
【０００７】
また先出し装置は、一方向に移動するためのレールが栽培ベンチ（栽培槽）を跨いで備えているので、栽培を管理するための作業者が通行しようとする通路を狭く構成するか、通路を確保するために、栽培ベンチ同士の列を空けて配置する必要があり、作業者の通行場所の減少から発生する効率の低下や、栽培施設における生育領域率の減少が発生し、栽培施設のコスト高や栽培効率の悪化を引き起こす課題が発生している。
【０００８】
そこで本発明では、先出し装置即ち抜取装置を備える園芸施設であっても、抜取装置専用のレールが作業者の通行を妨げない場所に配置して、作業者の通行や作業の邪魔にならないように構成し、抜取装置が一方向だけの移動に留まらず他方向にも移動を可能として、抜取装置の設置台数を軽減することによって、園芸施設全体のコストの低減を可能とする移動栽培システムを提供しようとするものである。
【０００９】
また、抜取装置の設置台数を必要最小限とすることで、植物が生育する空間に抜取装置による日陰の形成を抑制し、良好な光合成を行なわせること、そしてこの抜取装置を栽培ベンチ上に搭載させることを可能としているので、栽培空間から作業空間まで移動レールが配置している場所であれば何処へでも移動可能としているので、抜取装置の修理点検を容易に行なうことの出来る栽培システムの移動装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
前記目的を達成するために、本発明の請求項１に係わる移動栽培システムの抜取装置は、育成植物を積載した栽培ベンチを、投入ラインから取出しラインに向かって敷設した広敷レール上に広域に展開した栽培空間と、栽培空間と隣接して、取出しラインの出口から投入ラインの入口までを繋げる作業空間とを、栽培ベンチが移動しながら播種・育成・収穫のそれぞれの作業を循環する移動栽培システムにおいて、公敷レール上には、吊下げレールを備えて、このレールには栽培ベンチの並びの順番を変更させる抜取装置が懸架されるように構成したことを特徴とするものである。
【００１１】
また、上記目的を達成するための本発明の請求項２に係わる移動栽培システムの抜取装置は、請求項１記載の移動栽培システムの抜取装置において、抜取装置は、栽培ベンチ上に搭載可能であって、栽培空間と作業空間を栽培ベンチと共に移動可能として、栽培空間では、吊下げレールに懸架できるよう構成したことを特徴とするものである。
【００１２】
さらに、請求項３に係る移動栽培システムの抜取装置は、請求項１又は請求項２記載の移動栽培システムの抜取装置において、抜取装置は、吊下げレールに懸架される懸架部と、栽培ベンチを吊上げる吊上げ部とで構成され、それぞれは伸縮自在の昇降装置で接続されたことを特徴とするものである。
【００１３】
請求項４に係る移動栽培システムの抜取装置は、請求項３記載の移動栽培システムの抜取装置において、昇降装置の駆動源は、抜取装置に内装する蓄電池を電源部とすることを特徴とするものである。
【００１４】
請求項５に係る移動栽培システムの抜取装置は、請求項４記載の移動栽培システムの抜取装置おいて、栽培空間の端面には、抜取装置に内装する蓄電池の充電部を備えたことを特徴とするものである。
【００１５】
請求項６に係る移動栽培システムの抜取装置は、請求項５記載の移動栽培システムの抜取装置において、抜取装置が吊下げレールに懸架され、栽培空間の端面にその位置変更をしたことを条件に、蓄電池の電源部と、栽培空間の充電部が接続されるよう構成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【００１６】
本発明によれば、栽培空間で広域に生育の状態に応じて徐々にその位置を移動するように複数の広敷レール（列）に配置されたそれぞれの栽培ベンチを、品種や種類などの生育の状態の違いや、先に取出す必要があるものを、列の後方や取出しラインに優先的に移動することを可能として、栽培体系や栽培計画の変更が生じても、収穫や出荷の順序を容易に変更することの出来る作業体系を確立し、農業経営を優位に展開できるシステムの構築を可能としている。
【００１７】
そして本発明の抜取装置は、その栽培空間の上方で植物の成育が略終了する植物を搭載する栽培ベンチを上方に吊上げても抜取装置自体に接触せず、さらに作業者の作業や通行に支障来たさない位置に抜取装置とそれを吊下げるレールを備えているので、作業空間を効率的に又は有効的に利用できる抜取装置を提供する。
【００１８】
なお、この抜取装置は植物の有無に係らず栽培ベンチ上に搭載が可能なので、複数の広敷レールの列に移動が可能であると共に、投入ラインや取出しライン、作業ラインのいずれのラインをも移動可能であるため、抜取装置のメンティナンス等を作業者の希望や、空間の空いている場所で行なえるという汎用性をも備えているものである。
【００１９】
この抜取装置は吊下げレールに吊り下がるための動力は、自らが備える蓄電池によって行なうよう構成されているので、配線の引き回しを行なうことなく、そしてその充電源を栽培空間の端面に備えて、抜取装置をその端面に移動するだけで電源部と充電部が接触し、容易に充電を行なうことができる効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２０】
図１は本発明が実施される移動栽培システムの施設全体を表す平面図、図２は本発明の実施されている移動栽培システムの部分詳細を表す平面図、図３は図２の栽培システムの一部を表す正面図、図４は本発明の実施の形態の抜取装置を表す正面図、図５は図４の状態の栽培ベンチと抜取装置の関係を表す正面部分拡大図、図６は本発明の実施の形態の抜取装置の側面図、図７は抜取装置の実施状態を表す側面図、図８は抜取装置が吊下げレールに懸架された状態を示す側面図、図９は抜取装置の作動状態を表す正面図、図１０は抜取装置の作動状態を表す正面図、図１１は抜取装置によって栽培ベンチの移動を開始している状態を示す正面図、図１２は図１１の抜取装置と栽培ベンチの接触部を表す部分拡大正面図、図１３は抜取装置の待機状態を示す正面図である。
【００２１】
図１に示す栽培システム１は、植物を一定期間育成する領域となる広域な栽培空間２と、栽培空間２に隣接し、播種及び収穫、洗浄作業を行なう作業空間３から形成されている。
【００２２】
平面視長方形で育成植物を積載した栽培ベンチ４は、栽培空間２に平面視縦横方向に列を成し、管理通路以外略隙間無く配置されている。栽培空間２の一端側には投入口５を、そして他端側には取出し口６が配置されていて、投入口５から栽培空間２の突端まで栽培ベンチ４を送り込むレールの投入レール７が、そして栽培空間２内の他端側の突端から取出し口６まで栽培ベンチ４を取り出すための取出しレール８が備えられている。
【００２３】
投入レール７と取出しレール８の間を繋ぎ、栽培空間２内に複数列まんべんなく栽培ベンチ４を栽培空間２に広げるため、栽培ベンチ４一列につき二本の広敷レール９が、投入レール７と取出しレール８の間に配置されている。この複数列の広敷レール９によって栽培ベンチ４は、栽培空間２に満遍なく広げられて、投入レール７から投入され、そして取出しレール８から取り出されることによって、広敷レール９上を植物の生育が進むに連れて投入口側方向から取出し口側方向に栽培ベンチは徐々にその生育場所を移動するようになっている。
【００２４】
投入レール７と取出しレール８の高さは略同じで、広敷レール９がそれらのレールより高く配置され、投入レール７から広敷レール９又は、広敷レール９から取出しレール８に栽培ベンチを上昇又は下降させるための昇降装置１０が広敷レール９と投入レール７及び取出しレール８が接する位置に設けられていて、栽培ベンチ４が良好にそれぞれのレールへの移行を可能としている。
【００２５】
作業空間３には、取出し口６の取出しレール８から投入口５の投入レール７までの間を繋ぐ、作業ラインとなる作業レール１１が配置されていて、この作業レール１１上で栽培ベンチ４上で生育した植物の収穫や、ベンチの洗浄・播種が行なわれるようになっている。なお取出しレール８から作業レール１１、作業レール１１から投入レール７にレールを乗り換える場合の昇降装置１０が備えられている。
【００２６】
なお、図示してはいないが、栽培ベンチ４の裏面には広敷レール９・作業レール１１を走行するための車輪を備えていて、その車輪は筒状の車輪が一方に、そして２個の同形・同大のベアリングでレールを上方から挟み込むように構成された車輪が他方のレールに対応する位置にそれぞれ一対配置されている（図２参照）。
【００２７】
さらに作業空間３には、取出し口６に近いほうから、図１では向かって右方向から収穫スペース１２・洗浄部１３・播種スペース１４の順に配置されている。
【００２８】
栽培空間２の上方には、栽培空間内全体を行渡る範囲で、広敷レール９と平行に吊下げレール１５が備えられている。この吊下げレール１５は広敷レール９と同様に断面視円状のパイプで、栽培ベンチ４を移動させるために必要な一列の広敷レール９一対と同じく、吊下げレール１５も一対で、広敷レール９と同位置の上方に配置されている。この吊下げレール１５は図７の詳細図に示すように、断面視円状のパイプの下端面を支持材２０によって接続支持され、そのパイプの上面は懸架される車輪の通過が出来るようになっている。
【実施例１】
【００２９】
抜取装置１６は、懸架部１７と吊上げ部１８から構成され、これらは昇降部１９によって接続されている。
【００３０】
懸架部１７は、平面視長方形又はひし形の懸架フレーム２１と、上面に備えた４本の吊部材２２と、懸架フレーム２１の長辺方向両端の垂直棒２３と、懸架フレーム２１の間に蓄電池３４とその収納場所を備えている。吊部材２２の上端はそれぞれに２個の同形・同大のベアリングが、レールとなる丸パイプを上方から挟み込むように構成された走行部２４を備えて、吊下げレール１５に吊り下がり走行できるようになっている。また垂直棒２３は作業者の作業や通行に邪魔にならず、手を伸ばした状態でその下端をつかみやすい位置に配置されている。
【００３１】
吊上げ部１８は平面視長方形の吊下げフレーム２５の長辺に３箇所ずつ、計６箇所に支点Ａ２６を備えている。また吊下げフレーム２５の中央部上面には長辺方向に支点Ｂ２７が配置され、その支点Ｂ２７を貫通する貫通軸２８の両端は角度を９０°に屈曲させた作動棒２９が水平から上方の垂直の位置まで回転自在になっている。
【００３２】
作動棒２９による貫通軸２８の回転は、支点Ｂ２７からは吊下げフレーム２５上面のアームＡ３０と接続し、アームＡ３０の他端はアームＢ３１と接続されている。このアームＢ３１は吊下げフレーム２５の側面に垂直方向に配置され、その途中に支点Ａ２６が固定されているので、作動棒２９の回転によってアームＢ３１の下端が開閉するようになっている。
【００３３】
それぞれのアームＢ３１は図５に示すように、内側に引掛け材３２と、下端に外面が下方向に折れ曲がったベース板３３が取り付けられている。
【００３４】
以上のように構成された、懸架部１７と吊下げ部１８のそれぞれは、昇降部１９によって結びつけられていて、懸架フレーム２１の下面には、昇降部１９の駆動モータ３５と駆動ギア３６が取り付けられている。駆動モータ３５は懸架レール２１の略中央に位置し、駆動ギア３６は懸架レール２１の短辺方向の中央で、長辺の中央から均等位置に備えられていて、この駆動ギア３６の稼動によってその内部を上下移動する昇降軸３７が吊下げ部１８に固定されている。さらにこの昇降軸３７には、それに隣接して複数の案内軸３８が備えられ、昇降部１９による上下動におけるガタツキや傾きを解消し、スムーズな昇降を可能にしている。
【００３５】
図４・図５に示すように、吊下げ部１８の作業棒２９を水平方向に倒すことによって、アームＢ３１の下端は内側方向に位置して、栽培ベンチ４の幅と略同等に左右一対のベース板３３が配置され、ベース板３３の外面が下方向に折れ曲がっているので、栽培ベンチ４のフレーム枠から脱落することなく抜取装置１６自体が搭載されるようになっている。
【００３６】
上記のように栽培ベンチ４上に抜取装置１６が搭載され、栽培ベンチ４と共に移動が可能であるので、投入レール７・取出しレール８・広敷レール９・作業レール１１を栽培ベンチ４と共に移動が可能となる。
【００３７】
栽培ベンチ４上に搭載された抜取装置１６は、投入レール７と取出しレール８の間、そして広敷レール９の上方に設置された吊下げレール１５に吊り下がり移動しながら栽培ベンチの抜取を可能とする。
【００３８】
図７に示すように、投入レール７若しくは取出しレール８を移動する栽培ベンチ４上に搭載された抜取装置１６は、抜き取ろうとする若しくは移動させようとする栽培ベンチ４０の列の広敷レール９を目標に投入レール７若しくは取出しレール８を移動させる。そして抜取装置１６の昇降部１９を吊上げ部１８と懸架部１７が遠ざかる方向に、そして吊り下がろうとする吊下げレール１５より走行部２４が若干高くなる位置まで稼動させる。その後投入レール７若しくは取出しレール８を栽培ベンチ４が、吊下げレール１５上に走行部２４が配置されるまで移動させる。吊下げレール１５と走行部２４の垂直方向の位置が揃った事を確認後、抜取装置１６の懸架部１７と吊下げ部１８の距離が縮まる方向に昇降部１９を稼動させることによって、走行部２４が吊下げレール１５上にはまり込み、さらに吊上げ部１８が栽培ベンチ４から切り離され空中に吊上げられる（図８）。
【００３９】
この吊上げ部１８の上昇位置は、アームＢ３１とベース板３３が、栽培ベンチ４０上空に至るまでの間の栽培ベンチ上の植物に接触することのない距離まで上昇するように、昇降部１９を稼動させることが必要である。
【００４０】
昇降部１９の停止後、作業者は作業棒２９を水平状態から上方の垂直状態に回転させることによって、左右のアームＡ３０を中央方向に引き寄せ、それに接続しているアームＢ３１も引き寄せる方向に働き、支点Ａ２６の作用によってアームＢ３１の下端が外側に開き、栽培ベンチ４よりも広がって配置されるようになる（図９）。
【００４１】
走行部２４は二つのベアリングが左右上方斜めから吊下げレール１５を挟み込んでいるので、吊り下がった抜取装置１６の移動を簡単に行なうことが出来、作業者は前後のどちらかの垂直棒２３を握って抜取装置１６を図９のように押しながら、目標の栽培ベンチ４０の位置まで移動していく。そして抜き取ろうとする又は移動しようとする栽培ベンチ４０の上方で、作業棒２９の垂直位置を保ちアームＢ３１の下端が左右に開いた状態で、昇降部１９を稼動させてゆっくり吊下げ部１８を下降させていく。
【００４２】
そして、アームＢ３１の下端が、支点Ａ２６を中心に回転した場合に、栽培ベンチ４０の側面を挟み込むと思われる場所まで吊上げ部１８を下ろした後、昇降部１９を停止させる。その後、作業棒２９を垂直方向から水平方向に回転させることによって、アームＢ３１の下端を栽培ベンチ４０の側面に接触させる。栽培ベンチ４０（４）の側面は図１２に示すように、側面の上方は内側に窪み、その上面端は下方向に向けた引っ掛かり形状をしているので、作業棒２９を水平方向に倒した位置を保持しながら、昇降部１９を再度稼動させて吊上げ部１８を上方向に上げることによって、アームＢ３１の内側に備えたそれぞれの引掛け材３２が栽培ベンチ４０のフレームに引っ掛かって栽培ベンチ４０を持ち上げることが出来る。
【００４３】
作業者は抜取装置１６によって生育中の他の栽培ベンチと接触しない範囲まで空中に持ち上げられた栽培ベンチ４０は、希望する広敷レール９上や先出しするために取出しレール８上や、異なる広敷レールの列に移動するため、投入レール７上に配置するため、垂直棒２３を手で握って押しながら希望する場所へ抜取装置１６の位置を変更し、昇降部１９を稼動させて吊上げ部１８を降下させて栽培ベンチ４０をそれぞれのレール上に配置しアームＢ３１を栽培ベンチのフレームの引っ掛かり状態を解除し、昇降部１９を稼動させ吊下げ部１８を上昇させて、待機場所へと移動させる。
【００４４】
図１３に係る移動栽培システムの抜取装置１６は、待機状態での待機位置を示す図である。抜取装置１６の昇降部１９の動力源となる蓄電池３４には充電部４５を備えていて、施設内の側面にはその充電部４５と接触する位置に電源部４６を備えている。
【００４５】
抜取装置１６を使用しない場合には、作業者の通行や作業の邪魔にならない高さまで吊上げ部１８を引き上げた状態で、施設内の端まで配置されている吊下げレール１５の端まで抜取装置１６を作業者が移動させる。そして吊下げレール１５の端の待機場所に配置されたときに、蓄電池３４に繋がる充電部４５が、施設側面に配置されている電源部４６と接触し、蓄電池に充電を行なうことができるので、抜取装置１６を使用する場合に、昇降部１９の動力源の残りの電力量を気にすることなく抜取作業を行なうことを可能としている。
【００４６】
この抜取装置１６自体は栽培ベンチ４上に搭載されているので、栽培ベンチ４が移動可能なレール全て移動可能とすることから、抜取装置１６の保守点検を行なう場合に、点検作業を行なう作業者が行ないたい場所や、作業の邪魔にならない場所に移動して行なうことが出来る。
【００４７】
そして、複数列の広敷レール９の列を、投入レール７や取出しレール８を栽培ベンチ４と共に移動することによって、容易な列移動を可能としながら抜き取り作業を行なうことが出来るので、複数の抜取装置を配置することなく、必要最小限の抜取装置の台数で、抜取作業や移動作業を行なうことを可能とし、施設全体のコストの低減を可能としている。
【００４８】
特に、葉物の移動栽培方式において、１回目の葉だけを収穫の作業後、栽培ベンチをそのままの状態で投入ラインから栽培空間に投入して、生育させ二番の葉を収穫する栽培方法も行なわれているが、種から生育させるベンチと、一度収穫が終了した栽培ベンチから生育する葉の成長は、一度収穫が済んだベンチからの生育が早いのは当然であるので、新たに播種したベンチと混在に栽培空間に配置されても、抜取装置によって、生育の早いものを早く取出せる位置に変更するなど、栽培形態を容易に変更させることが出来、農業経営形態に良好に作用するものである。
【図面の簡単な説明】
【００４９】
【図１】図１は本発明が実施される移動栽培システムの施設全体を表す平面図である。
【図２】本発明の実施されている移動栽培システムの部分詳細を表す平面図である。
【図３】図２の栽培システムの一部を表す正面図である。
【図４】本発明の実施の形態の抜取装置を表す正面図である。
【図５】図４の状態の栽培ベンチと抜取装置の関係を表す正面部分拡大図である。
【図６】本発明の実施の形態の抜取装置の側面図である。
【図７】抜取装置の実施状態を表す側面図である。
【図８】抜取装置が吊下げレールに懸架された状態を示す側面図である。
【図９】抜取装置の作動状態を表す正面図である。
【図１０】抜取装置の作動状態を表す正面図である。
【図１１】抜取装置によって栽培ベンチの移動を開始している状態を示す正面図である。
【図１２】図１１の抜取装置と栽培ベンチの接触部を表す部分拡大正面図である。
【図１３】抜取装置の待機状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【００５０】
１ 栽培システム
２ 栽培空間
３ 作業空間
４ 栽培ベンチ
５ 投入口
６ 取出し口
７ 投入レール
８ 取出しレール
９ 広敷レール
１０ 昇降装置
１１ 作業レール
１２ 収穫スペース
１３ 洗浄部
１４ 播種スペース
１５ 吊下げレール
１６ 抜取装置
１７ 懸架部
１８ 吊上げ部
１９ 昇降部
２０ 支持材
２１ 懸架フレーム
２２ 吊部材
２３ 垂直棒
２４ 走行部
２５ 吊下げフレーム
２６ 支点Ａ
２７ 支点Ｂ
２８ 貫通軸
２９ 作動棒
３０ アームＡ
３１ アームＢ
３２ 引掛け材
３３ ベース板
３４ 蓄電池
３５ 駆動モータ
３６ 駆動ギア
３７ 昇降軸
３８ 案内軸
３９ 給排水ライン
４０ 栽培ベンチ
４５ 充電部
４６ 電源部
【特許請求の範囲】
【請求項１】
育成植物を積載した栽培ベンチを、投入ラインから取出しラインに向かって敷設した広敷レール上に広域に展開した栽培空間と、
栽培空間と隣接して、取出しラインの出口から投入ラインの入口までを繋げる作業空間とを、
栽培ベンチが移動しながら播種・育成・収穫のそれぞれの作業を循環する移動栽培システムにおいて、
公敷レール上には、吊下げレールを備えて、このレールには栽培ベンチの並びの順番を変更させる抜取装置が懸架されるように構成したことを特徴とする、移動栽培システムの抜取装置。
【請求項２】
抜取装置は、栽培ベンチ上に搭載可能であって、栽培空間と作業空間を栽培ベンチと共に移動可能として、
栽培空間では、吊下げレールに懸架できるよう構成したことを特徴とする、請求項１記載の移動栽培システムの抜取装置。
【請求項３】
抜取装置は、吊下げレールに懸架される懸架部と、栽培ベンチを吊上げる吊上げ部とで構成され、
それぞれは伸縮自在の昇降部で接続されたことを特徴とする、請求項１又は請求項２記載の移動栽培システムの抜取装置。
【請求項４】
昇降部の駆動源は、抜取装置に内装する蓄電池を電源部とすることを特徴とする、請求項３記載の移動栽培システムの抜取装置。
【請求項５】
栽培空間の端面には、抜取装置に内装する蓄電池の充電部を備えたことを特徴とする、請求項４記載の移動栽培システムの抜取装置。
【請求項６】
抜取装置が吊下げレールに懸架され、栽培空間の端面にその位置変更をしたことを条件に、蓄電池の電源部と、栽培空間の充電部が接続されるよう構成されたことを特徴とする、請求項５記載の移動栽培システムの抜取装置。
【請求項１】
育成植物を積載した栽培ベンチを、投入ラインから取出しラインに向かって敷設した広敷レール上に広域に展開した栽培空間と、
栽培空間と隣接して、取出しラインの出口から投入ラインの入口までを繋げる作業空間とを、
栽培ベンチが移動しながら播種・育成・収穫のそれぞれの作業を循環する移動栽培システムにおいて、
公敷レール上には、吊下げレールを備えて、このレールには栽培ベンチの並びの順番を変更させる抜取装置が懸架されるように構成したことを特徴とする、移動栽培システムの抜取装置。
【請求項２】
抜取装置は、栽培ベンチ上に搭載可能であって、栽培空間と作業空間を栽培ベンチと共に移動可能として、
栽培空間では、吊下げレールに懸架できるよう構成したことを特徴とする、請求項１記載の移動栽培システムの抜取装置。
【請求項３】
抜取装置は、吊下げレールに懸架される懸架部と、栽培ベンチを吊上げる吊上げ部とで構成され、
それぞれは伸縮自在の昇降部で接続されたことを特徴とする、請求項１又は請求項２記載の移動栽培システムの抜取装置。
【請求項４】
昇降部の駆動源は、抜取装置に内装する蓄電池を電源部とすることを特徴とする、請求項３記載の移動栽培システムの抜取装置。
【請求項５】
栽培空間の端面には、抜取装置に内装する蓄電池の充電部を備えたことを特徴とする、請求項４記載の移動栽培システムの抜取装置。
【請求項６】
抜取装置が吊下げレールに懸架され、栽培空間の端面にその位置変更をしたことを条件に、蓄電池の電源部と、栽培空間の充電部が接続されるよう構成されたことを特徴とする、請求項５記載の移動栽培システムの抜取装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図１３】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図１３】
【公開番号】特開２０１０−８８３４４（Ｐ２０１０−８８３４４Ａ）
【公開日】平成２２年４月２２日（２０１０．４．２２）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−２６１４２５（Ｐ２００８−２６１４２５）
【出願日】平成２０年１０月８日（２００８．１０．８）
【出願人】（３０８０２０８９２）金子農機株式会社 (21)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年４月２２日（２０１０．４．２２）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年１０月８日（２００８．１０．８）
【出願人】（３０８０２０８９２）金子農機株式会社 (21)
【Ｆターム（参考）】
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