説明

移動用電力ケーブルの取付け装置

【課題】移動用電力ケーブルを接続する設備に予め設けた取付け対象物に対して、着脱、移動可能なブラケットを設けると共に、このブラケットに対して移動用電力ケーブルを任意の条件で取り付けることができるクランプを設けたので、少ないスペースに移動用電力ケーブルを取り付けることができ、相間距離や対地間距離を確保することができる。
【解決手段】遮断器50には各相ごとに遮断器本体7と碍子10があり、夫々の碍子に電力線1が固定されている。また3つの遮断器本体を取り囲むように取付け対象物4がコンクリート台8により大地に固定され、その取付け対象物4により遮断器50を保持している。移動用電力ケーブルの取付け装置100は、取付け対象物4に移動用電力ケーブル9を固定するためのブラケット5と、ブラケット5の所定箇所に移動自在に取付け可能なクランプ6と、を備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動用電力ケーブル取付け装置に関し、さらに詳しくは、発電所、変電所などの送電線設備等を修理・点検する場合に用いる移動用電力ケーブルの取付け装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発電所、変電所に設置される各種設備、機器に係るトラブル対策等のための修理、点検作業に際して、移動用電力ケーブルを使用して一時的に電力のバイパス供給を行なう場合がある。移動用電力ケーブルを使用するに当たっては使用電圧により移動用電力の相間距離や、移動用ケーブルの対地間距離を適正値に確保する必要がある。例えば、66KVの高圧電圧を送電する変電所などでは、送電線と母線との間に、変圧器、断路器、しゃ断器、避雷器、調相設備などの各種設備、機器を設けているが、これらの設備、機器などに対して、更新、改造、修理或は点検等を実施する必要がある場合、送電線の通電を停止してしゃ断器を切にしなければならない。しかし、送電線を長時間停止することは顧客サービスや社会的な影響を考慮すると好ましいことではない。このため、通常、移動用電力ケーブルを利用してバイパス回路を作り仮送電設備によって送電している。
図4は特許文献1に開示されている従来の仮送電設備の構成を示す図である。送電線51と66KVの母線52との間に、回路を作る断路器53及び電気を断接する遮断器54を設け、遮断器54の電力線を活線端子支柱57に接続し、この活線端子支柱57に母線52を接続していた。また、バイパス回路を構成するため、断路器53の近傍の床面に三脚脚立などの仮設備55を設置し、この仮設備55に66KVの移動用電力ケーブル56を取付ける。この電力ケーブル56は、断路器53を介して送電線51に接続される。一方、活線端子支柱57には、木柱などで木台等の仮架台を組み込んで仮設備58を作り、この仮設備58に66KVの移動用電力ケーブル59を取付け、更に、電力ケーブル56と電力ケーブル59との間には、図5に示すように、仮設断路器110及び仮設遮断器111を設けてバイパス回路60を構成し、点検区域Xを点検するようにしていた。
【特許文献1】実用新案登録第3038073号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示されている従来のこのバイパス回路の仮送電設備は、次のような課題を有している。 即ち、移動用電力ケーブル接続に際して、周辺スペース上の問題から専用架台が設置できない場合には、当該現場に適した特製の架台を新たに製作して設置しなければならず余分な経費が掛かり、且つ工事時間が長くなるといった問題がある。
また、移動用電力ケーブルを接続する際、設置スペース上の問題から専用架台が使用できず、その結果、移動用電力ケーブルの相間距離や対地間距離を確保できず、供給信頼度の点で問題が生じることがあった。
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、移動用電力ケーブルを接続して修理、点検を実施する対象となる設備に既存の取付け対象物を利用して、移動用電力ケーブルを任意の位置に、任意の設置条件で取付けることにより、少ない周辺スペースにも関わらず取付けが可能となり、且つ移動用電力ケーブルの相間距離や、移動用ケーブルの対地間距離を適切に確保することができる移動用電力ケーブル取付け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、発変電所の送電線設備を修理点検する際に、母線と送電線間をバイパスするために用いる移動用電力ケーブルの取付け装置において、修理点検対象となる設備の近傍に装備された組み立て台に対して着脱されるブラケットと、該ブラケットの任意箇所に着脱自在に取付けられると共に前記移動用電力ケーブルを保持するクランプと、を備え、前記移動用電力ケーブルを保持した前記クランプを前記ブラケットに取付ける際、前記移動用電力ケーブルの相間距離、及び、移動用電力ケーブルの対地間距離を夫々適正値に設定することを可能としたことを特徴とする。
本発明の移動用電力ケーブルの取付け装置においては、修理、点検対象となる設備、機器に既設の枠体の近傍に組み立て台を設置して、その組み立て台にブラケットを組み付け、このブラケットに対してクランプを着脱、移動自在に取付けて、このクランプにより移動用電力ケーブルを任意の高さ位置(設置条件)にて保持するようにしている。また、移動用電力ケーブルを取付ける場合には、移動用電力ケーブルを使用する電圧の高低に応じて所要距離だけ離間配置する必要がある。またそれと同時に移動用電力ケーブルと大地と間の距離も電圧に応じて所要距離だけ離間させる必要がある。本発明ではこれらの諸要請を一挙に、且つ簡易に実現するものである。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1において、前記クランプは、前記ブラケットに固定するブラケット固定手段と、前記移動用電力ケーブルを固定するケーブル固定手段と、前記ブラケット固定手段及びケーブル固定手段を相対回転自在に支持した回転支持部と、を備えたことを特徴とする。
本発明のクランプによれば、どのような設置条件を備えた修理点検対象設備(機器)であっても、そこに設けられている組み立て台に対して、移動用電力ケーブルを任意の位置に、任意の条件で取付けることが可能となり、且つ高電圧に対する安全性の要請から求められる離間距離に関する条件を満たすことも可能となる。具体的には、本発明のクランプは、組み立て台に対して縦、横、斜め等の任意の方向に延びるブラケットを任意の条件にて配設すると共に、ブラケットの任意の位置に着脱できるブラケット固定手段と、移動用電力ケーブルを保持するケーブル固定手段と、これらを回転自在に支持する回転支持部と、から成るものである。
請求項3の発明は、請求項1、又は2において、前記ブラケットは、その長手方向位置を変位させることができる可動ブラケットであることを特徴とする。
本発明ではXY方向、その他の方向に自在に移動する可動ブラケットを使用し、何れかの可動ブラケットに移動用電力ケーブルを固定するものである。これにより、最適な位置に移動用電力ケーブルを進退移動自在に設定することができる。
請求項4は、請求項3において、前記各可動ブラケット間の位置関係を所定の位置に固定する位置固定手段を備えたことを特徴とする。
請求項3の方法で決定した移動用電力ケーブルの位置は、その後動かないように固定する必要がある。そこで本発明では、各可動ブラケットを夫々所定の位置に固定する位置固定手段を設けるものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、修理点検対象となる送電線設備近傍に設置した組み立て台の任意の箇所に配置するブラケットと、このブラケットの所定箇所に移動自在に取付け可能なクランプとを備えたので、移動用電力ケーブルの相間距離と対地間距離を電圧に応じて最適の距離だけ離間することができ、供給信頼度を確保することができる。
請求項2では、クランプを、ブラケットの任意の位置に取り付けられるブラケット固定手段と、移動用電力ケーブルを固定するケーブル固定手段と、それらを回転自在に支持する回転支持部と、から構成したので、移動用電力ケーブルの取付けに自由度が増し、工事の時間を短縮することができる。
請求項3では、任意の方向に移動自在に支持された可動ブラケットを使用し、可動ブラケットに移動用電力ケーブルを固定するので、最適な位置に移動用電力ケーブルを自在に設定することができる。
請求項4では、可動ブラケットを夫々所定の位置に固定する位置固定手段を設けるので、移動用電力ケーブルを安定して設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を図に示した実施形態に基づいて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明の第1の実施形態に係る移動用電力ケーブルの取付け装置の構成を説明する図であり、図1(a)は正面図、図1(b)は側面図である。ここでは、移動用電力ケーブルの取付け装置100を、例えば、発電所、変電所等に設置される遮断器(修理点検対象)50の近傍に設置する場合について説明する。遮断器50には各相ごとに遮断器本体7と碍子10が設けられており、夫々の碍子10に電力線1が固定されている。また3つの遮断器本体7を取り囲むように枠体4がコンクリート台8により大地に固定され、枠体4により遮断器50を保持している。その枠体4の近傍に組み立て台11を設置する。
この組み立て台11は、例えば、長尺な金属部材を縦横に組み付けることによって一体化したものであり、修理点検対象となる遮断器50、その他の各種設備(機器)の外側面に予め既設されているものである。或いは、この組み立て台11は、本発明の取付け装置100を組み付けるために、新たに設置してもよい。
本発明の移動用電力ケーブルの取付け装置100は、組み立て台11に移動用電力ケーブル9を固定するために縦・横(或いは、斜め)方向に配設(固定)される棒状(例えば、パイプ状)のブラケット5と、各ブラケット5の任意の箇所に着脱可能な移動用電力ケーブル取付け用の金具であるクランプ6と、を備えて構成される。
尚、移動用電力ケーブル9は先端に取付け碍子3を備えており、説明の便宜上、碍子3を含めた全体を移動用電力ケーブル9と称する。
移動用電力ケーブル9は、図5で説明したバイパス回路を形成するために使用されるが、クランプ6に移動用電力ケーブル9を取付ける場合、移動用電力ケーブル9間の相間距離(L1)及び碍子3の先端からの対地間距離(L2)が、少なくとも使用する電圧の値に対応して定められた距離以上になるように移動用電力ケーブル9の取付け条件を選定する。この実施形態では、クランプ6をブラケット5の最上部に取付けた例を示したが、対地間距離(L2)が確保できれば何処であってもかまわない。
なお、この例では、移動用電力ケーブル9を各碍子10に対して夫々接続することにより、三本の移動用電力ケーブル9を隣接配置する例を示したが、適切に確保することが可能となる。
【0008】
図2は本発明の一実施形態に係るクランプの構成例を示す図であり、図2(a)は2つの締め付け金具を回転させない状態を表し、図2(b)は一方の締め付け金具を90度回転させた状態を表す図である。クランプ6は、ブラケット5に挿通した状態で固定されるC字状の締め付け金具(ブラケット固定手段)22と、移動用電力ケーブル9に挿通した状態で固定されるC字状の締め付け金具(ケーブル固定手段)24と、締め付け金具22、24の各頂部を貫通した状態で連結して両者を相対回転自在に支持する回転支持部23と、各締め付け金具22、24の開口部21側の端部間に挿通されて各開口部の間隔を調整するボルト20と、を備えて構成される。この構成では、予め締め付け金具22にブラケット5を挿通した状態で適所に位置決めした上でボルト20により締め付けて仮止めしておく。次に移動用電力ケーブル9の適所、具体的には碍子3の適所を締め付け金具24に挿入しボルト20により締め付けて固定する。そして仮止めした締め付け金具22をブラケット5上の正規の位置に移動させてボルト20を締め付けて固定する。
このようにクランプ6を、ブラケット5側に固定する締め付け金具22と、移動用電力ケーブル9を固定する締め付け金具24と、それらを回転自在に支持する回転支持部23と、から構成したので、移動用電力ケーブル9の取付けに自由度が増し、工事の時間を短縮することができる。
なお、上記例では、横枠としてのブラケット5にクランプ6を取付ける例を示したが、縦枠としてのブラケット5にクランプ6を取付けるようにしてもよい。この場合には、ブラケット5に対するクランプ6の上下方向位置を調整することにより、移動用電力ケーブルの高さ位置を任意に調整することができる。また、ブラケット5は、縦横以外の斜め方向等の任意の方向に設置することもできる。
【0009】
図3は本発明の第2の実施形態に係る移動用電力ケーブルの取付け装置の一部分の構成を説明する図である。この移動用電力ケーブルの取付け装置51は、既設の組み立て台11に組み付けられてX軸方向(上下方向)に移動自在な可動ブラケット(X軸移動手段)30と、Y軸方向(横方向)に移動自在な可動ブラケット(Y軸移動手段)31と、を備え、可動ブラケット31(又は、30)に図2のクランプ6を備えたものである。そして可動ブラケット30及び可動ブラケット31に夫々所定の位置関係にて固定するボルト(位置固定手段)33、34を設ける。これにより、最適な位置に移動用電力ケーブル9を自在に設定することができると共に、移動用電力ケーブル9を安定して設定することができる。
クランプ6は、図2に示したのと同様に、可動ブラケット30、31に挿通した状態で固定されるC字状の締め付け金具(ブラケット固定手段)22と、移動用電力ケーブル9に挿通した状態で固定されるC字状の締め付け金具(ケーブル固定手段)24と、締め付け金具22、24の各頂部を貫通した状態で連結して両者を相対回転自在に支持する回転支持部23と、各締め付け金具22、24の開口部21側の端部間に挿通されて各開口部の間隔を調整するボルト20と、を備えて構成される。
以上の通り、本発明の第1の実施形態によれば、修理点検対象の送電線設備近傍に設置した組み立て台に固定するブラケット5と、このブラケット5の所定箇所に移動自在に取付け可能なクランプ6とを備えたので、各移動用電力ケーブルの相間距離L1と対地間距離L2を、使用電圧の高低に応じて所定の適正距離だけ離間配置することができ、供給信頼度を確保することができる。
また、クランプを、ブラケット5側に固定する締め付け金具22と移動用電力ケーブルを固定する締め付け金具24とから構成し、それらを回転自在に支持する回転支持部23を備えたので、移動用電力ケーブル9の取付けに自由度が増し、工事の時間を短縮することができる。
また、第2の実施形態ではXY方向に自在に移動する構成を備え、可動ブラケット31に移動用電力ケーブル9を固定するので、最適な位置に移動用電力ケーブル9を自在に設定することができる。
また、可動ブラケット30、31に夫々所定の位置に固定するボルト33、34を設けるので、移動用電力ケーブル9を安定して設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る移動用電力ケーブルの取付け装置の構成を説明する図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るクランプの構成を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る移動用電力ケーブルの取付け装置の一部分の構成を説明する図である。
【図4】従来の仮送電設備の構成を示す図である。
【図5】従来のバイパス回路の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0011】
3、10 碍子、4 枠体、5 ブラケット、6 クランプ、7 遮断器本体、8 コンクリート台、9 移動用電力ケーブル、11 組み立て台、20 ボルト、21 隙間、22、24 締め付け金具、23 回転支持部、50 遮断器、100 移動用電力ケーブルの取付け装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発変電所の送電線設備を修理点検する際に、母線と送電線間をバイパスするために用いる移動用電力ケーブルの取付け装置において、
修理点検対象となる設備の近傍に装備された組み立て台に対して着脱されるブラケットと、該ブラケットの任意箇所に着脱自在に取付けられると共に前記移動用電力ケーブルを保持するクランプと、を備え、
前記移動用電力ケーブルを保持した前記クランプを前記ブラケットに取付ける際、前記移動用電力ケーブルと他相との相間距離、及び、移動用電力ケーブルの対地間距離を夫々適正値に設定することを可能としたことを特徴とする移動用電力ケーブルの取付け装置。
【請求項2】
前記クランプは、前記ブラケットに固定するブラケット固定手段と、前記移動用電力ケーブルを固定するケーブル固定手段と、前記ブラケット固定手段及びケーブル固定手段を相対回転自在に支持した回転支持部と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の移動用電力ケーブルの取付け装置。
【請求項3】
前記ブラケットは、その長手方向位置を変位させることができる可動ブラケットであることを特徴とする請求項1、又は2に記載の移動用電力ケーブルの取付け装置。
【請求項4】
前記各可動ブラケット間の位置関係を所定の位置に固定する位置固定手段を備えたことを特徴とする請求項3に記載の移動用電力ケーブルの取付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−104882(P2007−104882A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−295479(P2005−295479)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】