説明

移動端末および移動端末の測位方法

【課題】消費電力およびトラヒック負荷を削減した移動端末および移動端末の測位方法を提供する。
【解決手段】人工衛星の位置情報に基づいて移動端末40の現在位置からの仰角が閾値X以上である人工衛星を特定し、特定された人工衛星のうちTOEからの経過時間が閾値Y以内である人工衛星の数を計数し、計数された人工衛星の数が閾値Z以上であるか判定する。
判定が否定的なら、位置情報提供装置30に対して位置情報およびTOEを要求して受信し、人工衛星から送信された現在時刻情報を含む信号を受信し、受信した位置情報および信号が含む現在時刻情報に基づいて移動端末40の位置を測位する。
判定が肯定的なら、位置情報提供装置30に対して位置情報およびTOEを要求せず、人工衛星から送信された現在時刻情報を含む信号を受信し、記憶部90に記憶されている位置情報および信号が含む現在時刻情報に基づいて移動端末40の位置を測位する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動端末および移動端末の測位方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球上における現在位置を測位するための手段として、グローバル・ポジショニング・システム(Global Positioning System、以下GPSと称する)が用いられている。GPSによる測位は、地球を周回する複数のGPS衛星が送信する時刻情報および衛星位置情報を地上のGPS測位装置が受信して、複数のGPS衛星とGPS測位装置との間の距離の各々を測定することによって行われる。
【0003】
各衛星が送信する衛星位置情報には、各衛星毎の詳細な位置情報を示したエフェメリス(ephemeris)と、全衛星の概略的な位置情報を示したアルマナック(almanac)が含まれる。各衛星は、その衛星のエフェメリスおよび全衛星に共通するアルマナックを常時送信している。
【0004】
GPSによる測位方法としては、GPS測位装置がGPS衛星から時刻情報および衛星位置情報の両方を取得して測位を行う自律GPS測位(autonomous GPS positioning)の他、必要な位置情報をGPS衛星からではなくネットワークから取得して測位したり、測位のために必要な計算をGPS測位装置以外のサーバ(アシストサーバ)に行わせてその結果を受信したりするアシスト型GPS測位(assisted GPS positioning)がある(例えば、特許文献1)。
自律GPS測位では、GPS測位装置が衛星位置情報を取得するには、GPS衛星が送信する信号をデコードする必要があり、時間が掛かる。アシスト型GPS測位では、GPS測位装置はアシストサーバに記憶されたデコード済の衛星位置情報をネットワーク経由で受信すればよいので、測位に要する時間が短縮できる。
また、GPS衛星からの信号をデコードして衛星位置情報を取得するには、GPS信号の強電界環境(受信されるGPS信号のレベルが高いこと)が必要である。自律GPS測位では、衛星位置情報が取得できない弱電界環境においては測位が不可能である。一方、アシスト型GPS測位では、弱電界環境でもネットワーク経由で衛星位置情報を受信できるので、測位が可能である。すなわち、自律GPS測位と比べて、アシスト型GPS測位は測位可能エリアを広くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−147720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アシスト型GPS測位を行うには、GPS測位装置は、GPS衛星から送信される時刻情報とは別にアシストサーバから衛星位置情報を受信する必要がある。そのため、アシスト型GPS測位のために必要な消費電力は、自律GPS測位のために必要な消費電力と比べて大きい。このことは、GPS測位装置が携帯電話等の移動端末である場合には、移動端末の稼働時間が限定されたり、必要な電力を供給するための巨大なバッテリーを装備することが必要になったりするため、問題である。また、衛星位置情報はネットワークを介してGPS衛星測位装置に受信されるので、ネットワークのトラヒックが増大するという問題もある。
【0007】
そこで、本発明は、測位時間の短さおよび測位エリアの広さを確保しつつ、消費電力およびネットワークのトラヒック負荷を削減した移動端末および移動端末の測位方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る移動端末は、複数の人工衛星から送信された前記人工衛星が計時する現在時刻情報を含む信号を受信する衛星受信部と、複数の人工衛星の位置情報を提供する位置情報提供装置から移動通信網を介して人工衛星の位置情報およびこれらの位置情報に対応する位置情報時刻情報を受信する移動通信網通信部と、前記移動通信網通信部が前記位置情報および前記位置情報時刻情報を受信する度に前記位置情報および前記位置情報時刻情報を記憶する記憶部と、前記位置情報に基づいて、移動端末の現在位置からの各々の仰角が第1閾値以上である複数の人工衛星を特定する人工衛星特定部と、前記人工衛星特定部によって特定された複数の人工衛星のうち、前記位置情報時刻情報からの経過時間が第2閾値以内である人工衛星の数を計数する人工衛星計数部と、前記人工衛星計数部によって計数された計数値が第3閾値以上であるか否かを判定する判定部と、移動端末の位置を測位する測位部とを備え、前記判定部の判定が否定的である場合には、前記移動通信網通信部は、前記位置情報提供装置に対して前記位置情報および前記位置情報時刻情報を要求して前記位置情報および前記位置情報時刻情報を受信し、前記衛星受信部は、前記複数の人工衛星から送信された信号を受信し、前記測位部は、前記移動通信網通信部が要求して受信した位置情報および前記信号が含む現在時刻情報に基づいて移動端末の位置を測位し、前記判定部の判定が肯定的である場合には、前記移動通信網通信部は、前記位置情報提供装置に対して前記位置情報および前記位置情報時刻情報を要求せず、前記衛星受信部は、前記複数の人工衛星から送信された信号を受信し、前記測位部は、前記記憶部に記憶されている前記位置情報および前記信号が含む現在時刻情報に基づいて移動端末の位置を測位する。
【0009】
本発明に係る移動端末の測位方法は、複数の人工衛星の位置情報を提供する位置情報提供装置から移動通信網を介して人工衛星の位置情報およびこれらの位置情報に対応する位置情報時刻情報を受信することと、前記位置情報および前記位置情報時刻情報を受信する度に前記位置情報および前記位置情報時刻情報を記憶部に記憶することと、前記位置情報に基づいて、移動端末の現在位置からの各々の仰角が第1閾値以上である複数の人工衛星を特定することと、仰角が第1閾値以上であると特定された前記複数の人工衛星のうち、前記位置情報時刻情報からの経過時間が第2閾値以内である人工衛星の数を計数することと、計数された前記位置情報時刻情報からの経過時間が第2閾値以内である人工衛星の数が第3閾値以上であるか否かを判定することと、前記判定が否定的である場合には、前記位置情報提供装置に対して前記位置情報および前記位置情報時刻情報を要求して前記位置情報および前記位置情報時刻情報を受信し、前記複数の人工衛星から送信された前記人工衛星が計時する現在時刻情報を含む信号を受信し、前記位置情報提供装置に対して要求して受信した位置情報および前記信号が含む現在時刻情報に基づいて移動端末の位置を測位することと、前記判定が肯定的である場合には、前記位置情報提供装置に対して前記位置情報および前記位置情報時刻情報を要求せず、前記複数の人工衛星から送信された前記人工衛星が計時する現在時刻情報を含む信号を受信し、前記記憶部に記憶されている前記位置情報および前記信号が含む現在時刻情報に基づいて移動端末の位置を測位する。
【0010】
このように、本発明によれば、過去に記憶部に記憶された人工衛星の位置情報に基づいて人工衛星の仰角を計算することにより、測位に用いることのできる人工衛星を特定し、記憶部に記憶された位置情報時刻情報からの経過時間を計算することにより、測位に用いることのできる人工衛星を特定して、判定を行って測位動作を変更する。従って、本発明によれば、人工衛星からの信号を受信できないこと(人工衛星を追跡できないこと)または人工衛星からの信号が弱いことを判定して測位動作を変更する場合に比べて、人工衛星からの信号を受信する動作およびその受信した信号について判定する動作を省略することができる。従って、消費電力を低減できるとともに、より迅速に測位動作を変更することができる。また、仰角および経過時間の両方に基づいて測位に用いることのできる人工衛星数を判定するので、判定がより確実になる。
【0011】
本発明によれば、判定が肯定的な場合、すなわち測位のために利用可能な衛星数が第3閾値以上の場合には、移動端末は、位置情報および位置情報時刻情報を受信せずに既に記憶している位置情報を用いて測位を行い、判定が否定的な場合、すなわち測位のために利用可能な衛星数が第3閾値未満の場合には、移動端末は、位置情報および位置情報時刻情報を受信して測位を行う。そのため、移動端末が位置情報および位置情報時刻情報を受信する頻度を低くできる。従って、移動端末が位置情報および位置情報時刻情報を記憶せず、測位の度に位置情報および位置情報時刻情報を取得する場合に比べて、必要な消費電力、所要時間、およびネットワークのトラヒック負荷を削減することができる。
【0012】
また、判定が肯定的な場合は、位置情報および位置情報時刻情報を受信できなくても測位を行うことができるので、測位の度に位置情報および位置情報時刻情報を取得する必要がある場合に比べて、測位エリアを広くすることができる。
【0013】
以上のように、本発明によれば、位置情報提供装置から位置情報および位置情報時刻情報を受信しないで行う測位を主とし、位置情報提供装置から位置情報および位置情報時刻情報を受信して行う測位を従とする移動端末の測位において、測位時間の短さおよび測位エリアの広さを確保しつつ、消費電力およびネットワークのトラヒック負荷を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る移動端末が使用される通信システム全体を示す概略図である。
【図2】前記移動端末の構造を示すブロック図である。
【図3】前記移動端末の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1に示すように、実施の形態に係る移動端末が使用される全体の通信システムは、移動通信網10と、移動通信網10と通信可能な複数の移動端末40とを備える。移動通信網10は、複数の基地局12を備え、基地局12はその基地局のセルにある移動端末40と通信する。
【0017】
各移動端末40は、例えば携帯電話のハンドセット、または移動通信網を利用可能なその他の端末である。各移動端末40は、複数(例えば4つ)のGPS衛星20から、GPS衛星20が計時する現在時刻情報およびGPS衛星の位置情報(エフェメリス)を含むGPS信号を受信し、これらの現在時刻情報およびエフェメリスに基づいて、GPS衛星20の各々と移動端末40との距離を特定することにより、移動端末40自身の現在の位置を特定することができる。各移動端末40は、GPS衛星20から現在時刻情報を受信し、後述する位置情報提供装置30からエフェメリスを受信して、GPS衛星20の各々と移動端末40との距離を特定することにより、移動端末40自身の現在の位置を特定することもできる。
【0018】
ここで、GPS衛星の位置情報(エフェメリス)には、そのGPS衛星の位置情報の基準となる時刻の情報(Time Of Ephemeris、TOE)が含まれるが、以下、TOEの存在を明示するため、エフェメリスに併せてTOEが記載されることがある。エフェメリスおよびTOEは、各GPS衛星毎に定まる。
【0019】
移動通信網10には、位置情報提供装置30が直接的または間接的に接続されている。例えば、位置情報提供装置30は、移動通信網10の一つの基地局12と無線で通信してもよい。あるいは、位置情報提供装置30は、移動通信網10に接続された他の網に有線で接続されていてもよい。
【0020】
位置情報提供装置30は、移動端末40が移動端末40自身の現在の位置を特定するために必要なエフェメリスおよびTOEを提供する。後述するように、位置情報提供装置30は、移動端末40からの要求に応じてエフェメリスおよびTOEを移動通信網を介して移動端末40に送信する。移動端末40は、受信したエフェメリスおよびTOEを記憶する。
【0021】
図2に示すように、移動端末40は、衛星受信部50、衛星受信アンテナ52、移動通信網通信部60、移動通信網通信アンテナ62、入力部70、記憶部90、CPU(Central Processing Unit)100を備える。
衛星受信部50は、CPU100の制御の下、GPS衛星20が送信するGPS信号を衛星受信アンテナ52で受信して解析し、GPS信号に含まれる現在時刻情報やエフェメリス等をCPU100に出力する。衛星受信部50は、受信したGPS信号を解析して現在時刻情報のみを得ることもできるし、現在時刻情報およびエフェメリスを得ることもできる。
【0022】
移動通信網通信部60は、他の通信装置が送信した信号を、移動通信網10を介して、移動通信網通信アンテナ62で受信し、受信した信号をCPU100の制御の下で処理する。例えば、位置情報提供装置30が送信したエフェメリスおよびTOEを、移動通信網10を介して移動通信網通信アンテナ62で受信してCPU100に転送する。
また、移動通信網通信部60は、CPU100の制御の下で、移動通信網通信アンテナ62によって、移動通信網10を介して他の通信装置(例えば、位置情報提供装置30)へ信号を送信する。
【0023】
入力部70は、例えば複数のボタンまたはキーボードであり、移動端末40のユーザによって操作され、ユーザから移動端末40に対する指示の入力に用いられる。
記憶部90は、移動通信網通信部60がエフェメリスおよびTOEを受信する度に、エフェメリスおよびTOEを記憶部90に記憶する。また、記憶部90は、移動端末40の現在位置を記憶している。
【0024】
CPU100の人工衛星特定部102は、記憶部90に記憶された複数のGPS衛星20に対応するエフェメリスの各々に基づいて、移動端末40の現在位置からの仰角が閾値X以上であるGPS衛星20を特定する。ここで、閾値Xは、移動端末40から見て水平線上に存在するGPS衛星全てを特定の対象とするように0度としてもよいし、低い仰角にあるGPS衛星20からのノイズが多いGPS信号を排除するため、例えば、15度としてもよいし、他の値としてもよい。
CPU100の人工衛星計数部104は、記憶部90に記憶された複数のGPS衛星20に対応するTOEの各々に基づいて、人工衛星特定部102に閾値X以上であると特定された複数のGPS衛星20について、TOEからの経過時間が閾値Y以内であるGPS衛星20の数を計数する。ここで、閾値Yは、それ以降エフェメリスが示す位置と実際のGPS衛星20の位置との誤差が顕著になる1.5時間としてもよいし、他の値としてもよい。
CPU100の判定部106は、人工衛星計数部104によってTOEからの経過時間が閾値Y以内であると計数されたGPS衛星20の数が閾値Z以上であるか否かを判定する。ここで、GPS衛星20の数を変化させた場合の測位精度と測位時間を調べた実験結果によれば、閾値Zを7とすると好ましい。
CPU100の測位部108は、判定部106の判定結果に従って、移動端末40の現在位置を測位する。
【0025】
上述のように、記憶部90に記憶されたエフェメリスおよびTOEに基づいて、移動端末40の現在位置を測位するのに利用可能なGPS衛星20の数を計数し判定できる。したがって、実際にGPS衛星20が送信するGPS信号を受信して、受信可否を判断したり受信品質を測定したりすることにより、測位利用可能なGPS衛星20の数を計数し判定する場合に比べ、所要時間および消費電力を削減することができる。
【0026】
次に、図3のフローチャートを参照して、移動端末40の動作を説明する。この動作は、図3のフローチャートに対応するコンピュータプログラムをCPU100が実行することにより実現される。この動作は、移動端末40のユーザが入力部70によりGPS測位を要求したこと、または定期的に移動端末40の現在位置を取得するための定期自動測定機能プログラム(例えば、日本で株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモがオートGPS等という名称で提供しているサービスのためのプログラム)等の移動端末40のCPU100で実行されているプログラムがGPS測位を要求したことを契機として実行される。
【0027】
ステップS1において、人工衛星特定部102は、前述の通り、移動端末40の現在位置からの仰角が閾値X以上であるGPS衛星20を特定する。具体的には、人工衛星特定部102は、記憶部90から複数のGPS衛星20の各々に対応するエフェメリスおよび移動端末40の現在位置を読み出し、エフェメリスの各々と移動端末40の現在位置に基づいてGPS衛星20の各々の仰角を算出し、仰角が閾値X以上であるGPS衛星20を特定する。
【0028】
ステップS2において、人工衛星計数部104は、前述の通り、仰角が閾値X以上であると特定された複数のGPS衛星20について、TOEからの経過時間が閾値Y以内であるGPS衛星20の数を計数する。具体的には、人工衛星計数部104は、記憶部90からステップS1で特定されたGPS衛星20に対応するTOEを読み出し、TOEの各々からの移動端末40の内部現在時刻に対する経過時間を算出し、TOEからの経過時間が閾値Y以内であるGPS衛星20の数を計数する。
この例では、人工衛星計数部104が計数する際にTOEからの経過時間を算出することとしたが、変形例として、CPU100が予めTOEと移動端末40の内部現在時刻との差を算出して記憶部90に記憶しておき、記憶された差に基づいて、人工衛星計数部104が、TOEからの経過時間が閾値Y以内であるGPS衛星20の数を計数することとしてもよい。また、別の変形例として、CPU100がタイマーとして動作し、TOEからの経過時間が閾値Yを超えたGPS衛星20のエフェメリスおよびTOEを記憶部90から削除して、記憶部90がTOEからの経過時間が閾値Y以内のGPS衛星20のエフェメリスおよびTOEのみを記憶するようにしてもよい。また、TOEからの経過時間が閾値Yを超えたGPS衛星20のエフェメリスおよびTOEを記憶部90から削除する代わりに、判定に使用しないためのフラグを設定してもよい。
【0029】
ステップS3において、判定部106は、仰角が閾値X以上であると特定されたGPS衛星20のうち、TOEからの経過時間が閾値Y以内であるGPS衛星20の数が、閾値Z以上であるか否かを判定する。
判定が肯定的である場合、すなわち、仰角が閾値X以上であると特定されたGPS衛星20のうち、TOEからの経過時間が閾値Y以内であるGPS衛星20の数が閾値Z以上である場合には、処理はステップS4に進む。
判定が否定的、すなわち、仰角が閾値X以上であると特定されたGPS衛星20のうち、TOEからの経過時間が閾値Y以内であるGPS衛星20の数が閾値Z未満である場合には、処理はステップS6に進む。
【0030】
ステップS4において、CPU100は、複数のGPS衛星20が送信したGPS信号の各々を衛星受信部50が受信して解析するように制御する。衛星受信部50は、衛星受信アンテナ52で受信した複数のGPS信号を解析し、GPS衛星20の各々に対応した現在時刻情報を算出して、CPU100に出力する。
【0031】
ステップS5において、測位部108は、記憶部90に記憶されている、複数のGPS衛星20に対応するエフェメリスを読み出す。そして、ステップS4で衛星受信部50が出力したGPS衛星の現在時刻情報と、記憶部90から読み出したエフェメリスに基づいて、移動端末40の位置を測位し、測位された現在位置を記憶部90に記憶する。その後、測位動作は終了する。
【0032】
他方、ステップS6において、CPU100は、移動通信網通信部60がエフェメリスおよびTOEの送信要求を位置情報提供装置30に送信するように制御する。移動通信網通信部60は、移動通信網通信アンテナ62によって、移動通信網10を介して位置情報提供装置30へエフェメリスおよびTOEの送信を要求する信号を送信する。
【0033】
ステップS7において、CPU100は、ステップS6における要求に従い位置情報提供装置30が送信したエフェメリスおよびTOEを、移動通信網通信部60が受信するように制御する。移動通信網通信部60は、位置情報提供装置30が送信したエフェメリスおよびTOEを、移動通信網通信アンテナ62で受信してCPU100に転送する。CPU100は、移動通信網通信部60が転送したエフェメリスおよびTOEを記憶部90に記憶する。
【0034】
ステップS8において、CPU100は、複数のGPS衛星20が送信したGPS信号の各々を衛星受信部50が受信して解析するように制御する。衛星受信部50は、衛星受信アンテナ52で受信した複数のGPS信号を解析し、GPS衛星20の各々に対応した現在時刻情報を算出して、CPU100に出力する。
【0035】
ステップS9において、測位部108は、ステップS8で衛星受信部50が出力したGPS衛星の現在時刻情報と、ステップS7で移動通信網通信部60が受信したエフェメリスに基づいて、移動端末40の位置を測位し、測位された現在位置を記憶部90に記憶する。その後、測位動作は終了する。
【0036】
上述したとおり、この実施の形態によれば、ステップS3で肯定的な判定が下された後の測位動作であるステップS4およびS5では、移動端末40は位置情報提供装置30に対してエフェメリスおよびTOEの送信を要求しない。一方、ステップS3で否定的な判定が下された後の測位動作であるステップS6〜S9では、移動端末40は位置情報提供装置30に対してエフェメリスおよびTOEの送信を要求する。
すなわち、測位のために利用可能なGPS衛星20の数が閾値Z以上である場合には、エフェメリスを新たに受信する必要がないので、過去に記憶部90に記憶されたエフェメリスを用いて測位を行う。測位のために利用可能なGPS衛星20の数が閾値Z未満である場合には、エフェメリスを新たに受信する必要があるので、位置情報提供装置30からエフェメリスを受信して、受信したエフェメリスを用いて測位を行う(アシスト型GPS測位)。このように測位手段を選択することで、通常のアシスト型GPS測位のように測位の度毎に位置情報提供装置30からエフェメリスを受信する必要がなくなるため、測位時間を短縮でき、測位のための消費電力を削減でき、移動通信網のトラヒック負荷を低減できる。
【0037】
また、測位のために利用可能なGPS衛星20の数が閾値Z以上である場合には、エフェメリスを受信するために移動通信網にアクセスする必要がないので、移動端末40が移動通信網にアクセスできない場所でも移動端末40の現在位置を測位可能である。
【0038】
また、測位のために利用可能なGPS衛星20の数に基づいて測位手段を選択するので、直近のアシスト型GPS測位を行ってからの経過時間が所定時間以上であった場合にはアシスト型GPS測位を行い、そうでなければ過去に記憶部90に記憶されたエフェメリスを用いてGPS測位を行うようなタイマーを用いた測位手段の選択と比較して、利用可能なGPS衛星20の数に応じた動的な測位手段の選択が可能となる。
【0039】
さらに、記憶部90に記憶されたエフェメリスに基づいてGPS衛星20の仰角を算出し、記憶部90に記憶されたTOEからの経過時間を計算して、測位に利用可能なGPS衛星20の数をカウントすることにより、過去に記憶部90に記憶されたエフェメリスを用いたGPS測位を行うかアシスト型GPS測位を行うかを判定するので、GPS衛星20を追跡できないことまたはGPS衛星20からの信号の受信レベルが低いことによりどちらの測位を行うかを判定する場合と比較して、判定のためにGPS衛星20からの信号を受信する動作を省略することができる。従って、消費電力を削減でき、併せて、迅速な判定が可能となる。また、仰角およびTOEからの経過時間の両方からGPS衛星20の有効性を判定するので、より確実な判定が可能となる。
【0040】
以上、本発明に係る実施の形態を説明したが、以下のような変形も本発明の範囲内にある。
【0041】
上述の実施の形態では、複数のGPS衛星20から送信された現在時刻情報および複数のGPS衛星20に対応するエフェメリスに基づいて測位部108が移動端末40の現在位置を測位する(ステップS5、ステップS9)。他の実施の形態として、測位部108は、複数のGPS衛星20から送信された現在時刻情報およびそれらのGPS衛星20に対応するエフェメリスと、1つ以上の基地局12から送信された基地局12の位置情報を示す信号に基づいて移動端末40の現在位置を測位してもよい。
【0042】
上述の実施の形態では、ユーザの指示またはCPU100で実行されているプログラムからの要求により測位動作を開始しているが、他の実施の形態では、移動端末40が現在のセルまたはセクタから他のセルまたはセクタに移動するときに測位動作を開始してもよい。すなわち、セル間ハンドオーバまたはセクタ間ハンドオーバの開始または終了を契機として移動端末40の測位動作を開始してもよい。
【0043】
上述の実施の形態では、エフェメリスを用いてGPS衛星20の仰角を算出したが、エフェメリスに代えてアルマナックを用いて仰角を算出してもよい。アルマナックは有効期間が長いので、有効なエフェメリスが記憶部90に記憶されておらずアルマナックだけが記憶されているGPS衛星20についても仰角を算出できる。
【0044】
上述の実施の形態では、移動端末40は1つのCPU100を有する。しかし、他の実施の形態として、移動端末40は、人工衛星特定部102、人工衛星計数部104、判定部106、測位部108の機能を有する複数のCPUを有していてもよい。
さらに、CPU100が実行する各機能は、CPUの代わりにハードウェアで実行してもよいし、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)等のプログラマブルロジックデバイスで実行してもよい。また、GPSチップのCPUが各機能を実行してもよい。
【0045】
上述した変形は、矛盾しない限り組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10…移動通信網、20…GPS衛星、30…位置情報提供装置、40…移動端末、50…衛星受信部、60…移動通信網通信部、70…入力部、90…記憶部、100…CPU


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の人工衛星から送信された前記人工衛星が計時する現在時刻情報を含む信号を受信する衛星受信部と、
複数の人工衛星の位置情報を提供する位置情報提供装置から移動通信網を介して人工衛星の位置情報およびこれらの位置情報に対応する位置情報時刻情報を受信する移動通信網通信部と、
前記移動通信網通信部が前記位置情報および前記位置情報時刻情報を受信する度に前記位置情報および前記位置情報時刻情報を記憶する記憶部と、
前記位置情報に基づいて、移動端末の現在位置からの各々の仰角が第1閾値以上である複数の人工衛星を特定する人工衛星特定部と、
前記人工衛星特定部によって特定された複数の人工衛星のうち、前記位置情報時刻情報からの経過時間が第2閾値以内である人工衛星の数を計数する人工衛星計数部と、
前記人工衛星計数部によって計数された計数値が第3閾値以上であるか否かを判定する判定部と、
移動端末の位置を測位する測位部とを備え、
前記判定部の判定が否定的である場合には、前記移動通信網通信部は、前記位置情報提供装置に対して前記位置情報および前記位置情報時刻情報を要求して前記位置情報および前記位置情報時刻情報を受信し、前記衛星受信部は、前記複数の人工衛星から送信された信号を受信し、前記測位部は、前記移動通信網通信部が要求して受信した位置情報および前記信号が含む現在時刻情報に基づいて移動端末の位置を測位し、
前記判定部の判定が肯定的である場合には、前記移動通信網通信部は、前記位置情報提供装置に対して前記位置情報および前記位置情報時刻情報を要求せず、前記衛星受信部は、前記複数の人工衛星から送信された信号を受信し、前記測位部は、前記記憶部に記憶されている前記位置情報および前記信号が含む現在時刻情報に基づいて移動端末の位置を測位する
ことを特徴とする移動端末。
【請求項2】
移動端末における測位方法であって、
複数の人工衛星の位置情報を提供する位置情報提供装置から移動通信網を介して人工衛星の位置情報およびこれらの位置情報に対応する位置情報時刻情報を受信することと、
前記位置情報および前記位置情報時刻情報を受信する度に前記位置情報および前記位置情報時刻情報を記憶部に記憶することと、
前記位置情報に基づいて、移動端末の現在位置からの各々の仰角が第1閾値以上である複数の人工衛星を特定することと、
仰角が第1閾値以上であると特定された前記複数の人工衛星のうち、前記位置情報時刻情報からの経過時間が第2閾値以内である人工衛星の数を計数することと、
計数された前記位置情報時刻情報からの経過時間が第2閾値以内である人工衛星の数が第3閾値以上であるか否かを判定することと、
前記判定が否定的である場合には、前記位置情報提供装置に対して前記位置情報および前記位置情報時刻情報を要求して前記位置情報および前記位置情報時刻情報を受信し、前記複数の人工衛星から送信された前記人工衛星が計時する現在時刻情報を含む信号を受信し、前記位置情報提供装置に対して要求して受信した位置情報および前記信号が含む現在時刻情報に基づいて移動端末の位置を測位することと、
前記判定が肯定的である場合には、前記位置情報提供装置に対して前記位置情報および前記位置情報時刻情報を要求せず、前記複数の人工衛星から送信された前記人工衛星が計時する現在時刻情報を含む信号を受信し、前記記憶部に記憶されている前記位置情報および前記信号が含む現在時刻情報に基づいて移動端末の位置を測位する
ことを特徴とする移動端末の測位方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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