移動足場、および移動足場の移動方法
【課題】 レールを用いることなく確実に回動移動する移動足場を提供する。
【解決手段】 移動足場2は、動力によって走行する複数の走行輪20a、20aと、動力を有しない従動輪20h、20hとを備える。この移動足場2は、複数の走行輪20a、20aが、一直線となる配置直線40上に並ぶように配置される。そして、複数の走行輪20a、20aの向く方向は、配置直線40と直交する方向に保持され、かつ、それら走行輪20a、20aの走行速度は、配置直線40上の基点41からの距離に比例するように設定される。こうして、この移動足場2は、前記基点41を中心として回動移動する。
【解決手段】 移動足場2は、動力によって走行する複数の走行輪20a、20aと、動力を有しない従動輪20h、20hとを備える。この移動足場2は、複数の走行輪20a、20aが、一直線となる配置直線40上に並ぶように配置される。そして、複数の走行輪20a、20aの向く方向は、配置直線40と直交する方向に保持され、かつ、それら走行輪20a、20aの走行速度は、配置直線40上の基点41からの距離に比例するように設定される。こうして、この移動足場2は、前記基点41を中心として回動移動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、走行面上を移動する移動足場、特に、基点を中心として回動移動する移動足場、およびその移動足場の移動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基点を中心として回動移動する移動足場として、例えば、各車輪に電動機を用いた移動足場があった(例えば、特許文献1参照)。この移動足場は、四本の脚部材の下端部に、車輪を備え、それら車輪ごとに電動機が設けられていた。そして、前記車輪が、床面に敷設された同心状の二本のレール上を転動することで、この移動足場は、レール上を走行するようになっていた。
【0003】
【特許文献1】特開平10−46800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来の移動足場においては、移動足場を回動移動させるために、レールが必要であった。このため、この移動足場は、その配備が厄介であったり、また、汎用性に乏しかった。
【0005】
この発明は、上記した従来の欠点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、レールを用いることなく確実に回動移動する、移動足場、および移動足場の移動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る移動足場、および移動足場の移動方法は、前記目的を達成するために、次の構成からなる。すなわち、
請求項1に記載の発明に係る移動足場は、動力によって走行する複数の走行輪と、動力を有しない従動輪とを備えて、レールを介すことなく直接走行面上を移動する移動足場である。この移動足場は、前記複数の走行輪が、一直線となる配置直線上に並ぶように配置される。そして、前記複数の走行輪の向く方向は、前記配置直線と直交する方向に保持され、あるいは保持可能となっており、かつ、それら走行輪の走行速度は、前記配置直線上の基点からの距離に比例するように設定され、あるいは設定可能となっている。
【0007】
こうして、配置直線上に並ぶように配置した複数の走行輪の向く方向を、配置直線と直交する方向に保持するとともに、それら走行輪の走行速度を、配置直線上の基点からの距離に比例するように設定することで、この移動足場は、前記基点を中心として回動移動する。このように、走行輪の配置、向き、および走行速度を設定することで、この移動足場は、レールを用いなくとも確実に回動移動する。
【0008】
また、請求項2に記載の発明に係る移動足場のように、請求項1に記載の移動足場において、前記従動輪は、前記移動足場の動きに追従してその向きを変えるキャスターによって形成されるのが望ましい。こうして、従動輪を形成するキャスターが、移動足場の動きに追従してその向きを変えることから、この移動足場の回動移動が円滑に行なわれる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明に係る移動足場のように、請求項2に記載の移動足場において、前記複数の走行輪の向く方向は、前記配置直線と直交する方向の他に、共通する任意の方向に保持可能であり、かつ、前記複数の走行輪の走行速度は、共通する一定の速度に設定可能となっていてもよい。こうして、複数の走行輪の向く方向を、共通する方向に保持し、複数の走行輪の走行速度を、共通する一定の速度とすることで、この移動足場を、その走行輪の向く方向に、並進移動させることができる。
【0010】
また、請求項4に記載の発明に係る移動足場のように、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の移動足場において、前記複数の走行輪は、それぞれが別々の電動機によって駆動し、それら電動機は、インバーター制御によりその回転数が制御されて、前記走行輪の走行速度が得られてもよい。
【0011】
また、請求項5に記載の発明に係る移動足場の移動方法は、動力によって走行する複数の走行輪と、動力を有しない従動輪とを備えて、レールを介すことなく直接走行面上を移動する移動足場の、移動方法である。この移動足場の移動方法は、前記複数の走行輪を、一直線となる配置直線上に並ぶように配置し、前記複数の走行輪の向く方向を、前記配置直線と直交する方向に保持し、かつ、それら走行輪の走行速度を、前記配置直線上の基点からの距離に比例するように設定して、前記移動足場を、前記基点を中心として回動移動させるものである。
【0012】
こうして、配置直線上に並ぶように配置した複数の走行輪の向く方向を、配置直線と直交する方向に保持するとともに、それら走行輪の走行速度を、配置直線上の基点からの距離に比例するように設定することで、この移動足場は、前記基点を中心として回動移動する。このように、走行輪の配置、向き、および走行速度を設定することで、この移動足場は、レールを用いなくとも確実に回動移動する。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係る移動足場、および移動足場の移動方法によれば、配置直線上に並ぶように配置した複数の走行輪の向く方向を、配置直線と直交する方向に保持するとともに、それら走行輪の走行速度を、配置直線上の基点からの距離に比例するように設定することで、この移動足場は、レールを用いることなく確実に回動移動する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明に係る、移動足場、および移動足場の移動方法を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1ないし図24は、本発明の一実施の形態を示す。図中符号1は、改修工事とか、補修(例えば、防水塗装)工事等の対象となる、構造物としての、上水、下水、雨水等のタンクであって、図示実施の形態においては、配水池とか貯水池とか調整池等の、例えば略円形状の外周面を備えた、タンクである。2は、前記タンク1の壁1aおよび屋根1bの内側の、改修あるいは補修等の工事に使用される移動足場であって、タンク1の底版1c上に組み立てられる。
【0016】
移動足場2は、図1および図2に示すように、台車部分20と足場部分30とからなる。すなわち、移動足場2は、足場部分30の他に、台車部分20として、動力によって走行する複数の走行輪20a、20aと、動力を有しない従動輪20h、20hとを備えて、レールを介すことなく直接走行面1e上を移動する。ここで、複数の走行輪20a、20aは、図4に示すように、一直線となる配置直線40上に並ぶように配置されている。そして、複数の走行輪20a、20aの向く方向は、前記配置直線40と直交する方向に保持可能となっている。さらに、走行輪20a、20aの走行速度は、前記配置直線40上の基点41からの距離に比例するように設定可能となっている。そこで、この移動足場2の移動方法は、複数の走行輪20a、20aを、一直線となる配置直線40上に並ぶように配置することを前提として、それら複数の走行輪20a、20aの向く方向を、前記配置直線40と直交する方向に保持し、かつ、それら走行輪20a、20aの走行速度を、前記配置直線40上の基点41からの距離に比例するように設定して、移動足場2を、前記基点41を中心として回動移動させるものである。詳細には、複数の走行輪20a、20aは、それぞれが別々の電動機20b、20bによって駆動する。そして、それら電動機20b、20bは、インバーター制御によりその回転数が制御されて、前記走行輪20a、20aの走行速度が得られるようになってる。
【0017】
図示実施の形態においては、走行輪20aと従動輪20hとは、足場部分30を構成する支柱3、3に対応するように、各支柱3、3の下方に設けられている。詳細には、走行輪20a、20aは、タンク1の周方向における中央の列の六本の支柱3、3に対応して設けられている。したがって、平面視において、それら中央の支柱3、3を結ぶ線が、前記配置直線40となる(図3、図4参照)。そして、走行輪20a、20aは、配置直線40と直交する方向、すなわち、タンク1の周方向を向いている。また、これら複数の走行輪20a、20aは、その直径が同一となっている。一方、従動輪20h、20hは、前記中央の列を挟む両サイドの列の、各6本の支柱3、3に対応して設けられている(図3、図4参照)。そこで、走行輪20a、20aにおいて、各走行輪20a、20aの間隔を、例えば3mとし、前記基点41を、タンク1の中心1dに一致させ、その基点41から、最も内側の走行輪20aまでの距離を3mとする。そして、インバーター制御により、各電動機20b、20bに送られる周波数を、内側の走行輪20aに対応する電動機20bから順に、13Hz、26Hz、39Hz、52Hz、65Hz、78Hzとする。こうして、電動機20bおよびその電動機20bによって駆動する走行輪20aは、配置直線40上の基点41からの距離に比例する回転数で回転する。その結果、走行輪20aの走行速度は、配置直線40上の基点41からの距離に比例する。
【0018】
また、複数の走行輪20a、20aの向く方向は、前記配置直線40と直交する方向の他に、共通する任意の方向に保持可能であり、かつ、複数の走行輪20a、20aの走行速度は、共通する一定の速度に設定可能となっている。具体的には、図5ないし図8に示すように、走行輪20aは、リンク機構により、二つ以上(図示実施の形態においては六つ)が同時に、その方向を変更可能となっている。ここで、図5は、台車部分20を示す正面図、図6は、その平面図、図7は、その拡大側面図である。また、図8は、図6に対して、走行輪20aの方向を90°変更した状態を示している。すなわち、台車部分20は、走行輪20aおよび電動機20bが備わる走行体20cと、各走行体20cを、ピン20d、20dを介して繋げる、例えばL型の二本のバー材20e、20eと、それら二本のバー材20e、20eを相対移動させる方向変更用のジャッキ20fとを備える。こうして、二本のバー材20e、20eおよび走行体20c、20cがリンクを構成し、ジャッキ20fによって、走行輪20a、20aの方向が変更されるようになっている。そして、走行体20cの上部には、この移動足場2のレベル出しとか高さを微調整するための調整用のジャッキ20gが回動可能に取り付けられる。そこで、このジャッキ20gを介して、支柱材5は、走行体20cに取り付けられる。なお、図中、符号20iは、台車部分20の骨組みを形成するフレーム材である。
【0019】
図9は、従動輪20hを示しており、この従動輪20hは、移動足場2の動きに追従してその向きを変えるキャスター20jによって形成されている。すなわち、従動輪20hは、キャスター20jの方向変更用の軸心20k回りに回動自在であって、かつ、従動輪20hの回転軸20mは、前記軸心20kに対してオフセットした位置にある。
【0020】
ところで、この移動足場2の足場部分30は、図1および図2に示すように、複数の支柱3、3と、それら支柱3、3(支柱3と他の支柱3)を連結する複数の連結材4、4を備える。そこで、支柱3を構成する支柱材5は、筒状に形成された第1部材5aと、筒状に形成されて第1部材5aから連続して延びるようにその第1部材5a内から引き出される第2部材5bと、その第2部材5bから連続して延びるようにその第2部材5b内から引き出される第3部材5cとを、備えて、伸縮可能に形成されている。
【0021】
詳細には、図10および図11に示すように、支柱材5における第2部材5bは、一対設けられており、その一対の第2部材5b、5bにおける一方の第2部材5bは、第1部材5aから上方に連続して延びるようにその第1部材5a内から上方に引き出される。そして、一対の第2部材5b、5bにおける他方の第2部材5bは、第1部材5aから下方に連続して延びるようにその第1部材5a内から下方に引き出される。また、支柱材5における第3部材5cもまた、一対設けられており、その一対の第3部材5c、5cにおける一方の第3部材5cは、一方の第2部材5bから上方に連続して延びるようにその一方の第2部材5b内から上方に引き出される。そして、一対の第3部材5c、5cにおける他方の第3部材5cは、他方の第2部材5bから下方に連続して延びるようにその他方の第2部材5b内から下方に引き出される。なお、図示実施の形態においては、第1ないし第3部材5a、5b、5cは、全て、角パイプからなる。そして、これら第1ないし第3部材5a、5b、5cは、例えばアルミ材からなっている。
【0022】
ここで、一対の第2部材5b、5bは、第1部材5a内に収容されているとき、一方の第2部材5bと他方の第2部材5bとの基端部が、対向位置する。同様にして、一対の第3部材5c、5cは、第1部材5a内に収容された第2部材5b、5b内に収容されているとき、一方の第3部材5cと他方の第3部材5cとの基端部が、対向位置するようになっている。
【0023】
また、支柱材5は、第1部材5aから第2部材5bを引き出したとき、その第2部材5bを第1部材5aに固定する、第1の固定手段6を備えている。具体的には、この第1の固定手段6は、図15に示すように、第1部材5aに明けられた孔6aと、第2部材5bに明けられた孔6bと、これらの孔6a、6bに挿入されるボルト6cと、そのボルト6cに螺合するナット6dとからなる。同様にして、支柱材5は、第2部材5bから第3部材5cを引き出したとき、その第3部材5cを第2部材5bに固定する、第2の固定手段を備えている。ところで、前記第1の固定手段6は、例えば、第1部材5aの孔6aまたは/および第2部材5bの孔6bを、第1部材5aあるいは第2部材5bの長手方向に複数設けて(図示せず)、ボルト6cが挿入されるところの、第1部材5aの孔6aと第2部材5bの孔6bとを合わせるようにして、第1部材5aからの第2部材5bの引き出し位置を調整して、その第2部材5bを第1部材5aに固定する、第1の調整固定手段8となっている。同様にして、第2の固定手段は、第2部材5bからの第3部材5cの引き出し位置を調整して、その第3部材5cを第2部材5bに固定する、第2の調整固定手段となっている。
【0024】
そして、第1部材5aと第2部材5bとの間には、第2部材5bが第1部材5aから抜け出るのを阻止する、第1の抜止め手段10が設けられている。具体的には、この第1の抜止め手段10は、図16に示すように、第1部材5aに溶接等により固定された取付板10aと、その取付板10aに、例えばボルト10bおよびナット10cを用いて着脱可能に取り付けられるストッパー部材10dと、第2部材5bに溶接等により固定されて、前記ストッパー部材10dに内側から当接する被ストッパー部材10eとからなる。同様にして、第2部材5bと第3部材5cとの間には、第3部材5cが第2部材5bから抜け出るの阻止する、第2の抜止め手段が設けられている。
【0025】
また、図12および図15に示すように、第1部材5aには、前記複数の連結材4、4における適宜の連結材4を接続するための第1接続具12、12が固着されている。この第1接続具12は、図示実施の形態においては、第1部材5aの各端部および中間部に設けられている。そして、図13に示すように、第2部材5bの先端部には、前記複数の連結材4、4における適宜の連結材4(他の連結材4)を接続するための第2接続具13が固着されている。同様に、図14および図17に示すように、第3部材5cの先端部には、前記複数の連結材4、4における適宜の連結材4を接続するための第3接続具14が固着されている。ここで、第1部材5aの各端部に設けられた第1接続具12、第2部材5bに設けられた第2接続具13、および第3部材5cに設けられた第3接続具14は、垂直板16と水平板17とにより構成されている。そして、第1部材5aの中間部に設けられた第1接続具12は、垂直板16のみにより構成されている。そして、垂直板16には、前記連結材4としての、横継ぎ材4aおよび側面ブレース4bが接続され、水平板17には、平面ブレース4cが接続される(図15、図17参照)。
【0026】
そして、支柱材5の端部(図示実施の形態においては、第3部材5cの先端部)には、支柱3を構成する継足し支柱材18を接続可能とする端部接続具19が固着されている。ここで、この端部接続具19の一例を、支柱材5の上端部側を例に説明すると、図17に示すように、端部接続具19は、第3部材5cの端部(上端部)に溶接等によって固着された取付板19aを有する。一方。継足し支柱材18には、その端部(基端部)に、例えば、フランジ状の被取付板19bと、補強板19c、19cとが、例えば溶接等により固着されて、設けられている。そして、被取付板19bと、取付板19aとが、例えばボルト19dおよびナット19eを用いて着脱可能に取り付けられる。こうして、継足し支柱材18は、端部接続具19を介して、支柱材5に接続される。
【0027】
次に、足場部分30の組立て方法を、図18ないし図24、並びに図1に基づいて説明する。この組立て方法は、始めに、図18および図19に示すように、支柱材5の複数本を伸ばされていない状態で、少なくとも第1部材5a部分にて、連結材4を用いて連結する。図示実施の形態においては、左右に二本、前後に三本の、計六本の支柱材5、5を、伸ばされていない状態で、第1ないし第3部材5a、5b、5c部分にて、連結材4としての横継ぎ材4aおよび平面ブレース4cを用いて適宜連結する。そして、第1部材5a部分では、さらに側面ブレース4bを用いて連結する。
【0028】
そこで、各支持材5に吊上げ装置21を取り付ける。この吊上げ装置21は、棹材としてのパイプ21aとウインチ21bとから構成されている。この吊上げ装置21の取付けにあたっては、図18に示すように、パイプ21aの下端を、第1部材5aの上端(詳細には第1接続具12)に固定し、ウインチ21bを下側の第3部材5cの下端(詳細には、第3接続具14)に取り付ける。そして、ウインチ21bのワイヤ21cをパイプ21aの上端の滑車21dを経てその下方に位置する上側の第3部材5cの上端(詳細には第3接続具14)に取り付ける。そこで、図20に示すように、各ウインチ21bによりワイヤ21cを巻き上げることで、上側の第3部材5cを引き伸ばす。そして、これら第3部材5c、5cを側面ブレース4bを用いてさらに連結する。
【0029】
次いで、図21に示すように、ワイヤ21cを上側の第2部材5bの上端(詳細には第2接続具13)に付け直し、同様にしてワイヤ21cを巻き上げることで、上側の第2部材5bを引き伸ばす。そして、これら第2部材5b、5bを側面ブレース4bを用いてさらに連結する。その後、図22に示すように、パイプ21aの下端を下側の第3部材5cの下端(詳細には、第3接続具14)に付け直すともに、ワイヤ21cを第1部材5aの下端(詳細には第1接続具12)に付け直し、同様にしてワイヤ21cを巻き上げることで、下側の第2部材5bを引き伸ばす。そして、これら第2部材5b、5bを側面ブレース4bを用いてさらに連結する。次に、図23に示すように、ワイヤ21cを下側の第2部材5bの下端(詳細には第2接続具13)に付け直し、同様にしてワイヤ21cを巻き上げることで、下側の第3部材5cを引き伸ばす。そして、これら第3部材5c、5cを側面ブレース4bを用いてさらに連結する。
【0030】
ここにおいて、支柱3の必要な高さに応じて、前記支柱材5に、継足し支柱材18を接続し、その継足し支柱材18、18同士とか、継足し支柱材18と支柱材5とを、連結材4を用いて連結する。そして、この継足し支柱材18においても、支柱材5の場合と同様に、吊上げ装置21を用いて、引き伸ばすことができる。こうして、複数本(図示実施の形態においては六本)の支柱3、3をユニット30aとし、そのユニット30aを複数ユニット(図示実施の形態においては三ユニット)組立てる(図24参照)。そして、各ユニット30aを連結材4を用いて連結し、梯子22、階段23、作業床24、手摺25、さらには、タンク1の壁1aに近づくための張出し部26を適宜組み付ける(図1参照)。ここで、必要な場合には、これらユニット30a、30aと、単体の伸ばされた支柱3とを、連結材4を用いて連結する。
【0031】
次に、以上の構成からなる移動足場2、および移動足場2の移動方法の作用効果について説明する。この移動足場2において、配置直線40上に並ぶように配置した複数の走行輪20a、20aの向く方向を、配置直線40と直交する方向に保持するとともに、それら走行輪20a、20aの走行速度を、配置直線40上の基点41からの距離に比例するように設定することで、この移動足場2は、前記基点41(図示実施の形態においては、タンク1の中心1d)を中心として回動移動する。すなわち、走行輪20a、20aの配置、向き、および走行速度を設定することで、この移動足場2は、レールを用いなくとも確実に回動移動することとなる。こうして、特に、円形タンク1のような円形構造物において、この移動足場2を用いることで、補修とか改修等の作業を効率よく行なうことができる。ここにおいて、従動輪20hは、キャスター20jによって形成されており、このキャスター20jが、移動足場2の動きに追従してその向きを変えることから、この移動足場2の回動移動が円滑に行なわれる。
【0032】
また、この移動足場2においては、複数の走行輪20a、20aの向く方向を、共通する方向に保持し、複数の走行輪20a、20aの走行速度を、共通する一定の速度とすることで、この移動足場2を、それら走行輪20a、20aの向く方向に、並進移動(つまり、回動を伴わない移動)させることができる。このように、この移動足場2は、回動移動だけでなく、並進移動もするため、汎用性の高い足場となる。すなわち、例えば、タンク1の中央部分を除く屋根1bおよび壁1aの作業を回動移動することで行ない、屋根1bの中央部分の作業を並進移動することで行ない、こうして、タンク1全体の作業を余すところなく行なうことができる。また、移動足場2が、回動移動する途中に障害物があった場合には、並進移動することでその障害物を避けることができる。
【0033】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。例えば、この移動足場2は、タンク1の内側の工事に使用されるものでなくとも、外側の工事に使用されるものであってもよい。さらに、移動足場2は、タンク1の改修工事とか補修工事に用いられるものでなくとも、タンク1の建設に用いられるものであってもよい。そして、構造物は、タンク1に限定されることはなく、橋、建物等、その他の構造物であってもよい。
【0034】
また、各走行輪20aの走行速度の設定、ひいては移動足場2の回動移動する回動半径の設定にあたって、作業者が、制御装置に、インバーター制御における所要の周波数を直接入力してもよく、また、作業者は、制御装置において、回動半径を入力あるいは選択し、それに対応する周波数を、制御装置自身が割り出すようにしてもよい。
【0035】
また、走行輪20aを駆動させる電動機20bは、インバーター制御によりその回転数が制御されるが、この電動機20bは、インバーターモーターの他に、三相誘導モーター等であってもよい。さらには、電動機20bは、インバーター制御以外の方法で、その回転数が制御されてもよい。もっとも、走行輪20aを駆動させるには、電動機20bを用いなくとも、油圧モーター等、その他の駆動源を用いてもよい。
【0036】
また、走行輪20a、20aは、配置直線40上に並ぶように六つ設けられているが、これら走行輪20a、20aの内のいくつかを、従動輪20hに替えても構わない。また、この配置直線40は、移動足場2の中心線と一致するように設けられているが、この中心線とは異なる位置に設けられてもよい。また、基点41は、移動足場2の外側に設けられているが、内側に設けられても構わない。
【0037】
また、支柱3を構成する支柱材5は、第1部材5aの他に、第2部材5bと第3部材5cとが、それぞれ一対設けられて、それらが上方と下方とに引き出されるが、第2部材5bと第3部材5cとが、それぞれ一つ設けられて、上方または下方の一方にのみ引き出されてもよい。また、このように、支柱材5は、第1部材5aと第2部材5bと第3部材5cとを備えて、伸縮可能に形成されているが、第3部材5cを備えることなく、第1部材5aと第2部材5bとで伸縮可能に形成されてもよい。また、反対に、支柱材5は、第1ないし第3部材5a、5b、5cに加えて、第3部材5cからさらに連続して延びるようにその第3部材5c内から引き出される第4部材等を備えて、伸縮可能に形成されてもよい。
【0038】
また、支柱3は、伸縮可能な支柱材5を備えなくとも、例えば、伸縮しない支柱材が継ぎ足されて支柱を構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の一実施の形態の、正面図である。
【図2】同じく、拡大側面図である。
【図3】同じく、拡大平面図である。
【図4】台車部分を示す平面図である。
【図5】台車部分の要部を示す正面図である。
【図6】台車部分の要部を示す平面図である。
【図7】台車部分の走行輪を示す拡大側面図である。
【図8】台車部分における走行輪の方向を90°変更した状態を示す平面図である。
【図9】台車部分の従動輪を示す拡大側面図である。
【図10】伸ばされる前の支柱材を示す正面図である。
【図11】伸ばされた後の支柱材を示す正面図である。
【図12】第1部材を示す図であって、(イ)は、正面図、(ロ)は、側面図である。
【図13】第2部材を示す図であって、(イ)は、正面図、(ロ)は、側面図である。
【図14】第3部材を示す図であって、(イ)は、正面図、(ロ)は、側面図である。
【図15】第1部材と第2部材との接続部分を示す正面図である。
【図16】第1部材と第2部材との接続部分を示す縦断面図である。
【図17】支柱材と継足し支柱材との接続部分を示す正面図である。
【図18】足場部分の組立て方法を説明するための、第1段階の図である。
【図19】図18におけるA矢視図である。
【図20】足場部分の組立て方法を説明するための、第2段階の図である。
【図21】足場部分の組立て方法を説明するための、第3段階の図である。
【図22】足場部分の組立て方法を説明するための、第4段階の図である。
【図23】足場部分の組立て方法を説明するための、第5段階の図である。
【図24】足場部分の組立て方法を説明するための、第6段階の図である。
【符号の説明】
【0040】
1e 走行面
2 移動足場
20a 走行輪
20b 電動機
20h 従動輪
20j キャスター
40 配置直線
41 基点
【技術分野】
【0001】
この発明は、走行面上を移動する移動足場、特に、基点を中心として回動移動する移動足場、およびその移動足場の移動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基点を中心として回動移動する移動足場として、例えば、各車輪に電動機を用いた移動足場があった(例えば、特許文献1参照)。この移動足場は、四本の脚部材の下端部に、車輪を備え、それら車輪ごとに電動機が設けられていた。そして、前記車輪が、床面に敷設された同心状の二本のレール上を転動することで、この移動足場は、レール上を走行するようになっていた。
【0003】
【特許文献1】特開平10−46800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来の移動足場においては、移動足場を回動移動させるために、レールが必要であった。このため、この移動足場は、その配備が厄介であったり、また、汎用性に乏しかった。
【0005】
この発明は、上記した従来の欠点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、レールを用いることなく確実に回動移動する、移動足場、および移動足場の移動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る移動足場、および移動足場の移動方法は、前記目的を達成するために、次の構成からなる。すなわち、
請求項1に記載の発明に係る移動足場は、動力によって走行する複数の走行輪と、動力を有しない従動輪とを備えて、レールを介すことなく直接走行面上を移動する移動足場である。この移動足場は、前記複数の走行輪が、一直線となる配置直線上に並ぶように配置される。そして、前記複数の走行輪の向く方向は、前記配置直線と直交する方向に保持され、あるいは保持可能となっており、かつ、それら走行輪の走行速度は、前記配置直線上の基点からの距離に比例するように設定され、あるいは設定可能となっている。
【0007】
こうして、配置直線上に並ぶように配置した複数の走行輪の向く方向を、配置直線と直交する方向に保持するとともに、それら走行輪の走行速度を、配置直線上の基点からの距離に比例するように設定することで、この移動足場は、前記基点を中心として回動移動する。このように、走行輪の配置、向き、および走行速度を設定することで、この移動足場は、レールを用いなくとも確実に回動移動する。
【0008】
また、請求項2に記載の発明に係る移動足場のように、請求項1に記載の移動足場において、前記従動輪は、前記移動足場の動きに追従してその向きを変えるキャスターによって形成されるのが望ましい。こうして、従動輪を形成するキャスターが、移動足場の動きに追従してその向きを変えることから、この移動足場の回動移動が円滑に行なわれる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明に係る移動足場のように、請求項2に記載の移動足場において、前記複数の走行輪の向く方向は、前記配置直線と直交する方向の他に、共通する任意の方向に保持可能であり、かつ、前記複数の走行輪の走行速度は、共通する一定の速度に設定可能となっていてもよい。こうして、複数の走行輪の向く方向を、共通する方向に保持し、複数の走行輪の走行速度を、共通する一定の速度とすることで、この移動足場を、その走行輪の向く方向に、並進移動させることができる。
【0010】
また、請求項4に記載の発明に係る移動足場のように、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の移動足場において、前記複数の走行輪は、それぞれが別々の電動機によって駆動し、それら電動機は、インバーター制御によりその回転数が制御されて、前記走行輪の走行速度が得られてもよい。
【0011】
また、請求項5に記載の発明に係る移動足場の移動方法は、動力によって走行する複数の走行輪と、動力を有しない従動輪とを備えて、レールを介すことなく直接走行面上を移動する移動足場の、移動方法である。この移動足場の移動方法は、前記複数の走行輪を、一直線となる配置直線上に並ぶように配置し、前記複数の走行輪の向く方向を、前記配置直線と直交する方向に保持し、かつ、それら走行輪の走行速度を、前記配置直線上の基点からの距離に比例するように設定して、前記移動足場を、前記基点を中心として回動移動させるものである。
【0012】
こうして、配置直線上に並ぶように配置した複数の走行輪の向く方向を、配置直線と直交する方向に保持するとともに、それら走行輪の走行速度を、配置直線上の基点からの距離に比例するように設定することで、この移動足場は、前記基点を中心として回動移動する。このように、走行輪の配置、向き、および走行速度を設定することで、この移動足場は、レールを用いなくとも確実に回動移動する。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係る移動足場、および移動足場の移動方法によれば、配置直線上に並ぶように配置した複数の走行輪の向く方向を、配置直線と直交する方向に保持するとともに、それら走行輪の走行速度を、配置直線上の基点からの距離に比例するように設定することで、この移動足場は、レールを用いることなく確実に回動移動する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明に係る、移動足場、および移動足場の移動方法を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1ないし図24は、本発明の一実施の形態を示す。図中符号1は、改修工事とか、補修(例えば、防水塗装)工事等の対象となる、構造物としての、上水、下水、雨水等のタンクであって、図示実施の形態においては、配水池とか貯水池とか調整池等の、例えば略円形状の外周面を備えた、タンクである。2は、前記タンク1の壁1aおよび屋根1bの内側の、改修あるいは補修等の工事に使用される移動足場であって、タンク1の底版1c上に組み立てられる。
【0016】
移動足場2は、図1および図2に示すように、台車部分20と足場部分30とからなる。すなわち、移動足場2は、足場部分30の他に、台車部分20として、動力によって走行する複数の走行輪20a、20aと、動力を有しない従動輪20h、20hとを備えて、レールを介すことなく直接走行面1e上を移動する。ここで、複数の走行輪20a、20aは、図4に示すように、一直線となる配置直線40上に並ぶように配置されている。そして、複数の走行輪20a、20aの向く方向は、前記配置直線40と直交する方向に保持可能となっている。さらに、走行輪20a、20aの走行速度は、前記配置直線40上の基点41からの距離に比例するように設定可能となっている。そこで、この移動足場2の移動方法は、複数の走行輪20a、20aを、一直線となる配置直線40上に並ぶように配置することを前提として、それら複数の走行輪20a、20aの向く方向を、前記配置直線40と直交する方向に保持し、かつ、それら走行輪20a、20aの走行速度を、前記配置直線40上の基点41からの距離に比例するように設定して、移動足場2を、前記基点41を中心として回動移動させるものである。詳細には、複数の走行輪20a、20aは、それぞれが別々の電動機20b、20bによって駆動する。そして、それら電動機20b、20bは、インバーター制御によりその回転数が制御されて、前記走行輪20a、20aの走行速度が得られるようになってる。
【0017】
図示実施の形態においては、走行輪20aと従動輪20hとは、足場部分30を構成する支柱3、3に対応するように、各支柱3、3の下方に設けられている。詳細には、走行輪20a、20aは、タンク1の周方向における中央の列の六本の支柱3、3に対応して設けられている。したがって、平面視において、それら中央の支柱3、3を結ぶ線が、前記配置直線40となる(図3、図4参照)。そして、走行輪20a、20aは、配置直線40と直交する方向、すなわち、タンク1の周方向を向いている。また、これら複数の走行輪20a、20aは、その直径が同一となっている。一方、従動輪20h、20hは、前記中央の列を挟む両サイドの列の、各6本の支柱3、3に対応して設けられている(図3、図4参照)。そこで、走行輪20a、20aにおいて、各走行輪20a、20aの間隔を、例えば3mとし、前記基点41を、タンク1の中心1dに一致させ、その基点41から、最も内側の走行輪20aまでの距離を3mとする。そして、インバーター制御により、各電動機20b、20bに送られる周波数を、内側の走行輪20aに対応する電動機20bから順に、13Hz、26Hz、39Hz、52Hz、65Hz、78Hzとする。こうして、電動機20bおよびその電動機20bによって駆動する走行輪20aは、配置直線40上の基点41からの距離に比例する回転数で回転する。その結果、走行輪20aの走行速度は、配置直線40上の基点41からの距離に比例する。
【0018】
また、複数の走行輪20a、20aの向く方向は、前記配置直線40と直交する方向の他に、共通する任意の方向に保持可能であり、かつ、複数の走行輪20a、20aの走行速度は、共通する一定の速度に設定可能となっている。具体的には、図5ないし図8に示すように、走行輪20aは、リンク機構により、二つ以上(図示実施の形態においては六つ)が同時に、その方向を変更可能となっている。ここで、図5は、台車部分20を示す正面図、図6は、その平面図、図7は、その拡大側面図である。また、図8は、図6に対して、走行輪20aの方向を90°変更した状態を示している。すなわち、台車部分20は、走行輪20aおよび電動機20bが備わる走行体20cと、各走行体20cを、ピン20d、20dを介して繋げる、例えばL型の二本のバー材20e、20eと、それら二本のバー材20e、20eを相対移動させる方向変更用のジャッキ20fとを備える。こうして、二本のバー材20e、20eおよび走行体20c、20cがリンクを構成し、ジャッキ20fによって、走行輪20a、20aの方向が変更されるようになっている。そして、走行体20cの上部には、この移動足場2のレベル出しとか高さを微調整するための調整用のジャッキ20gが回動可能に取り付けられる。そこで、このジャッキ20gを介して、支柱材5は、走行体20cに取り付けられる。なお、図中、符号20iは、台車部分20の骨組みを形成するフレーム材である。
【0019】
図9は、従動輪20hを示しており、この従動輪20hは、移動足場2の動きに追従してその向きを変えるキャスター20jによって形成されている。すなわち、従動輪20hは、キャスター20jの方向変更用の軸心20k回りに回動自在であって、かつ、従動輪20hの回転軸20mは、前記軸心20kに対してオフセットした位置にある。
【0020】
ところで、この移動足場2の足場部分30は、図1および図2に示すように、複数の支柱3、3と、それら支柱3、3(支柱3と他の支柱3)を連結する複数の連結材4、4を備える。そこで、支柱3を構成する支柱材5は、筒状に形成された第1部材5aと、筒状に形成されて第1部材5aから連続して延びるようにその第1部材5a内から引き出される第2部材5bと、その第2部材5bから連続して延びるようにその第2部材5b内から引き出される第3部材5cとを、備えて、伸縮可能に形成されている。
【0021】
詳細には、図10および図11に示すように、支柱材5における第2部材5bは、一対設けられており、その一対の第2部材5b、5bにおける一方の第2部材5bは、第1部材5aから上方に連続して延びるようにその第1部材5a内から上方に引き出される。そして、一対の第2部材5b、5bにおける他方の第2部材5bは、第1部材5aから下方に連続して延びるようにその第1部材5a内から下方に引き出される。また、支柱材5における第3部材5cもまた、一対設けられており、その一対の第3部材5c、5cにおける一方の第3部材5cは、一方の第2部材5bから上方に連続して延びるようにその一方の第2部材5b内から上方に引き出される。そして、一対の第3部材5c、5cにおける他方の第3部材5cは、他方の第2部材5bから下方に連続して延びるようにその他方の第2部材5b内から下方に引き出される。なお、図示実施の形態においては、第1ないし第3部材5a、5b、5cは、全て、角パイプからなる。そして、これら第1ないし第3部材5a、5b、5cは、例えばアルミ材からなっている。
【0022】
ここで、一対の第2部材5b、5bは、第1部材5a内に収容されているとき、一方の第2部材5bと他方の第2部材5bとの基端部が、対向位置する。同様にして、一対の第3部材5c、5cは、第1部材5a内に収容された第2部材5b、5b内に収容されているとき、一方の第3部材5cと他方の第3部材5cとの基端部が、対向位置するようになっている。
【0023】
また、支柱材5は、第1部材5aから第2部材5bを引き出したとき、その第2部材5bを第1部材5aに固定する、第1の固定手段6を備えている。具体的には、この第1の固定手段6は、図15に示すように、第1部材5aに明けられた孔6aと、第2部材5bに明けられた孔6bと、これらの孔6a、6bに挿入されるボルト6cと、そのボルト6cに螺合するナット6dとからなる。同様にして、支柱材5は、第2部材5bから第3部材5cを引き出したとき、その第3部材5cを第2部材5bに固定する、第2の固定手段を備えている。ところで、前記第1の固定手段6は、例えば、第1部材5aの孔6aまたは/および第2部材5bの孔6bを、第1部材5aあるいは第2部材5bの長手方向に複数設けて(図示せず)、ボルト6cが挿入されるところの、第1部材5aの孔6aと第2部材5bの孔6bとを合わせるようにして、第1部材5aからの第2部材5bの引き出し位置を調整して、その第2部材5bを第1部材5aに固定する、第1の調整固定手段8となっている。同様にして、第2の固定手段は、第2部材5bからの第3部材5cの引き出し位置を調整して、その第3部材5cを第2部材5bに固定する、第2の調整固定手段となっている。
【0024】
そして、第1部材5aと第2部材5bとの間には、第2部材5bが第1部材5aから抜け出るのを阻止する、第1の抜止め手段10が設けられている。具体的には、この第1の抜止め手段10は、図16に示すように、第1部材5aに溶接等により固定された取付板10aと、その取付板10aに、例えばボルト10bおよびナット10cを用いて着脱可能に取り付けられるストッパー部材10dと、第2部材5bに溶接等により固定されて、前記ストッパー部材10dに内側から当接する被ストッパー部材10eとからなる。同様にして、第2部材5bと第3部材5cとの間には、第3部材5cが第2部材5bから抜け出るの阻止する、第2の抜止め手段が設けられている。
【0025】
また、図12および図15に示すように、第1部材5aには、前記複数の連結材4、4における適宜の連結材4を接続するための第1接続具12、12が固着されている。この第1接続具12は、図示実施の形態においては、第1部材5aの各端部および中間部に設けられている。そして、図13に示すように、第2部材5bの先端部には、前記複数の連結材4、4における適宜の連結材4(他の連結材4)を接続するための第2接続具13が固着されている。同様に、図14および図17に示すように、第3部材5cの先端部には、前記複数の連結材4、4における適宜の連結材4を接続するための第3接続具14が固着されている。ここで、第1部材5aの各端部に設けられた第1接続具12、第2部材5bに設けられた第2接続具13、および第3部材5cに設けられた第3接続具14は、垂直板16と水平板17とにより構成されている。そして、第1部材5aの中間部に設けられた第1接続具12は、垂直板16のみにより構成されている。そして、垂直板16には、前記連結材4としての、横継ぎ材4aおよび側面ブレース4bが接続され、水平板17には、平面ブレース4cが接続される(図15、図17参照)。
【0026】
そして、支柱材5の端部(図示実施の形態においては、第3部材5cの先端部)には、支柱3を構成する継足し支柱材18を接続可能とする端部接続具19が固着されている。ここで、この端部接続具19の一例を、支柱材5の上端部側を例に説明すると、図17に示すように、端部接続具19は、第3部材5cの端部(上端部)に溶接等によって固着された取付板19aを有する。一方。継足し支柱材18には、その端部(基端部)に、例えば、フランジ状の被取付板19bと、補強板19c、19cとが、例えば溶接等により固着されて、設けられている。そして、被取付板19bと、取付板19aとが、例えばボルト19dおよびナット19eを用いて着脱可能に取り付けられる。こうして、継足し支柱材18は、端部接続具19を介して、支柱材5に接続される。
【0027】
次に、足場部分30の組立て方法を、図18ないし図24、並びに図1に基づいて説明する。この組立て方法は、始めに、図18および図19に示すように、支柱材5の複数本を伸ばされていない状態で、少なくとも第1部材5a部分にて、連結材4を用いて連結する。図示実施の形態においては、左右に二本、前後に三本の、計六本の支柱材5、5を、伸ばされていない状態で、第1ないし第3部材5a、5b、5c部分にて、連結材4としての横継ぎ材4aおよび平面ブレース4cを用いて適宜連結する。そして、第1部材5a部分では、さらに側面ブレース4bを用いて連結する。
【0028】
そこで、各支持材5に吊上げ装置21を取り付ける。この吊上げ装置21は、棹材としてのパイプ21aとウインチ21bとから構成されている。この吊上げ装置21の取付けにあたっては、図18に示すように、パイプ21aの下端を、第1部材5aの上端(詳細には第1接続具12)に固定し、ウインチ21bを下側の第3部材5cの下端(詳細には、第3接続具14)に取り付ける。そして、ウインチ21bのワイヤ21cをパイプ21aの上端の滑車21dを経てその下方に位置する上側の第3部材5cの上端(詳細には第3接続具14)に取り付ける。そこで、図20に示すように、各ウインチ21bによりワイヤ21cを巻き上げることで、上側の第3部材5cを引き伸ばす。そして、これら第3部材5c、5cを側面ブレース4bを用いてさらに連結する。
【0029】
次いで、図21に示すように、ワイヤ21cを上側の第2部材5bの上端(詳細には第2接続具13)に付け直し、同様にしてワイヤ21cを巻き上げることで、上側の第2部材5bを引き伸ばす。そして、これら第2部材5b、5bを側面ブレース4bを用いてさらに連結する。その後、図22に示すように、パイプ21aの下端を下側の第3部材5cの下端(詳細には、第3接続具14)に付け直すともに、ワイヤ21cを第1部材5aの下端(詳細には第1接続具12)に付け直し、同様にしてワイヤ21cを巻き上げることで、下側の第2部材5bを引き伸ばす。そして、これら第2部材5b、5bを側面ブレース4bを用いてさらに連結する。次に、図23に示すように、ワイヤ21cを下側の第2部材5bの下端(詳細には第2接続具13)に付け直し、同様にしてワイヤ21cを巻き上げることで、下側の第3部材5cを引き伸ばす。そして、これら第3部材5c、5cを側面ブレース4bを用いてさらに連結する。
【0030】
ここにおいて、支柱3の必要な高さに応じて、前記支柱材5に、継足し支柱材18を接続し、その継足し支柱材18、18同士とか、継足し支柱材18と支柱材5とを、連結材4を用いて連結する。そして、この継足し支柱材18においても、支柱材5の場合と同様に、吊上げ装置21を用いて、引き伸ばすことができる。こうして、複数本(図示実施の形態においては六本)の支柱3、3をユニット30aとし、そのユニット30aを複数ユニット(図示実施の形態においては三ユニット)組立てる(図24参照)。そして、各ユニット30aを連結材4を用いて連結し、梯子22、階段23、作業床24、手摺25、さらには、タンク1の壁1aに近づくための張出し部26を適宜組み付ける(図1参照)。ここで、必要な場合には、これらユニット30a、30aと、単体の伸ばされた支柱3とを、連結材4を用いて連結する。
【0031】
次に、以上の構成からなる移動足場2、および移動足場2の移動方法の作用効果について説明する。この移動足場2において、配置直線40上に並ぶように配置した複数の走行輪20a、20aの向く方向を、配置直線40と直交する方向に保持するとともに、それら走行輪20a、20aの走行速度を、配置直線40上の基点41からの距離に比例するように設定することで、この移動足場2は、前記基点41(図示実施の形態においては、タンク1の中心1d)を中心として回動移動する。すなわち、走行輪20a、20aの配置、向き、および走行速度を設定することで、この移動足場2は、レールを用いなくとも確実に回動移動することとなる。こうして、特に、円形タンク1のような円形構造物において、この移動足場2を用いることで、補修とか改修等の作業を効率よく行なうことができる。ここにおいて、従動輪20hは、キャスター20jによって形成されており、このキャスター20jが、移動足場2の動きに追従してその向きを変えることから、この移動足場2の回動移動が円滑に行なわれる。
【0032】
また、この移動足場2においては、複数の走行輪20a、20aの向く方向を、共通する方向に保持し、複数の走行輪20a、20aの走行速度を、共通する一定の速度とすることで、この移動足場2を、それら走行輪20a、20aの向く方向に、並進移動(つまり、回動を伴わない移動)させることができる。このように、この移動足場2は、回動移動だけでなく、並進移動もするため、汎用性の高い足場となる。すなわち、例えば、タンク1の中央部分を除く屋根1bおよび壁1aの作業を回動移動することで行ない、屋根1bの中央部分の作業を並進移動することで行ない、こうして、タンク1全体の作業を余すところなく行なうことができる。また、移動足場2が、回動移動する途中に障害物があった場合には、並進移動することでその障害物を避けることができる。
【0033】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。例えば、この移動足場2は、タンク1の内側の工事に使用されるものでなくとも、外側の工事に使用されるものであってもよい。さらに、移動足場2は、タンク1の改修工事とか補修工事に用いられるものでなくとも、タンク1の建設に用いられるものであってもよい。そして、構造物は、タンク1に限定されることはなく、橋、建物等、その他の構造物であってもよい。
【0034】
また、各走行輪20aの走行速度の設定、ひいては移動足場2の回動移動する回動半径の設定にあたって、作業者が、制御装置に、インバーター制御における所要の周波数を直接入力してもよく、また、作業者は、制御装置において、回動半径を入力あるいは選択し、それに対応する周波数を、制御装置自身が割り出すようにしてもよい。
【0035】
また、走行輪20aを駆動させる電動機20bは、インバーター制御によりその回転数が制御されるが、この電動機20bは、インバーターモーターの他に、三相誘導モーター等であってもよい。さらには、電動機20bは、インバーター制御以外の方法で、その回転数が制御されてもよい。もっとも、走行輪20aを駆動させるには、電動機20bを用いなくとも、油圧モーター等、その他の駆動源を用いてもよい。
【0036】
また、走行輪20a、20aは、配置直線40上に並ぶように六つ設けられているが、これら走行輪20a、20aの内のいくつかを、従動輪20hに替えても構わない。また、この配置直線40は、移動足場2の中心線と一致するように設けられているが、この中心線とは異なる位置に設けられてもよい。また、基点41は、移動足場2の外側に設けられているが、内側に設けられても構わない。
【0037】
また、支柱3を構成する支柱材5は、第1部材5aの他に、第2部材5bと第3部材5cとが、それぞれ一対設けられて、それらが上方と下方とに引き出されるが、第2部材5bと第3部材5cとが、それぞれ一つ設けられて、上方または下方の一方にのみ引き出されてもよい。また、このように、支柱材5は、第1部材5aと第2部材5bと第3部材5cとを備えて、伸縮可能に形成されているが、第3部材5cを備えることなく、第1部材5aと第2部材5bとで伸縮可能に形成されてもよい。また、反対に、支柱材5は、第1ないし第3部材5a、5b、5cに加えて、第3部材5cからさらに連続して延びるようにその第3部材5c内から引き出される第4部材等を備えて、伸縮可能に形成されてもよい。
【0038】
また、支柱3は、伸縮可能な支柱材5を備えなくとも、例えば、伸縮しない支柱材が継ぎ足されて支柱を構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の一実施の形態の、正面図である。
【図2】同じく、拡大側面図である。
【図3】同じく、拡大平面図である。
【図4】台車部分を示す平面図である。
【図5】台車部分の要部を示す正面図である。
【図6】台車部分の要部を示す平面図である。
【図7】台車部分の走行輪を示す拡大側面図である。
【図8】台車部分における走行輪の方向を90°変更した状態を示す平面図である。
【図9】台車部分の従動輪を示す拡大側面図である。
【図10】伸ばされる前の支柱材を示す正面図である。
【図11】伸ばされた後の支柱材を示す正面図である。
【図12】第1部材を示す図であって、(イ)は、正面図、(ロ)は、側面図である。
【図13】第2部材を示す図であって、(イ)は、正面図、(ロ)は、側面図である。
【図14】第3部材を示す図であって、(イ)は、正面図、(ロ)は、側面図である。
【図15】第1部材と第2部材との接続部分を示す正面図である。
【図16】第1部材と第2部材との接続部分を示す縦断面図である。
【図17】支柱材と継足し支柱材との接続部分を示す正面図である。
【図18】足場部分の組立て方法を説明するための、第1段階の図である。
【図19】図18におけるA矢視図である。
【図20】足場部分の組立て方法を説明するための、第2段階の図である。
【図21】足場部分の組立て方法を説明するための、第3段階の図である。
【図22】足場部分の組立て方法を説明するための、第4段階の図である。
【図23】足場部分の組立て方法を説明するための、第5段階の図である。
【図24】足場部分の組立て方法を説明するための、第6段階の図である。
【符号の説明】
【0040】
1e 走行面
2 移動足場
20a 走行輪
20b 電動機
20h 従動輪
20j キャスター
40 配置直線
41 基点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力によって走行する複数の走行輪と、動力を有しない従動輪とを備えて、レールを介すことなく直接走行面上を移動する移動足場であって、
前記複数の走行輪は、一直線となる配置直線上に並ぶように配置され、
前記複数の走行輪の向く方向は、前記配置直線と直交する方向に保持され、あるいは保持可能となっており、かつ、それら走行輪の走行速度は、前記配置直線上の基点からの距離に比例するように設定され、あるいは設定可能となっていることを特徴とする移動足場。
【請求項2】
前記従動輪は、前記移動足場の動きに追従してその向きを変えるキャスターによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の移動足場。
【請求項3】
前記複数の走行輪の向く方向は、前記配置直線と直交する方向の他に、共通する任意の方向に保持可能であり、かつ、前記複数の走行輪の走行速度は、共通する一定の速度に設定可能となっていることを特徴とする請求項2に記載の移動足場。
【請求項4】
前記複数の走行輪は、それぞれが別々の電動機によって駆動し、それら電動機は、インバーター制御によりその回転数が制御されて、前記走行輪の走行速度が得られることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の移動足場。
【請求項5】
動力によって走行する複数の走行輪と、動力を有しない従動輪とを備えて、レールを介すことなく直接走行面上を移動する移動足場の、移動方法であって、
前記複数の走行輪を、一直線となる配置直線上に並ぶように配置し、
前記複数の走行輪の向く方向を、前記配置直線と直交する方向に保持し、かつ、それら走行輪の走行速度を、前記配置直線上の基点からの距離に比例するように設定して、前記移動足場を、前記基点を中心として回動移動させることを特徴とする、移動足場の移動方法。
【請求項1】
動力によって走行する複数の走行輪と、動力を有しない従動輪とを備えて、レールを介すことなく直接走行面上を移動する移動足場であって、
前記複数の走行輪は、一直線となる配置直線上に並ぶように配置され、
前記複数の走行輪の向く方向は、前記配置直線と直交する方向に保持され、あるいは保持可能となっており、かつ、それら走行輪の走行速度は、前記配置直線上の基点からの距離に比例するように設定され、あるいは設定可能となっていることを特徴とする移動足場。
【請求項2】
前記従動輪は、前記移動足場の動きに追従してその向きを変えるキャスターによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の移動足場。
【請求項3】
前記複数の走行輪の向く方向は、前記配置直線と直交する方向の他に、共通する任意の方向に保持可能であり、かつ、前記複数の走行輪の走行速度は、共通する一定の速度に設定可能となっていることを特徴とする請求項2に記載の移動足場。
【請求項4】
前記複数の走行輪は、それぞれが別々の電動機によって駆動し、それら電動機は、インバーター制御によりその回転数が制御されて、前記走行輪の走行速度が得られることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の移動足場。
【請求項5】
動力によって走行する複数の走行輪と、動力を有しない従動輪とを備えて、レールを介すことなく直接走行面上を移動する移動足場の、移動方法であって、
前記複数の走行輪を、一直線となる配置直線上に並ぶように配置し、
前記複数の走行輪の向く方向を、前記配置直線と直交する方向に保持し、かつ、それら走行輪の走行速度を、前記配置直線上の基点からの距離に比例するように設定して、前記移動足場を、前記基点を中心として回動移動させることを特徴とする、移動足場の移動方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2006−63695(P2006−63695A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−249103(P2004−249103)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(591121111)株式会社安部工業所 (38)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(591121111)株式会社安部工業所 (38)
【Fターム(参考)】
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