説明

移動通信システム、無線ネットワーク装置及び方法

【課題】無線端末(UE)が無線ネットワーク制御装置(RNC)に接続した後で再接続を要求した場合、ネットワーク側の処理負担を過剰に増やすことなく、そのRNC又は別のRNCへの再接続の成功率を向上させること。
【解決手段】RNCは、1つ以上の無線基地局(BTS)及びコアネットワーク(CN)に接続される。RNCは、UEの通信を制御する通信制御部と、UEとの間で信号が他のRNCを介して送受信されるように、他のRNCから信号を受信する及び他のRNCへ信号を送信する加入者線延長処理部とを有する。UEから送信された再接続要求信号が、他のRNCを介して受信された場合、そのRNC、他のRNC及びUEの間で通信経路の確立しているか否かを、通信制御部が判断する。通信経路の確立していることが確認されなかった場合、UEの通信の制御は、他のRNCで行われるべきことが、CNに通知される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に移動通信の技術分野に属し、特に無線端末からの再接続要求信号を処理する移動通信システム、無線ネットワーク装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IMT-2000システムでは、コアネットワーク(CN)、無線ネットワーク制御装置(RNC)、無線基地局(BTS)及び無線端末(UE)の間で通信経路が確立され、呼制御等の通信の制御はRNCで行われる。コアネットワーク(CN)に属する交換機の配下には1つ以上の無線ネットワーク制御装置(RNC)が所属する。無線ネットワーク制御装置(RNC)の配下には1つ以上の無線基地局(BTS)が所属する。各無線基地局(BTS)の電波の及ぶ範囲はセルと呼ばれる。無線端末(UE)はセル間及び/又はRNC間で必要に応じてハンドオーバを行う。
【0003】
RNC間のハンドオーバに関し、そのハンドオーバの回数を減らす観点から、加入者線延長方式と呼ばれる方法がある。この方式の場合、「或るRNC」の配下で個別チャネルを設定した無線端末が、「別のRNC」配下の地域に移動しても、無線端末の通信制御は、依然として「或るRNC」で行われ、「或るRNC」及び無線端末間でやりとりされる制御信号は「別のRNC」を経由して送受信される。この場合における「或るRNC」は、サービングRNC(Serving−RNC)と言及され、無線端末が最初に個別チャネルを接続した無線ネットワーク制御装置である。「別のRNC」は、ドリフトRNC(Drift−RNC)と言及され、サービングRNC及び無線端末の間で信号を中継する。このように加入者線延長方式では、無線端末は、1つ以上のRNCを経由してコアネットワーク(CN)と接続する。CDMA移動通信システムで加入者線延長を行うことについては、例えば特許文献1に記載されている。
【0004】
無線端末がドリフトRNC配下のセルにハンドオーバを要求する場合、サービング及びドリフトRNC間で所定のハンドオーバ処理が実行されなければならない。しかしながら、無線端末が高速で移動していた場合、サービングRNC及びドリフトRNC間における接続処理遅延に起因して、不都合が生じるおそれがある。例えば、サービングRNCから無線端末にハンドオーバを許可する指示が送信される前に、無線端末がドリフトRNC側のセルに移動してしまい、この場合、通信品質の劣化が懸念される。接続を維持できなくなりそうな程度に通信品質が劣化すると、再接続処理を行う必要が生じるが、この再接続処理も、ある程度の時間を要する。再接続処理自体が何とか成功したとしても、その接続は、(高速移動に起因して)無線端末の直近の状態を十分には反映していないので、再接続処理直後の状態では、無線端末と無線ネットワーク制御装置の間の通信品質は未だ安定していない。このため、再び再接続処理が必要になり、次々と再接続処理を招く悪循環が懸念され、最悪の場合、通信が切断してしまうことも懸念される。
【0005】
ところで、サービング及びドリフトRNC間の遅延を無くす観点からは、無線端末がサービングRNC以外のRNCの地域に移動するたびにサービングRNCを切り替えるSRNS リロケーション(SRNS−Relocation)方式がある。加入者線延長方式とは異なり、SRNSリロケーション方式の場合、無線端末の通信を制御するRNC(サービングRNC)は、無線端末の移動と共に切り替えられる。従って、サービングRNCを切り替える頻度は、加入者線延長方式の場合より多くなり、ネットワーク側の処理負担が増えてしまうことが懸念される。更に、サービングRNCを切り替える際、その切り替えの瞬間に通信が連続的でなくなることも懸念される。SRNSリロケーション方式については、例えば特許文献2に記載されている。
【特許文献1】特開2001−25046号公報
【特許文献2】特開2005−260435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、加入者線延長方式は、サービングRNCをなるべく切り替えないようにするので、通信は途切れにくい。このため、加入者線延長方式は音声パケット(VoIP)やリアルタイムデータの通信に適している。しかしながら、制御信号の通信経路上に複数のRNCが介在するので、制御信号の遅延が懸念される。この遅延は、再接続を処理する際に特に好ましくない。SRNSリロケーション方式では通信経路に介在するRNCは1つしかないので、加入者線延長方式で懸念されるような制御信号の遅延は理論上発生しない。しかしながら、無線端末がサービングRNCと異なるRNCの地域に入る度に、サービングRNCが切り替えられるので、切り替えの頻度が多くなり、ネットワーク側の処理負担が増えてしまうことが懸念される。
【0007】
本願の課題は、無線端末が無線ネットワーク制御装置(RNC)に接続した後で再接続を要求した場合、ネットワーク側の処理負担を過剰に増やすことなく、そのRNC又は別のRNCへの再接続の成功率を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態では、1つ以上の無線基地局及びコアネットワークに接続された無線ネットワーク制御装置が使用される。当該無線ネットワーク制御装置は、
無線端末の通信を制御する通信制御部と、
前記無線端末との間で信号が他の無線ネットワーク制御装置を介して送受信されるように、前記他の無線ネットワーク制御装置から信号を受信する及び前記他の無線ネットワーク制御装置へ信号を送信する加入者線延長処理部と、
を有し、前記無線端末から送信された再接続要求信号が、前記他の無線ネットワーク制御装置を介して受信された場合であって、当該無線ネットワーク制御装置、前記他の無線ネットワーク制御装置及び前記無線端末の間で通信経路の確立していることが、前記通信制御部で確認されなかった場合、
前記無線端末の通信の制御は、前記他の無線ネットワーク制御装置で行われるべきことが、前記コアネットワークに通知されるようにした無線ネットワーク制御装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、無線端末が無線ネットワーク制御装置(RNC)に接続した後で再接続を要求した場合、ネットワーク側の処理負担を過剰に増やすことなく、そのRNC又は別のRNCへの再接続の成功率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の一形態では、再接続処理を制御する無線ネットワーク制御装置(RNC)が使用される。RNCは通信制御部(又は無線端末情報管理部と言及されてもよい)を有し、無線端末から報告される再接続要求信号を分析し、無線端末が所定の地域に在圏するか否か、そして再接続が加入者線延長方式のハンドオーバの失敗に起因するものか否かを判断する。所定の地域は、例えば当該RNCの配下のセル群でもよいし、特定の交換機の配下のセル群でもよい。また、この場合におけるハンドオーバは、加入者線延長方式でのハンドオーバであり、即ち、サービングRNCを変更せずに、ドリフトRNCを適宜変更するハンドオーバを意味する。再接続要求信号の分析の結果、「所定の条件」が満たされなかった場合、RNCは、受信した再接続要求信号に応じて、加入者線延長方式による通信経路を再度確立する。「所定の条件」とは、例えば、無線端末が所定の地域以外に在圏していること、及び再接続の原因が加入者線延長方式のハンドオーバの失敗したことである。再接続要求信号の分析の結果、所定の条件が満たされていた場合、RNCは、受信した再接続要求信号に応じて、SRNSリロケーション方式による通信経路を確立する。
【0011】
上記の「所定の条件」は、無線端末が所定の地域以外に在圏していること、及び再接続の原因が加入者線延長方式のハンドオーバの失敗したことである。従ってこの「所定の条件」が満たされる回数は比較的少ない。「所定の条件」が満たされた場合に限ってSRNSリロケーション方式の再接続が行われるならば、ネットワーク側の処理負担は、従来懸念されていたほどには多くない。更に、「所定の条件」が満たされる状況では、通信品質はかなり悪いので、RNCの切り替えの瞬間に万一通信が連続していなかったとしても、それは許容範囲に収まることが予想される。むしろサービングRNCをより相応しいRNCに切り替えることで、以後の通信品質の向上を期待できる点で有利である。通常の多くの場合、「所定の条件」は満たされないので、その場合の再接続の処理は加入者線延長方式により行われる。この場合、所定の地域に在圏していればハンドオーバの必要はなく、所定の地域外であったとしてもハンドオーバ自体は成功しているので、加入者線延長方式による再接続を確実に行うことができる。
【0012】
本発明の一形態は、加入者線延長方式及びSRNSリロケーション方式による再接続処理を、各方式にふさわしい状況で行うように使い分けるので、無線端末がRNCに接続した後で再接続を要求した場合、ネットワーク側の処理負担を過剰に増やすことなく、そのRNC又は別のRNCへの再接続の成功率を向上させることができる。
【0013】
以下、本発明の実施例が次の観点から説明される。
【0014】
1.システム構成
2.無線ネットワーク制御装置(RNC)
3.動作説明
3.1 動作概要
3.2 加入者線延長方式
3.3 SRNSリロケーション方式
4.実施例による効果
【実施例1】
【0015】
1.システム構成
図1は、一実施例による移動通信システムを示す。図1には、無線端末10、無線基地局(BTS)20,21、無線ネットワーク制御装置(RNC)30,31、ネットワーク1が示されている。
【0016】
無線端末10(UE)は、携帯電話のような無線通信機能を備えた端末であり、移動局(MS)、移動端末、ユーザ装置(UE)等と言及されてもよい。
【0017】
無線基地局20,21(BTS)は、無線端末10との間で無線リンクを形成する。無線基地局は所定の地域内の無線端末10と無線通信を行い、その所定の地域はセルと言及される。図中、セルは200,201で示されている。
【0018】
無線ネットワーク制御装置30,31(RNC)は、1つ以上の無線基地局を制御し、無線端末の通信を制御する上位装置である。RNCについては、図2を参照しながら更に説明される。
【0019】
ネットワーク1(CN)はコアネットワークを一般的に表す。コアネットワークには、図示されていないが、回線交換機能部(MSC/GMSC)、パケット交換機能部(SGSN/GGSN)、ホームロケーションレジスタ(HLR)、ビジターロケーションレジスタ(VRL)等が含まれる。
【0020】
説明の便宜上、2つのセル、2つのRNCしか図示されていないが、これらの数値は説明の便宜上採用されているに過ぎず、適切な如何なる数が使用されてもよい。一般的には、CNの配下に1つ以上のRNCが接続され、RNCの配下に1つ以上のBTSが接続される。
【0021】
2.無線ネットワーク制御装置(RNC)
図2は、一実施例による無線ネットワーク制御装置(RNC)を示す。このRNCは図1のRNC30及び/又は31に使用されてよい。図2には、無線基地局インターフェース301、上位ノードインターフェース302、加入者線延長方式用の信号処理部303、SRNSリロケーション方式用の信号処理部304及び通信制御部305が示されている。
【0022】
無線基地局インターフェース301は、RNC配下の1つ以上の無線基地局(BTS)との通信に備えて信号を変換し、送受信する機能を有する。
【0023】
上位ノードインターフェース302は、コアネットワーク(CN)内のノード、機能要素又はエンティティとの通信に備えて信号を変換し、送受信する機能を有する。また、上位ノードインターフェース302は、他のRNCとの通信に備えて信号を変換し、送受信する機能も有する(例えば、RNC30,31間の通信である)。
【0024】
加入者線延長方式用の信号処理部303は、通信制御部305の制御下で、加入者線延長方式による通信経路を確立するための処理を行う。例えば、
RNCがサービングRNCの場合、加入者線延長方式用の信号処理部303は、
・配下の無線基地局を介して無線端末と通信する機能、
・ドリフトRNCとの間の有線回線の設定を指示する指示信号を作成し、ドリフトRNCに送信する機能、及び
・再接続を指示する無線端末宛の信号を作成し、ドリフトRNCに送信する機能等を有する。
【0025】
RNCがドリフトRNCの場合、加入者線延長方式用の信号処理部303は、
・サービングRNCからの指示信号を受信して有線回線の設定に応じる機能、及び
・サービングRNC及び無線端末間で制御信号を中継する機能等を有する。
【0026】
SRNSリロケーション方式用の信号処理部304は、通信制御部305の制御下で、SRNSリロケーション方式による通信経路を確立するための処理を行う。例えば、SRNSリロケーション方式の信号処理部304は、
・ある無線端末に対するサービングRNCが切り替えられるべきことを示すリロケーション要求信号を生成し、コアネットワーク(CN)に送信する機能、
・コアネットワーク(CN)からの指示に応じて、ある無線端末に対するサービングRNCとなる機能等を有する。
【0027】
通信制御部305は、RNC内の各要素の動作を制御する。通信制御部305は、無線端末からの又は無線端末への発着信の制御(呼制御)、セル間のハンドオーバ制御、再接続制御等を行う。通信制御部305は、無線端末の状態管理も行い、無線端末が通信しているセル、発着信の状態、再接続時の状態等を管理する。特に通信制御部305は、以下の動作説明で説明されるように、無線端末からの再接続要求信号を分析し、所定の判断基準に従って、再接続をどのように行うかを決定する。
【0028】
3.動作説明
以下、本発明の一実施例による動作例を説明する。一例として無線端末10は、IMT-2000方式により、無線アクセス装置(RAN)(無線ネットワーク制御装置30,31及び無線基地局20,21)との間で無線接続を確立することで、セル200,201内で通信できるものとする。説明の便宜上、無線端末10はセル200内で個別チャネルの無線接続を確立しているものとする。その後、無線端末10がセル201の地域に入る際は、加入者線延長方式のハンドオーバが行われる。無線端末10がRNC30の配下に在圏している場合は、加入者線延長方式のハンドオーバは行われない。加入者線延長方式のハンドオーバが行われた場合、コアネットワーク(CN)1、サービングRNC30、ドリフトRNC31、無線基地局(BTS)21及びセル201内の無線端末10の間で、制御信号の通信経路が確立する(図5参照)。ユーザのトラフィック信号については、コアネットワーク(CN)1、ドリフトRNC31、無線基地局(BTS)21及びセル201内の無線端末10の間で通信経路が確立することになる。
【0029】
3.1 動作概要
図3は、本発明の一実施例による動作例を示すフローチャートを示す。ステップS1では、サービングRNC30が、無線端末10からの再接続要求信号を受信する。無線端末10は定期的に又は不定期的に(必要に応じて)無線伝搬状況を測定している。無線伝搬状況が、再接続を必要とする程悪くなってきた場合、無線端末10は再接続要求信号をサービングRNC30に送信する。無線伝搬状況の良否は、無線端末10における信号の受信レベル、受信品質等で判断されてもよい。再接続要求信号の送信を引き起こすイベントは、無線伝搬状況だけでなく別の条件で起こってもよい。いずれにせよ、再接続要求信号が無線端末10から送信されると、無線基地局20を通じて又はドリフトRNC31を通じて、サービングRNC30は再接続要求信号を受信する。
【0030】
ステップS2では、サービングRNC30は、再接続要求信号を分析する。サービングRNCは、再接続要求信号を送信した無先端末10が、サービングRNC30配下の地域に在圏するか否かを判別する。判別法は当該技術分野で既知の適切な如何なる方法が使用されてもよい。例えば、第1のノードが信号を受信してそれを第2のノードに転送する場合、第1のノードは信号に自身の識別情報(ID)を付けて転送するとする。この場合、再接続要求信号が無線基地局20から到来したならば、再接続要求信号に無線基地局20のIDが付いている。再接続要求信号がドリフトRNC31から到来したならば、再接続要求信号にドリフトRNC31のIDが付いている。サービングRNC30は、転送されてきた再接続要求信号の転送元を確認することで、無線端末10の在圏する地域を判別できる。
【0031】
無線端末10が、サービングRNC30配下の地域以外の地域に在圏していた場合、フローはステップS3に進む。そうでなければ、即ち、無線端末10が、サービングRNC30配下の地域に在圏していた場合、フローはステップS4に進む。
【0032】
説明の簡明化を図るため、ステップS2では、無先端末10の在圏する地域が、サービングRNC30配下の地域であるか否かが判別されているが、このことは必須ではない。上述したように、或る交換機には1つ以上のRNCが所属し、別の交換機にも1つ以上の別のRNCが所属する。ステップS2において、無先端末10の在圏する地域が、或る交換機の配下の地域であるか否かが判別されてもよい。これは、同じ交換機に所属するRNC同士なら、制御信号のやりとりが比較的高速に実行できるような場合に有利である。より一般的には、無先端末10の在圏する地域が、所定の何らかの地域であるか否かが判別されてもよい。
【0033】
ステップS3では、加入者線延長方式によるハンドオーバが失敗しているか否かを、サービングRNC30が判別する。目下の例の場合、ステップS3に至る場合は、無線端末10がドリフトRNC30の配下に在圏している。従って、通信状態が良好ならば、加入者線延長方式によるハンドオーバが行われているはずである。加入者線延長方式のハンドオーバが失敗していなければ、フローはステップS4に進み、失敗していればフローはステップS5に進む。
【0034】
フローが図3のステップS3からS5に進む場合、加入者線延長方式のハンドオーバは失敗している。これは、個別制御チャネルについて、RNC30,31、BTS21及びUE10の間の通信経路を確立することに失敗していることを意味する。この場合、無線端末(UE)10からの再接続要求信号は、個別制御チャネルでなく共通制御チャネルで送信される。個別制御チャネルについての通信経路が確立されていた場合、再接続要求信号は、その個別制御チャネルで伝送されてもよいし、共通チャネルで伝送されてもよい。
【0035】
ハンドオーバが失敗しているか否かは、適切な如何なる判断基準で判定されてもよい。例えば、加入者線延長方式のハンドオーバが行われる場合、サービングRNCはドリフトRNCにその旨を指示し、最終的に無線端末にハンドオーバすべきことを指示する(混乱のおそれがなければ、その指示はハンドオーバコマンドと言及されてもよい)。無線端末がこの指示に応答することで、以後加入者線延長方式による通信経路で制御信号のやりとりが行われる(この応答も、混乱のおそれがなければ、ハンドオーバ完了信号と言及されてもよい)。そこで、そのようなハンドオーバ完了信号がサービングRNC30で受信されているか否かに基づいて、加入者線延長方式のハンドオーバの成否が判定されてもよい。或いは、サービングRNC及びドリフトRNC間の有線回線が適切に設定されているか否かに基づいて、加入者線延長方式のハンドオーバの成否が判定されてもよい。ステップS3において、加入者線延長方式のハンドオーバの成否が判定されるのは、典型例ではあるが必須事項ではない。再接続を行うに際して、SRNSリロケーション方式を行った方がよいか否かを判断することが、ステップS3の本質的な役割だからである。例えば、加入者線延長方式のハンドオーバ自体は成功しているが、再接続を要求する回数が比較的多かった場合や通信品質が悪かった等の場合に、フローがステップS3からS5に進んでもよい。
【0036】
3.2 加入者線延長方式
ステップS4では、加入者線延長方式により再接続が行われる。
【0037】
図4は、加入者線延長方式に基づいて再接続を行う場合の一般的なフローチャートを示す。このフローの手順のすべてが図3のステップS4で行われることは必須ではない。必要に応じて一部の手順が省略されてもよい。
【0038】
ステップS1では、サービングRNC30が、無線端末10から再接続要求信号を受信する。これは図3のステップS1に相当する。
【0039】
ステップS2では、サービングRNC30及びドリフトRNC31の間で有線回線が設定されるように、サービングRNC30がドリフトRNCに要求する。
【0040】
ステップS3では、ドリフトRNC31及びその配下の或る無線基地局21の間で有線回線が設定されるように、サービングRNC30が無線基地局21に要求する(ドリフトRNC31はそのような指示信号を中継する。)。
【0041】
ステップS4では、無線基地局21が無線端末10との間で無線リンクを設定する。
【0042】
ステップS5では、無線端末10がサービングRNC30宛に応答信号を送信する。この応答信号は、無線基地局21及びドリフトRNC31を経てサービングRNC30に至る。
【0043】
ステップS6では、サービングRNC30は、再接続指示信号を無線端末10宛に送信する。再接続指示信号は、ドリフトRNC31及び無線基地局21を経て無線端末10に至る。
【0044】
ステップS7では、無線端末10が再接続指示信号に応じて再接続を行う。これにより、無線端末10及びサービングRNC30間の同期が維持され、以後、制御信号がそれらの間でやりとりされる。
【0045】
なお、ステップS2,S3の有線回線や、ステップS4の無線リンクの確立していることが明らかであったならば、これらの処理は省略されてもよい。
【0046】
図5は、上記のようにして加入者線延長方式で通信経路が確立された様子を模式的に示す。
【0047】
上記の説明は、主に図3のステップS3からステップS4に至る場合を想定している。図3のステップS2からステップS4に至る場合、無線端末10は、サービングRNC30配下に在圏している。従って無線端末10は或る無線基地局20を介してサービングRNC30と制御信号のやりとりを行う。この場合の再接続は、次のようにして上記と同様に行われてよい。
【0048】
先ず図4のステップS3の代わりに、サービングRNC30及びその配下の或る無線基地局20の間で有線回線が設定されるように、サービングRNC30が無線基地局20に要求する。
【0049】
ステップS4の代わりに、無線基地局20が無線端末10との間で無線リンクを設定する。
【0050】
ステップS5の代わりに、無線端末10がサービングRNC30宛に応答信号を送信する。この応答信号は、無線基地局20を経てサービングRNC30に至る。
【0051】
ステップS6の代わりに、サービングRNC30は、再接続指示信号を無線端末10宛に送信する。再接続指示信号は無線基地局20を経て無線端末10に至る。
【0052】
ステップS7の代わりに、無線端末10が再接続指示信号に応じて再接続を行う。これにより、無線端末10及びサービングRNC30間の同期が維持され、以後、制御信号がそれらの間でやりとりされる。
【0053】
3.3 SRNSリロケーション方式
図3のステップS5では、SRNSリロケーション方式により再接続が行われる。
【0054】
図6は、SRNSリロケーション方式に基づいて再接続を行う場合の一般的なフローチャートを示す。図4のフロート同様に、このフローの手順のすべてが図3のステップS5で行われることは必須ではない。必要に応じて一部の手順が省略されてもよい。
【0055】
図6のステップS1では、切替前のRNC30が無線端末10からの再接続要求信号を受信する。これも図3のステップS1に相当する。但し、この再接続要求信号は、典型的には、共通制御チャネルとして伝送される。概して個別制御チャネル用の通信経路が確立していなかった場合、制御情報は、共通制御チャネルで伝送される。
【0056】
ステップS2では、切替前のRNC30が、リロケーション要求信号をコアネットワーク(CN)1に送信する。このリロケーション要求信号は、無線端末の通信を制御するRNCが、RNC30からRNC31に切り替えられるべきことを表す。コアネットワーク1は、具体的には、RNCの切り替えを制御する機能を有する交換機又はRNCより上位の制御ノードである。
【0057】
ステップS3では、コアネットワーク(CN)1が、RNC31にリロケーション指示信号を送信する。このリロケーション指示信号も、本質的には、無線端末の通信を制御するRNCが、RNC30からRNC31に切り替えられるべきことを表す。実際にはコアネットワーク(CN)1、RNC30,31の間でいくつもの処理手順が実行されるが、説明の簡明化を図るため、それらについては省略する。
【0058】
ステップS4では、RNC31及びその配下の或る無線基地局21の間で有線回線が設定されるように、サービングRNC31が無線基地局21に要求する。
【0059】
ステップS5では、無線基地局21が無線端末10との間で無線リンクを設定する。
【0060】
ステップS6では、無線端末が切替後のRNC31に応答信号を送信する。応答信号は、無線基地局21を経て切替後のRNC31に至る。
【0061】
ステップS7では、切替後のRNC30は、再接続指示信号を無線端末10宛に送信する。再接続指示信号は無線基地局21を経て無線端末10に至る。
【0062】
ステップS8では、無線端末10が再接続指示信号に応じて再接続を行う。これにより、無線端末10及びサービングRNC31間の同期が維持され、以後、制御信号がそれらの間でやりとりされる。切替前のRNC30を介する古い通信経路は適切な時点で解放される。
【0063】
図7はSRNSリロケーション方式でサービングRNCが切り替えられた後の様子を示す。
【0064】
なお、一般的には、RNCの切り替え前でも後でも無線端末は個別チャネルで通信を行う。しかしながら、SRNSリロケーション方式によるRNCの切り替え前に無線端末が個別チャネルで通信していた場合、RNCの切り替え後に無線端末が個別チャネルで通信することは必須ではない。RNCの切り替え後に無線端末が共通チャネルで通信してもよい。
【0065】
4.実施例による効果
本実施例によれば、(1)無線端末が所定の地域(例えば、サービングRNC配下の地域、サービングRNCの属する交換機配下の地域等)に在圏していた場合、及び(2)無線端末が所定の地域以外の地域に在圏していたとしても、サービングRNCを切り替えるべき状況ではなかった場合(典型的には、加入者線延長方式のハンドオーバ自体は成功していた場合)、再接続は加入者線延長方式で行われる。これらの状況は、再接続が要求される場合に、比較的多く発生することが予想される。サービングRNCを切り替える必要の無いこれらの状況では、無線端末は、さほど高速で移動してはいないことが予想される。従って、通信の途切れにくい加入者線延長方式を行うことで、再接続を確実に行うことができる。
【0066】
しかしながら、本実施例では、無線端末が所定の地域以外の地域に在圏し、且つサービングRNCを切り替えるべき状況であった場合(典型的には、加入者線延長方式のハンドオーバに失敗していた場合)、再接続はSRNSリロケーション方式で行われる。このような状況が発生する回数は比較的少ないことが予想される。従ってSRNSリロケーション方式が行われたとしても、ネットワーク側の負担が過剰に増えてしまうことにはならない。また、加入者線延長方式のハンドオーバに失敗しているような状況では、たとえ通信が瞬間的に不連続になったとしても、以後通信が良好に行われることが望ましい。SRNSリロケーション方式による再接続が、このような状況に限定して行われるならば、SRNSリロケーション方式のデメリットとして懸念された事項はいずれも目立たなくなる。むしろRNCの切り替え後に、より相応しいサービングRNCで通信が行われるので、SRNSリロケーション方式のメリットが大いに発揮される。従ってこの場合も再接続を確実に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、加入者線延長方式及びSRNSリロケーション方式を使用する適切な如何なる移動通信システムに適用されてもよい。例えば本発明は、HSDPA/HSUPA方式のW-CDMAシステム、LTE方式のシステム、IMT-Advancedシステム、WiMAX, Wi-Fi方式のシステム等と共に使用されてもよい。
【0068】
以上本発明は特定の実施例を参照しながら説明されてきたが、それらは単なる例示に過ぎず、当業者は様々な変形例、修正例、代替例、置換例等を理解するであろう。発明の理解を促すため具体的な数値例を用いて説明がなされたが、特に断りのない限り、それらの数値は単なる一例に過ぎず適切な如何なる値が使用されてもよい。実施例又は項目の区分けは本発明に本質的ではなく、2以上の実施例又は項目に記載された事項が必要に応じて組み合わせて使用されてよいし、或る実施例又は項目に記載された事項が、別の実施例又は項目に記載された事項に(矛盾しない限り)適用されてよい。説明の便宜上、本発明の実施例に係る装置は機能的なブロック図を用いて説明されたが、そのような装置はハードウエアで、ソフトウエアで又はそれらの組み合わせで実現されてもよい。本発明は上記実施例に限定されず、本発明の精神から逸脱することなく、様々な変形例、修正例、代替例、置換例等が本発明に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】一実施例による移動通信システムを示す図である。
【図2】一実施例による無線ネットワーク制御装置(RNC)を示す図である。
【図3】一実施例による再接続の処理例を示すフローチャートである。
【図4】加入者線延長方式による再接続の処理例を示すフローチャートである。
【図5】加入者線延長方式で通信経路が確立された様子を模式的に示す図である。
【図6】SRNSリロケーション方式による再接続の処理例を示すフローチャートである。
【図7】SRNSリロケーション方式で通信経路が切り替えられた様子を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1 ネットワーク
10 無線端末
20,21 無線基地局(BTS)
30,31 無線ネットワーク制御装置(RNC)
200,201 セル
301 無線基地局インターフェース
302 上位ノードインターフェース
303 加入者線延長方式用の信号処理部
304 SRNSリロケーション方式用の信号処理部
305 通信制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の無線基地局及びコアネットワークに接続された無線ネットワーク制御装置であって、
無線端末の通信を制御する通信制御部と、
前記無線端末との間で信号が他の無線ネットワーク制御装置を介して送受信されるように、前記他の無線ネットワーク制御装置から信号を受信する及び前記他の無線ネットワーク制御装置へ信号を送信する加入者線延長処理部と、
を有し、前記無線端末から送信された再接続要求信号が、前記他の無線ネットワーク制御装置を介して受信された場合であって、当該無線ネットワーク制御装置、前記他の無線ネットワーク制御装置及び前記無線端末の間で通信経路の確立していることが、前記通信制御部で確認されなかった場合、
前記無線端末の通信の制御は、前記他の無線ネットワーク制御装置で行われるべきことが、前記コアネットワークに通知されるようにした無線ネットワーク制御装置。
【請求項2】
前記通信経路の確立していることが確認された場合、前記加入者線延長処理部は、再接続を許可する信号を送信する
ようにした請求項1記載の無線ネットワーク制御装置。
【請求項3】
前記他の無線ネットワーク制御装置は、当該無線ネットワーク制御装置の所属する交換機とは別の交換機に所属する
ようにした請求項1記載の無線ネットワーク制御装置。
【請求項4】
前記再接続要求信号は共通制御チャネルとして伝送され、前記通信経路では個別制御チャネルが伝送される
ようにした請求項1記載の無線ネットワーク制御装置。
【請求項5】
1つ以上の無線基地局及びコアネットワークに接続された無線ネットワーク制御装置と、 他の1つ以上の無線基地局及び前記コアネットワークに接続された他の無線ネットワーク制御装置とを少なくとも含む移動通信システムであって、前記無線ネットワーク制御装置は、
無線端末の通信を制御する通信制御部と、
前記無線端末との間で信号が他の無線ネットワーク制御装置を介して送受信されるように、前記他の無線ネットワーク制御装置から信号を受信する及び前記他の無線ネットワーク制御装置へ信号を送信する加入者線延長処理部と、
を有し、前記無線端末から送信された再接続要求信号が、前記他の無線ネットワーク制御装置を介して受信された場合であって、当該無線ネットワーク制御装置、前記他の無線ネットワーク制御装置及び前記無線端末の間で通信経路の確立していることが、前記通信制御部で確認されなかった場合、
前記無線端末の通信の制御は、前記他の無線ネットワーク制御装置で行われるべきことが、前記コアネットワークに通知されるようにした移動通信システム。
【請求項6】
1つ以上の無線基地局及びコアネットワークに接続された無線ネットワーク制御装置と、 他の1つ以上の無線基地局及び前記コアネットワークに接続された他の無線ネットワーク制御装置とを少なくとも含む移動通信システムで使用される方法であって、
前記無線ネットワーク制御装置が、無線端末から送信された再接続要求信号を、無線基地局又は前記他の無線ネットワーク制御装置から受信するステップと、
前記無線端末から送信された前記再接続要求信号が、前記他の無線ネットワーク制御装置を介して受信された場合、前記無線ネットワーク制御装置、前記他の無線ネットワーク制御装置及び前記無線端末の間で通信経路が確立しているか否かを、前記無線ネットワーク制御装置が判断するステップと、
前記通信経路の確立していることが確認されなかった場合、前記無線端末の通信の制御は、前記他の無線ネットワーク制御装置で行われるべきことを、前記無線ネットワーク制御装置が前記コアネットワークに通知するステップと、
を有する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−68451(P2010−68451A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235373(P2008−235373)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】