移動通信システム及びそのリモート無線ユニットクラスタリング方法
【課題】柔軟性が高く、無線リソースを節約できる、複数基地局協調サービスを支持する移動通信システムおよびそのリモート無線ユニットクラスタリング方法を提供する。
【解決手段】本発明の移動通信システムは、端末に信号を送信する、アンテナネットワークを構成する複数のリモート無線ユニットと前記アンテナネットワークに接続されている集中ベースバンドプールとを有し、前記集中ベースバンドプールは、複数のクラスタのそれぞれに含まれているリモート無線ユニットの数が動的に可変するように、前記複数のリモート無線ユニットに対してクラスタリングを行なう。
【解決手段】本発明の移動通信システムは、端末に信号を送信する、アンテナネットワークを構成する複数のリモート無線ユニットと前記アンテナネットワークに接続されている集中ベースバンドプールとを有し、前記集中ベースバンドプールは、複数のクラスタのそれぞれに含まれているリモート無線ユニットの数が動的に可変するように、前記複数のリモート無線ユニットに対してクラスタリングを行なう。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数基地局協調サービスを支持する移動通信システム及びそのリモート無線ユニットクラスタリング方法に関し、柔軟性が高く、無線リソースを節約することができる。
【背景技術】
【0002】
移動ユーザの増加及びデータ速度に対する高い要求に伴い、従来のセルラネットワークはますます多くのユーザの需要を満たすことができなくなっている。国際標準化組織3GPP(The 3rd-Genenration Partnership Project)は、第二世代および第三世代移動通信ネットワークのシステムアーキテクチャと規格を開発し、これらの規格は現在すでにエアインターフェースが配置されているネットワークに応用されている。いま、3GPPは第四世代移動通信ネットワークに向けてロングタームエボリューションバージョンLTE(Long Term Evolution)およびロングタームエボリューションアドバンスドバージョンLTE−A(Long Term Evolution-Advanced)の制定に着手し、その目的はシステムのスペクトラム利用率(スループット/バンド幅)を増やし、特にセルエッジのスペクトラム利用率を増やすことである。
【0003】
しかしながら、LTE/LTE−Aシステムは隣接するセルで同じ周波数を使用するため、セル間の強い干渉を引き起こす。光ファイバを利用して基地局の無線モジュールを離れた場所に持っていくと、リモート無線ユニットになり、ネットワーク計画により決められた基地局に分布配置され、元の一体式基地局のカバー範囲をカバーする。それぞれのリモート無線ユニットは小さい送信パワーを利用し、セル間の干渉が明らかに減少する。これが最初の分散アンテナシステムの概念である。
【0004】
また、協調マルチポイント伝送CoMPの採用もセル間の干渉を有効に減少する方法の一つである。第二世代および第三世代移動通信ネットワークにおいて、通常は一つのセルが一つのユーザにサービスを提供する。以下では「シングルポイント伝送」と略称する。シングルポイント伝送とは、十分に近接する一組のアンテナから送受信を行なうことである。これらのアンテナの通常の距離は数波長しかなく、同じ長時間のフェージングを経験する。この一組のアンテナを一つの「ポイント」と称する。以下の実施例、例えば、「一組の全方向性アンテナを有する一つの基地局」、「セクタに分けられた基地局の一つのセクタ」、一つの「家庭基地局」、一つの「中継局」、分散アンテナシステムにおける一つの「リモート無線ユニット」などは、いずれも「シングルポイント伝送」と見なすことができる。一つの「ポイント」のカバー範囲を「セル」と総称する。「マルチポイント伝送」とは、近接しない複数のアンテナグループから送受信を行なうことである。これらのアンテナ組の距離は通常数波長で、異なる長時間のフェージングを経験する。以下の実施例、例えば、基地局間の協調マルチポイント伝送、セクタ間の協調マルチポイント伝送(同一基地局の複数のセクタおよび異なる基地局の複数のセクタを含む)、複数のリモート無線ユニット間の協調マルチポイント伝送、基地局と中継局間の協調マルチポイント伝送などは、いずれも「マルチポイント協調伝送」と見なすことができる。協調マルチポイント伝送は端末から各ポイントの位置までの距離に基づいてビームフォーミングを行なうことができ、セル間の干渉を除去しまたは利用することができる。本特許においては分散アンテナシステムを検討するため、いわゆるポイントとは、リモート無線ユニットであり、それぞれのリモート無線ユニットが一組の全方向性アンテナを使用する場合、独立したセルIDを有する。
【0005】
以下、図8に基づいて従来技術の分散アンテナシステムについて説明する。
【0006】
図8は従来のLTE/LTE−A基地局に基づく分散アンテナシステムの典型的なサービスシーンである。基地局102はゲートウェイ101と接続して他のネットワークにアクセスする。基地局102はベースバンドユニット1021とリモート無線ユニットの1041〜1043、1051〜1053から構成される。ベースバンドユニット1021の主な機能は、コーディング/デコーディング、変調/復調などを含む信号のベースバンド処理を行なう。リモート無線ユニット1041−1043、1051−1053の主な機能は、信号のA/D変換、周波数変換、フィルターリング、増幅及び無線送信を実現する。リモート無線ユニットの1041〜1043、1051〜1053は光ファイバ1023とベースバンドユニット1021を介して接続されている。この分散アンテナシステムにおいては、協調マルチポイント伝送が採用されている。ある時刻において、端末103が受けたサービスは同じ基地局に属する二つのリモート無線ユニット1041、1042の協調伝送で、端末104が受けたサービスは異なる基地局に属する三つのリモート無線ユニット1043、1051、1052の協調伝送である。
【0007】
しかし、上述の分布アンテナシスムはセルラセルの固有構造の制限を受けるため、解決できない様々な問題点が存在する。例えば、システムにおけるそれぞれの基地局はいずれも一つの基地局アドレスを占用しなければならず、これは独立した機械室、エアコン及び電気供給設備を配備しなければならないことを意味し、基地局の建設やメンテナンスにおいて、このような構造は膨大なコストが伴うことになる。さらに、LTEシステムにおいて協調マルチポイント伝送(CoMP:Coordinated Multipoint Transmission/Reception)のコンセプトが提案されているが、無線リソースは限られた協調セル内でしか割り当てることができず、大規模なリソースの最適化は図れない。以上の問題点を防ぐために、将来の高速無線通信システムには新しいシステムアーキテクチャを導入しなければならない。集中ベースバンドプールに基づく分散アンテナシステムはこのような要求に適合する真新しい無線アクセスシステムである。
【0008】
以下、図9に基づいて従来技術の集中ベースバンドプールに基づく分散アンテナシステムについて説明する。
【0009】
図9は集中ベースバンドプールに基づく分散アンテナシステムのシステムフレーム図である。このシステムは二つの重要な部分を含み、一つはユーザ端末に信号を送信する複数のリモート無線ユニット211〜226を備える分布アンテナネットワーク204で、光ファイバリモート技術を利用して複数のリモート無線ユニットが柔軟に配置されている。もう一つは集中ベースバンドプール201で、システムにおけるすべての基地局のベースバンド部分を一か所に集中させて一つのベースバンドプールを形成し、高速信号処理技術を利用して高効率のリソース割り当てを行なう。集中ベースバンドプールは必要とする機械室の数を大幅に減少し、ネットワークの無線リソースの整合と共有を可能にし、協調マルチポイント伝送技術の応用に有利である。この二つの部分は改良された光伝送ネットワーク203を介して接続されており、スイッチ202がリアルタイムでサービスを行なうリモート無線ユニットポートによって制御される。
【0010】
上述のどの分散アンテナシステムも協調マルチポイント伝送技術を利用してセル間の干渉を減少するとともにセルのスペクトラムの利用率を向上することができる。明らかに、全ネットワークの「リモート無線ユニット」がすべて協調することは非現実であるが、結局いくつのポイントを利用して協調するか、どのようにして協調するかはまさに我々が議論しようとするリモート無線ユニットのクラスタリング問題である。クラスタリングとは、リモート無線ユニットをある規則にしたがってグループ分けすることである。各グループ内のリモート無線ユニットにおいてユーザに対してマルチポイント協調伝送サービスを行なうことにより、ユーザのスループットを十分に向上させることができる。
【0011】
以下、図10と図11に基づいて従来技術の分散アンテナシステムにおけるリモート無線ユニットの静的クラスタリングと分散アンテナシステムにおけるリモート無線ユニットの動的クラスタリングについてそれぞれ説明する。
【0012】
図10は分散アンテナシステムにおけるリモート無線ユニットの静的クラスタリングの略図である。図において、クラスタサイズは4である。「静的クラスタリング」とは、システムの企画段階で、リモート無線ユニットがすでに固定のモデルにしたがってクラスタに分けられたことである。ネットワークが企画された後、クラスタは変化することができない。例えば、図10に示すように、全ネットワークの16個のリモート無線ユニットは四つのクラスタに分けられている。クラスタ1、2、3、4のサイズ(クラスタ内のリモート無線ユニットの数)はいずれも4である。それぞれのクラスタ内に移動した端末は当該クラスタ内の四つのリモート無線ユニットからのサービスしか受けられない。このようなクラスタリング方法は比較的に簡単であるが、柔軟性が低く、システムのスループットが制限される。例えば、図10における端末D1はクラスタ1の中心に位置し、クラスタ1によりよいサービスが提供されるが、端末D2はクラスタ1とクラスタ2のエッジに位置し、クラスタ2によりサービスが提供される場合クラスタ1に対して大きな干渉が発生する。
【0013】
図11は分散アンテナシステムにおけるリモート無線ユニットの動的クラスタリングの略図である。図において、クラスタサイズは2である。「動的クラスタリング」とは、ある時刻から異なる時刻までの間にクラスタの構成は動的に変化が生じる。例えば、図11(A)は時刻Nのクラスタリング結果で、図11(B)は時刻N+1のクラスタリング結果である。このような方法は、通常モバイル設備とそれぞれのリモート無線ユニットとの間のリアルタイムのチャネル状態情報に基づいて総合的な判断を行ない、アルゴリズムは複雑であるが、柔軟性が高く、システムのスループットが高い。
【0014】
従来技術においても、分散アンテナシステムのマルチポイント伝送問題が度々言及されている。
【0015】
特許文献1においては、分散アンテナシステムにおけるサブセルの測定方法が公開されている。このような分布システムは事実上従来基地局に基づく無線リモートシステムである。当該特許における「サブセルの概念」は、本特許における一つのRRH(Remote Radio Head)がカバーする区域に相当する。一組の「サブセル」は協調してモバイル端末にサービスを提供する。しかし、この特許において、どのような方法で複数の「サブセル」をいっしょに組み合せて協調してモバイル端末にサービスを提供するかについては言及されていない。二つまたは複数のサブセルを利用して協調してモバイル端末にサービスを提供すると簡単に言及しただけだった。
【0016】
特許文献2においては、マルチポイント伝送システムにおける下り伝送方法が提案されているが、具体的な協調セルのクラスタリング方法については言及しなかった。
【0017】
特許文献3においては、無線通信基地局の動的分布アンテナ選択システム及びその実現方法が公開されている。このような分散アンテナシステムは事実上従来基地局に基づく無線リモートシステムである。この発明の実現方法はK個のアンテナユニットからその中のN個のアンテナを選択して送信を行なうことである。発明の中ではアンテナの選択方法は環境の障害物、業務種類とユーザの位置に基づいて動的選択を行なうと簡単に紹介しただけで、具体的なアルゴリズムについては説明しなかった。
【0018】
特許文献4においては、分散アンテナシステムにおける電力割り当てとアンテナ選択方法が提案されている。基地局は各端末の受信したアンテナ信号強度を所定時間内で統計して平均化し、閾値より大きいアンテナのみに対して電力割り当てを行ない、無線チャネルがよいアンテナを選択してモバイル端末との通信を実現する。しかし、このような方法は上りの信号強度に基づいてアンテナの選択を行なうため、上り下りリンクが関係ないFDDシステムには適用しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】国際公開公報 第WO 2010/077192号
【特許文献2】中国公開公報 第CN101777941号
【特許文献3】中国公開公報 第CN101185270号
【特許文献4】中国公開公報 第CN101631379号
【特許文献5】中国公開公報 第CN101389115号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上述の提案と特許において、その多くはマルチポイント伝送によって得られる恩恵、例えば、セル間の干渉の減少、スループットの大幅な向上のようなところに着目しているが、実際のシステムにおいて、マルチポイント協調伝送技術は常に時々刻々と必要とするものではない。以下、図1に基づいてマルチポイント協調伝送技術を必要としない状況について説明する。
【0021】
図1はマルチポイント協調伝送に適しないシーンの例示図である。501はリモート無線ユニットのカバー範囲である。端末D1がリモート無線ユニット511のカバー区域501の中心にあるときには、リモート無線ユニット511から受信した信号は非常によいが、リモート無線ユニット512、513、514から受信した信号は弱い。そのため、このシーンにおいては、リモート無線ユニット511によるシングルポイント伝送だけで十分である。端末がリモート無線ユニット511の周縁に移動したときのみ、マルチポイント伝送によって性能を向上する必要があると考えられる。
【0022】
本発明は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、柔軟性が高く、無線リソースを節約できる、複数基地局協調サービスを支持する移動通信システム及びそのリモート無線ユニットクラスタリング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明に関わる移動通信システムは、端末に信号を送信する、アンテナネットワークを構成する複数のリモート無線ユニットと、前記アンテナネットワークに接続されている集中ベースバンドプールと、を有する移動通信システムであって、前記集中ベースバンドプールは、複数のクラスタのそれぞれに含まれているリモート無線ユニットの数が動的に可変するように、前記複数のリモート無線ユニットに対してクラスタリングを行なうことを特徴とする。
【0024】
本発明に関わる移動通信システムのリモート無線ユニットクラスタリング方法は、端末に信号を送信する、アンテナネットワークを構成する複数のリモート無線ユニットと、前記アンテナネットワークに接続されている集中ベースバンドプールと、を有する移動通信システムのリモート無線ユニットクラスタリング方法であって、複数のクラスタのそれぞれに含まれているリモート無線ユニットの数が動的に可変するように、前記複数のリモート無線ユニットに対してクラスタリングを行なうことを特徴とする。
【0025】
本発明に関わる移動通信システムおよびそのリモート無線ユニットクラスタリング方法は、各スケジューリング時刻に対して、クラスタリングの方法が動的であるだけではなく、クラスタのサイズも可変する。クラスタのサイズが1である場合はシングルポイント伝送を採用したことになり、クラスタの大きさが1より大きい場合はマルチポイント伝送を採用したことになる。「クラスタゲイン」に基づくクラスタリング方法を採用して、結局どの伝送方法を採用するかを判断するとともにそれぞれのクラスタのサイズを判断する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の移動通信システムおよびそのリモート無線ユニットクラスタリング方法によると、移動通信システムの柔軟性をさらに向上するとともに無線リソースを節約することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】従来技術のマルチポイント協調伝送に適しないシーンの例示図である。
【図2】本発明における「クラスタゲイン」に基づくクラスタリング結果の略図である。
【図3】本発明における集中ベースバンドプールの内部機能モジュールの略図である。
【図4】本発明における測定ウィンドウに基づく測定の略図である。
【図5】本発明における「クラスタゲイン」に基づく動的クラスタリング方法のシグナリングインタラクティブ図である。
【図6】本発明における「クラスタゲイン」に基づく動的クラスタリング方法のアルゴリズムフローチャートである。
【図7】本発明における「クラスタゲイン」に基づく動的クラスタリング方法の簡単な実現例である。
【図8】従来技術のLTE/LTE−A基地局に基づく分散アンテナシステムの図である。
【図9】従来技術の集中ベースバンドプールに基づく分散アンテナシステムのシステムフレーム図である。
【図10】従来技術のクラスタサイズが固定されたリモート無線ユニットの静的クラスタリングの略図である。
【図11】従来技術のクラスタサイズが固定された分散アンテナシステムにおけるリモート無線ユニットの動的クラスタリングの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図6〜10に基づいて本発明の実施形態について説明する。
【0029】
本発明の集中ベースバンドプールに基づく分散アンテナシステムは、図9に示す従来技術の集中ベースバンドプールに基づく分散アンテナシステムに対して改良を行なって得られたものである。したがって、従来技術と異なる点のみについて詳しく説明する。
【0030】
本発明の移動通信システムは、端末に信号を送信する、アンテナネットワークを構成する複数のリモート無線ユニットと、アンテナネットワークに接続されている集中ベースバンドプールと、を有し、集中ベースバンドプールは、複数のクラスタのそれぞれに含まれているリモート無線ユニットの数が動的に可変するように、複数のリモート無線ユニットに対してクラスタリングを行なう。また、本発明の移動通信システムにおいて、複数のクラスタのそれぞれに含まれているリモート無線ユニットの数は1〜n(nは2以上の自然数)の間で動的に可変する。また、本発明の移動通信システムにおいて、集中ベースバンドプールは、含まれているリモート無線ユニットの数の小から大の順に、複数のリモート無線ユニットに対してクラスタリングを行なう。また、本発明の移動通信システムにおいて、集中ベースバンドプールは、それぞれの端末に対するSINR値に基づいて、複数のリモート無線ユニットに対してクラスタリングを行なう。さらに、本発明の移動通信システムにおいて、集中ベースバンドプールが複数のリモート無線ユニットに対してクラスタリングを行なった後に、それぞれのクラスタ内には数の異なるリモート無線ユニットが含まれている。
【0031】
図2は本発明における「クラスタゲイン」に基づくクラスタリング結果の略図である。この図から、異なるスケジューリング時刻において、クラスタリングの結果はマルチポイント伝送とシングルポイント伝送の間で動的に変化することが分かる。図2Aに示すように、前の時刻(時刻N)において、リモート無線ユニット601、602はそれぞれクラスタ2、クラスタ5に属し、シングルポイント伝送状態にある。図2Bに示すように、次の時刻(時刻N+1)において、リモート無線ユニット601は他のリモート無線ユニットとともにクラスタサイズ2のクラスタ1を構成し、リモート無線ユニット602は他の二つのリモート無線ユニットとともにクラスタサイズ3のクラスタ4を構成し、マルチポイント伝送状態になる。
【0032】
以下、図3に基づいて本発明における集中ベースバンドプールの構成について説明する。
【0033】
図3は本発明における集中ベースバンドプールの内部機能モジュールの略図である。
【0034】
図3に示すように、集中ベースバンドプール901は、ユーザ優先度情報メモリ702、測定情報メモリ703およびチャネル状態情報メモリ704を含むシステムパラメータデータベース701と、ユーザスケジューリング部706と、動的クラスタリング制御部707と、無線リソース管理部708と、複数のクラスタ信号処理部709と、を備える。
【0035】
システムパラメータデータベース701には、無線ベアラパラメータ、電力制御パラメータおよび切換パラメータなどのようなネットワークの固定設定と手動設定のすべてのパラメータが記憶されている。ここでは本発明に関わる部分だけ言及する。
【0036】
ユーザ優先度情報メモリ702にはユーザのスケジューリング優先度を保存する。それぞれのRRH(リモート無線ユニット)はいずれも一枚のユーザ優先度リスト表を有し、リモート無線ユニットのIDによって区別する。具体的な生成プロセスは後文のユーザスケジューリング部706に対する説明部分に記載する。
【0037】
【表1】
【0038】
測定情報メモリ703にはそれぞれのリモート無線ユニットに配置した隣接リモート無線ユニット情報を保存する。移動局があるリモート無線ユニットにつながると、システムはこのリスト表から一つの行(当該移動局に対応するメインサービスリモート無線ユニット)を当該移動局に送信して、移動局に測定を行なわせる。このようにして移動局の有効測定範囲とフィートバックオーバーヘッドを大幅に減少することができる。
【0039】
表2は手動設定された測定情報テーブルの代表例である。一列目は全ネットワークのリモート無線ユニットIDである。これらのリモート無線ユニットはいずれも端末のメインサービスリモート無線ユニットとすることが可能である。メインサービスリモート無線ユニットとは、当該端末に対して言えば、受信信号の最も良いリモート無線ユニットのことであり、ネットワークインタラクティブのシグナリング情報を端末に提供することができる。二列目から最終列目まではこれらのリモート無線ユニットのために配置した隣接リモート無線ユニットである。移動局はメインサービスリモート無線ユニットおよび隣接リモート無線ユニットのチャネル状態情報しか測定できない。例えば、端末のメインサービスリモート無線ユニットがRRH3である場合、ネットワークはRRH3に対応する行が含まれている測定制御メッセージを当該端末に送信する。端末が測定制御メッセージを受信してから、RRH3のほかにRRH2、RRH4、RRH6、RRH7およびRRH8のチャネル状態情報も測定する。この例において、それぞれのリモート無線ユニットには最大で六つの隣接リモート無線ユニットを配置することができる。実際のシステムにおいて、このパラメータは複雑度と性能に応じて調整することができる。
【0040】
【表2】
【0041】
簡単に実現できる一つの方法は四角形/円形の測定ウィンドウによって測定設定を行なうことである。四角形測定ウィンドウによる測定方法は図4に示す通りである。表3は図4に示すRRH分布の四角形測定ウィンドウに基づく測定情報テーブルの代表例である。
【0042】
【表3】
【0043】
チャネル状態情報メモリ704には異なる端末に対応する測定されたチャネル状態情報を保存する。それぞれの端末は測定情報テーブル(表2)の内容に基づいてメインサービスリモート無線ユニットとそれぞれの隣接リモート無線ユニットとの間のチャネル状態情報を測定報告する。表4に示すようなチャネル状態情報テーブルを取得し、測定情報メモリ703に記憶する。
【0044】
【表4】
【0045】
ユーザデータバッファ705には受信したまたは送信待ちのユーザデータを保存する。
【0046】
ユーザスケジューリング部706はシステムにおけるユーザに対してスケジューリングを行なう。システムの中には大量の非リアルタイムパケットデータ業務が存在するが、システムの総チャネル容量が限られているため、当該ユーザスケジューリング部706がユーザのQos要求に基づいて業務の種類を判断し、所定の時間内でいくつかのユーザを選択してサービスを行なう必要がある。本特許においては、ユーザが全バッファ型業務モデルを使用すると仮定する。すなわち、すべてのユーザはずっとデータを送信するリクエストがあると仮定する。それぞれのRRHはいずれも自分のユーザを比例公平(PF)原則に基づいて優先度パラメータを算出し、大から小の順に並べて、ユーザ優先度リスト表を取得して、それを702に保存する。あるユーザkの優先度パラメータの具体的な算出方法は数式1に示す通りである。
【0047】
【数1】
(式において、rkは当該スケジューリング時刻のリアルタイム伝送速度で、
はユーザkの過去の一定期間のタイムウィンドウ内での平均伝送速度である。)
【0048】
動的クラスタリング制御部707は本発明における最も重要な部分であり、「クラスタリングゲイン」に基づいてクラスタリングを行い、シングルポイント伝送とマルチポイント伝送の間(あるいはクラスタサイズが異なるマルチポイント伝送の間)の切り換えを行なう。
【0049】
無線リソース管理部708は主に分けられたクラスタに対して電力割り当てなどのようなリソース割り当てを行う。
【0050】
クラスタ信号処理部709は動的クラスタリング制御部706の結果に応じてリアルタイムに生成される。例えば、複数のリモート無線ユニットがn個のクラスタに分けられると、n個のクラスタ信号処理部を有することになる。クラスタ信号処理部709は主にクラスタ内の信号処理、例えば、協調プリコーディング、変調/復調、コーディング/デコーディング、周波数拡散/逆拡散などを行なう。
【0051】
図4は本発明における測定ウィンドウに基づく測定略図である。ユーザの移動に伴い、測定範囲はメインサービスRRHの具体的な位置(例えば、経度と緯度)を中心とする、長さXm、幅Ymの四角形エリアであり、四角形測定ウィンドウ801と呼び、XとYは必要に応じて任意に設定することができる。このエリア内にあるRRHは自動的にUE(User Equipment)に測定されるRRHになる。図4に示すように、ユーザのメインサービスRRHがR6である場合、測定範囲は左上方の四角形測定ウィンドウ内のRRHである。ユーザのメインサービスRRHがRRH12である場合、測定範囲は右下の四角形測定ウィンドウ内の6個のRRHであり、R7、R8、R11、R12、R15、R16を含む。このように類推する。実際これは半自動的な測定設定である。矩形エリアの大きさは現在ネットワークの作業量に基づいて柔軟に変更することができ、ネットワークはさらに設定された測定ウィンドウの大きさに基づいて、データベースから検索を行なう。例えば、リモート無線ユニットR6の作業量負荷が重いときに、比較的に大きい矩形エリアを使用して、協調可能なセルの数を増やし、UEにもっと良い選択余地を与えて、一部の負荷をこれらのセルに平均化させる。
【0052】
図5は本発明における「クラスタゲイン」に基づく動的クラスタリング方法のシグナリングインタラクティブ図である。
【0053】
ステップ902において、集中ベースバンドプール901は測定制御メッセージをリモート無線ユニットR1、R2、…、RNに送信する。当該測定制御メッセージには測定ID、測定対象情報および測定報告設定などを含む測定情報フィールドが含まれている。測定対象情報フィールドには隣接リモート無線ユニットリスト表が含まれている。即ち、表1の中の当該移動局に対応するメインサービスリモート無線ユニットの一行は、移動局が対応するチャネル状態情報を測定するのに使われる。さらに、測定すべき各RRHのリファレンス信号ポート数、リファレンス信号パターン(CSI−RS pattern)などを含む設定情報を提供する必要がある。
【0054】
ステップ903において、端末D1、D2、…、Dmは受信した信号にしたがって、チャネル推定を行い、端末とメインサービスリモート無線ユニットおよび隣接リモート無線ユニットのチャネル状態情報を算出する。
【0055】
ステップ904において、端末D1、D2、…、Dmはネットワーク、スイッチなどを経由して、測定されたリモート無線ユニットIDおよび対応するチャネル状態情報を含む測定報告メッセージを集中ベースバンドプール901に送信する。
【0056】
ステップ905において、集中ベースバンドプール901は端末D1、D2、…、Dmから送信されたチャネル状態情報を受信した後に、チャネル状態情報メモリ704に記憶されているチャネル状態情報を更新する。チャネル状態情報のフォーマットは図9に示す通りである。
【0057】
ステップ906において、集中ベースバンドプール901のユーザスケジューリング部706は比例公平(PF)原則に基づいて、それぞれのRRHのユーザに対してソーティングを行なう。ユーザ優先度リストを取得したら、ユーザ優先度情報メモリ702に記憶されているユーザ優先度情報を更新する。
【0058】
ステップ907において、動的クラスタリング制御部707は「クラスタゲイン」に基づく方法でクラスタリングを行なう。当該方法については後文の図6に対する説明に記載する。
【0059】
ステップ908において、各クラスタの情報処理部709を動的に生成する。
【0060】
ステップ909において、各クラスタに相応する無線リソースを割り当てる。
【0061】
ステップ910において、集中ベースバンドプール901は処理済みのデータをそれぞれのリモート無線ユニットR1、R2、…RNのアンテナポートに送信する。
【0062】
ステップ911において、それぞれのリモート無線ユニットR1、R2、…RNはシングルポイント伝送またはマルチポイント伝送サービスをユーザ端末に提供する。
【0063】
以下、図6に基づいて本発明の分散アンテナシステムの伝送方式である動的切換方法について説明する。
【0064】
図6は本発明における「クラスタゲイン」に基づく動的クラスタリング方法のアルゴリズムフローチャートである。
【0065】
ステップ1001において、それぞれのRRHのユーザ優先度リスト表(表1参照)から優先度の最も高いユーザ端末を選択すると、M個のユーザ端末が選択される(M≦Nで、NはネットワークにおけるRRHの総数である)。
【0066】
ステップ1002において、初期化を行ない、BをN個のRRHの集合とし、UをM個のユーザ端末の集合とする。
【0067】
ステップ1003において、シングルポイント伝送に基づいてこれらのM個の端末のSINR(Signal to Interference-plus-Noise Ratio)を計算する。端末kのSINRは数式2によって表すことができる。
【0068】
【数2】
【0069】
数2において、分子は受信された有用な信号を表し、hikはメインサービスリモート無線ユニットRRHiからUEkまでのチャネル状態情報で、wiはRRHiからのプリコーディングマトリックスで、PiはRRHiの送信パワーである。分母の中の第一項は干渉を表し、siは端末が属するメインサービスリモート無線ユニットRRHiの隣接リモート無線ユニット集合で、hjkは隣接サービスリモート無線ユニットRRHjからUEkまでのチャネル状態情報である。分母の中の第二項Nは加算性ガウスホワイトノイズである。式において、すべてのチャネル状態情報hは集中ベースバンドプール901に記憶されている(表4参照)ため、プリコーディングマトリックスwはチャネルhのSVD分解によって得られる。
【0070】
ステップ1004において、これらのユーザ端末のSINR1が閾値T1より大きいか否かを判断する。SINR1が閾値T1より大きいと、このユーザ端末はセル中心のユーザかまたは干渉が小さい。SINR1が閾値T1より小さいと、このユーザ端末はセルエッジのユーザであるかまたは干渉が大きい。T1は予め決められた値である。動的クラスタリング制御部707は一組の経験値の中(例えば、{−1dB,0dB,1dB,2dB})から現在のネットワーク負荷などの状況に基づいて、この値を微調整してSINRがT1より大きいユーザにメインサービスRRHを割り当ててシングルポイント伝送を行ない、これらのユーザが属するクラスタのサイズを1とし、その結果をクラスタリング結果テーブルに書き込む。
【0071】
【表5】
【0072】
ステップ1005において、すでに一対になったRRHとユーザ端末を集合Bと集合Uからそれぞれ削除する。アルゴリズムの簡素化のために、ここでは一つのRRHが一つの時間帯に一つのクラスタにしか属することができず、複数のクラスタによって共同占用されることはできないと仮定する。また、一つのユーザ端末は一つの時間帯に一つのクラスタにしか属することができず、複数のクラスタのリソースを同時に占用することはできないと仮定する。
【0073】
ステップ1006において、このときの選択待ちRRHの集合Bが空集合であるか否か、つまりRRHが配分済みだったか否かを判断する。「YES」と判断された場合はアルゴリズムが終了し、「NO」と判断された場合はステップ1007に進む。
【0074】
ステップ1007において、このときの選択待ちユーザ端末の集合Uが空集合であるか否か、つまりユーザ端末がサービスを受けているか否かを判断する。「YES」と判断された場合は、アルゴリズムが終了し、「NO」と判断された場合はステップ1008に進む。
【0075】
ステップ1008において、クラスタサイズcに1を加え、次の優先度のマルチポイント伝送の判断に備える。
【0076】
ステップ1009において、このときのクラスタサイズcが最大クラスタサイズCmaxの制限を超えたか否かを判断する。「YES」であると判断された場合はステップ1013に進み、「NO」と判断された場合はステップ1010に進む。マルチポイント協調サービスにおいて、「ポイント」を多く使う必要はない。複雑度がポイント数の増加につれて迅速に増大するだけでなく、返送リンクのオーバーヘッド増加をもたらす。また、マルチポイント伝送のゲインも飽和状態に達する。そのため、実際のシステムにおいて、マルチポイント伝送の最大のポイント数、つまりここで言うクラスタサイズの最大値Cmaxを制限しなければならない。経験値に基づいて、通常この値を3または4に設定する。
【0077】
ステップ1010において、残りのRRHを用いてクラスタサイズcにしたがって組み合わせを行なう。それぞれのRRHをメインサービスRRHとし、測定情報テーブル内(例えば、表2または表3)のすべての利用可能な隣接集合RRH内からc−1個を選択してサイズがcであるクラスタの組み合わせを行うと、
種類の組み合わせができる。端末kのSINRcは数3によって表すことができる。
【0078】
【数3】
【0079】
数3において、Cはユーザ端末にサービスを提供するクラスタに含まれているRRHの集合である。分子はクラスタC内のすべてのRRHがユーザ端末のために有効なデータ伝送を行なうときに、ユーザ端末が受信した有用な信号を表す。ユーザ端末のメインサービスRRHIは必ずクラスタ内に含まれている。分母の中の第一項はクラスタ外の干渉を表し、主にこのクラスタには属しないが端末が属するメインサービスリモート無線ユニットRRHIの隣接リモート無線ユニット集合SIに属するRRHから来る。具体的なパラメータに関する説明は図4のステップ902における測定制御メッセージと同じである。
【0080】
ステップ1011において、
の中のそれぞれの組み合わせのクラスタゲインを計算する。クラスタサイズをcとすると、複数のユーザ端末に同時にサービスを提供するクラスタゲインGcは数4の通りである。
【0081】
【数4】
【0082】
数4において、Rcはクラスタcに属するユーザ端末がクラスタのマルチポイント協調サービスにより得たデータ速度の和である。R1はクラスタcに属するユーザ端末がシングルセルサービスにより得たデータ速度の和である。
【0083】
クラスタゲイン値に基づいて大から小の順に並べると、クラスタゲインテーブルが得られる。表6はクラスタサイズが3であるクラスタゲインの表示例である。表6では利用可能なRRHのすべての組み合わせを並べており、制限条件としては測定情報テーブルに基づいてクラスタ内RRHの選択をしなければならない。同じRRHの組み合わせが現れたときにはその中の一つのみを保留する。例えば、テーブルの中のcluster1とcluster4に重複したクラスタ情報が含まれていると、即ちクラスタ内に同じRRHが含まれていると、cluster4の情報は削除する。
【0084】
【表6】
【0085】
ステップ1012において、Greedy法に基づいて上から下までクラスタゲインテーブルを検索して、GcがTcより大きい条件を満たすクラスタを選択する。ある選択待ちクラスタに含まれているRRHがその前に選択されたクラスタにすでに属している場合、このクラスタは再選択されない。
【0086】
Tcはクラスタサイズがc(c>1)のときのゲイン閾値であり、Tc=1+Ocと定義する。クラスタゲインGcはサイズがcであるクラスタにおけるすべてのユーザ端末が得た速度の和を、これらのユーザ端末がすべてシングルポイント伝送を使用するときに得る速度の和で割るので、マルチポイント伝送がゲインを有するためにGcは少なくとも1より大きくなければならない。Ocはクラスタサイズがcであるマルチポイント伝送のゲインファクターである。マルチポイント伝送のゲインはシステムの一部の余分のリソースを消耗することによって得られたものであり、伝送の余分のシグナリングオーバーヘッド、REリソース占用オーバーヘッド(例えばパイロット占用)、計算複雑度オーバーヘッドなどが含まれる。クラスタサイズがcであるマルチポイント伝送ユーザ端末のフィードバックオーバーヘッドはしばしばシングルポイント伝送のc倍より多い。シングルポイントのチャネル情報を送信するほかに、ポイント間の相対チャネル情報も送信するため、REのリソース占用オーバーヘッド(例えばパイロット占用)は、単純にマルチポイント伝送がシングルポイント伝送の2c倍であると見なすことができ、あるポイントでパイロットを送信するときに、その他のポイントの同じ時間周波数リソースはすべて穴あけする必要がある。計算複雑度オーバーヘッドに対しては、cの増大につれて指数が増える。そのため、如何にオーバーヘッドを行ない、ゲインをもたらすかのマッピングモデリングは非常に複雑なプロセスである。本特許において、説明しやすくするために、Ocは運営の実際希望値に基づいて動的な割り当てを行なうことができ、この値はcの増大につれて大きくなると仮定する。例えば、好ましいフィードバックを考慮するとき、値の範囲は0.1〜0.4であるが、実際の状況においては、コードブックの設計、量子化誤差とフィードバック遅延の影響により、フィードバックは理想的になれない。そのため、この値は適切に下方調整することができる。
【0087】
ステップ1013において、条件を満たさない残りのユーザ端末にメインサービスRRHを割り当ててシングルポイント伝送を行なう。
【0088】
以上では本発明の分散アンテナシステムの伝送方式の動的切換方法について説明したが、本発明はこれに限らず、必要に応じて変更することができる。
【0089】
例えば、図6のプロセスにおいて、クラスタサイズcの1から始めて、クラスタサイズcを1ずつ増やしてクラスタリングを行なう。当然ながらクラスタリングを行なうときのクラスタサイズcの値とクラスタサイズcの変化順は状況に応じて適切に変えることができる。
【0090】
以下、図7を参照しながら本発明の「クラスタゲイン」に基づく動的クラスタリング方法の簡単な実現例について説明する。
【0091】
図7は本発明における「クラスタゲイン」に基づく動的クラスタリング方法の簡単な実現例である。図7に示すように、ネットワークには9個のリモート無線サービスユニットがあり、それぞれ1〜9までの数字で表す。最大のクラスタサイズは3に設定する。
【0092】
ステップ1:図6におけるステップ1001にしたがって、それぞれのRRHのユーザ優先度リスト表から優先度が最も大きいものを一つ選択する。ここでは、図4で説明した方法にしたがって表7のような測定情報テーブルを生成する。
【0093】
【表7】
【0094】
この測定情報テーブの各行は一つのスケジューリングしたユーザに対応する。ユーザからフィードバックされたチャネル状態情報に基づいて表8のようなチャネル状態情報テーブルを得る。
【0095】
【表8】
【0096】
それぞれのユーザは図6のステップ1003の方法にしたがって、シングルポイント伝送のSINRを計算し、表9のようなSINR値を取得したとする。
【0097】
【表9】
【0098】
T1を1dBとする。計算により、ユーザ1とユーザ5のSINR値が閾値T1を超えたため、ユーザ1とユーザ5はそれぞれメインサービス基地局によってシングルポイント伝送を行なう。このときのクラスタリング結果のテーブルは表10の通りである。
【0099】
【表10】
【0100】
ここまで、クラスタサイズが1であるクラスタ(即ち、数字1が示すクラスタと数字5が示すクラスタ)を二つ取得し、クラスタリングの状態は図7(A)に示す通りである。
【0101】
ステップ2:割り当て済みのRRHとユーザ(UE1,UE5およびRRH1,RRH5)、及び対応するチャネル状態情報を削除する。
【0102】
【表11】
【0103】
上記表11のチャネル状態情報テーブルに基づいて、図6のステップ1010の方法にしたがって、RRHに対して組み合わせを行なう。2ポイント伝送のクラスタゲインを計算してクラスタゲインリスト表12を取得する。その中で、重複したRRH組合結果を削除する。
【0104】
【表12】
【0105】
上記表12を新たに整理して、重複したクラスタ情報を削除し、クラスタゲイン値の大から小の順にしたがって、表13のように並べる。
【0106】
【表13】
【0107】
G2がT2より大きい組み合わせを選択する。T2=1.15とすると、O2=0.15になる。即ち、二つのポイントの協調によるオーバーヘッドを考えると、システムのゲインは少なくとも15%に達する必要がある。Greedyのアルゴリズムによって選択されたクラスタは{4、7}と{8、9}である。そして、表14のようなクラスタ結果テーブルが得られる。
【0108】
【表14】
【0109】
ここまで、クラスタサイズが2であるクラスタ(即ち、数字4、7が示すクラスタと数字8、9が示すクラスタ)をさらに二つ取得し、クラスタリングの状態は図7(B)に示す通りである。
【0110】
ステップ3:割り当て済みのRRHとユーザ、および対応するチャネル状態情報を削除して表15を取得する。
【0111】
【表15】
【0112】
上記表15のチャネル状態情報テーブルに基づいて、図6のステップ1010の方法にしたがって、RRHに対して組み合わせを行ない、重複したRRH組み合わせ結果を削除する。3ポイント伝送のクラスタゲインを計算してクラスタゲインリスト表16を取得する。T3=1.2とする。三つのポイントの協調によるオーバーヘッドを考えると、システムのゲインは少なくとも20%に達する必要がある。Greedyのアルゴリズムによって選択されたクラスタは{2、3、6}である。
【0113】
【表16】
【0114】
そして、表17のようなクラスタリング結果テーブルが得られる。
【0115】
【表17】
【0116】
ここまで、クラスタサイズが3であるクラスタ(即ち、数字2、3、6が示すクラスタ)をさらに一つ取得し、クラスタリングの状態は図7(C)に示す通りである。
【0117】
このとき、システム内の残りのRRHとユーザ数はいずれも0であり、アルゴリズムは終了する。
【0118】
以上、本発明の移動通信システムおよびそのリモート無線ユニットクラスタリング方法について説明したが、続いては、本発明と従来技術との異なる点について簡単に比較する。従来技術の動的クラスタリング方法においてはクラスタサイズが固定されているが、本発明における動的クラスタリング方法においてはクラスタサイズが動的に可変する。即ち、あるスケジューリング時刻内において、含まれている複数のクラスタのクラスタサイズはすべて同じではない。これにより、クラスタサイズの異なるマルチポイント伝送間の切り換えが実現可能だけでなく(例えば、クラスタサイズがそれぞれ2、3であるクラスタが存在する)、さらにシングルポイント伝送とマルチポイント伝送の二種類の本質的に完全に異なる伝送方式間の切り換えも実現可能である(例えば、クラスタサイズがそれぞれ1、2であるクラスタが存在する)。
【0119】
当然ながら、従来の技術において、クラスタリングされていないリモート無線ユニットの数がクラスタサイズより小さいときにも、リモート無線ユニットの数がクラスタサイズより小さいクラスタが存在する。例えば、図11に示すクラスタサイズが2である状況1において、リモート無線ユニットが17個である場合、リモート無線ユニットが二つであるクラスタが存在すると同時に、リモート無線ユニットが1であるクラスタも必ず存在する。しかし、そのリモート無線ユニットの数が異なるクラスタの存在は受動的であり、その本質は本発明と異なる。本発明はそれぞれのクラスタの中のリモート無線ユニットの個数を主動的に変更することにより集中ベースバンドプールに基づく分散アンテナシステムにおけるリモート無線ユニットの割り当てをより合理的にする。
【技術分野】
【0001】
本発明は複数基地局協調サービスを支持する移動通信システム及びそのリモート無線ユニットクラスタリング方法に関し、柔軟性が高く、無線リソースを節約することができる。
【背景技術】
【0002】
移動ユーザの増加及びデータ速度に対する高い要求に伴い、従来のセルラネットワークはますます多くのユーザの需要を満たすことができなくなっている。国際標準化組織3GPP(The 3rd-Genenration Partnership Project)は、第二世代および第三世代移動通信ネットワークのシステムアーキテクチャと規格を開発し、これらの規格は現在すでにエアインターフェースが配置されているネットワークに応用されている。いま、3GPPは第四世代移動通信ネットワークに向けてロングタームエボリューションバージョンLTE(Long Term Evolution)およびロングタームエボリューションアドバンスドバージョンLTE−A(Long Term Evolution-Advanced)の制定に着手し、その目的はシステムのスペクトラム利用率(スループット/バンド幅)を増やし、特にセルエッジのスペクトラム利用率を増やすことである。
【0003】
しかしながら、LTE/LTE−Aシステムは隣接するセルで同じ周波数を使用するため、セル間の強い干渉を引き起こす。光ファイバを利用して基地局の無線モジュールを離れた場所に持っていくと、リモート無線ユニットになり、ネットワーク計画により決められた基地局に分布配置され、元の一体式基地局のカバー範囲をカバーする。それぞれのリモート無線ユニットは小さい送信パワーを利用し、セル間の干渉が明らかに減少する。これが最初の分散アンテナシステムの概念である。
【0004】
また、協調マルチポイント伝送CoMPの採用もセル間の干渉を有効に減少する方法の一つである。第二世代および第三世代移動通信ネットワークにおいて、通常は一つのセルが一つのユーザにサービスを提供する。以下では「シングルポイント伝送」と略称する。シングルポイント伝送とは、十分に近接する一組のアンテナから送受信を行なうことである。これらのアンテナの通常の距離は数波長しかなく、同じ長時間のフェージングを経験する。この一組のアンテナを一つの「ポイント」と称する。以下の実施例、例えば、「一組の全方向性アンテナを有する一つの基地局」、「セクタに分けられた基地局の一つのセクタ」、一つの「家庭基地局」、一つの「中継局」、分散アンテナシステムにおける一つの「リモート無線ユニット」などは、いずれも「シングルポイント伝送」と見なすことができる。一つの「ポイント」のカバー範囲を「セル」と総称する。「マルチポイント伝送」とは、近接しない複数のアンテナグループから送受信を行なうことである。これらのアンテナ組の距離は通常数波長で、異なる長時間のフェージングを経験する。以下の実施例、例えば、基地局間の協調マルチポイント伝送、セクタ間の協調マルチポイント伝送(同一基地局の複数のセクタおよび異なる基地局の複数のセクタを含む)、複数のリモート無線ユニット間の協調マルチポイント伝送、基地局と中継局間の協調マルチポイント伝送などは、いずれも「マルチポイント協調伝送」と見なすことができる。協調マルチポイント伝送は端末から各ポイントの位置までの距離に基づいてビームフォーミングを行なうことができ、セル間の干渉を除去しまたは利用することができる。本特許においては分散アンテナシステムを検討するため、いわゆるポイントとは、リモート無線ユニットであり、それぞれのリモート無線ユニットが一組の全方向性アンテナを使用する場合、独立したセルIDを有する。
【0005】
以下、図8に基づいて従来技術の分散アンテナシステムについて説明する。
【0006】
図8は従来のLTE/LTE−A基地局に基づく分散アンテナシステムの典型的なサービスシーンである。基地局102はゲートウェイ101と接続して他のネットワークにアクセスする。基地局102はベースバンドユニット1021とリモート無線ユニットの1041〜1043、1051〜1053から構成される。ベースバンドユニット1021の主な機能は、コーディング/デコーディング、変調/復調などを含む信号のベースバンド処理を行なう。リモート無線ユニット1041−1043、1051−1053の主な機能は、信号のA/D変換、周波数変換、フィルターリング、増幅及び無線送信を実現する。リモート無線ユニットの1041〜1043、1051〜1053は光ファイバ1023とベースバンドユニット1021を介して接続されている。この分散アンテナシステムにおいては、協調マルチポイント伝送が採用されている。ある時刻において、端末103が受けたサービスは同じ基地局に属する二つのリモート無線ユニット1041、1042の協調伝送で、端末104が受けたサービスは異なる基地局に属する三つのリモート無線ユニット1043、1051、1052の協調伝送である。
【0007】
しかし、上述の分布アンテナシスムはセルラセルの固有構造の制限を受けるため、解決できない様々な問題点が存在する。例えば、システムにおけるそれぞれの基地局はいずれも一つの基地局アドレスを占用しなければならず、これは独立した機械室、エアコン及び電気供給設備を配備しなければならないことを意味し、基地局の建設やメンテナンスにおいて、このような構造は膨大なコストが伴うことになる。さらに、LTEシステムにおいて協調マルチポイント伝送(CoMP:Coordinated Multipoint Transmission/Reception)のコンセプトが提案されているが、無線リソースは限られた協調セル内でしか割り当てることができず、大規模なリソースの最適化は図れない。以上の問題点を防ぐために、将来の高速無線通信システムには新しいシステムアーキテクチャを導入しなければならない。集中ベースバンドプールに基づく分散アンテナシステムはこのような要求に適合する真新しい無線アクセスシステムである。
【0008】
以下、図9に基づいて従来技術の集中ベースバンドプールに基づく分散アンテナシステムについて説明する。
【0009】
図9は集中ベースバンドプールに基づく分散アンテナシステムのシステムフレーム図である。このシステムは二つの重要な部分を含み、一つはユーザ端末に信号を送信する複数のリモート無線ユニット211〜226を備える分布アンテナネットワーク204で、光ファイバリモート技術を利用して複数のリモート無線ユニットが柔軟に配置されている。もう一つは集中ベースバンドプール201で、システムにおけるすべての基地局のベースバンド部分を一か所に集中させて一つのベースバンドプールを形成し、高速信号処理技術を利用して高効率のリソース割り当てを行なう。集中ベースバンドプールは必要とする機械室の数を大幅に減少し、ネットワークの無線リソースの整合と共有を可能にし、協調マルチポイント伝送技術の応用に有利である。この二つの部分は改良された光伝送ネットワーク203を介して接続されており、スイッチ202がリアルタイムでサービスを行なうリモート無線ユニットポートによって制御される。
【0010】
上述のどの分散アンテナシステムも協調マルチポイント伝送技術を利用してセル間の干渉を減少するとともにセルのスペクトラムの利用率を向上することができる。明らかに、全ネットワークの「リモート無線ユニット」がすべて協調することは非現実であるが、結局いくつのポイントを利用して協調するか、どのようにして協調するかはまさに我々が議論しようとするリモート無線ユニットのクラスタリング問題である。クラスタリングとは、リモート無線ユニットをある規則にしたがってグループ分けすることである。各グループ内のリモート無線ユニットにおいてユーザに対してマルチポイント協調伝送サービスを行なうことにより、ユーザのスループットを十分に向上させることができる。
【0011】
以下、図10と図11に基づいて従来技術の分散アンテナシステムにおけるリモート無線ユニットの静的クラスタリングと分散アンテナシステムにおけるリモート無線ユニットの動的クラスタリングについてそれぞれ説明する。
【0012】
図10は分散アンテナシステムにおけるリモート無線ユニットの静的クラスタリングの略図である。図において、クラスタサイズは4である。「静的クラスタリング」とは、システムの企画段階で、リモート無線ユニットがすでに固定のモデルにしたがってクラスタに分けられたことである。ネットワークが企画された後、クラスタは変化することができない。例えば、図10に示すように、全ネットワークの16個のリモート無線ユニットは四つのクラスタに分けられている。クラスタ1、2、3、4のサイズ(クラスタ内のリモート無線ユニットの数)はいずれも4である。それぞれのクラスタ内に移動した端末は当該クラスタ内の四つのリモート無線ユニットからのサービスしか受けられない。このようなクラスタリング方法は比較的に簡単であるが、柔軟性が低く、システムのスループットが制限される。例えば、図10における端末D1はクラスタ1の中心に位置し、クラスタ1によりよいサービスが提供されるが、端末D2はクラスタ1とクラスタ2のエッジに位置し、クラスタ2によりサービスが提供される場合クラスタ1に対して大きな干渉が発生する。
【0013】
図11は分散アンテナシステムにおけるリモート無線ユニットの動的クラスタリングの略図である。図において、クラスタサイズは2である。「動的クラスタリング」とは、ある時刻から異なる時刻までの間にクラスタの構成は動的に変化が生じる。例えば、図11(A)は時刻Nのクラスタリング結果で、図11(B)は時刻N+1のクラスタリング結果である。このような方法は、通常モバイル設備とそれぞれのリモート無線ユニットとの間のリアルタイムのチャネル状態情報に基づいて総合的な判断を行ない、アルゴリズムは複雑であるが、柔軟性が高く、システムのスループットが高い。
【0014】
従来技術においても、分散アンテナシステムのマルチポイント伝送問題が度々言及されている。
【0015】
特許文献1においては、分散アンテナシステムにおけるサブセルの測定方法が公開されている。このような分布システムは事実上従来基地局に基づく無線リモートシステムである。当該特許における「サブセルの概念」は、本特許における一つのRRH(Remote Radio Head)がカバーする区域に相当する。一組の「サブセル」は協調してモバイル端末にサービスを提供する。しかし、この特許において、どのような方法で複数の「サブセル」をいっしょに組み合せて協調してモバイル端末にサービスを提供するかについては言及されていない。二つまたは複数のサブセルを利用して協調してモバイル端末にサービスを提供すると簡単に言及しただけだった。
【0016】
特許文献2においては、マルチポイント伝送システムにおける下り伝送方法が提案されているが、具体的な協調セルのクラスタリング方法については言及しなかった。
【0017】
特許文献3においては、無線通信基地局の動的分布アンテナ選択システム及びその実現方法が公開されている。このような分散アンテナシステムは事実上従来基地局に基づく無線リモートシステムである。この発明の実現方法はK個のアンテナユニットからその中のN個のアンテナを選択して送信を行なうことである。発明の中ではアンテナの選択方法は環境の障害物、業務種類とユーザの位置に基づいて動的選択を行なうと簡単に紹介しただけで、具体的なアルゴリズムについては説明しなかった。
【0018】
特許文献4においては、分散アンテナシステムにおける電力割り当てとアンテナ選択方法が提案されている。基地局は各端末の受信したアンテナ信号強度を所定時間内で統計して平均化し、閾値より大きいアンテナのみに対して電力割り当てを行ない、無線チャネルがよいアンテナを選択してモバイル端末との通信を実現する。しかし、このような方法は上りの信号強度に基づいてアンテナの選択を行なうため、上り下りリンクが関係ないFDDシステムには適用しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】国際公開公報 第WO 2010/077192号
【特許文献2】中国公開公報 第CN101777941号
【特許文献3】中国公開公報 第CN101185270号
【特許文献4】中国公開公報 第CN101631379号
【特許文献5】中国公開公報 第CN101389115号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上述の提案と特許において、その多くはマルチポイント伝送によって得られる恩恵、例えば、セル間の干渉の減少、スループットの大幅な向上のようなところに着目しているが、実際のシステムにおいて、マルチポイント協調伝送技術は常に時々刻々と必要とするものではない。以下、図1に基づいてマルチポイント協調伝送技術を必要としない状況について説明する。
【0021】
図1はマルチポイント協調伝送に適しないシーンの例示図である。501はリモート無線ユニットのカバー範囲である。端末D1がリモート無線ユニット511のカバー区域501の中心にあるときには、リモート無線ユニット511から受信した信号は非常によいが、リモート無線ユニット512、513、514から受信した信号は弱い。そのため、このシーンにおいては、リモート無線ユニット511によるシングルポイント伝送だけで十分である。端末がリモート無線ユニット511の周縁に移動したときのみ、マルチポイント伝送によって性能を向上する必要があると考えられる。
【0022】
本発明は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、柔軟性が高く、無線リソースを節約できる、複数基地局協調サービスを支持する移動通信システム及びそのリモート無線ユニットクラスタリング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明に関わる移動通信システムは、端末に信号を送信する、アンテナネットワークを構成する複数のリモート無線ユニットと、前記アンテナネットワークに接続されている集中ベースバンドプールと、を有する移動通信システムであって、前記集中ベースバンドプールは、複数のクラスタのそれぞれに含まれているリモート無線ユニットの数が動的に可変するように、前記複数のリモート無線ユニットに対してクラスタリングを行なうことを特徴とする。
【0024】
本発明に関わる移動通信システムのリモート無線ユニットクラスタリング方法は、端末に信号を送信する、アンテナネットワークを構成する複数のリモート無線ユニットと、前記アンテナネットワークに接続されている集中ベースバンドプールと、を有する移動通信システムのリモート無線ユニットクラスタリング方法であって、複数のクラスタのそれぞれに含まれているリモート無線ユニットの数が動的に可変するように、前記複数のリモート無線ユニットに対してクラスタリングを行なうことを特徴とする。
【0025】
本発明に関わる移動通信システムおよびそのリモート無線ユニットクラスタリング方法は、各スケジューリング時刻に対して、クラスタリングの方法が動的であるだけではなく、クラスタのサイズも可変する。クラスタのサイズが1である場合はシングルポイント伝送を採用したことになり、クラスタの大きさが1より大きい場合はマルチポイント伝送を採用したことになる。「クラスタゲイン」に基づくクラスタリング方法を採用して、結局どの伝送方法を採用するかを判断するとともにそれぞれのクラスタのサイズを判断する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の移動通信システムおよびそのリモート無線ユニットクラスタリング方法によると、移動通信システムの柔軟性をさらに向上するとともに無線リソースを節約することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】従来技術のマルチポイント協調伝送に適しないシーンの例示図である。
【図2】本発明における「クラスタゲイン」に基づくクラスタリング結果の略図である。
【図3】本発明における集中ベースバンドプールの内部機能モジュールの略図である。
【図4】本発明における測定ウィンドウに基づく測定の略図である。
【図5】本発明における「クラスタゲイン」に基づく動的クラスタリング方法のシグナリングインタラクティブ図である。
【図6】本発明における「クラスタゲイン」に基づく動的クラスタリング方法のアルゴリズムフローチャートである。
【図7】本発明における「クラスタゲイン」に基づく動的クラスタリング方法の簡単な実現例である。
【図8】従来技術のLTE/LTE−A基地局に基づく分散アンテナシステムの図である。
【図9】従来技術の集中ベースバンドプールに基づく分散アンテナシステムのシステムフレーム図である。
【図10】従来技術のクラスタサイズが固定されたリモート無線ユニットの静的クラスタリングの略図である。
【図11】従来技術のクラスタサイズが固定された分散アンテナシステムにおけるリモート無線ユニットの動的クラスタリングの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図6〜10に基づいて本発明の実施形態について説明する。
【0029】
本発明の集中ベースバンドプールに基づく分散アンテナシステムは、図9に示す従来技術の集中ベースバンドプールに基づく分散アンテナシステムに対して改良を行なって得られたものである。したがって、従来技術と異なる点のみについて詳しく説明する。
【0030】
本発明の移動通信システムは、端末に信号を送信する、アンテナネットワークを構成する複数のリモート無線ユニットと、アンテナネットワークに接続されている集中ベースバンドプールと、を有し、集中ベースバンドプールは、複数のクラスタのそれぞれに含まれているリモート無線ユニットの数が動的に可変するように、複数のリモート無線ユニットに対してクラスタリングを行なう。また、本発明の移動通信システムにおいて、複数のクラスタのそれぞれに含まれているリモート無線ユニットの数は1〜n(nは2以上の自然数)の間で動的に可変する。また、本発明の移動通信システムにおいて、集中ベースバンドプールは、含まれているリモート無線ユニットの数の小から大の順に、複数のリモート無線ユニットに対してクラスタリングを行なう。また、本発明の移動通信システムにおいて、集中ベースバンドプールは、それぞれの端末に対するSINR値に基づいて、複数のリモート無線ユニットに対してクラスタリングを行なう。さらに、本発明の移動通信システムにおいて、集中ベースバンドプールが複数のリモート無線ユニットに対してクラスタリングを行なった後に、それぞれのクラスタ内には数の異なるリモート無線ユニットが含まれている。
【0031】
図2は本発明における「クラスタゲイン」に基づくクラスタリング結果の略図である。この図から、異なるスケジューリング時刻において、クラスタリングの結果はマルチポイント伝送とシングルポイント伝送の間で動的に変化することが分かる。図2Aに示すように、前の時刻(時刻N)において、リモート無線ユニット601、602はそれぞれクラスタ2、クラスタ5に属し、シングルポイント伝送状態にある。図2Bに示すように、次の時刻(時刻N+1)において、リモート無線ユニット601は他のリモート無線ユニットとともにクラスタサイズ2のクラスタ1を構成し、リモート無線ユニット602は他の二つのリモート無線ユニットとともにクラスタサイズ3のクラスタ4を構成し、マルチポイント伝送状態になる。
【0032】
以下、図3に基づいて本発明における集中ベースバンドプールの構成について説明する。
【0033】
図3は本発明における集中ベースバンドプールの内部機能モジュールの略図である。
【0034】
図3に示すように、集中ベースバンドプール901は、ユーザ優先度情報メモリ702、測定情報メモリ703およびチャネル状態情報メモリ704を含むシステムパラメータデータベース701と、ユーザスケジューリング部706と、動的クラスタリング制御部707と、無線リソース管理部708と、複数のクラスタ信号処理部709と、を備える。
【0035】
システムパラメータデータベース701には、無線ベアラパラメータ、電力制御パラメータおよび切換パラメータなどのようなネットワークの固定設定と手動設定のすべてのパラメータが記憶されている。ここでは本発明に関わる部分だけ言及する。
【0036】
ユーザ優先度情報メモリ702にはユーザのスケジューリング優先度を保存する。それぞれのRRH(リモート無線ユニット)はいずれも一枚のユーザ優先度リスト表を有し、リモート無線ユニットのIDによって区別する。具体的な生成プロセスは後文のユーザスケジューリング部706に対する説明部分に記載する。
【0037】
【表1】
【0038】
測定情報メモリ703にはそれぞれのリモート無線ユニットに配置した隣接リモート無線ユニット情報を保存する。移動局があるリモート無線ユニットにつながると、システムはこのリスト表から一つの行(当該移動局に対応するメインサービスリモート無線ユニット)を当該移動局に送信して、移動局に測定を行なわせる。このようにして移動局の有効測定範囲とフィートバックオーバーヘッドを大幅に減少することができる。
【0039】
表2は手動設定された測定情報テーブルの代表例である。一列目は全ネットワークのリモート無線ユニットIDである。これらのリモート無線ユニットはいずれも端末のメインサービスリモート無線ユニットとすることが可能である。メインサービスリモート無線ユニットとは、当該端末に対して言えば、受信信号の最も良いリモート無線ユニットのことであり、ネットワークインタラクティブのシグナリング情報を端末に提供することができる。二列目から最終列目まではこれらのリモート無線ユニットのために配置した隣接リモート無線ユニットである。移動局はメインサービスリモート無線ユニットおよび隣接リモート無線ユニットのチャネル状態情報しか測定できない。例えば、端末のメインサービスリモート無線ユニットがRRH3である場合、ネットワークはRRH3に対応する行が含まれている測定制御メッセージを当該端末に送信する。端末が測定制御メッセージを受信してから、RRH3のほかにRRH2、RRH4、RRH6、RRH7およびRRH8のチャネル状態情報も測定する。この例において、それぞれのリモート無線ユニットには最大で六つの隣接リモート無線ユニットを配置することができる。実際のシステムにおいて、このパラメータは複雑度と性能に応じて調整することができる。
【0040】
【表2】
【0041】
簡単に実現できる一つの方法は四角形/円形の測定ウィンドウによって測定設定を行なうことである。四角形測定ウィンドウによる測定方法は図4に示す通りである。表3は図4に示すRRH分布の四角形測定ウィンドウに基づく測定情報テーブルの代表例である。
【0042】
【表3】
【0043】
チャネル状態情報メモリ704には異なる端末に対応する測定されたチャネル状態情報を保存する。それぞれの端末は測定情報テーブル(表2)の内容に基づいてメインサービスリモート無線ユニットとそれぞれの隣接リモート無線ユニットとの間のチャネル状態情報を測定報告する。表4に示すようなチャネル状態情報テーブルを取得し、測定情報メモリ703に記憶する。
【0044】
【表4】
【0045】
ユーザデータバッファ705には受信したまたは送信待ちのユーザデータを保存する。
【0046】
ユーザスケジューリング部706はシステムにおけるユーザに対してスケジューリングを行なう。システムの中には大量の非リアルタイムパケットデータ業務が存在するが、システムの総チャネル容量が限られているため、当該ユーザスケジューリング部706がユーザのQos要求に基づいて業務の種類を判断し、所定の時間内でいくつかのユーザを選択してサービスを行なう必要がある。本特許においては、ユーザが全バッファ型業務モデルを使用すると仮定する。すなわち、すべてのユーザはずっとデータを送信するリクエストがあると仮定する。それぞれのRRHはいずれも自分のユーザを比例公平(PF)原則に基づいて優先度パラメータを算出し、大から小の順に並べて、ユーザ優先度リスト表を取得して、それを702に保存する。あるユーザkの優先度パラメータの具体的な算出方法は数式1に示す通りである。
【0047】
【数1】
(式において、rkは当該スケジューリング時刻のリアルタイム伝送速度で、
はユーザkの過去の一定期間のタイムウィンドウ内での平均伝送速度である。)
【0048】
動的クラスタリング制御部707は本発明における最も重要な部分であり、「クラスタリングゲイン」に基づいてクラスタリングを行い、シングルポイント伝送とマルチポイント伝送の間(あるいはクラスタサイズが異なるマルチポイント伝送の間)の切り換えを行なう。
【0049】
無線リソース管理部708は主に分けられたクラスタに対して電力割り当てなどのようなリソース割り当てを行う。
【0050】
クラスタ信号処理部709は動的クラスタリング制御部706の結果に応じてリアルタイムに生成される。例えば、複数のリモート無線ユニットがn個のクラスタに分けられると、n個のクラスタ信号処理部を有することになる。クラスタ信号処理部709は主にクラスタ内の信号処理、例えば、協調プリコーディング、変調/復調、コーディング/デコーディング、周波数拡散/逆拡散などを行なう。
【0051】
図4は本発明における測定ウィンドウに基づく測定略図である。ユーザの移動に伴い、測定範囲はメインサービスRRHの具体的な位置(例えば、経度と緯度)を中心とする、長さXm、幅Ymの四角形エリアであり、四角形測定ウィンドウ801と呼び、XとYは必要に応じて任意に設定することができる。このエリア内にあるRRHは自動的にUE(User Equipment)に測定されるRRHになる。図4に示すように、ユーザのメインサービスRRHがR6である場合、測定範囲は左上方の四角形測定ウィンドウ内のRRHである。ユーザのメインサービスRRHがRRH12である場合、測定範囲は右下の四角形測定ウィンドウ内の6個のRRHであり、R7、R8、R11、R12、R15、R16を含む。このように類推する。実際これは半自動的な測定設定である。矩形エリアの大きさは現在ネットワークの作業量に基づいて柔軟に変更することができ、ネットワークはさらに設定された測定ウィンドウの大きさに基づいて、データベースから検索を行なう。例えば、リモート無線ユニットR6の作業量負荷が重いときに、比較的に大きい矩形エリアを使用して、協調可能なセルの数を増やし、UEにもっと良い選択余地を与えて、一部の負荷をこれらのセルに平均化させる。
【0052】
図5は本発明における「クラスタゲイン」に基づく動的クラスタリング方法のシグナリングインタラクティブ図である。
【0053】
ステップ902において、集中ベースバンドプール901は測定制御メッセージをリモート無線ユニットR1、R2、…、RNに送信する。当該測定制御メッセージには測定ID、測定対象情報および測定報告設定などを含む測定情報フィールドが含まれている。測定対象情報フィールドには隣接リモート無線ユニットリスト表が含まれている。即ち、表1の中の当該移動局に対応するメインサービスリモート無線ユニットの一行は、移動局が対応するチャネル状態情報を測定するのに使われる。さらに、測定すべき各RRHのリファレンス信号ポート数、リファレンス信号パターン(CSI−RS pattern)などを含む設定情報を提供する必要がある。
【0054】
ステップ903において、端末D1、D2、…、Dmは受信した信号にしたがって、チャネル推定を行い、端末とメインサービスリモート無線ユニットおよび隣接リモート無線ユニットのチャネル状態情報を算出する。
【0055】
ステップ904において、端末D1、D2、…、Dmはネットワーク、スイッチなどを経由して、測定されたリモート無線ユニットIDおよび対応するチャネル状態情報を含む測定報告メッセージを集中ベースバンドプール901に送信する。
【0056】
ステップ905において、集中ベースバンドプール901は端末D1、D2、…、Dmから送信されたチャネル状態情報を受信した後に、チャネル状態情報メモリ704に記憶されているチャネル状態情報を更新する。チャネル状態情報のフォーマットは図9に示す通りである。
【0057】
ステップ906において、集中ベースバンドプール901のユーザスケジューリング部706は比例公平(PF)原則に基づいて、それぞれのRRHのユーザに対してソーティングを行なう。ユーザ優先度リストを取得したら、ユーザ優先度情報メモリ702に記憶されているユーザ優先度情報を更新する。
【0058】
ステップ907において、動的クラスタリング制御部707は「クラスタゲイン」に基づく方法でクラスタリングを行なう。当該方法については後文の図6に対する説明に記載する。
【0059】
ステップ908において、各クラスタの情報処理部709を動的に生成する。
【0060】
ステップ909において、各クラスタに相応する無線リソースを割り当てる。
【0061】
ステップ910において、集中ベースバンドプール901は処理済みのデータをそれぞれのリモート無線ユニットR1、R2、…RNのアンテナポートに送信する。
【0062】
ステップ911において、それぞれのリモート無線ユニットR1、R2、…RNはシングルポイント伝送またはマルチポイント伝送サービスをユーザ端末に提供する。
【0063】
以下、図6に基づいて本発明の分散アンテナシステムの伝送方式である動的切換方法について説明する。
【0064】
図6は本発明における「クラスタゲイン」に基づく動的クラスタリング方法のアルゴリズムフローチャートである。
【0065】
ステップ1001において、それぞれのRRHのユーザ優先度リスト表(表1参照)から優先度の最も高いユーザ端末を選択すると、M個のユーザ端末が選択される(M≦Nで、NはネットワークにおけるRRHの総数である)。
【0066】
ステップ1002において、初期化を行ない、BをN個のRRHの集合とし、UをM個のユーザ端末の集合とする。
【0067】
ステップ1003において、シングルポイント伝送に基づいてこれらのM個の端末のSINR(Signal to Interference-plus-Noise Ratio)を計算する。端末kのSINRは数式2によって表すことができる。
【0068】
【数2】
【0069】
数2において、分子は受信された有用な信号を表し、hikはメインサービスリモート無線ユニットRRHiからUEkまでのチャネル状態情報で、wiはRRHiからのプリコーディングマトリックスで、PiはRRHiの送信パワーである。分母の中の第一項は干渉を表し、siは端末が属するメインサービスリモート無線ユニットRRHiの隣接リモート無線ユニット集合で、hjkは隣接サービスリモート無線ユニットRRHjからUEkまでのチャネル状態情報である。分母の中の第二項Nは加算性ガウスホワイトノイズである。式において、すべてのチャネル状態情報hは集中ベースバンドプール901に記憶されている(表4参照)ため、プリコーディングマトリックスwはチャネルhのSVD分解によって得られる。
【0070】
ステップ1004において、これらのユーザ端末のSINR1が閾値T1より大きいか否かを判断する。SINR1が閾値T1より大きいと、このユーザ端末はセル中心のユーザかまたは干渉が小さい。SINR1が閾値T1より小さいと、このユーザ端末はセルエッジのユーザであるかまたは干渉が大きい。T1は予め決められた値である。動的クラスタリング制御部707は一組の経験値の中(例えば、{−1dB,0dB,1dB,2dB})から現在のネットワーク負荷などの状況に基づいて、この値を微調整してSINRがT1より大きいユーザにメインサービスRRHを割り当ててシングルポイント伝送を行ない、これらのユーザが属するクラスタのサイズを1とし、その結果をクラスタリング結果テーブルに書き込む。
【0071】
【表5】
【0072】
ステップ1005において、すでに一対になったRRHとユーザ端末を集合Bと集合Uからそれぞれ削除する。アルゴリズムの簡素化のために、ここでは一つのRRHが一つの時間帯に一つのクラスタにしか属することができず、複数のクラスタによって共同占用されることはできないと仮定する。また、一つのユーザ端末は一つの時間帯に一つのクラスタにしか属することができず、複数のクラスタのリソースを同時に占用することはできないと仮定する。
【0073】
ステップ1006において、このときの選択待ちRRHの集合Bが空集合であるか否か、つまりRRHが配分済みだったか否かを判断する。「YES」と判断された場合はアルゴリズムが終了し、「NO」と判断された場合はステップ1007に進む。
【0074】
ステップ1007において、このときの選択待ちユーザ端末の集合Uが空集合であるか否か、つまりユーザ端末がサービスを受けているか否かを判断する。「YES」と判断された場合は、アルゴリズムが終了し、「NO」と判断された場合はステップ1008に進む。
【0075】
ステップ1008において、クラスタサイズcに1を加え、次の優先度のマルチポイント伝送の判断に備える。
【0076】
ステップ1009において、このときのクラスタサイズcが最大クラスタサイズCmaxの制限を超えたか否かを判断する。「YES」であると判断された場合はステップ1013に進み、「NO」と判断された場合はステップ1010に進む。マルチポイント協調サービスにおいて、「ポイント」を多く使う必要はない。複雑度がポイント数の増加につれて迅速に増大するだけでなく、返送リンクのオーバーヘッド増加をもたらす。また、マルチポイント伝送のゲインも飽和状態に達する。そのため、実際のシステムにおいて、マルチポイント伝送の最大のポイント数、つまりここで言うクラスタサイズの最大値Cmaxを制限しなければならない。経験値に基づいて、通常この値を3または4に設定する。
【0077】
ステップ1010において、残りのRRHを用いてクラスタサイズcにしたがって組み合わせを行なう。それぞれのRRHをメインサービスRRHとし、測定情報テーブル内(例えば、表2または表3)のすべての利用可能な隣接集合RRH内からc−1個を選択してサイズがcであるクラスタの組み合わせを行うと、
種類の組み合わせができる。端末kのSINRcは数3によって表すことができる。
【0078】
【数3】
【0079】
数3において、Cはユーザ端末にサービスを提供するクラスタに含まれているRRHの集合である。分子はクラスタC内のすべてのRRHがユーザ端末のために有効なデータ伝送を行なうときに、ユーザ端末が受信した有用な信号を表す。ユーザ端末のメインサービスRRHIは必ずクラスタ内に含まれている。分母の中の第一項はクラスタ外の干渉を表し、主にこのクラスタには属しないが端末が属するメインサービスリモート無線ユニットRRHIの隣接リモート無線ユニット集合SIに属するRRHから来る。具体的なパラメータに関する説明は図4のステップ902における測定制御メッセージと同じである。
【0080】
ステップ1011において、
の中のそれぞれの組み合わせのクラスタゲインを計算する。クラスタサイズをcとすると、複数のユーザ端末に同時にサービスを提供するクラスタゲインGcは数4の通りである。
【0081】
【数4】
【0082】
数4において、Rcはクラスタcに属するユーザ端末がクラスタのマルチポイント協調サービスにより得たデータ速度の和である。R1はクラスタcに属するユーザ端末がシングルセルサービスにより得たデータ速度の和である。
【0083】
クラスタゲイン値に基づいて大から小の順に並べると、クラスタゲインテーブルが得られる。表6はクラスタサイズが3であるクラスタゲインの表示例である。表6では利用可能なRRHのすべての組み合わせを並べており、制限条件としては測定情報テーブルに基づいてクラスタ内RRHの選択をしなければならない。同じRRHの組み合わせが現れたときにはその中の一つのみを保留する。例えば、テーブルの中のcluster1とcluster4に重複したクラスタ情報が含まれていると、即ちクラスタ内に同じRRHが含まれていると、cluster4の情報は削除する。
【0084】
【表6】
【0085】
ステップ1012において、Greedy法に基づいて上から下までクラスタゲインテーブルを検索して、GcがTcより大きい条件を満たすクラスタを選択する。ある選択待ちクラスタに含まれているRRHがその前に選択されたクラスタにすでに属している場合、このクラスタは再選択されない。
【0086】
Tcはクラスタサイズがc(c>1)のときのゲイン閾値であり、Tc=1+Ocと定義する。クラスタゲインGcはサイズがcであるクラスタにおけるすべてのユーザ端末が得た速度の和を、これらのユーザ端末がすべてシングルポイント伝送を使用するときに得る速度の和で割るので、マルチポイント伝送がゲインを有するためにGcは少なくとも1より大きくなければならない。Ocはクラスタサイズがcであるマルチポイント伝送のゲインファクターである。マルチポイント伝送のゲインはシステムの一部の余分のリソースを消耗することによって得られたものであり、伝送の余分のシグナリングオーバーヘッド、REリソース占用オーバーヘッド(例えばパイロット占用)、計算複雑度オーバーヘッドなどが含まれる。クラスタサイズがcであるマルチポイント伝送ユーザ端末のフィードバックオーバーヘッドはしばしばシングルポイント伝送のc倍より多い。シングルポイントのチャネル情報を送信するほかに、ポイント間の相対チャネル情報も送信するため、REのリソース占用オーバーヘッド(例えばパイロット占用)は、単純にマルチポイント伝送がシングルポイント伝送の2c倍であると見なすことができ、あるポイントでパイロットを送信するときに、その他のポイントの同じ時間周波数リソースはすべて穴あけする必要がある。計算複雑度オーバーヘッドに対しては、cの増大につれて指数が増える。そのため、如何にオーバーヘッドを行ない、ゲインをもたらすかのマッピングモデリングは非常に複雑なプロセスである。本特許において、説明しやすくするために、Ocは運営の実際希望値に基づいて動的な割り当てを行なうことができ、この値はcの増大につれて大きくなると仮定する。例えば、好ましいフィードバックを考慮するとき、値の範囲は0.1〜0.4であるが、実際の状況においては、コードブックの設計、量子化誤差とフィードバック遅延の影響により、フィードバックは理想的になれない。そのため、この値は適切に下方調整することができる。
【0087】
ステップ1013において、条件を満たさない残りのユーザ端末にメインサービスRRHを割り当ててシングルポイント伝送を行なう。
【0088】
以上では本発明の分散アンテナシステムの伝送方式の動的切換方法について説明したが、本発明はこれに限らず、必要に応じて変更することができる。
【0089】
例えば、図6のプロセスにおいて、クラスタサイズcの1から始めて、クラスタサイズcを1ずつ増やしてクラスタリングを行なう。当然ながらクラスタリングを行なうときのクラスタサイズcの値とクラスタサイズcの変化順は状況に応じて適切に変えることができる。
【0090】
以下、図7を参照しながら本発明の「クラスタゲイン」に基づく動的クラスタリング方法の簡単な実現例について説明する。
【0091】
図7は本発明における「クラスタゲイン」に基づく動的クラスタリング方法の簡単な実現例である。図7に示すように、ネットワークには9個のリモート無線サービスユニットがあり、それぞれ1〜9までの数字で表す。最大のクラスタサイズは3に設定する。
【0092】
ステップ1:図6におけるステップ1001にしたがって、それぞれのRRHのユーザ優先度リスト表から優先度が最も大きいものを一つ選択する。ここでは、図4で説明した方法にしたがって表7のような測定情報テーブルを生成する。
【0093】
【表7】
【0094】
この測定情報テーブの各行は一つのスケジューリングしたユーザに対応する。ユーザからフィードバックされたチャネル状態情報に基づいて表8のようなチャネル状態情報テーブルを得る。
【0095】
【表8】
【0096】
それぞれのユーザは図6のステップ1003の方法にしたがって、シングルポイント伝送のSINRを計算し、表9のようなSINR値を取得したとする。
【0097】
【表9】
【0098】
T1を1dBとする。計算により、ユーザ1とユーザ5のSINR値が閾値T1を超えたため、ユーザ1とユーザ5はそれぞれメインサービス基地局によってシングルポイント伝送を行なう。このときのクラスタリング結果のテーブルは表10の通りである。
【0099】
【表10】
【0100】
ここまで、クラスタサイズが1であるクラスタ(即ち、数字1が示すクラスタと数字5が示すクラスタ)を二つ取得し、クラスタリングの状態は図7(A)に示す通りである。
【0101】
ステップ2:割り当て済みのRRHとユーザ(UE1,UE5およびRRH1,RRH5)、及び対応するチャネル状態情報を削除する。
【0102】
【表11】
【0103】
上記表11のチャネル状態情報テーブルに基づいて、図6のステップ1010の方法にしたがって、RRHに対して組み合わせを行なう。2ポイント伝送のクラスタゲインを計算してクラスタゲインリスト表12を取得する。その中で、重複したRRH組合結果を削除する。
【0104】
【表12】
【0105】
上記表12を新たに整理して、重複したクラスタ情報を削除し、クラスタゲイン値の大から小の順にしたがって、表13のように並べる。
【0106】
【表13】
【0107】
G2がT2より大きい組み合わせを選択する。T2=1.15とすると、O2=0.15になる。即ち、二つのポイントの協調によるオーバーヘッドを考えると、システムのゲインは少なくとも15%に達する必要がある。Greedyのアルゴリズムによって選択されたクラスタは{4、7}と{8、9}である。そして、表14のようなクラスタ結果テーブルが得られる。
【0108】
【表14】
【0109】
ここまで、クラスタサイズが2であるクラスタ(即ち、数字4、7が示すクラスタと数字8、9が示すクラスタ)をさらに二つ取得し、クラスタリングの状態は図7(B)に示す通りである。
【0110】
ステップ3:割り当て済みのRRHとユーザ、および対応するチャネル状態情報を削除して表15を取得する。
【0111】
【表15】
【0112】
上記表15のチャネル状態情報テーブルに基づいて、図6のステップ1010の方法にしたがって、RRHに対して組み合わせを行ない、重複したRRH組み合わせ結果を削除する。3ポイント伝送のクラスタゲインを計算してクラスタゲインリスト表16を取得する。T3=1.2とする。三つのポイントの協調によるオーバーヘッドを考えると、システムのゲインは少なくとも20%に達する必要がある。Greedyのアルゴリズムによって選択されたクラスタは{2、3、6}である。
【0113】
【表16】
【0114】
そして、表17のようなクラスタリング結果テーブルが得られる。
【0115】
【表17】
【0116】
ここまで、クラスタサイズが3であるクラスタ(即ち、数字2、3、6が示すクラスタ)をさらに一つ取得し、クラスタリングの状態は図7(C)に示す通りである。
【0117】
このとき、システム内の残りのRRHとユーザ数はいずれも0であり、アルゴリズムは終了する。
【0118】
以上、本発明の移動通信システムおよびそのリモート無線ユニットクラスタリング方法について説明したが、続いては、本発明と従来技術との異なる点について簡単に比較する。従来技術の動的クラスタリング方法においてはクラスタサイズが固定されているが、本発明における動的クラスタリング方法においてはクラスタサイズが動的に可変する。即ち、あるスケジューリング時刻内において、含まれている複数のクラスタのクラスタサイズはすべて同じではない。これにより、クラスタサイズの異なるマルチポイント伝送間の切り換えが実現可能だけでなく(例えば、クラスタサイズがそれぞれ2、3であるクラスタが存在する)、さらにシングルポイント伝送とマルチポイント伝送の二種類の本質的に完全に異なる伝送方式間の切り換えも実現可能である(例えば、クラスタサイズがそれぞれ1、2であるクラスタが存在する)。
【0119】
当然ながら、従来の技術において、クラスタリングされていないリモート無線ユニットの数がクラスタサイズより小さいときにも、リモート無線ユニットの数がクラスタサイズより小さいクラスタが存在する。例えば、図11に示すクラスタサイズが2である状況1において、リモート無線ユニットが17個である場合、リモート無線ユニットが二つであるクラスタが存在すると同時に、リモート無線ユニットが1であるクラスタも必ず存在する。しかし、そのリモート無線ユニットの数が異なるクラスタの存在は受動的であり、その本質は本発明と異なる。本発明はそれぞれのクラスタの中のリモート無線ユニットの個数を主動的に変更することにより集中ベースバンドプールに基づく分散アンテナシステムにおけるリモート無線ユニットの割り当てをより合理的にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末に信号を送信する、アンテナネットワークを構成する複数のリモート無線ユニットと、前記アンテナネットワークに接続されている集中ベースバンドプールと、を有する移動通信システムであって、
前記集中ベースバンドプールは、複数のクラスタのそれぞれに含まれているリモート無線ユニットの数が動的に可変するように、前記複数のリモート無線ユニットに対してクラスタリングを行なうことを特徴とする移動通信システム。
【請求項2】
一つのスケジューリング時刻内において、前記複数のクラスタのそれぞれに含まれているリモート無線ユニットの数は1からn(nは2以上の自然数)の間で動的に可変することを特徴とする請求項1に記載の移動通信システム。
【請求項3】
前記集中ベースバンドプールは、含まれているリモート無線ユニットの数の小から大の順にしたがって、前記複数のリモート無線ユニットに対してクラスタリングを行なうことを特徴とする請求項1に記載の移動通信システム。
【請求項4】
前記集中ベースバンドプールは、それぞれの端末に対するSINR値に基づいて、クラスタゲインを算出し、前記複数のリモート無線ユニットに対してクラスタリングを行なうことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の移動通信システム。
【請求項5】
前記集中ベースバンドプールが前記複数のリモート無線ユニットに対してクラスタリングを行なった後に、それぞれの前記クラスタ内には数の異なる前記リモート無線ユニットが含まれていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の移動通信システム。
【請求項6】
端末に信号を送信する、アンテナネットワークを構成する複数のリモート無線ユニットと、前記アンテナネットワークに接続されている集中ベースバンドプールと、を有する移動通信システムのリモート無線ユニットクラスタリング方法であって、
複数のクラスタのそれぞれに含まれているリモート無線ユニットの数が動的に可変するように、前記複数のリモート無線ユニットに対してクラスタリングを行なうことを特徴とする移動通信システムのリモート無線ユニットクラスタリング方法。
【請求項7】
一つのスケジューリング時刻内において、前記複数のクラスタのそれぞれに含まれているリモート無線ユニットの数は1からn(nは2以上の自然数)の間で動的に可変することを特徴とする請求項6に記載の移動通信システムのリモート無線ユニットクラスタリング方法。
【請求項8】
含まれているリモート無線ユニットの数の小から大の順にしたがって、前記複数のリモート無線ユニットに対してクラスタリングを行なうことを特徴とする請求項7に記載の移動通信システムのリモート無線ユニットクラスタリング方法。
【請求項9】
それぞれの端末に対するSINR値に基づいて、クラスタゲインを算出し、前記複数のリモート無線ユニットに対してクラスタリングを行なうことを特徴とする請求項7乃至8のいずれかに記載の移動通信システムのリモート無線ユニットクラスタリング方法。
【請求項10】
前記集中ベースバンドプールが前記複数のリモート無線ユニットに対してクラスタリングを行なった後に、それぞれの前記クラスタ内には数の異なる前記リモート無線ユニットが含まれていることを特徴とする請求項7乃至8のいずれかに記載の移動通信システムのリモート無線ユニットクラスタリング方法。
【請求項1】
端末に信号を送信する、アンテナネットワークを構成する複数のリモート無線ユニットと、前記アンテナネットワークに接続されている集中ベースバンドプールと、を有する移動通信システムであって、
前記集中ベースバンドプールは、複数のクラスタのそれぞれに含まれているリモート無線ユニットの数が動的に可変するように、前記複数のリモート無線ユニットに対してクラスタリングを行なうことを特徴とする移動通信システム。
【請求項2】
一つのスケジューリング時刻内において、前記複数のクラスタのそれぞれに含まれているリモート無線ユニットの数は1からn(nは2以上の自然数)の間で動的に可変することを特徴とする請求項1に記載の移動通信システム。
【請求項3】
前記集中ベースバンドプールは、含まれているリモート無線ユニットの数の小から大の順にしたがって、前記複数のリモート無線ユニットに対してクラスタリングを行なうことを特徴とする請求項1に記載の移動通信システム。
【請求項4】
前記集中ベースバンドプールは、それぞれの端末に対するSINR値に基づいて、クラスタゲインを算出し、前記複数のリモート無線ユニットに対してクラスタリングを行なうことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の移動通信システム。
【請求項5】
前記集中ベースバンドプールが前記複数のリモート無線ユニットに対してクラスタリングを行なった後に、それぞれの前記クラスタ内には数の異なる前記リモート無線ユニットが含まれていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の移動通信システム。
【請求項6】
端末に信号を送信する、アンテナネットワークを構成する複数のリモート無線ユニットと、前記アンテナネットワークに接続されている集中ベースバンドプールと、を有する移動通信システムのリモート無線ユニットクラスタリング方法であって、
複数のクラスタのそれぞれに含まれているリモート無線ユニットの数が動的に可変するように、前記複数のリモート無線ユニットに対してクラスタリングを行なうことを特徴とする移動通信システムのリモート無線ユニットクラスタリング方法。
【請求項7】
一つのスケジューリング時刻内において、前記複数のクラスタのそれぞれに含まれているリモート無線ユニットの数は1からn(nは2以上の自然数)の間で動的に可変することを特徴とする請求項6に記載の移動通信システムのリモート無線ユニットクラスタリング方法。
【請求項8】
含まれているリモート無線ユニットの数の小から大の順にしたがって、前記複数のリモート無線ユニットに対してクラスタリングを行なうことを特徴とする請求項7に記載の移動通信システムのリモート無線ユニットクラスタリング方法。
【請求項9】
それぞれの端末に対するSINR値に基づいて、クラスタゲインを算出し、前記複数のリモート無線ユニットに対してクラスタリングを行なうことを特徴とする請求項7乃至8のいずれかに記載の移動通信システムのリモート無線ユニットクラスタリング方法。
【請求項10】
前記集中ベースバンドプールが前記複数のリモート無線ユニットに対してクラスタリングを行なった後に、それぞれの前記クラスタ内には数の異なる前記リモート無線ユニットが含まれていることを特徴とする請求項7乃至8のいずれかに記載の移動通信システムのリモート無線ユニットクラスタリング方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−182792(P2012−182792A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−45011(P2012−45011)
【出願日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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