説明

移動電子装置のバッテリー用レセプタクルコネクター

【課題】バッテリーのプリント回路基板を半田付けする際の半田上がり現象を最小化し、かつプリント回路基板の回路を保護することができる移動電子装置のバッテリー用レセプタクルコネクターを提供する。
【解決手段】前記移動電子装置のプラグコネクターと電気的に接触される接触端子部と、前記接触端子部と一体に形成され、バッテリープリント回路基板の貫通孔にはめ込まれて半田付けされる接続端子部と、前記接続端子部を半田付けする際に前記バッテリープリント回路基板の前記貫通孔に流入する半田を収容するための半田収容空間を、前記接続端子部と共に形成するように、前記接続端子部の先端から折り曲げられて延び、前記接続端子部と共に前記バッテリープリント回路基板の前記貫通孔にはめ込まれて半田付けされる延長部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気コネクターに関し、特に、移動電子装置のバッテリーに備えられるレセプタクルコネクターに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、移動通信端末機等の移動電子装置は、脱着可能なバッテリーを具備し、バッテリーと移動電子装置とが電気的に接続されるように、バッテリーと移動電子装置とには、コネクターがそれぞれ備えられている。
【0003】
コネクターによりバッテリーと移動電子装置とが電気的に接続する方式には、2通りの方式がある。すなわち、移動電子装置側のコネクターがバッテリー側のコネクターを弾性的に支持する方式と、バッテリー側のコネクターが移動電子装置側の端子を弾性的に収容する方式とがある。
【0004】
ここで、移動電子装置側のコネクターがバッテリー側のコネクターを弾性的に支持する方式の場合には、移動電子装置にコネクターを装着する構造が複雑であり、かつ体積が大きくなるので、製造単価が高く、故障率が高いだけでなく、形状のスリム化に逆行するという問題があった。
【0005】
一方、バッテリー側のコネクターが移動電子装置側の端子を弾性的に収容する方式として、下記日本国特許文献1に開示された「移動電子装置のバッテリ用キャップ」を参照すると、移動電子装置に脱着可能なバッテリ4の一側にハウジング24が備えられ、ハウジング24に複数のコネクタ12が備えられている。コネクタ12は、プリント回路基板10に固定されて、バッテリ4の電気回路に電気的に接続される。
【0006】
プリント回路基板10には、コネクタ12がはめ込まれる複数の貫通孔26が形成されるが、コネクタ12が貫通孔26にはめ込まれた状態で半田付け(soldering)される時に、フィレットが形成される面の反対側の面に、貫通孔26を介してフラックス(flux)が湧出する半田上がり現象が発生して、プリント回路基板10の回路が短絡する等の不良が発生するという問題点があった。
【0007】
そのため、従来では、貫通孔26をビニール膜(フィルム)で覆い、コネクタ12がビニール膜を貫通しつつはめ込まれた状態で半田付けする場合もあったが、この場合にも、半田付け温度によりビニール膜が溶融されて、貫通孔26への半田上がり現象が依然として発生するという問題点があった。
【特許文献1】特開2006−19287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の移動電子装置のバッテリー用レセプタクルコネクターが持っている問題点を改善するためになされたものであって、その目的は、バッテリーのプリント回路基板を半田付けする際の半田上がり現象を最小化し、かつプリント回路基板の回路を保護することができる移動電子装置のバッテリー用レセプタクルコネクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成すべく、本発明による移動電子装置のバッテリー用レセプタクルコネクターは、前記移動電子装置のプラグコネクターと電気的に接触される接触端子部と、前記接触端子部と一体に形成され、バッテリープリント回路基板の貫通孔にはめ込まれて半田付けされる接続端子部と、前記接続端子部を半田付けする際に前記バッテリープリント回路基板の前記貫通孔に流入する半田を収容するための半田収容空間を、前記接続端子部と共に形成するように、前記接続端子部の先端から折り曲げられて延び、前記接続端子部と共に前記バッテリープリント回路基板の前記貫通孔にはめ込まれて半田付けされる延長部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記接続端子部及び前記延長部の少なくとも何れか一つの一側を半田付けする際に、前記半田収容空間に半田を流入させる半田流入口が形成される。
【0011】
前記接続端子部と前記延長部とは、全体的に「V」字状に形成されることができる。また、前記接続端子部と前記延長部とは、全体的に「U」字状に形成されることもできる。
【0012】
好ましくは、本発明は、前記延長部の先端から折り曲げられて延び、前記バッテリープリント回路基板の上部面に支持される固着部をさらに備える。
【0013】
さらに好ましくは、前記接続端子部と前記延長部の少なくとも何れか一つの外側に、前記バッテリープリント回路基板の半田付け面に支持される係止部が形成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明による移動電子装置のバッテリー用レセプタクルコネクターによれば、バッテリーのプリント回路基板を半田付けする際の半田上がり現象を最小化して、プリント回路基板の回路を保護することができ、プリント回路基板に堅固に結合することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付した図面を参照して、本発明による移動電子装置のバッテリー用レセプタクルコネクターの好ましい実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
図1〜図7に示すように、本発明の一実施の形態による移動電子装置のバッテリー用レセプタクルコネクターは、移動電子装置のプラグコネクター2と電気的に接触される接触端子部10と、バッテリープリント回路基板1の貫通孔1aにはめ込まれて半田付けされる接続端子部20と、接続端子部20を半田付けする際にバッテリープリント回路基板1の貫通孔1aに流入する半田を収容する空間を接続端子部20と共に形成するように、接続端子部20の先端から折り曲げられて延びる延長部30とを備える。
【0017】
接触端子部10は、移動電子装置のプラグコネクター2の差込方向を横切る方向へ移動しつつ、プラグコネクター2を弾性的に支持し、かつプラグコネクター2と電気的に接続される。
【0018】
接続端子部20は、接触端子部10に連続して一体に形成され、バッテリープリント回路基板1の貫通孔1aにはめ込まれる。
【0019】
延長部30は、接続端子部20の下端から片持ち梁状に延びるように、例えば一体の部材が折り曲げられて形成されている。
【0020】
すなわち、接続端子部20と延長部30とは、全体的に「V」字状に形成され、延長部30は、接続端子部20に対して弾性的に変形する。したがって、接続端子部20と延長部30とが貫通孔1aにはめ込まれるとき、接続端子部20と延長部30とがなす夾角が小さくなりつつ弾性的にはめ込まれる。
【0021】
一方、接続端子部20と延長部30とが「V」字状に形成される場合には、接続端子部20と延長部30との交差部分が尖状に形成されて、破壊されるおそれがあるので、接続端子部20と延長部30とを「U」字状に形成することも可能である。
【0022】
延長部30は、接続端子部20と共にバッテリープリント回路基板1の貫通孔1aにはめ込まれて半田付けされる。
【0023】
接続端子部20と延長部30との一側には、半田付けをする際に半田収容空間25に半田を流入させる半田流入口26がそれぞれ形成されている。
【0024】
半田流入口26に関しては、接続端子部20と延長部30との一側が切開されて半田が出入できる空間を形成する。図3に示すように、半田流入口26は、「V」字状の溝として形成されることができる。
【0025】
図4と図6とに示すように、接続端子部20と延長部30とが貫通孔1aにはめ込まれて固着された状態で、プリント回路基板1の底面1bで半田付けをすると、半田流入口26を介して半田収容空間25に液状の半田が流入することによって、プリント回路基板1の上部面1cまで半田が到達するのを抑制することができる。
【0026】
すなわち、接続端子部20及び延長部30と貫通孔1aの内側壁との間には、遊隙1dがあるので、この空間を介して半田の一部がプリント回路基板1の上部面1c側に移動し、殆どの半田は、半田流入口26を介して半田収容空間25に流入する。
【0027】
したがって、半田付け作業時に、液状の半田が接続端子部20又は延長部30に沿ってプリント回路基板1の上部面1cへ移動する半田上がり現象(半田が上部面から大きく突出する現象)を最小化させることができ、それによって、プリント回路基板1の上部面に形成された回路を保護することができる。
【0028】
半田収容空間25に流入した液状の半田は硬化して、接続端子部20及び延長部30と共に、固体の塊を形成する。それとともに、半田収容空間25の半田を含む貫通孔1aの内部の半田が、貫通孔1aの内側壁に溶着され、かつ半田の一部が、プリント回路基板1の底面にフィレットを形成することによって、接続端子部20と延長部30とを堅固に支持する。
【0029】
貫通孔1aの内部で硬化した半田は、貫通孔1aの内側壁、接続端子部20及び延長部30を一体に支持することによって、接続端子部20と延長部30とをプリント回路基板1に堅固に結合させることができる。
【0030】
延長部30の先端には、バッテリープリント回路基板1の上部面1cに支持される固着部40が、延長部30の先端から延びている。
【0031】
固着部40は、延長部30の先端からプリント回路基板1の上部面1c側に曲がるように、例えば一体の部材が折り曲げられて形成されている。固着部40はプリント回路基板1の上部面1cに支持され、それによって、延長部30が貫通孔1aに挿入される程度(深さの限界)を定める。
【0032】
すなわち、固着部40が、プリント回路基板1の上部面1cに係止されて支持されることによって、接続端子部20及び延長部30は、プリント回路基板1の上部面1cから一定の距離以上突出せずに、一定の位置に停止することができる。
【0033】
ガイドアームを参照すると、バッテリープリント回路基板1の底面1bに支持される係止部50が、接続端子部20の外側に形成されることができる(図7参照)。係止部50は、延長部30の外側に形成されてもよい。また、係止部50は、接続端子部20及び延長部30の各々の外側に形成されてもよい。
【0034】
係止部50は、貫通孔1aを介してプリント回路基板1の上部面1c側に突出した接続端子部20と延長部30とが、プリント回路基板1の底面1b側に復元できないように、接続端子部20と延長部30とを支持する。
【0035】
すなわち、係止部50は、プリント回路基板1の上部面1c側に突出した接続端子部20と延長部30との外側面に形成されて、プリント回路基板1の上部面1cの貫通孔1aに係止される。それによって、接続端子部20と延長部30とは、はめ込まれた方向の逆方向へ復元しないように阻止される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係る移動電子装置のバッテリー用レセプタクルコネクターを示す一側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る移動電子装置のバッテリー用レセプタクルコネクターを示す一側面図である。
【図3】図1のA−A線に沿う横断面図である。
【図4】図1に示す移動電子装置のバッテリー用レセプタクルコネクターの取付状態を示す概略的な一側面図である。
【図5】図1に示す移動電子装置のバッテリー用レセプタクルコネクターの取付状態を示す概略的な一側面図である。
【図6】図5の「X」部分の拡大図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る移動電子装置のバッテリー用レセプタクルコネクターの取付状態を示す一側面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 プリント回路基板
1a 貫通孔
1b 底面
1c 上部面
1d 遊隙
2 プラグコネクター
10 接触端子部
20 接続端子部
25 半田収容空間
26 半田流入口
30 延長部
40 固着部
50 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動電子装置に脱着されるバッテリーのプリント回路基板に半田付けされて結合され、移動電子装置のプラグコネクターと電気的に接続する移動電子装置のバッテリー用レセプタクルコネクターであって、
前記移動電子装置のプラグコネクターと電気的に接触される接触端子部と、
前記接触端子部と一体に形成され、バッテリープリント回路基板の貫通孔にはめ込まれて半田付けされる接続端子部と、
前記接続端子部を半田付けする際に前記バッテリープリント回路基板の前記貫通孔に流入する半田を収容するための半田収容空間を、前記接続端子部と共に形成するように、前記接続端子部の先端から折り曲げられて延び、前記接続端子部と共に前記バッテリープリント回路基板の前記貫通孔にはめ込まれて半田付けされる延長部と、を備えることを特徴とする移動電子装置のバッテリー用レセプタクルコネクター。
【請求項2】
前記接続端子部及び前記延長部の少なくとも何れか一つの一側を半田付けする際に、前記半田収容空間に半田を流入させる半田流入口が形成されることを特徴とする請求項1に記載の移動電子装置のバッテリー用レセプタクルコネクター。
【請求項3】
前記接続端子部と前記延長部とが、全体的に「V」字状に形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の移動電子装置のバッテリー用レセプタクルコネクター。
【請求項4】
前記接続端子部と前記延長部とが、全体的に「U」字状に形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の移動電子装置のバッテリー用レセプタクルコネクター。
【請求項5】
前記延長部の先端から折り曲げられて延び、前記バッテリープリント回路基板の上部面に支持される固着部をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の移動電子装置のバッテリー用レセプタクルコネクター。
【請求項6】
前記接続端子部と前記延長部の少なくとも何れか一つの外側に、前記バッテリープリント回路基板の半田付け面に支持される係止部が形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の移動電子装置のバッテリー用レセプタクルコネクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−146873(P2009−146873A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56154(P2008−56154)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(508040670)株式會社ケーエーイー (3)
【Fターム(参考)】