説明

移植機における前押え操作具

【課題】走行機体の側方からの操作が容易な移植機における前押え操作具を提供することを課題としている。
【解決手段】走行機体3の前方のボンネット5の前方に、機体フレーム3a側から立設され、把持部25の外側端位置が、ボンネット5の外側端部より外側に位置してなり、走行機体3の前方側の浮き上がりを押さえる前押え操作具15を設けた。該前押え操作具15の把持部25は、ボンネット5の前方の前照灯35より上方であって、且つボンネット5の上端より下方に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の前方側の浮き上がりを押さえるための移植機における前押え操作具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来走行機体前方のボンネットの前方に、走行機体の前方側の浮き上がりを押さえるための前押え操作具を設け、該前押え操作具の上部に横方向の把持部をが設けられた移植機(乗用田植機)が公知となっている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3488187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし上記前押え操作具は、全体として正面視においてボンネットの左右幅内に位置している。このため把持部を走行機体の左右側方から容易に操作することができないという欠点があった。またボンネットの前方に前照灯を設ける場合、前押え操作具が妨げとなるため、幅広の明るい前照灯を容易には設けることができないという欠点もあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための本発明の移植機における前押え操作具は、走行機体3の前方にボンネット5を設け、該ボンネット5の前方に、走行機体3の前方側の浮き上がりを押さえるための前押え操作具15を設け、該前押え操作具15が、機体フレーム3a側から立設され、上部に横方向の把持部25を備えてなる移植機において、上記把持部25の外側端位置を、ボンネット5の外側端部より外側に位置させたことを第1の特徴としている。
【0005】
またボンネット5の前方に前照灯35を設け、把持部25を、前照灯35より上方であって、且つボンネット5の上端より下方に位置させたことを第2の特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
以上のように構成される本発明の構造によると、前押え操作具の把持部の外側端部がボンネットの外側端部より外側に位置しているため、把持部を走行機体の左右側方から容易に操作することができるという利点がある。また把持部を、ボンネットの前方に設けられた前照灯より上方であって、且つボンネットの上端より下方に位置させることによって、把持部がボンネット上方の運転者の視界を妨げることがなく、運転者の視界低下を防止するという効果がある。
【0007】
さらに把持部が前照灯の前方を横方向において遮ることもないため、前照灯からの光が少なくとも横方向で把持部によって妨げられることがなく、ボンネット前方に幅広(横方向に長い)の前照灯を取り付けたり、複数の前照灯を間隔を空けて横方向に配置した場合、把持部によって前照灯の方向(横方向)に光が妨げられることなく、走行機体の前方を明るく照らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1〜図3は、本発明の前押え操作具を備えた移植機である乗用田植機の平面図,側面図,正面図である。本乗用田植機は、従来同様、前後輪1,2を備えた走行機体3の後方に、昇降リンク機構4を介して植付作業機6が連結された構造となっている。
【0009】
走行機体3の前方には、エンジンの上方側を覆うボンネット5が設けられている。該ボンネット5はフロントグリル一体型となっている。ボンネット5の後方には、運転席11が設けられている。運転席11は座席8を備えている。運転席11内における、座席8前方にはフロント操作パネル9が設けられている。該フロント操作パネル9にはステアリングハンドル12が突設されている。該ステアリングハンドル12を旋回操作することによって、前輪1を操作して走行機体3の操向操作を行うことができる。
【0010】
フロント操作パネル9には、主変速レバー13が左右及び前後揺動自在に設けられている。該主変速レバー13を左右及び前後に揺動操作することにより、走行機体3の変速及び前後進の切り替えを行うことができる。
【0011】
ボンネット5の左右両側方は上方に突出したステップ10となっている。右側のステップ10の後方側に、クラッチブレーキペダル14がステップ10から突出して踏み込み操作自在に設けられている。
【0012】
上記クラッチブレーキペダル14の操作によって、エンジンからの駆動力をトランスミッションに入り切り自在に伝動するクラッチ(主クラッチ)及び前後輪1,2の制動を行うブレーキの入り切りを操作することができる。前後輪1,2は、トランスミッションから出力される駆動力によって駆動される。
【0013】
クラッチブレーキペダル14は、後述する操作系の作動により、踏み込み状態で、トランスミッションへの駆動力を切り、且つブレーキを作動させて前後輪1,2の制動を行う。踏み込みを解除する(クラッチペダル14から足をはなす)ことによって、クラッチブレーキペダル14が上方に揺動して初期姿勢に復帰し、主クラッチを入り作動させるとともに、上記ブレーキの作動を解除し、4輪の制動を解除する。
【0014】
これにより作業者が座席8に座り、クラッチブレーキペダル14の踏み込みを解除した状態で、主変速レバー13を操作することによって、走行機体3を変速して前進又は後進させることができる。
【0015】
したがって植付作業機6を下降させてフロート7を圃場に接地させ、走行機体3を上記のように走行させるとともに、植付作業機6を駆動することによって、圃場への苗の植付け作業を行うことができる。上記ブレーキは、走行機体3の走行中においては走行を停止させ、走行機体3の停止中は駐車ブレーキとして機能する。
【0016】
該ボンネット5の前方には、走行機体3の前端部分に位置して上下揺動自在に地上操作具15が設けられている。後述するように地上操作具15を上下揺動操作することによって、走行機体3の走行を車外から操作することができる。
【0017】
また地上操作具15を持つことによって走行機体3の前方側を押さえて、走行機体3の前方の浮き上がり、例えば畦超え走行やトラックの荷台等への積み下ろし走行時のヘッドアップ等を抑えることができる。地上操作具15は走行機体3の前方側の浮き上がりを押える前方押え具を兼用する。
【0018】
上記地上操作具15は、正面視で略逆L字状をなす左右の杆状の逆L字杆20からなる。逆L字杆20は、後述するように機体フレーム側から略垂直に立設される。各逆L字杆20の上部は略水平に走行機体3の内側に向かっている。逆L字杆20の縦方向の垂直部分の上部と横方向の略水平部分とによって地上操作具15の左右の把持部25が構成されている。把持部25には、滑り止めのグリップ30が被せられている。
【0019】
ボンネット5の前端部分には、ボンネット5の幅より若干短い幅に亘って幅広な前照灯35が設けられている。該前照灯35は、左右に2つのバルブ35’を内装し、幅方向に連続した発光面を備える。左右の把持部25における横方向の水平部25hは、ともに前照灯35の上方に位置している。ただし上記両水平部25hはボンネット5の上端より下方に位置している。
【0020】
両把持部25における縦方向の垂直部25vの外側端位置は、ともにボンネット5の外側端部より外側に位置している。このため両逆L字杆20の垂直部分は、基端部が上記垂直部25vより走行機体3の内側に位置し、途中で外側に湾曲又は屈曲している。両逆L字杆20の垂直部分における湾曲又は屈曲位置は、前照灯35より下方に位置し、前照灯35の真正面に逆L字杆20が位置せず、左右の逆L字杆20は、前照灯35の前方側に、正面視で前照灯35を避けるように設けられている。
【0021】
これにより地上操作具15(逆L字杆20)が前照灯35の前方を遮ることはなく、上記のように幅広の前照灯35を設けた場合、前照灯35からの光が、前照灯35の延出方向(幅方向)で妨げられることがなく、走行機体1の前方を幅広く明るく照らす。なお複数の前照灯を走行機体1の横方向(幅方向)に間隔を空けて配置した場合も同様の効果を得ることができる。
【0022】
図4,5に示されるように、クラッチブレーキペダル14は、ペダルアーム16の先端に取り付けられている。ペダルアーム16の基端部は、機体フレーム3a側に回動自在に軸支されたペダル支点軸17に一体的に取り付けられている。クラッチブレーキペダル14は、ペダル支点軸17を軸心に、上下揺動自在となっている。
【0023】
ペダル支点軸17には連結ロッド18が連結されている。連結ロッド18の他端は、機体フレーム3a側に軸支されている軸19に連結されている。軸19にはアーム21とアーム22が設けられている。アーム21には上記ブレーキの操作用のロッド23が連結されている。該ブレーキはロッド23を介してクラッチブレーキペダル14によって操作される。
【0024】
上記アーム22は、機体フレーム3a側に軸支されている軸24のアーム26に連係されている。軸24の端部にはクラッチアーム27が設けられている。クラッチアーム27にはクラッチローラ28が回転自在に軸支されている。クラッチローラ28は、エンジンの出力軸からトランスミッションの入力軸に設けられた入力プーリとの間に巻き掛けられている伝動ベルトに摺接している。
【0025】
軸24と機体フレーム3aとの間にはクラッチスプリング38が介設されている。クラッチスプリング38によってクラッチローラ28は伝動ベルトに、駆動力を伝動するためのテンションを与えている。主クラッチは上記のようにベルトテンションクラッチからなる。
【0026】
クラッチスプリング38によってクラッチブレーキペダル14は復帰状態に付勢されている。クラッチブレーキペダル14の復帰状態において上記のように主クラッチはクラッチスプリング38によって入り状態を維持する。前述のロッド23はクラッチブレーキペダル14の復帰状態において上記ブレーキを切り操作状態で維持する。
【0027】
クラッチブレーキペダル14の踏み込みはクラッチスプリング38の付勢力に抗して行われ、クラッチブレーキペダル14から足を離すと、クラッチスプリング38の付勢力によってクラッチブレーキペダル14は復帰する。
【0028】
クラッチブレーキペダル14を踏み込むことによってアーム22がアーム26を操作し、クラッチアーム27が軸24を軸心として揺動して主クラッチが切り状態となる。上記ロッド23は、クラッチブレーキペダル14の踏み込み状態でアーム21を介して操作され、ブレーキを入り作動(前後輪1,2を制動)させる。
【0029】
上記構成によりクラッチブレーキペダル14を踏み込み操作するとトランスミッションへの駆動力が切れ、前後輪1,2が制動される。またクラッチブレーキペダル14の踏み込みを解除し、復帰状態とするとトランスミッションに駆動力が伝動されて前後輪1,2に駆動力が伝動されると共に、前後輪1,2の制動が解除される。
【0030】
機体フレーム3aの前方側には地上操作具15取り付け用の取付軸39が設けられている。該取付軸39には回動自在にホルダ41が支持されている。ホルダ41には平面視においてU字状をなすフレーム42の両端部分がスライド自在に挿入されている。フレーム42は前述の地上操作具15のベースフレームを構成する。
【0031】
フレーム42はホルダ41に対して前後スライドし、且つホルダ41を介して取付軸39を軸心に上下回動可能となっている。フレーム42とホルダ41とは一体的に回動する。前述の地上操作具15を構成する逆L字杆20はフレーム42の両端側に上方に突出するように一体的に立設されている。これにより地上操作具15はフレーム42と一体的に取付軸39を軸心に上下揺動し、且つ前後にスライドする。
【0032】
一方左右両ホルダ41の下方には、スナップ受け43が一体的に設けられている。フレーム42にはスナップピン44が一体的に設けられている。スナップピン44がスナップ受け43に嵌まるようにフレーム42を後方にスライドさせるとフレーム42は収納状態に保持される。
【0033】
フレーム42の一端部にはストッパピン46が突出して設けられている。スナップピン46をスナップ受け43から外し、フレーム42を前方にスライドさせるとストッパピン46がホルダ41の端部に当接し、フレーム42の抜けが防止され、且つフレーム42は引出状態に位置決めされる。
【0034】
なお機体フレーム3a側には、フレーム42の一方の後方に伸びる杆部の上方に位置して回動規制部材45が設けられている。フレーム42は収納状態時には、回動規制部材45とフレーム42との当接によってフレーム42の回動が規制される。ただしフレーム42の引出状態において上記フレーム42の杆部は、回動規制部材45より前方に位置するため、回動が可能となる。
【0035】
一方のホルダ41には一体的にアーム47が設けられている。アーム47の端部には、軸を介してロッド40が連結されている。該ロッド40の端部は、機体フレーム3a側に一体的に固定されたブラケット45に前後スライド自在に挿入されている。ロッド40には一体的に受け40aが設けられている。受け40aとブラケット45との間に、ロッド40に外嵌されて、圧縮バネ48が設けられている。
【0036】
圧縮バネ48はアーム47を介して上記ホルダ41を上方回動状態に付勢している。ただし上記ホルダ41には、アーム50が設けられている。該アーム50が、機体フレーム3a側に設けられたボルト55のヘッドと当接することによってホルダ41の回動位置が規制される。
【0037】
アーム50とボルト55とによるホルダ41の位置決め状態で、フレーム42は略水平となり、左右の逆L字杆20が一体的に略垂直な起立状態となる。なお前述の把持部25における水平部25hの高さ位置は、逆L字杆20の起立状態(略垂直状態)の場合である。
【0038】
以上によりフレーム42の収納状態においては、地上操作具15は、逆L字杆20が一体的にボンネット5の前端の前方近傍で起立する格納姿勢となる。フレーム42の引出状態によって地上操作具15は格納姿勢から前方に引き出された作業姿勢となる。地上操作具15は格納姿勢と作業姿勢に前後スライドによって姿勢切り換えが自在である。格納姿勢はスナップピン44がスナップ受け43に嵌ることによって保持される。
【0039】
前述の構造により地上操作具15は、作業姿勢時にのみ下方への揺動が可能となる。ただし地上操作具15は圧縮バネ48の付勢力によって逆L字杆20が略垂直な起立状態となるように付勢されているため、地上操作具15の下方への揺動は、圧縮バネ48の付勢力に抗して操作する必要がある。地上操作具15から手を離すと圧縮バネ48の付勢力によって地上操作具15は逆L字杆20が略垂直な起立状態となるように復帰する。
【0040】
上記アーム47が設けられたホルダ41には、アーム49が突設されている。前述の軸24と取付軸39との間には、軸51が機体フレーム3a側に回動自在に支持されて設けられている。軸51にはパイプ52が回動自在に外嵌されている。該パイプ52にはアーム53が突設されている。
【0041】
上記ホルダ41のアーム49とパイプ52のアーム53とは連結アーム54を介して連
結されている。これにより地上操作具15の上下揺動操作によってパイプ52が軸51を軸心に回動する。軸51には、下方に向かって突出する棒状のステアリングロック部材56が一体的に設けられている。
【0042】
なお左右のタイロッドが連結されるピットマンアーム77には、受けアーム78が前方に突出して取り付けられている。受けアーム78には上記ステアリングロック部材56が挿入可能な凹部が設けられている。該凹部はステアリングハンドル12を直進状態とすると、ステアリングロック部材56と向かい合うように設けられている。
【0043】
一方機体フレーム3aにおける軸51の端部側には、支点軸57が設けられている。支点軸57には三角プレート58が回動自在に支持されている。三角プレート58にはロックレバー59が取り付けられている。ロックレバー59は、クラッチブレーキペダル14の前方位置で運転席11のステップ10から突出している。
【0044】
ロックレバー59と三角プレート58は、支点軸57を軸心に一体的に前後回動する。軸51の端部には連動アーム61のボス62が一体回転するように取り付けられている。連動アーム61と三角プレート58とはスプリング63によって連結されている。
【0045】
支点軸57には、三角プレート64も回動自在に支持されている。三角プレート64は三角プレート58とは別に回動する。三角プレート64の一頂点部分には、プレート状のロック部材66が回動自在に軸支されている。ロック部材66と機体フレーム3aとの間にはスプリング67が設けられている。スプリング67によってロック部材66は上方に付勢されている。
【0046】
三角プレート64の他の一頂点部分には、ピン68が設けられている。上記軸51に外嵌されているパイプ52には、三角プレート64に対応する部分に、三角プレート64に設けられたピン68に、上方側で当接する規制アーム69が設けられている。三角プレート64の回動は規制アーム69によって規制され、規制アーム69の揺動角度によって、三角プレート64の回動角度(位置)が決まる。パイプ52は地上操作具15の上下揺動によって回動するため、三角プレート64の回動角度は、つまり地上操作具15の揺動角度によって決まる。
【0047】
ロック部材66にはピン71が設けられている。該ピン71はロックレバー59の後端面と当接する。ロック部材66の回動はロックレバー59によって規制され、ロックレバー59の揺動角度によってロック部材66の回動角度(位置)が決まる。上記軸51の後方には、軸72が機体フレーム3a側に設けられている。軸72にはアーム73が回動自在に支持されている。
【0048】
アーム73とペダル支点軸17とは連係部材となるロッド74によって連結されている。ロックレバー59を後方に揺動させると、ロック部材66は、ロック部材66のピン71とロックレバー59との当接によってスプリング67の付勢力に抗して下方に向かって回動する。
【0049】
クラッチブレーキペダル14の踏み込み及び踏み込み解除操作に伴ってペダル支点軸17が回動するため、ロッド74は前後に移動し、軸72を軸心にアーム73を前後揺動させる。このためクラッチブレーキペダル14を踏み込み、アーム73を前方に揺動させた状態で、ロックレバー59を後方に揺動させると、ロック部材66はアーム73におけるロッド74の支軸と係合することができる。
【0050】
ロック部材6とアーム73におけるロッド74の支軸との係合が解除されている状態では、クラッチブレーキペダル14の踏み込み及び踏み込み解除操作に伴ってロッド74が前後に自由に移動し、クラッチブレーキペダル14の操作を地上操作具15やステアリングロック部材56とは無関係に自由に行い、走行機体3の走行コントロールを自由に行うことができる。
【0051】
一方クラッチブレーキペダル14の踏み込み状態とし、ロックレバー59を後方に揺動させ、ロック部材66とアーム73におけるロッド74の支軸と係合させると、ロックレバー59の揺動に伴う三角プレート58の揺動によって、スプリング63を介して軸51が回動し、ステアリングロック部材56が回動する。ステアリングロック部材56は下方に向かって突出しているため、後方に向かって回動する。
【0052】
ステアリングロック部材56の上記回動によって、ステアリングハンドル12が直進状態であると、ステアリングロック部材56が、受けアーム78の凹部に挿入され、ステアリングロック部材56と受けアーム78とが係合し、ステアリングハンドル12が直進状態にロックされる。
【0053】
なおステアリングハンドル12が直進状態以外であれば、ロックレバー59を上記のように後方に揺動させてもステアリングロック部材56は凹部に挿入されず、受けアーム78の前端面に当接する。ただし軸51の回動はスプリング63を介して行われるため、スプリング63が伸びることによってロックレバー59の揺動操作は許容される。
【0054】
この際スプリング63がステアリングロック部材56を受けアーム78の前端面に弾力的に押しつける。ステアリングロック部材56が凹部に挿入されないため、ステアリングハンドル12の旋回操作は可能となるが、ステアリングハンドル12が直進状態となると、ステアリングロック部材56が凹部に弾力的に自動挿入され、ステアリングハンドル12が直進状態にロックされる。
【0055】
一方前述のようにロック部材66とアーム73とが係合すると、ロック部材66を介してクラッチブレーキペダル14の復帰付勢力によって、三角プレート64が図5における反時計回りに付勢される。ただし三角プレート64の揺動は規制アーム69によって規制され、三角プレート64の揺動角度は前述のように地上操作具15の揺動角度によって決まる。
【0056】
このため地上操作具15の揺動角度に応じて三角プレート64の揺動位置が調節され、三角プレート64の揺動位置に応じてロッド74を介してペダル支点軸17の回動角度がコントロールされ、主クラッチ及びブレーキの操作が行われる。
【0057】
上記状態で規制アーム69はクラッチスプリング38によりピン68を介して上方(図5における時計方向)に回動する方向に付勢される。これによりアーム49及びアーム47が設けられたホルダ41には、連結アーム54とアーム49を介して図5における反時計回りに回動する力がかかる。
【0058】
これに対してアーム49が設けられたホルダ41には、アーム47を介して圧縮バネ48によって、図5における時計回りに回動する力がかかる。そして圧縮バネ48によってかかる力が、クラッチスプリング38によってかかる力に打ち勝ち、クラッチブレーキペダル14の踏み込み状態時にロック部材66とアーム73との係合を行うと、圧縮バネ48の付勢力によって、地上操作具15は格納姿勢であっても作業姿勢であっても逆L字杆20が略垂直で起立する。
【0059】
つまりロック部材66とアーム73との係合時には、圧縮バネ48の付勢力によって、逆L字杆20の起立状態のままクラッチブレーキペダル14は、踏み込み状態に姿勢維持される。
【0060】
以上のようにロック部材66とアーム73とを係合させるロックレバー59の揺動位置が、クラッチブレーキペダル14を踏み込み状態に姿勢維持し、且つクラッチブレーキペダル14による主クラッチ及びブレーキの操作系への地上操作具15の上下揺動操作を連係させるロック位置となり、地上操作具15によって走行機体3の走行コントロールを行うことが可能となる。
【0061】
ロックレバー59をロック位置とし、地上操作具15を作業姿勢として下方に揺動させると、ホルダ41が図5における時計方向に回動し、アーム49が前方に揺動するため、規制アーム69が前方(図5における時計回り)に回動する。これによりクラッチブレーキペダル14の復帰力でロッド74が後方に復帰移動し、クラッチブレーキペダル14が復帰方向に戻るため、主クラッチが入り作動し、且つブレーキが切り作動する。
【0062】
なお上記のように一方のホルダ41のみに圧縮バネ48による付勢力とクラッチスプリング38による付勢力が、互いに打ち消しあうようにかかるため、左右別々のホルダ41で、圧縮バネ48による付勢力とクラッチスプリング38による付勢力を受ける場合に比較して、フレーム42の前後スライド機構のよれの発生が防止される。
【0063】
これによりロックレバー59をロック位置に切り換えた状態であっても、フレーム42を円滑に前後スライドさせて地上操作具15の作業姿勢と格納姿勢とに姿勢切換することができる。
【0064】
一方上記のように下方に揺動操作した地上操作具15から手を離すことによって、地上操作具15が起立状態に復帰し、この復帰力によって規制アーム69が後方(図5における反時計回り)に回動し、ピン68を介して三角プレート64が図5における時計回りに回動し、ロッド74が前方に移動することによって、主クラッチが切り作動し、且つブレーキが入り作動し、走行機体3が制動される。
【0065】
上記のような地上操作具15による走行機体3の前進操作は、地上操作具15を作業姿勢に引き出すことによって、地上操作具15の格納姿勢時の上方への突出長さを延長することなく、回動支点(取付軸39)から力点(操作位置)までの距離が延長され、作業者は左右いずれか又は両方の把持部15bを持って地上操作具15を下方に容易に揺動させることができる。
【0066】
そして地上操作具15による走行機体3の前進操作時は、把持部25を持って、走行機体3の前方を上方から押えることになるため、走行時の走行機体3のヘッドアップを、てこの原理によって小さな力で防止することができる。
【0067】
なお逆L字杆20の起立状態において、把持部25の水平部25hはボンネット15の上端より上方に突出しないため、格納姿勢時に地上操作具15が運転席11内の作業者の前方視界を妨げることはなく、コンパクトで前方視界の妨げにならない格納と、容易な揺動操作とが両立する地上操作具15となる。
【0068】
前述のように把持部25の外側端位置(垂直部25vの外側端位置)は、ボンネット5の外側端部より外側に位置しているため、作業者が車外において走行機体3の左右側方から容易に把持部25を持つことができる。このため走行機体3の左右側方から把持部25を持って畦超え走行やトラックの荷台等への積み下ろし走行等を車外から容易に行うことができる。
【0069】
特に図6,図7に示されるように、本乗用田植機をトラック60の荷台60aに左右の道板を使用して積み込む際、走行機体3の左右いずれか又は両方に作業者が位置し、左右いずれかの道板70に本乗用田植機の前後輪1,2が載った状態を確認しながら走行機体3の走行を車外から容易に操作することができ、トラック60への積み込み作業を容易に行うことができる。
【0070】
なおボンネット5の外側端部より外側への把持部25(垂直部25vの外側端)の突出は、走行機体3の左右側から把持部15bを操作することができる最小限となっており、ボンネット5の側方のステップ10に対する乗降性や通行性等を妨げることはない。
【0071】
一方前照灯35の直前には、走行機体3の中央に位置して、前照灯35の左右中央を通過してセンタマスコット75が立設されている。該センタマスコット75は機体フレーム3a側にステー80を介して取り付けられた回動支点81に上下回動自在に取り付けられている。前述の前照灯35のバルブ35’はセンタマスコット75を中心に略左右対称に配置されている。センタマスコット75は左右の把持部25の間の空間を通過して上方に延出している。
【0072】
これにより地上操作具15を上下揺動操作する場合に、センタマスコット75を格納する必要がなく、当然センタマスコット75を合わせ直す必要もない。なおセンタマスコット75は前照灯35の発光面の左右中央を妨げるが、前照灯35に近接しているため、バルブ35’の発光範囲を妨げることはなく、前照灯35の光の妨げは最小限にとどまっている。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】乗用田植機の平面図である。
【図2】乗用田植機の側面図である。
【図3】乗用田植機の正面図である。
【図4】クラッチブレーキペダル及び地上操作具の連係状態を示す要部平面図である。
【図5】クラッチブレーキペダル及び地上操作具の連係状態を示す要部側面図である。
【図6】本乗用田植機のトラックの荷台への積み込み状態を示す側面図である。
【図7】本乗用田植機のトラックの荷台への積み込み状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0074】
3 走行機体
5 ボンネット
3a 機体フレーム
15 前押え操作具
25 把持部
35 前照灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体(3)の前方にボンネット(5)を設け、該ボンネット(5)の前方に、走行機体(3)の前方側の浮き上がりを押さえるための前押え操作具(15)を設け、該前押え操作具(15)が、機体フレーム(3a)側から立設され、上部に横方向の把持部(25)を備えてなる移植機において、上記把持部(25)の外側端位置を、ボンネット(5)の外側端部より外側に位置させた移植機における前押え操作具。
【請求項2】
ボンネット(5)の前方に前照灯(35)を設け、把持部(25)を、前照灯(35)より上方であって、且つボンネット(5)の上端より下方に位置させた請求項1の移植機における前押え操作具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−321418(P2006−321418A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−147933(P2005−147933)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】