説明

移植機の分草装置

【課題】 苗箱における隣接する苗の葉をより確実に分離することができるようにする。
【解決手段】 本発明の移植機の分草装置2は、苗箱搬送路13aに沿って移送されてくるポット苗箱Tの苗Pを待ち受けるように、該苗箱搬送路13aの上方で、ポット苗箱Tの反搬送方向へ突設された支持軸31と、該支持軸先端側かつ上側周面に軸長方向に沿って突設された分草板32と、該支持軸31の基端側に連結され、分草板32が揺動するように、支持軸31を往復回動させる駆動機構33とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移植機において、苗箱における隣接する苗の葉を分離する分草装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の分草装置の背景技術としては、特許文献1の苗移植機に装備された分離櫛を例示する。
【0003】
この苗移植機には、図5に示すように、可撓性を有するプラスチックからなり、ポットTaが所定のピッチxで縦横に連設された苗トレイTが使用されている。苗トレイTの左右中央部には、ポットTaの間隔が広い広間隔部Tbが設けられている。また、苗トレイTの左右両縁部には、苗送り用の角孔TcがポットTaと同ピッチで形成されている。
【0004】
この苗移植機には、苗トレイTを苗トレイ搬送路に沿って搬送させる苗トレイ送り装置と、苗取出位置で苗トレイTから苗を取り出す苗取出装置と、取り出された苗を下側前方に弧を描くような軌跡で搬送する苗搬送装置と、苗搬送装置によって搬送された横1列分の苗を半分づつ左右両側に横送りする左右一対の苗送りベルトと、該苗送りベルトによって搬送されてくる苗を受け取って圃場に植え付ける苗植付装置とが設けられている。
【0005】
苗トレイ搬送路の上部には、図5に示すように、横方向に隣接する苗同士による葉の絡み付きを分離する分離櫛81が設けられている。この分離櫛81は横列の各苗の経路の間に棒状の歯81a,81b,…を並列に配置したものである。この分離櫛81により、苗トレイTにおける隣接する苗の葉を予め分離しておき、苗トレイTから取り出された後の苗送りベルト上や苗植付装置で隣接する苗同士の葉の絡み合いによる問題の発生を防止するようにしている。
【0006】
また、分離櫛の変更例としては、図6に示す態様も開示されている。この分離櫛85は、苗トレイ搬送路84の上部において、回動自在な支持軸85aに支持されている。そして、苗植付装置の植付駆動軸86にカム85bが取り付けられ、このカム85bの外周面に当接するアーム85cの動きが分離櫛の支持軸85aに伝達されるようになっている。なお、アーム85cはバネ85dの張力でカム85bに押し付けられている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−125412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、従来の分離櫛81,85では、隣接する苗の間に棒状の歯や、苗箱搬送方向に振動する板を通すことにより、苗同士の葉の絡み合いを解くだけなので、分離櫛を通過後、各葉が元の位置に戻ってしまい、再度葉が絡み合うことがあるという課題がある。
【0009】
仮に、苗箱の左右方向へ分離櫛を分厚く形成することにより、隣接する苗の葉同士の間隔を広げるように構成することも考えられるが、そうすると、分離櫛に対する苗の通過抵抗が大きくなり、苗箱の搬送(特に、苗箱及び苗の自重による搬送の場合。)に支障が生じる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の移植機の分草装置は、
苗箱搬送路に沿って移送されてくる苗箱の苗を待ち受けるように、該苗箱搬送路の上方で、苗箱の反搬送方向へ突設された支持軸と、
該支持軸先端側かつ上側周面に軸長方向に沿って突設された分草板と、
該支持軸の基端側に連結され、前記分草板が揺動するように、前記支持軸を往復回動させる駆動機構と
を備えている。
【0011】
この構成によれば、前記分草板が支持軸を中心に揺動することにより、隣接する苗の葉同士の絡み合いを解くだけでなく、該葉同士の間隔を広げるように該葉に癖付けすることにより、本発明の分草装置を通過後、再度葉が絡み合うことを防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る移植機の分草装置によれば、苗箱における隣接する苗の葉をより確実に分離することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1〜図4は本発明を具体化した一実施形態の移植機1の分草装置2を示している。本例の移植機1は、図1及び図2に示すように、左右の走行車輪(図示略)に走行自在に支持された機体11と、該機体11の上部に設けられ、ポット苗箱Tの載置自在な苗載台13と、ポット苗箱Tから野菜・花等の苗P(本例ではポット苗)を横一列ずつ取り出す、苗受台12を備えた苗取出装置14と、取り出された苗Pを一本ずつ搬送する苗搬送装置15と、圃場に植付溝を形成する溝掘器18と、苗搬送装置15により搬送されてきた苗Pを受け取って溝掘器18の後方で前記植付溝に植え付ける植付装置16と、該植付装置16の後方で前記植付溝を埋め戻すための左右一対の土寄輪17とを備えている。なお、各図において、矢印Fは機体前側を指し示している。
【0014】
本例のポット苗箱Tは、従来例と同様に構成されており、具体的には、可撓性を有するプラスチックからなり、ポット苗室Taが所定のピッチxで縦横に連設されている。ポット苗箱Tの左右中央部には、ポット苗室Taの間隔が広い広間隔部が設けられている。また、ポット苗箱Tの左右両縁部には、苗送り用の孔がポットと同ピッチで形成されている。
【0015】
苗取出装置14においては、図1に示すように、ポット苗箱Tが苗載台13内を湾曲して一列分ずつ間欠送りされ、所定位置で苗載台13の後方に設けられた押出杆21がポット苗箱Tの横一列のポット苗室Taに底面から突入し、苗Pを前方に押し出すとともにその根部を前方に設けられた苗受台12の苗受溝内に押し込む。続いて、苗Pを受け取った苗受台12は、苗Pを逆方向に反転させながら下方に回動し、このとき前記苗受溝が苗Pの根部を先にして跳ね出し部材28の位置を通過する。これにより横一列分の苗Pは前記苗受溝から押し出され、該横一列分の苗Pを半分ずつ左右両側に横送りする左右一対の搬送ベルト30の上に落下するようになっている。
【0016】
分草装置2は、図1、図3及び図4に示すように、苗載台13の苗箱搬送路13aに沿って移送されてくるポット苗箱Tを待ち受けるように、該苗箱搬送路13aの上方で、ポット苗箱Tの反搬送方向へ突設された支持軸31と、該支持軸先端側かつ上側周面に軸長方向へ沿って突設された分草板32と、該支持軸31の基端側に連結され、分草板32が左右に揺動するように、支持軸31を往復回動させる駆動機構33とを備えている。
【0017】
本例の支持軸31は、その軸長方向の途中部及び基端部がそれぞれ軸受け34を介して苗取出装置14に支持されており、該両軸受け34の間がフレキシブルワイヤー31aからなっている。
【0018】
分草板32は、支持軸31の先端側の突出幅が狭く、基端側になるほど幅広になるように形成されている。分草板32の突出幅が支持軸31の先端側になるほど幅狭にすることにより、隣接する苗Pの葉同士の間にスムーズに挿入できるようにしている。また、支持軸31の基端側における分草板32の突出幅を幅広にすることにより、隣接する苗Pの葉同士の絡み合いを解く作用と、該葉同士の間隔を広げるように該葉に癖付けする作用とを有効に発揮できるようにしている。分草板32の揺動角度Aとしては特に限定されないが、本例では約60°に設定されている。
【0019】
駆動機構33は、本例では、回転運動を揺動運動に変えるテコ・クランク機構からなっており、駆動軸36によりクランク37が回転されると、リンク38を介してテコ39が揺動するように構成されている。駆動軸36は、本例では、苗取出装置14の駆動機構(図示略)から取り出された駆動力により駆動されるようになっている。
【0020】
図4は、本発明の分草装置2の動作を示す図であり、同図(a)は分草装置2を通過する前のポット苗箱Tの状態を示し、同図(b)は分草装置2を通過中のポット苗箱Tの状態を示している。
【0021】
以上のように構成された本例の移植機1の分草装置2によれば、分草板32が支持軸31を中心に揺動することにより、隣接する苗Pの葉同士の絡み合いを解くだけでなく、該葉同士の間隔を広げるように該葉に癖付けすることにより、本発明の分草装置2を通過後、再度葉が絡み合うことを防止できる。
【0022】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)分草板32の形状を適宜変更すること。
(2)分草板32の揺動角度Aを適宜変更すること。
(3)駆動機構33の駆動軸36を前記実施形態とは別の駆動力により駆動すること。
(4)支持軸31を往復回動させる駆動機構33を、テコ・クランク機構とは別の機構により実現すること。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を具体化した一実施形態に係る移植機の分草装置の側面図である。
【図2】同分草装置の下側における移植機の要部を示す斜視図である。
【図3】図1のIII矢視図である。
【図4】図1のIV矢視図である。
【図5】従来の苗移植機の分離櫛を示す正面図である。
【図6】同分離櫛の変更例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 移植機
2 分草装置
11 機体
12 苗受台
13 苗載台
13a 苗箱搬送路
14 苗取出装置
15 苗搬送装置
16 植付装置
17 土寄輪
18 溝掘器
21 押出杆
28 跳ね出し部材
30 搬送ベルト
31 支持軸
31a フレキシブルワイヤー
32 分草板
33 駆動機構
34 軸受け
36 駆動軸
37 クランク
38 リンク
39 テコ
A 揺動角度
P 苗
T ポット苗箱
Ta ポット
x ピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗箱搬送路に沿って移送されてくる苗箱の苗を待ち受けるように、該苗箱搬送路の上方で、苗箱の反搬送方向へ突設された支持軸と、
該支持軸先端側かつ上側周面に軸長方向に沿って突設された分草板と、
該支持軸の基端側に連結され、前記分草板が揺動するように、前記支持軸を往復回動させる駆動機構と
を備えた移植機の分草装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−82089(P2009−82089A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258174(P2007−258174)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(000100469)みのる産業株式会社 (158)
【Fターム(参考)】