移植機の植付装置
【課題】本発明は、植付具を昇降させる昇降機構を強固な構成にすることで、深く植え付けたり適正な移植作業が長時間継続して行えたりする移植機の植付装置を提供することを課題とする。
【解決手段】植付具28を開閉可能に支持する支持板72の左右側部に右スイングアーム52と左スイングアーム53を枢支し、この右スイングアーム52と左スイングアーム53の前端をクランク回転する右クランクアーム58と左クランクアーム50にそれぞれ枢支連結して植付具28を前後に揺動させ、右スイングアーム52と左スイングアーム53の片方或いは両方の前後中間部を上下にクランク運動をする第二昇降アーム56に枢支連結して植付具28を昇降させてなる移植機の植付装置とした。
【解決手段】植付具28を開閉可能に支持する支持板72の左右側部に右スイングアーム52と左スイングアーム53を枢支し、この右スイングアーム52と左スイングアーム53の前端をクランク回転する右クランクアーム58と左クランクアーム50にそれぞれ枢支連結して植付具28を前後に揺動させ、右スイングアーム52と左スイングアーム53の片方或いは両方の前後中間部を上下にクランク運動をする第二昇降アーム56に枢支連結して植付具28を昇降させてなる移植機の植付装置とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗や種芋等の移植機の植付装置に関するものであり、農業機械の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、移植機は、原動機から主伝動ケースを介して走行推進体である後輪へ伝動するとともに、該主伝動ケースから植付伝動ケースを介して植付装置へ伝動する構成としている。そして、植付装置は、移植物を収容した植付具を平行リンク機構で昇降させるように構成し、所定の軌跡で昇降する植付具の先端部は最下端近くで圃場に所定深さまで突入して植付具を開いて移植物を土中に残して圃場に植え付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−234209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の植付装置は、上下一対の平行リンクの先端に水平支軸で植付具が枢支して支持されている。このために、植付具を土中へ差し込む抵抗で平行リンクと植付具の取付部に無理が入って植付具の平行リンクとの取付部にガタが生じて長時間の使用で正常な植付動作が出来なくなる。
【0005】
本発明は、植付具を昇降させる昇降機構を強固な構成にすることで、深く植え付けたり適正な移植作業が長時間継続して行えたりする移植機の植付装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、植付具28を開閉可能に支持する支持板72の左右側部に右スイングアーム52と左スイングアーム53を枢支し、この右スイングアーム52と左スイングアーム53の前端をクランク回転する右クランクアーム58と左クランクアーム50にそれぞれ枢支連結して植付具28を前後に揺動させ、右スイングアーム52と左スイングアーム53の片方或いは両方の前後中間部を上下にクランク運動をする第二昇降アーム56に枢支連結して植付具28を昇降させてなる移植機の植付装置とした。
【0007】
この構成で、植付具28を支持した支持板72の左右側部が右スイングアーム52と左スイングアーム53で支持されて、右クランクアーム58と左クランクアーム50のクランク回転で植付具28が前後に揺動し、第二昇降アーム56上下クランク運動で支持板72を上下動して植付具28が昇降する。
【0008】
そして、植付具28の支持板72が右スイングアーム52と左スイングアーム53で左右に幅を持って支持されているので、植付具28に左右横方向から外力が加わっても強固に支持して狂いを生じない。
【0009】
請求項2に係る発明は、植付具28を開閉可能に支持する支持板72の左右側部に枢支した右スイングアーム52と左スイングアーム53の前端を、植付装置駆動ケース27の左スイング駆動軸62と右スイングアーム駆動軸61とにそれぞれ左クランクアーム50と右クランクアーム58に連結し、左スイングアーム53の前後中間部を植付装置駆動ケース27の昇降駆動軸61に第一昇降アーム55と第二昇降アーム56で枢支連結してなる移植機の植付装置とした。
【0010】
この構成で、請求項1記載の発明の作用に加えて、植付具28を支持した支持板72の左右側部が右スイングアーム52と左スイングアーム53で支持されて、左スイング駆動軸62と右スイングアーム駆動軸61の回転で植付具28が前後に揺動し、右スイングアーム駆動軸61回転で第一昇降アーム55と第二昇降アーム56で左スイングアーム53を上下動して植付具28が昇降する。
【0011】
請求項3に係る発明は、左クランクアーム50と右クランクアーム58の長さを同じにしたことを特徴とする請求項1或いは請求項2のどちらか1項に記載の移植機の植付装置とした。
【0012】
この構成で、請求項1と請求項2記載の発明の作用に加えて、植付具28が前後揺動と昇降動作しても植付具28を支持する支持板72の姿勢が傾かずに植付具28の略垂直姿勢を維持して植付動作をする。
【0013】
請求項4に係る発明は、昇降駆動軸61を右スイングアーム駆動軸61と同軸にしたことを特徴とする請求項1から請求項3のどちらか1項に記載の移植機の植付装置とした。
この構成で、請求項1から請求項3に記載の発明の作用に加えて、植付具28を昇降させる昇降駆動軸としての植付装置駆動ケース27の回転出力軸が新たに必要なく、右スイングアーム駆動軸61と左スイング駆動軸62の二個の駆動軸でよく、植付装置駆動ケース27の内部構造が簡略になる。
【0014】
請求項5に係る発明は、昇降駆動軸61に固着する第一昇降アーム55を左クランクアーム50や右クランクアーム58よりも長くしたことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の移植機とした。
【0015】
この構成で、植付具28の植付けの軌跡17が前後揺動幅よりも昇降動作幅が広くなって、移植物を深く植え付けることが出来る。
【発明の効果】
【0016】
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の発明で、植付具28が強固な昇降機構で支持されて、特に左右方向からの外力に抗して、発明の課題を適切に解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】移植機を示す側面図である。
【図2】移植機を示す平面図である。
【図3】供給部を示す底面図である。
【図4】植付伝動ケースを示す側面図である。
【図5】植付装置駆動ケースを示す側面図である。
【図6】植付伝動ケースを示す断面展開平面図である。
【図7】植付クラッチの拡大平面図である。
【図8】植付クラッチの作用説明用拡大側面図である。
【図9】植付クラッチの作用説明用拡大側面図である。
【図10】植付装置を示す斜視図である。
【図11】植付具の昇降機構を示す部分拡大側面図である。
【図12】植付具の昇降機構を示す部分拡大平面図である。
【図13】植付装置を示す拡大背面図である。
【図14】植付具の上下動速度、前後動速度および絶対速度を示すグラフである。
【図15】植付株間ごとの植付具の静軌跡および動軌跡を示すグラフである。
【図16】(a)ガイドローラ作動部の作用説明用拡大平面図、(b)ガイドローラ作動部の作用説明用拡大側面図である。
【図17】別実施例の植付具の昇降機構を示す部分拡大側面図である。
【図18】さらに、別実施例の植付具の昇降機構を示す部分拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施の一形態を、以下に説明する。尚、以下の実施の形態は、あくまで実施の一形態であって、特許請求の範囲の解釈を拘束するものではない。
移植機の一例としてタバコの苗を移植する移植機について説明する。
【0019】
この移植機10は、図1と図2に示す如く、前部にエンジンである原動機11及び主伝動ケース12と、走行車輪としての左右一対の前輪13及び走行推進体としての左右一対の後輪14と、後部に植付装置19、供給部31、鎮圧輪15および操縦ハンドル16を備えて構成されている。
【0020】
移植機10は、走行機体が圃場内の畝Uを跨ぐように、左右前輪13及び左右後輪14が畝間を走行し、畝Uの上面の左右幅方向における中央位置に植付装置19により苗を植付けていく構成となっている。
【0021】
また、主伝動ケース12の左右端には該主伝動ケース12に対して上下に回動可能な延長ケース40を左右それぞれ設け、左右の延長ケース40のそれぞれの端部に走行伝動ケース20を取り付けている。したがって、原動機11から入力される主伝動ケース12内の動力を走行伝動ケース20内に伝動する構成となっている。
【0022】
左右走行伝動ケース20の回動先端部には、各々左右後輪14をそれぞれ取り付け、この左右後輪14の駆動により機体が走行するようになっている。従って、主伝動ケース12、左右延長ケース40及び左右走行伝動ケース20は、駆動走行車輪としての左右後輪14に駆動力を伝動する伝動装置となっている。
【0023】
一方、エンジン載置台91の下部には左右方向に延びる前輪支持フレーム41を前後方向のローリング軸18回りに回動可能に設け、この前輪支持フレーム41の左右両端部に左右前輪13を取り付けた構成としている。
【0024】
また、主伝動ケース12の後端には左右方向に延びる後フレーム21を固着して設け、該後フレーム21の後端面の右端部には、機体の右寄りの位置で前後方向に延びる主フレーム22を設けている。該主フレーム22の後端部には操縦ハンドル16を設け、該操縦ハンドル16が主フレーム22及び後フレーム21を介して主伝動ケース12に支持された構成となっている。後フレーム21の左右一方寄り(右寄り)の位置の上面には、植付伝動ケース26の前下端部を載せて該植付伝動ケース26を固着して設けている。
【0025】
また、主伝動ケース12の後側で且つ左右方向の中央には、油圧昇降シリンダ23を設けている。この油圧昇降シリンダ23は、主伝動ケース12に取り付けられた油圧切換バルブ部24に固着して設けられ、主伝動ケース12に取り付けられた油圧ポンプ92からの油路を油圧切換バルブ部24で切り替えることにより作動する。
【0026】
また、油圧昇降シリンダ23のシリンダロッドの後端には左右に延びる横杆43を設け、この横杆43の左右端部にそれぞれロッドとなる左側の後輪昇降ロッド44及び右側の後輪昇降ロッド45を連結し、左側の後輪昇降ロッド44及び右側の後輪昇降ロッド45の他端をそれぞれの延長ケース40に取り付けられた上側ア−ム40aに枢着して、横杆43と延長ケース40とが連結された構成となっている。従って、油圧昇降シリンダ23の伸縮により横杆43、左側の後輪昇降ロッド44及び右側の後輪昇降ロッド45を介して主伝動ケース12の左右の出力軸回りに走行伝動ケース20を回動し、該走行伝動ケース20の回動により後輪14が上下して走行機体が昇降する構成となっている。なお、油圧昇降シリンダ23のシリンダロッド、横杆43、左側の後輪昇降ロッド44及び右側の後輪昇降ロッド45は、シリンダロッドの進出位置によっては、機体側面視で後述する昇降リンク機構29の下方に位置する構成となっており、スペースを有効利用して機体のコンパクト化を図っている。
【0027】
また、機体中央部の下方位置で植付装置19の植付具28が苗を畝Uに植付ける位置の直前の位置には、周知の畝U上面に接当して畝U上面の高さを検出する植付け深さ制御用センサSが設けられており、該植付け深さ制御用センサSの畝U検出により油圧切換バルブ部24に備えられた昇降制御用切換バルブを介して油圧昇降シリンダ23を作動させて左右後輪14を昇降制御して、走行機体を畝Uに対する所定の高さに制御して植付具28が苗を畝Uに植付ける深さが一定になるようにしている。
【0028】
また、左側の後輪昇降ロッド44が伸縮するように該左側の後輪昇降ロッド44の中途部に油圧ポンプ92からの油圧により作動する左右傾斜用油圧シリンダ25を設けており、該左右傾斜用油圧シリンダ25の伸縮により右側の後輪14の上下位置に対して左側の後輪14を上下させて、畝Uの谷部の凹凸に関係なく走行機体を所望の左右傾斜姿勢に制御する構成となっている。なお、主伝動ケース12の右側には振り子式の左右傾斜センサ42が設けられて、この左右傾斜センサ42の検出により油圧切換バルブ部24に備えられた左右傾斜用切換バルブを介して左右傾斜用油圧シリンダ25を作動させ、走行機体を所望の左右傾斜姿勢に制御する構成となっている。
【0029】
植付装置19は、移植対象物である苗を1個ずつ圃場の畝に植付けるべく、主伝動ケース12内からの動力が主伝動ケース12の後側に設けた植付伝動ケース26と、その植付伝動ケース26に取り付けられた植付装置駆動ケース27を介して伝達され、作動するようになっている。
【0030】
植付装置19は、先端が尖ったカップ状の植付具28と、該植付具28を昇降させるべく作動する昇降リンク機構29で構成される。植付具28の先端(下端)は、植付具28の昇降動作によって、前側で下降し後側で上昇するとともに、前後方向の幅が上部よりも下部の方が大きいループ状の軌跡17を描いて繰り返し作動する。
【0031】
供給部31には、植付伝動ケース26からの動力により作動し、作業者が手で苗を一個ずつ供給するための供給カップ33が、供給回転台32上に円形のループ状で所定間隔毎に配置されている。そして、各々の供給カップ33の底部には、図3の如く、上下方向に可動する開閉蓋34を設けている。また、供給カップ33の下方には、供給回転台32の矢印A方向への回転により、供給カップ33が植付具28の上方の位置である所定位置Pに来たときにのみ開閉蓋34が開くべく、環状体の一部を切り欠いた略C字型の供給カップ開閉ガイド35が、走行機体側に固定されている。尚、供給カップ開閉ガイド35は、前記所定位置P以外の位置で、開閉蓋34を下側から接触して支えて開閉蓋34が開くのを規制する。
【0032】
機体の走行と共に歩行する作業者は、載置台30にある苗を取って機体の走行にあわせて矢印A方向に回転している供給カップ33にそれぞれ入れていく。
供給カップ33の開閉蓋34が前記所定位置Pで開くと、供給カップ33内の苗が下方の植付具28に供給される。植付具28は、作動の軌跡17の下死点に来たときに土中に所定深さまで突入するとともに嘴の如く左右に開いて、内部に保持されていた苗を落下して植え付ける。
【0033】
主伝動ケース12の後面から後側へ突出する動力取出軸を突出し、該動力取出軸を介して植付伝動ケース26内に動力が入力される。
植付伝動ケース26内の伝動について、図6で説明すると、前記動力取出軸と同軸上で一体回転する前後方向の入力軸93を設け、該入力軸93から一対のベベルギヤ94a・94bを介して左右方向の第一軸95へ伝動される。尚、植付伝動ケース26の直前で入力軸93上には、所定以上の負荷トルクで動力を断つ安全クラッチ96を設けており、メカロック等により植付装置19に過大な作動負荷が生じたときに安全クラッチ96により動力を断って植付装置19及び植付伝動ケース26を含む植付伝動機構の破損を防止する。
【0034】
第一軸95に該第一軸95と一体回転する第一駆動スプロケット97を設け、第一駆動スプロケット97から伝動チェーンである第一無端体98を介して第一従動スプロケット99へ伝動し、該第一従動スプロケット99と一体回転する左右方向の第二軸100へ伝動する。第二軸100上で且つ第一従動スプロケット99の左右一方側(左側)には、3個の駆動側ギヤ101a・101b・101cを左右に配列し、該3個の駆動側ギヤ101a・101b・101cが第二軸100と一体回転する。なお、前記複数の駆動側ギヤ101a・101b・101cは、互いのピッチ円直径を異ならせており、互いに異なる歯数に設定されている。
【0035】
複数の駆動側ギヤ101a・101b・101cのうちの何れかと噛み合う単一の従動側ギヤ102を左右方向の第三軸103上に設けており、該従動側ギヤ102を第三軸103上で左右にスライドさせることにより、従動側ギヤ102が3個の駆動側ギヤ101a・101b・101cのうちの何れかと噛み合うように切り替えられる構成となっている。尚、第三軸103は、その軸表面に形成したスプライン104を介して従動側ギヤ102と一体回転する構成となっている。
【0036】
従動側ギヤ102のスライドは、従動側ギヤ102に連繋するスライドシフタである選択機構105の左右スライドにより行われる。選択機構105は、従動側ギヤ102に連係する連係部106と、該連係部106と一体で左右方向に延びるスライド軸107を備え、スライド軸107の端部が植付伝動ケース26の左右他方側(右側)の側面から突出しており、スライド軸107の端部に切換操作グリップ108を固着している。従って、作業者が切換操作グリップ108を左右に操作することにより、選択機構105が左右に移動して連係部106の左右位置が切り替えられ、第三軸103への伝動比が切り替えられる。この選択機構105による伝動比の切換構成は、走行速度に対する植付装置19の作動速度を変更して植付株間を変更する株間変速装置となる。スライド軸107は、第三軸103の上方で第三軸103の前端よりも後側に配置され、連係部106を含めた選択機構105は、第三軸103の上側で第三軸103よりも後側に配置されている。
【0037】
第三軸103の左右一方側(左側)の端部には、第三軸103と一体回転する第二駆動スプロケット109を設け、この第二の駆動スプロケット109から伝動チェーンである第二無端体110を介して第二従動スプロケット111へ伝動する。該第二の従動スプロケット111は、左右方向の第四軸となる左スイング駆動軸62上で遊転する構成であり、左スイング駆動軸62上に設けた植付クラッチ112の駆動体としての駆動側爪体113と一体で回転する。
【0038】
植付クラッチ112は、伝動を断つときには所定の回転位相(定位置)で停止する定位置停止クラッチであり、植付装置19の植付具28を作動する軌跡17上の上死点を越えて若干下降した位置で停止させる。植付クラッチ112は、第二従動スプロケット111の左右他方側(右側)に配置され、駆動側爪体113と噛み合う従動体としての従動側爪体114が左スイング駆動軸62と一体回転し且つ軸方向に左右移動する構成となっており、左スイング駆動軸62への伝動の入切をする。なお、駆動側爪体113と従動側爪体114には、互いに噛み合う4つの係合爪113aと4つの係合爪114aが各々に設けられている。
【0039】
即ち、従動側爪体114は、左スイング駆動軸62に軸方向に左右移動自在に装着されている。そして、従動側爪体114の中央部に設けた軸孔114’には、軸方向に貫通したキー溝114bを設け、該キー溝114bが左スイング駆動軸62に設けたキー62aに嵌合する構成となっている。従って、従動側爪体114は、左スイング駆動軸62と一体回転すると共に、左スイング駆動軸62上を軸方向に左右移動自在に装着された構成となっている。
【0040】
そして、植付クラッチ112の従動側爪体114の外周面には、従動側爪体114を駆動側爪体113から離して植付クラッチ112を切り、植付装置19の植付具28を上記の定位置で停止させるための操作カム115を形成している。該操作カム115は、後記の接当体としての操作ピン116aが接当して左スイング駆動軸62が矢印イ方向に回転することにより、従動側爪体114が駆動側爪体113から離れる方向に移動し、両者の係合を断ち植付クラッチ112を切る傾斜面115aと、従動側爪体114が駆動側爪体113から離れて植付クラッチ112が切れた後に操作ピン116aが接当して植付装置19の植付具28を上記の定位置で停止させる接当面115bとによって構成されている。
【0041】
そして、上記の従動側爪体114が駆動側爪体113から離れて植付クラッチ112が切れるタイミングは、昇降リンク機構29によって植付具28がその軌跡17の最上昇位置を少し過ぎた位置に来た時にしている。従って、植付クラッチ112は、最上昇位置を少し過ぎた植付具28の下動しようとする慣性力により確実に切れる。そして、植付クラッチ112が確実に切れた後、植付具28の下動しようとする慣性力は、操作ピン116aが接当している傾斜面115aと従動側爪体114を付勢している下記の圧縮バネである植付クラッチスプリング117の付勢力により徐々に小さくなって、操作ピン116aが接当面115bに接当して植付具28を定位置で適正に停止させる。
【0042】
また、上記の操作カム115に対向する操作ピン116aを先端に設けた植付クラッチ操作機構116が、操作カム115側(前側)に突出して操作ピン116aが操作カム115に接触することにより上記のように植付クラッチ112の伝動を断つ構成となっている。逆に、植付クラッチ操作機構116が操作カム115とは反対側(後側)に戻って操作カム115から離れると、従動側爪体114を駆動側爪体113側(左側)へ押し付ける植付クラッチスプリング117により、駆動側爪体113と従動側爪体114が噛み合って植付クラッチ112が伝動状態となる。
【0043】
この時、従動側爪体114には、操作カム115終端部の接当面115bを設けた部位に操作カム115部位よりも外周方向に突出した円弧状の凸部115cを設けている。そして、円弧状の凸部115cは、その接当面115bの従動側爪体114が植付クラッチスプリング117により付勢されて移動する方向(植付クラッチ112が入りになる方向)の後側角部を斜めに削って接当体案内斜面115dを形成している。
【0044】
従って、植付クラッチ112の伝動を入りにする場合に、操作ピン116aを操作カム115から離れる方向に移動させて、操作ピン116aが接当面115bの円弧状の凸部115cの接当体案内斜面115dに移動した時に、操作ピン116aが接当体案内斜面115dを滑るように移動して従動側爪体114が植付クラッチスプリング117により付勢されて従動側爪体114が駆動側爪体113に強制的に噛み合うように作用し、植付クラッチ112は適確に且つ迅速に伝動入りの状態となる。よって、操作ピン116aが接当面115bから離れて昇降リンク機構29による植付具28の下降するタイミングと植付クラッチ112の伝動入りによる駆動タイミングとが殆ど同じになり、適正に植付具28は昇降リンク機構29にて駆動作動される。
【0045】
また、従動側爪体114が駆動側爪体113に噛み合って植付クラッチ112が伝動入りになった状態では、操作ピン116aは凸部115cの従動側爪体114と反対の側面115eに対向する位置にあり、操作ピン116aが従動側爪体114の回転を阻害することはない。
【0046】
然も、円弧状の凸部115cは、昇降リンク機構29によって植付具28が下降し始めて、植付具28が畝U上面に突入して畝Uに苗を植付け終えるまでの間、操作ピン116aと対向する位置にある。従って、植付具28が畝U上面に突入して畝Uに苗を植付ける時の植付け負荷によって左スイング駆動軸62に駆動負荷が掛かっても、操作ピン116aが円弧状の凸部115cの側面115eに対向する位置にある為に、操作ピン116aが円弧状の凸部115cの側面115eに接当して、従動側爪体114が駆動側爪体113から離れることを阻止し、植付クラッチ112の伝動が切れることが防止でき、適切な苗の移植作業が行える。
【0047】
尚、植付クラッチ操作機構116は、左スイング駆動軸62の後方で左スイング駆動軸62よりも後側に配置されている。そして、操縦ハンドル16の左右中間位置に機体後方に向けて設けられた植付けクラッチレバー150を作業者が植付けクラッチ切り方向に操作すると、植付クラッチ操作機構116の操作ピン116aが操作カム115側(前側)に突出して操作ピン116aが操作カム115に接触することにより上記のように植付クラッチ112の伝動を断つ。逆に、植付けクラッチレバー150を作業者が植付けクラッチ入り方向に操作すると、植付クラッチ操作機構116の操作ピン116aが操作カム115とは反対側(後側)に戻って操作カム115から離れ、植付クラッチスプリング117により駆動側爪体113と従動側爪体114が噛み合って植付クラッチ112が伝動状態となる。
【0048】
左スイング駆動軸62の左右一方側(左側)の端部は、植付伝動ケース26から突出しており、植付伝動ケース26の左右一方側(左側)の側面に固着された植付装置駆動ケース27内を貫通し、更に植付装置駆動ケース27の左右一方側(左側)の側面から突出している。
【0049】
植付装置駆動ケース27内において、左スイング駆動軸62と一体回転する第三駆動スプロケット118を設け、第三駆動スプロケット118からチェーンである第三無端体119を介して第三従動スプロケット120へ伝動し、第三従動スプロケット120と後述する右スイングアーム駆動軸61が一体回転する。なお、右スイングアーム駆動軸61は、左スイング駆動軸62よりやや高い位置で左スイング駆動軸62の後方に配置されている。また、第三無端体119の上方には、第三無端体119に接触して第三無端体119に張力を与える板ばね121を設けている。
【0050】
一方、左スイング駆動軸62の左右他方側(右側)の端部には、供給部伝動用の一対のベベルギヤ121a・121bを設けており、供給部伝動用の一対のベベルギヤ121a・121bを介して植付伝動ケース26の後側に突出する供給部用動力取出軸122へ伝動する構成となっている。供給部用動力取出軸122からの伝動により、供給部31が駆動回転する構成である。
【0051】
植付伝動ケース26内の伝動軸の配置構成について説明すると、第一軸95よりも第二軸100を後側且つ上側に配置し、第二軸100の後方(第二軸100と略同じ高さの位置)に第三軸103を配置し、第三軸103の上方(第三軸103と略同じ前後位置)に左スイング駆動軸62を配置している。そして、植付伝動ケース26は、第二軸100と左スイング駆動軸62の間で第三軸103の斜め前上側で且つ植付伝動ケース26の前側上面に凹部123を形成している。(図4参照)
原動機11及び主伝動ケース12の上方を覆う機体カバー124を設けており、該機体カバー124の後部124aを植付伝動ケース26の凹部123に突入させて配置している。機体カバー124には、植付伝動ケース26の左右一方側(左側)で植付伝動ケース26の凹部123よりも後側に延ばした延長部124bを形成し、該延長部124bを昇降リンク機構29の前部(後述する左クランクアーム50及び後揺動アーム51)の上方に配置している。(図1参照)
植付装置19は、上部に形成した開口から苗を受けるとともに左右に開閉可能な先端が尖ったカップ状の植付具28と、該植付具28を昇降駆動する昇降リンク機構29で構成される。
【0052】
リンク機構である昇降リンク機構29は、植付具28の支持板72の右後側面に突設する右回動軸73に枢支した右スイングアーム52が植付装置駆動ケース27の右スイングアーム駆動軸61の右突出端に固着した右クランクアーム58の先端と右連結軸59で連結し、植付具28の支持板72の左前側面に突設する左回動軸74に枢支した左スイングアーム53の前端部が植付装置駆動ケース27の左スイング駆動軸62に固着した左クランクアーム50の先端と左連結軸65で連結し、前記右スイングアーム駆動軸61の左突出端に固着した第一昇降アーム55の先端に第二昇降アーム56を第一連結軸66で連結し、この第二昇降アーム56の先端を前記左スイングアーム53の中間部で下方屈曲部に第二連結軸67で枢着している。
【0053】
次に、上記昇降リンク機構29の作動によって、植付具28の下端が植付けの軌跡17(静軌跡:機体を停止した状態の軌跡)を描いて植付具28が苗を畝Uに移植する作用を説明する。
【0054】
左スイング駆動軸62がB方向に回転することにより、左スイング駆動軸62に固定されている左クランクアーム50がB方向に回転し、左スイングアーム53が前後に揺動する。
【0055】
一方、右スイングアーム駆動軸61が回転することにより、右突出端に固定されている右クランクアーム58がC方向に回動し、右スイングアーム52が前後に揺動する。
また、右スイングアーム駆動軸61が回転することにより、左突出端に固定されている第一昇降アーム55がC方向に回動し、第二昇降アーム56が上下して左スイングアーム53を上下に揺動する。第一昇降アーム55は左クランクアーム55や右クランクアーム58より長いので、植付けの軌跡17は、前後の揺動幅よりも昇降幅が大きくなる。
【0056】
従って、右スイングアーム52と左スイングアーム53は、平行リンク機構であるから、右スイングアーム52と左スイングアーム53の前端に枢着した支持板72すなわち植付具28は垂直方向を向いた姿勢を維持して植付け軌跡17を描いて作動し、植付具28内に受け入れられた苗を適正な姿勢で畝に植付けることができる。
【0057】
なお、植付具28の下部は、嘴状の左側部材70Lと右側部材70Rから構成されており、左側部材70Lと右側部材70Rは閉じた状態で内部に苗を保持して、植付けの軌跡17の最下端で左右に開いて畝内で苗を植付ける一般的な構成である。
【0058】
次に、図10から図13で、植付具28を開閉するための開閉機構とその動作について説明する。
植付具28の開閉動作のためのカウンターアーム79を、上アーム52の一端(後端)に設けた回動上軸73に、回動自在に設けている。また、上アーム52の他端(前端)に設けた上軸64に、開閉アーム76を回動自在に設けており、開閉アーム76とカウンターアーム79を連結ロッド78により連結している。また、カウンターアーム79には、ピン80を設けている。尚、ターンバックル等の調節ねじにより、連結ロッド78のロッド長を調節できる構成としてもよい。
【0059】
また、揺動駆動カム54とともに左スイング駆動軸62に固定されて回転する開閉駆動カム75を設けており、開閉駆動カム75の周縁部に接触する開閉用ローラ77を、開閉アーム76に回動自在に設けている。左スイング駆動軸62の回転に伴って開閉駆動カム75が回転することにより、開閉用ローラ77を介して開閉アーム76を作動させる。
【0060】
植付具28の開閉動作は、カウンターアーム79が連結ロッド78を介して開閉アーム76と並行して動作し、開閉アーム76は、開閉用ローラ77を介して開閉駆動カム75によって動作する。よって、簡易な形状の開閉駆動カム75によって開閉タイミングと開閉量を高精度で設定できる。
【0061】
植付具28に備えるホルダ71を、左ホルダ71Lおよび右ホルダ71Rで構成し、左ホルダ71Lを左側部材70Lに一体で固着し、右ホルダ71Rを右側部材70Rに一体で固着している。左ホルダ71Lは前後方向の左支点軸125回りに回動し、右ホルダ71Rは前後方向の右支点軸126回りに回動する構成であり、植付具28の左右方向中央位置に設けた連動用軸127により、左ホルダ71Lと右ホルダ71Rを連結している。また、左ホルダ71Lと一体で設けた回動操作アーム128に、上下方向に延びる開閉ロッド131を連結し、カウンターアーム79のピン80を開閉ロッド131に連結している。尚、左ホルダ71Lと右ホルダ71Rの間には開閉用スプリング130を設けており、該開閉用スプリング130のスプリング力により、左側部材70Lと右側部材70Rが互いに左右方向内側に押圧され、植付具28の下部が閉じる構成となっている。また、開閉用スプリング130のスプリング力により、開閉用ローラ77ひいては開閉アーム76が開閉駆動カム75側(上側)に押し付けられる。
【0062】
左スイング駆動軸62の回転と共に開閉駆動カム75が回転すると、開閉用ローラ77が開閉駆動カム75の周縁形状にしたがって移動し、開閉アーム76が揺動する。開閉アーム76の揺動に伴って、連結ロッド78が前後方向に作動し、カウンターアーム79が回動し、開閉ロッド131が上下方向に作動し、回動操作アーム128を介して左ホルダ71Lを回動するとともに連動用軸127を介して右ホルダ71Rを回動し、左ホルダ71Lと右ホルダ71Rを背反的に互いに左右対称位置へ回動させて植付具28の下部を開閉する。具体的には、連結ロッド78の前側への作動に伴って、開閉ロッド131を上側へ作動し、植付具28の下部を開く。なお、植付具28の上昇時、開閉駆動カム75の外周の局所的な突起部により、植付具28の下部を一時的に大きく開いて、別途設けた清掃用のスクレーパが植付具28内を上下方向に通過できる構成としている。
【0063】
これにより、軌跡17の上死点付近から下降する行程では、植付具28の下部が閉じた状態となり、下死点で植付具28の下部が開き、下死点から上昇する行程では植付具28の下部が開いた状態となる。
【0064】
なお、開閉駆動カム75を、クランクアーム55を駆動するクランクアーム駆動軸69に固定し、クランクアーム55と一体に回転する構成としてもよい。
また、本実施の形態では、上アーム52の連結支点軸である上軸64に開閉アーム76を取り付けているので、簡単な構成となっている。また、開閉アーム76およびカウンターアーム79を何れも上アーム52の回動支点軸に連結した構成としているので、連結ロッド78が上アーム52に沿って配置され、コンパクトな構成となっている。また、開閉駆動カム75を、揺動駆動カム54とともに左クランクアーム50の回動支点軸である左スイング駆動軸62に取り付けているので、簡単な構造となっている。
【0065】
植付具28の上下方向の上下動速度と前後方向の前後動速度を合成した絶対速度は、下死点では速いのに対し、上死点では非常に遅くなる。つまり、植付具28は、下死点付近では、比較的早く移動しているのに対し、上死点では、ゆっくりと移動しており停止に近い状態になっている。つまり、供給カップ33から苗が供給される上死点付近では、植付具28の速度が非常に遅くなっているので、供給カップ33から確実に苗を供給させることができる。なお、上死点付近では、前後方向の前後動速度が10mm/s以下になる時間が0.21秒あり、供給カップ33から確実に苗を供給できる時間であることを確認できた。これにより、従来のような間欠植付機構が不要にできる。
【0066】
また、機体の走行を加味した動軌跡は、株間50cmで、土壌面を想定した下死点から75mm上方での前後幅は4.9mmであり、また、株間40cmおよび60cmでは、19.1mmおよび20.2mmであり、実際の植付けにおいて植付穴があまり大きくならずに問題なく植え付け可能であることを確認できた。
【0067】
よって、植付具28の上死点での移動速度を小さく(停止時間を大きく)できるので、従来のような上死点で植付具28への伝動を停止して該植付具28を間欠的に作動させる間欠植付機構を設けなくても、植付具28への伝動比を変更するだけで種々の株間で適正な動軌跡により植え付けることができる。
【0068】
以上により、この移植機10は、原動機11から主伝動ケース12を介して走行推進体へ伝動するとともに、該主伝動ケース12から植付伝動ケース26を介して植付装置19へ伝動する構成とし、該植付伝動ケース26を、該主伝動ケース12の後側に配置すると共に、前側上面に凹部123を形成して構成し、該原動機11及び該主伝動ケース12の上方を覆う機体カバー124の後部124aを、該凹部123に突入させている。
【0069】
よって、機体カバー124の後部124aを植付伝動ケース26の凹部123に突入させて後寄りに位置させることができるため、機体の前後長を短縮して機体をコンパクトに構成できると共に、機体カバー124により植付伝動ケース26の前下部を含めて機体の構造物を有効に覆うことができ、降雨等から機体の構造物を的確に遮ることができて、機体の耐久性が向上する。
【0070】
また、植付装置19を、植付具28と、該植付具28を昇降させる昇降リンク機構29で構成し、昇降リンク機構29を植付伝動ケース26の左右一方側に配置し、機体カバー124には、植付伝動ケース26の前記左右一方側で植付伝動ケース26の凹部123よりも後側に延ばした延長部124bを形成し、該延長部124bを昇降リンク機構29の上方に配置している。
【0071】
よって、機体カバー124の延長部により、昇降リンク機構29を含めて機体の構造物を有効に覆うことができ、降雨等から昇降リンク機構29を含む機体の構造物を的確に遮ることができて、機体の耐久性が向上する。また、作動する昇降リンク機構29に作業者が触れることを防止でき、安全性が向上する。
【0072】
次に、機体を畝Uに沿って走行させる畝案内機構160を図16(a),(b)で説明する。
左右前輪13及び左右後輪14が跨いで走行する畝Uに前記植付具28にて苗を植付けて苗移植作業を行うが、畝案内機構160は機体の前部に設けられ、該畝Uの左右面に各々左右ガイドローラ161が接当して、機体が畝Uに沿って走行するように案内する。
【0073】
左右ガイドローラ161は、エンジン載置台91の左右両側に各々設けられているが、左右ガイドローラ161は同様の構成であるから、以下に、代表して左ガイドローラ161について説明する。
【0074】
エンジン載置台91の側面には、ガイドローラ支持ピン162の基部が溶接にて固定されている。そして、該ガイドローラ支持ピン162は、その先端が外側ほど下方に位置するように下がり傾斜姿勢となるように設けられている。
【0075】
ガイドローラ支持ピン162には、ガイドローラ支持アーム163の基部に設けた円筒状ボス164を回動自在に外嵌して設け、ガイドローラ支持アーム163の前端部に設けた円筒状支持ボス165には樹脂製の円筒のローラ166を回転自在に設けたローラ軸167を上下位置調節自在に貫通してボルト168にて固定して設けている。
【0076】
また、円筒状ボス164に上方に向けて設けた上昇作動アーム169と前記油圧昇降シリンダ23の作動にて後輪14を昇降させる上側ア−ム40aとを連結ワイヤ170にて連結し、通常の植付け作業時の後輪14の上下作動では連結ワイヤ170の緩みで上昇作動アーム169は作動せず、後輪14を機体旋回時に最大限界まで下降させて機体を最上昇させた時に連結ワイヤ170の緩みが張って上昇作動アーム169を後方に向けて回動させて、ガイドローラ161を畝Uから離れた上方に退避させる構成としている。
【0077】
この時、ガイドローラ支持アーム163の基部に設けた円筒状ボス164を回動自在に支持しているガイドローラ支持ピン162は、その先端が外側ほど下方に位置するように下がり傾斜姿勢となるように設けられているので、左右ガイドローラ162は互いに離れて開く方向に上昇し、畝U面に接当することなく良好に上昇する。従って、植付けクラッチレバー150を植付けクラッチ切り方向に操作し、更に、左右後輪14を最大限界まで下降させて機体を最上昇させて機体を旋回する際に、同時に、左右ガイドローラ162は互いに離れて開く方向で畝U面に接当することなく良好に上昇し、機体の旋回操作が容易に且つ適切に行える。
【0078】
また、円筒状ボス164の外側には波形状凹凸164aが形成されており、円筒状ボス164の外側にガイドローラ支持ピン162に回動自在に外嵌して設けた固定用ボス171の内側に設けた波形状凹凸171aに係合する構成となっている。
【0079】
そして、円筒状ボス164は、付勢バネ172にて固定用ボス171側に付勢されており、円筒状ボス164外側の波形状凹凸164aと固定用ボス171内側の波形状凹凸171aが係合することにより、左右ガイドローラ161は、畝Uに接当した機体進行方向案内作用位置と上方に退避した位置で固定される。
【0080】
尚、左右ガイドローラ161が他物に当たって破損することを防止する為に、前記のように円筒状ボス164が付勢バネ172にて固定用ボス171側に付勢されて、円筒状ボス164外側の波形状凹凸164aと固定用ボス171内側の波形状凹凸171aが係合する構成としている。従って、ガイドローラ161が他物に当たった場合には、付勢バネ172の付勢力に抗して各波形状凹凸164a・171aの係合が外れて円筒状ボス164が固定用ボス171に対して回動し、ガイドローラ161は他物から遠ざかるように逃げて、破損が防止できる。
【0081】
そして、固定用ボス171には、下方に向けて操作アーム173を設けて、連結ワイヤ174にて植付けクラッチレバー150に連携している。即ち、植付けクラッチレバー150を植付けクラッチ入りに操作すると、連結ワイヤ174を引いて左右ガイドローラ161が下降して畝Uの左右面に各々接当し、機体が畝Uに沿って走行するように案内する案内作用状態となり、植付けクラッチレバー150を植付けクラッチ切りに操作すると、連結ワイヤ174が緩んで左右ガイドローラ161が上記機体旋回時に上昇できる状態となる。
【0082】
図17は、植付具28の昇降機構の別実施例を示している。
植付具28の支持板72の左右側面に枢支軸137で枢支する左右スイングアーム135の前端にピニオンギヤ136を枢支し、このピニオンギヤ136を嵌合する弧状長孔139aを形成した揺動アーム139を植付装置駆動ケース27に揺動枢支軸141で枢支している。弧状長孔139aには前記ピニオンギヤ136を噛み合わせるラック139bを形成している。揺動アーム139の上端には揺動ロータ140を枢支して、揺動駆動軸145に固着の揺動カム138に当接している。
【0083】
従って、揺動駆動軸145の回転によって、揺動アーム139が前後に揺動し、左右スイングアーム135を前後に揺動する。
また、左右スイングアーム135の前後中間部には、昇降駆動軸146に固着の第一昇降アーム55と第一連結軸66と第二昇降アーム56で第二連結軸67が枢支され、昇降駆動軸146の回転で左右スイングアーム135が昇降する。
【0084】
この植付具28の昇降機構は、揺動カム138の形状によって植付軌跡を任意に変更出来る。
図18は、植付具28の昇降機構の別実施例を示している。
【0085】
この左右スイングアーム135の前端にはカムローラ144を枢支し、第一揺動駆動軸142に固着の第一揺動カム142aと第二揺動駆動軸143に固着の第二揺動カム143aと当接するように引張バネ147でカムローラ144を引っ張っている。
【0086】
なお、カムローラ144を上方から引張バネ147で第一揺動カム142aと第二揺動カム143aに当接するようにすることも出来、この場合には、植付動作の際に植付具28が石などに当たった場合に植付具28を無理に土中へ差し込まないように出来る。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明にかかる移植機は、タバコの苗の他に各種野菜苗やジャガイモ等の種芋やラッキョウ等の球根類等の色々な移植対象物を植え付ける移植機に適用でき、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0088】
28 植付具
50 前揺動アーム
52 右アーム
53 左アーム
55 左クランクアーム
56 連結アーム
58 右クランクアーム
61 クランクアーム駆動軸(昇降駆動軸)
62 揺動カム駆動軸
72 支持板
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗や種芋等の移植機の植付装置に関するものであり、農業機械の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、移植機は、原動機から主伝動ケースを介して走行推進体である後輪へ伝動するとともに、該主伝動ケースから植付伝動ケースを介して植付装置へ伝動する構成としている。そして、植付装置は、移植物を収容した植付具を平行リンク機構で昇降させるように構成し、所定の軌跡で昇降する植付具の先端部は最下端近くで圃場に所定深さまで突入して植付具を開いて移植物を土中に残して圃場に植え付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−234209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の植付装置は、上下一対の平行リンクの先端に水平支軸で植付具が枢支して支持されている。このために、植付具を土中へ差し込む抵抗で平行リンクと植付具の取付部に無理が入って植付具の平行リンクとの取付部にガタが生じて長時間の使用で正常な植付動作が出来なくなる。
【0005】
本発明は、植付具を昇降させる昇降機構を強固な構成にすることで、深く植え付けたり適正な移植作業が長時間継続して行えたりする移植機の植付装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、植付具28を開閉可能に支持する支持板72の左右側部に右スイングアーム52と左スイングアーム53を枢支し、この右スイングアーム52と左スイングアーム53の前端をクランク回転する右クランクアーム58と左クランクアーム50にそれぞれ枢支連結して植付具28を前後に揺動させ、右スイングアーム52と左スイングアーム53の片方或いは両方の前後中間部を上下にクランク運動をする第二昇降アーム56に枢支連結して植付具28を昇降させてなる移植機の植付装置とした。
【0007】
この構成で、植付具28を支持した支持板72の左右側部が右スイングアーム52と左スイングアーム53で支持されて、右クランクアーム58と左クランクアーム50のクランク回転で植付具28が前後に揺動し、第二昇降アーム56上下クランク運動で支持板72を上下動して植付具28が昇降する。
【0008】
そして、植付具28の支持板72が右スイングアーム52と左スイングアーム53で左右に幅を持って支持されているので、植付具28に左右横方向から外力が加わっても強固に支持して狂いを生じない。
【0009】
請求項2に係る発明は、植付具28を開閉可能に支持する支持板72の左右側部に枢支した右スイングアーム52と左スイングアーム53の前端を、植付装置駆動ケース27の左スイング駆動軸62と右スイングアーム駆動軸61とにそれぞれ左クランクアーム50と右クランクアーム58に連結し、左スイングアーム53の前後中間部を植付装置駆動ケース27の昇降駆動軸61に第一昇降アーム55と第二昇降アーム56で枢支連結してなる移植機の植付装置とした。
【0010】
この構成で、請求項1記載の発明の作用に加えて、植付具28を支持した支持板72の左右側部が右スイングアーム52と左スイングアーム53で支持されて、左スイング駆動軸62と右スイングアーム駆動軸61の回転で植付具28が前後に揺動し、右スイングアーム駆動軸61回転で第一昇降アーム55と第二昇降アーム56で左スイングアーム53を上下動して植付具28が昇降する。
【0011】
請求項3に係る発明は、左クランクアーム50と右クランクアーム58の長さを同じにしたことを特徴とする請求項1或いは請求項2のどちらか1項に記載の移植機の植付装置とした。
【0012】
この構成で、請求項1と請求項2記載の発明の作用に加えて、植付具28が前後揺動と昇降動作しても植付具28を支持する支持板72の姿勢が傾かずに植付具28の略垂直姿勢を維持して植付動作をする。
【0013】
請求項4に係る発明は、昇降駆動軸61を右スイングアーム駆動軸61と同軸にしたことを特徴とする請求項1から請求項3のどちらか1項に記載の移植機の植付装置とした。
この構成で、請求項1から請求項3に記載の発明の作用に加えて、植付具28を昇降させる昇降駆動軸としての植付装置駆動ケース27の回転出力軸が新たに必要なく、右スイングアーム駆動軸61と左スイング駆動軸62の二個の駆動軸でよく、植付装置駆動ケース27の内部構造が簡略になる。
【0014】
請求項5に係る発明は、昇降駆動軸61に固着する第一昇降アーム55を左クランクアーム50や右クランクアーム58よりも長くしたことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の移植機とした。
【0015】
この構成で、植付具28の植付けの軌跡17が前後揺動幅よりも昇降動作幅が広くなって、移植物を深く植え付けることが出来る。
【発明の効果】
【0016】
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の発明で、植付具28が強固な昇降機構で支持されて、特に左右方向からの外力に抗して、発明の課題を適切に解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】移植機を示す側面図である。
【図2】移植機を示す平面図である。
【図3】供給部を示す底面図である。
【図4】植付伝動ケースを示す側面図である。
【図5】植付装置駆動ケースを示す側面図である。
【図6】植付伝動ケースを示す断面展開平面図である。
【図7】植付クラッチの拡大平面図である。
【図8】植付クラッチの作用説明用拡大側面図である。
【図9】植付クラッチの作用説明用拡大側面図である。
【図10】植付装置を示す斜視図である。
【図11】植付具の昇降機構を示す部分拡大側面図である。
【図12】植付具の昇降機構を示す部分拡大平面図である。
【図13】植付装置を示す拡大背面図である。
【図14】植付具の上下動速度、前後動速度および絶対速度を示すグラフである。
【図15】植付株間ごとの植付具の静軌跡および動軌跡を示すグラフである。
【図16】(a)ガイドローラ作動部の作用説明用拡大平面図、(b)ガイドローラ作動部の作用説明用拡大側面図である。
【図17】別実施例の植付具の昇降機構を示す部分拡大側面図である。
【図18】さらに、別実施例の植付具の昇降機構を示す部分拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施の一形態を、以下に説明する。尚、以下の実施の形態は、あくまで実施の一形態であって、特許請求の範囲の解釈を拘束するものではない。
移植機の一例としてタバコの苗を移植する移植機について説明する。
【0019】
この移植機10は、図1と図2に示す如く、前部にエンジンである原動機11及び主伝動ケース12と、走行車輪としての左右一対の前輪13及び走行推進体としての左右一対の後輪14と、後部に植付装置19、供給部31、鎮圧輪15および操縦ハンドル16を備えて構成されている。
【0020】
移植機10は、走行機体が圃場内の畝Uを跨ぐように、左右前輪13及び左右後輪14が畝間を走行し、畝Uの上面の左右幅方向における中央位置に植付装置19により苗を植付けていく構成となっている。
【0021】
また、主伝動ケース12の左右端には該主伝動ケース12に対して上下に回動可能な延長ケース40を左右それぞれ設け、左右の延長ケース40のそれぞれの端部に走行伝動ケース20を取り付けている。したがって、原動機11から入力される主伝動ケース12内の動力を走行伝動ケース20内に伝動する構成となっている。
【0022】
左右走行伝動ケース20の回動先端部には、各々左右後輪14をそれぞれ取り付け、この左右後輪14の駆動により機体が走行するようになっている。従って、主伝動ケース12、左右延長ケース40及び左右走行伝動ケース20は、駆動走行車輪としての左右後輪14に駆動力を伝動する伝動装置となっている。
【0023】
一方、エンジン載置台91の下部には左右方向に延びる前輪支持フレーム41を前後方向のローリング軸18回りに回動可能に設け、この前輪支持フレーム41の左右両端部に左右前輪13を取り付けた構成としている。
【0024】
また、主伝動ケース12の後端には左右方向に延びる後フレーム21を固着して設け、該後フレーム21の後端面の右端部には、機体の右寄りの位置で前後方向に延びる主フレーム22を設けている。該主フレーム22の後端部には操縦ハンドル16を設け、該操縦ハンドル16が主フレーム22及び後フレーム21を介して主伝動ケース12に支持された構成となっている。後フレーム21の左右一方寄り(右寄り)の位置の上面には、植付伝動ケース26の前下端部を載せて該植付伝動ケース26を固着して設けている。
【0025】
また、主伝動ケース12の後側で且つ左右方向の中央には、油圧昇降シリンダ23を設けている。この油圧昇降シリンダ23は、主伝動ケース12に取り付けられた油圧切換バルブ部24に固着して設けられ、主伝動ケース12に取り付けられた油圧ポンプ92からの油路を油圧切換バルブ部24で切り替えることにより作動する。
【0026】
また、油圧昇降シリンダ23のシリンダロッドの後端には左右に延びる横杆43を設け、この横杆43の左右端部にそれぞれロッドとなる左側の後輪昇降ロッド44及び右側の後輪昇降ロッド45を連結し、左側の後輪昇降ロッド44及び右側の後輪昇降ロッド45の他端をそれぞれの延長ケース40に取り付けられた上側ア−ム40aに枢着して、横杆43と延長ケース40とが連結された構成となっている。従って、油圧昇降シリンダ23の伸縮により横杆43、左側の後輪昇降ロッド44及び右側の後輪昇降ロッド45を介して主伝動ケース12の左右の出力軸回りに走行伝動ケース20を回動し、該走行伝動ケース20の回動により後輪14が上下して走行機体が昇降する構成となっている。なお、油圧昇降シリンダ23のシリンダロッド、横杆43、左側の後輪昇降ロッド44及び右側の後輪昇降ロッド45は、シリンダロッドの進出位置によっては、機体側面視で後述する昇降リンク機構29の下方に位置する構成となっており、スペースを有効利用して機体のコンパクト化を図っている。
【0027】
また、機体中央部の下方位置で植付装置19の植付具28が苗を畝Uに植付ける位置の直前の位置には、周知の畝U上面に接当して畝U上面の高さを検出する植付け深さ制御用センサSが設けられており、該植付け深さ制御用センサSの畝U検出により油圧切換バルブ部24に備えられた昇降制御用切換バルブを介して油圧昇降シリンダ23を作動させて左右後輪14を昇降制御して、走行機体を畝Uに対する所定の高さに制御して植付具28が苗を畝Uに植付ける深さが一定になるようにしている。
【0028】
また、左側の後輪昇降ロッド44が伸縮するように該左側の後輪昇降ロッド44の中途部に油圧ポンプ92からの油圧により作動する左右傾斜用油圧シリンダ25を設けており、該左右傾斜用油圧シリンダ25の伸縮により右側の後輪14の上下位置に対して左側の後輪14を上下させて、畝Uの谷部の凹凸に関係なく走行機体を所望の左右傾斜姿勢に制御する構成となっている。なお、主伝動ケース12の右側には振り子式の左右傾斜センサ42が設けられて、この左右傾斜センサ42の検出により油圧切換バルブ部24に備えられた左右傾斜用切換バルブを介して左右傾斜用油圧シリンダ25を作動させ、走行機体を所望の左右傾斜姿勢に制御する構成となっている。
【0029】
植付装置19は、移植対象物である苗を1個ずつ圃場の畝に植付けるべく、主伝動ケース12内からの動力が主伝動ケース12の後側に設けた植付伝動ケース26と、その植付伝動ケース26に取り付けられた植付装置駆動ケース27を介して伝達され、作動するようになっている。
【0030】
植付装置19は、先端が尖ったカップ状の植付具28と、該植付具28を昇降させるべく作動する昇降リンク機構29で構成される。植付具28の先端(下端)は、植付具28の昇降動作によって、前側で下降し後側で上昇するとともに、前後方向の幅が上部よりも下部の方が大きいループ状の軌跡17を描いて繰り返し作動する。
【0031】
供給部31には、植付伝動ケース26からの動力により作動し、作業者が手で苗を一個ずつ供給するための供給カップ33が、供給回転台32上に円形のループ状で所定間隔毎に配置されている。そして、各々の供給カップ33の底部には、図3の如く、上下方向に可動する開閉蓋34を設けている。また、供給カップ33の下方には、供給回転台32の矢印A方向への回転により、供給カップ33が植付具28の上方の位置である所定位置Pに来たときにのみ開閉蓋34が開くべく、環状体の一部を切り欠いた略C字型の供給カップ開閉ガイド35が、走行機体側に固定されている。尚、供給カップ開閉ガイド35は、前記所定位置P以外の位置で、開閉蓋34を下側から接触して支えて開閉蓋34が開くのを規制する。
【0032】
機体の走行と共に歩行する作業者は、載置台30にある苗を取って機体の走行にあわせて矢印A方向に回転している供給カップ33にそれぞれ入れていく。
供給カップ33の開閉蓋34が前記所定位置Pで開くと、供給カップ33内の苗が下方の植付具28に供給される。植付具28は、作動の軌跡17の下死点に来たときに土中に所定深さまで突入するとともに嘴の如く左右に開いて、内部に保持されていた苗を落下して植え付ける。
【0033】
主伝動ケース12の後面から後側へ突出する動力取出軸を突出し、該動力取出軸を介して植付伝動ケース26内に動力が入力される。
植付伝動ケース26内の伝動について、図6で説明すると、前記動力取出軸と同軸上で一体回転する前後方向の入力軸93を設け、該入力軸93から一対のベベルギヤ94a・94bを介して左右方向の第一軸95へ伝動される。尚、植付伝動ケース26の直前で入力軸93上には、所定以上の負荷トルクで動力を断つ安全クラッチ96を設けており、メカロック等により植付装置19に過大な作動負荷が生じたときに安全クラッチ96により動力を断って植付装置19及び植付伝動ケース26を含む植付伝動機構の破損を防止する。
【0034】
第一軸95に該第一軸95と一体回転する第一駆動スプロケット97を設け、第一駆動スプロケット97から伝動チェーンである第一無端体98を介して第一従動スプロケット99へ伝動し、該第一従動スプロケット99と一体回転する左右方向の第二軸100へ伝動する。第二軸100上で且つ第一従動スプロケット99の左右一方側(左側)には、3個の駆動側ギヤ101a・101b・101cを左右に配列し、該3個の駆動側ギヤ101a・101b・101cが第二軸100と一体回転する。なお、前記複数の駆動側ギヤ101a・101b・101cは、互いのピッチ円直径を異ならせており、互いに異なる歯数に設定されている。
【0035】
複数の駆動側ギヤ101a・101b・101cのうちの何れかと噛み合う単一の従動側ギヤ102を左右方向の第三軸103上に設けており、該従動側ギヤ102を第三軸103上で左右にスライドさせることにより、従動側ギヤ102が3個の駆動側ギヤ101a・101b・101cのうちの何れかと噛み合うように切り替えられる構成となっている。尚、第三軸103は、その軸表面に形成したスプライン104を介して従動側ギヤ102と一体回転する構成となっている。
【0036】
従動側ギヤ102のスライドは、従動側ギヤ102に連繋するスライドシフタである選択機構105の左右スライドにより行われる。選択機構105は、従動側ギヤ102に連係する連係部106と、該連係部106と一体で左右方向に延びるスライド軸107を備え、スライド軸107の端部が植付伝動ケース26の左右他方側(右側)の側面から突出しており、スライド軸107の端部に切換操作グリップ108を固着している。従って、作業者が切換操作グリップ108を左右に操作することにより、選択機構105が左右に移動して連係部106の左右位置が切り替えられ、第三軸103への伝動比が切り替えられる。この選択機構105による伝動比の切換構成は、走行速度に対する植付装置19の作動速度を変更して植付株間を変更する株間変速装置となる。スライド軸107は、第三軸103の上方で第三軸103の前端よりも後側に配置され、連係部106を含めた選択機構105は、第三軸103の上側で第三軸103よりも後側に配置されている。
【0037】
第三軸103の左右一方側(左側)の端部には、第三軸103と一体回転する第二駆動スプロケット109を設け、この第二の駆動スプロケット109から伝動チェーンである第二無端体110を介して第二従動スプロケット111へ伝動する。該第二の従動スプロケット111は、左右方向の第四軸となる左スイング駆動軸62上で遊転する構成であり、左スイング駆動軸62上に設けた植付クラッチ112の駆動体としての駆動側爪体113と一体で回転する。
【0038】
植付クラッチ112は、伝動を断つときには所定の回転位相(定位置)で停止する定位置停止クラッチであり、植付装置19の植付具28を作動する軌跡17上の上死点を越えて若干下降した位置で停止させる。植付クラッチ112は、第二従動スプロケット111の左右他方側(右側)に配置され、駆動側爪体113と噛み合う従動体としての従動側爪体114が左スイング駆動軸62と一体回転し且つ軸方向に左右移動する構成となっており、左スイング駆動軸62への伝動の入切をする。なお、駆動側爪体113と従動側爪体114には、互いに噛み合う4つの係合爪113aと4つの係合爪114aが各々に設けられている。
【0039】
即ち、従動側爪体114は、左スイング駆動軸62に軸方向に左右移動自在に装着されている。そして、従動側爪体114の中央部に設けた軸孔114’には、軸方向に貫通したキー溝114bを設け、該キー溝114bが左スイング駆動軸62に設けたキー62aに嵌合する構成となっている。従って、従動側爪体114は、左スイング駆動軸62と一体回転すると共に、左スイング駆動軸62上を軸方向に左右移動自在に装着された構成となっている。
【0040】
そして、植付クラッチ112の従動側爪体114の外周面には、従動側爪体114を駆動側爪体113から離して植付クラッチ112を切り、植付装置19の植付具28を上記の定位置で停止させるための操作カム115を形成している。該操作カム115は、後記の接当体としての操作ピン116aが接当して左スイング駆動軸62が矢印イ方向に回転することにより、従動側爪体114が駆動側爪体113から離れる方向に移動し、両者の係合を断ち植付クラッチ112を切る傾斜面115aと、従動側爪体114が駆動側爪体113から離れて植付クラッチ112が切れた後に操作ピン116aが接当して植付装置19の植付具28を上記の定位置で停止させる接当面115bとによって構成されている。
【0041】
そして、上記の従動側爪体114が駆動側爪体113から離れて植付クラッチ112が切れるタイミングは、昇降リンク機構29によって植付具28がその軌跡17の最上昇位置を少し過ぎた位置に来た時にしている。従って、植付クラッチ112は、最上昇位置を少し過ぎた植付具28の下動しようとする慣性力により確実に切れる。そして、植付クラッチ112が確実に切れた後、植付具28の下動しようとする慣性力は、操作ピン116aが接当している傾斜面115aと従動側爪体114を付勢している下記の圧縮バネである植付クラッチスプリング117の付勢力により徐々に小さくなって、操作ピン116aが接当面115bに接当して植付具28を定位置で適正に停止させる。
【0042】
また、上記の操作カム115に対向する操作ピン116aを先端に設けた植付クラッチ操作機構116が、操作カム115側(前側)に突出して操作ピン116aが操作カム115に接触することにより上記のように植付クラッチ112の伝動を断つ構成となっている。逆に、植付クラッチ操作機構116が操作カム115とは反対側(後側)に戻って操作カム115から離れると、従動側爪体114を駆動側爪体113側(左側)へ押し付ける植付クラッチスプリング117により、駆動側爪体113と従動側爪体114が噛み合って植付クラッチ112が伝動状態となる。
【0043】
この時、従動側爪体114には、操作カム115終端部の接当面115bを設けた部位に操作カム115部位よりも外周方向に突出した円弧状の凸部115cを設けている。そして、円弧状の凸部115cは、その接当面115bの従動側爪体114が植付クラッチスプリング117により付勢されて移動する方向(植付クラッチ112が入りになる方向)の後側角部を斜めに削って接当体案内斜面115dを形成している。
【0044】
従って、植付クラッチ112の伝動を入りにする場合に、操作ピン116aを操作カム115から離れる方向に移動させて、操作ピン116aが接当面115bの円弧状の凸部115cの接当体案内斜面115dに移動した時に、操作ピン116aが接当体案内斜面115dを滑るように移動して従動側爪体114が植付クラッチスプリング117により付勢されて従動側爪体114が駆動側爪体113に強制的に噛み合うように作用し、植付クラッチ112は適確に且つ迅速に伝動入りの状態となる。よって、操作ピン116aが接当面115bから離れて昇降リンク機構29による植付具28の下降するタイミングと植付クラッチ112の伝動入りによる駆動タイミングとが殆ど同じになり、適正に植付具28は昇降リンク機構29にて駆動作動される。
【0045】
また、従動側爪体114が駆動側爪体113に噛み合って植付クラッチ112が伝動入りになった状態では、操作ピン116aは凸部115cの従動側爪体114と反対の側面115eに対向する位置にあり、操作ピン116aが従動側爪体114の回転を阻害することはない。
【0046】
然も、円弧状の凸部115cは、昇降リンク機構29によって植付具28が下降し始めて、植付具28が畝U上面に突入して畝Uに苗を植付け終えるまでの間、操作ピン116aと対向する位置にある。従って、植付具28が畝U上面に突入して畝Uに苗を植付ける時の植付け負荷によって左スイング駆動軸62に駆動負荷が掛かっても、操作ピン116aが円弧状の凸部115cの側面115eに対向する位置にある為に、操作ピン116aが円弧状の凸部115cの側面115eに接当して、従動側爪体114が駆動側爪体113から離れることを阻止し、植付クラッチ112の伝動が切れることが防止でき、適切な苗の移植作業が行える。
【0047】
尚、植付クラッチ操作機構116は、左スイング駆動軸62の後方で左スイング駆動軸62よりも後側に配置されている。そして、操縦ハンドル16の左右中間位置に機体後方に向けて設けられた植付けクラッチレバー150を作業者が植付けクラッチ切り方向に操作すると、植付クラッチ操作機構116の操作ピン116aが操作カム115側(前側)に突出して操作ピン116aが操作カム115に接触することにより上記のように植付クラッチ112の伝動を断つ。逆に、植付けクラッチレバー150を作業者が植付けクラッチ入り方向に操作すると、植付クラッチ操作機構116の操作ピン116aが操作カム115とは反対側(後側)に戻って操作カム115から離れ、植付クラッチスプリング117により駆動側爪体113と従動側爪体114が噛み合って植付クラッチ112が伝動状態となる。
【0048】
左スイング駆動軸62の左右一方側(左側)の端部は、植付伝動ケース26から突出しており、植付伝動ケース26の左右一方側(左側)の側面に固着された植付装置駆動ケース27内を貫通し、更に植付装置駆動ケース27の左右一方側(左側)の側面から突出している。
【0049】
植付装置駆動ケース27内において、左スイング駆動軸62と一体回転する第三駆動スプロケット118を設け、第三駆動スプロケット118からチェーンである第三無端体119を介して第三従動スプロケット120へ伝動し、第三従動スプロケット120と後述する右スイングアーム駆動軸61が一体回転する。なお、右スイングアーム駆動軸61は、左スイング駆動軸62よりやや高い位置で左スイング駆動軸62の後方に配置されている。また、第三無端体119の上方には、第三無端体119に接触して第三無端体119に張力を与える板ばね121を設けている。
【0050】
一方、左スイング駆動軸62の左右他方側(右側)の端部には、供給部伝動用の一対のベベルギヤ121a・121bを設けており、供給部伝動用の一対のベベルギヤ121a・121bを介して植付伝動ケース26の後側に突出する供給部用動力取出軸122へ伝動する構成となっている。供給部用動力取出軸122からの伝動により、供給部31が駆動回転する構成である。
【0051】
植付伝動ケース26内の伝動軸の配置構成について説明すると、第一軸95よりも第二軸100を後側且つ上側に配置し、第二軸100の後方(第二軸100と略同じ高さの位置)に第三軸103を配置し、第三軸103の上方(第三軸103と略同じ前後位置)に左スイング駆動軸62を配置している。そして、植付伝動ケース26は、第二軸100と左スイング駆動軸62の間で第三軸103の斜め前上側で且つ植付伝動ケース26の前側上面に凹部123を形成している。(図4参照)
原動機11及び主伝動ケース12の上方を覆う機体カバー124を設けており、該機体カバー124の後部124aを植付伝動ケース26の凹部123に突入させて配置している。機体カバー124には、植付伝動ケース26の左右一方側(左側)で植付伝動ケース26の凹部123よりも後側に延ばした延長部124bを形成し、該延長部124bを昇降リンク機構29の前部(後述する左クランクアーム50及び後揺動アーム51)の上方に配置している。(図1参照)
植付装置19は、上部に形成した開口から苗を受けるとともに左右に開閉可能な先端が尖ったカップ状の植付具28と、該植付具28を昇降駆動する昇降リンク機構29で構成される。
【0052】
リンク機構である昇降リンク機構29は、植付具28の支持板72の右後側面に突設する右回動軸73に枢支した右スイングアーム52が植付装置駆動ケース27の右スイングアーム駆動軸61の右突出端に固着した右クランクアーム58の先端と右連結軸59で連結し、植付具28の支持板72の左前側面に突設する左回動軸74に枢支した左スイングアーム53の前端部が植付装置駆動ケース27の左スイング駆動軸62に固着した左クランクアーム50の先端と左連結軸65で連結し、前記右スイングアーム駆動軸61の左突出端に固着した第一昇降アーム55の先端に第二昇降アーム56を第一連結軸66で連結し、この第二昇降アーム56の先端を前記左スイングアーム53の中間部で下方屈曲部に第二連結軸67で枢着している。
【0053】
次に、上記昇降リンク機構29の作動によって、植付具28の下端が植付けの軌跡17(静軌跡:機体を停止した状態の軌跡)を描いて植付具28が苗を畝Uに移植する作用を説明する。
【0054】
左スイング駆動軸62がB方向に回転することにより、左スイング駆動軸62に固定されている左クランクアーム50がB方向に回転し、左スイングアーム53が前後に揺動する。
【0055】
一方、右スイングアーム駆動軸61が回転することにより、右突出端に固定されている右クランクアーム58がC方向に回動し、右スイングアーム52が前後に揺動する。
また、右スイングアーム駆動軸61が回転することにより、左突出端に固定されている第一昇降アーム55がC方向に回動し、第二昇降アーム56が上下して左スイングアーム53を上下に揺動する。第一昇降アーム55は左クランクアーム55や右クランクアーム58より長いので、植付けの軌跡17は、前後の揺動幅よりも昇降幅が大きくなる。
【0056】
従って、右スイングアーム52と左スイングアーム53は、平行リンク機構であるから、右スイングアーム52と左スイングアーム53の前端に枢着した支持板72すなわち植付具28は垂直方向を向いた姿勢を維持して植付け軌跡17を描いて作動し、植付具28内に受け入れられた苗を適正な姿勢で畝に植付けることができる。
【0057】
なお、植付具28の下部は、嘴状の左側部材70Lと右側部材70Rから構成されており、左側部材70Lと右側部材70Rは閉じた状態で内部に苗を保持して、植付けの軌跡17の最下端で左右に開いて畝内で苗を植付ける一般的な構成である。
【0058】
次に、図10から図13で、植付具28を開閉するための開閉機構とその動作について説明する。
植付具28の開閉動作のためのカウンターアーム79を、上アーム52の一端(後端)に設けた回動上軸73に、回動自在に設けている。また、上アーム52の他端(前端)に設けた上軸64に、開閉アーム76を回動自在に設けており、開閉アーム76とカウンターアーム79を連結ロッド78により連結している。また、カウンターアーム79には、ピン80を設けている。尚、ターンバックル等の調節ねじにより、連結ロッド78のロッド長を調節できる構成としてもよい。
【0059】
また、揺動駆動カム54とともに左スイング駆動軸62に固定されて回転する開閉駆動カム75を設けており、開閉駆動カム75の周縁部に接触する開閉用ローラ77を、開閉アーム76に回動自在に設けている。左スイング駆動軸62の回転に伴って開閉駆動カム75が回転することにより、開閉用ローラ77を介して開閉アーム76を作動させる。
【0060】
植付具28の開閉動作は、カウンターアーム79が連結ロッド78を介して開閉アーム76と並行して動作し、開閉アーム76は、開閉用ローラ77を介して開閉駆動カム75によって動作する。よって、簡易な形状の開閉駆動カム75によって開閉タイミングと開閉量を高精度で設定できる。
【0061】
植付具28に備えるホルダ71を、左ホルダ71Lおよび右ホルダ71Rで構成し、左ホルダ71Lを左側部材70Lに一体で固着し、右ホルダ71Rを右側部材70Rに一体で固着している。左ホルダ71Lは前後方向の左支点軸125回りに回動し、右ホルダ71Rは前後方向の右支点軸126回りに回動する構成であり、植付具28の左右方向中央位置に設けた連動用軸127により、左ホルダ71Lと右ホルダ71Rを連結している。また、左ホルダ71Lと一体で設けた回動操作アーム128に、上下方向に延びる開閉ロッド131を連結し、カウンターアーム79のピン80を開閉ロッド131に連結している。尚、左ホルダ71Lと右ホルダ71Rの間には開閉用スプリング130を設けており、該開閉用スプリング130のスプリング力により、左側部材70Lと右側部材70Rが互いに左右方向内側に押圧され、植付具28の下部が閉じる構成となっている。また、開閉用スプリング130のスプリング力により、開閉用ローラ77ひいては開閉アーム76が開閉駆動カム75側(上側)に押し付けられる。
【0062】
左スイング駆動軸62の回転と共に開閉駆動カム75が回転すると、開閉用ローラ77が開閉駆動カム75の周縁形状にしたがって移動し、開閉アーム76が揺動する。開閉アーム76の揺動に伴って、連結ロッド78が前後方向に作動し、カウンターアーム79が回動し、開閉ロッド131が上下方向に作動し、回動操作アーム128を介して左ホルダ71Lを回動するとともに連動用軸127を介して右ホルダ71Rを回動し、左ホルダ71Lと右ホルダ71Rを背反的に互いに左右対称位置へ回動させて植付具28の下部を開閉する。具体的には、連結ロッド78の前側への作動に伴って、開閉ロッド131を上側へ作動し、植付具28の下部を開く。なお、植付具28の上昇時、開閉駆動カム75の外周の局所的な突起部により、植付具28の下部を一時的に大きく開いて、別途設けた清掃用のスクレーパが植付具28内を上下方向に通過できる構成としている。
【0063】
これにより、軌跡17の上死点付近から下降する行程では、植付具28の下部が閉じた状態となり、下死点で植付具28の下部が開き、下死点から上昇する行程では植付具28の下部が開いた状態となる。
【0064】
なお、開閉駆動カム75を、クランクアーム55を駆動するクランクアーム駆動軸69に固定し、クランクアーム55と一体に回転する構成としてもよい。
また、本実施の形態では、上アーム52の連結支点軸である上軸64に開閉アーム76を取り付けているので、簡単な構成となっている。また、開閉アーム76およびカウンターアーム79を何れも上アーム52の回動支点軸に連結した構成としているので、連結ロッド78が上アーム52に沿って配置され、コンパクトな構成となっている。また、開閉駆動カム75を、揺動駆動カム54とともに左クランクアーム50の回動支点軸である左スイング駆動軸62に取り付けているので、簡単な構造となっている。
【0065】
植付具28の上下方向の上下動速度と前後方向の前後動速度を合成した絶対速度は、下死点では速いのに対し、上死点では非常に遅くなる。つまり、植付具28は、下死点付近では、比較的早く移動しているのに対し、上死点では、ゆっくりと移動しており停止に近い状態になっている。つまり、供給カップ33から苗が供給される上死点付近では、植付具28の速度が非常に遅くなっているので、供給カップ33から確実に苗を供給させることができる。なお、上死点付近では、前後方向の前後動速度が10mm/s以下になる時間が0.21秒あり、供給カップ33から確実に苗を供給できる時間であることを確認できた。これにより、従来のような間欠植付機構が不要にできる。
【0066】
また、機体の走行を加味した動軌跡は、株間50cmで、土壌面を想定した下死点から75mm上方での前後幅は4.9mmであり、また、株間40cmおよび60cmでは、19.1mmおよび20.2mmであり、実際の植付けにおいて植付穴があまり大きくならずに問題なく植え付け可能であることを確認できた。
【0067】
よって、植付具28の上死点での移動速度を小さく(停止時間を大きく)できるので、従来のような上死点で植付具28への伝動を停止して該植付具28を間欠的に作動させる間欠植付機構を設けなくても、植付具28への伝動比を変更するだけで種々の株間で適正な動軌跡により植え付けることができる。
【0068】
以上により、この移植機10は、原動機11から主伝動ケース12を介して走行推進体へ伝動するとともに、該主伝動ケース12から植付伝動ケース26を介して植付装置19へ伝動する構成とし、該植付伝動ケース26を、該主伝動ケース12の後側に配置すると共に、前側上面に凹部123を形成して構成し、該原動機11及び該主伝動ケース12の上方を覆う機体カバー124の後部124aを、該凹部123に突入させている。
【0069】
よって、機体カバー124の後部124aを植付伝動ケース26の凹部123に突入させて後寄りに位置させることができるため、機体の前後長を短縮して機体をコンパクトに構成できると共に、機体カバー124により植付伝動ケース26の前下部を含めて機体の構造物を有効に覆うことができ、降雨等から機体の構造物を的確に遮ることができて、機体の耐久性が向上する。
【0070】
また、植付装置19を、植付具28と、該植付具28を昇降させる昇降リンク機構29で構成し、昇降リンク機構29を植付伝動ケース26の左右一方側に配置し、機体カバー124には、植付伝動ケース26の前記左右一方側で植付伝動ケース26の凹部123よりも後側に延ばした延長部124bを形成し、該延長部124bを昇降リンク機構29の上方に配置している。
【0071】
よって、機体カバー124の延長部により、昇降リンク機構29を含めて機体の構造物を有効に覆うことができ、降雨等から昇降リンク機構29を含む機体の構造物を的確に遮ることができて、機体の耐久性が向上する。また、作動する昇降リンク機構29に作業者が触れることを防止でき、安全性が向上する。
【0072】
次に、機体を畝Uに沿って走行させる畝案内機構160を図16(a),(b)で説明する。
左右前輪13及び左右後輪14が跨いで走行する畝Uに前記植付具28にて苗を植付けて苗移植作業を行うが、畝案内機構160は機体の前部に設けられ、該畝Uの左右面に各々左右ガイドローラ161が接当して、機体が畝Uに沿って走行するように案内する。
【0073】
左右ガイドローラ161は、エンジン載置台91の左右両側に各々設けられているが、左右ガイドローラ161は同様の構成であるから、以下に、代表して左ガイドローラ161について説明する。
【0074】
エンジン載置台91の側面には、ガイドローラ支持ピン162の基部が溶接にて固定されている。そして、該ガイドローラ支持ピン162は、その先端が外側ほど下方に位置するように下がり傾斜姿勢となるように設けられている。
【0075】
ガイドローラ支持ピン162には、ガイドローラ支持アーム163の基部に設けた円筒状ボス164を回動自在に外嵌して設け、ガイドローラ支持アーム163の前端部に設けた円筒状支持ボス165には樹脂製の円筒のローラ166を回転自在に設けたローラ軸167を上下位置調節自在に貫通してボルト168にて固定して設けている。
【0076】
また、円筒状ボス164に上方に向けて設けた上昇作動アーム169と前記油圧昇降シリンダ23の作動にて後輪14を昇降させる上側ア−ム40aとを連結ワイヤ170にて連結し、通常の植付け作業時の後輪14の上下作動では連結ワイヤ170の緩みで上昇作動アーム169は作動せず、後輪14を機体旋回時に最大限界まで下降させて機体を最上昇させた時に連結ワイヤ170の緩みが張って上昇作動アーム169を後方に向けて回動させて、ガイドローラ161を畝Uから離れた上方に退避させる構成としている。
【0077】
この時、ガイドローラ支持アーム163の基部に設けた円筒状ボス164を回動自在に支持しているガイドローラ支持ピン162は、その先端が外側ほど下方に位置するように下がり傾斜姿勢となるように設けられているので、左右ガイドローラ162は互いに離れて開く方向に上昇し、畝U面に接当することなく良好に上昇する。従って、植付けクラッチレバー150を植付けクラッチ切り方向に操作し、更に、左右後輪14を最大限界まで下降させて機体を最上昇させて機体を旋回する際に、同時に、左右ガイドローラ162は互いに離れて開く方向で畝U面に接当することなく良好に上昇し、機体の旋回操作が容易に且つ適切に行える。
【0078】
また、円筒状ボス164の外側には波形状凹凸164aが形成されており、円筒状ボス164の外側にガイドローラ支持ピン162に回動自在に外嵌して設けた固定用ボス171の内側に設けた波形状凹凸171aに係合する構成となっている。
【0079】
そして、円筒状ボス164は、付勢バネ172にて固定用ボス171側に付勢されており、円筒状ボス164外側の波形状凹凸164aと固定用ボス171内側の波形状凹凸171aが係合することにより、左右ガイドローラ161は、畝Uに接当した機体進行方向案内作用位置と上方に退避した位置で固定される。
【0080】
尚、左右ガイドローラ161が他物に当たって破損することを防止する為に、前記のように円筒状ボス164が付勢バネ172にて固定用ボス171側に付勢されて、円筒状ボス164外側の波形状凹凸164aと固定用ボス171内側の波形状凹凸171aが係合する構成としている。従って、ガイドローラ161が他物に当たった場合には、付勢バネ172の付勢力に抗して各波形状凹凸164a・171aの係合が外れて円筒状ボス164が固定用ボス171に対して回動し、ガイドローラ161は他物から遠ざかるように逃げて、破損が防止できる。
【0081】
そして、固定用ボス171には、下方に向けて操作アーム173を設けて、連結ワイヤ174にて植付けクラッチレバー150に連携している。即ち、植付けクラッチレバー150を植付けクラッチ入りに操作すると、連結ワイヤ174を引いて左右ガイドローラ161が下降して畝Uの左右面に各々接当し、機体が畝Uに沿って走行するように案内する案内作用状態となり、植付けクラッチレバー150を植付けクラッチ切りに操作すると、連結ワイヤ174が緩んで左右ガイドローラ161が上記機体旋回時に上昇できる状態となる。
【0082】
図17は、植付具28の昇降機構の別実施例を示している。
植付具28の支持板72の左右側面に枢支軸137で枢支する左右スイングアーム135の前端にピニオンギヤ136を枢支し、このピニオンギヤ136を嵌合する弧状長孔139aを形成した揺動アーム139を植付装置駆動ケース27に揺動枢支軸141で枢支している。弧状長孔139aには前記ピニオンギヤ136を噛み合わせるラック139bを形成している。揺動アーム139の上端には揺動ロータ140を枢支して、揺動駆動軸145に固着の揺動カム138に当接している。
【0083】
従って、揺動駆動軸145の回転によって、揺動アーム139が前後に揺動し、左右スイングアーム135を前後に揺動する。
また、左右スイングアーム135の前後中間部には、昇降駆動軸146に固着の第一昇降アーム55と第一連結軸66と第二昇降アーム56で第二連結軸67が枢支され、昇降駆動軸146の回転で左右スイングアーム135が昇降する。
【0084】
この植付具28の昇降機構は、揺動カム138の形状によって植付軌跡を任意に変更出来る。
図18は、植付具28の昇降機構の別実施例を示している。
【0085】
この左右スイングアーム135の前端にはカムローラ144を枢支し、第一揺動駆動軸142に固着の第一揺動カム142aと第二揺動駆動軸143に固着の第二揺動カム143aと当接するように引張バネ147でカムローラ144を引っ張っている。
【0086】
なお、カムローラ144を上方から引張バネ147で第一揺動カム142aと第二揺動カム143aに当接するようにすることも出来、この場合には、植付動作の際に植付具28が石などに当たった場合に植付具28を無理に土中へ差し込まないように出来る。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明にかかる移植機は、タバコの苗の他に各種野菜苗やジャガイモ等の種芋やラッキョウ等の球根類等の色々な移植対象物を植え付ける移植機に適用でき、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0088】
28 植付具
50 前揺動アーム
52 右アーム
53 左アーム
55 左クランクアーム
56 連結アーム
58 右クランクアーム
61 クランクアーム駆動軸(昇降駆動軸)
62 揺動カム駆動軸
72 支持板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植付具(28)を開閉可能に支持する支持板(72)の左右側部に右スイングアーム(52)と左スイングアーム(53)を枢支し、この右スイングアーム(52)と左スイングアーム(53)の前端をクランク回転する右クランクアーム(58)と左クランクアーム(50)にそれぞれ枢支連結して植付具(28)を前後に揺動させ、右スイングアーム(52)と左スイングアーム(53)の片方或いは両方の前後中間部を上下にクランク運動をする第二昇降アーム(56)に枢支連結して植付具(28)を昇降させてなる移植機の植付装置。
【請求項2】
植付具(28)を開閉可能に支持する支持板(72)の左右側部に枢支した右スイングアーム(52)と左スイングアーム(53)の前端を、植付装置駆動ケース(27)の左スイング駆動軸(62)と右スイングアーム駆動軸(61)とにそれぞれ左クランクアーム(50)と右クランクアーム(58)に連結し、左スイングアーム(53)の前後中間部を植付装置駆動ケース(27)の昇降駆動軸(61)に第一昇降アーム(55)と第二昇降アーム(56)で枢支連結してなる移植機の植付装置。
【請求項3】
左クランクアーム(50)と右クランクアーム(58)の長さを同じにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の移植機の植付装置。
【請求項4】
昇降駆動軸(61)を右スイングアーム駆動軸(61)と同軸にしたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の移植機の植付装置。
【請求項5】
昇降駆動軸(61)に固着する第一昇降アーム(55)を左クランクアーム(50)や右クランクアーム(58)よりも長くしたことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の移植機。
【請求項1】
植付具(28)を開閉可能に支持する支持板(72)の左右側部に右スイングアーム(52)と左スイングアーム(53)を枢支し、この右スイングアーム(52)と左スイングアーム(53)の前端をクランク回転する右クランクアーム(58)と左クランクアーム(50)にそれぞれ枢支連結して植付具(28)を前後に揺動させ、右スイングアーム(52)と左スイングアーム(53)の片方或いは両方の前後中間部を上下にクランク運動をする第二昇降アーム(56)に枢支連結して植付具(28)を昇降させてなる移植機の植付装置。
【請求項2】
植付具(28)を開閉可能に支持する支持板(72)の左右側部に枢支した右スイングアーム(52)と左スイングアーム(53)の前端を、植付装置駆動ケース(27)の左スイング駆動軸(62)と右スイングアーム駆動軸(61)とにそれぞれ左クランクアーム(50)と右クランクアーム(58)に連結し、左スイングアーム(53)の前後中間部を植付装置駆動ケース(27)の昇降駆動軸(61)に第一昇降アーム(55)と第二昇降アーム(56)で枢支連結してなる移植機の植付装置。
【請求項3】
左クランクアーム(50)と右クランクアーム(58)の長さを同じにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の移植機の植付装置。
【請求項4】
昇降駆動軸(61)を右スイングアーム駆動軸(61)と同軸にしたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の移植機の植付装置。
【請求項5】
昇降駆動軸(61)に固着する第一昇降アーム(55)を左クランクアーム(50)や右クランクアーム(58)よりも長くしたことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の移植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
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【図12】
【図13】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−46582(P2013−46582A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186149(P2011−186149)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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